発光ダイオードおよびその製造方法
【課題】反射率の低下を防ぎ、高輝度発光が可能となる発光ダイオードおよびその製造方法を提供する。
【解決手段】本発明の発光ダイオードは、基板1上に順に、反射層6と、複数のオーミックコンタクト電極7が離間して埋設された透明膜8と、電流拡散層25及び発光層24を順に含む化合物半導体層10とを具備する発光ダイオードであって、オーミックコンタクト電極7の基板1側の面の周縁部は透明膜8に覆われ、オーミックコンタクト電極7は反射層6及び電流拡散層25に接触している、ことを特徴とする
【解決手段】本発明の発光ダイオードは、基板1上に順に、反射層6と、複数のオーミックコンタクト電極7が離間して埋設された透明膜8と、電流拡散層25及び発光層24を順に含む化合物半導体層10とを具備する発光ダイオードであって、オーミックコンタクト電極7の基板1側の面の周縁部は透明膜8に覆われ、オーミックコンタクト電極7は反射層6及び電流拡散層25に接触している、ことを特徴とする
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発光ダイオードおよびその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、赤色、赤外の光を発する高輝度の発光ダイオード(英略称:LED)としては例えば、砒化アルミニウム・ガリウム(組成式AlXGa1−XAs;0≦X≦1)からなる発光層や砒化インジウム・ガリウム(組成式InXGa1−XAs;0≦X≦1)からなる発光層を備えた化合物半導体発光ダイオードが知られている。一方、赤色、橙色、黄色或いは黄緑色の可視光を発する高輝度の発光ダイオードとしては例えば、燐化アルミニウム・ガリウム・インジウム(組成式(AlXGa1−X)YIn1−YP;0≦X≦1,0<Y≦1)からなる発光層を備えた化合物半導体発光ダイオードが知られている。
【0003】
このような化合物半導体発光ダイオードは、例えば、上述したような発光層を備えた化合物半導体層を、反射率の高い金属層(反射層)を介してSi等の基板に貼り付け、その後、成長用に用いた成長用基板(例えば、GaAs基板)を除去することにより製造する方法が知られている。このとき反射層として用いられる金属としては、Au、Al、Ag等がある。
しかし、このような、反射率の高い金属を用いた反射層は、燐化アルミニウム・ガリウム・インジウム系の化合物半導体層とオーミック接合ができない。
また、化合物半導体層と反射層が直接接触すると、化合物半導体層と反射層が反応して合金層が形成され、これにより反射率が低下する問題が生じるおそれがある。
【0004】
そこで、これらの問題を解決すべく、化合物半導体層と反射層との間に透明膜を挟むとともに、この透明膜を貫通し化合物半導体層と反射層とに接するようにオーミックコンタクト電極を配置する方法がある(特許文献1、2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2008−282851号公報
【特許文献2】特開2010−067891号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1、2では、化合物半導体層上に透明膜を成膜した後、マスクを用いたウェットエッチングによって一部の透明膜をエッチングして、透明膜を貫通する孔を形成し、この孔内にオーミックコンタクト電極の材料を蒸着させることにより、透明膜に貫設されたオーミックコンタクト電極を形成していた。
しかしながら、このような製造方法では、透明膜を貫通する孔を形成する際、まず、化合物半導体層上に透明膜を成膜した後、オーミックコンタクト電極の形成位置に対応する開口部を有するマスクを形成する。そして、このマスクを用いてウェットエッチングを行うことにより、開口部下部の透明膜を除去し、透明膜を貫通する孔を形成する。しかし、ウェットエッチングにおいて、サイドエッチングにより、開口部下部の透明膜だけでなく、その周辺の透明膜も除去されてしまい、実際に形成される孔は、マスクの開口部よりも大きくなってしまう。このように、上記の製造方法では、オーミックコンタクト電極のサイズとなるような孔を精度良く形成することは困難であった。そして、このマスクを用いてオーミックコンタクト電極の材料の蒸着を行うと、オーミックコンタクト電極は、マスクの開口部とほぼ同じ大きさで形成されるため、透明膜とオーミックコンタクト電極との間に隙間が生じることがあった。
以下、上記問題について、図を参照しながら具体的に説明する。
【0007】
図14に、従来の方法により製造した、発光ダイオード200のオーミックコンタクト電極207及びその近傍の拡大断面模式図を示す。
従来の方法により、オーミックコンタクト電極207を形成した場合、図14に示すように、透明膜208との間に隙間が生じるおそれがある。そして、このように隙間が生じると、オーミックコンタクト電極207と透明膜208上に反射層206を形成する際に、この隙間内に反射層206が入り込み、電流拡散層225と直接接触してしまう。直接接触した箇所では、電流拡散層225と反射層206とが反応して合金層M´´が形成され、この合金層M´´により、発光層206で発光した光が吸収されてしまうため、反射層206の反射率が低下する。
【0008】
図15(a)及び(b)は、従来の製造方法により得られた発光ダイオード200の光学顕微鏡像である。図15(a)において、ドット状に濃く見える部分は、オーミックコンタクト電極に対応している。図15(b)は、そのうちの1個のオーミックコンタクト電極(直径9μm)の近傍の拡大像である。なお、図15(a)は、オーミック電極211形成後であって、表面電極(不図示)形成前の段階で観察した光学顕微鏡像である。
図15(b)の像において、濃淡が濃く映し出されている箇所は、照射光が吸収され、反射率が低下している箇所である。オーミックコンタクト電極の上部、つまりオーミックコンタクト電極と電流拡散層が接触している箇所では、オーミックコンタクト電極と電流拡散層とが反応して合金層M´が形成されているため、画像の濃淡が濃く映し出されている。また、オーミックコンタクト電極と透明膜との間の部分でも画像の濃淡が濃く映し出されており、光が吸収され反射率が低下していることが分かる。これは、オーミックコンタクト電極と透明膜との間に反射層が入り込み、電流拡散層と反射層とが接触し、合金層M´´が形成されたためと考えられる。
【0009】
本発明は、上記事情を鑑みてなされたものであり、電流拡散層と反射層とが直接接触することを防ぎ、合金層の形成を阻止可能とする構成を有することにより、反射率の低下を防ぎ、高輝度発光が可能となる発光ダイオードおよびその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、上記目的を達成するために鋭意研究を重ねた結果、以下に示す本発明を完成させるに至った。
【0011】
[1] 基板上に順に、反射層と、複数のオーミックコンタクト電極が離間して埋設された透明膜と、電流拡散層及び発光層を順に含む化合物半導体層とを具備する発光ダイオードの製造方法であって、
成長用基板上に、発光層及び電流拡散層を順に含む化合物半導体層を形成する工程と、
前記電流拡散層上に、離間して配置する複数のオーミックコンタクト電極を形成する工程と、
前記電流拡散層上に、前記複数のオーミックコンタクト電極をその表面のうち周縁部以外を露出するように透明膜を形成する工程と、
前記透明膜上及び前記オーミックコンタクト電極の露出された部分上に反射層を形成する工程と、
前記反射層上に接合層を形成する工程と、
前記接合層上に基板を接合する工程と、
前記成長用基板を除去する工程と、を順に有することを特徴とする発光ダイオードの製造方法。
[2] 前記透明膜を形成する工程において、前記複数のオーミックコンタクト電極と前記電流拡散層を覆うように前記透明膜を成膜した後、前記オーミックコンタクト電極の表面のうち前記周縁部以外の表面上の前記透明膜を除去することを特徴とする上記[1]に記載の発光ダイオードの製造方法。
[3] 前記透明膜を形成する工程において、前記オーミックコンタクト電極の表面のうち前記周縁部以外の表面にマスクを形成して、前記複数のオーミックコンタクト電極と前記電流拡散層を覆うように前記透明膜を成膜した後に、前記マスクを除去することを特徴とする上記[1]に記載の発光ダイオードの製造方法。
【0012】
[4] 基板上に順に、反射層と、複数のオーミックコンタクト電極が離間して埋設された透明膜と、電流拡散層及び発光層を順に含む化合物半導体層とを具備する発光ダイオードであって、
前記オーミックコンタクト電極の前記基板側の面の周縁部は前記透明膜に覆われ、
前記オーミックコンタクト電極は前記反射層及び前記電流拡散層に接触している、ことを特徴とする発光ダイオード。
[5] 前記周縁部は、前記オーミックコンタクト電極の周端部から1.5μm以内の範囲内であることを特徴とする上記[4]に記載の発光ダイオード。
[6] 前記反射層は、Au、Ag、Cu、Alのいずれか、またはこれらの元素から選ばれる1種または2種以上を含む合金のいずれかからなることを特徴とする上記[4]または[5]に記載の発光ダイオード。
[7] 前記電流拡散層は、GaP、{AlxGa(1−x)}(1−y)InyP、{AlxGa(1−x)}(1−y)InyAsのいずれかからなることを特徴とする上記[4]〜[6]の何れか一項に記載の発光ダイオード。
[8] 前記透明膜は、SiO2、SiN、SiON、Al2O3、MgF2、TiO2、TiN、ZnO、ITO、IZOのいずれかからなることを特徴とする上記[4]〜[7]の何れか一項に記載の発光ダイオード。
[9] 前記透明膜の膜厚が、0.05〜1.00μmであることを特徴とする上記[4]〜[8]の何れか一項に記載の発光ダイオード。
【発明の効果】
【0013】
上記の構成によれば、オーミックコンタクト電極は、透明電極膜に埋設されるとともに、その基板側の周縁部も透明電極膜に覆われている構成としたので、電流拡散層と反射層とが直接接触することを防ぎ、合金層の形成を阻止することができる。そして、その結果、反射率の低下を防ぎ、高輝度発光が可能となる発光ダイオードを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の一実施形態である発光ダイオードの断面摸式図である。
【図2】図1中に示すオーミックコンタクト電極7近傍の拡大断面模式図である。
【図3A】本発明の一実施形態である発光ダイオードの表面電極の平面摸式図である。
【図3B】本発明の一実施形態である発光ダイオードのオーミック電極の平面摸式図である。
【図3C】本発明の一実施形態である発光ダイオードのオーミックコンタクト電極の平面摸式図である。
【図3D】本発明の第一実施形態である発光ダイオードの表面電極、オーミック電極、オーミックコンタクト電極を重ねて描いた平面摸式図である。
【図4】本発明の基板の製造工程を説明するための金属基板の一部の断面模式図であって、(a)第1の工程、(b)第2の工程、(c)第3の工程を示すものである。
【図5】本発明の一実施形態である発光ダイオードの製造方法を説明するための断面摸式図である。
【図6】本発明の一実施形態である発光ダイオードの製造方法を説明するための断面摸式図である。
【図7】本発明の一実施形態である発光ダイオードの製造方法を説明するための断面摸式図である。
【図8】本発明の一実施形態である発光ダイオードの製造方法を説明するための断面摸式図である。
【図9】本発明の一実施形態である発光ダイオードの製造方法を説明するための断面摸式図である。
【図10】本発明の一実施形態である発光ダイオードの製造方法を説明するための断面摸式図である。
【図11】本発明の一実施形態である発光ダイオードの製造方法を説明するための断面摸式図である。
【図12】本発明の一実施形態である発光ダイオードの製造方法を説明するための断面摸式図である。
【図13】本実施例の発光ダイオードの光学顕微鏡像であって、(a)は平面像、(b)はオーミックコンタクト電極の近傍の拡大平面像である。
【図14】従来の発光ダイオードのオーミックコンタクト電極およびその近傍の拡大断面模式図である。
【図15】従来の発光ダイオードの発光ダイオードの光学顕微鏡像であって、(a)は平面像、(b)はオーミックコンタクト電極の近傍の拡大平面像である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明を適用した実施形態の発光ダイオードおよびその製造方法について、図を用いてその構成を説明する。なお、以下の説明で用いる図面は、特徴をわかりやすくするために便宜上特徴となる部分を拡大して示している場合があり、各構成要素の寸法比率などは実際と同じであるとは限らない。また、以下の説明において例示される材料、寸法等は一例であって、本発明はそれらに限定されるものではなく、その要旨を変更しない範囲で適宜変更して実施することが可能である。
【0016】
図1は、本発明を適用した一実施形態の発光ダイオードの一例を示す断面模式図である。また、図2は、図1中のオーミックコンタクト電極7近傍の拡大断面模式図である。
本実施形態の発光ダイオード100は、基板1上に順に、反射層6と、複数のオーミックコンタクト電極7が離間して埋設された透明膜8と、電流拡散層25及び発光層24を順に含む化合物半導体層10とを具備する発光ダイオードであって、オーミックコンタクト電極7の基板1側の面の周縁部は透明膜8に覆われ、オーミックコンタクト電極7は反射層6及び電流拡散層25に接触している、ことを特徴とする。
【0017】
図1で示す例では、オーミックコンタクト電極7は複数のドット状の導電性部材からなり、その導電性部材間には透明膜8が充填されている。また、反射層6の基板1側には接合層4が設けられており、該接合層4と反射層6の間にはバリア層5が設けられている。
また、本実施形態においては、化合物半導体層10の基板1の反対側10aには順に、オーミック電極11と表面電極12とが設けられている。
【0018】
<オーミックコンタクト電極>
オーミックコンタクト電極7は平面視してドット状の複数の導電性部材からなり、後述する透明膜内に埋め込まれている。
なお、オーミックコンタクト電極7と、後述するオーミック電極11とは共にオーミック性の電極であるが、両者を区別するために、本実施形態においては両電極それぞれに別の名称を付した。
【0019】
本実施形態のオーミックコンタクト電極7の基板1側の面の周縁部7aは、図2に示すように、透明膜8に覆われている。
具体的に説明すると、図2に示すように、オーミックコンタクト電極7の表面のうち、化合物半導体層10側である第1の主面7bは電流拡散層25に接しており、側面7dは透明膜8に接している。そして、基板1側である第2の主面7cのうち、端部を含む周縁部7aは透明膜8に覆われており、第2の主面7cのうち透明膜8に覆われていない面は後述する反射層6に接している。つまり、オーミックコンタクト電極7の表面のうち、第1の主面7bは電流拡散層25に接しており、第2の主面7cのうち、周縁部7aは透明膜8に覆われ、それ以外の第2の主面7cは反射層6と接している。
【0020】
なお、本実施形態のオーミックコンタクト電極7の周縁部7aは、オーミックコンタクト電極7を反射層6との十分な密着性を確保するという観点から、オーミックコンタクト電極7の周端部から5.0μm以内、望ましくは1.5μm以内の範囲内とすることが好ましい。
【0021】
また、本実施形態におけるオーミックコンタクト電極7を構成するドット状の導電性部材は、図3Dに示すように、平面視して表面電極12のパッド部12aに重ならない位置であって、オーミック電極11の線状部位間の中間位置上に、又は、オーミック電極11の両端の線状部位11ba、11bbの外側の、その線状部位11ba、11bbからの距離d2が線状部位間の中間位置までの距離d1と同程度の位置に、直線状に並ぶように配置する。オーミックコンタクト電極7の形状は、円柱状、楕円柱状、ドーナツ状、線状等でもよい。
【0022】
オーミック電極11の線状部位間の中間位置までの距離d1、d3と、オーミック電極11の両端の線状部位11ba、11bbの外側の、その線状部位11ba、11bbからの距離d2とは、電流が均一に拡散するように等しい距離に構成するのが好ましい。
【0023】
オーミックコンタクト電極7を構成するドット状の導電性部材は例えば、直径を5〜20μm程度とする円柱状部材とする。
また、直線状に並ぶドット状の導電性部材の群において、隣接する導電性部材間の距離は例えば、5〜40μm程度とする。
【0024】
オーミックコンタクト電極7が平面視して、表面電極12のパッド部12aに重ならない位置に配置するのは、オーミックコンタクト電極7がパッド部12aに重なる位置に配置するとパッド部の直下で発光した光がパッド部で吸収される割合が高くなってしまい、光取り出し効率が低下してしまうからであり、それを回避するためである。
【0025】
オーミックコンタクト電極の材料としては、AuBe、AuZnなどを用いることができる。
【0026】
<透明膜>
透明膜8は、複数のオーミックコンタクト電極7を構成するドット状の導電性部材間に充填するように形成されている。
透明膜8の材料としては、SiO2、SiN、SiON、Al2O3、MgF2、TiO2、TiN、ZnO、ITO、IZOなどを用いることができる。
【0027】
また、本実施形態の透明膜8は、上述したように、オーミックコンタクト電極7の周縁部7aを覆うように形成されている。透明膜8は、複数のオーミックコンタクト電極7を予め電流拡散層25に形成した後に、この複数のオーミックコンタクト電極7の周縁部7aと電流拡散層25を覆うように形成されているため、オーミックコンタクト電極7と透明膜8の間に隙間が生じることなく、互いに密接した構造とすることができる。また、オーミックコンタクト電極7と透明膜8を、互いの間に隙間が生じないようすることにより、電流拡散層25と反射層6とが直接接することを防ぐことができ、従来のような合金層の形成を阻止することができる。
なお、本実施形態の透明膜8の膜厚は、0.05〜1.00μmであることが好ましい。0.05μm未満であると、成膜不足となるおそれがあり、その場合、オーミックコンタクト電極7と透明膜8との間に隙間が生じるおそれがある。一方、生産性の観点から、1.00μm以下とすることが好ましい。
【0028】
<反射層>
反射層6は、発光層24からの光を反射層6で正面方向fへ反射させて、正面方向fでの光取り出し効率を向上させることができ、これにより、発光ダイオードをより高輝度化できる。
反射層6の材料としては、AgPdCu合金(APC)、金、銅、銀、アルミニウムなどの金属、およびそれらの元素から選ばれる1種または2種以上を含む合金等を用いることができる。これらの材料は光反射率が高く、光反射率を90%以上とすることができる。
【0029】
本実施形態の反射層6は、図2に示すように、電流拡散層25と直接接触せずに、透明膜8とオーミックコンタクト電極7に接している。つまり、従来であれば、透明膜とオーミックコンタクト電極との間隙に反射層が入り込み、電流拡散層と接触することにより、合金層が形成されるおそれがあったが、本実施形態では、反射層6と電流拡散層25が直接接触することを防ぐ構造であるため、従来のような合金層の形成を防ぐことができる。
【0030】
<化合物半導体層>
化合物半導体層10は、複数のエピタキシャル成長させた層を積層してなる、発光層24を含む化合物半導体の積層構造体である。
化合物半導体層10としては、例えば、発光効率が高く、基板接合技術が確立されているAlGaInP層またはAlGaInAs層などを利用できる。AlGaInP層は、一般式(AlXGa1−X)YIn1−YP(0≦X≦1,0<Y≦1)で表される材料からなる層である。この組成は、発光ダイオードの発光波長に応じて、決定される。赤および赤外発光の発光ダイオードを作製する際に用いられるAlGaInAs層の場合も同様に、構成材料の組成は発光ダイオードの発光波長に応じて決定される。
化合物半導体層10は、n型またはp型の何れか一の伝導型の化合物半導体であり、内部でpn接合が形成される。AlGaInAsにはAlGaAs、GaAs、GaInAs等も含まれる。
なお、化合物半導体層10の表面の極性はp型、n型のどちらでもよい。
また、図1に示すように、化合物半導体層10は、例えば、コンタクト層22cと、クラッド層23aと発光層24と、クラッド層23bと、電流拡散層25とからなる。なお、クラッド層23aは、光取り出し向上の為に表面を粗面化させる表面粗面化層と、クラッド層の2層構造としてもよい。
【0031】
コンタクト層22cは、オーミック(Ohmic)電極の接触抵抗を下げるための層であり、例えば、Siドープしたn型のGaAsからなり、キャリア濃度を1×1018cm−3とし、層厚を0.05μmとする。
【0032】
発光層24は、例えば、アンドープの(Al0.1Ga0.9)0.5In0.5P/(Al0.5Ga0.5)0.5In0.5Pの20対の積層構造からなり、層厚を0.2μmとする。
発光層24は、ダブルへテロ構造(Double Hetero:DH)、単一量子井戸構造(Single Quantum Well:SQW)または多重量子井戸構造(Multi Quantum Well:MQW)などの構造を有する。ここで、ダブルへテロ構造は、放射再結合を担うキャリアを閉じ込められる構造である。また、量子井戸構造は、井戸層と井戸層を挟む2つの障壁層とを有する構造であって、SQWは井戸層が1つのものであり、MQWは井戸層が2以上のものである。化合物半導体層10の形成方法としては、MOCVD法などを用いることができる。
発光層24から単色性に優れる発光を得るためには、発光層24としてMQW構造を用いることが好ましい。
【0033】
クラッド層23bは、例えば、Mgをドープしたp型のAl0.5In0.5Pからなり、キャリア濃度を8×1017cm−3とし、層厚を0.5μmとする。
【0034】
電流拡散層25は、例えば、Mgをドープしたp型GaP層であり、キャリア濃度を5×1018cm−3とし、層厚を2μmとする。なお、電流拡散層25として、{AlxGa(1−x)}(1−y)InyP、{AlxGa(1−x)}(1−y)InyAsのいずれかを用いても構わない。
【0035】
化合物半導体層10の構成は、上記に記載した構造に限られるものではなく、例えば、素子駆動電流の通流する領域を制限するための電流阻止層または電流狭窄層などを有していてもよい。
【0036】
(電極構造)
図3Aは、本実施形態の表面電極の一例を示す平面摸式図である。図3Bは、本実施形態のオーミック電極の一例を示す平面摸式図である。図3Cは、本実施形態のオーミックコンタクト電極の一例を示す平面摸式図である。図3Dは、表面電極、オーミック電極、オーミックコンタクト電極を重ねて描いた平面摸式図である。
【0037】
<表面電極>
表面電極12は、パッド部12aとパッド部12に連結する線状部12bとからなる。
本実施形態では、パッド部12aは平面視して円形状であるが、円形状以外の他の形状でもよい。
【0038】
線状部12bは、例えば、円形状のパッド部12aの中心を通る直線上において直径を挟んだ周端(周端部)12aaa、12aabから互いに逆方向に延在する2本の第1の直線部12baa、12babと、第1の直線部12baa、12babに対して直交する方向に延在する6本の第2の直線部12bba、12bbb、12bca、12bcb、12bcc、12bcdとからなる。
【0039】
本実施形態の線状部12bは、パッド部と該パッド部に連結する線状部とからなる構成であるが、このような構成に限らず、例えば、パッド部と、該パッド部から多方向へ放射状に延びた複数の線状部から構成されていてもよい。
また、本実施形態の線状部12bは、2本の第1の直線部と、6本の第2の直線部とからなる構成であるが、この本数には限らない。
【0040】
パッド部12aのサイズは、円形状の場合、直径を例えば、50〜150μm程度とする。
また、線状部12bの幅はオーミック電極11の線状部位を覆うためにその幅より幅広となるように、例えば、2〜20μm程度とする。第1の直線部及び第2の直線部のすべてについて同じ幅にする必要はないが、均一な光取り出しの観点から、対称な位置に配置する直線部の幅は同じであるのが好ましい。
【0041】
表面電極の材料としては、Au/Ti/Au、(Au/Pt/Au、Au/Cr/Au、Au/Ta/Au、Au/W/Au、Au/Mo/Au)などを用いることができる。
【0042】
<オーミック電極>
図3Bに示すように、本実施形態のオーミック電極11は、6本の線状部位11ba、11bb、11ca、11cb、11cc、11cdからなる。
本実施形態のオーミック電極11は6本の線状部位からなる構成であるが、この本数には限らない。オーミック電極11は表面電極の線状部12b下に不連続に配列されている形状、たとえばドット形状電極の配列としてもよい。
【0043】
また、オーミック電極11のそれぞれの線状部位は、平面視して表面電極12のパッド部12aに重ならない位置であって、表面電極12の線状部12bの6本の第2の直線部12bba、12bbb、12bca、12bcb、12bcc、12bcdのそれぞれに覆われる位置に配置する。
すなわち、長い2本の線状部位11ba、11bbはそれぞれ、第2の直線部12bba、12bbbのそれぞれの直下に配置しており、短い4本の線状部位11ca、11cb、11cc、11cdはそれぞれ、第2の直線部12bca、12bcb、12bcc、12bcdのそれぞれの直下に配置する。
【0044】
このように、オーミック電極11が平面視して、表面電極12のパッド部12aに重ならない位置に配置するのは、オーミック電極11がパッド部12aに重なる位置に配置するとパッド部の直下で発光した光がパッド部で吸収される割合が高くなって、光取り出し効率が低下してしまうからであり、それを回避するためである。
【0045】
オーミック電極11を構成する線状部位の幅は、表面電極12の線状部で覆われるようにその幅より幅狭となるよう、例えば、1〜10μm程度とする。幅はすべての線状部位について同じにする必要はないが、均一な光取り出しの観点から、対称な位置に配置する線状部位の幅は同じであるのが好ましい。
【0046】
オーミック電極の材料としては、AuGeNi、AuGe、AuNiSi、AuSiなどを用いることができる。
【0047】
<バリア層>
バリア層5は、後述する基板1に含まれる金属が拡散して、反射層6と反応するのを抑制することができる。
バリア層5の材料としては、ニッケル、チタン、白金、クロム、タンタル、タングステン、モリブデン等を用いることができる。
バリア層は、2種類以上の金属の組み合わせ、たとえば白金とチタンの組み合わせなどにより、バリアの性能を向上させることができる。
なお、バリア層を設けなくても、接合層にそれらの材料を添加することにより接合層にバリア層と同様な機能を持たせることもできる。
【0048】
<接合層>
接合層4は、発光層24を含む化合物半導体層10等を基板1に接合するための層である。
接合層4の材料としては、化学的に安定で、融点の低いAu系の共晶金属などが用いられる。Au系の共晶金属としては、例えば、AuGe、AuSn、AuSi、AuInなどの合金の共晶組成を挙げることができる。
【0049】
<基板>
基板1は、図1に示すように、接合層4の化合物半導体層10と反対側面に接合されている。基板1としては、金属材料やシリコン、ゲルマニウム等を用いることができるが、コスト面、機械強度、放熱性の観点から、金属材料を用いた金属基板を用いることが好ましい。なお、図1に示す基板1は、金属基板を採用した場合を示す。
以下、本実施形態の基板1を金属基板とした一例を、図を参照しながら説明する。
【0050】
図4(a)〜図4(c)は、金属基板の製造工程を説明するための金属基板の一部の断面模式図である。
本実施形態の基板1(金属基板)は3層の金属層1a,1b,1aと、その上面1ba及び下面1bbを覆う、エッチャントに対して耐性を有する金属保護膜2とからなる。さらに、金属基板1の側面を金属保護膜2で覆うのが好ましい。
【0051】
金属基板1と化合物半導体層10との接合は、金属基板1の接合面(上面)1baに、金属保護膜2を介して接合層4が接合されることによって行われている。
【0052】
金属保護膜2の材料としては、密着性に優れるクロム、ニッケル、化学的に安定な白金、又は金の少なくともいずれか一つを含む金属からなるものであるのが好ましい。
金属保護膜2は密着性がよいニッケルと耐薬品に優れる金を組み合わせた層からなるのが最適である。
金属保護膜2の厚さは特に制限はないが、エッチャントに対する耐性とコストのバランスから、0.2〜5μm、好ましくは、0.5〜3μmが適正な範囲である。高価な金の場合は、厚さは2μm以下が望ましい。
【0053】
金属基板1の厚さは、50μm以上150μm以下とすることが好ましい。
金属基板1の厚さが150μmより厚い場合には、発光ダイオードの製造コストが上昇して好ましくない。また、金属基板1の厚さが50μmより薄い場合には、ハンドリング時に割れ、かけ、反りなどが容易に生じて、製造歩留まりを低下させるおそれが発生する。
【0054】
複数の金属層の構成としては、2種類の金属層すなわち、第1の金属層と第2の金属層とが交互に積層されてなるものが好ましい。
金属基板1枚あたりの第1の金属層と第2の金属層の層数は、合わせて3〜9層とすることが好ましく、3〜5層とすることがより好ましい。
第1の金属層と第2の金属層の層数を合わせて2層とした場合には、厚さ方向での熱膨張が不均衡となり、金属基板1の反りが発生する。逆に、第1の金属層と第2の金属層の層数を合わせて9層より多くした場合には、第1の金属層と第2の金属層の層厚をそれぞれ薄くする必要が生じる。第1の金属層または第2の金属層からなる単層基板の層厚を薄くして作製することは困難であり、各層の層厚を不均一にして、発光ダイオードの特性をばらつかせるおそれが発生する。さらに、単層基板の製造が困難であることから、発光ダイオードの製造コストを悪化させるおそれも生じる。
【0055】
第1の金属層と第2の金属層の層数は、合わせて奇数とすることがより好ましい(この場合、最外側の層が第1の金属層)。
特に3層として、一層の金属層を挟む二層の金属層は同じ金属材料からなるものとすることが好ましい。この場合、挟む二層の金属層を同じエッチャントを用いて湿式エッチングで切断予定ラインに相当する部分を除去することができる。
【0056】
金属基板1の表面は、上述の通り金属保護膜2があるが、この金属保護膜2が金属基板1側からNi膜、Au膜の順に形成されていると、接合層としてAu−Siを用いる場合に好ましい。また、金属基板1の表面にダイボンド用の共晶金属を形成しても良い。ダイボンドの接合を電気的接触が安定な共晶接合とすることができる。
化合物半導体層10に金属基板1を接合する方法は、上記の共晶接合の他、拡散接合、接着剤、常温接合などの公知の技術を適用してもよい。
【0057】
<第1の金属層>
第1の金属層は、第2の金属層として化合物半導体層より熱膨張係数が小さい材料を用いる場合には、少なくとも化合物半導体層より熱膨張係数が大きい材料からなることが好ましい。この構成とすることにより、金属基板全体としての熱膨張係数が化合物半導体層の熱膨張係数に近いものとなるため、化合物半導体層と金属基板とを接合する際の金属基板の反りや割れを抑制することができ、発光ダイオードの製造歩留まりを向上させることができるからである。従って、第2の金属層として化合物半導体層より熱膨張係数が大きい材料を用いる場合には、第1の金属層は少なくとも化合物半導体層より熱膨張係数が小さい材料からなることが好ましい。
【0058】
第1の金属層としては、例えば、銀(熱膨張係数=18.9ppm/K)、銅(熱膨張係数=16.5ppm/K)、金(熱膨張係数=14.2ppm/K)、アルミニウム(熱膨張係数=23.1ppm/K)、ニッケル(熱膨張係数=13.4ppm/K)およびこれらの合金などを用いることが好ましい。
第1の金属層の層厚は、5μm以上50μm以下とすることが好ましく、5μm以上20μm以下とすることがより好ましい。
なお、第1の金属層の層厚と第2の金属層の層厚とは異なっていてもよい。さらに、金属基板1が複数の第1の金属層と第2の金属層により形成される場合に、各層の層厚はそれぞれ異なっていてもよい。
【0059】
第1の金属層の合計の厚さは、金属基板1の厚さの5%以上50%以下であることが好ましく、10%以上30%以下であることがより好ましく、15%以上25%以下であることが更に好ましい。第1の金属層の合計の厚さが金属基板1の厚さの5%未満の場合は、熱膨張係数が高い第1の金属層の効果が小さくなり、ヒートシンク機能が低下する。逆に、第1の金属層の厚さが金属基板1の厚さの50%を超える場合は、金属基板1を化合物半導体層10と接続させたときの熱による金属基板1の割れを抑制できない。つまり、第1の金属層と化合物半導体層10との間の大きな熱膨張係数の差により、熱による金属基板1の割れを発生させて、接合不良発生を招く場合が生じる。
特に、第1の金属層として銅を用いた場合には、銅の合計の厚さが、金属基板1の厚さの5%以上40%以下であることが好ましく、10%以上30%以下であることがより好ましく、15%以上25%以下であることが更に好ましい。
第1の金属層の層厚は、5μm以上30μm以下とすることが好ましく、5μm以上20μm以下とすることがより好ましい。
【0060】
<第2の金属層>
第2の金属層は、第1の金属層として化合物半導体層より熱膨張係数が大きい材料を用いる場合には、その熱膨張係数が化合物半導体層の熱膨張係数より小さい材料からなることが好ましい。この構成とすることにより、金属基板全体としての熱膨張係数が化合物半導体層の熱膨張係数に近いものとなるため、化合物半導体層と金属基板とを接合する際の金属基板の反りや割れを抑制することができ、発光ダイオードの製造歩留まりを向上させることができるからである。従って、第1の金属層として化合物半導体層より熱膨張係数が小さい材料を用いる場合には、第2の金属層はその熱膨張係数が化合物半導体層の熱膨張係数より大きい材料からなることが好ましい。
【0061】
例えば、化合物半導体層としてAlGaInP層(熱膨張係数=約5.3ppm/K)を用いた場合には、第2の金属層としてモリブデン(熱膨張係数=5.1ppm/K)、タングステン(熱膨張係数=4.3ppm/K)、クロム(熱膨張係数=4.9ppm/K)およびこれらの合金などを用いることが好ましい。
【0062】
[発光ダイオードの製造方法]
次に、本発明の一実施形態である発光ダイオードの製造方法について説明する。
本実施形態の発光ダイオードの製造方法は、成長用基板上に、発光層及び電流拡散層を順に含む化合物半導体層を形成する工程と、電流拡散層上に、離間して配置する複数のオーミックコンタクト電極を形成する工程と、電流拡散層上に、複数のオーミックコンタクト電極をその表面のうち周縁部以外を露出するように透明膜を形成する工程と、透明膜上及びオーミックコンタクト電極の露出された部分上に反射層を形成する工程と、反射層上に接合層を形成する工程と、接合層上に基板を接合する工程と、成長用基板を除去する工程と、を順に有することを特徴とする。
【0063】
<基板の製造工程>
本実施形態の基板としては、金属基板やシリコン基板、ゲルマニウム基板を採用することができるが、以下、基板1として金属基板を用いた場合について説明する。
図4(a)〜図4(c)は、金属基板の製造工程を説明するための金属基板の一部の断面模式図である。
本実施形態では、熱膨張係数が化合物半導体層10の材料より大きい第1の金属層1bと、熱膨張係数が化合物半導体層10の材料より小さい第2の金属層1bとを採用して、ホットプレスして、基板1(金属基板)を形成する。
【0064】
具体的にはまず、2枚の略平板状の第1の金属層1bと、1枚の略平板状の第2の金属層1aを用意する。例えば、第1の金属層1bとしては厚さ10μmのCu、第2の金属層1aとしては厚さ75μmのMoを用いる。
次に、図4(a)に示すように、2枚の第1の金属層1bの間に第2の金属層1aを挿入してこれらを重ねて配置する。
【0065】
次に、重ね合わせたそれらの金属層を所定の加圧装置に配置して、高温下で第1の金属層1bと第2の金属層1aに矢印の方向に荷重をかける。これにより、図4(b)に示すように、第1の金属層21がCuであり、第2の金属層22がMoであり、Cu(10μm)/Mo(75μm)/Cu(10μm)の3層からなる金属基板1を形成する。
金属基板1は、例えば、熱膨張係数が5.7ppm/Kとなり、熱伝導率は220W/m・Kとなる。
【0066】
次に、図4(c)に示すように、金属基板1の全面すなわち、上面、下面及び側面を覆う金属保護膜2を形成する。このとき、金属基板は各発光ダイオードに個片化のために切断される前なので、金属保護膜が覆う側面とは金属基板(プレート)の外周側面である。
従って、個片化後の各発光ダイオードの金属基板1の側面を金属保護膜2で覆う場合には別途、金属保護膜で側面を覆う工程を実施する。
図4(c)は、金属基板(プレート)の外周端側でない箇所の一部を示しているものであり、外周側面の金属保護膜は図に表れていない。
【0067】
金属保護膜は公知の膜形成方法を用いることができるが、側面を含めた全面に膜形成ができるめっき法が最も好ましい。
例えば、無電解めっき法では、ニッケルその後、金をめっきし、金属基板の上面、側面、
下面をニッケル膜及び金膜(金属保護膜)で覆われた金属基板6を作製できる。
めっき材質は、特に制限はなく、銅、銀、ニッケル、クロム、白金、金など公知の材質が適用できるが、密着性がよいニッケルと耐薬品に優れる金を組み合わせた層が最適である。
めっき法は、公知の技術、薬品が使用できる。電極が不要な無電解めっき法が、簡便で望ましい。
【0068】
<化合物半導体層の形成工程>
まず、図5に示すように、半導体基板(成長用基板)21の一面21a上に、複数のエピタキシャル層を成長させて化合物半導体層10を含むエピタキシャル積層体30を形成する。
半導体基板21は、エピタキシャル積層体30形成用基板であり、例えば、一面21aが(100)面から15°傾けた面とされた、Siドープしたn型のGaAs単結晶基板である。エピタキシャル積層体30としてAlGaInP層またはAlGaAs層を用いる場合、エピタキシャル積層体30を形成する基板として砒化ガリウム(GaAs)単結晶基板を用いることができる。
【0069】
化合物半導体層10の形成方法としては、有機金属化学気相成長(Metal Organic Chemical Vapor Deposition:MOCVD)法、分子線エピタキシャル(Molecular Beam Epitaxicy:MBE)法や液相エピタキシャル(Liquid Phase Epitaxicy:LPE)法などを用いることができる。
【0070】
本実施形態では、トリメチルアルミニウム((CH3)3Al)、トリメチルガリウム((CH3)3Ga)及びトリメチルインジウム((CH3)3In)をIII族構成元素の原料に用いた減圧MOCVD法を用いて、各層をエピタキシャル成長させる。
なお、Mgのドーピング原料にはビスシクロペンタジエニルマグネシウム((C5H5)2Mg)を用いる。また、Siのドーピング原料にはジシラン(Si2H6)を用いる。また、V族構成元素の原料としては、ホスフィン(PH3)又はアルシン(AsH3)を用いる。
なお、p型の電流拡散層(GaP層)25は、例えば、750°Cで成長させ、その他のエピタキシャル成長層は、例えば、730°Cで成長させる。
【0071】
具体的には、まず、半導体基板21の一面21a上に、Siをドープしたn型のGaAsからなる緩衝層22aを成膜する。緩衝層22aとしては、例えば、Siをドープしたn型のGaAsを用い、キャリア濃度を2×1018cm−3とし、層厚を0.2μmとする。
【0072】
次に、本実施形態では、緩衝層22a上に、Siドープしたn型の(Al0.5Ga0.5)0.5In0.5Pからなるエッチングストップ層22bを成膜する。
エッチングストップ層22bは、半導体基板をエッチング除去する際、クラッド層および発光層までがエッチングされてしまうことを防ぐための層であり、例えば、Siドープの(Al0.5Ga0.5)0.5In0.5Pからなり、層厚を0.5μmとする。
【0073】
次に、エッチングストップ層22b上に、Siドープしたn型のGaAsからなるコンタクト層22cを成膜する。
【0074】
次に、コンタクト層22c上に、Siをドープしたn型のAl0.5In0.5Pからなるクラッド層23aを成膜する。
なお、クラッド層23aは、光取り出し向上の為に表面を粗面化させる表面粗面化層と、クラッド層の2層構造としてもよい。この場合は、クラッド層23aを成膜する前に、表面粗面化層を成膜すればよく、表面粗面化層としては、Siをドープしたn型の(Al0.5Ga0.5)0.5In0.5Pを用いることができる。
【0075】
次に、クラッド層23a上に、アンドープの(Al0.1Ga0.9)0.5In0.5P/(Al0.7Ga0.3)0.5In0.5Pの20対の積層構造からなる発光層24を成膜する。
【0076】
次に、発光層24上に、Mgをドープしたp型のAl0.5In0.5Pからなるクラッド層23bを成膜する。
【0077】
次に、クラッド層23b上に、Mgドープしたp型のGaP層(電流拡散層)25を成膜する。
【0078】
次に、p型のGaP層25の半導体基板21と反対側の面25aを、表面から1μmの深さに至るまで鏡面研磨して、表面の粗さを、例えば、0.18nm以内とする。
【0079】
なお、クラッド層23a、23bと発光層24との間にガイド層を設けてもよい。
【0080】
<オーミックコンタクト電極の形成工程>
次に、図6に示すように、電流拡散層25上に複数のオーミックコンタクト電極7を形成する。
まず、オーミックコンタクト電極7の形成位置に対応する開口部を有するマスクを電流拡散層25上に形成し、蒸着法を用いて、電流拡散層25上に、オーミックコンタクト電極7を構成する導電性部材、例えばAuBe合金を複数形成する。このとき、直線状に並ぶ複数のオーミックコンタクト電極7の群において、隣接するオーミックコンタクト電極7間の距離は、例えば、5〜40μmとする。
なお、複数のオーミックコンタクト電極7は、後の工程で形成する表面電極12のパッド部12aに平面視して重ならない位置に、直線状に並ぶように形成する。
【0081】
オーミックコンタクト電極7の形状としては例えば、直径を5〜20μm程度とする円柱状部材とすることができるが、これに限らない。
また、オーミックコンタクト電極7の厚さは、0.05〜1.00μmとすることが好ましい。
【0082】
<透明膜の形成工程>
次に、図7に示すように、電流拡散層25全面に、複数のオーミックコンタクト電極7覆うように、透明膜8を構成するSiO2膜8aを成膜する。SiO2膜8aを成膜する方法としては例えば、CVD法がある。なお、透明膜8を構成する材料としては、SiO2、SiN、SiON、Al2O3、MgF2、TiO2、TiN、ZnO、ITO、IZOなどを用いることができる。
また、このときのSiO2膜8aの膜厚は、0.05〜1.00μmとすることが好ましい。
【0083】
次に、図8に示すように、フォトリソグラフィー技術及びエッチング技術を用いて、複数のオーミックコンタクト電極7の表面のうち、周縁部7a以外を露出するようにSiO2膜8aを除去する。これにより、電流拡散層25全面およびオーミックコンタクト電極7の周縁部7a上に透明膜8を形成する。
具体的に説明すると、まず、複数のオーミックコンタクト電極7覆うように、SiO2膜8aを成膜した後に、オーミックコンタクト電極7の表面のうち、周縁部7a以外が露出するようなフォトレジストパターンをSiO2膜8a上に形成し、フッ酸系のエッチャントを用いて、オーミックコンタクト電極7上の周縁部7a以外のSiO2膜8aを除去する。これにより、電流拡散層25及びオーミックコンタクト電極7の周縁部7aを覆うように透明膜8を形成することができる。
【0084】
なお、電流拡散層25と、オーミックコンタクト電極7の周縁部7aとを覆うように透明膜8を形成する方法は、上記方法に限らず、例えば、オーミックコンタクト電極7を形成した後、オーミックコンタクト電極7の表面のうち周縁部7a以外の表面にマスクを形成した上で、複数のオーミックコンタクト電極7と電流拡散層25を覆うように透明膜8を形成してもよい。
【0085】
このように、予めオーミックコンタクト電極7を形成した後に、オーミックコンタクト電極7の周縁部7a及び電流拡散層25を覆うように透明膜8を形成することにより、従来の課題であった、透明膜とオーミックコンタクト電極の間の間隙の発生を防ぐことができる。
【0086】
<反射層の形成工程>
次に、図9に示すように、オーミックコンタクト電極7及び透明膜8上に反射層6を形成する。
具体的には、例えば、蒸着法を用いて、APC若しくはAuからなる反射層6をオーミックコンタクト電極7及び透明膜8上に形成する。このとき、オーミックコンタクト電極7と透明膜8との間には隙間はなく、互いに密接した状態であるため、反射層6を、オーミックコンタクト電極7と透明膜8との間に侵入させることなく形成することができる。
【0087】
<バリア層の形成工程>
次に、図9に示すように、反射層6上にバリア層5を形成する。
具体的には、例えば、蒸着法を用いて、ニッケルからなるバリア層5を反射層6上に形成する。
【0088】
<接合層の形成工程>
次に、図9に示すように、バリア層5上に接合層4を形成する。
具体的には、例えば、蒸着法を用いて、Au系の共晶金属であるAuGeからなる接合層4をバリア層5上に形成する。
【0089】
<基板の接合工程>
次に、図10に示すように、エピタキシャル積層体30や反射層6等を形成した半導体基板21と、基板の製造工程で形成した金属基板1とを減圧装置内に搬入して、その接合層4の接合面4aと金属基板1の接合面1aとが対向して重ね合わされるように配置する。
次に、減圧装置内を3×10−5Paまで排気した後、重ね合わせた半導体基板21と金属基板1とを400℃に加熱した状態で、500kgの荷重を印加して接合層4の接合面4aと金属基板1の接合面1aとを接合して、接合構造体40を形成する。
【0090】
<半導体基板および緩衝層除去工程>
次に、図11に示すように、接合構造体40から、成長用基板(半導体基板)21及び緩衝層22aをアンモニア系エッチャントにより選択的に除去する。
このとき、本発明の金属基板は金属保護膜に覆われており、エッチャントに対する耐性が高いため、金属基板が品質劣化することが防止される。
【0091】
<エッチングストップ層除去工程>
次に、エッチングストップ層22bを塩酸系エッチャントにより選択的に除去する。これにより、発光層24を含む化合物半導体層10が形成される。
本発明の金属基板は金属保護膜に覆われており、エッチャントに対する耐性が高いため、金属基板が品質劣化することが防止される。
【0092】
<オーミック電極の形成工程>
次に、図12に示すように、化合物半導体層10のオーミックコンタクト電極7と反対側の面に、オーミック電極11を形成する。
具体的には例えば、蒸着法を用いて、厚さ0.1μmのAuGeNi合金を全面に成膜し、次に、フォトリソグラフィー技術及びエッチング技術を用いて、AuGeNi合金からなる膜をパターニングして、図3Bに示すような6本の線状部位11ba、11bb、11ca、11cb、11cc、11cdからなるオーミック電極11を形成する。
【0093】
上記オーミック電極形成工程のパターニングで用いたマスクを用いて、コンタクト層12cのうち、例えば、アンモニア水(NH4OH)/過酸化水素(H2O2)/純水(H20)混合液により、オーミック電極11の下以外の部分をエッチングで除去する。これにより、オーミック電極11とコンタクト層12cの平面形状は図12に示すように、実質的に同一の形状となる。
【0094】
オーミック電極11のそれぞれの線状部位は、後述する工程で形成する表面電極12のパッド部12aに平面視して重ならない位置であって、表面電極12の線状部12bに覆われる位置に形成する。
【0095】
<表面電極の形成工程>
次に、化合物半導体層10のオーミックコンタクト電極7と反対側の面に、オーミック電極11を覆うように、パッド部12a及び該パッド部に連結する線状部12bからなる表面電極12を形成する。
具体的には例えば、蒸着法を用いて、厚さ0.3μmのAu層、厚さ0.3μmのTi層、厚さ1μmのAu層を順に全面に成膜し、次に、フォトリソグラフィー技術及びエッチング技術を用いて、Au/Ti/Au膜をパターニングして、図3Aに示すようなパッド部12aと該パッド部に連結する2本の第1の直線部12baa、12babと、6本の第2の直線部12bba、12bbb、12bca、12bcb、12bcc、12bcdとからなる線状部12bとからなる表面電極12を形成する。
【0096】
第2の直線部のそれぞれは、オーミック電極11を構成する6本の線状部位のそれぞれを覆う位置に形成する。
【0097】
<個片化工程>
次に、ウェハ上の発光ダイオードを個片化する。
切断する領域の半導体層を除去した後に、以上の工程で形成された基板1を含む構造体をレーザで例えば、350μm間隔で切断し、発光ダイオード100を作製する。
【0098】
<基板側面の金属保護膜形成工程>
個片化された各発光ダイオード100では、基板1の側面には金属保護膜は形成されていないが、上面及び下面の金属保護膜の形成条件と同様な条件で、切断された基板1の側面に金属保護膜を形成してもよい。
【実施例】
【0099】
以下、本発明を実施例に基づいて具体的に説明する。しかし、本発明はこれらの実施例のみに限定されるものではない。
【0100】
(実施例1)
実施例1は、図1および図2に示した実施形態の実施例である。
実施例1の発光ダイオードは、まず、厚さ75μmのMo層(箔、板)、2枚の厚さ10μmのCu層(箔、板)で挟み、加熱圧着して厚さ95μmの金属板プレート(個片化の切断前)を形成した。この金属板プレートの上面と下面を研磨し、上面を光沢面とした後に、有機溶剤で洗浄し、汚れを除去した。次に、この金属板プレートの全面に、無電解めっき法により金属保護膜として2μmのNi層、1μmのAu層を順に形成して金属基板(個片化の切断前の金属基板)1を作製した。
【0101】
次に、Siをドープしたn型のGaAs単結晶からなるGaAs基板21上に、化合物半導体層を順次積層して発光波長620nmのエピタキシャルウェーハを作製した。
GaAs基板21は、(100)面から(0−1−1)方向に15°傾けた面を成長面とし、キャリア濃度を1×1018cm−3とした。化合物半導体層としては、SiをドープしたGaAsからなるn型の緩衝層22a、Siドープの(Al0.5Ga0.5)0.5In0.5Pからなるエッチングストップ層22b、SiドープのGaAsからなるn型のコンタクト層22c、Siドープの(Al0.5Ga0.5)0.5In0.5Pからなるn型の表面粗面化層23aa、SiドープのAl0.5In0.5Pからなるn型の上部クラッド層23ab、(Al0.1Ga0.9)0.5In0.5P/(Al0.5Ga0.5)0.5In0.5Pの20対からなる井戸層/バリア層の発光層24、Al0.5In0.5Pからなるp型の下部クラッド層23b、Mgドープしたp型GaPからなる電流拡散層25である。
【0102】
本実施例では、減圧有機金属化学気相堆積装置法(MOCVD装置)を用い、直径50mm、厚さ350μmのGaAs基板に化合物半導体層をエピタキシャル成長させて、エピタキシャルウェーハを形成した。エピタキシャル成長層を成長させる際、III族構成元素の原料としては、トリメチルアルミニウム((CH3)3Al)、トリメチルガリウム((CH3)3Ga)及びトリメチルインジウム((CH3)3In)を使用した。また、Mgのドーピング原料としては、ビスシクロペンタジエニルマグネシウム(bis−(C5H5)2Mg)を使用した。また、Siのドーピング原料としては、ジシラン(Si2H6)を使用した。また、V族構成元素の原料としては、ホスフィン(PH3)、アルシン(AsH3)を使用した。また、各層の成長温度としては、p型GaPからなる電流拡散層は、750℃で成長させた。その他の各層では700℃で成長させた。
【0103】
GaAsからなる緩衝層は、キャリア濃度を約1×1018cm−3、層厚を約0.5μmとした。エッチングストップ層は、キャリア濃度を1×1018cm−3、層厚を約0.5μmとした。コンタクト層は、キャリア濃度を約1×1018cm−3、層厚を約0.05μmとした。表面粗面化層は、キャリア濃度を1×1018cm−3、層厚を約3μmとした。上部クラッド層は、キャリア濃度を約2×1018cm−3、層厚を約0.5μmとした。井戸層は、アンドープで層厚が約5nmの(Al0.1Ga0.9)0.5In0.5Pとし、バリア層はアンドープで層厚が約5nmの(Al0.5Ga0.5)0.5In0.5Pとした。また、井戸層とバリア層とを交互に20対積層した。下部クラッド層は、キャリア濃度を約8×1017cm−3、層厚を約0.5μmとした。
GaPからなる電流拡散層は、キャリア濃度を約5×1018cm−3、層厚を約3μmとした。
【0104】
次に、電流拡散層25を表面から約2μmの深さに至る領域まで研磨して、鏡面加工した。この鏡面加工によって、電流拡散層の表面の粗さを0.18nmとした。
【0105】
次に、電流拡散層25上に、オーミックコンタクト電極7の形成位置に対応する開口部を有するマスクを電流拡散層25上に形成し、蒸着法を用いて、図3Cに示したパターンのAuBe合金からなるオーミックコンタクト電極7を形成した。オーミックコンタクト電極7を構成する円柱状の導電性部材は直径9μmとし、直線上に隣接する導電性部材の間隔10μmとした。
【0106】
次に、電流拡散層25全面に、CVD法を用いて、オーミックコンタクト電極7を覆うように、SiO2膜8aを形成した。このとき、SiO2膜8aは厚さ0.3μmとした。
【0107】
次に、オーミックコンタクト電極7の表面のうち、周縁部7a以外が露出するようなフォトレジストパターンをSiO2膜8a上に形成し、フッ酸系のエッチャントを用いて、オーミックコンタクト電極7上の周縁部7a以外のSiO2膜8aを除去した。これにより、電流拡散層25及びオーミックコンタクト電極7の周縁部7aを覆うように、SiO2からなる透明膜8を形成した。
【0108】
次に、透明膜8及びオーミックコンタクト電極7上に、蒸着法を用いて、厚さ0.7μmのAu膜からなる反射層6を形成した。
次に、反射層6上に、蒸着法を用いて、厚さ0.5μmのTi膜からなるバリア層5を形成した。
次に、バリア層5上に、蒸着法を用いて、厚さ1.0μmのAuGeからなる接合層4を形成した。
【0109】
次に、GaAs基板21上に化合物半導体層及び反射層6等を形成した構造体(図9参照)と、金属基板1とを対向して重ね合わせるように配置して減圧装置内に搬入し、400℃で加熱した状態で、500kg重の荷重でそれらを接合して接合構造体を形成した。
【0110】
次に、接合構造体から、化合物半導体層の成長基板であるGaAs基板21と緩衝層22aとをアンモニア系エッチャントにより選択的に除去し、さらに、エッチングストップ層22bを塩酸系エッチャントにより選択的に除去した。
【0111】
次に、化合物半導体層10のオーミックコンタクト電極7と反対側の面に、蒸着法を用いて、図3Bに示したパターンの厚さ0.1μmのAuGeNi合金からなるオーミック電極11を形成した。
6本の線状部位の幅はいずれも4μmとし、線状部位11ba、11bbの長さは270μm、線状部位11ca、11cb、11cc、11cdの長さは85μmとした。
【0112】
次に、化合物半導体層10のオーミックコンタクト電極7と反対側の面にオーミック電極11を覆うように、蒸着法を用いて、図3Aに示したパターンの厚さ1.6μmのパッド部12a及び線状部12bからなる表面電極12を形成した。
パッド部12aは直径100μmとし、線状部12bの幅は第1の直線部及び第2の直線部共に8μmとした。
また、第1の直線部12baa、12babの長さは43μmとし、第2の直線部12bba、12bbbの長さは270μmとし、第2の直線部12bca、12bcb、12bcc、12bcdの長さは100μmとした。
【0113】
次に、チップに分離する為の切断予定部分を化合物半導体層10から接合層4まで除去し、金属基板1をレーザーダイシングにより、350μmピッチで正方形に切断した。
次に、上述のように作製した実施例1の発光ダイオードチップをマウント基板上に実装して発光ダイオードランプを組み立てた。
【0114】
次に、この発光ダイオード(発光ダイオードランプ)の特性を評価した。
図13(a)は、本実施例の発光ダイオードの光学顕微鏡像である。なお、また、図13(b)は、図13(a)に示す発光ダイオードにおけるオーミックコンタクト電極7と透明膜25の拡大像である。なお、図13(a)は図15(a)と同様に、オーミック電極11形成後であって、表面電極形成前の段階で観察した光学顕微鏡像である。
従来の発光ダイオードの光学顕微鏡像(図15参照)では、オーミックコンタクト電極と透明膜の隙間において、電流拡散層と反射層とが接触し、合金層が形成されていることがわかる。一方、本実施例の発光ダイオードの光学顕微鏡(図13参照)では、電流拡散層と反射層との合金層が形成されていないことがわかる。したがって、本実施例の発光ダイオードは、従来の発光ダイオードと比較し、反射率が向上する。
具体的には、n型及びp型オーミック電極間に電流を流したところ、ドミナント波長620nmとする赤色光が出射された。順方向に20ミリアンペア(mA)の電流を通流した際の順方向電圧(VF)は1.91Vであった。順方向電流を20mAとした際の発光出力は8.2mWであり、従来よりも約5%向上した。
このランプ20個を、温度60℃、湿度90%の高温高湿環境下で、通電試験(30mA通電)を1000時間実施した。その発光出力の残存率の平均は98%、VFの変動はほとんどなく99%であった。
【符号の説明】
【0115】
1 基板
1a、1b 金属層
1ba 上面
1bb 下面
2 金属保護膜
4 接合層
5 バリア層
6 反射層
7 オーミックコンタクト電極
7a 周縁部
7b 第1の主面
7c 第2の主面
7d 側面
7aa、7ab、7ba、7bb、7bc、7bd、7ca、7cb ドット状の導電性部材の群
8 透明膜
10 化合物半導体層
11 オーミック電極
11ba、11bb、11ca、11cb、11cc、11cd 線状部位
12 表面電極
12a パッド部
12b 線状部
12baa、12bab 第1の直線部
12bba、12bbb、12bca、12bcb、12bcc、12bcd 第2の直線部
21 半導体基板(成長用基板)
42 表面電極
42aa、42ab パッド部
42b 線状部
42baa、42bab、42bac、42bad 第1の直線部
42bca、42bcb、42bcc、42bcd、42bba、42bbb、42bbc、42bbd、42bbe、42bbf、42bbg、42bbh 第2の直線部
100 発光ダイオード
M 合金層
【技術分野】
【0001】
本発明は、発光ダイオードおよびその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、赤色、赤外の光を発する高輝度の発光ダイオード(英略称:LED)としては例えば、砒化アルミニウム・ガリウム(組成式AlXGa1−XAs;0≦X≦1)からなる発光層や砒化インジウム・ガリウム(組成式InXGa1−XAs;0≦X≦1)からなる発光層を備えた化合物半導体発光ダイオードが知られている。一方、赤色、橙色、黄色或いは黄緑色の可視光を発する高輝度の発光ダイオードとしては例えば、燐化アルミニウム・ガリウム・インジウム(組成式(AlXGa1−X)YIn1−YP;0≦X≦1,0<Y≦1)からなる発光層を備えた化合物半導体発光ダイオードが知られている。
【0003】
このような化合物半導体発光ダイオードは、例えば、上述したような発光層を備えた化合物半導体層を、反射率の高い金属層(反射層)を介してSi等の基板に貼り付け、その後、成長用に用いた成長用基板(例えば、GaAs基板)を除去することにより製造する方法が知られている。このとき反射層として用いられる金属としては、Au、Al、Ag等がある。
しかし、このような、反射率の高い金属を用いた反射層は、燐化アルミニウム・ガリウム・インジウム系の化合物半導体層とオーミック接合ができない。
また、化合物半導体層と反射層が直接接触すると、化合物半導体層と反射層が反応して合金層が形成され、これにより反射率が低下する問題が生じるおそれがある。
【0004】
そこで、これらの問題を解決すべく、化合物半導体層と反射層との間に透明膜を挟むとともに、この透明膜を貫通し化合物半導体層と反射層とに接するようにオーミックコンタクト電極を配置する方法がある(特許文献1、2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2008−282851号公報
【特許文献2】特開2010−067891号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1、2では、化合物半導体層上に透明膜を成膜した後、マスクを用いたウェットエッチングによって一部の透明膜をエッチングして、透明膜を貫通する孔を形成し、この孔内にオーミックコンタクト電極の材料を蒸着させることにより、透明膜に貫設されたオーミックコンタクト電極を形成していた。
しかしながら、このような製造方法では、透明膜を貫通する孔を形成する際、まず、化合物半導体層上に透明膜を成膜した後、オーミックコンタクト電極の形成位置に対応する開口部を有するマスクを形成する。そして、このマスクを用いてウェットエッチングを行うことにより、開口部下部の透明膜を除去し、透明膜を貫通する孔を形成する。しかし、ウェットエッチングにおいて、サイドエッチングにより、開口部下部の透明膜だけでなく、その周辺の透明膜も除去されてしまい、実際に形成される孔は、マスクの開口部よりも大きくなってしまう。このように、上記の製造方法では、オーミックコンタクト電極のサイズとなるような孔を精度良く形成することは困難であった。そして、このマスクを用いてオーミックコンタクト電極の材料の蒸着を行うと、オーミックコンタクト電極は、マスクの開口部とほぼ同じ大きさで形成されるため、透明膜とオーミックコンタクト電極との間に隙間が生じることがあった。
以下、上記問題について、図を参照しながら具体的に説明する。
【0007】
図14に、従来の方法により製造した、発光ダイオード200のオーミックコンタクト電極207及びその近傍の拡大断面模式図を示す。
従来の方法により、オーミックコンタクト電極207を形成した場合、図14に示すように、透明膜208との間に隙間が生じるおそれがある。そして、このように隙間が生じると、オーミックコンタクト電極207と透明膜208上に反射層206を形成する際に、この隙間内に反射層206が入り込み、電流拡散層225と直接接触してしまう。直接接触した箇所では、電流拡散層225と反射層206とが反応して合金層M´´が形成され、この合金層M´´により、発光層206で発光した光が吸収されてしまうため、反射層206の反射率が低下する。
【0008】
図15(a)及び(b)は、従来の製造方法により得られた発光ダイオード200の光学顕微鏡像である。図15(a)において、ドット状に濃く見える部分は、オーミックコンタクト電極に対応している。図15(b)は、そのうちの1個のオーミックコンタクト電極(直径9μm)の近傍の拡大像である。なお、図15(a)は、オーミック電極211形成後であって、表面電極(不図示)形成前の段階で観察した光学顕微鏡像である。
図15(b)の像において、濃淡が濃く映し出されている箇所は、照射光が吸収され、反射率が低下している箇所である。オーミックコンタクト電極の上部、つまりオーミックコンタクト電極と電流拡散層が接触している箇所では、オーミックコンタクト電極と電流拡散層とが反応して合金層M´が形成されているため、画像の濃淡が濃く映し出されている。また、オーミックコンタクト電極と透明膜との間の部分でも画像の濃淡が濃く映し出されており、光が吸収され反射率が低下していることが分かる。これは、オーミックコンタクト電極と透明膜との間に反射層が入り込み、電流拡散層と反射層とが接触し、合金層M´´が形成されたためと考えられる。
【0009】
本発明は、上記事情を鑑みてなされたものであり、電流拡散層と反射層とが直接接触することを防ぎ、合金層の形成を阻止可能とする構成を有することにより、反射率の低下を防ぎ、高輝度発光が可能となる発光ダイオードおよびその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、上記目的を達成するために鋭意研究を重ねた結果、以下に示す本発明を完成させるに至った。
【0011】
[1] 基板上に順に、反射層と、複数のオーミックコンタクト電極が離間して埋設された透明膜と、電流拡散層及び発光層を順に含む化合物半導体層とを具備する発光ダイオードの製造方法であって、
成長用基板上に、発光層及び電流拡散層を順に含む化合物半導体層を形成する工程と、
前記電流拡散層上に、離間して配置する複数のオーミックコンタクト電極を形成する工程と、
前記電流拡散層上に、前記複数のオーミックコンタクト電極をその表面のうち周縁部以外を露出するように透明膜を形成する工程と、
前記透明膜上及び前記オーミックコンタクト電極の露出された部分上に反射層を形成する工程と、
前記反射層上に接合層を形成する工程と、
前記接合層上に基板を接合する工程と、
前記成長用基板を除去する工程と、を順に有することを特徴とする発光ダイオードの製造方法。
[2] 前記透明膜を形成する工程において、前記複数のオーミックコンタクト電極と前記電流拡散層を覆うように前記透明膜を成膜した後、前記オーミックコンタクト電極の表面のうち前記周縁部以外の表面上の前記透明膜を除去することを特徴とする上記[1]に記載の発光ダイオードの製造方法。
[3] 前記透明膜を形成する工程において、前記オーミックコンタクト電極の表面のうち前記周縁部以外の表面にマスクを形成して、前記複数のオーミックコンタクト電極と前記電流拡散層を覆うように前記透明膜を成膜した後に、前記マスクを除去することを特徴とする上記[1]に記載の発光ダイオードの製造方法。
【0012】
[4] 基板上に順に、反射層と、複数のオーミックコンタクト電極が離間して埋設された透明膜と、電流拡散層及び発光層を順に含む化合物半導体層とを具備する発光ダイオードであって、
前記オーミックコンタクト電極の前記基板側の面の周縁部は前記透明膜に覆われ、
前記オーミックコンタクト電極は前記反射層及び前記電流拡散層に接触している、ことを特徴とする発光ダイオード。
[5] 前記周縁部は、前記オーミックコンタクト電極の周端部から1.5μm以内の範囲内であることを特徴とする上記[4]に記載の発光ダイオード。
[6] 前記反射層は、Au、Ag、Cu、Alのいずれか、またはこれらの元素から選ばれる1種または2種以上を含む合金のいずれかからなることを特徴とする上記[4]または[5]に記載の発光ダイオード。
[7] 前記電流拡散層は、GaP、{AlxGa(1−x)}(1−y)InyP、{AlxGa(1−x)}(1−y)InyAsのいずれかからなることを特徴とする上記[4]〜[6]の何れか一項に記載の発光ダイオード。
[8] 前記透明膜は、SiO2、SiN、SiON、Al2O3、MgF2、TiO2、TiN、ZnO、ITO、IZOのいずれかからなることを特徴とする上記[4]〜[7]の何れか一項に記載の発光ダイオード。
[9] 前記透明膜の膜厚が、0.05〜1.00μmであることを特徴とする上記[4]〜[8]の何れか一項に記載の発光ダイオード。
【発明の効果】
【0013】
上記の構成によれば、オーミックコンタクト電極は、透明電極膜に埋設されるとともに、その基板側の周縁部も透明電極膜に覆われている構成としたので、電流拡散層と反射層とが直接接触することを防ぎ、合金層の形成を阻止することができる。そして、その結果、反射率の低下を防ぎ、高輝度発光が可能となる発光ダイオードを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の一実施形態である発光ダイオードの断面摸式図である。
【図2】図1中に示すオーミックコンタクト電極7近傍の拡大断面模式図である。
【図3A】本発明の一実施形態である発光ダイオードの表面電極の平面摸式図である。
【図3B】本発明の一実施形態である発光ダイオードのオーミック電極の平面摸式図である。
【図3C】本発明の一実施形態である発光ダイオードのオーミックコンタクト電極の平面摸式図である。
【図3D】本発明の第一実施形態である発光ダイオードの表面電極、オーミック電極、オーミックコンタクト電極を重ねて描いた平面摸式図である。
【図4】本発明の基板の製造工程を説明するための金属基板の一部の断面模式図であって、(a)第1の工程、(b)第2の工程、(c)第3の工程を示すものである。
【図5】本発明の一実施形態である発光ダイオードの製造方法を説明するための断面摸式図である。
【図6】本発明の一実施形態である発光ダイオードの製造方法を説明するための断面摸式図である。
【図7】本発明の一実施形態である発光ダイオードの製造方法を説明するための断面摸式図である。
【図8】本発明の一実施形態である発光ダイオードの製造方法を説明するための断面摸式図である。
【図9】本発明の一実施形態である発光ダイオードの製造方法を説明するための断面摸式図である。
【図10】本発明の一実施形態である発光ダイオードの製造方法を説明するための断面摸式図である。
【図11】本発明の一実施形態である発光ダイオードの製造方法を説明するための断面摸式図である。
【図12】本発明の一実施形態である発光ダイオードの製造方法を説明するための断面摸式図である。
【図13】本実施例の発光ダイオードの光学顕微鏡像であって、(a)は平面像、(b)はオーミックコンタクト電極の近傍の拡大平面像である。
【図14】従来の発光ダイオードのオーミックコンタクト電極およびその近傍の拡大断面模式図である。
【図15】従来の発光ダイオードの発光ダイオードの光学顕微鏡像であって、(a)は平面像、(b)はオーミックコンタクト電極の近傍の拡大平面像である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明を適用した実施形態の発光ダイオードおよびその製造方法について、図を用いてその構成を説明する。なお、以下の説明で用いる図面は、特徴をわかりやすくするために便宜上特徴となる部分を拡大して示している場合があり、各構成要素の寸法比率などは実際と同じであるとは限らない。また、以下の説明において例示される材料、寸法等は一例であって、本発明はそれらに限定されるものではなく、その要旨を変更しない範囲で適宜変更して実施することが可能である。
【0016】
図1は、本発明を適用した一実施形態の発光ダイオードの一例を示す断面模式図である。また、図2は、図1中のオーミックコンタクト電極7近傍の拡大断面模式図である。
本実施形態の発光ダイオード100は、基板1上に順に、反射層6と、複数のオーミックコンタクト電極7が離間して埋設された透明膜8と、電流拡散層25及び発光層24を順に含む化合物半導体層10とを具備する発光ダイオードであって、オーミックコンタクト電極7の基板1側の面の周縁部は透明膜8に覆われ、オーミックコンタクト電極7は反射層6及び電流拡散層25に接触している、ことを特徴とする。
【0017】
図1で示す例では、オーミックコンタクト電極7は複数のドット状の導電性部材からなり、その導電性部材間には透明膜8が充填されている。また、反射層6の基板1側には接合層4が設けられており、該接合層4と反射層6の間にはバリア層5が設けられている。
また、本実施形態においては、化合物半導体層10の基板1の反対側10aには順に、オーミック電極11と表面電極12とが設けられている。
【0018】
<オーミックコンタクト電極>
オーミックコンタクト電極7は平面視してドット状の複数の導電性部材からなり、後述する透明膜内に埋め込まれている。
なお、オーミックコンタクト電極7と、後述するオーミック電極11とは共にオーミック性の電極であるが、両者を区別するために、本実施形態においては両電極それぞれに別の名称を付した。
【0019】
本実施形態のオーミックコンタクト電極7の基板1側の面の周縁部7aは、図2に示すように、透明膜8に覆われている。
具体的に説明すると、図2に示すように、オーミックコンタクト電極7の表面のうち、化合物半導体層10側である第1の主面7bは電流拡散層25に接しており、側面7dは透明膜8に接している。そして、基板1側である第2の主面7cのうち、端部を含む周縁部7aは透明膜8に覆われており、第2の主面7cのうち透明膜8に覆われていない面は後述する反射層6に接している。つまり、オーミックコンタクト電極7の表面のうち、第1の主面7bは電流拡散層25に接しており、第2の主面7cのうち、周縁部7aは透明膜8に覆われ、それ以外の第2の主面7cは反射層6と接している。
【0020】
なお、本実施形態のオーミックコンタクト電極7の周縁部7aは、オーミックコンタクト電極7を反射層6との十分な密着性を確保するという観点から、オーミックコンタクト電極7の周端部から5.0μm以内、望ましくは1.5μm以内の範囲内とすることが好ましい。
【0021】
また、本実施形態におけるオーミックコンタクト電極7を構成するドット状の導電性部材は、図3Dに示すように、平面視して表面電極12のパッド部12aに重ならない位置であって、オーミック電極11の線状部位間の中間位置上に、又は、オーミック電極11の両端の線状部位11ba、11bbの外側の、その線状部位11ba、11bbからの距離d2が線状部位間の中間位置までの距離d1と同程度の位置に、直線状に並ぶように配置する。オーミックコンタクト電極7の形状は、円柱状、楕円柱状、ドーナツ状、線状等でもよい。
【0022】
オーミック電極11の線状部位間の中間位置までの距離d1、d3と、オーミック電極11の両端の線状部位11ba、11bbの外側の、その線状部位11ba、11bbからの距離d2とは、電流が均一に拡散するように等しい距離に構成するのが好ましい。
【0023】
オーミックコンタクト電極7を構成するドット状の導電性部材は例えば、直径を5〜20μm程度とする円柱状部材とする。
また、直線状に並ぶドット状の導電性部材の群において、隣接する導電性部材間の距離は例えば、5〜40μm程度とする。
【0024】
オーミックコンタクト電極7が平面視して、表面電極12のパッド部12aに重ならない位置に配置するのは、オーミックコンタクト電極7がパッド部12aに重なる位置に配置するとパッド部の直下で発光した光がパッド部で吸収される割合が高くなってしまい、光取り出し効率が低下してしまうからであり、それを回避するためである。
【0025】
オーミックコンタクト電極の材料としては、AuBe、AuZnなどを用いることができる。
【0026】
<透明膜>
透明膜8は、複数のオーミックコンタクト電極7を構成するドット状の導電性部材間に充填するように形成されている。
透明膜8の材料としては、SiO2、SiN、SiON、Al2O3、MgF2、TiO2、TiN、ZnO、ITO、IZOなどを用いることができる。
【0027】
また、本実施形態の透明膜8は、上述したように、オーミックコンタクト電極7の周縁部7aを覆うように形成されている。透明膜8は、複数のオーミックコンタクト電極7を予め電流拡散層25に形成した後に、この複数のオーミックコンタクト電極7の周縁部7aと電流拡散層25を覆うように形成されているため、オーミックコンタクト電極7と透明膜8の間に隙間が生じることなく、互いに密接した構造とすることができる。また、オーミックコンタクト電極7と透明膜8を、互いの間に隙間が生じないようすることにより、電流拡散層25と反射層6とが直接接することを防ぐことができ、従来のような合金層の形成を阻止することができる。
なお、本実施形態の透明膜8の膜厚は、0.05〜1.00μmであることが好ましい。0.05μm未満であると、成膜不足となるおそれがあり、その場合、オーミックコンタクト電極7と透明膜8との間に隙間が生じるおそれがある。一方、生産性の観点から、1.00μm以下とすることが好ましい。
【0028】
<反射層>
反射層6は、発光層24からの光を反射層6で正面方向fへ反射させて、正面方向fでの光取り出し効率を向上させることができ、これにより、発光ダイオードをより高輝度化できる。
反射層6の材料としては、AgPdCu合金(APC)、金、銅、銀、アルミニウムなどの金属、およびそれらの元素から選ばれる1種または2種以上を含む合金等を用いることができる。これらの材料は光反射率が高く、光反射率を90%以上とすることができる。
【0029】
本実施形態の反射層6は、図2に示すように、電流拡散層25と直接接触せずに、透明膜8とオーミックコンタクト電極7に接している。つまり、従来であれば、透明膜とオーミックコンタクト電極との間隙に反射層が入り込み、電流拡散層と接触することにより、合金層が形成されるおそれがあったが、本実施形態では、反射層6と電流拡散層25が直接接触することを防ぐ構造であるため、従来のような合金層の形成を防ぐことができる。
【0030】
<化合物半導体層>
化合物半導体層10は、複数のエピタキシャル成長させた層を積層してなる、発光層24を含む化合物半導体の積層構造体である。
化合物半導体層10としては、例えば、発光効率が高く、基板接合技術が確立されているAlGaInP層またはAlGaInAs層などを利用できる。AlGaInP層は、一般式(AlXGa1−X)YIn1−YP(0≦X≦1,0<Y≦1)で表される材料からなる層である。この組成は、発光ダイオードの発光波長に応じて、決定される。赤および赤外発光の発光ダイオードを作製する際に用いられるAlGaInAs層の場合も同様に、構成材料の組成は発光ダイオードの発光波長に応じて決定される。
化合物半導体層10は、n型またはp型の何れか一の伝導型の化合物半導体であり、内部でpn接合が形成される。AlGaInAsにはAlGaAs、GaAs、GaInAs等も含まれる。
なお、化合物半導体層10の表面の極性はp型、n型のどちらでもよい。
また、図1に示すように、化合物半導体層10は、例えば、コンタクト層22cと、クラッド層23aと発光層24と、クラッド層23bと、電流拡散層25とからなる。なお、クラッド層23aは、光取り出し向上の為に表面を粗面化させる表面粗面化層と、クラッド層の2層構造としてもよい。
【0031】
コンタクト層22cは、オーミック(Ohmic)電極の接触抵抗を下げるための層であり、例えば、Siドープしたn型のGaAsからなり、キャリア濃度を1×1018cm−3とし、層厚を0.05μmとする。
【0032】
発光層24は、例えば、アンドープの(Al0.1Ga0.9)0.5In0.5P/(Al0.5Ga0.5)0.5In0.5Pの20対の積層構造からなり、層厚を0.2μmとする。
発光層24は、ダブルへテロ構造(Double Hetero:DH)、単一量子井戸構造(Single Quantum Well:SQW)または多重量子井戸構造(Multi Quantum Well:MQW)などの構造を有する。ここで、ダブルへテロ構造は、放射再結合を担うキャリアを閉じ込められる構造である。また、量子井戸構造は、井戸層と井戸層を挟む2つの障壁層とを有する構造であって、SQWは井戸層が1つのものであり、MQWは井戸層が2以上のものである。化合物半導体層10の形成方法としては、MOCVD法などを用いることができる。
発光層24から単色性に優れる発光を得るためには、発光層24としてMQW構造を用いることが好ましい。
【0033】
クラッド層23bは、例えば、Mgをドープしたp型のAl0.5In0.5Pからなり、キャリア濃度を8×1017cm−3とし、層厚を0.5μmとする。
【0034】
電流拡散層25は、例えば、Mgをドープしたp型GaP層であり、キャリア濃度を5×1018cm−3とし、層厚を2μmとする。なお、電流拡散層25として、{AlxGa(1−x)}(1−y)InyP、{AlxGa(1−x)}(1−y)InyAsのいずれかを用いても構わない。
【0035】
化合物半導体層10の構成は、上記に記載した構造に限られるものではなく、例えば、素子駆動電流の通流する領域を制限するための電流阻止層または電流狭窄層などを有していてもよい。
【0036】
(電極構造)
図3Aは、本実施形態の表面電極の一例を示す平面摸式図である。図3Bは、本実施形態のオーミック電極の一例を示す平面摸式図である。図3Cは、本実施形態のオーミックコンタクト電極の一例を示す平面摸式図である。図3Dは、表面電極、オーミック電極、オーミックコンタクト電極を重ねて描いた平面摸式図である。
【0037】
<表面電極>
表面電極12は、パッド部12aとパッド部12に連結する線状部12bとからなる。
本実施形態では、パッド部12aは平面視して円形状であるが、円形状以外の他の形状でもよい。
【0038】
線状部12bは、例えば、円形状のパッド部12aの中心を通る直線上において直径を挟んだ周端(周端部)12aaa、12aabから互いに逆方向に延在する2本の第1の直線部12baa、12babと、第1の直線部12baa、12babに対して直交する方向に延在する6本の第2の直線部12bba、12bbb、12bca、12bcb、12bcc、12bcdとからなる。
【0039】
本実施形態の線状部12bは、パッド部と該パッド部に連結する線状部とからなる構成であるが、このような構成に限らず、例えば、パッド部と、該パッド部から多方向へ放射状に延びた複数の線状部から構成されていてもよい。
また、本実施形態の線状部12bは、2本の第1の直線部と、6本の第2の直線部とからなる構成であるが、この本数には限らない。
【0040】
パッド部12aのサイズは、円形状の場合、直径を例えば、50〜150μm程度とする。
また、線状部12bの幅はオーミック電極11の線状部位を覆うためにその幅より幅広となるように、例えば、2〜20μm程度とする。第1の直線部及び第2の直線部のすべてについて同じ幅にする必要はないが、均一な光取り出しの観点から、対称な位置に配置する直線部の幅は同じであるのが好ましい。
【0041】
表面電極の材料としては、Au/Ti/Au、(Au/Pt/Au、Au/Cr/Au、Au/Ta/Au、Au/W/Au、Au/Mo/Au)などを用いることができる。
【0042】
<オーミック電極>
図3Bに示すように、本実施形態のオーミック電極11は、6本の線状部位11ba、11bb、11ca、11cb、11cc、11cdからなる。
本実施形態のオーミック電極11は6本の線状部位からなる構成であるが、この本数には限らない。オーミック電極11は表面電極の線状部12b下に不連続に配列されている形状、たとえばドット形状電極の配列としてもよい。
【0043】
また、オーミック電極11のそれぞれの線状部位は、平面視して表面電極12のパッド部12aに重ならない位置であって、表面電極12の線状部12bの6本の第2の直線部12bba、12bbb、12bca、12bcb、12bcc、12bcdのそれぞれに覆われる位置に配置する。
すなわち、長い2本の線状部位11ba、11bbはそれぞれ、第2の直線部12bba、12bbbのそれぞれの直下に配置しており、短い4本の線状部位11ca、11cb、11cc、11cdはそれぞれ、第2の直線部12bca、12bcb、12bcc、12bcdのそれぞれの直下に配置する。
【0044】
このように、オーミック電極11が平面視して、表面電極12のパッド部12aに重ならない位置に配置するのは、オーミック電極11がパッド部12aに重なる位置に配置するとパッド部の直下で発光した光がパッド部で吸収される割合が高くなって、光取り出し効率が低下してしまうからであり、それを回避するためである。
【0045】
オーミック電極11を構成する線状部位の幅は、表面電極12の線状部で覆われるようにその幅より幅狭となるよう、例えば、1〜10μm程度とする。幅はすべての線状部位について同じにする必要はないが、均一な光取り出しの観点から、対称な位置に配置する線状部位の幅は同じであるのが好ましい。
【0046】
オーミック電極の材料としては、AuGeNi、AuGe、AuNiSi、AuSiなどを用いることができる。
【0047】
<バリア層>
バリア層5は、後述する基板1に含まれる金属が拡散して、反射層6と反応するのを抑制することができる。
バリア層5の材料としては、ニッケル、チタン、白金、クロム、タンタル、タングステン、モリブデン等を用いることができる。
バリア層は、2種類以上の金属の組み合わせ、たとえば白金とチタンの組み合わせなどにより、バリアの性能を向上させることができる。
なお、バリア層を設けなくても、接合層にそれらの材料を添加することにより接合層にバリア層と同様な機能を持たせることもできる。
【0048】
<接合層>
接合層4は、発光層24を含む化合物半導体層10等を基板1に接合するための層である。
接合層4の材料としては、化学的に安定で、融点の低いAu系の共晶金属などが用いられる。Au系の共晶金属としては、例えば、AuGe、AuSn、AuSi、AuInなどの合金の共晶組成を挙げることができる。
【0049】
<基板>
基板1は、図1に示すように、接合層4の化合物半導体層10と反対側面に接合されている。基板1としては、金属材料やシリコン、ゲルマニウム等を用いることができるが、コスト面、機械強度、放熱性の観点から、金属材料を用いた金属基板を用いることが好ましい。なお、図1に示す基板1は、金属基板を採用した場合を示す。
以下、本実施形態の基板1を金属基板とした一例を、図を参照しながら説明する。
【0050】
図4(a)〜図4(c)は、金属基板の製造工程を説明するための金属基板の一部の断面模式図である。
本実施形態の基板1(金属基板)は3層の金属層1a,1b,1aと、その上面1ba及び下面1bbを覆う、エッチャントに対して耐性を有する金属保護膜2とからなる。さらに、金属基板1の側面を金属保護膜2で覆うのが好ましい。
【0051】
金属基板1と化合物半導体層10との接合は、金属基板1の接合面(上面)1baに、金属保護膜2を介して接合層4が接合されることによって行われている。
【0052】
金属保護膜2の材料としては、密着性に優れるクロム、ニッケル、化学的に安定な白金、又は金の少なくともいずれか一つを含む金属からなるものであるのが好ましい。
金属保護膜2は密着性がよいニッケルと耐薬品に優れる金を組み合わせた層からなるのが最適である。
金属保護膜2の厚さは特に制限はないが、エッチャントに対する耐性とコストのバランスから、0.2〜5μm、好ましくは、0.5〜3μmが適正な範囲である。高価な金の場合は、厚さは2μm以下が望ましい。
【0053】
金属基板1の厚さは、50μm以上150μm以下とすることが好ましい。
金属基板1の厚さが150μmより厚い場合には、発光ダイオードの製造コストが上昇して好ましくない。また、金属基板1の厚さが50μmより薄い場合には、ハンドリング時に割れ、かけ、反りなどが容易に生じて、製造歩留まりを低下させるおそれが発生する。
【0054】
複数の金属層の構成としては、2種類の金属層すなわち、第1の金属層と第2の金属層とが交互に積層されてなるものが好ましい。
金属基板1枚あたりの第1の金属層と第2の金属層の層数は、合わせて3〜9層とすることが好ましく、3〜5層とすることがより好ましい。
第1の金属層と第2の金属層の層数を合わせて2層とした場合には、厚さ方向での熱膨張が不均衡となり、金属基板1の反りが発生する。逆に、第1の金属層と第2の金属層の層数を合わせて9層より多くした場合には、第1の金属層と第2の金属層の層厚をそれぞれ薄くする必要が生じる。第1の金属層または第2の金属層からなる単層基板の層厚を薄くして作製することは困難であり、各層の層厚を不均一にして、発光ダイオードの特性をばらつかせるおそれが発生する。さらに、単層基板の製造が困難であることから、発光ダイオードの製造コストを悪化させるおそれも生じる。
【0055】
第1の金属層と第2の金属層の層数は、合わせて奇数とすることがより好ましい(この場合、最外側の層が第1の金属層)。
特に3層として、一層の金属層を挟む二層の金属層は同じ金属材料からなるものとすることが好ましい。この場合、挟む二層の金属層を同じエッチャントを用いて湿式エッチングで切断予定ラインに相当する部分を除去することができる。
【0056】
金属基板1の表面は、上述の通り金属保護膜2があるが、この金属保護膜2が金属基板1側からNi膜、Au膜の順に形成されていると、接合層としてAu−Siを用いる場合に好ましい。また、金属基板1の表面にダイボンド用の共晶金属を形成しても良い。ダイボンドの接合を電気的接触が安定な共晶接合とすることができる。
化合物半導体層10に金属基板1を接合する方法は、上記の共晶接合の他、拡散接合、接着剤、常温接合などの公知の技術を適用してもよい。
【0057】
<第1の金属層>
第1の金属層は、第2の金属層として化合物半導体層より熱膨張係数が小さい材料を用いる場合には、少なくとも化合物半導体層より熱膨張係数が大きい材料からなることが好ましい。この構成とすることにより、金属基板全体としての熱膨張係数が化合物半導体層の熱膨張係数に近いものとなるため、化合物半導体層と金属基板とを接合する際の金属基板の反りや割れを抑制することができ、発光ダイオードの製造歩留まりを向上させることができるからである。従って、第2の金属層として化合物半導体層より熱膨張係数が大きい材料を用いる場合には、第1の金属層は少なくとも化合物半導体層より熱膨張係数が小さい材料からなることが好ましい。
【0058】
第1の金属層としては、例えば、銀(熱膨張係数=18.9ppm/K)、銅(熱膨張係数=16.5ppm/K)、金(熱膨張係数=14.2ppm/K)、アルミニウム(熱膨張係数=23.1ppm/K)、ニッケル(熱膨張係数=13.4ppm/K)およびこれらの合金などを用いることが好ましい。
第1の金属層の層厚は、5μm以上50μm以下とすることが好ましく、5μm以上20μm以下とすることがより好ましい。
なお、第1の金属層の層厚と第2の金属層の層厚とは異なっていてもよい。さらに、金属基板1が複数の第1の金属層と第2の金属層により形成される場合に、各層の層厚はそれぞれ異なっていてもよい。
【0059】
第1の金属層の合計の厚さは、金属基板1の厚さの5%以上50%以下であることが好ましく、10%以上30%以下であることがより好ましく、15%以上25%以下であることが更に好ましい。第1の金属層の合計の厚さが金属基板1の厚さの5%未満の場合は、熱膨張係数が高い第1の金属層の効果が小さくなり、ヒートシンク機能が低下する。逆に、第1の金属層の厚さが金属基板1の厚さの50%を超える場合は、金属基板1を化合物半導体層10と接続させたときの熱による金属基板1の割れを抑制できない。つまり、第1の金属層と化合物半導体層10との間の大きな熱膨張係数の差により、熱による金属基板1の割れを発生させて、接合不良発生を招く場合が生じる。
特に、第1の金属層として銅を用いた場合には、銅の合計の厚さが、金属基板1の厚さの5%以上40%以下であることが好ましく、10%以上30%以下であることがより好ましく、15%以上25%以下であることが更に好ましい。
第1の金属層の層厚は、5μm以上30μm以下とすることが好ましく、5μm以上20μm以下とすることがより好ましい。
【0060】
<第2の金属層>
第2の金属層は、第1の金属層として化合物半導体層より熱膨張係数が大きい材料を用いる場合には、その熱膨張係数が化合物半導体層の熱膨張係数より小さい材料からなることが好ましい。この構成とすることにより、金属基板全体としての熱膨張係数が化合物半導体層の熱膨張係数に近いものとなるため、化合物半導体層と金属基板とを接合する際の金属基板の反りや割れを抑制することができ、発光ダイオードの製造歩留まりを向上させることができるからである。従って、第1の金属層として化合物半導体層より熱膨張係数が小さい材料を用いる場合には、第2の金属層はその熱膨張係数が化合物半導体層の熱膨張係数より大きい材料からなることが好ましい。
【0061】
例えば、化合物半導体層としてAlGaInP層(熱膨張係数=約5.3ppm/K)を用いた場合には、第2の金属層としてモリブデン(熱膨張係数=5.1ppm/K)、タングステン(熱膨張係数=4.3ppm/K)、クロム(熱膨張係数=4.9ppm/K)およびこれらの合金などを用いることが好ましい。
【0062】
[発光ダイオードの製造方法]
次に、本発明の一実施形態である発光ダイオードの製造方法について説明する。
本実施形態の発光ダイオードの製造方法は、成長用基板上に、発光層及び電流拡散層を順に含む化合物半導体層を形成する工程と、電流拡散層上に、離間して配置する複数のオーミックコンタクト電極を形成する工程と、電流拡散層上に、複数のオーミックコンタクト電極をその表面のうち周縁部以外を露出するように透明膜を形成する工程と、透明膜上及びオーミックコンタクト電極の露出された部分上に反射層を形成する工程と、反射層上に接合層を形成する工程と、接合層上に基板を接合する工程と、成長用基板を除去する工程と、を順に有することを特徴とする。
【0063】
<基板の製造工程>
本実施形態の基板としては、金属基板やシリコン基板、ゲルマニウム基板を採用することができるが、以下、基板1として金属基板を用いた場合について説明する。
図4(a)〜図4(c)は、金属基板の製造工程を説明するための金属基板の一部の断面模式図である。
本実施形態では、熱膨張係数が化合物半導体層10の材料より大きい第1の金属層1bと、熱膨張係数が化合物半導体層10の材料より小さい第2の金属層1bとを採用して、ホットプレスして、基板1(金属基板)を形成する。
【0064】
具体的にはまず、2枚の略平板状の第1の金属層1bと、1枚の略平板状の第2の金属層1aを用意する。例えば、第1の金属層1bとしては厚さ10μmのCu、第2の金属層1aとしては厚さ75μmのMoを用いる。
次に、図4(a)に示すように、2枚の第1の金属層1bの間に第2の金属層1aを挿入してこれらを重ねて配置する。
【0065】
次に、重ね合わせたそれらの金属層を所定の加圧装置に配置して、高温下で第1の金属層1bと第2の金属層1aに矢印の方向に荷重をかける。これにより、図4(b)に示すように、第1の金属層21がCuであり、第2の金属層22がMoであり、Cu(10μm)/Mo(75μm)/Cu(10μm)の3層からなる金属基板1を形成する。
金属基板1は、例えば、熱膨張係数が5.7ppm/Kとなり、熱伝導率は220W/m・Kとなる。
【0066】
次に、図4(c)に示すように、金属基板1の全面すなわち、上面、下面及び側面を覆う金属保護膜2を形成する。このとき、金属基板は各発光ダイオードに個片化のために切断される前なので、金属保護膜が覆う側面とは金属基板(プレート)の外周側面である。
従って、個片化後の各発光ダイオードの金属基板1の側面を金属保護膜2で覆う場合には別途、金属保護膜で側面を覆う工程を実施する。
図4(c)は、金属基板(プレート)の外周端側でない箇所の一部を示しているものであり、外周側面の金属保護膜は図に表れていない。
【0067】
金属保護膜は公知の膜形成方法を用いることができるが、側面を含めた全面に膜形成ができるめっき法が最も好ましい。
例えば、無電解めっき法では、ニッケルその後、金をめっきし、金属基板の上面、側面、
下面をニッケル膜及び金膜(金属保護膜)で覆われた金属基板6を作製できる。
めっき材質は、特に制限はなく、銅、銀、ニッケル、クロム、白金、金など公知の材質が適用できるが、密着性がよいニッケルと耐薬品に優れる金を組み合わせた層が最適である。
めっき法は、公知の技術、薬品が使用できる。電極が不要な無電解めっき法が、簡便で望ましい。
【0068】
<化合物半導体層の形成工程>
まず、図5に示すように、半導体基板(成長用基板)21の一面21a上に、複数のエピタキシャル層を成長させて化合物半導体層10を含むエピタキシャル積層体30を形成する。
半導体基板21は、エピタキシャル積層体30形成用基板であり、例えば、一面21aが(100)面から15°傾けた面とされた、Siドープしたn型のGaAs単結晶基板である。エピタキシャル積層体30としてAlGaInP層またはAlGaAs層を用いる場合、エピタキシャル積層体30を形成する基板として砒化ガリウム(GaAs)単結晶基板を用いることができる。
【0069】
化合物半導体層10の形成方法としては、有機金属化学気相成長(Metal Organic Chemical Vapor Deposition:MOCVD)法、分子線エピタキシャル(Molecular Beam Epitaxicy:MBE)法や液相エピタキシャル(Liquid Phase Epitaxicy:LPE)法などを用いることができる。
【0070】
本実施形態では、トリメチルアルミニウム((CH3)3Al)、トリメチルガリウム((CH3)3Ga)及びトリメチルインジウム((CH3)3In)をIII族構成元素の原料に用いた減圧MOCVD法を用いて、各層をエピタキシャル成長させる。
なお、Mgのドーピング原料にはビスシクロペンタジエニルマグネシウム((C5H5)2Mg)を用いる。また、Siのドーピング原料にはジシラン(Si2H6)を用いる。また、V族構成元素の原料としては、ホスフィン(PH3)又はアルシン(AsH3)を用いる。
なお、p型の電流拡散層(GaP層)25は、例えば、750°Cで成長させ、その他のエピタキシャル成長層は、例えば、730°Cで成長させる。
【0071】
具体的には、まず、半導体基板21の一面21a上に、Siをドープしたn型のGaAsからなる緩衝層22aを成膜する。緩衝層22aとしては、例えば、Siをドープしたn型のGaAsを用い、キャリア濃度を2×1018cm−3とし、層厚を0.2μmとする。
【0072】
次に、本実施形態では、緩衝層22a上に、Siドープしたn型の(Al0.5Ga0.5)0.5In0.5Pからなるエッチングストップ層22bを成膜する。
エッチングストップ層22bは、半導体基板をエッチング除去する際、クラッド層および発光層までがエッチングされてしまうことを防ぐための層であり、例えば、Siドープの(Al0.5Ga0.5)0.5In0.5Pからなり、層厚を0.5μmとする。
【0073】
次に、エッチングストップ層22b上に、Siドープしたn型のGaAsからなるコンタクト層22cを成膜する。
【0074】
次に、コンタクト層22c上に、Siをドープしたn型のAl0.5In0.5Pからなるクラッド層23aを成膜する。
なお、クラッド層23aは、光取り出し向上の為に表面を粗面化させる表面粗面化層と、クラッド層の2層構造としてもよい。この場合は、クラッド層23aを成膜する前に、表面粗面化層を成膜すればよく、表面粗面化層としては、Siをドープしたn型の(Al0.5Ga0.5)0.5In0.5Pを用いることができる。
【0075】
次に、クラッド層23a上に、アンドープの(Al0.1Ga0.9)0.5In0.5P/(Al0.7Ga0.3)0.5In0.5Pの20対の積層構造からなる発光層24を成膜する。
【0076】
次に、発光層24上に、Mgをドープしたp型のAl0.5In0.5Pからなるクラッド層23bを成膜する。
【0077】
次に、クラッド層23b上に、Mgドープしたp型のGaP層(電流拡散層)25を成膜する。
【0078】
次に、p型のGaP層25の半導体基板21と反対側の面25aを、表面から1μmの深さに至るまで鏡面研磨して、表面の粗さを、例えば、0.18nm以内とする。
【0079】
なお、クラッド層23a、23bと発光層24との間にガイド層を設けてもよい。
【0080】
<オーミックコンタクト電極の形成工程>
次に、図6に示すように、電流拡散層25上に複数のオーミックコンタクト電極7を形成する。
まず、オーミックコンタクト電極7の形成位置に対応する開口部を有するマスクを電流拡散層25上に形成し、蒸着法を用いて、電流拡散層25上に、オーミックコンタクト電極7を構成する導電性部材、例えばAuBe合金を複数形成する。このとき、直線状に並ぶ複数のオーミックコンタクト電極7の群において、隣接するオーミックコンタクト電極7間の距離は、例えば、5〜40μmとする。
なお、複数のオーミックコンタクト電極7は、後の工程で形成する表面電極12のパッド部12aに平面視して重ならない位置に、直線状に並ぶように形成する。
【0081】
オーミックコンタクト電極7の形状としては例えば、直径を5〜20μm程度とする円柱状部材とすることができるが、これに限らない。
また、オーミックコンタクト電極7の厚さは、0.05〜1.00μmとすることが好ましい。
【0082】
<透明膜の形成工程>
次に、図7に示すように、電流拡散層25全面に、複数のオーミックコンタクト電極7覆うように、透明膜8を構成するSiO2膜8aを成膜する。SiO2膜8aを成膜する方法としては例えば、CVD法がある。なお、透明膜8を構成する材料としては、SiO2、SiN、SiON、Al2O3、MgF2、TiO2、TiN、ZnO、ITO、IZOなどを用いることができる。
また、このときのSiO2膜8aの膜厚は、0.05〜1.00μmとすることが好ましい。
【0083】
次に、図8に示すように、フォトリソグラフィー技術及びエッチング技術を用いて、複数のオーミックコンタクト電極7の表面のうち、周縁部7a以外を露出するようにSiO2膜8aを除去する。これにより、電流拡散層25全面およびオーミックコンタクト電極7の周縁部7a上に透明膜8を形成する。
具体的に説明すると、まず、複数のオーミックコンタクト電極7覆うように、SiO2膜8aを成膜した後に、オーミックコンタクト電極7の表面のうち、周縁部7a以外が露出するようなフォトレジストパターンをSiO2膜8a上に形成し、フッ酸系のエッチャントを用いて、オーミックコンタクト電極7上の周縁部7a以外のSiO2膜8aを除去する。これにより、電流拡散層25及びオーミックコンタクト電極7の周縁部7aを覆うように透明膜8を形成することができる。
【0084】
なお、電流拡散層25と、オーミックコンタクト電極7の周縁部7aとを覆うように透明膜8を形成する方法は、上記方法に限らず、例えば、オーミックコンタクト電極7を形成した後、オーミックコンタクト電極7の表面のうち周縁部7a以外の表面にマスクを形成した上で、複数のオーミックコンタクト電極7と電流拡散層25を覆うように透明膜8を形成してもよい。
【0085】
このように、予めオーミックコンタクト電極7を形成した後に、オーミックコンタクト電極7の周縁部7a及び電流拡散層25を覆うように透明膜8を形成することにより、従来の課題であった、透明膜とオーミックコンタクト電極の間の間隙の発生を防ぐことができる。
【0086】
<反射層の形成工程>
次に、図9に示すように、オーミックコンタクト電極7及び透明膜8上に反射層6を形成する。
具体的には、例えば、蒸着法を用いて、APC若しくはAuからなる反射層6をオーミックコンタクト電極7及び透明膜8上に形成する。このとき、オーミックコンタクト電極7と透明膜8との間には隙間はなく、互いに密接した状態であるため、反射層6を、オーミックコンタクト電極7と透明膜8との間に侵入させることなく形成することができる。
【0087】
<バリア層の形成工程>
次に、図9に示すように、反射層6上にバリア層5を形成する。
具体的には、例えば、蒸着法を用いて、ニッケルからなるバリア層5を反射層6上に形成する。
【0088】
<接合層の形成工程>
次に、図9に示すように、バリア層5上に接合層4を形成する。
具体的には、例えば、蒸着法を用いて、Au系の共晶金属であるAuGeからなる接合層4をバリア層5上に形成する。
【0089】
<基板の接合工程>
次に、図10に示すように、エピタキシャル積層体30や反射層6等を形成した半導体基板21と、基板の製造工程で形成した金属基板1とを減圧装置内に搬入して、その接合層4の接合面4aと金属基板1の接合面1aとが対向して重ね合わされるように配置する。
次に、減圧装置内を3×10−5Paまで排気した後、重ね合わせた半導体基板21と金属基板1とを400℃に加熱した状態で、500kgの荷重を印加して接合層4の接合面4aと金属基板1の接合面1aとを接合して、接合構造体40を形成する。
【0090】
<半導体基板および緩衝層除去工程>
次に、図11に示すように、接合構造体40から、成長用基板(半導体基板)21及び緩衝層22aをアンモニア系エッチャントにより選択的に除去する。
このとき、本発明の金属基板は金属保護膜に覆われており、エッチャントに対する耐性が高いため、金属基板が品質劣化することが防止される。
【0091】
<エッチングストップ層除去工程>
次に、エッチングストップ層22bを塩酸系エッチャントにより選択的に除去する。これにより、発光層24を含む化合物半導体層10が形成される。
本発明の金属基板は金属保護膜に覆われており、エッチャントに対する耐性が高いため、金属基板が品質劣化することが防止される。
【0092】
<オーミック電極の形成工程>
次に、図12に示すように、化合物半導体層10のオーミックコンタクト電極7と反対側の面に、オーミック電極11を形成する。
具体的には例えば、蒸着法を用いて、厚さ0.1μmのAuGeNi合金を全面に成膜し、次に、フォトリソグラフィー技術及びエッチング技術を用いて、AuGeNi合金からなる膜をパターニングして、図3Bに示すような6本の線状部位11ba、11bb、11ca、11cb、11cc、11cdからなるオーミック電極11を形成する。
【0093】
上記オーミック電極形成工程のパターニングで用いたマスクを用いて、コンタクト層12cのうち、例えば、アンモニア水(NH4OH)/過酸化水素(H2O2)/純水(H20)混合液により、オーミック電極11の下以外の部分をエッチングで除去する。これにより、オーミック電極11とコンタクト層12cの平面形状は図12に示すように、実質的に同一の形状となる。
【0094】
オーミック電極11のそれぞれの線状部位は、後述する工程で形成する表面電極12のパッド部12aに平面視して重ならない位置であって、表面電極12の線状部12bに覆われる位置に形成する。
【0095】
<表面電極の形成工程>
次に、化合物半導体層10のオーミックコンタクト電極7と反対側の面に、オーミック電極11を覆うように、パッド部12a及び該パッド部に連結する線状部12bからなる表面電極12を形成する。
具体的には例えば、蒸着法を用いて、厚さ0.3μmのAu層、厚さ0.3μmのTi層、厚さ1μmのAu層を順に全面に成膜し、次に、フォトリソグラフィー技術及びエッチング技術を用いて、Au/Ti/Au膜をパターニングして、図3Aに示すようなパッド部12aと該パッド部に連結する2本の第1の直線部12baa、12babと、6本の第2の直線部12bba、12bbb、12bca、12bcb、12bcc、12bcdとからなる線状部12bとからなる表面電極12を形成する。
【0096】
第2の直線部のそれぞれは、オーミック電極11を構成する6本の線状部位のそれぞれを覆う位置に形成する。
【0097】
<個片化工程>
次に、ウェハ上の発光ダイオードを個片化する。
切断する領域の半導体層を除去した後に、以上の工程で形成された基板1を含む構造体をレーザで例えば、350μm間隔で切断し、発光ダイオード100を作製する。
【0098】
<基板側面の金属保護膜形成工程>
個片化された各発光ダイオード100では、基板1の側面には金属保護膜は形成されていないが、上面及び下面の金属保護膜の形成条件と同様な条件で、切断された基板1の側面に金属保護膜を形成してもよい。
【実施例】
【0099】
以下、本発明を実施例に基づいて具体的に説明する。しかし、本発明はこれらの実施例のみに限定されるものではない。
【0100】
(実施例1)
実施例1は、図1および図2に示した実施形態の実施例である。
実施例1の発光ダイオードは、まず、厚さ75μmのMo層(箔、板)、2枚の厚さ10μmのCu層(箔、板)で挟み、加熱圧着して厚さ95μmの金属板プレート(個片化の切断前)を形成した。この金属板プレートの上面と下面を研磨し、上面を光沢面とした後に、有機溶剤で洗浄し、汚れを除去した。次に、この金属板プレートの全面に、無電解めっき法により金属保護膜として2μmのNi層、1μmのAu層を順に形成して金属基板(個片化の切断前の金属基板)1を作製した。
【0101】
次に、Siをドープしたn型のGaAs単結晶からなるGaAs基板21上に、化合物半導体層を順次積層して発光波長620nmのエピタキシャルウェーハを作製した。
GaAs基板21は、(100)面から(0−1−1)方向に15°傾けた面を成長面とし、キャリア濃度を1×1018cm−3とした。化合物半導体層としては、SiをドープしたGaAsからなるn型の緩衝層22a、Siドープの(Al0.5Ga0.5)0.5In0.5Pからなるエッチングストップ層22b、SiドープのGaAsからなるn型のコンタクト層22c、Siドープの(Al0.5Ga0.5)0.5In0.5Pからなるn型の表面粗面化層23aa、SiドープのAl0.5In0.5Pからなるn型の上部クラッド層23ab、(Al0.1Ga0.9)0.5In0.5P/(Al0.5Ga0.5)0.5In0.5Pの20対からなる井戸層/バリア層の発光層24、Al0.5In0.5Pからなるp型の下部クラッド層23b、Mgドープしたp型GaPからなる電流拡散層25である。
【0102】
本実施例では、減圧有機金属化学気相堆積装置法(MOCVD装置)を用い、直径50mm、厚さ350μmのGaAs基板に化合物半導体層をエピタキシャル成長させて、エピタキシャルウェーハを形成した。エピタキシャル成長層を成長させる際、III族構成元素の原料としては、トリメチルアルミニウム((CH3)3Al)、トリメチルガリウム((CH3)3Ga)及びトリメチルインジウム((CH3)3In)を使用した。また、Mgのドーピング原料としては、ビスシクロペンタジエニルマグネシウム(bis−(C5H5)2Mg)を使用した。また、Siのドーピング原料としては、ジシラン(Si2H6)を使用した。また、V族構成元素の原料としては、ホスフィン(PH3)、アルシン(AsH3)を使用した。また、各層の成長温度としては、p型GaPからなる電流拡散層は、750℃で成長させた。その他の各層では700℃で成長させた。
【0103】
GaAsからなる緩衝層は、キャリア濃度を約1×1018cm−3、層厚を約0.5μmとした。エッチングストップ層は、キャリア濃度を1×1018cm−3、層厚を約0.5μmとした。コンタクト層は、キャリア濃度を約1×1018cm−3、層厚を約0.05μmとした。表面粗面化層は、キャリア濃度を1×1018cm−3、層厚を約3μmとした。上部クラッド層は、キャリア濃度を約2×1018cm−3、層厚を約0.5μmとした。井戸層は、アンドープで層厚が約5nmの(Al0.1Ga0.9)0.5In0.5Pとし、バリア層はアンドープで層厚が約5nmの(Al0.5Ga0.5)0.5In0.5Pとした。また、井戸層とバリア層とを交互に20対積層した。下部クラッド層は、キャリア濃度を約8×1017cm−3、層厚を約0.5μmとした。
GaPからなる電流拡散層は、キャリア濃度を約5×1018cm−3、層厚を約3μmとした。
【0104】
次に、電流拡散層25を表面から約2μmの深さに至る領域まで研磨して、鏡面加工した。この鏡面加工によって、電流拡散層の表面の粗さを0.18nmとした。
【0105】
次に、電流拡散層25上に、オーミックコンタクト電極7の形成位置に対応する開口部を有するマスクを電流拡散層25上に形成し、蒸着法を用いて、図3Cに示したパターンのAuBe合金からなるオーミックコンタクト電極7を形成した。オーミックコンタクト電極7を構成する円柱状の導電性部材は直径9μmとし、直線上に隣接する導電性部材の間隔10μmとした。
【0106】
次に、電流拡散層25全面に、CVD法を用いて、オーミックコンタクト電極7を覆うように、SiO2膜8aを形成した。このとき、SiO2膜8aは厚さ0.3μmとした。
【0107】
次に、オーミックコンタクト電極7の表面のうち、周縁部7a以外が露出するようなフォトレジストパターンをSiO2膜8a上に形成し、フッ酸系のエッチャントを用いて、オーミックコンタクト電極7上の周縁部7a以外のSiO2膜8aを除去した。これにより、電流拡散層25及びオーミックコンタクト電極7の周縁部7aを覆うように、SiO2からなる透明膜8を形成した。
【0108】
次に、透明膜8及びオーミックコンタクト電極7上に、蒸着法を用いて、厚さ0.7μmのAu膜からなる反射層6を形成した。
次に、反射層6上に、蒸着法を用いて、厚さ0.5μmのTi膜からなるバリア層5を形成した。
次に、バリア層5上に、蒸着法を用いて、厚さ1.0μmのAuGeからなる接合層4を形成した。
【0109】
次に、GaAs基板21上に化合物半導体層及び反射層6等を形成した構造体(図9参照)と、金属基板1とを対向して重ね合わせるように配置して減圧装置内に搬入し、400℃で加熱した状態で、500kg重の荷重でそれらを接合して接合構造体を形成した。
【0110】
次に、接合構造体から、化合物半導体層の成長基板であるGaAs基板21と緩衝層22aとをアンモニア系エッチャントにより選択的に除去し、さらに、エッチングストップ層22bを塩酸系エッチャントにより選択的に除去した。
【0111】
次に、化合物半導体層10のオーミックコンタクト電極7と反対側の面に、蒸着法を用いて、図3Bに示したパターンの厚さ0.1μmのAuGeNi合金からなるオーミック電極11を形成した。
6本の線状部位の幅はいずれも4μmとし、線状部位11ba、11bbの長さは270μm、線状部位11ca、11cb、11cc、11cdの長さは85μmとした。
【0112】
次に、化合物半導体層10のオーミックコンタクト電極7と反対側の面にオーミック電極11を覆うように、蒸着法を用いて、図3Aに示したパターンの厚さ1.6μmのパッド部12a及び線状部12bからなる表面電極12を形成した。
パッド部12aは直径100μmとし、線状部12bの幅は第1の直線部及び第2の直線部共に8μmとした。
また、第1の直線部12baa、12babの長さは43μmとし、第2の直線部12bba、12bbbの長さは270μmとし、第2の直線部12bca、12bcb、12bcc、12bcdの長さは100μmとした。
【0113】
次に、チップに分離する為の切断予定部分を化合物半導体層10から接合層4まで除去し、金属基板1をレーザーダイシングにより、350μmピッチで正方形に切断した。
次に、上述のように作製した実施例1の発光ダイオードチップをマウント基板上に実装して発光ダイオードランプを組み立てた。
【0114】
次に、この発光ダイオード(発光ダイオードランプ)の特性を評価した。
図13(a)は、本実施例の発光ダイオードの光学顕微鏡像である。なお、また、図13(b)は、図13(a)に示す発光ダイオードにおけるオーミックコンタクト電極7と透明膜25の拡大像である。なお、図13(a)は図15(a)と同様に、オーミック電極11形成後であって、表面電極形成前の段階で観察した光学顕微鏡像である。
従来の発光ダイオードの光学顕微鏡像(図15参照)では、オーミックコンタクト電極と透明膜の隙間において、電流拡散層と反射層とが接触し、合金層が形成されていることがわかる。一方、本実施例の発光ダイオードの光学顕微鏡(図13参照)では、電流拡散層と反射層との合金層が形成されていないことがわかる。したがって、本実施例の発光ダイオードは、従来の発光ダイオードと比較し、反射率が向上する。
具体的には、n型及びp型オーミック電極間に電流を流したところ、ドミナント波長620nmとする赤色光が出射された。順方向に20ミリアンペア(mA)の電流を通流した際の順方向電圧(VF)は1.91Vであった。順方向電流を20mAとした際の発光出力は8.2mWであり、従来よりも約5%向上した。
このランプ20個を、温度60℃、湿度90%の高温高湿環境下で、通電試験(30mA通電)を1000時間実施した。その発光出力の残存率の平均は98%、VFの変動はほとんどなく99%であった。
【符号の説明】
【0115】
1 基板
1a、1b 金属層
1ba 上面
1bb 下面
2 金属保護膜
4 接合層
5 バリア層
6 反射層
7 オーミックコンタクト電極
7a 周縁部
7b 第1の主面
7c 第2の主面
7d 側面
7aa、7ab、7ba、7bb、7bc、7bd、7ca、7cb ドット状の導電性部材の群
8 透明膜
10 化合物半導体層
11 オーミック電極
11ba、11bb、11ca、11cb、11cc、11cd 線状部位
12 表面電極
12a パッド部
12b 線状部
12baa、12bab 第1の直線部
12bba、12bbb、12bca、12bcb、12bcc、12bcd 第2の直線部
21 半導体基板(成長用基板)
42 表面電極
42aa、42ab パッド部
42b 線状部
42baa、42bab、42bac、42bad 第1の直線部
42bca、42bcb、42bcc、42bcd、42bba、42bbb、42bbc、42bbd、42bbe、42bbf、42bbg、42bbh 第2の直線部
100 発光ダイオード
M 合金層
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板上に順に、反射層と、複数のオーミックコンタクト電極が離間して埋設された透明膜と、電流拡散層及び発光層を順に含む化合物半導体層とを具備する発光ダイオードの製造方法であって、
成長用基板上に、発光層及び電流拡散層を順に含む化合物半導体層を形成する工程と、
前記電流拡散層上に、離間して配置する複数のオーミックコンタクト電極を形成する工程と、
前記電流拡散層上に、前記複数のオーミックコンタクト電極をその表面のうち周縁部以外を露出するように透明膜を形成する工程と、
前記透明膜上及び前記オーミックコンタクト電極の露出された部分上に反射層を形成する工程と、
前記反射層上に接合層を形成する工程と、
前記接合層上に基板を接合する工程と、
前記成長用基板を除去する工程と、を順に有することを特徴とする発光ダイオードの製造方法。
【請求項2】
前記透明膜を形成する工程において、前記複数のオーミックコンタクト電極と前記電流拡散層を覆うように前記透明膜を成膜した後、前記オーミックコンタクト電極の表面のうち前記周縁部以外の表面上の前記透明膜を除去することを特徴とする請求項1に記載の発光ダイオードの製造方法。
【請求項3】
前記透明膜を形成する工程において、前記オーミックコンタクト電極の表面のうち前記周縁部以外の表面にマスクを形成して、前記複数のオーミックコンタクト電極と前記電流拡散層を覆うように前記透明膜を成膜した後に、前記マスクを除去することを特徴とする請求項1に記載の発光ダイオードの製造方法。
【請求項4】
基板上に順に、反射層と、複数のオーミックコンタクト電極が離間して埋設された透明膜と、電流拡散層及び発光層を順に含む化合物半導体層とを具備する発光ダイオードであって、
前記オーミックコンタクト電極の前記基板側の面の周縁部は前記透明膜に覆われ、
前記オーミックコンタクト電極は前記反射層及び前記電流拡散層に接触している、ことを特徴とする発光ダイオード。
【請求項5】
前記周縁部は、前記オーミックコンタクト電極の周端部から1.5μm以内の範囲内であることを特徴とする請求項4に記載の発光ダイオード。
【請求項6】
前記反射層は、Au、Ag、Cu、Alのいずれか、またはこれらの元素から選ばれる1種または2種以上を含む合金のいずれかからなることを特徴とする請求項4または5に記載の発光ダイオード。
【請求項7】
前記電流拡散層は、GaP、{AlxGa(1−x)}(1−y)InyP、{AlxGa(1−x)}(1−y)InyAsのいずれかからなることを特徴とする請求項4〜6の何れか一項に記載の発光ダイオード。
【請求項8】
前記透明膜は、SiO2、SiN、SiON、Al2O3、MgF2、TiO2、TiN、ZnO、ITO、IZOのいずれかからなることを特徴とする請求項4〜7の何れか一項に記載の発光ダイオード。
【請求項9】
前記透明膜の膜厚が、0.05〜1.00μmであることを特徴とする請求項4〜8の何れか一項に記載の発光ダイオード。
【請求項1】
基板上に順に、反射層と、複数のオーミックコンタクト電極が離間して埋設された透明膜と、電流拡散層及び発光層を順に含む化合物半導体層とを具備する発光ダイオードの製造方法であって、
成長用基板上に、発光層及び電流拡散層を順に含む化合物半導体層を形成する工程と、
前記電流拡散層上に、離間して配置する複数のオーミックコンタクト電極を形成する工程と、
前記電流拡散層上に、前記複数のオーミックコンタクト電極をその表面のうち周縁部以外を露出するように透明膜を形成する工程と、
前記透明膜上及び前記オーミックコンタクト電極の露出された部分上に反射層を形成する工程と、
前記反射層上に接合層を形成する工程と、
前記接合層上に基板を接合する工程と、
前記成長用基板を除去する工程と、を順に有することを特徴とする発光ダイオードの製造方法。
【請求項2】
前記透明膜を形成する工程において、前記複数のオーミックコンタクト電極と前記電流拡散層を覆うように前記透明膜を成膜した後、前記オーミックコンタクト電極の表面のうち前記周縁部以外の表面上の前記透明膜を除去することを特徴とする請求項1に記載の発光ダイオードの製造方法。
【請求項3】
前記透明膜を形成する工程において、前記オーミックコンタクト電極の表面のうち前記周縁部以外の表面にマスクを形成して、前記複数のオーミックコンタクト電極と前記電流拡散層を覆うように前記透明膜を成膜した後に、前記マスクを除去することを特徴とする請求項1に記載の発光ダイオードの製造方法。
【請求項4】
基板上に順に、反射層と、複数のオーミックコンタクト電極が離間して埋設された透明膜と、電流拡散層及び発光層を順に含む化合物半導体層とを具備する発光ダイオードであって、
前記オーミックコンタクト電極の前記基板側の面の周縁部は前記透明膜に覆われ、
前記オーミックコンタクト電極は前記反射層及び前記電流拡散層に接触している、ことを特徴とする発光ダイオード。
【請求項5】
前記周縁部は、前記オーミックコンタクト電極の周端部から1.5μm以内の範囲内であることを特徴とする請求項4に記載の発光ダイオード。
【請求項6】
前記反射層は、Au、Ag、Cu、Alのいずれか、またはこれらの元素から選ばれる1種または2種以上を含む合金のいずれかからなることを特徴とする請求項4または5に記載の発光ダイオード。
【請求項7】
前記電流拡散層は、GaP、{AlxGa(1−x)}(1−y)InyP、{AlxGa(1−x)}(1−y)InyAsのいずれかからなることを特徴とする請求項4〜6の何れか一項に記載の発光ダイオード。
【請求項8】
前記透明膜は、SiO2、SiN、SiON、Al2O3、MgF2、TiO2、TiN、ZnO、ITO、IZOのいずれかからなることを特徴とする請求項4〜7の何れか一項に記載の発光ダイオード。
【請求項9】
前記透明膜の膜厚が、0.05〜1.00μmであることを特徴とする請求項4〜8の何れか一項に記載の発光ダイオード。
【図1】
【図2】
【図3A】
【図3B】
【図3C】
【図3D】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図14】
【図13】
【図15】
【図2】
【図3A】
【図3B】
【図3C】
【図3D】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図14】
【図13】
【図15】
【公開番号】特開2013−41861(P2013−41861A)
【公開日】平成25年2月28日(2013.2.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−175888(P2011−175888)
【出願日】平成23年8月11日(2011.8.11)
【出願人】(000002004)昭和電工株式会社 (3,251)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年2月28日(2013.2.28)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年8月11日(2011.8.11)
【出願人】(000002004)昭和電工株式会社 (3,251)
【Fターム(参考)】
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