説明

発光ダイオード駆動回路

【課題】断線等の不具合を起こしたLEDを除く他のLEDを正常に点灯させ、断線の影響を最小限に留める。
【解決手段】PWM出力部5は、並列接続されたLED群1〜4をPWM駆動し、定格電流の数倍から10倍程度のピーク電流を通電する。CPU6は、LED1−1〜1−4、…、4−1〜4−4のうち、いずれかのLEDが断線すると、そのLED以下の電圧がLowレベルとなることを検出することにより、断線したLEDを特定する。CPU6は、アナログSW7を制御し、断線したLEDに対応するスイッチング素子を導通状態とし、電流を分流させることで、断線したLED以外の他のLEDを正常に点灯させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両のヘッドライトなどに用いられる発光ダイオード駆動回路に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、車両では、ヘッドライト(ハロゲンランプまたはディスチャージランプ)のランプ断線時、断線警報機能によりドライバに知らせていた。しかしながら、ランプの断線を効果的に補償する方法がなく、ランプを交換するまでそのまま走行していた。そこで、ランプ断線を検知してドライバに知らせたり、他のライトに切換えたりしていた。
【0003】
ところで、近年、省電力や長寿命などといった利点を持つLED(Light emitting diode:発光ダイオード)による照明(ストップランプや、フラッシャーランプ等)が増加して、車両のヘッドライトにも適用されるようになってきた。LEDは、1個でなく複数個を直列に接続して使用するため、1個が断線(オープン)になると直列に接続している全てのLEDが点灯しなくなる。
【0004】
そこで、直列接続された複数のLEDを駆動する場合、LEDの不良時にその箇所を特定し、不良箇所の素子電流を迂回させる技術が提案されている(例えば、特許文献1参照)。該従来技術では、直列接続された複数のLEDの各々に並列に接続されたスイッチング素子を介して、駆動制御回路により、任意の被測定LED以外のLEDに流れる駆動電流をそれぞれバイパスし、被測定LEDのみに測定用の駆動電流を流すことによって、上記直列接続された複数のLEDに流れた駆動電流を検出回路により検出して、不良箇所のLEDを特定する。
【0005】
【特許文献1】特開2005−310998号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上述した従来技術では、断線検知にバイパス回路を用いているため、1個のLEDのみ点灯して他のLEDが消灯してしまい、常時モニタすることができないという問題がある。また、断線検知中は、1つのLEDのみのため、輝度低下が生じるという問題がある。
【0007】
そこで本発明は、直列接続された複数のLEDのうち、いずれかのLEDが断線等の不具合を起こした場合であっても、該不具合を起こしたLEDを除く他のLEDを正常に点灯させ、断線の影響を最小限に留めることができる発光ダイオード駆動回路を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る発光ダイオード駆動回路は、複数の発光ダイオードを直列接続した光源の点灯制御を行う発光ダイオード駆動回路であって、直列接続された前記複数の発光ダイオードに駆動電流を供給する駆動手段と、前記複数の発光ダイオードに電流が供給されているとき、各発光ダイオードにおける電圧の状態を検出する電圧検出手段と、前記複数の発光ダイオードの各々に並列接続され、各々、オン/オフ動作が可能である複数のスイッチング手段と、前記電圧検出手段により、いずれかの発光ダイオードにおける電圧の状態に異常が検出されると、該当する発光ダイオードに対応したスイッチング手段へと電流が迂回されるように、前記スイッチング手段の動作を制御するスイッチング制御手段とを具備することを特徴とする。
【0009】
本発明の好ましい態様は、前記複数の発光ダイオードを直列接続した発光ダイオード群を、複数並列接続し、前記複数の発光ダイオード群の各々に対して、前記駆動手段からのパルス幅変調された駆動電流を個別に供給する駆動制御手段を更に具備することを特徴とする。
【0010】
また、本発明の好ましい態様は、前記駆動制御手段は、前記複数の発光ダイオード群の各々に対して、前記駆動制御手段により個別に供給される駆動電流の位相をずらして供給することを特徴とする。
【0011】
また、前記スイッチング素子は、サイリスタやトランジスタ等の電子デバイスであることが望ましい。また、発光ダイオードの発熱の抑制と最大輝度の向上とを考慮して、PWMのデューティー比を、1/8から1/10(12.5〜10%)程度にすることが望ましい。また、PWMの電圧(電源容量)に応じて、発光ダイオードの直列接続個数を変化させてもよい。
【発明の効果】
【0012】
本発明では、直列接続された複数の発光ダイオードに電流が供給されているとき、各発光ダイオードにおける電圧の状態を検出し、いずれかの発光ダイオードにおける電圧の状態に異常が検出されると、該当する発光ダイオードの電流を迂回させる。したがって、直列接続されている複数の発光ダイオードのうち、いずれかが断線等の不具合を起こしても、他の発光ダイオードを、通常通り発光させることができる。また、このとき、迂回路の電圧降下を小さくすれば、他の発光ダイオードに流れる電流が通常より大きくなり、他の発光ダイオードの輝度が高くなるので、全体としての輝度値の低下は最小限で済む。
【0013】
また、複数の発光ダイオードを直列接続した発光ダイオード群を、複数並列接続し、複数の発光ダイオード群の各々に対して、パルス幅変調された駆動電流を個別に供給することで、定格電流の数倍から10倍程度のピーク電流を通電することが可能となる。これにより、PWM駆動による短時間の点灯であってもピークの輝度を得ることが可能である。
【0014】
また、複数の発光ダイオード群の各々に対して、個別に供給される駆動電流の位相をずらして供給することで、電源容量を小さくすることが可能となり、装置の小形化・温度上昇の抑制・電圧降下の低減が図れる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
図1は、本実施形態によるLED駆動回路の構成を示す回路図である。図において、LED駆動回路は、直列接続された、LED1−1〜1−4からなるLED群1、LED2−1〜2−4からなるLED群2、LED3−1〜3−4からなるLED群3、LED4−1〜4−4からなるLED群4を備えている。それぞれのLED群1〜4は、並列接続されている。
【0016】
本実施形態では、電源の容量を有効に使用するため、LED1−1〜1−4、…、4−1〜4−4の電圧降下分を見込んで直列に接続している。LED1−1〜1−4、…、4−1〜4−4は、図2に示すように、それぞれのLED群毎に、リフレクタ兼用のランプハウジング内に収められている。図2に示す例では、ランプハウジング10内に4つのLED(例えば、LED1−1〜1−4)が収められている様子を示している。
【0017】
また、LED駆動回路は、これらLED1−1〜1−4、…、4−1〜4−4を駆動するためのPWM出力部5と、各LED1−1〜1−4、…、4−1〜4−4の断線を検出するためのCPU6と、断線したLEDを迂回し、それ以外のLEDを点灯させるための、スイッチング素子の集合としてのアナログSW7とを備えている。
【0018】
PWM出力部5は、並列接続されたLED群1〜4をPWM駆動し、定格電流の数倍から10倍程度のピーク電流を通電するようになっている。人の目の残像により、PWM駆動による短時間の点灯であってもピークの輝度を得ることが可能である。
【0019】
CPU6は、A/D入力ポートを有しており、該A/D入力ポートには、LED1−1〜1−4、…、4−1〜4−4のカソードが接続されている。CPU6は、A/D入力ポートの電圧値V1〜V4、すなわち、LED1−1〜1−4、…、4−1〜4−4による電圧降下を監視し、正常値に対してLED断線時の異常値を判断する(断線検知)。アナログSW7は、LED1−1〜1−4、…、4−1〜4−4のうち、いずれかのLEDが断線したことがCPU6により検出されると、CPU6の制御により、その箇所を分流することで、断線したLED以外の他のLEDを正常に点灯させるようになっている。
【0020】
次に、図3及び図4は、上記アナログSW7の構成例を示す回路図である。図3に示す構成例では、アナログSW7は、直列接続されたサイリスタ7−1−1、7−1−2、…からなり、各サイリスタ7−1−1、7−1−2、…がLED1−1、1−2、…に並列接続されている。いずれかのLED1−i(i=1〜4)が断線した場合、CPU6が、断線したLED1−iに対応するサイリスタ7−1−j(j=i)のゲートに供給される制御信号S1−j(トリガ信号)をオン状態とすることで、対応するサイリスタ7−1−jが導通状態となり、電流が断線したLED1−iを迂回してサイリスタ7−1−jを通って流れることになる。これにより、断線したLED以外の他のLEDを正常に点灯させることが可能となる。なお、他のLED群2、3、4についても同様の構成となる。
【0021】
また、図4に示す構成例では、アナログSW7は、直列接続されたトランジスタ7−2−1、7−2−2、…からなり、各トランジスタ7−2−1、7−2−2、…がLED1−1、1−2、…に並列接続されるようになっている。いずれかのLED1−i(i=1〜4)が断線した場合、CPU6が、断線したLED1−iに対応するトランジスタ7−2−j(j=i)のベースに制御信号S2−jを供給することで、トランジスタ7−2−jがオン状態なり、断線したLED1−iを迂回してトランジスタ7−2−jを通って電流が流れることになる。上述したように、この場合も、断線したLED以外の他のLEDを正常に点灯させることが可能となる。なお、他のLED群2、3、4についても同様の構成となる。
【0022】
上述した構成において、従来であれば、それぞれのLED群1〜4では、LEDi−j(i=1〜4、j=1〜4)を直列接続しているため、LED1−1〜1−4、…、4−1〜4−4のうち、いずれかが断線すると、対応するLED群の全てのLEDが点灯不可となる。本実施形態では、LED1−1〜1−4、…、4−1〜4−4のうち、いずれかのLEDが断線すると、そのLED以下の電圧がLowレベルとなるので、CPU6によって、どのLEDが断線したかが特定される。次いで、CPU6は、アナログSW7を制御し、その箇所を分流させることで、断線したLED以外の他のLEDを正常に点灯させる。
【0023】
このとき、LED1−1〜1−4、…、4−1〜4−4の電圧降下とアナログSW(例えば、トランジスタ)7の電圧降下とを比較すると、トランジスタ7−2−1、7−2−2、…の方が小さいため、例えば、LED群1に流れる電流If1は、通常より大きくなり、他のLED1−2、1−3,1−4の輝度が高くなる。このため、LED群1全体としての輝度値の低下は最小限で済む。
【0024】
次に、図5は、本実施形態による変形例を説明するための回路図である。上述したように、直列接続されたLED1−1〜1−4、…、4−1〜4−4を複数並列接続した場合、CPU6のA/Dポートが不足する場合がある。この場合、図5に示すように、マルチプレクサ11で、CPU6のA/Dポートに接続されるLED群1、2を切り換えるようにしてもよい。LED群3、4についても同様である。
【0025】
次に、図6は、本実施形態のLED駆動回路にパワーセーブ回路を付加した構成を示す回路図である。また、図7は、同パワーセーブ回路を用いた際の動作を説明するためのタイミングチャートである。図において、PWM回路5の出力は、AND回路12−1〜12−4の一方の入力端に供給される。AND回路12−1〜12−4の他方の入力端には、CPU6からの制御信号S1〜S4が入力される。制御信号S1〜S4は、PWM回路5の出力の1/4周期で、かつ、それぞれが1周期分位相をずらしてAND回路12−1〜12−4に供給されるようになっている。
【0026】
本実施形態によるLED駆動回路では、4つのLED群1〜4が並列接続されているため、図1に示す構成では、PWM回路5の最大電流値IfΣは、Ifa〜Ifdまでの加算値となる。そこで、PWM回路5の出力を、制御信号S1〜S4によって、図7に示すように、PWM回路5の出力の1/4周期で、かつ、それぞれが1周期分位相をずらして、AND回路12−1〜12−4を介して出力することにより、PWM回路5の最大電流値を、直列回路の電流値(Ifa、Ifb、Ifc,Ifd)とし、約1/4とする。この結果、PWM回路5の電源容量が小さくて済み、装置の小形化・温度上昇の抑制・電圧降下の低減が図れる。
【0027】
なお、LED1−1〜1−4、…、4−1〜4−4の発熱の抑制と最大輝度の向上とを考慮して、PWMのデューティー比は、1/8から1/10(12.5〜10%)程度にすることが望ましい。また、LED1−1〜1−4、…、4−1〜4−4の直列接続個数が多いほど、通電電流は少なくて済むが、PWM回路5の出力電圧が例えば、12Vであれば、4個程度が望ましい(電圧が変われば個数も変化する)。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】本実施形態によるLED駆動回路の構成を示す回路図である。
【図2】LEDからなるランプの構造を示す模式図である。
【図3】アナログSW7の構成例を示す回路図である。
【図4】アナログSW7の構成例を示す回路図である。
【図5】本実施形態による変形例を説明するための回路図である。
【図6】本実施形態のLED駆動回路にパワーセーブ回路を付加した構成を示す回路図である。
【図7】パワーセーブ回路を用いた際の動作を説明するためのタイミングチャートである。
【符号の説明】
【0029】
1〜4 LED群(発光ダイオード群)
1−1〜1−4、…、4−1〜4−4 LED(複数の発光ダイオード)
5 PWM出力部(駆動手段)
6 CPU(電圧検出手段、スイッチング制御手段、駆動制御手段)
7 アナログSW(スイッチング手段)
7−1−1、7−1−2、… サイリスタ(スイッチング素子)
7−2−1、7−2−2、… トランジスタ(スイッチング素子)
11 マルチプレクサ
12−1〜12−4 AND回路(駆動制御手段)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の発光ダイオードを直列接続した光源の点灯制御を行う発光ダイオード駆動回路であって、
直列接続された前記複数の発光ダイオードに駆動電流を供給する駆動手段と、
前記複数の発光ダイオードに電流が供給されているとき、各発光ダイオードにおける電圧の状態を検出する電圧検出手段と、
前記複数の発光ダイオードの各々に並列接続され、各々、オン/オフ動作が可能である複数のスイッチング手段と、
前記電圧検出手段により、いずれかの発光ダイオードにおける電圧の状態に異常が検出されると、該当する発光ダイオードに対応したスイッチング手段へと電流が迂回されるように、前記スイッチング手段の動作を制御するスイッチング制御手段と
を具備することを特徴とする発光ダイオード駆動回路。
【請求項2】
前記複数の発光ダイオードを直列接続した発光ダイオード群を、複数並列接続し、
前記複数の発光ダイオード群の各々に対して、前記駆動手段からのパルス幅変調された駆動電流を個別に供給する駆動制御手段を更に具備することを特徴とする請求項1記載の発光ダイオード駆動回路。
【請求項3】
前記駆動制御手段は、前記複数の発光ダイオード群の各々に対して、前記駆動制御手段により個別に供給される駆動電流の位相をずらして供給することを特徴とする請求項2記載の発光ダイオード駆動回路。



【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2008−152938(P2008−152938A)
【公開日】平成20年7月3日(2008.7.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−336738(P2006−336738)
【出願日】平成18年12月14日(2006.12.14)
【出願人】(000002945)オムロン株式会社 (3,542)
【Fターム(参考)】