説明

発光パターンを有する有機発光素子、その製造方法および装置

本発明は、第1電極を準備するステップと、前記第1電極上に1層以上の有機物層を形成するステップ、および前記有機物層上に第2電極を形成するステップを含む有機発光素子の製造方法であって、前記有機物層または電極のうちの1層以上の層の所定パターン領域の機能を変化させるステップを含む有機発光素子の製造方法、その方法によって製造された有機発光素子およびその方法に用いられる装置を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有機発光素子、その製造方法および製造装置に関するものである。具体的に、本発明は、発光パターンを有する有機発光素子、その製造方法および製造装置に関するものである。
【0002】
本出願は2006年5月4日および2006年10月17日に各々韓国特許庁に提出された韓国特許出願第10−2006−0040640号および第10−2006−0100783号の出願日の利益を主張し、その内容の全ては本明細書に含まれる。
【背景技術】
【0003】
有機発光素子は、通常、2つの電極とこれらの電極の間に介在した有機物層を含み、前記2つの電極から前記有機物層に各々電子および正孔を注入して電流を可視光に変換させることによって光を発する。
【0004】
図1は従来の有機発光素子を示す断面図である。図面を参照すれば、前記有機発光素子は2つの電極、例えば、アノード電極20およびカソード電極70との間に位置する発光層50を備える。前記2つの電極のうちのいずれか1つ、例えば、アノード電極20は透明基板10上に位置し、前記発光層50から発する光を通過させる。前記有機発光素子は性能を向上させるために電子注入層65、電子輸送層60、正孔輸送層45および正孔注入層40からなる群から選択された1つ以上の層をさらに含むことができる。
【0005】
前記有機発光素子は発光領域(A)と非発光領域(B)を区分するために前記透明基板10上の電極上に所定パターンからなる絶縁層30を備えることもできる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、有機発光素子の製造過程に、有機物層または電極のうちの1層以上の層の所定パターン領域の全部または一部の機能を変化させるステップを含ませ、発光パターンを有する有機発光素子を簡便に製造する方法およびその方法によって製造された有機発光素子を提供することを目的とする。
【0007】
また、本発明は、前記有機物層または電極のうちの1層以上の層の所定パターン領域の全部または一部の機能を変化させるステップをDLP(digital light processing)を用いて行うことにより、発光パターンを有する有機発光素子を簡便に製造する方法、その方法によって製造された有機発光素子、および前記方法を実現する装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記技術的課題を達成するために、本発明は、第1電極を準備するステップと、前記第1電極上に1層以上の有機物層を形成するステップ、および前記有機物層上に第2電極を形成するステップを含む有機発光素子の製造方法であって、前記有機物層または電極のうちの1層以上の層の所定パターン領域の機能を変化させるステップを含むことを特徴とする有機発光素子の製造方法を提供する。
【0009】
本発明の一実施状態によれば、前記有機物層または電極のうちの1層以上の層の所定パターン領域の機能を変化させるステップをDLP(digital light processing)を用いて行うことができる。
【0010】
また、本発明は、第1電極、前記第1電極上に配置された1層以上の有機物層および前記有機物層上に配置された第2電極を含む有機発光素子であって、前記有機物層または電極のうちの1層以上の層の所定パターン領域の機能が変化した有機発光素子を提供する。
【0011】
また、本発明は、
a)パターニングイメージを生成してシステムを制御するシステムコントロール部と、
b)UV供給部と、
c)前記システムコントロール部から受けたパターニングイメージ信号および前記UV供給部から受けたUVを用い、パターン化したUVイメージを生成した後にこれを照射するDLPシステム、および
d)前記DLPシステムから照射されたパターン化したUVイメージが照射される対象試料が取り付けられる試料部
を含む有機発光素子に発光パターンを付与する装置を提供する。
【発明の効果】
【0012】
有機発光素子が所定パターンに相応する領域の機能が全部または一部変化した層を含むようにし、所定パターンで発光する有機発光素子を簡便に製作することができる。パターンのある発光をするのに別途の素子が必要ではなく、前記工程が簡単で、製造工程が簡略化し、費用面で優れた効果を示す。特に、前記機能変化のためにDLPを用いる場合、フォトマスクなどを用いて所定パターンの発光をする有機発光素子を製作する場合に比べて容易にグレースケール(grayscale)を表現することができ、より微細で正確なグレースケールの制御が可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下では本発明についてより詳細に説明する。
【0014】
本発明に係る有機発光素子の製造方法は、有機発光素子が所定のパターンで発光できるように素子内部の有機物層または電極のうちの1以上の層の所定パターン領域の機能を変化させるステップを含むことを特徴とする。
【0015】
具体的に、前記有機物層または電極のうちの1層以上の層の所定パターン領域の機能を変化させるステップは、機能が変化する領域が有機発光素子の発光領域に相応するように前記領域に機能を付与するか、非発光領域に相応するように機能を喪失させるステップでありうる。
【0016】
本発明は、前記のようなステップを行うことにより、有機発光素子を構成する層のうちの1層以上の層において所定パターン領域とその他の残りの領域の機能を相異なるようにし、このように機能が相異なる領域を含む層が有機発光素子の発光パターンに影響を及ぼして有機発光素子が所定パターンで発光できるようにする。
【0017】
具体的に説明すれば、本発明では前記所定パターン領域の機能を変化させる層を有機物層または電極のうちから選択することができる。本発明において、前記所定パターン領域の機能を変化させる層が電荷輸送層、例えば、正孔を注入および/または輸送する層または電子を注入および/または輸送する層である場合、これらの層は前記ステップによって所定パターン領域の機能が変化することにより、所定パターン領域と残りの領域との間の電荷輸送効率が相異なるようになる。このような発光層への電荷輸送効率の差により、発光層から発生する光は前記電荷輸送層の所定パターン領域に対応する発光パターンを表すようになる。
【0018】
また、前記所定パターン領域の機能が変化する層が有機物層のうちの発光層である場合、発光層のうちの機能が変化した領域と機能が変化しない領域が相異なる発光効率を有するようになり、これに応じた発光パターンを表す。前記所定パターン領域の機能が変化する層が電極である場合にも類似原理が適用される。
【0019】
従来技術では、発光パターンを有する有機発光素子を製造するために、本来有機発光素子を構成する層以外の追加層、例えば絶縁層を所定パターンを有するように形成する必要があった。しかし、本発明では、前記のようなステップを含むことにより、従来技術とは異なり、追加層を形成するかその層をパターン化する工程を経る必要がなく、本来有機発光素子を構成する層のうちの1層以上に対し所定パターン領域の機能だけを変化させることにより、簡便に発光パターンを有する有機発光素子を製造することができる。これにより、本発明は、工程ステップを大きく簡素化することによって工程効率を高めるだけでなく、材料費用および工程費用の節減を期待することもできる。
【0020】
前記のような工程上の利点の他にも、本発明に係る有機発光素子の製造方法によって製造された有機発光素子は、本来有機発光素子を構成する層以外の他の層を含まないため、従来技術のように本来有機発光素子を構成する層以外の層を含むことによって生じ得る層間界面特性の劣化、発光効率の減少などの問題を防止することができる。
【0021】
また、パターン化した絶縁層を用いる従来技術では、絶縁層が形成された部分と形成されていない部分の各々の発光程度が0%および100%であり、いわゆるOn/Off方式で発光パターンを実現するしかなかった。しかし、本発明によれば、有機発光素子を構成する層のうちの1層以上の所定パターン領域の機能を変化させる程度を調節することにより、On/Off方式の発光パターンだけでなく、高発光部から中間発光部、低発光部まで発光程度が徐々に表されるグレースケール(gray scale)、すなわち豊かな階調(gradation)を備えた発光パターンも実現することができる。
【0022】
また、本発明では、前記層の所定パターン領域の機能を変化させる方法として様々な方法を選択して用いることができるため、パターン化した絶縁層を形成するためにマスクを必ず使わなければならない従来技術とは異なり、マスクがなくても発光パターンを有する有機発光素子を製造することができる。
【0023】
前述したように、本発明において、所定パターン領域の機能が変化する層は有機物層のうちの1層以上でありうる。前述したように、本発明に係る有機発光素子が多層構造の有機物層を有する場合、所定のパターン領域の機能が変化する有機物層は正孔注入層、正孔輸送層、発光層、電子輸送層および電子注入層のうちから選択される1以上の層であり得、前記層の機能のうちの2以上の機能を行う層であり得る。また、これらの機能のために形成された層ではなく、本発明の目的のために発光パターン形成を主な目的として別に形成された層でありうる。但し、発光効率面では前記有機物層が電荷輸送、例えば、正孔注入、正孔輸送、電子輸送または電子注入の機能を併行する層であることがより好ましい。また、本発明において、所定パターン領域の機能が変化する層は電極でありうるし、この場合、前記電極は正極、負極または正極と負極の全てに適用されることもできる。
【0024】
本発明において、前記有機物層または電極のうちの1層以上の層の所定パターン領域の機能を変化させるステップは、その目的を達成できる限り、特定方法に限定されるものではない。例えば、前記ステップは光学的方法によって行われ得、具体的には、UV、レーザ、e−ビーム(beam)などを用いて行うことができる。
【0025】
特に、前記有機物層または電極のうちの1層以上の層の所定パターン領域の機能を変化させる手段として、DLPを用いる場合にはより微細に所定パターン領域の機能を変化させることができる。
【0026】
DLPの原理は次の通りである。DLPはDigital Light Processingの略語であり、1987年Texas Instruments社の研究陣によって開発された。DLP方式はDMD(Digital Micromirror Device)を介して映像を処理する。DMDは一般的に75万個以上の微細な反射鏡の集合体で構成され得、反射鏡の原理を用いて映像を表わすため、光効率が良く、微細な画質の映像を表現できるという長所がある。
【0027】
デジタル方式は、アナログ方式に比べ、正確に所望の映像を高い信頼度の画質で表現することができ、製品の小型化、軽量化が可能であるという長所を有する。デジタル映像の基本構成は数多い0と1の信号組み合わせである。DLP技術の核心となるDMDモジュールは前記デジタル信号の組み合わせに応じて作動する方式であると言えるが、簡単に言えば、ビデオメモリやビデオプロセッサから伝えられるデジタル映像信号の組み合わせをDMDの構成要素である微細反射鏡の作動で表現するものである。
【0028】
例えば、DMDモジュールのマイクロミラーは横×縦16ミクロン大きさの正方形形態であり得、各反射鏡の間の間隔は1マイクロメーター未満で非常に精密に構成された形態であり得る。DLPを行うためのDMDモジュールに含まれたそれぞれのマイクロミラーは、0と1のデジタル信号を用いて鏡の両側端を動かす方式でデジタル映像信号を表現する。それぞれのマイクロミラーは左右方向に、例えば、約0°から約10°ずつ動くことができ、ビデオメモリに格納されたデジタル映像信号が各マイクロミラーの駆動装置に伝えられて作動する。このような鏡の動きは微細な画素で表され、画素の明暗はこのような原理で表される。前記DLPを行うためのDMDモジュールを構成するマイクロミラーは図6に例示した。但し、前記マイクロミラーの大きさおよび移動角度は本発明を例示するためのものであり、これによって本発明の範囲が限定されるものではない。
【0029】
前記DLPの方式は競技場のカードセクションと類似する原理である。カードセクションはそれぞれの板の一律的な動きを通して全体映像を表現する。DMDにおけるそれぞれの板は鏡からなっており、定められた位置で光源が一定方向に光を照らすと、各鏡の一律的な動きによって光が反射し、レンズに透過する部分と透過しない各部分が集められて1つの映像をなす。
【0030】
白黒画面を表現する場合には黒(Black)と百(Wtite)の他にもグレートーン(Gray Tone)の色感が表されなければならず、DMDではこのような色感表現を1秒当たり数千回に達する0と1のカードセクションの形態で表すことができる。例えば、DMD反射鏡が単位時間1000回の作動をするようにした時、0が出てくる比率と1が出てくる比率をそれぞれの反射鏡において微細に制御できるようにすれば、各画素の色トーンを非常に精密に制御することができる。DMDのマイクロミラーの作動速度は1秒当たり50万回以上になるようにすることができる。このような比率が黒(Black)と百(White)の明暗表現として感じられ、このような原理でグレースケール(Grayscle、白黒)の画面を純粋なデジタル方式で出力することができる。
【0031】
このような原理により、DLPはエネルギー源を有機物層または電極に選択的に加えることができ、これにより、有機物層または電極の所定パターン領域の機能を選択的に変化させることができる。
【0032】
例えば、前述した光学的方法によって機能が変わる有機物層は下記化学式1を含む層でありうる。下記化学式1の化合物は有機発光素子において正孔注入および/または輸送の役割をすることができるが、前述した光学的方法によって処理された領域はその機能を部分的にまたは全部失い得る。図10はUV照射量に応じた化学式1の化合物を含む有機物層の変形程度を示すグラフである。
【化1】

【0033】
前記化学式1において、R〜Rは各々水素、ハロゲン原子、ニトリル(−CN)、ニトロ(−NO)、スルホニル(−SOR)、スルホキシド(−SOR)、スルホンアミド(−SONR)、スルホネート(−SOR)、トリフルオロメチル(−CF)、エステル(−COOR)、アミド(−CONHRまたは−CONRR‘)、置換もしくは非置換の直鎖または分枝鎖のC−C12アルコキシ、置換もしくは非置換の直鎖または分枝鎖のC−C12アルキル、置換もしくは非置換の芳香族または非芳香族の複素環、置換もしくは非置換のアリール、置換もしくは非置換のモノ−またはジ−アリールアミン、および置換もしくは非置換のアラルキルアミンからなる群から選択され、前記RおよびR’は各々置換もしくは非置換のC−C60アルキル、置換もしくは非置換のアリール、および置換もしくは非置換の5−7員複素環からなる群から選択される。
【0034】
前記化学式1の化合物は下記化学式1−1〜1−6で示される化合物から選択することができる:
【化2】

【化3】

【0035】
本発明において、前記有機物層または電極のうちの1層以上の層の所定パターン領域の機能を変化させるステップは、変形させようとする層を形成させた後であれば、今後の他の有機物層が形成されるか、第2電極まで全て形成された後のステップにおいても遂行可能である。但し、所定パターン領域の機能を変化させようとする層を形成した後に他の有機物層または第2電極を形成する前に行うことが好ましい。
【0036】
また、前記有機物層または電極のうちの1層以上の層の所定パターン領域の機能を変化させるステップは、各パターン領域の位置に応じて機能の変化程度を調節し、例えば、光学的方法を用いる場合、露光量を調節して有機発光素子がオン/オフまたは様々な発光階調を表現することができる。例えば、所定パターン領域の機能の全部を変化させることにより、機能が変化した領域と機能が変化しない領域における発光の強度がオン/オフの2つで表される発光パターンを有するようにすることができる。また、機能の変化程度がいくつかのステップを有するようにパターン領域の位置に応じて露光量を調節し、相異なる2以上の発光強度が表される発光パターンを有するようにすることもできる。これに関わる例は図2と図3に示す。図2は、非発光領域にUVを照射して前記領域の機能を完全に喪失させて完成した有機発光素子が、発光領域Aと非発光領域Bの2つの発光強度、すなわちオン/オフだけで表されるようにした工程の例である。図3は、各区域別にUV照射量を調節できるフォトマスクを用いることにより、パターン領域の各位置の機能の変化程度を異にして有機発光素子が様々な発光強度を有するようにした工程の例である。図3において、各発光領域の発光強度を示すA、A‘、およびA“と非発光領域の発光強度を示すBは相異なる明るさを有し得る。また、パターン領域の機能を変化させる前記ステップはわずか1回のステップで行われることもできるが、相異なるパターン領域の少なくとも一部の機能を変化させるいくつかのステップに分けて行われることもできる。
【0037】
階調が表された発光パターンを有するようにするために、区域に応じて露光量を調節する方法としては、様々な材質または厚さのフォトマスクを用いるか、露光量を調節する方法がある。例えば、3以上の互いに異なる発光強度を有するパターンを表現するためには、色々な材質や厚さで構成され、区域に応じた光の透過度を調節できるフォトマスクを用いるか、様々な材質または厚さのフォトマスクをいくつか用いる方法または区域別に放出量を調節できる光源を用いる方法がある。
【0038】
DLPによる機能変化程度の調節方式は図5に例示した。その調節原理は前述した通りである。DLPを用いる場合も同じように所定パターン領域の機能の全部を変化させ、機能が変化した領域と機能が変化しない領域における発光の強度がオン/オフの2つで表される発光パターンを有するようにすることができる。また、機能の変化程度がいくつかのステップを有するように区域に応じた露光量を調節し、相異なる2以上の発光強度が表される発光パターンを有するようにすることもできる。
【0039】
本発明に係る有機発光素子は、前述したように、構成層のうちの1層以上の所定パターン領域の機能を変化させるステップを行うことを除いては、通常の有機発光素子の製造方法および材料を用いて製造することができる。例えば、本発明に係る有機発光素子は、スパッタリング(sputtering)や電子ビーム蒸発(e−beam evaporation)のようなPVD(physical vapor deposition)方法を用い、基板上に金属または導電性を有する金属酸化物またはこれらの合金を蒸着して正極を形成し、その上に正孔注入層、正孔輸送層、発光層および電子輸送層を含む有機物層を形成した後、その上に負極として用いることができる物質を蒸着することによって製造することができる。このような方法の他にも、前述したように、逆方向構造の有機発光素子を製作するために、基板上に負極物質から有機物層、正極物質を順次蒸着して有機発光素子を作ることもできる。
【0040】
前記有機物層は、様々な高分子素材を用いて、蒸着法ではない溶媒プロセス(solvent process)、例えば、スピンコーティング、ディップコーティング、ドクターブレード、スクリーン印刷、インクジェット印刷または熱転写法などの方法により、より少ない数の層に製造することができる。
【0041】
また、本発明は、前記製造方法を用いて製造された有機発光素子を提供する。第1電極、前記第1電極上に配置された1層以上の有機物層、および前記有機物層上に配置された第2電極を含む有機発光素子であって、前記有機物層または電極のうちの1層以上の層の所定パターン領域の機能が変化した層を有することを特徴とする。本発明の前記有機発光素子は、絶縁層を用いてパターンを形成する場合には、不可能な階調が表された発光パターンを有し得る。前記所定パターン領域の機能が変化した層は、有機発光素子の発光領域に相応するように本来層にない機能が付与されるか、非発光領域に相応するように本来層にある機能が喪失された層でありうる。
【0042】
本発明の有機発光素子は、所定パターン領域の少なくとも一部の機能が変形した有機物層を有することを除いては、通常の有機発光素子の構造を有し得る。本発明の有機発光素子のうちの有機物層は1層からなる単層構造であり得るが、発光層を含む2層以上の多層構造であり得る。本発明の有機発光素子の有機物層が多層構造である場合、これは、例えば、正孔注入層、正孔輸送層、発光層、電子輸送層などが積層された構造でありうる。しかし、有機発光素子の構造はこれに限定されるものではなく、より少ない数の有機物層を含むことができる。また、本発明において、所定パターン領域の機能が変化する層は電極であり得るし、この場合、前記電極は正極、負極または正極と負極の全てに適用されることもできる。本発明の有機発光素子は、正方向構造の有機発光素子または逆方向構造の有機発光素子でありうる。また、本発明に係る有機発光素子は、用いられる材料に応じて、前面発光型、背面発光型または両面発光型でありうる。
【0043】
また、本発明は、
a)パターニングイメージを生成してシステムを制御するシステムコントロール部と、
b)UV供給部と、
c)前記システムコントロール部から受けたパターニングイメージ信号および前記UV供給部から受けたUVを用い、パターン化したUVイメージを生成した後、これを照射するDLPシステム、および
d)前記DLPシステムから照射されたパターン化したUVイメージが照射される対象試料が取り付けられる試料部
を含む有機発光素子に発光パターンを付与する装置を提供する。
【0044】
前記a)システムコントロール部は、パターニングされるイメージを生成して前記装置全体のシステムを制御する部分であり、図7に例示したようにコンピュータを使うことができる。前記システムコントロール部は、後述する試料部において試料に形成されるパターニング模様を整列するために、試料部からアラインキーシグナル(align key signal)を受けて、試料部のアラインシステムの作動を制御する役割をすることができる。
【0045】
前記b)UV供給部はDLPシステムにUVを照射するパートである。前記UV供給部はUVランプおよびUVランプパワー供給装置(UV lamp power supply)で構成されることができる。また、実際試料に照射されるUV強度のフィードバックを受けてUV強度を一定強さに調節する機能をすることができる。
【0046】
前記c)DLPシステムは、前記a)システムコントロール部からパターニングするイメージ信号を受け、前記b)UV供給部から照射されたパターニングされていないUVをパターン化したイメージ形態のUVで生成し、これを試料部に取り付けられた試料に照射する機能をする。前記DLPシステムは前述したDMDで構成されることができる。
【0047】
前記d)試料部は、試料が取り付けられる所に真空チャンバーで構成されることができる。試料部はパターニング模様を整列するためのアラインシステム(Align System)およびUV強度を測定するためのセンサなどで構成されることができる。
【0048】
前記有機発光素子に発光パターンを付与する装置については図8を参照して説明する。
【0049】
但し、図8は本発明を例示するためのものであり、これによって本発明の範囲が限定されるものではない。
【0050】
本発明に係る装置において、前記b)UV供給部はUVランプパワー供給装置および前記UVランプパワー供給装置から電力の供給を受けて作動するUVランプで構成されることができる。
【0051】
前記c)DLPシステムは、前記a)システムコントロール部からパターニングイメージ信号が伝送され、デジタルイメージ信号に切り替える映像処理駆動部と;前記映像処理駆動部からイメージ信号を受け、前記b)UV供給部から供給されたUVをパターン化するDMDモジュールと;前記DMDモジュールから出たパターン化したイメージ形態のUVを試料部に照射するUVプロジェクション部と;前記b)UV供給部と前記DMDモジュールとの間に位置するUV光学レンズ;および前記DMDモジュールと前記UVプロジェクション部との間に位置するUV光学レンズを含むことができる。
【0052】
前記d)試料部は、内部に備えられた試料支持台と;前記c)DLPシステムのUVプロジェクション部に相応する領域に備えられたUV光学ウィンドウを含む真空チャンバーと;前記b)UV供給部のUVランプパワー供給装置と連結されたUV強度センサ;および前記試料支持台と前記a)システムコントロール部に連結された試料アラインシステムを含むことができる。
【0053】
具体的に、本発明に係る有機発光素子に発光パターンを付与する装置は次のような方法によって駆動する。システムコントロール部は、試料に形成されるパターニング模様を整列するためにアラインキーシグナル(align key signal)を受けてパターニングイメージを生成し、これを映像処理駆動部に伝送する。前記映像処理駆動部は、パターニングイメージ信号をデジタルイメージ信号に切り替えてDMDモジュールに伝送する。前記UV供給部は、一定強さのパターニングしていないUVを、UV光学フィルムを介してDMDモジュールに供給する。前記DMDモジュールは、前記デジタルイメージ信号とパターニングしていないUVを受けて、前記UVをパターン化したUVイメージに切り替え、これをUV光学フィルム、UVプロジェクション部およびUV光学ウィンドウを介して真空チャンバーで構成された試料部内に取り付けられた試料に照射する。前記試料部の試料アラインシステムは、試料に形成されるパターニング模様を整列するために、アラインキーシグナルを受けてシステムコントロール部に伝送し、これにより、システムコントロール部はアラインシステムの駆動を制御する。また、試料部のUV強度センサはUVの強度を測定し、この信号をUVパワー供給装置に伝達してUV強度が調節されるようにする。前記有機発光素子に発光パターンを付与する装置の駆動原理は図9に例示した。
【実施例】
【0054】
以下、本発明の理解を助けるために望ましい実施例を提示する。但し、下記の実施例は本発明を例示するためのものであり、これによって本発明の範囲が限定されるものではない。
【0055】
実施例1
ITO(indium tin oxide)が1500Åの厚さで薄膜コーティングされたガラス基板を、洗剤を溶かした蒸留水に入れて超音波で洗浄した。ITOを30分間洗浄した後、蒸留水で2回繰り返して超音波洗浄を10分間進行した。蒸留水による洗浄が終わった後、イソプロピルアルコール、アセトン、メタノールの溶剤で超音波洗浄をして乾燥した後、プラズマ洗浄機に輸送した。また、酸素プラズマを用いて前記基板を5分間洗浄した後、真空蒸着機に基板を輸送した。
【0056】
このように準備したITO透明電極上に下記化学式のヘキサニトリルヘキサアザトリフェニレン(hexanitrile hexaazatriphenylene、HAT)を100Åの厚さで熱真空蒸着して正孔注入層を形成した後、ソーダ石灰(sodalime)材質のパターンマスクを用い、1kW容量の高圧水銀UVランプを用いてUVを約5分間照射した。
【0057】
【化4】

前記正孔注入層上に正孔を輸送する物質である4,4‘−ビス[N−(1−ナフチル)−N−フェニルアミノ]ビフェニル(NPB)400Åを真空蒸着して正孔輸送層を形成した。次に、前記正孔輸送層上に下記化学式のAlq3発光体を真空蒸着して発光層を形成した。
【化5】

前記発光層上に下記化合物を200Åの厚さで真空蒸着して電子注入および輸送層を形成した。
【化6】

前記電子注入および輸送層上に12Å厚さでフッ化リチウム(LiF)と2000Å厚さでアルミニウムを順次蒸着して負極を形成した。
【0058】
前記過程において、有機物の蒸着速度は0.4〜0.7Å/secを維持し、負極のフッ化リチウムは0.3Å/sec、アルミニウムは2Å/secの蒸着速度を維持し、蒸着時における真空度は2x10−7〜5x10−8torrを維持した。
【0059】
前記で製造された有機発光素子に5.7Vの順方向電界を加えて発光させれば、UVに露出して有機物の特性に変化が生じたところの発光特性が違うように表れるパターンが見られ、これを図4に示す。
【図面の簡単な説明】
【0060】
【図1】従来のパターン化した絶縁層を含む有機発光素子を示す断面図である。
【図2】本発明の一実施状態である露光によって特定有機物層の所定パターン領域の機能を変化させる工程を示す断面図である。
【図3】露光程度を区域別に調節して特定有機物層の所定パターン領域の機能を変化させる工程を示す断面図である。
【図4】実施例1で製作された素子の発光パターンを示す。
【図5】DLPを用いて露光程度を区域別に調節することによってデジタルパターニングイメージの形状通りに有機物層を変形させる工程を示す断面図である。
【図6】DLPを行うためのDMD(digital micromirror device)を構成するマイクロミラーの作動様子を顕微鏡で拡大したものである。
【図7】DLPを用いた装置の概略図である。
【図8】DLPを用いた装置の詳細図である。
【図9】DLPを用いた装置の駆動原理を示す概略図である。
【図10】UV照射量に応じた有機物層の変形程度に対するグラフである。
【符号の説明】
【0061】
10;基板
20;第1電極
30;絶縁層
50;発光層
40,45,60,65;発光層以外の有機物層
70;第2電極

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1電極を準備するステップと、前記第1電極上に1層以上の有機物層を形成するステップ、および前記有機物層上に第2電極を形成するステップを含む有機発光素子の製造方法であって、前記有機物層または電極のうちの1層以上の層の所定パターン領域の機能を変化させるステップを含む有機発光素子の製造方法。
【請求項2】
前記有機物層または電極のうちの1層以上の層の所定パターン領域の機能を変化させるステップは、機能が変化する領域が有機発光素子の発光領域に相応するように前記領域に機能を付与するか、機能が変化する領域が非発光領域に相応するように前記領域の機能を喪失させるステップである、請求項1に記載の有機発光素子の製造方法。
【請求項3】
前記所定パターン領域の機能が変化する層は、正孔注入、正孔輸送、発光、電子輸送および電子注入のうちから選択される1以上の機能を有する有機物層である、請求項1に記載の有機発光素子の製造方法。
【請求項4】
前記所定パターン領域の機能が変化する層は下記化学式1の化合物を含む有機物層である、請求項1に記載の有機発光素子の製造方法:
【化1】

前記化学式1において、R〜Rは各々水素、ハロゲン原子、ニトリル(−CN)、ニトロ(−NO)、スルホニル(−SOR)、スルホキシド(−SOR)、スルホンアミド(−SONR)、スルホネート(−SOR)、トリフルオロメチル(−CF)、エステル(−COOR)、アミド(−CONHRまたは−CONRR‘)、置換もしくは非置換の直鎖または分枝鎖のC−C12アルコキシ、置換もしくは非置換の直鎖または分枝鎖のC−C12アルキル、置換もしくは非置換の芳香族または非芳香族の複素環、置換もしくは非置換のアリール、置換もしくは非置換のモノ−またはジ−アリールアミン、および置換もしくは非置換のアラルキルアミンからなる群から選択され、前記RおよびR’は各々置換もしくは非置換のC−C60アルキル、置換もしくは非置換のアリール、および置換もしくは非置換の5−7員複素環からなる群から選択される。
【請求項5】
前記所定パターン領域の機能が変化する層は正極、負極または正極と負極の全てである、請求項1に記載の有機発光素子の製造方法。
【請求項6】
前記有機物層または電極のうちの1層以上の層の所定パターン領域の機能を変化させるステップは光学的方法によって行われる、請求項1に記載の有機発光素子の製造方法。
【請求項7】
前記有機物層または電極のうちの1層以上の層の所定パターン領域の機能を変化させるステップはUV、レーザ、またはe−ビーム(beam)の照射によって行われる、請求項6に記載の有機発光素子の製造方法。
【請求項8】
前記有機物層または電極のうちの1層以上の層の所定パターン領域の機能を変化させるステップはDLP(digital light processing)を用いて行われる、請求項6に記載の有機発光素子の製造方法。
【請求項9】
前記有機物層または電極のうちの1層以上の層の所定パターン領域の機能を変化させるステップを、所定パターン領域の機能が変化する層を形成した後、その上に他の層を形成する前に行う、請求項1に記載の有機発光素子の製造方法。
【請求項10】
前記有機物層または電極のうちの1層以上の層の所定パターン領域の機能を変化させるステップは、区域に応じた露光量の調節で有機物または電極材料の機能の変化程度を調節して、有機発光素子が2以上の発光強度を表すことができるようにする、請求項1に記載の有機発光素子の製造方法。
【請求項11】
前記露光量調節はフォトマスクの透過度を調節する方法または光源の光の強さを調節する方法によって行われる、請求項10に記載の有機発光素子の製造方法。
【請求項12】
第1電極、前記第1電極上に配置された1層以上の層の有機物層および前記有機物層上に配置された第2電極を含む有機発光素子であって、前記有機物層または電極のうちの1層以上の層が所定パターン領域の機能が変化した層である有機発光素子。
【請求項13】
前記所定パターン領域の機能が変化した層は、有機発光素子の発光領域に相応するように本来層にない機能が付与されるか、非発光領域に相応するように本来層にある機能が喪失される層である、請求項12に記載の有機発光素子。
【請求項14】
前記所定パターン領域の機能が変化した層は正孔注入、正孔輸送、発光、電子輸送および電子注入のうちから選択される1以上の機能を有する、請求項12に記載の有機発光素子。
【請求項15】
前記所定パターン領域の機能が変化した層は下記化学式1の化合物を含む有機物層である、請求項14に記載の有機発光素子:
【化2】

前記化学式1において、R〜Rは各々水素、ハロゲン原子、ニトリル(−CN)、ニトロ(−NO)、スルホニル(−SOR)、スルホキシド(−SOR)、スルホンアミド(−SONR)、スルホネート(−SOR)、トリフルオロメチル(−CF)、エステル(−COOR)、アミド(−CONHRまたは−CONRR‘)、置換もしくは非置換の直鎖または分枝鎖のC−C12アルコキシ、置換もしくは非置換の直鎖または分枝鎖のC−C12アルキル、置換もしくは非置換の芳香族または非芳香族の複素環、置換もしくは非置換のアリール、置換もしくは非置換のモノ−またはジ−アリールアミン、および置換もしくは非置換のアラルキルアミンからなる群から選択され、前記RおよびR’は各々置換もしくは非置換のC−C60アルキル、置換もしくは非置換のアリール、および置換もしくは非置換の5−7員複素環からなる群から選択される。
【請求項16】
前記所定パターン領域の機能が変化した層は正極、負極または正極と負極の全てである、請求項12に記載の有機発光素子。
【請求項17】
前記所定パターン領域の機能が変化した層は光学的方法によってその機能が変化したものである、請求項12に記載の有機発光素子。
【請求項18】
前記所定パターン領域の機能が変化した層は、その機能がUV、レーザ、またはe−ビーム(beam)の照射によって変化したものである、請求項12に記載の有機発光素子。
【請求項19】
前記所定パターン領域の機能が変化した層は、その機能がDLP(digital light processing)によって変化したものである、請求項12に記載の有機発光素子。
【請求項20】
前記所定パターン領域の機能が変化する層の機能を変化させる時、区域に応じた露光量の調節で有機物または電極材料の機能の変化程度が調節され、有機発光素子が2以上の発光強度を表すことができる、請求項12に記載の有機発光素子。
【請求項21】
請求項12〜20のうちのいずれか1項による有機発光素子を含む電子装置。
【請求項22】
a)パターニングイメージを生成してシステムを制御するシステムコントロール部と、
b)UV供給部と、
c)前記システムコントロール部から受けたパターニングイメージ信号および前記UV供給部から受けたUVを用い、パターン化したUVイメージを生成した後、これを照射するDLPシステム、および
d)前記DLPシステムから照射されたパターン化したUVイメージが照射される対象試料が取り付けられる試料部
を含む有機発光素子に発光パターンを付与する装置。
【請求項23】
前記b)UV供給部は、UVランプパワー供給装置およびUVランプを含む、請求項22に記載の有機発光素子に発光パターンを付与する装置。
【請求項24】
前記c)DLPシステムは、前記a)システムコントロール部からパターニングイメージ信号が伝送され、デジタルイメージ信号に切り替える映像処理駆動部と;前記映像処理駆動部からイメージ信号を受け、前記b)UV供給部から供給されたUVをパターン化するDMDモジュールと;前記DMDモジュールから出たパターン化したイメージ形態のUVを試料部に照射するUVプロジェクション部と;前記b)UV供給部と前記DMDモジュールとの間に位置するUV光学レンズ;および前記DMDモジュールと前記UVプロジェクション部との間に位置するUV光学レンズを含む、請求項22に記載の有機発光素子に発光パターンを付与する装置。
【請求項25】
前記d)試料部は、内部に備えられた試料支持台と;前記c)DLPシステムのUVプロジェクション部に相応する領域に備えられたUV光学ウィンドウを含む真空チャンバーと;前記b)UV供給部のUVランプパワー供給装置と連結されたUV強度センサ;および前記試料支持台と前記a)システムコントロール部に連結された試料アラインシステムを含む、請求項22に記載の有機発光素子に発光パターンを付与する装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公表番号】特表2009−535779(P2009−535779A)
【公表日】平成21年10月1日(2009.10.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−509419(P2009−509419)
【出願日】平成19年5月3日(2007.5.3)
【国際出願番号】PCT/KR2007/002183
【国際公開番号】WO2007/129834
【国際公開日】平成19年11月15日(2007.11.15)
【出願人】(500239823)エルジー・ケム・リミテッド (1,221)
【Fターム(参考)】