説明

発光パネルおよび画像印刷装置

【課題】 静電潜像の書き込みのための発光パネルの数が少ない多色の電子写真方式の画像印刷装置を提供する。
【解決手段】 画像印刷装置の発光パネル10は、与えられた電気エネルギにより発光特性が変化する複数の発光素子14A,14Bが配列されており、互いに異なる像を構成する光束を両面から放出可能である。感光体ドラム110Y,110M,110C,110Kのうち二つ(例えば、感光体ドラム110Y,110M)の各々の表面には、発光パネル10の片面から放出された光束が照射されることによって静電潜像が形成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、両面発光可能な発光パネルおよびこの発光パネルを用いることが好ましい電子写真方式の画像印刷装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、基板上にEL素子(エレクトロルミネッセンス素子)などの発光素子を備える発光パネルが開発されている。このような発光パネルは表示装置として利用されるだけでなく、例えば、特許文献1および特許文献2に開示されているように、電子写真方式の画像印刷装置の像担持体(例えば感光体ドラム)に静電潜像を書き込むためにも利用されている。
【0003】
ところで、表示装置としては、両面発光可能な発光パネルが開発されている。例えば、特許文献3から特許文献5には、両面に互いに異なる画像を表示可能な発光パネルが開示されている。これらの発光パネルの各々は、中央に設けられた共通陰極層と、共通陰極層の両側に設けられた一対の発光層と、発光層の外側に設けられた一対の個別の陽極層を有する。従って、共通陰極層の両面にそれぞれ発光部が設けられている。
【0004】
【特許文献1】特開2004−195676号公報
【特許文献2】特開2004−195677号公報
【特許文献3】特開平5−109483号公報
【特許文献4】特開2000−58260号公報
【特許文献5】特開2002−304961号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来、一つの発光パネルで一つの像担持体にしか静電潜像を書き込む画像印刷装置しか提案されていない。従って、フルカラーの画像印刷装置では、シアン、マゼンタ、ブルーおよびブラックの4色の顕像に相当する潜像を得るために、4つの発光パネルが必要である。2色の画像印刷装置では、2つの発光パネルが必要である。
【0006】
一方、共通陰極層の両面にそれぞれ発光部が設けられた発光パネルは層の数が多いために、その製造工程が多い。
【0007】
そこで、本発明は、静電潜像の書き込みのための発光パネルの数が少ない多色の電子写真方式の画像印刷装置、およびこれに利用することが可能な製造工程が少ない発光パネルを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る発光パネルは、与えられた電気エネルギにより発光特性が変化する複数の発光素子が配列されており、互いに異なる像を構成する光束を両面から放出可能である発光パネルであって、一方の面から光束を放出可能な第1の領域と、他方の面から光束を放出可能な第2の領域とを備えており、前記発光素子の各々は、第1の電極層と第2の電極層の間に介在して、前記第1の電極層と前記第2の電極層の間の電圧に応じて発光する発光層を有しており、前記第1の領域における前記発光素子の前記第1の電極層、前記発光層および前記第2の電極層は、前記第2の領域における前記発光素子の前記第1の電極層、前記発光層および前記第2の電極層とそれぞれ同じ平面内にあり、前記第1の領域における前記第1の電極層は、前記第2の領域における前記第1の電極層と同じ透明材料から形成され、前記第1の領域における前記発光層は、前記第2の領域における前記発光層と同じ材料から形成され、前記第1の領域における前記発光層の前記第2の電極層側にはこの発光層からの光を反射する反射層が配置され、前記第2の領域における前記第2の電極層は透明材料から形成され、前記第2の領域において前記第1の電極層を挟んで前記発光層の反対側には光反射材料から形成された反射層が配置されていることを特徴とする。
【0009】
この発光パネルでは、第1の領域においては、発光層の第2の電極層側にはこの発光層からの光を反射する反射層が配置され、第1の電極層が透明材料から形成されているので、発光層からの光は第1の電極層を通って外部に放出される。他方、第2の領域においては、第2の電極層は透明材料から形成され、第1の電極層を挟んで発光層の反対側には反射層が配置されているので、発光層からの光は第2の電極層を通って外部に放出される。従って、発光パネルの両面から光が放出される。
第1の領域および第2の領域における第1の電極層は、互いに同じ平面内にあり同じ透明材料から形成されているので、同じ素材でほぼ同時に形成することが可能である。また、第1の領域および第2の領域における発光層は、互いに同じ平面内にあり同じ材料から形成されているので、同じ素材でほぼ同時に形成することが可能である。従って、製造工程が少ない。
【0010】
この発光パネルにおいて、前記第1の領域の前記第2の電極層が光反射材料から形成されており、前記第1の領域における前記反射層として機能するようにしてもよい。この構成では、第1の領域では、第2の電極層が反射層の役割を兼ねるので、層の数ひいてはパネルの厚さの増大を抑えることが可能である。
【0011】
別の態様として、前記第1の領域における前記第2の電極層は、前記第2の領域における前記第2の電極層と共通であって、透明材料から形成され、前記第1の領域において前記第2の電極層を挟んで前記発光層の反対側に光反射材料から形成された前記反射層が配置されているようにしてもよい。この構成では、第1の領域における第2の電極層は、第2の領域における第2の電極層と共通であるので、両方の領域での第2の電極層のパターニングの手間が不要である。
【0012】
本発明に係る画像印刷装置は、与えられた電気エネルギにより発光特性が変化する複数の発光素子が配列されており、互いに異なる像を構成する光束を両面から放出可能である発光パネルと、前記発光パネルの片面から放出された光束が各々の表面に照射されることによって前記表面に潜像が形成される少なくとも二つの像担持体と、前記潜像にトナーを付着させることにより前記像担持体の表面に顕像を形成する現像器と、前記像担持体から前記顕像を他の物体に転写する転写器とを備える。ここで「像担持体」とは、典型的には感光体ドラムであるが、無端ベルトの形状を有する感光体ベルトでもよい。
【0013】
この画像印刷装置においては、両面発光可能な発光パネルを二つの像担持体での静電潜像の書き込みのために使用するので、多色の印刷が可能でありながら、発光パネルの数が少ない。
【0014】
この画像印刷装置の前記発光パネルは、本発明に係る前記のいずれかの発光パネルであると好ましい。
【0015】
また、この画像印刷装置は、少なくとも二つの前記像担持体から前記転写器により前記顕像が転写される中間転写体と、前記像担持体の一方と前記発光パネルの間に配置され、前記発光パネルの片面から放出された光束を反射して、前記像担持体の一方に照射させるミラーとを備えると好ましい。「中間転写体」とは、典型的には無端ベルトの形状を有する中間転写ベルトであるが、中間転写ドラムでもよい。二つの像担持体から中間転写体に一旦顕像を転写するタイプの画像印刷装置においては、像担持体の各々に顕像を形成する現像器を静電潜像書込位置の下流、かつ中間転写体への顕像転写位置の上流に配置すべきである。従って、各像担持体においては、静電潜像書込位置の下流、かつ中間転写体への顕像転写位置の上流に、現像器を配置する広いスペースを設けるべきである。しかし、両面発光可能な発光パネルで二つの像担持体に静電潜像を書き込む場合には、一方の像担持体については、静電潜像書込位置から顕像転写位置までのスペースが狭くなって、現像器を配置することができないおそれがある。両面発光可能な発光パネルの片面から放出された光束を反射して、像担持体の一方に照射させるミラーを設けることにより、その像担持体についての静電潜像書込位置から顕像転写位置までのスペースを広く確保し、そこに現像器を設けることが容易である。
【0016】
別の態様として、この画像印刷装置は、少なくとも二つの前記像担持体から前記転写器により前記顕像が転写される中間転写ベルトと、前記像担持体の一方から前記中間転写ベルトに前記顕像が転写される位置での前記中間転写ベルトの角度と、前記像担持体の他方から前記中間転写ベルトに前記顕像が転写される位置での前記中間転写ベルトの角度とを異ならせるように、前記中間転写ベルトに接触するベルト方向制御体とを備えると好ましい。両面発光可能な発光パネルで二つの像担持体に静電潜像を書き込む場合には、一方の像担持体については、静電潜像書込位置から顕像転写位置までのスペースが狭くなって、現像器を配置することができないおそれがある。ベルト方向制御体で、像担持体の一方についての顕像転写位置での中間転写ベルトの角度を像担持体の他方についての顕像転写位置での中間転写ベルトの角度と異ならせることにより、一方の像担持体についての静電潜像書込位置から顕像転写位置までのスペースを広く確保し、そこに現像器を設けることが容易である。
【0017】
さらに他の態様として、この画像印刷装置は、シートを保持して搬送し、搬送されている前記シートに、少なくとも二つの前記像担持体から前記転写器により前記顕像が転写されるように配置されたシート搬送体と、前記像担持体の一方と前記発光パネルの間に配置され、前記発光パネルの片面から放出された光束を反射して、前記像担持体の一方に照射させるミラーとを備えると好ましい。「シート搬送体」とは、典型的には無端ベルトの形状を有するシート搬送ベルトであるが、シート搬送ドラムでもよい。この場合にも、両面発光可能な発光パネルの片面から放出された光束を反射して、像担持体の一方に照射させるミラーを設けることにより、その像担持体についての静電潜像書込位置から顕像転写位置までのスペースを広く確保し、そこに現像器を設けることが容易である。
【0018】
さらに他の態様として、シートを保持して搬送し、搬送されている前記シートに、少なくとも二つの前記像担持体から前記転写器により前記顕像が転写されるように配置されたシート搬送ベルトと、前記像担持体の一方から前記シート搬送ベルト上の前記シートに前記顕像が転写される位置での前記シート搬送ベルトの角度と、前記像担持体の他方から前記シート搬送ベルト上の前記シートに前記顕像が転写される位置での前記シート搬送ベルトの角度とを異ならせるように、前記シート搬送ベルトに接触するベルト方向制御体とを備えると好ましい。ベルト方向制御体で、像担持体の一方についての顕像転写位置でのシート搬送ベルトの角度を像担持体の他方についての顕像転写位置でのシート搬送ベルトの角度と異ならせることにより、一方の像担持体についての静電潜像書込位置から顕像転写位置までのスペースを広く確保し、そこに現像器を設けることが容易である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、添付の図面を参照しながら本発明に係る様々な実施の形態を説明する。これらの図面においては、各部の寸法の比率は実際のものとは適宜に異ならせてある。
【0020】
<発光パネル>
図1は、本発明の実施の形態に係る発光パネル10を示す断面図である。図2はこの電気光学装置の平面図である。より具体的には、図1は図2のA−A線矢視断面図である。
【0021】
図に例示された発光パネル10は、電子写真方式を利用した多色の画像印刷装置における二つの像担持体(例えば図4に示すように感光体ドラム110)に潜像を書き込むためのライン型の光ヘッドとして用いられる。発光パネル10には、与えられた電気エネルギにより発光特性が変化する複数の発光素子14A,14Bが同一平面上に配列されている。発光パネル10は、互いに異なる像を構成する光束を両面から放出するために、図1における上面から光束を放出可能な第1の領域12Aと、下面から光束を放出可能な第2の領域12Bとを備える。
【0022】
この実施の形態で、発光素子は有機発光ダイオード(Organic Light Emitting Diode、以下「OLED」と略称する)素子であり、各発光素子は印加された電圧に応じて発光する。発光パネル10は平板状の基板18を備える。基板18は、ガラスまたはプラスチックなどの適切な透明材料により形成されている。基板18の上には駆動素子層20が形成されており、その上には多数の発光素子14A,14Bが形成されている。
【0023】
第1の領域12Aの発光素子14Aのアレイおよび第2の領域12Bの発光素子14Bのアレイの各々は、図2に示すように、二列かつ千鳥状のパターンで配列されている。発光素子の配列パターンは図示の形態に限定されず、単列または三列以上でもよいし他の適切なパターンで配列されていてもよい。
【0024】
駆動素子層20の内部の詳細な図示は省略するが、ここには、複数のTFT(薄膜トランジスタ)素子およびTFT素子に電流を供給する線が設けられている。TFT素子はそれぞれ発光素子に駆動電圧を与える。
【0025】
第1の領域12Aでは、各発光素子14Aから発せられた光が、基板18側に図1の下方に進行する。すなわち、第1の領域12Aは、ボトムエミッションタイプのOLED発光パネルと等価である。他方、第2の領域12Bでは、各発光素子14Bから発せられた光が、基板18とは反対側に図1の上方に進行する。すなわち、第2の領域12Bは、トップエミッションタイプのOLED発光パネルと等価である。但し、以下に説明するように、領域12A,12Bの構成要素の大部分は共通である。
【0026】
発光素子14A,14Bの各々は、駆動素子層20の上に形成された陽極層(第1の電極層)22と、陽極層22上に成膜された正孔注入層24と、その上に成膜された発光層26と、その上に成膜された陰極層(第2の電極層)28Aまたは28Bを有する。正孔注入層24および発光層26は、絶縁層30および隔壁32で画定された凹部内に形成されている。
【0027】
第1の領域12Aにおける発光素子14Aの陽極層22、正孔注入層24、発光層26および陰極層28Aは、第2の領域12Bにおける発光素子14Bの陽極層22、正孔注入層24、発光層26および陰極層28Aとそれぞれ同じ平面内にある。また、第1の領域12Aにおける絶縁層30と第2の領域12Bにおける絶縁層30は共通であり、第1の領域12Aにおける隔壁32と第2の領域12Bにおける隔壁32は同じ平面内にあり同じ材料から形成されている。絶縁層30の材料には例えばSiOがあり、隔壁32の材料には例えばポリイミドまたはアクリルがある。
【0028】
第1の領域12Aにおける陽極層22は、第2の領域12Bにおける陽極層22と同じ透明材料、例えばITO(Indium Tin Oxide)から形成されている。第1の領域12Aにおける正孔注入層24は、第2の領域12Bにおける正孔注入層24と同じ材料から形成されている。第1の領域12Aにおける発光層26も、第2の領域12Bにおける発光層26と同じ材料から形成されている。
【0029】
第1の領域12Aでは、各発光素子14Aの発光層26から発せられた光を下方に放出させるために、発光層26の陰極層28A側に、発光層26からの光を反射する反射層が設けられる。この実施の形態では、第1の領域12Aの陰極層28Aが例えばアルミニウム、白金または銀のような光反射特性が良好な導電材料から形成されており、第1の領域12Aにおける反射層として機能する。陰極層28Aは、第1の領域12A内の複数の発光素子14Aにとって共通である。
【0030】
他方、第2の領域12Bでは、各発光素子14Bの発光層26から発せられた光を上方に放出させるために、陰極層28Aは透明材料、例えばITOから形成されている。陰極層28Bは、第2の領域12B内の複数の発光素子14Bにとって共通である。陰極層28A,28Bは図示のように互いに接触していてもよいし接触していなくてもよい。また、第2の領域12Bにおいて、陽極層22を挟んで発光層26の反対側には、例えばアルミニウム、白金または銀のような光反射特性が良好な導電材料から形成された反射層33が配置されている。反射層33は、駆動素子層20の最上層にあり、第2の領域12Bの陽極層22に接触している。
【0031】
この実施の形態の各発光素子の構成は上記の通りであるが、本発明に利用可能な発光素子のバリエーションとしては、陰極層と発光層の間に電子注入層を設けたタイプや、適切な位置に絶縁層を設けたタイプなど他の層を有するタイプであってもよい。
【0032】
陰極層28A,28Bには、透明な接着剤34により封止体36が接合されている。接着剤34としては、例えば透明なエポキシ系の紫外線硬化性プラスチック、透明なアクリル系の紫外線硬化性プラスチックまたは各種の透明な熱硬化性プラスチックが使用しうる。接着剤34は、好ましくは封止体36と同等または類似の屈折率を有する。
【0033】
封止体36は、発光素子14A,14Bが形成された基板18と協働して発光素子14A,14Bを封止する。すなわち、封止体36は基板18と協働して、発光素子14A,14Bを外気、特に水分および酸素から隔離してその劣化を抑制する。封止体36は、ガラスまたはプラスチックなどの適切な透明材料により形成されている。
【0034】
この発光パネル10では、第1の領域12Aにおいては、発光層26の陰極層28A側にはこの発光層26からの光を反射する反射層(陰極層28A)が配置され、陽極層22が透明材料から形成されているので、発光層26からの光は陽極層22を通って外部に放出される。他方、第2の領域12Bにおいては、陰極層28Bは透明材料から形成され、陽極層22を挟んで発光層26の反対側には反射層33が配置されているので、発光層26からの光は陰極層28Bを通って外部に放出される。従って、発光パネル10の両面から光が放出される。
【0035】
この発光パネル10において、領域12A,12Bの多くの構成要素が共通であるので、製造工程が少なくて済む。例えば、領域12A,12Bにおける陽極層22は、互いに同じ平面内にあり同じ透明材料から形成されているので、同じ素材でほぼ同時に形成することが可能である。また、領域12A,12Bにおける発光層26は、互いに同じ平面内にあり同じ材料から形成されているので、同じ素材でほぼ同時に形成することが可能である。
【0036】
また、この発光パネル10においては、第1の領域12Aでは、陰極層28Aが発光層16からの光を下方に反射する反射層の役割を兼ねる。従って、層の数ひいてはパネルの厚さの増大を抑えることが可能である。
【0037】
図3は、発光パネル10の変形例を示す断面図である。図3も図2のA−A線矢視断面図とみなしてよい。図3において、上述した構成要素と同様の構成要素を示すために同一の参照符号が使用されており、これらの構成要素については詳細には以下で説明しない。
【0038】
この変形例では、第1の領域12Aおよび第2の領域12Bにおける共通の陰極層(第2の電極層)28Cが設けられている。すなわち陰極層28Cは、領域12A,12Bのすべての発光層26上に成膜されている。陰極層28Cは透明材料、例えばITOから形成されている。
【0039】
第1の領域12Aにおいて陰極層28Cを挟んで発光層26の反対側には、例えばアルミニウム、白金または銀のような光反射特性が良好な導電材料から形成された反射層38が配置されている。反射層38は、第1の領域12Aの陰極層28Cに接触している。第1の領域12Aの反射層38および第2の領域12Bの陰極層28Cには、透明な接着剤34により封止体36が接合されている。
【0040】
この変形例では、第1の領域12Aにおいては、発光層26の陰極層28A側にはこの発光層26からの光を反射する反射層38が配置され、陽極層22が透明材料から形成されているので、発光層26からの光は陽極層22を通って外部に放出される。他方、第2の領域12Bにおいては、陰極層28Bは透明材料から形成され、陽極層22を挟んで発光層26の反対側には反射層33が配置されているので、発光層26からの光は陰極層28Bを通って外部に放出される。従って、発光パネル10の両面から光が放出される。
【0041】
この構成では、第1の領域12Aにおける陰極層28Cが、第2の領域12Bにおける陰極層28Cと共通であるので、図1の実施の形態に比べて陰極層のパターニングの手間が不要である。
【0042】
<画像印刷装置>
図4は、上記の発光パネル10の使用状態を示す概略図である。図示のように、発光パネル10は、電子写真方式を利用した多色の画像印刷装置における二つの像担持体(例えば図4に示すように感光体ドラム110)に静電潜像を書き込むためのライン型の光ヘッドとして用いられる。画像印刷装置の例としては、プリンタ、複写機の印刷部分およびファクシミリの印刷部分がある。図4では、第1の領域12Aの発光素子14Aによって、下方の感光体ドラム110に静電潜像を書き込み、第1の領域12Bの発光素子14Bによって、上方の感光体ドラム110に静電潜像を書き込む。
【0043】
感光体ドラム110と発光パネル10の間の中間地点には、集束性レンズアレイ40が配置されている。発光パネル10の発光素子14Aまたは14Bからの光は、集束性レンズアレイ40の複数の屈折率分布型レンズ42を透過し、感光体ドラム110に到達する。集束性レンズアレイ40は、複数の屈折率分布型レンズ42を有する。屈折率分布型レンズ42の各々は、中心軸すなわち光軸での屈折率が低く、中心軸から離れるほど屈折率が高くなるように形成されたグレーデッドインデックス光ファイバであり、発光パネル10から進行する光を透過させて発光パネル10上の像に対する正立像を感光体ドラム110に結像可能である。これらの複数の屈折率分布型レンズ42で得られた像は感光体ドラム110上で1つの連続した像を構成する。集束性レンズアレイ40の具体例には、例えば日本板硝子株式会社から入手可能なSLA(セルフォック・レンズ・アレイ)がある(セルフォック\SELFOCは日本板硝子株式会社の登録商標)。
【0044】
図示の屈折率分布型レンズ40では、屈折率分布型レンズ42は二列かつ千鳥状のパターンで配列されており、図4に仮想線で示された集束性レンズアレイ40の筐体に固定されている。但し、屈折率分布型レンズ42の配列パターンは図示の形態に限定されず、単列または三列以上でもよいし他の適切なパターンで配列されていてもよい。
【0045】
図5は、図1または図3の発光パネル10をライン型の光ヘッドとして用いた画像印刷装置の一例を示す概略断面図である。この画像印刷装置は、ベルト中間転写体方式を利用したタンデム型のフルカラー画像印刷装置である。この画像印刷装置には、駆動ローラ121と従動ローラ122が設けられており、これらのローラ121,122には無端の中間転写ベルト(中間転写体)120が巻回されて、矢印に示す方向にローラ121,122の周囲を回転させられる。図示しないが、中間転写ベルト120に張力を与えるテンションローラなどの張力付与手段を設けてもよい。
【0046】
中間転写ベルト120の周囲には、互いに所定間隔をおいて、4個の同大の感光体ドラム110Y,110M,110C,110Kが配置される。添え字Y,M,C,Kはそれぞれイエロー、マゼンタ、シアン、黒の顕像を形成するために使用されることを意味している。感光体ドラム110Y,110M,110C,110Kは、中間転写ベルト120の駆動と同期して矢印に示す方向に回転駆動される。回転する感光体ドラム110Y,110M,110C,110Kの各々の外周面は、そのドラム専用のコロナ帯電器112により一様に帯電される。
【0047】
また、二つの感光体ドラム110Y,110Mは、露光ヘッドすなわち潜像書き込みヘッドとしての一つの発光パネル10により露光され、他の二つの感光体ドラム110C,110Kは他の発光パネル10により露光される。このようにして、コロナ帯電器112により帯電させられた感光体ドラムの外周面に静電潜像が書き込まれる。発光パネル10は、その長手方向が感光体ドラム110の母線方向(主走査方向)に平行になるように設置される。但し、発光パネル10は、これが潜像を書き込む二つの感光体ドラムの中心同士を結ぶ線に対して傾いている。
【0048】
図の上方にある発光パネル10の右面から放出された光束は、右側の集束性レンズアレイ40を透過した後、感光体ドラム110Yの外周面を直接照射し、イエローの顕像に対応する潜像を書き込む。一方、この発光パネル10の左面から放出された光束は、左側の集束性レンズアレイ40を透過した後、ミラー46で反射し、この後、感光体ドラム110Mの外周面を照射し、マゼンタの顕像に対応する潜像を書き込む。
【0049】
他方、図の下方にある発光パネル10の左面から放出された光束は、左側の集束性レンズアレイ40を透過した後、感光体ドラム110Cの外周面を直接照射し、シアンの顕像に対応する潜像を書き込む。一方、この発光パネル10の右面から放出された光束は、右側の集束性レンズアレイ40を透過した後、ミラー46で反射し、この後、感光体ドラム110Kの外周面を照射し、黒の顕像に対応する潜像を書き込む。
【0050】
これらのミラー46は、感光体ドラムの母線方向に平行に延びている。発光パネル10およびミラー46は、どの感光体ドラムに対しても、発光パネル10から発せられた光束が感光体ドラムの法線にほぼ沿って進んでその感光体ドラムに到達するように配置されている。
【0051】
また、回転する感光体ドラム110Y,110M,110C,110Kの各々の外周面には、そのドラム専用の現像器114により現像剤としてのトナーが供給される。静電潜像に現像剤としてのトナーが付着することにより感光体ドラムの外周面に顕像すなわち可視像が形成される。
【0052】
このような4色の単色顕像形成ステーションにより形成されたイエロー、マゼンタ、シアン、黒の各顕像は、中間転写ベルト120上に順次一次転写されることにより、中間転写ベルト120上で重ね合わされて、この結果フルカラーの顕像が得られる。中間転写ベルト120の内側には、4つの一次転写コロトロン(転写器)116が配置されている。一次転写コロトロン116は、感光体ドラムの近傍にそれぞれ配置されており、近傍の感光体ドラムから顕像を静電的に吸引することにより、感光体ドラムと一次転写コロトロンの間を通過する中間転写ベルト120に顕像を転写する。
【0053】
一次転写コロトロン116による顕像の転写の後で帯電器112による帯電の前に、感光体ドラムの外周面は、図示しないクリーナにより清掃され、さらに図示しないコロナ除電器により除電される。
【0054】
最終的に画像を形成する対象としてのシート124は、図示しない搬送ローラにより搬送されて、駆動ローラ121に接した中間転写ベルト120と二次転写ローラ126の間のニップに送られる。中間転写ベルト120上のフルカラーの顕像は、二次転写ローラ126によってシート124に一括して二次転写される。この後、図示しない定着装置によりトナーはシート124に定着させられる。
【0055】
この画像印刷装置においては、両面発光可能な発光パネル10を二つの感光体ドラムでの静電潜像の書き込みのために使用するので、多色の印刷が可能でありながら、発光パネルの数が少ない。
【0056】
二つの像担持体から中間転写体に一旦顕像を転写するタイプの画像印刷装置においては、像担持体110の各々に顕像を形成する現像器114を静電潜像書込位置の下流、かつ中間転写体120への顕像転写位置の上流に配置すべきである。従って、各像担持体110においては、静電潜像書込位置の下流、かつ中間転写体120への顕像転写位置の上流に、現像器114を配置する広いスペースを設けるべきである。しかし、両面発光可能な発光パネルで二つの像担持体110に静電潜像を書き込む場合には、一方の像担持体110については、静電潜像書込位置から顕像転写位置までのスペースが狭くなって、現像器114を配置することができないおそれがある。例えば、発光パネル10をこれが潜像を書き込む感光体ドラム110Y,110Mの中間に単純に配置すると、一方の感光体ドラム110Mについては現像器114を配置するスペースが得られないおそれがある。
【0057】
これに対して、この実施の形態では、発光パネル10をこれが潜像を書き込む二つの感光体ドラムの中心同士を結ぶ線に対して傾け、発光パネル10の片面から放出された光束をミラー46で反射して、感光体ドラム110Mまたは110Kに照射させる。従って、その感光体ドラム110Mまたは110Kについての静電潜像書込位置から顕像転写位置までのスペースを広く確保し、そこに現像器114を設けることを容易にしている。
【0058】
図6は、図5の画像印刷装置の変形例を示す。図5の形態では、中間転写ベルト120の張り側(従動ローラ122から駆動ローラ121にベルトが走行する側)だけでなく、中間転写ベルト120の緩み側(駆動ローラ121から従動ローラ122にベルトが走行する側)にも感光体ドラムが配置されているが、図6では、中間転写ベルト120の張り側だけに感光体ドラム110Y,110M,110C,110Kが配置されている。
【0059】
次に、本発明に係る画像印刷装置の他の実施の形態について説明する。
図7は、図1または図3の発光パネル10をライン型の光ヘッドとして用いた他の画像印刷装置の概略断面図である。この画像印刷装置は、ベルト中間転写体方式を利用したロータリ現像式のフルカラー画像印刷装置である。図7において、図5に関連して上述した構成要素と同様の構成要素を示すために同一の参照符号が使用されており、これらの構成要素については詳細には以下で説明しない。
【0060】
図7に示す画像印刷装置においては、二つの感光体ドラム(像担持体)110YC,110MKが設けられている。これらの感光体ドラムは、いずれも中間転写ベルト120の張り側に配置されている。添え字YCはイエローとシアンの顕像を形成するために使用されることを意味し、添え字MKはマゼンタと黒の顕像を形成するために使用されることを意味している。
【0061】
感光体ドラム110YC,110MKは、中間転写ベルト120の駆動と同期して矢印に示す方向に回転駆動される。回転する感光体ドラム110YC,110MKの各々の外周面は、そのドラム専用のコロナ帯電器112により一様に帯電される。
【0062】
また、二つの感光体ドラム110YC,110MKは、露光ヘッドすなわち潜像書き込みヘッドとしての一つの発光パネル10により露光される。このようにして、コロナ帯電器112により帯電させられた感光体ドラムの外周面に静電潜像が書き込まれる。発光パネル10は、その長手方向が感光体ドラム110の母線方向(主走査方向)に平行になるように設置される。但し、発光パネル10は、これが潜像を書き込む二つの感光体ドラムの中心同士を結ぶ線に対して傾いている。
【0063】
発光パネル10の右面から放出された光束は、右側の集束性レンズアレイ40を透過した後、感光体ドラム110YCの外周面を直接照射する。発光パネル10の右面から放出された光束は、フルカラー印刷において1枚のシートに対する最初の印刷段階では、イエローの顕像に対応する潜像を感光体ドラム110YCに書き込み、後の印刷段階では、シアンの顕像に対応する潜像を感光体ドラム110YCに書き込む。
【0064】
一方、この発光パネル10の左面から放出された光束は、左側の集束性レンズアレイ40を透過した後、ミラー46で反射し、この後、感光体ドラム110MKの外周面を照射する。発光パネル10の左面から放出された光束は、フルカラー印刷において1枚のシートに対する最初の印刷段階では、マゼンタの顕像に対応する潜像を感光体ドラム110MKに書き込み、後の印刷段階では、黒の顕像に対応する潜像を感光体ドラム110MKに書き込む。
【0065】
ミラー46は、感光体ドラムの母線方向に平行に延びている。発光パネル10およびミラー46は、どの感光体ドラムに対しても、発光パネル10から発せられた光束が感光体ドラムの法線にほぼ沿って進んでその感光体ドラムに到達するように配置されている。
【0066】
また、回転する感光体ドラム110YC,110MKの各々の外周面には、そのドラム専用の現像ユニット50YCまたは50MKにより現像剤としてのトナーが供給される。静電潜像に現像剤としてのトナーが付着することにより感光体ドラムの外周面に顕像すなわち可視像が形成される。
【0067】
現像ユニット50YC,50MKは、ロータリ式のドラムであり、それぞれ回転軸50Aを中心にして回転可能である。現像ユニット50YCは二つの現像器52Y,52Cを有し、現像ユニット50MKは二つの現像器52M,52Kを有する。現像器52Yは、これが感光体ドラム110YCに近接している間に、イエローのトナーを感光体ドラム110YCに供給する。逆に、現像器52Cが感光体ドラム110YCに近接している間に、現像器52Cはシアンのトナーを感光体ドラム110YCに供給する。同様に、現像器52Mは、これが感光体ドラム110MKに近接している間に、マゼンタのトナーを感光体ドラム110MKに供給する。逆に、現像器52Kが感光体ドラム110MKに近接している間に、現像器52Kは黒のトナーを感光体ドラム110MKに供給する。
【0068】
イエロー、マゼンタ、シアン、黒の各顕像は、一次転写コロトロン116の静電吸引作用により中間転写ベルト120上に順次一次転写されることにより、中間転写ベルト120上で重ね合わされて、この結果フルカラーの顕像が得られる。まず、フルカラー印刷で中間転写ベルト120の最初の回転の間に、発光パネル10の右面から放出された光束と現像器52Yの協働作用により、感光体ドラム110YCの外周面にイエローの顕像が形成されて、これが中間転写ベルト120上に吸着される。また、中間転写ベルト120の最初の回転の間に、発光パネル10の左面から放出された光束と現像器52Mの協働作用により、感光体ドラム110MKの外周面にマゼンタの顕像が形成されて、これが中間転写ベルト120上に吸着される。感光体ドラムへのイエローとマゼンタの顕像形成の後、現像ユニット50YC,50MKは半回転し、現像器52C,52Kが感光体ドラムに近接する。
【0069】
中間転写ベルト120の次の回転の間に、発光パネル10の右面から放出された光束と現像器52Cの協働作用により、感光体ドラム110YCの外周面にシアンの顕像が形成されて、これが中間転写ベルト120上に吸着される。また、中間転写ベルト120の次の回転の間に、発光パネル10の左面から放出された光束と現像器52Kの協働作用により、感光体ドラム110MKの外周面に黒の顕像が形成されて、これが中間転写ベルト120上に吸着される。感光体ドラムへのシアンと黒の顕像形成の後、現像ユニット50YC,50MKは半回転し、現像器52Y,52Mが感光体ドラムに近接する。
【0070】
以上のようにして、中間転写ベルト120上で重ね合わせられたフルカラーの顕像は、二次転写ローラ126によってシート124に一括して二次転写される。図示しない定着装置によりトナーはシート124に定着させられる。
【0071】
一次転写コロトロン116による各顕像の転写の後で帯電器112による帯電の前に、感光体ドラムの外周面は、図示しないクリーナにより清掃され、さらに図示しないコロナ除電器により除電される。
【0072】
この実施の形態でも、発光パネル10をこれが潜像を書き込む二つの感光体ドラムの中心同士を結ぶ線に対して傾け、発光パネル10の片面から放出された光束をミラー46で反射して、感光体ドラム110MKに照射させる。従って、その感光体ドラム110MKについての静電潜像書込位置から顕像転写位置までのスペースを広く確保し、そこに現像ユニット50MKを設けることを容易にしている。
【0073】
次に、本発明に係る画像印刷装置のさらに他の実施の形態について説明する。
図8は、図1または図3の発光パネル10をライン型の光ヘッドとして用いた他の画像印刷装置を示す概略断面図である。この実施の形態は、図5の実施の形態の変形例である。図8において、図5に関連して上述した構成要素と同様の構成要素を示すために同一の参照符号が使用されており、これらの構成要素については詳細には以下で説明しない。
【0074】
図8の形態では、発光パネル10は、これが潜像を書き込む二つの感光体ドラムのちょうど中間に位置しており、これらの二つの感光体ドラムの中心同士を結ぶ線に対して垂直に配置されている。但し、中間転写ベルト120の軌道は、ベルト方向転換ローラ(ベルト方向制御体)130,132により、凹状に変更させられている。より正確には、ベルト方向転換ローラ130は中間転写ベルト120の内周面に接触し、ベルト方向転換ローラ132は、中間転写ベルト120の外周面に接触して、ベルト方向転換ローラ130と駆動ローラ121(または従動ローラ122)の間のベルト部分を凹状に撓ませる。ベルト方向転換ローラ130,132はテンションローラであり、独立して回転可能であるが、中間転写ベルト120と走行に追従して回転する。
【0075】
このようにして、ベルト方向転換ローラ130,132は、感光体ドラム110Y(または110C)から中間転写ベルト120に顕像が転写される位置での中間転写ベルト120の角度と、感光体ドラム110M(または110K)から中間転写ベルト120に顕像が転写される位置での中間転写ベルト120の角度とを異ならせるように、中間転写ベルト120に接触する。
【0076】
両面発光可能な発光パネルで二つの像担持体110に静電潜像を書き込む場合には、一方の像担持体110については、静電潜像書込位置から顕像転写位置までのスペースが狭くなって、現像器114を配置することができないおそれがある。例えば、中間転写ベルト120が駆動ローラ121と従動ローラ122の共通接線上を走行する場合には、発光パネル10をこれが潜像を書き込む感光体ドラム110Y,110Mの中間に単純に配置すると、一方の感光体ドラム110Mについては現像器114を配置するスペースが得られないおそれがある。
【0077】
これに対して、この実施の形態では、ベルト方向転換ローラ130,132で、感光体ドラム110M(または110K)についての顕像転写位置での中間転写ベルト120の角度を感光体ドラム110Y(または110C)についての顕像転写位置での中間転写ベルト120の角度と異ならせることにより、感光体ドラム110M(または110K)についての静電潜像書込位置から顕像転写位置までのスペースを広く確保し、そこに現像器114を設けることが容易である。
【0078】
中間転写ベルト120の軌道を変更するベルト方向制御体としては、中間転写ベルト120に追従回転するベルト方向転換ローラ130,132が中間転写ベルト120へ与える摩耗などの損傷のおそれが少ないので好ましい。但し、常に静止した状態にあって中間転写ベルト120が摺動する物体をベルト方向制御体として使用してもよい。
【0079】
この実施の形態は、図5の実施の形態の変形例であるが、図6および図7に示された実施の形態についても、この実施の形態と同様のベルト方向制御体を設ける変形を行ってもよい。
【0080】
次に、本発明に係る画像印刷装置のさらに他の実施の形態について説明する。
図9は、図1または図3の発光パネル10をライン型の光ヘッドとして用いた他の画像印刷装置を示す概略断面図である。この実施の形態は、図5の実施の形態の変形例である。図9において、図5に関連して上述した構成要素と同様の構成要素を示すために同一の参照符号が使用されており、これらの構成要素については詳細には以下で説明しない。
【0081】
図9の形態の画像印刷装置は、中間転写ベルト120の代わりにシート搬送ベルト(シート搬送体)140が設けられたタンデム型のフルカラー画像印刷装置である。シート搬送ベルト140上には、図示しないガイドおよび静電吸引装置により、シート124が吸引されて保持される。また、図示しない剥離爪などにより、シート124はシート搬送ベルト140から剥離される。
【0082】
シート搬送ベルト140で搬送されている間に、シート124には、感光体ドラム110Y,110M,110C,110Kから、一次転写コロトロン116によって顕像が転写される。この形態においても発光パネル10が使用され、一つの発光パネル10は二つの感光体ドラムへ潜像を書き込む。また、発光パネル10をこれが潜像を書き込む二つの感光体ドラムの中心同士を結ぶ線に対して傾け、発光パネル10の片面から放出された光束をミラー46で反射して、感光体ドラム110Mまたは110Kに照射させる。従って、その感光体ドラム110Mまたは110Kについての静電潜像書込位置から顕像転写位置までのスペースを広く確保し、そこに現像器114を設けることを容易にしている。
【0083】
次に、本発明に係る画像印刷装置のさらに他の実施の形態について説明する。
図10は、図1または図3の発光パネル10をライン型の光ヘッドとして用いた他の画像印刷装置を示す概略断面図である。この実施の形態は、図8の実施の形態の変形例である。図10において、図8に関連して上述した構成要素と同様の構成要素を示すために同一の参照符号が使用されており、これらの構成要素については詳細には以下で説明しない。
【0084】
図10の形態の画像印刷装置は、中間転写ベルト120の代わりにシート搬送ベルト(シート搬送体)140が設けられたタンデム型のフルカラー画像印刷装置である。シート搬送ベルト140上には、図示しないガイドおよび静電吸引装置により、シート124が吸引されて保持される。また、図示しない剥離爪などにより、シート124はシート搬送ベルト140から剥離される。
【0085】
シート搬送ベルト140で搬送されている間に、シート124には、感光体ドラム110Y,110M,110C,110Kから、一次転写コロトロン116によって顕像が転写される。この形態においても発光パネル10が使用され、一つの発光パネル10は二つの感光体ドラムへ潜像を書き込む。
【0086】
図8の形態と同様に、図10の形態では、発光パネル10は、これが潜像を書き込む二つの感光体ドラムのちょうど中間に位置しており、これらの二つの感光体ドラムの中心同士を結ぶ線に対して垂直に配置されている。但し、シート搬送ベルト140の軌道は、ベルト方向転換ローラ(ベルト方向制御体)130,132により、凹状に変更させられている。より正確には、ベルト方向転換ローラ130はシート搬送ベルト140の内周面に接触し、ベルト方向転換ローラ132は、シート搬送ベルト140の外周面に接触して、ベルト方向転換ローラ130と駆動ローラ121(または従動ローラ122)の間のベルト部分を凹状に撓ませる。
【0087】
ベルト方向転換ローラ130,132で、感光体ドラム110M(または110K)についての顕像転写位置でのシート搬送ベルト140の角度を感光体ドラム110Y(または110C)についての顕像転写位置でのシート搬送ベルト140の角度と異ならせることにより、感光体ドラム110M(または110K)についての静電潜像書込位置から顕像転写位置までのスペースを広く確保し、そこに現像器114を設けることが容易である。
【0088】
図9および図10の実施の形態は、図5および図8の実施の形態の変形例であるが、図6および図7に示された実施の形態についても、図9および図10の実施の形態と同様に、中間転写ベルト120をシート搬送ベルト140で置換する変形を行ってもよい。
【0089】
<他の変形例>
上記の発光パネルでは、与えられる電気的なエネルギを光学的エネルギに変換する発光素子としてOLED素子が使用されているが、他の発光素子(例えば、無機EL素子)を発光パネルに使用してもよい。
【0090】
上記の画像印刷装置はいずれも4色のトナーを利用するフルカラーの画像印刷装置であるが、2色のトナーを利用する画像印刷装置など、他の多色画像印刷装置にも上記の技術を応用することが可能であり、このような応用も本発明の範囲内にある。
【0091】
上記の画像印刷装置では、図1または図3の発光パネル10を感光体ドラムへの露光装置として使用しているが、互いに異なる像を構成する光束を両面から放出可能な他の発光パネルを感光体ドラムへの露光装置として使用してもよく、このような応用も本発明の範囲内にある。例えば、特許文献3から特許文献5の発光パネルを使用してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0092】
【図1】本発明の実施の形態に係る発光パネルを示す断面図である。
【図2】図1の電気光学装置の平面図である。
【図3】本発明に係る発光パネルの変形例を示す断面図である。
【図4】本発明に係る発光パネルの使用状態を示す概略図である。
【図5】図1または図3の発光パネルを用いた画像印刷装置の一例を示す概略断面図である。
【図6】図5の画像印刷装置の変形例を示す概略断面図である。
【図7】図1または図3の発光パネルを用いた他の画像印刷装置を示す概略断面図である。
【図8】図1または図3の発光パネルを用いた他の画像印刷装置を示す概略断面図である。
【図9】図1または図3の発光パネルを用いた他の画像印刷装置を示す概略断面図である。
【図10】図1または図3の発光パネルを用いた他の画像印刷装置を示す概略断面図である。
【符号の説明】
【0093】
10…発光パネル、12A…第1の領域、12B…第2の領域、14A,14B…発光素子、18…基板、22…陽極層(第1の電極層)、24…正孔注入層、26…発光層、28A,28B,28C…陰極層(第2の電極層)、30…絶縁層、32…隔壁、33,38…反射層、36…封止体、50YC,50MK…現像ユニット、52Y,52C,…現像器、110,110Y,110M,110C,110K,110YC,110MK…感光体ドラム(像担持体)、114…現像器、116…一次転写コロトロン(転写器)、120…中間転写ベルト(中間転写体)、124…シート、130,132…ベルト方向転換ローラ(ベルト方向制御体)、140…シート搬送ベルト(シート搬送体)。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
与えられた電気エネルギにより発光特性が変化する複数の発光素子が配列されており、互いに異なる像を構成する光束を両面から放出可能である発光パネルであって、
一方の面から光束を放出可能な第1の領域と、他方の面から光束を放出可能な第2の領域とを備えており、
前記発光素子の各々は、第1の電極層と第2の電極層の間に介在して、前記第1の電極層と前記第2の電極層の間の電圧に応じて発光する発光層を有しており、
前記第1の領域における前記発光素子の前記第1の電極層、前記発光層および前記第2の電極層は、前記第2の領域における前記発光素子の前記第1の電極層、前記発光層および前記第2の電極層とそれぞれ同じ平面内にあり、
前記第1の領域における前記第1の電極層は、前記第2の領域における前記第1の電極層と同じ透明材料から形成され、
前記第1の領域における前記発光層は、前記第2の領域における前記発光層と同じ材料から形成され、
前記第1の領域における前記発光層の前記第2の電極層側にはこの発光層からの光を反射する反射層が配置され、
前記第2の領域における前記第2の電極層は透明材料から形成され、
前記第2の領域において前記第1の電極層を挟んで前記発光層の反対側には光反射材料から形成された反射層が配置されていることを特徴とする発光パネル。
【請求項2】
前記第1の領域の前記第2の電極層が光反射材料から形成されており、前記第1の領域における前記反射層として機能することを特徴とする請求項1に記載の発光パネル。
【請求項3】
前記第1の領域における前記第2の電極層は、前記第2の領域における前記第2の電極層と共通であって、透明材料から形成され、
前記第1の領域において前記第2の電極層を挟んで前記発光層の反対側に光反射材料から形成された前記反射層が配置されていることを特徴とする請求項1に記載の発光パネル。
【請求項4】
与えられた電気エネルギにより発光特性が変化する複数の発光素子が配列されており、互いに異なる像を構成する光束を両面から放出可能である発光パネルと、
前記発光パネルの片面から放出された光束が各々の表面に照射されることによって前記表面に潜像が形成される少なくとも二つの像担持体と、
前記潜像にトナーを付着させることにより前記像担持体の表面に顕像を形成する現像器と、
前記像担持体から前記顕像を他の物体に転写する転写器とを備える画像印刷装置。
【請求項5】
前記発光パネルは、請求項1から請求項3のいずれか1項に記載された前記発光パネルであることを特徴とする請求項4に記載の画像印刷装置。
【請求項6】
少なくとも二つの前記像担持体から前記転写器により前記顕像が転写される中間転写体と、
前記像担持体の一方と前記発光パネルの間に配置され、前記発光パネルの片面から放出された光束を反射して、前記像担持体の一方に照射させるミラーとを備えることを特徴とする請求項4または請求項5に記載の画像印刷装置。
【請求項7】
少なくとも二つの前記像担持体から前記転写器により前記顕像が転写される中間転写ベルトと、
前記像担持体の一方から前記中間転写ベルトに前記顕像が転写される位置での前記中間転写ベルトの角度と、前記像担持体の他方から前記中間転写ベルトに前記顕像が転写される位置での前記中間転写ベルトの角度とを異ならせるように、前記中間転写ベルトに接触するベルト方向制御体とを備えることを特徴とする請求項4または請求項5に記載の画像印刷装置。
【請求項8】
シートを保持して搬送し、搬送されている前記シートに、少なくとも二つの前記像担持体から前記転写器により前記顕像が転写されるように配置されたシート搬送体と、
前記像担持体の一方と前記発光パネルの間に配置され、前記発光パネルの片面から放出された光束を反射して、前記像担持体の一方に照射させるミラーとを備えることを特徴とする請求項4または請求項5に記載の画像印刷装置。
【請求項9】
シートを保持して搬送し、搬送されている前記シートに、少なくとも二つの前記像担持体から前記転写器により前記顕像が転写されるように配置されたシート搬送ベルトと、
前記像担持体の一方から前記シート搬送ベルト上の前記シートに前記顕像が転写される位置での前記シート搬送ベルトの角度と、前記像担持体の他方から前記シート搬送ベルト上の前記シートに前記顕像が転写される位置での前記シート搬送ベルトの角度とを異ならせるように、前記シート搬送ベルトに接触するベルト方向制御体とを備えることを特徴とする請求項4または請求項5に記載の画像印刷装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2006−224316(P2006−224316A)
【公開日】平成18年8月31日(2006.8.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−37328(P2005−37328)
【出願日】平成17年2月15日(2005.2.15)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】