発光パネル
【課題】これまでにない、いろいろな使い方が可能な発光パネルが提供される。
【解決手段】光を放出し光を透過させる透過発光領域を備えた発光パネルであって、前記透過発光領域は、光を放出する光放出部と、光を透過させる光透過部と、を有し、前記光放出部は、光を放出する発光部と、光を遮断する遮光層と、を有し、前記発光部から前記発光パネルの第1の主面の側に向かう光は、前記第1の主面から放出され、前記発光部から前記発光パネルの第2の主面の側に向かう光は前記遮光層により遮蔽されることを特徴とする発光パネルが提供される。
【解決手段】光を放出し光を透過させる透過発光領域を備えた発光パネルであって、前記透過発光領域は、光を放出する光放出部と、光を透過させる光透過部と、を有し、前記光放出部は、光を放出する発光部と、光を遮断する遮光層と、を有し、前記発光部から前記発光パネルの第1の主面の側に向かう光は、前記第1の主面から放出され、前記発光部から前記発光パネルの第2の主面の側に向かう光は前記遮光層により遮蔽されることを特徴とする発光パネルが提供される。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発光パネルに関する。
【背景技術】
【0002】
照明装置や表示装置などの光源として、電球や蛍光灯あるいは電球型のLED(Light Emitting Diode)などの代わりに、発光パネルを用いることができる。発光パネルの一例として、EL(electro-luminescence)素子を用いたものがある。特許文献1には、ガラス基板と透明保護層との間に有機ELからなる有機発光層を挟んだ有機EL素子が開示されている。有機発光層から放出された光は、有機EL素子の両面に放出される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2001−332392号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
これまでにない、いろいろな使い方が可能な発光パネルを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の一態様によれば、光を放出し光を透過させる透過発光領域を備えた発光パネルであって、前記透過発光領域は、光を放出する光放出部と、光を透過させる光透過部と、を有し、前記光放出部は、光を放出する発光部と、光を遮断する遮光層と、を有し、前記発光部から前記発光パネルの第1の主面の側に向かう光は、前記第1の主面から放出され、前記発光部から前記発光パネルの第2の主面の側に向かう光は前記遮光層により遮蔽されることを特徴とする発光パネルが提供される。
【発明の効果】
【0006】
これまでにない、いろいろな使い方が可能な発光パネルが提供される。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】図1(a)は、本発明の実施形態にかかる発光パネルの平面構成を例示する概念図である。また、図1(b)は、この発光パネル100のA−A線断面の一例を表す模式図であり、図1(c)は、この発光パネル100のA−A線断面の他の一例を表す模式図である。
【図2】透過発光領域10の構造を例示する模式図である。
【図3】発光部34への給電構造の具体例を表す断面図である。
【図4】透過発光領域10の構造の他の具体例を表す模式図である。
【図5】発光部34への給電構造の具体例を表す断面図である。
【図6】本実施形態の発光パネルの使用態様を例示する模式図である。
【図7】本実施形態の発光パネルの他の使用態様を例示する模式図である。
【図8】本実施形態の発光パネル100の他の使用態様を例示する模式図である。
【図9】光フィルタ作用を説明するための概念図である。
【図10】本発明者が試作した発光パネル100の平面透視図である。
【図11】図11(a)は、この発光パネル100のA−A線断面図であり、図11(b)は、B−B線断面図である。
【図12】試作した発光パネル100を主面100Aの側から眺めた写真である。
【図13】試作した発光パネル100の点灯状態を表す写真である。
【図14】透過発光領域における光透過部あるいは光放出部のパターンを例示する模式平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、図面を参照しつつ、本発明の実施の形態について説明する。
図1(a)は、本発明の実施形態にかかる発光パネルの平面構成を例示する概念図である。また、図1(b)は、この発光パネル100のA−A線断面の一例を表す模式図であり、図1(c)は、この発光パネル100のA−A線断面の他の一例を表す模式図である。なお、図1(b)及び(c)においては、発光パネル100の断面の詳細な構造は便宜上、省略した。
【0009】
図1に表した発光パネル100は、透過発光領域10と、その周囲に設けられた周辺領域20と、を有する。透過発光領域10は、後に詳述するように、光を放出し、また主面100Aと主面100Bとのあいだを光が透過可能な領域である。
発光パネル100は、図1(b)に表したように、その両側の主面100A、100Bがそれぞれ平面状の板状の形態を有するものとすることができる。
あるいは、主面100A、100Bは、非平面であってもよい。例えば、図1(c)に例示したように、主面100A、100Bのいずれか一方が曲面状であってもよい。あるいは、主面100A、100Bの両方が曲面であってもよい。また、曲面は、図1(c)に表したように凸状曲面でよく、あるいは凹状曲面でもよい。
またさらに、主面100A、100Bのいずか一方、あるいは両方が凹凸を有するものであってもよい。
【0010】
そして、本実施形態においては、透過発光領域10は、主面100Aと主面100Bのうちで、いずれか一方のみから光を放出する。例えば、図1(b)及び(c)に矢印L1で例示した如く、主面100Aの側からは光を放出するが、主面100Bの側からは光は実質的に放出しない。あるいは、これらとは逆に、主面100Aからは実質的に光を放出せず、主面100Bから光を放出するものとしてもよい。
【0011】
またさらに、透過発光領域10の一部は、光を透過する。例えば、図1(b)及び(c)に矢印L3で表したように、主面100Aの側から主面100Bの側に光が透過可能であり、また、矢印L4で表したように、主面100Bの側から主面100Aの側に光が透過可能とされている。
【0012】
一方、周辺領域20は、例えば、電極パッドや駆動回路、その他、各種の周辺回路や周辺機器などが適宜設けられる領域である。なお、本実施形態においては、周辺領域20は必ずしも必須ではなく、適宜省略することも可能である。
【0013】
図1(a)においては、発光パネル100の平面形状として略四角形のものを例示したが、本実施形態はこれには限定されない。すなわち、発光パネル100の平面形状は、多角形、円形、楕円形、あるいはそれら以外の各種の形状とすることができる。また、透過発光領域10の平面形状も、図1(a)に例示したように、略四角形には限定されず、多角形、円形、楕円形、あるいはそれら以外の各種の形状とすることができる。
【0014】
図2は、透過発光領域10の構造を例示する模式図である。図2(a)は、透過発光領域10の一部拡大平面図であり、図2(b)はそのA−A線断面図である。
透過発光領域10は、光透過部12と、光放出部14と、を有する。そして、透過発光領域10は、光透過部12と、光放出部14と、が交互に設けられた部分を有する。図2に表した具体例の場合、例えば、A−A線上の部分をみると、光透過部12と、光放出部14と、が交互に設けられている。
【0015】
透過発光領域10は、光放出部14のなかに点在した複数の光透過部12を有する。より具体的には、主面100A(あるいは主面100B)に対して垂直な方向からみて、光放出部14のなかに複数の光透過部12が略マトリクス状に設けられている。
図2(b)に表したように、光放出部14は、透光性基板30の上に選択的に設けられた遮光層32と、その上に設けられた発光部34と、を有する。ただし、これら透光性基板30、遮光層32、発光部34の積層の順番は、図2の具体例には限定されず、任意である。発光部34は、後に詳述するように、例えば、EL層や、LED(light emitting diode)、LD(laser diode)などを有する。
【0016】
図3は、発光部34への給電構造の具体例を表す断面図である。
本具体例においては、透光性基板30の上に、遮光層32と発光部34とが選択的に設けられている。そして、透明導電層36により発光部34が共通接続され、その上に透光性基板38が設けられている。
透光性基板30、38は、例えば、ガラス、石英、プラスチック、樹脂類などの各種の材料により形成することができる。また、透光性基板30、38は、光の透過率がゼロでなければよく、無色透明、有色透明、半透明、不透明であってもよい。
遮光層32は、発光部34から放出される光を実質的に遮蔽する材料からなり、例えば、金属、有機材料、無機材料などにより形成することができる。遮光層32を導電性の材料により形成すれば、発光部34に対する給電経路としても兼用できる。
透明導電層36は、例えば、スズの酸化物や、インジウムとスズの酸化物などにより形成することができる。
また、発光部34が透光性を有する場合には、図2及び図3に例示した如く、光放出部14のみに発光部34を選択的に形成するのではなく、光透過部12にも発光部34を連続的に形成してもよい。
【0017】
図3に表した具体例によれば、遮光層32と透明導電層36を介して、複数の発光部34にそれぞれ給電し、発光を生じさせることが可能となる。
そして、図2及び図3に表したように、発光部34から発光パネルの主面100Aの側に向かう光は、主面100Aから放出される。一方、発光部34から発光パネルの主面100Bの側に向かう光は、遮光層32により遮蔽される。
すなわち、発光部34から放出された光は、矢印L1で表したように、透過発光領域10の主面100Aの側から放出される。遮光層32が設けられているために、発光部34からの光は、矢印L2の方向には放出されない。
【0018】
一方、光透過部12においては、遮光層32は設けられていない。このため、透光性基板30、38を介して、矢印L3の方向にも、あるいはこれとは逆に矢印L4の方向にも、光は透過可能とされている。
【0019】
図4は、透過発光領域10の構造の他の具体例を表す模式図である。すなわち、図4(a)は、透過発光領域10の一部拡大平面図であり、図4(b)はそのA−A線断面図である。
本具体例においても、透過発光領域10は、光透過部12と、光放出部14と、が交互に設けられた部分を有する。例えば、A−A線上の部分をみると、光透過部12と、光放出部14と、が交互に設けられている。
より具体的には、透過発光領域10は、光透過部12のなかに点在した複数の光放出部14を有する。より具体的には、光透過部12のなかに複数の光放出部14が略マトリクス状に設けられている。これら要素の詳細は、図2及び図3に関して前述したものと同様とすることができる。
【0020】
図5は、発光部34への給電構造の具体例を表す断面図である。
本具体例においては、透光性基板30の上に透明導電層31が設けられ、その上に遮光層32と発光部34とが選択的に設けられている。そして、発光部34の上に透明導電層36が共通的に設けられている。透明導電層36により発光部34が共通接続され、その上に透光性基板38が設けられている。遮光層32を導電性の材料により形成すれば、透明導電層31、36を介して、複数の発光部34にそれぞれ給電し、発光を生じさせることが可能となる。なお、本具体例においても、発光部34が透光性を有する場合には、図4及び図5に例示した如く、光放出部14のみに発光部34を選択的に形成するのではなく、光透過部12にも発光部34を連続的に形成してもよい。
【0021】
そして、本具体例においても、発光部34から放出された光は、矢印L1で表したように、透過発光領域10の主面100Aの側から放出される。遮光層32が設けられているために、発光部34からの光は、矢印L2の方向には放出されない。一方、光透過部12においては、遮光層32は設けられていない。このため、透光性基板30、38を介して、矢印L3の方向にも、あるいはこれとは逆に矢印L4の方向にも、光は透過可能とされている。
【0022】
なお、本実施形態は、図2〜図5に表した具体例には限定されない。例えば、光放出部14(あるいは、光透過部12)の平面形状は、図2(a)(あるいは、図4(a))に表したように、略四角形には限定されず、その他の各種の形状とすることができる。また、これら光放出部14(あるいは、光透過部12)の配置パターンについても、縦横が等ピッチのマトリクス状には限定されず、千鳥格子状や、非周期的な各種の配置パターンであってもよい。例えば、後に具体例として詳述するように、光透過部12と光放出部14とがそれぞれストライブ状に形成され交互に配列したものであってもよい。
また、これら複数の光放出部14(あるいは、光透過部12)の平面形状や平面サイズは、同一である必要はなく、異なる平面形状や平面サイズを有する光放出部14を含んでもよい。
【0023】
また、光透過部12と光放出部14の面積の比率についても、図2や図4に例示したものには限定されない。光透過部12の面積の比率を高くすれば、発光パネル100を透過する光の量を増やすことができる。反対に、光放出部14の面積の比率を高くすれば、発光パネル100から放出される光の量を増やすことができる。したがって、これら面積の比率は、発光パネル100の用途や要求される仕様、性能などに応じて適宜調整することができる。
【0024】
以上説明したように、本実施形態の発光パネル100は、一方の主面100A(あるいは100B)の側のみから光を放出するとともに、一方の主面100Aと他方の主面100Bとの間で光が透過可能とされている。このように、光を透過させつつ、一方向のみに光を放出する発光パネルを用いると、例えば、外光を採り入れ、さらに必要に応じて照明を点灯させることができる窓として用いることができる。
【0025】
図6は、本実施形態の発光パネルの使用態様を例示する模式図である。
本具体例においては、建物400の屋根410に本実施形態の発光パネル100が取り付けられている。図6(a)に表したように、昼間は外光900が発光パネル100を介して建物400の内部に透過可能である。つまり、発光パネル100は、「明かり採りの窓」として機能する。
一方、図6(b)に表したように、夜間は、発光パネル100を発光させることにより、「照明」として用いることができる。この際に、発光パネル100からの光は、建物400の内部に向けて放出されるが、建物400の外側に向けては放出されない。つまり、建物400の外側への光の漏れを防ぐことができる。光放出部14の遮光層32(図2、図4参照)に反射作用を付与すれば、発光部34から放出された光を遮光層32で反射させ、建物400の室内に向けて放出させることができる。つまり、光放出部14から放出された光を一方向のみに効率的に取り出し、建物400の室内を照明することができる。
【0026】
なお、図6には、発光パネル100を建物400の屋根410に設置した具体例を表したが、これ以外にも、例えば、建物400の外壁や、室内を仕切る壁などに設置してもよい。また例えば、自動車や船舶などに発光パネル100を取り付けて、外光の採りこみと、室内の照明と、を両立させることもできる。
【0027】
図7は、本実施形態の発光パネルの他の使用態様を例示する模式図である。
本具体例においては、発光パネル100は読書灯として用いることができる。すなわち、読者920は、発光パネル100を介して書籍910を読むことができる。この際に、例えば図7に挿入図として例示したように、光透過部12の面積の比率を高くし、光放出部14の面積の比率を低くすることにより、光放出部14がじゃまになることを防ぐことができる。実際、読者920の両眼の焦点を書籍910に合わせた状態においては、発光パネル100の光放出部14は読者920の両眼の焦点から外れた位置にあるので、読者920の視界を遮る影響は少ない。
【0028】
そして、周囲の明るさが十分でないときには、発光パネル100を点灯させ、矢印L1で表したように光を放射させて書籍910を照らすことができる。この際に、発光パネル100からの光は、読者920の方向には放出されないので、読者920がまぶしく感じることはない。
本具体例によれば、薄型で軽量、かつデザイン性にすぐれ使い勝手のよい読書灯を提供できる。また、例えば、図1(c)に表したように、発光パネル100をレンズ状に形成すれば、書籍910の拡大表示も可能となる。
本具体例は、読書灯には限定されず、例えば、暗所で手元を照らしながら作業をする際の作業灯や、時計修理などの際に用いる拡大ルーペなどにも用いることができる。
【0029】
一方、本実施形態の発光パネル100は、光フィルタ的な作用も有する。
図8は、本実施形態の発光パネル100の他の使用態様を例示する模式図である。
発光パネル100が非点灯の状態にあるとき、図8(a)に表したように、観察者930は、発光パネル100を介して被観察体940を見ることができる。つまり、発光パネル100の光透過部12(図2、図4参照)を介して、被観察体940の光像を捉えることができる。
ところが、図8(b)に表したように、発光パネル100を点灯させ、観察者930の方向に光を放出させると、観察者930にとって、被観察体940が見えにくくなる。
【0030】
図9は、このような光フィルタ作用を説明するための概念図である。
本具体例は、光透過部12と光放出部14とがそれぞれストライプ状に形成され交互に配置された発光パネル100である。すなわち、図9においては、横方向にそって、透過発光領域10は、光透過部12と、光放出部14と、が交互に設けられた部分を有する。
【0031】
発光パネル100が非点灯の状態においては、図9(a)に表したように、光透過部12を介して被観察体940を見ることができる。また、被観察体940からみて、観察者930(図8参照)を見ることもできる。
図9(b)は、発光パネル100を点灯させ、光放出部14から観察者の側(図9において、紙面の向かって手前に向かう側)に光を放出させた状態を表す。この状態においては、光放出部14から放出される光によって、その周囲の光透過部12を介した背景が見えにくくなる。つまり、光放出部14が明るくなったことにより、光透過部12の背景が視覚的に隠される。
一方、この状態においても、被観察体940からみて、観察者930(図8参照)を見ることはできる。
【0032】
図9(c)は、光放出部14から放出される光の量をさらに増やした状態を表す。光放出部14がさらに明るく光るようになると、光透過部12の背景は完全に隠されてしまい、見えなくなる。つまり、観察者930(図8参照)からみて、被観察体940が見えなくなる。
【0033】
そして、この状態においても、被観察体940からは、観察者930を見ることができる。これは例えば、図7に関して前述した読書灯と同様の作用である。
【0034】
このように、本具体例によれば、発光パネル100が非点灯状態のときは、発光パネル100の両側からそれぞれ反対側を見ることができる。これに対して、発光パネル100が点灯状態にあると、発光パネル100の一方の側から他方の側が見えず(あるいは見えにくくなり)、発光パネル100の他方の側から一方の側は見ることができる。
【0035】
このような、独特の光フィルタ作用は、例えば、住宅設備や、飲食店のウインドウ、商店のショーウインドウ、ディスプレイ、アミューズメント、ゲームなど、広範な用途において新規な使い方、効果を生じさせる可能性がある。
【0036】
次に、本発明者が実施した本実施形態の発光パネル100の試作例について、説明する。
図10は、本発明者が試作した発光パネル100の平面透視図である。
また、図11(a)は、この発光パネル100のA−A線断面図であり、図11(b)は、B−B線断面図である。
本試作例の発光パネル100は、透光性基板38の上に、透明導電層36、発光部としてのEL層34、遮光層としての電極32、を積層し、さらに非透湿性の保護キャップ42により封止した構造を有する。透明導電層36と電極32とは、絶縁層40により電気的に絶縁されている。図10に表した平面構成において、絶縁層40により囲まれた略四角形の部分が、透過発光領域10に相当し、その外側の領域が周辺領域20に相当する(図1参照)。透過発光領域10において、遮光層としての電極32は、ストライプ状に形成され、間隔を空けて設けられている。これら電極32が設けられた部分が光放出部14であり、電極32が設けられていない部分が、光透過部12である。
【0037】
以下、本試作例の発光パネル100について、その製造方法を参照しつつ、さらに詳しく説明する。
非透湿性の透光性基板38として、ソーダライムガラス基板(縦横100mm×100mm、厚さ=0.7mm)を用いた。その表面に、透明導電層36として、ITO(Indium Tin Oxide)を、スパッタリング法を用いて、厚さ150nm成膜した。続いて、フォトリソグラフィ法により、成膜したITO膜を、透過発光領域10の全体を覆い周辺領域20の一部に延在するようにパターニングした。
【0038】
次に、絶縁層40として、スピンコート法を用いて、ポリイミドを厚さ1.5μm成膜した。そして、成膜したポリイミド膜をフォトリソグラフィ法によりパターニングし、透過発光領域10の外縁部分を取り囲む形状に加工した。
【0039】
次に、発光部34として、2波長白色発光となる有機EL積層体を、真空蒸着法を用いて、ITO膜36の上に成膜した。有機EL積層体としては、まず始めに、ホール輸送層として、α−NPDを厚さ60nm成膜した。続いて、青色発光層として、ホストをα−NPD、ドーパントをペリレンとし、ドーパント濃度が1wt%となるように、厚さ20nm成膜した。次に、赤色発光層として、ホストをAlq3、ドーパントをDCM1とし、ドーパント濃度が1wt%となるように、厚さ40nm成膜した。最後に、エレクトロン輸送層として、Alq3を厚さ20nm成膜した。
【0040】
次に、遮光層32として、反射性を有する膜を、真空蒸着法を用いて、有機EL積層体34の上に成膜した。ここで、透過発光領域10の透過率を決定するため、例えば、光透過部12の面積比が85%の発光パネルを作成する場合には、蒸着マスクの窓部分を合計した面積がマスク全体面積の15%となるように、等間隔、且つ周期的に配列した蒸着マスクを用いて、遮光層32を形成した。遮光層32としては、LiFを膜厚0.7nm、Alを膜厚150nm成膜した。
【0041】
このようにして作成した有機EL素子は、外気の水分に対して非常に脆弱である。このため、非透湿性の保護キャップ42により、発光部34を覆うように気密に封止した。本実施形態では、光透過部12において光透過性が必要であるため、非透湿性の保護キャップ42も、光透過性を有する必要がある。そこで、非透湿性の保護キャップ42として、ソーダライムガラス基板を用いた。気密封止の方法としては、ソーダライムガラス基板の縁部にUV硬化型の接着剤を塗布し、透過発光領域10を覆うように保護キャップ42を貼り合わせた後、発光部34にUVが照射されないように遮光した状態で接着剤塗布部にUVを照射し接着剤を硬化させて気密に接合した。
【0042】
図12は、試作した発光パネル100を主面100Aの側から眺めた写真である。
図12(a)は、非点灯状態を表す。発光パネル100は、クリップ950により支持され、端子960、960により給電される。発光パネル100の背後には、ライオンの顔を模したイラスト980が配置されている。発光部34が光を放出していない状態において、発光パネル100の背後のイラスト980を、透過発光領域10の光透過部12を介して観察できることが分かる。なお、この発光パネル100は、透過発光領域10における光透過率が70パーセントである。つまり、透過発光領域10における光透過部12の面積の比率が70パーセントであり、光放出部14の面積の比率が30パーセントである。
【0043】
図12(b)は、点灯状態を表す。つまり、図12(b)は、光放出部14からの光が、紙面の手前方向に放出されている状態を表す。この状態では、発光パネル100の背後のイラスト980(図12(a)参照)は、殆ど見えない。つまり、発光パネル100の背後のイラスト980のコントラストが非常に低下している。
【0044】
このように、観察者の側に光を放射させると、発光パネル100を介した背景の画像のコントラストが大幅に低下する。発光パネル100の光量を大きくすれば、図12(b)に表したように、その背後の画像を観察者から隠すことが可能となる。本実施形態によれば、このように、光シャッター的な使い方が可能となる。
【0045】
図13は、試作した発光パネル100の点灯状態を表す写真である。
図13(a)は、ライオンの顔を模したイラスト980の上に、発光パネル100の主面100Bを上向きに配置して点灯させた状態を表す。すなわち、発光パネル100からの光は、観察者の方向(紙面の手前方向)ではなく、イラスト980の方向(紙面の奥方向)に向けて放出されている。
この状態では、発光パネル100の背後の背景画像が明るく照らされ、背景の画像を明確に観察することができる。図12(a)と比較すると、イラスト980を照らすことにより、とても明確に観察できることが分かる。これは、図7に関して前述した読書灯と同様の態様である。
【0046】
図13(b)は、同様に、イラスト980の上に、発光パネル100の主面100Bを上向きに配置して点灯させ、発光パネル100を介さず、その脇からイラスト980を眺めた状態を表す。すなわち、発光パネル100からの光は、イラスト980の方向(紙面の奥方向)に向けて放出されている。
この状態でも、イラスト980が明るく照らされ、明確に観察することができる。これは例えば、「デスクライト」、「テーブルライト」あるいは「スタンド」などと呼ばれる照明器具と同様の使い方である。本実施形態によれば、このような従来の照明器具としての使い方も可能である。
【0047】
このように、発光パネル100を点灯させた状態においては、光が放出される側から眺めた時には背景の画像が隠され、一方、光が遮蔽される側から眺めた場合には背景の画像を明瞭に観察することが可能となる。
【0048】
このような、独特の方向性あるいはフィルタ性を有する本実施形態の発光パネルは、これまでにない、各種の用途において、新規な使い方や効果の創出を可能とするものである。
【0049】
以上、図面を参照しつつ、本発明の実施の形態について説明した。しかしながら、本発明は、これらの実施形態に限定されない。本発明の発光パネルを構成する透過発光領域、光透過部、光放出部、周辺領域、透光性基板、透明導電層、遮光層、電極、発光部、EL積層体、透明導電層をはじめとする各要素の材質、形状、サイズ、配置などに関して、当業者が各種設計変更を行ったものであっても、本発明の主旨を逸脱しない限り、本発明の範囲に包含される。
【0050】
例えば、透過発光領域における光透過部あるいは光放出部は、必ずしも複数に分割されておらず、複数の部分が互いに連結したほうなパターンであってもよい。
図14は、このようなパターンを例示する模式平面図である。
透過発光領域10において、光透過部12は、複数のストライプ状の部分12Sを有する。しかし、これら複数のストライプ状の部分12Sは、互いに分割されておらず、連結部12Cにより互いに連結されている。光透過部12をこのようなパターンに形成しても、図1〜図13に関して前述した作用効果を同様に得ることができる。また、図14に例示したような具体例において、光透過部12と光放出部14とを逆にしてもよい。つまり、光放出部14が図14に表した光透過部12のようなパターンを有するように形成してもよい。
【0051】
一方、図4に例示したように、光透過部14のなかに複数の光放出部12を点在させた場合に、それぞれの光放出部12を個別に点灯させるようにしてもよい。これは、例えば、TFT(Thin Film Transistor)などのスイッチング素子を用いて実現できる。このようにすれば、透過発光領域10の一部のみを点灯させたり、また文字や図形や画像データなどを表示させることも可能となる。
またさらに、例えば、赤色(R)に発光する光放出部12と、緑色(G)に発光する光放出部12と、青色(B)に発光する光放出部12と、を隣接して配置して画素とし、この画素を透過発光領域10に周期的に配列させることもできる。この場合、それぞれの画素の赤色と緑色と青色の発光強度を制御すれば、カラー表示も可能となる。
【符号の説明】
【0052】
10 透過発光領域、12 光透過部、14 光放出部、20 周辺領域、30 透光性基板、31 透明導電層、32 遮光層(電極)、34 発光部(EL積層体)、36 透明導電層、38 透光性基板、40 絶縁層、42 保護キャップ、100 発光パネル、100A 主面、100B 主面、400 建物、410 屋根、900 外光、910 書籍、920 読者、930 観察者、940 被観察体
【技術分野】
【0001】
本発明は、発光パネルに関する。
【背景技術】
【0002】
照明装置や表示装置などの光源として、電球や蛍光灯あるいは電球型のLED(Light Emitting Diode)などの代わりに、発光パネルを用いることができる。発光パネルの一例として、EL(electro-luminescence)素子を用いたものがある。特許文献1には、ガラス基板と透明保護層との間に有機ELからなる有機発光層を挟んだ有機EL素子が開示されている。有機発光層から放出された光は、有機EL素子の両面に放出される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2001−332392号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
これまでにない、いろいろな使い方が可能な発光パネルを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の一態様によれば、光を放出し光を透過させる透過発光領域を備えた発光パネルであって、前記透過発光領域は、光を放出する光放出部と、光を透過させる光透過部と、を有し、前記光放出部は、光を放出する発光部と、光を遮断する遮光層と、を有し、前記発光部から前記発光パネルの第1の主面の側に向かう光は、前記第1の主面から放出され、前記発光部から前記発光パネルの第2の主面の側に向かう光は前記遮光層により遮蔽されることを特徴とする発光パネルが提供される。
【発明の効果】
【0006】
これまでにない、いろいろな使い方が可能な発光パネルが提供される。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】図1(a)は、本発明の実施形態にかかる発光パネルの平面構成を例示する概念図である。また、図1(b)は、この発光パネル100のA−A線断面の一例を表す模式図であり、図1(c)は、この発光パネル100のA−A線断面の他の一例を表す模式図である。
【図2】透過発光領域10の構造を例示する模式図である。
【図3】発光部34への給電構造の具体例を表す断面図である。
【図4】透過発光領域10の構造の他の具体例を表す模式図である。
【図5】発光部34への給電構造の具体例を表す断面図である。
【図6】本実施形態の発光パネルの使用態様を例示する模式図である。
【図7】本実施形態の発光パネルの他の使用態様を例示する模式図である。
【図8】本実施形態の発光パネル100の他の使用態様を例示する模式図である。
【図9】光フィルタ作用を説明するための概念図である。
【図10】本発明者が試作した発光パネル100の平面透視図である。
【図11】図11(a)は、この発光パネル100のA−A線断面図であり、図11(b)は、B−B線断面図である。
【図12】試作した発光パネル100を主面100Aの側から眺めた写真である。
【図13】試作した発光パネル100の点灯状態を表す写真である。
【図14】透過発光領域における光透過部あるいは光放出部のパターンを例示する模式平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、図面を参照しつつ、本発明の実施の形態について説明する。
図1(a)は、本発明の実施形態にかかる発光パネルの平面構成を例示する概念図である。また、図1(b)は、この発光パネル100のA−A線断面の一例を表す模式図であり、図1(c)は、この発光パネル100のA−A線断面の他の一例を表す模式図である。なお、図1(b)及び(c)においては、発光パネル100の断面の詳細な構造は便宜上、省略した。
【0009】
図1に表した発光パネル100は、透過発光領域10と、その周囲に設けられた周辺領域20と、を有する。透過発光領域10は、後に詳述するように、光を放出し、また主面100Aと主面100Bとのあいだを光が透過可能な領域である。
発光パネル100は、図1(b)に表したように、その両側の主面100A、100Bがそれぞれ平面状の板状の形態を有するものとすることができる。
あるいは、主面100A、100Bは、非平面であってもよい。例えば、図1(c)に例示したように、主面100A、100Bのいずれか一方が曲面状であってもよい。あるいは、主面100A、100Bの両方が曲面であってもよい。また、曲面は、図1(c)に表したように凸状曲面でよく、あるいは凹状曲面でもよい。
またさらに、主面100A、100Bのいずか一方、あるいは両方が凹凸を有するものであってもよい。
【0010】
そして、本実施形態においては、透過発光領域10は、主面100Aと主面100Bのうちで、いずれか一方のみから光を放出する。例えば、図1(b)及び(c)に矢印L1で例示した如く、主面100Aの側からは光を放出するが、主面100Bの側からは光は実質的に放出しない。あるいは、これらとは逆に、主面100Aからは実質的に光を放出せず、主面100Bから光を放出するものとしてもよい。
【0011】
またさらに、透過発光領域10の一部は、光を透過する。例えば、図1(b)及び(c)に矢印L3で表したように、主面100Aの側から主面100Bの側に光が透過可能であり、また、矢印L4で表したように、主面100Bの側から主面100Aの側に光が透過可能とされている。
【0012】
一方、周辺領域20は、例えば、電極パッドや駆動回路、その他、各種の周辺回路や周辺機器などが適宜設けられる領域である。なお、本実施形態においては、周辺領域20は必ずしも必須ではなく、適宜省略することも可能である。
【0013】
図1(a)においては、発光パネル100の平面形状として略四角形のものを例示したが、本実施形態はこれには限定されない。すなわち、発光パネル100の平面形状は、多角形、円形、楕円形、あるいはそれら以外の各種の形状とすることができる。また、透過発光領域10の平面形状も、図1(a)に例示したように、略四角形には限定されず、多角形、円形、楕円形、あるいはそれら以外の各種の形状とすることができる。
【0014】
図2は、透過発光領域10の構造を例示する模式図である。図2(a)は、透過発光領域10の一部拡大平面図であり、図2(b)はそのA−A線断面図である。
透過発光領域10は、光透過部12と、光放出部14と、を有する。そして、透過発光領域10は、光透過部12と、光放出部14と、が交互に設けられた部分を有する。図2に表した具体例の場合、例えば、A−A線上の部分をみると、光透過部12と、光放出部14と、が交互に設けられている。
【0015】
透過発光領域10は、光放出部14のなかに点在した複数の光透過部12を有する。より具体的には、主面100A(あるいは主面100B)に対して垂直な方向からみて、光放出部14のなかに複数の光透過部12が略マトリクス状に設けられている。
図2(b)に表したように、光放出部14は、透光性基板30の上に選択的に設けられた遮光層32と、その上に設けられた発光部34と、を有する。ただし、これら透光性基板30、遮光層32、発光部34の積層の順番は、図2の具体例には限定されず、任意である。発光部34は、後に詳述するように、例えば、EL層や、LED(light emitting diode)、LD(laser diode)などを有する。
【0016】
図3は、発光部34への給電構造の具体例を表す断面図である。
本具体例においては、透光性基板30の上に、遮光層32と発光部34とが選択的に設けられている。そして、透明導電層36により発光部34が共通接続され、その上に透光性基板38が設けられている。
透光性基板30、38は、例えば、ガラス、石英、プラスチック、樹脂類などの各種の材料により形成することができる。また、透光性基板30、38は、光の透過率がゼロでなければよく、無色透明、有色透明、半透明、不透明であってもよい。
遮光層32は、発光部34から放出される光を実質的に遮蔽する材料からなり、例えば、金属、有機材料、無機材料などにより形成することができる。遮光層32を導電性の材料により形成すれば、発光部34に対する給電経路としても兼用できる。
透明導電層36は、例えば、スズの酸化物や、インジウムとスズの酸化物などにより形成することができる。
また、発光部34が透光性を有する場合には、図2及び図3に例示した如く、光放出部14のみに発光部34を選択的に形成するのではなく、光透過部12にも発光部34を連続的に形成してもよい。
【0017】
図3に表した具体例によれば、遮光層32と透明導電層36を介して、複数の発光部34にそれぞれ給電し、発光を生じさせることが可能となる。
そして、図2及び図3に表したように、発光部34から発光パネルの主面100Aの側に向かう光は、主面100Aから放出される。一方、発光部34から発光パネルの主面100Bの側に向かう光は、遮光層32により遮蔽される。
すなわち、発光部34から放出された光は、矢印L1で表したように、透過発光領域10の主面100Aの側から放出される。遮光層32が設けられているために、発光部34からの光は、矢印L2の方向には放出されない。
【0018】
一方、光透過部12においては、遮光層32は設けられていない。このため、透光性基板30、38を介して、矢印L3の方向にも、あるいはこれとは逆に矢印L4の方向にも、光は透過可能とされている。
【0019】
図4は、透過発光領域10の構造の他の具体例を表す模式図である。すなわち、図4(a)は、透過発光領域10の一部拡大平面図であり、図4(b)はそのA−A線断面図である。
本具体例においても、透過発光領域10は、光透過部12と、光放出部14と、が交互に設けられた部分を有する。例えば、A−A線上の部分をみると、光透過部12と、光放出部14と、が交互に設けられている。
より具体的には、透過発光領域10は、光透過部12のなかに点在した複数の光放出部14を有する。より具体的には、光透過部12のなかに複数の光放出部14が略マトリクス状に設けられている。これら要素の詳細は、図2及び図3に関して前述したものと同様とすることができる。
【0020】
図5は、発光部34への給電構造の具体例を表す断面図である。
本具体例においては、透光性基板30の上に透明導電層31が設けられ、その上に遮光層32と発光部34とが選択的に設けられている。そして、発光部34の上に透明導電層36が共通的に設けられている。透明導電層36により発光部34が共通接続され、その上に透光性基板38が設けられている。遮光層32を導電性の材料により形成すれば、透明導電層31、36を介して、複数の発光部34にそれぞれ給電し、発光を生じさせることが可能となる。なお、本具体例においても、発光部34が透光性を有する場合には、図4及び図5に例示した如く、光放出部14のみに発光部34を選択的に形成するのではなく、光透過部12にも発光部34を連続的に形成してもよい。
【0021】
そして、本具体例においても、発光部34から放出された光は、矢印L1で表したように、透過発光領域10の主面100Aの側から放出される。遮光層32が設けられているために、発光部34からの光は、矢印L2の方向には放出されない。一方、光透過部12においては、遮光層32は設けられていない。このため、透光性基板30、38を介して、矢印L3の方向にも、あるいはこれとは逆に矢印L4の方向にも、光は透過可能とされている。
【0022】
なお、本実施形態は、図2〜図5に表した具体例には限定されない。例えば、光放出部14(あるいは、光透過部12)の平面形状は、図2(a)(あるいは、図4(a))に表したように、略四角形には限定されず、その他の各種の形状とすることができる。また、これら光放出部14(あるいは、光透過部12)の配置パターンについても、縦横が等ピッチのマトリクス状には限定されず、千鳥格子状や、非周期的な各種の配置パターンであってもよい。例えば、後に具体例として詳述するように、光透過部12と光放出部14とがそれぞれストライブ状に形成され交互に配列したものであってもよい。
また、これら複数の光放出部14(あるいは、光透過部12)の平面形状や平面サイズは、同一である必要はなく、異なる平面形状や平面サイズを有する光放出部14を含んでもよい。
【0023】
また、光透過部12と光放出部14の面積の比率についても、図2や図4に例示したものには限定されない。光透過部12の面積の比率を高くすれば、発光パネル100を透過する光の量を増やすことができる。反対に、光放出部14の面積の比率を高くすれば、発光パネル100から放出される光の量を増やすことができる。したがって、これら面積の比率は、発光パネル100の用途や要求される仕様、性能などに応じて適宜調整することができる。
【0024】
以上説明したように、本実施形態の発光パネル100は、一方の主面100A(あるいは100B)の側のみから光を放出するとともに、一方の主面100Aと他方の主面100Bとの間で光が透過可能とされている。このように、光を透過させつつ、一方向のみに光を放出する発光パネルを用いると、例えば、外光を採り入れ、さらに必要に応じて照明を点灯させることができる窓として用いることができる。
【0025】
図6は、本実施形態の発光パネルの使用態様を例示する模式図である。
本具体例においては、建物400の屋根410に本実施形態の発光パネル100が取り付けられている。図6(a)に表したように、昼間は外光900が発光パネル100を介して建物400の内部に透過可能である。つまり、発光パネル100は、「明かり採りの窓」として機能する。
一方、図6(b)に表したように、夜間は、発光パネル100を発光させることにより、「照明」として用いることができる。この際に、発光パネル100からの光は、建物400の内部に向けて放出されるが、建物400の外側に向けては放出されない。つまり、建物400の外側への光の漏れを防ぐことができる。光放出部14の遮光層32(図2、図4参照)に反射作用を付与すれば、発光部34から放出された光を遮光層32で反射させ、建物400の室内に向けて放出させることができる。つまり、光放出部14から放出された光を一方向のみに効率的に取り出し、建物400の室内を照明することができる。
【0026】
なお、図6には、発光パネル100を建物400の屋根410に設置した具体例を表したが、これ以外にも、例えば、建物400の外壁や、室内を仕切る壁などに設置してもよい。また例えば、自動車や船舶などに発光パネル100を取り付けて、外光の採りこみと、室内の照明と、を両立させることもできる。
【0027】
図7は、本実施形態の発光パネルの他の使用態様を例示する模式図である。
本具体例においては、発光パネル100は読書灯として用いることができる。すなわち、読者920は、発光パネル100を介して書籍910を読むことができる。この際に、例えば図7に挿入図として例示したように、光透過部12の面積の比率を高くし、光放出部14の面積の比率を低くすることにより、光放出部14がじゃまになることを防ぐことができる。実際、読者920の両眼の焦点を書籍910に合わせた状態においては、発光パネル100の光放出部14は読者920の両眼の焦点から外れた位置にあるので、読者920の視界を遮る影響は少ない。
【0028】
そして、周囲の明るさが十分でないときには、発光パネル100を点灯させ、矢印L1で表したように光を放射させて書籍910を照らすことができる。この際に、発光パネル100からの光は、読者920の方向には放出されないので、読者920がまぶしく感じることはない。
本具体例によれば、薄型で軽量、かつデザイン性にすぐれ使い勝手のよい読書灯を提供できる。また、例えば、図1(c)に表したように、発光パネル100をレンズ状に形成すれば、書籍910の拡大表示も可能となる。
本具体例は、読書灯には限定されず、例えば、暗所で手元を照らしながら作業をする際の作業灯や、時計修理などの際に用いる拡大ルーペなどにも用いることができる。
【0029】
一方、本実施形態の発光パネル100は、光フィルタ的な作用も有する。
図8は、本実施形態の発光パネル100の他の使用態様を例示する模式図である。
発光パネル100が非点灯の状態にあるとき、図8(a)に表したように、観察者930は、発光パネル100を介して被観察体940を見ることができる。つまり、発光パネル100の光透過部12(図2、図4参照)を介して、被観察体940の光像を捉えることができる。
ところが、図8(b)に表したように、発光パネル100を点灯させ、観察者930の方向に光を放出させると、観察者930にとって、被観察体940が見えにくくなる。
【0030】
図9は、このような光フィルタ作用を説明するための概念図である。
本具体例は、光透過部12と光放出部14とがそれぞれストライプ状に形成され交互に配置された発光パネル100である。すなわち、図9においては、横方向にそって、透過発光領域10は、光透過部12と、光放出部14と、が交互に設けられた部分を有する。
【0031】
発光パネル100が非点灯の状態においては、図9(a)に表したように、光透過部12を介して被観察体940を見ることができる。また、被観察体940からみて、観察者930(図8参照)を見ることもできる。
図9(b)は、発光パネル100を点灯させ、光放出部14から観察者の側(図9において、紙面の向かって手前に向かう側)に光を放出させた状態を表す。この状態においては、光放出部14から放出される光によって、その周囲の光透過部12を介した背景が見えにくくなる。つまり、光放出部14が明るくなったことにより、光透過部12の背景が視覚的に隠される。
一方、この状態においても、被観察体940からみて、観察者930(図8参照)を見ることはできる。
【0032】
図9(c)は、光放出部14から放出される光の量をさらに増やした状態を表す。光放出部14がさらに明るく光るようになると、光透過部12の背景は完全に隠されてしまい、見えなくなる。つまり、観察者930(図8参照)からみて、被観察体940が見えなくなる。
【0033】
そして、この状態においても、被観察体940からは、観察者930を見ることができる。これは例えば、図7に関して前述した読書灯と同様の作用である。
【0034】
このように、本具体例によれば、発光パネル100が非点灯状態のときは、発光パネル100の両側からそれぞれ反対側を見ることができる。これに対して、発光パネル100が点灯状態にあると、発光パネル100の一方の側から他方の側が見えず(あるいは見えにくくなり)、発光パネル100の他方の側から一方の側は見ることができる。
【0035】
このような、独特の光フィルタ作用は、例えば、住宅設備や、飲食店のウインドウ、商店のショーウインドウ、ディスプレイ、アミューズメント、ゲームなど、広範な用途において新規な使い方、効果を生じさせる可能性がある。
【0036】
次に、本発明者が実施した本実施形態の発光パネル100の試作例について、説明する。
図10は、本発明者が試作した発光パネル100の平面透視図である。
また、図11(a)は、この発光パネル100のA−A線断面図であり、図11(b)は、B−B線断面図である。
本試作例の発光パネル100は、透光性基板38の上に、透明導電層36、発光部としてのEL層34、遮光層としての電極32、を積層し、さらに非透湿性の保護キャップ42により封止した構造を有する。透明導電層36と電極32とは、絶縁層40により電気的に絶縁されている。図10に表した平面構成において、絶縁層40により囲まれた略四角形の部分が、透過発光領域10に相当し、その外側の領域が周辺領域20に相当する(図1参照)。透過発光領域10において、遮光層としての電極32は、ストライプ状に形成され、間隔を空けて設けられている。これら電極32が設けられた部分が光放出部14であり、電極32が設けられていない部分が、光透過部12である。
【0037】
以下、本試作例の発光パネル100について、その製造方法を参照しつつ、さらに詳しく説明する。
非透湿性の透光性基板38として、ソーダライムガラス基板(縦横100mm×100mm、厚さ=0.7mm)を用いた。その表面に、透明導電層36として、ITO(Indium Tin Oxide)を、スパッタリング法を用いて、厚さ150nm成膜した。続いて、フォトリソグラフィ法により、成膜したITO膜を、透過発光領域10の全体を覆い周辺領域20の一部に延在するようにパターニングした。
【0038】
次に、絶縁層40として、スピンコート法を用いて、ポリイミドを厚さ1.5μm成膜した。そして、成膜したポリイミド膜をフォトリソグラフィ法によりパターニングし、透過発光領域10の外縁部分を取り囲む形状に加工した。
【0039】
次に、発光部34として、2波長白色発光となる有機EL積層体を、真空蒸着法を用いて、ITO膜36の上に成膜した。有機EL積層体としては、まず始めに、ホール輸送層として、α−NPDを厚さ60nm成膜した。続いて、青色発光層として、ホストをα−NPD、ドーパントをペリレンとし、ドーパント濃度が1wt%となるように、厚さ20nm成膜した。次に、赤色発光層として、ホストをAlq3、ドーパントをDCM1とし、ドーパント濃度が1wt%となるように、厚さ40nm成膜した。最後に、エレクトロン輸送層として、Alq3を厚さ20nm成膜した。
【0040】
次に、遮光層32として、反射性を有する膜を、真空蒸着法を用いて、有機EL積層体34の上に成膜した。ここで、透過発光領域10の透過率を決定するため、例えば、光透過部12の面積比が85%の発光パネルを作成する場合には、蒸着マスクの窓部分を合計した面積がマスク全体面積の15%となるように、等間隔、且つ周期的に配列した蒸着マスクを用いて、遮光層32を形成した。遮光層32としては、LiFを膜厚0.7nm、Alを膜厚150nm成膜した。
【0041】
このようにして作成した有機EL素子は、外気の水分に対して非常に脆弱である。このため、非透湿性の保護キャップ42により、発光部34を覆うように気密に封止した。本実施形態では、光透過部12において光透過性が必要であるため、非透湿性の保護キャップ42も、光透過性を有する必要がある。そこで、非透湿性の保護キャップ42として、ソーダライムガラス基板を用いた。気密封止の方法としては、ソーダライムガラス基板の縁部にUV硬化型の接着剤を塗布し、透過発光領域10を覆うように保護キャップ42を貼り合わせた後、発光部34にUVが照射されないように遮光した状態で接着剤塗布部にUVを照射し接着剤を硬化させて気密に接合した。
【0042】
図12は、試作した発光パネル100を主面100Aの側から眺めた写真である。
図12(a)は、非点灯状態を表す。発光パネル100は、クリップ950により支持され、端子960、960により給電される。発光パネル100の背後には、ライオンの顔を模したイラスト980が配置されている。発光部34が光を放出していない状態において、発光パネル100の背後のイラスト980を、透過発光領域10の光透過部12を介して観察できることが分かる。なお、この発光パネル100は、透過発光領域10における光透過率が70パーセントである。つまり、透過発光領域10における光透過部12の面積の比率が70パーセントであり、光放出部14の面積の比率が30パーセントである。
【0043】
図12(b)は、点灯状態を表す。つまり、図12(b)は、光放出部14からの光が、紙面の手前方向に放出されている状態を表す。この状態では、発光パネル100の背後のイラスト980(図12(a)参照)は、殆ど見えない。つまり、発光パネル100の背後のイラスト980のコントラストが非常に低下している。
【0044】
このように、観察者の側に光を放射させると、発光パネル100を介した背景の画像のコントラストが大幅に低下する。発光パネル100の光量を大きくすれば、図12(b)に表したように、その背後の画像を観察者から隠すことが可能となる。本実施形態によれば、このように、光シャッター的な使い方が可能となる。
【0045】
図13は、試作した発光パネル100の点灯状態を表す写真である。
図13(a)は、ライオンの顔を模したイラスト980の上に、発光パネル100の主面100Bを上向きに配置して点灯させた状態を表す。すなわち、発光パネル100からの光は、観察者の方向(紙面の手前方向)ではなく、イラスト980の方向(紙面の奥方向)に向けて放出されている。
この状態では、発光パネル100の背後の背景画像が明るく照らされ、背景の画像を明確に観察することができる。図12(a)と比較すると、イラスト980を照らすことにより、とても明確に観察できることが分かる。これは、図7に関して前述した読書灯と同様の態様である。
【0046】
図13(b)は、同様に、イラスト980の上に、発光パネル100の主面100Bを上向きに配置して点灯させ、発光パネル100を介さず、その脇からイラスト980を眺めた状態を表す。すなわち、発光パネル100からの光は、イラスト980の方向(紙面の奥方向)に向けて放出されている。
この状態でも、イラスト980が明るく照らされ、明確に観察することができる。これは例えば、「デスクライト」、「テーブルライト」あるいは「スタンド」などと呼ばれる照明器具と同様の使い方である。本実施形態によれば、このような従来の照明器具としての使い方も可能である。
【0047】
このように、発光パネル100を点灯させた状態においては、光が放出される側から眺めた時には背景の画像が隠され、一方、光が遮蔽される側から眺めた場合には背景の画像を明瞭に観察することが可能となる。
【0048】
このような、独特の方向性あるいはフィルタ性を有する本実施形態の発光パネルは、これまでにない、各種の用途において、新規な使い方や効果の創出を可能とするものである。
【0049】
以上、図面を参照しつつ、本発明の実施の形態について説明した。しかしながら、本発明は、これらの実施形態に限定されない。本発明の発光パネルを構成する透過発光領域、光透過部、光放出部、周辺領域、透光性基板、透明導電層、遮光層、電極、発光部、EL積層体、透明導電層をはじめとする各要素の材質、形状、サイズ、配置などに関して、当業者が各種設計変更を行ったものであっても、本発明の主旨を逸脱しない限り、本発明の範囲に包含される。
【0050】
例えば、透過発光領域における光透過部あるいは光放出部は、必ずしも複数に分割されておらず、複数の部分が互いに連結したほうなパターンであってもよい。
図14は、このようなパターンを例示する模式平面図である。
透過発光領域10において、光透過部12は、複数のストライプ状の部分12Sを有する。しかし、これら複数のストライプ状の部分12Sは、互いに分割されておらず、連結部12Cにより互いに連結されている。光透過部12をこのようなパターンに形成しても、図1〜図13に関して前述した作用効果を同様に得ることができる。また、図14に例示したような具体例において、光透過部12と光放出部14とを逆にしてもよい。つまり、光放出部14が図14に表した光透過部12のようなパターンを有するように形成してもよい。
【0051】
一方、図4に例示したように、光透過部14のなかに複数の光放出部12を点在させた場合に、それぞれの光放出部12を個別に点灯させるようにしてもよい。これは、例えば、TFT(Thin Film Transistor)などのスイッチング素子を用いて実現できる。このようにすれば、透過発光領域10の一部のみを点灯させたり、また文字や図形や画像データなどを表示させることも可能となる。
またさらに、例えば、赤色(R)に発光する光放出部12と、緑色(G)に発光する光放出部12と、青色(B)に発光する光放出部12と、を隣接して配置して画素とし、この画素を透過発光領域10に周期的に配列させることもできる。この場合、それぞれの画素の赤色と緑色と青色の発光強度を制御すれば、カラー表示も可能となる。
【符号の説明】
【0052】
10 透過発光領域、12 光透過部、14 光放出部、20 周辺領域、30 透光性基板、31 透明導電層、32 遮光層(電極)、34 発光部(EL積層体)、36 透明導電層、38 透光性基板、40 絶縁層、42 保護キャップ、100 発光パネル、100A 主面、100B 主面、400 建物、410 屋根、900 外光、910 書籍、920 読者、930 観察者、940 被観察体
【特許請求の範囲】
【請求項1】
光を放出し光を透過させる透過発光領域を備えた発光パネルであって、
前記透過発光領域は、光を放出する光放出部と、光を透過させる光透過部と、を有し、
前記光放出部は、光を放出する発光部と、光を遮断する遮光層と、を有し、
前記発光部から前記発光パネルの第1の主面の側に向かう光は、前記第1の主面から放出され、前記発光部から前記発光パネルの第2の主面の側に向かう光は前記遮光層により遮蔽されることを特徴とする発光パネル。
【請求項2】
前記透過発光領域は、前記光放出部と、前記光透過部と、が交互に設けられた部分を有することを特徴とする請求項1記載の発光パネル。
【請求項3】
前記遮光層は、前記発光部から放出される光に対する反射性を有することを特徴とする請求項1または2に記載の発光パネル。
【請求項4】
前記透過発光領域は、前記光放出部のなかに設けられた複数の前記光透過部を有することを特徴とする請求項1〜3のいずれか1つに記載の発光パネル。
【請求項5】
前記透過発光領域は、前記光透過部のなかに設けられた複数の前記光放出部を有することを特徴とする請求項1〜3のいずれか1つに記載の発光パネル。
【請求項6】
前記発光部は、EL積層体を有することを特徴とする請求項1〜5のいずれか1つに記載の発光パネル。
【請求項1】
光を放出し光を透過させる透過発光領域を備えた発光パネルであって、
前記透過発光領域は、光を放出する光放出部と、光を透過させる光透過部と、を有し、
前記光放出部は、光を放出する発光部と、光を遮断する遮光層と、を有し、
前記発光部から前記発光パネルの第1の主面の側に向かう光は、前記第1の主面から放出され、前記発光部から前記発光パネルの第2の主面の側に向かう光は前記遮光層により遮蔽されることを特徴とする発光パネル。
【請求項2】
前記透過発光領域は、前記光放出部と、前記光透過部と、が交互に設けられた部分を有することを特徴とする請求項1記載の発光パネル。
【請求項3】
前記遮光層は、前記発光部から放出される光に対する反射性を有することを特徴とする請求項1または2に記載の発光パネル。
【請求項4】
前記透過発光領域は、前記光放出部のなかに設けられた複数の前記光透過部を有することを特徴とする請求項1〜3のいずれか1つに記載の発光パネル。
【請求項5】
前記透過発光領域は、前記光透過部のなかに設けられた複数の前記光放出部を有することを特徴とする請求項1〜3のいずれか1つに記載の発光パネル。
【請求項6】
前記発光部は、EL積層体を有することを特徴とする請求項1〜5のいずれか1つに記載の発光パネル。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図10】
【図11】
【図14】
【図9】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図10】
【図11】
【図14】
【図9】
【図12】
【図13】
【公開番号】特開2011−249541(P2011−249541A)
【公開日】平成23年12月8日(2011.12.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−120868(P2010−120868)
【出願日】平成22年5月26日(2010.5.26)
【出願人】(000111672)ハリソン東芝ライティング株式会社 (995)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年12月8日(2011.12.8)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年5月26日(2010.5.26)
【出願人】(000111672)ハリソン東芝ライティング株式会社 (995)
【Fターム(参考)】
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