説明

発光マニキュア

【課題】従来のマニキュア液に発光物質を加えることにより製造可能であり、イベントステージやカラオケボックス等でよく使用されるブラックライト等の紫外線照射下で発光し、所望の色に容易に調整可能な発光マニキュアを提供すること。
【解決手段】造膜性樹脂を有機溶媒に溶解した溶液に、紫外線照射下において赤色発光するユーロピウム系化合物、青色発光するペリレン系化合物、緑色発光するテルビウム系化合物から選択される1種以上の発光物質を配合した発光マニキュアであって、紫外線を照射すると発光することを特徴とする発光マニキュアとする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、従来のマニキュア液に発光物質を加えることにより製造可能な紫外線照射下で発光するマニキュア、より詳細には、所望の色に容易に調整可能な発光マニキュアに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、爪の美観を高めるためのマニキュアは、透明や色付きだけでなくきらびやかなラメやパール入りのマニキュア等様々なものが使用されている。これらマニキュアは、爪に綺麗に装飾を施したとしても昼間及び明るい室内でしかその美しさを付与できないものであった。しかしながら、最近、暗所でも装飾的効果を発揮することができるマニキュア等、様々な状況下でマニキュアを楽しむための試みがなされている。
【0003】
暗闇で発光するマニキュアとして、例えば、微小の発光物質をマニキュア剤に混入したマニキュアが挙げられる(特許文献1乃至3参照)。しかしながら、これらマニキュアに含まれる発光物質は蓄光性であるために、照明が消えてから一定時間立つと暗所の中で発光しなくなるという問題を有していた。
【0004】
さらに、これら特許文献1乃至3に記載されるマニキュアは、暗所で発光するものであり、異なる照明、例えばブラックライト等が照射するイベントステージやカラオケボックス等ではそれ程目立つものではなかった。また、所望の色を付与することもできなかった。特にステージ上等では周囲の人の注目を集めたいという欲求がある場合もあり、これらマニキュアでは、インパクトがなく十分に人の目を惹きつけるものとはいえなかった。
【0005】
したがって、例えばブラックライト等がよく使用されるイベントステージやカラオケボックス等で、マニキュアの装飾効果を所望の色とともに付与でき、またインパクトがある従来に無いタイプのマニキュアが求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平10−182358
【特許文献2】特開平10−192040
【特許文献3】特開平11−228350
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、従来のマニキュア液に発光物質を加えることにより製造可能であり、イベントステージやカラオケボックス等でよく使用されるブラックライト等の紫外線照射下で発光し、所望の色に容易に調整可能な発光マニキュアを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1に係る発明は、造膜性樹脂を有機溶媒に溶解した溶液に、紫外線照射下において赤色発光するユーロピウム系化合物、青色発光するペリレン系化合物、緑色発光するテルビウム系化合物から選択される1種以上の発光物質を配合した発光マニキュアであって、紫外線を照射すると発光することを特徴とする発光マニキュアに関する。
請求項2に係る発明は、前記ユーロピウム系化合物が、下記の化1又は化2で示される化合物であることを特徴とする請求項1記載の発光マニキュアに関する。

(化1)
Tris(1,1,1,5,5,5−hexafluoro−2.4−pentanedionato−,O,O')bis(triphenylphosphine oxide−O−)Europium
(化2)
Tris(4,4,4−trifluoro−1−(2―thienyl)−1,3−butanedionato−O,O')bis(tripehnylphosphine oxide−O−)Europium
請求項3に係る発明は、前記ペリレン系化合物が、下記の化3で示される化合物であることを特徴とする請求項1又は2記載の発光マニキュアに関する。
(化3)
3028
請求項4に係る発明は、前記テルビウム系化合物が、下記の化4又は化5で示される化合物であることを特徴とする請求項1乃至3いずれかに記載の発光マニキュアに関する。
(化4)
[Hexadecakis(hexyl)-dioxo-octahydroxy-trietylamino-]nona terbium complex
(化5)
[Hexadecakis(isoamyl)-dioxo-octahydroxy-trietylamino-]nona terbium complex
請求項5に係る発明は、非紫外線照射下で無色透明であることを特徴とする請求項1乃至4いずれかに記載の発光マニキュアに関する。
請求項6に係る発明は、前記樹脂が、天然樹脂、酢酸ビニル系樹脂、アルキッド系樹脂、アクリル系樹脂、アミノ系樹脂、シリコーン系樹脂、ニトロセルロース系樹脂から選択される1種以上であることを特徴とする請求項1乃至5いずれかに記載の発光マニキュアに関する。
請求項7に係る発明は、前記有機溶媒が、エタノール、イソプロパノール、アセトン、酢酸エチル、メチルシクロヘキサンから選択される1種以上であることを特徴とする請求項1乃至6いずれかに記載の発光マニキュアに関する。
【発明の効果】
【0009】
請求項1に係る発光マニキュアは、紫外線を照射すると発光するため、ブラックライト、青色LED、紫色LED等を用いるイベントステージやカラオケボックス等で強い光を発し好適に爪に装飾的効果を付与することができる。また、本発光マニキュアは、従来のマニキュア液に発光物質を加えることにより、容易に製造が可能である。
また、発光マニキュアに含まれる発光物質は紫外線照射下で赤、青又は緑を発光するため、これら1種以上を含むことにより、紫外線照射時の発光マニキュアの発光色を、白を含む様々な色にすることが可能となる。
請求項2乃至4に係る発光物質を含む発光マニキュアは、発光能力に優れ、常時紫外線照射下で10日間、非紫外線照射下では3ヶ月たった後も発光効果を失うことがない。
請求項5に係る発光マニキュアは、紫外線を照射しないと無色透明であるため、そのまま用いることも可能であるし、また一般的なマニキュアに含まれる色素成分をともに含む場合においては、含有色素成分によって生じる非紫外線照射時の色調を発光物質が邪魔することがなく、好適に用いることができる。
請求項6に係る発光マニキュアは、特定の造膜性樹脂成分を含み、爪に塗布した際に発光物質が剥がれ落ちることがない。
請求項7に係る発光マニキュアは、特定の有機溶媒を含むことによって発光物質の溶解が容易であり、安定性が向上する。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の発光マニキュアの使用説明図である。
【図2】本発明の実施例1に係る発光マニキュアの(A)発光スペクトル図及び(B)励起スペクトル図である。
【図3】本発明の実施例2に係る発光マニキュアの(A)発光スペクトル図及び(B)励起スペクトル図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の発光マニキュアについて説明する。
本発明の発光マニキュアは、造膜性樹脂を有機溶媒に溶解した溶液に、紫外線照射下において赤色発光するユーロピウム系化合物、青色発光するペリレン系化合物、緑色発光するテルビウム系化合物から選択される1種以上の発光物質を配合した発光マニキュアである。
【0012】
まず、発光物質について説明する。
本発明に係るユーロピウム系化合物は、ユーロピウム錯体である。好ましくは、上記の化1又は化2で示される化合物が挙げられる。
【0013】
本発明に係るペリレン系化合物は、ペリレンを含む化合物である。好ましくは、上記の化3で示される化合物が挙げられる。
【0014】
本発明に係るテルビウム系化合物は、テルビウム錯体である。好ましくは、上記の化4又は化5で示される化合物が挙げられる。
【0015】
上記の化1乃至化5で示される発光物質は、光エネルギーを効率よく吸収し、発光のエネルギーを無駄なく活かせる有機分子である。これら発光物質は、200℃の高温条件下で1時間放置しても強発光を維持する等強い特性を有するため、夏場の暑い時であってもこの発光物質を含む本発明の発光マニキュアの発光効果が減少することはない。
【0016】
本発明に係る発光物質の発光色について、ユーロピウム系化合物は、紫外線照射下で、613nmのピーク波長の光を放出して赤色に発光し、ペリレン系化合物は、460nmのピーク波長の光を放出して青色に発光し、テルビウム系化合物は、542nmのピーク波長の光を放出して緑色に発光する。
したがって、これら特定の波長を放出する赤、青、緑を発光する発光物質を任意の割合で選択することにより、白を含む任意の色調を作り出し、紫外線照射下で発光させることが可能となる。
【0017】
本発明に係る発光物質の含量は、特に限定されないが、好ましくは発光マニキュア全量中0.1〜1.0重量%、より好ましくは0.2〜0.5重量%含まれる。この理由は、0.1重量%未満であると十分な発光効果が付与できす、1.0重量%以上入れてもそれ以上の発光効果が得られず、経済的に好ましくないからである。
【0018】
本発明の発光マニキュアに含まれる造膜性樹脂は、マニキュア用の樹脂として一般的に用いられるものであれば特に限定されない。例えば、シュラック、ダンマル、エレミー、サンダラックなどの天然樹脂類;酢酸ビニル系樹脂、アルキッド系樹脂、アクリル系樹脂、アミノ系樹脂、ウレタン系樹脂、シリコーン系樹脂などの合成樹脂類;ニトロセルロース系樹脂のいずれか1種以上が用いられる。これら造膜性樹脂を用いることにより、本発明の発光マニキュアを爪に塗布した際に発光物質が剥がれ落ちることがない。
【0019】
本発明の発光マニキュアに含まれる有機溶媒は、マニキュア用の溶剤として一般的に用いられるものであれば特に限定されない。例えば、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸ブチル、酢酸アミル、乳酸エチル、乳酸ブチル、ギ酸メチル等のエステル類、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン類、エタノール、イソプロパノール、ブタノール等のアルコール類、メチルシクロヘキサン、トルエン、キシレン、パラフィン等の炭化水素類、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシドのいずれか1種以上が挙げられ、特に好ましくはエタノール、イソプロパノール、アセトン、酢酸エチル、メチルシクロヘキサンのいずれか1種以上が用いられる。この理由は、発光物質は、これら有機溶媒に容易に溶解し、発光マニキュアの安定性が長期間保たれるからである。
また、本発明に係る発光物質は上記有機溶媒に溶解するので、発光物質が発光マニキュア中に固体状で残存することがなく、均質な状態で爪上に薄く皮膜することが可能である。
【0020】
本発明の発光マニキュアは、紫外線を照射すると、含まれる発光物質に応じた色に発光する。
ここでいう紫外線とは、280nm〜410 nmの波長の光であり、特に好ましくは、300〜375nmの波長の光である。したがって、青色LED(発光ダイオード)や紫色LED、ブラックライト等を光源として好適に用いることができる。
【0021】
本発明の発光マニキュアは、紫外線を照射しないと発光せず、着色剤等を含まない場合には、無色透明である。
着色剤として、本発明の発光マニキュアは、化粧品分野で通常使用される水溶性染料および微粉着色剤、例えば顔料及び真珠光沢剤等を含有してもよい。これら着色剤は、本発光マニキュアの全重量に対して0.1〜2.0重量%、好ましくは0.5〜1.0重量%の範囲にある量で存在できる。
これら着色剤を含むことにより、紫外線を照射しない時のマニキュアの色を決定することが可能である。また紫外線照射時には、着色剤による色と発光物質による色が混在して見えるため、これら組み合わせによりさらに多様な色調を作りだすことができる。
【0022】
本発明の発光マニキュアは、化粧品分野で通常使用される他の添加剤をさらに含んでもよい。他の添加剤として、パラフィン、ワックス及び脂肪酸等の油脂成分、ジブチルフタレート及びジオクチルフタレート等の可塑剤、湿潤剤、分散剤、脱泡剤、防腐剤、希釈剤、界面活性剤、保湿剤、香料、中和剤、安定剤、粘度調整剤および酸化防止剤等が挙げられる。
【0023】
次に、本発明の発光マニキュアの製造方法について説明する。
まず、造膜性樹脂を有機溶媒に溶解させ、得られた溶液に上記発光物質を溶解させる。
本発明に係る発光物質を造膜性樹脂と有機溶媒を含む溶液に溶解する際の溶解方法や温度条件は特に限定されず、粉末状(例えば50〜100メッシュ)にして入れることにより迅速に溶解してもよく、また粉末状とせずある程度の大きさのまま溶解してもよい。
また、本発明の発光マニキュアは、本発明に係る発光物質を一般的に市販されている(色素等を含む)マニキュア液に加えることにより製造されたものも含む。
【0024】
本発明の発光マニキュアは、例えば、赤色、青色、緑色発光する発光物質それぞれを含む発光マニキュアを製造し、これら3種の発光マニキュアを用いて消費者が自分で所望の発光色を調整するマニキュアセットとして販売してもよい。
【0025】
本発明の発光マニキュアの色を決定する方法の一例として、任意の色のRGB(赤、青、緑)を調べることのできるコンピュータを用いる方法を挙げることができる。
具体的には、まずコンピュータ上でマニキュア用の任意の色を決定する。そして、その色をコンピュータ解析すると、RGBそれぞれの比率が現れる。これらRGBの比率を用いて、赤色、青色、緑色発光する発光物質を混ぜると、任意の色に類似した発光色を有する発光マニキュアを作り出すことができる。
【0026】
本発明の発光マニキュアは、人体の爪に塗布するものとして説明してきたが、例えば、合成樹脂製の付け爪、ガラスや合成樹脂製の置物等、幅広いものに塗布可能である。さらに、本発明の発光マニキュアを除去する場合には、一般に市販されている除光液を使用可能である。
【0027】
本発明の使用状態図の一例を、図1に示す。
図1は、本発明の発光マニキュアを塗布した爪の側面図である。
爪(N)上に、造膜性樹脂(3)を有機溶媒(4)に溶解した溶液に発光物質(2)を配合した発光マニキュア(1)が塗布される。この爪上に紫外線(5)が照射されると、発光物質(4)が特定の色で発光する。発光物質(4)は、造膜性樹脂(3)を有機溶媒(4)に溶解した溶液に溶解しているが、図1においては説明上、粒状で記載している。
【実施例】
【0028】
以下に、本発明を実施例を用いてより詳細に説明するが、本発明はこれに限定されない。
【0029】
<蛍光物質>
E−300として、上記化1で示されるユーロピウム系化合物を用いた。粉末状(50メッシュ)のものを使用した。
E−400として、上記化2で示されるユーロピウム系化合物を用いた。粉末状(50メッシュ)のものを使用した。
B−800として、上記化3で示されるペリレン系化合物を用いた。粉末状(50メッシュ)のものを使用した。
T−600として、上記化4で示されるテルビウム系化合物を用いた。粉末状(50メッシュ)のものを使用した。
T−500として、上記化5で示されるテルビウム系化合物を用いた。粉末状(50メッシュ)のものを使用した。
【0030】
<実施例の製造>
(実施例1)
E−300をメタノールに加え、手動で攪拌することにより溶解し、5×10−5mol/Lの濃度とした。得られた液体を実施例1とした。
(実施例2)
T−500をメタノールに加え、手動で攪拌することにより溶解し、1×10−4mol/Lの濃度とした。得られた液体を実施例2とした。
【0031】
(実施例3乃至12)
表1に示す原料(蛍光物質E−300又はE−400等)を混ぜ、手動で攪拌することにより、蛍光物質を各溶媒に溶解させた。得られた液体を実施例3乃至12とした。
(実施例13乃至19)
表2に示す原料(蛍光物質B−800等)を混ぜ、手動で攪拌することにより、蛍光物質を各溶媒に溶解させた。得られた液体を実施例13乃至19とした。
(実施例20乃至28)
表3に示す原料(蛍光物質T−600又はT−500等)を混ぜ、手動で攪拌することにより、蛍光物質を各溶媒に溶解させた。得られた液体を実施例20乃至29とした。
(実施例29)
表4に示す原料(蛍光物質E−300等)を混ぜ、手動で攪拌した。得られた液体を実施例29とした。
【0032】
表1乃至3中、濃度とは、全体量に対する蛍光物質の濃度(重量%)を示す。
表1乃至3中、EtOHはエタノール、ACTはアセトン、EACは酢酸エチル、IPAはイソプロパノール、MCHはメチルシクロヘキサン、MEKはメチルエチルケトン、DMFはジメチルホルムアミド、TOLはトルエン、DMSOはジメチルスルホキシドの略称である。
【0033】
【表1】

【0034】
【表2】

【0035】
【表3】

【0036】
【表4】

【0037】
<発光スペクトル及び励起スペクトル測定>
実施例1及び2を用いて発光スペクトル及び励起スペクトルを測定した。
分光蛍光光度計(JASCO FP−6500)を用いて、実施例1、実施例2をそれぞれセルに入れて各スペクトルを測定した。測定は常圧、室温で実施した。実施例1の結果を図2(図中(A)発光スペクトル(B)励起スペクトル)に、実施例2の結果を図3(図中(A)発光スペクトル(B)励起スペクトル)に示す。
【0038】
(結果)
図2(A)に示す如く、実施例1のピーク波長は615nmであった。発光のピーク波長とは、ある波長の光またはエネルギーを発光物質に照射した際、その発光物質から放出される光のスペクトルの最大ピークが示す波長のことである。これにより、実施例1は、波長615nmをピークとする赤色の発光を示すことが分かる。図2(B)に示す如く、励起スペクトルは、250〜380nmの広範囲にブロードが広がり、283nmと332nmにピーク波長が現れた。
図3(A)に示す如く、実施例2のピーク波長は542nmであった。これにより、実施例2は、波長542nmをピークとする緑色の発光を示すことが分かる。図3(B)に示す如く、励起スペクトルは380nmにピーク波長が現れた。
【0039】
<溶解性試験>
実施例3乃至28を用いて、溶解性試験を実施した。
発光物質を各有機溶媒に溶解させたすぐ後に、発光物質が溶解したか否かを目視で測定した。結果を表1乃至3に示す。
表1及び2中、発光物質が完全に溶解して溶液が透明であったものは、「完溶透明」とし、発光物質が完全に溶解せず、溶液に濁りが見られたものを「非完溶」とした。
表3中、溶解性の評価として、○は5重量%以上の溶解性、△は0.1〜5重量%の溶解性、×は不溶(0〜0.1重量%未満)を示す。
(結果)
実施例3乃至10及び13乃至19については、発光物質が完全に溶解して透明であり、実施例11及び12については、発光物質が完全に溶解しなかった。しかしながら、実施例11及び12については、発光物質は約0.2重量%程度まで溶解しており、十分使用可能であった。
実施例20乃至29については、実施例20乃至25と実施例26乃至29を比較すると、同じテルビウム系化合物であっても溶解しやすい溶媒が異なることが示された。実施例20乃至23では溶媒(EtOH、IPA、TOL、ACT)への蛍光物質の溶解性はあまりよくないが、実施例24や25に記載の溶媒(DMF、DMSO)へ蛍光物質を溶解させた後、これら溶解性の低い溶媒(EtOH、IPA、TOL、ACT)を加えても、結晶の析出は見られなかった。
【0040】
<経時発光性試験>
実施例3乃至19を用いて、経時発光性試験を実施した。
表1において、実施例3乃至12を、紫外線(UV)を照射し続け、0日〜10日後まで、発光性について評価した。表1中、「UV照射有」として結果を示す。また、紫外線を照射せず、評価時のみ紫外線を照射した場合の発光性についても、0日〜10日後まで評価した。表1中、「UV照射無」として結果を示す。尚、実施例11及び12は上澄み液を用いた。
表2において、実施例13乃至19を、室温蛍光灯下で放置し、評価時のみ紫外線を照射した場合の発光性について、0日〜10日後まで評価した。
表3において、実施例20乃至28製造直後に紫外線を照射した場合の発光性を評価した。
表1、2中、「−」は、その日に評価をしていないことを示す。
図中、「黄」とは、溶液が黄色みを有する色に変わったことを示す。また、「結晶」とは、溶液に結晶が析出したことを示す。
【0041】
<評価基準>
評価基準を以下に示す。
◎ 強発光
○ 中発光
△ 弱発光
× 発光せず
【0042】
(結果)
表1に示す如く、ユーロピウム系化合物を含む実施例3乃至12に紫外線を照射し続けた場合、全てが「強発光」又は「中発光」を示した。したがって、本発明の発光マニキュアは、紫外線が絶えず照射されるような環境であっても長期間発光を維持することができることが示された。また、紫外線を照射せずに、評価時のみ紫外線を照射した場合には、10日後であっても全ての実施例において、「強発光」を示した。
表2に示す如く、ペリレン系化合物を含む実施例13乃至19に紫外線を照射せずに、評価時のみ紫外線を照射した場合には、10日後であっても全ての実施例において、「中発光」を示した。
また、表3に示す如く、テルビウム系化合物を含む実施例20乃至28に紫外線を照射すると、溶解性が高い溶媒を用いた実施例24乃至28では発光性が高かった。しかしながら、溶解性が低い溶媒を用いた実施例20乃至23であっても紫外線照射下で発光性を確認できた。
【0043】
<発光マニキュアの安定性及び使用性試験>
実施例29を用いて、安定性及び使用性試験を実施した。
(結果)
表4に示す原料を含む実施例29は、作成後3ヶ月たっても透明溶解で安定であり、紫外線照射下で発光した。
さらに、実施例29は、従来のマニキュアと比較して、爪に塗った後乾燥に要する時間に違いはなく、また爪に塗った後のマニキュアの剥がれ具合についても違いはなく、良好な使用性が確認できた。
【符号の説明】
【0044】
N 爪
1 発光マニキュア
2 発光物質
3 造膜性樹脂
4 有機溶媒
5 紫外線照射

【特許請求の範囲】
【請求項1】
造膜性樹脂を有機溶媒に溶解した溶液に、紫外線照射下において赤色発光するユーロピウム系化合物、青色発光するペリレン系化合物、緑色発光するテルビウム系化合物から選択される1種以上の発光物質を配合した発光マニキュアであって、
紫外線を照射すると発光することを特徴とする発光マニキュア。
【請求項2】
前記ユーロピウム系化合物が、下記の化1又は化2で示される化合物であることを特徴とする請求項1記載の発光マニキュア。
(化1)
Tris(1,1,1,5,5,5−hexafluoro−2.4−pentanedionato−,O,O')bis(triphenylphosphine oxide−O−)Europium
(化2)
Tris(4,4,4−trifluoro−1−(2―thienyl)−1,3−butanedionato−O,O')bis(tripehnylphosphine oxide−O−)Europium
【請求項3】
前記ペリレン系化合物が、下記の化3で示される化合物であることを特徴とする請求項1又は2記載の発光マニキュア。
(化3)
3028
【請求項4】
前記テルビウム系化合物が、下記の化4又は化5で示される化合物であることを特徴とする請求項1乃至3いずれかに記載の発光マニキュア。
(化4)
[Hexadecakis(hexyl)-dioxo-octahydroxy-trietylamino-]nona terbium complex
(化5)
[Hexadecakis(isoamyl)-dioxo-octahydroxy-trietylamino-]nona terbium complex
【請求項5】
非紫外線照射下で無色透明であることを特徴とする請求項1乃至4いずれかに記載の発光マニキュア。
【請求項6】
前記樹脂が、天然樹脂、酢酸ビニル系樹脂、アルキッド系樹脂、アクリル系樹脂、アミノ系樹脂、シリコーン系樹脂、ニトロセルロース系樹脂から選択される1種以上であることを特徴とする請求項1乃至5いずれかに記載の発光マニキュア。
【請求項7】
前記有機溶媒が、エタノール、イソプロパノール、アセトン、酢酸エチル、メチルシクロヘキサンから選択される1種以上であることを特徴とする請求項1乃至6いずれかに記載の発光マニキュア。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2012−82135(P2012−82135A)
【公開日】平成24年4月26日(2012.4.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−19930(P2009−19930)
【出願日】平成21年1月30日(2009.1.30)
【出願人】(502404427)セントラルテクノ株式会社 (2)
【Fターム(参考)】