説明

発光モジュールおよび照明装置

【課題】発光効率を向上させることができると共に、寿命の低下を防止することが可能な発光モジュールおよび照明装置を提供する。
【解決手段】上下電極型の複数の固体発光素子11と;固体発光素子の下電極をダイボンディングし、表面側が銀よりも反射率の低い材料で形成された電極層12と;複数の固体発光素子および電極層を実装する表面の反射率が高くなるように形成された基板13と;固体発光素子の上電極を電極層に接続するボンディングワイヤ14と;基板に実装された固体発光素子およびボンディングワイヤを封止する封止部15と;を具備し、電極層の面積を固体発光素子の発光面の2倍以下とした発光モジュール10を構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発光ダイオード等の固体発光素子を光源とした発光モジュールおよび照明装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、発光ダイオードは、その発光効率の向上により、オフィスや一般照明用などの比較的大きな照明装置の光源として採用され、さらなる高出力化が要求されている。高出力化を達成するためには、発光ダイオードの発光効率を如何に向上させるかが重要な課題となっている。例えば、特許文献1には、発光ダイオードチップの底面に、底部銀メッキ反射層を設けた発光ダイオード装置が示され、特に段落番号[0040]には、底部銀メッキ反射層は、発光ダイオードチップが発光する短波長域から長波長域の光まで、ほぼ全可視光領域にわたって反射率が高いので、外部へ取り出せる光束を、例えば、約20%程度向上させることができることが示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007−180430号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1の発光ダイオード装置は、段落番号[0027]に示されるように、発光効率を向上させるために、陰極側と陽極側の一対の回路パターン上、すなわち、電極上に銀メッキが形成されている。このため、銀メッキの変色によって反射率が低下し発光効率が低下する問題が生じる。さらに、銀メッキの劣化による寿命の低下、イオンマイグレーションの発生や金ワイヤと銀メッキとのボンディング強度の低下など多くの点で寿命に影響する懸念がある。
【0005】
本発明は、上記の問題を解決するためになされたもので、発光効率を向上させることができると共に、寿命の低下を防止することが可能な発光モジュールおよび照明装置を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1に記載の発光モジュールの発明は、上下電極型の複数の固体発光素子と;固体発光素子の下電極をダイボンディングし、表面側が銀よりも反射率の低い材料で形成された電極層と;複数の固体発光素子および電極層を実装する表面の反射率が高くなるように形成された基板と;固体発光素子の上電極を電極層に接続するボンディングワイヤと;基板に実装された固体発光素子およびボンディングワイヤを封止する封止部と;を具備し、電極層の面積を固体発光素子の発光面の2倍以下としたことを特徴とする。本発明によれば、上下電極型の複数の固体発光素子を用い、電極層の面積を固体発光素子の発光面の2倍以下としたことにより、発光効率を向上させることができると共に、寿命の低下を防止することが可能となる。
【0007】
本発明において、発光モジュールは、天井等から全般照明を行うオフィス等、施設・業務用などの比較的大きな照明装置に適用されても、住宅用など一般照明用の小型の照明装置、さらには、発光ダイオード等の固体発光素子を光源とした口金付ランプ等に適用されるものであってもよい。また、発光モジュールは、白色で発光するように構成することが好ましいが、照明装置の用途に応じ、赤色、青色、緑色等でも、さらには各種の色を組み合わせて構成してもよい。
【0008】
固体発光素子は、例えば、青色を発光する窒化ガリウム(GaN)系半導体からなる発光ダイオードチップで構成されることが好適であるが、半導体レーザ、有機ELなどを発光源とした発光素子が許容される。固体発光素子は、発光層の下部の底面全体に反射率の高い金属、例えば、銀(Ag)メッキを行うことによって反射層を形成することが好適であるが、反射層は底面全体ではなく一部に設けられない部分があってもよい。
【0009】
また、反射層の材質は銀ではなく金(Au)、アルミニウム(Al)やニッケル(Ni)等の金属で構成されたものであってもよい。また、メッキに限らず、例えば、これら金属をエッチングすることによって形成しても、さらにはコーティングすることによって形成してもよい。
【0010】
基板は、光源としての複数の固体発光素子を実装するための部材で、高反射率を有するセラミックスで構成されることが好適であるが、アルミニウム(Al)、ニッケル(Ni)、銅(Cu)やガラスエポキシ等で構成されたものであってもよい。また、形状は、複数の、例えば、発光ダイオードチップを所定の間隔を有して配設するために必要な面モジュールを構成するために正方形や長方形に形成することが好ましいが、六角形や四角形の四隅をカットした八角形などの多角形状、さらには円形や楕円形状等をなすものでも、線モジュールを構成する長尺なライン状をなしていてもよく、目的とする配光特性を得るための全ての形状が許容される。
【0011】
固体発光素子の下電極をダイボンディングし、表面側が銀よりも反射率の低い材料で形成された電極層は、固体発光素子の配線パターンを形成するもので、その材質は導電性の良好な金属、例えば、金(Au)で構成されることがこの好ましいが、銅(Cu)、アルミニウム(Al)やニッケル(Ni)等、銀よりも反射率が低く、かつ導電性の良好な全ての金属が許容される。
【0012】
電極層は、基板に対して、これら金属をメッキやエッチング等の手段によって形成された薄い金属層として構成しても、薄い金属板を半田等の蝋着手段で接合されるようにしてもよい。また、これら金属によって構成された電極層は、その表面に固体発光素子の下電極側を搭載し、銀ペースト等の導電性の接着剤で固着するようにしてダイボンディングすることが好ましいが、例えば、固体発光素子は基板に直接実装し、この固体発光素子に隣接離間して基板に電極層を形成し、ボンディングワイヤによって接続するように構成してもよく、ダイボンディングするための具体的な手段は、これら特定のものには限定されない。
【0013】
電極層は、これら金属によって基板に所定の間隔を有してマトリックス状に一部または全体が配置され、この電極層に対して固体発光素子が搭載され実装されていることが好ましいが、千鳥状または放射状など、規則的に一定の順序をもって一部または全体が配置されたもの、さらには、ランダムに配置されたものであってもよい。また、固体発光素子は、基板の表面にCOB(Chip on Board)技術を用いて実装されたものが好ましいが、SMD(Surface Mount Device)タイプのものを用いて実装されたものであってもよい。
【0014】
固体発光素子およびボンディングワイヤを封止する封止部は、透光性を有するシリコーン樹脂やエポキシ樹脂等の熱硬化性の合成樹脂に、例えば、黄色蛍光体を添加することにより黄色蛍光体層を構成することが好ましいが、蛍光体を添加しない透明な合成樹脂またはガラスで構成したものであってもよい。
【0015】
また、電極層の面積は固体発光素子の発光面の2倍以下となるように構成されるが、厳密に2倍を超える比率を排斥するものではなく、電極層による発光効率の低下を抑制しつつ、かつ固体発光素子の放熱性を確保することが可能な、2倍を越える近傍の範囲の倍率が許容される。また、電極層の面積を発光層の発光面の約1.54倍程度にすることが好ましい。これにより、電極層の面積が発光面の面積より若干広くなり、電極層にボンディングワイヤを接続するためのスペースを確保することが可能となり、ボンディングワイヤと電極層とのボンディング強度を高め、かつ放熱性を向上させることが可能となる。
【0016】
なお、本発明において、「表面側」とは、発光モジュールにおける発光部側の面を意味している。
【0017】
請求項2に記載の照明装置の発明は、請求項1記載の発光モジュールと;発光モジュールを配設した器具本体と;発光モジュールを点灯する点灯装置と;を具備していることを特徴とする。本発明によれば、請求項1記載の発光モジュールを用いることにより、発光効率を向上させることができると共に、寿命の低下を防止することが可能な照明装置が構成される。
【0018】
本発明において、照明装置は、発光モジュールを複数個組み合わせて長尺なオフィス等、施設・業務用の比較的長い大きな照明器具を構成しても、発光モジュール1個または数個を用いて住宅用など一般照明用の口金付ランプや小型の照明装置を構成するようにしてもよい。
【0019】
器具本体は、熱伝導性の良好な鋼板、ステンレス、アルミニウム等の金属で構成するのが好ましいが、例えば、PBT(ポリブチレンテレフタレート)などの耐熱性、耐光性で、電気絶縁性を有する合成樹脂で構成されたものであってもよい。
【0020】
点灯装置は、例えば、交流電圧100Vを直流電圧24Vに変換して発光ダイオードチップに供給する点灯回路で構成され、器具本体内に内蔵させて設けても、器具本体と別置きで構成してもよい。また調光や調色機能を有するように構成してもよい。
【発明の効果】
【0021】
請求項1記載の発明によれば、上下電極型の複数の固体発光素子を用い、電極層の面積を固体発光素子の発光面の2倍以下としたことにより、発光効率の低下を抑制させることができると共に、放熱性の低下による寿命低下を防止することが可能な発光モジュールを提供することができる。
【0022】
請求項2記載の発明によれば、請求項1記載の発光モジュールを用いることにより、発光効率を向上させることができると共に、寿命の低下を防止することが可能な照明装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明の実施形態に係る発光モジュールを模式的に拡大して示す図で、(a)は一部を切り欠いて示す断面図、(b)は(a)図において光の反射状態を示す断面図。
【図2】同じく発光モジュールを模式的に拡大して示す図で、(a)は正面図、(b)は(a)図のb−b線に沿う断面図。
【図3】同じく発光モジュールにおける電極パターン幅と熱抵抗の関係を実験した結果を示し、(a)は実験に用いた電極パターンと発光面との関係を示す正面図および側面図、(b)は電極パターン幅と熱抵抗の関係を示すグラフ。
【図4】同じく発光モジュールにおける電極パターン幅と熱抵抗の関係を解析するためのグラフで、(a)は図3(b)と等価のグラフ、(b)は本図(a)のグラフを微分したグラフ、(c)は本図(b)をさらに微分したグラフ。
【図5】同じく発光モジュールを使用した照明装置を示し、(a)は縦断面図、(b)は底面図。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明に係る発光モジュールおよびこの発光モジュールを用いた照明装置の実施形態について説明する。
【実施例1】
【0025】
先ず、発光モジュールの構成につき説明する。図1に示すように、本実施例の発光モジュール10は、固体発光素子11、固体発光素子をダイボンディングする電極層12、複数の固体発光素子および電極層を実装する基板13、固体発光素子を電極層に接続するボンディングワイヤ14、固体発光素子およびボンディングワイヤを封止する封止部15で構成する。
【0026】
固体発光素子11は、発光ダイオードチップ(以下「LEDチップ」と称する)で構成し、LEDチップ11は、同一性能を有する複数個のLEDチップが用意され、この各LEDチップは、本実施例では高輝度、高出力の青色LEDチップで構成する。LEDチップ11は、上部に発光層11aを有し、発光層の下部には、発光層から下方に放射される光を反射させるための反射層11bが形成されている。反射層は反射率が高い金属、本実施例では、純銀(Ag)を発光層11aの下面全体にわたってメッキすることによって形成される。反射層11bを構成する銀は、純銀に限らず白金(Pt)や鉛(Pb)等の金属を微量添加したものでもよい。反射層の厚さは、約3μmに形成される。図中11cは、反射層11bの下面全体にわたって形成された銅(Cu)からなる導電層である。
【0027】
このLEDチップ11は、発光層11aの上面が陰極側の上電極11dに、また反射層11bの下面が陽極側の下電極11eとなる上下電極型をなして構成され、LEDチップ11全体の厚さは約100〜200μm、チップ角は約1mmで、定格消費電力が1.0〜2.5Wの大容量のチップとして構成される。
【0028】
上記に構成された複数個のLEDチップ11は、図2(a)に示すように、基板13の表面に、縦に5個、横に5個が略均等の間隔を有してマトリックス状に配置され高密度に実装される。基板13は、熱伝導性を有し、かつ表面の反射率が高くなるように、反射率の高い白色のセラミックスで略正方形の平板となるように構成する(Ni等、反射率の高い金属をメッキしてもよい)。基板13の表面には、複数個のLEDチップ11を接続するための配線パターンを構成する電極層12が形成される。
【0029】
電極層12は、表面側が銀よりも反射率が低く、かつ導電性を有する金属、本実施例では、金(Au)を、セラミックスからなる基板13の表面に対して予め配線パターンをなすように形成された銅(Cu)からなる導電層12a上にメッキをすることによって形成する。電極層12を構成する金は、純金に限らず18金等であってもよい。
【0030】
電極層12は、図2(a)に示すように、基板13の表面に、縦に5個、横に5個、計25個の電極層が、それぞれの電極層が分離されて電気絶縁がなされるように、略均等の間隔sを有してマトリックス状に配設される。電極層12は、厚さが約35〜250μmで、一辺の長さが約1.4(√2)mm角の略正方形に形成される。なお、導電層12aは、配線パターンを形成する薄い銅板を半田によって基板13の表面に接合することによって形成される。
【0031】
上記のように電極層12が形成された基板13には、LEDチップがCOB技術によって実装される。すなわち、25個の電極層12の表面に対して、LEDチップ11を1個ずつ、その下電極11eの導電層11cが電極層12の表面に対向する向きにして搭載し、導電性の接着剤、本実施例では、熱硬化性の銀ペーストで固着して、LEDチップ11の下電極11eを電極層12にダイボンディングする。この際、正方形の電極層12に対して、正方形のLEDチップ11を一方向(図2(a)中、下方向)に平行に多少ずらして固着する。これによって、電極層12の上方の一辺に、多少広くなったスペースが形成され、ボンディングワイヤ14の接続スペース12bを確保する。
【0032】
ボンディングワイヤ14は、金ワイヤからなり各LEDチップ11の上電極11dと、図2(a)中、縦方向に隣接するLEDチップ11の電極層12の接続スペース12bとを順次接続するようにボンディングを行う。この際、電極層12は金ワイヤからなるボンディングワイヤ14と同様の金で構成されており、ボンディング強度を高めることができる。上記により、各LEDチップ11の陰極側の上電極11dが、隣接する各LEDチップ11の陽極側の下電極11eに電極層12を介して接続される。陽極側の端部は陽極側の共通端子12cに、陰極側の端部は陰極側の共通端子12dにそれぞれが接続される。これにより、直列に接続された25個のLEDチップ11が基板13の表面に実装される。なお、陽極側および陰極側の共通端子12c、12dは、電極層12と同様に、金(Au)をセラミックスからなる基板13表面の導電層12aにメッキすることによって形成する。
【0033】
封止部15は、透光性を有する樹脂、本実施例では、シリコーン樹脂に黄色蛍光体を添加し、これを基板に実装されたLEDチップ11および充電部であるボンディングワイヤ14を覆うようにして充填して封止する。これにより、封止部15は、青色LEDチップ11の発光層11aから放射される青色光を透過させると共に、青色光によって黄色蛍光体を励起して黄色光に変換し、透過した青色光と黄色光が混光して白色の光が放射されるように構成される。
【0034】
この際、発光層11aから放射される白色の光は、図1(b)に示すように、光軸x−x方向に沿って上方に放射されると共に下方にも放射される。下方に放射された光aは反射層11bで反射され上方に向かって放射される。特に、反射層11bは、全可視光領域にわたって反射率が高い銀で形成されており、外部に取り出せる光束を向上させることができる。
【0035】
同時に、LEDチップ11の発光層11aの側面から斜め下方に放射される光bは、金からなる電極層12の表面およびマトリックス状に配設された各LEDチップ11の間に形成される間隔sを介して、白色のセラミックス基板13の表面で反射され上方に向かって放射される。
【0036】
上記により、発光層11aの下部に反射層11bを有する上下電極型の25個のLEDチップ11がマトリックス状に実装された略正方形をなす平板状の発光モジュール10が構成される。この発光モジュール10は、発光層11aの下部に銀からなる反射層11bが形成され、銀がLEDチップ11の外側に露出しないように設けられていることから銀の変色を防止することができ、発光効率の低下を防ぐことができる。さらに、銀メッキの劣化を防止することができる。さらに、電極層12は金で構成したので、従来の銀によるイオンマイグレーションの発生や、金ワイヤと銀とのボンディングによる強度の低下を防止することができる。
【0037】
また、LEDチップ11の発光層11aの発光面の一辺の長さが約1mmで電極層12の一辺の長さが約1.4(√2)mm、換言すれば、それぞれが正方形をなす電極層12の面積が、LEDチップの発光面の面積の2倍以下に形成される。これにより、図1(a)に示すように、銀より反射率が低く青色の光が吸収され易い金からなる電極層12の露出面積(反射面積)を極力小さくすることができ、発光効率の低下を防止することができる。
【0038】
同時に、電極層12の面積を小さくすることによって形成される各LEDチップ11の間の間隔sによって、LEDチップ11の発光層11a側面から斜め下方に放射される光bは、一部は銀よりも反射率が低い金からなる電極層12の表面で反射するが、殆んどの光は、間隔sを介して反射率を高くした白色のセラミックス基板13の表面に至り効果的に反射される。
【0039】
また、銀よりも反射率が低く青色光を吸収し易い金からなる電極層12は、その面積を極力小さくすることによって発光効率の低下を防止すると同時に、LEDチップ11の熱を外部に放熱させるための放熱部の作用を発揮しなければならない。このため、電極層12は、発光効率の低下防止の面からは極力小さくしなければならない。他方、放熱性の面からは極力大きくしなければならならず、この「相反する条件」を満足するための所定の面積を選択する必要がある。
【0040】
実験によれば、上記構成の発光モジュール10において、電極層12の一辺の長さ寸法は、1mm角のLEDチップに対して、約1.4(√2)倍以下、面積比で2倍以下に設定することによって、上述の「相反する条件」を満足できることが確認された。
【0041】
図3(b)は、図3(a)に示す略正方形状をなす電極層12における電極パターン幅(電極層12の一辺の長さ)を0.9mmから2mmまで0.1mmごとに広げた場合における電極層12の熱抵抗の変化を示すグラフで、縦目盛りは熱抵抗値(Rjb)、横目盛りは電極パターン幅(mm)である。そして、このグラフと等価のグラフ(図4(a))を作成して微分したグラフ(図4(b))を作成し、この図4(b)のグラフをさらに微分して作成したグラフ(図4(c))に示すように、電極パターン幅が約1.4mm近辺で変化率が少なっており、電極層12を極力小さくし、なおかつ適正な放熱性を確保するための電極パターン幅の限界値を求めることができた。
【0042】
すなわち、関数を2回微分すると変化率の変化率の関数(f´´(x))となる。f´´(x)が0であれば、変化率が一定つまり直線となる。逆にf´´(x)が大きければ、指数関数的に増加する。f´´(x)の関数が0.9<=x<=1.7の定義域においては、f´´(x)が最小(変化率が最小)となるのは、x≒1.4であり、これを上限値(限界値)として求めた。
【0043】
また、電極層12の面積を発光層11aの発光面の面積の約1.54倍、にすることによって、電極層12の面積が発光面の面積より若干広くなり、電極層にボンディングワイヤを接続するためのスペース12bを確保することが可能となり、ボンディングワイヤと電極層とのボンディング強度を高めることができ、同時に放熱性も向上させることができる。
【0044】
上記により、発光効率の低下を抑制しつつLEDチップ11の放熱性を確保し、かつ寿命の低下を防止することが可能な発光モジュール10が構成される。この発光モジュールは、図5に示すように、器具本体に組み込まれて照明装置が構成される。
【0045】
本実施例の照明装置20は、LEDを光源とした小形のダウンライトを構成したもので、上述した発光モジュール10、発光モジュールを配設した器具本体21、発光モジュールを点灯する点灯装置22で構成される。点灯装置22は、器具本体21と別置きで構成してもよい。
【0046】
器具本体21は、図5(a)に示すように、アルミダイカスト製で、両端部に開口を有する断面略円形の円筒状のケース部材として構成する。円筒体内部の一端部(図5(a)中、下方)の開口側に位置して、発光モジュール10を配設するための仕切り板21aを一体に形成する。仕切り板21aは、発光モジュール10を器具本体に支持するための支持部であり、かつ放熱部となる平坦な表面(図5(a)中、下側の面)を有する。
【0047】
発光モジュール10は、この仕切り板21aの平坦な表面上に載置され、基板13に設けた取付孔を用いて周囲4箇所程度をねじによって仕切り板21aに対して締め付け、基板13の裏面をアルミニウムからなる仕切り板21aに確実に密着させて固定する。
【0048】
上記のように仕切り板21aに固定された発光モジュール10の表面側には、各LEDチップ11を囲むようにして反射体23が設けられる。反射体23は、耐光性、耐熱性および電気絶縁性を有する白色の合成樹脂、例えば、PBT(ポリブチレンテレフタレート)等で構成され、発光モジュール10の基板13に実装された25個のLEDチップ11を囲むことができる直径の円形の光取込口23aおよび各LEDチップ11を囲むように対向して位置した回転放物面状をなす「すり鉢状」の反射面23bが一体に形成されている。これにより、発光モジュール10の光軸x−xと反射体23の光軸y−yが略一致した発光部Aが構成される。
【0049】
LEDチップ13を点灯する点灯装置22は、発光モジュール10における各LEDチップ11の点灯回路を構成する回路部品からなり、交流電圧100Vを直流電圧24Vに変換して各LEDチップ11に定電流の直流電流を供給するように構成される。上記に構成された点灯装置22は、器具本体21の内部に収納され、他端部側の開口には点灯装置に商用電源を供給するための電源端子台24が設けられる。図中25は、器具本体21の発光部Aに面する一端部に設けられた化粧枠、25aは化粧枠に設けられた透明なカバー部材、26は器具本体21を天井Xに支持するための板ばねからなる支持具である。
【0050】
上記に構成されたダウンライト形の照明装置20は、被設置面である天井Xに単体若しくは複数個を送り用ケーブルにより接続させて設置される。先ず、電源端子台24に電源線を接続し、図5(a)に一点鎖線でに示すように、天井Xの所定の位置に円形の設置孔30を形成する。次に、器具本体21の板ばねからなる支持具26を手で内方に撓ませて器具本体と共に設置孔30に挿入し、支持具26から手を離す。これにより板ばねが自らの弾性により元の状態に復帰して設置孔30の内面に圧接し、その圧接力により器具本体21が天井Xに固定され、化粧枠25の上面を天井面Xに当接させ位置を決める。この状態で、設置孔30の切り口は化粧枠25によって綺麗に覆われる。
【0051】
上記に設置された照明装置20を点灯すると、各LEDチップ11から放射された光が反射体23の回転放物面からなる反射面23bで反射して略円形状に下向きに広がって放射されスポット的な所望の照明を行う。この際、LEDチップ11の発光層11aから放射された光は、光軸x−x方向に沿って図5(a)中、下方に放射されると共に上方にも放射される。上方に放射された光aは図1(b)に示すように、反射層11bで反射されて下方に向かって放射される。なお、図1(b)の状態と、天井に設置された図5(a)における状態の光の放射方向は上下が逆となる。また特に、反射層11bは、全可視光領域にわたって反射率が高い銀で形成されており、外部に取り出せる光束を向上させることができ、発光効率を向上させることができる。
【0052】
また、発光層11aの側面から斜め上方に放射される光bは、一部は銀よりも反射率の低い金からなる電極層12の表面で反射するが、殆んどの光は、間隔sを介して反射率が高くなるように形成された白色のセラミックス製の基板13の表面に至り、効果的に反射されて下方に向かって放射される。これら作用によって、発光効率の低下を防止することができ、光ロスの少ない照明を行うことができる。
【0053】
また、各LEDチップ11から発生する熱は、電極層12から基板13へ、さらに器具本体の仕切り板21aから器具本体21に伝達され外部に放熱される。この際、電極層12は、熱伝導性の良好な金からなり、しかも、電極層12の面積を発光層11aの発光面の面積の2倍以下になるように形成し、電極層12の熱抵抗を適正な値になるように構成したので効果的に基板13に伝達することができる。さらに、基板13も熱伝導性を有するセラミックスで構成され、器具本体も熱伝導性の良好なアルミニウムで構成され、表面積の広い本体側壁にも伝達されるので、より効果的に外部に放熱される。
【0054】
これら放熱作用によって、各LEDチップ11における光変換効率の低下が抑制され光束の低下を防止することができ、所定照度の明るい照明を行うことができる。同時にLEDチップの長寿命化も図ることがでる。
【0055】
以上、本実施例によれば、発光モジュール10は、発光層11aの下部に銀からなる反射層11bが形成されているので、発光層11aから下方に放射された光aが反射層11bで反射されて上方に向かって放射される。特に、反射層11bは、全可視光領域にわたって反射率が高い銀で形成されており、外部に取り出せる光束を向上させることができ、発光効率を向上させることができる。
【0056】
また、LEDチップ11の発光層11aの発光面の一辺の長さが約1mmで電極層12の一辺の長さが約1.4(√2)mm、換言すれば、それぞれが正方形をなす電極層12の面積をLEDチップ11の発光面の面積の2倍以下に形成したので、銀よりも反射率が低く青色の光が吸収され易い金からなる電極層12の露出面積(反射面積)を極力小さくすることができ、発光効率の低下を防止することができる。同時に、電極層12の面積を小さくすることによって形成される各LEDチップ11の間の間隔sによって、LEDチップ11の発光層11a側面から斜め下方に放射される光bは、間隔sを介して反射率が高くなるように形成された白色のセラミックス基板13の表面に至り効果的に反射され、発光効率の低下を一層防止することができる。
【0057】
さらに、電極層12の面積をLEDチップ11の発光面の面積の2倍以下になるように形成することによって、電極層12の熱抵抗を適正な値になるように構成することができLEDチップ11から発生する熱を効果的に基板13に伝達することができ、LEDチップ11における光変換効率の低下が抑制され光束の低下を防止することができ、同時にLEDチップの長寿命化も図ることがでる。
【0058】
また、発光モジュール10は、反射層11bを構成する銀がLEDチップ11の外側に露出しないように設けられ、銀の変色を防止することができので、発光効率の低下を防ぐことができる。同時に、銀メッキの劣化による寿命の低下を防止することができる。
【0059】
また、電極層12は金で構成したので、従来の銀によるイオンマイグレーションの発生や、金ワイヤと銀とのボンディングによる強度の低下を防止することができ、寿命の低下を防止することができる。
【0060】
上述のこれら作用により、発光効率の低下を抑制しつつLEDチップ11の放熱性を確保し、かつ寿命の低下を防止することが可能な発光モジュール10および照明装置20を提供することができる。
【0061】
本実施例において、LEDチップ11および電極層12は、正方形状に形成し、電極層12の面積をLEDチップ11の発光面の2倍以下に構成したが、長方形状に形成して、その面積比が2倍以下になるように構成しても、同様の作用効果を奏することができる。
【0062】
また、LEDチップ11の反射層11bおよび電極層12に、銅からなる導電層を設けたが、アルミニウム(Al)、ニッケル(Ni)等の導電性を有する金属で形成してもよい。さらに、これら導電層を省略して構成してもよい。
【0063】
以上、本発明の好適な実施形態を説明したが、本発明は上述の実施例に限定されることなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において、種々の設計変更を行うことができる。
【符号の説明】
【0064】
10 発光モジュール
11 固体発光素子
12 電極層
13 基板
14 ボンディングワイヤ
15 封止部
20 照明装置
21 器具本体
22 点灯装置


【特許請求の範囲】
【請求項1】
上下電極型の複数の固体発光素子と;
固体発光素子の下電極をダイボンディングし、表面側が銀よりも反射率の低い材料で形成された電極層と;
複数の固体発光素子および電極層を実装する表面の反射率が高くなるように形成された基板と;
固体発光素子の上電極を電極層に接続するボンディングワイヤと;
基板に実装された固体発光素子およびボンディングワイヤを封止する封止部と;
を具備し、電極層の面積を固体発光素子の発光面の2倍以下としたことを特徴とする発光モジュール。
【請求項2】
請求項1記載の発光モジュールと;
発光モジュールを配設した器具本体と;
発光モジュールを点灯する点灯装置と;
を具備していることを特徴とする照明装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2011−134934(P2011−134934A)
【公開日】平成23年7月7日(2011.7.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−293988(P2009−293988)
【出願日】平成21年12月25日(2009.12.25)
【出願人】(000003757)東芝ライテック株式会社 (2,710)
【Fターム(参考)】