発光モジュール
【課題】演色性の高い発光モジュールを提供する。
【解決手段】発光モジュール10は、紫外線又は短波長可視光を発する半導体発光素子18と、紫外線又は短波長可視光により励起され可視光を発光する第1の蛍光体と、紫外線又は短波長可視光により励起され、第1の蛍光体が発光する可視光と補色の関係にある可視光を発光する第2の蛍光体と、紫外線又は短波長可視光により励起され、第1の蛍光体が発光する可視光のピーク波長と第2の蛍光体が発光する可視光のピーク波長との間にピーク波長を有する、可視光を発光する第3の蛍光体と、を備える。第3の蛍光体は、発光素子の発光スペクトルのピーク波長における励起スペクトルの強度をIa、第1の蛍光体または第2の蛍光体の発光スペクトルのピーク波長における励起スペクトルの強度をIbとすると、Ib<Ia×0.15を満たす。
【解決手段】発光モジュール10は、紫外線又は短波長可視光を発する半導体発光素子18と、紫外線又は短波長可視光により励起され可視光を発光する第1の蛍光体と、紫外線又は短波長可視光により励起され、第1の蛍光体が発光する可視光と補色の関係にある可視光を発光する第2の蛍光体と、紫外線又は短波長可視光により励起され、第1の蛍光体が発光する可視光のピーク波長と第2の蛍光体が発光する可視光のピーク波長との間にピーク波長を有する、可視光を発光する第3の蛍光体と、を備える。第3の蛍光体は、発光素子の発光スペクトルのピーク波長における励起スペクトルの強度をIa、第1の蛍光体または第2の蛍光体の発光スペクトルのピーク波長における励起スペクトルの強度をIbとすると、Ib<Ia×0.15を満たす。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、蛍光体を用いた発光モジュールに関し、例えば、紫外線又は短波長可視光で効率よく励起され発光する蛍光体を用いた発光モジュールに関する。
【背景技術】
【0002】
発光素子と、当該発光素子が発生する光により励起され当該発光素子とは異なる波長域の光を発生する蛍光体とを組み合わせることにより、所望の色の光を得るように構成された種々の発光装置が知られている。
【0003】
特に近年、長寿命かつ消費電力が少ない白色発光装置として、紫外線又は短波長可視光を発光する発光ダイオード(LED)やレーザダイオード(LD)等の半導体発光素子と、これらを励起光源とする蛍光体とを組み合わせることで白色光を得るように構成された発光装置が注目されている。
【0004】
このような白色発光装置の具体例として、紫色光又は紫外線を発光するLEDと、紫色光又は紫外線によって励起され、青や黄等の色の光をそれぞれ発光する蛍光体を複数組み合わせる方式等が知られている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2009−38348号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、黄色蛍光体および青色蛍光体と、紫色光又は紫外線を発光するLEDとを組み合わせた白色LEDは、演色性が十分ではなく、一般照明として使用するには更なる改善の余地がある。
【0007】
本発明はこうした状況に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、演色性の高い発光モジュールを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本発明のある態様の発光モジュールは、紫外線又は短波長可視光を発する発光素子と、紫外線又は短波長可視光により励起され可視光を発光する第1の蛍光体と、紫外線又は短波長可視光により励起され、第1の蛍光体が発光する可視光と補色の関係にある可視光を発光する第2の蛍光体と、紫外線又は短波長可視光により励起され、第1の蛍光体が発光する可視光のピーク波長と第2の蛍光体が発光する可視光のピーク波長との間にピーク波長を有する、可視光を発光する第3の蛍光体と、を備える。第3の蛍光体は、発光素子の発光スペクトルのピーク波長における励起スペクトルの強度をIa、第1の蛍光体または第2の蛍光体の発光スペクトルのピーク波長における励起スペクトルの強度をIbとすると、Ib<Ia×0.15を満たす。
【0009】
第1の蛍光体が発光する可視光と第2の蛍光体が発光する可視光とは、互いに補色の関係にあるため、白色光を得ることはできる。しかしながら、互いに補色の関係にある2色の光の混色だけでは、演色性の高い白色光を得ることが困難な場合が多い。そこで、この態様によると、第3の蛍光体は、第1の蛍光体が発光する可視光のピーク波長と第2の蛍光体が発光する可視光のピーク波長との間にピーク波長を有する、可視光を発光するため、より演色性の高い白色光を実現することができる。また、第3の蛍光体は、発光素子の発光スペクトルのピーク波長における励起スペクトルの強度をIa、第1の蛍光体または第2の蛍光体の発光スペクトルのピーク波長における励起スペクトルの強度をIbとすると、Ib<Ia×0.15を満たすように構成されている。そのため、第3の蛍光体は、第1の蛍光体または第2の蛍光体が発する光により励起される割合が少なく、色ずれを抑えることができる。
【0010】
第3の蛍光体は、一般式がCs2Sr1−xP2O7:Eu2+x(ここで、xは、0<x≦0.3の範囲であってもよい。)で表されていてもよい。また、第3の蛍光体は、その発光スペクトルのピーク波長が500〜580nmの波長域にあってもよい。これにより、演色性の高い白色光を実現できる。
【0011】
第1の蛍光体は、一般式がM1O2・aM2O・bM3X2:M4c(但し、M1はSi、Ge、Ti、Zr及びSnからなる群より選ばれる少なくとも1種の元素、M2はMg、Ca、Sr、Ba及びZnからなる群より選ばれる少なくとも1種の元素、M3はMg、Ca、Sr、Ba及びZnからなる群より選ばれる少なくとも1種の元素、Xは少なくとも1種のハロゲン元素、M4は希土類元素及びMnからなる群より選ばれるEu2+を必須とする少なくとも1種の元素を示す。aは0.1≦a≦1.3、bは0.1≦b≦0.25の範囲であってもよい。)で表されてもよい。これにより、より発光特性の良好な第1の蛍光体が得られる。
【0012】
第1の蛍光体は、発光素子の発光スペクトルのピーク波長における励起スペクトルの強度をIc、第2の蛍光体の発光スペクトルのピーク波長における励起スペクトルの強度をIdとすると、Id<Ic×0.30を満たしてもよい。これにより、第1の蛍光体は、第2の蛍光体が発する光により励起される割合が少なく、色ずれを抑えることができる。
【0013】
発光素子は、350〜420nmの波長域にピーク波長を有する紫外線又は短波長可視光を発してもよい。
【0014】
なお、以上の構成要素の任意の組合せ、本発明の表現を方法、装置、システム、などの間で変換したものもまた、本発明の態様として有効である。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、演色性の高い発光モジュールを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本実施の形態に係る発光モジュールの概略断面図である。
【図2】蛍光体1の発光スペクトルを示す図である。
【図3】蛍光体2の発光スペクトルを示す図である。
【図4】蛍光体3の発光スペクトルを示す図である。
【図5】蛍光体4の発光スペクトルを示す図である。
【図6】蛍光体5の発光スペクトルを示す図である。
【図7】蛍光体6の発光スペクトルを示す図である。
【図8】蛍光体6の励起スペクトル(ラインL1)と第2の蛍光体である青色蛍光体の発光スペクトル(ラインL2)を示す図である。
【図9】蛍光体1の励起スペクトル(ラインL3)と第2の蛍光体である青色蛍光体の発光スペクトル(ラインL2)を示す図である。
【図10】実施例1に係る発光モジュールの発光スペクトルと比較例1に係る発光モジュールの発光スペクトルを示す図である。
【図11】実施例2に係る発光モジュールの発光スペクトルを示す図である。
【図12】実施例3に係る発光モジュールの発光スペクトルを示す図である。
【図13】実施例4に係る発光モジュールの発光スペクトルを示す図である。
【図14】実施例5に係る発光モジュールの発光スペクトルを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、図面を参照しながら、本発明を実施するための形態について詳細に説明する。なお、図面の説明において同一の要素には同一の符号を付し、重複する説明を適宜省略する。
【0018】
図1は、本実施の形態に係る発光モジュールの概略断面図である。図1に示す発光モジュール10は、基板12上に一対の電極14(陽極)及び電極16(陰極)が形成されている。電極14上には半導体発光素子18がマウント部材20により固定されている。半導体発光素子18と電極14はマウント部材20により導通されており、半導体発光素子18と電極16はワイヤー22により導通されている。半導体発光素子の出射面の上には蛍光体フィルター24が設置されている。
【0019】
基板12は、導電性を有しないが熱伝導性は高い材料によって形成されることが好ましく、例えば、セラミック基板(窒化アルミニウム基板、アルミナ基板、ムライト基板、ガラスセラミック基板)やガラスエポキシ基板等を用いることができる。
【0020】
電極14及び電極16は、金や銅等の金属材料によって形成された導電層である。
【0021】
半導体発光素子18は、本発明の発光モジュールに用いられる発光素子の一例であり、例えば、紫外線又は短波長可視光を発光するLEDやLD等を用いることができる。具体例として、InGaN系の化合物半導体を挙げることができる。InGaN系の化合物半導体は、Inの含有量によって発光波長域が変化する。Inの含有量が多いと発光波長が長波長となり、少ない場合は短波長となる傾向を示すが、ピーク波長が400nm付近となる程度にInが含有されたInGaN系の化合物半導体が発光における量子効率が最も高いことが確認されている。
【0022】
マウント部材20は、例えば銀ペースト等の導電性接着剤又は金錫共晶はんだ等であり、半導体発光素子18の下面を電極14に固定し、半導体発光素子18の下面側電極と基板12上の電極14を電気的に接続する。
【0023】
ワイヤー22は、金ワイヤー等の導電部材であり、例えば超音波熱圧着等により半導体発光素子18の上面側電極及び電極16に接合され、両者を電気的に接続する。
【0024】
蛍光体フィルター24は、後述する各蛍光体がバインダー部材に分散されている。蛍光体フィルター24は、例えば、液状又はゲル状のバインダー部材に蛍光体を混入した蛍光体ペーストを作製した後、その蛍光体ペーストを光学ガラス上面に所定の膜厚に塗布し、その後に蛍光体ペーストのバインダー部材を硬化することにより形成される。バインダー部材としては、例えば、シリコーン樹脂やフッ素樹脂等を用いることができる。また、本実施の形態に係る発光モジュールは、励起光源として紫外線又は短波長可視光を用いることから、耐紫外線性能に優れたバインダー部材が好ましい。
【0025】
また、蛍光体フィルター24は、蛍光体以外の種々の物性を有する物質が混入されていてもよい。バインダー部材よりも屈折率の高い物質、例えば、金属酸化物、フッ素化合物、硫化物等が蛍光体フィルター24に混入されることにより、蛍光体フィルター24の屈折率を高めることができる。これにより、半導体発光素子18から発生する光が蛍光体フィルター24へ入射する際に生ずる全反射が低減され、蛍光体フィルター24への励起光の取り込み効率を向上させるという効果が得られる。更に、混入する物質の粒子径をナノサイズにすることで、蛍光体フィルター24の透明度を低下させることなく屈折率を高めることができる。また、アルミナ、ジルコニア、酸化チタン等の平均粒径0.3〜3μm程度の白色粉末を光散乱剤として蛍光体フィルター24に混入することができる。これにより、発光面内の輝度,色度むらを防止することができる。
【0026】
次に、本実施の形態に係る発光モジュールに用いられる各蛍光体について詳述する。
【0027】
(第1の蛍光体)
本実施の形態に係る第1の蛍光体は、黄色発光蛍光体である。黄色発光蛍光体(以下、「黄色蛍光体」と称する。)の好適な一例として、一般式がM1O2・aM2O・bM3X2:M4c(但し、M1はSi、Ge、Ti、Zr及びSnからなる群より選ばれる少なくとも1種の元素、M2はMg、Ca、Sr、Ba及びZnからなる群より選ばれる少なくとも1種の元素、M3はMg、Ca、Sr、Ba及びZnからなる群より選ばれる少なくとも1種の元素、Xは少なくとも1種のハロゲン元素、M4は希土類元素及びMnからなる群より選ばれるEu2+を必須とする少なくとも1種の元素を示す。aは0.1≦a≦1.3、bは0.1≦b≦0.25の範囲である。)で表される黄色蛍光体が挙げられる。また、この黄色蛍光体は、紫外線又は短波長可視光により励起され、青色蛍光体が発する可視光と混色することで白色を実現する可視光を発する。より具体的には、黄色蛍光体は、560〜600nmの波長域にピーク波長を有する可視光を発する。
【0028】
なお、上述の黄色蛍光体として、より好ましい態様は、一般式で表すと次のようになる。
(Ca1−x,Srx)7(SiO3)6Cl2:Eu2+(ここで、0<x<1である。)
【0029】
(第2の蛍光体)
本実施の形態に係る第2の蛍光体は、青色発光蛍光体である。青色発光蛍光体(以下、「青色蛍光体」と称する。)の好適な一例として、Caアパタイト蛍光体が挙げられる。Caアパタイト蛍光体は、一般式(Ca5−x−y,Mgx)(PO4)3Cl:Eu2+yで表される。
【0030】
また、青色蛍光体の好適な他の例として、Srアパタイト蛍光体が挙げられる。Srアパタイト蛍光体は、一般式(Sr5−y)(PO4)3Cl:Eu2+yで表される。
【0031】
また、青色蛍光体の好適な他の例として、CaSrアパタイト蛍光体が挙げられる。CaSrアパタイト蛍光体は、一般式(Ca5−x−y,Srx)(PO4)3Cl:Eu2+yで表される。
【0032】
また、青色蛍光体の好適な他の例として、BAM蛍光体が挙げられる。BAM蛍光体は、一般式BaMgAl10O17:Eu2+で表される。
【0033】
(第3の蛍光体)
本実施の形態に係る第3の蛍光体は、緑色発光蛍光体である。緑色発光蛍光体(以下、「緑色蛍光体」と称する。)の好適な一例は、一般式Cs2Sr1−xP2O7:Eu2+x(ここで、xは、0<x≦0.3の範囲である。)で表される蛍光体である。第3の蛍光体は、その発光スペクトルのピーク波長が500〜580nmの波長域にあってもよい。これにより、演色性の高い白色光を実現できる。
【実施例】
【0034】
以下に本実施の形態を実施例によって更に具体的に説明する。実施例に使用した各蛍光体は、以下の方法にて調製した。
【0035】
<蛍光体1>
蛍光体1は、一般式(Ca1−x,Srx)7(SiO3)6Cl2:Eu2+(ここで、0<x<1である。)で表される蛍光体であり、前述の第1の蛍光体の一例である。蛍光体1の調整方法は以下の通りである。
【0036】
はじめに、SiO2(高純度化学研究所社製 SIO01CB)、SrCl2・6H2O(同社製 SRH04XB)、SrCO3、Ca(OH)2(同社製 CAH08PB)及びEu2O3(同社製 EUO01PB)の各原料を、これらのモル比がSiO2:SrCl2・6H2O:SrCO3:Ca(OH)2:Eu2O3=1.00:0.94:0.09:0.29:0.14となるように秤量し、秤量した各原料を大気中でアルミナ乳鉢にて約30分粉砕混合し、原料混合物を得た。この原料混合物をアルミナ坩堝に入れ、還元雰囲気の電気炉で所定の雰囲気(5%H2を含むN2雰囲気)、温度1000℃で4〜10時間焼成し、焼成物を得た。得られた焼成物を温純水で丹念に洗浄し、余剰の塩化物を洗い流すことにより蛍光体1を得た。図2は、蛍光体1の発光スペクトルを示す図である。なお、励起光源は、紫外線又は短波長可視光を発し、ピーク波長が405nmとなる発光スペクトルを有するLEDである。以下の図3〜図7に示す各実施例や比較例についても同様である。
【0037】
<蛍光体2>
蛍光体2は、一般式(Ca5−x−y,Mgx)(PO4)3Cl:Eu2+yで表される蛍光体であり、前述の第2の蛍光体の一例である。蛍光体2の調整方法は以下の通りである。
【0038】
はじめに、CaCO3(高純度化学研究所社製 CAH08PB)、MgCO3(白辰化学製),Eu2O3(高純度化学研究所社製 EUO01PB)、CaCl2(同社製 CAH06XB)および(NH4)H2(PO4)(関東化学社製 01309-00)の各原料を、これらのモル比がCaCO3:MgCO3:Eu2O3:CaCl2:(NH4)H2(PO4)=2.9:1.5:0.05:0.5:3.0となるように秤量し、均一混合後、アルミナ坩堝中で800〜1000℃、3時間焼成する。その後、焼成品を乳鉢で粉砕し、粉砕品と(NH4)Clを乳鉢で混合後、フタ付きのアルミナ坩堝にて2〜5%H2を含むN2雰囲気中で、900〜1100℃、3時間焼成することで蛍光体2を合成した。図3は、蛍光体2の発光スペクトルを示す図である。
【0039】
<蛍光体3>
蛍光体3は、一般式(Sr5−y)(PO4)3Cl:Eu2+yで表される蛍光体であり、前述の第2の蛍光体の一例である。蛍光体3の調整方法は以下の通りである。
【0040】
はじめに、SrCO3(高純度化学研究所社製 SRH08PB)、Eu2O3(同社製 EUO01PB)、CaCl2(同社製 CAH06XB)および(NH4)H2(PO4)(関東化学社製 01309-00)の各原料を、これらのモル比がSrCO3:Eu2O3:CaCl2:(NH4)H2(PO4)=4.98:0.01:0.5:3.0となるように秤量し、均一混合後、アルミナ坩堝中で800〜1000℃、3時間焼成する。その後、焼成品を乳鉢で粉砕し、粉砕品と(NH4)Clを乳鉢で混合後、フタ付きのアルミナ坩堝にて2〜5%H2を含むN2雰囲気中で、900〜1100℃、3時間焼成することで蛍光体3を合成した。図4は、蛍光体3の発光スペクトルを示す図である。
【0041】
<蛍光体4>
蛍光体4は、一般式(Ca5−x−y,Srx)(PO4)3Cl:Eu2+yで表される蛍光体であり、前述の第2の蛍光体の一例である。蛍光体4の調整方法は以下の通りである。
【0042】
はじめに、CaCO3(高純度化学研究所社製 CAH08PB)、SrCO3(白辰化学製)、Eu2O3(同社製 EUO01PB)、CaCl2(同社製 CAH06XB)および(NH4)H2(PO4)(関東化学社製 01309-00)の各原料を、これらのモル比がCaCO3:SrCO3:Eu2O3:CaCl2:(NH4)H2(PO4)=3.5:1.4:0.05:0.5:3.0となるように秤量し、均一混合後、アルミナ坩堝中で800〜1000℃、3時間焼成する。その後、焼成品を乳鉢で粉砕し、粉砕品と(NH4)Clを乳鉢で混合後、フタ付きのアルミナ坩堝にて2〜5%H2を含むN2雰囲気中で、900〜1100℃、3時間焼成することで蛍光体4を合成した。図5は、蛍光体4の発光スペクトルを示す図である。
【0043】
<蛍光体5>
蛍光体5は、一般式BaMgAl10O17:Eu2+で表される蛍光体であり、前述の第2の蛍光体の一例である。蛍光体5の調整方法は以下の通りである。
【0044】
はじめに、BaCO3(高純度化学研究所社製 BAH07PB)、Eu2O3(同社製 EUO01PB)、MgCO3(同社製 MGH04XB)およびα−Al2O3(同社製 ALO04RB)の各原料を、これらのモル比がBaCO3:Eu2O3:MgCO3:α−Al2O3=0.9:0.05:1.0:5.0となるように秤量し、更にフラックスとしてAlF3(同社製 ALH07PB)をα−Al2O3に対してモル比で0.5%秤量し、均一混合後、アルミナ坩堝中で、還元性雰囲気中にて1500℃で3時間焼成することで蛍光体5を合成した。図6は、蛍光体5の発光スペクトルを示す図である。
【0045】
<蛍光体6>
蛍光体6は、一般式Cs2Sr1−xP2O7:Eu2+x(ここで、xは、0<x≦0.3の範囲である。)で表される蛍光体であり、前述の第3の蛍光体の一例である。蛍光体6の調整方法は以下の通りである。
【0046】
はじめに、(NH4)2HPO4(関東化学社製)、Eu2O3(高純度化学研究所社製 EUO01PB)、Cs2CO3(同社製 CSH08XB)、SrCO3(白辰化学製)の各粉末を用い、化学式Cs2Sr0.99P2O7:Eu2+0.01となるように秤量し、均一混合後、フタ付きのアルミナ坩堝にて大気中、300℃の温度で焼成した後、2〜5%H2を含むN2雰囲気中で、800℃、5時間焼成することで蛍光体6を合成した。図7は、蛍光体6の発光スペクトルを示す図である。蛍光体6は、ピーク波長λp=554nmの緑色発光蛍光体である。
【0047】
ところで複数の蛍光体を用いる場合、発光素子から発せられる励起光によってピーク波長が最も短い一方の蛍光体が励起され、励起された一方の蛍光体から発せられる一次蛍光が、一方の蛍光体よりピーク波長が長い他方の蛍光体に吸収され励起される多重励起(「カスケード励起」ともいう)が発生する。そのため、各蛍光体は、このような多重励起が生じないような特性を有することが好ましい。
【0048】
そこで、本実施の形態に係る第3の蛍光体は、発光素子の発光スペクトルのピーク波長における励起スペクトルの強度をIa、第2の蛍光体である青色蛍光体の発光スペクトルのピーク波長における励起スペクトルの強度をIbとすると、Ib<Ia×0.15を満たすように構成されている。
【0049】
図8は、蛍光体6の励起スペクトル(ラインL1)と第2の蛍光体である青色蛍光体の発光スペクトル(ラインL2)を示す図である。本実施の形態に係る蛍光体6は、図8に示すように、発光素子の光のピーク波長405nmにおける、蛍光体6の励起スペクトルの強度Iaを100%とすると、青色蛍光体のピーク波長である456nmにおける、蛍光体6の励起スペクトルの強度Ibは11%であり、Ib<Ia×0.15の関係式を満たしている。このように、蛍光体6は、第2の蛍光体である青色蛍光体が発する光により励起される割合が少なく、色ずれを抑えることができる。
【0050】
同様の理由により、本実施の形態に係る第1の蛍光体は、発光素子の発光スペクトルのピーク波長における励起スペクトルの強度をIc、第2の蛍光体である青色蛍光体の発光スペクトルのピーク波長における励起スペクトルの強度をIdとすると、Id<Ic×0.30を満たすように構成されている。
【0051】
図9は、蛍光体1の励起スペクトル(ラインL3)と第2の蛍光体である青色蛍光体の発光スペクトル(ラインL2)を示す図である。本実施の形態に係る蛍光体1は、図9に示すように、発光素子の光のピーク波長405nmにおける、蛍光体1の励起スペクトルの強度Icを100%とすると、青色蛍光体のピーク波長である456nmにおける、蛍光体1の励起スペクトルの強度Idは27%であり、Ic<Id×0.0.30の関係式を満たしている。このように、蛍光体1は、第2の蛍光体である青色蛍光体が発する光により励起される割合が少なく、色ずれを抑えることができる。
【0052】
上述の各蛍光体を組み合わせて以下の各実施例に係る発光モジュールを作製した。各実施例に係る発光モジュールは、紫外線又は短波長可視光を発する発光素子と、紫外線又は短波長可視光により励起され可視光を発光する第1の蛍光体(黄色蛍光体)と、紫外線又は短波長可視光により励起され、第1の蛍光体が発光する可視光と補色の関係にある可視光を発光する第2の蛍光体(青色蛍光体)と、紫外線又は短波長可視光により励起され、第1の蛍光体が発光する可視光のピーク波長と第2の蛍光体が発光する可視光のピーク波長との間にピーク波長を有する、可視光を発光する第3の蛍光体(緑色蛍光体)と、を備える。
【0053】
第1の蛍光体が発光する可視光と第2の蛍光体が発光する可視光とは、互いに補色の関係にあるため、白色光を得ることはできる。しかしながら、互いに補色の関係にある2色の光の混色だけでは、演色性の高い白色光を得ることが困難な場合が多い。そこで、本実施の形態に係る白色発光モジュールは、発光スペクトルにおいて、緑色に対応する波長の強度を高めるべく、黄色蛍光体および青色蛍光体の2色に加えて、緑色蛍光体が加えられている。
【0054】
(実施例1)
実施例1に係る発光モジュールは、色温度が4300K(白色)の光を発するように構成されている。具体的には、黄色蛍光体として570nm付近に発光のピーク波長を持つ蛍光体1、青色蛍光体としてCaアパタイトの蛍光体2、緑色蛍光体として蛍光体6を用い、それらを所望の混合比で混合する。この混合物を10〜15vol%の濃度となるように付加重合型シリコーン樹脂(信越シリコーン社製 KER-2600(A/B))と自公転攪拌脱法混合装置にて念入りに混合した後、光学ガラスに150μm程度の膜厚で製膜、150℃、1時間で硬化させ蛍光体フィルターを作製した。
【0055】
この蛍光体フィルターを400nmの波長で発光する表面実装型LEDの出射面に設置し、LEDを20mAで通電し、出射光の発光特性を、インスツルメントシステム社のスペクトル測定装置(CAS140B)にて評価した。その結果、蛍光体1(黄色蛍光体)、蛍光体2(青色蛍光体)、蛍光体6(緑色蛍光体)の重量比は、4.1g:1.5g:1.5g、色度は(x、y)=(0.368、0.371)でANSI(American National Standards Institute:米国標準協会)規格の色温度4300Kの範囲内にあった。また、実施例1に係る発光モジュールの平均演色評価数Ra=80で、後述の比較例1に係る発光モジュールのRa=76より4ポイント向上している。
【0056】
(比較例1)
比較例1に係る発光モジュールは、黄色蛍光体として570nm付近に発光のピーク波長を持つ蛍光体1、青色蛍光体としてCaアパタイトの蛍光体2を用い、それらを所望の混合比で混合する。その後は、実施例1と同様の方法で蛍光体フィルターを作製し、この蛍光体フィルターを備えた発光モジュールにおいて、発光特性を評価した。その結果、蛍光体1(黄色蛍光体)、蛍光体2(青色蛍光体)の重量比は、5.0g:1.5g、色度は(x、y)=(0.371、0.385)、Ra=76であった。
【0057】
図10は、実施例1に係る発光モジュールの発光スペクトルと比較例1に係る発光モジュールの発光スペクトルを示す図である。
【0058】
(実施例2)
実施例2に係る発光モジュールは、色温度が5000K(昼白色)の光を発するように構成されている。具体的には、黄色蛍光体として蛍光体1、青色蛍光体としてSrアパタイトの蛍光体3、緑色蛍光体として蛍光体6を用い、それらを所望の混合比で混合する。その後は、実施例1と同様の方法で蛍光体フィルターを作製し、この蛍光体フィルターを備えた発光モジュールにおいて、発光特性を評価した。その結果、蛍光体1(黄色蛍光体)、蛍光体3(青色蛍光体)、蛍光体6(緑色蛍光体)の重量比は、3.0g:1.6g:1.8g、色度は(x、y)=(0.344、0.350)でANSI規格の色温度5000Kの範囲内にあった。また、実施例2に係る発光モジュールの平均演色評価数Ra=81.4であった。
【0059】
図11は、実施例2に係る発光モジュールの発光スペクトルを示す図である。
【0060】
(実施例3)
実施例3に係る発光モジュールは、色温度が5500K(昼白色)の光を発するように構成されている。具体的には、黄色蛍光体として蛍光体1、青色蛍光体としてCaSrアパタイトの蛍光体4、緑色蛍光体として蛍光体6を用い、それらを所望の混合比で混合する。その後は、実施例1と同様の方法で蛍光体フィルターを作製し、この蛍光体フィルターを備えた発光モジュールにおいて、発光特性を評価した。その結果、蛍光体1(黄色蛍光体)、蛍光体4(青色蛍光体)、蛍光体6(緑色蛍光体)の重量比は、3.0g:2.0g:2.5g、色度は(x、y)=(0.331、0.342)でANSI規格の色温度5500Kの範囲内にあった。また、実施例3に係る発光モジュールの平均演色評価数Ra=81.9であった。
【0061】
図12は、実施例3に係る発光モジュールの発光スペクトルを示す図である。
【0062】
(実施例4)
実施例4に係る発光モジュールは、色温度が6000K(昼光色)の光を発するように構成されている。具体的には、黄色蛍光体として蛍光体1、青色蛍光体としてBAM蛍光体の蛍光体5、緑色蛍光体として蛍光体6を用い、それらを所望の混合比で混合する。その後は、実施例1と同様の方法で蛍光体フィルターを作製し、この蛍光体フィルターを備えた発光モジュールにおいて、発光特性を評価した。その結果、蛍光体1(黄色蛍光体)、蛍光体5(青色蛍光体)、蛍光体6(緑色蛍光体)の重量比は、2.0g:1.5g:2.0g、色度は(x、y)=(0.322、0.334)でANSI規格の色温度6000Kの範囲内にあった。また、実施例4に係る発光モジュールの平均演色評価数Ra=82.5であった。
【0063】
図13は、実施例4に係る発光モジュールの発光スペクトルを示す図である。
【0064】
(実施例5)
実施例5に係る発光モジュールは、色温度が6500K(昼光色)の光を発するように構成されている。具体的には、黄色蛍光体として蛍光体1、青色蛍光体としてCaアパタイトの蛍光体2、緑色蛍光体として蛍光体6を用い、それらを所望の混合比で混合する。その後は、実施例1と同様の方法で蛍光体フィルターを作製し、この蛍光体フィルターを備えた発光モジュールにおいて、発光特性を評価した。その結果、蛍光体1(黄色蛍光体)、蛍光体5(青色蛍光体)、蛍光体6(緑色蛍光体)の重量比は、2.0g:1.7g:2.1g、色度は(x、y)=(0.313、0.324)でANSI規格の色温度6500Kの範囲内にあった。また、実施例5に係る発光モジュールの平均演色評価数Ra=83.5であった。
【0065】
図14は、実施例5に係る発光モジュールの発光スペクトルを示す図である。
【0066】
実施例1〜5に示すように、400nmのInGaN/GaN系半導体発光素子で励起される黄色蛍光体と青色蛍光体に加え、酸化物である緑色蛍光体を使用し、3色混合することで白色を実現する発光モジュールは、黄色蛍光体と青色蛍光体のみを使用した発光モジュールと比較して、平均演色評価数Raが各白領域で80以上へ向上する。
【0067】
以上、本発明を実施の形態や各実施例をもとに説明した。この実施の形態や各実施例は例示であり、それらの各構成要素や各処理プロセスの組合せにいろいろな変形例が可能なこと、またそうした変形例も本発明の範囲にあることは当業者に理解されるところである。
【0068】
発光素子は、少なくとも紫外線又は短波長可視光を発するものであればその発光スペクトルは特に限定されるものではないが、発光モジュールの発光効率等の観点から、発光スペクトルのピーク波長が350nm〜420nmの範囲に含まれていることが好ましい。
【0069】
また、発光素子の具体例としては、例えば、LEDやLD等の半導体発光素子、真空放電や熱発光からの発光を得るための光源、電子線励起発光素子等の各種光源を用いることができる。より好ましくは、発光素子として半導体発光素子を用いることにより、小型で省電力、長寿命な発光モジュールを得ることができる。このような半導体発光素子の好適な例として、400nm付近の波長域の発光特性が良好であるInGaN系のLEDやLDを挙げることができる。
【産業上の利用可能性】
【0070】
本発明の発光モジュールは種々の灯具、例えば照明用灯具、ディスプレイ、車両用灯具、信号機等に利用することができる。特に、演色性が求められる一般照明用灯具への適用が期待できる。
【符号の説明】
【0071】
10 発光モジュール、 12 基板、 14,16 電極、 18 半導体発光素子、 20 マウント部材、 22 ワイヤー、 24 蛍光体フィルター。
【技術分野】
【0001】
本発明は、蛍光体を用いた発光モジュールに関し、例えば、紫外線又は短波長可視光で効率よく励起され発光する蛍光体を用いた発光モジュールに関する。
【背景技術】
【0002】
発光素子と、当該発光素子が発生する光により励起され当該発光素子とは異なる波長域の光を発生する蛍光体とを組み合わせることにより、所望の色の光を得るように構成された種々の発光装置が知られている。
【0003】
特に近年、長寿命かつ消費電力が少ない白色発光装置として、紫外線又は短波長可視光を発光する発光ダイオード(LED)やレーザダイオード(LD)等の半導体発光素子と、これらを励起光源とする蛍光体とを組み合わせることで白色光を得るように構成された発光装置が注目されている。
【0004】
このような白色発光装置の具体例として、紫色光又は紫外線を発光するLEDと、紫色光又は紫外線によって励起され、青や黄等の色の光をそれぞれ発光する蛍光体を複数組み合わせる方式等が知られている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2009−38348号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、黄色蛍光体および青色蛍光体と、紫色光又は紫外線を発光するLEDとを組み合わせた白色LEDは、演色性が十分ではなく、一般照明として使用するには更なる改善の余地がある。
【0007】
本発明はこうした状況に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、演色性の高い発光モジュールを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本発明のある態様の発光モジュールは、紫外線又は短波長可視光を発する発光素子と、紫外線又は短波長可視光により励起され可視光を発光する第1の蛍光体と、紫外線又は短波長可視光により励起され、第1の蛍光体が発光する可視光と補色の関係にある可視光を発光する第2の蛍光体と、紫外線又は短波長可視光により励起され、第1の蛍光体が発光する可視光のピーク波長と第2の蛍光体が発光する可視光のピーク波長との間にピーク波長を有する、可視光を発光する第3の蛍光体と、を備える。第3の蛍光体は、発光素子の発光スペクトルのピーク波長における励起スペクトルの強度をIa、第1の蛍光体または第2の蛍光体の発光スペクトルのピーク波長における励起スペクトルの強度をIbとすると、Ib<Ia×0.15を満たす。
【0009】
第1の蛍光体が発光する可視光と第2の蛍光体が発光する可視光とは、互いに補色の関係にあるため、白色光を得ることはできる。しかしながら、互いに補色の関係にある2色の光の混色だけでは、演色性の高い白色光を得ることが困難な場合が多い。そこで、この態様によると、第3の蛍光体は、第1の蛍光体が発光する可視光のピーク波長と第2の蛍光体が発光する可視光のピーク波長との間にピーク波長を有する、可視光を発光するため、より演色性の高い白色光を実現することができる。また、第3の蛍光体は、発光素子の発光スペクトルのピーク波長における励起スペクトルの強度をIa、第1の蛍光体または第2の蛍光体の発光スペクトルのピーク波長における励起スペクトルの強度をIbとすると、Ib<Ia×0.15を満たすように構成されている。そのため、第3の蛍光体は、第1の蛍光体または第2の蛍光体が発する光により励起される割合が少なく、色ずれを抑えることができる。
【0010】
第3の蛍光体は、一般式がCs2Sr1−xP2O7:Eu2+x(ここで、xは、0<x≦0.3の範囲であってもよい。)で表されていてもよい。また、第3の蛍光体は、その発光スペクトルのピーク波長が500〜580nmの波長域にあってもよい。これにより、演色性の高い白色光を実現できる。
【0011】
第1の蛍光体は、一般式がM1O2・aM2O・bM3X2:M4c(但し、M1はSi、Ge、Ti、Zr及びSnからなる群より選ばれる少なくとも1種の元素、M2はMg、Ca、Sr、Ba及びZnからなる群より選ばれる少なくとも1種の元素、M3はMg、Ca、Sr、Ba及びZnからなる群より選ばれる少なくとも1種の元素、Xは少なくとも1種のハロゲン元素、M4は希土類元素及びMnからなる群より選ばれるEu2+を必須とする少なくとも1種の元素を示す。aは0.1≦a≦1.3、bは0.1≦b≦0.25の範囲であってもよい。)で表されてもよい。これにより、より発光特性の良好な第1の蛍光体が得られる。
【0012】
第1の蛍光体は、発光素子の発光スペクトルのピーク波長における励起スペクトルの強度をIc、第2の蛍光体の発光スペクトルのピーク波長における励起スペクトルの強度をIdとすると、Id<Ic×0.30を満たしてもよい。これにより、第1の蛍光体は、第2の蛍光体が発する光により励起される割合が少なく、色ずれを抑えることができる。
【0013】
発光素子は、350〜420nmの波長域にピーク波長を有する紫外線又は短波長可視光を発してもよい。
【0014】
なお、以上の構成要素の任意の組合せ、本発明の表現を方法、装置、システム、などの間で変換したものもまた、本発明の態様として有効である。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、演色性の高い発光モジュールを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本実施の形態に係る発光モジュールの概略断面図である。
【図2】蛍光体1の発光スペクトルを示す図である。
【図3】蛍光体2の発光スペクトルを示す図である。
【図4】蛍光体3の発光スペクトルを示す図である。
【図5】蛍光体4の発光スペクトルを示す図である。
【図6】蛍光体5の発光スペクトルを示す図である。
【図7】蛍光体6の発光スペクトルを示す図である。
【図8】蛍光体6の励起スペクトル(ラインL1)と第2の蛍光体である青色蛍光体の発光スペクトル(ラインL2)を示す図である。
【図9】蛍光体1の励起スペクトル(ラインL3)と第2の蛍光体である青色蛍光体の発光スペクトル(ラインL2)を示す図である。
【図10】実施例1に係る発光モジュールの発光スペクトルと比較例1に係る発光モジュールの発光スペクトルを示す図である。
【図11】実施例2に係る発光モジュールの発光スペクトルを示す図である。
【図12】実施例3に係る発光モジュールの発光スペクトルを示す図である。
【図13】実施例4に係る発光モジュールの発光スペクトルを示す図である。
【図14】実施例5に係る発光モジュールの発光スペクトルを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、図面を参照しながら、本発明を実施するための形態について詳細に説明する。なお、図面の説明において同一の要素には同一の符号を付し、重複する説明を適宜省略する。
【0018】
図1は、本実施の形態に係る発光モジュールの概略断面図である。図1に示す発光モジュール10は、基板12上に一対の電極14(陽極)及び電極16(陰極)が形成されている。電極14上には半導体発光素子18がマウント部材20により固定されている。半導体発光素子18と電極14はマウント部材20により導通されており、半導体発光素子18と電極16はワイヤー22により導通されている。半導体発光素子の出射面の上には蛍光体フィルター24が設置されている。
【0019】
基板12は、導電性を有しないが熱伝導性は高い材料によって形成されることが好ましく、例えば、セラミック基板(窒化アルミニウム基板、アルミナ基板、ムライト基板、ガラスセラミック基板)やガラスエポキシ基板等を用いることができる。
【0020】
電極14及び電極16は、金や銅等の金属材料によって形成された導電層である。
【0021】
半導体発光素子18は、本発明の発光モジュールに用いられる発光素子の一例であり、例えば、紫外線又は短波長可視光を発光するLEDやLD等を用いることができる。具体例として、InGaN系の化合物半導体を挙げることができる。InGaN系の化合物半導体は、Inの含有量によって発光波長域が変化する。Inの含有量が多いと発光波長が長波長となり、少ない場合は短波長となる傾向を示すが、ピーク波長が400nm付近となる程度にInが含有されたInGaN系の化合物半導体が発光における量子効率が最も高いことが確認されている。
【0022】
マウント部材20は、例えば銀ペースト等の導電性接着剤又は金錫共晶はんだ等であり、半導体発光素子18の下面を電極14に固定し、半導体発光素子18の下面側電極と基板12上の電極14を電気的に接続する。
【0023】
ワイヤー22は、金ワイヤー等の導電部材であり、例えば超音波熱圧着等により半導体発光素子18の上面側電極及び電極16に接合され、両者を電気的に接続する。
【0024】
蛍光体フィルター24は、後述する各蛍光体がバインダー部材に分散されている。蛍光体フィルター24は、例えば、液状又はゲル状のバインダー部材に蛍光体を混入した蛍光体ペーストを作製した後、その蛍光体ペーストを光学ガラス上面に所定の膜厚に塗布し、その後に蛍光体ペーストのバインダー部材を硬化することにより形成される。バインダー部材としては、例えば、シリコーン樹脂やフッ素樹脂等を用いることができる。また、本実施の形態に係る発光モジュールは、励起光源として紫外線又は短波長可視光を用いることから、耐紫外線性能に優れたバインダー部材が好ましい。
【0025】
また、蛍光体フィルター24は、蛍光体以外の種々の物性を有する物質が混入されていてもよい。バインダー部材よりも屈折率の高い物質、例えば、金属酸化物、フッ素化合物、硫化物等が蛍光体フィルター24に混入されることにより、蛍光体フィルター24の屈折率を高めることができる。これにより、半導体発光素子18から発生する光が蛍光体フィルター24へ入射する際に生ずる全反射が低減され、蛍光体フィルター24への励起光の取り込み効率を向上させるという効果が得られる。更に、混入する物質の粒子径をナノサイズにすることで、蛍光体フィルター24の透明度を低下させることなく屈折率を高めることができる。また、アルミナ、ジルコニア、酸化チタン等の平均粒径0.3〜3μm程度の白色粉末を光散乱剤として蛍光体フィルター24に混入することができる。これにより、発光面内の輝度,色度むらを防止することができる。
【0026】
次に、本実施の形態に係る発光モジュールに用いられる各蛍光体について詳述する。
【0027】
(第1の蛍光体)
本実施の形態に係る第1の蛍光体は、黄色発光蛍光体である。黄色発光蛍光体(以下、「黄色蛍光体」と称する。)の好適な一例として、一般式がM1O2・aM2O・bM3X2:M4c(但し、M1はSi、Ge、Ti、Zr及びSnからなる群より選ばれる少なくとも1種の元素、M2はMg、Ca、Sr、Ba及びZnからなる群より選ばれる少なくとも1種の元素、M3はMg、Ca、Sr、Ba及びZnからなる群より選ばれる少なくとも1種の元素、Xは少なくとも1種のハロゲン元素、M4は希土類元素及びMnからなる群より選ばれるEu2+を必須とする少なくとも1種の元素を示す。aは0.1≦a≦1.3、bは0.1≦b≦0.25の範囲である。)で表される黄色蛍光体が挙げられる。また、この黄色蛍光体は、紫外線又は短波長可視光により励起され、青色蛍光体が発する可視光と混色することで白色を実現する可視光を発する。より具体的には、黄色蛍光体は、560〜600nmの波長域にピーク波長を有する可視光を発する。
【0028】
なお、上述の黄色蛍光体として、より好ましい態様は、一般式で表すと次のようになる。
(Ca1−x,Srx)7(SiO3)6Cl2:Eu2+(ここで、0<x<1である。)
【0029】
(第2の蛍光体)
本実施の形態に係る第2の蛍光体は、青色発光蛍光体である。青色発光蛍光体(以下、「青色蛍光体」と称する。)の好適な一例として、Caアパタイト蛍光体が挙げられる。Caアパタイト蛍光体は、一般式(Ca5−x−y,Mgx)(PO4)3Cl:Eu2+yで表される。
【0030】
また、青色蛍光体の好適な他の例として、Srアパタイト蛍光体が挙げられる。Srアパタイト蛍光体は、一般式(Sr5−y)(PO4)3Cl:Eu2+yで表される。
【0031】
また、青色蛍光体の好適な他の例として、CaSrアパタイト蛍光体が挙げられる。CaSrアパタイト蛍光体は、一般式(Ca5−x−y,Srx)(PO4)3Cl:Eu2+yで表される。
【0032】
また、青色蛍光体の好適な他の例として、BAM蛍光体が挙げられる。BAM蛍光体は、一般式BaMgAl10O17:Eu2+で表される。
【0033】
(第3の蛍光体)
本実施の形態に係る第3の蛍光体は、緑色発光蛍光体である。緑色発光蛍光体(以下、「緑色蛍光体」と称する。)の好適な一例は、一般式Cs2Sr1−xP2O7:Eu2+x(ここで、xは、0<x≦0.3の範囲である。)で表される蛍光体である。第3の蛍光体は、その発光スペクトルのピーク波長が500〜580nmの波長域にあってもよい。これにより、演色性の高い白色光を実現できる。
【実施例】
【0034】
以下に本実施の形態を実施例によって更に具体的に説明する。実施例に使用した各蛍光体は、以下の方法にて調製した。
【0035】
<蛍光体1>
蛍光体1は、一般式(Ca1−x,Srx)7(SiO3)6Cl2:Eu2+(ここで、0<x<1である。)で表される蛍光体であり、前述の第1の蛍光体の一例である。蛍光体1の調整方法は以下の通りである。
【0036】
はじめに、SiO2(高純度化学研究所社製 SIO01CB)、SrCl2・6H2O(同社製 SRH04XB)、SrCO3、Ca(OH)2(同社製 CAH08PB)及びEu2O3(同社製 EUO01PB)の各原料を、これらのモル比がSiO2:SrCl2・6H2O:SrCO3:Ca(OH)2:Eu2O3=1.00:0.94:0.09:0.29:0.14となるように秤量し、秤量した各原料を大気中でアルミナ乳鉢にて約30分粉砕混合し、原料混合物を得た。この原料混合物をアルミナ坩堝に入れ、還元雰囲気の電気炉で所定の雰囲気(5%H2を含むN2雰囲気)、温度1000℃で4〜10時間焼成し、焼成物を得た。得られた焼成物を温純水で丹念に洗浄し、余剰の塩化物を洗い流すことにより蛍光体1を得た。図2は、蛍光体1の発光スペクトルを示す図である。なお、励起光源は、紫外線又は短波長可視光を発し、ピーク波長が405nmとなる発光スペクトルを有するLEDである。以下の図3〜図7に示す各実施例や比較例についても同様である。
【0037】
<蛍光体2>
蛍光体2は、一般式(Ca5−x−y,Mgx)(PO4)3Cl:Eu2+yで表される蛍光体であり、前述の第2の蛍光体の一例である。蛍光体2の調整方法は以下の通りである。
【0038】
はじめに、CaCO3(高純度化学研究所社製 CAH08PB)、MgCO3(白辰化学製),Eu2O3(高純度化学研究所社製 EUO01PB)、CaCl2(同社製 CAH06XB)および(NH4)H2(PO4)(関東化学社製 01309-00)の各原料を、これらのモル比がCaCO3:MgCO3:Eu2O3:CaCl2:(NH4)H2(PO4)=2.9:1.5:0.05:0.5:3.0となるように秤量し、均一混合後、アルミナ坩堝中で800〜1000℃、3時間焼成する。その後、焼成品を乳鉢で粉砕し、粉砕品と(NH4)Clを乳鉢で混合後、フタ付きのアルミナ坩堝にて2〜5%H2を含むN2雰囲気中で、900〜1100℃、3時間焼成することで蛍光体2を合成した。図3は、蛍光体2の発光スペクトルを示す図である。
【0039】
<蛍光体3>
蛍光体3は、一般式(Sr5−y)(PO4)3Cl:Eu2+yで表される蛍光体であり、前述の第2の蛍光体の一例である。蛍光体3の調整方法は以下の通りである。
【0040】
はじめに、SrCO3(高純度化学研究所社製 SRH08PB)、Eu2O3(同社製 EUO01PB)、CaCl2(同社製 CAH06XB)および(NH4)H2(PO4)(関東化学社製 01309-00)の各原料を、これらのモル比がSrCO3:Eu2O3:CaCl2:(NH4)H2(PO4)=4.98:0.01:0.5:3.0となるように秤量し、均一混合後、アルミナ坩堝中で800〜1000℃、3時間焼成する。その後、焼成品を乳鉢で粉砕し、粉砕品と(NH4)Clを乳鉢で混合後、フタ付きのアルミナ坩堝にて2〜5%H2を含むN2雰囲気中で、900〜1100℃、3時間焼成することで蛍光体3を合成した。図4は、蛍光体3の発光スペクトルを示す図である。
【0041】
<蛍光体4>
蛍光体4は、一般式(Ca5−x−y,Srx)(PO4)3Cl:Eu2+yで表される蛍光体であり、前述の第2の蛍光体の一例である。蛍光体4の調整方法は以下の通りである。
【0042】
はじめに、CaCO3(高純度化学研究所社製 CAH08PB)、SrCO3(白辰化学製)、Eu2O3(同社製 EUO01PB)、CaCl2(同社製 CAH06XB)および(NH4)H2(PO4)(関東化学社製 01309-00)の各原料を、これらのモル比がCaCO3:SrCO3:Eu2O3:CaCl2:(NH4)H2(PO4)=3.5:1.4:0.05:0.5:3.0となるように秤量し、均一混合後、アルミナ坩堝中で800〜1000℃、3時間焼成する。その後、焼成品を乳鉢で粉砕し、粉砕品と(NH4)Clを乳鉢で混合後、フタ付きのアルミナ坩堝にて2〜5%H2を含むN2雰囲気中で、900〜1100℃、3時間焼成することで蛍光体4を合成した。図5は、蛍光体4の発光スペクトルを示す図である。
【0043】
<蛍光体5>
蛍光体5は、一般式BaMgAl10O17:Eu2+で表される蛍光体であり、前述の第2の蛍光体の一例である。蛍光体5の調整方法は以下の通りである。
【0044】
はじめに、BaCO3(高純度化学研究所社製 BAH07PB)、Eu2O3(同社製 EUO01PB)、MgCO3(同社製 MGH04XB)およびα−Al2O3(同社製 ALO04RB)の各原料を、これらのモル比がBaCO3:Eu2O3:MgCO3:α−Al2O3=0.9:0.05:1.0:5.0となるように秤量し、更にフラックスとしてAlF3(同社製 ALH07PB)をα−Al2O3に対してモル比で0.5%秤量し、均一混合後、アルミナ坩堝中で、還元性雰囲気中にて1500℃で3時間焼成することで蛍光体5を合成した。図6は、蛍光体5の発光スペクトルを示す図である。
【0045】
<蛍光体6>
蛍光体6は、一般式Cs2Sr1−xP2O7:Eu2+x(ここで、xは、0<x≦0.3の範囲である。)で表される蛍光体であり、前述の第3の蛍光体の一例である。蛍光体6の調整方法は以下の通りである。
【0046】
はじめに、(NH4)2HPO4(関東化学社製)、Eu2O3(高純度化学研究所社製 EUO01PB)、Cs2CO3(同社製 CSH08XB)、SrCO3(白辰化学製)の各粉末を用い、化学式Cs2Sr0.99P2O7:Eu2+0.01となるように秤量し、均一混合後、フタ付きのアルミナ坩堝にて大気中、300℃の温度で焼成した後、2〜5%H2を含むN2雰囲気中で、800℃、5時間焼成することで蛍光体6を合成した。図7は、蛍光体6の発光スペクトルを示す図である。蛍光体6は、ピーク波長λp=554nmの緑色発光蛍光体である。
【0047】
ところで複数の蛍光体を用いる場合、発光素子から発せられる励起光によってピーク波長が最も短い一方の蛍光体が励起され、励起された一方の蛍光体から発せられる一次蛍光が、一方の蛍光体よりピーク波長が長い他方の蛍光体に吸収され励起される多重励起(「カスケード励起」ともいう)が発生する。そのため、各蛍光体は、このような多重励起が生じないような特性を有することが好ましい。
【0048】
そこで、本実施の形態に係る第3の蛍光体は、発光素子の発光スペクトルのピーク波長における励起スペクトルの強度をIa、第2の蛍光体である青色蛍光体の発光スペクトルのピーク波長における励起スペクトルの強度をIbとすると、Ib<Ia×0.15を満たすように構成されている。
【0049】
図8は、蛍光体6の励起スペクトル(ラインL1)と第2の蛍光体である青色蛍光体の発光スペクトル(ラインL2)を示す図である。本実施の形態に係る蛍光体6は、図8に示すように、発光素子の光のピーク波長405nmにおける、蛍光体6の励起スペクトルの強度Iaを100%とすると、青色蛍光体のピーク波長である456nmにおける、蛍光体6の励起スペクトルの強度Ibは11%であり、Ib<Ia×0.15の関係式を満たしている。このように、蛍光体6は、第2の蛍光体である青色蛍光体が発する光により励起される割合が少なく、色ずれを抑えることができる。
【0050】
同様の理由により、本実施の形態に係る第1の蛍光体は、発光素子の発光スペクトルのピーク波長における励起スペクトルの強度をIc、第2の蛍光体である青色蛍光体の発光スペクトルのピーク波長における励起スペクトルの強度をIdとすると、Id<Ic×0.30を満たすように構成されている。
【0051】
図9は、蛍光体1の励起スペクトル(ラインL3)と第2の蛍光体である青色蛍光体の発光スペクトル(ラインL2)を示す図である。本実施の形態に係る蛍光体1は、図9に示すように、発光素子の光のピーク波長405nmにおける、蛍光体1の励起スペクトルの強度Icを100%とすると、青色蛍光体のピーク波長である456nmにおける、蛍光体1の励起スペクトルの強度Idは27%であり、Ic<Id×0.0.30の関係式を満たしている。このように、蛍光体1は、第2の蛍光体である青色蛍光体が発する光により励起される割合が少なく、色ずれを抑えることができる。
【0052】
上述の各蛍光体を組み合わせて以下の各実施例に係る発光モジュールを作製した。各実施例に係る発光モジュールは、紫外線又は短波長可視光を発する発光素子と、紫外線又は短波長可視光により励起され可視光を発光する第1の蛍光体(黄色蛍光体)と、紫外線又は短波長可視光により励起され、第1の蛍光体が発光する可視光と補色の関係にある可視光を発光する第2の蛍光体(青色蛍光体)と、紫外線又は短波長可視光により励起され、第1の蛍光体が発光する可視光のピーク波長と第2の蛍光体が発光する可視光のピーク波長との間にピーク波長を有する、可視光を発光する第3の蛍光体(緑色蛍光体)と、を備える。
【0053】
第1の蛍光体が発光する可視光と第2の蛍光体が発光する可視光とは、互いに補色の関係にあるため、白色光を得ることはできる。しかしながら、互いに補色の関係にある2色の光の混色だけでは、演色性の高い白色光を得ることが困難な場合が多い。そこで、本実施の形態に係る白色発光モジュールは、発光スペクトルにおいて、緑色に対応する波長の強度を高めるべく、黄色蛍光体および青色蛍光体の2色に加えて、緑色蛍光体が加えられている。
【0054】
(実施例1)
実施例1に係る発光モジュールは、色温度が4300K(白色)の光を発するように構成されている。具体的には、黄色蛍光体として570nm付近に発光のピーク波長を持つ蛍光体1、青色蛍光体としてCaアパタイトの蛍光体2、緑色蛍光体として蛍光体6を用い、それらを所望の混合比で混合する。この混合物を10〜15vol%の濃度となるように付加重合型シリコーン樹脂(信越シリコーン社製 KER-2600(A/B))と自公転攪拌脱法混合装置にて念入りに混合した後、光学ガラスに150μm程度の膜厚で製膜、150℃、1時間で硬化させ蛍光体フィルターを作製した。
【0055】
この蛍光体フィルターを400nmの波長で発光する表面実装型LEDの出射面に設置し、LEDを20mAで通電し、出射光の発光特性を、インスツルメントシステム社のスペクトル測定装置(CAS140B)にて評価した。その結果、蛍光体1(黄色蛍光体)、蛍光体2(青色蛍光体)、蛍光体6(緑色蛍光体)の重量比は、4.1g:1.5g:1.5g、色度は(x、y)=(0.368、0.371)でANSI(American National Standards Institute:米国標準協会)規格の色温度4300Kの範囲内にあった。また、実施例1に係る発光モジュールの平均演色評価数Ra=80で、後述の比較例1に係る発光モジュールのRa=76より4ポイント向上している。
【0056】
(比較例1)
比較例1に係る発光モジュールは、黄色蛍光体として570nm付近に発光のピーク波長を持つ蛍光体1、青色蛍光体としてCaアパタイトの蛍光体2を用い、それらを所望の混合比で混合する。その後は、実施例1と同様の方法で蛍光体フィルターを作製し、この蛍光体フィルターを備えた発光モジュールにおいて、発光特性を評価した。その結果、蛍光体1(黄色蛍光体)、蛍光体2(青色蛍光体)の重量比は、5.0g:1.5g、色度は(x、y)=(0.371、0.385)、Ra=76であった。
【0057】
図10は、実施例1に係る発光モジュールの発光スペクトルと比較例1に係る発光モジュールの発光スペクトルを示す図である。
【0058】
(実施例2)
実施例2に係る発光モジュールは、色温度が5000K(昼白色)の光を発するように構成されている。具体的には、黄色蛍光体として蛍光体1、青色蛍光体としてSrアパタイトの蛍光体3、緑色蛍光体として蛍光体6を用い、それらを所望の混合比で混合する。その後は、実施例1と同様の方法で蛍光体フィルターを作製し、この蛍光体フィルターを備えた発光モジュールにおいて、発光特性を評価した。その結果、蛍光体1(黄色蛍光体)、蛍光体3(青色蛍光体)、蛍光体6(緑色蛍光体)の重量比は、3.0g:1.6g:1.8g、色度は(x、y)=(0.344、0.350)でANSI規格の色温度5000Kの範囲内にあった。また、実施例2に係る発光モジュールの平均演色評価数Ra=81.4であった。
【0059】
図11は、実施例2に係る発光モジュールの発光スペクトルを示す図である。
【0060】
(実施例3)
実施例3に係る発光モジュールは、色温度が5500K(昼白色)の光を発するように構成されている。具体的には、黄色蛍光体として蛍光体1、青色蛍光体としてCaSrアパタイトの蛍光体4、緑色蛍光体として蛍光体6を用い、それらを所望の混合比で混合する。その後は、実施例1と同様の方法で蛍光体フィルターを作製し、この蛍光体フィルターを備えた発光モジュールにおいて、発光特性を評価した。その結果、蛍光体1(黄色蛍光体)、蛍光体4(青色蛍光体)、蛍光体6(緑色蛍光体)の重量比は、3.0g:2.0g:2.5g、色度は(x、y)=(0.331、0.342)でANSI規格の色温度5500Kの範囲内にあった。また、実施例3に係る発光モジュールの平均演色評価数Ra=81.9であった。
【0061】
図12は、実施例3に係る発光モジュールの発光スペクトルを示す図である。
【0062】
(実施例4)
実施例4に係る発光モジュールは、色温度が6000K(昼光色)の光を発するように構成されている。具体的には、黄色蛍光体として蛍光体1、青色蛍光体としてBAM蛍光体の蛍光体5、緑色蛍光体として蛍光体6を用い、それらを所望の混合比で混合する。その後は、実施例1と同様の方法で蛍光体フィルターを作製し、この蛍光体フィルターを備えた発光モジュールにおいて、発光特性を評価した。その結果、蛍光体1(黄色蛍光体)、蛍光体5(青色蛍光体)、蛍光体6(緑色蛍光体)の重量比は、2.0g:1.5g:2.0g、色度は(x、y)=(0.322、0.334)でANSI規格の色温度6000Kの範囲内にあった。また、実施例4に係る発光モジュールの平均演色評価数Ra=82.5であった。
【0063】
図13は、実施例4に係る発光モジュールの発光スペクトルを示す図である。
【0064】
(実施例5)
実施例5に係る発光モジュールは、色温度が6500K(昼光色)の光を発するように構成されている。具体的には、黄色蛍光体として蛍光体1、青色蛍光体としてCaアパタイトの蛍光体2、緑色蛍光体として蛍光体6を用い、それらを所望の混合比で混合する。その後は、実施例1と同様の方法で蛍光体フィルターを作製し、この蛍光体フィルターを備えた発光モジュールにおいて、発光特性を評価した。その結果、蛍光体1(黄色蛍光体)、蛍光体5(青色蛍光体)、蛍光体6(緑色蛍光体)の重量比は、2.0g:1.7g:2.1g、色度は(x、y)=(0.313、0.324)でANSI規格の色温度6500Kの範囲内にあった。また、実施例5に係る発光モジュールの平均演色評価数Ra=83.5であった。
【0065】
図14は、実施例5に係る発光モジュールの発光スペクトルを示す図である。
【0066】
実施例1〜5に示すように、400nmのInGaN/GaN系半導体発光素子で励起される黄色蛍光体と青色蛍光体に加え、酸化物である緑色蛍光体を使用し、3色混合することで白色を実現する発光モジュールは、黄色蛍光体と青色蛍光体のみを使用した発光モジュールと比較して、平均演色評価数Raが各白領域で80以上へ向上する。
【0067】
以上、本発明を実施の形態や各実施例をもとに説明した。この実施の形態や各実施例は例示であり、それらの各構成要素や各処理プロセスの組合せにいろいろな変形例が可能なこと、またそうした変形例も本発明の範囲にあることは当業者に理解されるところである。
【0068】
発光素子は、少なくとも紫外線又は短波長可視光を発するものであればその発光スペクトルは特に限定されるものではないが、発光モジュールの発光効率等の観点から、発光スペクトルのピーク波長が350nm〜420nmの範囲に含まれていることが好ましい。
【0069】
また、発光素子の具体例としては、例えば、LEDやLD等の半導体発光素子、真空放電や熱発光からの発光を得るための光源、電子線励起発光素子等の各種光源を用いることができる。より好ましくは、発光素子として半導体発光素子を用いることにより、小型で省電力、長寿命な発光モジュールを得ることができる。このような半導体発光素子の好適な例として、400nm付近の波長域の発光特性が良好であるInGaN系のLEDやLDを挙げることができる。
【産業上の利用可能性】
【0070】
本発明の発光モジュールは種々の灯具、例えば照明用灯具、ディスプレイ、車両用灯具、信号機等に利用することができる。特に、演色性が求められる一般照明用灯具への適用が期待できる。
【符号の説明】
【0071】
10 発光モジュール、 12 基板、 14,16 電極、 18 半導体発光素子、 20 マウント部材、 22 ワイヤー、 24 蛍光体フィルター。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
紫外線又は短波長可視光を発する発光素子と、
前記紫外線又は短波長可視光により励起され可視光を発光する第1の蛍光体と、
前記紫外線又は短波長可視光により励起され、前記第1の蛍光体が発光する可視光と補色の関係にある可視光を発光する第2の蛍光体と、
前記紫外線又は短波長可視光により励起され、前記第1の蛍光体が発光する可視光のピーク波長と前記第2の蛍光体が発光する可視光のピーク波長との間にピーク波長を有する、可視光を発光する第3の蛍光体と、を備え、
前記第3の蛍光体は、前記発光素子の発光スペクトルのピーク波長における励起スペクトルの強度をIa、前記第1の蛍光体または前記第2の蛍光体の発光スペクトルのピーク波長における励起スペクトルの強度をIbとすると、Ib<Ia×0.15を満たすことを特徴とする発光モジュール。
【請求項2】
前記第3の蛍光体は、一般式がCs2Sr1−xP2O7:Eu2+x(ここで、xは、0<x≦0.3の範囲である。)で表されていることを特徴とする請求項1に記載の発光モジュール。
【請求項3】
前記第3の蛍光体は、その発光スペクトルのピーク波長が500〜580nmの波長域にあることを特徴とする請求項1または2に記載の発光モジュール。
【請求項4】
前記第1の蛍光体は、一般式がM1O2・aM2O・bM3X2:M4c
(但し、M1はSi、Ge、Ti、Zr及びSnからなる群より選ばれる少なくとも1種の元素、M2はMg、Ca、Sr、Ba及びZnからなる群より選ばれる少なくとも1種の元素、M3はMg、Ca、Sr、Ba及びZnからなる群より選ばれる少なくとも1種の元素、Xは少なくとも1種のハロゲン元素、M4は希土類元素及びMnからなる群より選ばれるEu2+を必須とする少なくとも1種の元素を示す。aは0.1≦a≦1.3、bは0.1≦b≦0.25の範囲である。)で表されることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の発光モジュール。
【請求項5】
前記第1の蛍光体は、前記発光素子の発光スペクトルのピーク波長における励起スペクトルの強度をIc、前記第2の蛍光体の発光スペクトルのピーク波長における励起スペクトルの強度をIdとすると、Id<Ic×0.30を満たすことを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載の発光モジュール。
【請求項6】
前記発光素子は、350〜420nmの波長域にピーク波長を有する紫外線又は短波長可視光を発することを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項に記載の発光モジュール。
【請求項1】
紫外線又は短波長可視光を発する発光素子と、
前記紫外線又は短波長可視光により励起され可視光を発光する第1の蛍光体と、
前記紫外線又は短波長可視光により励起され、前記第1の蛍光体が発光する可視光と補色の関係にある可視光を発光する第2の蛍光体と、
前記紫外線又は短波長可視光により励起され、前記第1の蛍光体が発光する可視光のピーク波長と前記第2の蛍光体が発光する可視光のピーク波長との間にピーク波長を有する、可視光を発光する第3の蛍光体と、を備え、
前記第3の蛍光体は、前記発光素子の発光スペクトルのピーク波長における励起スペクトルの強度をIa、前記第1の蛍光体または前記第2の蛍光体の発光スペクトルのピーク波長における励起スペクトルの強度をIbとすると、Ib<Ia×0.15を満たすことを特徴とする発光モジュール。
【請求項2】
前記第3の蛍光体は、一般式がCs2Sr1−xP2O7:Eu2+x(ここで、xは、0<x≦0.3の範囲である。)で表されていることを特徴とする請求項1に記載の発光モジュール。
【請求項3】
前記第3の蛍光体は、その発光スペクトルのピーク波長が500〜580nmの波長域にあることを特徴とする請求項1または2に記載の発光モジュール。
【請求項4】
前記第1の蛍光体は、一般式がM1O2・aM2O・bM3X2:M4c
(但し、M1はSi、Ge、Ti、Zr及びSnからなる群より選ばれる少なくとも1種の元素、M2はMg、Ca、Sr、Ba及びZnからなる群より選ばれる少なくとも1種の元素、M3はMg、Ca、Sr、Ba及びZnからなる群より選ばれる少なくとも1種の元素、Xは少なくとも1種のハロゲン元素、M4は希土類元素及びMnからなる群より選ばれるEu2+を必須とする少なくとも1種の元素を示す。aは0.1≦a≦1.3、bは0.1≦b≦0.25の範囲である。)で表されることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の発光モジュール。
【請求項5】
前記第1の蛍光体は、前記発光素子の発光スペクトルのピーク波長における励起スペクトルの強度をIc、前記第2の蛍光体の発光スペクトルのピーク波長における励起スペクトルの強度をIdとすると、Id<Ic×0.30を満たすことを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載の発光モジュール。
【請求項6】
前記発光素子は、350〜420nmの波長域にピーク波長を有する紫外線又は短波長可視光を発することを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項に記載の発光モジュール。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【公開番号】特開2013−89769(P2013−89769A)
【公開日】平成25年5月13日(2013.5.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−229028(P2011−229028)
【出願日】平成23年10月18日(2011.10.18)
【出願人】(000001133)株式会社小糸製作所 (1,575)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年5月13日(2013.5.13)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年10月18日(2011.10.18)
【出願人】(000001133)株式会社小糸製作所 (1,575)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]