説明

発光体、照明装置および前照灯

【課題】発光体の内部における励起光の不要な吸収を抑制しつつ散乱効率を高めて発光効率を向上させる。
【解決手段】青色発光蛍光体58と、青色発光蛍光体58から発生する蛍光によって励起される黄色発光蛍光体59とを少なくとも含む発光体5であって、青色発光蛍光体58が、第1波長領域内に吸収スペクトルの谷を持っておらず、青色発光蛍光体58以外の蛍光体が、第1波長領域内に吸収スペクトルの谷を持っている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、照明光を照射することが可能な発光体、ならびに、該発光体を備えた照明装置および該照明装置を備えた前照灯に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、励起光源として発光ダイオード(LED;Light Emitting Diode)や半導体レーザ(LD;Laser Diode)等の半導体発光素子を用い、これらの励起光源から生じた励起光を、蛍光体を含む発光体に照射することによって発生する蛍光を照明光として用いる照明装置などの研究が盛んになってきている。
【0003】
このような照明装置に用いられる発光体の一例が特許文献1に開示されている。この特許文献1に開示された発光体の中には、紫外領域または青紫色領域の励起光にて励起される青色蛍光体層と、青色蛍光体から発生する青色光によって励起される黄色蛍光体層と、紫外領域から青紫色領域の波長領域の励起光で励起される赤色蛍光体層とを含有する蛍光体が開示されている。
【0004】
特許文献2には、光を透過させる性質と光を散乱させる性質の両方を有する多結晶体が開示されている。
【0005】
特許文献3には、発光体の他の一例として、400nm以上500nm未満の波長領域に発光ピーク波長を有する青色系蛍光体と、550nm以上600nm未満の波長領域に発光ピーク波長を有する黄色系蛍光体との組合せが開示されている。
【0006】
特許文献4には、半導体発光素子からの光を青色光に変換する第1の蛍光体を分散させた第1の層と、青色系の光を黄色ないし黄緑色系の光に変換する第2の蛍光体を分散させた第2の層とからなる面光源が開示されている。
【0007】
特許文献5には、透明樹脂層の上に、凸の曲線状に順次形成された、赤色蛍光体層、黄色蛍光体層、緑色蛍光体層、および、青色蛍光体層を含む積層体が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2010−4035号公報(2010年1月7日公開)
【特許文献2】特開2008−231218号公報(2008年10月2日公開)
【特許文献3】特開2003−110150号公報(2003年4月11日公開)
【特許文献4】特開2002−42525号公報(2002年2月8日公開)
【特許文献5】特開2009−59896号公報(2009年3月19日公開)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、前記従来の技術では、発光体の内部における励起光の不要な吸収を抑制しつつ散乱効率を高めて発光効率を向上させることが難しいという問題点がある。
【0010】
例えば、特許文献1に開示された発光体では、赤色蛍光体層を含んでいるが、この赤色蛍光体層は、当然ながら励起光を吸収するために励起光を散乱する効果が小さく、赤色蛍光体層の割合が高くなればなるほど、発光体の内部における励起光の散乱効率が低下してしまう。
【0011】
また、特許文献2に開示された多結晶体は励起光を散乱する性質だけでなく、励起光を透過させる性質も有している必要があるため、多結晶体の内部における励起光の散乱効率を高めることは難しい。
【0012】
なお、特許文献3〜5の技術では、そもそも発光体の内部における励起光の散乱効率を高めて発光効率を向上させるという観点については何ら記載されていない。
【0013】
本発明は、前記問題点に鑑みて前記なされたものであり、その目的は、発光体の内部における励起光の不要な吸収を抑制しつつ散乱効率を高めて発光効率を向上させることができる発光体、照明装置および前照灯を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明の発光体は、前記課題を解決するために、第1波長領域の波長を有する励起光を受けて前記第1波長領域よりも長波長側の第2波長領域に発光ピーク波長を有する蛍光を発生する第1の蛍光体と、蛍光によって励起される第2の蛍光体とを少なくとも含む発光体であって、前記第1の蛍光体が、前記第1波長領域内に吸収スペクトルの谷を持っておらず、前記第1の蛍光体以外の蛍光体が、前記第1波長領域内に吸収スペクトルの谷を持っていることを特徴とする。
【0015】
前記構成によれば、前記第1の蛍光体が、前記第1波長領域内に吸収スペクトルの谷を持っておらず、前記第1の蛍光体以外の蛍光体が、前記第1波長領域内に吸収スペクトルの谷を持っている。すなわち、第2の蛍光体または第3以降の蛍光体(以下、単に「第2以降の蛍光体」という)は、第1の蛍光体よりも励起光を吸収しない確率が高く、励起光を散乱または拡散する確率が高い。よって、発光体の内部において、励起光の不要な吸収が抑制され、第2以降の蛍光体が存在しなければ、そのまま外部に放出されたかもしれない励起光が第2以降の蛍光体によって、散乱または拡散されるため、発光体の内部における励起光の散乱効率が向上する。
【0016】
また、第2の蛍光体は、第1の蛍光体から発生する光によって励起される。これにより、第2の蛍光体も蛍光を発することができる。よって、第1の蛍光体の蛍光と第2の蛍光体の蛍光とを照明光として、外部に放出することができる。以上より、本発明の発光体によれば、発光体全体として発光効率が向上する。
【0017】
よって、発光体の内部における励起光の不要な吸収を抑制しつつ散乱効率を高めて発光効率を向上させることができる。
【0018】
なお、発光体の内部における励起光の散乱効率を向上させるためには、発光体の内部に散乱微粒子などを分散させることも考えられる。しかしながら、発光体全体に対する蛍光体の割合が低下し、逆に発光効率が低下してしまう可能性がある。
【0019】
さらに、本発明の発光体は、副次的効果として、第2の蛍光体に対する第1の蛍光体の重量比を調整することで、照明光の色(色度)や演色性の調節を行うことができる。
【0020】
また、本発明の発光体は、前記構成に加えて、第2の蛍光体は、Ceで賦活したイットリウム‐アルミニウム‐ガーネット系の蛍光体(YAG:Ce蛍光体)であってもよい。
【0021】
前記構成によれば、イットリウム‐アルミニウム‐ガーネット系の蛍光体(YAG:Ce蛍光体)は、紫外領域から青紫色領域の波長領域の光をほとんど吸収しないため、第1波長領域が、紫外領域から青紫色領域の波長領域である場合に、発光効率が高い発光体を実現することができる。
【0022】
また、本発明の発光体は、前記構成に加えて、第2の蛍光体は、Ceで賦活したテルビウム−アルミニウム−ガーネット系の蛍光体(TAG:Ce蛍光体)であってもよい。
【0023】
前記構成によれば、テルビウム−アルミニウム−ガーネット系の蛍光体(TAG:Ce蛍光体)は、紫外領域から青紫色領域の波長領域の光をほとんど吸収しないため、第1波長領域が、紫外領域から青紫色領域の波長領域である場合に、発光効率が高い発光体を実現することができる。
【0024】
また、本発明の発光体は、前記構成に加えて、発光体は、第1の蛍光体と第2の蛍光体とが混合されて形成されていてもよい。
【0025】
前記構成によれば、第1の蛍光体と第2の蛍光体とが独立して別々に存在しているよりも発光効率が高くなる。
【0026】
また、本発明の発光体は、前記構成に加えて、第2の蛍光体が、第1の蛍光体を取り囲むように配置されていてもよい。
【0027】
前記構成によれば、第1の蛍光体と第2の蛍光体とが、独立して、別々に存在している場合であっても、発光体の発光効率を高くすることができる。
【0028】
また、本発明の発光体は、前記構成に加えて、第1の蛍光体は、バリウムアルミン酸マグネシウム蛍光体またはJEM相を含む酸窒化物系の蛍光体であることが好ましい。
【0029】
前記構成によれば、第2の蛍光体を励起する蛍光を発する第1の蛍光体を実現することができる。
【0030】
また、本発明の発光体は、前記構成に加えて、第2の蛍光体に対する第1の蛍光体の重量比が、1以上、5以下であってもよい。
【0031】
前記構成によれば、好適な発光効率、色度および演色性を有する発光体を実現できる。
【0032】
また、本発明の照明装置は、前記構成に加えて、前記のいずれかの発光体と、前記第1波長領域の波長を有する励起光を前記発光体に照射する励起光源と、発光体から出射する光を反射することにより、所定の立体角内を進む光線束を形成する反射鏡を備えていてもよい。
【0033】
また、本発明の照明装置は、前記構成に加えて、反射鏡の開口部付近に設けられ、励起光を遮断する光学フィルタを備えていてもよい。
【0034】
前記構成によれば、光学フィルタが、励起光を遮断するので、光学フィルタの外部に励起光が漏れることはない。従って、光学フィルタに相対する人間の目に励起光が入って、その目が損傷されることがないので、安全な照明装置を実現することができる。
【0035】
また、本発明の照明装置は、前記構成に加えて、前記発光体は、前記励起光源から出射された励起光を受光する受光面を有し、当該受光面が、前記反射鏡と当該反射鏡の開口部とが形成する空間の外側となるように設けられていても良い。
【0036】
前記構成によれば、受光面は、反射鏡と当該反射鏡の開口部とが形成する空間(反射鏡と当該反射鏡の開口部とで囲まれた空間)の外側にあるので、励起光(特に高出力の励起光;例えばレーザ光)をその空間の内部で受光することがない。このため、人体にとって有害な出力レベルの励起光がその空間を伝播して、外部(少なくとも発光体から出射された光の照射方向)に漏れ出てしまうことを防ぐことができる。
【0037】
また、例えば照明装置が何らかの衝撃を受けたときに、励起光が受光面に照射されない事態が生じた場合であっても、当該励起光が、少なくとも前記光の照射方向に直接漏れ出てしまう事態を防ぐことができる。
【0038】
このように、受光面が前記空間の外側となるように発光体を設けることにより、安全性の高い照明装置を実現できる。
【0039】
また、本発明の照明装置は、前記構成に加えて、前記励起光源から出射された励起光を受け取り、当該励起光を前記発光体に出射する導光部を備え、前記発光体は、前記導光部から出射された励起光を受光する受光面を有し、前記導光部は、前記励起光源から受け取った励起光を前記発光体に出射する出射端部を有し、前記受光面および前記出射端部の近傍に、前記出射端部から出射された励起光のうち、前記受光面に照射されなかった励起光、および前記受光面にて反射された励起光の少なくとも一方を遮光する遮光部を備えていても良い。
【0040】
前記構成によれば、遮光部を備えているので、例えば照明装置への衝撃により、励起光が受光面に適切に照射されない事態が生じた場合に、当該励起光が外部に漏れ出ることを確実に防ぐことができる。この構成の場合、励起光が、反射鏡と反射鏡の開口部とが形成する空間を伝播することがないので、前記光の照射方向に出射されることを防ぐことができるとともに、それ以外の方向に漏れることも防ぐことが可能である。
【0041】
また、本発明の照明装置は、前記構成に加えて、前記励起光源から出射された励起光を受け取り、当該励起光を前記発光体に出射する導光部を備え、前記発光体は、前記導光部から出射された励起光を受光する受光面を有し、前記導光部は、前記励起光源から受け取った励起光を前記発光体に出射する出射端部を有し、前記受光面と前記出射端部とが近接していても良い。
【0042】
前記構成によれば、発光体の受光面と導光部の出射端部とが近接しており、励起光(特に高出力の励起光)が、反射鏡と反射鏡の開口部とが形成する空間を伝播することがない。このため、例えば照明装置が何らかの衝撃を受けた場合に、人体にとって有害な出力レベルの励起光が受光面に照射されずに、直接外部に漏れ出てしまうという事態を防ぐことができる。それゆえ、安全性の高い照明装置を実現できる。
【0043】
また、本発明の照明装置は、前記構成に加えて、前記反射鏡は、前記出射端部が挿入される中空部を有し、前記中空部には、前記発光体に前記励起光が照射されることにより、当該発光体にて発生する熱を放散する放熱部材が備えられ、前記受光面と前記出射端部とは、前記放熱部材を介して近接していても良い。
【0044】
受光面と出射端部とが近接すれば、その分、発光体における発熱量が大きくなる(発光体の温度が高くなる)ため、発光体が急速に劣化してしまう可能性がある。
【0045】
前記構成によれば、反射鏡の中空部に放熱部材が備えられ、当該放熱部材を介して出射端部と受光面とが近接している。そのため、受光面に照射される励起光に起因して発光体において発生した熱を、放熱部材を介して反射鏡へと放散させることができるので、発光体の長寿命化を図ることができる。
【0046】
それゆえ、安全性を担保するために受光面と出射端部とを近接させた場合であっても、発光体の温度上昇を抑制することができる。すなわち、安全性が高く、かつ長寿命な照明装置を実現できる。
【0047】
また、前記照明装置を備えた前照灯も本発明の技術的範囲に含まれる。
【発明の効果】
【0048】
本発明の発光体は、以上のように、前記第1の蛍光体が、前記第1波長領域内に吸収スペクトルの谷を持っておらず、前記第1の蛍光体以外の蛍光体が、前記第1波長領域内に吸収スペクトルの谷を持っているものである。
【0049】
それゆえ、発光体の内部における励起光の不要な吸収を抑制しつつ散乱効率を高めて発光効率を向上させることができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0050】
【図1】本発明の一実施形態であるヘッドランプの概略構成を示す図である。
【図2】(a)〜(c)は、本発明の実施形態である発光体の組成の例を模式的に示す図である。
【図3】YAG:Ce蛍光体の励起光の波長と効率(吸収率、内部量子効率または外部量子効率)との関係を表すグラフである。
【図4】TAG:Ce蛍光体の励起光の波長と効率(吸収率、内部量子効率または外部量子効率)との関係を表すグラフである。
【図5】JEM相:Ce蛍光体の励起光の波長と吸収率との関係を表すグラフである。
【図6】照明光の色度範囲を示すグラフである。
【図7】(a)は、前記ヘッドランプに関し、励起光源の一例(LED)の回路図であり、(b)は、前記LEDの外観を示す正面図であり、(c)は、前記励起光源の他の一例(LD)の回路図であり、(d)は、前記LDの外観を示す斜視図である。
【図8】本発明の他の実施形態であるヘッドランプの概略構成を示す断面図である。
【図9】前記他の実施形態であるヘッドランプが備える光ファイバーの端部と発光体との位置関係を示す図である。
【図10】本発明のさらに他の実施形態であるヘッドランプの概略構成を示す断面図である。
【図11】本発明のさらに他の実施形態であるヘッドランプが備える発光体と光ファイバーの出射端部との位置関係を示す図である。
【図12】本発明のさらに他の実施形態であるレーザダウンライトが備える発光ユニットおよび従来のLEDダウンライトの外観を示す概略図である。
【図13】前記レーザダウンライトが設置された天井の断面図である。
【図14】前記レーザダウンライトの断面図である。
【図15】前記レーザダウンライトの設置方法の変更例を示す断面図である。
【図16】前記LEDダウンライトが設置された天井の断面図である。
【図17】前記レーザダウンライトおよび前記LEDダウンライトのスペックを比較するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0051】
本発明の一実施形態について図1〜図17に基づいて説明すれば、次の通りである。以下の特定の項目で説明する構成以外の構成については、必要に応じて説明を省略する場合があるが、他の項目で説明されている場合は、その構成と同じである。また、説明の便宜上、各項目に示した部材と同一の機能を有する部材については、同一の符号を付し、適宜その説明を省略する。
【0052】
〔ヘッドランプ1の構成〕
まず、本実施形態のヘッドランプ1の構成について図1〜図7を用いて説明する。図1は、ヘッドランプ1の概略構成を示す図である。同図に示すように、ヘッドランプ1は、半導体レーザ2(励起光源)、非球面レンズ3、導光部4、発光体5、反射鏡6および透過フィルタ(光学フィルタ)7を備えている。
【0053】
(半導体レーザ2)
半導体レーザ2は、励起光を発生する励起光源として機能するものである。この半導体レーザ2は1つでもよいし、複数設けられてもよい。また、半導体レーザ2として、1つのチップに1つの発光点を有するもの(1チップ1ストライプ)を用いてもよいし、複数の発光点を有するもの(1チップ複数ストライプ)を用いてもよい。本実施形態では、1チップ1ストライプの半導体レーザ2を用いている。なお、本実施形態では、励起光源のとして半導体レーザ2を用いているが、励起光源は、これに限定されない。例えば、後述するLEDランプ21を励起光源として用いても良い。
【0054】
半導体レーザ2は、例えば、405nm(青紫色)のレーザ光を発振し、光出力が1.0W、動作電圧が5V、電流が0.7Aのものであり、直径5.6mmのパッケージ(ステム)に封入されているものである。また、本実施形態では、半導体レーザ2を10個用いており、光出力の合計は10Wである。なお、図1には便宜上、半導体レーザ2を1つのみ図示している。
【0055】
半導体レーザ2が発振するレーザ光の波長は、405nmに限定されず、近紫外領域から青色領域(350nm以上460nm以下)、より好ましくは、近紫外領域から青紫色領域(370nm以上420nm以下)の波長範囲(第1波長領域)にピーク波長(発光ピーク波長)を有するものであればよい。
【0056】
また、後述するJEM相を含む酸窒化物蛍光体を発光体5の蛍光体として用いた場合、半導体レーザ2の光出力は、1W以上20W以下であり、発光体5に照射されるレーザ光の光密度は、0.1W/mm以上50W/mm以下であることが好ましい。この範囲の光出力であれば、車両用のヘッドランプに要求される光束および輝度を実現できるとともに、高出力のレーザ光によって発光体5が極度に劣化することを防止できる。すなわち、高光束かつ高輝度でありながら、長寿命の光源を実現できる。
【0057】
(励起光源の具体例について)
次に、図7(a)〜図7(d)に基づき、励起光源の具体例について説明する。
【0058】
図7(a)は、励起光源の一例であるLEDランプ(励起光源)21の回路図であり、図7(b)は、LEDランプ21の外観を示す正面図である。
【0059】
図7(b)に示すように、LEDランプ21は、アノード14とカソード15に接続されたLEDチップ(励起光源)210が、エポキシ樹脂キャップ16によって封じこめられた構成である。
【0060】
図7(a)に示すように、LEDチップ210は、p型半導体131とn型半導体132とをpn接合し、p型電極133にアノード14が接続され、n型電極134にカソード15が接続される。なお、LEDチップ210は、抵抗Rを介して電源Eと接続されている。
【0061】
また、アノード14とカソード15とを電源Eに接続することにより、回路が構成され、電源EからLEDチップ210に電力が供給されることによってpn接合附近からインコヒーレントな励起光を発生する。
【0062】
LEDチップ210の材料としては、近紫外領域から青紫色領域の波長を有する励起光を発生する材料として、インジウム窒化ガリウム(InGaN)、窒化ガリウム(GaN)、アルミニウム窒化ガリウム(AlGaN)などの化合物半導体が例示できる。また、その他の材料として、近紫外領域の波長を有する励起光を発するダイヤモンド(C)、青色領域の波長を有する励起光を発生するセレン化亜鉛(ZnSe)、近紫外領域から青紫色領域の波長を有する励起光を発生する酸化亜鉛(ZnO)を例示することができる。
【0063】
なお、励起光の波長を、近紫外領域から青紫色領域の波長以外とする場合には、発光色が赤色となるGaP、AlGaAs、GaAsPなど、発光色が橙色となるGaAsP、発色光が黄色となるGaAsP、GaP、発光色が緑となるGaP、発光色が青色となるSiC、GaNなどの化合物半導体が例示できる。
【0064】
なお、LEDチップ210は、約2V〜4V程度の低電圧で動作し、小型軽量で、応答速度が速い、長寿命で、低コストといった特徴がある。
【0065】
次に、上述した半導体レーザ2の基本構造について説明する。図7(c)は、半導体レーザ2の回路図を模式的に示したものであり、図7(d)は、半導体レーザ2の基本構造を示す斜視図である。同図に示すように、半導体レーザ2は、カソード電極19、基板18、クラッド層113、活性層111、クラッド層112、アノード電極17がこの順に積層された構成である。
【0066】
基板18は、半導体基板であり、本願のように蛍光体を励起する為の青紫色領域〜近紫外領域の励起光を得る為にはGaN、サファイア、SiCを用いることが好ましい。一般的には、半導体レーザ用の基板の他の例として、Si、GeおよびSiC等のIV属半導体、GaAs、GaP、InP、AlAs、GaN、InN、InSb、GaSbおよびAlNに代表されるIII−V属化合物半導体、ZnTe、ZeSe、ZnSおよびZnO等のII−VI属化合物半導体、ZnO、Al、SiO、TiO、CrOおよびCeO等の酸化物絶縁体、ならびに、SiNなどの窒化物絶縁体のいずれかの材料が用いられる。
【0067】
アノード電極17は、クラッド層112を介して活性層111に電流を注入するためのものである。
【0068】
カソード電極19は、基板18の下部から、クラッド層113を介して活性層111に電流を注入するためのものである。なお、電流の注入は、アノード電極17・カソード電極19に順方向バイアスをかけて行う。
【0069】
活性層111は、クラッド層113およびクラッド層112で挟まれた構造になっている。
【0070】
また、活性層111、ならびに、クラッド層112および113の材料としては、青紫色領域〜近紫外領域の励起光を得る為にはAlInGaNから成る混晶半導体が用いられる。一般に半導体レーザの活性層・クラッド層としては、Al、Ga、In、As、P、N、Sbを主たる組成とする混晶半導体が用いられ、そのような構成としても良い。また、Zn、Mg、S、Se、TeおよびZnO等のII−VI属化合物半導体によって構成されていてもよい。
【0071】
また、活性層111は、注入された電流により発光が生じる領域であり、クラッド層112およびクラッド層113との屈折率差により、発光した光が活性層111内に閉じ込められる。
【0072】
さらに、活性層111には、誘導放出によって増幅される光を閉じ込めるために互いに対向して設けられる表側へき開面114・裏側へき開面115が形成されており、この表側へき開面114・裏側へき開面115が鏡の役割を果す。
【0073】
ただし、完全に光を反射する鏡とは異なり、誘導放出によって増幅される光の一部は、活性層111の表側へき開面114・裏側へき開面115(本実施の形態では、便宜上表側へき開面114とする)から出射され、励起光L0となる。なお、活性層111は、多層量子井戸構造を形成していてもよい。
【0074】
なお、表側へき開面114と対向する裏側へき開面115には、レーザ発振のための反射膜(図示せず)が形成されており、表側へき開面114と裏側へき開面115との反射率に差を設けることで、低反射率端面である、例えば、表側へき開面114より励起光L0の大部分を発光点103から照射されるようにすることができる。
【0075】
クラッド層113・クラッド層112は、n型およびp型それぞれのGaAs、GaP、InP、AlAs、GaN、InN、InSb、GaSb、およびAlNに代表されるIII−V属化合物半導体、ならびに、ZnTe、ZeSe、ZnSおよびZnO等のII−VI属化合物半導体のいずれの半導体によって構成されていてもよく、順方向バイアスをアノード電極17およびカソード電極19に印加することで活性層111に電流を注入できるようになっている。
【0076】
クラッド層113・クラッド層112および活性層111などの各半導体層の膜形成については、MOCVD(有機金属化学気相成長)法やMBE(分子線エピタキシー)法、CVD(化学気相成長)法、レーザアブレーション法、スパッタ法などの一般的な成膜手法を用いて構成できる。各金属層の膜形成については、真空蒸着法やメッキ法、レーザアブレーション法、スパッタ法などの一般的な成膜手法を用いて構成できる。
【0077】
(非球面レンズ3)
次に、非球面レンズ3は、各半導体レーザ2から発振されたレーザ光を、導光部4の一方の端部である光入射面4aに入射させるためのレンズである。例えば、非球面レンズ3として、アルプス電気製のFLKN1 405を用いることができる。上述の機能を有するレンズであれば、非球面レンズ3の形状および材質は特に限定されないが、405nm近傍の透過率が高く、かつ、耐熱性のよい材料であることが好ましい。
【0078】
なお、非球面レンズ3は、半導体レーザ2から発振されたレーザ光を収束させ、比較的小さな(例えば、直径1mm以下)光入射面に導くためのものである。そのため、導光部4の光入射面4aが、レーザ光を収束させる必要のない程度に大きい場合には、非球面レンズ3を設ける必要はない。
【0079】
(導光部4)
次に、導光部4は、半導体レーザ2が発振したレーザ光を集光して発光体5(発光体5のレーザ光照射面)へと導く円錐台状の導光部材であり、非球面レンズ3を介して(または、直接的に)半導体レーザ2と光学的に結合している。導光部4は、半導体レーザ2が出射したレーザ光を受光する光入射面4a(入射端部)と当該光入射面4aにおいて受光したレーザ光を発光体5へ出射する光出射面4b(出射端部)とを有している。
【0080】
光出射面4bの面積は、光入射面4aの面積よりも小さい。そのため、光入射面4aから入射した各レーザ光は、導光部4の側面に反射しつつ前進することにより収束されて光出射面4bから出射される。
【0081】
導光部4は、BK7(ボロシリケートクラウンガラス)、石英ガラス、アクリル樹脂その他の透明素材で構成する。また、光入射面4aおよび光出射面4bは、平面形状であっても曲面形状であってもよい。
【0082】
なお、導光部4は、角錐台状であってもよく、光ファイバーであってもよく、半導体レーザ2からのレーザ光を発光体5に導くものであればよい。また、導光部4を設けずに、半導体レーザ2からのレーザ光を、非球面レンズ3を介して、または、直接に発光体5に照射してもよい。半導体レーザ2と発光体5との間の距離が短い場合には、このような構成が可能になる。
【0083】
(発光体5)
次に、図2を用いて、発光体5の組成の具体例について説明する。図2(a)は、本実施形態の発光体5の組成の一例を模式的に示す図である。また、図2(b)および(c)は、本実施形態の発光体5の組成の他の一例を模式的に示す図である。なお、これらの図は、発光体5の各構成要素の形状およびサイズを実際に即して描画したものではなく、単に発光体5の組成を模式的に示した図に過ぎない。
【0084】
一般に、照明光として用いられる白色(または擬似白色)光は、等色の原理を満たす3つの色の混色、または補色の関係を満たす2つの色の混色などで実現できる。この等色または補色の原理・関係に基づき、例えば、発光体5に含まれる複数の蛍光体のそれぞれが発する蛍光の色の混色で白色(または擬似白色)光を実現できる。
【0085】
例えば、図2(a)に示す例では、発光体5は、青色発光蛍光体58(第1の蛍光体)、黄色発光蛍光体59(第2の蛍光体)が、封止材56の中に、分散されたものとなっている(すなわち、発光体5は、それぞれの蛍光体が混合されて形成されている)。
【0086】
青色発光蛍光体58は、励起光の波長領域(第1波長領域)よりも長波長側の第2波長領域、すなわち、440nm以上490nm以下の波長範囲にピーク波長を有する蛍光体である。黄色発光蛍光体59は、青色発光蛍光体58から発する青色光によって励起される蛍光体である。
【0087】
また、青色発光蛍光体58が、第1波長領域内に吸収スペクトルの谷を持っておらず、青色発光蛍光体58以外の蛍光体が、第1波長領域内に吸収スペクトルの谷を持っている。すなわち、黄色発光蛍光体59は、青色発光蛍光体58よりも励起光を吸収しない確率が高く、励起光を散乱または拡散する確率が高い。よって、発光体5の内部において、励起光の不要な吸収を抑制しつつ、黄色発光蛍光体59が存在しなければ、そのまま外部に放出されたかもしれない励起光が、黄色発光蛍光体59によって散乱または拡散されるため、発光体5の内部における励起光の散乱効率が向上する。
【0088】
また、黄色発光蛍光体59は、上述したように、青色発光蛍光体58から発生する青色光によって励起される。これにより、黄色発光蛍光体59も蛍光を発することができる。よって、青色発光蛍光体58の蛍光と黄色発光蛍光体59の蛍光とを照明光として、外部に放出することができる。以上より、発光体5によれば、発光体5全体として発光効率が向上する。
【0089】
よって、発光体5の内部における励起光の不要な吸収を抑制しつつ散乱効率を高めて発光効率を向上させることができる。
【0090】
なお、発光体5の内部における励起光の散乱効率を向上させるためには、発光体5の内部に散乱微粒子などを分散させることも考えられる。しかしながら、発光体5全体に対する蛍光体の割合が低下し、逆に発光効率が低下してしまう可能性がある。
【0091】
さらに、発光体5は、副次的効果として、黄色発光蛍光体59に対する青色発光蛍光体58の重量比を調整することで、照明光の色(色度)や演色性の調節を行うことができる。
【0092】
以上のように、発光体5は、青色発光蛍光体58と、黄色発光蛍光体59との組合せを含んでいるので、(擬似)白色光を実現することができる。
【0093】
具体的には、発光体5に対して、近紫外領域から青紫色領域の(350nm以上420nm未満の波長を有する)励起光を照射することにより、発光体5から発生する照射光が、発光効率のよい(擬似)白色光となる。
【0094】
なお、各蛍光体を封止する封止材56は、低融点の無機ガラスであることが好ましいが、極端に高出力・高光密度での励起光を用いないのであれば、シリコーン樹脂などの樹脂や、有機ハイブリッドガラスであっても良い。なお、発光体5は、各蛍光体が封止材の中に分散されたものであることが好ましい。各蛍光体のみを押し固めた場合には、レーザ光が照射されることにより生じる発光体5の劣化が促進される可能性があるからである。
【0095】
ここで、以下、簡単のため、青色領域にピーク波長を有する蛍光を発生する蛍光体を、青色発光蛍光体と呼ぶ。また、黄色領域にピーク波長を有する蛍光を発生する蛍光体を黄色発光蛍光体と呼ぶ。
【0096】
また、「青色光」は、例えば、440nm以上490nm以下の波長範囲にピーク波長を有する蛍光である。「黄色光」は、例えば、560nm以上590nm以下の波長範囲にピーク波長を有する蛍光である。
【0097】
図2(b)に示す例では、発光体5は、封止材56の中に分散されている青色発光蛍光体58(第1の蛍光体)および黄色発光蛍光体59(第2の蛍光体)は、独立して、別々に構成されている。具体的には、青色発光蛍光体58(第1の蛍光体)を、黄色発光蛍光体59(第2の蛍光体)が取り囲むように構成されている。
【0098】
なお、図2(b)では、青色発光蛍光体58および黄色発光蛍光体の断面形状は、それぞれ円形および円環形であるが、これらの蛍光体の断面形状は、円形および円環形に限定されない。例えば、青色発光蛍光体58および黄色発光蛍光体の断面形状は、それぞれ四角形および四角環形、あるいは、その他の多角形および多角環形などであっても良い。
【0099】
これにより、発光体5は、青色発光蛍光体58および黄色発光蛍光体59が独立して、別々に存在している場合であっても、発光体の発光効率を高くすることができる。
【0100】
図2(c)に示す例では、発光体5は、図2(b)の構成と同様に、封止材56の中に分散されている青色発光蛍光体58および黄色発光蛍光体59は、独立して、別々に構成されている。具体的には、青色発光蛍光体58を、黄色発光蛍光体59が取り囲むように構成されている。その周りをまた、青色発光蛍光体58が取り囲んでいる。
【0101】
なお、図2(c)では、図2(b)と同様に、青色発光蛍光体58および黄色発光蛍光体59の断面形状は、それぞれ円形および円環形であるが、これらの蛍光体の断面形状は、円形および円環形に限定されない。例えば、青色発光蛍光体58および黄色発光蛍光発光体の断面形状は、それぞれ四角形および四角環形などであっても良い。
【0102】
これにより、発光体5は、青色発光蛍光体58および黄色発光蛍光体59が独立して、別々に存在している場合であっても、発光体の発光効率を高くすることができる。
【0103】
青色発光蛍光体58および黄色発光蛍光体59の重量比について説明する。青色発光蛍光体58の黄色発光蛍光体59に対する重量比は、1以上、5以下であることが好ましい。この比率にすることによって、好適な発光効率、色度および演色性を有する発光体を実現することができる。
【0104】
次に、青色発光蛍光体58および黄色発光蛍光体59の具体例について説明する。
【0105】
(青色発光蛍光体58)
青色発光蛍光体58の具体例としては、Euで賦活したバリウムアルミン酸マグネシウム蛍光体、BaMgAl1017:Eu(以下、「BAM蛍光体」と略称する)を例示することができる。このBAM蛍光体は、455nmの発光ピーク波長を有するものである。
【0106】
また、その他の例としては、例えばJEM相を含む酸窒化物系の蛍光体(JEM相蛍光体)を例示することができる。JEM相蛍光体は、希土類元素によって安定化されたサイアロン蛍光体を調整するプロセスにおいて生成することが確認された物質である。また、JEM相は、窒化珪素系材料の粒界相として発見されたセラミックスであり、一般的に、組成式MAl(Si6−zAl)N10−z(ただし、MはLa、Ce、Pr、Nd、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb及びLuからなる群から選択される少なくとも1種の元素)で表され、zをパラメータとする組成からなる特有な原子配列を有する結晶相(酸窒化物結晶)である。JEM相は、結晶の共有結合性が強いため耐熱性に優れている。
【0107】
特に、Ce3+賦活のJEM相蛍光体(JEM相:Ce蛍光体)であることが好ましい。JEM相蛍光体にCe成分が含まれることにより、350nm〜400nm近傍の励起光を吸収し、青色から青緑色にかけての発光を得やすくなるとともに、発光の半値幅もブロードとなるため、例えば暗所視における比視感度の高い波長域を十分カバーすることができる。また、JEM相:Ce蛍光体は、励起波長が360nmのとき、ピーク波長が480nmであり、そのときの発光効率は60%である。また、励起波長が405nmのとき、ピーク波長が490nmであり、そのときの発光効率は50%である。
【0108】
(黄色発光蛍光体59)
黄色発光蛍光体59の具体例としては、セリウム(Ce)で賦活したイットリウム(Y)−アルミニウム(Al)−ガーネット(Garnet)系の蛍光体であるYAG:Ce蛍光体や、テルビウム(Tb)−アルミニウム(Al)−ガーネット(Garnet)系の蛍光体である、TAG:Ce蛍光体などが挙げられる。
【0109】
YAG:Ce蛍光体は、550nm付近(550nmよりも若干長波長側)に発光ピークが存在するブロードな発光スペクトルをもつ。また、図3に示すように、360nm〜420nm付近(第1波長領域)の波長範囲に吸収スペクトルの谷を持っている。言い換えれば、前記の波長領域内で、光の吸収率が低くなっている。すなわち、YAG:Ce蛍光体は、青色発光蛍光体58よりも本実施形態における励起光を吸収しない確率が高く、励起光を散乱または拡散する確率が高い。よって、発光体5の内部において、励起光の不要な吸収を抑制しつつ、YAG:Ce蛍光体が存在しなければ、そのまま外部に放出されたかもしれない励起光が、YAG:Ce蛍光体によって散乱または拡散されるため、発光体5の内部における励起光の散乱効率が向上する。
【0110】
次に、TAG:Ce蛍光体は、570nm付近に発光ピークが存在する発光スペクトルをもつ。また、図4に示すように、350nm〜420nm付近の波長範囲(第1波長領域内)に吸収スペクトルの谷を持っている。言い換えれば、前記の波長領域内で、光の吸収率が低くなっている。すなわち、TAG:Ce蛍光体は、青色発光蛍光体58よりも本実施形態における励起光を吸収しない確率が高く、励起光を散乱または拡散する確率が高い。よって、発光体5の内部において、励起光の不要な吸収を抑制しつつ、TAG:Ce蛍光体が存在しなければ、そのまま外部に放出されたかもしれない励起光が、TAG:Ce蛍光体によって散乱または拡散されるため、発光体5の内部における励起光の散乱効率が向上する。
【0111】
次に、図3および図4の各グラフについて説明する。図3および図4は、それぞれYAG:Ce蛍光体およびTAG:Ce蛍光体の、内部量子効率、吸収率、および外部量子効率を示すグラフである。これらのグラフは、横軸は、波長を表し、縦軸は、それぞれの効率(内部量子効率、吸収率、および外部量子効率)を表している。これらのグラフを参考にすることによって、それぞれの蛍光体が、どのような波長の光を吸収しやすいのかが分かる。
【0112】
例えば、図3のYAG:Ce蛍光体であれば、360nm〜410nm辺りの吸収率が低くなっている。つまり、YAG:Ce蛍光体を用いるときには、360nm〜410nmに含まれる範囲(第1波長領域)の波長を有するレーザ光を励起光として用いるのが好ましい。
【0113】
また、図4のTAG:Ce蛍光体であれば、350nm〜420nm辺りの吸収率が低くなっている。つまり、TAG:Ce蛍光体を用いる時は、350nm〜420nmに含まれる範囲(第1波長領域)の波長を有するレーザ光を励起光として用いるのが好ましい。
【0114】
次に、図5のグラフについて説明する。同図は、JEM層:Ce蛍光体の吸収率(効率)を示すグラフである。同グラフは、横軸は、波長を表し、縦軸は、吸収率を表している。同グラフを参考にすることによって、JEM層:Ce蛍光体が、300nm〜420nm辺りで吸収率が高くなっており、300nm〜420nm辺りの波長の光を吸収しやすいことが分かる(300nm〜420nm辺りの波長領域で吸収の谷を持たない)。また、逆に、YAG:Ce蛍光体やTAG:Ce蛍光体の発光ピークである550nm〜570nm付近の吸収が少ないことから、YAG:Ce蛍光体やTAG:Ce蛍光体から発せられる蛍光を、JEM層:Ce蛍光体によって吸収されることなく発光体の外部に放出させることができる。
【0115】
(複数の蛍光体と色度との関係について)
次に、図6を用いて、発光体5に含まれる複数の蛍光体と色度との関係について説明する。図6は、照明光の色度範囲を示すグラフである。
【0116】
ここでは、発光体5に含まれる複数の蛍光体の例として、JEM相:Ce蛍光体(ピーク波長:約480nm、点36参照)、YAG:Ce蛍光体(ピーク波長:約550nm、点31参照)、TAG:Ce蛍光体(ピーク波長:約570nm、点32参照)、およびBAM蛍光体(ピーク波長:約455nm、点37参照)を用いて説明する。
【0117】
同図の曲線33は、色温度(K:ケルビン)を示すものである。また、同図に示す6つの点35を頂点とする多角形は、法律により規定されている車両用前照灯に要求される白色光の色度範囲を示す。
【0118】
ここで、例えば、BAM蛍光体およびTAG:Ce蛍光体の2種類の蛍光体の配合比を調整することにより、点32および点37を結ぶ直線38で示される色度範囲に含まれる、任意の色度の照明光を放射できる発光体5の製造が可能である。
【0119】
また、前記直線38で示される色度範囲は、前記車両用前照灯に要求される白色光の色度範囲と重複している。よって、前記の2種類の蛍光体の配合比を調整することにより、車両用前照灯に好適な発光体5を製造することも可能である。
【0120】
なお、発光体5に含まれる複数種類の蛍光体が前記の2種類の蛍光体の組合せでない場合でも、各蛍光体の材料や種類数などに関わらず、前記車両用前照灯に要求される白色光の色度範囲に含まれる色度の照明光を放射できるように、発光体5に含まれる各蛍光体の配合比を調整すれば良い。これにより、発光体5に含まれる各蛍光体の材料や種類数などに関わらず、車両用前照灯に好適な発光体5を製造することも可能である。
【0121】
(発光体5の配置および形状)
発光体5は、透過フィルタ7の内側(光出射面4bが位置する側)の面において、反射鏡6の焦点位置またはその近傍に固定されている。発光体5の位置の固定方法は、この方法に限定されず、反射鏡6から延出する棒状または筒状の部材(透明であることが好ましい)によって発光体5の位置を固定してもよい。
【0122】
発光体5の形状は、特に限定されず、直方体であっても、円柱状であってもよい。ヘッドランプ1では、円柱状である。この円柱状の発光体5は、直径2mm、厚み(高さ)0.8mmの円柱状である。
【0123】
また、発光体5にレーザ光が照射される面であるレーザ光照射面は、平面である必要は必ずしもなく、曲面であってもよい。ただし、レーザ光の反射を制御するためには、レーザ光照射面は、レーザ光の光軸に対して垂直な平面であることが好ましい。
【0124】
また、円柱状の発光体5の厚みは0.8mmでなくともよい。また、ここで必要とされる発光体5の厚みは、発光体5における封止材と蛍光体との割合に従って変化する。発光体5における蛍光体の含有量が多くなれば、レーザ光が白色光に変換される効率が高まるため円柱状の発光体5の厚みを薄くできる。
【0125】
(反射鏡6)
反射鏡6は、発光体5が出射した蛍光(照明光)を反射することにより、所定の立体角内を進む光線束を形成するものである。すなわち、反射鏡6は、発光体5からの光を反射することにより、ヘッドランプ1の前方へ進む光線束を形成する。この反射鏡6は、例えば、金属薄膜がその表面に形成された曲面形状(カップ形状)の部材であり、反射した光の進行方向に開口している。
【0126】
(透過フィルタ7)
透過フィルタ7は、反射鏡6の開口部を覆う透明な樹脂板であり、発光体5を保持している。この透過フィルタ7は、半導体レーザ2からのレーザ光を遮断するとともに、発光体5においてレーザ光を変換することにより生成された(擬似)白色光(インコヒーレントな光)を透過する材質で形成することが好ましく、樹脂板以外に無機ガラス板等も使用できる。透過フィルタ7としては、例えば五鈴精工硝子社製のITY418がある。
【0127】
発光体5によってコヒーレントな成分を多く含むレーザ光は、そのほとんどがインコヒーレントな(擬似)白色光に変換され、また、黄色発光蛍光体59によって散乱・拡散される。しかし、何らかの原因でレーザ光の一部が白色光に変換されず、散乱も拡散もされない場合も考えられる。このような場合でも、透過フィルタ7によって半導体レーザ2から直接放射されたレーザ光を遮断することにより、非常に小さな発光点を有する半導体レーザ2から出射されたレーザ光が外部に漏れることを防止できる。
【0128】
ただし、透過フィルタ7は、レーザ光すべてを遮断し、発光体5から出射される蛍光すべてを透過するものでなくてもよい。すなわち、透過フィルタ7は、人体に有害な、レーザ光を出射する半導体レーザ2からの直接光(半導体レーザ2の発光点そのもの)を直視できない程度に減衰され、透過量が安全なレベルであれば、その成分全てが遮断できなくてもよく、ヘッドランプ1の白色光として十分な光量(あるいは十分に高い色温度)の蛍光が出射されていれば、蛍光すべてを透過できなくてもよい。
【0129】
このように、ヘッドランプ1では、発光体5が半導体レーザ2から出射されたレーザ光を受けて発光し、その蛍光が透過フィルタ7を介して出射される。このとき、レーザ光は透過フィルタ7によって遮断されるため外部に漏れない。これにより、蛍光に変換されなかった(あるいは散乱・拡散されなかった)レーザ光が外部に出射されることによって人間の目が損傷されるのを防ぐことができる。
【0130】
また、励起光源がLEDである場合には、LEDからの光は半導体レーザ2に比べて非常に大きな発光点サイズであるために、当該光を遮断する必要が小さくなる。このため、LEDから出射される光をそのまま照明装置の外部に出射しても問題ないケースが大半である。一方、励起光源が半導体レーザ2である場合には、上述のように、非常に小さな発光点を有する半導体レーザ2からの光は、そのまま人体の眼に入射すると危険性が高いので、当該半導体レーザ2の発光点からの直接光を遮断する必要がある。そのため、本実施形態では、透過フィルタ7が設けられている。
【0131】
つまり、励起光源としてLEDを用いる場合には、LEDから出射される光を外部に出射して色温度を高めることが容易である。一方、本実施形態のように、半導体レーザ2を用いる場合には、透過フィルタ7による色温度の低下および前記の安全性を考慮して設計する必要がある。
【0132】
(発光体5の発光原理)
次に、半導体レーザ2から発振されたレーザ光による蛍光体の発光原理について説明する。
【0133】
まず、半導体レーザ2から発振されたレーザ光が発光体5に含まれる蛍光体に照射されることにより、蛍光体内に存在する電子が低エネルギー状態から高エネルギー状態(励起状態)に励起される。
【0134】
その後、この励起状態は不安定であるため、蛍光体内の電子のエネルギー状態は、一定時間後にもとの低エネルギー状態(基底準位のエネルギー状態または励起準位と基底準位との間の準安定準位のエネルギー状態)に遷移する。
【0135】
このように、高エネルギー状態に励起された電子が、低エネルギー状態に遷移することによって蛍光体が発光する。
【0136】
〔ヘッドランプ20の構成〕
本発明の他の実施形態であるヘッドランプ(照明装置,前照灯)20について図8および図9に基づいて説明すれば、以下のとおりである。なお、ヘッドランプ1と同様の部材に関しては、同じ符号を付し、その説明を省略する。ここでは、プロジェクタ型のヘッドランプ20について説明する。
【0137】
(ヘッドランプ20の構成)
まず、本実施形態に係るヘッドランプ20の構成について図8を用いて説明する。図8は、プロジェクタ型のヘッドランプであるヘッドランプ20の構成を示す断面図である。このヘッドランプ20は、プロジェクタ型のヘッドランプである点、ならびに、導光部4の代わりに光ファイバー束(導光部)40を備えた点でヘッドランプ1とは異なる。光ファイバー束40は、複数の光ファイバー(導光部)40aの束であり、光ファイバー40aのそれぞれは、レーザ光が入射する入射端部と、レーザ光を出射する出射端部とを有している。
【0138】
同図に示すように、ヘッドランプ20は、半導体レーザ2、非球面レンズ3、光ファイバー束40、フェルール9、発光体5、反射鏡6、透過フィルタ(光学フィルタ)7、ハウジング10、エクステンション11、レンズ12、凸レンズ13およびレンズホルダ8を備えている。半導体レーザ2、光ファイバー束40、フェルール9および発光体5によって発光装置の基本構造が形成されている。
【0139】
ヘッドランプ20は、プロジェクタ型のヘッドランプであるため、凸レンズ13を備えている。その他のタイプのヘッドランプ(例えば、セミシールドビームヘッドランプ)に本発明を適用してもよく、その場合には凸レンズ13を省略できる。
【0140】
(非球面レンズ3)
非球面レンズ3は、上述したとおりであるが、本実施形態では、半導体レーザ2から発振されたレーザ光(励起光)を、光ファイバー40aの一方の端部である入射端部に入射させるためのレンズとなっている。また、非球面レンズ3は、光ファイバー40aの数だけ設けられている。
【0141】
(光ファイバー束40)
光ファイバー束40は、半導体レーザ2が発振したレーザ光を発光体5へと導く導光部材である。光ファイバー束40の各光ファイバー40aは、中芯のコアを、当該コアよりも屈折率の低いクラッドで覆った2層構造をしている。コアは、レーザ光の吸収損失がほとんどない石英ガラス(酸化ケイ素)を主成分とするものであり、クラッドは、コアよりも屈折率の低い石英ガラスまたは合成樹脂材料を主成分とするものである。
【0142】
例えば、光ファイバー40aは、コアの径が200μm、クラッドの径が240μm、開口数NAが0.22の石英製のものであるが、光ファイバー40aの構造、太さおよび材質は上述のものに限定されず、光ファイバー40aの長軸方向に対して垂直な断面は矩形であってもよい。
【0143】
光ファイバー40aは、前記レーザ光を受け取る複数の入射端部と、入射端部から入射したレーザ光を出射する複数の出射端部とを有している。複数の光ファイバー40aのそれぞれの出射端部は、後述するように、フェルール9によって、発光体5のレーザ光照射面(受光面)に対して位置決めされている。
【0144】
(フェルール9)
図9は、光ファイバー束40の各光ファイバー40aの出射端部と発光体5との位置関係を示す図である。同図に示すように、フェルール9は、光ファイバー40aの出射端部を発光体5のレーザ光照射面に対して所定のパターンで保持する。このフェルール9は、光ファイバー40aを挿入するための孔が所定のパターンで形成されているものでもよいし、上部と下部とに分離できるものであり、上部および下部の接合面にそれぞれ形成された溝によって光ファイバー40aを挟み込むものでもよい。
【0145】
フェルール9の材質は、特に限定されず、例えばステンレススチールである。なお、図9では、光ファイバー40aを3つ示しているが、光ファイバー40aの数は3つに限定されない。また、フェルール9は、反射鏡6から延出する棒状の部材等によって固定されればよい。
【0146】
フェルール9が光ファイバー40aの出射端部を位置決めすることにより、複数の光ファイバー40aから出射されるレーザ光がそれぞれ有する光強度分布における最も光強度の大きい部分(最大光強度部分)が、発光体5の互いに異なる部分に対して照射される。この構成により、レーザ光が一点に集中することにより発光体5が著しく劣化することを防止できる。なお、出射端部は、レーザ光照射面に接触していてもよいし、僅かに間隔をおいて配置されてもよい。
【0147】
なお、各光ファイバー40aの出射端部を分散させて配置する必要は必ずしもなく、光ファイバー40aの束をひとまとめにしてフェルール9で位置決めしてもよい。
【0148】
(発光体5)
発光体5は、上述したものと同様、各光ファイバー40aの出射端部から出射されたレーザ光を受けて(擬似)白色の蛍光を発するものであり、青色発光蛍光体58および黄色発光蛍光体59を含むものである。また、ヘッドランプ20の発光体5の形状は直方体であり、横×縦×高さ=3mm×1mm×1mm程度の大きさである。発光体5は、後述する反射鏡6の第1焦点の近傍に配置される。この発光体5は、反射鏡6の中心部を貫いて延びる筒状部の先端に固定されてもよい。この場合には、筒状部の内部に光ファイバー束40を通すことができる。
【0149】
(反射鏡6)
反射鏡6は、例えば、金属薄膜がその表面に形成された部材であり、発光体5から出射した光を反射することにより、当該光をその焦点に収束させる。ヘッドランプ20がプロジェクタ型のヘッドランプであるため、反射鏡6の基本形状は、反射した光の光軸方向に平行な断面が楕円形状となっている。反射鏡6には、第1焦点と第2焦点とが存在し、第2焦点は、第1焦点よりも反射鏡6の開口部に近い位置に存在している。後述する凸レンズ13は、その焦点が第2焦点の近傍に位置するように配置されており、反射鏡6によって第2焦点に収束された光を前方に投射する。
【0150】
(透過フィルタ7)
透過フィルタ7は、上述したものと同様、励起光を遮断し、発光体5から出射される蛍光を透過するものであり、発光体5を保持している。この透過フィルタ7を備えることにより、半導体レーザ2から放射されたレーザ光が直接的に外部に漏れることを防止できる。
【0151】
(凸レンズ13)
凸レンズ13は、発光体5から出射された光を集光し、集光した光をヘッドランプ1の前方へ投影する。凸レンズ13の焦点は、反射鏡6の第2焦点の近傍であり、その光軸は、発光体5が有する発光面のほぼ中央を貫いている。この凸レンズ13は、レンズホルダ8によって保持され、反射鏡6に対する相対位置が規定されている。なお、レンズホルダ8を、反射鏡6の一部として形成してもよい。
【0152】
(その他の部材)
ハウジング10は、ヘッドランプ20の本体を形成しており、反射鏡6等を収納している。光ファイバー束40は、このハウジング10を貫いており、半導体レーザ2は、ハウジング10の外部に設置される。半導体レーザ2は、レーザ光の発振時に発熱するが、ハウジング10の外部に設置することにより半導体レーザ2を効率良く冷却することが可能となる。また、半導体レーザ2は、故障する可能性があるため、交換しやすい位置に設置することが好ましい。これらの点を考慮しなければ、半導体レーザ2をハウジング10の内部に収納してもよい。
【0153】
エクステンション11は、反射鏡6の前方の側部に設けられており、ヘッドランプ20の内部構造を隠して見栄えを良くするとともに、反射鏡6と車体との一体感を高めている。このエクステンション11も反射鏡6と同様に金属薄膜がその表面に形成された部材である。
【0154】
レンズ12は、ハウジング10の開口部に設けられており、ヘッドランプ20を密封している。発光体5が発した光は、レンズ12を通ってヘッドランプ1の前方へ出射される。
【0155】
以上のように、ヘッドランプの構造そのものは、どのようなものであってもよく、本発明において重要なのは、発光体5の組成において、青色発光蛍光体58と、青色発光蛍光体58から発生する蛍光によって励起される黄色発光蛍光体59とを少なくとも含み、青色発光蛍光体58が、第1波長領域内に吸収スペクトルの谷を持っておらず、青色発光蛍光体58以外の蛍光体が、第1波長領域内に吸収スペクトルの谷を持っていれば良い。
【0156】
〔ヘッドランプ30の構成〕
本発明のさらに他の実施形態であるヘッドランプ(照明装置,前照灯)30について、図10および図11に基づいて説明すれば、以下のとおりである。なお、ヘッドランプ1または20と同様の部材に関しては、同じ符号を付し、その説明を省略する。本実施の形態では、発光体5が透過フィルタ7ではなく、反射鏡6に保持されている構成について説明する。図10は、本実施の形態に係るヘッドランプ1の概略構成を示す断面図であり、図11は、発光体5と光ファイバー束40の出射端部40rとの位置関係を示す図である。
【0157】
図10に示すように出射端部40rは、レーザ光照射面(受光面)5aに接触していてもよいし、図8に示すように僅かに間隔を置いて配置されてもよい。ここで、出射端部40rがレーザ光照射面5aと僅かに間隔を置いて配置されている場合、ヘッドランプ20に対する衝撃により、出射端部40rから出射されたレーザ光がレーザ光照射面5aに適切に照射されない可能性がある。この場合、レーザ光が発光体5によってインコヒーレントな光に変換されることなく、反射鏡6から出射されてしまうことになる。例えば、図8のように発光体5が透過フィルタ7に設けられている場合には、反射鏡6と透過フィルタ7とで囲まれた空間(反射鏡6と、反射鏡6の開口部とが形成する空間)中をレーザ光が伝播し、反射鏡6から出射される。
【0158】
つまり、出射端部40rがレーザ光照射面5aと僅かに間隔を置いて配置されている場合(特に図8の構成の場合)には、人体にとって有害な出力レベルのコヒーレントなレーザ光が、ヘッドランプ20の外部(前方)に出射されてしまう可能性がある。特に、半導体レーザ2が出射するレーザ光は高出力であるため、ヘッドランプ1の外部、特に前方に出射されてしまうことを防ぐ必要がある。
【0159】
この点を考慮すれば、出射端部40rとレーザ光照射面5aとは接触している(近接している)か、もしくはレーザ光の光路が覆われていることが好ましい。すなわち、出射端部40rとレーザ光照射面5aとが離間している場合に形成される、その間のレーザ光の光路と、その光路の外の空間(例えば、前記反射鏡6と透過フィルタ7とで囲まれた空間)とを空間的に遮断することが好ましい。
【0160】
図10では、反射鏡6の底部には、出射端部40rが挿入される中空部6aが形成されており、その中空部6aの中心に、発光体5のレーザ光照射面5aの中心が位置するように、発光体5が設けられている。また、出射端部40rを保持するフェルール9が中空部6aに挿入されている。つまり、図10では、反射鏡6の中空部6aにおいて、レーザ光照射面5aと出射端部40rとが近接している。
【0161】
レーザ光照射面5aと出射端部40rとが近接することにより、出射端部40rから出射されたレーザ光を確実にレーザ光照射面5aに照射できる。このため、例えばヘッドランプ30が何らかの衝撃を受けた場合に、人体にとって有害な出力レベルのレーザ光がレーザ光照射面5aに照射されずに(すなわち、レーザ光がインコヒーレントな光に変換されずに)直接外部に漏れ出てしまうのを防ぐことができる。それゆえ、安全性の高いヘッドランプ30を実現できる。
【0162】
また、前記反射鏡6と透過フィルタ7とで囲まれる空間(領域)をレーザ光が伝播することを防ぐ目的であれば、レーザ光照射面5aと出射端部40rとが近接していなくてもよい。すなわち、発光体5が、レーザ光照射面5aが、反射鏡6と反射鏡6の開口部とが形成する空間の外側となるように設けられていればよい。なお、前記「空間の外側」は、前記空間の境界面と前記空間の外部とを含む概念である。
【0163】
例えば、図10および図11では、レーザ光照射面5aが、発光体5から出射された光を反射する反射鏡6の反射面と少なくとも同一面(反射鏡6の外部に面した側、すなわち前記空間の外側)となるように、発光体5が設けられている。また、発光体5自体が、反射鏡6の外部であって、ヘッドランプ30の内部に設けられていてもよい。この場合、例えば、中空部6aを延伸した筒(当該筒の材質は、レーザ光を遮断する材質)の内部に、発光体5が備えられる。さらに、発光体5の一部が前記空間内に存在し、レーザ光照射面5aが当該空間の外部(中空部6aの内部)に存在してもよい。この場合、レーザ光照射面5aの形状および大きさは、中空部6aの開口面の形状および大きさに一致している。
【0164】
このような構成の場合、発光体5が、高出力のレーザ光を前記空間の内部で受光することがない。すなわち、人体にとって有害な出力レベルのレーザ光が前記空間を伝播して、ヘッドランプ30の光の照射方向に漏れ出てしまうことを防ぐことができる。また、例えばヘッドランプ30が何らかの衝撃を受けたときに、レーザ光がレーザ光照射面5aに照射されない事態が生じた場合であっても、レーザ光が、少なくとも前記光の照射方向に直接漏れ出てしまう事態を防ぐことができる。
【0165】
なお、図10では、中空部6aは、反射鏡6の底部に形成されているが、これに限らず、反射鏡6のどの位置に形成されてもよい。
【0166】
また、発光体5は、中空部6aを完全に覆うように配置されている。これにより、出射端部40rから出射されたレーザ光が反射鏡6と透過フィルタ7とで囲まれる領域に出射され、反射鏡6の開口部から出射されてしまうことを防ぐことができる。このため、中空部6aは、レーザ光照射面5aの大きさ以下(レーザ光照射面5aが3mm×1mmの矩形の場合、中空部6aの開口面は3mm以下)となるように形成されている。なお、発光体5が中空部6aを完全に覆うことができれば、中空部6aの形状は、レーザ光照射面5aと必ずしも同じ形状でなくてよい。
【0167】
なお、前記反射鏡6と透過フィルタ7とで囲まれる空間をレーザ光が伝播することを確実に防ぐためには、(1)発光体5を、透過フィルタ7ではなく反射鏡6に保持し、(2)レーザ光照射面5aと出射端部40rとを近接させ、(3)発光体5が中空部6aを完全に覆うように配置されることが好ましい。
【0168】
図11に示すように、発光体5とフェルール9とは、放熱部材61を介して設けられている。すなわち、レーザ光照射面5aと出射端部40rとは、放熱部材61を介して近接している。
【0169】
放熱部材61は、発光体5にレーザ光が照射されることにより、発光体5にて発生する熱を放散するものであり、レーザ光照射面5aと接して設けられている。放熱部材61の材質は、透明でかつ熱伝導率が高い材質、例えば窒化ガリウムやマグネシア(MgO)、サファイアなどが用いられる。
【0170】
また、放熱部材61は、板状の部材であり、中空部6aの開口面を覆うように中空部6aの内部に設けられている。放熱部材61の一方の表面(レーザ光出射面)にはレーザ光照射面5aが熱的に結合するように接着され、もう一方の表面(レーザ光受光面)には出射端部40rが接触または近接するように、発光体5と出射端部40rとが配置されている。
【0171】
なお、放熱部材61の形状は、発光体5にて発生する熱を、例えば反射鏡6に放散することができれば、中空部6aの開口面を覆うような形状には限られない。すなわち、レーザ光照射面5aの一部に接する、反射鏡6から延出する棒状、筒状を含む線状の部材であってもよい。
【0172】
例えば、放熱部材61が線状の部材であり、光軸中心から離れた位置(レーザ光照射面5aの端部)にのみ設けられている場合には、必ずしも透明である必要はない。ただし、レーザ光の利用効率の観点からいえば、透明であることが好ましい。また、放熱部材61を筒状として、レーザ光照射面5aの端部にのみ設けた場合であれば、その筒の中を液体、あるいは気体等を流す、あるいは、循環させることで、より放熱効果を高めることも可能である。
【0173】
一般に、蛍光体を含む微小な発光体をハイパワーの励起光で励起すると(すなわち高いパワー密度で発光体を励起すると)、発光体が激しく劣化するという問題が生ずる。
【0174】
発光体を劣化させる原因の1つとして、励起光が照射される当該発光体の照射領域およびその近傍の領域(昇温領域と称する)における温度上昇が挙げられる。この場合、半導体レーザから高出力の励起光(レーザ光)が発光体に照射されると、当該発光体の昇温領域だけが局所的に極めて高温になるため、当該領域が急速に劣化してしまうという問題が生じる。
【0175】
したがって、蛍光体を含む微小な発光体をハイパワーの励起光で励起する構成において、発光体の劣化を防ぎ、明るく長寿命な光源を実現するためには、前記昇温領域における温度上昇を抑制することが望まれている。
【0176】
特に、図10および図11に示すように、レーザ光照射面5aと出射端部40rとが近接している場合には、レーザ光照射面5aと出射端部40rとの間隔がほとんどなくなるため、前記照射領域に対して、より強いレーザ光が照射されることとなる。このため、レーザ光照射面5aにおける前記昇温領域での発熱量が極めて大きくなり、当該昇温領域での温度上昇により発光体5が急速に劣化してしまう可能性がある。
【0177】
図11に示すヘッドランプ30では、中空部6aに放熱部材61を備え、放熱部材61を介して出射端部40rと発光体5とが近接している。そのため、レーザ光照射面5aに照射されるレーザ光に起因して発光体5において発生した熱を、放熱部材61を介して反射鏡6へと放散させることができるので、発光体5の長寿命化を図ることができる。なお、この点を考慮しなければ、放熱部材61を必ずしも備える必要はない。
【0178】
また、ヘッドランプ30は、図11に示すように、レーザ光照射面5aおよび出射端部40rの近傍に、出射端部40rから出射されたレーザ光のうち、レーザ光照射面5aに照射されなかったレーザ光、およびレーザ光照射面5aの表面で反射されたレーザ光の少なくとも一方を遮光する遮光部62を備えている。遮光部62が反射鏡6に接続されることにより、遮光部62および反射鏡6が、少なくともレーザ光照射面5aおよび出射端部40rの近傍を覆う密閉空間を形成している。図11では、フェルール9、レーザ光照射面5aおよび放熱部材61を覆う密閉空間を形成している。遮光部62の材質は、レーザ光が有する波長およびその近傍の波長を遮断するものであれば、どのような材質であってもよい。
【0179】
ここで、例えば発光体5が中空部6aの開口面を覆うことにより、反射鏡6と透過フィルタ7とが囲む空間にレーザ光が漏れ出ないようにして、ヘッドランプ30の前方に当該レーザ光が出射されるのを防ぐことはできる。しかし、この構成の場合、例えばヘッドランプ30への衝撃により、レーザ光がレーザ光照射面5aに適切に照射されない事態が生じた場合に、当該レーザ光が、中空部6a(発光体5とフェルール9との接続部)から漏れ出てしまう可能性がある。この場合、使用者が、ヘッドランプ1が収容されている筐体の覆い(自動車であればボンネット)を開けたときに、人体にとって有害な出力レベルのレーザ光が、直接使用者の目に入ってしまうという危険な事態が生じてしまう可能性がある。
【0180】
遮光部62を備えることにより、レーザ光照射面5aと出射端部40rとを近接させてもなお、例えばヘッドランプ1への衝撃により、レーザ光がレーザ光照射面5aに適切に照射されない事態が生じた場合であっても、当該レーザ光が、中空部6aから外部に漏れ出ることを確実に防ぐことができる。また、レーザ光照射面5aと出射端部40rとが離間している場合であっても、レーザ光が遮光部62により密閉された空間から出射されてしまう、すなわち中空部6aから外部に漏れ出ることを防ぐことができる。なお、少なくともヘッドランプ30の前方にレーザ光が出射されるのを防ぐことを目的とするのであれば、遮光部62は必ずしも備えていなくてもよい。
【0181】
なお、図11では、遮光部62は、特に、反射鏡6の外部に向かう方向(前記光の照射方向以外の方向)に、レーザ光が中空部6aから漏れ出ることを防ぐために設けられている。しかし、この構成に限らず、遮光部62は、前記光の照射方向に、レーザ光が出射されてしまうことを防ぐために設けられるものであってもよい。
【0182】
すなわち、遮光部62は、例えば図8のように、発光体5(レーザ光照射面5a)が、反射鏡6の内部に設けられている場合に、少なくとも、レーザ光照射面5aと出射端部40rとの間に形成されるレーザ光の光路の近傍を覆うように設けられてもよい。図8の場合、遮光部62は、少なくとも、レーザ光照射面5aとフェルール9とを覆う密閉空間を形成し、その形状は例えば筒状である。また、遮光部62の材質は、レーザ光が有する波長およびその近傍の波長を遮断するとともに、発光体5から出射された光を透過する材質であることが好ましい。
【0183】
このように、遮光部62が反射鏡6の内部に設けられる場合には、レーザ光が、前記反射鏡6と透過フィルタ7とで囲まれた空間を伝播し、反射鏡6の開口部から出射されてしまうことを防ぐことができる。
【0184】
なお、図10および図11では、レーザ光照射面5aと中空部6aの開口面とが略同一の大きさとなっているが、当該開口面は、レーザ光照射面5aよりも小さくてもよい。この場合、レーザ光照射面5aの端部が反射鏡6に直接接続され、反射鏡6により保持される構成であってもよい。
【0185】
〔レーザダウンライトについて〕
次に、本発明のさらに他の実施形態であるレーザダウンライト(発光装置,照明装置)400について図12〜図17に基づいて説明すれば、以下のとおりである。
【0186】
ここでは、本発明の照明装置の一例としてのレーザダウンライト400について説明する。レーザダウンライト400は、家屋、乗物などの構造物の天井に設置される照明装置であり、半導体レーザ2から出射したレーザ光を、上述した光ファイバー40aなどを介して、発光体5に照射することによって発生する蛍光を照明光として用いるものである。
【0187】
なお、非球面レンズ3は、半導体レーザ2から発振されたレーザ光を、光ファイバー40aの入射端部に入射させるためのレンズである。例えば、非球面レンズ3として、アルプス電気製のFLKN1 405を用いることができる。上述の機能を有するレンズであれば、非球面レンズ3の形状および材質は特に限定されないが、405nm近傍の透過率が高く、かつ耐熱性のよい材料であることが好ましい。
【0188】
また、レーザダウンライト400と同様の構成を有する照明装置を、構造物の側壁または床に設置してもよく、前記照明装置の設置場所は特に限定されない。
【0189】
図12は、発光ユニット410および従来のLEDダウンライト500の外観を示す概略図である。図13は、レーザダウンライト400が設置された天井の断面図である。図14は、レーザダウンライト400の断面図である。図12〜図14に示すように、レーザダウンライト400は、天板401に埋設され、照明光を出射する発光ユニット410と、光ファイバー40aを介して発光ユニット410へレーザ光を供給するLD光源ユニット420とを含んでいる。LD光源ユニット420は、天井には設置されておらず、ユーザが容易に触れることができる位置(例えば、家屋の側壁)に設置されている。このようにLD光源ユニット420の位置を自由に決定できるのは、LD光源ユニット420と発光ユニット410とが光ファイバー40aによって接続されているからである。この光ファイバー40aは、天板401と断熱材402との間の隙間に配置されている。
【0190】
(発光ユニット410の構成)
発光ユニット410は、図14に示すように、筐体411、光ファイバー40a、発光体5、照射レンズ3a、フェルール9および透光板(光学フィルタ)413を備えている。
【0191】
照射レンズ3aは、発光体5に対する凸面を有する凸レンズであっても良いし、発光体5に対する凹面を有する凹レンズであっても良い。なお、本実施形態では、照射レンズ3aを用いている場合について説明するが、発光体5とフェルール9との間にレンズを設けず、光ファイバー40aの出射端部から発光体5へ直接レーザ光を照射しても良い。
【0192】
照射レンズ3aの例としては、発光体5に対する凸面を有する両凸レンズ、平凸レンズ、凸メニスカスレンズ、ならびに、発光体5に対する凹面を有する両凹レンズ、平凹レンズ、凹メニスカスレンズ等が例示できる。
【0193】
なお、上述した例の他、発光体5の形状に応じて、任意の軸を持つ凹面および凸面を有する独立したレンズの組合せ、任意の軸を持つ凸面および凸面を有する独立したレンズの組合せ、任意の軸を持つ凹面および凹面を有する独立したレンズの組合せなどを採用しても良い。
【0194】
これにより、発光体5の形状に応じて適切なレンズの組合せを採用することで、発光体5の発光効率を高めることができる。
【0195】
また、発光体5の形状に応じて、任意の軸を持つ凹面および凸面を有するレンズを一体化した複合レンズ、任意の軸を持つ凸面および凸面を有する複合レンズを一体化したレンズ、任意の軸を持つ凹面および凹面を有するレンズを一体化した複合レンズなどを採用しても良い。
【0196】
これにより、光学系全体の部品点数を少なくし、光学系全体のサイズを小さくしつつ、発光体5の形状に応じて適切な複合レンズを採用することで、発光体5の発光効率を高めることができる。
【0197】
その他のレンズとしては、GRINレンズ(Gradient Index lens:屈折率勾配変化型レンズ)なども例示できる。
【0198】
なお、GRINレンズは、レンズが凸または凹の形状をしていなくても、レンズ内部の屈折率勾配によってレンズ作用が生じるレンズである。
【0199】
よって、GRINレンズを用いれば、例えば、GRINレンズの端面を平面としたままでレンズ作用を生じさせることができるので、GRINレンズの端面に、例えば、直方体形状の発光体5の端面を隙間無く接合させることができる。
【0200】
筐体411には、凹部412が形成されており、この凹部412の底面に発光体5が配置されている。凹部412の表面には、金属薄膜が形成されており、凹部412は反射鏡として機能する。
【0201】
また、筐体411には、光ファイバー40aを通すための通路414が形成されており、この通路414を通って光ファイバー40aが発光体5まで延びている。光ファイバー40aの出射端部と発光体5との位置関係は上述したものと同様である。
【0202】
透光板413は、凹部412の開口部をふさぐように配置された透明または半透明の板である。この透光板413は、半導体レーザ2からのレーザ光を遮断するとともに、発光体5においてレーザ光を変換することにより生成された蛍光を透過する材質で形成することが好ましい。
【0203】
発光体5によってコヒーレントなレーザ光は、そのほとんどが蛍光に変換されるか、発光体5に含まれる蛍光体によって散乱、拡散される。しかし、何らかの原因でレーザ光の一部が変換、散乱、拡散されない場合も考えられる。このような場合でも、透光板413によってレーザ光を遮断することにより、レーザ光が外部に漏れることを防止できる。
【0204】
このように、発光体5の蛍光は、透光板413を透して照明光として出射される。透光板413は、筐体411に対して取外し可能であってもよく、省略されてもよい。
【0205】
図12では、発光ユニット410は、円形の外縁を有しているが、発光ユニット410の形状(より厳密には、筐体411の形状)は特に限定されない。
【0206】
なお、ダウンライトでは、ヘッドランプの場合とは異なり、理想的な点光源は要求されず、発光点が1つというレベルで十分である。それゆえ、発光体5の形状、大きさおよび配置に関する制約は、ヘッドランプの場合よりも少ない。
【0207】
(LD光源ユニット420の構成)
LD光源ユニット420は、半導体レーザ2、非球面レンズ3および光ファイバー40aを備えている。
【0208】
光ファイバー40aの入射端部は、LD光源ユニット420に接続されており、半導体レーザ2から発振されたレーザ光は、非球面レンズ3を介して光ファイバー40aの入射端部に入射される。
【0209】
図13に示すLD光源ユニット420の内部には、半導体レーザ2および非球面レンズ3が一対のみ示されているが、発光ユニット410が複数存在する場合には、発光ユニット410からそれぞれ延びる光ファイバー40aの束を1つのLD光源ユニット420に導いてもよい。この場合、1つのLD光源ユニット420に複数の半導体レーザ2と非球面レンズ3との対が収納されることになり、LD光源ユニット420は集中電源ボックスとして機能する。
【0210】
(レーザダウンライト400の設置方法の変更例)
図15は、レーザダウンライト400の設置方法の変更例を示す断面図である。同図に示すように、レーザダウンライト400の設置方法の変形例として、天板401には光ファイバー束40を通す小さな穴403だけを開け、薄型・軽量の特長を活かしてレーザダウンライト本体(発光ユニット410)を天板401に貼り付けるということもできる。この場合、レーザダウンライト400の設置に係る制約が小さくなり、また工事費用が大幅に削減できるというメリットがある。
【0211】
(レーザダウンライト400と従来のLEDダウンライト500との比較)
従来のLEDダウンライト500は、図12に示すように、複数の透光板501を備えており、各透光板501からそれぞれ照明光が出射される。すなわち、LEDダウンライト500において発光点は複数存在している。LEDダウンライト500において発光点が複数存在しているのは、個々の発光点から出射される光の光束が比較的小さいため、複数の発光点を設けなければ照明光として十分な光束の光が得られないためである。
【0212】
これに対して、レーザダウンライト400は、高光束の照明装置であるため、発光点は1つでもよい。それゆえ、照明光による陰影がきれいに出るという効果が得られる。また、発光体5の蛍光体を高演色蛍光体(例えば、数種類の酸窒化物蛍光体の組合せ)にすることにより、照明光の演色性を高めることができる。
【0213】
図16は、LEDダウンライト500が設置された天井の断面図である。同図に示すように、LEDダウンライト500では、LEDチップ、電源および冷却ユニットを収納した筐体502が天板401に埋設されている。筐体502は比較的大きなものであり、筐体502が配置されている部分の断熱材402には、筐体502の形状に沿った凹部が形成される。筐体502から電源ライン523が延びており、この電源ライン523はコンセント(不図示)につながっている。
【0214】
このような構成では、次のような問題が生じる。まず、天板401と断熱材402との間に発熱源である光源(LEDチップ)および電源が存在しているため、LEDダウンライト500を使用することにより天井の温度が上がり、部屋の冷房効率が低下するという問題が生じる。
【0215】
また、LEDダウンライト500では、光源ごとに電源および冷却ユニットが必要であり、トータルのコストが増大するという問題が生じる。
【0216】
また、筐体502は比較的大きなものであるため、天板401と断熱材402との間の隙間にLEDダウンライト500を配置することが困難な場合が多いという問題が生じる。
【0217】
これに対して、レーザダウンライト400では、発光ユニット410には、大きな発熱源は含まれていないため、部屋の冷房効率を低下させることはない。その結果、部屋の冷房コストの増大を避けることができる。
【0218】
また、発光ユニット410ごとに電源および冷却ユニットを設ける必要がないため、レーザダウンライト400を小型および薄型にすることができる。その結果、レーザダウンライト400を設置するためのスペースの制約が小さくなり、既存の住宅への設置が容易になる。
【0219】
また、レーザダウンライト400は、小型および薄型であるため、上述したように、発光ユニット410を天板401の表面に設置することができ、LEDダウンライト500よりも設置に係る制約を小さくすることができるとともに工事費用を大幅に削減できる。
【0220】
図17は、レーザダウンライト400およびLEDダウンライト500のスペックを比較するための図である。同図に示すように、レーザダウンライト400は、その一例では、LEDダウンライト500に比べて体積は94%減少し、質量は86%減少する。
【0221】
また、LD光源ユニット420をユーザの手が容易に届く所に設置できるため、半導体レーザ2が故障した場合でも、手軽に半導体レーザ2を交換できる。また、複数の発光ユニット410から延びる光ファイバー40aを1つのLD光源ユニット420に導くことにより、複数の半導体レーザ2を一括管理できる。そのため、複数の半導体レーザ2を交換する場合でも、その交換が容易にできる。
【0222】
なお、LEDダウンライト500において、高演色蛍光体を用いたタイプの場合、消費電力10Wで約500lm(ルーメン)の光束が出射できるが、同じ明るさの光をレーザダウンライト400で実現するためには、3.3Wの光出力が必要である。この光出力は、LD効率が35%であれば、消費電力10Wに相当し、LEDダウンライト500の消費電力も10Wであるため、消費電力では、両者の間に顕著な差は見られない。それゆえ、レーザダウンライト400では、LEDダウンライト500と同じ消費電力で、上述の種々のメリットが得られることになる。
【0223】
以上のように、レーザダウンライト400は、レーザ光を出射する半導体レーザ2を少なくとも1つ備えるLD光源ユニット420と、発光体5および反射鏡としての凹部412を備える少なくとも1つの発光ユニット410と、発光ユニット410へレーザ光を導く光ファイバー40aと、光ファイバー40aの出射端部から出射した照射光を発光体5の光照射領域に分散して照射する照射レンズ3aとを備える。
【0224】
それゆえ、レーザダウンライト400において、レーザ光が発光体5の一箇所に集中的に照射されることによって発光体5が著しく劣化する可能性を低減できる。その結果、長寿命のレーザダウンライト400を実現できる。
【0225】
〔本発明の別表現〕
本発明は以下のようにも表現できる。
【0226】
本発明のレーザ照明光源(照明装置)は、紫外領域から青紫色領域の発振波長で発振する半導体レーザと、前記半導体レーザから放出されるレーザ光で励起される青色蛍光体と、前記青色蛍光体から放出される青色光で励起されるYAG:Ce蛍光体とを含む蛍光体発光部を備えており、さらに、レーザ照明光源の照明光の出口には半導体レーザから放出されるレーザ光を遮断するカットフィルタが設けられている。また、青色蛍光体とYAG:Ce蛍光体は混ざっていてもよく、半導体レーザ、青色蛍光体、YAG:Ce蛍光体の順に分離して形成されていても良い。
【0227】
前記構成によれば、YAG;Ce蛍光体は、紫外から青紫色の光をほとんど吸収しないため、半導体レーザから放出されたレーザ光に対する良好な散乱・拡散材としてだけ作用し、そのことにより、青色蛍光体を励起せずに蛍光体発光部からレーザ照明光源の外部に放出されるはずだった励起光を二度三度と青色蛍光体の励起に使用することができるようになり、蛍光体発光部の発光効率が向上する。このような構成とすることにより、レーザ光のまま蛍光体発光部の外部に放出される励起光は低減、もしくはゼロにできるが、万一の時にもレーザ光がレーザ照明光源の外部に放出されないようレーザ光遮断フィルタを設けているために、人間の目に対して安全である。
【0228】
本発明のレーザ照明光源に適した青色蛍光体としては、BAM蛍光体やJEM相:Ce蛍光体が挙げられる。
【0229】
本発明のレーザ照明光源のような構成とすることによって、人間の目に対して安全なレーザ照明光源が得られる他に、青色光のスペクトルが、青色レーザ光のように極めて単色性が高い光を用いる状態から、蛍光体を用いたブロードな青色光を用いる状態にすることができ、その結果として、青色光領域の演色性を向上させることができる。
【0230】
また、本発明は、人の目に対して、照明装置より照射される蛍光が照射された時、目を損傷することがない安全な発光体を得ることができる。さらに、反射効率の良い蛍光体を用いることで、励起光と合わせて、青色光領域の演色性を高めることができる。
【0231】
〔付記事項〕
なお、本発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組合せて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。
【産業上の利用可能性】
【0232】
本発明は、発光体、ならびに該発光体を備えた発光装置および照明装置などに適用することができる。例えば、自動車用のヘッドランプ(ハイビーム、ロービーム)、自動車以外の車両・移動物体(例えば、人間・船舶・航空機・潜水艇・ロケットなど)のヘッドランプや、その他の照明装置に適用することができる。また、その他の照明装置として、例えば、サーチライト、プロジェクタ、家庭用照明器具などにも適用することができる。
【符号の説明】
【0233】
1 ヘッドランプ(照明装置,前照灯)
2 半導体レーザ(励起光源)
5 発光体
5a レーザ光照射面(受光面)
6a 中空部
7 透過フィルタ(光学フィルタ)
20 ヘッドランプ(照明装置,前照灯)
30 ヘッドランプ(照明装置,前照灯)
21 LEDランプ(励起光源)
40 光ファイバー束(導光部)
40a 光ファイバー(導光部)
40r 出射端部
58 青色発光蛍光体(第1の蛍光体)
59 黄色発光蛍光体(第2の蛍光体)
61 放熱部材
62 遮光部
210 LEDチップ(励起光源)
400 レーザダウンライト(照明装置)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1波長領域の波長を有する励起光を受けて前記第1波長領域よりも長波長側の第2波長領域に発光ピーク波長を有する蛍光を発生する第1の蛍光体と、
前記蛍光によって励起される第2の蛍光体とを少なくとも含む発光体であって、
前記第1の蛍光体が、前記第1波長領域内に吸収スペクトルの谷を持っておらず、
前記第1の蛍光体以外の蛍光体が、前記第1波長領域内に吸収スペクトルの谷を持っていることを特徴とする発光体。
【請求項2】
前記第2の蛍光体は、Ceで賦活したイットリウム‐アルミニウム‐ガーネット系の蛍光体であることを特徴とする請求項1に記載の発光体。
【請求項3】
前記第2の蛍光体は、Ceで賦活したテルビウム−アルミニウム−ガーネット系の蛍光体であることを特徴とする請求項1に記載の発光体。
【請求項4】
前記発光体は、前記第1の蛍光体と前記第2の蛍光体とが混合されて形成されていることを特徴とする請求項1から3までのいずれか1項に記載の発光体。
【請求項5】
前記第2の蛍光体が、前記第1の蛍光体を取り囲むように配置されていることを特徴とする請求項1から3までのいずれか1項に記載の発光体。
【請求項6】
前記第1の蛍光体は、バリウムアルミン酸マグネシウム蛍光体またはJEM相を含む酸窒化物系の蛍光体であることを特徴とする請求項1から5までのいずれか1項に記載の発光体。
【請求項7】
前記第2の蛍光体に対する前記第1の蛍光体の重量比が、1以上、5以下であることを特徴とする請求項1から6までのいずれか1項に記載の発光体。
【請求項8】
請求項1から7までのいずれか1項に記載の発光体と、
前記第1波長領域の波長を有する励起光を前記発光体に照射する励起光源と、
前記発光体から出射する光を反射することにより、所定の立体角内を進む光線束を形成する反射鏡とを備えていることを特徴とする照明装置。
【請求項9】
前記反射鏡の開口部付近に設けられ、前記励起光を遮断する光学フィルタを備えていることを特徴とする請求項8に記載の照明装置。
【請求項10】
前記発光体は、前記励起光源から出射された励起光を受光する受光面を有し、当該受光面が、前記反射鏡と当該反射鏡の開口部とが形成する空間の外側となるように設けられていることを特徴とする請求項8から9までの何れか1項に記載の照明装置。
【請求項11】
前記励起光源から出射された励起光を受け取り、当該励起光を前記発光体に出射する導光部を備え、
前記発光体は、前記導光部から出射された励起光を受光する受光面を有し、
前記導光部は、前記励起光源から受け取った励起光を前記発光体に出射する出射端部を有し、
前記受光面および前記出射端部の近傍に、前記出射端部から出射された励起光のうち、前記受光面に照射されなかった励起光、および前記受光面にて反射された励起光の少なくとも一方を遮光する遮光部を備えることを特徴とする請求項8から10の何れか1項に記載の照明装置。
【請求項12】
前記励起光源から出射された励起光を受け取り、当該励起光を前記発光体に出射する導光部を備え、
前記発光体は、前記導光部から出射された励起光を受光する受光面を有し、
前記導光部は、前記励起光源から受け取った励起光を前記発光体に出射する出射端部を有し、
前記受光面と前記出射端部とが近接していることを特徴とする請求項8から11の何れか1項に記載の照明装置。
【請求項13】
前記反射鏡は、前記出射端部が挿入される中空部を有し、
前記中空部には、前記発光体に前記励起光が照射されることにより、当該発光体にて発生する熱を放散する放熱部材が備えられ、
前記受光面と前記出射端部とは、前記放熱部材を介して近接していることを特徴とする請求項12に記載の照明装置。
【請求項14】
請求項8から13までのいずれか1項に記載の照明装置を備えることを特徴とする前照灯。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【公開番号】特開2013−79311(P2013−79311A)
【公開日】平成25年5月2日(2013.5.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−219292(P2011−219292)
【出願日】平成23年10月3日(2011.10.3)
【出願人】(000005049)シャープ株式会社 (33,933)
【Fターム(参考)】