説明

発光体の製造方法、発光体、及び発光装置

【課題】 高輝度かつ長寿命の発光体を製造する発光体の製造方法、発光体、及び発光装置の提供。
【解決手段】 裏面電極11、誘電体層12、発光層13、誘電体層14、透明電極15をこの順に積層した無機EL素子10において、発光層13を、硫化ストロンチウム(SrS)を母体材料とし、Pr、Mn、及びAu、並びにGaAs及びInPを添加して製造した発光体と紫外線硬化型誘電物質とを混合して形成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、希土類硫化物を母体材料とした発光体の製造方法、発光体、及び該発光体を用いた発光装置に関する。
【背景技術】
【0002】
エレクトロルミネッセンス素子(以下、EL素子という)は、物質に電界をかけた際に発生する発光現象を利用した発光素子であり、アルミキノリノール錯体等の有機物質を母体材料とする有機EL素子と、ZnS、SrS等の無機物質を母体材料とする無機EL素子とに大別される。このうち無機EL素子は、有機EL素子と比較して耐久性に優れ、消費電力を低く抑えることができることができるため、液晶ディスプレイ装置のバックライト、終夜灯、緊急灯等の照明装置への応用が期待されている。
【0003】
ZnSを母体材料とする無機EL素子としては、母体材料に対し微量のMnを添加したもの、又は微量のCu、Clを添加したもの等が知られており、前者は黄橙色、後者は青緑色に発光することが確認されている(例えば、特許文献1参照)。また、SrSを母体材料とする無機EL素子としては、母体材料に対し微量のCeを添加したものが知られており、青緑色に発光することが確認されている。
【特許文献1】特開2002−241753号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来の無機EL素子は発光輝度が低いため、実用面を考慮した場合、前述したような液晶ディスプレイ装置のバックライト、終夜灯、緊急灯等に適用することが困難であるという問題点を有している。例えば、液晶ディスプレイ装置では、液晶分子、蛍光体、偏光板等により光の吸収が起こり、当初の10%程度まで光の強度が低減するため、少なくとも数千cd/m2 程度の発光輝度を有するバックライトが要求される。しかしながら、特許文献1に記載されている比較的高輝度な無機EL素子であっても、その発光輝度は500cd/m2 程度であり、現状では無機EL素子を用いて実用上十分な明るさを持つ液晶ディスプレイ装置を作成することは困難であった。
【0005】
また、無機EL素子への印加電圧を上げることにより発光輝度を高めることも可能であるが、無機EL素子の寿命(すなわち、EL発光の半減期)は印加電圧に比例して短くなるという現象が見られるため、EL発光の半減期を低下させることなく高輝度発光を得ることができる発光装置の開発が望まれている。
【0006】
本発明は斯かる事情に鑑みてなされたものであり、高輝度の発光体を製造することができる発光体の製造方法、及び高輝度の発光体を提供することを目的とする。
【0007】
本発明の他の目的は、高輝度の発光が可能であり、しかも長寿命化を実現することが可能な発光装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
第1発明に係る発光体の製造方法は、希土類硫化物を母体材料とする発光体の製造方法において、前記母体材料とPr、Mn、及びAuを含み、前記母体材料を活性化する活性化剤との混合物を生成し、生成した混合物を加熱して前記母体材料を活性化することを特徴とする。
【0009】
第1発明にあっては、希土類硫化物からなる母体材料とPr、Mn、及びAuを含む活性化剤との混合物を生成し、生成した混合物を加熱して母体材料を活性化することにより、発光輝度の高い発光体が得られる。
【0010】
第2発明に係る発光体の製造方法は、第1発明に係る発光体の製造方法において、前記希土類硫化物は、SrSであることを特徴とする。
【0011】
第2発明にあっては、SrSからなる母体材料とPr、Mn、及びAuを含む活性化剤との混合物を生成し、生成した混合物を加熱して母体材料を活性化することにより、3000cd/m2 程度の輝度を有する発光体が得られる。
【0012】
第3発明に係る発光体の製造方法は、第1発明又は第2発明に係る発光体の製造方法において、前記母体材料を活性化した後、GaAs及びInPを添加し、硫黄ガスを含む窒素雰囲気下、798℃以上の温度で焼成することを特徴とする。
【0013】
第3発明にあっては、母体材料を活性化した後、GaAs及びInPを添加し、硫黄ガスを含む窒素雰囲気下、798℃以上の温度で焼成することにより、4500cd/m2 程度の輝度を有する発光体が得られる。
【0014】
第4発明に係る発光体は、希土類硫化物を母体材料とする発光体において、前記母体材料に対しPr、Mn、及びAuを添加してあることを特徴とする。
【0015】
第4発明にあっては、希土類硫化物からなる母体材料に対しPr、Mn、及びAuを添加する構成とすることにより、高輝度の発光が得られる。
【0016】
第5発明に係る発光体は、第4発明に係る発光体において、前記希土類硫化物は、SrSであることを特徴とする。
【0017】
第5発明にあっては、SrSからなる母体材料に対しPr、Mn、及びAuを添加する構成とすることにより、3000cd/m2 程度の発光輝度が得られる。
【0018】
第6発明に係る発光体は、第4発明又は第5発明に係る発光体において、GaAs及びInPを更に添加してあることを特徴とする。
【0019】
第6発明にあっては、GaAs及びInPを更に添加する構成とすることにより、4500cd/m2 程度の発光輝度が得られる。
【0020】
第7発明に係る発光装置は、第4発明乃至第6発明の何れか1つに記載の発光体と、該発光体に交流電圧を印加する手段とを備えることを特徴とする。
【0021】
第7発明にあっては、第4発明から第6発明に記載した発光体と、この発光体に対して交流電圧を印加する手段とを備える構成とすることにより、高輝度の発光が得られ、各種の光源として機能することとなる。
【0022】
第8発明に係る発光装置は、第7発明に係る発光装置において、前記発光体の発光強度を一定にすべく前記交流電圧の大きさを制御する手段を更に備えることを特徴とする。
【0023】
第8発明にあっては、発光強度を一定にするために発光体に印加すべき交流電圧の大きさを制御する構成としているため、高輝度発光かつ長寿命化が実現される。
【0024】
第9発明に係る発光装置は、第7発明に係る発光装置において、前記発光体の発光強度を計測する手段と、該手段にて計測した発光強度に基づいて前記発光体に印加すべき交流電圧の大きさを制御する手段とを備えることを特徴とする。
【0025】
第9発明にあっては、発光体の発光強度を計測する手段と、計測した発光強度に基づいて発光体に印加すべき交流電圧の大きさを制御する構成としているため、高輝度発光かつ長寿命化が実現される。
【発明の効果】
【0026】
第1発明による場合は、希土類硫化物からなる母体材料とPr、Mn、及びAuを含む活性化剤との混合物を生成し、生成した混合物を加熱して母体材料を活性化する。このようにして製造された発光体は、従来の無機EL材料と比較して高い発光輝度を有しており、液晶ディスプレイ装置のバックライト、緊急灯、終夜灯等への適用が可能となる。
【0027】
第2発明による場合は、SrSからなる母体材料とPr、Mn、及びAuを含む活性化剤との混合物を生成し、生成した混合物を加熱して母体材料を活性化する。このようにして製造された発光体は、3000cd/m2 程度の輝度を有しており、例えば、液晶ディスプレイ装置のバックライトとして利用することができる。
【0028】
第3発明による場合は、母体材料を活性化した後、GaAs及びInPを添加し、硫黄ガスを含む窒素雰囲気下、798℃以上の温度で焼成する。このようにして製造された発光体は、4500cd/m2 程度の輝度を有しており、例えば、液晶ディスプレイ装置のバックライトとして利用することができる。
【0029】
第4発明による場合は、希土類硫化物からなる母体材料に対しPr、Mn、及びAuを添加している。このような発光体は、従来の無機EL材料と比較して発光輝度が高く、液晶ディスプレイ装置のバックライト、緊急灯、終夜灯等への適用が可能となる。
【0030】
第5発明による場合は、SrSからなる母体材料に対しPr、Mn、及びAuを添加している。このような発光体は、3000cd/m2 程度の発光輝度が得られるため、例えば、液晶ディスプレイ装置のバックライトとして利用することができる。
【0031】
第6発明による場合は、GaAs及びInPを更に添加している。このような発光体は、4500cd/m2 程度の発光輝度が得られるため、例えば、液晶ディスプレイ装置のバックライトとして利用することができる。
【0032】
第7発明による場合は、第4発明から第6発明に記載した発光体と、この発光体に対して交流電圧を印加する手段とを備えている。このような発光装置は、高輝度の発光が得られるため、液晶ディスプレイ装置のバックライト、緊急灯、終夜灯等の照明装置への適用が可能となる。
【0033】
第8発明による場合は、発光強度を一定にするために発光体に印加すべき交流電圧の大きさを制御する構成としている。このような発光装置では、発光体の高輝度化かつ長寿命化を図ることができるため、例えば、液晶ディスプレイ装置のバックライトとして実用化が可能となる。
【0034】
第9発明による場合は、発光体の発光強度を計測する手段と、計測した発光強度に基づいて発光体に印加すべき交流電圧の大きさを制御する構成としている。このような発光装置では、発光体の高輝度化かつ長寿命化を図ることができるため、例えば、液晶ディスプレイ装置のバックライトとして実用化が可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0035】
以下、本発明をその実施の形態を示す図面に基づいて具体的に説明する。
実施の形態1.
図1は実施の形態1に係る発光装置の構成を示す模式的構成図である。図中10は、裏面電極11、誘電体層12、発光層13、誘電体層14、及び透明電極15をこの順に積層して形成した無機EL素子である。本実施の形態に係る発光装置は、この無機EL素子10と交流電源20とを備えており、無機EL素子10に対して交流電圧を印加することにより発光層13内でEL発光を発生させる構成となっている。なお、本実施の形態では、無機EL素子10に対する防湿効果を高めるために、無機EL素子10をPETフィルム16(PET : Polyethyrene terephthalete)により封入している。PETフィルム16による封入は、例えばラミネート加工法を利用することができる。
【0036】
以下、無機EL素子10の構成について説明する。
裏面電極11は、ガラス、プラスチック等の基板上に導電性カーボンをスクリーン印刷することによって形成される。なお、エポキシ樹脂に銀(Ag)の微粉末を練り込んだ銀ペーストを用いてスクリーン印刷を行い、電極を設ける構成としてもよい。
【0037】
誘電体層12,14は、チタン酸バリウム含有インク等を用いたスクリーン印刷により、裏面電極11の上層、及び発光層13の上層に10μm程度の厚みで形成される。誘電体層12,14を形成することによって、裏面電極11、発光層13、及び透明電極15を形成する際の歩留まりが向上すると共に、発光中の絶縁破壊に強い、安定した素子が得られる。
【0038】
発光層13は、本発明に係る発光体と紫外線硬化型誘電物質からなるバインダとを混合したものであり、スクリーン印刷によって誘電体層12上に形成される。厚みが増すと発光輝度が低くなり、薄すぎる場合には輝度ムラが起こるため、本実施の形態では、20〜100μmの厚みを持つ発光層13を設けている。
【0039】
透明電極15は、酸化インジウム(ITO)、酸化亜鉛(ZnO)等を用いたスクリーン印刷により、誘電体層14上に形成される。また、透明電極15の表面の一部に銀ペーストにより形成した集電電極を別途設ける構成としてもよい。
【0040】
次に、発光層13で用いる発光体の製造方法について説明する。製造方法は、大別して2つの工程に分かれる。
【0041】
(第1工程)
硫化ストロンチウム(SrS)と、主たる活性化剤としてのプラセオジウム硫黄(S:Pr+3)及び炭酸ストロンチウム(SrCO4 )と、TaCl12、MgCl2 、NaClのような融剤物質とを配合した原材料100gを、マンガン(Mn)8g、及び金(Au)1gと共にプラスチックボトルに入れ、攪拌機により20分間機械的に混合する。
【0042】
攪拌して得られた混合物をボートに入れ、真空(10-5Torr)にしたベルジャー中、2250℃の温度で1時間程度焼成して焼成ケークを形成する。そして、焼成ケークをベルジャーから取り出した後、冷却し、脱イオン水でpH6以下になるまで洗浄する。脱イオン水で洗浄することにより融剤物質を除去し、乾燥させる。
【0043】
(第2工程)
次いで、乾燥させた焼成ケークをボルテックス理論の分級粉砕機により粉砕して粒径5〜20μmにする。そして、粒径1〜3μmの砒化ガリウム(GaAs)及び燐化インジウム(InP)と共にプラスチックボトルに入れ、機械的攪拌機により攪拌混合を20分間行う。攪拌して得られた混合物を円筒管状電気炉内に設置した坩堝に入れ、石英管中において硫黄ガス6%の窒素気体中略800℃の温度で3時間程度焼成してプラセオジウムの晶系転移を誘発させる。プラセオジウムの晶系転移は六方晶系から立方晶系への転移であり、その転移温度は798℃である。そのため、798℃以上の温度で焼成して晶系転移を誘発させるようにしている。
【0044】
その後、焼成された生成物100g当たり、脱イオン水1lに対し150mlの氷酢酸を混合した混合液にて洗浄し、過剰の化合物、融和添加剤、及び不純物を除去する。そして、脱イオン水でpH6以下になるまで洗浄し、洗浄された生成物を濾過し、約180℃で2時間乾燥させる。生成物を冷却した後、ボルテックス理論の分級機による篩い分けを行い、本発明の発光体を得る。
【0045】
次に、前述のようにして製造された発光体の特性について説明する。
図2は発光輝度の時間変化を示すグラフであり、図3は開始時点、24時間経過後、及び100時間経過後の発光輝度を示す図表である。図2に示したグラフの横軸は、交流電圧を印加した時点(開始時点)からの経過時間、縦軸は発光層13の輝度を表している。ここで、試料Aのラベルを付した曲線は、ZnSを母体材料とし、Cu及びClを添加した従来の無機EL材料により製造された発光体によるものである。試料B及び試料Cのラベルを付した曲線は何れも本発明の発光体によるものであるが、試料BについてはGaAs及びInPを添加する前の工程(第1工程)を最終工程として製造された発光体、試料CについてはGaAs及びInPを添加し、6%の硫黄ガスを含む窒素雰囲気下で焼成処理を施した材料を用いて製造された発光体である。
【0046】
図2のグラフに示したように、試料Aの発光体については交流電圧を印加した時点で691cd/m2 の輝度を有しており、経過時間と共に輝度が単調に減少してゆくことが分かる。なお、グラフから読みとれる試料Aの半減期は120時間程度である。試料Bの発光体については交流電圧を印加した時点で2800cd/m2の輝度を有しており、従来の無機EL材料に対して輝度を4倍程度改善できることが分かった。グラフから読みとれる試料Bの半減期は140時間程度である。試料Cの発光体については更に輝度を改善することができ、交流電圧の印加開始時点で4411/m2の輝度を有しており、従来の無機EL材料に対して6倍程度輝度が改善した。また、グラフから読みとれる試料Cの半減期は185時間程度であり、素子の寿命についても改善できることが分かった。
【0047】
実施の形態2.
実施の形態1では、無機EL素子10に対して一定の交流電圧を印加する構成としたが、印可する交流電圧を制御し、無機EL素子10の発光強度(輝度)を略一定に保つようにしてもよい。
【0048】
図4は実施の形態2に係る発光装置の構成を示す模式的構成図である。本実施の形態に係る発光装置は、無機EL素子10と発光強度制御部30とを備えている。無機EL素子10は、実施の形態1で説明したものと同一であり、裏面電極11、誘電体層12、発光層13、誘電体層14、及び透明電極15をこの順に積層して形成されたものである。また、無機EL素子10はPETフィルム16により封入されている。
【0049】
発光強度制御部30は、無機EL素子10の発光強度を略一定に保つために無機EL素子10に対する印加電圧を制御する。そのため、発光強度制御部30は、無機EL素子10に接続された交流電源、印加電圧についての設定値を記憶したメモリ、及びこのメモリに記憶されている設定値に従って交流電源を駆動するマイクロコンピュータ(不図示)等を備えている。
【0050】
図5は印加電圧の設定例を示すグラフである。横軸は発光層13に交流電圧を印加した時点からの経過時間、縦軸は印加電圧に対する設定値を表している。この例では、開始時点の印加電圧をV1(例えば、180V)とすることが設定されている。そして、経過時間がh1(例えば、120時間)になるまで印加電圧を単調に増加させてゆき、経過時間がh1となった時点で印加電圧をV2(例えば、240V)に設定し、h1以降の印加電圧をV2に保持することが設定されている。前述したメモリには経過時間に対して規定した印加電圧(設定値)が記憶されており、マイクロコンピュータは図に示していない内蔵タイマの出力を基にメモリから設定値を読み出し、読み出した設定値に従って交流電源の駆動を制御する。なお、メモリには、グラフ上の値を離散的に記憶するようにしてもよく、経過時間に対する関数として記憶するようにしてもよい。
【0051】
印加電圧を可変とした場合の発光装置の輝度特性を次に説明する。図6は発光輝度の時間変化を示すグラフである。横軸は交流電圧を印加した時点(開始時点)からの経過時間、縦軸は実施の形態3に係る発光装置の輝度を表している。なお、比較対象として、実施の形態1で説明した試料Cに一定の交流電圧を印加した場合の輝度の時間変化を併せて描いている。両者は発光層13に用いる発光体を同一のものとしているが、発明者らの検討結果により、印加電圧を最適化することで発光輝度が安定化する現象が見られることが分かった。すなわち、印加電圧を図5に示したように可変制御することによって、無機EL素子10の発光輝度がおよそ120時間で安定状態に入り、その後、少なくとも1000時間にわたって発光輝度の変動が観測されないことが分かった。図6のグラフに基づく減衰予想曲線から見積もったEL発光の半減期は20000時間以上となり、実用上十分な寿命を有する発光装置の製造が可能であることが分かった。
【0052】
実施の形態3.
実施の形態2では、無機EL素子10に印加する交流電圧を予め定めた設定値に従って制御する構成としたが、無機EL素子10から放射される光の強度を計測し、計測した値に基づいて無機EL素子10に対する印加電圧を定めるようにしてもよい。
【0053】
図7は実施の形態3に係る発光装置の構成を示すブロック図である。本実施の形態に係る発光装置は、実施の形態1で説明した無機EL素子10の他、光センサ41、比較回路42、発光強度設定部43、及びインバータ回路44を備えている。
【0054】
光センサ41は、無機EL素子10から放射される光の強度を計測するために、図に示していないフォトダイオード等を備えている。光センサ41は、光が照射されたときにフォトダイオードに流れる光電流を電圧に変換し、その値(電圧値)を比較回路42へ出力する。
【0055】
発光強度設定部43は、無機EL素子10の発光強度に対する設定値を定めている。この設定値は、例えば、製品の出荷時、又はユーザの設置環境下において任意に設定される値である。比較回路42は、光センサ41から出力される電圧値と発光強度設定部43での設定値とを比較し、その比較結果に応じて出力を変化させる回路である。インバータ回路44は、無機EL素子10を駆動するための電源回路であり、駆動する際の印加電圧は比較回路42の出力により制御される。
【0056】
次に、前述した構成の発光装置の動作について説明する。無機EL素子10がある強度で発光している場合、光センサ41はその強度に応じた電圧値(S1とする)を比較回路42へ出力する。比較回路42は、その電圧値S1と発光強度設定部43にて設定されている設定値(S2とする)とを比較する。その結果、電圧値S1が設定値S2よりも小さいと判断した場合、発光強度が弱いと判断できるため、無機EL素子10に対する印加電圧を高くするために比較回路42の出力を大きくする。このとき、インバータ回路44は無機EL素子10の発光強度を強くするように動作する。
【0057】
一方、比較回路42が光センサ41の電圧値S1と発光強度設定部43の設定値S2とを比較した結果、電圧値S1が設定値S2よりも大きいと判断した場合、環境温度の上昇、又は発光装置自体の発熱等により無機EL素子10の発光強度が強くなったと判断できるため、無機EL素子10に対する印加電圧を低くするために比較回路42の出力を小さくする。このとき、インバータ回路44は無機EL素子10の発光強度を弱くするように動作する。
【0058】
このように、本実施の形態の発光装置は、フィードバック動作によって光センサ41の電圧値S1と発光強度設定部43の設定値S2とが等しくなるように動作する。その結果、無機EL素子10の発光強度(輝度)が略一定に保持され、実施の形態2と同様に長寿命の発光装置を構成する。
【図面の簡単な説明】
【0059】
【図1】実施の形態1に係る発光装置の構成を示す模式的構成図である。
【図2】発光輝度の時間変化を示すグラフである。
【図3】開始時点、24時間経過後、及び100時間経過後の発光輝度を示す図表である。
【図4】実施の形態2に係る発光装置の構成を示す模式的構成図である。
【図5】印加電圧の設定例を示すグラフである。
【図6】発光輝度の時間変化を示すグラフである。
【図7】実施の形態3に係る発光装置の構成を示すブロック図である。
【符号の説明】
【0060】
10 無機EL素子
11 裏面電極
12 誘電体層
13 発光層
14 誘電体層
15 透明電極
16 PETフィルム
20 交流電源
30 発光強度制御部
41 光センサ
42 比較回路
43 発光強度設定部
44 インバータ回路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
希土類硫化物を母体材料とする発光体の製造方法において、
前記母体材料とPr、Mn、及びAuを含み、前記母体材料を活性化する活性化剤との混合物を生成し、生成した混合物を加熱して前記母体材料を活性化することを特徴とする発光体の製造方法。
【請求項2】
前記希土類硫化物は、SrSであることを特徴とする請求項1に記載の発光体の製造方法。
【請求項3】
前記母体材料を活性化した後、GaAs及びInPを添加し、硫黄ガスを含む窒素雰囲気下、798℃以上の温度で焼成することを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の発光体の製造方法。
【請求項4】
希土類硫化物を母体材料とする発光体において、
前記母体材料に対しPr、Mn、及びAuを添加してあることを特徴とする発光体。
【請求項5】
前記希土類硫化物は、SrSであることを特徴とする請求項4に記載の発光体。
【請求項6】
GaAs及びInPを更に添加してあることを特徴とする請求項4又は請求項5に記載の発光体。
【請求項7】
請求項4乃至請求項6の何れか1つに記載の発光体と、該発光体に交流電圧を印加する手段とを備えることを特徴とする発光装置。
【請求項8】
前記発光体の発光強度を一定にすべく前記交流電圧の大きさを制御する手段を更に備えることを特徴とする請求項7に記載の発光装置。
【請求項9】
前記発光体の発光強度を計測する手段と、該手段にて計測した発光強度に基づいて前記発光体に印加すべき交流電圧の大きさを制御する手段とを備えることを特徴とする請求項7に記載の発光装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2006−199794(P2006−199794A)
【公開日】平成18年8月3日(2006.8.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−11877(P2005−11877)
【出願日】平成17年1月19日(2005.1.19)
【出願人】(391019821)茶谷産業株式会社 (5)
【Fターム(参考)】