説明

発光体及び発光システム

【課題】本発明は、表面(主面)や端面からの出光が十分得られる発光体、及び、その発光体と光源とを有する発光システムを提供することを目的とする。
【解決手段】本発明は、光源からの光により発光する発光体1であって、発光体1は、光散乱剤を含む皮膜層、及び、光散乱剤を含む基材層を有し、基材層の厚さに対する皮膜層の厚さの比が1/300〜1/7であり、基材層の光散乱剤濃度に対する皮膜層の光散乱剤濃度の比が100/1〜2000/1である発光体である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光源からの光により発光する発光体、及びその発光体と光源とを有する発光システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
光源からの光により発光する発光体においては、光源から発せられ発光体の内部に導かれた光は、発光体の外部に出射するまでにその内部で何度も反射を繰り返す。そのため、発光体内部での光の行程が長くなり、光が発光体から出射するまでに減衰する。このため、発光体としては透明度の良いものが要求され、光源も指向性の高いものが要求される。
【0003】
また、発光体は、光を発光体表面に対して直角またはそれに近い方向に出射することが望ましい。しかし、上記したように、発光体の内部に導かれた光は発光体の外部に出射するまでにその内部で何度も反射を繰り返すため、そのような光は少なく、出射光の大部分は発光体の表面に沿った方向に出て行く。その結果、従来の発光体には、人間の目にはあまり明るく感じられないという問題がある。
【0004】
このような問題を解決するために、例えば、特許文献1には、透明アクリル板で形成された板状光伝達部材の表面に線状の溝を形成し、該板状光伝達部材の一側面の凹所にLEDランプを挿着して発光させることにより、LEDランプからの光を、板状光伝達部材の側面のみならず上下の面からもより均一な状態で出射させることが出来る面発光体が記載されている。
【0005】
また、特許文献2には、透明な導光板の後面全体に直線状の溝を何本も平行に設け、この導光板の側部に、該溝に直交する方向から導光板の内部に光を放つ点状発光体を配置した面状発光体が記載されている。
【0006】
また、特許文献3には、光散乱剤を含まない透明な合成樹脂層からなる透明部材と、光散乱剤を含む半透明な合成樹脂層とからなる半透明部材とを接合することによって面状発光体を形成し、該面状発光体の一端面側にLEDアレイを配設した発光体が記載されている。
【0007】
また、特許文献4には、光透過性を有する板状のアクリル部材の一端面に設けた取り付け穴にLEDランプを挿入し、該アクリル部材の発光面以外に反射テープを貼り付けた発光体が記載されている。
【0008】
また、特許文献5には、先端部に点光源を配備した棒状の第1の導光体の側面光出射部を、板状の第2の導光体の一側端部に結合して、該第2の導光体の主面から放射光を得る面発光装置が記載されている。
【0009】
また、特許文献6には、光散乱剤を含む皮膜層と光散乱剤を含まない基材層から構成される積層板発光体が記載されている。
【0010】
【特許文献1】特開2000−348518号公報
【特許文献2】特開2002−100226号公報
【特許文献3】特開平11−329044号公報
【特許文献4】特開平8−076703号公報
【特許文献5】特開平11−191307号公報
【特許文献6】特開2004−327204号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかしながら、前述の従来例において、特許文献1,2の技術では線状の溝形成なくして面状発光体を得ることが出来ず、特許文献3の技術では透明部材と半透明部材とを接合しないと面状発光体を形成することが出来ず、特許文献4の技術では発光面は1面だけで且つ発光面以外は反射テープの貼り付けが必要という問題があり、特許文献5の技術では点光源を線状光源に変換する第1の発光体なくして面発光体が得られず、特許文献6の技術では発光性能で劣る問題があった。
【0012】
本発明は前記課題を解決するものであり、その目的とするところは、表面(主面)や端面からの出光が十分得られる発光体、及び、その発光体と光源とを有する発光システムを提供せんとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明者等は、上記従来技術の問題点を解決するために、光透過性を有する樹脂中に光散乱剤を添加し、その光散乱剤を含有する樹脂を用いて発光体の基材層及び皮膜層を形成することで、溝や絵、或いは文字等を形成することなく、光源からの入光面以外の表面及び端面(側面)を含む全ての面からの出光が十分に得られる発光体を得られることを見出したものである。
【0014】
即ち、本発明の目的は、以下の発光体、及び、発光システムより達成された。
【0015】
本発明は、光源からの光により発光する発光体であって、前記発光体は、第1の光散乱剤を含む皮膜層、及び、第2の光散乱剤を含む基材層を有し、前記基材層の厚さに対する前記皮膜層の厚さの比が1/300〜1/7であり、前記基材層の光散乱剤濃度に対する前記皮膜層の光散乱剤濃度の比が100/1〜2000/1である発光体である。
【0016】
また、本発明に係る第1の好ましい態様は、前記皮膜層が第1の光透過性樹脂及び前記第1の光散乱剤とを含み、前記基材層が第2の光透過性樹脂及び前記第2の光散乱剤とを含むものである。
【0017】
また、本発明に係る第2の好ましい態様は、前記第1の光透過性樹脂がメタクリル樹脂であるものである。
【0018】
また、本発明に係る第3の好ましい態様は、前記第2の光透過性樹脂がメタクリル樹脂であるものである。
【0019】
また、本発明に係る発光システムは、前記の発光体と、光源とを有する発光システムであって、前記光源がLED光源である。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、輝度比L10/L210を向上することが出来、発光輝度に優れた発光体を得ることが出来る。
【0021】
尚、本発明において、輝度比L10/L210は、光源からの距離が10mmの位置における発光体1の輝度をL10、光源からの距離が210mmの位置における発光体1の輝度をL210とした時の両者の比をあらわしている。1に近い輝度比を有する発光体は、発光体としての均一性に優れている。
【0022】
また、本発明の第1の好ましい態様によれば、製造が容易になり発光体を大量生産することが出来、コストを安く出来る。
【0023】
また、本発明の第2あるいは第3の好ましい態様によれば、最良の発光性能を得ることが出来る。
【0024】
また、本発明に係る発光システムによれば、光源から離れた位置においても高い輝度を有する発光システムを実現出来る。また、LED光源の色や発光時間を適宜変化させて、バラエティに富んだ発光を演出する発光システムとすることが出来る。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
以下では、図を参照し、本発明に係る発光体及びその発光体と光源とを有する発光システムの一実施形態を具体的に説明する。図1(a),図1(b)は本発明に係る発光体の構成を示す斜視図及び平面図、図2は本発明に係る発光体の表面や端面からの出光の様子を示す模式図、図3は実際の発光体が光を出光する様子を示す写真を示す図、図4は本発明に係る発光体の輝度を測定する方法を説明する模式図、図5は発光体表面の光源からの距離と輝度の分布を示す図である。
【0026】
図1〜図3では、光源の一例として,LED(Light Emitting Diode;発光ダイオード)光源2から出射される光により発光する発光体1が示されている。図4は輝度測定方法の模式図を示しており、図4での光源には冷陰極管が用いられている。
【0027】
本発明の発光体は、第1の光散乱剤を含む皮膜層、及び、第2の光散乱剤を含む基材層を有する。また、本発明において、皮膜層は光透過性を有する第1の樹脂(以下、光透過性樹脂と記す)及び第1の光散乱剤から構成されることが好ましく、また、基材層は第2の光透過性樹脂及び第2の光散乱剤から構成されることが好ましい。
【0028】
尚、上記の第1の光散乱剤と第2の光散乱剤は、同一であっても異なってもよい。また、上記の第1の光透過性樹脂と第2の光透過性樹脂も、同一であっても異なってもよい。
【0029】
例えば、図1〜3に示される実施形態の発光体1は、光散乱剤を分散させた熱可塑性樹脂をシート状に形成することで得られた基材層及び皮膜層を有する。この熱可塑性樹脂シートとしては、押し出し成形により製造される押し出しシート、キャスト法により製造させるキャストシートの何れも適用可能である。
【0030】
本発明の発光体の基材層及び皮膜層を構成する光透過性樹脂としては、種々の熱可塑性樹脂が適用可能であるが、好ましくはメタクリル樹脂、ポリカーボネート樹脂、スチレン系樹脂、環状オレフィン系樹脂、非晶性ポリエステル樹脂等の光学材料であり、更に好ましくはメタクリル樹脂である。
【0031】
以下、本発明の発光体の基材層及び皮膜層を構成する樹脂として適用可能な樹脂について、より詳細に記す。
【0032】
メタクリル樹脂とは、メタクリル酸メチル或いはメタクリル酸エチルを70重量%以上と、これ等と共重合性を有する単量体とを共重合することにより得ることが出来るものである。メタクリル酸メチル或いはメタクリル酸エチルと共重合性を有する単量体としては、メタクリル酸ブチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸プロピル、メタクリル酸シクロヘキシル、メタクリル酸フェニル、メタクリル酸2−エチルヘキシル等のメタクリル酸エステル類、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸ブチル、アクリル酸シクロヘキシル、アクリル酸フェニル、アクリル酸2−エチルヘキシル等のアクリル酸エステル類、メタクリル酸、アクリル酸等の不飽和酸類等が適用可能である。
【0033】
尚、発光体の基材層及び皮膜層としては、耐熱性メタクリル樹脂、低吸湿性メタクリル樹脂、耐衝撃性メタクリル樹脂等も適用可能である。耐衝撃性メタクリル樹脂とは、例えばメタクリル樹脂にゴム弾性体をブレンドしたものである。そのゴム弾性体の一例としては、アクリル系重合体芯材料の周りに弾性層及び非弾性層を交互に生成させる多段階逐次重合法により製造される多段重合体が挙げられる。このゴム弾性体をメタクリル樹脂にブレンドすることで、上記の耐衝撃性メタクリル樹脂が得られる。
【0034】
また、発光体の基材層及び皮膜層を構成する樹脂としてポリカーボネート樹脂を用いる場合には、ポリカーボネート樹脂としてビスフェノールAに代表される二価フェノール系化合物から誘導される重合体が用いられる。ポリカーボネート樹脂の製造方法は、特に限定されるものではなく、ホスゲン法、エステル交換法或いは固相重合法等の周知の慣用の方法を適用することが出来る。
【0035】
環状オレフィン系樹脂とは、ノルボルネンやシクロヘキサジエン等のポリマー鎖中に環状オレフィン骨格を含む重合体若しくはこれ等を含む共重合体であり、非晶性熱可塑性樹脂に属する。その製造方法については特に限定されるものではない。例えば、ノルボルネンを主とした環状オレフィン樹脂の一例としては、エチレン・ノルボルネン共重合体であるTicona株式会社製の「Topas」(商品名)が適用可能であり、シクロペンタジエン開環重合体の一例としては日本ゼオン株式会社製の「Zeonex」(商品名)等が適用可能である。
【0036】
スチレン系樹脂とは、スチレンを必須成分とするホモポリマー、コポリマーまたはこれ等のポリマーと他の樹脂とから得られるポリマーブレンド等である。本発明においては、特に、ポリスチレン、アクリロニトリルとスチレンの共重合体樹脂であるAB樹脂、メタクリル酸エステルとスチレンの共重合体樹脂であるMS樹脂を用いることが好ましい。
【0037】
更に、スチレン系樹脂相中にゴムが分布した透明強化ポリスチレンも好ましく使用出来る。スチレン系樹脂の製造方法は、特に限定されるものではなく、周知慣用の方法で製造することが出来る。
【0038】
非晶性ポリエステルとしては、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、ヘキサメチレングリコール等の脂肪族グリコール、シクロヘキサンジメタノール等の脂環族グリコール、ビスフェノール、1,3−ビス(2−ヒドロキシエトキシ)ベンゼン、1,4−ビス(ヒドロキシエトキシ)ベンゼン等の芳香族ジヒドロキシ化合物、或いはこれ等の2種類以上から選ばれたジヒドロキシ化合物単位と、テレフタル酸、イソフタル酸、2,6−ナフタリンジカルボン酸等の芳香族ジカルボン酸、シュウ酸、アジピン酸、セバシン酸、コハク酸、ウンデカジカルボン酸等の脂肪族ジカルボン酸、ヘキサヒドロテレフタル酸等の脂環族ジカルボン酸、或いはこれ等の2種類以上から選ばれたジカルボン酸単位とから形成されるポリエステルの中で非晶性の樹脂を適用可能である。
【0039】
非晶性ポリエステルの製造方法は、特に限定されるものではなく、周知慣用の方法で製造することが出来る。非晶性ポリエステルとして容易に入手し得る市販銘柄としては、イーストマン・コダック社の製品であるKODAR PTEC或いはPCTA等が挙げられる。
【0040】
また、上記の本発明の発光体の基材層及び皮膜層を構成する樹脂には、必要に応じて軟質重合体を添加しても良い。例えば、軟質重合体としては、α−オレフィンからなるオレフィン系軟質重合体、イソブチレンからなるイソブチレン系軟質重合体、ブタジエン、イソプレン等の共役ジエンからなるジエン系軟質重合体、ノルボルネン、シクロペンテン等の環状オレフィンからなる環状オレフィン系軟質重合体、有機ポリシロキサン系軟質重合体、α,β−不飽和酸とその誘導体からなる軟質重合体、不飽和アルコール及びアミンまたはそのアシル誘導体またはアセタールからなる軟質重合体、エポキシ化合物の重合体、フッ素系ゴム等を適用出来る。
【0041】
発光体の基材層及び皮膜層に含まれる光散乱剤として適用可能な材料としては、炭酸カルシウム、硫酸バリウム、アルミナ、二酸化チタン、二酸化珪素、ガラスビーズ等の無機微粒子、スチレン架橋ビーズ、MS架橋ビーズ、シロキサン系架橋ビーズ等の有機微粒子等を挙げられる。また、メタクリル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、MS樹脂、環状オレフィン樹脂等の透明性の高い樹脂材料からなる中空架橋微粒子及びガラスからなる中空微粒子等も、光散乱剤として適用可能である。尚、光散乱剤は、基材層及び皮膜層を構成する樹脂中に分散されていることが好ましい。
【0042】
また、発光体の基材層及び皮膜層に分散される光散乱剤の形状は特に限定されるものではなく、例えば、真球状、球状、平面扇形状、キュービック状、平面菱形状、六方晶状、不定形状等の光散乱剤が適用可能である。
【0043】
本発明の発光体は、特定の層構成を有する。即ち、本発明の発光体は、光散乱剤濃度の低い基材層と、光散乱剤濃度の高い皮膜層とを、特定の厚さ比で有する。
【0044】
具体的には、本発明においては、基材層の厚さに対する皮膜層の厚さの比が1/300〜1/7であり、かつ、基材層の光散乱剤濃度に対する皮膜層の光散乱剤濃度の比が100/1〜2000/1である。
【0045】
尚、以下では、基材層の厚さに対する皮膜層の厚さの比を“皮膜層/基材層の厚さ比”と記し、基材層の光散乱剤濃度に対する皮膜層の光散乱剤濃度の比を“皮膜層/基材層の光散乱剤濃度比”と記す。
【0046】
尚、本発明において、光散乱剤濃度とは、光透過性樹脂中に含まれる光散乱剤の重量分率をppmで定義した値である。
【0047】
また、本発明においては、皮膜層/基材層の厚さ比が1/200〜1/15で、且つ、皮膜層/基材層の光散乱剤濃度比が200/1〜1500/1の範囲であることが好ましく、更に好ましくは、皮膜層/基材層の厚さ比が1/100〜1/25で、且つ、皮膜層/基材層の光散乱剤濃度比が300/1〜1000/1以下の範囲である。
【0048】
以下では、本発明の発光体の製造方法について記す。
【0049】
本発明では、光透過性樹脂中に光散乱剤を分散させ、その組成物を基材層及び皮膜層として用いることが好ましい。尚、上記したように、本発明においては、光透過性樹脂として熱可塑性の樹脂を用いることが好ましい。
【0050】
ここで、光透過性樹脂と光散乱剤とを有する光透過性樹脂組成物において、光散乱剤の微粒子が光透過性樹中に均一に分散しているのであれば、光透過性樹脂組成物の製造方法は、特に限定されない。但し、光散乱剤の微粒子を予め有機液体中に均一に分散させ、得られた分散液を用いて光透過性樹脂組成物を製造することが好ましい。
【0051】
発光体を構成する光透過性樹脂組成物の製造方法としては、光散乱剤の微粒子を予め有機液体中に分散させることにより、光散乱剤の微粒子を光透過性樹脂中に均一に分散させることが好ましい。また、光散乱剤の微粒子を有機液体中に均一に分散させるには、超音波発生装置を用いることが好ましい。
【0052】
尚、ここでいう有機液体としては、一般有機液体の他、光透過性樹脂を構成する重合性単量体等も含まれ、光散乱剤の微粒子が溶解、膨潤等を起こし難く、また均一に分散するものであれば特に限定されるものではない。また、光散乱剤の微粒子の分散状態により数種類の有機液体を任意の割合で混合して使用しても良い。
【0053】
一般有機液体としては、アセトン、メチルエチルケトン等のケトン類、キシレン、トルエン等の芳香族類、メタノール、エタノール等のアルコール類を適用することが出来る。また、重合性単量体としては、例えば光透過性樹脂がメタクリル樹脂の場合、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸プロピル、メタクリル酸ブチル、メタクリル酸シクロヘキシル、メタクリル酸フェニル、メタクリル酸2−エチルヘキシル等のメタクリル酸エステル類、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸ブチル、アクリル酸シクロヘキシル、アクリル酸フェニル、アクリル酸2−エチルヘキシル等のアクリル酸エステル類、メタクリル酸、アクリル酸等の不飽和酸類等が適用出来る。
【0054】
発光体の基材層及び皮膜層となる光透過性樹脂及び光散乱剤の微粒子を含む光透過性樹脂組成物を製造する場合、光散乱剤の微粒子を光透過性樹脂中に均一分散させる方法として、例えば、以下の(1)あるいは(2)の方法を適用することが出来る。
【0055】
(1)押出機で、基材層及び皮膜層となる透明熱可塑性樹脂と光散乱剤の微粒子とを溶融混練する方法:
この場合には、光散乱剤の微粒子を有機液体中に、好ましくは超音波発生装置を用いて分散させ、光散乱剤分散液を作成する。作成した光散乱剤分散液と光透過性樹脂とを混合し、その混合物を押出機で溶融混練する。その際、使用する有機液体は、上述の通り、光散乱剤の微粒子が溶解、膨潤等を起こすことなく、且つ均一に分散するものであれば何ら限定されるものではない。また分散状態により数種類の有機液体を任意の割合で混合して使用することが出来る。
【0056】
ここで、光散乱剤の微粒子と有機液体との混合比は、光散乱剤の微粒子の分散性を考慮して任意に決定することが出来るが、有機液体100重量部に対して光散乱剤の微粒子を0.001〜80重量部の範囲で混合することが好ましい。
【0057】
また、光散乱剤の微粒子と有機液体とからなる光散乱剤分散液と、発光体の基材となる光透過性樹脂との混合比も、混合押し出し工程でのハンドリング性を考慮して任意に決定することが出来るが、発光体の基材となる光透過性樹脂100重量部に対して分散液を0.001〜10重量部の範囲で混合することが好ましい。
【0058】
光散乱剤分散液の光透過性樹脂への混合方法は、特に限定されるものではなく、例えば、ヘンシェルミキサーによる混合、スーパーフローターによる混合、タンブラーによる混合といった周知慣用の混合方法で混合することが出来る。
【0059】
また、上記混合物の溶融混練に用いられる押出機についても必ずしも特異なものを用いる必要はなく、通常の単軸または二軸の押出機等であれば良い。但し、分散に使用した有機液体の揮発成分除去の観点から、ベント口で好ましくは300Torr以下の減圧脱揮が可能な押出機が好ましい。更に、ダイスとしては、皮膜厚さを制御可能な多層ダイスを用いる。
【0060】
また、光散乱剤の微粒子の二次凝集防止の観点から、二軸押出機を使用することが製造上好ましい。押出機の温度は、使用する光透過性樹脂の種類によって任意に設定することが出来る。例えば、光透過性樹脂としてメタクリル樹脂を用いる場合には、180℃〜260℃前後である。
【0061】
(2)キャスト法により重合し、発光体を得る方法:
この場合には、光散乱剤の微粒子を、基材となる光透過性樹脂の原料単量体、またはこの単量体と共重合可能な単量体中に、好ましくは超音波発生装置を用いて分散させる方法が適用出来る。この場合、光散乱剤の微粒子を原材料モノマーの一部に予め分散させ、その後、部分重合したポリマー溶液等に混合して使用することが好ましい。光散乱剤の微粒子とそれを分散する原料モノマーとの量比は、分散性、仕込み時の粘度、ハンドリング性等から任意に決定出来る。
【0062】
また、キャスト法における重合温度、重合時間、重合開始剤量等の重合条件や発光体となるシート(キャスト板)の形成方法についても特に限定されるものではない。シートの形成方法としては、例えば、ガラスセルキャスト法、連続キャスト法等が適用出来る。
【0063】
尚、粒子の分散に使用される超音波発生装置は、特に限定されるものではなく、市販の超音波洗浄機や超音波スターラー等を使用することが出来る。例えば、超音波周波数が28kHz〜100kHzの超音波洗浄機が一般的に使用される。超音波発生装置による照射時間は、光散乱剤の微粒子の分散状態により任意に設定出来るが、一般的には1分〜60分程度照射することが好ましい。
【0064】
本発明の発光体とLED光源とを用いて、発光システムを形成することができる。
【0065】
LED光源としては、プリント基板及び該プリント基板に搭載された一列に繰り返し並んだ複数対からなる赤色のLEDチップ、緑色のLEDチップ、青色のLEDチップからなるLEDチップ列を有する光源、あるいは、前記三原色のチップを一つにまとめた3in1タイプの光源を使用することが出来る。
(実施例)
【0066】
以下、本発明の実施の形態を実施例に基づいて詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0067】
本実施例において、光線透過率の測定方法としては、測定機器として東京電飾株式会社(TOKYO DENSHOKU CO., LTD)製の「COLOR AND COLOR DEFFERENCE METER MODEL TC−1500MC」を用い、光源には標準光を使用し、視野角10度で220mm長試験片(8mm幅×30mm高さ×220mm長さ)を透過する光束の三刺激値XYZを測定した。そのY値を光線透過率として採用した。
【実施例1】
【0068】
デルペットLP−1(メタクリル樹脂:旭化成ケミカルズ株式会社製)に光散乱剤として平均粒径0.5μmのアルミナを2.5ppmブレンドし、基材層用樹脂を用意した。更に、デルペットLP−1に前記のアルミナを1000ppmブレンドし皮膜層用樹脂を用意した。基材用樹脂をスクリュウ径120mmφ、L/D(押し出し長さ/押し出し直径)=32の押出し機に装填し、更に皮膜用樹脂をスクリュウ径40mmφ、L/D=32の押出し機に装填し、これらの押出し機を用いて、厚さ8mm、巾1000mmの積層シートを押し出し成形し、発光体を得た。皮膜の厚さは200μmであった。
【0069】
尚、ここで光散乱剤の平均粒径の測定法としては、光散乱剤の微粒子を有機液体中に超音波により分散させ、得られた分散液をマイクロトラック法を用いて測定し、50%累積粒径を平均粒径とした。
【0070】
その積層シートから長さ220mm、巾30mm、厚さ8mmのサイズの試験片を切り出して、切断面を研磨した後、図4に示すように、220mm光路長における光線透過率を前述の測定方法を用いて測定したところ42%であった。
【0071】
更に、図4に示すように、該試験片の1端面の中央部に入光部巾5mmの冷陰極管を配設し、輝度測定装置としてBM−7(株式会社トプコン製)を用いて、視野角1度、輝度計と試験片との離間距離50cmで試験片の上部表面の輝度を測定したところ、光源からの距離10mmの位置の輝度(L10)は75cd/m、光源からの距離210mmの位置の輝度(L210)は42cd/mであり、輝度比L10/L210は1.8であった。
【実施例2】
【0072】
本実施例では、基材層の光散乱剤の量を1.5ppmとした以外は前記実施例1と同様にして、多層シートを押し出して試験片を得た。該試験片の光線透過率は60%でL10は62cd/m、L210は36cd/mであり輝度比L10/L210は1.7であった。
【実施例3】
【0073】
本実施例では、基材層の光散乱剤の量を5ppmとした以外は前記実施例1と同様にして、積層シートを押し出して試験片を得た。該試験片の光線透過率は25%で、L10は98cd/m、L210は43cd/mであり輝度比L10/L210は2.3であった。
【実施例4】
【0074】
本実施例では、シートの皮膜層の厚さ100μm、皮膜層中の光散乱剤となるアルミナ濃度2000ppmとした以外は前記実施例1と同様にして、積層シートを押出して試験片を得た。該試験片の光線透過率は41%で、L10は78cd/m、L210は46cd/mであり輝度比L10/L210は1.7であった。
【実施例5】
【0075】
本実施例では、皮膜の光散乱剤を平均粒径7.5μmの炭酸カルシウムとし、皮膜の光散乱剤量を3500ppmとした以外は、前期実施例1と同様にして多層シートを押出して試験片を得た。該試験片の光線透過率は40%で、L10は65cd/m2、L210は36cd/m2であり、輝度比L10/L210は1.8であった。
【比較例1】
【0076】
比較例1では、光散乱剤を含まない単層シートを押し出して試験片を得た。該試験片の光線透過率は87%で、L10は3.1cd/m、L210は0.13cd/mであり輝度比L10/L210は24であった。
【比較例2】
【0077】
本比較例では、光散乱剤の量を12ppmとした以外は前記比較例1と同様にして、単層シートを押し出して試験片を得た。該試験片の光線透過率は13%で、L10は39cd/m、L210は17cd/mであり輝度比L10/L210は2.3であった。
【比較例3】
【0078】
本比較例では、光散乱剤の量を2ppmとした以外は前記比較例1と同様にして、単層シートを押し出して試験片を得た。該試験片の光線透過率は45%でL10は20cd/m、L210は1.1cd/mであり輝度比L10/L210は18であった。
【比較例4】
【0079】
本比較例では、基材層に光散乱剤を含まない以外は実施例1と同様にして、積層シートを押出して試験片を得た。該試験片の光線透過率は82%でL10は38cd/m、L210は17cd/mであり輝度比L10/L210は2.4であった。
【0080】
[視覚テスト]
前記実施例1〜4及び比較例1〜4で得たシートから長さ300mm、巾200mm、厚さ8mmのサイズに試験片を切り出して切断面を研磨した後、長さ300mmの端面(長尺方向の端面)に光源を配設し、照明デザイナー及びインテリアデザイナー計10名(A〜J)による視覚テストを実施した。その結果を表1に示す。尚、表1における評価基準は、下記の通りである。
【0081】
◎:極めてきれい。面及び端面からの出光が十分である
○:極めてきれい。面及び端面からの出光が若干劣る
△:きれいだが、面及び端面からの出光は不十分である
×:面及び端面からの出光を感じない、もしくは、出光均一性に劣る。
【表1】

【0082】
表1に示すように、比較例1は表面及び端面からの出光を全く感じないとして10名全員が低評価であったが、各実施例1〜4は概ね表面及び端面からの出光を優れていると感じ、極めてきれいな出光バランスと意匠性に優れているとの高評価を得た。比較例2及び4については輝度比は良好であるが、輝度が低いため各実施例に劣るとの評価を得た。
【0083】
図5は、各実施例及び比較例の光源からの距離と輝度の関係(L10、L210)を示したものである。尚、発光体の基材、光散乱剤、製造方法、輝度の測定方法等は前記実施例と同様である。
【0084】
図5から基材及び皮膜に光散乱剤を添加すると輝度と輝度比の向上に有効であることが分かる。又、光散乱剤の種類によっては、上記各実施例での添加量、或いは光散乱剤の平均粒径に限定されるものではなく、発光体の光線透過率と光散乱性能のバランスにより任意に選定することが出来る。
【0085】
本発明を詳細にまた特定の実施態様を参照して説明したが、本発明の精神と範囲を逸脱することなく様々な変更や修正を加えることができることは当業者にとって明らかである。
【0086】
本出願は、2004年11月26日出願の日本特許出願(特願2004−341899)、2004年11月26日出願の日本特許出願(特願2004−341900)、及び、2004年11月26日出願の日本特許出願(特願2004−341901)に基づくものであり、その内容はここに参照として取り込まれる。
【産業上の利用可能性】
【0087】
本発明の活用例として、棚、ショーケース、パーテーション、サイン等のディスプレイ装置、非常口やトイレ等の表示灯、面発光照明器、面発光&エッジ発光照明器等の照明器具、パネル、パーテーション、ウォール等の建材、キッチン、バス・トイレ、階段、クローゼット、看板、床下発光等の住宅設備、アーケードゲーム機、フード等の大型ゲーム機等に広く適用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0088】
【図1】図1(a)は、本発明に係る発光体の構成を示す斜視図である。図1(b)は、本発明に係る発光体の構成を示す平面図である。
【図2】図2は、本発明に係る発光体の表面や端面からの出光の様子を示す模式図である。
【図3】図3は、実際の発光体が光を出光する様子を示す写真を示す図である。
【図4】図4は、本発明に係る発光体の輝度を測定する方法を説明する模式図である。
【図5】図5は、発光体表面の光源からの距離と輝度の分布を示す図である。
【符号の説明】
【0089】
1…発光体
2…LED光源

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光源からの光により発光する発光体であって、
前記発光体は、第1の光散乱剤を含む皮膜層、及び、第2の光散乱剤を含む基材層を有し、
前記基材層の厚さに対する前記皮膜層の厚さの比が1/300〜1/7であり、
前記基材層の光散乱剤濃度に対する前記皮膜層の光散乱剤濃度の比が100/1〜2000/1である発光体。
【請求項2】
前記皮膜層が第1の光透過性樹脂及び前記第1の光散乱剤を含み、
前記基材層が第2の光透過性樹脂及び前記第2の光散乱剤とを含む請求項1に記載の発光体。
【請求項3】
前記第1の光透過性樹脂がメタクリル樹脂である請求項2に記載の発光体。
【請求項4】
前記第2の光透過性樹脂がメタクリル樹脂である請求項2に記載の発光体。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1項に記載の発光体、及び、光源とを有する発光システムであって、前記光源がLED光源である発光システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2006−179476(P2006−179476A)
【公開日】平成18年7月6日(2006.7.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−341409(P2005−341409)
【出願日】平成17年11月28日(2005.11.28)
【出願人】(303046314)旭化成ケミカルズ株式会社 (2,513)
【出願人】(504437384)伊藤合成株式会社 (4)
【Fターム(参考)】