説明

発光体

【課題】発光寿命が長く、かつ長期間の使用での色度安定性に優れ、さらには高輝度で発光効率が高く、駆動電圧が低い有機エレクトロルミネッセンス素子と光学部材とからなる発光体を提供する。
【解決手段】基体上に陽極、複数の発光層及び陰極を有し、発光波長の異なる2種以上のリン光性ドーパントを有する有機エレクトロルミネッセンス素子と、該有機エレクトロルミネッセンス素子に組み合わされた光学部材からなり、該光学部材の経時による色度変化を、有機エレクトロルミネッセンス素子の経時による色度変化が補償する特性を有し、発光体を連続発光したとき、発光の初期輝度の1/2まで輝度が低下した時点での発光初期に対する色度変化巾が、CIE1931表色系の色度に準拠したx値が±0.10、y値が±0.10の領域内にあることを特徴とする発光体。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有機エレクトロルミネッセンスと発光部材から構成される発光体に関するものである。
【背景技術】
【0002】
発光型の電子ディスプレイデバイスとして、エレクトロルミネッセンスディスプレイ(ELD)がある。ELDの構成要素としては、無機エレクトロルミネッセンス素子や有機エレクトロルミネッセンス素子(以下、有機EL素子ともいう)が挙げられる。無機エレクトロルミネッセンス素子は平面型光源として使用されてきたが、発光素子を駆動させるためには、交流の高電圧が必要となる。
【0003】
一方、有機エレクトロルミネッセンス素子は、発光する化合物を含有する発光層を陰極と陽極で挟んだ構成を有し、発光層に電子及び正孔を注入して、再結合させることにより励起子(エキシトン)を生成させ、このエキシトンが失活する際の光の放出(蛍光、リン光等)を利用して発光する素子であり、数V〜数十V程度の電圧で発光が可能であり、更に自己発光型であるために視野角に富み、視認性が高く、薄膜型の完全固体素子であるために省スペース、携帯性等の観点から注目されている。
【0004】
この有機EL素子を用いて白色パネルを形成し、消費電力の改善などの要望は益々高まっている。白色パネルの製造方法としては、例えば、一つの発光層に複数の発光ドーパントを含有させる方法や、単独の発光ドーパントを含有する発光層を複数積層した方法が提案されている(例えば、特許文献1〜3参照。)。
【0005】
発光ドーパントの分光発光特性は、その化合物の構造に大きく依存する。単独の化合物で、所望の分光発光特性を有し、発光効率が高く、長寿命であって、さらに有機EL素子の製造適性など、全ての特性を備えた理想的な化合物の開発がなされてはいるが、現状では、発光特性の異なる複数の発光ドーパントを適宜組み合わせて、所望の分光発光特性を得ているのが現状である。
【0006】
上記のような組み合わせにおいては、主には分光発光特性が最優先されるため、用いる発光ドーパントの寿命に不揃いが生じ、かかる有機EL素子により形成された発光体を長期間発光させた場合、発光開始初期の色度に対し、色調ずれを生ずることがある。発光体が単一で存在する場合には、人間の視覚としてはほとんど認知されない程度のずれであるが、多数の同色の有機EL素子を組み合わせた発光体の場合は、色調のずれが目立つことがある。従って、この長期間にわたる発光特性や、長期間様々な環境下で保存された後の発光体の色調変動を小さくする方法の開発が要望されている。
【0007】
上記課題に対し、寿命を最適化した原色を有する有機エレクトロルミネッセンスデバイス(OLED)の設計方法の開示(例えば、特許文献4参照。)があるが、この方法は、単に有効寿命と表示色域との間のトレードオフを計算によって求めているだけであって、上記のような要望に対しては、充分に答えているとは言い難いのが現状である。
【特許文献1】特開平07−142169号公報
【特許文献2】特開2003−187977号公報
【特許文献3】特開2004−63349号公報
【特許文献4】特開2004−281373号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、上記課題に鑑みなされたものであり、その目的は、発光寿命が長く、かつ長期間の使用での色度安定性に優れた有機エレクトロルミネッセンス素子と光学部材とからなる発光体を提供することであり、さらには高輝度で発光効率が高く、駆動電圧が低い有機エレクトロルミネッセンス素子と光学部材とからなる発光体を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の上記目的は、以下の構成により達成される。
【0010】
1.基体上に少なくとも陽極、複数の発光層及び陰極を有し、発光波長の異なる少なくとも2種のリン光性ドーパントを有する有機エレクトロルミネッセンス素子と、該有機エレクトロルミネッセンス素子に組み合わされた光学部材とからなる発光体であって、該光学部材の経時による色度変化を、有機エレクトロルミネッセンス素子の経時による色度変化が補償する特性を有し、発光体を連続発光したとき、発光の初期輝度の1/2まで輝度が低下した時点での発光初期に対する色度変化巾が、CIE1931表色系の色度に準拠したx値が±0.10、y値が±0.10の領域内にあることを特徴とする発光体。
【0011】
2.基体上に少なくとも陽極、複数の発光層及び陰極を有し、発光波長の異なる少なくとも2種のリン光性ドーパントを有する有機エレクトロルミネッセンス素子と、該有機エレクトロルミネッセンス素子に組み合わされた光学部材とからなる発光体であって、該光学部材の発光初期の色度に対する、未発光の状態で70℃の環境下で200時間保存した後の色度変化を、有機エレクトロルミネッセンス素子の経時による色度変化が補償する特性を有し、発光体の色度変化巾が、CIE1931表色系の色度に準拠したx値が±0.10、y値が±0.10の領域内にあることを特徴とする発光体。
【0012】
3.前記発光層に含有される発光波長の異なる少なくとも2種のリン光性ドーパントが、その最大発光ピーク波長が430〜480nm、500〜540nm、520〜560nm及び580〜640nmの4区分から選ばれる少なくとも2つであることを特徴とする前記1または2に記載の発光体。
【0013】
4.前記リン光性ドーパントの少なくとも1つが、最大発光ピーク波長が430〜480nmの青色リン光性ドーパントであることを特徴とする前記1〜3のいずれか1項に記載の発光体。
【0014】
5.前記青色リン光性ドーパントが、下記一般式(A)で表される化合物であることを特徴とする前記4に記載の発光体。
【0015】
【化1】

【0016】
〔式中、R1は置換基を表す。Zは5〜7員環を形成するのに必要な非金属原子群を表す。n1は0〜5の整数を表す。B1〜B5は炭素原子、窒素原子、酸素原子もしくは硫黄原子を表し、少なくとも一つは窒素原子を表す。M1は元素周期表における8族〜10族の金属を表す。X1及びX2は炭素原子、窒素原子もしくは酸素原子を表し、L1はX1及びX2と共に2座の配位子を形成する原子群を表す。m1は1、2または3の整数を表し、m2は0、1または2の整数を表すが、m1+m2は2または3である。〕
6.下記一般式(B)で表されるホスト化合物を含有することを特徴とする前記1〜5のいずれか1項に記載の発光体。
【0017】
【化2】

【0018】
〔式中、Xは、NR′、O、S、CR′R″またはSiR′R″を表す。R′、R″は、各々水素原子または置換基を表す。Arは芳香環を表す。nは0から8の整数を表す。〕
7.前記陽極または陰極は、光線透過率が50%以上の透明電極であることを特徴とする前記1〜6のいずれか1項に記載の発光体。
【0019】
8.前記基体は、光線透過率が80%以上の透明フィルムであることを特徴とする前記1〜7のいずれか1項に記載の発光体。
【0020】
9.大気圧プラズマ法により作製された封止フィルムにより封止されていることを特徴とする前記1〜8のいずれか1項に記載の発光体。
【0021】
10.前記色度変化巾が、x値で±0.05、y値で±0.05の領域内にあることを特徴とする前記1〜9のいずれか1項に記載の発光体。
【0022】
11.前記光学部材が、70℃の環境下で、高圧水銀灯で160mJ/cm2の条件で200時間処理した後の色度変化が、CIE1931表色系の色度に準拠したx値が−0.10〜−0.20、y値が−0.10から−0.20の領域内にあることを特徴とする前記1〜11のいずれか1項に記載の発光体。
【0023】
12.前記光学部材が、光取り出し効率が80%%以上の光取り出しフィルムであることを特徴とする前記1〜11のいずれか1項に記載の発光体。
【0024】
また、本発明においては、本発明に係る有機エレクトロルミネッセンス素子を用いて構成した本発明の発光体を適用して、下記の実施形態とすることが好ましい。
【0025】
13.消灯時は透明性を有し、発光時は不透明性となる可逆的遮光機能を有する発光体。
【0026】
14.昼間は消灯して透明なサンルーフとし、夜間は発光させて室内灯とした有機エレクトロルミネッセンス素子窓。
【0027】
15.複数の発光色からなる有機エレクトロルミネッセンス素子を組合わせて、一体整形した自動車用リアコンビネーションランプ。
【0028】
16.夜間に人を検知して、有機エレクトロルミネッセンス素子照明の発光数を増やす、または輝度を高めることによって明るくする停留所用照明。
【0029】
17.発光体を家庭のリビングまたはキッチンに設置して、植物の育成を促進する家庭菜園用照明。
【0030】
18.吸引ノズルの先端に、周囲の暗さを検知して発光する発光体を設置した掃除機。
【0031】
19.髭の剃り残し状況を強調する特定波長の発光体を備えた髭剃り機。
【0032】
20.スケーターの位置を検知して、その動きに合わせて稼働する発光体を用いたスケートリンクの氷下照明。
【0033】
21.ドーム内側表面に有機エレクトロルミネッセンス素子のピクセルを配置したプラネタリウム。
【0034】
22.歩行により発電した電力により発光体を発光する衣服。
【0035】
23.有機エレクトロルミネッセンス素子を短時間に多数回の明滅信号を発生させて、照明と兼用した可視光タグ用送信機。
【0036】
24.体内の位置によって発光体の発光色の変更が可能な内視鏡カプセル。
【発明の効果】
【0037】
本発明により、発光寿命が長く、かつ長期間の使用での色度安定性に優れた有機エレクトロルミネッセンス素子と光学部材とからなる発光体を提供することであり、さらには高輝度で発光効率が高く、駆動電圧が低い有機エレクトロルミネッセンス素子と光学部材とからなる発光体を提供することができ、新規な用途に活用が可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0038】
以下、本発明に係る各構成要素の詳細について順次説明する。
【0039】
《有機エレクトロルミネッセンス素子》
はじめに、本発明の発光体を構成する有機EL素子について説明する。
【0040】
本発明に係る有機EL素子とは、基本的には少なくとも基体、陽極と陰極からなる電極、複数の発光層から構成され、発光波長の異なる少なくとも2種のリン光性ドーパントを発光層の少なくとも2層に配分した構成を取るものである。
【0041】
《有機エレクトロルミネッセンス素子の発光、正面輝度、色度》
本発明に係る有機EL素子や該有機EL素子に係る化合物の発光色の色度は、「新編色彩科学ハンドブック」(日本色彩学会編、東京大学出版会、1985)の108頁の図4.16において、分光放射輝度計CS−1000(コニカミノルタセンシング社製)で測定した結果をCIE1931表色系(XYZ表色系)の色度座標に当てはめたときの色で決定される。
【0042】
《経時における色度変化》
本発明でいう経時における色度変化は、以下に示す2つの特性を意味する。
【0043】
第1の特性は、光学部材の経時による色度変化を、有機エレクトロルミネッセンス素子の経時による色度変化が補償する特性を有し、発光体を連続発光したとき、発光の初期輝度の1/2まで輝度が低下した時点での発光初期に対する色度変化巾が、CIE1931表色系の色度に準拠したx値が±0.10、y値が±0.10の領域内にあることを特徴とする。
【0044】
本発明においては、発光初期とは、有機EL素子の出荷する時点とする。すなわち、それは、ユーザーが最初に発光させる時点に近似であると見なすことができる。また、有機EL素子の組み立て製造後に、品質安定化のためにエージング処理を施す場合には、エージング処理終了後となる。
【0045】
本発明でいう輝度が1/2まで低下した状態とは、有機EL素子を連続稼働させた後、発光初期と同じ電流、電圧で得られる輝度が1/2となった状態を言い、発光初期と同等の温度、湿度雰囲気下で測定することが好ましい。例えば、発光初期の輝度が1,000Cd/cm2であった場合、輝度がほぼ1/2(500Cd/cm2)になった時点で、発光初期と同じ電流、電圧および雰囲気(温度、湿度)で、輝度と色度を複数回測定し、それらのデータの内そう、外そうによって、輝度が1/2まで低下した時点での色度が決定される。
【0046】
色度の変動巾が、本発明で規定するx値が±0.10、y値が±0.10の領域内の変化であっても、特に、同色度座標上で、イエロー方向に変化するように設計することが好ましい。この方向での変化は、人間の視覚特性の関係で認知しにくいために、実用上での不都合を低く抑えることができ好ましい。
【0047】
本発明に係る有機EL素子でいう経時における色度変化の第2の特性は、光学部材の発光初期の色度に対する、未発光の状態で70℃の環境下で200時間保存した後の色度変化を、有機エレクトロルミネッセンス素子の経時による色度変化が補償する特性を有し、発光体の色度変化巾が、CIE1931表色系の色度に準拠したx値が±0.10、y値が±0.10の領域内にあることを特徴とする。
【0048】
これは、有機EL素子を発光させないで、高温環境下で長期間保存した場合の耐久性を意味しており、本発明に係る有機EL素子は、未発光で長期間保存した場合でも、発光色の色度変化が小さいことを示すものである。
【0049】
本発明において、有機EL素子の発光初期から連続発光で輝度が1/2まで低下する時点での色度変化、あるいは、発光初期と、未発光で70℃で200時間保存した後の色度変化が、CIE1931表色系の色度において、x値が±0.10、y値が±0.10の領域内に維持するには、以下の構成が推奨される。
【0050】
1.発光波長の異なる少なくとも2種のリン光性ドーパントを用い、それらを少なくとも2層の発光層に配分すること、
2.発光層に含有されるリン光性ドーパントが、その最大発光ピーク波長が430〜480nm、500〜540nm、520〜560nm及び580〜640nmの4区分の中から選ばれること、
3.発光層に含有されるリン光性ドーパントの少なくとも1つが、最大発光ピーク波長が430〜480nmの青色リン光性ドーパントであること、
4.青色リン光性ドーパントが、前記一般式(A)で表される特定構造を有する化合物であること、
5.有機EL素子が、前記一般式(B)で表される特定構造を有するホスト化合物を含有すること、
6.有機EL素子の陽極および陰極の少なくとも1つが、透明電極であること
7.さらには、該青色リン光性ドーパントの少なくとも1つが、用いられるすべてのリン光性ドーパントの中で最も発光寿命が長いこと、
8.さらには、最大発光ピーク波長が2番目に短波側にあるリン光性ドーパントの発光寿命が、2番目に長いこと、
である。
【0051】
《層構成》
本発明に係る有機EL素子を構成する発光層に含有されるリン光性ドーパントは、最大発光ピーク波長が各々430〜480nm、500〜540nm、520〜560nm、580〜640nmの4区分において、同一区分の中から最大発光ピーク波長が異なる少なくとも2種を選んでも良いが、最大発光ピーク波長の異なる少なくとも2区分以上から選ぶことが好ましく、かくして選ばれたリン光性ドーパントを、同一発光層に含む層が複数からなることが好ましい。
【0052】
本発明では、前記波長区分が異なる場合を、発光色が異なると定義する。詳しくは、430〜480nmに最大発光ピーク波長を有する場合を青色(B)、500〜540nmに最大発光ピーク波長を有する場合を緑色(G)、520〜560nmに最大発光ピーク波長を有する場合を黄色(Y)、580〜640nmに最大発光ピーク波長を有する場合を赤色(R)とする。好ましくは、選択された発光色のうち、発光波長が近い発光ドーパントが同一層に含有される。これによって長波長の発光ドーパントへのエネルギー遷移が高まり、発光効率が向上する。一例を示すと、発光ドーパントとして青色−緑色−赤色から構成される場合、青色−緑色、または緑色−赤色の少なくとも一方の発光ドーパントが、同一層に含有される。発光ドーパントとして青色−緑色−黄色−赤色から構成される場合、青色−緑色、緑色−黄色、黄色−赤色の少なくとも一種の発光ドーパントが同一層に含有され、より長波長の発光ドーパントを含有する発光色が同一層に含まれる場合が好ましく、具体的には黄色−赤色、緑色−黄色である。
【0053】
更に、発光色が異なる複数の発光ドーパントを含有する発光層が、複数層から構成されることが好ましい。これは、前述のエネルギー遷移が有利な構成となる層が複数存在する方が、より有利だからである。また、発光色の異なる複数の発光ドーパントのうち、より長波長の発光ドーパントの体積濃度が2%以下であることが好ましい。長波長の発光ドーパントほどイオン化ポテンシャルが小さく、HOMOが浅い場合が多い。即ち、正孔を保持しやすく、その結果、導電性が下がるので含有率が低いと正孔保持が緩和され、導電性上有利となり、また、所望の輝度を得るための駆動電圧が低下し、消費電力が改善されるという長所がある。
【0054】
しかし、重要なことはHOMOのエネルギー準位及び発光ドーパントの構造である。ただし、HOMOが浅い青色発光ドーパントを用いる場合は、この限りではない。HOMOが浅い発光ドーパントを含む発光層は、発光層の中で最も陰極側に積層することが好ましい。この様な構成は、赤色発光ドーパントである場合が多いが、例えば、白色となるために選択した発光色の中で、青色発光ドーパントが最もHOMOが浅い場合は、青色発光ドーパントを含有する発光層を最も陰極側に積層する。なお、同一発光層内に含有させる発光色が異なる発光ドーパントは2種が好ましい。3種以上であってもよいが、蒸着によって層を形成する場合には、その条件のコントロールがやや困難になるからである。
【0055】
本発明における層構成の好ましい具体例を以下に示すが、本発明はこれらに限定されない。
【0056】
(i)陽極/正孔輸送層/電子阻止層/発光層ユニット/正孔阻止層/電子輸送層/陰極
(ii)陽極/正孔輸送層/電子阻止層/発光層ユニット/正孔阻止層/電子輸送層/陰極バッファー層/陰極
(iii)陽極/陽極バッファー層/正孔輸送層/電子阻止層/発光層ユニット/正孔阻止層/電子輸送層/陰極
(iv)陽極/陽極バッファー層/正孔輸送層/電子阻止層/発光層ユニット/正孔阻止層/電子輸送層/陰極バッファー層/陰極
ここでいう発光層ユニットとは、最も陽極側に位置する発光層から最も陰極側に位置する発光層まで積層された有機層を指す。また、該発光層ユニットは、各発光層間に非発光性の中間層を有していることが好ましい。
【0057】
《エレクトロンドナー》
本発明でいうエレクトロンドナーとは、電子供与性化合物を指す。単体ではなく、ドーパントとしてホストと混合することにより有機層を形成する。エレクトロンドナーにより還元されたホストがアニオンラジカル状態で存在する。
【0058】
エレクトロンドナーを含有する層は、発光層でも構わない。この場合、ドーパントは、キャリアドナーと発光源を含有することとなる。発光源は、蛍光でもリン光でも構わない。本発明において、エレクトロンドナーは、好ましくは電子輸送層に含有される。
【0059】
《エレクトロンアクセプター》
本発明でいうエレクトロンアクセプーとは、電子受容性化合物を指す。単体ではなく、ドーパントとしてホストと混合することにより有機層を形成する。エレクトロンアクセプターにより酸化されたホストがカチオンラジカル状態で存在する、所謂、p型半導体層を形成する場合が好ましい。
【0060】
エレクトロンアクセプターを含有する層は発光層でも構わない。この場合、ドーパントは、キャリアアクセプーと発光源を含有することとなる。発光源は、蛍光でもリン光でも構わない。本発明において、エレクトロンアクセプターは、好ましくは正孔輸送層に含有される。
【0061】
《電子輸送層》
本発明に係る有機EL素子に適用される電子輸送層は、n型半導体層であることが好ましい。駆動電圧に効果が認められ、キャリアドナーのドープにより電子密度を高めたり、浅いLUMO準位を形成し、ホッピングによる電子移動度を高めることができる。本発明に係る有機EL素子においては、電子輸送層は単層または複数層設けることができる。
【0062】
電子輸送層が含有する電子輸送材料としては、既知のものを使用できる。例えば、ニトロ置換フルオレン誘導体、ジフェニルキノン誘導体、チオピランジオキシド誘導体、カルボジイミド、フレオレニリデンメタン誘導体、アントラキノジメタン及びアントロン誘導体、オキサジアゾール誘導体等が挙げられる。更に、上記オキサジアゾール誘導体において、オキサジアゾール環の酸素原子を硫黄原子に置換したチアジアゾール誘導体、電子吸引基として知られているキノキサリン環を有するキノキサリン誘導体も電子輸送材料として用いることができる。更にこれらの材料を高分子鎖に導入した、またはこれらの材料を高分子の主鎖とした高分子材料を用いることもできる。
【0063】
また、8−キノリノール誘導体の金属錯体、例えば、トリス(8−キノリノール)アルミニウム(Alq)、トリス(5,7−ジクロロ−8−キノリノール)アルミニウム、トリス(5,7−ジブロモ−8−キノリノール)アルミニウム、トリス(2−メチル−8−キノリノール)アルミニウム、トリス(5−メチル−8−キノリノール)アルミニウム、ビス(8−キノリノール)亜鉛(Znq)等、及びこれらの金属錯体の中心金属がIn、Mg、Cu、Ca、Sn、GaまたはPbに置き替わった金属錯体も、電子輸送材料として用いることができる。
【0064】
その他、メタルフリーもしくはメタルフタロシアニン、またはそれらの末端がアルキル基やスルホン酸基等で置換されているものも、電子輸送材料として好ましく用いることができる。また、発光層の材料として例示したジスチリルピラジン誘導体も、電子輸送材料として用いることができる。
【0065】
本発明において、キャリアドナー材料としては、既知の材料を使用できる。例えば、特開平4−297076号公報、特開平10−270172号公報、特開2000−196140号公報、特開2001−102175号公報、J.Appl.Phys.,95,5773(2004)などに記載された化合物を挙げることができる。また、特開2006−41020号公報に記載の一般式(8)〜(10)で表される化合物も好ましく用いられる。
【0066】
上記電子輸送材料やキャリアドナーは、例えば、真空蒸着法、スピンコート法、キャスト法、インクジェット法を含む印刷法、LB法(ラングミュア−ブロジェット法)等の公知の方法により、薄膜化することにより形成することができる。
【0067】
好ましいキャリアドナー蒸着条件は、材料の種類により一概に特定できないが、本発明においては、キャリアドナー含有平均体積濃度は5〜95%であり、少なくとも最大濃度と最低濃度の差が5%以上濃度が異なる領域が存在する。最高濃度と最低濃度の差は20〜90%であるが、好ましい最高濃度は15〜95%。更に好ましくは25〜90%である。電子輸送層における最高濃度領域の膜厚比は1〜50%であり、更に好ましくは2%から45%である。
【0068】
膜厚としては、通常、1nm〜1μm程度、好ましくは5〜200nmである。陽極側に隣接する有機層界面から電子輸送層の1/3の膜厚における領域では、キャリアドナーの濃度は導電性を損なわない範囲で低いほど、連続駆動寿命の観点から好ましい。材料によって異なるが、5以下である場合が多い。本発明では、ドナー体積濃度が5%以上異なる領域が3つ以上あると、発光効率が更に向上する場合があり、その一例は連続的に変化する場合である。
【0069】
《正孔輸送層》
本発明に使用される正孔輸送層は、所謂p型半導体層である場合が好ましい。この構成とすることにより、低駆動電圧化に効果が認められ、キャリアアクセプターのドープにより、正孔密度を高めたり、浅いHOMO準位を形成し、ホッピングによる正孔移動度を高めることができる。本発明において、正孔輸送層は単層または複数層設けることができる。
【0070】
正孔輸送材料としては、既知のものを使用でき、例えば、トリアゾール誘導体、オキサジアゾール誘導体、イミダゾール誘導体、ポリアリールアルカン誘導体、ピラゾリン誘導体及びピラゾロン誘導体、フェニレンジアミン誘導体、アリールアミン誘導体、アミノ置換カルコン誘導体、オキサゾール誘導体、スチリルアントラセン誘導体、フルオレノン誘導体、ヒドラゾン誘導体、スチルベン誘導体、シラザン誘導体、アニリン系共重合体、また導電性高分子オリゴマー、特に、チオフェンオリゴマー等が挙げられる。
【0071】
正孔輸送材料としては上記のものを使用することができるが、更には、ポルフィリン化合物、芳香族第3級アミン化合物及びスチリルアミン化合物、特に芳香族第3級アミン化合物を用いることが好ましい。
【0072】
芳香族第3級アミン化合物及びスチリルアミン化合物の代表例としては、N,N,N′,N′−テトラフェニル−4,4′−ジアミノフェニル;N,N′−ジフェニル−N,N′−ビス(3−メチルフェニル)−〔1,1′−ビフェニル〕−4,4′−ジアミン(TPD);2,2−ビス(4−ジ−p−トリルアミノフェニル)プロパン;1,1−ビス(4−ジ−p−トリルアミノフェニル)シクロヘキサン;N,N,N′,N′−テトラ−p−トリル−4,4′−ジアミノビフェニル;1,1−ビス(4−ジ−p−トリルアミノフェニル)−4−フェニルシクロヘキサン;ビス(4−ジメチルアミノ−2−メチルフェニル)フェニルメタン;ビス(4−ジ−p−トリルアミノフェニル)フェニルメタン;N,N′−ジフェニル−N,N′−ジ(4−メトキシフェニル)−4,4′−ジアミノビフェニル;N,N,N′,N′−テトラフェニル−4,4′−ジアミノジフェニルエーテル;4,4′−ビス(ジフェニルアミノ)クオードリフェニル;N,N,N−トリ(p−トリル)アミン;4−(ジ−p−トリルアミノ)−4′−〔4−(ジ−p−トリルアミノ)スチリル〕スチルベン;4−N,N−ジフェニルアミノ−(2−ジフェニルビニル)ベンゼン;3−メトキシ−4′−N,N−ジフェニルアミノスチルベンゼン;N−フェニルカルバゾール、更には米国特許第5,061,569号明細書に記載されている2個の縮合芳香族環を分子内に有するもの、例えば、4,4′−ビス〔N−(1−ナフチル)−N−フェニルアミノ〕ビフェニル(以下、NPDともいう)、特開平4−308688号公報に記載されているトリフェニルアミンユニットが3つスターバースト型に連結された4,4′,4″−トリス〔N−(3−メチルフェニル)−N−フェニルアミノ〕トリフェニルアミン(以下、MTDATAともいう)等が挙げられる。更にこれらの材料を高分子鎖に導入した、またはこれらの材料を高分子の主鎖とした高分子材料を用いることもできる。また、p型−Si、p型−SiC等の無機化合物も使用することができる。
【0073】
本発明において、キャリアアクセプター材料としては、既知の材料を使用できる。例えば、特開平11−251067号公報、J.Huang et.al.著文献(Applied Physics Letters 80(2002),p.139)、特開平4−297076号公報、特開2000−196140号公報、特開2001−102175号公報、特開2004−281371号公報、J.Appl.Phys.,95,5773(2004)等に記載されたものが挙げられる。また、特開2006−41020号公報における一般式(1)〜(7)も好ましく用いられる。
【0074】
上記正孔輸送材料やキャリアアクセプターは、例えば、真空蒸着法、スピンコート法、キャスト法、インクジェット法を含む印刷法、LB法等の公知の方法により、薄膜化することにより形成することができる。
【0075】
キャリアアクセプターの好ましい濃度条件は、材料の種類により一概に特定できないが、概ねアクセプター含有平均体積濃度は0.1〜30%であり、少なくとも該平均濃度よりも3%以上濃度が異なる領域が存在することが好ましい。0%は本発明の主旨から外れ、100%では絶縁体に近くなるためか、本発明の効果が得られない。最高濃度と最低濃度の差は1〜30%であるが、好ましくは1〜20%。更に好ましくは1〜10%である。最高濃度領域の膜厚比は1〜50%であり、更に好ましくは2%から45%である。
【0076】
膜厚としては、通常は1nm〜1μm程度、好ましくは5〜200nmである。正孔輸送層と陰極側に隣接する有機層界面から5nm以内では、キャリアアクセプターの濃度は導電性を損なわない範囲で低いほど、連続駆動寿命の観点から好ましい。
【0077】
《注入層:電子注入層、正孔注入層》
注入層は、必要に応じて設けることができ、上記の如く陽極と発光層または正孔輸送層の間、及び陰極と発光層または電子輸送層との間に存在させてもよい。注入層とは、駆動電圧低下や発光輝度向上のために電極と有機層間に設けられる層のことで、「有機EL素子とその工業化最前線(1998年11月30日エヌ・ティー・エス社発行)」の第2編第2章「電極材料」(123〜166頁)に詳細に記載されており、正孔注入層(陽極バッファー層)と電子注入層(陰極バッファー層)とがある。
【0078】
陽極バッファー層(正孔注入層)は、特開平9−45479号公報、同9−260062号公報、同8−288069号公報等にその詳細が記載されており、具体例として、銅フタロシアニンに代表されるフタロシアニンバッファー層、酸化バナジウムに代表される酸化物バッファー層、アモルファスカーボンバッファー層、ポリアニリン(エメラルディン)やポリチオフェン等の導電性高分子を用いた高分子バッファー層等が挙げられる。
【0079】
陰極バッファー層(電子注入層)は、特開平6−325871号公報、同9−17574号公報、同10−74586号公報等にその詳細が記載されており、具体例として、ストロンチウムやアルミニウム等に代表される金属バッファー層、フッ化リチウムに代表されるアルカリ金属化合物バッファー層、フッ化マグネシウムに代表されるアルカリ土類金属化合物バッファー層、酸化アルミニウムに代表される酸化物バッファー層等が挙げられる。上記バッファー層(注入層)はごく薄い膜であることが望ましく、素材にもよるがその膜厚は0.1nm〜5μmの範囲が好ましい。
【0080】
《阻止層:正孔阻止層、電子阻止層》
阻止層は、上記の如く有機化合物薄膜の基本構成層の他に、必要に応じて設けられる層である。例えば、特開平11−204258号公報、同11−204359号公報、及び「有機EL素子とその工業化最前線(1998年11月30日エヌ・ティー・エス社発行)」の237頁等に記載されている正孔阻止(ホールブロック)層がある。
【0081】
正孔阻止層とは広い意味では電子輸送層の機能を有し、電子を輸送する機能を有しつつ正孔を輸送する能力が著しく小さい正孔阻止材料からなり、電子を輸送しつつ正孔を阻止することで、電子と正孔の再結合確率を向上させることができる。また、後述する電子輸送層の構成を、必要に応じて正孔阻止層として用いることができる。本発明に係る有機EL素子の正孔阻止層は、発光層に隣接して設けられていることが好ましい。
【0082】
また、本発明においては複数の発光色の異なる発光層を有するが、このような場合にはその発光極大波長が最も短波にある発光層が全発光層中、最も陽極に近いことが好ましいが、このような場合、該最短波発光層と該層の次に陽極に近い発光層との間に正孔阻止層を追加して設けることが好ましい。更には、該位置に設けられる正孔阻止層に含有される化合物の50質量%以上が、最短波発光層のホスト化合物に対し、そのイオン化ポテンシャルが0.2eV以上大きいことが好ましい。
【0083】
イオン化ポテンシャルとは、化合物のHOMO(最高被占分子軌道)レベルにある電子を真空準位に放出するのに必要なエネルギーで定義され、例えば、下記に示すような方法により求めることができる。
【0084】
(1)米国Gaussian社製の分子軌道計算用ソフトウェアであるGaussian98(Gaussian98、Revision A.11.4,M.J.Frisch,et al,Gaussian,Inc.,Pittsburgh PA,2002.)を用い、キーワードとしてB3LYP/6−31Gを用いて構造最適化を行うことにより算出した値(eV単位換算値)の小数点第2位を四捨五入した値としてイオン化ポテンシャルを求めることができる。この計算値が有効な背景には、この手法で求めた計算値と実験値の相関が高いためである。
【0085】
(2)イオン化ポテンシャルは、光電子分光法で直接測定する方法により求めることもできる。例えば、理研計器社製の低エネルギー電子分光装置「Model AC−1」を用いて、あるいは紫外光電子分光として知られている方法を好適に用いることができる。
【0086】
一方、電子阻止層とは、広い意味では正孔輸送層の機能を有し、正孔を輸送する機能を有しつつ電子を輸送する能力が著しく小さい材料からなり、正孔を輸送しつつ電子を阻止することで電子と正孔の再結合確率を向上させることができる。また、前述の正孔輸送層の構成を、必要に応じて電子阻止層として用いることができる。正孔阻止層及び電子輸送層の膜厚としては、好ましくは3〜100nmであり、更に好ましくは5〜30nmである。
【0087】
《発光層》
本発明に係る発光層は、電極または電子輸送層、正孔輸送層から注入されてくる電子及び正孔が再結合して発光する層であり、発光する部分は発光層内であっても発光層と隣接層との界面であってもよい。本発明に係る発光層は、発光極大波長が430〜480nmの範囲にある青発光色(B)、500〜540nmの範囲にある緑発光色(G)、520〜540nmの範囲にある黄発光色(Y)、580〜640nmの範囲にある赤発光色(R)の少なくとも2色から構成されることが好ましい。
【0088】
前記層構成で述べたように、異なる発光色の複数の発光ドーパントを含有する発光層が複数からなる。更に単独の発光ドーパントを含有する発光層が積層されても構わない。
【0089】
発光層の積層順としては、特に制限はなく、また各発光層間に非発光性の中間層を有していることが好ましい。発光層の膜厚の総和は、特に制限はないが、膜の均質性や発光時に不必要な高電圧を印加するのを防止し、且つ駆動電流に対する発光色の安定性向上の観点から、2〜30nmの範囲に調整することが好ましく、更に好ましくは5〜25nmの範囲である。
【0090】
発光層の作製には、後述する発光ドーパントやホスト化合物を、例えば、真空蒸着法、スピンコート法、キャスト法、LB法、インクジェット法等の公知の薄膜化法により製膜して形成することができる。各々の発光層の膜厚としては、前述の範囲であれば任意で構わない。青、緑、赤の各発光層の膜厚の関係については、特に制限はない。
【0091】
次に、発光層に含まれるホスト化合物、発光ドーパントについて説明する。
【0092】
(発光ホスト化合物)
本発明に用いられる発光ホスト化合物とは、室温(25℃)におけるリン光発光のリン光量子収率が0.1未満の化合物である。
【0093】
本発明に用いられる発光ホスト化合物としては、構造的には特に制限はないが、代表的にはカルバゾール誘導体、トリアリールアミン誘導体、芳香族ボラン誘導体、含窒素複素環化合物、チオフェン誘導体、フラン誘導体、オリゴアリーレン化合物等の基本骨格を有するもの、または、カルボリン誘導体やジアザカルバゾール誘導体(ここで、ジアザカルバゾール誘導体とは、カルボリン誘導体のカルボリン環を構成する炭化水素環の少なくとも一つの炭素原子が窒素原子で置換されているものを表す。)等が挙げられる。
【0094】
本発明に係る発光ホスト化合物としては、前記一般式(B)で表されるホスト化合物が好ましい。
【0095】
以下、前記一般式(B)で表されるホスト化合物について説明する。
【0096】
前記一般式(B)において、Xは、NR′、O、S、CR′R″またはSiR′R″を表し、R′、R″は各々水素原子または置換基を表す。Arは芳香環を表す。nは0から8の整数を表す。
【0097】
一般式(B)において、XにおけるR′、R″で各々表される置換基としては、アルキル基(例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、tert−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、オクチル基、ドデシル基、トリデシル基、テトラデシル基、ペンタデシル基等)、シクロアルキル基(例えば、シクロペンチル基、シクロヘキシル基等)、アルケニル基(例えば、ビニル基、アリル基、1−プロペニル基、2−ブテニル基、1,3−ブタジエニル基、2−ペンテニル基、イソプロペニル基等)、アルキニル基(例えば、エチニル基、プロパルギル基等)、芳香族炭化水素基(芳香族炭素環基、アリール基等ともいい、例えば、フェニル基、p−クロロフェニル基、メシチル基、トリル基、キシリル基、ナフチル基、アントリル基、アズレニル基、アセナフテニル基、フルオレニル基、フェナントリル基、インデニル基、ピレニル基、ビフェニリル基等)、芳香族複素環基(例えば、フリル基、チエニル基、ピリジル基、ピリダジニル基、ピリミジニル基、ピラジニル基、トリアジニル基、イミダゾリル基、ピラゾリル基、チアゾリル基、キナゾリニル基、カルバゾリル基、カルボリニル基、ジアザカルバゾリル基(前記カルボリニル基のカルボリン環を構成する任意の炭素原子の一つが窒素原子で置き換わったものを示す)、フタラジニル基等)、複素環基(例えば、ピロリジル基、イミダゾリジル基、モルホリル基、オキサゾリジル基等)、アルコキシ基(例えば、メトキシ基、エトキシ基、プロピルオキシ基、ペンチルオキシ基、ヘキシルオキシ基、オクチルオキシ基、ドデシルオキシ基等)、シクロアルコキシ基(例えば、シクロペンチルオキシ基、シクロヘキシルオキシ基等)、アリールオキシ基(例えば、フェノキシ基、ナフチルオキシ基等)、アルキルチオ基(例えば、メチルチオ基、エチルチオ基、プロピルチオ基、ペンチルチオ基、ヘキシルチオ基、オクチルチオ基、ドデシルチオ基等)、シクロアルキルチオ基(例えば、シクロペンチルチオ基、シクロヘキシルチオ基等)、アリールチオ基(例えば、フェニルチオ基、ナフチルチオ基等)、アルコキシカルボニル基(例えば、メチルオキシカルボニル基、エチルオキシカルボニル基、ブチルオキシカルボニル基、オクチルオキシカルボニル基、ドデシルオキシカルボニル基等)、アリールオキシカルボニル基(例えば、フェニルオキシカルボニル基、ナフチルオキシカルボニル基等)、スルファモイル基(例えば、アミノスルホニル基、メチルアミノスルホニル基、ジメチルアミノスルホニル基、ブチルアミノスルホニル基、ヘキシルアミノスルホニル基、シクロヘキシルアミノスルホニル基、オクチルアミノスルホニル基、ドデシルアミノスルホニル基、フェニルアミノスルホニル基、ナフチルアミノスルホニル基、2−ピリジルアミノスルホニル基等)、アシル基(例えば、アセチル基、エチルカルボニル基、プロピルカルボニル基、ペンチルカルボニル基、シクロヘキシルカルボニル基、オクチルカルボニル基、2−エチルヘキシルカルボニル基、ドデシルカルボニル基、フェニルカルボニル基、ナフチルカルボニル基、ピリジルカルボニル基等)、アシルオキシ基(例えば、アセチルオキシ基、エチルカルボニルオキシ基、ブチルカルボニルオキシ基、オクチルカルボニルオキシ基、ドデシルカルボニルオキシ基、フェニルカルボニルオキシ基等)、アミド基(例えば、メチルカルボニルアミノ基、エチルカルボニルアミノ基、ジメチルカルボニルアミノ基、プロピルカルボニルアミノ基、ペンチルカルボニルアミノ基、シクロヘキシルカルボニルアミノ基、2−エチルヘキシルカルボニルアミノ基、オクチルカルボニルアミノ基、ドデシルカルボニルアミノ基、フェニルカルボニルアミノ基、ナフチルカルボニルアミノ基等)、カルバモイル基(例えば、アミノカルボニル基、メチルアミノカルボニル基、ジメチルアミノカルボニル基、プロピルアミノカルボニル基、ペンチルアミノカルボニル基、シクロヘキシルアミノカルボニル基、オクチルアミノカルボニル基、2−エチルヘキシルアミノカルボニル基、ドデシルアミノカルボニル基、フェニルアミノカルボニル基、ナフチルアミノカルボニル基、2−ピリジルアミノカルボニル基等)、ウレイド基(例えば、メチルウレイド基、エチルウレイド基、ペンチルウレイド基、シクロヘキシルウレイド基、オクチルウレイド基、ドデシルウレイド基、フェニルウレイド基ナフチルウレイド基、2−ピリジルアミノウレイド基等)、スルフィニル基(例えば、メチルスルフィニル基、エチルスルフィニル基、ブチルスルフィニル基、シクロヘキシルスルフィニル基、2−エチルヘキシルスルフィニル基、ドデシルスルフィニル基、フェニルスルフィニル基、ナフチルスルフィニル基、2−ピリジルスルフィニル基等)、アルキルスルホニル基(例えば、メチルスルホニル基、エチルスルホニル基、ブチルスルホニル基、シクロヘキシルスルホニル基、2−エチルヘキシルスルホニル基、ドデシルスルホニル基等)、アリールスルホニル基またはヘテロアリールスルホニル基(例えば、フェニルスルホニル基、ナフチルスルホニル基、2−ピリジルスルホニル基等)、アミノ基(例えば、アミノ基、エチルアミノ基、ジメチルアミノ基、ブチルアミノ基、シクロペンチルアミノ基、2−エチルヘキシルアミノ基、ドデシルアミノ基、アニリノ基、ナフチルアミノ基、2−ピリジルアミノ基等)、ハロゲン原子(例えば、フッ素原子、塩素原子、臭素原子等)、フッ化炭化水素基(例えば、フルオロメチル基、トリフルオロメチル基、ペンタフルオロエチル基、ペンタフルオロフェニル基等)、シアノ基、ニトロ基、ヒドロキシ基、メルカプト基、シリル基(例えば、トリメチルシリル基、トリイソプロピルシリル基、トリフェニルシリル基、フェニルジエチルシリル基等)、ホスホノ基等が挙げられる。
【0098】
これらの置換基は、上記の置換基によってさらに置換されていてもよい。また、これらの置換基は複数が互いに結合して環を形成していてもよい。
【0099】
一般式(B)において、好ましいXはNR′またはOであり、R′としては芳香族炭化水素基、芳香族複素環基が特に好ましい。
【0100】
一般式(B)において、Arで表される芳香環としては、芳香族炭化水素環または芳香族複素環が挙げられる。また、該芳香環は単環でもよく、縮合環でもよく、更に未置換でも、後述するような置換基を有していてもよい。
【0101】
一般式(B)において、Arで表される芳香族炭化水素環としては、ベンゼン環、ビフェニル環、ナフタレン環、アズレン環、アントラセン環、フェナントレン環、ピレン環、クリセン環、ナフタセン環、トリフェニレン環、o−テルフェニル環、m−テルフェニル環、p−テルフェニル環、アセナフテン環、コロネン環、フルオレン環、フルオラントレン環、ナフタセン環、ペンタセン環、ペリレン環、ペンタフェン環、ピセン環、ピレン環、ピラントレン環、アンスラアントレン環等が挙げられる。これらの環は更に置換基を有していてもよい。
【0102】
一般式(B)において、Arで表される芳香族複素環としては、例えば、フラン環、ジベンゾフラン環、チオフェン環、オキサゾール環、ピロール環、ピリジン環、ピリダジン環、ピリミジン環、ピラジン環、トリアジン環、ベンゾイミダゾール環、オキサジアゾール環、トリアゾール環、イミダゾール環、ピラゾール環、チアゾール環、インドール環、インダゾール環、ベンゾイミダゾール環、ベンゾチアゾール環、ベンゾオキサゾール環、キノキサリン環、キナゾリン環、シンノリン環、キノリン環、イソキノリン環、フタラジン環、ナフチリジン環、カルバゾール環、カルボリン環、ジアザカルバゾール環(カルボリン環を構成する炭化水素環の炭素原子の一つが更に窒素原子で置換されている環を示す)等が挙げられる。これらの環は更に置換基を有していてもよい。
【0103】
上記の中でも、一般式(B)において、Arで表される芳香環として好ましく用いられるのは、カルバゾール環、カルボリン環、ジベンゾフラン環、ベンゼン環であり、特に好ましく用いられるのは、カルバゾール環、カルボリン環、ベンゼン環である。上記の中でも、置換基を有するベンゼン環が好ましく、特に好ましくは、カルバゾリル基を有するベンゼン環が好ましい。
【0104】
また、一般式(B)において、Arで表される芳香環としては、下記に示すような、各々3環以上の縮合環が好ましい一態様であり、3環以上が縮合した芳香族炭化水素縮合環としては、具体的には、ナフタセン環、アントラセン環、テトラセン環、ペンタセン環、ヘキサセン環、フェナントレン環、ピレン環、ベンゾピレン環、ベンゾアズレン環、クリセン環、ベンゾクリセン環、アセナフテン環、アセナフチレン環、トリフェニレン環、コロネン環、ベンゾコロネン環、ヘキサベンゾコロネン環、フルオレン環、ベンゾフルオレン環、フルオランテン環、ペリレン環、ナフトペリレン環、ペンタベンゾペリレン環、ベンゾペリレン環、ペンタフェン環、ピセン環、ピラントレン環、コロネン環、ナフトコロネン環、オバレン環、アンスラアントレン環等が挙げられる。尚、これらの環は更に、置換基を有していてもよい。
【0105】
また、3環以上が縮合した芳香族複素環としては、具体的には、アクリジン環、ベンゾキノリン環、カルバゾール環、カルボリン環、フェナジン環、フェナントリジン環、フェナントロリン環、カルボリン環、サイクラジン環、キンドリン環、テペニジン環、キニンドリン環、トリフェノジチアジン環、トリフェノジオキサジン環、フェナントラジン環、アントラジン環、ペリミジン環、ジアザカルバゾール環(カルボリン環を構成する炭素原子の任意の一つが窒素原子で置き換わったものを表す)、フェナントロリン環、ジベンゾフラン環、ジベンゾチオフェン環、ナフトフラン環、ナフトチオフェン環、ベンゾジフラン環、ベンゾジチオフェン環、ナフトジフラン環、ナフトジチオフェン環、アントラフラン環、アントラジフラン環、アントラチオフェン環、アントラジチオフェン環、チアントレン環、フェノキサチイン環、チオファントレン環(ナフトチオフェン環)等が挙げられる。尚、これらの環は更に置換基を有していてもよい。
【0106】
ここで、一般式(B)において、Arで表される芳香環が有してもよい置換基は、R′、R″で、各々表される置換基と同義である。
【0107】
また、一般式(a)において、nは0〜8の整数を表すが、0〜2であることが好ましく、特にXがO、Sである場合には1または2であることが好ましい。
【0108】
以下に、一般式(B)で表される発光ホスト化合物の具体例を示すが、これらに限定されるものではない。
【0109】
【化3】

【0110】
【化4】

【0111】
【化5】

【0112】
【化6】

【0113】
【化7】

【0114】
【化8】

【0115】
【化9】

【0116】
【化10】

【0117】
また、本発明に用いるホスト化合物は、低分子化合物でも、繰り返し単位をもつ高分子化合物でもよく、ビニル基やエポキシ基のような重合性基を有する低分子化合物(蒸着重合性ホスト化合物)でもよい。
【0118】
ホスト化合物としては、正孔輸送能、電子輸送能を有しつつ、且つ、発光の長波長化を防ぎ、高Tg(ガラス転移温度)である化合物が好ましい。
【0119】
本発明に係るホスト化合物としては、更に、公知のホスト化合物を複数種併用して用いてもよい。ホスト化合物を複数種もちいることで、電荷の移動を調整することが可能であり、有機EL素子を高効率化することができる。また、リン光性化合物を複数種用いることで、異なる発光を混ぜることが可能となり、これにより任意の発光色を得ることができる。リン光性化合物の種類、ドープ量を調整することで白色発光が可能であり、照明、バックライトへの応用もできる。
【0120】
従来公知のホスト化合物の具体例としては、以下の文献に記載されている化合物が挙げられる。例えば、特開2001−257076号公報、同2002−308855号公報、同2001−313179号公報、同2002−319491号公報、同2001−357977号公報、同2002−334786号公報、同2002−8860号公報、同2002−334787号公報、同2002−15871号公報、同2002−334788号公報、同2002−43056号公報、同2002−334789号公報、同2002−75645号公報、同2002−338579号公報、同2002−105445号公報、同2002−343568号公報、同2002−141173号公報、同2002−352957号公報、同2002−203683号公報、同2002−363227号公報、同2002−231453号公報、同2003−3165号公報、同2002−234888号公報、同2003−27048号公報、同2002−255934号公報、同2002−260861号公報、同2002−280183号公報、同2002−299060号公報、同2002−302516号公報、同2002−305083号公報、同2002−305084号公報、同2002−308837号公報等が挙げられる。
【0121】
(Tg(ガラス転移点))
本発明の有機エレクトロルミネセンス素子を構成する各層の有機化合物は、100℃以上のTgを有する材料を各々の層の少なくとも80質量%以上含有することが好ましい。
【0122】
ここでガラス転移点(Tg)とは、DSC(Differential Scanning Colorimetry:示差走査熱量法)を用いて、JIS−K−7121に準拠した方法により求められる値である。上記のような同一の物理的特性を有するホスト化合物を用いること、更に好ましくは同一の分子構造を有するホスト化合物を用いることにより、有機EL素子の有機化合物層(有機層)全体に渡って均質な膜性状が得られ、更にまた、ホスト化合物のリン光発光エネルギーを2.9eV以上になるように調整することが、発光ドーパントからのエネルギー移動を効率的に抑制し、高輝度を得ることができる。
【0123】
(リン光発光エネルギー)
次いで、リン光発光エネルギーについて説明する。
【0124】
本発明でいうリン光発光エネルギーとは、ホスト化合物を支持基板(単に基板ともいう)上に形成した厚さ100nmの蒸着膜のフォトルミネッセンスを測定した時に得られるリン光発光の0−0バンドのピークエネルギーを言う。
【0125】
〈リン光発光の0−0バンドの測定方法〉
まず、リン光スペクトルの測定方法について説明する。
【0126】
測定するホスト化合物を、よく脱酸素されたエタノール/メタノール=4/1(体積/体積)の混合溶媒に溶かし、リン光測定用セルに入れた後、液体窒素温度77°Kで励起光を照射し、励起光照射後100msでの発光スペクトルを測定する。
【0127】
リン光は蛍光に比べ発光寿命が長いため、100ms後に残存する光はほぼリン光であると考えることができる。なお、リン光寿命が100msより短い化合物に対しては遅延時間を短くして測定しても構わないが、蛍光と区別できなくなるほど遅延時間を短く設定するとリン光と蛍光が分離できないので問題となるため、その分離が可能な遅延時間を選択する必要がある。
【0128】
また、上記混合溶媒系で溶解できない化合物については、その化合物を溶解しうる任意の溶剤を使用してもよい(実質上、上記測定法ではリン光波長の溶媒効果はごく僅かなので問題ない)。
【0129】
次に0−0バンドの求め方であるが、本発明においては、上記測定法で得られたリン光スペクトルチャートの中で最も短波長側に現れる発光極大波長をもって、0−0バンドと定義する。リン光スペクトルは通常強度が弱いことが多いため、拡大するとノイズとピークの判別が難しくなるケースがある。このような場合には励起光照射中の発光スペクトル(便宜上、これを定常光スペクトルと言う)を拡大し、励起光照射後100ms後の発光スペクトル(便宜上、これをリン光スペクトルと言う)と重ね合わせ、リン光スペクトルに由来する定常光スペクトル部分からリン光スペクトルのピーク波長を読みとることで決定することができる。また、リン光スペクトルをスムージング処理することでノイズとピークを分離しピーク波長を読みとることもできる。なお、スムージング処理としては、Savitzky&Golayの平滑化法等を適用することができる。
【0130】
(発光ドーパント)
本発明に係る発光ドーパントについて説明する。
【0131】
本発明に係る発光ドーパントとしては、蛍光性化合物、リン光性化合物を用いることができるが、より発光効率の高い有機EL素子を得る観点からは、本発明に係る有機EL素子の発光層や発光ユニットに使用される発光ドーパントとしては、上記のホスト化合物を含有すると同時に少なくとも1種以上のリン光性化合物を含有する。蛍光性化合物を併用する場合は、青色を選択することが好ましい。
【0132】
〈リン光性化合物〉
本発明に係るリン光性化合物は、励起三重項からの発光が観測される化合物であり、具体的には室温(25℃)にてリン光発光する化合物であり、リン光量子収率が25℃において0.01以上の化合物であると定義されるが、好ましいリン光量子収率は0.1以上である。上記リン光量子収率は、第4版実験化学講座7の分光IIの398頁(1992年版、丸善)に記載の方法により測定できる。
【0133】
溶液中でのリン光量子収率は種々の溶媒を用いて測定できるが、本発明に係るリン光性化合物は、任意の溶媒のいずれかにおいて上記リン光量子収率(0.01以上)が達成されればよい。リン光性化合物の発光は原理としては2種挙げられ、一つはキャリアが輸送されるホスト化合物上でキャリアの再結合が起こってホスト化合物の励起状態が生成し、このエネルギーをリン光性化合物に移動させることでリン光性化合物からの発光を得るというエネルギー移動型、もう一つはリン光性化合物がキャリアトラップとなり、リン光性化合物上でキャリアの再結合が起こり、リン光性化合物からの発光が得られるというキャリアトラップ型であるが、いずれの場合においても、リン光性化合物の励起状態のエネルギーはホスト化合物の励起状態のエネルギーよりも低いことが条件である。
【0134】
リン光性化合物は、有機EL素子の発光層に使用される公知のものの中から適宜選択して用いることができる。本発明に係るリン光性化合物としては、好ましくは元素の周期表で8族〜10族の金属を含有する錯体系化合物であり、更に好ましくはイリジウム化合物、オスミウム化合物、または白金化合物(白金錯体系化合物)、希土類錯体であり、中でも最も好ましいのはイリジウム化合物である。本発明では、特に赤色はイリジウム化合物から選択されることが好ましい。
【0135】
以下に、リン光性化合物として用いられる化合物の具体例を示すが、本発明はこれらに限定されない。これらの化合物は、例えば、Inorg.Chem.40巻、1704〜1711に記載の方法等により合成できる。
【0136】
本発明で好ましく用いられる青色発光性ドーパントは、前記一般式(A)で表されるリン光性化合物である。
【0137】
前記一般式(A)において、R1は置換基を表す。Zは5〜7員環を形成するのに必要な非金属原子群を表す。n1は0〜5の整数を表す。B1〜B5は炭素原子、窒素原子、酸素原子もしくは硫黄原子を表し、少なくとも一つは窒素原子を表す。M1は元素周期表における8族〜10族の金属を表す。X1及びX2は炭素原子、窒素原子もしくは酸素原子を表し、L1はX1及びX2と共に2座の配位子を形成する原子群を表す。m1は1、2または3の整数を表し、m2は0、1または2の整数を表すが、m1+m2は2または3である。
【0138】
本発明に係る一般式(A)で表されるリン光性化合物は、HOMOが−5.15〜−3.50eV、LUMOが−1.25〜+1.00eVであり、好ましくはHOMOが−4.80〜−3.50eV、LUMOが−0.80〜+1.00eVである。
【0139】
一般式(A)で表されるリン光性化合物において、R1で表される置換基としては、例えば、アルキル基(例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、tert−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、オクチル基、ドデシル基、トリデシル基、テトラデシル基、ペンタデシル基等)、シクロアルキル基(例えば、シクロペンチル基、シクロヘキシル基等)、アルケニル基(例えば、ビニル基、アリル基等)、アルキニル基(例えば、エチニル基、プロパルギル基等)、芳香族炭化水素環基(芳香族炭素環基、アリール基等ともいい、例えば、フェニル基、p−クロロフェニル基、メシチル基、トリル基、キシリル基、ナフチル基、アントリル基、アズレニル基、アセナフテニル基、フルオレニル基、フェナントリル基、インデニル基、ピレニル基、ビフェニリル基等)、芳香族複素環基(例えば、ピリジル基、ピリミジニル基、フリル基、ピロリル基、イミダゾリル基、ベンゾイミダゾリル基、ピラゾリル基、ピラジニル基、トリアゾリル基(例えば、1,2,4−トリアゾール−1−イル基、1,2,3−トリアゾール−1−イル基等)、オキサゾリル基、ベンゾオキサゾリル基、チアゾリル基、イソオキサゾリル基、イソチアゾリル基、フラザニル基、チエニル基、キノリル基、ベンゾフリル基、ジベンゾフリル基、ベンゾチエニル基、ジベンゾチエニル基、インドリル基、カルバゾリル基、カルボリニル基、ジアザカルバゾリル基(前記カルボリニル基のカルボリン環を構成する炭素原子の一つが窒素原子で置き換わったものを示す)、キノキサリニル基、ピリダジニル基、トリアジニル基、キナゾリニル基、フタラジニル基等)、複素環基(例えば、ピロリジル基、イミダゾリジル基、モルホリル基、オキサゾリジル基等)、アルコキシ基(例えば、メトキシ基、エトキシ基、プロピルオキシ基、ペンチルオキシ基、ヘキシルオキシ基、オクチルオキシ基、ドデシルオキシ基等)、シクロアルコキシ基(例えば、シクロペンチルオキシ基、シクロヘキシルオキシ基等)、アリールオキシ基(例えば、フェノキシ基、ナフチルオキシ基等)、アルキルチオ基(例えば、メチルチオ基、エチルチオ基、プロピルチオ基、ペンチルチオ基、ヘキシルチオ基、オクチルチオ基、ドデシルチオ基等)、シクロアルキルチオ基(例えば、シクロペンチルチオ基、シクロヘキシルチオ基等)、アリールチオ基(例えば、フェニルチオ基、ナフチルチオ基等)、アルコキシカルボニル基(例えば、メチルオキシカルボニル基、エチルオキシカルボニル基、ブチルオキシカルボニル基、オクチルオキシカルボニル基、ドデシルオキシカルボニル基等)、アリールオキシカルボニル基(例えば、フェニルオキシカルボニル基、ナフチルオキシカルボニル基等)、スルファモイル基(例えば、アミノスルホニル基、メチルアミノスルホニル基、ジメチルアミノスルホニル基、ブチルアミノスルホニル基、ヘキシルアミノスルホニル基、シクロヘキシルアミノスルホニル基、オクチルアミノスルホニル基、ドデシルアミノスルホニル基、フェニルアミノスルホニル基、ナフチルアミノスルホニル基、2−ピリジルアミノスルホニル基等)、アシル基(例えば、アセチル基、エチルカルボニル基、プロピルカルボニル基、ペンチルカルボニル基、シクロヘキシルカルボニル基、オクチルカルボニル基、2−エチルヘキシルカルボニル基、ドデシルカルボニル基、フェニルカルボニル基、ナフチルカルボニル基、ピリジルカルボニル基等)、アシルオキシ基(例えば、アセチルオキシ基、エチルカルボニルオキシ基、ブチルカルボニルオキシ基、オクチルカルボニルオキシ基、ドデシルカルボニルオキシ基、フェニルカルボニルオキシ基等)、アミド基(例えば、メチルカルボニルアミノ基、エチルカルボニルアミノ基、ジメチルカルボニルアミノ基、プロピルカルボニルアミノ基、ペンチルカルボニルアミノ基、シクロヘキシルカルボニルアミノ基、2−エチルヘキシルカルボニルアミノ基、オクチルカルボニルアミノ基、ドデシルカルボニルアミノ基、フェニルカルボニルアミノ基、ナフチルカルボニルアミノ基等)、カルバモイル基(例えば、アミノカルボニル基、メチルアミノカルボニル基、ジメチルアミノカルボニル基、プロピルアミノカルボニル基、ペンチルアミノカルボニル基、シクロヘキシルアミノカルボニル基、オクチルアミノカルボニル基、2−エチルヘキシルアミノカルボニル基、ドデシルアミノカルボニル基、フェニルアミノカルボニル基、ナフチルアミノカルボニル基、2−ピリジルアミノカルボニル基等)、ウレイド基(例えば、メチルウレイド基、エチルウレイド基、ペンチルウレイド基、シクロヘキシルウレイド基、オクチルウレイド基、ドデシルウレイド基、フェニルウレイド基ナフチルウレイド基、2−ピリジルアミノウレイド基等)、スルフィニル基(例えば、メチルスルフィニル基、エチルスルフィニル基、ブチルスルフィニル基、シクロヘキシルスルフィニル基、2−エチルヘキシルスルフィニル基、ドデシルスルフィニル基、フェニルスルフィニル基、ナフチルスルフィニル基、2−ピリジルスルフィニル基等)、アルキルスルホニル基(例えば、メチルスルホニル基、エチルスルホニル基、ブチルスルホニル基、シクロヘキシルスルホニル基、2−エチルヘキシルスルホニル基、ドデシルスルホニル基等)、アリールスルホニル基またはヘテロアリールスルホニル基(例えば、フェニルスルホニル基、ナフチルスルホニル基、2−ピリジルスルホニル基等)、アミノ基(例えば、アミノ基、エチルアミノ基、ジメチルアミノ基、ブチルアミノ基、シクロペンチルアミノ基、2−エチルヘキシルアミノ基、ドデシルアミノ基、アニリノ基、ナフチルアミノ基、2−ピリジルアミノ基等)、シアノ基、ニトロ基、ヒドロキシ基、メルカプト基、シリル基(例えば、トリメチルシリル基、トリイソプロピルシリル基、トリフェニルシリル基、フェニルジエチルシリル基等)等が挙げられる。これらの置換基のうち、好ましいものはアルキル基もしくはアリール基である。
【0140】
Zは5〜7員環を形成するのに必要な非金属原子群を表す。Zにより形成される5〜7員環としては、例えば、ベンゼン環、ナフタレン環、ピリジン環、ピリミジン環、ピロール環、チオフェン環、ピラゾール環、イミダゾール環、オキサゾール環及びチアゾール環等が挙げられる。これらのうちで好ましいものは、ベンゼン環である。
【0141】
1〜B5は炭素原子、窒素原子、酸素原子もしくは硫黄原子を表し、少なくとも一つは窒素原子を表す。これら5つの原子により形成される芳香族含窒素複素環としては単環が好ましい。例えば、ピロール環、ピラゾール環、イミダゾール環、トリアゾール環、テトラゾール環、オキサゾール環、イソオキサゾール環、チアゾール環、イソチアゾール環、オキサジアゾール環及びチアジアゾー環ル等が挙げられる。これらのうちで好ましいものは、ピラゾール環、イミダゾール環であり、更に好ましくはイミダゾール環である。これらの環は上記の置換基によって更に置換されていてもよい。置換基として好ましいものはアルキル基及びアリール基であり、更に好ましくはアリール基である。
【0142】
1はX1、X2と共に2座の配位子を形成する原子群を表す。X1−L1−X2で表される2座の配位子の具体例としては、例えば、置換または無置換のフェニルピリジン、フェニルピラゾール、フェニルイミダゾール、フェニルトリアゾール、フェニルテトラゾール、ピラザボル、ピコリン酸及びアセチルアセトン等が挙げられる。これらの基は上記の置換基によって更に置換されていてもよい。
【0143】
m1は1、2または3の整数を表し、m2は0、1または2の整数を表すが、m1+m2は2または3である。中でも、m2は0である場合が好ましい。
【0144】
1で表される金属としては、元素周期表の8〜10族の遷移金属元素(単に遷移金属ともいう)が用いられるが、中でもイリジウム、白金が好ましく、更に好ましくはイリジウムである。なお一般式(A)で表されるリン光性化合物は、重合性基または反応性基を有していてもいなくてもよい。
【0145】
以下に一般式(A)で表されるリン光性化合物の具体的な例を挙げるが、これらに限定されるものではない。
【0146】
【化11】

【0147】
【化12】

【0148】
【化13】

【0149】
【化14】

【0150】
【化15】

【0151】
【化16】

【0152】
【化17】

【0153】
【化18】

【0154】
これらの金属錯体は、例えば、Organic Letter誌 vol3 No.16 2579〜2581頁(2001)、Inorganic Chemistry 第30巻 第8号 1685〜1687頁(1991年)、J.Am.Chem.Soc. 123巻 4304頁(2001年)、Inorganic Chemistry 第40巻 第7号 1704〜1711頁(2001年)、Inorganic Chemistry 第41巻 第12号 3055〜3066頁(2002年)、New Journal of Chemistry 第26巻 1171頁(2002年)、European Journal of Organic Chemistry 第4巻 695〜709頁(2004年)、更にこれらの文献中に記載の参考文献等の方法を適用することにより合成できる。
【0155】
(蛍光性化合物)
蛍光性化合物の代表例としては、クマリン系色素、ピラン系色素、シアニン系色素、クロコニウム系色素、スクアリウム系色素、オキソベンツアントラセン系色素、フルオレセイン系色素、ローダミン系色素、ピリリウム系色素、ペリレン系色素、スチルベン系色素、ポリチオフェン系色素、または希土類錯体系蛍光体等が挙げられる。また、従来公知のドーパントも本発明に用いることができ、例えば、国際公開第00/70655号パンフレット、特開2002−280178号公報、特開2001−181616号公報、特開2002−280179号公報、特開2001−181617号公報、特開2002−280180号公報、特開2001−247859号公報、特開2002−299060号公報、特開2001−313178号公報、特開2002−302671号公報、特開2001−345183号公報、特開2002−324679号公報、国際公開第02/15645号パンフレット、特開2002−332291号公報、特開2002−50484号公報、特開2002−332292号公報、特開2002−83684号公報、特表2002−540572号公報、特開2002−117978号公報、特開2002−338588号公報、特開2002−170684号公報、特開2002−352960号公報、国際公開第01/93642号パンフレット、特開2002−50483号公報、特開2002−100476号公報、特開2002−173674号公報、特開2002−359082号公報、特開2002−175884号公報、特開2002−363552号公報、特開2002−184582号公報、特開2003−7469号公報、特表2002−525808号公報、特開2003−7471号公報、特表2002−525833号公報、特開2003−31366号公報、特開2002−226495号公報、特開2002−234894号公報、特開2002−235076号公報、特開2002−241751号公報、特開2001−319779号公報、特開2001−319780号公報、特開2002−62824号公報、特開2002−100474号公報、特開2002−203679号公報、特開2002−343572号公報、特開2002−203678号公報等が挙げられる。
【0156】
《非発光性の中間層》
本発明に係る有機EL素子に適用可能な非発光性の中間層について説明する。
【0157】
非発光性の中間層とは、発光極大波長が各々430〜480nm、510〜550nm、600〜640nmの範囲にある少なくとも3層の発光層を有する、上記の発光層ユニットの各発光層の間に設けられる。
【0158】
非発光性の中間層の膜厚としては1〜15nmの範囲にあるのが好ましく、更には3〜10nmの範囲にあることが隣接発光層間のエネルギー移動など相互作用を抑制し、且つ素子の電流電圧特性に大きな負荷を与えないという観点から好ましい。
【0159】
この非発光性の中間層に用いられる材料としては、発光層のホスト化合物と同一でも異なっていてもよいが、隣接する2つの発光層の少なくとも一方の発光層のホスト材料と同一であることが好ましい。
【0160】
非発光性の中間層は、非発光各発光層と共通の化合物(例えば、ホスト化合物等)を含有していてもよく、各々共通ホスト化合物(ここで、共通ホスト化合物が用いられるとは、リン光発光エネルギー、ガラス転移点等の物理化学的特性が同一である場合やホスト化合物の分子構造が同一である場合等を示す。)を含有することにより、発光層−非発光層間の層間の注入障壁が低減され、電圧(電流)を変化させても正孔と電子の注入バランスが保ちやすいという効果を得ることができる。また、電圧(電流)をかけたときの色ずれが改善されるという効果が得られることも判った。更に、非ドープ発光層に各発光層に含まれるホスト化合物とが、同一の物理的特性または同一の分子構造を有するホスト化合物を用いることにより、従来の有機EL素子作製の大きな問題点である素子作製の煩雑さをも併せて解消することができる。
【0161】
更に、上記のように共通ホスト化合物の最低励起三重項エネルギー準位T1が、リン光性化合物の最低励起三重項エネルギー準位T2よりも高い励起三重項エネルギーを有する材料を用いることで、発光層の三重項励起子を効果的に発光層内に閉じ込めるので高効率な素子を得られることが判った。また、青・緑・赤の3色の有機EL素子においては、各々の発光ドーパントにリン光性化合物を用いる場合、青色のリン光性化合物の励起3重項エネルギーが一番大きくなるが、前記青色のリン光性化合物よりも大きい励起3重項エネルギーを有するホスト化合物を発光層と非発光性の中間層とが共通のホスト化合物として含んでいてもよい。
【0162】
本発明に係る有機EL素子においては、ホスト化合物はキャリアの輸送を担うためキャリア輸送能を有する材料が好ましい。キャリア輸送能を表す物性としてはキャリア移動度が用いられるが、有機材料のキャリア移動度は一般的に電界強度に依存性が見られる。電界強度依存性の高い材料は正孔と電子注入・輸送バランスを崩しやすいため、中間層材料、ホスト化合物は移動度の電界強度依存性の少ない材料を用いることが好ましい。また、一方では正孔や電子の注入バランスを最適に調整するためには、非発光性の中間層は、阻止層、即ち正孔阻止層、電子阻止層として機能することも好ましい態様として挙げられる。
【0163】
以下に、本発明に適用可能なキャリア輸送層、キャリア阻止層について説明する。
【0164】
本発明でいうキャリアとは、電子または正孔を指す。一般に、正孔輸送層とは正孔輸送する能力を有する材料からなり、広い意味で正孔注入層、電子阻止層も含まれる。同様に電子輸送層とは電子輸送する能力を有する材料からなり、広い意味で電子注入層、正孔阻止層も含まれる。
【0165】
《支持基板》
本発明に係る有機EL素子に係る支持基板(以下、基体、基板、基材、支持体等ともいう)としては、ガラス、プラスチック等の種類には特に限定はなく、また透明であっても不透明であってもよい。支持基板側から光を取り出す場合には、支持基板は透明であることが好ましい。好ましく用いられる透明な支持基板としては、ガラス、石英、透明樹脂フィルムを挙げることができる。特に好ましい支持基板は、有機EL素子にフレキシブル性を与えることが可能な樹脂フィルムである。
【0166】
樹脂フィルムとしては、分光光度計による分光波長550nm平行光での光線透過率が80%以上のものであることが好ましく、85%以上であることがより好ましい。
【0167】
前記樹脂フィルムとしては、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)等のポリエステル、ポリエチレン、ポリプロピレン、セロファン、セルロースジアセテート、セルローストリアセテート、セルロースアセテートブチレート、セルロースアセテートプロピオネート(CAP)、セルロースアセテートフタレート(TAC)、セルロースナイトレート等のセルロースエステル類またはそれらの誘導体、ポリ塩化ビニリデン、ポリビニルアルコール、ポリエチレンビニルアルコール、シンジオタクティックポリスチレン、ポリカーボネート、ノルボルネン樹脂、ポリメチルペンテン、ポリエーテルケトン、ポリイミド、ポリエーテルスルホン(PES)、ポリフェニレンスルフィド、ポリスルホン類、ポリエーテルイミド、ポリエーテルケトンイミド、ポリアミド、フッ素樹脂、ナイロン、ポリメチルメタクリレート、アクリルあるいはポリアリレート類、アートン(商品名JSR社製)あるいはアペル(商品名三井化学社製)といったシクロオレフィン系樹脂等を挙げられる。
【0168】
樹脂フィルムの表面には、無機物、有機物の皮膜またはその両者のハイブリッド皮膜が形成されていてもよく、JIS K 7129−1992に準拠した方法で測定された水蒸気透過度が、0.01g/m2・day・atm以下のバリア性フィルムであることが好ましく、更にはJIS K 7126−1992に準拠した方法で測定された酸素透過度が10-3g/m2/day以下、水蒸気透過度が10-3g/m2/day以下の高バリア性フィルムであることが好ましく、前記の水蒸気透過度、酸素透過度がいずれも10-5g/m2/day以下であることが、更に好ましい。
【0169】
高バリア性フィルムとするため、樹脂フィルム表面にガスバリア膜を形成する材料としては、水分や酸素など有機EL素子の性能劣化をもたらす因子の浸入を抑制する機能を有する材料であればよく、例えば、酸化珪素、二酸化珪素、窒化珪素などを用いることができる。更に、ガスバリア膜の脆弱性を改良するために、これら無機層と有機材料からなる層の積層構造を持たせることがより好ましい。無機層と有機層の積層順については特に制限はないが、両者を交互に複数回積層させることが好ましい。また、これらのガスバリア膜を有する高バリア性フィルムは、後述する有機EL素子を形成する際の封止フィルムとして用いることもできる。
【0170】
〔バリア膜の形成方法〕
バリア膜の形成方法については特に限定はなく、例えば、真空蒸着法、スパッタリング法、反応性スパッタリング法、分子線エピタキシー法、クラスタ−イオンビーム法、イオンプレーティング法、プラズマ重合法、大気圧プラズマ重合法、プラズマCVD法、レーザCVD法、熱CVD法、コーティング法などを用いることができるが、特開2004−68143号公報に記載されているような大気圧プラズマ法により形成する方法が特に好ましい。
【0171】
次いで、本発明に係る支持基板として用いられる透明なガスバリア膜の層構成の一例を図1により説明し、更にガスバリア膜の形成に好ましく用いられる大気圧プラズマ放電処理装置の一例を図2を用いて説明する。
【0172】
図1は、バリア膜(ガスバリアフィルムともいう)の層構成とその密度プロファイルの一例を示す模式図である。バリア膜201(透明でも不透明でもよい)は、基材202上に密度の異なる層を積層した構成をとる。本発明においては、低密度層203と高密度層205との間に、中密度層204を設け、更に高密度層205上にも中密度層204を設け、これらの低密度層、中密度層、高密度層及び中密度層からなる構成を1ユニットとし、図1においては2ユニット分を積層した例を示してある。この時、各密度層内における密度分布は均一とし、隣接する層間での密度変化が階段状となるような構成をとる。なお、図1においては中密度層204を1層として示したが、必要に応じて2層以上の構成をとってもよい。なお、本発明に係るバリア膜(ガスバリアフィルム)の層構成としては、密度違いの3層(高密度層、中密度層、低密度層)のうち、少なくとも1層が設けられていればよいが、好ましくは密度違いの2層または3層を有することが好ましい。
【0173】
ここで、上記の高密度層、中密度層、低密度層の形成には、下記の図2に示すような大気圧プラズマ放電処理装置が一例として用いられる。また、高密度層、中密度層、低密度層の密度の設定値、各層の形成に用いられる材料(例えば、酸化珪素、酸化窒化珪素、酸化アルミナ等)及び形成条件等の一例は、実施例において具体的に記載する。
【0174】
図2は、基材を処理する大気圧プラズマ放電処理装置の一例を示す概略図である。大気圧プラズマ放電処理装置としては、少なくとも、プラズマ放電処理装置230、二つの電源を有する電界印加手段240、ガス供給手段250、電極温度調節手段260を有している装置である。図2は、ロール回転電極(第1電極)235と角筒型固定電極群(第2電極)236(個々の電極も角筒型固定電極236とする)との対向電極間(放電空間)232で、基材Fをプラズマ放電処理して薄膜を形成するものである。
【0175】
図2においては、1対の角筒型固定電極群(第2電極)236とロール回転電極(第1電極)235とで、1つの電界を形成し、この1ユニットで、例えば、低密度層の形成を行う。図2においては、この様な構成からなるユニットを計5カ所備えた構成例を示し、それぞれのユニットで供給する原材料の種類、出力電圧等を任意に独立して制御することにより、積層型のバリア膜(透明ガスバリア層ともいう)を連続して形成することができる。ロール回転電極(第1電極)235と角筒型固定電極群(第2電極)236との間の放電空間(対向電極間)232に、ロール回転電極(第1電極)235には第1電源241から周波数ω1、電界強度V1、電流I1の第1の高周波電界を、また角筒型固定電極群(第2電極)236にはそれぞれに対応する各第2電源242から周波数ω2、電界強度V2、電流I2の第2の高周波電界をかけるようになっている。ロール回転電極(第1電極)235と第1電源241との間には、第1フィルタ243が設置されており、第1フィルタ243は第1電源241から第1電極への電流を通過しやすくし、第2電源242からの電流をアースして、第2電源242から第1電源への電流を通過しにくくするように設計されている。
【0176】
また、角筒型固定電極群(第2電極)236と第2電源242との間には、それぞれ第2フィルタ244が設置されており、第2フィルタ244は第2電源242から第2電極への電流を通過しやすくし、第1電源241からの電流をアースして、第1電源241から第2電源への電流を通過しにくくするように設計されている。なお、ロール回転電極235を第2電極、また角筒型固定電極群236を第1電極としてもよい。いずれにしろ第1電極には第1電源が、また第2電極には第2電源が接続される。第1電源は第2電源より高い高周波電界強度(V1>V2)を印加することが好ましい。また、周波数はω1<ω2となる能力を有している。また、電流はI1<I2となることが好ましい。第1の高周波電界の電流I1は、好ましくは0.3〜20mA/cm2、更に好ましくは1.0〜20mA/cm2である。また、第2の高周波電界の電流I2は、好ましくは10〜100mA/cm2、更に好ましくは20〜100mA/cm2である。ガス供給手段250のガス発生装置251で発生させたガスGは、流量を制御して給気口よりプラズマ放電処理容器231内に導入する。
【0177】
基材Fを、図示されていない元巻きから巻きほぐして搬送されて来るか、または前工程から搬送されて来て、ガイドロール264を経てニップロール265で基材に同伴されて来る空気等を遮断し、ロール回転電極235に接触したまま巻き回しながら角筒型固定電極群236との間に移送し、ロール回転電極(第1電極)235と角筒型固定電極群(第2電極)236との両方から電界をかけ、対向電極間(放電空間)232で放電プラズマを発生させる。基材Fはロール回転電極235に接触したまま巻き回されながらプラズマ状態のガスにより薄膜を形成する。
【0178】
基材Fは、ニップロール266、ガイドロール267を経て、図示してない巻き取り機で巻き取るか、次工程に移送する。放電処理済みの処理排ガスG’は排気口253より排出する。薄膜形成中、ロール回転電極(第1電極)235及び角筒型固定電極群(第2電極)236を加熱または冷却するために、電極温度調節手段260で温度を調節した媒体を、送液ポンプPで配管261を経て両電極に送り、電極内側から温度を調節する。なお、268及び269はプラズマ放電処理容器231と外界とを仕切る仕切板である。
【0179】
《封止》
本発明に係る有機EL素子の封止に用いられる封止手段としては、例えば、封止部材と電極、支持基板とを接着剤で接着する方法を挙げることができる。封止部材としては、有機EL素子の表示領域を覆うように配置されておればよく、凹板状でも平板状でもよい。また、透明性、電気絶縁性は特に限定されない。具体的には、ガラス板、ポリマー板・フィルム、金属板・フィルム等が挙げられる。ガラス板としては、特にソーダ石灰ガラス、バリウム・ストロンチウム含有ガラス、鉛ガラス、アルミノケイ酸ガラス、ホウケイ酸ガラス、バリウムホウケイ酸ガラス、石英等を挙げることができる。
【0180】
また、ポリマー板としては、ポリカーボネート、アクリル、ポリエチレンテレフタレート、ポリエーテルサルファイド、ポリサルフォン等を挙げることができる。金属板としては、ステンレス、鉄、銅、アルミニウム、マグネシウム、ニッケル、亜鉛、クロム、チタン、モリブテン、シリコン、ゲルマニウム及びタンタルからなる群から選ばれる一種以上の金属または合金からなるものが挙げられる。本発明においては、有機EL素子を薄膜化できるということからポリマーフィルム、金属フィルムを好ましく使用することができる。
【0181】
更には、ポリマーフィルムは、酸素透過度10-3g/m2/day以下、水蒸気透過度10-5g/m2/day以下のものであることが好ましい。また、前記の水蒸気透過度、酸素透過度がいずれも10-5g/m2/day以下であることが更に好ましい。封止部材を凹状に加工するのは、サンドブラスト加工、化学エッチング加工等が使われる。
【0182】
接着剤として具体的には、アクリル酸系オリゴマー、メタクリル酸系オリゴマーの反応性ビニル基を有する光硬化及び熱硬化型接着剤、2−シアノアクリル酸エステルなどの湿気硬化型等の接着剤を挙げることができる。また、エポキシ系などの熱及び化学硬化型(二液混合)を挙げることができる。また、ホットメルト型のポリアミド、ポリエステル、ポリオレフィンを挙げることができる。また、カチオン硬化タイプの紫外線硬化型エポキシ樹脂接着剤を挙げることができる。
【0183】
なお、有機EL素子が熱処理により劣化する場合があるので、室温から80℃までに接着硬化できるものが好ましい。また、前記接着剤中に乾燥剤を分散させておいてもよい。封止部分への接着剤の塗布は市販のディスペンサーを使ってもよいし、スクリーン印刷のように印刷してもよい。
【0184】
また、有機層を挟み支持基板と対向する側の電極の外側に、該電極と有機層を被覆し、支持基板と接する形で無機物、有機物の層を形成し封止膜とすることも好適にできる。この場合、該膜を形成する材料としては、水分や酸素など素子の劣化をもたらすものの浸入を抑制する機能を有する材料であればよく、例えば、酸化珪素、二酸化珪素、窒化珪素などを用いることができる。更に該膜の脆弱性を改良するために、これら無機層と有機材料からなる層の積層構造を持たせることが好ましい。
【0185】
これらの膜の形成方法については特に限定はなく、例えば、真空蒸着法、スパッタリング法、反応性スパッタリング法、分子線エピタキシー法、クラスタ−イオンビーム法、イオンプレーティング法、プラズマ重合法、大気圧プラズマ重合法、大気圧プラズマ法、レーザCVD法、熱CVD法、コーティング法などを用いることができるが、その中でも、特に大気圧プラズマ法が好ましい。
【0186】
封止部材と有機EL素子の表示領域との間隙には、気相及び液相では窒素、アルゴン等の不活性気体や、フッ化炭化水素、シリコンオイルのような不活性液体を注入することが好ましい。また、真空とすることも可能である。また、内部に吸湿性化合物を封入することもできる。
【0187】
吸湿性化合物としては、例えば、金属酸化物(例えば、酸化ナトリウム、酸化カリウム、酸化カルシウム、酸化バリウム、酸化マグネシウム、酸化アルミニウム等)、硫酸塩(例えば、硫酸ナトリウム、硫酸カルシウム、硫酸マグネシウム、硫酸コバルト等)、金属ハロゲン化物(例えば、塩化カルシウム、塩化マグネシウム、フッ化セシウム、フッ化タンタル、臭化セリウム、臭化マグネシウム、沃化バリウム、沃化マグネシウム等)、過塩素酸類(例えば、過塩素酸バリウム、過塩素酸マグネシウム等)等が挙げられ、硫酸塩、金属ハロゲン化物及び過塩素酸類においては無水塩が好適に用いられる。
【0188】
《保護膜、保護板》
有機層を挟み支持基板と対向する側の封止膜、あるいは封止用フィルムの外側に、有機EL素子の機械的強度を高めるために、保護膜あるいは保護板を設けてもよい。特に、封止が封止膜により行われている場合には、その機械的強度は必ずしも高くないため、このような保護膜、保護板を設けることが好ましい。これに使用することができる材料としては、封止に用いたのと同様なガラス板、ポリマー板・フィルム、金属板・フィルム等を用いることができるが、軽量、且つ薄膜化ということからポリマーフィルムを用いることが好ましい。
【0189】
《陽極》
有機EL素子における陽極としては、仕事関数の大きい(4eV以上)金属、合金、電気伝導性化合物及びこれらの混合物を電極物質とするものが好ましく用いられる。このような電極物質の具体例としては、Au等の金属、CuI、インジウムチンオキシド(ITO)、SnO2、ZnO等の導電性透明材料が挙げられる。また、IDIXO(In23−ZnO)等非晶質で透明導電膜を作製可能な材料を用いてもよい。
【0190】
陽極はこれらの電極物質を蒸着、スパッタリング、大気圧プラズマ法等の方法により薄膜を形成させ、フォトリソグラフィー法で所望の形状のパターンを形成してもよく、あるいはパターン精度をあまり必要としない場合は(100μm以上程度)、上記電極物質の蒸着やスパッタリング時に所望の形状のマスクを介してパターンを形成してもよい。あるいは、有機導電性化合物のように塗布可能な物質を用いる場合には、印刷方式、コーティング方式など湿式製膜法を用いることもできる。この陽極より発光を取り出す場合には透過率を10%より大きくすることが望ましく、また陽極としてのシート抵抗は数百Ω/□以下が好ましい。更に膜厚は材料にもよるが、通常10〜1000nm、好ましくは10〜200nmの範囲で選ばれる。
【0191】
《陰極》
一方、陰極としては仕事関数の小さい(4eV以下)金属(電子注入性金属と称する)、合金、電気伝導性化合物及びこれらの混合物を電極物質とするものが用いられる。このような電極物質の具体例としては、ナトリウム、ナトリウム−カリウム合金、マグネシウム、リチウム、マグネシウム/銅混合物、マグネシウム/銀混合物、マグネシウム/アルミニウム混合物、マグネシウム/インジウム混合物、アルミニウム/酸化アルミニウム(Al23)混合物、インジウム、リチウム/アルミニウム混合物、希土類金属等が挙げられる。これらの中で、電子注入性及び酸化等に対する耐久性の点から、電子注入性金属とこれより仕事関数の値が大きく安定な金属である第二金属との混合物、例えば、マグネシウム/銀混合物、マグネシウム/アルミニウム混合物、マグネシウム/インジウム混合物、アルミニウム/酸化アルミニウム(Al23)混合物、リチウム/アルミニウム混合物、アルミニウム等が好適である。
【0192】
陰極はこれらの電極物質を蒸着、スパッタリング、大気圧プラズマ等の方法により、薄膜を形成させることにより作製することができる。また、陰極としてのシート抵抗は数百Ω/□以下が好ましく、膜厚は通常10nm〜5μm、好ましくは50〜200nmの範囲で選ばれる。なお、発光した光を透過させるため、有機EL素子の陽極または陰極のいずれか一方が透明または半透明であれば発光輝度が向上し好都合である。
【0193】
また、陰極に上記金属を1nm〜20nmの膜厚で作製した後に、陽極の説明で挙げた導電性透明材料をその上に作製することで、透明または半透明の陰極を作製することができ、これを応用することで陽極と陰極の両方が透過性を有する素子を作製することができる。
【0194】
さらに本発明においては、金属よりも金属酸化物を主体としたより透明性の高い電極を用いることによって、有機EL素子の経時での色度変化が小さいことを見出した。特に、分光光度計による分光波長550nm平行光での光線透過率が50%以上であることが好ましい。これは、金属酸化物の安定性の高さが寄与していると考える。
【0195】
本発明においては、陽極、複数の発光層、発光層の隣接層、陰極に用いる材料の選択や組み合わせ、さらには層設計によって、経時による色度変化の小さい有機EL素子を得ることができる。また、基体フィルムや封止フィルム自体が経時で着色・変色などの色変化を生じる場合は、陽極、複数の発光層、発光層の隣接層、陰極などの発光機能部分に用いる材料の選択や組み合わせ、さらには層設計によって、該フィルムの色変化を補償する方向に色度変化するように調整しておくことによって、経時による色度変化の小さい有機EL素子を得ることができる。
【0196】
《発光体》
例えば、基体フィルムや封止フィルムが長期間の経時で黄変するような性質を示す場合は、発光機能部分が長期間の経時で青変するように設計しておくことによって、色変化に対する補償が行われ、経時による色度変化の小さい有機EL素子を得ることができる。
【0197】
すなわち、本発明に係る有機EL素子と光学部材とからなる発光体においては、該光学部材の経時による色度変化を、有機EL素子の経時による色度変化が補償する特性を有し、発光体を連続発光したとき、発光の初期輝度の1/2まで輝度が低下した時点での発光初期に対する色度変化巾が、CIE1931表色系の色度に準拠したx値が±0.10、y値が±0.10の領域内にあることを特徴とする。
【0198】
すなわち、光学部材が経時で着色や変色などの色変動を起こす場合には、有機EL素子の陽極、複数の発光層、発光層の隣接層、陰極などの発光機能部分に用いる材料の選択や組み合わせ、さらには層設計によって、該光学部材の色変化を補償する方向に、有機EL素子が色度変化するように調整しておくことによって、経時による色度変化の小さい発光体を得ることができる。
【0199】
例えば、光学部材が長期間の経時で黄変するような性質を有している場合には、有機EL素子の発光機能部分が長期間の経時で青変するように設計しておくことによって、色変化に対する補償が行われ、経時による色度変化の小さい発光体を得ることができる。
【0200】
また、本発明に係る有機EL素子と光学部材とからなる発光体においては、光学部材の発光初期の色度に対する、未発光の状態で70℃の環境下で200時間保存した後の色度変化を、有機EL素子の経時による色度変化が補償する特性を有し、発光体の色度変化巾が、CIE1931表色系の色度に準拠したx値が±0.10、y値が±0.10の領域内にあることを特徴とする。
【0201】
更には、本発明の発光体においては、70℃の環境下で、高圧水銀灯で160mJ/cm2の条件で200時間処理した後の色度変化が、CIE1931表色系の色度に準拠したx値が−0.10〜−0.20、y値が−0.10から−0.20の領域内にあることが好ましい。
【0202】
本発明の発光体に係る光学部材とは、有機EL素子の発光面に設置して、有機EL素子からの発光を増強、調整、変調する機能を有するものや、有機EL素子を保護するための機能を有するもの等が挙げられ、例えば、光取り出し及び/または集光シート、拡散シート、プリズムシート、レンズ、マイクロレンズアレイ、各種フィルター(例えば、カラーフィルター、紫外線吸収フィルター、NDフィルターなど)、さらには透明の防塵、防水カバーも含むものとする。
【0203】
〔光取り出し及び/または集光シート〕
特に、バックライト用の有機EL素子においては、通常、全方位に光が放射され視野角が変わっても明るさが変わらないような特性が望ましいが、使用形態によっては正面輝度をより高くし、大きな視野角(斜め方向から観察する角度)においては輝度を低下させることが望ましい。そのために、有機EL素子の上に放射角を制御する拡散板、プリズムシート等が組み合わされることが好ましい。
【0204】
通常、基板(ガラス基板、樹脂基板など)から光を放射するような有機EL素子においては、発光層から放射された光の一部が基板と空気との界面において全反射を起こし、光を損失するという問題が発生する。この問題を解決するために、基板の表面にプリズムやレンズ状の加工を施す、もしくは基板の表面にプリズムシートやレンズシートを貼り付けることにより、全反射を抑制して光の取り出し効率を向上させる。
【0205】
以下に、光取り出し及び/または集光シートの好ましい形態を説明するが、本発明では目的効果を損なわない範囲内であれば、これらを用いて光取り出し効率を向上させることができる。
【0206】
(1)ガラス基板の上に拡散板とプリズムシートを置く構成
例えば、ガラス基板/透明導電膜/発光層/電極/封止層からなる有機EL素子において、ガラス基板の発光層とは反対側の基板表面に接するように第1の拡散板を置く。拡散板に接するように第1のレンズシート(例えば、3M製 BEF II)をレンズ面がガラス基板と反対側に向くように配置し、更に第2のレンズシートをレンズのストライプが第1のレンズのストライプと直交し、且つそのレンズ面がガラス基板と反対側に向くように配置する。次に第2のレンズシートに接するように第2の拡散板を配置する。第1ならびに第2のレンズシートの形状としては、ポリエチレンテレフタレート(以下、PETともいう)基材上に、アクリル樹脂で頂角90度、ピッチ50μmの△状のストライプが形成されたものである。頂角が丸みを帯びた形状(3M製 RBEF)、ピッチをランダムに変化させた形状(3M製 BEF III)、その他類似の形状であってもよい。
【0207】
第1の拡散板としては、約100μmのPET基材上に光を拡散するビーズを混ぜた膜を形成したもので、透過率は約85%でヘイズ値は約75%である。第2の拡散板としては、約100μmのPET基材上に光を拡散するビーズを混ぜた膜を形成したもので、透過率は約90%で、ヘイズ値は約30%である。ガラス基板に接して配置する拡散板は、ガラス基板に光学接着剤を介して接着されていてもよい。また、ガラス基板表面に光を拡散する層を直接塗布する、もしくはガラス基板の表面に光を拡散するための微細な構造が設けられたものであってもよい。以上、ガラス基板で説明したが、基板は樹脂基板であってもよい。
【0208】
(2)基板の表面にマイクロレンズアレイを形成する場合
ガラス基板/透明導電膜/発光層/電極/封止層からなる有機EL素子において、ガラス基板の発光層が設けられた面とは反対側の表面に、マイクロレンズアレイシートを光学接着剤を介して貼り付ける。マイクロレンズアレイシートは、各々50μmの四角垂(ピラミッドの形状)でその頂角が90度のマイクロレンズを、50μmピッチで整列させた形状をしている。
【0209】
シートの製造方法としては、マイクロレンズアレイの母型となる金属の金型と、0.5mmのスペーサを挟んで設置されたガラス平板の間にUV硬化樹脂を注入し、ガラス基板からUV露光することで樹脂を硬化させてマイクロレンズアレイシートを得る。ここで、各々のマイクロレンズの形状としては、円錐形状、三角錐形状、凸レンズ形状等を適用可能である。ガラス基板にマイクロレンズアレイシートを貼り付ける構造として説明したが、樹脂基板にマイクロレンズアレイシートを貼り付けるでもよい。また、マイクロレンズアレイシートのマイクロレンズアレイが設けられた面と反対面に、透明電極/発光層/電極/封止層を設けるという構成でもよい。
【0210】
(3)基板の表面にマイクロレンズアレイシートを下向きに接着する構造
ガラス基板/透明導電膜/発光層/電極/封止層からなる有機EL素子において、ガラス基板の発光層が設けられた面とは反対側の表面にマイクロレンズアレイシートを、マイクロレンズの凹凸面がガラス基板側に向くように光学接着剤を介して貼り付ける。マイクロレンズアレイシートは、各々一辺が50μmの四角垂形状の頂点を平坦にした構造をしたマイクロレンズをピッチ50μmで整列した形状をしている。平坦となった頂点部分がガラス基板の表面に接着される。ここで、各々のマイクロレンズの形状としては、円錐形状、三角錐形状、凸レンズ形状等を適用可能である。ガラス基板にマイクロレンズアレイシートを貼り付ける構造として説明したが、樹脂基板にマイクロレンズアレイシートを貼り付けてもよい。
【0211】
光取り出し効率を更に高めるためには、透明電極と透明基板の間に低屈折率層を挿入することが好ましい。透明電極と透明基板の間に低屈折率の媒質を光の波長よりも長い厚みで形成すると、透明電極から出てきた光は、媒質の屈折率が低いほど外部への取り出し効率が高くなる。低屈折率層としては、例えば、エアロゲル、多孔質シリカ、フッ化マグネシウム、フッ素系ポリマーなどが挙げられる。透明基板の屈折率は一般に1.5〜1.7程度であるので、低屈折率層は屈折率がおよそ1.5以下であることが好ましい。また更に1.35以下であることが好ましい。また、低屈折率媒質の厚みは、光の媒質中の波長よりも長い厚み、好ましくは2倍以上となるのが望ましい。これは、低屈折率媒質の厚みが、光の波長程度になってエバネッセントで染み出した電磁波が基板内に入り込む膜厚になると、低屈折率層の効果が薄れるからである。
【0212】
以下に、本発明に係る低屈折率層の例を説明するが、本発明では目的効果を損なわない範囲内であれば、これらに限定されない。
【0213】
(a)中空シリカを分散させる場合
ゾル−ゲル法により中空シリカを分散させた低屈折率層を形成したガラス基板の作製方法を説明する。ガラス基板上に以下の手順で低屈折率層を形成することができる。
【0214】
原料化合物として金属アルコキシド(正珪酸四エチルSi(OC254[略してTEOS])、溶媒としてエタノール、触媒として酢酸、それに加水分解に必要な水を加えた調合液に、低屈折率材料(触媒化成工業製、シリカ粒子(屈折率1.35))をイソプロピルアルコールに加えた液を混合させ、数十℃に保って加水分解と重縮合反応を起こさせ、液体のゾルを生成する。作成されたゾルをスピンコートでガラス基板上に塗布して反応させるとゲルとして固化する。これを更に150度の雰囲気中で乾燥させて乾燥ゲルとし、その時の膜厚が0.5μmとなるように、溶液の調合とスピンコートの条件を設定する。その結果、膜厚0.5μm、屈折率1.37の低屈折率層が形成される。
【0215】
ここで、溶液の塗布方法としてスピンコートと記述したが、ディップコート他、均一な膜厚を得られる手法であればよい。基板としてガラス基板の例を示したが、プロセス温度が150度以下であるので樹脂基板の上に直接塗布することも可能である。また、原料化合物や低屈折率材料として更に低い屈折率を選択し、得られる低屈折率層の屈折率が1.37以下にすることで更なる効果が期待できる。膜厚については0.5μm以上が望ましく、1μm以上であれば更に好ましい。
【0216】
中空シリカの作製は、例えば、特開2001−167637号公報、特開2001−233611号公報、特開2002−79616号公報等に記載されている。
【0217】
(b)シリカエアロゲルの場合
透明低屈折率層は、シリコンアルコキシドのゾルゲル反応により形成される湿潤ゲルを超臨界乾燥することによって得られるシリカエアロゲルによって形成される。シリカエアロゲルとは、均一な超微細構造を持った光透過性の多孔質体である。テトラメトキシシランのオリゴマーとメタノールを混合してA液を調製し、また水、アンモニア水、メタノールを混合してB液を調製した。A液とB液を混合して得たアルコキシシラン溶液を、基板2上に塗布する。アルコキシシランをゲル化させた後、水、アンモニア水、メタノールの養生溶液中に浸漬し、室温にて1昼夜養生する。次に、養生を行なった薄膜状のゲル状化合物をヘキサメチルジシラザンのイソプロパノール溶液中に浸漬し、疎水化処理をし、その後、超臨界乾燥を行ってシリカエアロゲルを形成する。
【0218】
(c)多孔質シリカの場合
低屈折率材料として、撥水性を有するヘキサメチルジシロキサンやヘキサメチルジシラザンを含有した低比誘電率物質の溶液を、基板上に塗布して成膜を行う。ここで用いる低比誘電率物質の溶液には、ヘキサメチルジシロキサンやヘキサメチルジシラザンのような撥水性の物質以外にも、必要に応じてアルコールや酢酸ブチルなどを添加物として加えてもよい。そして、焼成処理などにより、上記低比誘電率物質の溶液中の溶媒や水、酸またはアルカリ触媒や界面活性剤などを蒸発させながら多孔質シリカ材料からなる低屈折率膜を形成する。これを洗浄し、低屈折率膜を得る。
【0219】
この様に基板上に低屈折率膜を形成した後、低屈折率膜上に直接、または、例えば、RFスパッタ法等によりSiO2膜からなる透明絶縁膜で中間層を形成し、その後、中間層の上にDCスパッタ法によりITO膜の成膜を行い、透明電極付き基板とする。
【0220】
また、更に光取り出し効率を高めるためには、例えば、特開平11−283751号公報に記載されたように、全反射を起こす界面もしくはいずれかの媒質中に回折格子を導入する方法を併用するのが好ましい。例えば、ガラス基板上に回折格子を形成する。
【0221】
この方法は、回折格子が1次の回折や2次の回折といった、所謂ブラッグ回折により、光の向きを屈折とは異なる特定の向きに変えることができる性質を利用して、発光層から発生した光のうち、層間での全反射等により外に出ることができない光を、いずれかの層間、もしくは媒質中(透明基板内や透明電極内)に回折格子を導入することで光を回折させ、光を外に取り出そうとするものである。
【0222】
導入する回折格子は、二次元的な周期屈折率を持っていることが望ましい。これは、発光層で発光する光はあらゆる方向にランダムに発生するので、ある方向にのみ周期的な屈折率分布を持っている一般的な1次元回折格子では、特定の方向に進む光しか回折されず、光の取り出し効率がさほど上がらない。
【0223】
しかしながら、屈折率分布を二次元的な分布にすることによりあらゆる方向に進む光が回折され、光の取り出し効率が上がる。回折格子を導入する位置としては、前述のとおりいずれかの層間、もしくは媒質中(透明基板内や透明電極内)でもよいが、光が発生する場所である発光層の近傍が望ましい。このとき、回折格子の周期は増幅する光の媒質中の波長の約1/2〜3倍程度が好ましい。回折格子の配列は正方形のラチス状、三角形のラチス状、ハニカムラチス状など、2次元的に配列が繰り返されることが好ましい。
【0224】
例えば、ガラス基板上に回折格子を形成するには、ガラス基板を洗浄後、表面にポジ型のレジストを塗布する。次にレジスト上に基板垂直方向からθ度の角度で対向するように互いにコヒーレントな波長λの2つの平行光を照射する。このとき、レジストにはピッチdの干渉縞が形成される。ここで、d=λ/(2cosθ)となる。波長488nmのアルゴンレーザを用いると、フォトニック結晶のピッチとして300nmを作製するとき、2つの光束ともに基板に垂直な方向から角度35.6度で露光すると、ピッチ300nmの第1の干渉縞が形成される。
【0225】
次に基板を基板の面内に90度回転させて、第1の干渉縞に直交するように第2の干渉縞を形成する。露光する光束をそのまま維持しておけばピッチ300nmで第2の干渉縞が形成される。レジストには2つの干渉縞が重畳されて露光され、格子状の露光パターンが形成される。露光パワーと現像条件を適切に設定することにより、2つの干渉縞が重なりあって強く露光された部分のみレジストが除去されるように現像する。ガラス基板上には縦横のピッチが各々300nmの格子の重なりあった部分に、ほぼ円形にレジストが除去されたようなパターンが形成される。円の直径は、例えば、220nmとする。
【0226】
次にドライエッチングを施すことにより、レンジストが除去された部分に深さ200nmの孔を形成する。その後レジストを除去し、ガラス基板を洗浄する。
【0227】
以上により、表面に深さ200nm、直径220nmの孔が縦横300nmピッチの正方格子の頂点に並んだガラス基板が形成される。次に、穴の底から測って膜厚300nm程度のITO膜をバイアススパッタリングにより成膜し、バイアススパッタリングの条件を適切にコントロールすることで、表面の凹凸を50nm以下に平坦にすることができる。
【0228】
以上のように作製されたITO付きのガラス基板の表面に研磨を施すことで、有機EL用のITO付きガラス基板が形成される。ガラス基板にフォトレジストを塗布してパターニングし、ガラス基板をエッチングする方法のほか、同様の手法でガラス型を形成し、ガラス基板上にUV硬化のレジストをナノインプリントの手法で転写してガラス基板をエッチングする方法も可能である。また、ガラス基板に形成されたパターンをニッケル電鋳などの手法で金型に転写し、その金型をナノインプリントの手法で樹脂に転写したものを基板として用いることで、樹脂基板でも本発明を実施することが可能である。
【0229】
上記のような光取り出し及び/または集光シートを用いた有機EL素子においては、正面輝度増幅率が高められている。このようにして取り出された光は、前記の2℃視野角正面輝度を上記方法により測定したときに、CIE1931表色系の色度でx=0.33±0.07、y=0.33±0.07の領域内にある所謂白色光であるように調整される。通常、発光色は420nm以上500nm未満の発光を青色、500nm以上550nm未満の発光を緑色、600nm以上〜650nm未満の発光を赤色に区分する。
【0230】
従って、発光する材料(実質的にドーパント)によっても異なるが、本発明において、光取り出し及び/または集光シートが無い場合の有機EL素子の正面輝度ピーク値は、該シートがある場合に対して、定性的には青色が最も小さい比率となる。
【0231】
連続駆動等における寿命においては、一般的に青色が律速になるのでこの様な光取り出し及び/または集光シートを用いた場合、有機EL素子においてより高寿命が可能となる。また、駆動電圧の制約となるのはHOMOとLUMOのエネルギーギャップが最も大きい青色であるため、前記光取り出しを向上させた有機EL素子は、青色の正面輝度が少なくて済む設計となり、駆動電圧を下げることが可能となる。
【0232】
即ち、青色発光層の膜厚が薄くでき、且つ駆動電圧が下げられるため、光取り出し及び/または集光シートがない場合に比べ、高寿命が可能となり、この組み合わせによりトータルで白色光を得るようにすることができる。
【0233】
ここにおいて、光取り出し及び/または集光シートによる正面輝度の増幅率は、分光放射輝度計(例えば、CS−1000(コニカミノルタセンシング社製))等を用い、正面からの発光輝度(2℃視野角正面輝度)を、光取り出し及び/または集光シートがある状態とない状態で発光面からの法線に分光放射輝度計の光軸が一致するようにして、必要な可視光波長範囲で測定、積算し、比をとればよい。
【0234】
《有機EL素子の作製方法》
本発明に係る有機EL素子の作製方法の一例として、陽極/正孔注入層/正孔輸送層/発光層/正孔阻止層/電子輸送層/陰極からなる有機EL素子の作製法について説明する。
【0235】
まず、適当な支持基板上に所望の電極物質、例えば、陽極用物質からなる薄膜を1μm以下、好ましくは10〜200nmの膜厚になるように蒸着やスパッタリング等の方法により形成させ、陽極を作製する。
【0236】
次に、この上に有機EL素子材料である正孔注入層、正孔輸送層、発光層、正孔阻止層、電子輸送層の有機化合物薄膜を形成させる。この有機化合物薄膜の薄膜化の方法としては、前記の如く蒸着法、ウェットプロセス(スピンコート法、キャスト法、インクジェット法、印刷法)等があるが、均質な膜が得られやすく、且つピンホールが生成しにくい等の点から、真空蒸着法、スピンコート法、インクジェット法、印刷法が特に好ましい。更に層毎に異なる製膜法を適用してもよい。製膜に蒸着法を採用する場合、その蒸着条件は使用する化合物の種類等により異なるが、一般にボート加熱温度50〜450℃、真空度10-6〜10-2Pa、蒸着速度0.01〜50nm/秒、基板温度−50〜300℃、膜厚0.1nm〜5μm、好ましくは5〜200nmの範囲で適宜選ぶことが望ましい。
これらの層を形成後、その上に陰極用物質からなる薄膜を1μm以下、好ましくは50〜200nmの範囲の膜厚になるように、例えば、蒸着やスパッタリング等の方法により形成させ、陰極を設けることにより所望の有機EL素子が得られる。
【0237】
この有機EL素子の作製は、一回の真空引きで一貫して正孔注入層から陰極まで作製するのが好ましいが、途中で取り出して異なる製膜法を施しても構わない。その際、作業を乾燥不活性ガス雰囲気下で行う等の配慮が必要となる。また作製順序を逆にして、陰極、電子注入層、電子輸送層、発光層、正孔輸送層、正孔注入層、陽極の順に作製することも可能である。このようにして得られた多色の表示装置に直流電圧を印加する場合には、陽極を+、陰極を−の極性として電圧2V〜40V程度を印加すると、発光が観測できる。また、交流電圧を印加してもよい。なお、印加する交流の波形は任意でよい。
【0238】
《表示装置》
本発明の発光体を適用した表示装置について説明する。
【0239】
本発明の発光体は、多色または白色の表示装置に用いられる。多色または白色の表示装置の場合は、発光層形成時のみシャドーマスクを設け、一面に蒸着法、キャスト法、スピンコート法、インクジェット法、印刷法等で膜を形成できる。発光層のみパターニングを行う場合、その方法に限定はないが、好ましくは蒸着法、インクジェット法、印刷法である。蒸着法を用いる場合においてはシャドーマスクを用いたパターニングが好ましい。
【0240】
また、作製順序を逆にして陰極、電子輸送層、正孔阻止層、発光層ユニット(上記の発光層A、B及びCの少なくとも3層を有し、各発光層間に非発光性の中間層を有していてもよい)、正孔輸送層、陽極の順に作製することも可能である。このようにして得られた多色または白色の表示装置に直流電圧を印加する場合には、陽極を+、陰極を−の極性として電圧2〜40V程度を印加すると、発光が観測できる。また、逆の極性で電圧を印加しても電流は流れずに発光は全く生じない。更に、交流電圧を印加する場合には、陽極が+、陰極が−の状態になったときのみ発光する。なお、印加する交流の波形は任意でよい。
【0241】
《照明装置》
本発明の発光体を適用した照明装置について説明する。
【0242】
本発明に係る有機EL素子は、照明用や露光光源のような一種のランプとして使用してもよいし、画像を投影するタイプのプロジェクション装置や、静止画像や動画像を直接視認するタイプの表示装置(ディスプレイ)として使用してもよい。動画再生用の表示装置として使用する場合の駆動方式は、単純マトリクス(パッシブマトリクス)方式でもアクティブマトリクス方式でもどちらでもよい。
【0243】
本発明に用いられる白色有機エレクトロルミネッセンス素子においては、必要に応じ製膜時にメタルマスクやインクジェットプリンティング法等でパターニングを施してもよい。パターニングする場合は、電極のみをパターニングしてもよいし、電極と発光層をパターニングしてもよいし、素子全層をパターニングしてもよい。発光層に用いる発光ドーパントとしては特に制限はなく、例えば、液晶表示素子におけるバックライトであれば、CF(カラーフィルタ)特性に対応した波長範囲に適合するように、本発明に係る白金錯体、また公知の発光ドーパントの中から任意のものを選択して組み合わせて、また本発明に係る光取り出し及び/または集光シートと組み合わせて、白色化すればよい。
【0244】
このように、本発明の白色の有機EL素子は、CF(カラーフィルタ)と組み合わせて、また、CF(カラーフィルタ)パターンに合わせ素子及び駆動トランジスタ回路を配置することで、請求項7に記載されるように有機エレクトロルミネッセンス素子から取り出される白色光をバックライトとして、青色フィルタ、緑色フィルタ、赤色フィルタを介して青色光、緑色光、赤色光を得ることで、低駆動電圧で長寿命のフルカラーの有機エレクトロルミネッセンスディスプレイができ、好ましい。
【0245】
《本発明に係る有機EL素子及び発光体を適用した産業分野》
本発明に係る有機EL素子は、表示デバイス、ディスプレイ、各種発光光源として用いることができる。発光光源として、例えば、家庭用照明、車内照明、時計や液晶用のバックライト、看板広告、信号機、光記憶媒体の光源、電子写真複写機の光源、光通信処理機の光源、光センサーの光源等が挙げられるがこれに限定するものではないが、特にカラーフィルタや光拡散板、光取り出しフィルムなどと組み合わせた各種表示装置のバックライト、照明用光源としての用途に有効に用いることができる。
【0246】
本発明に係る有機EL素子の特徴を活かして、以下に示すような様々な照明器具や発光表示体等への適用が可能である。
【0247】
〔商品展示・ディスプレイ用〕
商品展示・ディスプレイ用としては、店舗の商品ディスプレイ、冷凍・冷蔵ショーケース、博物館・美術館・展示会場などの展示品のライトアップ、自動販売機、遊戯台、交通広告などがある。
【0248】
店舗の商品ディスプレイは店舗自体の装飾的なディスプレイやショーケース、POPやサインなどがある。店舗の中でも高級ブランドショップや貴金属、ファッション系、高級飲食店など、そのブランドイメージを重視するような店舗では照明が与える店舗イメージへの影響は非常に大きいことから、強い拘りをもって照明が選択されている分野である。有機ELを用いることによって、今までは直接光源が見えないよう建築物の構造に工夫を凝らすことで雰囲気を作り出していた間接照明の分野で光源・機器分のスペースが省略でき複雑な構造が不要になったり、インテリアやサインなどで拡散光を作り出す際に光源の形が透けて見えないために必要な光源と拡散板の間のスペースが省略できるなど、施工性があがることがあげられる。また、店舗のイメージを変える際のツールとしても、ディスプレイ棚、床、什器として組み込むなどスペースを取らず、軽量な光源であるという特徴を活かし、デザイン自由度があり、施工性がよく、手軽に採用できるという利点がある。
【0249】
冷凍・冷蔵ショーケースはスーパーやコンビニエンスストアなどに置かれ、野菜や果物、鮮魚、精肉などの鮮食品を“美しさ”や“鮮度”にあふれる商品として、より見やすく、鮮やかに、取りやすくするために照明設備も重要な部品の1つである。有機EL光源を用いることによって、低温発光のため冷却機能への影響が小さく、薄型であるので光源スペースを大幅に削減ことができることから収納スペースを拡大でき、スマートなデザインで食品を選びやすく、取りやすくすることができる。また、食品の良さが判りやすい色光で消費者に自然とアピールすることができ、売上に貢献できる。
【0250】
博物館・美術館・展示会場などでの展示品のライトアップでは、展示物への視認や日焼けなどの観点から使用条件に適した光源を選ぶ必要があり、退色防止型で紫外線比率の低いで蛍光ランプが開発されている。有機EL光源は紫外線を含まないこと、発熱量が低いことから展示物に悪影響がなく、面光源で均一に光ることによりグレアがなく、高い演色性によって展示物のありのままを忠実に鑑賞することができる。また、大きな光源器具を必要としないため、視界に余計な機材の出っ張りが入ることなく、展示物だけに注目することができる。またショーなど大規模な展示会場においては、注目を集める大型電飾装飾もその軽量・薄型という特徴から比較的簡易に組み立てることができる。
【0251】
自動販売機では、押しボタン、商品サンプル、販売機前面のポスター部に光源が使われている。
【0252】
機器全体の大きさに対し、取り込みたい追加機能の為のスペースと収納スペースの取り合いとなっていることから、薄く光源のスペースをとらない有機ELの利点が活かせる分野であり、特に取り出し口上のポスタースペースでニーズが高い。また、近年は販売と共に当たり/はずれなどゲーム性を持たせた機器も多く見られ、前面のポスターに部分に画素コントロール機能を持たせた光源(動画ディスプレイ)を搭載することで更にメリットを活かすことができる。
【0253】
遊戯台にはパチンコ・パチスロなどがある。これら遊戯台では、利用者にアミューズメント性(ゲーム性・ギャンブル性など)を体感し、楽しんでいただくことが最も重要。光源を薄くする事で1台の機器の厚みを低減できる薄さのメリットもあるが、自動販売機同様、画素コントロール機能を持たせた光源(動画ディスプレイ)を搭載することで更にメリットを活かすことができる。
【0254】
交通広告には公共スペースにあるポスターや看板、電車・バスなどの社内のポスターや画面、車体に張られている広告などがある。特にポスターや看板は蛍光灯をバックライトを用いたボックスタイプのものがあり、有機ELに変えることでボックス自体を薄く、軽量にすることができる。
【0255】
また、吊り下げ看板についてはボックスを薄くすることで、埃、ゴミの蓄積がなくなることや鳥による糞害の防止にもなる。
【0256】
〔インテリア・家具・建築材料用の組み込み照明〕
建築関係では、床・壁・天井などと照明とを融合して一体化したものは「建築化照明」と呼ばれる。「建築化照明」の代表的なものとしては、その方式により、コーニス照明、トロファ照明、コーブ照明、光天井、ルーバ天井などがある。これらは照明光源が天井・壁・床に組み込まれ、照明としての存在や気配を消し、建築素材自体が光を発することを求めている。
【0257】
有機EL素子を用いた光源は、「建築化照明」に対して、その薄さ、軽さ、色調整、デザイン可変性から最も適した光源であり、さらにインテリア、家具、什器にまで適用が可能である。従来は店舗や美術館のみで用いられてきたこのような建築化照明を、有機EL光源の展開によって一般住宅にまで広げることができ、新たな需要を発掘することができる。
【0258】
商業施設においては、半地下店舗、アーケードの天井などに有機EL光源を採用し、照明の明るさや色温度を変化させることで、天候や昼夜に左右されない最適な商業空間を構築することができる。
【0259】
インテリア・什器・家具の一例としては、机や椅子、食器棚・靴箱・ロッカーなどの収納、洗面化粧台、仏壇・祭壇、ベッドライト、フットライト、手すり、ドア、障子・襖などが挙げられるが、それに限定されるものではない。
【0260】
一方で、有機EL光源に透明な電極を用い消灯/発光させることで、透明/不透明を切り替えることもできる。それによって、あらゆる窓、ドア、カーテンやブラインド、パーテーションとしての利用も可能となる。
【0261】
〔自動車用照明、発光表示体〕
自動車用としては、外部の照明器具や発光表示体、車内の照明器具や発光表示体などに、有機EL素子が利用できる。前者は、前部に(小分類)ヘッドランプ、補助灯、車幅灯、フォッグランプ、方向指示灯など、後部にはリアコンビネーションランプとしてストップランプ、車幅灯、バック灯、方向指示灯、およびナンバープレート灯などがある。特に、有機EL素子を用いてリアコンビネーションランプを1枚で形成し、後部に貼り付けることによって、後部ランプのためのスペースを削減して、トランクルームを広くすることが可能となる。また、雨や霧で見通しが悪い時には、車幅灯やストップランプの面積を広くして、視認性を高めることもできる。一方、ホイールを有機EL素子で発光させることによって、側面からの視認性を高めることもできる。さらには、ボデイ全体を有機EL素子で形成して発光させ、ボデイカラーやデザインに新たな発想を盛り込むことが可能となる。
【0262】
後者の車内の照明器具や発光表示体としては、室内灯、マップライト、ドア下部の乗降ライト、メーター類表示、カーナビゲーションディスプレイ、警告灯などがある。特に、有機EL素子の透明性を活かして、昼間はサンルーフとし、夜間は発光させて面光源の穏やかな室内灯とすることもできる。またタクシーなどでは、前部座席の背面に有機EL素子からなる照明器具を貼り付けることによって、ドライバーの運転に支障なく、かつ室内空間を犠牲にすることなく、顧客が利用しやすい手元照明システムを構築できる。
【0263】
〔公共交通機関〕
電車、地下鉄、バス、航空機、船舶などの公共交通機関における車内の照明や表示体において、本発明の有機ELは、その特徴を活かすことができる。
【0264】
航空機には多くの照明器具が搭載されているが、機体内部に搭載されている、客室照明、貨物室照明、操縦室照明などのうち特に客室の間接照明については有機EL照明のメリットが充分発揮される。
【0265】
客室照明には蛍光灯や電球が使われているが、これらは天井は側面に反射した間接照明が使われており、客室に落ち着いた雰囲気を与えると共に万が一のトラブルの際にも割れてガラス破片が客席に降りかからないような工夫がされている。
【0266】
有機EL光源を用いれば、その薄さから間接照明が作りやすくなり、また直接照明にした場合でも割れて破片が飛び散る危険がなく、拡散光で落ち着いた雰囲気をつくることもできる。
【0267】
また、航空機には電力消費量や機体軽量化が重要である面から考えても、消費電力が小さく、軽量な有機EL光源は好ましい。このようなメリットは、お客様を照らすだけでなく、手荷物収納内の照明でも発揮され、荷物の取り残しの低減に貢献することもできる。
【0268】
公共交通機関に付属する駅やバス停、空港などの施設にも、顧客を誘導するための表示や照明が利用できる。また、夜間、屋外のバス停などにおいては、バス待ちの人を検出して照明を明るくし、防犯に寄与することもできる。
【0269】
〔OA機器用光源〕
OA機器用光源としては、読み取り用センサーが搭載されているファクシミリ、複写機、スキャナ、プリンタ、それらの複合機などがあげられる。
【0270】
読み取り用センサーは等倍光学系と組合せる密着型センサー(CIS)と縮小光学系と組み合わせる縮小型センサー(CCDリニア)とに分かれる。
【0271】
CISについてはメーカーによっては定義が異なり、センサ・ロッドレンズアレイ・LED基盤をモジュール化したものをCISと呼ぶ場合や、モジュール化したものをCISM(コンタクトイメージセンサモジュール)と呼びモジュールの中に入っているセンサチップをCISと呼ぶ場合もある。それらの光源にはLED、キセノン、CCFLランプ、LDなどが使われている。
【0272】
OA機器としては、更なる小型化、低電圧駆動の要望があり、有機ELの 厚みがなく、低発熱量・低電圧で駆動可能であるという特徴は、それらの要望にこたえることが可能である
〔産業用検査システム〕
製造会社では、かつては目視による検品工程に多くの工数と人力をかけていたが、それを撮影画像を利用し欠品判定することで自動化をはかっている。CCDカメラでとらえた対象物の画像をデジタル信号に変換し、種々の演算処理を行なうことで、対象物の面積、長さ、個数、位置などの特徴を抽出し、設定された基準をもとに判定結果を出力するものが、その画像撮影の為に光源が必要。このような検査システムはパッケージや形状サイズ検査、マイクロ部品の検査などでも利用される。
【0273】
画像センサ用に使用される照明光源には、蛍光灯、LED、ハロゲンなどがある。その中でも、透明容器やリードフレームなどを背景から照らすバックライトとしては面状に均一な光が必要。
【0274】
また、シートの汚れ検出には直線状に均一な光でシートの幅方向前面を照らせる光が必要であるなど、検査する物品により光源への要求がことなる。
【0275】
この分野に有機EL光源を採用することによって、例えば、ボトリングの工程などではボトル周囲360度全方位に照明を配置し、一度に照明し撮影することも可能となり、短時間での検品が可能となる。また検査機器内で光源自体に取られるスペースを大幅に小さくすることができる。また、面光源であることで、光反射により撮影画像が判定しにくくなることによる検知ミスを回避可能である。
【0276】
〔農産物栽培用光源〕
植物工場とは『環境制御や自動化などハイテクを利用した植物の周年生産システム』である。植物栽培の環境をコンピューターにより制御することで、天候に左右されることなく、人手を必要とせずに作物を自動的に生産する技術。今後の世界の人口増、環境問題を考えると、農業にハイテクを導入することで、安定な食糧生産につながるいわゆる農業の工業化が必要になる。最近はLED、LDが、植物栽培の光源としての可能性が高まってきた。従来からよく使われている高圧ナトリウムランプなどの光源は赤色光と青色光のスペクトルバランスが悪く、また多量の熱放射が空調負荷を大きくし、植物との距離を十分にとる必要があるために、施設が大型化する欠点がある。
【0277】
有機EL光源は光源の厚みがなく、多くの棚を設置でき、また発熱量が少ないことから植物に近接させことで高効率であり栽培量を増やすことができる。
【0278】
また、一般家庭においても省スペースのメリットを活かし、キッチンなど室内の狭い場所に家庭菜園を作ることができ、庭やベランダ、屋上などの屋外スペースのみで可能であった家庭菜園の概念を変えて、広く人々が楽しむことを可能とする。
【0279】
〔避難用照明〕
消防法や建築基準法で規定されている防災照明設備は、建築物火災に際して非難の為の出口や経路を示す誘導灯と、避難経路の明るさを確保し、迅速な避難を担保する非常灯とがある。
【0280】
FA・民生用に用いられるシグナルや誘導灯・非常灯などは、見やすいことが前提となるが、その為の大型化は設置場所によっては建物と不釣合いになり、建築化やデザイナーから指摘されることが多かった。その対策として、1目でわかる表示のプクトグラフ化や、光源で誘目効果を高める対処が取られている。従来誘導灯の光源には、蛍光ランプが用いられることが多いが、最近ではLEDを使用した誘導灯も出てきている。
【0281】
これらの誘導灯に有機EL光源を用いることで、輝度班、角度特性による輝度低下がなく、視認性を向上でき、低電力で、薄型であるために特別な工事の必要がなく設置が容易で、従来の蛍光灯を使うタイプに比べ交換の必要がなく、メンテナンスを容易することができる。また発熱も少ない為発光面の色焼けも少ない。したがって、避難経路の床、階段の手すり、防火扉など、多くの場所に設置して安全性を高めることができる。また現在、蛍光灯で問題視されている水銀の問題もなく、割れにくく、安全性に優れている。更に省スペース薄型設計で美観を損ねることなく、誘目効果を高めることができる光源と言える。
【0282】
〔撮影用照明〕
写真館やスタジオ、照明写真ボックスなどで使われる光源には、ハロゲン、タングステン、ストロボ、蛍光灯などが用いられている。これらの光源を被写体に直接直線的に当て陰影を強くつける、もしくは光を拡散させ、あまり陰影のない柔らかな光をつくるという、大きくは2つの光の種類を色々な角度から組み合わせて1つの絵がつくられている。光を拡散させるためには、光源と被写体の間にディフューザーを挟むこと、または他の面(レフ板など)に当てた反射光を用いるなどの方法がある。
【0283】
有機EL光源は拡散光であり、この後者に対応する光をディフューザーを用いることなく発光することができる。その際には、既存光源で必要な光源とディフューザーの間の空間が不用になることや、レフ板などで光の向きを微妙な角度で調整し、細かな陰影を調整していたものをフレキシブルタイプの有機EL自体を曲げることで実施することができるなどのメリットがある。
【0284】
撮影で利用される光源には、演色性が求められることがある。太陽光線で見たときとの色の見え方の差が大きいと演色性が悪く、その差が少なければ演色性が良いと評価される。一般家庭で使用されている蛍光灯はその波長特性から撮影には好ましいとは言えず、光があたっている部分が緑色に偏る傾向がある。肌やメイキャップ、髪、着物、宝石などの色は、そのもの自体の色で写ることが求められる場合が多く、演色性はライトにとって重要なファクターの1つである。有機EL光源は演色性に優れ、前述のような色の忠実さが求められる撮影に好ましい。この特徴は印刷・染色関連など色を忠実に評価したい場所でも同様に活かされる。
【0285】
有機EL光源のような面光源をスタジオの天井一面に配置することによって、子供やペットの撮影などでは子供やペットを室内で自由に遊ばせておき、自由・自然な表情を光源移動のわずらわしさなく、自然な色で撮影することができる。
【0286】
〔家電製品〕
家電製品には細部の見易さ、作業のしやすさ、デザインの為、光源がつけられている場合が多い。一例を挙げると、ミシン、電子レンジ、食器洗浄乾燥機、冷蔵庫、AV機器などは従来より光源が付いているが、新しいものでは洗濯乾燥機は横型モデルで取り残しが増えたことから光源が付けられるようになった。既存のものには白熱電球やLEDがつけられている場合が多い。今後、掃除機の先端に照明を設置して家具などの影の部分の清掃状況を確認したり、シェーバーに特定波長光の光源を設置して、髭剃り状況を確認したりするなど、色々と展開が考えられる。
【0287】
このような家電製品は、全体を軽量・小型化し、更に収納スペースが大きいことが求められ、光源部分はできるだけスペースをとらずに全体を照明できることが求められる。有機ELの薄い面光源はその要望に充分こたえることができる。
【0288】
〔遊技施設〕
スケートリンクの氷の下に有機ELを用いた照明を配置することによって、上からのスポットライトとは異なる演出が可能である。有機ELは発光温度が低いので特に有利である。また、スケーターの位置を検知して、その動きに合わせて発光させるようなことも可能である。スポットライトとの組み合わせ効果や、音楽のリズムに連動させた発光などもショーアップに有効である。
【0289】
プラネタリウムにおいては、従来のような下からの投影ではなく、ドーム全体に有機ELの微細ピクセルを配置して、ドームそのものが星々を発光する方式が可能であり、投影機のないプラネタリウムが実現できる。
【0290】
〔イルミネーション用照明〕
一般的にイルミネーションというと樹木へのイルミネーションのことを指していることが大半であったが、近年環境保護の観点から家屋や門、垣根などの造形物への装飾に移行する事例も数多くなっている。これは点光源を多数利用、ライン状に装飾したものが主流であり、LEDの出現により一層広がりを見せると見られている。
【0291】
この分野に有機EL照明を用いることによって、今までは点光源をつなげることでの表現のみであったものが、同じ樹木へのイルミネーションにおいても、葉形の照明をつけることや、樹木に巻きつけ樹木全体を光らせる、また逆に定型面モジュールとして点光源同様につなぎ合わせ、様々な色に光らせるカクテルパレットとして用いて全体として文字や絵を映し出すなどのバリエーションが出せ、より一層照明による演出効果を高めることが可能となる。
【0292】
〔持ち物・衣服につける照明〕
夜間屋外の歩行や運動で自動車・バイクなどから認識されやすくする目的で、自分の持ち物や靴、衣服に添付し、ヘッドライトの光を反射することで歩行者の安全を守る反射材製品(反射シートなど)が販売、利用されている。
【0293】
ガラスビーズタイプの場合、細かなガラスビーズが表面に存在し入ってきた光がこのレンズの役目で光源の方向に再帰反射し、車からヘッドライトの光があたるとドライバーの目の位置に光が帰っていき強く輝いて見える。プリズムタイプの場合も機能は同じだがレンズの構造がことなる。ガラスビーズタイプとプリズムタイプの特長は、ガラスビーズタイプは、斜めからの光に対して高い反射効果があり、プリズムタイプは正面からの光に対しては、ガラスビーズタイプより反射するが、斜めからの光には比較的反射効果が低いことがある。また、貼り付ける場所の硬度によって、素材と接着方法を選ぶこともできる。従来の場合はいずれにしても、歩行者を認識させるためには、光が当たることが必要であり、背設置場所なども下に向いたヘッドライトができるだけ早く当たり認識してもらうために足に貼り付けるなどの工夫が必要であった。
【0294】
これらの代替に有機EL光源を用いることで、ヘッドライトがあたる範囲になる前から、運転者に歩行者を認識させることができ、より安全を確保できる。また他の光源に対しては軽量で薄くシート状にできる点からも、シールのメリットを維持したままで効果をあげることができる。これらは人間だけでなく、ペットの衣服などにも利用できる。また、歩くことで発電して衣服などを発光させることも、低消費電力の有機ELであれば可能である。特に、人物特定用衣服に応用することもでき、例えば徘徊者の早期保護に役立てることもできる。ダイビング用のウェットスーツを発光させることによって、ダイバーの所在確認や、鮫などから身を守ることにも可能性がある。もちろん、ショーなどでの舞台衣装、ウェデイングドレスなどにも利用できる。
【0295】
〔通信用光源〕
有機EL素子を用いた発光体は、可視光を使って簡単なメッセージや情報などを送る「可視光タグ」にも有効に活用できる。すなわち、極めて短時間の明滅による信号を発光させることによって、それを受信する側に多量の情報を送ることができる。
【0296】
発光体が信号を発光させていても、極めて短時間であることから、人間の視覚上は単なる照明として認識される。道路、店舗、展示場、ホテル、アミューズメントパークなど、場所毎に設置された照明が、それぞれ場所特有の情報信号を発信して、必要な情報を受信者に提供できる。また有機ELの場合は、1つの発光体中に波長の異なる複数の発光ドーパントを組み込んでおいて、異なる波長ごとに異なる信号を発生させることによって、1つの発光体が複数の異なる情報を提供することもできる。この場合も、発光波長や色調が安定している有機ELは優位である。
【0297】
音声、電波、赤外光などによる情報提供と異なり、「可視光タグ」は照明設備として一緒に組み込めるので、煩雑な追加設置工事なども不要である。
【0298】
〔医療用光源〕
現在はハロゲンランプなどが使用されている内視鏡や、ワイヤーを挿入して手術する腹腔手術用の照明などに有機ELを利用することによって、小型、軽量化、用途拡大に貢献する。特に近年注目されている、体内検査や治療に用いられる内視鏡カプセル(飲む内視鏡)などにも利用が可能で、期待されている。
【0299】
〔その他〕
さらに本発明に係る有機EL素子を組み込んだ発光体は、色調を容易に選択でき、蛍光灯のような明滅がなく、低消費電力で色調が安定しているので、特開2001−269105号公報に示されるような害虫防除装置として、特開2001−286373号公報に示されるような鏡用の照明として、特開2003−288995号公報に示されるような浴室照明システムとして、特開2004−321074号公報に示される植物育成用人工光源として、特開2004−354232号公報に示されるような水質汚れ測定装置の発光体として、特開2004−358063号公報に示されるような光感受性薬剤を用いた治療用被着体として、特開2005−322602号公報に示されるような医療用無影灯として、有用である。
【実施例】
【0300】
以下、実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。なお、実施例において「部」あるいは「%」の表示を用いるが、特に断りがない限り「質量部」あるいは「質量%」を表す。
【0301】
実施例1
《有機EL素子101の作製》
陽極として30mm×30mm、厚さ150μmのポリエチレンナフタレート(PEN)フィルム上に、ITO(インジウムチンオキシド)を120nmの厚さで成膜した透明支持基板にパターニングを行った後、このITO透明電極を付けた透明支持基板をイソプロピルアルコールで超音波洗浄し、乾燥窒素ガスで乾燥し、次いで、UVオゾン洗浄を5分間行った。この透明支持基板を、市販の真空蒸着装置の基板ホルダーに固定した。
【0302】
真空蒸着装置内の蒸着用るつぼの各々に、各材料を、各々素子作製に最適の量充填した。蒸着用るつぼは、各化合物に適したモリブデン製またはタングステン製抵抗加熱用材料で作製されたものを用いた。
【0303】
次いで、真空度4×10-4Paまで減圧した後、m−MTDATAの入った前記蒸着用るつぼに通電して加熱し、CuPcを蒸着速度0.1nm/秒で透明支持基板のITO電極側に蒸着し、15nmの正孔注入層を設けた。
【0304】
更に、表1に記載の混合比で各層が形成されるように、各材料が装填された蒸着用るつぼに、順次通電して、共蒸着または単独蒸着して、正孔輸送層、緑、赤、青の各発光層、正孔阻止層、電子輸送層、電子注入層を各々成膜した。さらに、厚さ10nmのMg・Ag層、さらにITO電極を高周波スパッタ法で積層して透明陰極とした。
【0305】
最後に、封止フィルムとして三フッ化ポリエチレンフィルム(厚さ200μm)に接着剤層HM−645(セメダイン社製)をホットメルトで均一に塗布したものを用い、窒素雰囲気下(純度99.999%以上の高純度窒素ガスの雰囲気下)のグローブボックス中で、加熱ローラーを用いて上記作製した有機EL素子上に熱圧着して、有機EL素子101を得た。
【0306】
《有機EL素子102〜105の作製》
上記有機EL素子101の作製において、各層を構成する材料種類、配分比、層構成等を表1に記載のように変更した以外は同様にして、有機EL素子102〜105を作製した。
【0307】
以上のようにして作製した有機EL素子101〜105の発光ドーパントは、全てリン光型である。表1に記載の「−」印は、当該層が無いことを示す。
【0308】
表1に、シンボルで記載した化合物は以下の通りである。
【0309】
なお、上記及び表1に略称で記載した各化合物の詳細を、以下に示す。
【0310】
【化19】

【0311】
【化20】

【0312】
【表1】

【0313】
《有機EL素子の評価》
上記作製した各有機EL素子を、2度視野角正面輝度が1000cd/cm2となるように電圧・電流を調整した。この時の各有機EL素子の電圧値を求め、これを初期駆動電圧とした。
【0314】
その条件でCIE1931表色系における色度Aを、3回にわたり測定し、その平均値を求めた結果、いづれもx1=0.33、y1=0.32であり、視覚上も白色であることを確認した。なお、輝度、色度の測定は、プレサイスゲージ(株)製の有機EL用分光測光装置EL1003型及びELLT1001型を用いて測定した。
【0315】
次いで、各有機EL素子の耐久試験を、下記の方法に従って行った。
【0316】
〔耐久性の評価1:連続発光後の色度変動〕
各有機EL素子を、上記で設定した初期輝度1000Cd/cm2の電圧、電流条件で連続発光させ、その輝度が500Cd/cm2となった時の色度Bを、上記と同様の測定装置を用いて測定してx2及びy2を求め、次いで、上記測定した発光開始時の色度A(x1、y1)との差(Δ色度1:Δx1-2、Δy1-2)を求めた。なお、輝度が500Cd/cm2となった時の色度は、その輝度前後の異なる時点で10回測定し、輝度/色度カーブより、500Cd/cm2における色度を求めた。
【0317】
〔耐久性の評価2:高温保存後の色度変動〕
各有機EL素子を、全く発光させない状態で、暗所の70℃インキュベーター中で200時間放置して強制劣化試験を行い、終了後に500Cd/cm2となるように電圧、電流条件に調整して発光させ、その時の色度Cを、上記と同様の測定装置を用いて測定してx3及びy3を求め、次いで、上記測定した発光開始時の色度A(x1、y1)との差(Δ色度2:Δx1-3、Δy1-3)を求めた。なお、色度は、500Cd/cm2となるように電圧、電流条件に調整して発光させ、3回の測定を行ってその平均値を求めた。
【0318】
〔耐久性の評価3:目視評価〕
上記耐久性1(連続発光)、耐久性2(高温保存)の各評価で、1)連続発光で輝度が500Cd/cm2となった時の有機EL素子、2)暗所の70℃インキュベーター中で200時間放置した後の有機EL素子のそれぞれについて、初期輝度時(白色)に対する色調変化を目視観察し、色変動方向を求めた。
【0319】
〔基板フィルム及び封止フィルムの色度変動幅の測定〕
1)各有機EL素子の作製に用いた基板フィルム(PENフィルム)と封止フィルムに用いた三フッ化ポリエチレンに接着剤をコートしたものを、それぞれ短冊状に裁断し、あらかじめ分光測光装置を用いて可視光透過率1を測定し、次いで、上記耐久性の評価1で、連続発光させ、輝度が500Cd/cm2となった時の有機EL素子を分解し、基板フィルムと封止フィルムとの可視光透過率2を測定し、両者間の色度差を求めた結果、基板フィルムと封止フィルムとを合わせた色度変化幅は、x=+0.01、y=+0.01であった。
【0320】
2)各有機EL素子の作製に用いた基板フィルム(PENフィルム)と封止フィルムに用いた三フッ化ポリエチレンに接着剤をコートしたものを、それぞれ短冊状に裁断し、あらかじめ分光測光装置を用いて可視光透過率1を測定し、次いで、上記耐久性の評価2と同様にして70℃のインキュベーター内に200時間放置し、終了後に再度可視光透過率3を測定して、両者間の色度差を求めた結果、基板フィルムと封止フィルムとを合わせた色度変化幅は、x=+0.02、y=+0.02であった。
【0321】
以上により得られた結果を、表2に示す。
【0322】
【表2】

【0323】
表2に記載の結果より明らかなように、本発明に係る有機EL素子101、104のように、B、G、Rの各リン光ドーパントの選択と有機EL素子の構成を最適化することで、長期間にわたる連続発光あるいは高温下で保存した際の色度安定性が極めて高いことが分かる。
【0324】
また、本発明の素子102のように、基板フィルム、封止フィルムの経時での色度変化を想定して、その変化とは逆方向に色度が変化するように設計しておくことによって、長期間にわたる連続発光あるいは高温下で保存した際の色度安定性が高いことが分かる。
【0325】
したがって、長期間にわたって有機EL素子の発光色度を安定に保つには、有機EL素子を構成する材料の選択のみならず、有機EL素子に用いるフィルム部材の劣化による色度変化を考慮した設計が重要であることが分かる。
【0326】
実施例2
《発光体の作製》
下記の方法に従って、実施例1で作製した有機EL素子101〜105に、光取り出しフィルムである調光シート(光学部材)を貼り付けて、発光体(照明装置)1〜5を作製した。
【0327】
(調光シートの作製)
図3に示す厚さ120μmのポリエチレンテレフタレート(PET)製の透光性基板11の片面に、円錐台状12aになったポリメチルメタクリレート製の凸部12が連続して形成された光学部材である調光シート10Aを作製した。この調光シート10Aは、波長550nmの光に対する屈折率が1.50、円錘台状の凸部12の頂角θは50°であり、凸部12の高さHは25μm、凸部12のピッチXは30μmであった。また、粘着剤の波長550nmの光に対する屈折率は1.48であった。
【0328】
この調光シートの凸部12を、実施例1で作製した各有機EL素子20の出射面21aに対向するようにして、この調光シート10Aを各有機EL素子20の出射面21aに接着し、発光体を作製した。接着には、積水化学製の透明両面テープ(ダブルタックテープ #5511)を用いた。接着剤の厚みは25μm、接着剤層に埋没した凸部Yは7μmで、埋没していない凸部hは18μmであった。なお、この調光シートを貼り付けることによって、有機EL素子からの輝度が向上し、光取り出し効率は140%であった。
【0329】
《発光体の評価》
上記作製した発光体1〜5について、下記の評価を行った。
【0330】
〔耐久性の評価4:連続発光後の色度変動〕
各発光体(有機EL素子+光学部材)を構成する各有機EL素子を、実施例1と同様にして初期輝度1000Cd/cm2の電圧、電流条件で連続発光させ、その輝度が500Cd/cm2となった時の色度Dを、実施例1で用いたのと同様の測定装置により測定してx4及びy4を求め、次いで、実施例1で測定した発光開始時の色度A(x1、y1)との差(Δ色度3:Δx1-4、Δy1-4)を求めた。なお、輝度が500Cd/cm2となった時の色度は、その輝度前後の異なる時点で10回測定し、輝度/色度カーブより、500Cd/cm2における色度を求めた。
【0331】
〔耐久性の評価5:高温保存後の色度変動〕
各発光体(有機EL素子+光学部材)について、各有機EL素子を全く発光させない状態で、暗所の70℃インキュベーター中で200時間放置して強制劣化試験を行い、終了後に500Cd/cm2となるように電圧、電流条件に調整して発光させ、その時の色度Eを、上記と同様の測定装置を用いて測定してx5及びy5を求め、次いで、実施例1で測定した発光開始時の色度A(x1、y1)との差(Δ色度4:Δx1-5、Δy1-5)を求めた。なお、色度は、500Cd/cm2となるように電圧、電流条件に調整して発光させ、3回の測定を行ってその平均値を求めた。
【0332】
〔耐久性の評価6:目視評価〕
上記耐久性の評価4(連続発光)、耐久性の評価5(高温保存)で、1)連続発光で輝度が500Cd/cm2となった時の発光体、2)暗所の70℃インキュベーター中で200時間放置した後の発光体のそれぞれについて、初期輝度時(白色)に対する色調変化を目視観察し、色変動方向を求めた。
【0333】
〔調光シート(光学部材)の色度変動幅の測定〕
1)調光シート(光学部材)をそれぞれ短冊状に裁断し、あらかじめ分光測光装置を用いて可視光透過率3を測定し、次いで、上記耐久性の評価4で、連続発光させ、輝度が500Cd/cm2となった時の発光体を分解して、調光シートの可視光透過率4を測定し、両者間の色度差を求めた結果、調光シートの色度変化幅は、x=+0.04、y=+0.03であった。
【0334】
2)調光シート(光学部材)をそれぞれ短冊状に裁断し、あらかじめ分光測光装置を用いて可視光透過率3を測定し、次いで、上記耐久性の評価5と同様にして70℃のインキュベーター内に200時間放置し、終了後に再度可視光透過率5を測定して、両者間の色度差を求めた結果、調光シートの色度変化幅は、x=+0.02、y=+0.02であった。
【0335】
以上により得られた結果を、表3に示す。
【0336】
【表3】

【0337】
表3に記載の結果より明らかな様に、比較例の有機EL素子103、105を用いて作製した発光体(照明装置)は、有機EL素子自身が、長期間にわたる連続発光あるいは高温下で保存した際、色度として黄色方向に変動し、更に、発光体を構成する調光シートも同様に黄色方向に色度変動を起こすため、強制劣化処理後の発光体は、両者の特性が相まって、強い黄色変動を起こしている。
【0338】
これに対し、本発明の各発光体は、同様に調光シートは黄色方向に色度変動を起こしているが、有機EL素子が青色方向に色度変化を起こす特性を備えており、両者のそれぞれの色度変化が補償されて、強制劣化後でも安定した白色の発光特性を維持できていることが分かる。
【図面の簡単な説明】
【0339】
【図1】透明なバリア膜の層構成とその密度プロファイルの一例を示す模式図である。
【図2】ガスバリア膜の形成に好ましく用いられる大気圧プラズマ放電処理装置の一例を示す概略図である。
【図3】調光シート、接着層、有機EL素子から構成される本発明の発光体の一例を示す模式図である。
【符号の説明】
【0340】
10A 調光シート
11 透光性基板
12 凸部
12a 円錐台状
12b 凸部の傾斜面
20 有機EL素子
21 透明基板
21a 出射面
22 透明電極
100 接着層
201 バリア膜
202 基材
203 低密度層
204 中密度層
205 高密度層
230 プラズマ放電処理装置
231 プラズマ放電処理容器
235 ロール回転電極
236 角筒型固定電極群
240 電界印加手段
250 ガス供給手段
251 ガス発生装置
253 排気口
260 電極温度調節手段
F 基材
P 送液ポンプ
261 配管
266 ニップロール
267 ガイドロール
268、269 仕切板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基体上に少なくとも陽極、複数の発光層及び陰極を有し、発光波長の異なる少なくとも2種のリン光性ドーパントを有する有機エレクトロルミネッセンス素子と、該有機エレクトロルミネッセンス素子に組み合わされた光学部材とからなる発光体であって、該光学部材の経時による色度変化を、有機エレクトロルミネッセンス素子の経時による色度変化が補償する特性を有し、発光体を連続発光したとき、発光の初期輝度の1/2まで輝度が低下した時点での発光初期に対する色度変化巾が、CIE1931表色系の色度に準拠したx値が±0.10、y値が±0.10の領域内にあることを特徴とする発光体。
【請求項2】
基体上に少なくとも陽極、複数の発光層及び陰極を有し、発光波長の異なる少なくとも2種のリン光性ドーパントを有する有機エレクトロルミネッセンス素子と、該有機エレクトロルミネッセンス素子に組み合わされた光学部材とからなる発光体であって、該光学部材の発光初期の色度に対する、未発光の状態で70℃の環境下で200時間保存した後の色度変化を、有機エレクトロルミネッセンス素子の経時による色度変化が補償する特性を有し、発光体の色度変化巾が、CIE1931表色系の色度に準拠したx値が±0.10、y値が±0.10の領域内にあることを特徴とする発光体。
【請求項3】
前記発光層に含有される発光波長の異なる少なくとも2種のリン光性ドーパントが、その最大発光ピーク波長が430〜480nm、500〜540nm、520〜560nm及び580〜640nmの4区分から選ばれる少なくとも2つであることを特徴とする請求項1または2に記載の発光体。
【請求項4】
前記リン光性ドーパントの少なくとも1つが、最大発光ピーク波長が430〜480nmの青色リン光性ドーパントであることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の発光体。
【請求項5】
前記青色リン光性ドーパントが、下記一般式(A)で表される化合物であることを特徴とする請求項4に記載の発光体。
【化1】

〔式中、R1は置換基を表す。Zは5〜7員環を形成するのに必要な非金属原子群を表す。n1は0〜5の整数を表す。B1〜B5は炭素原子、窒素原子、酸素原子もしくは硫黄原子を表し、少なくとも一つは窒素原子を表す。M1は元素周期表における8族〜10族の金属を表す。X1及びX2は炭素原子、窒素原子もしくは酸素原子を表し、L1はX1及びX2と共に2座の配位子を形成する原子群を表す。m1は1、2または3の整数を表し、m2は0、1または2の整数を表すが、m1+m2は2または3である。〕
【請求項6】
下記一般式(B)で表されるホスト化合物を含有することを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の発光体。
【化2】

〔式中、Xは、NR′、O、S、CR′R″またはSiR′R″を表す。R′、R″は、各々水素原子または置換基を表す。Arは芳香環を表す。nは0から8の整数を表す。〕
【請求項7】
前記陽極または陰極は、光線透過率が50%以上の透明電極であることを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載の発光体。
【請求項8】
前記基体は、光線透過率が80%以上の透明フィルムであることを特徴とする請求項1〜7のいずれか1項に記載の発光体。
【請求項9】
大気圧プラズマ法により作製された封止フィルムにより封止されていることを特徴とする請求項1〜8のいずれか1項に記載の発光体。
【請求項10】
前記色度変化巾が、x値で±0.05、y値で±0.05の領域内にあることを特徴とする請求項1〜9のいずれか1項に記載の発光体。
【請求項11】
前記光学部材が、70℃の環境下で、高圧水銀灯で160mJ/cm2の条件で200時間処理した後の色度変化が、CIE1931表色系の色度に準拠したx値が−0.10〜−0.20、y値が−0.10から−0.20の領域内にあることを特徴とする請求項1〜11のいずれか1項に記載の発光体。
【請求項12】
前記光学部材が、光取り出し効率が80%%以上の光取り出しフィルムであることを特徴とする請求項1〜11のいずれか1項に記載の発光体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2008−159741(P2008−159741A)
【公開日】平成20年7月10日(2008.7.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−345529(P2006−345529)
【出願日】平成18年12月22日(2006.12.22)
【出願人】(000001270)コニカミノルタホールディングス株式会社 (4,463)
【Fターム(参考)】