説明

発光媒体の真偽判定システムおよび真偽判定方法

【課題】偽造防止媒体に対する真偽判定を精度良く行う真偽判定システムを提供する。
【解決手段】偽造防止媒体10は、基材11と、基材11上に形成された発光部12と、を有している。発光部12は、第1不可視光が照射されたときに第1色の光を発光するとともに、第2不可視光が照射されたときに第2色の光を発光する蛍光体を含んでいる。このような偽造防止媒体10に対して真偽判定を実施する真偽判定システム50は、判定対象の偽造防止媒体10の発光部12に対して不可視光を照射する光照射部20と、不可視光により励起されて発光部12から発光する光を受光する測定部25と、を備えている。また真偽判定システム50は、参照用の偽造防止媒体10に関する情報が内蔵されたデータベース30と、光照射部20、測定部25およびデータベース30からの情報に基づいて偽造防止媒体10の真偽判定を行う真偽判定部35と、をさらに備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発光媒体に対して真偽判定を行う真偽判定システムおよび真偽判定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
金券やプリペイドカードを含む有価証券や、免許証を含む身分証明書など、偽造を防止することが必要とされる媒体において、セキュリティ性を高めるため、近年、マイクロ文字、コピー牽制パターン、赤外線吸収インキまたは蛍光インキなどが利用されている。このうち蛍光インキとは、可視光下ではほとんど視認されず、不可視光(紫外線または赤外線)が照射されたときに視認される蛍光体を含むインキである。このような蛍光インキを用いることにより、有価証券などに、特定の波長領域内の不可視光が照射されたときにのみ現れる発光部を形成することができる。このような発光部を利用することにより、有価証券などが正規のものかどうかを判定することが可能となる。
【0003】
例えば特許文献1において、蛍光体を含む発光部を有するID識別用媒体に対して励起光を照射する光源と、発光部から放射された光を受光し、当該光のスペクトルの強度を計測する計測部と、を備えた判定システムが提案されている。この場合、発光部から放射された光のスペクトルに複数のピークが包含されるよう、発光部が構成されている。そして、各ピークの強度比に基づいて、ID識別用媒体が正規のものであるかどうかが判定される。
【0004】
また特許文献2において、対象物に光を照射し、対象物からの反射光の色相を観察することにより真偽判定を行う真偽判定装置が提案されている。この場合、正規の媒体には、ランタノイド系希土類元素を含み、異なる種類の光源の下では異なる色相を呈する複製防止部が形成されており、この複製防止部に2種類の光源からの光を照射することにより、真偽判定が行われる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】国際公開第2007/023799号パンフレット
【特許文献2】特開平10−278460号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
近年、有価証券などにおいて、解析技術などの進歩により、偽造技術が向上してきている。このため、偽造をより確実に防ぐためには、容易には解析され得ない発光部を有する発光媒体を有価証券などとして用いるとともに、発光媒体に対する真偽判定をより精度良く行うことが求められている。
【0007】
本発明は、このような課題を効果的に解決し得る発光媒体の真偽判定システムおよび真偽判定方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
第1の本発明は、発光媒体に対して真偽判定を行う真偽判定システムにおいて、発光媒体は、第1波長領域内の第1不可視光が照射されたときに第1色の光を発光するとともに、第2波長領域内の第2不可視光が照射されたときに第2色の光を発光する蛍光体を含む発光部を有し、真偽判定システムは、判定対象の発光媒体の発光部に対して第1不可視光を第1照射強度で照射する第1光源と、判定対象の発光媒体の発光部に対して第2不可視光を第2照射強度で照射する第2光源と、を含む光照射部と、前記第1照射強度の第1不可視光により励起されて判定対象の発光媒体の発光部から発光する第1放出光と、前記第2照射強度の第2不可視光により励起されて判定対象の発光媒体の発光部から発光する第2放出光とを受光して、第1放出光の色度および第2放出光の色度をそれぞれ求める測定部と、所定の第1参照照射強度の第1不可視光により励起されて参照用の発光媒体の発光部から発光する第1参照放出光の色度と、所定の第2参照照射強度の第2不可視光により励起されて参照用の発光媒体の発光部から発光する第2参照放出光の色度と、に関する情報がそれぞれ予め内蔵されたデータベースと、前記第1放出光の色度と前記第1参照放出光の色度を比較し、かつ、前記第2放出光の色度と前記第2参照放出光の色度を比較することにより、判定対象の発光媒体の真偽判定を行う真偽判定部と、を備えたことを特徴とする真偽判定システムである。
【0009】
第1の本発明によれば、発光媒体は、第1波長領域内の第1不可視光および第2波長領域内の第2不可視光が照射されたときに互いに異なる色の光を発光する蛍光体を含む発光部を有している。このため、発光媒体の解析を困難にすることができ、これによって、発光媒体が容易に偽造されるのを防ぐことができる。また、第1波長領域内の第1不可視光および第2波長領域内の第2不可視光の双方を利用して判定対象の発光媒体の真偽判定を行うことにより、発光媒体に対する真偽判定を精度良く行うことができる。さらに、判定対象の発光媒体の発光部から発光する放出光の色度に基づいて発光媒体の真偽判定を行うことにより、発光媒体に対する真偽判定を容易に行うことができる。これらのことにより、簡易かつ高精度に真偽判定を行う真偽判定システムを提供することができる。
【0010】
第1の本発明による真偽判定システムにおいて、前記測定部は、前記第1放出光の輝度と、前記第2放出光の輝度と、をさらに求め、また前記データベースは、前記第1参照放出光の輝度と、前記第2参照放出光の輝度と、に関する情報をさらに有していてもよい。この場合、前記真偽判定部は、前記第1照射強度および前記第2照射強度と前記第1参照照射強度および前記第2参照照射強度との関係を考慮したうえで、前記第1放出光の色度および輝度と前記第1参照放出光の色度および輝度を比較し、かつ、前記第2放出光の色度および輝度と前記第2参照放出光の色度および輝度を比較することにより、判定対象の発光媒体の真偽判定を行ってもよい。
【0011】
第2の本発明は、発光媒体に対して真偽判定を行う真偽判定システムにおいて、発光媒体は、第1波長領域内の第1不可視光が照射されたときに第1色の光を発光するとともに、第2波長領域内の第2不可視光が照射されたときに第2色の光を発光する蛍光体を含む発光部を有し、真偽判定システムは、判定対象の発光媒体の発光部に対して、第1照射強度を有する第1不可視光および第2照射強度を有する第2不可視光を同時に照射する光照射部と、前記第1照射強度の第1不可視光により励起されて判定対象の発光媒体の発光部から発光する光と、前記第2照射強度の第2不可視光により励起されて判定対象の発光媒体の発光部から発光する光とが混合されてなる混合放出光を受光して、前記混合放出光の色度を求める測定部と、所定の第1参照照射強度の第1不可視光により励起されて参照用の発光媒体の発光部から発光する光と、所定の第2参照照射強度の第2不可視光により励起されて参照用の発光媒体の発光部から発光する光と、が混合されてなる混合参照放出光の色度に関する情報が予め内蔵されたデータベースと、前記第1照射強度および前記第2照射強度と前記第1参照照射強度および前記第2参照照射強度との関係を考慮したうえで、前記混合放出光の色度と前記混合参照放出光の色度を比較することにより、判定対象の発光媒体の真偽判定を行う真偽判定部と、を備えたことを特徴とする真偽判定システムである。
【0012】
第2の本発明によれば、発光媒体は、第1波長領域内の第1不可視光および第2波長領域内の第2不可視光が照射されたときに互いに異なる色の光を発光する蛍光体を含む発光部を有している。このため、発光媒体の解析を困難にすることができ、これによって、発光媒体が容易に偽造されるのを防ぐことができる。また、第1波長領域内の第1不可視光および第2波長領域内の第2不可視光の双方を利用して判定対象の発光媒体の真偽判定を行うことにより、発光媒体に対する真偽判定を精度良く行うことができる。さらに、判定対象の発光媒体の発光部から発光する放出光の色度に基づいて発光媒体の真偽判定を行うことにより、発光媒体に対する真偽判定を容易に行うことができる。これらのことにより、簡易かつ高精度に真偽判定を行う真偽判定システムを提供することができる。
【0013】
第2の本発明による真偽判定システムにおいて、前記測定部は、前記混合放出光の輝度をさらに求め、また前記データベースは、前記混合参照放出光の輝度に関する情報をさらに有していてもよい。この場合、前記真偽判定部は、前記第1照射強度および前記第2照射強度と前記第1参照照射強度および前記第2参照照射強度との関係を考慮したうえで、前記混合放出光の色度および輝度と前記混合参照放出光の色度および輝度を比較することにより、判定対象の発光媒体の真偽判定を行ってもよい。
【0014】
第2の本発明による真偽判定システムにおいて、前記光照射部から判定対象の発光媒体の発光部に対して照射される第1不可視光の第1照射強度および第2不可視光の第2照射強度が調整可能であってもよい。
【0015】
第2の本発明による真偽判定システムにおいて、前記光照射部は、前記第1照射強度および前記第2照射強度を変化させながら、判定対象の発光媒体の発光部に対して第1不可視光および第2不可視光を複数回照射し、また前記測定部は、前記混合放出光の色度を光照射部による照射の度に求めてもよい。この場合、前記真偽判定部は、光照射部による複数回の照射のそれぞれに対して、前記第1照射強度および前記第2照射強度と前記第1参照照射強度および前記第2参照照射強度との関係を考慮したうえで、前記混合放出光の色度と前記混合参照放出光の色度を比較することにより、判定対象の発光媒体の真偽判定を行ってもよい。
【0016】
第3の本発明は、発光媒体に対して真偽判定を行う真偽判定方法において、発光媒体は、第1波長領域内の第1不可視光が照射されたときに第1色の光を発光するとともに、第2波長領域内の第2不可視光が照射されたときに第2色の光を発光する蛍光体を含む発光部を有し、真偽判定方法は、所定の第1参照照射強度の第1不可視光により励起されて参照用の発光媒体の発光部から発光する第1参照放出光の色度と、所定の第2参照照射強度の第2不可視光により励起されて参照用の発光媒体の発光部から発光する第2参照放出光の色度と、に関する情報がそれぞれ予め内蔵されたデータベースを準備する工程と、判定対象の発光媒体の発光部に対して第1不可視光を第1照射強度で照射する第1照射工程と、判定対象の発光媒体の発光部に対して第2不可視光を第2照射強度で照射する第2照射工程と、前記第1照射強度の第1不可視光により励起されて判定対象の発光媒体の発光部から発光する第1放出光と、前記第2照射強度の第2不可視光により励起されて判定対象の発光媒体の発光部から発光する第2放出光とを受光して、第1放出光の色度および第2放出光の色度をそれぞれ求める測定工程と、前記第1放出光の色度と前記第1参照放出光の色度を比較し、かつ、前記第2放出光の色度と前記第2参照放出光の色度を比較することにより、判定対象の発光媒体の真偽判定を行う真偽判定工程と、を備えたことを特徴とする真偽判定方法である。
【0017】
第3の本発明によれば、発光媒体は、第1波長領域内の第1不可視光および第2波長領域内の第2不可視光が照射されたときに互いに異なる色の光を発光する蛍光体を含む発光部を有している。このため、発光媒体の解析を困難にすることができ、これによって、発光媒体が容易に偽造されるのを防ぐことができる。また、第1波長領域内の第1不可視光および第2波長領域内の第2不可視光の双方を利用して発光媒体の真偽判定を行うことにより、発光媒体に対する真偽判定を精度良く行うことができる。さらに、判定対象の発光媒体の発光部から発光する放出光の色度に基づいて発光媒体の真偽判定を行うことにより、発光媒体に対する真偽判定を容易に行うことができる。これらのことにより、簡易かつ高精度に真偽判定を行う真偽判定方法を提供することができる。
【0018】
第3の本発明による真偽判定方法の前記測定工程において、前記第1放出光の輝度と、前記第2放出光の輝度と、がさらに求められ、また前記データベースは、前記第1参照放出光の輝度と、前記第2参照放出光の輝度と、に関する情報をさらに有していてもよい。この場合、前記真偽判定工程において、前記第1照射強度および前記第2照射強度と前記第1参照照射強度および前記第2参照照射強度との関係を考慮したうえで、前記第1放出光の色度および輝度と前記第1参照放出光の色度および輝度を比較し、かつ、前記第2放出光の色度および輝度と前記第2参照放出光の色度および輝度を比較することにより、判定対象の発光媒体の真偽判定が行われてもよい。
【0019】
第4の本発明は、発光媒体に対して真偽判定を行う真偽判定方法において、発光媒体は、第1波長領域内の第1不可視光が照射されたときに第1色の光を発光するとともに、第2波長領域内の第2不可視光が照射されたときに第2色の光を発光する蛍光体を含む発光部を有し、真偽判定方法は、所定の第1参照照射強度の第1不可視光により励起されて参照用の発光媒体の発光部から発光する光と、所定の第2参照照射強度の第2不可視光により励起されて参照用の発光媒体の発光部から発光する光と、が混合されてなる混合参照放出光の色度に関する情報が予め内蔵されたデータベースを準備する工程と、判定対象の発光媒体の発光部に対して、第1照射強度を有する第1不可視光および第2照射強度を有する第2不可視光を同時に照射する照射工程と、前記第1照射強度の第1不可視光により励起されて判定対象の発光媒体の発光部から発光する光と、前記第2照射強度の第2不可視光により励起されて判定対象の発光媒体の発光部から発光する光とが混合されてなる混合放出光を受光して、前記混合放出光の色度を求める測定工程と、前記第1照射強度および前記第2照射強度と前記第1参照照射強度および前記第2参照照射強度との関係を考慮したうえで、前記混合放出光の色度と前記混合参照放出光の色度を比較することにより、判定対象の発光媒体の真偽判定を行う真偽判定工程と、を備えたことを特徴とする真偽判定方法である。
【0020】
第4の本発明によれば、発光媒体は、第1波長領域内の第1不可視光および第2波長領域内の第2不可視光が照射されたときに互いに異なる色の光を発光する蛍光体を含む発光部を有している。このため、発光媒体の解析を困難にすることができ、これによって、発光媒体が容易に偽造されるのを防ぐことができる。また、第1波長領域内の第1不可視光および第2波長領域内の第2不可視光の双方を利用して判定対象の発光媒体の真偽判定を行うことにより、発光媒体に対する真偽判定を精度良く行うことができる。さらに、判定対象の発光媒体の発光部から発光する放出光の色度に基づいて発光媒体の真偽判定を行うことにより、発光媒体に対する真偽判定を容易に行うことができる。これらのことにより、簡易かつ高精度に真偽判定を行う真偽判定方法を提供することができる。
【0021】
第4の本発明による真偽判定方法の前記測定工程において、前記混合放出光の輝度がさらに求められ、また前記データベースは、前記混合参照放出光の輝度に関する情報をさらに有していてもよい。この場合、前記真偽判定工程において、前記第1照射強度および前記第2照射強度と前記第1参照照射強度および前記第2参照照射強度との関係を考慮したうえで、前記混合放出光の色度および輝度と前記混合参照放出光の色度および輝度を比較することにより、判定対象の発光媒体の真偽判定が行われてもよい。
【0022】
第4の本発明による真偽判定方法の前記照射工程において、判定対象の発光媒体の発光部に対して照射される第1不可視光の第1照射強度および第2不可視光の第2照射強度が調整可能であってもよい。
【0023】
第4の本発明による真偽判定方法の前記照射工程において、前記第1照射強度および前記第2照射強度を変化させながら、判定対象の発光媒体の発光部に対して第1不可視光および第2不可視光が複数回照射され、また前記測定工程において、前記混合放出光の色度が、前記照射工程における第1不可視光および第2不可視光の照射の度に求められてもよい。この場合、前記真偽判定工程において、前記照射工程における第1不可視光および第2不可視光の複数回の照射のそれぞれに対して、前記第1照射強度および前記第2照射強度と前記第1参照照射強度および前記第2参照照射強度との関係を考慮したうえで、前記混合放出光の色度と前記混合参照放出光の色度を比較することにより、判定対象の発光媒体の真偽判定が行われてもよい。
【発明の効果】
【0024】
本発明によれば、発光媒体に対する真偽判定を精度良く行う真偽判定システムおよび真偽判定方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】図1は、本発明の発光媒体からなる偽造防止媒体により構成される有価証券の一例を示す平面図。
【図2】図2は、本発明の発光媒体の発光部に含まれる蛍光インキの蛍光発光スペクトルの一例を示す図。
【図3】図3は、本発明の第1の実施の形態における真偽判定システムを示す図。
【図4】図4は、本発明の第1の実施の形態において、第1参照放出光および第2参照放出光の色度を示すxy色度図。
【図5】図5は、本発明の第2の実施の形態における真偽判定システムを示す図。
【図6】図6は、本発明の第3の実施の形態における真偽判定システムを示す図。
【図7】図7は、本発明の第3の実施の形態において、混合参照放出光の色度を示すxy色度図。
【図8】図8は、本発明の第4の実施の形態において、判定用UV−Aおよび判定用UV−Cが複数回照射される場合の各回の混合放出光の色度を示すxy色度図。
【発明を実施するための形態】
【0026】
第1の実施の形態
以下、図1乃至図4を参照して、本発明の第1の実施の形態について説明する。はじめに図1および図2を参照して、本発明の真偽判定システムおよび真偽判定方法により真偽判定が実施される発光媒体として偽造防止媒体10について説明する。
【0027】
偽造防止媒体
図1は、本実施の形態による偽造防止媒体10により構成される商品券(有価証券)の一例を示す図である。図1に示すように、偽造防止媒体10は、基材11と、基材11上に形成された発光部12と、を有している。本実施の形態においては、後述するように、発光部12が、偽造防止媒体10の真偽を判定するための真偽判定用領域として機能する。この発光部12は、不可視光により励起されて蛍光を発する蛍光体を含む蛍光インキ13を印刷することにより形成されている。
【0028】
偽造防止媒体10において用いられる基材11の材料が特に限られることはなく、偽造防止媒体10により構成する有価証券の種類に応じて適宜選択される。例えば、基材11の材料として、優れた印刷適性および加工適性を有する白色のポリエチレンテレフタレートが用いられる。基材11の厚みは、偽造防止媒体10により構成される有価証券の種類に応じて適宜設定される。
【0029】
発光部12の大きさが特に限られることはなく、真偽判定のし易さや、求められる判定精度などに応じて適宜設定される。例えば、発光部12の長さlおよびlは、それぞれ1〜210mmおよび1〜300mmの範囲内となっている。また、発光部12を形成するよう印刷される蛍光インキ13の厚みは、有価証券の種類や、印刷の方式などに応じて適宜設定されるが、例えば、0.3〜100μmの範囲内となっている。
【0030】
蛍光インキ13は、後述するように、可視光下では発光せず、特定の不可視光下で発光する所定の蛍光体、例えば粒状の顔料を含んでいる。ここで、蛍光インキ13に含まれる顔料の粒径が特に限られることはなく、様々な顔料が用いられ得る。
例えば0.1〜10μmの範囲内、より具体的には0.1〜3μmの範囲内の粒径を有する顔料を含む蛍光インキ13を用いることができる。この場合、蛍光インキ13に可視光が照射されると、光が顔料粒子によって散乱される。従って、可視光下で発光部12を見た場合、白色の領域として視認される。また上述のように、本実施の形態における基材11は、白色のポリエチレンテレフタレートから形成されている。このため、可視光下において、基材11および発光部12はいずれも白色のものとして視認される。従って、可視光下において発光部12が視認されることはない。このことにより、発光部12を有する偽造防止媒体10が容易に解析されるのを防ぐことができる。
また、0.1μm以下の粒径を有する顔料を含む蛍光インキ13が用いられてもよい。例えば、量子ドットを顔料として含む蛍光インキ13が用いられ得る。
【0031】
蛍光インキ
次に図2を参照して、蛍光インキ13についてより詳細に説明する。図2は、蛍光インキ13の蛍光発光スペクトルを示す図である。
【0032】
図2においては、315〜400nmの波長域領域内(第1波長領域内)の紫外線(不可視光)、いわゆるUV−Aが照射されたときの蛍光インキ13の蛍光発光スペクトルと、200〜280nmの波長域領域内(第2波長領域内)の紫外線(不可視光)、いわゆるUV−Cが照射されたときの蛍光インキ13の蛍光発光スペクトルとがともに示されている。なお図2に示す各蛍光発光スペクトルは、最大のピークにおけるピーク強度が同一となるよう規格化されている。
【0033】
図2に示すように、蛍光インキ13は、UV−Aが照射されたとき、ピーク波長が約525nmである緑色(第1色)の光を発し、UV−Cが照射されたとき、ピーク波長が約610nmである赤色(第2色)の光を発する。このように、蛍光インキ13は、UV−A照射時とUV−C照射時で発光色が異なる、いわゆる二色性蛍光体(蛍光体)を含んでいる。このような二色性蛍光体は、例えば、UV−Aにより励起される蛍光体と、UV−Cにより励起される蛍光体と、を適宜組み合わせることにより構成される(例えば、特開平10−251570号公報参照)。
なおUV−A照射時には、図2に示すように約610nmの波長の光も発光される。しかしながら、約610nmの波長の光は、ピーク波長が約525nmである光に比べて強度が小さいため、UV−A照射時、蛍光インキ13からの光は緑色光として視認される。同様に、UV−C照射時、図2に示すように約525nmの波長の光も発光されるが、その強度が小さいため、蛍光インキ13からの光は赤色光として視認される。
【0034】
本実施の形態によれば、上述のように、偽造防止媒体10の発光部12は、UV−Aが照射されたときに緑色(第1色)の光を発光するとともに、UV−Cが照射されたときに赤色(第2色)の光を発光する蛍光体を含んでいる。このため、偽造防止媒体10の解析を困難にすることができ、これによって、偽造防止媒体10が容易に偽造されるのを防ぐことができる。また後述するように、緑色(第1色)の光および赤色(第2色)の光の双方に基づいて、偽造防止媒体10に対する真偽判定を行うことができる。このことにより、偽造防止媒体10から発光される光が単一色である場合に比べて、より高い精度で真偽判定を行うことができる。
【0035】
また本実施の形態によれば、図2に示すように、UV−AおよびUV−Cが照射されたときに発光部12の蛍光体からそれぞれ発光される光のスペクトルは、ほぼ単一のピークから形成されるスペクトルとなっている。このため、UV−AまたはUV−Cのいずれか一方のみが照射されたときに複数のピークを含むスペクトルを有する光を発光する蛍光体が発光部において用いられる場合に比べて、使用され得る蛍光体の選択肢がより広くなっている。このことにより、偽造防止媒体10の発光部12をより安価かつ容易に構成することができる。
【0036】
また本実施の形態によれば、UV−Aにより励起される蛍光体と、UV−Cにより励起される蛍光体との比率を調整することにより、UV−AおよびUV−Cが照射されたときに発光部12からそれぞれ発光される光の輝度比を任意に変えることができる。これに比べて、UV−AまたはUV−Cのいずれか一方のみが照射されたときに複数のピークを含むスペクトルを有する光を発光する蛍光体が発光部12において用いられる場合、各ピークの輝度比は一律の値となっている。すなわち本実施の形態によれば、より多様な判定条件のもとで偽造防止媒体10の真偽判定を行うことが可能となる。
【0037】
真偽判定システム
次に図3を参照して、本発明の第1の実施の形態における真偽判定システム50について説明する。真偽判定システム50は、上述の偽造防止媒体10の真偽判定を行うためのシステムであり、偽造防止媒体10からなる有価証券が利用される様々な場所に設置されるものである。
【0038】
図3に示すように、真偽判定システム50は、偽造防止媒体10の発光部12に対して不可視光を照射する光照射部20と、不可視光により励起されて発光部12から発光する放出光を受光する測定部25と、を備えている。また図3に示すように、真偽判定システム50は、データベース30と、光照射部20、測定部25およびデータベース30からの情報に基づいて偽造防止媒体10の真偽判定を行う真偽判定部35と、をさらに備えている。
【0039】
はじめに真偽判定システム50の概要について説明する。真偽判定システム50においては、予め取得された参照用の偽造防止媒体(参照用の発光媒体)10に関する情報と、判定対象の偽造防止媒体(判定対象の偽造防止媒体)10に関する情報とを比較し、両者の情報がほぼ一致した場合に、判定対象の偽造防止媒体10が正規品であると判定される。ここで、参照用の偽造防止媒体10とは、正規品であることが既に確定されている偽造防止媒体10のことである。参照用の偽造防止媒体10は、例えば偽造防止媒体10の発行元などから入手される。また判定対象の偽造防止媒体10とは、正規品かどうかが未だ確定されていない偽造防止媒体10のことであり、例えば店舗などにおいて顧客が会計の際に差し出す有価証券のことである。
【0040】
真偽判定システム50において、参照用の偽造防止媒体10に関する情報は、あらかじめ上述のデータベース30に内蔵されている。また、判定対象の偽造防止媒体10に関する情報は、上述の光照射部20および測定部25を用いることにより取得される。以下、真偽判定システム50の各構成要素について詳細に説明する。
【0041】
(光照射部)
光照射部20は、図3に示すように、判定対象の偽造防止媒体10の発光部12に対してUV−A(第1不可視光)を第1照射強度で照射する第1光源21と、判定対象の偽造防止媒体10の発光部12に対してUV−C(第2不可視光)を第2照射強度で照射する第2光源22と、を含んでいる。
【0042】
このうちUV−A(第1不可視光)を照射する第1光源21としては、例えば、発光ピーク波長が365nmである高圧水銀UVランプを使用することができる。また、UV−C(第2不可視光)を照射する第2光源22としては、例えば、発光ピーク波長が254nmである低圧水銀UVランプを使用することができる。
【0043】
なお、光照射部20の第1光源21から判定対象の偽造防止媒体10の発光部12に対して照射されるUV−Aの第1照射強度、光照射部20の第2光源22から判定対象の偽造防止媒体10の発光部12に対して照射されるUV−Cの第2照射強度は、それぞれ調整可能となっていてもよい。これによって、より多様な判定条件のもとで偽造防止媒体10の真偽判定を行うことが可能となる。
【0044】
UV−Aの第1照射強度およびUV−Cの第2照射強度を調整するための具体的な手段が特に限られることはなく、様々な手段が採用され得る。例えば、第1光源21および第2光源22各々に、開口率を自在に調整することができるシャッターを取り付け、これらシャッターの開口率を調整することにより、UV−Aの第1照射強度およびUV−Cの第2照射強度を調整してもよい。または、第1光源21の高圧水銀UVランプおよび第2光源22の低圧水銀UVランプに印加する電圧をそれぞれ調整することにより、UV−Aの第1照射強度およびUV−Cの第2照射強度を調整してもよい。
【0045】
(測定部)
次に測定部25について説明する。図3に示すように、測定部25は、第1照射強度のUV−Aにより励起されて判定対象の偽造防止媒体10の発光部12から発光する光(第1放出光)と、第2照射強度のUV−Cにより励起されて判定対象の偽造防止媒体10の発光部12から発光する光(第2放出光)とを受光する。この測定部25は、受光した第1放出光および第2放出光に基づいて、第1放出光の色度および第2放出光の色度をそれぞれ求めるよう構成されている。このような測定部25として、例えば、図3に示すように色度計26が用いられる。なお本実施の形態において、「色度を求める」とは、XYZ表色系のxy色度図における色度座標を求めることを意味している。
【0046】
(データベース)
次にデータベース30について説明する。データベース30は、参照用の偽造防止媒体10(参照用発光媒体)に関する情報を予め格納しておくためのものである。このデータベース30には、具体的には、所定の第1参照照射強度のUV−A(第1不可視光)により励起されて参照用の偽造防止媒体10の発光部12から発光する光(第1参照放出光)の色度と、所定の第2参照照射強度のUV−C(第2不可視光)により励起されて参照用の偽造防止媒体10の発光部12から発光する光(第2参照放出光)の色度と、に関する情報がそれぞれ予め内蔵されている。このような情報は、例えば、偽造防止媒体10の発行元または真偽判定システム50の製造元などにおいて取得され、そしてデータベース30内に格納される。
【0047】
データベース30内に内蔵される情報を取得する際に用いられる上述の第1参照照射強度のUV−Aおよび第2参照照射強度のUV−Cを生成する光源が特に限られることはない。例えば、UV−AおよびUV−Cを生成する光源として、本実施の形態による真偽判定システム50の光照射部20が用いられてもよく、または、その他の汎用のUV−A光源およびUV−C光源が用いられてもよい。
【0048】
(真偽判定部)
次に真偽判定部35について説明する。真偽判定部35は、色度計26からの情報と、データベース30に予め内蔵されている参照用の偽造防止媒体10に関する情報と、に基づいて、判定対象の偽造防止媒体10の真偽判定を行うものである。この真偽判定部35は、図3に示すように、データベース30および色度計26からの情報が入力される判定部37を有している。
【0049】
判定部37は、データベース30からの情報と色度計26からの情報とに基づいて偽造防止媒体10の真偽判定を行うものである。この場合、例えば、第1放出光の色度と第1参照放出光の色度を比較し、かつ、第2放出光の色度と第2参照放出光の色度を比較することにより、偽造防止媒体10の真偽判定が行われる。
【0050】
次に、このような構成からなる本実施の形態の作用について説明する。ここでは、はじめに、偽造防止媒体10を作製する方法について説明する。次に、偽造防止媒体10からなる有価証券が正規のものであるかどうかを判定する方法について説明する。
【0051】
偽造防止媒体の作製方法
はじめに基材11を準備する。基材11としては、例えば、厚み188μmの白色のポリエチレンテレフタレートからなる基材が用いられる。次に、蛍光インキ13を用いて、基材11上に発光部12を形成する。
【0052】
この際、蛍光インキ13としては、例えば、所定の蛍光特性を有する二色性蛍光体25重量%に、マイクロシリカ8重量%、有機ベントナイト2重量%、アルキッド樹脂50重量%およびアルキルベンゼン系溶剤15重量%を加えてオフセットインキ化されたインキがそれぞれ用いられる。このうち蛍光インキ13用の二色性蛍光体としては、例えば、波長254nmの紫外線(UV−C)により励起されて赤色光を発光し、波長365nmの紫外線(UV−A)により励起されて緑色光を発光する蛍光体DE−RG(根本特殊化学製)が用いられる。
【0053】
なお、蛍光インキ13における各構成要素の組成が上述の組成に限られることはなく、偽造防止媒体10に求められる特性に応じて最適な組成が設定される。
【0054】
真偽判定方法
次に、図3および図4を参照して、偽造防止媒体10からなる有価証券が正規のものであるかどうかを、真偽判定システム50を用いて判定する方法について説明する。
【0055】
(データベースの準備)
はじめに、参照用の偽造防止媒体10に関する情報が予め内蔵されたデータベース30を準備する。以下、データベース30に内蔵される情報を取得する方法について説明する。
【0056】
はじめに、参照用の偽造防止媒体10を準備する。その後、参照用の偽造防止媒体10の発光部12に対してUV−A(第1不可視光)を第1参照照射強度で照射し、そして、この際に発光部12から発光される第1参照放出光の色度を測定する。次に、参照用の偽造防止媒体10の発光部12に対してUV−C(第2不可視光)を第2参照照射強度で照射し、そして、この際に発光部12から発光される第2参照放出光の色度を測定する。なお以下において、参照用の偽造防止媒体10に対して照射されるUV−AおよびUV−Cを、それぞれ参照用UV−Aおよび参照用UV−Cと称する。
【0057】
図4は、参照用の偽造防止媒体10の発光部12から発光する第1参照放出光および第2参照放出光の色度座標をそれぞれ示すxy色度図である。図4において、第1参照放出光の色度座標が白抜きの丸により示されており、第2参照放出光の色度座標が黒塗りの丸により示されている。図4に示すように、第1参照放出光の色度座標は(x_R、y_R)となっており、第2参照放出光の色度座標は(x_R、y_R)となっている。
【0058】
(第1照射工程および第2照射工程)
次に、判定対象の偽造防止媒体10を準備する。その後、真偽判定システム50の光照射部20の第1光源21を用いて、判定対象の偽造防止媒体10の発光部12に対してUV−A(第1不可視光)を第1照射強度で照射する(第1照射工程)。次に、光照射部20の第2光源22を用いて、判定対象の偽造防止媒体10の発光部12に対してUV−C(第2不可視光)を第2照射強度で照射する(第2照射工程)。なお以下において、判定対象の偽造防止媒体10に対して照射されるUV−AおよびUV−Cを、それぞれ判定用UV−Aおよび判定用UV−Cと称する。
【0059】
(測定工程)
次に、色度計26を用いて、判定用UV−Aにより励起されて判定対象の偽造防止媒体10の発光部12から発光する第1放出光と、判定用UV−Cにより励起されて判定対象の偽造防止媒体10の発光部12から発光する第2放出光とを受光して、第1放出光の色度および第2放出光の色度をそれぞれ測定する。これによって、第1放出光の色度座標(x_M、y_M)、および第2放出光の色度座標(x_M、y_M)が得られる。
【0060】
(判定工程)
その後、判定部37により、第1参照放出光の色度座標(x_R、y_R)と第1放出光の色度座標(x_M、y_M)を比較し、かつ、第2参照放出光の色度座標(x_R、y_R)と第2放出光の色度座標(x_M、y_M)を比較することにより、判定対象の偽造防止媒体10の真偽判定を行う。例えば、色度座標(x_R、y_R)と色度座標(x_M、y_M)との間の距離が0.05以下であり、かつ色度座標(x_R、y_R)と色度座標(x_M、y_M)との間の距離が0.05以下である場合、判定対象の偽造防止媒体10が正規品と判定される(〔数1〕参照)。なお、判定の際に用いられる距離の基準値が0.05に限られることはなく、求められる判定の精度に応じて適宜設定される。
【数1】

【0061】
このように本実施の形態によれば、真偽判定システム50は、判定対象の偽造防止媒体10の発光部12に対して不可視光を照射する光照射部20と、判定対象の偽造防止媒体10の発光部12から発光される光の色度を測定する測定部25と、参照用の偽造防止媒体10に関する情報が予め内蔵されたデータベース30と、測定部25およびデータベース30からの情報に基づいて、判定対象の偽造防止媒体10の真偽判定を行う真偽判定部35と、を備えている。このうち光照射部20は、判定対象の偽造防止媒体10の発光部12に対してUV−Aを第1照射強度I_Mで照射する第1光源21と、判定対象の偽造防止媒体10の発光部12に対してUV−Cを第2照射強度I_Mで照射する第2光源22と、を含んでいる。このように、UV−AおよびUV−Cの双方を利用して偽造防止媒体10の真偽判定を行うことにより、偽造防止媒体10に対する真偽判定を厳格に行うことができる。
【0062】
また本実施の形態によれば、測定部25は、第1照射強度I_MのUV−Aにより励起されて判定対象の偽造防止媒体10の発光部12から発光する第1放出光と、第2照射強度I_MのUV−Cにより励起されて判定対象の偽造防止媒体10の発光部12から発光する第2放出光とを受光して、第1放出光の色度座標(x_M、y_M)および第2放出光の色度座標(x_M、y_M)をそれぞれ求める。またデータベース30には、所定の第1参照照射強度のUV−Aにより励起されて参照用の偽造防止媒体10の発光部12から発光する第1参照放出光の色度座標(x_R、y_R)と、所定の第2参照照射強度のUV−Cにより励起されて参照用の偽造防止媒体10の発光部12から発光する第2参照放出光の色度座標(x_R、y_R)に関する情報がそれぞれ予め内蔵されている。そして、真偽判定部35は、第1放出光の色度座標(x_M、y_M)と第1参照放出光の色度座標(x_R、y_R)を比較し、かつ、第2放出光の色度座標(x_M、y_M)と第2参照放出光の色度座標(x_R、y_R)を比較することにより、偽造防止媒体10の真偽判定を行う。このように色度座標に基づいて真偽判定を行うことにより、偽造防止媒体10の真偽判定を容易に行うことができる。また、目視では判別し得ない程度の色の相違を識別することができる。このため、参照用の偽造防止媒体10から発光される光と偽造された媒体から発光される光との間の色の相違が微小な相違であったとしても、偽造を見抜くことが可能となる。すなわち、偽造防止媒体10の真偽判定を、容易に、かつ精度良く行うことができる。
【0063】
第2の実施の形態
次に、図5を参照して、本発明の第2の実施の形態について説明する。図5に示す第2の実施の形態においては、第1放出光の色度および輝度と第1参照放出光の色度および輝度を比較し、かつ、第2放出光の色度および輝度と第2参照放出光の色度および輝度を比較することにより、偽造防止媒体10の真偽判定が行われる。図5に示す第2の実施の形態において、図1乃至図4に示す第1の実施の形態と同一部分には同一符号を付して詳細な説明は省略する。
【0064】
真偽判定システム
図5は、本実施の形態における真偽判定システム50を示す図である。図5に示すように、本実施の形態においては、測定部25として、第1放出光および第2放出光の色度および輝度を求める色彩輝度計27が用いられる。色彩輝度計27の例としては、例えば、トプコン社製の色彩輝度計BM7を挙げることができる。なお本実施の形態において、「輝度を求める」とは、XYZ表色系の三刺激値XYZのうちのY値を求めることを意味している。
【0065】
また図5に示すように、真偽判定部35は、光照射部20およびデータベース30からの情報が入力される輝度補正部36と、輝度補正部36および色彩輝度計27からの情報が入力される判定部37とを有している。まず輝度補正部36について説明する。
【0066】
一般に、判定対象の偽造防止媒体10の発光部12に照射される判定用UV−Aおよび判定用UV−Cの強度が大きくなるほど、発光部12から発光する第1放出光および第2放出光の輝度も大きくなる。また、データベース30内に内蔵される情報を取得する際に用いられる参照用UV−Aおよび参照用UV−Cの光源と、真偽判定システム50の光照射部20とが同一であるとは限らない。従って、データベース30内に内蔵される情報を取得する際のUV−Aの第1参照照射強度およびUV−Cの第2参照照射強度と、真偽判定システム50の光照射部20から照射されるUV−Aの第1照射強度およびUV−Cの第2照射強度とが同一であるとは限らない。このため、色彩輝度計27から得られる判定対象の偽造防止媒体10に関する情報と、データベース30に予め内蔵されている参照用の偽造防止媒体10に関する情報とを適切に比較するためには、上述の第1照射強度および第2照射強度と上述の第1参照照射強度および第2参照照射強度との相違を考慮する必要がある。
【0067】
輝度補正部36は、このような点を考慮して設けられているものである。具体的には、輝度補正部36は、上述の第1照射強度および第2照射強度と上述の第1参照照射強度および第2参照照射強度との相違を考慮した上で、判定対象の偽造防止媒体10に関する情報と、参照用の偽造防止媒体10に関する情報とが適切に比較され得るよう、データベース30内の第1参照放出光の輝度および第2参照放出光の輝度を補正するものである。
【0068】
この場合、判定部37は、輝度補正部36により補正された第1参照放出光の輝度および第2参照放出光の輝度と、色彩輝度計27から入力される第1放出光の輝度および第2放出光の輝度とを比較する。また判定部37は、第1の実施の形態の場合と同様に、データベース30に登録されている第1参照放出光の色度および第2参照放出光の色度と、色彩輝度計27により測定される第1放出光の色度および第2放出光の色度とを比較する。そして、輝度および色度の比較結果に基づいて、偽造防止媒体10の真偽判定が行われる。
【0069】
真偽判定方法
次に、このような構成からなる本実施の形態の作用について説明する。ここでは、偽造防止媒体10からなる有価証券が正規のものであるかどうかを判定する方法について説明する。
【0070】
(データベースの準備)
はじめに、参照用の偽造防止媒体10に関する情報が予め内蔵されたデータベース30を準備する。本実施の形態において、データベース30は、表1に示すように、第1参照放出光および第2参照放出光について、色度に関する情報だけでなく輝度に関する情報も含んでいる。またデータベース30は、表1に示すように、参照用UV−A、参照用UV−Cの強度に関する情報も含んでいる。
【表1】

【0071】
(第1照射工程および第2照射工程)
次に、判定対象の偽造防止媒体10を準備する。その後、真偽判定システム50の光照射部20の第1光源21を用いて、判定対象の偽造防止媒体10の発光部12に対して判定用UV−Aを第1照射強度で照射する(第1照射工程)。次に、光照射部20の第2光源22を用いて、判定対象の偽造防止媒体10の発光部12に対して判定用UV−Cを第2照射強度で照射する(第2照射工程)。
【0072】
(測定工程)
次に、色彩輝度計27を用いて、判定用UV−Aにより励起されて判定対象の偽造防止媒体10の発光部12から発光する第1放出光と、判定用UV−Cにより励起されて判定対象の偽造防止媒体10の発光部12から発光する第2放出光の色度および輝度を測定する。測定により得られる情報と、判定用UV−Aおよび判定用UV−Cに関する情報とをあわせて表2に示す。
【表2】

【0073】
(補正工程)
次に、輝度補正部36により、参照用UV−Aの第1参照照射強度I_Rおよび参照用UV−Cの第2参照照射強度I_Rと、判定用UV−Aの第1照射強度I_Mおよび判定用UV−Cの第2照射強度I_Mとの相違を考慮して、データベース30内の第1参照放出光の輝度Y_Rおよび第2参照放出光の輝度Y_Rを補正する。具体的には、以下の〔数2〕に基づいて、第1参照放出光の補正後の輝度Y’_R、および、第2参照放出光の補正後の輝度Y’_Rを算出する。
【数2】

【0074】
(判定工程)
次に、判定部37により、第1参照放出光の色度および補正後の輝度と第1放出光の色度および輝度を比較し、かつ、第2参照放出光の色度および補正後の輝度と第2放出光の色度および輝度を比較することにより、偽造防止媒体10の真偽判定を行う。例えば、はじめに、第1参照放出光の色度座標(x_R、y_R)と第1放出光の色度座標(x_M、y_M)との間の距離、および、第2参照放出光の色度座標(x_R、y_R)と第2放出光の色度座標(x_M、y_M)との間の距離が算出される。次に、第1参照放出光の補正後の輝度Y’_Rと第1放出光の輝度Y_Mとの差、および、第2参照放出光の補正後の輝度Y’_Rと第2放出光の輝度Y_Mとの差が算出される。そして、色度座標間の距離が0.05以下であり、かつ、第1/第2参照放出光の補正後の輝度Y’_R/Y’_Rと第1/第2放出光の輝度Y_M/Y_Mとの差を第1/第2参照放出光の補正後の輝度Y’_R/Y’_Rで割った値の絶対値が0.05以下(〔数3〕参照)の場合、判定対象の偽造防止媒体10が正規のものであると判定される。なお、判定の際に用いられる色度座標間の距離の基準値が0.05に限られることはなく、求められる判定の精度に応じて適宜設定される。同様に、判定の際に用いられる輝度に関する基準値が0.05に限られることはなく、求められる判定の精度に応じて適宜設定される。
【数3】

【0075】
このように本実施の形態によれば、第1放出光の色度および第2放出光の色度だけでなく、第1放出光の輝度および第2放出光の輝度も考慮して、偽造防止媒体10の真偽判定が行われる。このため、真偽判定をより精度良く実施することができ、これによって、偽造防止媒体10の偽造をより困難にすることができる。
【0076】
第1の変形例
なお本実施の形態において、第1参照放出光の補正後の輝度Y’_Rと第1放出光の輝度Y_Mとが比較され、かつ、第2参照放出光の補正後の輝度Y’_Rと第2放出光の輝度Y_Mとが比較される例を示した。しかしながら、これに限られることはなく、例えば、はじめに第1参照放出光の補正後の輝度Y’_Rと第2参照放出光の補正後の輝度Y’_Rとの輝度比(参照放出光輝度比)を算出し、次に第1放出光の輝度Y_Mと第2放出光の輝度Y_Mとの輝度比(放出光輝度比)を算出し、そして参照放出光輝度比と放出光輝度比とを比較してもよい。このことにより、以下に述べるように様々な要因によって第1放出光の輝度Y_Mおよび第2放出光の輝度Y_Mがばらつく場合であっても、偽造防止媒体10の真偽判定を正確に実施することが可能となる。
【0077】
例えば、偽造防止媒体10の発光部12を構成する蛍光インキ13(蛍光体)の厚みや濃度にはばらつき(個体差)があると考えられる。また、真偽判定システム50により真偽判定を行う際に光照射部20から判定対象の偽造防止媒体10の発光部12に照射される不可視光の強度、判定対象の偽造防止媒体10の載置場所、または、発光部12から発光される放出光の輝度を測定するための色彩輝度計27の設置場所なども、真偽判定の度にある程度ばらつくことが考えられる。このようなばらつきがあると、測定される第1放出光の輝度Y_Mおよび第2放出光の輝度Y_Mの値もばらつくことが考えられる。また、判定対象の偽造防止媒体10の発光部12に用いられる蛍光体の経年劣化によって、測定される第1放出光の輝度Y_Mおよび第2放出光の輝度Y_Mの値が経時的に変化することも考えられる。
【0078】
これに対して本変形例によれば、第1放出光の輝度Y_Mと第2放出光の輝度Y_Mとの輝度比(放出光輝度比)に基づいて真偽判定が行われる。この場合、判定対象の偽造防止媒体10の発光部12を構成する蛍光インキ13(蛍光体)の厚みや濃度にばらつきがあったとしても、第1放出光の輝度Y_Mと第2放出光の輝度Y_Mとが同様に変動するため、放出光輝度比は略一定となっている。このことにより、偽造防止媒体10の真偽判定をより精度良く行うことができる。
【0079】
本変形例において、例えば、参照放出光輝度比と放出光輝度比との差を参照放出光輝度比で割った値の絶対値が0.05以下の場合、偽造防止媒体10が正規品と判定される(〔数4〕参照)。なお、比較の際に用いられる真偽判定の基準値が0.05に限られることはなく、求められる判定の精度に応じて適宜設定される。
【数4】

【0080】
第2の変形例
また本実施の形態において、第1放出光の色度および輝度と第1参照放出光の色度および輝度がそれぞれ比較され、かつ、第2放出光の色度および輝度と第2参照放出光の色度および輝度がそれぞれ比較される例を示した。しかしながら、これに限られることはなく、例えば、第1放出光と第1参照放出光の色差を比較し、かつ、第2放出光と第2参照放出光の色差を比較してもよい。ここで色差とは、L表色系におけるL、aおよびbに基づいて算出される値であり、肉眼で観察された場合の色の相違に関する指標となる値である。なお、L表色系におけるL、aおよびbや、XYZ表色系における三刺激値X、YおよびZは、光のスペクトルなどに基づいて算出される。またL、aおよびbと三刺激値X、Y、Zとの間には、周知の変換式に従う関係が成立している。
なお、LについてはJISZ8730「色の表示方法−物体色の色差」において定義されており、またXYZについてはJISZ8722「色の測定方法−反射及び透過物体色」において定義されている。
【0081】
第1放出光と第1参照放出光の色差を算出するには、はじめに、分光光度計などを用いて第1放出光および第1参照放出光を計測する。次に、その結果に基づいて、第1放出光および第1参照放出光の三刺激値X、Y、Z、またはL、a、bを算出する。その後、第1放出光および第1参照放出光におけるL、a、bの差(ΔL、Δa、Δb)から、以下の式に基づいて色差ΔEabを算出する。
【数5】

同様にして、第2放出光と第2参照放出光の色差も算出される。なお、このようにして色差が算出される際、第1照射強度I_Mおよび第2照射強度I_Mと第1参照照射強度I_Rおよび第2参照照射強度I_Rとの相違を考慮して補正されたY値(〔数2〕参照)に基づいて色差が算出される。
【0082】
その後、算出された色差に基づいて、判定部37により、判定対象の偽造防止媒体10の真偽判定が行われる。例えば、第1放出光と第1参照放出光の間の色差が3以下であり、かつ第2放出光と第2参照放出光の間の色差が3以下である場合、判定対象の偽造防止媒体10が正規品と判定される。なお、判定の際に用いられる色差の基準値がに限られることはなく、求められる判定の精度に応じて適宜設定される。
【0083】
その他の変形例
また本実施の形態において、参照用UV−Aの第1参照照射強度I_Rおよび参照用UV−Cの第2参照照射強度I_Rと、判定用UV−Aの第1照射強度I_Mおよび判定用UV−Cの第2照射強度I_Mとの相違に基づいて、データベース30内の第1参照放出光の輝度Y_Rおよび第2参照放出光の輝度Y_Rが補正される例を示した。しかしながら、これに限られることはなく、参照用UV−Aおよび参照用UV−Cと、判定用UV−Aおよび判定用UV−Cのスペクトル形状の相違をさらに考慮した上で、データベース30内の輝度Y_Rおよび輝度Y_Rを補正してもよい。例えば、スペクトルの半値幅を考慮した上で、データベース30内の第1参照放出光の輝度Y_Rおよび第2参照放出光の輝度Y_Rを補正してもよい。これによって、データベース30内の輝度Y_Rおよび輝度Y_Rをより正確に補正することができる。
【0084】
第3の実施の形態
次に、図6および図7を参照して、本発明の第3の実施の形態について説明する。図6および図7に示す第3の実施の形態においては、第1光源21からの判定用UV−Aと、第2光源22からの判定用UV−Cが、判定対象の偽造防止媒体10の発光部12に対して同時に照射される。図6および図7に示す第3の実施の形態において、図1乃至図4に示す第1の実施の形態および図5に示す第2の実施の形態と同一部分には同一符号を付して詳細な説明は省略する。
【0085】
真偽判定システム
図6は、本実施の形態における真偽判定システム50を示す図である。本実施の形態において、判定対象の偽造防止媒体10の発光部12に対して同時に照射される判定用UV−Aと判定用UV−Cの強度の比率は、後述するように、データベース30からの情報に基づいて決定される(図6参照)。
【0086】
真偽判定方法
次に、このような構成からなる本実施の形態の作用について説明する。ここでは、偽造防止媒体10からなる有価証券が正規のものであるかどうかを判定する方法について説明する。
【0087】
(データベースの準備)
はじめに、参照用の偽造防止媒体10に関する情報が予め内蔵されたデータベース30を準備する。なお本実施の形態においては、参照用の偽造防止媒体10に関する情報を取得する際、参照用UV−Aおよび参照用UV−Cが参照用の偽造防止媒体10の発光部12に対して同時に照射される。そして、同時照射時に得られる下記の混合参照放出光の色度に関する情報が、データベース30に格納される。なお、参照用UV−Aまたは参照用UV−Cのみを参照用の偽造防止媒体10の発光部12に対して単独で照射することにより得られる第1参照放出光または第2参照放出光の色度に関する情報が、データベース30にさらに格納されていてもよい。
【0088】
図7は、第1参照照射強度I_Rの参照用UV−Aにより励起されて参照用の偽造防止媒体10の発光部12から発光する光と、第2参照照射強度I_Rの参照用UV−Cにより励起されて参照用の偽造防止媒体10の発光部12から発光する光と、が混合されてなる混合参照放出光の色度座標を示すxy色度図である。図7に示すように、混合参照放出光の色度座標は(x_R、y_R)となっている。混合参照放出光の色度座標(x_R、y_R)は、図7に示すように、上述の第1の実施の形態における第1参照放出光の色度座標(x_R、y_R)と第2参照放出光の色度座標(x_R、y_R)とを結ぶ直線上に位置している。この直線上における混合参照放出光の色度座標(x_R、y_R)の位置は、一般に、参照用UV−Aの第1参照照射強度と参照用UV−Cの第2参照照射強度の比に基づいて決定される。
【0089】
(第1照射工程および第2照射工程)
次に、真偽判定の対象となる偽造防止媒体10を準備する。その後、第1光源21からの判定用UV−Aと、第2光源からの判定用UV−Cとを、判定対象の偽造防止媒体10に対して同時に照射する。この際、判定用UV−Aの第1照射強度I_Mと判定用UV−Cの第2照射強度I_Mとの比が、上述の参照用UV−Aの第1参照照射強度I_Rと参照用UV−Cの第2参照照射強度I_Rの比とほぼ等しくなるよう、第1照射強度および第2照射強度が設定される。
【0090】
(測定工程)
次に、色度計26を用いて、判定用UV−Aにより励起されて判定対象の偽造防止媒体10の発光部12から発光する光と、判定用UV−Cにより励起されて判定対象の偽造防止媒体10の発光部12から発光する光とが混合されてなる混合放出光を受光して、混合放出光の色度を測定する。これによって、混合放出光の色度座標(x_M、y_M)が得られる。
【0091】
(判定工程)
その後、判定部37により、混合参照放出光の色度座標(x_R、y_R)と混合放出光の色度座標(x_M、y_M)を比較することにより、判定対象の偽造防止媒体10の真偽判定を行う。
【0092】
このように本実施の形態によれば、UV−AとUV−Cを偽造防止媒体10の発光部12に対して同時に照射される。この場合、UV−AとUV−Cの強度比率を変化させることにより、偽造防止媒体10の発光部12から得られる上述の混合参照放出光または混合放出光の色度を変えることができる。このため、より多様な判定条件のもとで偽造防止媒体10の真偽判定を行うことが可能となる。
【0093】
第1の変形例
なお本実施の形態において、判定用UV−Aの第1照射強度I_Mと判定用UV−Cの第2照射強度I_Mとの比が、参照用UV−Aの第1参照照射強度I_Rと参照用UV−Cの第2参照照射強度I_Rの比とほぼ等しくなるよう、第1照射強度および第2照射強度が設定される例を示した。しかしながら、これに限られることはなく、判定用UV−Aの第1照射強度I_Mと判定用UV−Cの第2照射強度I_Mとの比(以下、照射強度比)が、参照用UV−Aの第1参照照射強度I_Rと参照用UV−Cの第2参照照射強度I_Rの比(以下、参照照射強度比)と異なっていてもよい。この場合、第1照射強度I_Mおよび第2照射強度I_Mと第1参照照射強度I_Rおよび第2参照照射強度I_Rとの相違を考慮したうえで、混合放出光の色度と混合参照放出光の色度が比較される。
【0094】
例えば、照射強度比と参照照射強度比の相違に基づいて、色度座標(x_R、y_R)と色度座標(x_R、y_R)とを結ぶ直線上において、混合参照放出光の色度座標(x_R、y_R)が補正される。これによって、参照照射強度比が照射強度比に等しいと仮定した場合に参照用の偽造防止媒体10から得られる混合参照放出光の補正後の色度座標が算出される。その後、混合参照放出光の補正後の色度座標と、混合放出光の色度座標を比較することにより、判定対象の偽造防止媒体10の真偽判定が行われる。
【0095】
第2の変形例
また本実施の形態において、上述の第2の実施の形態の場合と同様に、混合放出光の輝度がさらに求められてもよい。この場合、データベース30は、混合参照放出光の輝度に関する情報をさらに有している。また、測定器25として色彩輝度計2
7が用いられる。そして、真偽判定部35において、第1照射強度I_Mおよび第2照射強度I_Mと第1参照照射強度I_Rおよび第2参照照射強度I_Rとの相違を考慮したうえで、混合放出光の色度および輝度と混合参照放出光の色度および輝度を比較することにより、判定対象の偽造防止媒体10の真偽判定が行われる。これによって、真偽判定をより精度良く実施することができる。この際、上述の第2の実施の形態の第2の変形例の場合と同様に、混合放出光と混合参照放出光の間の色差に基づいて真偽判定が実施されてもよい。
【0096】
第4の実施の形態
次に、図8を参照して、本発明の第4の実施の形態について説明する。図8に示す第4の実施の形態は、光照射部20により、判定対象の偽造防止媒体10の発光部12に対して判定用UV−Aおよび判定用UV−Cが複数回照射される点が異なるのみであり、他の構成は、図6および図7に示す第3の実施の形態と略同一である。図8に示す第4の実施の形態において、図6および図7に示す第3の実施の形態と同一部分には同一符号を付して詳細な説明は省略する。
【0097】
本実施の形態において、光照射部20は、第1照射強度I_Mおよび第2照射強度I_Mを変化させながら、判定対象の偽造防止媒体10の発光部12に対して判定用UV−Aおよび判定用UV−Cを同時に複数回照射する。この場合、測定部25は、判定対象の偽造防止媒体10の発光部12から発光される混合放出光の色度を、光照射部20による照射の度にそれぞれ求める。
【0098】
図8は、複数回の照射の度に混合放出光の色度を測定した結果を示すxy色度図である。この場合、判定用UV−Aの第1照射強度I_Mおよび判定用UV−Cの第2照射強度I_Mを変化させながら、5回の同時照射が実施されている。図8に示すように、各照射の際の混合放出光の色度座標はそれぞれ、判定用UV−Aが単独で照射された際に発光される第1放出光の色度座標(x_M、y_M)と、判定用UV−Cが単独で照射された際に発光される第2放出光の色度座標(x_M、y_M)とを結ぶ直線上に位置している。また図8に示すように、判定用UV−Aの第1照射強度I_Mおよび判定用UV−Cの第2照射強度I_Mが変化すると、混合放出光の色度座標も上述の直線上で変化している。
【0099】
真偽判定部35は、光照射部20による複数回の照射のそれぞれに対して、混合放出光の色度と混合参照放出光の色度を比較することにより、判定対象の偽造防止媒体10の真偽判定を行う。
この場合、データベース30は、複数回の照射における混合放出光の色度に対応する、混合参照放出光の色度に関する複数の情報を予め含んでいてもよい。すなわち、複数回の照射における判定用UV−Aと判定用UV−Cの照射強度比に対応する参照照射強度比の下で、混合参照放出光の色度に関する情報が予め取得されていてもよい。
または、上述の第3の実施の形態の第1の変形例の場合と同様に、複数回の照射の度に、照射強度比と参照照射強度比の相違に基づいて混合参照放出光の補正後の色度が算出されてもよい。この場合、複数回の照射の度に、混合参照放出光の補正後の色度と、混合放出光の色度とが比較される。
【0100】
このように本実施の形態によれば、光照射部20による複数回の照射のそれぞれに対して、混合放出光の色度と混合参照放出光の色度を比較することにより、判定対象の偽造防止媒体10の真偽判定が実施される。このため、判定用UV−Aおよび判定用UV−Cの1回の照射に基づいて偽造防止媒体10の真偽判定が行われる場合に比べて、より精度良く真偽判定を行うことができる。
【0101】
変形例
なお上記各実施の形態において、偽造防止媒体10の発光部12に含まれる蛍光体として、波長254nmの紫外線(UV−C)により励起されて赤色光を発光し、波長365nmの紫外線(UV−A)により励起されて緑色光を発光する蛍光体DE−RGが用いられる例を示した。しかしながら、これに限られることはなく、発光部12の蛍光体として、波長254nmの紫外線(UV−C)により励起されて赤色光を発光し、波長365nmの紫外線(UV−A)により励起されて青色光を発光する蛍光体DE−RB(根本特殊化学製)など、様々な二色性蛍光体を用いることができる。
【0102】
また上記各実施の形態において、偽造防止媒体10の発光部12に含まれる蛍光体として、UV−AまたはUV−Cに対する励起特性を有する蛍光体が用いられる例を示した。しかしながら、これに限られることはなく、偽造防止媒体10の発光部12に含まれる蛍光体として、UV−Bまたは赤外線に対する励起特性を有する蛍光体を用いてもよい。すなわち、本発明における「第1波長領域内の不可視光」または「第2波長領域内の不可視光」として、任意の波長領域内の不可視光を用いることができる。
【0103】
また上記各実施の形態において、偽造防止媒体10の基材11がポリエチレンテレフタレートからなる例を示した。しかしながら、これに限られることはなく、ポリ塩化ビニル、ポリカーボネート、ポリプロピレン、ポリスチレンなど、様々な材料から基材11を構成することができる。また基材11として、紙材料からなる紙基材が用いられてもよい。
【符号の説明】
【0104】
10 偽造防止媒体
11 基材
12 発光部
13 蛍光インキ
20 光照射部
21 第1光源
22 第2光源
25 測定部
26 色度計
27 色彩輝度計
30 データベース
35 真偽判定部
36 輝度補正部
37 判定部
50 真偽判定システム

【特許請求の範囲】
【請求項1】
発光媒体に対して真偽判定を行う真偽判定システムにおいて、
発光媒体は、第1波長領域内の第1不可視光が照射されたときに第1色の光を発光するとともに、第2波長領域内の第2不可視光が照射されたときに第2色の光を発光する蛍光体を含む発光部を有し、
真偽判定システムは、
判定対象の発光媒体の発光部に対して第1不可視光を第1照射強度で照射する第1光源と、判定対象の発光媒体の発光部に対して第2不可視光を第2照射強度で照射する第2光源と、を含む光照射部と、
前記第1照射強度の第1不可視光により励起されて判定対象の発光媒体の発光部から発光する第1放出光と、前記第2照射強度の第2不可視光により励起されて判定対象の発光媒体の発光部から発光する第2放出光とを受光して、第1放出光の色度および第2放出光の色度をそれぞれ求める測定部と、
所定の第1参照照射強度の第1不可視光により励起されて参照用の発光媒体の発光部から発光する第1参照放出光の色度と、所定の第2参照照射強度の第2不可視光により励起されて参照用の発光媒体の発光部から発光する第2参照放出光の色度と、に関する情報がそれぞれ予め内蔵されたデータベースと、
前記第1放出光の色度と前記第1参照放出光の色度を比較し、かつ、前記第2放出光の色度と前記第2参照放出光の色度を比較することにより、判定対象の発光媒体の真偽判定を行う真偽判定部と、を備えた
ことを特徴とする真偽判定システム。
【請求項2】
前記測定部は、前記第1放出光の輝度と、前記第2放出光の輝度と、をさらに求め、
前記データベースは、前記第1参照放出光の輝度と、前記第2参照放出光の輝度と、に関する情報をさらに有し、
前記真偽判定部は、前記第1照射強度および前記第2照射強度と前記第1参照照射強度および前記第2参照照射強度との関係を考慮したうえで、前記第1放出光の色度および輝度と前記第1参照放出光の色度および輝度を比較し、かつ、前記第2放出光の色度および輝度と前記第2参照放出光の色度および輝度を比較することにより、判定対象の発光媒体の真偽判定を行う
ことを特徴とする請求項1に記載の真偽判定システム。
【請求項3】
発光媒体に対して真偽判定を行う真偽判定システムにおいて、
発光媒体は、第1波長領域内の第1不可視光が照射されたときに第1色の光を発光するとともに、第2波長領域内の第2不可視光が照射されたときに第2色の光を発光する蛍光体を含む発光部を有し、
真偽判定システムは、
判定対象の発光媒体の発光部に対して、第1照射強度を有する第1不可視光および第2照射強度を有する第2不可視光を同時に照射する光照射部と、
前記第1照射強度の第1不可視光により励起されて判定対象の発光媒体の発光部から発光する光と、前記第2照射強度の第2不可視光により励起されて判定対象の発光媒体の発光部から発光する光とが混合されてなる混合放出光を受光して、前記混合放出光の色度を求める測定部と、
所定の第1参照照射強度の第1不可視光により励起されて参照用の発光媒体の発光部から発光する光と、所定の第2参照照射強度の第2不可視光により励起されて参照用の発光媒体の発光部から発光する光と、が混合されてなる混合参照放出光の色度に関する情報が予め内蔵されたデータベースと、
前記第1照射強度および前記第2照射強度と前記第1参照照射強度および前記第2参照照射強度との関係を考慮したうえで、前記混合放出光の色度と前記混合参照放出光の色度を比較することにより、判定対象の発光媒体の真偽判定を行う真偽判定部と、を備えた
ことを特徴とする真偽判定システム。
【請求項4】
前記測定部は、前記混合放出光の輝度をさらに求め、
前記データベースは、前記混合参照放出光の輝度に関する情報をさらに有し、
前記真偽判定部は、前記第1照射強度および前記第2照射強度と前記第1参照照射強度および前記第2参照照射強度との関係を考慮したうえで、前記混合放出光の色度および輝度と前記混合参照放出光の色度および輝度を比較することにより、判定対象の発光媒体の真偽判定を行う
ことを特徴とする請求項3に記載の真偽判定システム。
【請求項5】
前記光照射部から判定対象の発光媒体の発光部に対して照射される第1不可視光の第1照射強度および第2不可視光の第2照射強度が調整可能である
ことを特徴とする請求項3または4に記載の真偽判定システム。
【請求項6】
前記光照射部は、前記第1照射強度および前記第2照射強度を変化させながら、判定対象の発光媒体の発光部に対して第1不可視光および第2不可視光を複数回照射し、
前記測定部は、前記混合放出光の色度を光照射部による照射の度に求め、
前記真偽判定部は、光照射部による複数回の照射のそれぞれに対して、前記第1照射強度および前記第2照射強度と前記第1参照照射強度および前記第2参照照射強度との関係を考慮したうえで、前記混合放出光の色度と前記混合参照放出光の色度を比較することにより、判定対象の発光媒体の真偽判定を行う
ことを特徴とする請求項5に記載の真偽判定システム。
【請求項7】
発光媒体に対して真偽判定を行う真偽判定方法において、
発光媒体は、第1波長領域内の第1不可視光が照射されたときに第1色の光を発光するとともに、第2波長領域内の第2不可視光が照射されたときに第2色の光を発光する蛍光体を含む発光部を有し、
真偽判定方法は、
所定の第1参照照射強度の第1不可視光により励起されて参照用の発光媒体の発光部から発光する第1参照放出光の色度と、所定の第2参照照射強度の第2不可視光により励起されて参照用の発光媒体の発光部から発光する第2参照放出光の色度と、に関する情報がそれぞれ予め内蔵されたデータベースを準備する工程と、
判定対象の発光媒体の発光部に対して第1不可視光を第1照射強度で照射する第1照射工程と、
判定対象の発光媒体の発光部に対して第2不可視光を第2照射強度で照射する第2照射工程と、
前記第1照射強度の第1不可視光により励起されて判定対象の発光媒体の発光部から発光する第1放出光と、前記第2照射強度の第2不可視光により励起されて判定対象の発光媒体の発光部から発光する第2放出光とを受光して、第1放出光の色度および第2放出光の色度をそれぞれ求める測定工程と、
前記第1放出光の色度と前記第1参照放出光の色度を比較し、かつ、前記第2放出光の色度と前記第2参照放出光の色度を比較することにより、判定対象の発光媒体の真偽判定を行う真偽判定工程と、を備えた
ことを特徴とする真偽判定方法。
【請求項8】
前記測定工程において、前記第1放出光の輝度と、前記第2放出光の輝度と、がさらに求められ、
前記データベースは、前記第1参照放出光の輝度と、前記第2参照放出光の輝度と、に関する情報をさらに有し、
前記真偽判定工程において、前記第1照射強度および前記第2照射強度と前記第1参照照射強度および前記第2参照照射強度との関係を考慮したうえで、前記第1放出光の色度および輝度と前記第1参照放出光の色度および輝度を比較し、かつ、前記第2放出光の色度および輝度と前記第2参照放出光の色度および輝度を比較することにより、判定対象の発光媒体の真偽判定が行われる
ことを特徴とする請求項7に記載の真偽判定方法。
【請求項9】
発光媒体に対して真偽判定を行う真偽判定方法において、
発光媒体は、第1波長領域内の第1不可視光が照射されたときに第1色の光を発光するとともに、第2波長領域内の第2不可視光が照射されたときに第2色の光を発光する蛍光体を含む発光部を有し、
真偽判定方法は、
所定の第1参照照射強度の第1不可視光により励起されて参照用の発光媒体の発光部から発光する光と、所定の第2参照照射強度の第2不可視光により励起されて参照用の発光媒体の発光部から発光する光と、が混合されてなる混合参照放出光の色度に関する情報が予め内蔵されたデータベースを準備する工程と、
判定対象の発光媒体の発光部に対して、第1照射強度を有する第1不可視光および第2照射強度を有する第2不可視光を同時に照射する照射工程と、
前記第1照射強度の第1不可視光により励起されて判定対象の発光媒体の発光部から発光する光と、前記第2照射強度の第2不可視光により励起されて判定対象の発光媒体の発光部から発光する光とが混合されてなる混合放出光を受光して、前記混合放出光の色度を求める測定工程と、
前記第1照射強度および前記第2照射強度と前記第1参照照射強度および前記第2参照照射強度との関係を考慮したうえで、前記混合放出光の色度と前記混合参照放出光の色度を比較することにより、判定対象の発光媒体の真偽判定を行う真偽判定工程と、を備えた
ことを特徴とする真偽判定方法。
【請求項10】
前記測定工程において、前記混合放出光の輝度がさらに求められ、
前記データベースは、前記混合参照放出光の輝度に関する情報をさらに有し、
前記真偽判定工程において、前記第1照射強度および前記第2照射強度と前記第1参照照射強度および前記第2参照照射強度との関係を考慮したうえで、前記混合放出光の色度および輝度と前記混合参照放出光の色度および輝度を比較することにより、判定対象の発光媒体の真偽判定が行われる
ことを特徴とする請求項9に記載の真偽判定方法。
【請求項11】
前記照射工程において、判定対象の発光媒体の発光部に対して照射される第1不可視光の第1照射強度および第2不可視光の第2照射強度が調整可能である
ことを特徴とする請求項9または10に記載の真偽判定方法。
【請求項12】
前記照射工程において、前記第1照射強度および前記第2照射強度を変化させながら、判定対象の発光媒体の発光部に対して第1不可視光および第2不可視光が複数回照射され、
前記測定工程において、前記混合放出光の色度が、前記照射工程における第1不可視光および第2不可視光の照射の度に求められ、
前記真偽判定工程において、前記照射工程における第1不可視光および第2不可視光の複数回の照射のそれぞれに対して、前記第1照射強度および前記第2照射強度と前記第1参照照射強度および前記第2参照照射強度との関係を考慮したうえで、前記混合放出光の色度と前記混合参照放出光の色度を比較することにより、判定対象の発光媒体の真偽判定が行われる
ことを特徴とする請求項11に記載の真偽判定方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−71535(P2012−71535A)
【公開日】平成24年4月12日(2012.4.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−219367(P2010−219367)
【出願日】平成22年9月29日(2010.9.29)
【出願人】(000002897)大日本印刷株式会社 (14,506)
【Fターム(参考)】