説明

発光媒体

【課題】有価証券などが偽造されたものかどうかを簡易かつ迅速に判別することができ、且つ、偽造され難い発光媒体を提供する。
【解決手段】発光媒体10は発光画像12を有している。この発光画像12は、第1蛍光体を含む第1蛍光インキ13を用いて基材11上に形成された絵柄領域20と、絵柄領域20に隣接するよう、第2蛍光体を含む第2蛍光インキ14を用いて基材11上に形成された背景領域25と、絵柄領域20の第1蛍光体および背景領域25の第2蛍光体上に形成されたオーバーコート層30と、からなっている。このうち第1蛍光体は、UV−Aを照射されたとき青色光を発し、UV−Cを照射されたとき赤色光を発する蛍光体からなっている。また第2蛍光体は、UV−Aを照射されたとき、青色光または青色光と同色の光として視認される光を発し、UV−Cを照射されたとき緑色光を発光する蛍光体からなっている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特定の波長領域内の不可視光が照射されたときに現れる発光画像を有する発光媒体に関する。
【背景技術】
【0002】
金券やプリペイドカードを含む有価証券や、免許証を含む身分証明書など、偽造を防止することが必要とされる媒体において、セキュリティ性を高めるため、近年、マイクロ文字、コピー牽制パターン、赤外線吸収インキまたは蛍光インキなどが利用されている。このうち蛍光インキとは、可視光下ではほとんど視認されず、不可視光(紫外線または赤外線)が照射されたときに視認される蛍光体を含むインキである。このような蛍光インキを用いることにより、有価証券などに、特定の波長領域内の不可視光が照射されたときにのみ現れる蛍光画像(発光画像)を形成することができる。これによって、有価証券が汎用のカラープリンターなどにより容易に偽造されるのを防ぐことができる。
【0003】
また、偽造防止効果をさらに高めるため、蛍光インキを用いて、肉眼によっては視認されない発光画像を有価証券に形成することが提案されている。例えば特許文献1において、第1蛍光インキと第2蛍光インキとを用いて形成された発光画像を有する媒体が開示されている。この場合、第1蛍光インキおよび第2蛍光インキは、肉眼で見たときは、可視光下および紫外線下で互いに同一の色として視認され、かつ、判別具を介して見たときは、互いに異なる色として視認されるインキとなっている。このため、有価証券に形成された発光画像が容易に偽造されることはなく、このことにより、蛍光インキによる偽造防止効果が高められている。しかし、発光画像における第1蛍光インキと第2蛍光インキとの間に微小な色差又は厚みの差が存在していると、肉眼で見たときに第1蛍光インキおよび第2蛍光インキが同一の色として視認されず、発光画像が視認される場合があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第4418881号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
有価証券が偽造されたものかどうかを判別するための手順は、簡易かつ迅速に実施されることが好ましい。また、有価証券は偽造が困難であることが好ましい。従って、判別具などの道具を用いることなく、肉眼によって、有価証券が偽造されたものかどうかを簡易かつ迅速に判別することができ、且つ、偽造され難い媒体が求められている。
【0006】
本発明は、このような課題を効果的に解決し得る発光媒体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、基材上に発光画像を有する発光媒体において、前記発光画像は、第1蛍光体を含む第1領域と、第2蛍光体を含む第2領域と、前記第1領域の前記第1蛍光体および前記第2領域の前記第2蛍光体上に形成された保護層と、を有し、前記第2領域の少なくとも一部は、前記第1領域に隣接しており、第1波長領域内の不可視光を照射されたとき、前記第1蛍光体および前記第2蛍光体は、互いに同色として視認される色の光を発光し、第2波長領域内の不可視光を照射されたとき、前記第1蛍光体および前記第2蛍光体は、互いに異色として視認される色の光を発光することを特徴とする発光媒体である。
【0008】
本発明は、基材上に発光画像を有する発光媒体において、前記発光画像は、第1蛍光体を含む第1領域と、第2蛍光体を含む第2領域と、前記第1領域の前記第1蛍光体および前記第2領域の前記第2蛍光体上に形成された保護層と、を有し、前記第2領域の少なくとも一部は、前記第1領域に隣接しており、第1波長領域内の不可視光が照射されたとき、または第2波長領域内の不可視光が照射されたときに、前記第1蛍光体および前記第2蛍光体は、互いに同色として視認される色の光を発光し、第1波長領域内の不可視光と第2波長領域内の不可視光とが同時に照射されたとき、前記第1蛍光体および前記第2蛍光体は、互いに異色として視認される色の光を発光することを特徴とする発光媒体である。
【0009】
本発明は、基材上に発光画像を有する発光媒体において、前記発光画像は、第1蛍光体を含む第1領域と、第2蛍光体を含む第2領域と、前記第1領域の前記第1蛍光体および前記第2領域の前記第2蛍光体上に形成された保護層と、を有し、前記第2領域の少なくとも一部は、前記第1領域に隣接しており、第1波長領域内の不可視光が照射されたとき、前記第1蛍光体および前記第2蛍光体は、互いに異色として視認される色の光を発光し、第2波長領域内の不可視光が照射されたとき、前記第1蛍光体および前記第2蛍光体は、互いに異色として視認されるとともに、第1波長領域内の不可視光が照射されたときに視認される色とは異色の光を発光し、第1波長領域内の不可視光と第2波長領域内の不可視光とが同時に照射されたとき、前記第1蛍光体および前記第2蛍光体は、互いに同色として視認される色の光を発光することを特徴とする発光媒体である。
【0010】
本発明による発光媒体において、前記保護層は、第1波長領域内の不可視光と、第2波長領域内の不可視光と、を透過する材料からなっていてもよい。
【0011】
本発明による発光媒体において、前記保護層はアクリル系樹脂を含んでもよい。
【0012】
本発明による発光媒体において、前記保護層はポリメチルメタクリレートからなっていてもよい。
【0013】
本発明は、基材上に発光画像を有する発光媒体において、前記発光画像は、第1蛍光体を含む複数の第1絵柄要素と、第2蛍光体を含む複数の第2絵柄要素と、基材、前記第1絵柄要素および前記第2絵柄要素上に形成された保護層と、を有し、前記第1絵柄要素と前記第2絵柄要素は、複数のマイクロ文字を形成し、前記複数のマイクロ文字は、マイクロ文字列を形成すると共に、前記第1絵柄要素は前記マイクロ文字列上の潜像を形成し、第1波長領域内の不可視光を照射されたとき、前記第1蛍光体および前記第2蛍光体は、互いに同色として視認される色の光を発光し、第2波長領域内の不可視光を照射されたとき、前記第1蛍光体および前記第2蛍光体は、互いに異色として視認される色の光を発光し、これにより前記マイクロ文字列上の前記潜像を発現させることを特徴とする発光媒体である。
【0014】
本発明は、基材上に発光画像を有する発光媒体において、前記発光画像は、第1蛍光体を含む複数の第1絵柄要素と、第2蛍光体を含む複数の第2絵柄要素と、を有し、基材、前記第1絵柄要素および前記第2絵柄要素上に形成された保護層と、を有し、前記第1絵柄要素と前記第2絵柄要素は、複数のマイクロ文字を形成し、前記複数のマイクロ文字は、マイクロ文字列を形成すると共に、前記第1絵柄要素は前記マイクロ文字列上の潜像を形成し、第1波長領域内の不可視光が照射されたとき、または第2波長領域内の不可視光が照射されたときに、前記第1蛍光体および前記第2蛍光体は、互いに同色として視認される色の光を発光し、第1波長領域内の不可視光と第2波長領域内の不可視光とが同時に照射されたとき、前記第1蛍光体および前記第2蛍光体は、互いに異色として視認される色の光を発光し、これにより前記マイクロ文字列上の前記潜像を発現させることを特徴とする発光媒体である。
【0015】
本発明は、基材上に発光画像を有する発光媒体において、前記発光画像は、第1蛍光体を含む複数の第1絵柄要素と、第2蛍光体を含む複数の第2絵柄要素と、を有し、基材、前記第1絵柄要素および前記第2絵柄要素上に形成された保護層と、を有し、前記第1絵柄要素と前記第2絵柄要素は、複数のマイクロ文字を形成し、前記複数のマイクロ文字は、マイクロ文字列を形成すると共に、前記第1絵柄要素は前記マイクロ文字列上の潜像を形成し、第1波長領域内の不可視光が照射されたとき、前記第1蛍光体および前記第2蛍光体は、互いに異色として視認される色の光を発光し、これにより前記マイクロ文字列上の前記潜像を発現し、第2波長領域内の不可視光が照射されたとき、前記第1蛍光体および前記第2蛍光体は、互いに異色として視認されるとともに、第1波長領域内の不可視光が照射されたときに視認される色とは異色の光を発光し、これにより前記マイクロ文字列上の前記潜像を発現し、第1波長領域内の不可視光と第2波長領域内の不可視光とが同時に照射されたとき、前記第1蛍光体および前記第2蛍光体は、互いに同色として視認される色の光を発光することを特徴とする発光媒体である。
【0016】
本発明による発光媒体において、前記保護層は、第1波長領域内の不可視光と、2波長領域内の不可視光と、を透過する材料からなっていてもよい。
【0017】
本発明による発光媒体において、前記保護層はアクリル系樹脂を含んでもよい。
【0018】
本発明による発光媒体において、前記保護層はポリメチルメタクリレートからなっていてもよい。
【発明の効果】
【0019】
本発明による発光媒体によれば、簡易かつ迅速に発光画像の確認を行うことが可能となる。
さらに、発光画像のパターンが容易に解明されるのを防ぐことができ、これによって、発光媒体の偽造をより困難にすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】図1は、本発明の発光媒体からなる偽造防止媒体により構成される有価証券の一例を示す平面図。
【図2】図2は、本発明の第1の実施の形態において、偽造防止媒体の発光画像を示す平面図。
【図3】図3は、図2に示す発光画像のIII−III線に沿った断面図。
【図4A】図4Aは、本発明の第1の実施の形態における第1蛍光インキの蛍光発光スペクトルを示す図。
【図4B】図4Bは、本発明の第1の実施の形態における第2蛍光インキの蛍光発光スペクトルを示す図。
【図5】図5は、本発明の第1の実施の形態における第1蛍光インキおよび第2蛍光インキから発光される蛍光の色度を示すxy色度図。
【図6A】図6Aは、本発明の第1の実施の形態において、UV−Aが照射されたときの発光画像を示す平面図。
【図6B】図6Bは、本発明の第1の実施の形態において、UV−Cが照射されたときの発光画像を示す平面図。
【図6C】図6Cは、比較例において、UV−Aが照射された時の発光画像を示す平面図。
【図7】図7は、本発明の第1の実施の形態の変形例において、偽造防止媒体の発光画像を示す平面図。
【図8】図8は、図7に示す発光画像のVIII−VIII線に沿った断面図。
【図9A】図9Aは、本発明の第1の実施の形態の変形例において、UV−Aが照射されたときの発光画像を示す平面図。
【図9B】図9Bは、本発明の第1の実施の形態の変形例において、UV−Cが照射されたときの発光画像を示す平面図。
【図10】図10は、本発明の第2の実施の形態における第2蛍光インキの蛍光発光スペクトルを示す図。
【図11A】図11Aは、本発明の第2の実施の形態において、UV−Aが照射されたときの発光画像を示す平面図。
【図11B】図11Bは、本発明の第2の実施の形態において、UV−Cが照射されたときの発光画像を示す平面図。
【図12A】図12Aは、本発明の第3の実施の形態における第1蛍光インキの蛍光発光スペクトルを示す図。
【図12B】図12Bは、本発明の第3の実施の形態における第2蛍光インキの蛍光発光スペクトルを示す図。
【図13】図13は、本発明の第3の実施の形態における第1蛍光インキおよび第2蛍光インキから発光される蛍光の色を示すxy色度図。
【図14A】図14Aは、本発明の第3の実施の形態において、UV−Cが照射されたときの発光画像を示す平面図。
【図14B】図14Bは、本発明の第3の実施の形態において、UV−Aが照射されたときの発光画像を示す平面図。
【図15】図15は、本発明の第4の実施の形態において、偽造防止媒体の発光画像を示す平面図。
【図16】図16は、図15に示す発光画像のA−A線に沿った断面図。
【図17A】図17Aは、本発明の第4の実施の形態において、UV−Aが照射されたときの発光画像を示す平面図。
【図17B】図17Bは、本発明の第4の実施の形態において、UV−Cが照射されたときの発光画像を示す平面図。
【図18A】図18Aは、本発明の第4の実施の形態の変形例において、偽造防止媒体の発光画像を示す平面図。
【図18B】図18Bは、図18Aに示す発光画像のB−B線に沿った断面図。
【図19A】図19Aは、本発明の第4の実施の形態の変形例において、UV−Aが照射されたときの発光画像を示す平面図。
【図19B】図19Bは、本発明の第4の実施の形態の変形例において、UV−Cが照射されたときの発光画像を示す平面図。
【図20A】図20Aは、本発明の第5の実施の形態において、UV−Aが照射されたときの発光画像を示す平面図。
【図20B】図20Bは、本発明の第5の実施の形態において、UV−Cが照射されたときの発光画像を示す平面図。
【図21A】図21Aは、本発明の第6の実施の形態において、UV−Cが照射されたときの発光画像を示す平面図。
【図21B】図21Bは、本発明の第6の実施の形態において、UV−Aが照射されたときの発光画像を示す平面図。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、図1乃至図6Bを参照して、本発明の第1の実施の形態について説明する。はじめに図1乃至図3を参照して、本発明の発光媒体からなる偽造防止媒体10全体について説明する。
【0022】
偽造防止媒体
図1は、本実施の形態による偽造防止媒体10により構成される商品券(有価証券)の一例を示す図である。図1に示すように、偽造防止媒体10は、基材11と、基材11上に形成された発光画像12と、を有している。本実施の形態においては、後述するように、発光画像12が、偽造防止媒体10の真偽を判別するための真偽判別用画像として機能する。この発光画像12は、図1に示すように、絵柄領域(第1領域)20と、絵柄領域20に隣接するよう形成された背景領域(第2領域)25と、からなっている。図1に示す例において、絵柄領域20は、「A」という文字(絵柄)からなっており、また背景領域25は、絵柄領域20を取り囲むよう形成されている。各領域20,25は、後述するように、不可視光により励起されて蛍光を発する蛍光インキを印刷することにより形成されている。また、後述するように、発光画像12は、その表面にオーバーコート層(保護層)30が形成されている。このオーバーコート層30は、ほぼ無色透明である。
【0023】
偽造防止媒体10において用いられる基材11の材料が特に限られることはなく、偽造防止媒体10により構成する有価証券の種類に応じて適宜選択される。例えば、基材11の材料として、優れた印刷適性および加工適性を有する白色のポリエチレンテレフタレートが用いられる。基材11の厚みは、偽造防止媒体10により構成される有価証券の種類に応じて適宜設定される。
【0024】
発光画像12の大きさが特に限られることはなく、真偽判別のし易さや、求められる判別精度などに応じて適宜設定される。例えば、発光画像12の長さlおよびlは、それぞれ1〜210mmおよび1〜300mmの範囲内となっている。
【0025】
発光画像
次に図2および図3を参照して、発光画像12についてより詳細に説明する。図2は、可視光下での発光画像12を拡大して示す平面図であり、図3は、図2に示す発光画像12のIII−III線に沿った断面図である。
【0026】
はじめに図3を参照して、発光画像12の構造について説明する。図3に示すように、発光画像12の絵柄領域20および背景領域25は、基材11上に第1蛍光インキ13および第2蛍光インキ14をベタ印刷することにより形成されている。オーバーコート層30は、絵柄領域20の第1蛍光インキ13および背景領域25の第2蛍光インキ14上に、オーバーコートインキを、例えばスクリーン印刷することにより形成されている。
【0027】
なお図3において、絵柄領域20の第1蛍光インキ13と背景領域25の第2蛍光インキ14とが接している例を示した。しかしながら、これに限られることはなく、本発明において、「隣接している」とは、肉眼によっては視認され得ない程度の隙間が、絵柄領域20の第1蛍光インキ13と背景領域25の第2蛍光インキ14との間に形成されていてもよい。また、絵柄領域20の第1蛍光インキ13と背景領域25の第2蛍光インキ14との間において、第1蛍光インキ13と第2蛍光インキ14とが重なって形成されていてもよい。
【0028】
第1蛍光インキ13および第2蛍光インキ14の厚みtおよびtは、有価証券の種類や、印刷の方式などに応じて適宜設定されるが、例えば、厚みtは0.3〜100μmの範囲内となっており、厚みtは0.3〜100μmの範囲内となっている。なお、好ましくは、厚みtと厚みtはほぼ同一となっている。これによって、第1蛍光インキ13の厚みと第2蛍光インキ14の厚みの差に起因して、絵柄領域20と背景領域25の間の境界が視認されるのを抑制することができる。
【0029】
ここで、第1蛍光インキ13及び第2蛍光インキ14の表面の粗さと、オーバーコート層30の厚みtとについて説明する。
本実施の形態において基材11として用いられている一般的なポリエチレンテレフタレート等のフィルム表面の算術平均粗さRa(以下、粗さRaと称す)は、0.01〜0.1μmの範囲内となっている。また、マット処理されているポリエチレンテレフタレート等のフィルム表面の粗さRaは、0.1〜0.5μmの範囲内となっている。また、基材11として紙を用いることもできる。紙の場合、写真用紙表面の粗さRaは、0.05〜0.5μmの範囲内となっており、普通紙表面の粗さRaは、2〜3μmの範囲内となっている。よって、第1蛍光インキ13と第2蛍光インキ14の厚みが薄い場合、第1蛍光インキ13と第2蛍光インキ14の表面の粗さRaは、基材11として用いられる材料の表面の粗さRaに近い値となる。また、第1蛍光インキ13と第2蛍光インキ14の厚みが厚い場合、第1蛍光インキ13と第2蛍光インキ14の表面の粗さRaは、インキ自体の凹凸に起因した値となると考えられる。
以上より、オーバーコート層30の厚みtは、基材11の表面の粗さRaや、第1蛍光インキ13および第2蛍光インキ14の表面の粗さRaなどに応じて適宜設定され、例えば、0.01〜100μmの範囲内となっている。
【0030】
第1蛍光インキ13および第2蛍光インキ14は各々、後述するように、可視光下では発光せず、特定の不可視光下で発光する所定の蛍光体、例えば粒状の顔料を含んでいる。ここで、インキ13,14に含まれる顔料の粒径は、例えば0.1〜10μmの範囲内となっており、好ましくは0.1〜3μmの範囲内となっている。このため、インキ13,14に可視光が照射された場合、光が顔料粒子によって散乱される。また、前述の様に、オーバーコート層30は、ほぼ無色透明である。従って、可視光下で発光画像12を見た場合、図2に示すように、絵柄領域20として白色絵柄領域21aが視認され、背景領域25として白色背景領域26aが視認される。また上述のように、本実施の形態における基材11は、白色のポリエチレンテレフタレートから形成されている。このため、可視光下において、基材11、発光画像12の絵柄領域20および背景領域25は全て白色のものとして視認される。従って、可視光下において発光画像12の絵柄領域20のパターンが現れることはない。このことにより、発光画像12を有する偽造防止媒体10が容易に偽造されるのが防がれている。
なお、図2において、絵柄領域20と背景領域25との間の第1境界線15a、および、基材11と発光画像12との間の第2境界線15bは、便宜上描かれているものである。可視光下において、第1境界線15aまたは第2境界線15bは実際には視認されない。
【0031】
蛍光インキ
次に図4A乃至図5を参照して、第1蛍光インキ13および第2蛍光インキ14についてより詳細に説明する。図4Aは、第1蛍光インキ13の蛍光発光スペクトルを示す図であり、図4Bは、第2蛍光インキ14の蛍光発光スペクトルを示す図である。図5は、特定の波長領域内の光が照射された場合に第1蛍光インキ13および第2蛍光インキ14から発光される光の色度をXYZ表色系で示すxy色度図である。
【0032】
(第1蛍光インキ)
はじめに第1蛍光インキ13について説明する。図4Aにおいて、一点鎖線は、315〜400nmの波長域領域内(第1波長領域内)の紫外線(不可視光)、いわゆるUV−Aを照射されたときの第1蛍光インキ13の蛍光発光スペクトルを示しており、実線は、200〜280nmの波長域領域内(第2波長領域内)の紫外線(不可視光)、いわゆるUV−Cを照射されたときの第1蛍光インキ13の蛍光発光スペクトルを示している。なお図4Aに示す各蛍光発光スペクトルは、最大のピークにおけるピーク強度が1となるよう規格化されている。
【0033】
図4Aに示すように、第1蛍光インキ13は、UV−Aを照射されたとき、ピーク波長λ1Aが約445nmである青色(第1色)の光を発し、UV−Cを照射されたとき、ピーク波長λ1Cが約610nmである赤色(第2色)の光を発する。このように、第1蛍光インキ13は、UV−A照射時とUV−C照射時で発光色が異なる、いわゆる二色性蛍光体(第1蛍光体)を含んでいる。このような二色性蛍光体は、例えば、UV−Aにより励起される蛍光体と、UV−Cにより励起される蛍光体と、を適宜組み合わせることにより構成される(例えば、特開平10−251570号公報参照)。
なおUV−A照射時には、図4Aに示すように約610nmの波長の光も発光される。しかしながら、約610nmの波長の光は、ピーク波長λ1Aが約445nmである光に比べて強度が小さいため、UV−A照射時、第1蛍光インキ13からの光は青色光として視認される。同様に、UV−C照射時、図4Aに示すように約445nmの波長の光も発光されるが、その強度が小さいため、第1蛍光インキ13からの光は赤色光として視認される。
【0034】
(第2蛍光インキ)
次に第2蛍光インキ14について説明する。図4Bにおいて、一点鎖線は、UV−Aを照射されたときの第2蛍光インキ14の蛍光発光スペクトルを示しており、実線は、UV−Cを照射されたときの第2蛍光インキ14の蛍光発光スペクトルを示している。図4Aの場合と同様に、図4Bに示す各蛍光発光スペクトルは、最大のピークにおけるピーク強度が1となるよう規格化されている。
【0035】
図4Bに示すように、第2蛍光インキ14は、UV−Aを照射されたとき、ピーク波長λ2Aが約445nmである青色(第1色)の光、または青色(第1色)と同色として視認される光を発する。また第2蛍光インキ14は、UV−Cを照射されたとき、ピーク波長λ2Cが約525nmである緑色(第3色)の光を発する。このように第2蛍光インキ14も、第1蛍光インキ13と同様に、UV−A照射時とUV−C照射時で発光色が異なる、いわゆる二色性蛍光体(第2蛍光体)を含んでいる。
なおUV−A照射時には、図4Bに示すように約525nmの波長の光も発光される。しかしながら、約525nmの波長の光は、ピーク波長λ2Aが約445nmである光に比べて強度が小さいため、UV−A照射時、第2蛍光インキ14からの光は青色光として視認される。同様に、UV−C照射時、図4Bに示すように約445nmの波長の光も発光されるが、その強度が小さいため、第2蛍光インキ14からの光は緑色光として視認される。
【0036】
次に図5を参照して、UV−AまたはUV−C照射時に第1蛍光インキ13または第2蛍光インキ14から発せられる光の色についてより詳細に説明する。図5に示す符号において、白抜きの丸または四角は、UV−A照射時に第1蛍光インキ13または第2蛍光インキ14から発せられる光の色度をそれぞれ示している。また、黒塗りの丸または四角は、UV−C照射時に第1蛍光インキ13または第2蛍光インキ14から発せられる光の色度をそれぞれ示している。
【0037】
上述の青色(第1色)は、図5において白抜きの丸で示される色度に対応している。また、上述の赤色(第2色)は、図5において黒塗りの丸で示される色度に対応しており、上述の緑色(第3色)は、図5において黒塗りの四角で示される色度に対応している。
【0038】
図5に示すように、xy色度図において、UV−A照射時に第1蛍光インキ13から発せられる光の色度と、UV−A照射時に第2蛍光インキ14から発せられる光の色度とは近接している。このため上述のように、UV−Aを照射されたときに第2蛍光インキ14から発せられる光は、UV−A照射時に第1蛍光インキ13から発せられる光と同色の光として視認される。このため、第1蛍光インキ13を用いて形成された絵柄領域20と、第2蛍光インキ14を用いて形成された背景領域25とは、UV−A照射時、同色の領域として視認される。従って後述するように、UV−A照射時には、発光画像12全体が単一色(青色)の画像として視認され、このため、絵柄領域20のパターンは現れない。
【0039】
また図5に示すように、xy色度図において、UV−C照射時に第1蛍光インキ13から発せられる光の色度と、UV−C照射時に第2蛍光インキ14から発せられる光の色度は大きく離れている。このため、UV−Cを照射されたときに第2蛍光インキ14から発せられる光は、UV−C照射時に第1蛍光インキ13から発せられる光と異色の光として視認される。このため、第1蛍光インキ13を用いて形成された絵柄領域20と、第2蛍光インキ14を用いて形成された背景領域25とは、UV−C照射時、異色の領域として視認される。従って後述するように、UV−C照射時には、絵柄領域20のパターンが視認される。
【0040】
なお本発明において、「同色」とは、肉眼では色の違いを判別できない程度に2つの色の色度が近接していることを意味している。より具体的には、「同色」とは、2つの色の色差ΔEabが10以下、好ましくは3以下であることを意味している。また「異色」とは、2つの色の色差ΔEabが10よりも大きいことを意味している。ここで色差ΔEabとは、L表色系におけるL、aおよびbに基づいて算出される値であり、肉眼で観察された場合の色の相違に関する指標となる値である。なお、L表色系におけるL、aおよびbや、XYZ表色系における三刺激値X、YおよびZは、光のスペクトルなどに基づいて算出される。またL、aおよびbと三刺激値X、Y、Zとの間には、周知の変換式に従う関係が成立している。
上記の三刺激値は、例えば分光光度計、色差計、測色計、色彩計、色度計等の計測器を用いることにより計測され得る。これらの計測器のうち分光光度計は、各波長の分光反射率を求めることができるので、三刺激値を精度良く計測することができ、このため色差の解析に適している。
色差ΔEabを算出するには、例えば、はじめに、比較する複数の媒体(インキ)からの光を分光光度計にて計測し、その結果に基づいて、三刺激値X、Y、Z、またはL、a、bを算出する。次に、複数の媒体(インキ)におけるL、a、bの差(ΔL、Δa、Δb)から、以下の式に基づいて色差を算出する。
【数1】

【0041】
次に、このような構成からなる本実施の形態の作用について説明する。ここでは、はじめに、偽造防止媒体10を作製する方法について説明する。次に、偽造防止媒体10からなる有価証券が正規のものであるかどうかを検査する方法について説明する。
【0042】
偽造防止媒体の作製方法
はじめに基材11を準備する。基材11としては、例えば、厚み188μmの白色のポリエチレンテレフタレートからなる基材が用いられる。次に、第1蛍光インキ13および第2蛍光インキ14を用いて、基材11上に、絵柄領域20および背景領域25からなる発光画像を形成する。
【0043】
この際、第1蛍光インキ13および第2蛍光インキ14としては、例えば、所定の蛍光特性を有する二色性蛍光体25重量%に、マイクロシリカ8重量%、有機ベントナイト2重量%、アルキッド樹脂50重量%およびアルキルベンゼン系溶剤15重量%を加えてオフセットインキ化されたインキがそれぞれ用いられる。このうち第1蛍光インキ13用の二色性蛍光体(第1蛍光体)としては、例えば、波長254nmの紫外線により励起されて赤色光を発光し、波長365nmの紫外線により励起されて青色光を発光する蛍光体DE−RB(根本特殊化学製)が用いられる。また第2蛍光インキ14用の二色性蛍光体(第2蛍光体)としては、例えば、波長254nmの紫外線により励起されて緑色光を発光し、波長365nmの紫外線により励起されて青色光を発光する蛍光体DE−GB(根本特殊化学製)が用いられる。
なお、波長365nmの紫外線照射時に第1蛍光インキ13から発せられる青色光と第2蛍光インキ14から発せられる青色光との間の色差ΔEabが10以下、好ましくは3以下となるよう、インキ13,14の二色性蛍光体がそれぞれ選択されている。一般に、色差ΔEabが3程度で人間の目の識別能力(色を見分ける能力)の限界となる。従って、色差ΔEabを3以下とすることにより、肉眼での色の判別がより一層困難となり、これによって、真偽判別用の発光画像12のパターンが容易に解明されるのを防ぐことができる。
【0044】
なお、第1蛍光インキ13および第2蛍光インキ14における各構成要素の組成が上述の組成に限られることはなく、偽造防止媒体10に求められる特性に応じて最適な組成が設定される。
【0045】
次に、オーバーコートインキを用いて、絵柄領域20の第1蛍光インキ13および背景領域25の第2蛍光インキ14上に、例えば、厚み2μmのオーバーコート層30をスクリーン印刷により形成する。この際、オーバーコートインキとしては、例えば、アクリル系樹脂であるポリメチルメタクリレート67重量%に、メチルエチルケトン33重量%を加えてスクリーンインキ化されたインキが用いられる。
アクリル系樹脂とは、アクリル酸エステルあるいはメタクリル酸エステルの重合体を指す、透明性が高い合成樹脂である。本発明におけるオーバーコート層30は、UV−AからUV−Cまでの紫外線およびそれらを照射したときに発光する可視光域の波長の光を透過することが必要であり、広い透過波長域を有するアクリル系樹脂が好適である。
特に、ポリメチルメタクリレートは、可視光域の光および波長365nmと254nmの紫外線を透過するため、本発明に好適である。
このようにして作成されたオーバーコートインキは、波長254nmの紫外線と、波長365nmの紫外線とを透過する。
オーバーコート層30の形成には、上述のスクリーン印刷を含む各種印刷手法を用いることができるが、これらに限られず、ラミネート手法や熱転写手法等も用いてもよい。
【0046】
確認方法
次に、図2、図6Aおよび図6Bを参照して、偽造防止媒体10からなる有価証券が正規のものであるかどうかを検査(確認)する方法について説明する。
【0047】
(可視光照射時)
はじめに、可視光下での偽造防止媒体10を観察する。この場合、上述のように、基材11、発光画像12の絵柄領域20および背景領域25はそれぞれ白色のものとして視認される(図2参照)。このため、可視光下においては、発光画像12の絵柄領域20のパターンは現れない。
【0048】
(UV−A照射時)
次に、UV−A照射時の偽造防止媒体10を観察する。照射されるUV−Aとしては、例えば、波長365nmの紫外線が用いられる。UV−Aは、オーバーコート層30を透過して、絵柄領域20を形成する第1蛍光インキ13と、背景領域25を形成する第2蛍光インキ14とに到達する。
【0049】
図6Aは、UV−A照射時の偽造防止媒体10の発光画像12を示す平面図である。絵柄領域20を形成する第1蛍光インキ13は蛍光体DE−RBを含んでおり、このため、第1蛍光インキ13は青色光を発光する。従って、絵柄領域20が青色部分21bとして視認される。一方、背景領域25を形成する第2蛍光インキ14は蛍光体DE−GBを含んでおり、このため、第2蛍光インキ14は青色光を発光する。従って、背景領域25も青色部分26bとして視認される。ここで、絵柄領域20の第1蛍光インキ13と背景領域25の第2蛍光インキ14との間に厚みや表面の粗さの違いが存在していても、オーバーコート層30がこれらを打ち消すので、青色部分21bと青色部分26bとが同色として視認される。このように、UV−A照射時において、絵柄領域20および背景領域25は、同色の領域として視認される。従って、UV−A照射時において、発光画像12の絵柄領域20のパターンは現れない。
【0050】
(UV−C照射時)
次に、UV−C照射時の偽造防止媒体10を観察する。照射されるUV−Cとしては、例えば、波長254nmの紫外線が用いられる。UV−Cは、オーバーコート層30を透過して、絵柄領域20を形成する第1蛍光インキ13と、背景領域25を形成する第2蛍光インキ14とに到達する。
【0051】
図6Bは、UV−C照射時の偽造防止媒体10の発光画像12を示す平面図である。絵柄領域20を形成する第1蛍光インキ13は蛍光体DE−RBを含んでおり、このため、第1蛍光インキ13は赤色光を発光する。従って、絵柄領域20が赤色部分21cとして視認される。一方、背景領域25を形成する第2蛍光インキ14は蛍光体DE−GBを含んでおり、このため、第2蛍光インキ14は緑色光を発光する。従って、背景領域25は緑色部分26cとして視認される。このように、UV−C照射時において、絵柄領域20および背景領域25は、異なった色の領域として視認される。従って、UV−C照射時において、発光画像12の絵柄領域20のパターンが視認される。
【0052】
可視光、UV−AまたはUV−Cが照射された場合に絵柄領域20および背景領域25の色が上述のように変化するのを検査することにより、偽造防止媒体10からなる有価証券が正規のものであることが確認される。
【0053】
比較例
ここで、比較例として、オーバーコート層30を備えていない発光画像12について説明する。
図6Cは、比較例において、UV−A照射時の偽造防止媒体10の発光画像12を示す平面図である。この偽造防止媒体10の発光画像12は、オーバーコート層30を備えていない点が、図2,3の構成と異なる。他の構成は図2,3と同一であるため、説明は省略する。また、発光画像12の絵柄領域20と背景領域25との間に厚みや表面の粗さの違いが存在するものとする。第1の実施形態と同様に、UV−A照射により、絵柄領域20が青色部分21b’として視認される。一方、背景領域25も青色部分26b’として視認される。しかしながら、絵柄領域20と背景領域25との厚みや表面の粗さの違いに起因して、青色部分21b’と青色部分26b’との色差は、これらが異色であると視認可能な程度に大きくなっているので、「A」の文字が視認されてしまう。
【0054】
変形例
なお本実施の形態において、発光画像12の絵柄領域20および背景領域25が、第1蛍光体を含む第1蛍光インキ13および第2蛍光体を含む第2蛍光インキ14を基材11上にベタ印刷することにより形成される例を示した。しかしながら、これに限られることはなく、第1蛍光体を含む第1蛍光インキ13および第2蛍光体を含む第2蛍光インキ14を同一の所定パターンで基材11上に印刷することにより、絵柄領域20および背景領域25を形成してもよい。以下、図7乃至図9Bを参照して、第1蛍光インキ13および第2蛍光インキ14が基材11上にストライプ状に印刷される例について説明する。
【0055】
図7は、本変形例において、可視光下における偽造防止媒体10の発光画像12を示す平面図であり、図8は、図7に示す発光画像12のVIII−VIII線に沿った断面図である。図7および図8に示すように、本変形例においては、第1蛍光インキ13および第2蛍光インキ14を基材11上にストライプ状に印刷することにより、絵柄領域20および背景領域25が形成されている。また、オーバーコート層30が、絵柄領域20の第1蛍光インキ13上と、背景領域25の第2蛍光インキ14上と、絵柄領域20及び背景領域25において露出している基材11上とに、形成されている。
【0056】
次に、図7、図9Aおよび図9Bを参照して、本変形例において、偽造防止媒体10からなる有価証券が正規のものであるかどうかを検査する方法について説明する。
【0057】
(可視光照射時)
可視光下においては、図7に示すように、絵柄領域20および背景領域25はそれぞれ、ストライプ状に配置された白色部分21a,26aから形成されている。このため、可視光下においては、発光画像12の絵柄領域20のパターンは現れない。
【0058】
(UV−A照射時)
図9Aは、UV−A照射時の偽造防止媒体10の発光画像12を示す平面図である。絵柄領域20および背景領域25はそれぞれ、ストライプ状に配置された青色部分21b,26bから形成されている。また、前述のように、絵柄領域20の第1蛍光インキ13と背景領域25の第2蛍光インキ14との間に厚みや表面の粗さの違いが存在していても、オーバーコート層30がこれらを打ち消すので、青色部分21bと青色部分26bとが同色として視認される。このため、UV−A照射時において、発光画像12の絵柄領域20のパターンは現れない。
また本変形例においては、基材11上に第1蛍光インキ13および第2蛍光インキ14がベタ印刷される場合に比べて、絵柄領域20の青色部分21bと背景領域25の青色部分26bとが接する部分がより少なくなっている。このため、仮に青色部分21bと青色部分26bとが接する部分において不規則に反射または屈折する光が存在する場合であっても、そのような光に起因して青色部分21bと青色部分26bとの間の境界が視認される可能性が低減されている。このことにより、UV−A照射時に絵柄領域20のパターンが解明されるのをより強固に防ぐことができる。
【0059】
(UV−C照射時)
図9Bは、UV−C照射時の偽造防止媒体10の発光画像12を示す平面図である。絵柄領域20および背景領域25はそれぞれ、ストライプ状に配置された赤色部分21cおよび緑色部分26cから形成されている。このため、UV−C照射時において、発光画像12の絵柄領域20のパターンが視認される。
【0060】
なお本変形例において、第1蛍光インキ13および第2蛍光インキ14が基材11上にストライプ状に印刷される例を示した。しかしながら、これに限られることはなく、第1蛍光インキ13および第2蛍光インキ14を様々なパターンで基材11上に印刷することができる。
例えば、第1蛍光インキ13および第2蛍光インキ14が網点で基材11上に印刷されてもよい。この際の網点パーセントが特に限られることはなく、偽造防止媒体10に求められる特性に応じて網点パーセントが適宜設定される。
【0061】
その他の変形例
また本実施の形態において、第1蛍光インキ13として、蛍光体DE−RBを含むインキが用いられ、第2蛍光インキ14として、蛍光体DE−GBを含むインキが用いられる例を示した。すなわち、以下に示す表1における組合せ_1のインキが用いられる例を示した。しかしながら、これに限られることはなく、第1蛍光インキ13および第2蛍光インキ14として、表1における組合せ_2または組合せ_3のインキを用いてもよい。組合せ_2または組合せ_3の場合であっても、組合せ_1の場合と同様に、第1蛍光インキ13および第2蛍光インキ14は、UV−Aを照射されたとき同色または同色として視認される色を発光するインキとなっている。このため、発光画像12のパターンが容易に解明されるのを防ぐことができ、このことにより、偽造防止媒体10の偽造をより困難にすることができる。
なお表1において、「UV−A」または「UV−C」の列に示されている色は、UV−AまたはUV−Cが照射されたときに第1蛍光インキ13および第2蛍光インキ14から発せられる光の色をそれぞれ示している。また、「蛍光体」の列に示されている名称は、いずれも根本特殊化学における製品名を表している。この場合、製品名「DE−X」において、XがUV−C照射時の発光色を示しており、XがUV−A照射時の発光色を示している。例えば蛍光体DE−GRは、UV−C照射時に緑色光を発し、UV−A照射時に赤色光を発する蛍光体となっている。
【表1】

【0062】
また本実施の形態において、絵柄領域20が第1蛍光インキ13を用いて形成され、背景領域25が第2蛍光インキ14を用いて形成される例を示した。しかしながら、これに限られることはなく、第2蛍光インキ14を用いて絵柄領域20を形成し、第1蛍光インキ13を用いて背景領域25を形成してもよい。この場合も、絵柄領域20のパターンは、UV−Aを照射されたときには視認されず、UV−Cを照射されてはじめて視認される。このことにより、偽造防止媒体10の偽造を困難にすることができる。
【0063】
第2の実施の形態
次に、図10乃至図11Bを参照して、本発明の第2の実施の形態について説明する。図10乃至図11Bに示す第2の実施の形態は、UV−Cを照射されたとき光を発光しないインキから第2蛍光インキ14が構成される点が異なるのみであり、他の構成は、図1乃至図9Bに示す第1の実施の形態と略同一である。図10乃至図11Bに示す第2の実施の形態において、図1乃至図9Bに示す第1の実施の形態と同一部分には同一符号を付して詳細な説明は省略する。
【0064】
(第2蛍光インキ)
はじめに図10を参照して、本実施の形態における第2蛍光インキ14について説明する。図10において、一点鎖線は、UV−Aを照射されたときの第2蛍光インキ14の蛍光発光スペクトルを示しており、実線は、UV−Cを照射されたときの第2蛍光インキ14の蛍光発光スペクトルを示している。図10において、UV−C照射時のスペクトル(実線)のピークにおける強度は、UV−A照射時のスペクトル(一点鎖線)の最大のピークにおけるピーク強度を1とした場合の相対的な強度として示されている。
【0065】
図10に示すように、第2蛍光インキ14は、UV−Aを照射されたとき、ピーク波長λ2Aが約445nmである青色(第1色)の光、または青色(第1色)と同色として視認される光を発する。また第2蛍光インキ14は、UV−Cを照射されたとき、UV−A照射時のピーク強度に比べて著しく小さい強度を有する約445nmの波長の光を発する。このように、UV−C照射時に第2蛍光インキ14から発せられる光は、その強度が非常に小さく、従って肉眼によっては殆ど感知されない。このため、UV−C照射時、第2蛍光インキ14は無色のインキとして視認される。このように本実施の形態において、第2蛍光インキ14に含まれる第2蛍光体は、UV−A照射時にのみ光を発する単色性蛍光体となっている。
【0066】
なお本発明において、「無色」とは、第2蛍光インキ14自体から発せられる光の色以外の要素により、第2蛍光インキ14を観察する際に視認される色が決定されることを意味する。例えば、第2蛍光インキ14にUV−C照射のみが照射されている場合、第2蛍光インキ14が黒色のものとして視認される。また、第2蛍光インキ14にUV−Cおよび可視光が照射されている場合、上述のように可視光が第2蛍光インキ14中の顔料粒子によって散乱され、これによって、第2蛍光インキ14が白色のものとして視認される。
【0067】
また本発明において「UV−Cを照射されたとき光を発光しない」とは、UV−Cを照射されたとき光を全く発光しない場合だけでなく、図10において実線により示すように、肉眼によっては特定の色の光として感知され得ない程度の小さな強度の光を発光する場合も含む概念である。
【0068】
次に、このような構成からなる本実施の形態の作用について説明する。ここでは、はじめに、偽造防止媒体10を作製する方法について説明する。次に、偽造防止媒体10からなる有価証券が正規のものであるかどうかを検査する方法について説明する。
【0069】
偽造防止媒体の作製方法
はじめに基材11を準備する。基材11としては、例えば、厚み188μmの白色のポリエチレンテレフタレートからなる基材が用いられる。次に、第1蛍光インキ13および第2蛍光インキ14を用いて、基材11上に、絵柄領域20および背景領域25からなる発光画像を形成する。
【0070】
この際用いられる第1蛍光インキ13は、図1乃至図9Bに示す第1の実施の形態における第1蛍光インキ13と同一であるので、詳細な説明は省略する。第2蛍光インキ14としては、所定の蛍光特性を有する単色性蛍光体25重量%に、マイクロシリカ8重量%、有機ベントナイト2重量%、アルキッド樹脂50重量%およびアルキルベンゼン系溶剤15重量%を加えてオフセットインキ化されたインキが用いられる。第2蛍光インキ14用の単色性蛍光体(第2蛍光体)としては、例えば、波長365nmの紫外線で青色光を発光する蛍光体D−1184(根本特殊化学製)が用いられる。
【0071】
次に、オーバーコートインキを用いて、絵柄領域20の第1蛍光インキ13および背景領域25の第2蛍光インキ14上に、例えば、厚み2μmのオーバーコート層30を形成する。このオーバーコートインキは、第1の実施の形態におけるオーバーコートインキと同一であるので、詳細な説明は省略する。
【0072】
確認方法
次に、図11Aおよび図11Bを参照して、偽造防止媒体10からなる有価証券が正規のものであるかどうかを検査(確認)する方法について説明する。
【0073】
(UV−A照射時)
図11Aは、UV−A照射時の偽造防止媒体10の発光画像12を示す平面図である。絵柄領域20を形成する第1蛍光インキ13は蛍光体DE−RBを含んでおり、このため、第1蛍光インキ13は青色光を発光する。従って、絵柄領域20が青色部分21bとして視認される。一方、背景領域25を形成する第2蛍光インキ14は蛍光体D−1184を含んでおり、このため、第2蛍光インキ14は青色光を発光する。従って、背景領域25も青色部分26bとして視認される。また、前述のように、絵柄領域20の第1蛍光インキ13と背景領域25の第2蛍光インキ14との間に厚みや表面の粗さの違いが存在していても、オーバーコート層30がこれらを打ち消すので、青色部分21bと青色部分26bとが同色として視認される。このように、UV−A照射時において、絵柄領域20および背景領域25は、同色の領域として視認される。従って、UV−A照射時において、発光画像12の絵柄領域20のパターンは現れない。
【0074】
(UV−C照射時)
図11Bは、UV−C照射時の偽造防止媒体10の発光画像12を示す平面図である。絵柄領域20を形成する第1蛍光インキ13は蛍光体DE−RBを含んでおり、このため、第1蛍光インキ13は赤色光を発光する。従って、絵柄領域20が赤色部分21cとして視認される。一方、背景領域25を形成する第2蛍光インキ14は、UV−C照射時に光を発光しないインキからなっており、従って、背景領域25は無色部分26dとして視認される。従って、UV−C照射時において、発光画像12の絵柄領域20のパターンが視認される。
【0075】
変形例
なお本実施の形態において、第1蛍光インキ13として、蛍光体DE−RBを含むインキが用いられ、第2蛍光インキ14として、蛍光体D−1184を含むインキが用いられる例を示した。すなわち、以下に示す表2における組合せ_1のインキが用いられる例を示した。しかしながら、これに限られることはなく、第1蛍光インキ13および第2蛍光インキ14として、表2における組合せ_2乃至組合せ_6のインキを用いてもよい。組合せ_2乃至組合せ_6の場合であっても、組合せ_1の場合と同様に、第1蛍光インキ13および第2蛍光インキ14は、UV−Aを照射されたとき同色または同色として視認される色を発光するインキとなっている。このため、発光画像12のパターンが容易に解明されるのを防ぐことができ、このことにより、偽造防止媒体10の偽造をより困難にすることができる。
なお表2において、「UV−C」の列における「無色」は、光が発光されないことを示している。また、表2において、「蛍光体」の列に示されている名称は、いずれも根本特殊化学における製品名を表している。
【表2】

【0076】
また本実施の形態において、絵柄領域20が第1蛍光インキ13を用いて形成され、背景領域25が第2蛍光インキ14を用いて形成される例を示した。しかしながら、これに限られることはなく、第2蛍光インキ14を用いて絵柄領域20を形成し、第1蛍光インキ13を用いて背景領域25を形成してもよい。この場合も、絵柄領域20と背景領域25とにより構成される発光画像12のパターンは、UV−Aを照射されたときには視認されず、UV−Cを照射されてはじめて視認される。このことにより、偽造防止媒体10の偽造を困難にすることができる。
【0077】
また本実施の形態において、図7乃至図9Bに示す第1の実施の形態の変形例の場合と同様に、第1蛍光インキ13および第2蛍光インキ14を同一の所定パターンで基材11上に印刷することにより、絵柄領域20および背景領域25を形成してもよい。
【0078】
第3の実施の形態
次に、図12A乃至図14Bを参照して、本発明の第3の実施の形態について説明する。図12A乃至図14Bに示す第3の実施の形態は、第1蛍光インキおよび第2蛍光インキが、UV−Cを照射されたとき同色または同色として視認される色の光を発光するよう選択される点が異なるのみであり、他の構成は、図1乃至図9Bに示す第1の実施の形態と略同一である。図12A乃至図14Bに示す第3の実施の形態において、図1乃至図9Bに示す第1の実施の形態と同一部分には同一符号を付して詳細な説明は省略する。
【0079】
蛍光インキ
はじめに図12A乃至図13を参照して、本実施の形態における第1蛍光インキ13および第2蛍光インキ14について詳細に説明する。図12Aは、第1蛍光インキ13の蛍光発光スペクトルを示す図であり、図12Bは、第2蛍光インキ14の蛍光発光スペクトルを示す図である。図13は、特定の波長領域内の光が照射された場合に第1蛍光インキ13および第2蛍光インキ14から発光される光の色度をXYZ表色系で示すxy色度図である。
【0080】
(第1蛍光インキ)
はじめに第1蛍光インキ13について説明する。図12Aにおいて、一点鎖線は、UV−A(第2波長領域内の不可視光)を照射されたときの第1蛍光インキ13の蛍光発光スペクトルを示しており、実線は、UV−C(第1波長領域内の不可視光)を照射されたときの第1蛍光インキ13の蛍光発光スペクトルを示している。なお図12Aに示す各蛍光発光スペクトルは、最大のピークにおけるピーク強度が1となるよう規格化されている。
【0081】
図12Aに示すように、第1蛍光インキ13は、UV−Cを照射されたとき、ピーク波長λ1Cが約525nmである緑色(第1色)の光を発し、UV−Aを照射されたとき、ピーク波長λ1Aが約445nmである青色(第2色)の光を発する。
なおUV−C照射時には、図12Aに示すように約445nmの波長の光も発光される。しかしながら、約445nmの波長の光は、ピーク波長λ1Cが約525nmである光に比べて強度が小さいため、UV−C照射時、第1蛍光インキ13からの光は緑色光として視認される。同様に、UV−A照射時、図12Aに示すように約525nmの波長の光も発光されるが、その強度が小さいため、第1蛍光インキ13からの光は青色光として視認される。
【0082】
(第2蛍光インキ)
次に第2蛍光インキ14について説明する。図12Bにおいて、一点鎖線は、UV−Aを照射されたときの第2蛍光インキ14の蛍光発光スペクトルを示しており、実線は、UV−Cを照射されたときの第2蛍光インキ14の蛍光発光スペクトルを示している。図4Aの場合と同様に、図4Bに示す各蛍光発光スペクトルは、最大のピークにおけるピーク強度が1となるよう規格化されている。
【0083】
図12Bに示すように、第2蛍光インキ14は、UV−Cを照射されたとき、約525nmのピーク波長λ2Cを有する緑色(第1色)の光、または緑色(第1色)と同色として視認される光を発する。また第2蛍光インキ14は、UV−Aを照射されたとき、約610nmのピーク波長λ2Aを有する赤色(第3色)の光を発する。
なおUV−C照射時には、図12Bに示すように約610nmの波長の光も発光される。しかしながら、約610nmの波長の光は、ピーク波長λ2Cが約525nmである光に比べて強度が小さいため、UV−C照射時、第2蛍光インキ14からの光は緑色光として視認される。
【0084】
次に図13を参照して、UV−AまたはUV−C照射時に第1蛍光インキ13または第2蛍光インキ14から発せられる光の色についてより詳細に説明する。図13に示す符号において、白抜きの四角または三角は、UV−A照射時に第1蛍光インキ13または第2蛍光インキ14から発せられる光の色度をそれぞれ示している。また、黒塗りの四角または三角は、UV−C照射時に第1蛍光インキ13または第2蛍光インキ14から発せられる光の色度をそれぞれ示している。
【0085】
上述の緑色(第1色)は、図13において黒塗りの四角で示される色度に対応している。また、上述の青色(第2色)は、図13において白抜きの四角で示される色度に対応しており、上述の赤色(第3色)は、図13において白抜きの三角で示される色度に対応している。
【0086】
図13に示すように、xy色度図において、UV−C照射時に第1蛍光インキ13から発せられる光の色度と、UV−C照射時に第2蛍光インキ14から発せられる光の色度とは近接している。このため上述のように、UV−Cを照射されたときに第2蛍光インキ14から発せられる光は、UV−C照射時に第1蛍光インキ13から発せられる光と同色の光として視認される。このため、第1蛍光インキ13を用いて形成された絵柄領域20と、第2蛍光インキ14を用いて形成された背景領域25とは、UV−C照射時、同色の領域として視認される。従って後述するように、UV−C照射時には、発光画像12全体が単一色(緑色)の画像として視認され、このため、絵柄領域20のパターンは現れない。
【0087】
また図13に示すように、xy色度図において、UV−A照射時に第1蛍光インキ13から発せられる光の色度と、UV−C照射時に第2蛍光インキ14から発せられる光の色度は大きく離れている。このため、UV−Aを照射されたときに第2蛍光インキ14から発せられる光は、UV−A照射時に第1蛍光インキ13から発せられる光と異色の光として視認される。このため、第1蛍光インキ13を用いて形成された絵柄領域20と、第2蛍光インキ14を用いて形成された背景領域25とは、UV−A照射時、異色の領域として視認される。従って後述するように、UV−A照射時には、絵柄領域20のパターンが視認される。
【0088】
次に、このような構成からなる本実施の形態の作用について説明する。ここでは、はじめに、偽造防止媒体10を作製する方法について説明する。次に、偽造防止媒体10からなる有価証券が正規のものであるかどうかを検査する方法について説明する。
【0089】
偽造防止媒体の作製方法
はじめに基材11を準備する。基材11としては、例えば、厚み188μmの白色のポリエチレンテレフタレートからなる基材が用いられる。次に、第1蛍光インキ13および第2蛍光インキ14を用いて、基材11上に、絵柄領域20および背景領域25からなる発光画像を形成する。
【0090】
この際、第1蛍光インキ13および第2蛍光インキ14としては、例えば、所定の蛍光特性を有する二色性蛍光体25重量%に、マイクロシリカ8重量%、有機ベントナイト2重量%、アルキッド樹脂50重量%およびアルキルベンゼン系溶剤15重量%を加えてオフセットインキ化されたインキがそれぞれ用いられる。このうち第1蛍光インキ13用の二色性蛍光体(第1蛍光体)としては、例えば、波長254nmの紫外線により励起されて緑色光を発光し、波長365nmの紫外線により励起されて青色光を発光する蛍光体DE−GB(根本特殊化学製)が用いられる。また第2蛍光インキ14用の二色性蛍光体(第2蛍光体)としては、例えば、波長254nmの紫外線により励起されて緑色光を発光し、波長365nmの紫外線により励起されて赤色光を発光する蛍光体DE−GR(根本特殊化学製)が用いられる。なお、波長254nmの紫外線照射時に第1蛍光インキ13から発せられる緑色光と第2蛍光インキ14から発せられる緑色光との間の色差ΔEabが10以下、好ましくは3以下となるよう、インキ13,14の二色性蛍光体がそれぞれ選択されている。
【0091】
次に、オーバーコートインキを用いて、絵柄領域20の第1蛍光インキ13および背景領域25の第2蛍光インキ14上に、例えば、厚み2μmのオーバーコート層30を形成する。このオーバーコートインキは、第1の実施の形態におけるオーバーコートインキと同一であるので、詳細な説明は省略する。
【0092】
確認方法
次に、図14Aおよび図14Bを参照して、偽造防止媒体10からなる有価証券が正規のものであるかどうかを検査(確認)する方法について説明する。
【0093】
(UV−C照射時)
図14Aは、UV−C照射時の偽造防止媒体10の発光画像12を示す平面図である。絵柄領域20を形成する第1蛍光インキ13は蛍光体DE−GBを含んでおり、このため、第1蛍光インキ13は緑色光を発光する。従って、絵柄領域20が緑色部分22cとして視認される。一方、背景領域25を形成する第2蛍光インキ14は蛍光体DE−GRを含んでおり、このため、第2蛍光インキ14は緑色光を発光する。従って、背景領域25も緑色部分27cとして視認される。また、前述のように、絵柄領域20の第1蛍光インキ13と背景領域25の第2蛍光インキ14との間に厚みや表面の粗さの違いが存在していても、オーバーコート層30がこれらを打ち消すので、緑色部分22cと緑色部分27cとが同色として視認される。このように、UV−C照射時において、絵柄領域20および背景領域25は、同色の領域として視認される。従って、UV−C照射時において、発光画像12の絵柄領域20のパターンは現れない。
【0094】
(UV−A照射時)
図14Bは、UV−A照射時の偽造防止媒体10の発光画像12を示す平面図である。絵柄領域20を形成する第1蛍光インキ13は蛍光体DE−GBを含んでおり、このため、第1蛍光インキ13は青色光を発光する。従って、絵柄領域20が青色部分22bとして視認される。一方、背景領域25を形成する第2蛍光インキ14は蛍光体DE−GRを含んでおり、このため、第2蛍光インキ14は赤色光を発光する。従って、背景領域25は赤色部分27bとして視認される。このように、UV−A照射時において、絵柄領域20および背景領域25は、異なった色の領域として視認される。従って、UV−A照射時において、発光画像12の絵柄領域20のパターンが視認される。
【0095】
このように上記第1から第3の各実施の形態によれば、偽造防止媒体10は、基材11と、第1蛍光体を含む第1蛍光インキ13を用いて基材11上に形成された絵柄領域20と、絵柄領域20に隣接するよう、第2蛍光体を含む第2蛍光インキ14を用いて基材11上に形成された背景領域25と、絵柄領域20の第1蛍光体および背景領域25の第2蛍光体上に形成されたオーバーコート層30と、を備えている。オーバーコート層30は、UV−AとUV−Cを透過する。第1および第2の実施の形態においては、このうち第1蛍光インキ13の第1蛍光体は、UV−Aを照射されたとき、青色(第1色)の光を発光し、UV−Cを照射されたとき、赤色(第2色)の光を発光する蛍光体DE−RBからなっている。一方、第1の実施の形態においては、第2蛍光インキ14の第2蛍光体は、UV−Aを照射されたとき、青色(第1色)または青色(第1色)と同色として視認される色の光を発光し、UV−Cを照射されたとき、緑色(第3色)の光を発光する蛍光体DE−GBからなっている。また、第2の実施の形態においては、第2蛍光インキ14の第2蛍光体は、UV−Aを照射されたとき、青色(第1色)または青色(第1色)と同色として視認される色の光を発光し、UV−Cを照射されたとき、光を発光しない蛍光体D−1184からなっている。また、第3の実施の形態においては、第1蛍光インキ13の第1蛍光体は、UV−Cを照射されたとき、緑色(第1色)の光を発光し、UV−Aを照射されたとき、青色(第2色)の光を発光する蛍光体DE−GBからなっている。一方、第2蛍光インキ14の第2蛍光体は、UV−Cを照射されたとき、緑色(第1色)または緑色(第1色)と同色として視認される色の光を発光し、UV−Aを照射されたとき、赤色(第3色)の光を発光する蛍光体DE−GRからなっている。このため、上記第1及び第2の実施の形態によれば、絵柄領域20と背景領域25とは、UV−Aを照射されたときには判別されず、UV−Cを照射されてはじめて判別される。すなわち、絵柄領域20のパターンは、UV−Aを照射されたときには視認されず、UV−Cを照射されてはじめて視認される。また、上記第3の実施の形態によれば、絵柄領域20と背景領域25とは、UV−Cを照射されたときには判別されず、UV−Aを照射されてはじめて判別される。すなわち、絵柄領域20のパターンは、UV−Cを照射されたときには視認されず、UV−Aを照射されてはじめて視認される。
このように、二色性蛍光体を含むインキを用いて絵柄領域20および背景領域25を形成することにより、単色性蛍光体を含むインキが用いられる場合に比べて、偽造防止媒体10の偽造を困難にすることができる。また、肉眼によって、発光画像12が正規のものかどうかを簡易かつ迅速に判別することが可能となる。
また、第1蛍光インキ13の第1蛍光体および第2蛍光インキ14の第2蛍光体を、UV−A(第1及び第2の実施の形態)又はUV−C(第3の実施の形態)を照射されたとき同色または同色として視認される色を発光するよう選択することにより、発光画像12のパターンが容易に解明されるのを防ぐことができる。このことにより、偽造防止媒体10の偽造をより困難にすることができる。
さらに、発光画像12の絵柄領域20と背景領域25との間に厚みや表面の粗さの違いが存在していても、オーバーコート層30がこれらを打ち消すので、UV−A(第1及び第2の実施の形態)又はUV−C(第3の実施の形態)を照射されたとき、絵柄領域20と背景領域25とは同色として視認される。このことにより、発光画像12のパターンが容易に解明されるのをさらに強固に防ぐことができる。よって、偽造防止媒体10の偽造をより一層困難にすることができる。
【0096】
変形例
なお本実施の形態において、第1蛍光インキ13として、蛍光体DE−GBを含むインキが用いられ、第2蛍光インキ14として、蛍光体DE−GRを含むインキが用いられる例を示した。すなわち、以下に示す表3における組合せ_1のインキが用いられる例を示した。しかしながら、これに限られることはなく、第1蛍光インキ13および第2蛍光インキ14として、表3における組合せ_2または組合せ_3のインキを用いてもよい。組合せ_2または組合せ_3の場合であっても、組合せ_1の場合と同様に、第1蛍光インキ13および第2蛍光インキ14は、UV−Aを照射されたとき同色または同色として視認される色を発光するインキとなっている。このため、発光画像12のパターンが容易に解明されるのを防ぐことができ、このことにより、偽造防止媒体10の偽造をより困難にすることができる。
なお表3において、「蛍光体」の列に示されている名称は、いずれも根本特殊化学における製品名を表している。
【表3】

【0097】
その他の変形例
また本実施の形態において、二色性蛍光体から第2蛍光インキ14が構成される例を示した。しかしながら、これに限られることはなく、図10乃至図11Bに示す第2の実施の形態の場合と同様に、第2蛍光インキ14が、単色性蛍光体から構成されていてもよい。この場合の第1蛍光インキ13および第2蛍光インキ14の組合せが特に限られることはなく、以下の表4に示すように、様々な組合せが適宜選択され得る。
なお表4において、「蛍光体」の列に示されている名称は、いずれも根本特殊化学における製品名を表している。
【表4】

【0098】
また本実施の形態において、絵柄領域20が第1蛍光インキ13を用いて形成され、背景領域25が第2蛍光インキ14を用いて形成される例を示した。しかしながら、これに限られることはなく、第2蛍光インキ14を用いて絵柄領域20を形成し、第1蛍光インキ13を用いて背景領域25を形成してもよい。この場合も、絵柄領域20と背景領域25とにより構成される発光画像12のパターンは、UV−Cを照射されたときには視認されず、UV−Aを照射されてはじめて視認される。このことにより、偽造防止媒体10の偽造を困難にすることができる。
【0099】
また本実施の形態において、図7乃至図9Bに示す第1の実施の形態の変形例の場合と同様に、第1蛍光インキ13および第2蛍光インキ14を同一の所定パターンで基材11上に印刷することにより、絵柄領域20および背景領域25を形成してもよい。
【0100】
次に、第4から第6の実施の形態として、発光画像がマイクロ文字により形成されている例について説明する。
【0101】
第4の実施の形態
以下、図15乃至図17Bを参照して、本発明の第4の実施の形態について説明する。図15乃至図17Bに示す第4の実施の形態は、発光画像がマイクロ文字により構成されている点が異なるのみであり、他の構成は、図1乃至図9Bに示す第1の実施の形態と略同一である。第1蛍光インキおよび第2蛍光インキは、第1の実施の形態の第1蛍光インキおよび第2蛍光インキと同一である。図15乃至図17Bに示す第4の実施の形態において、図1乃至図9Bに示す第1の実施の形態と同一部分には同一符号を付して詳細な説明は省略する。
【0102】
発光画像
まず、図15および図16を参照して、発光画像12について詳細に説明する。図15は、可視光下での発光画像12を拡大して示す平面図であり、図16は、図15に示す発光画像12のA−A線に沿った断面図である。
【0103】
発光画像12は、複数の第1絵柄要素200と、複数の第2絵柄要素250と、を有する。図15に示す例において、第1絵柄要素200及び第2絵柄要素250は、それぞれ「D」、「N」及び「P」というマイクロ文字を構成している。これらのマイクロ文字の組「DNP」がx方向に10組並んで、マイクロ文字列mを形成している。マイクロ文字列mは、y方向に12個並んでいる。第1絵柄要素200はマイクロ文字列上の潜像を形成している。ここでは、潜像は「A」という文字である。
複数のマイクロ文字列mにおける1つのマイクロ文字の大きさは、300μm角以下であることが好ましく、ここでは、例えば200μm角である。複数のマイクロ文字列mにおけるx方向に隣り合うマイクロ文字の間隔d1と、y方向に隣り合うマイクロ文字の間隔d2とは、それぞれ100μm以下であることが好ましい。ここでは、例えば、間隔d1は50μmであり、間隔d2は100μmである。
ここで、人間の目の裸眼における分解能は、視力と対象物までの距離により異なるが、例えば視力1.5の人間が明視距離250mmにおいて識別できる解像限界は、
250*tan(1/1.5/60)*2 = 0.1 (mm)
となる。
ここでいう解像限界とは、隣り合う2つの点を、2つの点として識別できる距離をいう。
文字の大きさを300μm角以下とした場合、多くの文字において文字を構成する線の間隔は100μm程度となり、通常肉眼では文字として識別することができない。
また、文字の間隔を100μm以下とした場合、隣り合う文字を異なる文字として識別することができない。
【0104】
図16に示すように、発光画像12の第1絵柄要素200および第2絵柄要素250は、基材11上に第1蛍光インキ13および第2蛍光インキ14を印刷することにより形成されている。
オーバーコート層30は、基材11、第1絵柄要素200および第2絵柄要素250上に、オーバーコートインキを、例えばスクリーン印刷することにより形成されている。オーバーコート層30は、表面がほぼ平坦に形成されている。
【0105】
第1蛍光インキ13、第2蛍光インキ14及びオーバーコート層30の厚みは、第1の実施の形態と同様である。第4から第6の実施の形態において、オーバーコート層30の厚みは、第1絵柄要素200および第2絵柄要素250上部における厚みを表す。
【0106】
前述のように、第1蛍光インキ13および第2蛍光インキ14は、第1の実施の形態で説明した第1蛍光インキ13および第2蛍光インキ14と同一である。また、オーバーコート層30は、ほぼ無色透明である。
従って、可視光下で発光画像12を見た場合、図15に示すように、第1絵柄要素200として白色第1絵柄要素21aが視認され、第2絵柄要素250として白色第2絵柄要素26aが視認される。また上述のように、本実施の形態における基材11は、白色のポリエチレンテレフタレートから形成されている。このため、可視光下において、基材11と、発光画像12の第1絵柄要素200および第2絵柄要素250とは全て白色のものとして視認される。従って、可視光下において発光画像12の第1絵柄要素200の潜像(パターン)が現れることはない。このことにより、発光画像12を有する偽造防止媒体10が容易に偽造されるのが防がれている。
なお、図15において、各第1絵柄要素200を示す線150a、各第2絵柄要素250を示す線150b、および、発光画像12を示す線150cは、便宜上描かれているものである。可視光下において、線150a、線150bまたは線150cは実際には視認されない。
【0107】
次に、このような構成からなる本実施の形態の作用について説明する。ここでは、はじめに、偽造防止媒体10を作製する方法について説明する。次に、偽造防止媒体10からなる有価証券が正規のものであるかどうかを検査する方法について説明する。
【0108】
偽造防止媒体の作製方法
はじめに基材11を準備する。基材11としては、例えば、厚み188μmの白色のポリエチレンテレフタレートからなる基材が用いられる。次に、第1蛍光インキ13および第2蛍光インキ14を用いて、基材11上に、第1絵柄要素200および第2絵柄要素250からなる発光画像を形成する。
【0109】
この際、第1蛍光インキ13および第2蛍光インキ14としては、前述のように、第1の実施の形態の第1蛍光インキ13および第2蛍光インキ14が用いられる。
【0110】
次に、オーバーコートインキを用いて、基材11、第1絵柄要素200および第2絵柄要素250上に、例えば、厚み2μmのオーバーコート層30をスクリーン印刷により形成する。この際、オーバーコートインキとしては、第1の実施の形態のオーバーコートインキが用いられる。
【0111】
確認方法
次に、図15、図17Aおよび図17Bを参照して、偽造防止媒体10からなる有価証券が正規のものであるかどうかを検査(確認)する方法について説明する。
【0112】
(可視光照射時)
はじめに、可視光下での偽造防止媒体10を観察する。この場合、上述のように、基材11、発光画像12の第1絵柄要素200および第2絵柄要素250はそれぞれ白色のものとして視認される(図15参照)。このため、可視光下においては、発光画像12の第1絵柄要素200の潜像は現れない。
【0113】
(UV−A照射時)
次に、UV−A照射時の偽造防止媒体10を観察する。照射されるUV−Aとしては、例えば、波長365nmの紫外線が用いられる。UV−Aは、オーバーコート層30を透過して、第1絵柄要素200を形成する第1蛍光インキ13と、第2絵柄要素250を形成する第2蛍光インキ14とに到達する。
【0114】
図17Aは、UV−A照射時の偽造防止媒体10の発光画像12を示す平面図である。第1絵柄要素200を形成する第1蛍光インキ13は蛍光体DE−RBを含んでおり、このため、第1蛍光インキ13は青色光を発光する。従って、第1絵柄要素200が青色部分21bとして視認される。一方、第2絵柄要素250を形成する第2蛍光インキ14は蛍光体DE−GBを含んでおり、このため、第2蛍光インキ14は青色光を発光する。従って、第2絵柄要素250も青色部分26bとして視認される。ここで、第1絵柄要素200の第1蛍光インキ13と第2絵柄要素250の第2蛍光インキ14との間に厚みや表面の粗さの違いが存在していても、オーバーコート層30がこれらを打ち消すので、青色部分21bと青色部分26bとが同色として視認される。このように、UV−A照射時において、第1絵柄要素200および第2絵柄要素250は、同色のマイクロ文字として視認される。従って、UV−A照射時において、発光画像12の第1絵柄要素200の潜像はマイクロ文字列m上で埋没していて現れない。
【0115】
(UV−C照射時)
次に、UV−C照射時の偽造防止媒体10を観察する。照射されるUV−Cとしては、例えば、波長254nmの紫外線が用いられる。UV−Cは、オーバーコート層30を透過して、第1絵柄要素200を形成する第1蛍光インキ13と、第2絵柄要素250を形成する第2蛍光インキ14とに到達する。
【0116】
図17Bは、UV−C照射時の偽造防止媒体10の発光画像12を示す平面図である。第1絵柄要素200を形成する第1蛍光インキ13は蛍光体DE−RBを含んでおり、このため、第1蛍光インキ13は赤色光を発光する。従って、第1絵柄要素200が赤色部分21cとして視認される。一方、第2絵柄要素250を形成する第2蛍光インキ14は蛍光体DE−GBを含んでおり、このため、第2蛍光インキ14は緑色光を発光する。従って、第2絵柄要素250は緑色部分26cとして視認される。このように、UV−C照射時において、第1絵柄要素200および第2絵柄要素250は、異なった色のマイクロ文字として視認される。従って、UV−C照射時において、発光画像12の第1絵柄要素200からなる、マイクロ文字列m上の潜像が発現して視認される。前述のように、ここでは、「A」という文字の潜像が視認される。
【0117】
可視光、UV−AまたはUV−Cが照射された場合に第1絵柄要素200および第2絵柄要素250の色が上述のように変化するのを検査することにより、偽造防止媒体10からなる有価証券が正規のものであることが確認される。
【0118】
変形例
なお本実施の形態において、1つのマイクロ文字は第1絵柄要素200又は第2絵柄要素250のいずれかで構成されている例を示した。しかしながら、これに限られることはなく、1つのマイクロ文字は第1絵柄要素200及び第2絵柄要素250の両方を含んでいても良い。以下、図18A乃至図19Bを参照して、1つのマイクロ文字が第1絵柄要素200及び第2絵柄要素250を含んでいる例について説明する。
【0119】
図18Aは、本変形例において、可視光下における偽造防止媒体10の発光画像12を示す平面図であり、図18Bは、図18Aに示す発光画像12のB−B線に沿った断面図である。図18Aおよび図18Bに示すように、本変形例においては、複数のマイクロ文字の一部について、1つのマイクロ文字が第1絵柄要素200及び第2絵柄要素250を含んでいる。オーバーコート層30は、基材11、第1絵柄要素200および第2絵柄要素250上に、オーバーコートインキにより形成されている。
【0120】
次に、図18A、図19Aおよび図19Bを参照して、本変形例において、偽造防止媒体10からなる有価証券が正規のものであるかどうかを検査する方法について説明する。
【0121】
(可視光照射時)
可視光下においては、図18Aに示すように、第1絵柄要素200および第2絵柄要素250はそれぞれ、白色部分21a,26aから形成されている。このため、可視光下においては、発光画像12の第1絵柄要素200の潜像は現れない。
【0122】
(UV−A照射時)
図19Aは、UV−A照射時の偽造防止媒体10の発光画像12を示す平面図である。第1絵柄要素200および第2絵柄要素250はそれぞれ、青色部分21b,26bから形成されている。ここで、第1絵柄要素200と第2絵柄要素250との間に厚みや表面の粗さの違いが存在していても、オーバーコート層30がこれらを打ち消すので、青色部分21bと青色部分26bとが同色として視認される。このため、UV−A照射時において、発光画像12の第1絵柄要素200の潜像は現れない。
【0123】
(UV−C照射時)
図19Bは、UV−C照射時の偽造防止媒体10の発光画像12を示す平面図である。第1絵柄要素200および第2絵柄要素250はそれぞれ、赤色部分21cおよび緑色部分26cから形成されている。このため、UV−C照射時において、発光画像12の第1絵柄要素200の潜像が視認される。
【0124】
本変形例によれば、複数のマイクロ文字の一部について、1つのマイクロ文字が第1絵柄要素200及び第2絵柄要素250を含むようにしたので、UV−C照射時に、第4の実施の形態よりも輪郭が滑らかな第1絵柄要素200の潜像を視認することができる。これにより、UV−C照射時に、より容易に潜像の形状を認識できる。
また、第4の実施の形態と同様の効果も得られる。
【0125】
その他の変形例
また本実施の形態において、第1蛍光インキ13として、蛍光体DE−RBを含むインキが用いられ、第2蛍光インキ14として、蛍光体DE−GBを含むインキが用いられる例を示した。すなわち、第1の実施の形態に示した表1における組合せ_1のインキが用いられる例を示した。しかしながら、これに限られることはなく、第1蛍光インキ13および第2蛍光インキ14として、表1における組合せ_2または組合せ_3のインキを用いてもよい。組合せ_2または組合せ_3の場合であっても、組合せ_1の場合と同様に、第1蛍光インキ13および第2蛍光インキ14は、UV−Aを照射されたとき同色または同色として視認される色を発光するインキとなっている。このため、発光画像12の潜像が容易に解明されるのを防ぐことができ、このことにより、偽造防止媒体10の偽造をより困難にすることができる。
【0126】
また本実施の形態において、第1絵柄要素200が第1蛍光インキ13を用いて形成され、第2絵柄要素250が第2蛍光インキ14を用いて形成される例を示した。しかしながら、これに限られることはなく、第2蛍光インキ14を用いて第1絵柄要素200を形成し、第1蛍光インキ13を用いて第2絵柄要素250を形成してもよい。この場合も、第1絵柄要素200の潜像は、UV−Aを照射されたときには視認されず、UV−Cを照射されてはじめて視認される。このことにより、偽造防止媒体10の偽造を困難にすることができる。
【0127】
第5の実施の形態
次に、図20A及び図20Bを参照して、本発明の第5の実施の形態について説明する。図20A及び図20Bに示す第5の実施の形態は、UV−Cを照射されたとき光を発光しないインキから第2蛍光インキが構成される点が異なるのみであり、他の構成は、図15乃至図17Bに示す第4の実施の形態と略同一である。第1蛍光インキおよび第2蛍光インキは、第2の実施の形態の第1蛍光インキおよび第2蛍光インキと同一である。図20A及び図20Bに示す第5の実施の形態において、図15乃至図17Bに示す第4の実施の形態と同一部分には同一符号を付して詳細な説明は省略する。
【0128】
次に、本実施の形態の作用について説明する。ここでは、はじめに、偽造防止媒体10を作製する方法について説明する。次に、偽造防止媒体10からなる有価証券が正規のものであるかどうかを検査する方法について説明する。
【0129】
偽造防止媒体の作製方法
はじめに基材11を準備する。基材11としては、例えば、厚み188μmの白色のポリエチレンテレフタレートからなる基材が用いられる。次に、第1蛍光インキ13および第2蛍光インキ14を用いて、基材11上に、第1絵柄要素200および第2絵柄要素250からなる発光画像を形成する。
【0130】
この際、第1蛍光インキ13および第2蛍光インキ14としては、前述のように、第2の実施の形態の第1蛍光インキ13および第2蛍光インキ14が用いられる。
【0131】
次に、オーバーコートインキを用いて、基材11、第1絵柄要素200および第2絵柄要素250上に、例えば、厚み2μmのオーバーコート層30を形成する。この際、オーバーコートインキとしては、第1の実施の形態のオーバーコートインキが用いられる。
【0132】
確認方法
次に、図20Aおよび図20Bを参照して、偽造防止媒体10からなる有価証券が正規のものであるかどうかを検査(確認)する方法について説明する。
【0133】
(UV−A照射時)
図20Aは、UV−A照射時の偽造防止媒体10の発光画像12を示す平面図である。第1絵柄要素200を形成する第1蛍光インキ13は蛍光体DE−RBを含んでおり、このため、第1蛍光インキ13は青色光を発光する。従って、第1絵柄要素200が青色部分21bとして視認される。一方、第2絵柄要素250を形成する第2蛍光インキ14は蛍光体D−1184を含んでおり、このため、第2蛍光インキ14は青色光を発光する。従って、第2絵柄要素250も青色部分26bとして視認される。また、前述のように、第1絵柄要素200と第2絵柄要素250との間に厚みや表面の粗さの違いが存在していても、オーバーコート層30がこれらを打ち消すので、青色部分21bと青色部分26bとが同色として視認される。このように、UV−A照射時において、第1絵柄要素200および第2絵柄要素250は、同色のマイクロ文字として視認される。従って、UV−A照射時において、発光画像12の第1絵柄要素200の潜像は現れない。
【0134】
(UV−C照射時)
図20Bは、UV−C照射時の偽造防止媒体10の発光画像12を示す平面図である。第1絵柄要素200を形成する第1蛍光インキ13は蛍光体DE−RBを含んでおり、このため、第1蛍光インキ13は赤色光を発光する。従って、第1絵柄要素200が赤色部分21cとして視認される。一方、第2絵柄要素250を形成する第2蛍光インキ14は、UV−C照射時に光を発光しないインキからなっており、従って、第2絵柄要素250は無色部分26dとして視認される。従って、UV−C照射時において、発光画像12の第1絵柄要素200の潜像が視認される。
なお、図20Bにおいては、便宜上、第2絵柄要素250のマイクロ文字「D」、「N」及び「P」を表す線が表示されているが、実際には視認されない。
【0135】
変形例
なお本実施の形態において、第1蛍光インキ13として、蛍光体DE−RBを含むインキが用いられ、第2蛍光インキ14として、蛍光体D−1184を含むインキが用いられる例を示した。すなわち、第2の実施の形態に示した表2における組合せ_1のインキが用いられる例を示した。しかしながら、これに限られることはなく、第1蛍光インキ13および第2蛍光インキ14として、表2における組合せ_2乃至組合せ_6のインキを用いてもよい。組合せ_2乃至組合せ_6の場合であっても、組合せ_1の場合と同様に、第1蛍光インキ13および第2蛍光インキ14は、UV−Aを照射されたとき同色または同色として視認される色を発光するインキとなっている。このため、発光画像12の潜像が容易に解明されるのを防ぐことができ、このことにより、偽造防止媒体10の偽造をより困難にすることができる。
【0136】
また本実施の形態において、第1絵柄要素200が第1蛍光インキ13を用いて形成され、第2絵柄要素250が第2蛍光インキ14を用いて形成される例を示した。しかしながら、これに限られることはなく、第2蛍光インキ14を用いて第1絵柄要素200を形成し、第1蛍光インキ13を用いて第2絵柄要素250を形成してもよい。この場合も、第1絵柄要素200と第2絵柄要素250とにより構成される発光画像12の潜像は、UV−Aを照射されたときには視認されず、UV−Cを照射されてはじめて視認される。このことにより、偽造防止媒体10の偽造を困難にすることができる。
【0137】
第6の実施の形態
次に、図21A及び図21Bを参照して、本発明の第6の実施の形態について説明する。図21A及び図21Bに示す第6の実施の形態は、第1蛍光インキおよび第2蛍光インキが、UV−Cを照射されたとき同色または同色として視認される色の光を発光するよう選択される点が異なるのみであり、他の構成は、図15乃至図17Bに示す第4の実施の形態と略同一である。第1蛍光インキおよび第2蛍光インキは、第3の実施の形態の第1蛍光インキおよび第2蛍光インキと同一である。図21A及び図21Bに示す第6の実施の形態において、図15乃至図17Bに示す第4の実施の形態と同一部分には同一符号を付して詳細な説明は省略する。
【0138】
本実施の形態の作用について説明する。ここでは、はじめに、偽造防止媒体10を作製する方法について説明する。次に、偽造防止媒体10からなる有価証券が正規のものであるかどうかを検査する方法について説明する。
【0139】
偽造防止媒体の作製方法
はじめに基材11を準備する。基材11としては、例えば、厚み188μmの白色のポリエチレンテレフタレートからなる基材が用いられる。次に、第1蛍光インキ13および第2蛍光インキ14を用いて、基材11上に、第1絵柄要素200および第2絵柄要素250からなる発光画像を形成する。
【0140】
この際、第1蛍光インキ13および第2蛍光インキ14としては、前述のように、第3の実施の形態の第1蛍光インキ13および第2蛍光インキ14が用いられる。
【0141】
次に、オーバーコートインキを用いて、基材11、第1絵柄要素200および第2絵柄要素250上に、例えば、厚み2μmのオーバーコート層30を形成する。この際、オーバーコートインキとしては、第1の実施の形態のオーバーコートインキが用いられる。
【0142】
確認方法
次に、図21Aおよび図21Bを参照して、偽造防止媒体10からなる有価証券が正規のものであるかどうかを検査(確認)する方法について説明する。
【0143】
(UV−C照射時)
図21Aは、UV−C照射時の偽造防止媒体10の発光画像12を示す平面図である。第1絵柄要素200を形成する第1蛍光インキ13は蛍光体DE−GBを含んでおり、このため、第1蛍光インキ13は緑色光を発光する。従って、第1絵柄要素200が緑色部分22cとして視認される。一方、第2絵柄要素250を形成する第2蛍光インキ14は蛍光体DE−GRを含んでおり、このため、第2蛍光インキ14は緑色光を発光する。従って、第2絵柄要素250も緑色部分27cとして視認される。また、前述のように、第1絵柄要素200と第2絵柄要素250との間に厚みや表面の粗さの違いが存在していても、オーバーコート層30がこれらを打ち消すので、緑色部分22cと緑色部分27cとが同色として視認される。このように、UV−C照射時において、第1絵柄要素200および第2絵柄要素250は、同色のマイクロ文字として視認される。従って、UV−C照射時において、発光画像12の第1絵柄要素200の潜像は現れない。
【0144】
(UV−A照射時)
図21Bは、UV−A照射時の偽造防止媒体10の発光画像12を示す平面図である。第1絵柄要素200を形成する第1蛍光インキ13は蛍光体DE−GBを含んでおり、このため、第1蛍光インキ13は青色光を発光する。従って、第1絵柄要素200が青色部分22bとして視認される。一方、第2絵柄要素250を形成する第2蛍光インキ14は蛍光体DE−GRを含んでおり、このため、第2蛍光インキ14は赤色光を発光する。従って、第2絵柄要素250は赤色部分27bとして視認される。このように、UV−A照射時において、第1絵柄要素200および第2絵柄要素250は、異なった色のマイクロ文字として視認される。従って、UV−A照射時において、発光画像12の第1絵柄要素200の潜像が視認される。
【0145】
このように上記第4から第6の各実施の形態によれば、偽造防止媒体10は、基材11と、第1蛍光体を含む第1蛍光インキ13を用いて基材11上に形成された複数の第1絵柄要素200と、第2蛍光体を含む第2蛍光インキ14を用いて基材11上に形成された複数の第2絵柄要素250と、基材11、第1絵柄要素200および第2絵柄要素250上に形成されたオーバーコート層30と、を備えている。複数の第1絵柄要素200と複数の第2絵柄要素250は、複数のマイクロ文字「D」、「N」及び「P」を形成している。複数のマイクロ文字は、複数のマイクロ文字列mを形成すると共に、第1絵柄要素200はマイクロ文字列m上の潜像を形成している。オーバーコート層30は、UV−AとUV−Cを透過する。第4および第5の実施の形態では、このうち第1蛍光インキ13の第1蛍光体は、UV−Aを照射されたとき、青色(第1色)の光を発光し、UV−Cを照射されたとき、赤色(第2色)の光を発光する蛍光体DE−RBからなっている。一方、第4の実施の形態では、第2蛍光インキ14の第2蛍光体は、UV−Aを照射されたとき、青色(第1色)または青色(第1色)と同色として視認される色の光を発光し、UV−Cを照射されたとき、緑色(第3色)の光を発光する蛍光体DE−GBからなっている。また、第5の実施の形態では、第2蛍光インキ14の第2蛍光体は、UV−Aを照射されたとき、青色(第1色)または青色(第1色)と同色として視認される色の光を発光し、UV−Cを照射されたとき、光を発光しない蛍光体D−1184からなっている。また、第6の実施形態では、第1蛍光インキ13の第1蛍光体は、UV−Cを照射されたとき、緑色(第1色)の光を発光し、UV−Aを照射されたとき、青色(第2色)の光を発光する蛍光体DE−GBからなっている。一方、第2蛍光インキ14の第2蛍光体は、UV−Cを照射されたとき、緑色(第1色)または緑色(第1色)と同色として視認される色の光を発光し、UV−Aを照射されたとき、赤色(第3色)の光を発光する蛍光体DE−GRからなっている。このため、上記第4及び第5の各実施の形態によれば、第1絵柄要素200と第2絵柄要素250とは、UV−Aを照射されたときには判別されず、UV−Cを照射されてはじめて判別される。すなわち、第1絵柄要素200の潜像は、UV−Aを照射されたときにはマイクロ文字列m上で埋没していて視認されず、UV−Cを照射されてはじめてマイクロ文字列m上に発現して視認される。また、上記第6の実施の形態によれば、第1絵柄要素200と第2絵柄要素250とは、UV−Cを照射されたときには判別されず、UV−Aを照射されてはじめて判別される。すなわち、第1絵柄要素200の潜像は、UV−Cを照射されたときにはマイクロ文字列m上で埋没していて視認されず、UV−Aを照射されてはじめてマイクロ文字列m上に発現して視認される。
このように、二色性蛍光体を含むインキを用いて第1絵柄要素200および第2絵柄要素250を形成することにより、単色性蛍光体を含むインキが用いられる場合に比べて、偽造防止媒体10の偽造を困難にすることができる。また、肉眼によって、発光画像12が正規のものかどうかを簡易かつ迅速に判別することが可能となる。
また、第1蛍光インキ13の第1蛍光体および第2蛍光インキ14の第2蛍光体を、UV−A(第4及び第5の実施の形態)又はUV−C(第6の実施の形態)を照射されたとき同色または同色として視認される色を発光するよう選択することにより、発光画像12の潜像が容易に解明されるのを防ぐことができる。このことにより、偽造防止媒体10の偽造をより困難にすることができる。
また、第4及び第5の実施の形態では、UV−Aに比べて光源を準備するのが困難なUV−Cが照射されてはじめて第1絵柄要素200の潜像が現れるよう、第1蛍光インキ13および第2蛍光インキ14の第1蛍光体および第2蛍光体を選択することにより、第1絵柄要素200の潜像が解明されるのをより強固に防ぐことができる。このことにより、偽造防止媒体10の偽造をさらに困難にすることができる。
さらに、上記第4から第6の各実施の形態では、第1絵柄要素200と第2絵柄要素250が複数のマイクロ文字列mを形成するようにしたので、第1絵柄要素200と第2絵柄要素250の面積は、発光画像12の領域の面積に比して狭い。また、第1絵柄要素200及び第2絵柄要素250は、複雑な形状を有している。従って、第1絵柄要素200と第2絵柄要素250との間に微小な色差又は厚みの差が存在していても、UV−A(第4及び第5の実施の形態)又はUV−C(第6の実施の形態)を照射されたときに、第1絵柄要素200の潜像は視認され難い。つまり、発光画像12の潜像が容易に解明されるのを防ぐことができる。このことにより、偽造防止媒体10の偽造をさらに困難にすることができる。
また、上記第4から第6の各実施の形態では、第1絵柄要素200と第2絵柄要素250とが接する部分が無い。つまり、第4及び第5の実施の形態では、UV−A照射時に、第1絵柄要素200の青色部分21bと第2絵柄要素250の青色部分26bとが接する部分が無い。第6の実施の形態では、UV−C照射時に、第1絵柄要素200の緑色部分22cと第2絵柄要素250の緑色部分27cとが接する部分が無い。ここで、仮に第1絵柄要素200と第2絵柄要素250とが接した場合、接する部分において不規則に反射または屈折する光が存在することがある。上記第4から第6の各実施の形態によれば、そのような光に起因して第1絵柄要素200と第2絵柄要素250との間の境界が視認される可能性が無い。このことにより、第1絵柄要素200の潜像が解明されるのをより強固に防ぐことができる。
さらに、第1絵柄要素200と第2絵柄要素250との間に厚みや表面の粗さの違いが存在していても、オーバーコート層30がこれらを打ち消すので、UV−A(第4及び第5の実施の形態)又はUV−C(第6の実施の形態)を照射されたとき、第1絵柄要素200と第2絵柄要素250とは同色として視認される。このことにより、第1絵柄要素200の潜像が容易に解明されるのをさらに強固に防ぐことができる。よって、偽造防止媒体10の偽造をより一層困難にすることができる。
【0146】
変形例
なお本実施の形態において、第1蛍光インキ13として、蛍光体DE−GBを含むインキが用いられ、第2蛍光インキ14として、蛍光体DE−GRを含むインキが用いられる例を示した。すなわち、第3の実施の形態に示した表3における組合せ_1のインキが用いられる例を示した。しかしながら、これに限られることはなく、第1蛍光インキ13および第2蛍光インキ14として、表3における組合せ_2または組合せ_3のインキを用いてもよい。組合せ_2または組合せ_3の場合であっても、組合せ_1の場合と同様に、第1蛍光インキ13および第2蛍光インキ14は、UV−Aを照射されたとき同色または同色として視認される色を発光するインキとなっている。このため、発光画像12の潜像が容易に解明されるのを防ぐことができ、このことにより、偽造防止媒体10の偽造をより困難にすることができる。
【0147】
その他の変形例
また本実施の形態において、二色性蛍光体から第2蛍光インキ14が構成される例を示した。しかしながら、これに限られることはなく、図20A及び図20Bに示す第5の実施の形態の場合と同様に、第2蛍光インキ14が、単色性蛍光体から構成されていてもよい。この場合の第1蛍光インキ13および第2蛍光インキ14の組合せが特に限られることはなく、第3の実施の形態の表4に示すように、様々な組合せが適宜選択され得る。
【0148】
また本実施の形態において、第1絵柄要素200が第1蛍光インキ13を用いて形成され、第2絵柄要素250が第2蛍光インキ14を用いて形成される例を示した。しかしながら、これに限られることはなく、第2蛍光インキ14を用いて第1絵柄要素200を形成し、第1蛍光インキ13を用いて第2絵柄要素250を形成してもよい。この場合も、第1絵柄要素200と第2絵柄要素250とにより構成される発光画像12の潜像は、UV−Cを照射されたときには視認されず、UV−Aを照射されてはじめて視認される。このことにより、偽造防止媒体10の偽造を困難にすることができる。
【0149】
また上記第1から第6の各実施の形態において、第1蛍光インキ13および第2蛍光インキ14から発光される光の色が、青色、赤色または緑色のいずれかの色である例を示した。しかしながら、これに限られることはなく、第1波長領域内の不可視光を照射されたとき同色として視認され、第2波長領域内の不可視光を照射されたとき異色として視認される様々な組合せのインキをインキ13,14として用いることができる。
【0150】
また上記第1から第6の各実施の形態において、オーバーコート層30は、ほぼ無色透明である例を示した。しかしながら、これに限られることはなく、可視光下と、第1波長領域内の不可視光を照射されたとき、絵柄領域20および背景領域25(第1絵柄要素200および第2絵柄要素250)が同色の領域(マイクロ文字)として視認され、第2波長領域内の不可視光を照射されたとき絵柄領域20および背景領域25(第1絵柄要素200および第2絵柄要素250)が異色の領域(マイクロ文字)として視認されれば、オーバーコート層30は色を有していてもよい。
【0151】
また上記第1から第6の実施の形態において、第2波長領域内の不可視光が照射されたとき、第1蛍光体は、第2色の光を発光し、第2蛍光体は、第3色の光を発光し、または、光を発光せず、このため、第1蛍光体を含む絵柄領域20および第2蛍光体を含む背景領域25(第1蛍光体を含む第1絵柄要素200および第2蛍光体を含む第2絵柄要素250)が、互いに異色の領域(絵柄要素)として視認される例を示した。しかしながら、これに限られることはない。
すなわち、第1波長領域内の不可視光が照射されたとき、第1蛍光体および第2蛍光体が、互いに同色として視認される色の光を発光し、かつ、第2波長領域内の不可視光が照射されたとき、第1蛍光体を含む絵柄領域20および第2蛍光体を含む背景領域25(第1蛍光体を含む第1絵柄要素200および第2蛍光体を含む第2絵柄要素250)が、互いに異色の領域(絵柄要素)として視認される限りにおいて、第1蛍光体の発光色を任意に設定することが可能である。
例えば、第1波長領域内の不可視光が照射されたとき、第1色の光を発光するとともに、第2波長領域内の不可視光が照射されたときにも、第1色または第1色と同色として視認される色の光を発光する第1蛍光体が用いられてもよい。この場合、第1波長領域内の不可視光が照射されたとき、第1蛍光体は、第1色の光を発光し、第2蛍光体は、第1色または第1色と同色として視認される色の光を発光する。このため、絵柄領域20および背景領域25(第1絵柄要素200および第2絵柄要素250)が、互いに同色の領域(絵柄要素)として視認される。一方、第2波長領域内の不可視光が照射されたとき、第1蛍光体は、第1色または第1色と同色として視認される色の光を発光し、前記第2蛍光体は、第3色の光を発光する、または、光を発光しない。このため、絵柄領域20および背景領域25(第1絵柄要素200および第2絵柄要素250)が、互いに異色の領域(絵柄要素)として視認される。従って、上記第1から第3の実施の形態においては、絵柄領域20と背景領域25とにより構成される発光画像のパターンは、第1波長領域内の不可視光を照射されたときには視認されず、第2波長領域内の不可視光を照射されてはじめて視認される。これによって、簡易かつ迅速に発光画像の確認を行うことが可能となる。また、上記第4から第6の実施の形態においては、第1絵柄要素により構成される発光画像の潜像は、第1波長領域内の不可視光を照射されたときにはマイクロ文字列上で埋没していて視認されず、第2波長領域内の不可視光を照射されてはじめてマイクロ文字列上に発現して視認される。これによって、簡易かつ迅速に発光画像の確認を行うことができ、且つ、発光画像のパターンが容易に解明されるのを防ぐことができる。
【0152】
第7の実施の形態
上記各実施形態では、絵柄領域20(第1絵柄要素200)のパターン(潜像)は、UV−A及びUV−Cの一方を照射したときには視認されず、他方を照射されてはじめて視認されるものであったが、UV−A照射、UV−C照射では視認されず、UV−AとUV−Cの同時照射ではじめて視認されるようにすることもできる。
【0153】
このとき、第1蛍光インキ13は、UV−Aを照射されたとき、ピーク波長が約610nmである赤色(第1色)の光を発し、UV−Cを照射されたとき、ピーク波長が約520nmである緑色(第2色)の光を発する。また、第1蛍光インキ13は、UV−AとUV−Cを同時照射された場合、黄色(第5色)の光を発する。第1蛍光インキ13には、例えば、上述の蛍光体DE−GRを用いることができる。
【0154】
また、第2蛍光インキ14は、UV−Aを照射されたとき、ピーク波長(発光波長)が約615nmである赤色(第3色)の光を発し、UV−Cを照射されたとき、ピーク波長が約515nmである緑色(第4色)の光を発する。また、第2蛍光インキ14は、UV−AとUV−Cを同時照射された場合、黄色(第6色)の光を発する。第2蛍光インキ14には、蛍光体DE−GRとの発光波長差が5nm以下である蛍光媒体DE−GR1(根本特殊化学製)を用いることができる。すなわち、蛍光媒体DE−GR1は、短波長側の発光波長がDE−GRより約5nm小さく、長波長側の発光波長がDE−GRより約5nm大きい。
【0155】
ピーク波長が約610nmである赤色(第1色)と、ピーク波長が約615nmである赤色(第3色)は同色として視認される。また、ピーク波長が約520nmである緑色(第2色)と、ピーク波長が約515nmである緑色(第4色)は同色として視認される。
【0156】
一方、UV−AとUV−Cを同時照射された場合に第1蛍光インキ13が発する黄色(第5色)と、第2蛍光インキ14が発する黄色(第6色)との色差ΔEabは約12となり、異色として視認される。
【0157】
第1蛍光インキ13が蛍光媒体DE−GRを含み、第2蛍光インキ14が蛍光媒体DE−GR1を含むため、UV−Aのみを照射する場合、絵柄領域20および背景領域25(第1絵柄要素200および第2絵柄要素250)は、同色(赤色)の領域(マイクロ文字)として視認され、発光画像12の絵柄領域20(第1絵柄要素200)のパターン(潜像)は現れない。UV−Cのみを照射する場合、絵柄領域20および背景領域25(第1絵柄要素200および第2絵柄要素250)は、同色(緑色)の領域(マイクロ文字)として視認され、発光画像12の絵柄領域20(第1絵柄要素200)のパターン(潜像)は現れない。UV−A及びUV−Cを同時照射する場合、絵柄領域20および背景領域25(第1絵柄要素200および第2絵柄要素250)は、互いに異なる黄色の領域(マイクロ文字)として視認され、発光画像12の絵柄領域20(第1絵柄要素200)のパターン(潜像)が視認される。
【0158】
すなわち、第1から第3の実施の形態と同様に発光画像12を絵柄領域20および背景領域25で形成した場合、絵柄領域20のパターンは、UV−Aを照射されたとき、UV−Cを照射されたときには視認されず、UV−A及びUV−Cを同時照射されてはじめて視認される。
また、第4から第6の実施の形態と同様に発光画像12をマイクロ文字で形成した場合、第1絵柄要素200の潜像は、UV−Aを照射されたとき、UV−Cを照射されたときにはマイクロ文字列m上で埋没していて視認されず、UV−A及びUV−Cを同時照射されてはじめてマイクロ文字列m上に発現して視認される。
【0159】
このように、絵柄領域20(第1絵柄要素200)を形成するインキに含まれる二色性蛍光体と、背景領域25(第2絵柄要素250)を形成するインキに含まれる二色性蛍光体とを、発光波長差が5nm以下のものとすることで、偽造防止媒体10の偽造をさらに困難にすることができる。
【0160】
さらに、発光画像12の絵柄領域20と背景領域25(第1絵柄要素200と第2絵柄要素250)との間に厚みや表面の粗さの違いが存在していても、オーバーコート層30がこれらを打ち消すので、UV−Aを照射されたとき、UV−Cを照射されたときに、絵柄領域20と背景領域25(第1絵柄要素200と第2絵柄要素250)は同色として視認される。このことにより、発光画像12のパターン(潜像)が容易に解明されるのをさらに強固に防ぐことができる。よって、偽造防止媒体10の偽造をより一層困難にすることができる。
【0161】
さらに、第4から第6の実施の形態と同様に発光画像12をマイクロ文字で形成した場合、第1絵柄要素200と第2絵柄要素250が複数のマイクロ文字列mを形成するので、第1絵柄要素200と第2絵柄要素250との間に微小な色差又は厚みの差が存在していても、UV−Aを照射されたとき、UV−Cを照射されたときに、第1絵柄要素200の潜像は視認され難い。つまり、発光画像12の潜像が容易に解明されるのを防ぐことができるので、偽造防止媒体10の偽造をさらに困難にすることができる。
【0162】
第1蛍光インキ13に蛍光媒体DE−RBを使用し、第2蛍光インキ14に、蛍光体DE−RBとの発光波長差が5nm以下である蛍光媒体DE−RB1(根本特殊化学製)を使用してもよい。この場合、UV−A照射時は、絵柄領域20および背景領域25(第1絵柄要素200および第2絵柄要素250)が同色(青色)と視認され、絵柄領域20(第1絵柄要素200)のパターン(潜像)は現れない。UV−C照射時は、絵柄領域20および背景領域25(第1絵柄要素200および第2絵柄要素250)が同色(赤色)と視認され、絵柄領域20(第1絵柄要素200)のパターン(潜像)は現れない。UV−A及びUV−Cの同時照射時は、絵柄領域20および背景領域25(第1絵柄要素200および第2絵柄要素250)が互いに異なるマゼンタ色の領域(マイクロ文字)と視認され、絵柄領域20(第1絵柄要素200)のパターン(潜像)が視認される。
【0163】
第1蛍光インキ13に蛍光媒体DE−BGを使用し、第2蛍光インキ14に、蛍光体DE−BGとの発光波長差が5nm以下である蛍光媒体DE−BG1(根本特殊化学製)を使用してもよい。この場合、UV−A照射時は、絵柄領域20および背景領域25(第1絵柄要素200および第2絵柄要素250)が同色(緑色)と視認され、絵柄領域20(第1絵柄要素200)のパターン(潜像)は現れない。UV−C照射時は、絵柄領域20および背景領域25(第1絵柄要素200および第2絵柄要素250)が同色(青色)と視認され、絵柄領域20(第1絵柄要素200)のパターン(潜像)は現れない。UV−A及びUV−Cの同時照射時は、絵柄領域20および背景領域25(第1絵柄要素200および第2絵柄要素250)が互いに異なるシアン色の領域(マイクロ文字)と視認され、絵柄領域20(第1絵柄要素200)のパターン(潜像)が視認される。
【0164】
第8の実施の形態
UV−Aを照射したとき、及びUV−Cを照射したときに、絵柄領域20(第1絵柄要素200)のパターン(潜像)が視認され、UV−AとUV−Cの同時照射で絵柄領域20(第1絵柄要素200)のパターン(潜像)が消失する(視認されない)ようにすることもできる。
【0165】
例えば、第1蛍光インキ13に上述の蛍光体DE−RGを使用し、第2蛍光インキ14に上述の蛍光体DE−GRを使用して偽造防止媒体10を形成する。このような偽造防止媒体10は、可視光下では、全体が白色と視認され、絵柄領域20(第1絵柄要素200)のパターン(潜像)は現れない。
【0166】
この偽造防止媒体10に対して、UV−Aのみを照射すると、絵柄領域20(第1絵柄要素200)を形成する第1蛍光インキ13(蛍光体DE−RG)が緑色光を発光する。一方、背景領域25(第2絵柄要素250)を形成する第2蛍光インキ14(蛍光体DE−GR)は赤色光を発光する。従って、絵柄領域20および背景領域25(第1絵柄要素200及び第2絵柄要素250)は異なった色の領域(マイクロ文字)として視認される。従って、第1から第3の実施の形態と同様に発光画像12を絵柄領域20および背景領域25で形成した場合、UV−A照射時において、発光画像12の絵柄領域20のパターンが視認される。また、第4から第6の実施の形態と同様に発光画像12をマイクロ文字で形成した場合、UV−A照射時において、発光画像12の第1絵柄要素200の潜像がマイクロ文字列m上に発現して視認される。
【0167】
この偽造防止媒体10に対して、UV−Cのみを照射すると、絵柄領域20(第1絵柄要素200)を形成する第1蛍光インキ13(蛍光体DE−RG)が赤色光を発光する。一方、背景領域25(第2絵柄要素250)を形成する第2蛍光インキ14(蛍光体DE−GR)は緑色光を発光する。従って、絵柄領域20および背景領域25(第1絵柄要素200及び第2絵柄要素250)は異なった色の領域(マイクロ文字)として視認される。従って、UV−C照射時において、発光画像12の絵柄領域20(第1絵柄要素200)のパターン(潜像)が視認される。
【0168】
この偽造防止媒体10に対して、UV−A及びUV−Cを同時照射すると、絵柄領域20(第1絵柄要素200)を形成する第1蛍光インキ13(蛍光体DE−RG)が黄色光を発光する。一方、背景領域25(第2絵柄要素250)を形成する第2蛍光インキ14(蛍光体DE−GR)も黄色光を発光する。従って、絵柄領域20および背景領域25(第1絵柄要素200及び第2絵柄要素250)は同じ色の領域(マイクロ文字)として視認される。従って、第1から第3の実施の形態と同様に発光画像12を絵柄領域20および背景領域25で形成した場合、UV−A及びUV−Cの同時照射時において、発光画像12の絵柄領域20のパターンは現れない。また、第4から第6の実施の形態と同様に発光画像12をマイクロ文字で形成した場合、UV−A及びUV−Cの同時照射時において、発光画像12の第1絵柄要素200の潜像はマイクロ文字列m上で埋没していて現れない。
【0169】
このように、UV−A照射時、UV−C照射時、UV−A及びUV−Cの同時照射時の3つの照射パターンの各々で発光画像12が変化し、UV−A及びUV−Cの同時照射時には絵柄領域20(第1絵柄要素200)のパターン(潜像)が現れないとすることで、偽造防止媒体10の偽造をさらに困難にすることができる。
【0170】
さらに、発光画像12の絵柄領域20と背景領域25(第1絵柄要素200と第2絵柄要素250)との間に厚みや表面の粗さの違いが存在していても、オーバーコート層30がこれらを打ち消すので、UV−A及びUV−Cの同時照射時に、絵柄領域20と背景領域25(第1絵柄要素200と第2絵柄要素250)は同色として視認される。このことにより、より確実に、3つの照射パターンの各々で発光画像12が変化するようにできる。よって、偽造防止媒体10の偽造をさらに困難にすることができる。
【0171】
さらに、第4から第6の実施の形態と同様に発光画像12をマイクロ文字で形成した場合、第1絵柄要素200と第2絵柄要素250が複数のマイクロ文字列mを形成するので、第1絵柄要素200と第2絵柄要素250との間に微小な色差又は厚みの差が存在していても、UV−A及びUV−Cの同時照射時に第1絵柄要素200の潜像は視認され難い。このことにより、より確実に、3つの照射パターンの各々で発光画像12が変化するようにできる。よって、偽造防止媒体10の偽造をさらに困難にすることができる。
【0172】
第1蛍光インキ13に蛍光媒体DE−RBを使用し、第2蛍光インキ14に蛍光媒体DE−BRを使用してもよい。この場合、UV−A照射時は、絵柄領域20(第1絵柄要素200)を形成する第1蛍光インキ13(蛍光体DE−RB)が青色光を発光し、背景領域25(第2絵柄要素250)を形成する第2蛍光インキ14(蛍光体DE−BR)は赤色光を発光する。従って、絵柄領域20および背景領域25(第1絵柄要素200及び第2絵柄要素250)は異なった色の領域(マイクロ文字)として視認され、発光画像12の絵柄領域20(第1絵柄要素200)のパターン(潜像)が視認される。UV−C照射時は、絵柄領域20(第1絵柄要素200)を形成する第1蛍光インキ13(蛍光体DE−RB)が赤色光を発光し、背景領域25(第2絵柄要素250)を形成する第2蛍光インキ14(蛍光体DE−BR)は青色光を発光する。従って、絵柄領域20および背景領域25(第1絵柄要素200及び第2絵柄要素250)は異なった色の領域(マイクロ文字)として視認され、発光画像12の絵柄領域20(第1絵柄要素200)のパターン(潜像)が視認される。UV−A及びUV−Cの同時照射時は、絵柄領域20および背景領域25(第1絵柄要素200および第2絵柄要素250)が共にマゼンタ色の同色領域(マイクロ文字)と視認され、絵柄領域20(第1絵柄要素200)のパターン(潜像)は現れない。
【0173】
第1蛍光インキ13に蛍光媒体DE−BGを使用し、第2蛍光インキ14に蛍光媒体DE−GBを使用してもよい。この場合、UV−A照射時は、絵柄領域20(第1絵柄要素200)を形成する第1蛍光インキ13(蛍光体DE−BG)が緑色光を発光し、背景領域25(第2絵柄要素250)を形成する第2蛍光インキ14(蛍光体DE−GB)は青色光を発光する。従って、絵柄領域20および背景領域25(第1絵柄要素200および第2絵柄要素250)は異なった色の領域(マイクロ文字)として視認され、発光画像12の絵柄領域20(第1絵柄要素200)のパターン(潜像)が視認される。UV−C照射時は、絵柄領域20(第1絵柄要素200)を形成する第1蛍光インキ13(蛍光体DE−BG)が青色光を発光し、背景領域25(第2絵柄要素250)を形成する第2蛍光インキ14(蛍光体DE−GB)は緑色光を発光する。従って、絵柄領域20および背景領域25(第1絵柄要素200および第2絵柄要素250)は異なった色の領域(マイクロ文字)として視認され、発光画像12の絵柄領域20(第1絵柄要素200)のパターン(潜像)が視認される。UV−A及びUV−Cの同時照射時は、絵柄領域20および背景領域25(第1絵柄要素200および第2絵柄要素250)が共にシアン色の同色領域(マイクロ文字)と視認され、絵柄領域20(第1絵柄要素200)の潜像は現れない。
【0174】
さらに、第1蛍光インキ13に蛍光体DE−RGを使用し、第2蛍光インキ14に蛍光体DE−GRを使用する場合、基材11上に黄色のインクをオフセット印刷し、その上に第1蛍光インキ13及び第2蛍光インキ14をオフセット印刷してもよい。同様に、第1蛍光インキ13に蛍光媒体DE−RBを使用し、第2蛍光インキ14に蛍光媒体DE−BRを使用する場合、基材11上にマゼンタ色のインクをオフセット印刷し、その上に第1蛍光インキ13及び第2蛍光インキ14をオフセット印刷してもよい。また、同様に、第1蛍光インキ13に蛍光媒体DE−BGを使用し、第2蛍光インキ14に蛍光媒体DE−GBを使用する場合、基材11上にシアン色のインクをオフセット印刷し、その上に第1蛍光インキ13及び第2蛍光インキ14をオフセット印刷してもよい。このようにすることで、UV−A及びUV−Cの同時照射時に、発光画像12全体が単一色の画像として視認され易くなる。
【0175】
なお、上記第5から第8の各実施の形態において、図18A乃至図19Bに示す第4の実施の形態の変形例の場合と同様に、1つのマイクロ文字が第1絵柄要素200及び第2絵柄要素250を含むように形成してもよい。
【0176】
また上記第1から第8の各実施の形態において、第1蛍光インキ13および第2蛍光インキ14として、UV−AまたはUV−Cに対する励起特性を有するインキが用いられる例を示した。しかしながら、これに限られることはなく、第1蛍光インキ13および第2蛍光インキ14として、UV−Bまたは赤外線に対する励起特性を有するインキを用いてもよい。すなわち、本発明における「第1波長領域内の不可視光」または「第2波長領域内の不可視光」として、任意の波長領域内の不可視光を用いることができる。
【0177】
また上記第1から第3、第7及び第8の各実施の形態において、背景領域25の少なくとも一部が絵柄領域20に隣接していればよい。
【0178】
また上記第1から第8の各実施の形態において、可視光下で、絵柄領域20および背景領域25(第1絵柄要素200および第2絵柄要素250)がそれぞれ白色のものとして視認される例を示した。しかしながら、これに限られることはなく、少なくとも可視光下で絵柄領域20および背景領域25(第1絵柄要素200および第2絵柄要素250)が同色の領域(マイクロ文字)として視認されればよい。
【0179】
また上記第4から第8の各実施の形態において、潜像は図形等でもよい。
【0180】
また上記第7及び第8の各実施の形態において、第1波長領域内の不可視光または第2波長領域内の不可視光が単独で照射されたときに第1蛍光インキ13および第2蛍光インキ14から発光される光の色が、青色、赤色または緑色のいずれかの色である例を示した。しかしながら、これに限られることはなく、第7の実施の形態では、第1波長領域内の不可視光または第2波長領域内の不可視光が単独で照射されたとき同色として視認され、第1波長領域内の不可視光および第2波長領域内の不可視光が同時に照射されたとき異色として視認される様々な組合せのインキをインキ13,14として用いることができる。また、第8の実施の形態では、第1波長領域内の不可視光または第2波長領域内の不可視光が単独で照射されたとき異色として視認され、第1波長領域内の不可視光および第2波長領域内の不可視光が同時に照射されたとき同色として視認される様々な組合せのインキをインキ13,14として用いることができる。
【0181】
また上記第7の実施の形態において、可視光下と、第1波長領域内の不可視光または第2波長領域内の不可視光が単独で照射されたとき、絵柄領域20および背景領域25(第1絵柄要素200および第2絵柄要素250)が同色の領域(マイクロ文字)として視認され、第1波長領域内の不可視光および第2波長領域内の不可視光が同時に照射されたとき、異色の領域(マイクロ文字)として視認されれば、オーバーコート層30は色を有していてもよい。
また上記第8の実施の形態において、可視光下と、第1波長領域内の不可視光または第2波長領域内の不可視光が単独で照射されたとき、絵柄領域20および背景領域25(第1絵柄要素200および第2絵柄要素250)が異色の領域(マイクロ文字)として視認され、第1波長領域内の不可視光および第2波長領域内の不可視光が同時に照射されたとき、同色の領域(マイクロ文字)として視認されれば、オーバーコート層30は色を有していてもよい。
【0182】
また上記第1から第8の各実施の形態において、本発明の発光媒体が、有価証券などを構成する偽造防止媒体として用いられる例を示した。しかしながら、これに限られることはなく、様々な用途において本発明の発光媒体を用いることができる。例えば玩具などの用途においても、本発明の発光媒体を用いることができる。この場合も、第1波長領域内および第2波長領域内の少なくとも何れかの不可視光を照射されて変化する絵柄領域および背景領域(第1絵柄要素および第2絵柄要素)からなる発光画像により、玩具などに様々な機能や特質を付与することができる。
【符号の説明】
【0183】
10 偽造防止媒体
11 基材
12 発光画像
13 第1蛍光インキ
14 第2蛍光インキ
15a 第1境界線
15b 第2境界線
20 絵柄領域
21a 白色部分
21b 青色部分
21c 赤色部分
22b 青色部分
22c 緑色部分
25 背景領域
26a 白色部分
26b 青色部分
26c 緑色部分
26d 無色部分
27b 赤色部分
27c 緑色部分
30 オーバーコート層
150a,150b,150c 線
200 第1絵柄要素
250 第2絵柄要素

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材上に発光画像を有する発光媒体において、
前記発光画像は、
第1蛍光体を含む第1領域と、
第2蛍光体を含む第2領域と、
前記第1領域の前記第1蛍光体および前記第2領域の前記第2蛍光体上に形成された保護層と、を有し、
前記第2領域の少なくとも一部は、前記第1領域に隣接しており、
第1波長領域内の不可視光を照射されたとき、前記第1蛍光体および前記第2蛍光体は、互いに同色として視認される色の光を発光し、
第2波長領域内の不可視光を照射されたとき、前記第1蛍光体および前記第2蛍光体は、互いに異色として視認される色の光を発光する
ことを特徴とする発光媒体。
【請求項2】
基材上に発光画像を有する発光媒体において、
前記発光画像は、
第1蛍光体を含む第1領域と、
第2蛍光体を含む第2領域と、
前記第1領域の前記第1蛍光体および前記第2領域の前記第2蛍光体上に形成された保護層と、を有し、
前記第2領域の少なくとも一部は、前記第1領域に隣接しており、
第1波長領域内の不可視光が照射されたとき、または第2波長領域内の不可視光が照射されたときに、前記第1蛍光体および前記第2蛍光体は、互いに同色として視認される色の光を発光し、
第1波長領域内の不可視光と第2波長領域内の不可視光とが同時に照射されたとき、前記第1蛍光体および前記第2蛍光体は、互いに異色として視認される色の光を発光する
ことを特徴とする発光媒体。
【請求項3】
基材上に発光画像を有する発光媒体において、
前記発光画像は、
第1蛍光体を含む第1領域と、
第2蛍光体を含む第2領域と、
前記第1領域の前記第1蛍光体および前記第2領域の前記第2蛍光体上に形成された保護層と、を有し、
前記第2領域の少なくとも一部は、前記第1領域に隣接しており、
第1波長領域内の不可視光が照射されたとき、前記第1蛍光体および前記第2蛍光体は、互いに異色として視認される色の光を発光し、
第2波長領域内の不可視光が照射されたとき、前記第1蛍光体および前記第2蛍光体は、互いに異色として視認されるとともに、第1波長領域内の不可視光が照射されたときに視認される色とは異色の光を発光し、
第1波長領域内の不可視光と第2波長領域内の不可視光とが同時に照射されたとき、前記第1蛍光体および前記第2蛍光体は、互いに同色として視認される色の光を発光する
ことを特徴とする発光媒体。
【請求項4】
前記保護層は、第1波長領域内の不可視光と、第2波長領域内の不可視光と、を透過する材料からなる
ことを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれかに記載の発光媒体。
【請求項5】
前記保護層はアクリル系樹脂を含む
ことを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれかに記載の発光媒体。
【請求項6】
前記保護層はポリメチルメタクリレートからなる
ことを特徴とする請求項5に記載の発光媒体。
【請求項7】
基材上に発光画像を有する発光媒体において、
前記発光画像は、
第1蛍光体を含む複数の第1絵柄要素と、
第2蛍光体を含む複数の第2絵柄要素と、
基材、前記第1絵柄要素および前記第2絵柄要素上に形成された保護層と、を有し、
前記第1絵柄要素と前記第2絵柄要素は、複数のマイクロ文字を形成し、
前記複数のマイクロ文字は、マイクロ文字列を形成すると共に、前記第1絵柄要素は前記マイクロ文字列上の潜像を形成し、
第1波長領域内の不可視光を照射されたとき、前記第1蛍光体および前記第2蛍光体は、互いに同色として視認される色の光を発光し、
第2波長領域内の不可視光を照射されたとき、前記第1蛍光体および前記第2蛍光体は、互いに異色として視認される色の光を発光し、これにより前記マイクロ文字列上の前記潜像を発現させる
ことを特徴とする発光媒体。
【請求項8】
基材上に発光画像を有する発光媒体において、
前記発光画像は、
第1蛍光体を含む複数の第1絵柄要素と、
第2蛍光体を含む複数の第2絵柄要素と、を有し、
基材、前記第1絵柄要素および前記第2絵柄要素上に形成された保護層と、を有し、
前記第1絵柄要素と前記第2絵柄要素は、複数のマイクロ文字を形成し、
前記複数のマイクロ文字は、マイクロ文字列を形成すると共に、前記第1絵柄要素は前記マイクロ文字列上の潜像を形成し、
第1波長領域内の不可視光が照射されたとき、または第2波長領域内の不可視光が照射されたときに、前記第1蛍光体および前記第2蛍光体は、互いに同色として視認される色の光を発光し、
第1波長領域内の不可視光と第2波長領域内の不可視光とが同時に照射されたとき、前記第1蛍光体および前記第2蛍光体は、互いに異色として視認される色の光を発光し、これにより前記マイクロ文字列上の前記潜像を発現させる
ことを特徴とする発光媒体。
【請求項9】
基材上に発光画像を有する発光媒体において、
前記発光画像は、
第1蛍光体を含む複数の第1絵柄要素と、
第2蛍光体を含む複数の第2絵柄要素と、を有し、
基材、前記第1絵柄要素および前記第2絵柄要素上に形成された保護層と、を有し、
前記第1絵柄要素と前記第2絵柄要素は、複数のマイクロ文字を形成し、
前記複数のマイクロ文字は、マイクロ文字列を形成すると共に、前記第1絵柄要素は前記マイクロ文字列上の潜像を形成し、
第1波長領域内の不可視光が照射されたとき、前記第1蛍光体および前記第2蛍光体は、互いに異色として視認される色の光を発光し、これにより前記マイクロ文字列上の前記潜像を発現し、
第2波長領域内の不可視光が照射されたとき、前記第1蛍光体および前記第2蛍光体は、互いに異色として視認されるとともに、第1波長領域内の不可視光が照射されたときに視認される色とは異色の光を発光し、これにより前記マイクロ文字列上の前記潜像を発現し、
第1波長領域内の不可視光と第2波長領域内の不可視光とが同時に照射されたとき、前記第1蛍光体および前記第2蛍光体は、互いに同色として視認される色の光を発光する
ことを特徴とする発光媒体。
【請求項10】
前記保護層は、第1波長領域内の不可視光と、第2波長領域内の不可視光と、を透過する材料からなる
ことを特徴とする請求項7乃至請求項9のいずれかに記載の発光媒体。
【請求項11】
前記保護層はアクリル系樹脂を含む
ことを特徴とする請求項7乃至請求項10のいずれかに記載の発光媒体。
【請求項12】
前記保護層はポリメチルメタクリレートからなる
ことを特徴とする請求項11に記載の発光媒体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4A】
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【図4B】
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【図5】
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【図6A】
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【図6B】
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【図6C】
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【図7】
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【図8】
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【図9A】
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【図9B】
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【図10】
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【図11A】
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【図11B】
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【図12A】
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【図12B】
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【図13】
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【図14A】
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【図14B】
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【図16】
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【図17A】
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【図17B】
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【図18B】
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【図19A】
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【図19B】
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【図20A】
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【図20B】
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【図21A】
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【図21B】
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【図15】
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【図18A】
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【公開番号】特開2012−35548(P2012−35548A)
【公開日】平成24年2月23日(2012.2.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−178915(P2010−178915)
【出願日】平成22年8月9日(2010.8.9)
【出願人】(000002897)大日本印刷株式会社 (14,506)
【Fターム(参考)】