説明

発光性紫外線遮蔽塗料とそれを用いた塗膜および白色反射基材並びに液晶用バックライトユニット

【課題】白色反射基材の耐光性を向上するとともに、白色反射基材の反射特性および輝度を向上することができる発光性紫外線遮蔽塗料とそれを用いた塗膜および白色反射基材並びに液晶用バックライトユニットを提供する。
【解決手段】本発明の発光性紫外線遮蔽塗料は、金属酸化物と樹脂とを含有してなる紫外線遮蔽塗料に蛍光体を添加してなることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発光性紫外線遮蔽塗料とそれを用いた塗膜および白色反射基材並びに液晶用バックライトユニットに関し、さらに詳しくは、面光源装置として用いられる蛍光ランプ用途の白色反射基材の反射特性および輝度を向上することが可能な発光性紫外線遮蔽塗料とそれを用いた塗膜および白色反射基材並びに液晶用バックライトユニットに関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般的に、照明装置、電飾および液晶用バックライトユニットなどの面光源装置として蛍光ランプを有効に利用する目的で、装置内の蛍光ランプの直下に白色反射板が設置されている。
このような面光源装置では、その光源である蛍光ランプが発する光を効率的に利用するために、白色反射板と蛍光ランプを接近させている。そのため従来、蛍光ランプによる変色や劣化を防止するために、白色反射板の表面に紫外線遮蔽塗料を塗布する一方で、この塗料による可視光の反射率の低下を防止する工夫がなされていた。
【0003】
そこで、白色反射フィルム本来の反射機能を低下させることなく、蛍光ランプから発生する熱や紫外線により、白色反射フィルムが変色したり劣化したりすることを防止するために、白色反射フィルムの反射面側の蛍光ランプとの対面部分、または、対面部分およびその周辺部分のみに、白色反射フィルムの変色や劣化を防止するための紫外線吸収剤含有透明樹脂層を設けた液晶表示装置バックライト用反射シートが提案されている(例えば、特許文献1参照)。
また、酸化チタンなどの顔料粒子を添加して白色化した反射板基材において、より高反射率で、明るい画面の得られるものとするために、2層または3層構成からなる白色ポリエステルフィルムのうちの1層を、微細気泡を含有させたものとし、その他の1層を、無機微粒子を含有させたものとした反射基材が提案されている(例えば、特許文献2、3参照)。
(例えば、特許文献3参照)。
【特許文献1】特開2002−182211号公報
【特許文献2】特開平4−296819号公報
【特許文献3】特開平4−239540号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記の白色反射基材は、可視光の反射率を低下することなく、耐光性を向上することのみを目的とし、蛍光ランプから発光した光を如何に効率的に反射するかについて着目したものであり、この白色反射基材により反射する光束は、蛍光ランプの輝度にのみ左右されるため、蛍光ランプの性能以上に、これを備えた面光源装置の輝度を向上することはできなかった。
【0005】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであって、白色反射基材の耐光性を向上するとともに、白色反射基材の反射特性および輝度を向上することができる発光性紫外線遮蔽塗料とそれを用いた塗膜および白色反射基材並びに液晶用バックライトユニットを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者等は、上記課題を解決するために鋭意研究を行った結果、金属酸化物と樹脂とを含有してなる紫外線遮蔽塗料に蛍光体を添加して発光性紫外線遮蔽塗料を調製し、この発光性紫外線遮蔽塗料を用いて、白色反射基材上に塗膜を形成することにより、蛍光ランプから発生する紫外線による蛍光ランプから発生する紫外線による白色反射基材の紫外線からの変色劣化を防止するとともに、白色反射基材の反射特性を向上し、さらに、蛍光ランプから発生する紫外線を利用して、塗膜中の蛍光体が励起して発光することによって、既存の面光源装置について、その他の構成を変更することなく、輝度を向上することができることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0007】
すなわち、本発明の発光性紫外線遮蔽塗料は、金属酸化物と樹脂とを含有してなる紫外線遮蔽塗料に蛍光体を添加してなることを特徴とする。
前記蛍光体の含有率は3重量%以上かつ10重量%以下であることが好ましい。
【0008】
本発明の塗膜は、金属酸化物と樹脂とを含有してなる紫外線遮蔽塗料に蛍光体を添加してなる発光性紫外線遮蔽塗料を用いて形成してなることを特徴とする。
【0009】
本発明の白色反射基材は、金属酸化物と樹脂とを含有してなる紫外線遮蔽塗料に蛍光体を添加してなる発光性紫外線遮蔽塗料を用いて形成してなる塗膜を設けてなることを特徴とする。
【0010】
本発明の液晶用バックライトユニットは、金属酸化物と樹脂とを含有してなる紫外線遮蔽塗料に蛍光体を添加してなる発光性紫外線遮蔽塗料を用いて形成してなる塗膜を設けてなる白色反射基材を備えてなることを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明の発光性紫外線遮蔽塗料によれば、金属酸化物と樹脂とを含有してなる紫外線遮蔽塗料に蛍光体を添加してなるので、この発光性紫外線遮蔽塗料を用いて、白色反射基材上に塗膜を形成することにより、蛍光ランプから発生する紫外線による白色反射基材の紫外線からの変色劣化を防止するとともに、白色反射基材の反射特性を向上し、さらに、蛍光ランプから発生する紫外線を利用して、塗膜中の蛍光体が励起して発光することによって、既存の面光源装置について、その他の構成を変更することなく、輝度を向上することができる。すなわち、また、本発明の発光性紫外線遮蔽塗料を用いて塗膜を形成した白色反射基材を用いれば、蛍光ランプから発生した可視光を反射した反射光と、蛍光ランプから発生した紫外線により蛍光体が励起することにより発光した光(励起光)とにより、この白色反射基材を備えた面光源装置からの光束は、蛍光ランプから発光した光が全反射した場合の反射率を100%とすると、100%を超えることができる。したがって、本発明の発光性紫外線遮蔽塗料を用いれば、従来の面光源装置の輝度を向上することができるだけでなく、従来と同等の輝度を得るために必要な電気エネルギーを節約することもできる。また、紫外線遮蔽機能を有する金属酸化物を含むだけでなく、有機系紫外線吸収剤を添加する構成とすることもできるので、蛍光ランプから発生する紫外線に対する耐性(耐光性)をより向上することができる。しかも、少量の塗料で塗膜を形成することができるので、反射特性、輝度、耐光性などに優れる塗膜が設けられた白色反射基材を、低コストで製造することができる。
【0012】
本発明の塗膜によれば、金属酸化物と樹脂とを含有してなる紫外線遮蔽塗料に蛍光体を添加してなる発光性紫外線遮蔽塗料を用いて形成したので、蛍光ランプから発生する紫外線による白色反射基材の紫外線からの変色劣化を防止するとともに、白色反射基材の反射特性を向上し、さらに、蛍光ランプから発生する紫外線を利用して、塗膜中の蛍光体が励起して発光することによって、既存の面光源装置について、その他の構成を変更することなく、輝度を向上することができる。また、本発明の塗膜を形成した白色反射基材を用いれば、蛍光ランプから発生した可視光を反射した反射光と、蛍光ランプから発生した紫外線により蛍光体が励起することにより発光した光(励起光)とにより、この白色反射基材を備えた面光源装置からの光束は、蛍光ランプから発光した光が全反射した場合の反射率を100%とすると、100%を超えることができる。したがって、従来の面光源装置の輝度を向上することができるだけでなく、従来と同等の輝度を得るために必要な電気エネルギーを節約することもできる。また、紫外線遮蔽機能を有する金属酸化物を含むだけでなく、有機系紫外線吸収剤を添加する構成とすることもできるので、蛍光ランプから発生する紫外線に対する耐性(耐光性)をより向上することができる。
【0013】
本発明の白色反射基材によれば、金属酸化物と樹脂とを含有してなる紫外線遮蔽塗料に蛍光体を添加してなる発光性紫外線遮蔽塗料を用いて形成してなる塗膜が設けられたので、蛍光ランプから発生する紫外線による白色反射基材の紫外線からの変色劣化を防止するとともに、白色反射基材の反射特性を向上し、さらに、蛍光ランプから発生する紫外線を利用して、塗膜中の蛍光体が励起して発光することによって、既存の面光源装置について、その他の構成を変更することなく、輝度を向上することができる。また、蛍光ランプから発生した可視光を反射した反射光と、蛍光ランプから発生した紫外線により蛍光体が励起することにより発光した光(励起光)とにより、この白色反射基材を備えた面光源装置からの光束は、蛍光ランプから発光した光が全反射した場合の反射率を100%とすると、100%を超えることができる。したがって、従来の面光源装置の輝度を向上することができるだけでなく、従来と同等の輝度を得るために必要な電気エネルギーを節約することもできる。また、本発明の白色反射基材は、紫外線遮蔽機能を有する金属酸化物を含むだけでなく、有機系紫外線吸収剤を添加する構成とすることもできるので、蛍光ランプから発生する紫外線に対する耐性(耐光性)をより向上することができる。
【0014】
本発明の液晶用バックライトユニットによれば、金属酸化物と樹脂とを含有してなる紫外線遮蔽塗料に蛍光体を添加してなる発光性紫外線遮蔽塗料を用いて形成してなる塗膜が設けられた白色反射基材を備えたので、この白色反射基材は、可視光反射率および輝度が高く、発光効率および耐光性にも優れているから、長期間の使用が可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
本発明の発光性紫外線遮蔽塗料とそれを用いた塗膜および白色反射基材並びに液晶用バックライトユニットの最良の形態について説明する。
なお、この形態は、発明の趣旨をより良く理解させるために具体的に説明するものであり、特に指定のない限り、本発明を限定するものではない。
【0016】
「発光性紫外線遮蔽塗料」
本発明の発光性紫外線遮蔽塗料は、金属酸化物と樹脂とを含有してなる紫外線遮蔽塗料に蛍光体を添加してなる塗料である。
ここで、紫外線遮蔽塗料は、金属酸化物、樹脂、および、これらを溶解する溶媒を主成分とする塗料である。
【0017】
蛍光体の含有率は、3重量%以上かつ10重量%以下であることが好ましい。
蛍光体の含有率が3重量%以上かつ10重量%以下の範囲内であれば、本発明の発光性紫外線遮蔽塗料を用いて形成した塗膜の輝度向上を期待できる。また、蛍光体の含有率が3重量%未満では、塗膜の輝度が向上せず、一方、蛍光体の含有率が10重量%を超えると、塗膜の基板に対する密着性が低下することがある。
【0018】
蛍光体としては、Y:Euなどの赤色系発光蛍光体、(SrCaBaMg)(POCl:Euなどの青色系発光蛍光体、LaPO:Ce,Tbなどの緑色系発光蛍光体の混合物が用いられる。
【0019】
金属酸化物としては、酸化亜鉛(ZnO)、酸化チタン(TiO)、酸化セリウム(CeO)などが挙げられる。
この金属酸化物は、紫外線遮蔽機能を有する。また、この金属酸化物は、本発明の発光性紫外線遮蔽塗料を用いて形成された塗膜において、可視光(波長380nm〜780nm)の透過率(可視光透過率)を低下させることがない。さらに、これらの金属酸化物は、紫外線遮蔽塗料に配合した場合、溶媒に対して同様に均一に分散させることができ、溶媒に対する分散性に差異がない。
【0020】
本発明の発光性紫外線遮蔽塗料において、金属酸化物の含有率は、10重量%以上かつ25重量%以下であることが好ましく、より好ましくは12重量%以上かつ20重量%である。
金属酸化物の含有率が10重量%以上かつ25重量%以下の範囲内であれば、本発明の発光性紫外線遮蔽塗料を用いて形成した塗膜に紫外線遮蔽性を持たせることができる。また、金属酸化物の含有率が10重量%未満では、塗膜の紫外線遮蔽性が不足することがあり、一方、金属酸化物の含有率が25重量%を超えると、塗膜の基板に対する密着性が低下することがある。
【0021】
樹脂としては、耐熱性、耐候性に優れる樹脂が用いられ、例えば、シリカ系無機バインダー、シリコーン系樹脂、アクリル系樹脂、フッ素系樹脂などが挙げられる。
また、本発明の発光性紫外線遮蔽塗料において、樹脂の含有率は、10重量%以上かつ30重量%以下であることが好ましく、より好ましくは12重量%以上かつ20重量%である。
樹脂の含有率が10重量%以上かつ30重量%以下の範囲内であれば、本発明の発光性紫外線遮蔽塗料を用いて形成された塗膜は白色反射基材に対する密着性に優れる。また、樹脂の含有率が10重量%未満では、本発明の発光性紫外線遮蔽塗料を用いて形成された塗膜は白色反射基材に対する密着性に劣ることがあり、一方、樹脂の含有率が30重量%を超えると、相対的に金属酸化物の含有率が少なくなるため、塗膜の紫外線遮蔽性能が劣ることがある。
【0022】
本発明の発光性紫外線遮蔽塗料に用いられる溶媒としては、水または有機溶媒が挙げられる。
有機溶媒としては、例えば、メタノール、エタノール、2−プロパノール、ブタノール、ジアセトンアルコール、フルフリルアルコール、エチレングリコール、ヘキシレングリコールなどのアルコール類;酢酸メチル、酢酸エチルなどのエステル類;ジエチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテル(メチルセロソルブ)、エチレングリコールモノエチルエーテル(エチルセロソルブ)、エチレングリコールモノブチルエーテル(ブチルセロソルブ)、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテルなどのエーテル類;アセトン、メチルエチルケトン、アセチルアセトン、アセト酢酸エステル、シクロヘキサノンなどのケトン類;トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素などが挙げられ、これらのうち1種または2種以上が用いられる。
【0023】
本発明の発光性紫外線遮蔽塗料において、溶媒の含有率は、50重量%以上かつ90重量%以下であることが好ましく、より好ましくは60重量%以上かつ80重量%である。
溶媒の含有率が50重量%以上かつ90重量%以下の範囲内であれば、本発明の発光性紫外線遮蔽塗料は白色反射基材に対する濡れ性に優れる。また、溶媒の含有率が50重量%未満では、本発明の発光性紫外線遮蔽塗料は塗膜の透明性が低下することがあり、一方、溶媒の含有率が90重量%を超えると、本発明の発光性紫外線遮蔽塗料は白色反射基材に十分な厚みの塗膜を形成することができないことがある。
【0024】
本発明の発光性紫外線遮蔽塗料には、上記の成分の他に、用途や仕様に応じて、有機系紫外線吸収剤、分散剤などを含有していてもよい。
【0025】
有機系紫外線吸収剤としては、例えば、2−(5−メチル−2−ヒドロキシフェニル)ベンゾトリアゾール、2−[2−ヒドロキシ−3,5−ビス(α,α−ジメチルベンジル)フェニル]−2H−ベンゾトリアゾール、2−(3,5−ジ−t−ブチル−2−ヒドロキシフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(3−t−ブチル−5−メチル−2−ヒドロキシフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール、2−(3,5−ジ−t−ブチル−2−ヒドロキシフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール、2−(3,5−ジ−t−アミル−2−ヒドロキシフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−5’−t−オクチルフェニル)ベンゾトリアゾール、その他のヒドロキシフェニルベンゾトリアゾール誘導体、メチル−3−[3−t−ブチル−5−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−4−ヒドロキシフェニル]プロピオネート−ポリオキシエチレングリコール(分子量:約300)縮合物などのベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤;2−(4,6−ジフェニル−1,3,5−トリアジン−2−イル)−5−[(ヘキシル)オキシ]−フェノールなどのトリアジン系紫外線吸収剤;2−エトキシ−2’−エチルシュウ酸ビスアニリドなどのシュウ酸アニリド系紫外線吸収剤、ベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−n−オクチルオキシベンゾフェノンなどのベンゾフェノン系紫外線吸収剤などが挙げられ、これらのうち1種または2種以上が用いられる。
【0026】
分散剤としては、ポリカルボン酸塩;ポリアルキル硫酸塩;ポリビニルアルコール(PVA)、低分子ポリマー類などの溶媒に可溶なポリマー類などが用いられる。
【0027】
本発明の発光性紫外線遮蔽塗料を製造するには、まず、金属酸化物の粉末を、溶媒中にビーズミルを用いて分散させ、その後、ビーズを分離して、金属酸化物を含む金属酸化物分散液を調製する。なお、溶媒には、あらかじめ分散剤を添加しておいてもよい。
次いで、この金属酸化物分散液に、蛍光体を添加して攪拌混合した後、樹脂を添加して攪拌混合し、本発明の発光性紫外線遮蔽塗料を得る。
【0028】
本発明の発光性紫外線遮蔽塗料によれば、金属酸化物と樹脂とを含有してなる紫外線遮蔽塗料に蛍光体を添加してなるので、この発光性紫外線遮蔽塗料を用いて、白色反射基材上に塗膜を形成することにより、蛍光ランプから発生する紫外線による白色反射基材の紫外線からの変色劣化を防止するとともに、白色反射基材の反射特性を向上し、さらに、蛍光ランプから発生する紫外線を利用して、塗膜中の蛍光体が励起して発光することによって、既存の面光源装置について、その他の構成を変更することなく、輝度を向上することができる。すなわち、また、本発明の発光性紫外線遮蔽塗料を用いて塗膜を形成した白色反射基材を用いれば、蛍光ランプから発生した可視光を反射した反射光と、蛍光ランプから発生した紫外線により蛍光体が励起することにより発光した光(励起光)とにより、この白色反射基材を備えた面光源装置からの光束は、蛍光ランプから発光した光が全反射した場合の反射率を100%とすると、100%を超えることができる。したがって、従来の面光源装置の輝度を向上することができるだけでなく、従来と同等の輝度を得るために必要な電気エネルギーを節約することもできる。また、紫外線遮蔽機能を有する金属酸化物を含むだけでなく、有機系紫外線吸収剤を添加する構成とすることもできるので、蛍光ランプから発生する紫外線に対する耐性(耐光性)をより向上することができる。しかも、少量の塗料で塗膜を形成することができるので、反射特性、輝度、耐光性などに優れる塗膜が設けられた白色反射基材を、低コストで製造することができる。
【0029】
「塗膜」
本発明の塗膜は、金属酸化物と樹脂とを含有してなる紫外線遮蔽塗料に蛍光体を添加してなる発光性紫外線遮蔽塗料を用いて、基材上に形成してなる塗膜である。
本発明の塗膜においては、発光性紫外線遮蔽塗料は、上述の本発明の発光性紫外線遮蔽塗料が用いられる。
【0030】
本発明の塗膜において、蛍光体の含有率は、10重量%以上かつ30重量%以下であることが好ましい。
蛍光体の含有率が10重量%以上かつ30重量%以下の範囲内であれば、塗膜の輝度が向上する。また、蛍光体の含有率が10重量%未満では、塗膜の輝度が向上しないことがあり、一方、蛍光体の含有率が30重量%を超えると、塗膜の基板に対する密着性が低下することがある。
【0031】
本発明の塗膜において、金属酸化物の含有率は、40重量%以上かつ80重量%以下であることが好ましく、より好ましくは45重量%以上かつ65重量%である。
金属酸化物の含有率が40重量%以上かつ80重量%以下の範囲内であれば、塗膜に紫外線遮蔽性を持たせることが可能である。また、金属酸化物の含有率が40重量%未満では、塗膜の紫外線遮蔽性能が不足することがあり、一方、金属酸化物の含有率が80重量%を超えると、塗膜の基板に対する密着性が低下することがある。
【0032】
本発明の塗膜において、樹脂の含有率は、20重量%以上かつ60重量%以下であることが好ましく、より好ましくは35重量%以上かつ45重量%である。
樹脂の含有率が20重量%以上かつ60重量%以下の範囲内であれば、本発明の塗膜は白色反射基材に対する密着性に優れる。また、樹脂の含有率が20重量%未満では、本発明の塗膜は白色反射基材に対する密着性に劣ることがあり、一方、樹脂の含有率が60重量%を超えると、相対的に金属酸化物の含有率が少なくなるため、塗膜の紫外線遮蔽性能が劣ることがある。
【0033】
また、本発明の塗膜は、膜厚が1.5μm以上かつ10μm以下であることが好ましく、より好ましくは2μm以上かつ5μm以下である。
本発明の塗膜は、膜厚が1.5μm以上であれば、蛍光ランプに用いられる白色反射基材用途の塗膜に要求される耐熱性や難燃性を発揮することができる。また、本発明の塗膜は、膜厚が5μmを超えても、膜厚が5μm以上かつ10μm以下の範囲内である場合と、その効果に差異はない。
【0034】
本発明の塗膜を製造するには、基材上に、本発明の発光性紫外線遮蔽塗料を塗布して塗布膜を形成し、次いで、この塗布膜を、大気中にて乾燥または乾燥・熱処理する。
基材としては、熱処理温度に耐える基材であればよく、ガラス基材、セラミックス基材、プラスチック基材、金属基材などが用いられる。
【0035】
発光性紫外線遮蔽塗料の基材上への塗布に際しては、形成された後の塗膜の膜厚が1.5μm以上かつ10μm以下、より好ましくは2μm以上かつ5μm以下となるような塗布量とする。
発光性紫外線遮蔽塗料の塗布方法としては、スピンコート法、ロールコート法、スプレーコート法、バーコート法、ディップコート法、フローコート法など、通常のウエットコート法などを用いることができる。
【0036】
塗布膜の乾燥温度は、発光性紫外線遮蔽塗料に含まれる溶媒が十分に散逸する温度であればよく、例えば、常温〜150℃とする。
この乾燥工程では、塗布膜が十分に乾燥すればよく、加熱だけの乾燥でもよく、空気を吹き付けてもよい。具体的には、常温のエアブローでも、熱風を吹き付けてもよい。
塗布膜の熱処理は、60℃〜150℃の範囲の温度にて、塗膜に不具合が生じない範囲で所定時間行う。
このようにして本発明の塗膜が得られる。
【0037】
本発明の塗膜によれば、金属酸化物と樹脂とを含有してなる紫外線遮蔽塗料に蛍光体を添加してなる発光性紫外線遮蔽塗料を用いて形成してなるので、蛍光ランプから発生する紫外線による白色反射基材の紫外線からの変色劣化を防止するとともに、白色反射基材の反射特性を向上し、さらに、蛍光ランプから発生する紫外線を利用して、塗膜中の蛍光体が励起して発光することによって、既存の面光源装置について、その他の構成を変更することなく、輝度を向上することができる。また、本発明の塗膜を形成した白色反射基材を用いれば、蛍光ランプから発生した可視光を反射した反射光と、蛍光ランプから発生した紫外線により蛍光体が励起することにより発光した光(励起光)とにより、この白色反射基材を備えた面光源装置からの光束は、蛍光ランプから発光した光が全反射した場合の反射率を100%とすると、100%を超えることができる。したがって、従来の面光源装置の輝度を向上することができるだけでなく、従来と同等の輝度を得るために必要な電気エネルギーを節約することもできる。また、紫外線遮蔽機能を有する金属酸化物を含むだけでなく、有機系紫外線吸収剤を添加する構成とすることもできるので、蛍光ランプから発生する紫外線に対する耐性(耐光性)をより向上することができる。
【0038】
「白色反射基材」
本発明の白色反射基材は、金属酸化物と樹脂とを含有してなる紫外線遮蔽塗料に蛍光体を添加してなる発光性紫外線遮蔽塗料を用いて形成してなる塗膜が、白色反射基材の一主面に設けられた基材である。
本発明の白色反射基材においては、塗膜は、上述の本発明の塗膜である。
【0039】
白色反射基材としては、ポリエチレンテレフタレート(PET)などのポリエステル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリプロピレン(PP)やポリエチレン(PE)などのポリオレフィン系樹脂、アクリル系樹脂からなる白色反射フィルムおよび白色反射板;この白色反射フィルムをガラス基材、セラミックス基材、金属基材などに積層した基材などが用いられる。
また、白色反射基材の厚みは特に限定されず、用途や仕様に応じて、適宜決定される。
【0040】
本発明の白色反射基材を製造するには、上述の本発明の塗膜の製造方法と同様にして、白色反射基材の一主面に、本発明の発光性紫外線遮蔽塗料を塗布して塗布膜を形成し、次いで、この塗布膜を、大気中にて乾燥または乾燥・熱処理することにより、白色反射基材の一主面に塗膜を形成する。
【0041】
本発明の白色反射基材によれば、基材上に金属酸化物と樹脂とを含有してなる紫外線遮蔽塗料に蛍光体を添加してなる発光性紫外線遮蔽塗料を用いて形成してなる塗膜を設けたので、蛍光ランプから発生する紫外線による白色反射基材の紫外線からの変色劣化を防止するとともに、白色反射基材の反射特性を向上し、さらに、蛍光ランプから発生する紫外線を利用して、塗膜中の蛍光体が励起して発光することによって、既存の面光源装置について、その他の構成を変更することなく、輝度を向上することができる。また、蛍光ランプから発生した可視光を反射した反射光と、蛍光ランプから発生した紫外線により蛍光体が励起することにより発光した光(励起光)とにより、この白色反射基材を備えた面光源装置からの光束は、蛍光ランプから発光した光が全反射した場合の反射率を100%とすると、100%を超えることができる。したがって、本発明の白色反射基材によれば、従来の面光源装置の輝度を向上することができるだけでなく、従来と同等の輝度を得るために必要な電気エネルギーを節約することもできる。また、紫外線遮蔽機能を有する金属酸化物を含むだけでなく、有機系紫外線吸収剤を添加する構成とすることもできるので、蛍光ランプから発生する紫外線に対する耐性(耐光性)をより向上することができる。
【0042】
「液晶用バックライトユニット」
図1は、本発明の液晶用バックライトユニットの一実施形態を示す概略断面図であり、直下方式の液晶用バックライトユニットの例である。
【0043】
この実施形態の液晶用バックライトユニット10は、液晶パネル(図示略)に光を供給するための複数の蛍光ランプ13と、各蛍光ランプ13から発光した光を液晶パネル側に有効に照射するための白色反射基材11と、蛍光ランプ13を介して白色反射基材11と対向する位置、すなわち、液晶パネル側に設けられ、各蛍光ランプ13から発光した光および白色反射基材11からの反射光を液晶パネルの全域に拡散するための光拡散板14と、光拡散板14の上に配置され、光拡散板14からの光を集光するレンズシート15とから概略構成されている。また、白色反射基材11の一主面11a、すなわち、蛍光ランプ13と対向する面に、本発明の発光性紫外線遮蔽塗料を用いて形成してなる塗膜12が設けられている。
【0044】
この液晶用バックライトユニット10は、複数の蛍光ランプ13を1つのトランス(図示略)で駆動するように構成されている。また、白色反射基材11の背面、すなわち、蛍光ランプ13と対向している面と反対側の面には、インバータ回路(図示略)を搭載するためのインバータ回路基板(図示略)が配置されている。このインバータ回路には、各蛍光ランプ13に電力を供給する昇圧回路としてインバータトランスなどの各部品が設けられている。このインバータトランスとしては、例えば、2つのコイルの電磁誘導効果によって互いにのコイルの巻き数比に基づいて変圧する巻線型などが用いられる。
【0045】
白色反射基材11としては、上記の本発明の塗膜が設けられた白色反射基材が用いられる。
蛍光ランプ13としては、冷陰極型蛍光ランプ(CCFL:Cold CathodeFluorescent Lamp)が用いられる。
光拡散板14としては、例えば、透明なシート状基材と、その一方の面に形成された光拡散層と、シート状基材の他方の面に設けられ、スティッキング防止や傷付き防止などのための背面層とから構成されるものが用いられる。
レンズシート15としては、例えば、ベースフィルムと、このベースフィルムの一方の面に形成された複数のプリズムとから構成されるものが用いられる。
【0046】
この液晶用バックライトユニット10は、本発明の発光性紫外線遮蔽塗料を用いて形成してなる塗膜12が設けられた白色反射基材11を備えたので、白色反射基材11は、可視光反射率および輝度が高く、発光効率および耐光性にも優れているから、長期間の使用が可能である。
【実施例】
【0047】
以下、実施例により本発明をさらに具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0048】
「実施例1」
(塗料の調製)
金属酸化物として酸化亜鉛の粉末15.0重量部を、分散剤を含むトルエン34重量部にビーズミルを用いて分散させ、その後、ビーズを分離して、酸化亜鉛分散液を調製した。
次いで、この酸化亜鉛分散液に、シクロヘキサノン40重量部、および、赤色系発光蛍光体:Y:Eu、青色系発光蛍光体:(SrCaBaMg)(POCl:Eu、緑色系発光蛍光体:LaPO:Ce,Tbの混合物からなる蛍光体1.0重量部を添加して攪拌混合した後、アクリル系樹脂10.0重量部を添加して攪拌混合し、塗料を調製した。
【0049】
(白色反射基材の作製)
バーコート法により、白色反射フィルム(E60L、東レ社製)の一主面に、形成後の膜厚が2.5±0.5μmとなるように、上記の塗料を塗布した後、加熱炉中で80℃にて1分間加熱し、塗膜付き白色反射フィルムを得た。
次いで、厚み0.1mのアルミニウム板の一主面に、アクリル系接着剤を介して、上記の白色反射フィルムを貼付し、アルミニウム板と白色反射フィルムが積層された白色反射基材を得た。
【0050】
「実施例2」
蛍光体の配合量を3.0重量部とし、アクリル系樹脂の配合量を8.0重量部とした以外は実施例1と同様にして、白色反射基材を得た。
【0051】
「実施例3」
蛍光体の配合量を5.0重量部とし、アクリル系樹脂の配合量を6.0重量部とした以外は実施例1と同様にして、白色反射基材を得た。
【0052】
「実施例4」
蛍光体の配合量を10.0重量部とし、アクリル系樹脂の配合量を1.0重量部とした以外は実施例1と同様にして、白色反射基材を得た。
【0053】
「実施例5」
蛍光体の配合量を20重量部とし、アクリル系樹脂の配合量を1重量部とし、トルエンの配合量を24重量部とした以外は実施例1と同様にして、白色反射基材を得た。
【0054】
「実施例6」
金属酸化物として酸化チタンの粉末15.0重量部を用いた以外は実施例1と同様にして、白色反射基材を得た。
【0055】
「実施例7」
金属酸化物として酸化セリウムの粉末15.0重量部を用いた以外は実施例1と同様にして、白色反射基材を得た。
【0056】
「実施例8」
溶媒として、シクロヘキサノンとトルエンの混合溶媒の替わりに、水を用いた以外は実施例2と同様にして、白色反射基材を得た。
【0057】
「比較例1」
厚み0.1mのアルミニウム板の一主面に、アクリル系接着剤を介して、白色反射フィルム(E60L、東レ社製)を貼付し、アルミニウム板と白色反射フィルムが積層された白色反射基材を得た。
【0058】
[評価]
実施例1〜8および比較例1の各々について、白色反射フィルムの反射特性および輝度、白色反射フィルムに設けられた塗膜の密着性を、下記の方法により評価した。
【0059】
(1)白色反射フィルムの反射特性
分光放射輝度計(CS−100A、コニカミノルタ社製)を用いて、白色反射フィルムについて可視光の全光線反射率を測定した。
得られた結果から白色反射フィルムの反射特性を評価し、反射率が比較例よりも向上した場合を「○」、反射率が比較例と同等の場合を「△」、反射率が比較例よりも劣る場合を「×」とした。
【0060】
(2)白色反射フィルムの輝度
分光放射輝度計(CS−100A、コニカミノルタ社製)を用いて、白色反射フィルムについて輝度を測定した。
得られた結果から白色反射フィルムの輝度を評価し、輝度が比較例よりも向上した場合を「○」、輝度が比較例と同等の場合を「△」、輝度が比較例よりも劣る場合を「×」とした。
【0061】
(3)塗膜の密着性
白色反射フィルム上に形成された塗膜の密着性を、JIS K5600−5−6に準拠したクロスカット試験により評価した。
得られた結果から、白色反射フィルムの密着性を評価し、密着性が比較例1よりも向上した場合を「○」、密着性が比較例1と同等の場合を「△」、密着性が比較例よりも劣る場合を「×」とした。
また、これらの結果から総合評価を行い、反射率、輝度および密着性が向上した場合を「◎」、反射率、輝度、密着性のうちいずれか2つが向上した場合を「○」、反射率、輝度、密着性のうちいずれか1つが向上した場合を「△」、反射率、輝度および密着性のいずれも向上しなかった場合を「×」とした。
これらの結果を表1に示す。
【0062】
【表1】

【0063】
これらの評価結果によれば、実施例1〜8の白色反射フィルムは、金属酸化物(酸化亜鉛、酸化チタン、酸化セリウム)とアクリル系樹脂と蛍光体とを含有してなる塗料を用いて形成した塗膜が設けられたので、高輝度で可視光の反射特性が優れており、塗膜の白色反射フィルムに対する密着性が優れていることが分かった。
また、実施例1、6および7から、金属酸化物として、酸化亜鉛、酸化チタン、酸化セリウムのいずれを用いても、各実施例の白色反射フィルムはほぼ同等の輝度、可視光の反射特性を有することが分かった。
さらに、実施例2および8から、溶媒として有機溶媒または水を用いても、2つの実施例の白色反射フィルムは、可視光の反射特性、輝度、塗膜の白色反射フィルムに対する密着性のいずれも向上が見られた。
【産業上の利用可能性】
【0064】
本発明の発光性紫外線遮蔽塗料とそれを用いた塗膜および白色反射基材は、屋内照明の背面板、誘導灯、広告灯の照明装置、自動車のメーターパネルなどにも適用でき、特に、誘導灯、広告灯の照明装置に適用した場合に、従来と同等の輝度を得るために必要な電気エネルギーを節約することができる。
【図面の簡単な説明】
【0065】
【図1】本発明の液晶用バックライトユニットの一実施形態を示す概略断面図であり、直下方式の液晶用バックライトユニットの例である。
【符号の説明】
【0066】
10 液晶用バックライトユニット
11 白色反射基材
12 塗膜
13 蛍光ランプ
14 光拡散板
15 レンズシート

【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属酸化物と樹脂とを含有してなる紫外線遮蔽塗料に蛍光体を添加してなることを特徴とする発光性紫外線遮蔽塗料。
【請求項2】
前記蛍光体の含有率は3重量%以上かつ10重量%以下であることを特徴とする請求項1に記載の発光性紫外線遮蔽塗料。
【請求項3】
金属酸化物と樹脂とを含有してなる紫外線遮蔽塗料に蛍光体を添加してなる発光性紫外線遮蔽塗料を用いて形成してなることを特徴とする塗膜。
【請求項4】
基材上に金属酸化物と樹脂とを含有してなる紫外線遮蔽塗料に蛍光体を添加してなる発光性紫外線遮蔽塗料を用いて形成してなる塗膜を設けてなることを特徴とする白色反射基材。
【請求項5】
金属酸化物と樹脂とを含有してなる紫外線遮蔽塗料に蛍光体を添加してなる発光性紫外線遮蔽塗料を用いて形成してなる塗膜を設けてなる白色反射基材を備えてなることを特徴とする液晶用バックライトユニット。



【図1】
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【公開番号】特開2008−303356(P2008−303356A)
【公開日】平成20年12月18日(2008.12.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−154026(P2007−154026)
【出願日】平成19年6月11日(2007.6.11)
【出願人】(000183266)住友大阪セメント株式会社 (1,342)
【Fターム(参考)】