説明

発光性表示体及びその製造方法

【課題】発光素子を用いた表示体において、発光素子の発光時と非発光時とで異なる意匠性を表示できるとともに、発光素子の非発光時において立体感に優れる意匠性を表示できる表示体を提供する。
【解決手段】発光性表示体2において、発光素子を備える発光素子層4と、発光素子層4から発光される光の照射方向側に配置され、光透過性パターン20と前記発光素子層を指向する光不透過性パターン18とを有する意匠層14と、発光素子層4と意匠層14の光不透過性パターン18との間に形成されるこれらを空間的に離間する層間ギャップ8とを備えるようにする。層間ギャップを備えることにより、非発光時において、立体感に優れる意匠を表示できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発光性表示体に関し、詳しくは、発光素子を用いた表示体に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、発光性を備える表示体としては、例えば、下から発光素子層、透明な離間層及び半光透過性パターンを有する意匠層を備える車両用内装材がある(特許文献1)。この表示体によれば、意匠層に光半透過性パターンを有しており、発光素子層の発光時(夜間)と非発光時(昼間)とでは異なる意匠を発揮することができる。すなわち、昼間においては、光半透過性パターンにおける模様がそのまま意匠を構成し、夜間においては、発光素子層の発光により光半透過性パターンの明度が相対的に低下して発光素子層における発光デザインが強調されるようになっている。
【特許文献1】特開2003−15564
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、こうした積層構成においては、発光素子の発光時と非発光時には異なる意匠を表示できるものの、模様の明瞭性に欠ける傾向があった。また、発光素子層の非発光時における意匠は平坦的であり、夜間における意匠に比べて装飾性が劣る傾向にあった。
【0004】
そこで、本発明の一つの目的は、発光素子を用いた表示体において、発光素子の発光時と非発光時とで異なる意匠性を表示できるとともに、発光素子の非発光時において立体感に優れる意匠を表示できる表示体及びその製造方法を提供することである。また、本発明の他の一つの目的は、発光素子を用いた表示体において、発光素子の非発光時において輪郭の明瞭な意匠を表示できる表示体及びその製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは、上記課題について検討したところ、発光素子層と意匠層の間を隔てる空間(層間ギャップ)を設けることにより、発光素子の非発光時において立体感に優れる意匠を表示できることを見出した。また、意匠層が備える光不透過性パターンの輪郭に沿う光透過性のパターン間ギャップを設けることにより、発光素子の発光時における光不透過性パターンの輪郭の明瞭性が向上することを見出した。すなわち、本発明によれば、以下の手段が提供される。
【0006】
本発明によれば、発光素子を備える発光性表示体であって、前記発光素子を備える発光素子層と、該発光素子層から発光される光の照射方向側に配置され、光透過性パターンと前記発光素子層を指向する光不透過性パターンとを有する意匠層と、前記発光素子層と前記意匠層の前記光不透過性パターンとの間に形成されるこれらを空間的に離間する層間ギャップと、を備える、発光性表示体が提供される。
【0007】
この態様においては、前記層間ギャップは、少なくとも前記光不透過性パターンとその周囲に存在する光透過性パターンの界面近傍の領域と前記発光素子層との層間に備えられることが好ましい。また、前記層間ギャップは、前記光不透過性パターンの外部から光が入射したときに前記光不透過性パターンの陰影が前記発光素子層の表面に投影可能に形成されていることが好ましい。さらに、前記層間ギャップは、前記発光素子層と前記意匠層との間に配置される少なくとも接着剤を有する中間層により形成されることが好ましい。
【0008】
この態様においては、前記光不透過性パターンとその周囲に存在する他の光不透過性パターンとの間を空間的に離間する光透過性のパターン間ギャップを備えることができる。また、前記パターン間ギャップは、前記光不透過性パターンの輪郭に倣うリム状とすることができる。さらに、前記パターン間ギャップを構成する他の光不透過性パターンは、前記光不透過性パターンの輪郭に沿って連続状の輪郭を有することができる。
【0009】
この態様においては、前記意匠層は、全ての前記光不透過性パターンを、前記発光素子層側を指向して保持する光透過性樹脂層を有していることが好ましい。また、前記発光素子層は、非発光時において淡色系を呈する面を前記意匠層側に有することが好ましい。
【0010】
前記意匠層における前記光不透過性パターンは、印刷インク層を有していてもよい。前記光不透過性パターンは、鏡面光沢を備える層を有していてもよい。また、前記光透過性パターンは、光透過性インク層を有していてもよい。また、前記光不透過性パターンは、文字又は記号を有することができる。
【0011】
また、本発明によれば、発光素子を備える発光性表示体の製造方法であって、光透過性層の表面に光不透過性パターンと光透過性パターンとを形成して意匠層を作製する工程と、作製した意匠層と前記発光素子を備える発光素子層とを、少なくとも前記光不透過性パターン及びその周囲の光透過性パターンの界面近傍と前記発光素子層との間を空間的に離間する層間ギャップを備えるように複合化する工程と、を備える、製造方法が提供される。
【0012】
この態様においては、前記意匠層又は前記発光素子層には前記意匠層を複合化するための接着面を有する中間体が付与されていることが好ましい。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
本発明の発光素子を備える発光性表示体は、前記発光素子を備える発光素子層と、該発光素子層から発光される光の照射方向に配置され光不透過性パターンと光透過性パターンとを有する意匠層と、前記発光素子層と前記意匠層の前記光不透過性パターンとの間においてこれらを空間的に離間する層間ギャップと、を備えることを特徴としている。
【0014】
本発明の発光性表示体によれば、前記発光性素子層の非発光時、すなわち、前記発光性表示体の外部がより明るい状態においては、前記意匠層の外部から前記光不透過性パターンに照射される光により、前記光不透過性パターンの陰影が前記発光性素子層の表面に投影される。このとき、前記層間ギャップを備えることにより、前記光不透過性パターンの陰影がより大きく発光性素子層表面に投影されるため、光不透過性パターンが立体感を持って表示される。また、本発明の発光性表示体は、前記光不透過性パターンとその周囲に存在する光不透過性パターンとの間を空間的に離間するパターン間ギャップとを備えることができる。こうした発光性表示体によれば、前記発光性素子層の発光時、すなわち、前記発光性表示体の外部がより暗い状態においては、前記発光性素子層から照射される光が前記パターン間ギャップを通じて前記発光性表示体の外部に放射されるため、前記光不透過性パターンの輪郭が明瞭に表示される。
【0015】
また、本発明の発光性表示体の製造方法によれば、発光素子を備える発光性表示体の製造方法であって、光透過性層に表面の一部に光不透過性パターンを形成して意匠層を作製する工程と、作製した意匠層と前記発光素子を備える発光素子層とを、少なくとも前記光不透過性パターン及びその近傍と前記発光素子層との間を空間的に離間する層間ギャップを備えるように複合化する工程と、を備えることを特徴としている。本発明の製造方法によれば、意匠層の光不透過性パターンによる意匠を、透明な樹脂などの実質層を用いることがないため、製造が容易でしかも使用材料を低減しつつ、発光素子層の非発光時においても立体的な意匠を表示可能な表示体を製造できる。
【0016】
以下、本発明の実施形態について、本発明の発光性表示体について適宜図面を参照しながら説明し、次いでその製造方法について説明する。図1には、本発明の発光性表示体2を示し、図2には、発光性表示体2の発光時と非発光時における表示層の表示状態を示し、図3には、発光性表示体の製造工程について示す。
【0017】
(発光性表示体)
本発明の発光性表示体2は、全体としてプレート状又はシート状の外形を有しており、意匠が視認される側から遠い部分より発光素子層4と層間ギャップ8と意匠層14とを備えている。
【0018】
<発光素子層>
発光素子層4は、平面的な発光面4aを形成することができる素子を備えた層であればよく、特に限定されない。したがって、無機エレクトロルミネッセンス(EL)発光素子や発光ダイオード(LED)素子などの公知の発光素子を用いることができる。好ましくは、より薄層化が可能な無機EL発光素子である。発光素子層4は、意匠層14を指向する全面を発光面4aとして有していてもよいが、より表層側の意匠層との関係において必要な部分のみに発光パターン(発光領域)を有していてもよい。発光パターンは、装飾的なパターンであってもよいし、機能上必要な部位にのみ発光させる機能的パターンであってもよい。
【0019】
発光素子層4の発光面4aは、その非発光時において表示体2の外部から視認されるとき、淡色系を呈することが好ましい。淡色系を呈することで、非発光時に光不透過性パターン18による陰影を発光素子層4の表面に明瞭に投影できるからである。なお、発光素子層4の発光面4aを淡色系として視認させるようにするには、発光素子層の発光素子自体を調整することでも可能であるが、後述する光透過性パターン20におけるカラーフィルターの材料色との調整によっても可能である。
【0020】
装飾的なパターンとは、例えば、意匠層が保持する光不透過性パターンや光透過性パターンと組み合わされて視認されたとき意匠を構成するようなパターンである。機能的パターンとは、例えば、発光時に必要とされる領域にのみ発光パターンを形成するような場合が該当する。また、発光素子層4は、発光強度が連続的又は不連続的に変化する発光パターンを有していてもよい。
【0021】
発光素子層4は、発光に必要な電力を供給可能に導線が配線されて電源に接続されるようになっている。また、発光素子層4は、発光時と非発光時とを切替え可能に構成されている。発光素子層4への電力の供給の開始と停止とは、制御されていてもよいし人為的で操作されるようになっていてもよく、特に限定されない。例えば、周囲の明るさや発光性表示体2を装着した車両などにおける使用者の操作に関連付けられて制御されるか又は人為的に操作可能に構成されている。
【0022】
<意匠層>
意匠層14は、こうした発光素子層4から空間を置いた上方(視認側)に備えられている。意匠層14は、光透過性層16に保持される光不透過性パターン18と光透過性パターン20とを備えている。
【0023】
<光透過性層>
光透過性層16の材質は特に問わない。光を透過できる限り樹脂製であっても、ガラスなど無機材料製であってもよいが、可撓性等を考慮すると樹脂製であることが好ましい。また、光透過性層16における光透過性とは、発光素子層4が発光する光の少なくとも一部及び外部からの光の少なくとも一部が透過して表示体2において意匠を表示できる程度であればよい。したがって、光透過性層16は、スモーク調の表面処理がなされていてもよい。また、光透過性層16は、無色又は無色に近いことが好ましいが、着色されていてもよい。
【0024】
<光不透過性パターン>
光透過性層16は、光不透過性パターン18をその表面に保持していてもよいし、その光透過性層16の内部に存在していてもよいが、製造の容易性や意匠性を考慮すると、光不透過性パターン18は、表示体2における光透過性層16の表面に保持されていることが好ましい。また、光透過性層16は、好ましくは、発光素子層4を指向する側に少なくとも一つの光不透過性パターン18を保持している。
【0025】
光不透過性パターン18の少なくとも一つは発光素子層4を指向して備えられている限り、他の光不透過性パターン18は、光透過性層16の両方の面に備えられていてもよいし、片方の面にのみに備えられていてもよい。光透過性層16の両面に備えられることで表示体2としての意匠を形成することができる。光不透過性パターン18の全てが、光透過性層16の発光素子層4を指向する面に保持されていることが好ましい。こうすることで、光透過性層16をそれ自体光不透過性パターン18の保護層として機能させることができるとともに、製造工程も簡略化できる。
【0026】
光不透過性パターン18は、光透過性層16よりも低い光透過性を示し、外部からの光を反射して意匠を表示できるとともに、発光素子層4を発光させたときに、発光素子層4からの光を遮断して意匠を表示できる程度の光不透過性を有している。
【0027】
光不透過性パターン18は、光透過性層16の表面に厚みを持って形成されていることが好ましい。こうした光不透過性パターン18は、例えば、スクリーン印刷やインクジェット印刷など各種印刷手法による印刷層又は金属種を、真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法といった従来公知の物理的気相成長方法によって供給して形成した層であってもよい。
【0028】
光不透過性パターン18は1個であっても複数個であってもよい。また、光不透過性パターン18はどういったパターンを形成してもよい。その輪郭により意匠を表示できるような柄、記号や文字であることが好ましい。こうしたパターンであると、発光素子層4の発光時においてその輪郭により明瞭な意匠を表示できる。
【0029】
光不透過性パターン18は、金属調の外観や鏡面光沢を呈することが好ましい。光不透過性パターン18がこうした外観であると、発光素子層4の非発光時においては、こうした外観を呈し、発光時においては、光不透過性パターン18は陰影を呈するようになる。特に、光不透過性パターン18は鏡面光沢を呈することが好ましい。鏡面光沢を有する場合には、非発光時においてはもちろんのこと非発光時においても光透過性パターン20を透過する発光素子層4からの光によって良好な意匠を表示できる。
【0030】
鏡面光沢を呈する光不透過性パターン18は、通常の印刷インク等の顔料や染料を含む着色材料によっても形成することができる。スクリーン印刷やオフセット印刷を始めとする印刷や転写によって鏡面光沢を有する光不透過性パターン18を形成する場合、印刷インクとしては、アルミニウム箔片を有する印刷インクを用いることが好ましい。なかでも、厚みが0.5μm以下で箔面積が20μm以上2000μm以下であるアルミニウム箔片を75%以上含有するアルミニウム箔とバインダーと用材とを含んでいるインクを用いることが好ましい。こうしたインクを用いることで、高度な鏡面光沢を得ることができ、結果として、光透過性層16の一方の面にこうした印刷インク層を形成して光透過性層16の他方の面から見ても十分な鏡面光沢を呈することができる。こうした印刷インクとしては、例えば、特開平10−158561号公報に記載されているものを用いることができる。印刷により光不透過性パターン18を形成する場合、インク量やドット密度等により光不透過性パターン18の光透過率を調整できる。
【0031】
また、金属調の外観を備える光不透過性パターン18は、インジウム、スズ、アルミニウム及びクロム等のいずれかの金属種単体、あるいはこれらのいずれかあるいは2種以上を含む合金の金属種を従来公知の物理的気相成長方法により付与することによっても形成できる。なお、光不透過性パターン18の光透過率等は上記した各種方法における条件を調節することにより調整することができる。また、このようなフィルムは既に容易に入手することができる。また、こうした物理的気相成長法によって金属調の光不透過性パターン18を形成する場合には、所望の形状に開口部を備えるマスクを介して気相成長させることによりパターニングが可能である。
【0032】
なお、鏡面光沢や金属調の外観を有する光不透過性パターン18は、印刷や物理化学的気相成長法によらない他の製法によるものであってもよい。かかる製法としては、めっき法等を採用することができる。また、光不透過性パターン18を構成する材料は、上記した金属種やインク等の着色材料に限定するものでなく、公知の各種の材料を使用できる。例えば、セラミックス製の粉状体や繊維状体の他、合成あるいは天然繊維を上記したドット材料として使用することができる。
【0033】
<光透過性パターン>
図1に示すように、光透過性パターン20は、光透過性層16の光不透過性パターン18が形成されない領域である。例えば、光透過性層16の十分に広い表面の一部に光不透過性パターン18を備える場合、その光不透過性パターン18の周囲は光透過性パターン20として構成される。光透過性パターン20は、単に光透過性層16上の空間であってもよいが、光透過性層16の表面に光透過性の印刷層を形成してもよい。例えば、カラーフィルター等となる光透過性材料(インク)を印刷層として形成することで、発光素子層4の材料自体(無機EL材料)を替えることなく発光素子層4の発光色を変えることができる。
【0034】
<その他のパターン>
意匠層14は、光不透過性パターン18や光透過性パターン20のほかに、光半透過性パターンを備えることができる。光半透過性パターンとは、光透過性層16の表面に施されたパターンであって、光透過性層16の一方から他方に対して光が透過する状態のときに、より明るい側から意匠を見た場合、その意匠が視認され、より暗い側から見た場合には、基板のより明るい側を透視しやすいようにデザインされたパターンである。かかる光半透過性パターンを意匠層14に備えることにより、非発光時に表示体2を見るとき、光半透過性パターンを明るい側から見ることになるため、そのパターンによる意匠が表示される。一方、発光時には、光半透過性パターンを暗い側から見ることになるため、明るい側が透視されるように表示される、すなわち、発光素子層4の発光面4aの状態がそのまま表示されることになり、光半透過性意匠パターンに係わらず、発光素子層の発光パターンが表示される状態となる。光半透過性パターンは、光不透過性パターン18と同一面に形成されていることが好ましい。
【0035】
こうした光半透過性パターンは、パターンを細かいドット状の集合体で構成するとともに適度に光透過率を調整することにより得ることができる。光半透過性パターンは、光不透過性パターン18と同様、通常の着色層として以外に、金属調や鏡面光沢を呈するように構成でき、その光の透過率は、印刷手法や物理的気相成長法等いずれの方法であっても調整することができる。
【0036】
<パターン間ギャップ>
光不透過性パターン18を保持する同一面上の周囲には、この光不透過性パターン18の輪郭にほぼ沿うように他の1又は2以上の光不透過性パターン19を備えていることが好ましい。こうした他の光不透過性パターン19を備えることで、光不透過性パターン18の輪郭に沿うように、光不透過性パターン18間を空間的に離間する光透過性のパターン間ギャップ28を備えることができる。発光素子層4の発光時にはこのパターン間ギャップ28を通過する光により光不透過性パターン18の輪郭に沿って発光されることになる。また、発光素子層4の非発光時には、こうしたパターン間ギャップ28から発光素子層4を視認することができる。
【0037】
光不透過性パターン18の輪郭に沿ってその周囲に設けられる他の光不透過性パターン19は、光不透過性パターン18の輪郭に沿って連続状の輪郭を有することが好ましい。より好ましくは、光不透過性パターン18に対してパターン間ギャップ28を付与する他の光不透過性パターン19の数が数個以下であることが好ましく、さらに好ましくは一つの他の光不透過性パターン19であることが好ましい。パターン間ギャップ28を形成する他の光不透過性パターン19の輪郭の連続性が高まることで、発光時における光不透過性パターン18の輪郭の明瞭性を向上できる。ここで、例えば、光不透過性パターン18が文字の場合には、その文字の輪郭に沿って形成される文字枠状の不透過性パターンがここでいう他の光不透過性パターン19に該当する。
【0038】
また、こうして一つの光不透過性パターン18とその周囲に位置される他の光不透過性パターン19によって構成されるパターン間ギャップ28は、光不透過性パターン18の輪郭から0.5mm以上の幅を有していることが好ましい。0.5mm以上であれば、発光素子層4の非発光時においても発光素子層4を視認することができるとともに、発光素子層4の発光時において、パターン間ギャップ28を透過する光量を確保できるからである。
【0039】
さらに、こうしたパターン間ギャップ28は、光不透過性パターン18の輪郭に沿って輪郭からほぼ一定距離のギャップを形成していることが好ましい。すなわち、光不透過性パターン18の輪郭に沿うリム状であることが好ましい。こうした形態であると、特に、発光素子層4の発光時において、パターン間ギャップ28を通じて透過する光によって明瞭に光不透過性パターン18の輪郭を表示できる。この場合、パターン間ギャップ28は、光不透過性パターン18の輪郭から1mm以下の幅であることが好ましい。1mm以下であれば、発光素子層4の発光時においてパターン間ギャップ28を透過する光によって明瞭な発光パターン及び光不透過性パターン18の意匠を表示できるからである。さらに好ましくは0.7mm以上0.9mm以下である。
【0040】
<層間ギャップ>
層間ギャップ8は、発光素子層4の発光面4aと意匠層14の発光素子層4を指向して備えられる光不透過性パターン18との間に形成される空間である。層間ギャップ8は、発光素子層4と意匠層14を隔てて配置できる中間体10をこれらの層間に介在させることにより形成することができる。中間体10の表示体2の厚み方向における厚みに基づいて、層間ギャップ8の空間高さがおおよそ決定される。なお、ここで、層間ギャップ8の空間高さとは、発光素子層4の発光面4aから光不透過性パターン18の下面までの表示体2の厚み方向に沿った距離を意味している。
【0041】
中間体10は、発光素子層4や意匠層14の一部であってもよいが、好ましくは別個の部材として構成される。中間体10はどういった形態で発光素子層4と意匠層14とを隔てて固定していてもよいが、好ましくは、中間体10の発光素子層4側と意匠層14側にそれぞれ接着剤層を有している。こうした形態によれば、簡易に表示体2を構成することができる。
【0042】
層間ギャップ8は、意匠層14と発光素子層4の発光面4aとの層間の全ての領域に存在していなくてもよいが、層間ギャップ8は、少なくとも、光不透過性パターン18とその周囲に存在する光透過性パターン20との界面近傍の領域と発光素子層4の発光面4aとの間に備えられている。こうしたパターンの境界領域において層間ギャップ8が形成されていることにより、非発光時において、光不透過性パターン18の外部から光が入射したときに光不透過性パターン18の陰影が発光素子層4の発光面4a(この時点は発光していない。)に投影され、それにより効果が発揮されるからである。
【0043】
層間ギャップ8の空間高さは特に限定しないが、例えば、50μm〜300μm程度とすることができる。この範囲であると適度な立体感が得られるからである。より好ましくは100μm〜200μmである。この範囲であると薄くて適度な立体感が得られるからである。
【0044】
表示体2の最表面には、必要に応じて保護層を設けることができる。保護層は光透過性であることが好ましい。なお、光透過性層16の発光素子層4を指向する側に全ての光不透過性パターン18を形成する場合には、光透過性層16に保護層機能が付与されていてもよい。
【0045】
次に、このようにして構成した本発明の表示体2の意匠効果について説明する。図2(a)には、表示体2において発光素子層4が非発光時の状態の断面図と平面図とを示している。図2(a)に示すように、表示体2の外部が表示体2の内部よりもより明るい状態となっている。この状態は、主として昼間に形成される状態である。
【0046】
こうした状態においては、表示体2の外部から表示体2に向かう光の一部が光不透過性パターン18により反射され、また他の一部は光透過性パターン20を通過するため、光不透過性パターン18に基づく意匠が表示される。このとき、表示体2が層間ギャップ8を備えるために、光不透過性パターン18の陰影が発光素子層4の発光面4a(この時点においては発光していない)に投影される。発光面4aに投影された陰影により、光不透過性パターン18が表示体2の表面に浮き出るように立体的に表示される。また、層間ギャップ8を備えることで、何ら特別な材料や構成を用いることなく容易に立体感を得ることができる。
【0047】
また、このとき、光不透過性パターン18にパターン間ギャップ28が形成されている場合には、光不透過性パターン18とパターン間ギャップ28を挟んで配置された周囲の光不透過性パターン19の陰影も発光面4aに投影されることでより一層光不透過性パターン18の立体感が強調されるようになっている。
【0048】
さらに、光不透過性パターン18が金属調、特に鏡面光沢を有するときには、こうした立体感をより強めることができる。さらにまた、発光面4aが表示体2の外部から淡色系を呈するように視認される場合には、発光面4aにおける陰影が強調されて立体感も増大される。
【0049】
また、図2(b)には、表示体2において発光素子層4が発光時の状態の断面図と平面図と示している。図2(b)に示すように、表示体2の内部が表示体2の外部よりもより明るい状態となっている。この状態は、主として夜間に形成される状態である。
【0050】
こうした状態においては、発光素子層4の発光面4aから放射される光は、層間ギャップ8を通過し、パターン間ギャップ28などの光透過性パターン20を透過して表示体2の外部に到達する。このため、明るい光透過性パターン20と暗い光不透過性パターン18とに基づく意匠が表示される。
【0051】
また、表示体2がパターン間ギャップ28を備える場合には、暗い光不透過性パターン18の輪郭に沿って発光面4aからの光が放射されるため、光不透過性パターン18の輪郭を強調するとともに暗部である光不透過性パターン18を浮き上がるようにシャープに表示できるようになる。このとき、光不透過性パターン18が金属調、特に鏡面光沢性を有する場合には、その外観の特徴や明瞭性を増大することができる。特に、パターン間ギャップ28が0.7mm以上0.9mm以下の幅であるときにその傾向が顕著である。
【0052】
なお、表示体2において、光半透過性パターンを備える場合には、非発光時には、当該光半透過性パターンに基づくパターンを表示し、発光時には、発光面4aからの光を透過させるよう表示する。光半透過性パターンを併用することで、発光時と非発光時の意匠の表示を大きく変え、ひいては異なる意匠を表示できる。
【0053】
以上説明したように、本発明の表示体によれば、発光素子層の発光時と非発光時とでそれぞれ印象の異なる意匠を表示できるとともに、発光素子層の非発光時において立体感に優れる意匠を表示できる。また、発光素子の非発光時において輪郭の明瞭な意匠を表示することができる。
【0054】
本発明の表示体は、物体の表面に装飾性を付与することができるため建築用の内外装、家具、生活用品、車両の内外装等における装飾用プレートとして用いることができる。車両用のプレートとしては、例えば、スカッフプレート、ドアトリム装飾プレート、ダッシュボード周り装飾プレート、インドアパネル周りの装飾プレート、コンソール(ボックス)周りの装飾プレートなどが挙げられる。なお、広告用を含む各種の表示用プレートとして用いることができる。また、発光素子層を含め全ての層を可撓性を有する層で構成して表示体自体に可撓性を付与することで、曲面への取り付けが可能であり、かつ取り付け作業も容易に達成される表示体とすることができる。
【0055】
次に、本発明の表示体を製造するのに好ましい方法について説明する。例えば、図2に例示する本発明の表示体2を作製する工程の一例を図3に示す。図3に示すように、まず、意匠層14と発光素子層4とを準備する。意匠層14は、例えば次のようにして準備できる。まず、光透過性層16としての光透過性のシート状体の少なくとも片面に光不透過性パターン18を形成する。光不透過性パターン18の形成は、既に述べたようにその手法は特に限定されない。図3に示す一例では、鏡面光沢を発現する印刷インクを用いて、鏡面光沢を有する光不透過性パターン18としての文字を印刷する。また、図3においては、同一面にこの光不透過性パターン18の周囲にその輪郭に対して一定の幅を置いて通常の印刷インクで他の光不透過性パターン19を印刷する。例えば、この他の光不透過性パターン19は、文字を構成する光不透過性パターン18に対して外枠を形成するように構成される。なお、これらの光不透過性パターン18、19の形成により、パターン間ギャップ28であって同時に光透過性パターン20が形成される。このようにして意匠層14を形成する。
【0056】
なお、光透過性パターン20の領域にカラーフィルターとして機能する材料あるいは通常の着色剤の層を形成することができる。光透過性パターン20においては光透過性インクを使用して光透過性を維持するようなフィルター層又は着色層を形成することができる。
【0057】
次に、こうして準備された意匠層14と別途準備された発光素子層4とを層間ギャップ8を形成可能に複合化する。こうした複合化のためには、例えば、意匠層14及び発光素子層4のいずれかあるいは双方にこれらを所定距離離間できる中間体10を付与することができる。中間体10の好ましい厚みについては既に説明したとおりである。中間体10は光透過性層16及び/又は発光素子層4の周縁の全体に沿って付与されることが好ましいが、本発明の表示体における作用効果を発現できる層間ギャップ8が形成される限り、必ずしも周縁全体に形成されていなくてもよい。中間体10としてその少なくとも片面、好ましくは両面に接着剤層を有するものを用いることにより、積層工程を簡略化することができる。
【0058】
こうして意匠層14と発光素子層4とを層間ギャップ8を形成可能に複合化することで、表示体2を得ることができる。
【0059】
本発明の製造方法によれば、実質層としては意匠層14と発光素子層4とを備えるだけでよく、従来のように立体感を付与するために透明な樹脂層を備える必要がない。また、中間体10等により発光素子層4と意匠層14との間を空間的に離間させるだけで、特に材料を要することがないので材料的にメリットがあるほか、工程も簡略化することができる。
【実施例】
【0060】
次に、本発明について具体例を例示して説明する。なお、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。まず、光透過性層に相当するハードコート付ポリカシートに意匠インク(光不透過性性インク)でスクリーン印刷を行い、乾燥した。その後、このインク層上に重ねて同じパターンで前記意匠インク層の光不透過性を向上させる裏打ちインク層をスクリーン印刷で形成し、乾燥し、光不透過性の意匠インクパターン(本発明の他の光不透過性パターンに相当する。)を作成した。次いで、この印刷品に、ミラーインクを所定のパターンでスクリーン印刷し、乾燥し、このミラーインク層に重ねて同一パターンで前記ミラーインク層の光不透過性を向上させる裏打ちインク層をスクリーン印刷で形成し、乾燥してミラーインクパターン(本発明の光不透過性パターンに相当する。)を作成した。この印刷品の意匠インクパターン上に両面テープ(本発明の中間体に相当する。)を貼り付けて、所定の形状の抜き加工を行い、この抜き加工後の部品と発光素子を両面テープで貼り合わせて、発光性表示体を作製した。この表示体を明るい所にて光透過性層から観察したところ、ミラーインクで印刷した光不透過性パターンが立体的に視認された。また、この表示体を暗所にて発光素子を発光させた状態で観察したところ、ミラーインクで印刷した輪郭をシャープに視認できた。
【図面の簡単な説明】
【0061】
【図1】本発明の発光性表示体の一例を示す図である。
【図2】本発明の発光性表示体による意匠の表示形態を示す図である。
【図3】本発明の発光性表示体の製造工程の一例を示す図である。
【符号の説明】
【0062】
2 発光性表示体、4 発光素子層、4a 発光面、8 層間ギャップ、10 中間体、14 意匠層、16 光透過性層、18、19 光不透過性パターン、20 光透過性パターン、28 パターン間ギャップ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
発光素子を備える発光性表示体であって、
前記発光素子を備える発光素子層と、
該発光素子層から発光される光の照射方向側に配置され、光透過性パターンと前記発光素子層を指向する光不透過性パターンとを有する意匠層と、
前記発光素子層と前記意匠層の前記光不透過性パターンとの間に形成されるこれらを空間的に離間する層間ギャップと、
を備える、発光性表示体。
【請求項2】
前記層間ギャップは、少なくとも前記光不透過性パターンとその周囲に存在する光透過性パターンの界面近傍の領域と前記発光素子層との層間に備えられる、請求項1に記載の発光性表示体。
【請求項3】
前記層間ギャップは、前記光不透過性パターンの外部から光が入射したときに前記光不透過性パターンの陰影が前記発光素子層の表面に投影可能に形成されている、請求項1又は2に記載の発光性表示体。
【請求項4】
前記層間ギャップは、前記発光素子層と前記意匠層との間に配置される少なくとも接着剤を有する中間層により形成される、請求項1〜3のいずれかに記載の発光性表示体。
【請求項5】
前記光不透過性パターンとその周囲に存在する他の光不透過性パターンとの間を空間的に離間する光透過性のパターン間ギャップを備える、請求項1〜4のいずれかに記載の発光性表示体。
【請求項6】
前記パターン間ギャップは、前記光不透過性パターンの輪郭に倣うリム状である、請求項5に記載の発光性表示体。
【請求項7】
前記パターン間ギャップを構成する他の光不透過性パターンは、前記光不透過性パターンの輪郭に沿って連続状の輪郭を有している、請求項5又は6に記載の発光性表示体。
【請求項8】
前記意匠層は、前記光不透過性パターンを、全ての前記発光素子層側を指向して保持する光透過性樹脂層を有している、請求項1〜7のいずれかに記載の発光性表示体。
【請求項9】
前記発光素子層は、非発光時において淡色系を呈する面を前記意匠層側に有している、請求項1〜8のいずれかに記載の発光性表示体。
【請求項10】
前記意匠層における前記光不透過性パターンは、印刷インク層を有している、請求項1〜9のいずれかに記載の発光性表示体。
【請求項11】
前記光不透過性パターンは、鏡面光沢を備える層を有している、請求項1〜10のいずれかに記載の発光性表示体。
【請求項12】
前記光透過性パターンは、光透過性インク層を有している、請求項1〜11のいずれかに記載の発光性表示体。
【請求項13】
前記光不透過性パターンは、文字又は記号を有している、請求項1〜12のいずれかに記載の発光性表示体。
【請求項14】
発光素子を備える発光性表示体の製造方法であって、
光透過性層の表面に光不透過性パターンと光透過性パターンとを形成して意匠層を作製する工程と、
作製した意匠層と前記発光素子を備える発光素子層とを、少なくとも前記光不透過性パターン及びその周囲の光透過性パターンの界面近傍と前記発光素子層との間を空間的に離間する層間ギャップを備えるように複合化する工程と、
を備える、製造方法。
【請求項15】
前記意匠層又は前記発光素子層には前記意匠層を複合化するための接着面を有する中間体が付与されている、請求項14に記載の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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