説明

発光性透明ポリマーベースフィルム系、およびその製造方法

【課題】 製造が簡単な、広い領域用の、発光性の、純粋にポリマーをベースとするフィルム系を提供すること。
【解決手段】 a)第一の透明プラスチックフィルムと、
b)プラスチックフィルムa)の一方の側に付与された有機透明電極被膜と、
c)被膜b)および被膜d)に隣接した、硬度ショアA75〜ショアD55を有する熱可塑性ポリウレタンと、フィルムc)の総重量に基づいて5〜95重量%の量でエレクトロルミネセンス顔料を含んでなる、厚さ10〜200μmを有する透明フィルムと、
d)プラスチックフィルムe)の一方の側に付与された有機透明電極被膜と、
e)第二の透明プラスチックフィルム
を含んでなる、発光性、透明および柔軟性ポリマーベースフィルム系。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発光性の、透明な、および必要に応じて柔軟性のポリマーベースフィルム系、その製造方法およびその使用に関する。
【背景技術】
【0002】
国際公開WO 03/037031(特許文献1)および米国特許US-A 5,780,965(特許文献2)は、成形可能であり、材料が注入され得る背面上に存在する発光性フィルム系を記載する。第一の製造工程において、グラフィックデザイン、正面用材料、透明電極、無機ルミネセンス剤および背面電極用材料は、透明基板上に印刷される。このフィルム系が直接使用される場合、背面は、例えば、保護フィルムによって、絶縁される。しかしながら、系は、印刷方法の後に予備成形され、次いで射出成形機中に挿入され、ここでその背面上に材料が注入されることも可能である。適当な様式で電極に結合した接点によって、交流電圧電界(例えば、110V、400Hz)を、インバーターを用いて付与し、そして発光用のルミネセンス剤を励起することが可能である。米国特許US-A 5,780,965(特許文献2)において、透明電極に使用された材料は、例えば、インジウムドープ酸化スズ(ITO)である。国際公開WO 03/037031(特許文献1)には、導電性物質の製造および加工のためのBaytron(登録商標)化学薬品(これらはH.C. Stark GmbH & Co. KGから市販されている)が開示されている。ITOに対するBaytron(登録商標)化学薬品の利点は、それらのより良好な成形性である。ルミネセンス剤(これは一般にドープされた酸化スズまたは硫化スズである)は、スクリーン印刷方法に適当なペースト状で頒布されている。このようなルミネセンスフィルム系は、小領域の用途に実質的に使用されている。なぜなら、とりわけ、製造が複雑であり、コストが高いためである。
【特許文献1】国際公開WO 03/037031
【特許文献2】米国特許US-A 5,780,965
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
したがって、本発明の目的は、製造が簡単な、広い領域用の、発光性の、純粋にポリマーをベースとするフィルム系を提供することにある。
【0004】
以下により十分に記載した、エレクトロルミネセンス顔料を含有する、本発明のフィルム系によって、本目的を達成することが可能であった。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明のフィルム系において、発光機能は、エレクトロルミネセンス顔料により与えられる。本発明のフィルム系は、柔軟性で成形可能であり、その背面に一以上のポリマーを注入することができる。さらに、本発明の系は、透明であり、したがって、多くの適用分野に使用され得る。
【0006】
本発明は、以下の構造:
a)第一の透明プラスチックフィルムと、
b)第一のプラスチックフィルムa)の内側に配置された第一の有機透明電極被膜と、
c)被膜b)および被膜d)に隣接した、(1)硬度ショアA75〜ショアD55を有する熱可塑性ポリウレタンと、(2)透明フィルムの総重量に基づいて5〜95重量%、特に好適には10〜50重量%の量で一以上のエレクトロルミネセンス顔料を含んでなる、厚さ10〜200μm、特に好適には20〜100μmを有する透明フィルムと、
d)プラスチックフィルムe)の内側に配置された第二の有機透明電極被膜と、
e)第二の透明プラスチックフィルム
を有することを特徴とする、発光性、透明および柔軟性ポリマーベースフィルム系を提供する。
【0007】
さらに、本発明は、発光性、透明および柔軟性ポリマーベースフィルム系の製造方法であって、ここで、
a)有機透明電極材料で一方の側が被覆された二つのプラスチックフィルムの各々は、それらのプラスチックフィルムの各々の被覆された側が他の被覆された側に向かい合うように配置され、
b)金属導体ベースの電気接点は、プラスチックフィルムの各々の透明電極材料被膜に付与され、および
c)硬度ショアA75〜ショアD55、好適にはショアA75〜ショアA88を有する熱可塑性ポリウレタンと、5〜95重量%、特に好適には10〜50重量%の量でエレクトロルミネセンス顔料を含んでなる、厚さ10〜200μm、特に好適には20〜100μmを有する透明フィルムは、プラスチックフィルムの各々の被覆された側に積層される、
方法を提供する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
使用される透明プラスチックフィルムは、各々、好適には、ポリカーボネート、ポリカーボネートブレンド、ポリエステル、熱可塑性エラストマーおよび/または熱可塑性ポリウレタンをベースとするフィルムである。第一および第二のプラスチックフィルムは、好適には同一材料からなる。ここで使用されるように、プラスチックフィルムには、複数のフィルムから構成される、任意のいわゆる複合フィルムも含まれる。
【0009】
有機透明電極材料は、好適には、ポリエチレン-ジオキシチオフェンをベースとする電極である。他の透明電極材料は、例えば、インジウム酸化スズ(ITO)、ポリアニリンまたは導電性インクである。電極層は、好適には100〜1000オームの導電率/表面抵抗を有するべきである。
【0010】
熱可塑性ポリウレタンフィルムに存在するエレクトロルミネセンス顔料は、任意の既知のカプセル化された、またはカプセル化されていない、好適にはカプセル化されていない、エレクトロルミネセンス顔料であり得る。
使用される熱可塑性ポリウレタンフィルムは、好適には、熱可塑性ポリウレタンおよびエレクトロルミネセンス顔料から押し出されたフィルムである。
使用される熱可塑性ポリウレタンは、硬度ショアA75〜ショアD55、好適にはショアA75〜ショアA88を有するべきである。
【0011】
本発明の好適な実施態様において、フィルム系の製造は、好適には、以下の方法により実施される。
各々の二つのプラスチックフィルム(例えばポリカーボネートフィルム)を、有機透明電極材料(例えば、H.C. Stark GmbH & Co. KGからBaytron(登録商標)の名称のもと市販されているもの)で、一方の側を被覆する。他の透明電極材料は、例えば、インジウム酸化スズ(ITO)、ポリアニリンまたは導電性インクである。電極層は、好適には100〜1000オームの導電率/表面抵抗を有するべきである。被覆されたフィルムを、乾燥し、そして材料(例えば、導電性銀)からなる接点を与える。同時に、エレクトロルミネセンス顔料を、熱可塑性ポリウレタン中に組み込み、そして押出して、厚さ10〜200μm、好適には20〜100μmを有するフィルムを形成する。エレクトロルミネセンス顔料の重量は、熱可塑性ポリウレタンフィルムの総重量に基づいて、5〜95重量%、好適には10〜50重量%である。次いで、被覆された側が互いに向かい合う、導電性ポリマーで一方の側が被覆された二つのプラスチックフィルムの各々、およびエレクトロルミネセンス顔料を供給した中間TPUフィルムを、例えば、ローラーアプリケーターによって積層する。積層は、好適には、高められた温度(例えば、80〜150℃、特に好適には100〜130℃)で実施する。このように製造されたフィルム系は、種々の用途に使用され得る。
【0012】
本発明のフィルム系は、成形され得、そしてプラスチックは、その背面に注入され得る。交流電圧(例えば、110V、400Hz)が、例えばインバーターによって、接点に付与される場合、フィルム系は、ルミネセンス系(ルミネセンスフィルム)として使用され得、または、必要に応じて背面に注入されたプラスチック材料を有する、適切に成形された系および成形品は、ルミネセンス成分として使用され得る。
本発明は、以下の実施例によって、より詳細に例示される。
【実施例】
【0013】
(エレクトロルミネセンスTPUフィルムの押出)
Bayer MaterialScience AGからのDesmopan(登録商標)588E ポリウレタン5kg(ショア硬度A=88、これはショア硬度Dの33に相当する)を100℃にて終夜乾燥した。ルミネセンス顔料(Lumilux Blau EL、Honeywell、Art. No. 54503)1kgをそこに添加した。成分を約30分間ドラムミキサー中で混合し、顔料をプラスチック顆粒に付着させた。Kuhne社からの押出機(3ゾーンスクリュー:直径37cmおよび長さ約890cm、脱ガスなし;電力消費量8Aで回転20rpmおよび圧力46bar)中で押出を実施した。溶融温度は、192℃であった。キャスティングおよびクーリングローラーは、温度15℃であった。フィルムテイクオフスピードは、5.4m/分であった。フィルムは、幅約25cmおよび厚さ約60μmであった。
【0014】
(導電性層によるプラスチックフィルムの被覆)
二つの125μm厚ポリカーボネートフィルム(Bayer MaterialScience AGからのMakrolon(登録商標))を、名称Baytron(登録商標)FのもとH.C. Stark GmbH & Co. KGから市販されている材料で被覆した。湿フィルム厚さは、24μmであった。湿フィルムを約120℃で乾燥した。結果物は、上記導電性ポリマーで一方の側が被覆された二つのポリカーボネートフィルムであった。表面抵抗は、330オームであった。
【0015】
(接点形成)
各々のプラスチックフィルムに、約5mm幅の導電性銀ラッカーのストリップを導電性ポリマーで被覆された内側に与えた。
【0016】
(フィルムの結合およびプラスチックフィルムとエレクトロルミネセンスTPUフィルムの積層)
積層を、140℃にて、90barの圧力下、8分間、熱プレス中で行った。ルミネセンス顔料を含有するTPUフィルムを、導電性ポリマーで内側が被覆されたプラスチックフィルムの間に配置した。いずれの場合にも、接点形成のため、二つのプラスチックフィルムをオフセットして、導電性銀ラッカーを備えたストリップを自由のままにした。
【0017】
(試験)
交流電圧(230V、2500Hz)を付与することによって、フィルム系を発光させた。達成された輝度は、456nmの最大放射にて2.5cd/mであった。
【0018】
本発明を上記で例示の目的をもって詳細に説明したが、このような詳説が単にその目的のためであって、本発明は、特許請求の範囲によって限定され得る場合を除いて、本発明の精神および範囲を逸脱することなく、当業者によって変形がなされ得ると理解されるべきである。
【0019】
本発明の実施態様には、以下のものが含まれる。
〔1〕 a)第一の透明プラスチックフィルムと、
b)プラスチックフィルムa)の一方の側に付与された有機透明電極被膜と、
c)被膜b)および被膜d)に隣接した、硬度ショアA75〜ショアD55を有する熱可塑性ポリウレタンと、フィルムc)の総重量に基づいて5〜95重量%の量でエレクトロルミネセンス顔料を含んでなる、厚さ10〜200μmを有する透明フィルムと、
d)プラスチックフィルムe)の一方の側に付与された有機透明電極被膜と、
e)第二の透明プラスチックフィルム
を含んでなる、発光性、透明および柔軟性ポリマーベースフィルム系。
〔2〕 熱可塑性ポリウレタンは、硬度ショアA75〜ショアA88を有する、上記第1項に記載のフィルム系。
〔3〕 エレクトロルミネセンス顔料は、フィルムc)の総重量に基づいて10〜50重量%の量で存在する、上記第1項に記載のフィルム系。
〔4〕 透明フィルムc)は、厚さ20〜100μmを有する、上記第1項に記載のフィルム系。
【0020】
〔5〕 a)有機透明電極材料で一方の側が被覆された二つのプラスチックフィルムの各々を、各フィルムの被覆された側が、他の被覆されたプラスチックフィルムの被覆された側に向かい合うように配置する工程と、
b)金属導体ベースの電気接点を、プラスチックフィルムの各々の上の被膜に付与する工程と、
c)硬度ショアA75〜ショアD55を有する熱可塑性ポリウレタンと、熱可塑性ポリウレタンフィルムの総重量に基づいて5〜95重量%の量で一以上のエレクトロルミネセンス顔料を含んでなる、厚さ10〜200μmを有する透明フィルムを、工程b)からのプラスチックフィルムの各々の被覆された側の間に積層する工程
を含む、上記第1項に記載のフィルム系の製造方法。
〔6〕 工程c)において積層されるフィルムは、厚さ20〜100μmを有する、上記第5項に記載の方法。
〔7〕 熱可塑性ポリウレタンは、硬度ショアA75〜ショアA88を有する、上記第5項に記載の方法。
〔8〕 エレクトロルミネセンス顔料は、熱可塑性ポリウレタンフィルムの総重量に基づいて10〜50重量%の量で存在する、上記第5項に記載の方法。
〔9〕 上記第1項に記載のフィルム系を含んでなる、ルミネセンス系。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
a)第一の透明プラスチックフィルムと、
b)プラスチックフィルムa)の一方の側に付与された有機透明電極被膜と、
c)被膜b)および被膜d)に隣接した、硬度ショアA75〜ショアD55を有する熱可塑性ポリウレタンと、フィルムc)の総重量に基づいて5〜95重量%の量でエレクトロルミネセンス顔料を含んでなる、厚さ10〜200μmを有する透明フィルムと、
d)プラスチックフィルムe)の一方の側に付与された有機透明電極被膜と、
e)第二の透明プラスチックフィルム
を含んでなる、発光性、透明および柔軟性ポリマーベースフィルム系。
【請求項2】
a)有機透明電極材料で一方の側が被覆された二つのプラスチックフィルムの各々を、各フィルムの被覆された側が、他の被覆されたプラスチックフィルムの被覆された側に向かい合うように配置する工程と、
b)金属導体ベースの電気接点を、プラスチックフィルムの各々の上の被膜に付与する工程と、
c)硬度ショアA75〜ショアD55を有する熱可塑性ポリウレタンと、熱可塑性ポリウレタンフィルムの総重量に基づいて5〜95重量%の量で一以上のエレクトロルミネセンス顔料を含んでなる、厚さ10〜200μmを有する透明フィルムを、工程b)からのプラスチックフィルムの各々の被覆された側の間に積層する工程
を含む、請求項1に記載のフィルム系の製造方法。
【請求項3】
請求項1に記載のフィルム系を含んでなる、ルミネセンス系。

【公開番号】特開2006−35857(P2006−35857A)
【公開日】平成18年2月9日(2006.2.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−209562(P2005−209562)
【出願日】平成17年7月20日(2005.7.20)
【出願人】(504037346)バイエル・マテリアルサイエンス・アクチェンゲゼルシャフト (728)
【氏名又は名称原語表記】Bayer MaterialScience AG
【Fターム(参考)】