発光検出デバイスおよびその製造方法
【課題】互いに凹凸を有する基板同士であっても安定した接合を実現し、且つ不要な発光を検出手段に到達させない発光検出デバイスを提供する。
【解決手段】二つの基板16,17を貼り合わせて構成される流路3を有し、該流路からの発光を検出するための発光検出デバイス20であって、流路の壁面の一部となる凹部と、該凹部以外の領域上に配置された遮光膜1と、が配置された貼り合わせ面と、その裏面に配置され、該流路からの発光を透過して検出するための検出面6と、を有する検出側基板16と、該検出側基板と張り合わせる面に、凹凸の厚みを有する導電パターン4が配置されている配線側基板17と、が互いに貼り合わせて構成されており、前記遮光膜が配置された領域において、前記導電パターン4の凹凸の厚みに応じて接着材7が配置され、該接着材によって、前記検出側基板と前記配線側基板とが密着接合している。
【解決手段】二つの基板16,17を貼り合わせて構成される流路3を有し、該流路からの発光を検出するための発光検出デバイス20であって、流路の壁面の一部となる凹部と、該凹部以外の領域上に配置された遮光膜1と、が配置された貼り合わせ面と、その裏面に配置され、該流路からの発光を透過して検出するための検出面6と、を有する検出側基板16と、該検出側基板と張り合わせる面に、凹凸の厚みを有する導電パターン4が配置されている配線側基板17と、が互いに貼り合わせて構成されており、前記遮光膜が配置された領域において、前記導電パターン4の凹凸の厚みに応じて接着材7が配置され、該接着材によって、前記検出側基板と前記配線側基板とが密着接合している。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、流路を有し、該流路からの発光を検出する発光検出デバイスに関する。特に、遺伝子検査やタンパク質検査などに用いられる蛍光検出デバイスに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の検体検査には、化学分析や試薬調合、化学合成、反応検出のために、mlからμl(マイクロリットル)レベルの試薬が必要とされていた。このような試験管レベルでの検査に対して、リソプロセスや厚膜プロセス技術を応用して微細な反応場を形成することで、nl(ナノリットル)レベルでの検査が可能となってきている。μ−TAS(Micro Total Analysis system)技術とは、このような微細な反応場を利用して、医療検査・診断に用いられる、遺伝子検査、染色体検査、細胞検査などの領域や、バイオ技術、環境中の微量な物質検査、農作物等の飼育環境の調査、農作物の遺伝子検査などに応用する技術である。これまでの検査は、主として検査技師の手技により試薬を扱っていたが、工程は複雑であり、機器の熟練操作が必要とされていた。μ−TAS技術は、自動化、高速化、高精度化、低コスト、迅速性、環境インパクトの低減など、大きな効果を得られる手段として注目されている。
【0003】
μ−TAS技術を導入した流路デバイスにて蛍光強度を用いて各種検査を行う場合、nlの検査対象からの蛍光は強度が弱く、被検査液体以外からのノイズとなる蛍光を抑制することが必要となる。ノイズとなる蛍光を抑制する方法として、特許文献1では流路に沿う基板表面に遮光部が設けられている。基板から発せられる蛍光を、遮光部によって遮光している。
【0004】
特許文献1に記載された流路デバイスを図7と図8に示す。特許文献1では、熱プレスなど接着剤を用いない接合方法が用いられている。このような接合方法を実施するためには図8の断面に見られる通り接合面同士が完全に平坦であるか、接合時の外部からの作用で十分に変形し得る条件(基板が樹脂であるなど)が必要となる。すなわち、石英などの脆性材料を用いる場合には、遮光部を形成した後に接合面を平坦にする工程が必要となる。一つには、遮光部を成膜した後に別の材料を遮光部の厚み以上に形成してから研磨する方法が考えられる。または遮光部の厚み分を初めに除去加工しておき、遮光膜成膜後に研磨して不要部分を除去して平坦化する方法も考えられる。いずれにしても平坦化のための作業を必要とし、煩雑かつコストの点でも不利であった。
【0005】
また流路デバイス形成に接着剤を用いて、かつ遮光層を有する流路デバイスが特許文献2に開示されている。特許文献2で開示された流路デバイスでは、実際に流路デバイスを製作する手順までは開示されておらず、デバイス中に配線パターン等を構築する示唆は得られない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2006−078414号公報
【特許文献2】特開2002−286627号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
したがって本発明は、互いに凹凸を有する基板同士であっても安定した接合を実現し、且つ不要な発光を検出手段に到達させない発光検出デバイスを提供することを目的とする。
また、上記の発光検出デバイスを製造する方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本発明に係る発光検出デバイスは、
二つの基板を貼り合わせて構成される流路を有し、該流路からの発光を検出するための発光検出デバイスであって、流路の壁面の一部となる凹部と、該凹部以外の領域上に配置された遮光膜と、が配置された貼り合わせ面と、その裏面に配置され、該流路からの発光を透過して検出するための検出面と、を有する検出側基板と、該検出側基板と張り合わせる面に、凹凸の厚みを有する導電パターンが配置されている配線側基板と、が互いに貼り合わせて構成されており、前記遮光膜が配置された領域において、前記導電パターンの凹凸の厚みに応じて接着材が配置され、該接着材によって、前記検出側基板と前記配線側基板とが密着接合していることを特徴とする。
【0009】
また、本発明に係る発光検出デバイスの製造方法は、光透過性の基板に遮光膜を形成する工程と、該基板の前記遮光膜を流路パターンにマスキングする工程と、該遮光膜をマスクにエッチングして、凹部と該凹以外の領域に遮光膜を有する表面を形成する工程と、前記流路以外の領域に接着剤を塗布する工程と、前記接着剤を介して、凹凸の厚みを有する導電パターンが配置されている配線側基板を貼り合わせる工程と、を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、煩雑な平坦化工程を用いることなく凹凸を有する基板同士を接合することができ、投光受光手段によって発光を観測する装置に上記発光検出デバイスを適用した場合においても観測に不要な蛍光の発生、受光手段への到達を抑止できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の発光検出デバイスの実施形態を説明するための図であり、(a)は、上面からみた図、(b)は各パターン配置を説明するための図、(c)は流路と直交する方向にみた断面図、(d)は流路に沿う方向における流路を含んだ断面図、(e)は流路に沿った方向における流路の間の断面図である。
【図2】本発明の発光検出デバイスの製造手順を説明するための図である。
【図3】ウエットエッチングによるアンダーカットの発生を示す図である。
【図4】本発明の発光検出デバイスの別の実施形態を示す図である。
【図5】本発明の発光検出デバイスの別の実施形態を示す図である。
【図6】本発明の発光検出デバイスの別の実施形態を示す図である。
【図7】従来の流路デバイスを示す図である。
【図8】従来の流路デバイスを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下に、本発明に係る実施の形態を、図面を用いて詳細に説明する。
【0013】
本発明に係る発光検出デバイスは、二つの基板を貼り合わせて構成される流路を有している。そして、流路からの発光を検出するものである。
【0014】
本発明の発光検出デバイスは、医療検査・診断に用いられる医療検査素子として使用することができる。医療検査素子とは、μ−TASに代表される、医療検査・診断などに使用されるものの総称であるが、例えばDNAチップ、Lab on a Chip、マイクロアレイ、プロテインチップなども包含される。
【0015】
特に本発明においては、流体が導入される流路を有する構成であり、さらには流路の他に、反応室、貯蔵室などの流体が導入される空間を有しているものが好ましい。また、基板に流路などの溝部を保持している構成、さらには複数の基板を接合して内部に流路などの空間を保持する構成、が好ましい。流体としては、主に試薬、検体を含む液体が用いられるが、空気などの気体を送液のキャリアとして使用しても良いし、流動性を持つ半固体状の物質を用いても良い。
【0016】
図1(a)〜(e)は、本発明に係る発光検出デバイスの一実施形態を示す図である。
発光検出デバイスの上面からの観察図を(a)に、各パターンの配置を説明するために、遮光膜を透視した状態を(b)に、流路を含む断面を(c)から(e)に示す。(c)は流路と直交する方向にみた断面図で、(d)は流路に沿う方向における流路を含んだ断面図、(e)は流路に沿った方向における流路の間の断面を観察した図である。
【0017】
図1の各図において、1は遮光膜、2は外部との電気的接続を行うためのパッド、3は流路、4は導電パターン、5はヒーター部材、6は検出面、7は接着剤、8は導入排出口である。
検出側基板16は、流路の壁面の一部となる凹部と、該凹部以外の領域上に配置された遮光膜と、が配置された貼り合わせ面と、その裏面の該流路からの発光を透過して検出するための検出面と、を有している。
【0018】
また一方、配線側基板17においては、検出側基板と張り合わせる面に、凹凸の厚みを有する導電パターンが配置されている。
【0019】
この二つの基板が互いに貼り合わせて構成されており、遮光膜が配置された領域において、導電パターンの凹凸の厚みに応じて接着材7が配置され、接着材によって、検出側基板と配線側基板とが密着接合している。
【0020】
図1に示す通り、上面からみて発光検出デバイス20は試薬の導入と排出を担う導入排出口8をそれぞれにもつ流路3が2つある。流路3の中央部にはヒーター部材5がパターニングされている。図1(b)には遮光膜1を透視して、ヒーター部材5、導電パターン4、流路3の位置関係を説明するための図を示す。
【0021】
図1(d)の流路に沿った断面ではヒーター部材5の両端には導電パターン4が接続しており、ヒーター部材5は流路3の一部に存在している。
【0022】
ヒーター部材5に接続した導電パターン4は流路3を横切るようにパターニングされている。また、電機的導通を確保するためのパット2は、配線側基板17における検出側基板16に覆われない部分に形成されている。
【0023】
流路3の上面側の検出側基板16には流路からの蛍光が外部に透過する透明性の基板を用いており、蛍光が外部に射出する領域を検出面6と定義する。検出面6は、ヒーター部材5と導電パターン4が構成されている側からは遮光されて機能しないため、その配置はヒーター部材5と導電パターン4が形成される部材とは流路3に対して対向している。
【0024】
本形態では流路3の壁面の一部となる凹部9を形成した基板ではなく、金属パターンの加工が容易となる平坦面を有する配線側基板17側にヒーター部材5と導電パターン4を構成する。
これにより、流路3となる凹部9を形成した検出側基板16の検出面6より投受光を行うことができる。
【0025】
上記のように、本発明に係る発光検出デバイス20を構成する基板は、凹部9を有する透明な検出側基板16と、平坦面を有し、ヒーター部材5と導電パターン4が形成されている配線側基板17、の二枚の基板の貼り合わせで構成されている。
これらの基板材料は、それぞれ同じ材料で構成しても、互いに異なっていても良い。
【0026】
熱的な安定性および化学的な安定性に優れた石英を用いることが好ましく、基板16、17ともに石英にすると良い。
石英の代わりに、光透過性等、同等の機能を有する材料であれば置換可能である。例えばパイレックス(登録商標)(商品名)、テンパックス(商品名)が挙げられる。
【0027】
一方で、図1(c)と(d)にみるようにヒーター部材5と導電パターン4はそれぞれ金属パターンとして有限な厚みを持っている。
金属パターンの厚み分の段差を有したまま両基板を密着させると、流路の途中で段差による隙間が生じてしまう。
隙間からの試薬の流出(または流入)は流路間で液体汚染を招く場合がある。また圧力により流路内の液体の移動を行う系においては、移動の制御に支障が出る場合があるので、特に避けなければならない。
【0028】
本発明では両基板の一体化に接着剤7を用いる。接着剤7が段差を含む隙間を充填するため、段差を有する基板との接合時にも隙間を生じることなく二枚の基板を一体化することができる。さらに、流路3となる凹部9が形成された基板表面には、流路を除く接合表面に遮光膜1が構成されている。遮光膜1が検出面と接着層との間に構成されていることで、蛍光を生じる接着剤7であっても接着剤からの蛍光ノイズを生じることなく、良好な発光検出デバイスを構成することができる。
【0029】
本発明の遮光膜1としては、遮光性と、接着材による接着性が良好な膜であれば、特に限定されるものではない。但し、後に続く処理工程、特にエッチングを行う際において基板との選択性を有する材料であることが好ましく、一般には金属膜が適している。基板に石英基板を用いる際には、後述するように金属Cr(クロム)膜を遮光膜として用いることが好ましい。
【0030】
本実施形態では、微細なチャネル流路の中に試薬を導入し、試薬を連続的に加熱することで、試薬中の蛍光量が変化するという反応を利用した医療検査を説明した。
【0031】
本発明のヒーター部材5は、流路中を流れる試薬を含む液体を連続的に加熱する手段として利用できる。液体の導入されたチャネル流路に、発熱するヒーター部材が近接しているので、迅速で安定した加熱が可能になる。
【0032】
また同時に、発熱するヒーター部材に白金などの温度依存性が既知の物質を用いて、その抵抗値を測定することで、物理常数から発熱体の温度を検出することもできる。
これにより、測定した蛍光量は、試薬の温度が何度の時に発光したものかを知ることができる。
特に、流路直下にヒーター部材5をパターニングすることで、より正確な温度を測定することができる。
【0033】
上記のような、正確な温度測定と制御を実現する上で、ヒーター部材を白金で構成すること、そして白金へのエネルギー供給および電気的な接触を確保するためには、導電パターンとして、金膜のパターニングを用いることが好ましい。さらには、金を用いたパターンは流路基板が部分的に除去された開放部のパッド部まで連続していることが好ましい。
【0034】
(発光検出デバイスの製造方法)
次に、本発明に係る発光検出デバイスを製造方法について説明する。
製造手順の説明はチップ単体での断面を元に行うものの、実際にはウエハ形態で複数のチップを同時に製造するとよい。最後にウエハから切り出したところで個々の発光検出デバイスとなる。
【0035】
図2は本発明の発光検出デバイスの製造手順を説明するための図で、10は石英基板、11は開口パターンである。流路となる凹部を形成する石英基板10には、初めに遮光膜1を形成する。流路3となる部位にフォトリソグラフィー技術を用いて開口パターン11を形成し、遮光膜1を除去した部分を構成する。遮光膜1には、後に続くドライエッチング工程において石英との選択性を有する材料であればよく、一般には金属膜が適している。開口部がパターニングされた遮光膜1を有する基板をドライエッチングし、凹部9を形成する。その後、試薬導入排出口となる穴と発光検出デバイス完成時に金属パットに接触するための開口を加工する(不図示)。
【0036】
一方で別基板18には、ヒーター部材5(不図示)と導電パターン4を形成する。
両基板の加工が完了したところで、流路3となる凹部9が加工された基板側に接着剤7を塗布する。製造の簡便性を考慮すると、接着材7は、凹部9が加工された基板側に塗布するのが好ましい。これは、接着領域と被接着領域とを決めているのは流路3となる凹部9であるためである。
【0037】
接着材7を用いて、導電パターン4の有無によって生じる凹凸を吸収し、2つの基板10および18、すなわち基板16および17が密着接合するように接着する。
【0038】
すなわち、凹凸によって生じる2つの基板間の距離の相違を、そこに接着材が充填されることによって、液体がそこから漏出することなく密着接合される。
【0039】
密着した接合をより好適に実現するために、導電パターンによる凹凸に基づいて、基板に塗布する接着材の厚みに凹凸を持たせるとよい。
ただし、均一な厚みで接着剤を基板表面に配置し、接合時に圧力を印加することで基板間の接着材を流動させ、凹凸の隙間を埋めるように接着剤を配置し、基板同士を密着接合させることもできる。
【0040】
形成された接着材の厚みは、凹凸の程度よって適宜設定して良い。
例えば、表面凹凸の最大高低差(A)に対して、充填される接着材の最大厚みが2倍以上(2×A以上)1000倍未満(1000×A未満)の厚みとなるように接着材を配置すると良い。好ましくは、100倍未満である。2倍以下であると基板同士の接着性が低下する場合があり、1000倍以上になると接着時に流路側に流出して蛍光検出に影響がでる場合がある。
接着材の厚みは、形成する流路の高さに応じて適宜設定すれば良いが、例えば最薄部の厚みが0.1μm以上が好ましく、1μm以上が好ましい。また最厚部の厚みは、1.1μmから2.0mm以下となるように接着材が配置されることが好ましい。
【0041】
接着材7は、液体の漏出を防ぎ、且つ流路中の液体に影響を与えない材料であれば、どのような接着材であっても良い。
例えば、エポキシ樹脂系接着材、ウレタン樹脂系接着剤、不飽和ポリエステル樹脂系接着剤、フェノール樹脂系接着材、アクリル樹脂系接着剤、スチレン系樹脂接着材、あるいはメラミン樹脂系接着剤などから適宜選択される。
【0042】
また、本形態のようなヒーター部材を有する構成の場合、用いられる接着剤は100℃まで加熱しても変性しないものを選択する。また、流路に水溶液を流す場合、溶出物が反応に影響を実質与えないもの、特に溶出が少ないものを選択する。
【0043】
接着剤塗布後はウエハとしての基板16および17同士を不図示の位置合わせマークを使って相対位置を調整し、接合する。接合後、個々に切り分けることで発光検出デバイスが完成する。
【0044】
本形態によれば、遮光膜1をエッチングマスクにしてドライエッチングを行うことができる。流路形成後にもエッチングマスクである遮光膜を残すことで、遮光膜の開口パターンと流路パターンとを精度よく一致させることができ、流路の端まで遮光膜を設けることができる。そのため流路の端まで接着剤を充填することが可能となる。流路の端まで接着剤を充填することで、流路の途中に不要な隙間を生じることなく製作できるようになる。
【0045】
また、図3に示すように、流路となる凹部の加工にはウエットエッチングを用いることもできる。ウエットエッチングでは等方的にエッチングが進むためにエッチングパターンを決める遮光膜1のパターンの端にアンダーカット部12が生じる。
【0046】
土台を失った遮光膜が剥がれパーティクルになると不良を生じる懸念があるので、この場合、超音波を当てて土台を失った遮光膜部分を除去すれば良い。
この方法によっても、流路パターンと一致したパターンで遮光膜が除去されて残る。この場合、基板の材料はウエットエッチングができれば石英に限るものではない。
【0047】
本方法によれば、ドライエッチングでは枚用の処理であるところのエッチング工程がバッチ処理で可能となり、生産性を向上できる。また、エッチングマスクを兼ねる遮光膜としては、Cr膜を用いることが好ましい。これにより、ウエットエッチング中のマスク耐性が良好で、最大で50μmの深さまで石英を加工することができるようになる。
【0048】
また、図4に示すように、遮光膜13の表面に金属酸化膜14を設けることが好ましい。接着剤7が触れる表面に酸化膜を構成することで、接着力が向上し、より安定して発光検出デバイスを供給することができる。
【0049】
また、ヒーター部材5、導電パターン4の表面にも金属酸化膜15を成膜すると良い。これにより、金属膜、すなわちヒーター部材5と導電パターン4の電気分解が生じる可能性を排除することができ、検査作業や制御を容易にできる。
【0050】
また、図5に示すように、遮光膜21を導入排出口28の近傍を選択的に除去すると良い。そして図6に示すようにインターフェースモジュール30を作成し、表面接着層29によって発光検出デバイス20と一体化して組み立てると良い。
【0051】
インターフェースモジュール30には、検出面6からの蛍光を観察するための窓31が設けられている。また、液体を導入、吸引、排出するための開口部(32、33)とそれぞれの導入排出口28に接続する流路34を持っている。インターフェースモジュールは、ピペットやシリンジなどの外部装置との接続を容易にするためのモジュールであって、液体供給や、流体デバイス内の液体移動を容易にするための開口(32、33)を有している。
【0052】
インターフェースモジュールは、ヒーター部材や導電パターンを形成する必要がなく、また熱の影響も受けないので、比較的安価な樹脂で構成できる。
【0053】
しかし樹脂の場合、紫外線の透過率が期待できない。そこで、上記のように導入排出口28近傍の遮光膜を選択的に除去しておくことで、表面接着層に紫外線を照射することができるようになり、紫外線硬化樹脂を表面接着層29として利用できるようになる。
【0054】
(発光検出デバイスを用いた検出方法)
本発明の発光検出デバイスは、特に生化学反応に伴い流路内で発光する現象を利用する発光検出に利用できる。特に、核酸のPCRによる増幅を、蛍光により分析する方法に適用できる。具体的な蛍光検出手段や、流路の液体の制御手段などは、公知の方法を採用することができ、例えば特表2009−542207号公報に記載されるような発光検出デバイスを用いたシステムを構築することができる。
【実施例】
【0055】
以下に、本発明の実施例について説明する。
【0056】
(実施例1)
本実施例においては、図1に示すような発光検出デバイスを作成した。検出側基板として、試薬の導入と排出を担う導入排出口8をそれぞれにもつ流路3を2つ作成し、対応する配線側基板の流路3の中央部にはヒーター部材5として白金をパターニングした。
具体的には、配線側基板である石英基板に、蒸着装置を用いて白金のパターン5、金のパターン4をパターニングし、流路3との位置関係が図1(b)のようになるように配置した。白金のパターン5に接続した金のパターン4は流路3を横切るようにパターニングし、流路基板が貼り合わさない部分にて電気的導通を確保するためのパット2を形成した。金のパターンの厚みは、約0.4μmであった。
【0057】
検出側基板については、図2の製造手順に従った。初めに金属Cr(クロム)の遮光膜1をスパッタで石英基板上に形成した。続いて、流路3となる部位にフォトリソグラフィー技術を用いて開口パターン11を形成し、遮光膜1を除去した部分を構成した。
【0058】
開口部がパターニングされた遮光部を有する基板をドライエッチングし、深さ16μmの凹部9を形成した。その後、試薬導入排出口となる穴と発光検出デバイス完成時に金属パットに接触するための開口を加工した。
続いて、樹脂接着材7(SB接合膜、山中セミコンダクター社製)を、凹部9が加工された基板、すなわち検出側基板に塗布した。
接着剤塗布後はウエハとしての基板16および17同士を不図示の位置合わせマークを使って相対位置を調整し、接合した。接合後、個々に切り分け、発光検出デバイスを完成させた。
完成したデバイスの流路にポンプを用いて液体を流したところ、液体の漏れ等は発生せず、良好な送液が観測された。
【0059】
2つの基板の間に配置された接着材の厚みを測定したところ、配線パターンが配置された最も薄い領域は、4.0μmであり、配線パターンのない領域の厚みは4.4μmであった。
また、流路に光を照射し、検出面から発光を観測したところ、接着材による蛍光発光は観測されなかった。
【0060】
(実施例2)
本実施例では、石英基板を用いて、実施例1のドライエッチングの代わりに、ウエットエッチングを行った。
実施例1と同様に、石英基板上に、蒸着装置を用いて金属Cr膜の遮光膜を形成した。
つづいて、ウェットエッチングを用いて、流路となる凹部を石英基板上に加工した。ウエットエッチングでは等方的にエッチングが進むためにエッチングパターンを決めるCrパターンの端にアンダーカット部12が生じた(図3)。土台を失ったCr膜が剥がれパーティクルになることを避けるため、超音波を当てて、土台を失ったCr膜部分を除去した。
【0061】
本実施例においても、除去して残った遮光膜のパターンは、流路パターンと一致するものになった。
ただし、本実施例でもヒーター部材と導電パターンは、上記処理をしていない平坦基板側に加工したので、凹部を形成する上記基板は投受光波長に対して透明である必要がある。
【0062】
本実施例によれば、ドライエッチングでは枚用の処理であるところのエッチング工程がバッチ処理となり、生産性を向上させることができた。また、エッチングマスクを兼ねる遮光膜にCr膜を用いたことで、ウエットエッチング中のマスク耐性が良好で、最大で50μmの深さまで石英を加工することができた。また、ウエットエッチング後に超音波を作用することで、アンダーカットによってCr膜のみになった領域を選択的に除去することができた。
【0063】
(実施例3)
本実施例では図4に示すように、遮光膜のCr膜13の表面に酸化Cr膜14を、白金5、金4の金属パターンの表面にはSiO2膜15を成膜した。これ以外の作成は、実施例1と同様の方法で行った。
【0064】
本実施例によれば、接着剤が触れる表面に酸化膜を構成することで、接着力が向上した。これによって、より安定して発光検出デバイスを供給することができた。また、一つの流路中の二か所に電極を配置して電極間に電位差が生じた場合にも検査液の電気分解などが生じることなく他点にて作業を実施できた。
【0065】
(実施例4)
本実施例では図9に示すように、遮光膜のCr膜21を導入排出口28の近傍を除去した。そして図10に示すように樹脂で構成されたインターフェースモジュール30と発光検出デバイス20を表面接着層29によって一体化して組み立てた。インタフェースモジュール30は検出面6からの蛍光を観察するための窓31が空間として構成されていて、かつ溶液を導入するための開口部(32、33)と流路を持っている。
【0066】
発光検出デバイス20とインターフェースモジュールとの接着には紫外硬化型の接着剤を用いた。樹脂製のインターフェースモジュールは紫外線の透過率が期待できないので、発光検出デバイス側より紫外線を照射して硬化させた。発光検出デバイスの遮光膜21は導入排出口28近傍が剥離されているため、良好に接着することができた。
【符号の説明】
【0067】
1 遮光膜
3 流路
4 導電パターン
5 ヒータ部材
6 検出面
7 接着剤
16 検出側基板
17 配線側基板
20 発光検出デバイス
31 窓
34 流路
【技術分野】
【0001】
本発明は、流路を有し、該流路からの発光を検出する発光検出デバイスに関する。特に、遺伝子検査やタンパク質検査などに用いられる蛍光検出デバイスに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の検体検査には、化学分析や試薬調合、化学合成、反応検出のために、mlからμl(マイクロリットル)レベルの試薬が必要とされていた。このような試験管レベルでの検査に対して、リソプロセスや厚膜プロセス技術を応用して微細な反応場を形成することで、nl(ナノリットル)レベルでの検査が可能となってきている。μ−TAS(Micro Total Analysis system)技術とは、このような微細な反応場を利用して、医療検査・診断に用いられる、遺伝子検査、染色体検査、細胞検査などの領域や、バイオ技術、環境中の微量な物質検査、農作物等の飼育環境の調査、農作物の遺伝子検査などに応用する技術である。これまでの検査は、主として検査技師の手技により試薬を扱っていたが、工程は複雑であり、機器の熟練操作が必要とされていた。μ−TAS技術は、自動化、高速化、高精度化、低コスト、迅速性、環境インパクトの低減など、大きな効果を得られる手段として注目されている。
【0003】
μ−TAS技術を導入した流路デバイスにて蛍光強度を用いて各種検査を行う場合、nlの検査対象からの蛍光は強度が弱く、被検査液体以外からのノイズとなる蛍光を抑制することが必要となる。ノイズとなる蛍光を抑制する方法として、特許文献1では流路に沿う基板表面に遮光部が設けられている。基板から発せられる蛍光を、遮光部によって遮光している。
【0004】
特許文献1に記載された流路デバイスを図7と図8に示す。特許文献1では、熱プレスなど接着剤を用いない接合方法が用いられている。このような接合方法を実施するためには図8の断面に見られる通り接合面同士が完全に平坦であるか、接合時の外部からの作用で十分に変形し得る条件(基板が樹脂であるなど)が必要となる。すなわち、石英などの脆性材料を用いる場合には、遮光部を形成した後に接合面を平坦にする工程が必要となる。一つには、遮光部を成膜した後に別の材料を遮光部の厚み以上に形成してから研磨する方法が考えられる。または遮光部の厚み分を初めに除去加工しておき、遮光膜成膜後に研磨して不要部分を除去して平坦化する方法も考えられる。いずれにしても平坦化のための作業を必要とし、煩雑かつコストの点でも不利であった。
【0005】
また流路デバイス形成に接着剤を用いて、かつ遮光層を有する流路デバイスが特許文献2に開示されている。特許文献2で開示された流路デバイスでは、実際に流路デバイスを製作する手順までは開示されておらず、デバイス中に配線パターン等を構築する示唆は得られない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2006−078414号公報
【特許文献2】特開2002−286627号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
したがって本発明は、互いに凹凸を有する基板同士であっても安定した接合を実現し、且つ不要な発光を検出手段に到達させない発光検出デバイスを提供することを目的とする。
また、上記の発光検出デバイスを製造する方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本発明に係る発光検出デバイスは、
二つの基板を貼り合わせて構成される流路を有し、該流路からの発光を検出するための発光検出デバイスであって、流路の壁面の一部となる凹部と、該凹部以外の領域上に配置された遮光膜と、が配置された貼り合わせ面と、その裏面に配置され、該流路からの発光を透過して検出するための検出面と、を有する検出側基板と、該検出側基板と張り合わせる面に、凹凸の厚みを有する導電パターンが配置されている配線側基板と、が互いに貼り合わせて構成されており、前記遮光膜が配置された領域において、前記導電パターンの凹凸の厚みに応じて接着材が配置され、該接着材によって、前記検出側基板と前記配線側基板とが密着接合していることを特徴とする。
【0009】
また、本発明に係る発光検出デバイスの製造方法は、光透過性の基板に遮光膜を形成する工程と、該基板の前記遮光膜を流路パターンにマスキングする工程と、該遮光膜をマスクにエッチングして、凹部と該凹以外の領域に遮光膜を有する表面を形成する工程と、前記流路以外の領域に接着剤を塗布する工程と、前記接着剤を介して、凹凸の厚みを有する導電パターンが配置されている配線側基板を貼り合わせる工程と、を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、煩雑な平坦化工程を用いることなく凹凸を有する基板同士を接合することができ、投光受光手段によって発光を観測する装置に上記発光検出デバイスを適用した場合においても観測に不要な蛍光の発生、受光手段への到達を抑止できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の発光検出デバイスの実施形態を説明するための図であり、(a)は、上面からみた図、(b)は各パターン配置を説明するための図、(c)は流路と直交する方向にみた断面図、(d)は流路に沿う方向における流路を含んだ断面図、(e)は流路に沿った方向における流路の間の断面図である。
【図2】本発明の発光検出デバイスの製造手順を説明するための図である。
【図3】ウエットエッチングによるアンダーカットの発生を示す図である。
【図4】本発明の発光検出デバイスの別の実施形態を示す図である。
【図5】本発明の発光検出デバイスの別の実施形態を示す図である。
【図6】本発明の発光検出デバイスの別の実施形態を示す図である。
【図7】従来の流路デバイスを示す図である。
【図8】従来の流路デバイスを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下に、本発明に係る実施の形態を、図面を用いて詳細に説明する。
【0013】
本発明に係る発光検出デバイスは、二つの基板を貼り合わせて構成される流路を有している。そして、流路からの発光を検出するものである。
【0014】
本発明の発光検出デバイスは、医療検査・診断に用いられる医療検査素子として使用することができる。医療検査素子とは、μ−TASに代表される、医療検査・診断などに使用されるものの総称であるが、例えばDNAチップ、Lab on a Chip、マイクロアレイ、プロテインチップなども包含される。
【0015】
特に本発明においては、流体が導入される流路を有する構成であり、さらには流路の他に、反応室、貯蔵室などの流体が導入される空間を有しているものが好ましい。また、基板に流路などの溝部を保持している構成、さらには複数の基板を接合して内部に流路などの空間を保持する構成、が好ましい。流体としては、主に試薬、検体を含む液体が用いられるが、空気などの気体を送液のキャリアとして使用しても良いし、流動性を持つ半固体状の物質を用いても良い。
【0016】
図1(a)〜(e)は、本発明に係る発光検出デバイスの一実施形態を示す図である。
発光検出デバイスの上面からの観察図を(a)に、各パターンの配置を説明するために、遮光膜を透視した状態を(b)に、流路を含む断面を(c)から(e)に示す。(c)は流路と直交する方向にみた断面図で、(d)は流路に沿う方向における流路を含んだ断面図、(e)は流路に沿った方向における流路の間の断面を観察した図である。
【0017】
図1の各図において、1は遮光膜、2は外部との電気的接続を行うためのパッド、3は流路、4は導電パターン、5はヒーター部材、6は検出面、7は接着剤、8は導入排出口である。
検出側基板16は、流路の壁面の一部となる凹部と、該凹部以外の領域上に配置された遮光膜と、が配置された貼り合わせ面と、その裏面の該流路からの発光を透過して検出するための検出面と、を有している。
【0018】
また一方、配線側基板17においては、検出側基板と張り合わせる面に、凹凸の厚みを有する導電パターンが配置されている。
【0019】
この二つの基板が互いに貼り合わせて構成されており、遮光膜が配置された領域において、導電パターンの凹凸の厚みに応じて接着材7が配置され、接着材によって、検出側基板と配線側基板とが密着接合している。
【0020】
図1に示す通り、上面からみて発光検出デバイス20は試薬の導入と排出を担う導入排出口8をそれぞれにもつ流路3が2つある。流路3の中央部にはヒーター部材5がパターニングされている。図1(b)には遮光膜1を透視して、ヒーター部材5、導電パターン4、流路3の位置関係を説明するための図を示す。
【0021】
図1(d)の流路に沿った断面ではヒーター部材5の両端には導電パターン4が接続しており、ヒーター部材5は流路3の一部に存在している。
【0022】
ヒーター部材5に接続した導電パターン4は流路3を横切るようにパターニングされている。また、電機的導通を確保するためのパット2は、配線側基板17における検出側基板16に覆われない部分に形成されている。
【0023】
流路3の上面側の検出側基板16には流路からの蛍光が外部に透過する透明性の基板を用いており、蛍光が外部に射出する領域を検出面6と定義する。検出面6は、ヒーター部材5と導電パターン4が構成されている側からは遮光されて機能しないため、その配置はヒーター部材5と導電パターン4が形成される部材とは流路3に対して対向している。
【0024】
本形態では流路3の壁面の一部となる凹部9を形成した基板ではなく、金属パターンの加工が容易となる平坦面を有する配線側基板17側にヒーター部材5と導電パターン4を構成する。
これにより、流路3となる凹部9を形成した検出側基板16の検出面6より投受光を行うことができる。
【0025】
上記のように、本発明に係る発光検出デバイス20を構成する基板は、凹部9を有する透明な検出側基板16と、平坦面を有し、ヒーター部材5と導電パターン4が形成されている配線側基板17、の二枚の基板の貼り合わせで構成されている。
これらの基板材料は、それぞれ同じ材料で構成しても、互いに異なっていても良い。
【0026】
熱的な安定性および化学的な安定性に優れた石英を用いることが好ましく、基板16、17ともに石英にすると良い。
石英の代わりに、光透過性等、同等の機能を有する材料であれば置換可能である。例えばパイレックス(登録商標)(商品名)、テンパックス(商品名)が挙げられる。
【0027】
一方で、図1(c)と(d)にみるようにヒーター部材5と導電パターン4はそれぞれ金属パターンとして有限な厚みを持っている。
金属パターンの厚み分の段差を有したまま両基板を密着させると、流路の途中で段差による隙間が生じてしまう。
隙間からの試薬の流出(または流入)は流路間で液体汚染を招く場合がある。また圧力により流路内の液体の移動を行う系においては、移動の制御に支障が出る場合があるので、特に避けなければならない。
【0028】
本発明では両基板の一体化に接着剤7を用いる。接着剤7が段差を含む隙間を充填するため、段差を有する基板との接合時にも隙間を生じることなく二枚の基板を一体化することができる。さらに、流路3となる凹部9が形成された基板表面には、流路を除く接合表面に遮光膜1が構成されている。遮光膜1が検出面と接着層との間に構成されていることで、蛍光を生じる接着剤7であっても接着剤からの蛍光ノイズを生じることなく、良好な発光検出デバイスを構成することができる。
【0029】
本発明の遮光膜1としては、遮光性と、接着材による接着性が良好な膜であれば、特に限定されるものではない。但し、後に続く処理工程、特にエッチングを行う際において基板との選択性を有する材料であることが好ましく、一般には金属膜が適している。基板に石英基板を用いる際には、後述するように金属Cr(クロム)膜を遮光膜として用いることが好ましい。
【0030】
本実施形態では、微細なチャネル流路の中に試薬を導入し、試薬を連続的に加熱することで、試薬中の蛍光量が変化するという反応を利用した医療検査を説明した。
【0031】
本発明のヒーター部材5は、流路中を流れる試薬を含む液体を連続的に加熱する手段として利用できる。液体の導入されたチャネル流路に、発熱するヒーター部材が近接しているので、迅速で安定した加熱が可能になる。
【0032】
また同時に、発熱するヒーター部材に白金などの温度依存性が既知の物質を用いて、その抵抗値を測定することで、物理常数から発熱体の温度を検出することもできる。
これにより、測定した蛍光量は、試薬の温度が何度の時に発光したものかを知ることができる。
特に、流路直下にヒーター部材5をパターニングすることで、より正確な温度を測定することができる。
【0033】
上記のような、正確な温度測定と制御を実現する上で、ヒーター部材を白金で構成すること、そして白金へのエネルギー供給および電気的な接触を確保するためには、導電パターンとして、金膜のパターニングを用いることが好ましい。さらには、金を用いたパターンは流路基板が部分的に除去された開放部のパッド部まで連続していることが好ましい。
【0034】
(発光検出デバイスの製造方法)
次に、本発明に係る発光検出デバイスを製造方法について説明する。
製造手順の説明はチップ単体での断面を元に行うものの、実際にはウエハ形態で複数のチップを同時に製造するとよい。最後にウエハから切り出したところで個々の発光検出デバイスとなる。
【0035】
図2は本発明の発光検出デバイスの製造手順を説明するための図で、10は石英基板、11は開口パターンである。流路となる凹部を形成する石英基板10には、初めに遮光膜1を形成する。流路3となる部位にフォトリソグラフィー技術を用いて開口パターン11を形成し、遮光膜1を除去した部分を構成する。遮光膜1には、後に続くドライエッチング工程において石英との選択性を有する材料であればよく、一般には金属膜が適している。開口部がパターニングされた遮光膜1を有する基板をドライエッチングし、凹部9を形成する。その後、試薬導入排出口となる穴と発光検出デバイス完成時に金属パットに接触するための開口を加工する(不図示)。
【0036】
一方で別基板18には、ヒーター部材5(不図示)と導電パターン4を形成する。
両基板の加工が完了したところで、流路3となる凹部9が加工された基板側に接着剤7を塗布する。製造の簡便性を考慮すると、接着材7は、凹部9が加工された基板側に塗布するのが好ましい。これは、接着領域と被接着領域とを決めているのは流路3となる凹部9であるためである。
【0037】
接着材7を用いて、導電パターン4の有無によって生じる凹凸を吸収し、2つの基板10および18、すなわち基板16および17が密着接合するように接着する。
【0038】
すなわち、凹凸によって生じる2つの基板間の距離の相違を、そこに接着材が充填されることによって、液体がそこから漏出することなく密着接合される。
【0039】
密着した接合をより好適に実現するために、導電パターンによる凹凸に基づいて、基板に塗布する接着材の厚みに凹凸を持たせるとよい。
ただし、均一な厚みで接着剤を基板表面に配置し、接合時に圧力を印加することで基板間の接着材を流動させ、凹凸の隙間を埋めるように接着剤を配置し、基板同士を密着接合させることもできる。
【0040】
形成された接着材の厚みは、凹凸の程度よって適宜設定して良い。
例えば、表面凹凸の最大高低差(A)に対して、充填される接着材の最大厚みが2倍以上(2×A以上)1000倍未満(1000×A未満)の厚みとなるように接着材を配置すると良い。好ましくは、100倍未満である。2倍以下であると基板同士の接着性が低下する場合があり、1000倍以上になると接着時に流路側に流出して蛍光検出に影響がでる場合がある。
接着材の厚みは、形成する流路の高さに応じて適宜設定すれば良いが、例えば最薄部の厚みが0.1μm以上が好ましく、1μm以上が好ましい。また最厚部の厚みは、1.1μmから2.0mm以下となるように接着材が配置されることが好ましい。
【0041】
接着材7は、液体の漏出を防ぎ、且つ流路中の液体に影響を与えない材料であれば、どのような接着材であっても良い。
例えば、エポキシ樹脂系接着材、ウレタン樹脂系接着剤、不飽和ポリエステル樹脂系接着剤、フェノール樹脂系接着材、アクリル樹脂系接着剤、スチレン系樹脂接着材、あるいはメラミン樹脂系接着剤などから適宜選択される。
【0042】
また、本形態のようなヒーター部材を有する構成の場合、用いられる接着剤は100℃まで加熱しても変性しないものを選択する。また、流路に水溶液を流す場合、溶出物が反応に影響を実質与えないもの、特に溶出が少ないものを選択する。
【0043】
接着剤塗布後はウエハとしての基板16および17同士を不図示の位置合わせマークを使って相対位置を調整し、接合する。接合後、個々に切り分けることで発光検出デバイスが完成する。
【0044】
本形態によれば、遮光膜1をエッチングマスクにしてドライエッチングを行うことができる。流路形成後にもエッチングマスクである遮光膜を残すことで、遮光膜の開口パターンと流路パターンとを精度よく一致させることができ、流路の端まで遮光膜を設けることができる。そのため流路の端まで接着剤を充填することが可能となる。流路の端まで接着剤を充填することで、流路の途中に不要な隙間を生じることなく製作できるようになる。
【0045】
また、図3に示すように、流路となる凹部の加工にはウエットエッチングを用いることもできる。ウエットエッチングでは等方的にエッチングが進むためにエッチングパターンを決める遮光膜1のパターンの端にアンダーカット部12が生じる。
【0046】
土台を失った遮光膜が剥がれパーティクルになると不良を生じる懸念があるので、この場合、超音波を当てて土台を失った遮光膜部分を除去すれば良い。
この方法によっても、流路パターンと一致したパターンで遮光膜が除去されて残る。この場合、基板の材料はウエットエッチングができれば石英に限るものではない。
【0047】
本方法によれば、ドライエッチングでは枚用の処理であるところのエッチング工程がバッチ処理で可能となり、生産性を向上できる。また、エッチングマスクを兼ねる遮光膜としては、Cr膜を用いることが好ましい。これにより、ウエットエッチング中のマスク耐性が良好で、最大で50μmの深さまで石英を加工することができるようになる。
【0048】
また、図4に示すように、遮光膜13の表面に金属酸化膜14を設けることが好ましい。接着剤7が触れる表面に酸化膜を構成することで、接着力が向上し、より安定して発光検出デバイスを供給することができる。
【0049】
また、ヒーター部材5、導電パターン4の表面にも金属酸化膜15を成膜すると良い。これにより、金属膜、すなわちヒーター部材5と導電パターン4の電気分解が生じる可能性を排除することができ、検査作業や制御を容易にできる。
【0050】
また、図5に示すように、遮光膜21を導入排出口28の近傍を選択的に除去すると良い。そして図6に示すようにインターフェースモジュール30を作成し、表面接着層29によって発光検出デバイス20と一体化して組み立てると良い。
【0051】
インターフェースモジュール30には、検出面6からの蛍光を観察するための窓31が設けられている。また、液体を導入、吸引、排出するための開口部(32、33)とそれぞれの導入排出口28に接続する流路34を持っている。インターフェースモジュールは、ピペットやシリンジなどの外部装置との接続を容易にするためのモジュールであって、液体供給や、流体デバイス内の液体移動を容易にするための開口(32、33)を有している。
【0052】
インターフェースモジュールは、ヒーター部材や導電パターンを形成する必要がなく、また熱の影響も受けないので、比較的安価な樹脂で構成できる。
【0053】
しかし樹脂の場合、紫外線の透過率が期待できない。そこで、上記のように導入排出口28近傍の遮光膜を選択的に除去しておくことで、表面接着層に紫外線を照射することができるようになり、紫外線硬化樹脂を表面接着層29として利用できるようになる。
【0054】
(発光検出デバイスを用いた検出方法)
本発明の発光検出デバイスは、特に生化学反応に伴い流路内で発光する現象を利用する発光検出に利用できる。特に、核酸のPCRによる増幅を、蛍光により分析する方法に適用できる。具体的な蛍光検出手段や、流路の液体の制御手段などは、公知の方法を採用することができ、例えば特表2009−542207号公報に記載されるような発光検出デバイスを用いたシステムを構築することができる。
【実施例】
【0055】
以下に、本発明の実施例について説明する。
【0056】
(実施例1)
本実施例においては、図1に示すような発光検出デバイスを作成した。検出側基板として、試薬の導入と排出を担う導入排出口8をそれぞれにもつ流路3を2つ作成し、対応する配線側基板の流路3の中央部にはヒーター部材5として白金をパターニングした。
具体的には、配線側基板である石英基板に、蒸着装置を用いて白金のパターン5、金のパターン4をパターニングし、流路3との位置関係が図1(b)のようになるように配置した。白金のパターン5に接続した金のパターン4は流路3を横切るようにパターニングし、流路基板が貼り合わさない部分にて電気的導通を確保するためのパット2を形成した。金のパターンの厚みは、約0.4μmであった。
【0057】
検出側基板については、図2の製造手順に従った。初めに金属Cr(クロム)の遮光膜1をスパッタで石英基板上に形成した。続いて、流路3となる部位にフォトリソグラフィー技術を用いて開口パターン11を形成し、遮光膜1を除去した部分を構成した。
【0058】
開口部がパターニングされた遮光部を有する基板をドライエッチングし、深さ16μmの凹部9を形成した。その後、試薬導入排出口となる穴と発光検出デバイス完成時に金属パットに接触するための開口を加工した。
続いて、樹脂接着材7(SB接合膜、山中セミコンダクター社製)を、凹部9が加工された基板、すなわち検出側基板に塗布した。
接着剤塗布後はウエハとしての基板16および17同士を不図示の位置合わせマークを使って相対位置を調整し、接合した。接合後、個々に切り分け、発光検出デバイスを完成させた。
完成したデバイスの流路にポンプを用いて液体を流したところ、液体の漏れ等は発生せず、良好な送液が観測された。
【0059】
2つの基板の間に配置された接着材の厚みを測定したところ、配線パターンが配置された最も薄い領域は、4.0μmであり、配線パターンのない領域の厚みは4.4μmであった。
また、流路に光を照射し、検出面から発光を観測したところ、接着材による蛍光発光は観測されなかった。
【0060】
(実施例2)
本実施例では、石英基板を用いて、実施例1のドライエッチングの代わりに、ウエットエッチングを行った。
実施例1と同様に、石英基板上に、蒸着装置を用いて金属Cr膜の遮光膜を形成した。
つづいて、ウェットエッチングを用いて、流路となる凹部を石英基板上に加工した。ウエットエッチングでは等方的にエッチングが進むためにエッチングパターンを決めるCrパターンの端にアンダーカット部12が生じた(図3)。土台を失ったCr膜が剥がれパーティクルになることを避けるため、超音波を当てて、土台を失ったCr膜部分を除去した。
【0061】
本実施例においても、除去して残った遮光膜のパターンは、流路パターンと一致するものになった。
ただし、本実施例でもヒーター部材と導電パターンは、上記処理をしていない平坦基板側に加工したので、凹部を形成する上記基板は投受光波長に対して透明である必要がある。
【0062】
本実施例によれば、ドライエッチングでは枚用の処理であるところのエッチング工程がバッチ処理となり、生産性を向上させることができた。また、エッチングマスクを兼ねる遮光膜にCr膜を用いたことで、ウエットエッチング中のマスク耐性が良好で、最大で50μmの深さまで石英を加工することができた。また、ウエットエッチング後に超音波を作用することで、アンダーカットによってCr膜のみになった領域を選択的に除去することができた。
【0063】
(実施例3)
本実施例では図4に示すように、遮光膜のCr膜13の表面に酸化Cr膜14を、白金5、金4の金属パターンの表面にはSiO2膜15を成膜した。これ以外の作成は、実施例1と同様の方法で行った。
【0064】
本実施例によれば、接着剤が触れる表面に酸化膜を構成することで、接着力が向上した。これによって、より安定して発光検出デバイスを供給することができた。また、一つの流路中の二か所に電極を配置して電極間に電位差が生じた場合にも検査液の電気分解などが生じることなく他点にて作業を実施できた。
【0065】
(実施例4)
本実施例では図9に示すように、遮光膜のCr膜21を導入排出口28の近傍を除去した。そして図10に示すように樹脂で構成されたインターフェースモジュール30と発光検出デバイス20を表面接着層29によって一体化して組み立てた。インタフェースモジュール30は検出面6からの蛍光を観察するための窓31が空間として構成されていて、かつ溶液を導入するための開口部(32、33)と流路を持っている。
【0066】
発光検出デバイス20とインターフェースモジュールとの接着には紫外硬化型の接着剤を用いた。樹脂製のインターフェースモジュールは紫外線の透過率が期待できないので、発光検出デバイス側より紫外線を照射して硬化させた。発光検出デバイスの遮光膜21は導入排出口28近傍が剥離されているため、良好に接着することができた。
【符号の説明】
【0067】
1 遮光膜
3 流路
4 導電パターン
5 ヒータ部材
6 検出面
7 接着剤
16 検出側基板
17 配線側基板
20 発光検出デバイス
31 窓
34 流路
【特許請求の範囲】
【請求項1】
二つの基板を貼り合わせて構成される流路を有し、該流路からの発光を検出するための発光検出デバイスであって、
流路の壁面の一部となる凹部と、該凹部以外の領域上に配置された遮光膜と、が配置された貼り合わせ面と、その裏面に配置され、該流路からの発光を透過して検出するための検出面と、を有する検出側基板と、
該検出側基板と張り合わせる面に、凹凸の厚みを有する導電パターンが配置されている配線側基板と、
が互いに貼り合わせて構成されており、
前記遮光膜が配置された領域において、前記導電パターンの凹凸の厚みに応じて接着材が配置され、該接着材によって、前記検出側基板と前記配線側基板とが接合していることを特徴とする発光検出デバイス。
【請求項2】
前記配線側基板の流路を構成する領域に、ヒーター部材が配置されている請求項1に記載の発光検出デバイス。
【請求項3】
前記ヒーター部材が、前記流路の伸長方向に長尺なヒーター部材である請求項2に記載の発光検出デバイス。
【請求項4】
少なくとも接着剤が配置される部位において、前記導電パターン上に絶縁膜が形成されていることを特徴とする請求項1に記載の発光検出デバイス。
【請求項5】
前記流路の出入り口と接続する接続部と、該接続部と接続する流路、及び該流路に連通する開口を有するインターフェースモジュールを有し、該インターフェースモジュールと、前記発光検出デバイスとが、接続部で接着材によって接合している請求項1に記載の発光検出デバイス。
【請求項6】
発光検出デバイスの流路出入り口近傍には、遮光膜が配置されていない請求項5に記載の発光検出デバイス。
【請求項7】
発光検出デバイスの製造方法であって、
光透過性の基板に遮光膜を形成する工程と、
該基板の前記遮光膜を流路パターンに対応するようにパターンニングする工程と、
該遮光膜をマスクに前記基板をエッチングして、凹部と該凹部以外の領域に遮光膜を有する表面とを形成する工程と、
前記凹部以外の領域に接着剤を塗布する工程と、
前記接着剤を介して、凹凸の厚みを有する導電パターンが配置されている配線側基板を貼り合わせる工程と、
を有することを特徴とする発光検出デバイスの製造方法。
【請求項8】
前記遮光膜が金属クロム膜であり、前記基板が無機ガラス材料である請求項7に記載の発光検出デバイスの製造方法。
【請求項9】
請求項8に記載の製造方法において、前記エッチングがウエットエッチングであり、該エッチング後に超音波を照射して凹部上に突出した金属クロム膜を除去する工程をさらに有することを特徴とする発光検出デバイスの製造方法。
【請求項1】
二つの基板を貼り合わせて構成される流路を有し、該流路からの発光を検出するための発光検出デバイスであって、
流路の壁面の一部となる凹部と、該凹部以外の領域上に配置された遮光膜と、が配置された貼り合わせ面と、その裏面に配置され、該流路からの発光を透過して検出するための検出面と、を有する検出側基板と、
該検出側基板と張り合わせる面に、凹凸の厚みを有する導電パターンが配置されている配線側基板と、
が互いに貼り合わせて構成されており、
前記遮光膜が配置された領域において、前記導電パターンの凹凸の厚みに応じて接着材が配置され、該接着材によって、前記検出側基板と前記配線側基板とが接合していることを特徴とする発光検出デバイス。
【請求項2】
前記配線側基板の流路を構成する領域に、ヒーター部材が配置されている請求項1に記載の発光検出デバイス。
【請求項3】
前記ヒーター部材が、前記流路の伸長方向に長尺なヒーター部材である請求項2に記載の発光検出デバイス。
【請求項4】
少なくとも接着剤が配置される部位において、前記導電パターン上に絶縁膜が形成されていることを特徴とする請求項1に記載の発光検出デバイス。
【請求項5】
前記流路の出入り口と接続する接続部と、該接続部と接続する流路、及び該流路に連通する開口を有するインターフェースモジュールを有し、該インターフェースモジュールと、前記発光検出デバイスとが、接続部で接着材によって接合している請求項1に記載の発光検出デバイス。
【請求項6】
発光検出デバイスの流路出入り口近傍には、遮光膜が配置されていない請求項5に記載の発光検出デバイス。
【請求項7】
発光検出デバイスの製造方法であって、
光透過性の基板に遮光膜を形成する工程と、
該基板の前記遮光膜を流路パターンに対応するようにパターンニングする工程と、
該遮光膜をマスクに前記基板をエッチングして、凹部と該凹部以外の領域に遮光膜を有する表面とを形成する工程と、
前記凹部以外の領域に接着剤を塗布する工程と、
前記接着剤を介して、凹凸の厚みを有する導電パターンが配置されている配線側基板を貼り合わせる工程と、
を有することを特徴とする発光検出デバイスの製造方法。
【請求項8】
前記遮光膜が金属クロム膜であり、前記基板が無機ガラス材料である請求項7に記載の発光検出デバイスの製造方法。
【請求項9】
請求項8に記載の製造方法において、前記エッチングがウエットエッチングであり、該エッチング後に超音波を照射して凹部上に突出した金属クロム膜を除去する工程をさらに有することを特徴とする発光検出デバイスの製造方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【公開番号】特開2012−181191(P2012−181191A)
【公開日】平成24年9月20日(2012.9.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−20013(P2012−20013)
【出願日】平成24年2月1日(2012.2.1)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年9月20日(2012.9.20)
【国際特許分類】
【出願日】平成24年2月1日(2012.2.1)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】
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