説明

発光検出装置

【課題】 小型の構成にて簡便かつ低コストで、DNA塩基配列を決定できる発光検出装置を提供する。
【解決手段】 透明な底部を有する複数の反応セル6と、反応セル6の上方に位置し、反応セルと一対一に対応付けられるキャピラリ18を備える送液部19と、反応セル6と一対一に対応して反応セル6の下面に近接して配列された複数の光検出素子24を有する光検出部29とを含み、送液部19から試薬溶液を反応セル6に注入することにより反応セル6内で発生する発光を光検出部29の複数の光検出素子24によって個別に検出することを特徴とする発光検出装置1である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、試薬溶液と反応溶液の生物・化学的反応によって放出される発光を検出する発光検出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、DNA塩基配列を自動決定するDNAシーケンサとして、ゲル電気泳動やキャピラリーアレイ電気泳動等の蛍光式DNAシーケンサが幅広く普及している。これらのDNAシーケンサを用いたDNA塩基配列決定方法は、ダイデオキシ(サンガー)法で調整したDNA断片を電気泳動にかける方式である(例えば、非特許文献1参照)。
特に、キャピラリーアレイ電気泳動は、一度に長い塩基配列を決定することができるために、2003年4月にヒトゲノムコンソーシアムにおいて完了宣言が出されたヒトゲノム解析においても大いに活躍した。
【0003】
ヒトゲノム解析の完了時期と前後して、DNAシーケンサに対する需要は、大規模シーケンス向けの高速・大量解析用の装置と、小型の構成にて簡便かつ低コストに使用できる装置とに分かれはじめている。
例えば、遺伝子診断や多型解析など、既知のゲノム情報との比較をおこなう場合には、新たにDNA全長を決定する必要はなく、目的とする短い範囲のDNA配列を決定すれば充分なことも多い。この場合、DNAシーケンサは小型の構成にて簡便かつ低コストな装置であることが好ましい。しかしながら、従来技術であるゲル電気泳動やキャピラリーアレイ電気泳動は、例えば、高圧電源を含んで構成する必要性等から、必ずしも適切であるとは言えない。
【0004】
そこで、前記要件を満たす方法として、ポリメラーゼによるDNA相補鎖伸長反応と生物発光検出法を組み合わせた段階的化学反応を用いたパイロシーケンス法(例えば、非特許文献2参照)と呼ばれるDNA塩基配列決定方法が注目を集めている。
【0005】
以下に、パイロシーケンス法の基本原理を示す。
パイロシーケンス法では、鋳型DNAに4種のdNTPを1種類ずつ順次加えてポリメラーゼによるDNA相補鎖伸長反応を行い、このDNA相補鎖伸長反応と並行して発光を検出することにより塩基配列決定を行う。
【0006】
パイロシーケンス法において、DNA相補鎖伸長反応が起こるとdNTPが取り込まれ、ピロリン酸が生じる。生じたピロリン酸をATPスルフリラーゼ等の酵素でATPに変換する。生じたATPをルシフェラーゼ/ルシフェリン反応系で発光させ、その生物発光を光学的に検出する。その際、どの種類のdNTPを加えたときに発光したかをモニタすることでDNA相補鎖伸長反応の有無がわかり、順次DNA塩基配列を決定できる。連続する塩基の場合には、DNA相補鎖伸長反応で生じるピロリン酸量が取り込まれる塩基数に比例、すなわち発光量に比例するため、発光強度をモニタすることによって、連続する同じ塩基種の数を決定できる。その際、加えたdNTPがいつまでも反応溶液に残留していると配列決定する上で障害となる。近年、dNTP分解酵素(アピラーゼ)を反応溶液中に共存させて余剰のdNTPを酵素分解する方式(特許文献1参照)が考案され、装置の自動化が実現されている。
このように、パイロシーケンス法においては、従来のゲル電気泳動やキャピラリーアレイ電気泳動で使用されていた、高圧電源、レーザ光源、DNAの分離スペース等、大きな構成部品を必要としない。
【特許文献1】特許第3533223号公報
【非特許文献1】T.A.Brown ゲノム メディカル・サイエンス・インターナショナル、2000年5月26日発行、p70−78
【非特許文献2】Anal. Biochem. 244, 367−373 (1997)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
前記したように、生物発光を活用するパイロシーケンス法は、ゲル電気泳動やキャピラリーアレイ電気泳動に比べ、小型の構成にて簡便かつ低コストでDNA塩基配列を決定できる方法として注目されている。
しかしながら、パイロシーケンサの歴史は長くはなく、現在市販されているパイロシーケンサは、96穴タイタープレートを反応セルに用い、光学系にCCDカメラを使用した大型の装置(特表2002−518671号公報参照)であって、改善の余地がある。
また、簡便性やコスト面においても、改善の余地が残されている。
反応セルに注入する試薬溶液は少なくとも4種類(dATP、dCTP、dGTPまたはdTTPを含む)であり、通常は4本の試薬チューブと各試薬チューブに連通した4本のノズルとを1組にして試薬溶液を順次注入する。例えば、反応セルが96個の場合、すなわちタイタープレートを使用する場合には、4本の試薬チューブと各試薬チューブに連通した4本のノズルとのセットを96組、すなわち、384本の試薬チューブと各試薬チューブに連通した384本のノズルとを用意する必要があった。この場合、試薬チューブやノズルの本数が多く、製作コストが高くなることと、目詰まり等を防止するためのメンテナンスが煩雑になるという問題があった。
また、DNA塩基配列を決定する場合に加える試薬溶液、すなわちdNTP溶液量は、反応溶液量の1/100以下が望ましい。これは、加えるdNTP溶液量が多いと反応溶液量が変化し、酵素濃度が低くなり反応速度が遅くなるためである。そのため、dNTP溶液を加える際には、反応溶液を攪拌する必要がある。このことは、特に、装置を小型化、あるいは注入する試薬溶液量を微量化する場合には重要となってくる。例えば、反応溶液量20μLの場合には、dNTP溶液量は0.2μL以下であり、微量な反応溶液を効率よく攪拌する手段に加えて、微量な試薬溶液を精度よく注入する小型で簡便な手段が必要となる。
本発明は、前記した問題を解決し、小型の構成にて簡便かつ低コストで、DNA塩基配列を決定できる発光検出装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記目的を達成するために、本発明は、実質的に透明な底部を有する複数の反応セルと、前記反応セルの上方に位置し、前記反応セルと一対一に対応付けられるキャピラリを備える送液部と、前記反応セルと一対一に対応して前記反応セルの下面に近接して配列された複数の光検出素子を有する光検出部とを含み、前記送液部から試薬溶液を前記反応セルに注入することにより前記反応セル内で発生する発光を前記光検出部の複数の光検出素子によって個別に検出することを特徴とする発光検出装置である。
【0009】
このような構成とすることにより、送液部に備えられた全てのキャピラリから試薬溶液を吐出させる構成となり、複雑な駆動部を用いない簡単な装置構成で、一括同時注入を実現でき、さらに、従来技術に比べ試薬チューブやキャピラリの数を少なく構成することができる。また、全てのキャピラリから所定時間毎に試薬溶液が吐出されるため、キャピラリ吐出口の乾燥などを考慮に入れて装置を設計する必要がない。
また、光検出部においては、大きな受光立体角を確保して複雑な光学系を使用せずに高集光効率で発光を検出できるため、簡便に高感度化が達成できる。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、小型の構成にて簡便かつ低コストで、DNA塩基配列を決定できる発光検出装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明の発光検出装置を実施するための最良の形態(以下「実施形態」と言う)について、適宜図面を参照しながら詳細に説明する。なお、以下の説明において、同一の構成要素には同一番号を付し、重複する説明は省略する。
【0012】
まず、図1および図2を用いて、本実施形態にかかる発光検出装置の概略を説明する。
図1は、発光検出装置1の外観斜視図であって、図2は、図1から本体カバー9を取り除いた発光検出装置1の要部を示す斜視図である。
図1に示すように、発光検出装置1の中央上部には、試薬チューブホルダ2と、試薬チューブホルダ2が着脱自在に固定される回転軸3とが配設されている。試薬溶液が入った試薬チューブ17は、回転軸3から試薬チューブホルダ2を取り外すことによって、試薬チューブホルダ2の下面に装着される(図3参照)。試薬チューブホルダ2の上部には、圧力配管4が回転シール5を介して接続されている。
【0013】
反応セル6は、試薬チューブ17と連通したキャピラリ18(図3参照)から吐出される試薬溶液と、あらかじめ反応セル6内に分注されていた反応溶液との反応の場である。本実施形態においては、例えば、DNA相補鎖伸長反応の場であると同時に、ルシフェリン−ルシフェラーゼ発光反応の場である。
なお、本実施形態において「試料」とは、分析の対象となる物質であって、生体試料に限定されない。また、生体試料においても、核酸に限定されない。また、「反応溶液」とは、少なくとも試料を含み、さらに、注入される試薬溶液との反応や発光反応に必要な、緩衝溶液、化合物、酵素等を適宜含んでいるものとする。
【0014】
反応セル6は、出入自在なトレー8の中央に反応セルホルダ7を介して配設されており、装置稼動時にはトレー8の収容にともなって、試薬チューブ17に連通するキャピラリ18の下部垂直方向にそれぞれ搬入される。また、反応セル6を取り出したり交換したりする場合には、トレー8を引き出すことで、反応セル6が装置外に搬出される。なお、トレー8は、ガイド27(図4参照)によって保持されており、トレー8の出入は、本体カバー9上に設置されたエジェクトボタン10により操作することができる。
【0015】
以下、本実施形態においては、トレー8が発光検出装置1内に収容された状態であって、4つの反応セル6は、試薬チューブ17に連通するキャピラリ18の下部垂直方向にそれぞれ位置しているものとする。さらに、試薬チューブホルダ2下面には試薬チューブ17が装着され、試薬チューブホルダ2は回転軸3に固定されているものとする。
【0016】
本体カバー9、扉11および遮光板12は、発光検出装置1内部を遮光するための遮光部材として機能する。また、扉11は、試薬溶液の交換や、回転軸3および後記する送液部19(図4参照)のメンテナンスのために適宜開扉される。
【0017】
図2に示すように、回転軸3は、ベース13の上部に、回転軸受28(図4参照)を介して水平方向に回動自在に保持されている。さらに、ベース13の上部には、回転軸3の周囲をコ字型に囲むシールド14が設けられ、迷光を防ぐと同時に電気的なノイズを防ぐ。
一方で、ベース13の下方には、反応セル6を保持したトレー8と、反応セル6内で生じた光を検出するための光センサ24(図4参照)を格納したシールドケース15が配設されている。
なお、ベース13はスタンド16により支持されている。
【0018】
次に、図3および図4を参照して、本実施形態にかかる発光検出装置1について、詳細に説明する。
【0019】
図3は、試薬チューブ17に連通したキャピラリ18と、反応セル6との対応関係を説明するための図である。
なお、試薬チューブ17、キャピラリ18および反応セル6に関し、それぞれの対応関係を説明するために構成要素ごとに示す場合には、例えば、試薬チューブであれば、17a、17b、17c、17d等、末尾にアルファベットを付した符号により説明するが、構成要素全体を示す場合には、試薬チューブ17のように示して説明する。
【0020】
4本の試薬チューブ17a−17dには、試薬溶液として、異なる4種のデオキシヌクレオチド溶液(dATP、dCTP、dGTPまたはdTTPを含む)またはその誘導体が1種類ずつ入っており、各試薬チューブ17a−17dに連通した4本のキャピラリ18a−18dからそれぞれの試薬溶液が、圧力配管4から供給される空気圧により吐出される。各キャピラリ18a−18dのそれぞれの下部垂直方向には、各キャピラリ18a−18dと一対一に対応付けられる4つの反応セル6a−6dが配設されており、キャピラリ18a−18dから吐出される試薬溶液は、それぞれの下部垂直方向にある反応セル6a−6d内に注入される。
【0021】
図4は、図2で示した発光検出装置1の要部について、一点鎖線A−A’により垂直方向に切断し矢示方向から見た場合の縦断面図である。
送液部19は、試薬チューブ17と、試薬チューブ17と連通したキャピラリ18と、試薬チューブホルダ2内に形成されたガス流路20と、回転シール5と、圧力配管4と、図示しない圧力源とによって構成される。
【0022】
試薬チューブホルダ2の下面には、試薬チューブ開口部を密嵌するための4つの凸部21が形成されている。さらに、密嵌後の状態において、試薬チューブ内壁と着接していない各凸部21の突端側には、ガス流路20の下端であるガス供給口20aが形成されている。ガス供給口20aの数、すなわち、試薬チューブホルダ2に装着される試薬チューブ17の数に応じて、ガス流路20は試薬チューブホルダ2内で分岐している。なお、反応溶液の飛散防止のために、ガス供給口20aはガスが反応溶液液面に直接噴出されない角度で設けることが好ましい。
ガス流路20の上端20bは、回転シール5を介して圧力配管4と接続されており、ガス流路20は試薬チューブ17と圧力配管4とを連通させている。圧力配管4は、電磁弁等の圧力切り替え装置(図示せず)を介して3気圧(0.3MPa・G)以上の高圧ボンベやコンプレッサ等の圧力源(図示せず)に接続されている。なお、回転シール5は回転軸3の中央に配設されており、回転軸3が回転しても圧力配管4がねじれることはない。
【0023】
試薬チューブ17中の試薬溶液の反応セル6への送液には、定圧加圧送液法が好適である。
定圧加圧送液法は、圧力源からの圧縮空気(1〜2気圧(0.1〜0.2MPa・G)程度)を使用して、電磁弁等の圧力切り替え装置により数秒程度の空気圧力を加えることにより行うものである。
圧力源から圧力配管4を介して送られる圧力は、複数の試薬チューブ17全てに均等に送られるので、1度のガス供給作業によって全部の試薬チューブ17から同時に試薬溶液を吐出させることができる。このような構成とすることにより、発光検出装置1を簡略化することができる。
なお、本実施形態で使用する定圧加圧送液法式による試薬チューブ17の吐出量は、次のHagen−Poiseuilleの(1)式に従う。
【0024】
Q=ΔP・π・r4・t/(8μL)…(1)
(1)式において、ΔP:加えた圧力、r:微小細管の内径、t:圧力を加えた時間、μ:溶液の粘性、L:微小細管の長さである。
(1)式で示すように、定圧加圧送液法においては、キャピラリ(微小細管)18は流量制御用部材であって、内径や長さの異なるキャピラリ18を選択することによって、流量を調節することができる。
例えば、大気圧程度(2気圧(0.2MPa・G)以下)の低圧力使用、加圧時間2秒以下および吐出量0.2μL以下、の条件を満たすためには、内径25μm、長さ20mmのキャピラリ18を使用することが好適である。
【0025】
回転軸3は、回転モータ22を駆動力として回転する。さらに、前記したように、回転軸3の上部には試薬チューブホルダ2が固定されているため、回転軸3の回転にともなって、試薬チューブホルダ2と試薬チューブホルダ2に装着された試薬チューブ17も回転する。
また、回転軸3の内部には、試薬チューブホルダ2に装着した4本の試薬チューブ17を収容するために、軸方向に4つの貫通孔23が形成されている。
なお、回転モータ22は図示しないモータ制御手段によって制御することができる。例えば、モータ制御手段は、回転角と回転の時間間隔等を規定したプログラムを実装した制御部(CPU)であってもよい。4本のキャピラリ18と4つの反応セル6を備えてなる本実施形態においては、キャピラリ18と反応セル6を、所定時間毎に90°ずつ回動させるプログラム制御が好適である。あるいは、時間間隔の代わりに、検出される発光強度が所定値以下まで減衰する毎に、所定角度ずつ回動させるように規定したプログラムであってもよい。
【0026】
反応セル6の底部は透明な部材からなり、反応セル6は、反応セルホルダ7内に円周状に形成された貫通孔に上方から嵌入される。その結果、反応セル6内で生じた光を、反応セル6の底部より下方で検出することができる構成となっている。なお、反応セル6の底部は、実質的に透明であればよく、必ずしも全ての波長の光を透過させる必要はない。少なくとも、反応セル6の底部は、検出を所望する波長の光を透過させることができればよい。また、必ずしも100%の効率で光を透過させる必要はなく、正確な光の透過率が分かっていれば、測定後に、この透過率に基づいて測定値を補正すればよい。
【0027】
光検出部29は、少なくとも、光センサ24と、光センサ24の検出信号を増幅するために電気的に接続されたアンプ25とを含んで構成され、ベース13に固定されたシールドケース15に格納されている。
光センサ24は、反応セル6の下部垂直方向に、反応セル6と一対一に対応付けられて配設されている。光センサ24を反応セル6毎に配設したことで、反応セル6の間隔、配設およびサイズに関係なく高感度で光を検出することができる。なお、アンプ25は、アンプ25毎に生じる出力誤差を考慮し、1個のアンプ25に対して4個の光センサ24を接続する構成を適用しているが、必ずしもこの構成に限定されない。
本実施形態では、レンズ等を使用した複雑な光学系を使用せず、簡便な方式で集光効率を高めるために、光センサ24を反応セル6に可能な限り近づけて受光角を大きくする密着型とし、部品数低減と光軸調整不要な簡単な構造で高集光効率が達成可能な構成としている。ただし、装置の構成によっては、反応セル6と光センサ24との間に、適宜レンズや集光デバイス等を配置することを妨げるものではない。
【0028】
前記したように、本実施形態では反応セル6に光センサ24が近接し、高倍率のアンプ25を使用しているため、静電誘導によるノイズ(微小擬電流)を検出してしまう問題がある。このノイズは、試薬溶液の注入時、または、後記する攪拌にともなう反応セルホルダ7またはトレー8の振動時に検出されやすい。
このノイズを除去するために、本実施形態では、反応セル6と、この反応セル6に対応する光センサ24との間に、透明導電膜26aを備えた構成としている。
【0029】
図5(a)は、本実施形態の透明導電膜26aの設置形態を説明するための要部拡大断面図である。
図5(a)に示すように、光センサ24の上部垂直方向を含むシールドケース15上面に、光透過性および化学的安定性に優れた石英ガラス板26を配設し、石英ガラス板26の下面をITO(酸化インジウム)またはSnO2からなる透明導電膜26aでコーティングする構成としている。このように、透明導電膜26aを反応セル6に固着させるのではなく、反応セル6から分離して構成することで、反応セル6にかかるコストを低減させることができ、使い捨て可能な反応セル6を提供することができる。なお、透明導電膜26aはシールドケース15に面して接地しており、導電性接着剤等によりシールドケース15に貼着されている。
【0030】
なお、本実施形態においては、透明導電膜26aを反応セル6から分離して構成したが、この構成には限定されない。例えば、透明導電膜26aを反応セル6と一体に形成してもよい。
ここで、図5(b)は、通常の透明導電膜26aの設置形態を適用した場合を説明するための要部拡大断面図である。本実施形態においても、図5(a)のような分離した構成としない場合には、例えば、図5(b)に示すように、反応セル6の底部部材として石英ガラス板26を適用し、石英ガラス板26下面をITOまたはSnO2からなる透明導電膜26aでコーティングする構成とすることができる。
【0031】
本実施形態において、1度に反応セル6に注入される試薬溶液量は、あらかじめ反応セル6内に分注されていた反応溶液の約1/100であって、相対的に少量である。従って、反応による発光強度を適切に検出するためには、試薬溶液の自然拡散を待つのではなく、試薬溶液注入後に速やかに反応セル6を攪拌することが好適である。
【0032】
一つの攪拌手段として、例えば、振動モータを挙げることができる。
振動モータ(図示せず)は、反応セル6を保持する反応セルホルダ7、あるいは、反応セルホルダ7を保持するトレー8に設置されている。反応セルホルダ7あるいはトレー8を振動モータと接触・振動させることによって、全ての反応セル6を一括攪拌することができる。なお、振動モータには、例えば、携帯電話等に使用する小型の振動モータが利用できる。
【0033】
その他の攪拌手段として、例えば、磁気粒子等を挙げることができる。
具体的には、反応セル6内に磁気粒子等を添加し、反応セル6外に設けられた磁場生成手段(図示せず)によって反応セル6内に磁場をかけることで磁気粒子等を運動させて反応溶液を攪拌する。なお、この場合には、注入後数秒の攪拌を行えばよい。
【0034】
ただし、反応セル6を振動モータにより攪拌する場合には、振動にともなって、透明導電膜26aがシールドケース15と離間して接地が取れなくなる場合を考慮する必要がある。そこで、前記した透明導電膜26aの各設置形態について、振動モータによる攪拌の影響を実験例を参照しながら説明する。
なお、磁気粒子による攪拌は、反応セル6の振動が起こらないので、前記した問題は考慮に入れなくてもよい。
【0035】
[実験例1]
実験例1においては、図5(a)で示した本実施形態の透明導電膜26aの設置形態と、図5(b)で示した通常の透明導電膜26aの設置形態を適用した場合について、振動モータによる攪拌の影響を示すための実験を行っている。
【0036】
[検出条件]
実験例1で使用した透明導電膜26aをコーティングした石英ガラス板26の性能は、波長450〜600nmにおいて透過率90%以上、面積抵抗1000〜1500Ωである。光センサ24には、浜松ホトニクス製ホトダイオードS1133−01を使用し、光センサ24の出力は、電流電圧変換増幅アンプ(BURR BROWN製OPA129UB)および10GΩの抵抗を用いて、1×1010に増幅し、2段目のオペアンプ(ANALOG DEVICES製OP07)を用いてトータルゲイン1.8×1011に増幅した。
なお、実験例1はノイズを検出するための測定であるため、試薬溶液や反応溶液等は使用していない。
【0037】
[実験結果]
本実施形態の透明導電膜26aの設置形態(図5(a)参照)におけるノイズ測定結果を図7(a)に、通常の透明導電膜26aの設置形態を適用した場合(図5(b)参照)におけるノイズ測定結果を図7(b)に示す。図7(a)および図7(b)ともに、ノイズは検出されない。すなわち、両者ともに振動による攪拌を行っていない場合であるため、透明導電膜26aはシールドケース15に接地されており、透明導電膜26aのノイズ遮断機能は有効に機能している。
【0038】
図6(a)は、本実施形態の透明導電膜26aの設置形態(図5(a)参照)において、振動モータにより攪拌している状態を説明するための模式図であり、攪拌時のノイズ測定結果を図7(c)に示す。図7(c)において、ノイズは検出されない。振動モータにより、振動攪拌の際に反応セル6が上下に動いても、透明導電膜26aはシールドケース15に貼着されているため、透明導電膜26aのノイズ遮断機能は有効に機能している。
【0039】
図6(b)は、通常の透明導電膜26aの設置形態を適用した場合(図5(b)参照)において、振動モータにより攪拌している状態を説明するための模式図であり、攪拌時のノイズ測定結果を図7(d)に示す。図7(d)において、ノイズが検出された(時間15秒において、−0.04V程度の信号強度を検出したことを示す)。振動攪拌による反応セルの上下動のために、反応セル底部に形成された透明導電膜はシールドケース15と離間して接地がとれなくなるためである。
従って、実験例1の結果によれば、攪拌手段として振動モータを用いる場合には、本実施形態の透明導電膜26aの設置形態(図5(a)参照)が好適であることが示された。
【0040】
[実験例2]
実施例2においては、振動モータによる攪拌の至適条件を検討するための実験を行っている。
【0041】
[検出条件]
反応に用いた反応溶液は20μLであり、試薬溶液(デオキシヌクレオチド溶液)を0.2μL注入した。未反応の試料DNA(鋳型DNA)の量は、同一試薬溶液(デオキシヌクレオチド溶液)を再度注入し、反応した量とした。試薬溶液および反応溶液の組成については、後記する実施例「表1」を参照する。
装置等の設定は、実験例1の検出条件に従った。
【0042】
[実験結果]
図8は、振動モータの振動数と未反応DNA鎖の割合との相関関係を示している。
振動モータの攪拌周波数が20Hz以上で未反応物の割合が、数%以下になった。特に、攪拌周波数25Hz以上では、未反応物の割合はほぼ0%で、完全に反応が進んでいることが分かる。図示を省略したが、さらに、攪拌周波数を大きくすると反応セル6が振動しなくなり、逆に反応効率が低下する。100Hz以上では10%以上の未反応が起こる。
【0043】
なお、以上説明した本発明は、その技術思想のおよぶ範囲で、種々の変更実施を行うことができる。例えば、本実施形態においては、反応セル6は移動せず、キャピラリ18が回転する構成を示したが、キャピラリ18を移動させずに反応セル6を回転させる構成としてもよい。
【0044】
また、本実施形態では反応セルの数を塩基の種類に対応して4つとして説明したが、8個、12個、16個等、4の倍数個の反応セルを設けてもよい。さらに、増加させた反応セルの数に対応させて試薬チューブの数を適宜増加させてもよい。以下、反応セルの数に関する変形例を、適宜図面を参照して説明する。
【0045】
図9は、反応セルの数に関する変形例1を示す図である。
変形例1においては、4つの反応セル106a−106dに加え、それぞれの反応セル106a−106dの外周方向にさらに4つの反応セル106e−106hを設けた構成である。また、各反応セル106a−106hの上部垂直方向には試薬チューブ117a−117hに連通したキャピラリ118a−118hを配設している。なお、変形例1においては、試薬チューブ117a−117dと試薬チューブ117e−117hそれぞれについて、異なった4種のデオキシヌクレオチド溶液(dATP、dCTP、dGTPまたはdTTPを含む)またはその誘導体が1種類ずつ入っている。
このような構成とすることで、回転軸3の数を増加させることなく反応セル6の数を増加させることができ、一度に分析できる試料数を増やすことができる。
【0046】
図10は、反応セルの数に関する変形例2を示す図である。
図10に示すように、半径方向に隣接するキャピラリ(例えば、218aと218e)が、同一の試薬溶液を吐出する場合、1本の試薬チューブ217につき、複数本のキャピラリ218を連通させる構成としてもよい。このような構成とすることで、試薬チューブ217の数を減らすことができるため、試薬溶液の交換を簡易に行うことができる。
【0047】
図11は、反応セルの数に関する変形例3を示す図である。
変形例3は、4の倍数個の反応セル306a−306hが、円周上に等間隔に配設されている場合である。また、各反応セル306a−306hの上部垂直方向には試薬チューブ317a−317hに連通したキャピラリ318a−318hを配設している。この場合、例えば、318a、318b、318c、318d、318e、318f、318g、318hの順に、それぞれ、dATP、dGTP、dCTP、dTTP、dATP、dGTP、dCTP、dTTPを含む試薬溶液を吐出させるように配列させ、45°ずつ回動させればよい。このような構成とすることで、回転軸3や送液部19の数を増加させることなく反応セル6の数および試薬チューブ17の数を増加させることができる。また、前記した実施形態の回転角が90°であったのに比べ、回転軸3を駆動させる回転モータ22の作業を減少させることができる。
【0048】
また、図示していないが、反応セルの数に関する変形例4として、縦8穴×横12穴の96穴マイクロプレートを反応セル6として適用する場合について説明する。96穴マイクロプレート中の互いに隣接する縦2穴×横2穴の計4つのウェル毎に、順次、図3で示した1つの送液部19、すなわち、4本のキャピラリ18をそれぞれ上部垂直方向に配設する構成とすることができる。このような構成とすることで、多くとも24個の送液部19、すなわち、96本の試薬チューブ17と、各試薬チューブ17に連通した96本のキャピラリ18によって、96試料を同時に分析することができる。
なお、市販のマイクロタイタープレートを反応セル6として適用する場合には、隣接するウェル(反応セル)同士の発光のクロストークを防止するために、反応セルホルダ7にクロストーク防止用の仕切りを設けることが好ましい。
【0049】
また、反応セル6の数がキャピラリ18の数よりも多い場合には、送液部19にアクチュエータを設け、4つの反応セル6の分析完了毎に、次の4つの反応セル6に送液部19を移動させる構成としてもよい。
【実施例】
【0050】
次に、本発明の発光検出装置1の効果を確認した実施例をDNA塩基配列決定方法を例にさらに詳細に説明する。
なお、本実施例は、図3で示したように、本実施形態の構成である4つの反応セル6と4種のdNTPに対応した4つの試薬チューブ17を備えた発光検出装置1によって塩基配列の決定を行った。従って、本実施例における、反応セル6、試薬チューブ17およびキャピラリ18の対応関係は、図3を参照して説明する。
【0051】
本実施例で使用した透明導電膜26aをコーティングした石英ガラス板26の性能は、波長450〜600nmにおいて透過率90%以上、面積抵抗1000〜1500Ωである。光センサ24には、浜松ホトニクス製ホトダイオードS1133−01を使用し、光センサ24の出力は、電流電圧変換増幅アンプ(BURR BROWN製OPA129UB)および10GΩの抵抗を用いて、1×1010に増幅し、2段目のオペアンプ(ANALOG DEVICES製OP07)を用いてトータルゲイン1.8×1011に増幅した。
【0052】
本装置で行うDNA塩基配列決定方法の原理は、DNAに相補鎖結合したプライマーの伸長反応時に生成するピロリン酸(PPi)をルシフェリン/ルシフェラーゼ系の生物発光反応法で検出するものである。以下に、反応スキームを説明する。
【0053】
測定対象の試料DNAに伸長反応用プライマーをハイブリダイズさせる。試料DNAと伸長反応用プライマーがハイブリダイズした状態にDNAポリメラーゼを用いてDNA相補鎖伸長反応を行う。その際、試薬溶液としてデオキシリボヌクレオチド三リン酸(あるいは類似対核酸)溶液を1種類ずつ、順次加えていくと、DNA相補鎖伸長反応が起きた場合のみ、PPiが生じる。DNA相補鎖伸長反応により生じたPPiは、APS(アデノシン5’−ホスホスルフェイト)存在下でATPスルフリラーゼにより、SO42-(硫酸イオン)を生じて、ATPに変換される。ATPスルフリラーゼにより変換されたATPは、マグネシウムイオンおよびO2(酸素)存在下でルシフェラーゼによるルシフェリンの酸化反応に使用され、光を発する。その際、CO2(炭酸ガス)が生じると共に、ATPはPPiとAMPに、ルシフェリンはオキシルシフェリンに変換される。ルシフェリン/ルシフェラーゼ系の生物発光に伴い生じたPPiは、再度APS存在下でATPスルフリラーゼにより、ATPに変換され、発光反応が繰り返し起こり、発光は持続する。本DNA塩基配列決定方法は、dNTP溶液を順番に繰り返し加え、発光の有無を検出しながら1個ずつ塩基配列を決定していく方法(Ahmadian, Aら、Analytical Biochemistry 280 (2000) 103−110 およびZhou, Gら、Electrophoresis 22 (2001) 3497−3504参照)であり、本発明の発光検出装置1を用いて容易に行うことができる。
以下、本実施例の具体的な測定方法を説明する。
【0054】
本実施例では、試料DNAとして以下に示す遺伝子(thiopurine S−methyltransferase gene)、および、この配列の3’端と相補的な配列であるシーケンシング用プライマーを使用した。
【0055】
thiopurine S−methyltransferase gene
5’−tgttgaagtaccagcatgcaccatgggggacgctgctcatcttcttaaagatttgatttttctcccataa aatgttttttctctttctggtaggacaaatattggcaaatttgacatgatttgggatagaggagcattagttgcca ttaatccaggtgatcgcaaatggtaagtaattttt-3’
シーケンシング用プライマー
5’-aaaattacttaccatttgcgatca-3’
【0056】
本実施例で使用した試薬溶液および反応溶液の組成を「表1」に示す。
なお、ここで使用した試薬溶液および反応溶液の組成や濃度は、測定法の一例であり、装置構成や試料DNA等に応じて適宜変更できる。
【0057】
【表1】

【0058】
各反応セル6には、反応溶液を合計31μL分注し(うち、1μLはプライマーアニーリング処理が施された試料DNAであり、測定直前に添加している)、この反応溶液に、試薬溶液(デオキシヌクレオチド溶液)0.3μLを順次注入して、発光反応を測定した。
ここで、プライマーアニーリング処理が施された試料DNAとは、試料DNA(400fmol)と1.5倍量のシーケンシング用プライマーをアニーリングバッファー中(10 mM Tris-acetate buffer、pH7.75、2 mM magnesium acetate)でハイブリダイゼイション(95℃、20秒→60℃、120秒→室温)を行ったものである。ただし、試料DNAとシーケンシング用プライマーとのハイブリダイゼイションの方法は、前記したものに限定されない。例えば、反応セル6に試料DNAとシーケンシング用プライマーを添加した後に、ハイブリダイゼイションに必要な所定の温度操作を行ってもよい。
なお、本実施例においては、4つの反応セル6内に同一の試料DNAを含む同一の反応溶液を分注している。
【0059】
試薬チューブ17a、試薬チューブ17b、試薬チューブ17cおよび試薬チューブ17dには、試薬溶液として、それぞれdATPαS溶液、dGTP溶液、dTTP溶液およびdCTP溶液が保持されている。また、各試薬溶液には、APSが含まれている(「表1」参照)。
なお、本実施例においては、dATPの代わりに、類似体であるdATPαSを使用している。dATPαSは、dATP同様に、DNA相補鎖伸長反応の際にDNA3’端に付加しピロリン酸を放出する基質として機能する一方で、ルシフェラーゼに対する基質特異性、すなわち基質としての働きはdATPの場合の2桁以下であるため、dATPを使用した場合に比べてバックグランドノイズの大きさが非常に小さくなる。従って、試薬溶液としてdATPの代わりにdATPαSを使用することにより、感度が向上するため、より好ましい。
【0060】
測定開始直後には、反応セル6a、反応セル6b、反応セル6cおよび反応セル6dの上部には、それぞれ、試薬チューブ17a、試薬チューブ17b、試薬チューブ17cおよび試薬チューブ17dが配設されている。
【0061】
DNA塩基配列の決定は、4つの反応セル6中の反応溶液に同時にdNTP溶液を注入し、所定時間後試薬チューブ17を反時計回りに90°回転し、次のdNTP溶液を同時に注入して行う。
ここで、図12を参照して、本実施例において、各反応セル6に注入されるdNTP溶液の順番を示す。なお、前記したように本実施例においては、dATPの代わりにdATPαSを使用しているが、4種dNTPの関係を簡潔に示すために、図中ではdATPと示す。
試薬溶液注入の時間間隔は、30〜90秒である。通常は反応の進行を確実にするために1反応1分とし、1塩基配列決定に4分要するが、試薬溶液および反応溶液の組成ならびに試料DNAの塩基配列によって適宜変更される。
【0062】
図13は、本実施例における各反応セル6の発光検出データである。図13(a)、(b)、(c)および(d)のDNA塩基配列データは、それぞれ、図12に示す反応セル6a、反応セル6b、反応セル6cおよび反応セル6dに対応している。全ての反応セル6において、重複するDNA塩基配列データを得た。なお、本実施例においては、前記したように、4つの反応セル6において、同一の試料DNAの塩基配列を分析している。
本実施例の結果から、本発明にかかる発光検出装置1を使用することで、全ての反応セル6において同時かつ適切にDNA塩基配列を決定することができることを示した。
【産業上の利用可能性】
【0063】
ここで開示した装置は簡便なDNAシーケンサとして、さらには一塩基伸長反応等のDNA検査装置として大きく産業分野に活用される。さらに、ATP測定による細菌検査、あるいは小型ルミノメータとしても活用できる。
【図面の簡単な説明】
【0064】
【図1】本発明の一実施形態である発光検出装置の外観斜視図である。
【図2】図1に示す発光検出装置から本体カバーを取り除いたときの発光検出装置の要部を示す斜視図である。
【図3】本発明の一実施形態である送液部と反応セルとの対応関係を説明するための図である。
【図4】本発明の一実施形態である発光検出装置の要部の縦断面図である。
【図5】透明導電膜の設置形態を説明するための要部拡大断面図であって、(a)は、本実施形態の透明導電膜26aの設置形態であり、(b)は、通常の透明導電膜の設置形態を適用した場合である。
【図6】図5に示した透明導電膜の設置形態において、振動モータにより攪拌している状態を説明するための模式図であって、(a)は、本実施形態の透明導電膜の設置形態、(b)は、通常の透明導電膜の設置形態を適用した場合について、それぞれの攪拌時の構成を示す。
【図7】本実施形態および通常の透明導電膜の設置形態において、それぞれ、非攪拌時と攪拌時のノイズの検出結果である。
【図8】振動モータの振動数と反応効率の相関関係を示す測定データである。
【図9】反応セルの数に関する変形例1である送液部と反応セルとの対応関係を説明するための図である。
【図10】反応セルの数に関する変形例2である送液部と反応セルとの対応関係を説明するための図である。
【図11】反応セルの数に関する変形例3である送液部と反応セルとの対応関係を説明するための図である。
【図12】本実施例において各反応セル6に注入されるdNTP溶液の順番を説明するための図である。
【図13】本実施例における各反応セルの発光検出データである。
【符号の説明】
【0065】
1 発光検出装置
2 試薬チューブホルダ(円板)
3 回転軸
4 圧力配管(流路)
5 回転シール(流路)
6 反応セル
7 反応セルホルダ(保持板)
8 トレー(保持板)
9 本体カバー
10 エジェクトボタン
11 扉
12 遮光板
13 ベース
14 シールド
15 シールドケース
16 スタンド
17 試薬チューブ(試薬容器)
18 キャピラリ
19 送液部
20 ガス流路(流路)
20a ガス供給口
20b 上端
21 凸部
22 回転モータ
23 貫通孔
24 光センサ(光検出素子)
25 アンプ
26 石英ガラス
26a 透明導電膜
27 ガイド
28 回転軸受
29 光検出部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
実質的に透明な底部を有する複数の反応セルと、前記反応セルの上方に位置し、前記反応セルと一対一に対応付けられるキャピラリを備える送液部と、前記反応セルと一対一に対応して前記反応セルの下面に近接して配列された複数の光検出素子を有する光検出部とを含み、前記送液部から試薬溶液を前記反応セルに注入することにより前記反応セル内で発生する発光を前記光検出部の光検出素子によって個別に検出することを特徴とする発光検出装置。
【請求項2】
実質的に透明な底部を有する4の倍数個の反応セルと、前記4の倍数個の反応セルの上方に位置し、前記4の倍数個の反応セルと一対一に対応付けられる4の倍数本のキャピラリを備える送液部と、前記4の倍数個の反応セルと一対一に対応して前記4の倍数個の反応セルの下面に近接して配列された複数の光検出素子を有する光検出部とを含み、前記送液部から試薬溶液を前記反応セルに注入することにより前記反応セル内で発生する発光を前記光検出部の光検出素子によって個別に検出することを特徴とする発光検出装置。
【請求項3】
実質的に透明な底部を有する複数の反応セルと、前記反応セルの上方に位置し、前記反応セルと一対一に対応付けられるキャピラリを備える送液部と、前記反応セルと一対一に対応して前記反応セルの下面に近接して配列された複数の光検出素子を有する光検出部とを含み、前記送液部から試薬溶液を前記反応セルに注入することにより前記反応セル内で発生する発光を前記光検出部の光検出素子によって個別に検出する発光検出装置であって、
前記送液部は、試薬溶液を入れる複数の試薬容器と、前記複数の試薬容器に連通する前記複数のキャピラリと、前記複数の試薬容器内を加圧する圧力源と、前記複数の試薬容器と前記圧力源を連通させる流路を含んでなり、
前記圧力源によって前記複数の試薬容器内を所定時間加圧する定圧加圧送液法によって、前記複数のキャピラリの吐出口から前記複数の反応セルに試薬溶液を均等に送液することを特徴とする発光検出装置。
【請求項4】
実質的に透明な底部を有する複数の反応セルと、前記反応セルの上方に位置し、前記反応セルと一対一に対応付けられるキャピラリを備える送液部と、前記反応セルと一対一に対応して前記反応セルの下面に近接して配列された複数の光検出素子を有する光検出部とを含み、前記送液部から試薬溶液を前記反応セルに注入することにより前記反応セル内で発生する発光を前記光検出部の光検出素子によって個別に検出する発光検出装置であって、
前記反応セルを、前記反応セルを保持している保持板を振動させることにより攪拌する攪拌手段と、
少なくとも前記反応セルと前記反応セルと一対一に対応する前記光検出素子との間に、前記反応セルから分離して、透明導電膜を備えたことを特徴とする発光検出装置。
【請求項5】
前記攪拌手段の攪拌周波数が、20Hz以上であることを特徴とする請求項4に記載の発光検出装置。
【請求項6】
前記反応セルと前記送液部は、相対的に回転する少なくとも二つの円板あるいは保持板上に配置され、前記円板あるいは前記保持板を回転させて、前記送液部から試薬溶液を前記反応セルに注入することを特徴とする請求項1に記載の発光検出装置。
【請求項7】
前記送液部と前記反応セルは、同一間隔で同一円周上に配置されていることを特徴とする請求項1に記載の発光検出装置。
【請求項8】
前記反応セルと前記光検出部の複数の光検出素子との間にレンズまたは集光デバイスを配置したことを特徴とする請求項1に記載の発光検出装置。
【請求項9】
前記反応セルを一括して攪拌する攪拌手段を備えたことを特徴とする請求項1、請求項2、請求項3または請求項5に記載の発光検出装置。
【請求項10】
前記攪拌手段は、前記反応セルを保持している保持板を振動させることを特徴とする請求項9に記載の発光検出装置。
【請求項11】
前記攪拌手段は、前記反応セル中の磁気粒子を磁場生成手段により運動させることを特徴とする請求項9に記載の発光検出装置。
【請求項12】
前記送液部から注入される前記試薬溶液はデオキシリボヌクレオチド三リン酸、またはこれらの類似体核酸を含む溶液であることを特徴とする請求項1ないし請求項5のいずれか1項に記載の発光検出装置。
【請求項13】
注入される前記デオキシリボヌクレオチド三リン酸、またはこれらの類似体核酸を含む溶液に対応した送液部を備え、異なる前記反応セルに同時に注入することを特徴とする請求項12に記載の発光検出装置。
【請求項14】
4種類の異なるデオキシリボヌクレオチド三リン酸、またはこれらの類似体核酸を含む溶液が異なる4本の送液部に一対一に対応して、異なる前記反応セルに同時に注入することを特徴とする請求項12に記載の発光検出装置。
【請求項15】
前記送液部は、試薬溶液を入れる複数の試薬容器と、前記複数の試薬容器に連通する前記複数のキャピラリと、前記複数の試薬容器内を加圧する圧力源と、前記複数の試薬容器と前記圧力源を連通させる流路を含んでなり、
前記圧力源によって前記複数の試薬容器内を所定時間加圧する定圧加圧送液法によって、前記複数のキャピラリの吐出口から前記複数の反応セルに試薬溶液を均等に送液することを特徴とする請求項1、請求項2、請求項4または請求項5に記載の発光検出装置。
【請求項16】
前記光検出部の光検出側に透明導電膜が配置し、前記透明導電膜を接地されていることを特徴とする請求項1、請求項2、請求項3または請求項5に記載の発光検出装置。
【請求項17】
前記反応セルに核酸試料、前記核酸試料の一部の配列に相補的な配列を含むプライマー、DNAポリメラーゼ、ルシフェリンおよびルシフェラーゼのいずれか一つを含む溶液を保持し、前記反応セル内で、前記核酸試料に前記プライマーをハイブリダイズさせ、少なくとも1種の前記デオキシリボヌクレオチド三リン酸またはこれらの類似体と前記DNAポリメラーゼを用いた相補鎖伸長反応の進行により生成するピロリン酸をアデノシン5’−三リン酸(ATP)に変換し、前記ATP、前記ルシフェリンおよび前記ルシフェラーゼの反応により生成する生物発光を、前記光検出部の光検出素子で検出することを特徴とする請求項1ないし請求項5のいずれか1項に記載の発光検出装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2006−177837(P2006−177837A)
【公開日】平成18年7月6日(2006.7.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−372619(P2004−372619)
【出願日】平成16年12月24日(2004.12.24)
【出願人】(000005108)株式会社日立製作所 (27,607)
【Fターム(参考)】