説明

発光活性を有する融合蛋白質

【課題】発光生物由来のルシフェラーゼ以外の蛋白質で、ルシフェリンを発光基質とする発光触媒活性を有する蛋白質が求められていた。
【解決手段】(1)式(Z)nで表され、かつ、修飾可能なポリペプチドとの融合蛋白質として発現させたときに、ルシフェリンを基質とする発光触媒活性を有するポリペプチドのアミノ酸配列を含有する第1の領域;と(2)チオール基を介して他の有用な化合物を結合させるためのシステイン残基を1つ以上有する修飾可能なポリペプチドのアミノ酸配列を含有する第2の領域;とを含有する、融合蛋白質。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ルシフェラーゼを基質とする発光触媒活性を有する融合蛋白質などに関する。
【背景技術】
【0002】
セレンテラジンを発光基質(ルシフェリン)とする発光酵素(ルシフェラーゼ)は、海洋性発光生物に散在し、その酵素は、セレンテラジン系ルシフェラーゼと呼ばれている。現在まで、レニラルシフェラーゼ、ガウシアルシフェラーゼ、プレウロマンマルシフェラーゼ、オプロフォーラスルシフェラーゼ、メトリディアルシフェラーゼ等の発光生物由来のルシフェラーゼの遺伝子が報告されている(表1)。ルシフェラーゼの分子量は、19 kDa から35 kDaと様々な分子量分布を示す。さらに、これらのルシフェラーゼの一次構造のアミノ酸配列間の相同性は全くなく、セレンテラジン系ルシフェラーゼによる発光機構は不明な点が多い。
【0003】
【表1】

【0004】
セレンテラジンの発光反応は、セレンテラジンとルシフェラーゼと酸素のみによって行われる最も単純な発光系のため、ルシフェラーゼは、各種アッセイ系でのレポーター酵素(遺伝子)として広く利用されている。
【0005】
一方、発光生物由来のルシフェラーゼ以外の蛋白質によるセレンテラジンの発光反応として、分子量69 kDaの牛血清アルブミン等の蛋白質による発光反応が知られている(非特許文献5:Zhao, H., Doyle, T.C., Wong, R.J., Cao, Y., Stevenson, D.K., Piwnica-Worms D., Contag, C.H. (2004) Mol. Imaging. 3,43-54.)。しかし、牛血清アルブミンが関与する発光反応については、その発光機構に関して詳細な報告もなく、さらに、発光生物由来のルシフェラーゼ以外の蛋白質で発光反応を触媒する蛋白質は、ほとんど見つかっていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】WO 99/49019
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】Lorenz, W.W., McCann, R.O., Longiaru, M., Cormier, M.J. (1991) Proc. Natl. Acad. Sci. USA. 88, 4438-4442.
【非特許文献2】Inouye, S., Watanabe, K., Nakamura, H., Shimomura, O. (2000) FEBS Lett. 481, 19-25.
【非特許文献3】Markova, S. V., Golz S., Frank, L.A., Kalthof, B., Vysotski, E. S (2004) J. Biol. Chem. 279, 3212-3217
【非特許文献4】Takenaka,Y., Masuda,H., Yamaguchi, A., Nishikawa, S., Shigeri, Y.. Yoshida,Y., Mizuno, H. (2008) Gene 425, 28-35.
【非特許文献5】Zhao, H., Doyle, T.C., Wong, R.J., Cao, Y., Stevenson, D.K., Piwnica-Worms D., Contag, C.H. (2004) Mol. Imaging. 3,43-54.
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上記状況において、発光生物由来のルシフェラーゼ以外の蛋白質で、ルシフェリンを発光基質とする発光触媒活性を有する蛋白質が求められていた。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、種々の蛋白質を対象にして、セレンテラジンを発光基質とする発光触媒活性を有する蛋白質のスクーニングを行なった。その結果、ZZドメイン-gCysが、発光触媒活性を有することを見出した。ZZドメイン-gCysは、ZZドメインのC末端側に修飾可能なシステインをC末端に持つフレキシブルリンカー(gCys)を挿入した融合蛋白質である。ZZドメイン-gCysのZZドメインは、Staphylococcus aureus(黄色ブドウ状球菌)の細胞壁成分であるProtein AのIgG 結合ドメイン由来の人工ドメインである。これらの知見に基づいて更に検討を重ねた結果、本発明を完成するに至った。
【0010】
すなわち、本発明は、以下に示す融合蛋白質、ポリヌクレオチド、組換えベクター、形質転換体、融合蛋白質の製造方法、融合蛋白質に他の有用な化合物を結合した複合体などを提供する。
【0011】
[1](1)式(Z)n
(式中、nは1〜5の整数を表し、Zは以下の(a)〜(d)からなる群から選択されるポリペプチドを表す:
(a)配列番号:8のアミノ酸配列からなるポリペプチド、
(b)配列番号:8のアミノ酸配列において1〜複数個のアミノ酸が欠失、置換、挿入および/または付加したアミノ酸配列からなるポリペプチド、
(c)配列番号:8のアミノ酸配列に対して90%以上の同一性を有するアミノ酸配列からなるポリペプチド、および
(d)配列番号:7の塩基配列に相補的な塩基配列からなるポリヌクレオチドとストリンジェントな条件下でハイブリダイズするポリヌクレオチドによってコードされるアミノ酸配列からなるポリペプチド)
で表され、かつ、修飾可能なポリペプチドとの融合蛋白質として発現させたときに、ルシフェリンを基質とする発光触媒活性を有するポリペプチドのアミノ酸配列を含有する第1の領域;と
(2)チオール基を介して他の有用な化合物を結合させるためのシステイン残基を1つ以上有する修飾可能なポリペプチドのアミノ酸配列を含有する第2の領域;と
を含有する、融合蛋白質。
[2]前記第2の領域が以下の(e)〜(h)からなる群:
(e)配列番号:6のアミノ酸配列からなるポリペプチド、
(f)配列番号:6のアミノ酸配列において1〜複数個のアミノ酸が欠失、置換、挿入および/または付加したアミノ酸配列からなり、かつ、チオール基を介して他の有用な化合物を結合させるためのシステイン残基を1つ以上有するポリペプチド、
(g)配列番号:6のアミノ酸配列に対して70%以上の同一性を有するアミノ酸配列からなり、かつ、チオール基を介して他の有用な化合物を結合させるためのシステイン残基を1つ以上有するポリペプチド、および
(h)配列番号:5の塩基配列に相補的な塩基配列からなるポリヌクレオチドとストリンジェントな条件下でハイブリダイズするポリヌクレオチドによってコードされるアミノ酸配列からなり、かつ、チオール基を介して他の有用な化合物を結合させるためのシステイン残基を1つ以上有するポリペプチド;
から選択されるポリペプチドのアミノ酸配列を含有する領域である、項[1]記載の融合蛋白質。
[3]前記第2の領域が以下の(e)〜(h)からなる群:
(e)配列番号:6のアミノ酸配列からなるポリペプチド、
(f)配列番号:6のアミノ酸配列において1〜3個のアミノ酸が欠失、置換、挿入および/または付加したアミノ酸配列からなり、かつ、チオール基を介して他の有用な化合物を結合させるためのシステイン残基を1つ以上有するポリペプチド、
(g)配列番号:6のアミノ酸配列に対して90%以上の同一性を有するアミノ酸配列からなり、かつ、チオール基を介して他の有用な化合物を結合させるためのシステイン残基を1つ以上有するポリペプチド、および
(h)配列番号:5の塩基配列に相補的な塩基配列からなるポリヌクレオチドと高ストリンジェントな条件下でハイブリダイズするポリヌクレオチドによってコードされるアミノ酸配列からなり、かつ、チオール基を介して他の有用な化合物を結合させるためのシステイン残基を1つ以上有するポリペプチド;
から選択されるポリペプチドのアミノ酸配列を含有する領域である、項[2]記載の融合蛋白質。
[4]前記式(Z)nで表されるポリペプチドが、(Z)2で表されるポリペプチドである、項[1]〜[3]のいずれか1項記載の融合蛋白質。
[5]前記式(Z)2で表されるポリペプチドが、
(a)配列番号:10のアミノ酸配列からなるポリペプチド、
(b)配列番号:10のアミノ酸配列において1〜複数個のアミノ酸が欠失、置換、挿入および/または付加したアミノ酸配列からなり、かつ、修飾可能なポリペプチドとの融合蛋白質として発現させたときに、ルシフェリンを基質とする発光触媒活性を有するポリペプチド、
(c)配列番号:10のアミノ酸配列に対して90%以上の同一性を有するアミノ酸配列からなり、かつ、修飾可能なポリペプチドとの融合蛋白質として発現させたときに、ルシフェリンを基質とする発光触媒活性を有するポリペプチド、および
(d)配列番号:9の塩基配列に相補的な塩基配列からなるポリヌクレオチドとストリンジェントな条件下でハイブリダイズするポリヌクレオチドによってコードされるアミノ酸配列からなり、かつ、修飾可能なポリペプチドとの融合蛋白質として発現させたときに、ルシフェリンを基質とする発光触媒活性を有するポリペプチド
からなる群から選択されるポリペプチドである、項[4]記載の融合蛋白質。
[6]前記式(Z)nで表されるポリペプチドが、IgGのFc領域と結合することができる機能を有する、項[1]〜[5]のいずれか1項記載の融合蛋白質。
[7](1)前記第1の領域が配列番号:10のアミノ酸配列からなる領域であり、
(2)前記第2の領域が配列番号:6のアミノ酸配列からなる領域である、項[1]記載の融合蛋白質。
[8]さらに、翻訳促進のためのアミノ酸配列および/または精製のためのアミノ酸配列を含有する、項[1]〜[7]のいずれか1項記載の融合蛋白質。
[9]配列番号:2のアミノ酸配列からなる融合蛋白質。
[10]項[1]〜[9]のいずれか1項記載の融合蛋白質をコードするポリヌクレオチドを含有するポリヌクレオチド。
[11](1)式(Z)n
(式中、nは1〜5の整数を表し、Zは以下の(a)〜(d)からなる群から選択されるポリペプチドを表す:
(a)配列番号:8のアミノ酸配列からなるポリペプチド、
(b)配列番号:8のアミノ酸配列において1〜複数個のアミノ酸が欠失、置換、挿入および/または付加したアミノ酸配列からなるポリペプチド、
(c)配列番号:8のアミノ酸配列に対して90%以上の同一性を有するアミノ酸配列からなるポリペプチド、および
(d)配列番号:7の塩基配列に相補的な塩基配列からなるポリヌクレオチドとストリンジェントな条件下でハイブリダイズするポリヌクレオチドによってコードされるアミノ酸配列からなるポリペプチド)
で表され、かつ、修飾可能なポリペプチドとの融合蛋白質として発現させたときに、ルシフェリンを基質とする発光触媒活性を有するポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを含有する第1のコード配列;と
(2)チオール基を介して他の有用な化合物を結合させるためのシステイン残基を1つ以上有する修飾可能なポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを含有する第2のコード配列;と
を含有する、ポリヌクレオチド。
[12]前記第2のコード配列が以下の(e)〜(h)からなる群:
(e)配列番号:5の塩基配列からなるポリヌクレオチド、
(f)配列番号:5の塩基配列に相補的な塩基配列からなるポリヌクレオチドとストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、かつ、チオール基を介して他の有用な化合物を結合させるためのシステイン残基を1つ以上有するポリペプチドをコードするポリヌクレオチド、
(g)配列番号:6のアミノ酸配列からなるポリペプチドをコードするポリヌクレオチド、および
(h)配列番号:6のアミノ酸配列において1〜複数個のアミノ酸が欠失、置換、挿入および/または付加したアミノ酸配列からなり、かつ、チオール基を介して他の有用な化合物を結合させるためのシステイン残基を1つ以上有するポリペプチドをコードするポリヌクレオチド;
から選択されるポリヌクレオチドを含有するコード配列である、項[11]記載のポリヌクレオチド。
[13]前記第2のコード配列が以下の(e)〜(h)からなる群:
(e)配列番号:5の塩基配列からなるポリヌクレオチド、
(f)配列番号:5の塩基配列に相補的な塩基配列からなるポリヌクレオチドと高ストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、かつ、チオール基を介して他の有用な化合物を結合させるためのシステイン残基を1つ以上有するポリペプチドをコードするポリヌクレオチド、
(g)配列番号:6のアミノ酸配列からなるポリペプチドをコードするポリヌクレオチド、および
(h)配列番号:6のアミノ酸配列において1〜3個のアミノ酸が欠失、置換、挿入および/または付加したアミノ酸配列からなり、かつ、チオール基を介して他の有用な化合物を結合させるためのシステイン残基を1つ以上有するポリペプチドをコードするポリヌクレオチド;
から選択されるポリヌクレオチドを含有するコード配列である、項[12]記載のポリヌクレオチド。
[14]前記式(Z)nで表されるポリペプチドが(Z)2で表されるポリペプチドである、項[11]〜[13]のいずれか1項記載のポリヌクレオチド。
[15]前記式(Z)2で表されるポリペプチドが、
(a)配列番号:10のアミノ酸配列からなるポリペプチド、
(b)配列番号:10のアミノ酸配列において1〜複数個のアミノ酸が欠失、置換、挿入および/または付加したアミノ酸配列からなり、かつ、修飾可能なポリペプチドとの融合蛋白質として発現させたときに、ルシフェリンを基質とする発光触媒活性を有するポリペプチド、
(c)配列番号:10のアミノ酸配列に対して90%以上の同一性を有するアミノ酸配列からなり、かつ、修飾可能なポリペプチドとの融合蛋白質として発現させたときに、ルシフェリンを基質とする発光触媒活性を有するポリペプチド、および
(d)配列番号:9の塩基配列に相補的な塩基配列からなるポリヌクレオチドとストリンジェントな条件下でハイブリダイズするポリヌクレオチドによってコードされるアミノ酸配列からなり、かつ、修飾可能なポリペプチドとの融合蛋白質として発現させたときに、ルシフェリンを基質とする発光触媒活性を有するポリペプチド
からなる群から選択されるポリペプチドである、項[14]記載のポリヌクレオチド。
[16]前記式(Z)nで表されるポリペプチドが、IgGのFc領域と結合することができる機能を有する、項[11]〜[15]のいずれか1項記載のポリヌクレオチド。
[17](1)前記第1のコード配列が配列番号:10のアミノ酸配列からなるポリペプチドをコードするポリヌクレオチドからなるコード配列であり、
(2)前記第2のコード配列が配列番号:6のアミノ酸配列からなるポリペプチドをコードするポリヌクレオチドからなるコード配列である、項[11]記載のポリヌクレオチド。
[18](1)前記第1のコード配列が配列番号:9の塩基配列からなるポリヌクレオチドからなるコード配列であり、
(2)前記第2のコード配列が配列番号:5の塩基配列からなるポリヌクレオチドからなるコード配列である、項[11]記載のポリヌクレオチド。
[19]さらに、翻訳促進のためのアミノ酸配列からなるポリペプチドおよび/または精製のためのアミノ酸配列からなるポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを含有する、項[11]〜[18]のいずれか1項記載のポリヌクレオチド。
[20]配列番号:1の塩基配列からなるポリヌクレオチドを含有するポリヌクレオチド。
[21]項[10]〜[20]のいずれか1項記載のポリヌクレオチドを含有する組換えベクター。
[22]項[21]記載の組換えベクターが導入された形質転換体。
[23]項[22]記載の形質転換体を培養し、項[1]〜[9]のいずれか1項記載の融合蛋白質を生成させる工程を含む、項[1]〜[9]のいずれか1項記載の融合蛋白質の製造方法。
[24]項[1]〜[9]のいずれか1項記載の融合蛋白質に、該融合蛋白質の第2の領域のシステイン残基のチオール基を介して、他の有用な化合物を結合した複合体。
[25]他の有用な化合物が蛍光物質および/または検出すべき物質に特異的なリガンドである、項[24]記載の複合体。
[26]項[1]〜[9]のいずれか1項記載の融合蛋白質を含むキット。
[27]項[10]〜[20]のいずれか1項記載のポリヌクレオチド、項[21]記載の組換えベクターまたは項[22]記載の形質転換体を含むキット。
[28]項[24]または[25]記載の複合体を含むキット。
[29]さらにルシフェリンを含む、項[26]〜[28]のいずれか1項記載のキット。
[30]ルシフェリンがセレンテラジン類である、項[29]記載のキット。
[31]セレンテラジン類がセレンテラジンである、項[30]記載のキット。
[32]項[1]〜[9]のいずれか1項記載の融合蛋白質または項[24]または[25]記載の複合体と、ルシフェリンとを接触させることを含む、発光反応を行う方法。
[33]項[1]〜[9]記載の融合蛋白質または項[24]または[25]記載の複合体をドナー蛋白質として用いて、生物発光共鳴エネルギー移動(BRET)法を行うことを特徴とする、生理機能の解析または酵素活性の測定方法。
[34]項[25]記載の複合体を用いる、リガンドに特異的な物質を測定する方法。
[35]項[1]〜[9]のいずれか1項記載の融合蛋白質を用いたイムノアッセイ法。
【発明の効果】
【0012】
本発明の融合蛋白質は、ルシフェリンを基質とする発光触媒活性を有する。本発明の融合蛋白質は、化学修飾法により修飾可能であり汎用性も高い。本発明の好ましい態様の融合蛋白質が触媒する発光反応における発光は、牛血清アルブミンが触媒する発光反応における発光以上の発光強度である。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】図1(a)は、実施例で用いたベクターpCold-ZZ-gCysを示す概略図である。pCold-ZZ-gCysは、アミノ末端にヒスチジン配列を有し、ZZドメインの下流にペプチドリンカーおよびシステイン残基を持つ融合蛋白質(ZZドメイン-gCys)を発現する。図1(b)は、ZZドメイン-gCysのアミノ酸配列(配列番号:2)の概略図である。
【図2】図2は、ZZドメイン-gCysの精製過程におけるSDS-PAGE分析の結果を示す図である。 SDS-PAGE分析は、次の条件で行った:12%分離ゲル、還元状態、熱処理95℃にて3分。各レーンの試料は次の通りである。レーン1:蛋白質分子量マーカー(テフコ社)としてβ−ガラクトシダーゼ(116,000 Da)、ホスホリパーゼB(97,400 Da)、ウシ血清アルブミン(69,000 Da)、グルタミン酸デヒドロゲナーゼ(55,000 Da)、乳酸デヒドロゲナーゼ(36,500 Da)、炭酸脱水素酵素(29,000 Da)、トリプシンインヒビター(20,100 Da)、レーン2:組換えZZドメイン-gCysを発現させた大腸菌の形質転換株の超音波破砕物を12,000gで遠心して得られた上清(蛋白質22.0μg)、レーン3:IgGセファロースカラムへ可溶性画分を供したときの溶出画分(蛋白質15.3μg)、レーン4:IgGセファロースカラムをTBST溶液で洗浄したときの溶出画分(蛋白質3.3μg)、レーン5:IgGセファロースカラムを5 mM酢酸アンモニウム溶液 (pH5.0)にて洗浄したときの溶出画分(蛋白質1.2μg)、レーン6:IgGセファロースカラムからの溶出画分3(蛋白質25.5μg)、レーン7:IgGセファロースカラムからの溶出画分4(蛋白質15.3μg)、レーン8:IgGセファロースカラムからの溶出画分5(蛋白質1.5μg)。
【図3】図3は、IgGセファロースカラムからの溶出ZZドメイン-gCys画分の72時間の透析後のSDS-PAGE分析の結果を示す図である。 SDS-PAGE分析は、次の条件で行った:12%分離ゲル、非還元状態、熱処理95℃にて3分。各レーンの試料は次の通りである。レーン1:蛋白質分子量マーカー(テフコ社)としてβ−ガラクトシダーゼ(116,000 Da)、ホスホリパーゼB(97,400 Da)、ウシ血清アルブミン(69,000 Da)、グルタミン酸デヒドロゲナーゼ(55,000 Da)、乳酸デヒドロゲナーゼ(36,500 Da)、炭酸脱水素酵素(29,000 Da)、トリプシンインヒビター(20,100 Da)、レーン2:IgGセファロースカラムからの溶出画分の透析後のZZドメイン-gCys(蛋白質10.0μg)。
【図4】図4は、セレンテラジンを基質とした時のZZドメイン-gCysの発光のパターンを示す図である。
【図5】図5は、セレンテラジンを基質とした時のZZドメイン-gCysの発光スペクトルを示す図である。
【図6】図6は、セレンテラジンを基質とした時のZZドメイン-gCysの発光反応における至適pHを示す図である。
【図7】図7は、塩化ナトリウムの各濃度におけるZZドメイン-gCysの発光活性の活性化を示す図である。
【図8】図8は、Tween 20の各濃度におけるZZドメイン-gCysの発光活性の活性化を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明について詳細に説明する。
1.本発明の融合蛋白質
本発明の融合蛋白質は、(1)式(Z)nで表され、配列番号:10のアミノ酸配列からなるポリペプチドと実質的に同質の活性もしくは機能を有するポリペプチドのアミノ酸配列を含有する第1の領域と、(2)チオール基を介して他の有用な化合物を結合させるためのシステイン残基を1つ以上有するポリペプチドのアミノ酸配列からなる第2の領域とを含有する融合蛋白質である。
【0015】
本発明の融合蛋白質は、第1の領域と第2の領域とが「N末端−第1の領域−第2の領域−C末端」の順で並んでいるものであっても、あるいは「N末端−第2の領域−第1の領域−C末端」の順で並んでいるものであってもよい。本発明の好ましい態様の融合蛋白質は、第1の領域と第2の領域とが「N末端−第1の領域−第2の領域−C末端」の順で並んでいるものである。
【0016】
第1の領域は、式(Z)nで表され、配列番号:10のアミノ酸配列からなるポリペプチドと実質的に同質の活性もしくは機能を有するポリペプチドのアミノ酸配列を含有する領域である。
【0017】
「配列番号:10のアミノ酸配列からなるポリペプチドと実質的に同質の活性もしくは機能」とは、例えば、修飾可能なポリペプチドとの融合蛋白質として発現させたときの、ルシフェリンを基質とする発光触媒活性(本明細書中で、単に「発光活性」という場合がある。)、すなわち、ルシフェリン(例えば、セレンテラジン類)が酸素分子で酸化されてオキシルシフェリンが励起状態で生成する反応を触媒するようになる活性を意味する。なお、励起状態で生成したオキシルシフェリンは可視光を発して基底状態となる。
【0018】
このような活性もしくは機能は、例えば、文献Inouye, S. & Sahara, Y. (2008) Biochem. Biophys. Res. Commun. 365, 96−101などに記載の方法によって測定することができる。具体的には、本発明の融合蛋白質をルシフェリンと混合することにより発光反応を開始させ、発光測定装置を用いて発光触媒活性を測定することができる。発光測定装置としては、市販されている装置、例えばLuminescencer−PSN AB2200(アトー社製)、Centro 960 luminometer (ベルトール社製)などを使用することができる。
【0019】
本発明で用いられるルシフェリンとしては、本発明の融合蛋白質の基質となるルシフェリンであればよい。本発明で用いられるルシフェリンとしては、具体的にはセレンテラジン類が挙げられる。
【0020】
本明細書において、セレンテラジン類とは、セレンテラジンおよびセレンテラジン誘導体を意味する。セレンテラジン誘導体としては、例えば、h−セレンテラジン、hcp−セレンテラジン、cp−セレンテラジン、f−セレンテラジン、fcp−セレンテラジン、n−セレンテラジン、Bis−セレンテラジン、MeO−セレンテラジン、e−セレンテラジン、cl−セレンテラジンch−セレンテラジン、3iso-セレンテラジン、3meo-セレンテラジン、cf3-セレンテラジン、i-セレンテラジン、et-セレンテラジン、me-セレンテラジン、3me-セレンテラジン、αmeh-セレンテラジン8-(1-naphthyl)-セレンテラジン、8-(2-naphthyl)-セレンテラジン、8-(2-thienyl)-セレンテラジン、6,8-di(2-thienyl)-セレンテラジン、8-(4-hydroxyphenyl)-セレンテラジン、8-(2-benzothienyl)-セレンテラジン、8-(b-styryl)-セレンテラジン、8-phenyl-セレンテラジン、6-deoxy-セレンテラジン、8-(3-thienyl)-セレンテラジンおよび8-(3-benzo[b]thienyl)-セレンテラジンなどがあげられる。これらのセレンテラジン類の中でも、本発明では、セレンテラジンが特に好ましい。これらのセレンテラジン類は、公知の方法で合成してもよく、あるいは、市販のものを入手することもできる。
【0021】
セレンテラジン類の合成方法としては、例えば、Shimo mura et al. (1988) Biochem.J. 251, 405-410、Shimomura et al. (1989) Biochem.J. 261, 913-920、Shimomura et al. (1990) Biochem.J. 270, 309-312、WO2010/090319号公報、Inouye et al.(2010) Anal. Biochem.407, 247-252などに記載の方法またはそれに準ずる方法が挙げられる。
【0022】
また、セレンテラジン類の市販品に関しては、例えば、チッソ株式会社製のセレンテラジンおよびh−セレンテラジン;シグマ社製のhcp−セレンテラジン、cp−セレンテラジン、f−セレンテラジン、fcp−セレンテラジンおよびn−セレンテラジン;プロメガ社製のセレンテラジン、Bis-セレンテラジン、hcp-セレンテラジンおよびh-セレンテラジンなどを挙げることができる。
【0023】
本発明のいくつかの態様では、第1の領域は、さらに、IgGに結合することができる活性もしくは機能、例えば、IgGのFC領域に結合することができる活性もしくは機能を有する。好ましくは、本発明の融合蛋白質は、ルシフェリンを基質とする発光触媒活性を実質的に阻害することなく、IgGに結合することができる。IgGに結合することができる活性もしくは機能は、例えば、ウエスタンブロッティング法、後述の実施例に記載の方法などに従って測定することができる。
【0024】
Zは、以下の(a)〜(d)からなる群から選択されるポリペプチドを表す:
(a)配列番号:8のアミノ酸配列からなるポリペプチド、
(b)配列番号:8のアミノ酸配列において1〜複数個のアミノ酸が欠失、置換、挿入および/または付加したアミノ酸配列からなるポリペプチド、
(c)配列番号:8のアミノ酸配列に対して90%以上の同一性を有するアミノ酸配列からなるポリペプチド、および
(d)配列番号:7の塩基配列に相補的な塩基配列からなるポリヌクレオチドとストリンジェントな条件下でハイブリダイズするポリヌクレオチドによってコードされるアミノ酸配列からなるポリペプチド。
【0025】
nは、1〜5の整数を表し、2または3であるのが好ましく、特に2であるのが好ましい。
式(Z)nで表されるポリペプチドにおいて、各Zは同一であっても異なっていてもよい。
式(Z)nで表されるポリペプチドとしては、特に式(Z)2で表されるポリペプチドが好ましい。
【0026】
式(Z)2で表されるポリペプチドとしては、例えば、配列番号:10のアミノ酸配列からなるポリペプチドまたは配列番号:10のアミノ酸配列からなるポリペプチドと実質的に同質の活性もしくは機能を有するポリペプチドが挙げられる。本明細書中、配列番号:10のアミノ酸配列からなるポリペプチドまたは配列番号:10のアミノ酸配列からなるポリペプチドと実質的に同質の活性もしくは機能を有するポリペプチドを「ZZドメイン」と称することがある。
【0027】
式(Z)2で表されるポリペプチドとしては、より具体的には、例えば、
(a)配列番号:10のアミノ酸配列からなるポリペプチド、
(b)配列番号:10のアミノ酸配列において1〜複数個のアミノ酸が欠失、置換、挿入および/または付加したアミノ酸配列からなり、かつ、修飾可能なポリペプチドとの融合蛋白質として発現させたときに、ルシフェリンを基質とする発光触媒活性を有するポリペプチド、
(c)配列番号:10のアミノ酸配列に対して90%以上の同一性を有するアミノ酸配列からなり、かつ、修飾可能なポリペプチドとの融合蛋白質として発現させたときに、ルシフェリンを基質とする発光触媒活性を有するポリペプチド、および
(d)配列番号:9の塩基配列に相補的な塩基配列からなるポリヌクレオチドとストリンジェントな条件下でハイブリダイズするポリヌクレオチドによってコードされるアミノ酸配列からなり、かつ、修飾可能なポリペプチドとの融合蛋白質として発現させたときに、ルシフェリンを基質とする発光触媒活性を有するポリペプチド
からなる群から選択されるポリペプチドなどが挙げられる。
【0028】
第1の領域において、「1〜複数個のアミノ酸が欠失、置換、挿入および/または付加」とは、同一配列中の任意かつ1もしくは複数のアミノ酸配列中の位置において、1または複数のアミノ酸残基の欠失、置換、挿入および/または付加があることを意味する。
【0029】
第1の領域において、「1〜複数個のアミノ酸が欠失、置換、挿入および/または付加したアミノ酸配列」における「1〜複数個」の範囲は、例えば、1〜20個、1〜15個、1〜10個、1〜9個、1〜8個、1〜7個、1〜6個(1〜数個)、1〜5個、1〜4個、1〜3個、1〜2個、1個である。欠失、置換、挿入もしくは付加したアミノ酸の数は、一般的に少ないほど好ましい。上記アミノ酸残基の欠失、置換、挿入および付加のうち2種以上が同時に生じてもよい。このような領域は、“Sambrook J. et al., Molecular Cloning: A Laboratory Manual, Third Edition, Cold Spring Harbor Laboratory Press (2001)”、“Ausbel F. M. et al., Current Protocols in Molecular Biology, Supplement 1〜38, John Wiley and Sons (1987-1997) ”、“Nuc. Acids. Res., 10, 6487 (1982)”、“Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 79, 6409 (1982)”、“Gene, 34, 315 (1985)”、“Nuc. Acids. Res., 13, 4431 (1985)”、“Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 82, 488 (1985)”等に記載の部位特異的変異導入法を用いて、取得することができる。
【0030】
以下に、相互に置換可能なアミノ酸残基の例を示す。同一群に含まれるアミノ酸残基は相互に置換可能である。
A群:ロイシン、イソロイシン、ノルロイシン、バリン、ノルバリン、アラニン、2−アミノブタン酸、メチオニン、o−メチルセリン、t−ブチルグリシン、t−ブチルアラニン、シクロヘキシルアラニン;
B群:アスパラギン酸、グルタミン酸、イソアスパラギン酸、イソグルタミン酸、2−アミノアジピン酸、2−アミノスベリン酸;
C群:アスパラギン、グルタミン;
D群:リジン、アルギニン、オルニチン、2,4−ジアミノブタン酸、2,3−ジアミノプロピオン酸;
E群:プロリン、3−ヒドロキシプロリン、4−ヒドロキシプロリン;
F群:セリン、スレオニン、ホモセリン;
G群:フェニルアラニン、チロシン。
【0031】
第1の領域において、「90%以上の同一性を有するアミノ酸配列からなるポリペプチド」における「90%以上」の範囲は、例えば、90%以上、91%以上、92%以上、93%以上、94%以上、95%以上、96%以上、97%以上、98%以上、99%以上、99.1%以上、99.2%以上、99.3%以上、99.4%以上、99.5%以上、99.6%以上、99.7%以上、99.8%以上、99.9%以上である。上記同一性の数値は、一般的に大きいほど好ましい。なお、アミノ酸配列や塩基配列の同一性は、BLAST(例えば、Altzshul S. F. et al., J. Mol. Biol. 215, 403 (1990)、など参照)等の解析プログラムを用いて決定できる。BLASTを用いる場合は、各プログラムのデフォルトパラメーターを用いる。
【0032】
第1の領域において、「ストリンジェントな条件下でハイブリダイズするポリヌクレオチド」とは、配列番号:7もしくは9の塩基配列と相補的な塩基配列からなるポリヌクレオチドまたは配列番号:8もしくは10のアミノ酸配列をコードするポリヌクレオチドの全部または一部をプローブとして、コロニーハイブリダイゼーション法、プラークハイブリダイゼーション法またはサザンハイブリダイゼーション法などを用いることにより得られるポリヌクレオチド(例えば、DNA)をいう。具体的には、コロニーあるいはプラーク由来のポリヌクレオチドを固定化したフィルターを用いて、0.7〜1.0mol/LのNaCl存在下、65℃でハイブリダイゼーションを行った後、0.1〜2倍濃度のSSC(Saline-sodium citrate)溶液(1倍濃度のSSC溶液の組成は、150mmol/L塩化ナトリウム、15mmol/Lクエン酸ナトリウムよりなる)を用い、65℃条件下でフィルターを洗浄することにより同定できるポリヌクレオチドをあげることができる。
【0033】
ハイブリダイゼーションは、Sambrook J. et al., Molecular Cloning: A Laboratory Manual, Third Edition, Cold Spring Harbor Laboratory Press (2001)、Ausbel F. M. et al., Current Protocols in Molecular Biology, Supplement 1〜38, John Wiley and Sons (1987-1997)、Glover D. M. and Hames B. D., DNA Cloning 1: Core Techniques, A practical Approach, Second Edition, Oxford University Press (1995)等の実験書に記載されている方法に準じて行うことができる。
【0034】
「ストリンジェントな条件」は、低ストリンジェントな条件、中ストリンジェントな条件及び高ストリンジェントな条件のいずれでもよい。「低ストリンジェントな条件」は、例えば、5×SSC、5×デンハルト溶液、0.5%(w/v)SDS、50%(v/v)ホルムアミド、32℃の条件である。また、「中ストリンジェントな条件」は、例えば、5×SSC、5×デンハルト溶液、0.5%(w/v)SDS、50%(v/v)ホルムアミド、42℃の条件である。「高ストリンジェントな条件」は、例えば、5×SSC、5×デンハルト溶液、0.5(w/v)%SDS、50%(v/v)ホルムアミド、50℃の条件である。条件を厳しくするほど、二本鎖形成に必要とする相補性が高くなる。具体的には、例えば、これらの条件において、温度を上げるほど高い相同性を有するポリヌクレオチド(例えば、DNA)が効率的に得られることが期待できる。ただし、ハイブリダイゼーションのストリンジェンシーに影響する要素としては温度、プローブ濃度、プローブの長さ、イオン強度、時間、塩濃度など複数の要素が考えられ、当業者であればこれら要素を適宜選択することで同様のストリンジェンシーを実現することが可能である。
【0035】
なお、ハイブリダイゼーションに市販のキットを用いる場合は、例えばAlkphos Direct Labelling Reagents(アマシャムファルマシア社製)を用いることができる。この場合は、キットに添付のプロトコールにしたがい、標識したプローブとのインキュベーションを一晩行った後、メンブレンを55℃の条件下で0.1% (w/v) SDSを含む1次洗浄バッファーで洗浄後、ハイブリダイズしたDNAを検出することができる。
【0036】
これ以外にハイブリダイズ可能なポリヌクレオチドとしては、BLAST等の解析プログラムにより、デフォルトのパラメータを用いて計算したときに、配列番号:7もしくは9の塩基配列からなるポリヌクレオチドまたは配列番号:8もしくは10のアミノ酸配列をコードするポリヌクレオチドと約60%以上、65%以上、70%以上、75%以上、80%以上、85%以上、88%以上、90%以上、92%以上、95%以上、97%以上、98%以上、99%以上、99.3%以上、99.5%以上、99.7%以上、99.8%以上、99.9%以上の同一性を有するDNAをあげることができる。なお、塩基配列またはアミノ酸配列の同一性は、前述した方法を用いて決定できる。
【0037】
さらに好ましくは、第1の領域は、配列番号:10のアミノ酸配列からなる領域である。
【0038】
第2の領域は、チオール基を介して他の有用な化合物を結合させるためのシステイン残基を1つ以上有するポリペプチドのアミノ酸配列を含有する領域である。前記「チオール基を介して他の有用な化合物を結合させるためのシステイン残基を1つ以上有する」における「1つ以上」とは、例えば、1個、2個、または3個であり、好ましくは、1個または2個であり、特に好ましくは、1個である。本発明の融合蛋白質に、第2の領域に含まれるシステイン残基由来のチオール基を介して化学修飾により他の有用な化合物を導入することが可能である。本発明の好ましい態様の融合蛋白質は、融合蛋白質の発光触媒活性にほとんど影響を与えずに、第2の領域に含まれるシステイン残基由来のチオール基を介して化学修飾により他の有用な化合物を導入することが可能である。
【0039】
第2の領域のポリペプチドの長さは、例えば、2〜40アミノ酸であり、好ましくは、5〜35アミノ酸であり、より好ましくは、7〜30アミノ酸であり、さらに好ましくは、10〜20アミノ酸であり、最も好ましくは、15アミノ酸である。
【0040】
第2の領域に結合させるための他の有用な化合物としては、蛍光物質、検出すべき物質に特異的なリガンド(例、ビオチン、ビオチン結合蛋白質、酵素、基質、抗体、抗原、核酸、多糖類、レセプター、またはこれらに結合能を有する化合物等)等を挙げることができる。
【0041】
「蛍光物質」および「リガンド」としては、後述のものが挙げられる。
【0042】
本発明のいくつかの態様では、第2の領域は、以下の(e)〜(h)からなる群:
(e)配列番号:6のアミノ酸配列からなるポリペプチド、
(f)配列番号:6のアミノ酸配列において1〜複数個のアミノ酸が欠失、置換、挿入および/または付加したアミノ酸配列を含有し、かつ、チオール基を介して他の有用な化合物を結合させるためのシステイン残基を1つ以上有するポリペプチド、
(g)配列番号:6のアミノ酸配列に対して70%以上の同一性を有するアミノ酸配列を含有し、かつ、チオール基を介して他の有用な化合物を結合させるためのシステイン残基を1つ以上有するポリペプチド、および
(h)配列番号:5の塩基配列に相補的な塩基配列からなるポリヌクレオチドとストリンジェントな条件下でハイブリダイズするポリヌクレオチドによってコードされるアミノ酸配列を含有し、かつ、チオール基を介して他の有用な化合物を結合させるためのシステイン残基を1つ以上有するポリペプチド;
から選択されるポリペプチドのアミノ酸配列を含有する領域である。
【0043】
第2の領域において、「1〜複数個のアミノ酸が欠失、置換、挿入および/または付加」とは、同一配列中の任意かつ1もしくは複数のアミノ酸配列中の位置において、1または複数のアミノ酸残基の欠失、置換、挿入および/または付加があることを意味する。
【0044】
第2の領域において、「1〜複数個のアミノ酸が欠失、置換、挿入および/または付加したアミノ酸配列」における「1〜複数個」の範囲は、例えば、1〜5個、1〜4個、1〜3個、1〜2個、1個である。欠失、置換、挿入もしくは付加したアミノ酸の数は、一般的に少ないほど好ましい。上記アミノ酸残基の欠失、置換、挿入および付加のうち2種以上が同時に生じてもよい。このような領域は、“Sambrook J. et al., Molecular Cloning: A Laboratory Manual, Third Edition, Cold Spring Harbor Laboratory Press (2001)”、“Ausbel F. M. et al., Current Protocols in Molecular Biology, Supplement 1〜38, John Wiley and Sons (1987−1997)”、“Nuc. Acids. Res., 10, 6487 (1982)”、“Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 79, 6409 (1982)”、“Gene, 34, 315 (1985)”、“Nuc. Acids. Res., 13, 4431 (1985)”、“Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 82, 488 (1985)”等に記載の部位特異的変異導入法を用いて、取得することができる。
【0045】
以下に、相互に置換可能なアミノ酸残基の例を示す。同一群に含まれるアミノ酸残基は相互に置換可能である。
A群:ロイシン、イソロイシン、ノルロイシン、バリン、ノルバリン、アラニン、2−アミノブタン酸、メチオニン、o−メチルセリン、t−ブチルグリシン、t−ブチルアラニン、シクロヘキシルアラニン;
B群:アスパラギン酸、グルタミン酸、イソアスパラギン酸、イソグルタミン酸、2−アミノアジピン酸、2−アミノスベリン酸;
C群:アスパラギン、グルタミン;
D群:リジン、アルギニン、オルニチン、2,4−ジアミノブタン酸、2,3−ジアミノプロピオン酸;
E群:プロリン、3−ヒドロキシプロリン、4−ヒドロキシプロリン;
F群:セリン、スレオニン、ホモセリン;
G群:フェニルアラニン、チロシン。
【0046】
第2の領域において、「70%以上の同一性を有するアミノ酸配列」における「70%以上」の範囲は、例えば、70%以上、75%以上、80%以上、85%以上、88%以上、90%以上、91%以上、92%以上、93%以上、94%以上、95%以上、96%以上、97%以上、98%以上、99%以上、99.1%以上、99.2%以上、99.3%以上、99.4%以上、99.5%以上、99.6%以上、99.7%以上、99.8%以上、99.9%以上である。上記同一性の数値は、一般的に大きいほど好ましい。なお、塩基配列またはアミノ酸配列の同一性は、BLAST(例えば、Altzshul S. F. et al., J. Mol. Biol. 215, 403 (1990)など参照)等の解析プログラムを用いて決定できる。BLASTを用いる場合は、各プログラムのデフォルトパラメーターを用いる。
【0047】
第2の領域において、「ストリンジェントな条件下でハイブリダイズするポリヌクレオチド」とは、配列番号:5の塩基配列と相補的な塩基配列からなるポリヌクレオチドまたは配列番号:6のアミノ酸配列をコードするポリヌクレオチドの全部または一部をプローブとして、コロニーハイブリダイゼーション法、プラークハイブリダイゼーション法またはサザンハイブリダイゼーション法などを用いることにより得られるポリヌクレオチド(例えば、DNA)をいう。具体的には、コロニーあるいはプラーク由来のポリヌクレオチドを固定化したフィルターを用いて、0.7〜1.0mol/LのNaCl存在下、65℃でハイブリダイゼーションを行った後、0.1〜2倍濃度のSSC(Saline-sodium citrate)溶液(1倍濃度のSSC溶液の組成は、150mmol/L塩化ナトリウム、15mmol/Lクエン酸ナトリウムよりなる)を用い、65℃条件下でフィルターを洗浄することにより同定できるポリヌクレオチドをあげることができる。
【0048】
ハイブリダイゼーションは、Sambrook J. et al., Molecular Cloning: A Laboratory Manual, Third Edition, Cold Spring Harbor Laboratory Press (2001)、Ausbel F. M. et al., Current Protocols in Molecular Biology, Supplement 1〜38, John Wiley and Sons (1987-1997)、Glover D. M. and Hames B. D., DNA Cloning 1: Core Techniques, A practical Approach, Second Edition, Oxford University Press (1995)等の実験書に記載されている方法に準じて行うことができる。
【0049】
「ストリンジェントな条件」は、低ストリンジェントな条件、中ストリンジェントな条件及び高ストリンジェントな条件のいずれでもよい。「低ストリンジェントな条件」は、例えば、5×SSC、5×デンハルト溶液、0.5%(w/v)SDS、50%(v/v)ホルムアミド、32℃の条件である。また、「中ストリンジェントな条件」は、例えば、5×SSC、5×デンハルト溶液、0.5%(w/v)SDS、50%(v/v)ホルムアミド、42℃の条件である。「高ストリンジェントな条件」は、例えば、5×SSC、5×デンハルト溶液、0.5(w/v)%SDS、50%(v/v)ホルムアミド、50℃の条件である。条件を厳しくするほど、二本鎖形成に必要とする相補性が高くなる。具体的には、例えば、これらの条件において、温度を上げるほど高い相同性を有するポリヌクレオチド(例えば、DNA)が効率的に得られることが期待できる。ただし、ハイブリダイゼーションのストリンジェンシーに影響する要素としては温度、プローブ濃度、プローブの長さ、イオン強度、時間、塩濃度など複数の要素が考えられ、当業者であればこれら要素を適宜選択することで同様のストリンジェンシーを実現することが可能である。
【0050】
なお、ハイブリダイゼーションに市販のキットを用いる場合は、例えばAlkphos Direct Labelling Reagents(アマシャムファルマシア社製)を用いることができる。この場合は、キットに添付のプロトコールにしたがい、標識したプローブとのインキュベーションを一晩行った後、メンブレンを55℃の条件下で0.1% (w/v) SDSを含む1次洗浄バッファーで洗浄後、ハイブリダイズしたDNAを検出することができる。
【0051】
これ以外にハイブリダイズ可能なポリヌクレオチドとしては、BLAST等の解析プログラムにより、デフォルトのパラメータを用いて計算したときに、配列番号:5の塩基配列からなるポリヌクレオチドまたは配列番号:6のアミノ酸配列をコードするポリヌクレオチドと約60%以上、65%以上、70%以上、75%以上、80%以上、85%以上、88%以上、90%以上、92%以上、95%以上、97%以上、98%以上、99%以上、99.3%以上、99.5%以上、99.7%以上、99.8%以上、99.9%以上の同一性を有するDNAをあげることができる。なお、塩基配列またはアミノ酸配列の同一性は、前述した方法を用いて決定できる。
【0052】
本発明の好ましい態様においては、第2の領域は以下の(e)〜(h)からなる群:
(e)配列番号:6のアミノ酸配列からなるポリペプチド、
(f)配列番号:6のアミノ酸配列において1〜3個のアミノ酸が欠失、置換、挿入および/または付加したアミノ酸配列を含有し、かつ、チオール基を介して他の有用な化合物を結合させるためのシステイン残基を1つ以上有するポリペプチド、
(g)配列番号:6のアミノ酸配列に対して90%以上の同一性を有するアミノ酸配列を含有し、かつ、チオール基を介して他の有用な化合物を結合させるためのシステイン残基を1つ以上有するポリペプチド、および
(h)配列番号:5の塩基配列に相補的な塩基配列からなるポリヌクレオチドと高ストリンジェントな条件下でハイブリダイズするポリヌクレオチドによってコードされるアミノ酸配列を含有し、かつ、チオール基を介して他の有用な化合物を結合させるためのシステイン残基を1つ以上有するポリペプチド;
から選択されるポリペプチドのアミノ酸配列を含有する領域である。
【0053】
本発明のさらに好ましい態様においては、第2の領域は配列番号:6のアミノ酸配列からなる領域である。
【0054】
本発明の好ましい態様の融合蛋白質は、
(1)配列番号:10のアミノ酸配列からなる第1の領域と、(2)配列番号:6のアミノ酸配列からなる第2の領域とを含有する融合蛋白質である。
本発明のさらに好ましい態様の融合蛋白質として、例えば、配列番号:2のアミノ酸配列からなる融合蛋白質などがあげられる。
【0055】
本発明の融合蛋白質は、配列番号:2のアミノ酸配列のように、さらに他のペプチド配列をN末端および/またはC末端、好ましくはN末端に含んでいてもよい。他のペプチド配列としては、例えば、翻訳促進のためのペプチド配列、精製のためのペプチド配列、分泌シグナルペプチド配列、本発明の融合蛋白質を可溶性蛋白質として発現するためのペプチド配列、抗体認識可能なエピトープ配列などからなる群から選択される少なくとも1つのペプチド配列を挙げることができる。他のペプチド配列は、好ましくは、精製のためのペプチド配列および/または分泌シグナルペプチド配列である。本発明の別の好ましい態様では、他のペプチド配列は、精製のためのペプチド配列、分泌シグナルペプチド配列、および本発明の融合蛋白質を可溶性蛋白質として発現するための配列からなる群から選択される少なくとも1つの配列である。
【0056】
本発明の融合蛋白質は、配列番号:2のアミノ酸配列のように、さらに、制限酵素サイトのリンカー配列が含まれていてもよい。
【0057】
翻訳促進のためのペプチド配列としては、当技術分野において用いられているペプチド配列を使用することができる。翻訳促進のためのペプチド配列としては、例えば、TEE配列などが挙げられる。
【0058】
精製のためのペプチド配列としては、当技術分野において用いられているペプチド配列を使用することができる。精製のためのペプチド配列としては、例えば、ヒスチジン残基が4残基以上、好ましくは6残基以上連続したアミノ酸配列を有するヒスチジンタグ配列、グルタチオン S−トランスフェラーゼのグルタチオンへの結合ドメインのアミノ酸配列、プロテインAのアミノ酸配列、アビジンタグ配列などが挙げられる。
【0059】
分泌シグナルペプチドとは、当該分泌シグナルペプチドに結合された蛋白質を、細胞膜透過させる役割を担うペプチド領域を意味する。このような分泌シグナルペプチドのアミノ酸配列およびそれをコードする核酸配列は、当技術分野において周知であり、報告されている(例えばvon Heijine G (1988) Biochim. Biohys. Acra 947: 307−333、von Heijine G (1990) J. Membr. Biol. 115: 195−201など参照)。分泌シグナルペプチドとしては、より具体的には、例えば、大腸菌の外膜蛋白質A由来の分泌シグナルペプチド(OmpA)(Ghrayeb, J. et al. (1984) EMBO J. 3:2437−2442)、コレラ菌由来コレラトキシン由来の分泌シグナルペプチドなどが挙げられる。
【0060】
制限酵素サイトのリンカー配列としては、当技術分野において用いられているペプチド配列を使用することができる。
【0061】
本発明の融合蛋白質は、第1の領域と第2の領域とが「N末端−第1の領域−第2の領域−C末端」の順で並んでいるものである場合、第1の領域からC末端までの間の第1の領域を除く部分の長さが、例えば、4〜50アミノ酸、好ましくは、7〜45アミノ酸であり、より好ましくは、14〜43アミノ酸であり、さらに好ましくは、17〜40アミノ酸であり、最も好ましくは、21〜36アミノ酸である。
【0062】
本発明の融合蛋白質は、第1の領域と第2の領域とが「N末端−第2の領域−第1の領域−C末端」の順で並んでいるものである場合、N末端から第1の領域までの間の第1の領域を除く部分の長さが、例えば、4〜50アミノ酸、好ましくは、7〜45アミノ酸であり、より好ましくは、14〜43アミノ酸であり、さらに好ましくは、17〜40アミノ酸であり、最も好ましくは、21〜36アミノ酸である。
【0063】
本発明の融合蛋白質の取得方法については特に制限はない。本発明の融合蛋白質としては、化学合成により合成した融合蛋白質でもよいし、遺伝子組換え技術により作製した組換え蛋白質であってもよい。本発明の融合蛋白質を化学合成する場合には、例えば、Fmoc法(フルオレニルメチルオキシカルボニル法)、tBoc法(t−ブチルオキシカルボニル法)等により合成することができる。また、アドバンスドケムテック社製、パーキンエルマー社製、ファルマシア社製、プロテインテクノロジーインストゥルメント社製、シンセセルーベガ社製、パーセプティブ社製、島津製作所社製等のペプチド合成機を利用して化学合成することもできる。本発明の融合蛋白質を遺伝子組換え技術により作製する場合には、通常の遺伝子組換え手法により作製することができる。より具体的には、本発明の融合蛋白質をコードするポリヌクレオチド(例えば、DNA)を適当な発現系に導入することにより、本発明の融合蛋白質を作製することができる。本発明の融合蛋白質をコードするポリヌクレオチド、本発明の融合蛋白質の発現系での発現などについては、後記する。
【0064】
2.本発明のポリヌクレオチド
本発明は、前述した本発明の融合蛋白質をコードするポリヌクレオチドも提供する。本発明のポリヌクレオチドとしては、本発明の融合蛋白質をコードする塩基配列を含有するものであればいかなるものであってもよいが、好ましくはDNAである。DNAとしては、ゲノムDNA、ゲノムDNAライブラリー、細胞・組織由来のcDNA、細胞・組織由来のcDNAライブラリー、合成DNAなどが挙げられる。ライブラリーに使用するベクターは、特に制限はなく、バクテリオファージ、プラスミド、コスミド、ファージミドなどいずれであってもよい。また、前記した細胞・組織からtotalRNAまたはmRNA画分を調製したものを用いて直接 Reverse Transcription Polymerase Chain Reaction(以下、RT-PCR法と略称する)によって増幅することもできる。
【0065】
本発明のポリヌクレオチドとしては、具体的には、
(1)式(Z)nで表され、かつ、修飾可能なポリペプチドとの融合蛋白質として発現させたときに、ルシフェリンを基質とする発光触媒活性を有するポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを含有する第1のコード配列;と
(2)チオール基を介して他の有用な化合物を結合させるためのシステイン残基を1つ以上有する修飾可能なポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを含有する第2のコード配列;と
を含有するポリヌクレオチドなどが含まれる。
【0066】
ここで、式(Z)nは前記と同じ意味を表す。
【0067】
本発明のポリヌクレオチドとしては、なかでも、
(1)式(Z)2で表され、かつ、修飾可能なポリペプチドとの融合蛋白質として発現させたときに、ルシフェリンを基質とする発光触媒活性を有するポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを含有する第1のコード配列;と
(2)チオール基を介して他の有用な化合物を結合させるためのシステイン残基を1つ以上有する修飾可能なポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを含有する第2のコード配列;と
を含有するポリヌクレオチドが好ましい。
【0068】
ここで、式(Z)2は前記と同じ意味を表す。
【0069】
式(Z)2で表されるポリペプチドをコードするポリヌクレオチドとしては、より具体的には、例えば、
(a)配列番号:10のアミノ酸配列からなるポリペプチド、
(b)配列番号:10のアミノ酸配列において1〜複数個のアミノ酸が欠失、置換、挿入および/または付加したアミノ酸配列からなり、かつ、修飾可能なポリペプチドとの融合蛋白質として発現させたときに、ルシフェリンを基質とする発光触媒活性を有するポリペプチド、
(c)配列番号:10のアミノ酸配列に対して90%以上の同一性を有するアミノ酸配列からなり、かつ、修飾可能なポリペプチドとの融合蛋白質として発現させたときに、ルシフェリンを基質とする発光触媒活性を有するポリペプチド、および
(d)配列番号:9の塩基配列に相補的な塩基配列からなるポリヌクレオチドとストリンジェントな条件下でハイブリダイズするポリヌクレオチドによってコードされるアミノ酸配列からなり、かつ、修飾可能なポリペプチドとの融合蛋白質として発現させたときに、ルシフェリンを基質とする発光触媒活性を有するポリペプチド
からなる群から選択されるポリペプチドをコードするポリヌクレオチドなどが挙げられる。
【0070】
式(Z)2で表されるポリペプチドをコードするポリヌクレオチドは、好ましくは、以下の(a)〜(d)からなる群から選択されるポリヌクレオチド:
(a)配列番号:9の塩基配列からなるポリヌクレオチドを含有するポリヌクレオチド、
(b)配列番号:9の塩基配列に相補的な塩基配列からなるポリヌクレオチドとストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、かつ、修飾可能なポリペプチドとの融合蛋白質として発現させたときに、ルシフェリンを基質とする発光触媒活性を有するポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを含有するポリヌクレオチド、
(c)配列番号:10のアミノ酸配列からなるポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを含有するポリヌクレオチド、および
(d)配列番号:10のアミノ酸配列において1〜複数個のアミノ酸が欠失、置換、挿入および/または付加したアミノ酸配列からなり、かつ、修飾可能なポリペプチドとの融合蛋白質として発現された場合に、ルシフェリンを基質とする発光触媒活性を有するポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを含有するポリヌクレオチド
などである。
【0071】
前記第2のコード配列は、好ましくは、以下の(e)〜(h)からなる群:
(e)配列番号:5の塩基配列からなるポリヌクレオチド、
(f)配列番号:5の塩基配列に相補的な塩基配列からなるポリヌクレオチドとストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、かつ、チオール基を介して他の有用な化合物を結合させるためのシステイン残基を1つ以上有するポリペプチドをコードするポリヌクレオチド、
(g)配列番号:6のアミノ酸配列からなるポリペプチドをコードするポリヌクレオチド、および
(h)配列番号:6のアミノ酸配列において1〜複数個のアミノ酸が欠失、置換、挿入および/または付加したアミノ酸配列からなり、かつ、チオール基を介して他の有用な化合物を結合させるためのシステイン残基を1つ以上有するポリペプチドをコードするポリヌクレオチド;
から選択されるポリヌクレオチドを含有するコード配列である。
【0072】
ここで、第1および第2のコード配列における「ストリンジェントな条件下でハイブリダイズするポリヌクレオチド」とは、配列番号:5、7または9の塩基配列と相補的な塩基配列からなるポリヌクレオチドまたは配列番号:6、8または10のアミノ酸配列をコードするポリヌクレオチドの全部または一部をプローブとして、コロニーハイブリダイゼーション法、プラークハイブリダイゼーション法またはサザンハイブリダイゼーション法などを用いることにより得られるポリヌクレオチド(例えば、DNA)をいう。具体的には、コロニーあるいはプラーク由来のポリヌクレオチドを固定化したフィルターを用いて、0.7〜1.0mol/LのNaCl存在下、65℃でハイブリダイゼーションを行った後、0.1〜2倍濃度のSSC(Saline-sodium citrate)溶液(1倍濃度のSSC溶液の組成は、150mmol/L塩化ナトリウム、15mmol/Lクエン酸ナトリウムよりなる)を用い、65℃条件下でフィルターを洗浄することにより同定できるポリヌクレオチドをあげることができる。
【0073】
ハイブリダイゼーションは、Sambrook J. et al., Molecular Cloning: A Laboratory Manual, Third Edition, Cold Spring Harbor Laboratory Press (2001)、Ausbel F. M. et al., Current Protocols in Molecular Biology, Supplement 1〜38, John Wiley and Sons (1987-1997)、Glover D. M. and Hames B. D., DNA Cloning 1: Core Techniques, A practical Approach, Second Edition, Oxford University Press (1995)等の実験書に記載されている方法に準じて行うことができる。
【0074】
「ストリンジェントな条件」は、低ストリンジェントな条件、中ストリンジェントな条件及び高ストリンジェントな条件のいずれでもよい。「低ストリンジェントな条件」は、例えば、5×SSC、5×デンハルト溶液、0.5%(w/v)SDS、50%(v/v)ホルムアミド、32℃の条件である。また、「中ストリンジェントな条件」は、例えば、5×SSC、5×デンハルト溶液、0.5%(w/v)SDS、50%(v/v)ホルムアミド、42℃の条件である。「高ストリンジェントな条件」は、例えば、5×SSC、5×デンハルト溶液、0.5(w/v)%SDS、50%(v/v)ホルムアミド、50℃の条件である。条件を厳しくするほど、二本鎖形成に必要とする相補性が高くなる。具体的には、例えば、これらの条件において、温度を上げるほど高い相同性を有するポリヌクレオチド(例えば、DNA)が効率的に得られることが期待できる。ただし、ハイブリダイゼーションのストリンジェンシーに影響する要素としては温度、プローブ濃度、プローブの長さ、イオン強度、時間、塩濃度など複数の要素が考えられ、当業者であればこれら要素を適宜選択することで同様のストリンジェンシーを実現することが可能である。
【0075】
なお、ハイブリダイゼーションに市販のキットを用いる場合は、例えばAlkphos Direct Labelling Reagents(アマシャムファルマシア社製)を用いることができる。この場合は、キットに添付のプロトコールにしたがい、標識したプローブとのインキュベーションを一晩行った後、メンブレンを55℃の条件下で0.1% (w/v) SDSを含む1次洗浄バッファーで洗浄後、ハイブリダイズしたDNAを検出することができる。
【0076】
これ以外にハイブリダイズ可能なポリヌクレオチドとしては、BLAST等の解析プログラムにより、デフォルトのパラメータを用いて計算したときに、配列番号:5、7または9の塩基配列からなるポリヌクレオチドまたは配列番号:6、8または10のアミノ酸配列をコードするポリヌクレオチドと約60%以上、65%以上、70%以上、75%以上、80%以上、85%以上、88%以上、90%以上、92%以上、95%以上、97%以上、98%以上、99%以上、99.3%以上、99.5%以上、99.7%以上、99.8%以上、99.9%以上の同一性を有するDNAをあげることができる。なお、アミノ酸配列や塩基配列の同一性は、前述した方法を用いて決定できる。
【0077】
第1および第2のコード配列における、「1〜複数個のアミノ酸が欠失、置換、挿入および/または付加したアミノ酸配列」とは、それぞれ、前記第1および第2の領域で説明した通りである。
【0078】
あるアミノ酸配列に対して、1もしくは複数個のアミノ酸が欠失、置換、挿入および/または付加したアミノ酸配列を有する領域をコードするポリヌクレオチドは、部位特異的変異導入法(例えば、Gotoh, T. et al., Gene 152, 271-275 (1995)、Zoller, M.J., and Smith, M., Methods Enzymol. 100, 468-500 (1983)、Kramer, W. et al., Nucleic Acids Res. 12, 9441-9456 (1984)、Kramer W, and Fritz H.J., Methods. Enzymol. 154, 350-367 (1987)、Kunkel,T.A., Proc. Natl. Acad. Sci. USA. 82, 488-492 (1985)、Kunkel, Methods Enzymol. 85, 2763-2766 (1988)、など参照)、アンバー変異を利用する方法(例えば、Gapped duplex法、Nucleic Acids Res. 12, 9441-9456 (1984)、など参照)などを用いることにより得ることができる。
【0079】
また目的の変異(欠失、付加、置換および/または挿入)を導入した配列をそれぞれの5’端に持つ1組のプライマーを用いたPCR(例えば、Ho S. N. et al., Gene 77, 51 (1989)など参照)によっても、ポリヌクレオチドに変異を導入することができる。
【0080】
また欠失変異体の一種である蛋白質の部分断片をコードするポリヌクレオチドは、その蛋白質をコードするポリヌクレオチド中の作製したい部分断片をコードする領域の5’端の塩基配列と一致する配列を有するオリゴヌクレオチドおよび3’端の塩基配列と相補的な配列を有するオリゴヌクレオチドをプライマーとして用いて、その蛋白質をコードするポリヌクレオチドを鋳型にしたPCRを行うことにより取得できる。
【0081】
本発明の好ましい態様のポリヌクレオチドでは、第1のコード配列が、以下の(a)〜(d)からなる群:
(a)配列番号:9の塩基配列からなるポリヌクレオチド、
(b)配列番号:9の塩基配列に相補的な塩基配列からなるポリヌクレオチドと高ストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、かつ、修飾可能なポリペプチドとの融合蛋白質として発現させたときに、ルシフェリンを基質とする発光触媒活性を有するポリヌクレオチドをコードするポリヌクレオチド、
(c)配列番号:10のアミノ酸配列からなるポリペプチドをコードするポリヌクレオチド、および
(d)配列番号:10のアミノ酸配列において1〜3個のアミノ酸が欠失、置換、挿入および/または付加したアミノ酸配列からなり、かつ、修飾可能なポリペプチドとの融合蛋白質として発現させたときに、ルシフェリンを基質とする発光触媒活性を有するポリペプチドをコードするポリヌクレオチド;
から選択されるポリヌクレオチドを含有するコード配列である。
【0082】
本発明の好ましい態様のポリヌクレオチドでは、第2のコード配列が、以下の(e)〜(h)からなる群:
(e)配列番号:5の塩基配列からなるポリヌクレオチド、
(f)配列番号:5の塩基配列に相補的な塩基配列からなるポリヌクレオチドと高ストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、かつ、チオール基を介して他の有用な化合物を結合させるためのシステイン残基を1つ以上有するポリヌクレオチド、
(g)配列番号:6のアミノ酸配列からなるポリペプチドをコードするポリヌクレオチド、および
(h)配列番号:6のアミノ酸配列において1〜3個のアミノ酸が欠失、置換、挿入および/または付加したアミノ酸配列からなり、かつ、チオール基を介して他の有用な化合物を結合させるためのシステイン残基を1つ以上有するポリペプチドをコードするポリヌクレオチド;
から選択されるポリヌクレオチドを含有するコード配列である。
【0083】
本発明のさらに好ましい態様のポリヌクレオチドは、
(1)配列番号:9の塩基配列からなるポリヌクレオチドからなる第1のコード配列と、(2)配列番号:5の塩基配列からなるポリヌクレオチドからなる第2のコード配列とを含有するポリヌクレオチドである。
【0084】
本発明の特に好ましい態様のポリヌクレオチドとして、例えば、配列番号:2のアミノ酸配列からなるポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを含有するポリヌクレオチドなどがあげられる。配列番号:2のアミノ酸配列からなるポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを含有するポリヌクレオチドとしては、例えば、配列番号:1の塩基配列からなるポリヌクレオチドを含有するポリヌクレオチドなどが挙げられる。
【0085】
本発明のポリヌクレオチドは、配列番号:1の塩基配列からなるポリヌクレオチドを含有するポリヌクレオチドのように、他のペプチド配列をコードするポリヌクレオチドを含有するポリヌクレオチドを含んでいてもよい。他のペプチド配列としては、例えば、翻訳促進のためのペプチド配列、精製のためのペプチド配列、分泌シグナルペプチド配列、本発明の融合蛋白質を可溶性蛋白質として発現するためのペプチド配列、抗体認識可能なエピトープ配列などからなる群から選択される少なくとも1つのペプチド配列を挙げることができる。
【0086】
本発明のポリヌクレオチドは、配列番号:1の塩基配列からなるポリヌクレオチドを含有するポリヌクレオチドのように、さらに、制限酵素サイトのリンカー配列をコードするポリヌクレオチドを含んでいてもよい。
【0087】
翻訳促進のためのペプチド配列をコードするポリヌクレオチドを含有するポリヌクレオチドとしては、当技術分野において用いられている翻訳促進のためのペプチド配列をコードするポリヌクレオチドを含有するポリヌクレオチドを使用することができる。翻訳促進のためのペプチド配列としては、前記したものなどが挙げられる。
【0088】
精製のためのペプチド配列をコードするポリヌクレオチドとしては、当技術分野において用いられている精製のためのペプチド配列をコードする塩基配列を含有するポリヌクレオチドを使用することができる。精製のためのペプチド配列としては、前記したものなどが挙げられる。
【0089】
分泌シグナルペプチドをコードするポリヌクレオチドとしては、当記述分野において知られている分泌シグナルペプチドをコードする核酸配列を含有するポリヌクレオチドを使用することができる。分泌シグナルペプチドとしては、前記したものなどが挙げられる。
【0090】
本発明の蛋白質を可溶性蛋白質として発現するためのペプチド配列をコードするポリヌクレオチドとしては、例えば式(Z)nで表わされるポリペプチドを挙げることができる。式(Z)nで表わされるポリペプチドのアミノ酸配列およびそれをコードする核酸配列としては、前記したものなどが挙げられる。
【0091】
制限酵素サイトのリンカー配列をコードするポリヌクレオチドとしては、当技術分野において用いられている精製のためのペプチド配列をコードする塩基配列を含有するポリヌクレオチドを使用することができる。
【0092】
3.本発明の組換えベクターおよび形質転換体
さらに、本発明は、上述した本発明のポリヌクレオチドを含有する組換えベクターおよび形質転換体を提供する。
【0093】
組換えベクターの作製
本発明の組換えベクターは、適当なベクターに本発明のポリヌクレオチド(DNA)を連結(挿入)することにより得ることができる。より具体的には、精製されたポリヌクレオチド(DNA)を適当な制限酵素で切断し、適当なベクターの制限酵素部位またはマルチクローニングサイトに挿入して、ベクターに連結することにより得ることができる。本発明のポリヌクレオチドを挿入するためのベクターは、宿主中で複製可能なものであれば特に限定されず、例えば、プラスミド、バクテリオファージ、動物ウイルス等が挙げられる。プラスミドとしては、例えば、大腸菌由来のプラスミド(例えばpBR322, pBR325, pUC118, pUC119等)、枯草菌由来のプラスミド(例えばpUB110, pTP5等)、酵母由来のプラスミド(例えばYEp13, YEp24, YCp50等)などがあげられる。バクテリオファージとしては、例えば、λファージなどがあげられる。動物ウイルスとしては、例えば、レトロウイルス、ワクシニアウイルス、昆虫ウイルス(例えば、バキュロウイルスなど)などがあげられる。また、pCold Iベクター、pCold IIベクター、pCold IIIベクター、pCold IVベクター(以上、タカラバイオ社製)、PICZ aベクター(インビトロジェン社製)なども好適に使用することができる。
【0094】
本発明のポリヌクレオチドは、通常、適当なベクター中のプロモーターの下流に、発現可能なように連結される。用いられるプロモーターとしては、形質転換する際の宿主が動物細胞である場合には、SV40由来のプロモーター、レトロウイルスのプロモーター、メタロチオネインプロモーター、ヒートショックプロモーター、サイトメガロウイルスプロモーター、SRαプロモーターなどが好ましい。宿主がエシェリヒア属菌である場合は、Trpプロモーター、T7プロモーター、lacプロモーター、recAプロモーター、λPLプロモーター、lppプロモーターなどが好ましい。宿主がバチルス属菌である場合は、SPO1プロモーター、SPO2プロモーター、penPプロモーターなどが好ましい。宿主が酵母である場合は、PHO5プロモーター、PGKプロモーター、GAPプロモーター、ADH1プロモーター、GALプロモーターなどが好ましい。宿主が昆虫細胞である場合は、ポリヘドリンプロモーター、P10プロモーターなどが好ましい。
【0095】
また、低温で発現誘導可能なプロモーターも好適に使用することができる。低温で発現誘導可能なプロモーターとしては、例えば、コールドショック遺伝子のプロモーター配列などが挙げられる。コールドショック遺伝子としては、例えば、大腸菌コールドショック遺伝子(例えば、cspA、cspB、cspG、cspI、csdAなど)、Bacillus caldolyticusコールドショック遺伝子(例えば、Bc−Cspなど)、Salmonella entericaコールドショック遺伝子(例えば、cspEなど)、Erwinia carotovoraコールドショック遺伝子(例えば、cspGなど)などが挙げられる。低温で発現誘導可能なプロモーターとしては、なかでも、例えば、cspAプロモーター、cspBプロモーター、cspGプロモーター、cspIプロモーター、csdAプロモーターなどを好適に使用することができる。
【0096】
本発明の組換えベクターには、以上の他に、所望によりエンハンサー、スプライシングシグナル、ポリA付加シグナル、リボソーム結合配列(SD配列)、選択マーカーなどを含有しているものを用いることができる。選択マーカーとしては、例えば、ジヒドロ葉酸還元酵素遺伝子、アンピシリン耐性遺伝子、ネオマイシン耐性遺伝子などがあげられる。
【0097】
形質転換体の作成
このようにして得られた、本発明のポリヌクレオチド(すなわち、本発明の融合蛋白質をコードするポリヌクレオチド)を含有する組換えベクターを、適当な宿主中に導入することによって、形質転換体を作成することができる。宿主としては、本発明のポリヌクレオチド(DNA)を発現できるものであれば特に限定されるものではなく、例えば、エシェリヒア属菌、バチルス属菌、シュードモナス属菌、リゾビウム属菌、酵母、動物細胞または昆虫細胞などがあげられる。エシェリヒア属菌としては、例えば、エシェリヒア・コリ(Escherichia coli)などがあげられる。バチルス属菌としては、例えば、バチルス・ズブチリス(Bacillus subtilis)などがあげられる。シュードモナス属菌としては、例えば、シュードモナス・プチダ(Pseudomonas putida)などがあげられる。リゾビウム属菌としては、例えば、リゾビウム・メリロティ(Rhizobium meliloti)などがあげられる。酵母としては、例えば、サッカロミセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)、シゾサッカロミセス・ポンベ(Schizosaccharomyces pombe)などがあげられる。動物細胞としては、例えば、COS細胞、CHO細胞などがあげられる。昆虫細胞としては、例えば、Sf9、Sf21などがあげられる。
【0098】
組換えベクターの宿主への導入方法およびこれによる形質転換方法は、一般的な各種方法によって行うことができる。組換えベクターの宿主細胞への導入方法としては、例えば、リン酸カルシウム法(Virology, 52, 456−457 (1973))、リポフェクション法(Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 84, 7413 (1987))、エレクトロポレーション法(EMBO J., 1, 841−845 (1982))などがあげられる。エシェリヒア属菌の形質転換方法としては、例えば、Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 69, 2110 (1972)、Gene, 17, 107 (1982)などに記載の方法などがあげられる。バチルス属菌の形質転換方法としては、例えば、Molecular & General Genetics,168, 111 (1979)に記載の方法などがあげられる。酵母の形質転換方法としては、例えば、Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 75, 1929 (1978)に記載の方法などがあげられる。動物細胞の形質転換方法としては、例えば、Virology,52, 456 (1973)に記載の方法などがあげられる。昆虫細胞の形質転換方法としては、例えば、Bio/Technology, 6, 47−55 (1988)に記載の方法などがあげられる。このようにして、本発明の蛋白質をコードするポリヌクレオチド(本発明のポリヌクレオチド)を含有する組換えベクターで形質転換された形質転換体を得ることができる。
【0099】
低温で発現誘導可能なプロモーター配列を含有する発現ベクターおよび形質転換体
発現ベクターとしては、なかでも低温で発現誘導可能なプロモーター配列を含有する発現ベクターが好ましい。
低温で発現誘導可能なプロモーター配列を含有する発現ベクターとは、具体的には、次のプロモーター配列、およびコード配列を含有する発現ベクターを意味する:
(1)低温で発現誘導可能なプロモーター配列;および
(2)本発明のポリヌクレオチドを含有するコード配列。
低温で発現誘導可能なプロモーター配列とは、宿主細胞を増殖させる培養条件から、温度を下げることによって融合蛋白質の発現を誘導可能なプロモーター配列を意味する。低温で発現誘導可能なプロモーターとしては、例えば、コールドショック蛋白質をコードする遺伝子(コールドショック遺伝子)のプロモーターが挙げられる。コールドショック遺伝子のプロモーターとしては、前記したものが挙げられる。
【0100】
本発明で用いられる低温で発現誘導可能なプロモーターが発現誘導しうる温度としては、通常30℃以下、好ましくは25℃以下、より好ましくは20℃以下、特に好ましくは15℃以下である。ただし、より効率良く発現を誘導させるため、通常は5℃以上、好ましくは10℃以上、特に好ましくは約15℃で発現誘導させる。
【0101】
本発明の低温で発現誘導可能なプロモーター配列を含有する発現ベクターを作製する場合、本発明のポリヌクレオチドを挿入するためのベクターとしては、pCold Iベクター、pCold IIベクター、pCold IIIベクター、pCold IVベクター(以上、タカラバイオ社製)などを好適に使用することができる。これらのベクターを使用して、原核細胞を宿主として発現させた場合、融合蛋白質を宿主細胞の細胞質中に可溶性蛋白質として産生させることができる。
【0102】
低温で発現誘導可能なプロモーター配列を含有する発現ベクターを導入する宿主としては、原核細胞が好ましく、さらに大腸菌が好ましく、特にBL21株、JM109株が好ましく、なかでもBL21株が好ましい。
【0103】
低温で発現誘導可能なプロモーター配列を含有する発現ベクターが導入された形質転換体を細胞増殖させる培養温度は、通常25〜40℃、好ましくは30〜37℃である。発現誘導させる温度は、通常4〜25℃、好ましくは10〜20℃、より好ましくは12〜18℃、特に好ましくは15℃である。
【0104】
4.本発明の融合蛋白質の製造
また、本発明は、前記形質転換体を培養し、本発明の融合蛋白質を生成させる工程を含む、本発明の融合蛋白質の製造方法を提供する。本発明の融合蛋白質は、例えば、前記形質転換体を本発明の融合蛋白質をコードするポリヌクレオチド(DNA)が発現可能な条件下で培養し、本発明の融合蛋白質を生成・蓄積させ、分離・精製することによって製造することができる。
【0105】
形質転換体の培養
本発明の形質転換体の培養は、宿主の培養に用いられる通常の方法に従って行うことができる。該培養によって、形質転換体によって本発明の融合蛋白質が生成され、形質転換体内または培養液中などに本発明の融合蛋白質が蓄積される。
【0106】
宿主がエシェリヒア属菌、バチルス属菌である形質転換体を培養する培地としては、該形質転換体の生育に必要な炭素源、窒素源、無機塩類等を含有し、形質転換体の培養を効率的に行うことができる培地であれば、天然培地、合成培地のいずれを用いてもよい。炭素源としては、グルコース、フラクトース、スクロース、デンプンなどの炭水化物、酢酸、プロピオン酸などの有機酸、エタノール、プロパノール等のアルコール類が用いられる。窒素源としては、アンモニア、塩化アンモニウム、硫酸アンモニウム、酢酸アンモニウム、リン酸アンモニウムなどの無機酸もしくは有機酸のアンモニウム塩またはその他の含窒素化合物のほか、ペプトン、肉エキス、コーンスティープリカーなどが用いられる。無機塩類としては、リン酸第一カリウム、リン酸第二カリウム、リン酸マグネシウム、硫酸マグネシウム、塩化ナトリウム、硫酸第一鉄、硫酸マンガン、硫酸銅、炭酸カルシウムなどが用いられる。培養中は必要に応じてアンピシリンやテトラサイクリン等の抗生物質を培地に添加してもよい。プロモーターとして誘導性のプロモーターを用いた発現ベクターで形質転換した形質転換体を培養する場合は、必要に応じてインデューサーを培地に添加してもよい。例えば、Lacプロモーターを用いた発現ベクターで形質転換した形質転換体を培養するときにはイソプロピル−β−D−チオガラクトピラノシド(IPTG)などを、trpプロモーターを用いた発現ベクターで形質転換した形質転換体を培養するときにはインドールアクリル酸(IAA)などを培地に添加してもよい。
【0107】
宿主がエシェリヒア属菌の場合、培養は通常約15〜43℃で約3〜24時間行い、必要により、通気や撹拌を加える。宿主がバチルス属菌の場合、培養は通常約30〜40℃で約6〜24時間行ない、必要により通気や撹拌を加える。
【0108】
宿主が酵母である形質転換体を培養する培地としては、たとえばバークホールダー(Burkholder)最小培地(Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 77, 4505 (1980))や0.5%(w/v)カザミノ酸を含有するSD培地(Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 81, 5330 (1984))があげられる。培地のpHは約5〜8に調整するのが好ましい。培養は通常約20℃〜35℃で約24〜72時間行い、必要に応じて通気や撹拌を加える。
【0109】
宿主が動物細胞である形質転換体を培養する培地としては、たとえば約5〜20%(v/v)の胎児牛血清を含むMEM培地(Science, 122, 501 (1952)),DMEM培地(Virology, 8, 396 (1959))などが用いられる。pHは約6〜8であるのが好ましい。培養は通常約30℃〜40℃で約15〜60時間行い、必要に応じて通気や撹拌を加える。
【0110】
宿主が昆虫細胞である形質転換体を培養する培地としては、Grace's Insect Medium(Nature,195,788(1962))に非働化した10%(v/v)ウシ血清等の添加物を適宜加えたものなどが用いられる。培地のpHは約6.2〜6.4に調整するのが好ましい。培養は通常約27℃で約3〜5日間行い、必要に応じて通気や撹拌を加える。
【0111】
なお、低温で発現誘導可能なプロモーター配列を含有する発現ベクターが導入された形質転換体を細胞増殖させる培養温度および発現誘導させる温度は、前記した通りである。
【0112】
本発明の融合蛋白質の分離・精製
上記培養物から、本発明の融合蛋白質を分離・精製することによって、本発明の融合蛋白質を得ることができる。ここで、培養物とは、培養液、培養菌体もしくは培養細胞、または培養菌体もしくは培養細胞の破砕物のいずれをも意味する。本発明の融合蛋白質の分離・精製は、通常の方法に従って行うことができる。
【0113】
具体的には、本発明の融合蛋白質が培養菌体内もしくは培養細胞内に蓄積される場合には、培養後、通常の方法(例えば、超音波、リゾチーム、凍結融解など)で菌体もしくは細胞を破砕した後、通常の方法(例えば、遠心分離、ろ過など)により本発明の融合蛋白質の粗抽出液を得ることができる。本発明の融合蛋白質がペリプラズムスペース中に蓄積される場合には、培養終了後、通常の方法(例えば浸透圧ショック法など)により本発明の融合蛋白質を含む抽出液を得ることができる。本発明の融合蛋白質が培養液中に蓄積される場合には、培養終了後、通常の方法(例えば、遠心分離、ろ過など)により菌体もしくは細胞と培養上清とを分離することにより、本発明の融合蛋白質を含む培養上清を得ることができる。
【0114】
このようにして得られた抽出液もしくは培養上清中に含まれる本発明の融合蛋白質の精製は、通常の分離・精製方法に従って行うことができる。分離・精製方法としては、例えば、硫酸アンモニウム沈殿、ゲルろ過クロマトグラフィー、イオン交換クロマトグラフィー、アフィニティークロマトグラフィー、逆相高速液体クロマトグラフィー、透析法、限外ろ過法などを単独で、または適宜組み合わせて用いることができる。本発明の融合蛋白質が上述した精製のためのペプチド配列を含有する場合、これを用いて精製するのが好ましい。具体的には、本発明の融合蛋白質がヒスチジンタグ配列を含有する場合にはニッケルキレートアフィニティークロマト法、S−トランスフェラーゼのグルタチオンへの結合ドメインを含有する場合にはグルタチオン結合ゲルによるアフィニティークロマト法、プロテインAのアミノ酸の配列を含有する場合には抗体アフィニティークロマト法を用いることができる。
【0115】
5.本発明の複合体
前記本発明の融合蛋白質(以下、「本発明のルシフェラーゼ」という場合がある。)は、他の有用な化合物(例、蛍光物質、検出すべき物質に特異的なリガンド等)と結合し、複合体を形成することができる。
【0116】
本発明の複合体は、他の有用な化合物を、本発明のルシフェラーゼの第2の領域のシステイン残基のチオール基を介して結合したものである。本発明のいくつかの態様では、複合体は、本発明のルシフェラーゼと、蛍光物質または検出すべき物質に特異的なリガンドとが結合したものである。本発明のいくつかの態様の複合体では、ルシフェラーゼのチオール基と蛍光物質またはリガンドとの結合比率は、1:1の比率、またはそれに近い比率である。
【0117】
他の有用な化合物のうち、蛍光物質としては、Hoechist3342、Indo−1、DAP1などの有機化合物;緑色蛍光蛋白質(GFP)、青色蛍光蛋白質(BFP)、変異GFP蛍光蛋白質、フィコビリンなどの蛍光蛋白質を挙げることができる。
【0118】
検出すべき物質に特異的なリガンドは、検出すべき物質に直接的に結合する物質、または、検出すべき物質に間接的に結合する物質の何れであってもよい。リガンドとしては、例えば、ビオチン、ビオチン結合タンパク質、酵素、基質、抗体、抗原、核酸、多糖類、レセプター、またはこれらに結合能を有する化合物を挙げることができる。
【0119】
このうち、ビオチン結合蛋白質としては、アビジン、ストレプトアビジン、変異型アビジン(ニュートラアビジン)等を挙げることができる。これらのビオチン結合蛋白質は市販のものを入手することができる。常法により、市販のビオチン結合蛋白質を修飾可能なように調製することもできる。
【0120】
抗原および抗体としては、これまで、様々な物質(例、腫瘍マーカーやホルモンなどといったヒトや動植物の生体内微量成分や、環境中の微量汚染物質など)の抗原、およびこれらの抗原に対する抗体が市販されており、測定したい被検体を抗原とする抗体を適宜必要に応じて入手し、使用することができる。
【0121】
中でも、腫瘍の増殖に伴って血清や尿中に増加する腫瘍マーカーとしては、胎児性抗原、CA19−9、シリアルLex−i抗原、シリアルTn抗原、チミジンキナーゼ活性、組織ポリペプチド抗原、塩基性フェトプロテイン、免疫抑制酸性蛋白、CA72−4、CA125、DUPAN−2、SPan−1、エラスターゼ1、BCA−225、CA15−3、SCC抗原、サイトケラチン19フラグメント、前立腺特異抗原、γ−セミノプロテイン、前立腺酸性フォスファターゼ、α−フェトプロテイン、AFPレクチン分画、PIVKA−II、神経特異エノラーゼ、NCC−ST−439、CA130、I型コラーゲン−C−テロペプチドなど、各器官における腫瘍の生成に伴って特異的に増加するマーカーがこれまでに知られている。これらの抗原は市販されており、血清あるいは尿中の該マーカーを測定する上での標準物質として適宜利用することができる。更に、これらの抗原に対する種々のクラスあるいはサブクラスからなる抗体が市販されており、これらを適宜使用することができる。
【0122】
核酸としては、任意の相補的DNAおよびRNAが挙げられ、例えば、病原性遺伝子の検出、遺伝子診断等に使用可能な塩基配列を有するDNAおよびRNAを挙げることができる。これらの核酸は、常法により、適宜化学合成することができる。
【0123】
物理化学的特性等により異なるが、本発明のルシフェラーゼの分子サイズおよび他の有用な化合物との立体障害を考慮して、直接的にまたはリンカーもしくはスペーサーを介して、他の有用な化合物を本発明のルシフェラーゼに結合させる。
【0124】
本発明において用いるリンカーまたはスペーサーは、−SH基と特異的に反応しうるものであれば特に限定されないが、20オングストローム以上の長さを有するものが好ましい。リンカーもしくはスペーサーとして使用しうる種々の−SH基修飾試薬は市販されており、これらを適宜利用することができる。
【0125】
システインのチオール基(「スルフヒドリル基」ともいう。)と反応する官能基を有する架橋試薬は、特に限定されるものではないが、具体的には、N-(4-[p-アジドサリシルアミド]ブチル)-3´-2´ピリジルジチオ)プロピオンアミド(APDP)、1,4−ジ-(3´-[2´ピリジルジチオ]プロピオンアミド)ブタン、1,6−ヘキサン-ビス-ビニルスルホン(HBVS)、スクシンイミジル3-(ブロモアセタミド)プロピオネート(SBAP)、N-スクシンイミジル3-(2-ピリジルジチオ)プロピオネート(SPDP)、N-(α‐マレイミドアセトキシ)-スクシンイミドエステル(AMAS)、スクシンイミジル 4−(N−マレイミドメチル)シクロヘキサン(SMCC)、SMCCのスルホン化誘導体(スルホ−SMCC)、m−マレイミドベンゾイル−N−ヒドロキシスクシンイミドエステル(MBS)、MBSのスルホン化誘導体(スルホ−MBS)、スクシンイミジル 4−(p−マレイミドフェニル)ブチレート(SMPB)、SMPBのスルホン化誘導体(スルホ−SMPB)、スクシンイミジル−6−(N−マレイミド−n−ヘキサノエート)、スクシンイミジル(4−ヨードアセチル)アミノベンゾエート(SIAB)、N−ヒドロキシスクシンイミジルブロモアセテート、ビス−(マレイミド)メチルエステル、ビス−マレイミドヘキサン(BMH)などを挙げることができる。本発明においては、その中でもスルフヒドリル基と反応する官能基としてマレイミド基を有する架橋試薬が好ましい。
【0126】
本発明のルシフェラーゼに他の有用な化合物を結合させる反応は、Hermanson G.T.著“Bioconjugate Techniques, 2 nd Edition (2008) ElsevierInc.等に記載されている方法のように当該分野で公知の方法により行うことができる。より具体的には、検出すべき物質に特異的なリガンドの場合、反応は、30 ℃以下、好ましくは25 ℃以下、pH6〜8、好ましくはpH7〜7.5で行うのが望ましい。蛍光物質の場合、反応は、25 ℃以下、好ましくは4 ℃以下、pH6〜8、好ましくはpH7〜7.5で行うのが望ましい。
【0127】
特に、ビオチン結合蛋質の場合、反応は、25 ℃以下、好ましくは4 ℃以下、pH6〜8、好ましくはpH7〜7.5で行うのが望ましい。抗体の場合、反応は、25 ℃以下、好ましくは4 ℃以下、pH6〜8、好ましくはpH7〜7.5で行うのが望ましい。核酸の場合、反応は、25 ℃以下、好ましくは4 ℃以下、pH6〜8、好ましくはpH7〜7.5で行うのが望ましい。
【0128】
6.本発明の融合蛋白質および複合体の利用
発光による検出マーカーとしての利用
本発明の融合蛋白質または本発明の複合体は、ルシフェリン存在下、発光による検出マーカーとして利用することができる。本発明の検出マーカーは、例えば、イムノアッセイ、ハイブリダイゼーションアッセイなどにおける目的物質の検出に利用することができる。本発明の複合体を検出マーカーとして利用する場合、本発明の複合体中の他の有用な化合物は、検出すべき物質に特異的なリガンドである。
【0129】
本発明の好ましい態様の融合蛋白質は、ルシフェリンを基質とする発光触媒活性を実質的に阻害することなく、IgGに結合することができる。このような融合蛋白質は、イムノアッセイにおけるIgGの検出に利用することができる。このようなIgGの検出は、通常の方法によって行うことができる。具体的には、本発明の融合蛋白質をIgGに結合させ、ルシフェリンによって発光させることによりIgGを検出することができる。
【0130】
本発明の複合体をイムノアッセイで利用する場合、本発明の複合体のリガンドは、例えば、目的物質を特異的に認識する1次抗体である。本発明の複合体における1次抗体は、試料中に存在する検出すべき物質(抗原)に特異的に結合するので、本発明の複合体における融合蛋白質の発光を測定することにより、試料中の検出すべき物質の部位や量が検出できる。
【0131】
検出の感度を高めるために、1次抗体を特異的に認識する2次抗体を使う方法も周知である。この場合、本発明の複合体中のリガンドは、例えば、2次抗体である。
【0132】
また、2次抗体にビオチンを結合し、このビオチン化2次抗体と、本発明の融合蛋白質と結合したアビジンまたはストレプトアビジンとを反応させることもできる。この場合、本発明の複合体中のリガンドは、アビジンまたはストレプトアビジンである。
【0133】
さらに、1分子のアビジンまたは1分子のストレプトアビジンが、4分子のビオチンと結合する性質を利用することもできる。すなわち、ビオチン化2次抗体と、アビジンまたはストレプトアビジンとを反応させ、さらに、本発明の融合蛋白質と結合したビオチンと反応させるものである。この場合、本発明の複合体中のリガンドは、ビオチンである。
【0134】
本発明の複合体を用いてレセプターを検出する場合においては、レセプターに結合するシグナルペプチド(インシュリンのようなホルモン、サイトカイン、TNF、Fasリガンド等)を、本発明の複合体中のリガンドとすることができる。一方、シグナルペプチドを検出する場合には、レセプターを構成する蛋白質を、本発明の複合体中のリガンドとすることができる。すなわち、ある薬物が結合するレセプターを検出する場合には、その薬物を本発明の複合体中のリガンドとすることができ、あるレセプターに結合する薬物を検出する場合は、そのレセプターを本発明の複合体中のリガンドとすることができる。
【0135】
本発明の複合体を用いて酵素を検出する場合には、その酵素の基質を本発明の複合体中のリガンドとすることができる。一方、その酵素の基質を検出する場合には、その酵素を本発明の複合体中のリガンドとすることができる。
【0136】
本発明の複合体をハイブリダイゼーションアッセイで利用する場合、ある核酸に対して特異的に結合する他の核酸を検出するために、検出する核酸に相補的な核酸を、本発明の複合体中のリガンドとすることができる。
【0137】
本発明の複合体を用いて多糖類に対して特異的に結合する他の物質を検出する場合には、多糖類を、本発明の複合体中のリガンドとすることができる。
【0138】
この他、血液凝固因子と特異的に結合しうるレクチンや転写因子等のDNA結合性蛋白質等も、本発明の複合体中のリガンドとすることができる。
【0139】
本発明の複合体は、上記のようにリガンドを介して目的物質に直接的または間接的に結合することができるので、ルシフェリン存在下、発光による検出マーカーとして利用することができる。このような検出マーカーを用いた目的物質の検出は通常の方法により行うことができる。
【0140】
また、本発明の融合蛋白質は、例えば、目的蛋白質との融合蛋白質として発現させ、マイクロインジェクション法などの手法により細胞内に導入することによって、前記目的蛋白質の分布を測定するために利用することもできる。このような目的タンパク質などの分布の測定は、発光イメージング等の検出法などを利用して行うこともできる。なお、本発明の融合蛋白質は、マイクロインジェクション法などの手法により細胞内に導入する以外に、細胞内で発現させて用いることもできる。
【0141】
レポーター蛋白質としての利用
本発明の融合蛋白質は、レポーター蛋白質としてプロモーターなどの転写活性の測定に利用することもできる。本発明の融合蛋白質をコードするポリヌクレオチド(すなわち、本発明のポリヌクレオチド)を、目的のプロモーターまたは他の発現制御配列(例えば、エンハンサーなど)に融合したベクターを構築する。前記ベクターを宿主細胞に導入し、ルシフェリン存在下、本発明の融合蛋白質に由来する発光を検出することにより、目的のプロモーターまたは他の発現制御配列の活性を測定することができる。
【0142】
本発明のポリヌクレオチドは、上述のようにして、レポーター遺伝子として利用することができる。
【0143】
アミューズメント用品の材料
本発明の融合蛋白質は、ルシフェリンが酸素分子で酸化されてオキシルシフェリンが励起状態で生成される反応を触媒する活性を有する。励起状態のオキシルシフェリンは可視光を発して基底状態となる。よって、本発明の融合蛋白質などは、アミューズメント用品の材料の発光基材として好適に使用することができる。アミューズメント用品としては、たとえば、発光シャボン玉、発光アイス、発光飴、発光絵の具等があげられる。本発明のアミューズメント用品は、通常の方法によって製造することができる。
【0144】
生物発光共鳴エネルギー移動(BRET)法
本発明の融合蛋白質または本発明の複合体は、生物発光共鳴エネルギー移動(BRET)法による分子間相互作用の原理を利用した生理機能の解析や酵素活性の測定等の分析方法に利用することができる。
【0145】
例えば、本発明の融合蛋白質または本発明の複合体において、本発明の融合蛋白質または本発明の複合体(「本発明のルシフェラーゼ」という場合がある。)をドナーとして使用し、蛍光物質(例、有機化合物、蛍光蛋白質等)をアクセプターとして使用して、両者の間で生物発光共鳴エネルギー移動(BRET)を起こすことによりドナーとアクセプターとの間の相互作用を検出することができる。
【0146】
本発明のある態様では、アクセプターとして使用する有機化合物は、Hoechist3342、Indo−1、DAP1などである。本発明の別の態様では、アクセプターとして使用する蛍光蛋白質は、緑色蛍光蛋白質(GFP)、青色蛍光蛋白質(BFP)、変異GFP蛍光蛋白質、フィコビリンなどである。
【0147】
本発明の好ましい態様において、解析する生理機能は、オーファン受容体(特にG蛋白質共役受容体)、アポトーシス、または遺伝子発現による転写調節などである。また、本発明の好ましい態様において、分析する酵素は、プロテアーゼ、エステラーゼまたはリン酸化酵素などである。
【0148】
BRET法による生理機能の解析は、公知の方法で行うことができ、例えば、Biochem. J. 2005, 385, 625−637、またはExpert Opin. Ther Tarets, 2007 11: 541−556などに記載の方法に準じて行うことができる。また、酵素活性の測定も、公知の方法で行うことができ、例えば、Nature Methods 2006, 3:165−174、またはBiotechnol. J. 2008, 3:311−324などに記載の方法に準じて行うことができる。
【0149】
本発明のいくつかの態様の複合体は、本発明の融合蛋白質に、他の有用な化合物として蛍光物質を結合したものである。蛍光物質としては前記したものが挙げられる。この複合体中の本発明の融合蛋白質をドナーとし、同一複合体中の蛍光物質をアクセプターとして、両者の間でBRETを起こすこともできる。
【0150】
7.本発明のキット
本発明は、本発明の融合蛋白質、本発明のポリヌクレオチド、本発明の組換えベクター、本発明の形質転換体および本発明の複合体から選択されるいずれかを含むキットも提供する。本発明のキットには、さらにルシフェリン(例えば、セレンテラジン類)を含んでいてもよい。本発明のキットは、通常用いられる材料および方法で製造することができる。本発明のキットは、例えば、サンプルチューブ、プレート、キット使用者に対する指示書、溶液、バッファー、試薬、標準化のために好適なサンプルまたは対照サンプルを含んでもよい。本発明のキットには、さらに、ハロゲン化物イオンを含む塩などを含んでいてもよい。
【0151】
本発明のキットは、上述したレポーター蛋白質もしくはレポーター遺伝子を用いた測定、発光による検出マーカー、BRET法による生理機能の解析または酵素活性の測定などに利用することができる。
【0152】
8.発光反応方法
発光触媒活性
本発明の融合蛋白質または本発明の複合体(以下、「本発明の融合蛋白質等」とする場合がある。)は、ルシフェリン(例えば、セレンテラジン類)を酸素分子で酸化して励起状態のオキシルシフェリンを生成させる反応を触媒する活性を有する。励起状態のオキシルシフェリンは、基底状態となる際に可視光を発する。すなわち、本発明の融合蛋白質等は、ルシフェリン(例えば、セレンテラジン類)を基質とする発光反応を触媒し、発光を生じさせる活性を有する。この活性を、本明細書において、「発光触媒活性」と称することがある。
【0153】
発光反応
本発明の融合蛋白質等を用いた、ルシフェリン(例えば、セレンテラジン類)を基質とする発光反応は、本発明の融合蛋白質等とルシフェリンとを接触させることにより行うことができる。反応条件としては、ガウシアルシフェラーゼを用いた発光反応に通常用いられる条件またはそれに準じた条件で行うことができる(例えば、WO99/49019、J. Biol. Chem. 279, 3212−3217 (2004)、およびそれらの引用文献など参照)。
【0154】
具体的には、反応溶媒としては、例えば、Tris−HCl緩衝液、リン酸ナトリウム緩衝液などの緩衝液、水、などが用いられる。
【0155】
反応温度は、通常約4℃〜約40℃、好ましくは約4℃〜約25℃である。
【0156】
反応溶液のpHは、通常約5〜約10、好ましくは約6〜約9、より好ましくは約7〜約8、特に好ましくは約7.5である。
【0157】
ルシフェリンとしては、セレンテラジン類が好ましく、特にセレンテラジンが好ましい。
ルシフェリンは、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホオキシド等の極性溶媒や、メタノール、エタノール、ブタノール等のアルコール溶液として反応系に加えてもよい。
【0158】
発光活性の活性化
本発明の融合蛋白質等の、ルシフェリン(例えば、セレンテラジン類)を基質とする発光活性(発光触媒活性)は、ハロゲン化物イオン、非イオン性界面活性剤などにより活性化される。
【0159】
ハロゲン化物イオンとしては、フッ素イオン、塩素イオン、臭素イオン、ヨウ素イオンなどがあげられ、塩素イオン、臭素イオン、ヨウ素イオンが好ましい。
ハロゲン化物イオンの濃度は、通常約10μM〜約100mM、好ましくは約100μM〜約50mM、特に好ましくは約1mM〜約20mMである。
【0160】
反応系にハロゲン化物イオンを添加する方法としては、塩として添加する方法などがあげられる。用いられる塩としては、ナトリウム塩、カリウム塩などのアルカリ金属塩;カルシウム塩、マグネシウム塩、バリウム塩などのアルカリ土類金属塩などがあげられる。より具体的には、NaF、NaCl、NaBr、NaI、KF、KCl、KBr、KI、CaF2、CaCl2、CaBr2、CaI2、MgF2、MgCl2、MgBr2、MgI2などがあげられる。
【0161】
非イオン性界面活性剤としては、Tween20(ポリオキシエチレンソルビタンモノラウレート)、Tween80(ポリオキシエチレンソルビタンモノオレアート)、TritonX-100(ポリエチレングリコール−p−イソオクチルフェニルエーテル)、Briji-58 (ポリオキシエチレン(20)セチルエーテル)、Nonidet P-40 (エチルフェノールポリ(エチレングリコールエーテル)nなどがあげられ、Tween20、TritonX-100などが好ましい。
非イオン性界面活性剤の濃度は、通常約0.0002%(w/v)〜約0.2%(w/v)、好ましくは約0.001%(w/v)〜約0.1%(w/v)、特に好ましくは約0.05%(w/v)〜約0.02%(w/v)である。
【0162】
なお、本明細書に記載した全ての文献及び刊行物は、その目的にかかわらず参照によりその全体を本明細書に組み込むものとする。
【0163】
実施の形態及び実施例に特に説明がない場合には、J. Sambrook, E. F. Fritsch & T. Maniatis (Ed.), Molecular cloning, a laboratory manual (3rd edition), Cold Spring Harbor Press, Cold Spring Harbor, New York (2001); F. M. Ausubel, R. Brent, R. E. Kingston, D. D. Moore, J.G. Seidman, J. A. Smith, K. Struhl (Ed.), Current Protocols in Molecular Biology, John Wiley & Sons Ltd.などの標準的なプロトコール集に記載の方法、あるいはそれを修飾したり、改変した方法を用いる。また、市販の試薬キットや測定装置を用いる場合には、特に説明が無い場合、それらに添付のプロトコールを用いる。
【0164】
なお、本発明の目的、特徴、利点、及びそのアイデアは、本明細書の記載により、当業者には明らかであり、本明細書の記載から、当業者であれば、容易に本発明を再現できる。
【0165】
発明の実施の形態及び具体的な実施例などは、本発明の好ましい実施態様を示すものであり、例示又は説明のために示されているのであって、本発明をそれらに限定するものではない。本明細書で開示されている本発明の意図ならびに範囲内で、本明細書の記載に基づき、様々に修飾ができることは、当業者にとって明らかである。
【実施例】
【0166】
以下に実施例により本発明を説明するが、実施例は本発明を制限するものではない。
【0167】
実施例1 アミノ末端にヒスチジン配列を有し、IgG結合ドメインであるZZドメインを有する蛋白質を発現するための新規基本ベクターpCold-ZZ-gCysの構築
新規発現ベクターpCold-ZZ-gCysを、以下の手順で構築した。pCold-ZZ-gCysは、ニッケルキレートゲルクロマトグラフ法による精製を可能にするヒスチジン配列と、プロテインAのIgG結合ドメインであるZZドメインと、ZZドメインのC-末端側にペプチドリンカーおよびシステイン残基とを有する融合蛋白質(組換えZZドメイン-gCys)を発現する。
【0168】
特開2008-99669号公報の実施例1に記載の方法と同様の方法にてZZ融合蛋白質発現ベクターpCold-ZZ-XのHindIII/PstIサイトに、ペプチドリンカーおよびシステイン残基(Gly-Gly-Gly-Gly-Ser-Gly-Gly-Gly-Gly-Ser-Gly-Gly-Gly-Gly-Cys)(配列番号:6)をコードする以下のオリゴヌクレオチドを挿入してpCold-ZZ-gCysを構築した。
【0169】
GGGGS Linker-F(5’ AG CTT GGT GGT GGT GGT TCT GGT GGT GGT GGT TCT GGT GGT GGT GGT TGC TAA GCT AGC CTG CA 3’)(配列番号3);および
GGGGS Linker-R(5’ G GCT AGC TTA GCA ACC ACC ACC ACC AGA ACC ACC ACC ACC AGA ACC ACC ACC ACC A 3’)(配列番号4)。
【0170】
DNA シークエンサー(ABI社製)により塩基配列を決定することにより、インサートDNAの確認を行った。組換えZZドメイン-gCysをコードするポリヌクレオチドの塩基配列を配列番号:1に示し、組換えZZドメイン-gCysのアミノ酸配列を配列番号:2に示す。
【0171】
新規発現ベクターpCold-ZZ-gCysは、プロモーターとして大腸菌のコールドショックプロテインAのプロモーターと、オペレーターとしてラクトースのオペレーターとを有し、キレートゲルによる精製を可能とする6個のヒスチジン配列と、IgG結合能を有するZZドメインをコードする配列と、その下流にフレキシブルペプチドリンカーおよびシステイン残基をコードする配列とを有する(図1)。
【0172】
実施例2 組換えZZドメイン-gCysの精製法
組換えZZドメイン-gCysは、以下に示すように取得した。すなわち、発現ベクターpCold-ZZ-gCysを用いて、大腸菌にて組換えZZドメイン-gCysを発現させ、IgGセファロースカラムクロマトグラフ法にて精製することにより、精製ZZドメイン-gCysを取得した。
【0173】
1)組換えZZドメイン-gCysの大腸菌での発現
大腸菌において組換えZZドメイン-gCysを発現させるために、ZZドメイン-gCys遺伝子を包含する発現ベクター pCold-ZZ-gCysを用いた。常法により大腸菌BL21株に発現ベクターpCold-ZZ-gCysを導入し、得られた形質転換株を、アンピシリン(50μg/ml)を含有する10mlのLB液体培地(水1リットルあたり、バクトトリプトン10g、イーストイクストラクト5g、塩化ナトリウム5g、pH7.2)に植菌し、37℃で18時間培養を行った。次いで、その培養物を新たなLB液体培地400 ml x5本(総量2L)に添加して37℃で2.5時間培養した後、氷水上で冷却して、イソプロピル-β-D(−)-チオガラクトピラノシド(IPTG、和光純薬工業社製)を最終濃度0.2 mMになるように培養液に添加し、15℃で17時間培養を行った。培養後、菌体を遠心回収(5,000rpm、5分)し、蛋白質抽出の出発材料とした。
【0174】
2)培養菌体からのZZドメイン-gCysの抽出およびIgGセファロースカラムクロマトグラフ法
集菌した培養菌体を200mlの50mM Tris-HCl (pH7.6)で懸濁し、氷冷下で超音波破砕処理(ブランソン社製、Sonifier model cycle 250)を3分間、3回行い、その菌体破砕液を10,000rpm(12,000×g)で4 ℃、20分間遠心した。得られた可溶性画分をTBST溶液(20 mM Tris-HCl (pH7.4), 150 mM NaCl, 0.5% Tween20)で平衡化したIgGセファロース6FastFlowカラム(アマシャムバイオサイエンス社、カラムサイズ:直径2.5×6 cm)に供し、カラムにZZドメイン-gCysを吸着させた。カラムを、300 mlのTBST溶液、次いで100 mlの酢酸アンモニウム溶液(pH5.0)で洗浄した後、0.5 M酢酸溶液(pH3.4)(和光純薬工業社製)で順次10 mlで溶出を行なった。溶出画分を280 nm の吸収スペクトルで測定した結果、ZZドメイン-gCys画分を確認した。さらに、溶出画分を還元状態で12%ポリアクリルアミドゲルを用いたSDS-PAGEによる分析を行い、ZZドメイン-gCysを確認した。SDS-PAGE分析の結果を図2に示した。
【0175】
3)IgGセファロースカラム溶出液の透析
IgGセファロースカラムより得られたZZドメイン-gCys溶出画分20 mlを5 Lの100 mMリン酸ナトリウムバッファー(pH7.3)にて4℃で72時間透析し、22 mlのZZドメイン-gCys溶液を取得した。透析後のZZドメイン-gCys溶液について、非還元状態で12%ポリアクリルアミドゲルを用いたSDS-PAGEによる分析を行った。SDS-PAGE分析の結果を図3に示した。72時間の透析の間に生成した、ZZドメイン-gCysの新規導入システイン残基によるダイマー形成を確認した。
【0176】
尚、蛋白量濃度は、Bradford法にもとづく市販のキット(バイオラッド社製)を用い、ウシ血清アルブミン(ピアス社製)を標準物質として用いて決定した。
【0177】
それぞれの精製過程におけるSDS-PAGE分析の結果を図2に示す。図2に示すように、最終精製画分は分子量18kDa蛋白質に相当する単一バンドが検出され,純度95%以上であると明らかとなった。表2に示すように、2Lの培養菌体から94.6 mgのZZドメイン-gCysを得た。
【0178】
【表2】

【0179】
実施例3 質量分析法によるZZドメイン-gCysの同定
実施例2で精製したZZドメイン-gCysについて、Matrix assisted laser desorption time-of-flight mass spectrometry (MALDI-TOF-MS)法による質量解析を、AutoFLEX (Bruker Daltonics社)を用いて行った。分子量のスタンダードとして、アンジオテンシンI (m/z 1296.69)、インシュリン(m/z 5734.59)、アポミオグロビン(m/z 16952.60)、アポイクオリン(m/z 2163.20)を用いた。マトリックスとしてシナピン酸(インビトロジェン社製)を用いた。測定の結果、主ピークのm/z として17921.37を得た。この値は、ZZドメイン-gCysの平均質量計算値[M+H]=18004.68と非常に良い一致を示した。また、実施例2記載にあるZZドメイン-gCysダイマー([M+H]=36,007.7)に相当するm/z =35, 800.38の測定値を確認した。ピーク強度の換算計算より、72時間の透析において、6.5%のZZドメイン-gCysがダイマーを形成することが明らかとなった。そのため、透析後のZZドメイン-gCysは、凍結により保存した。
【0180】
実施例4 ZZドメイン-gCysの発光活性の検出
ZZドメイン-gCysの発光活性の測定は、次のようにして行った。100μlの10mM EDTAを含む30mM Tris-HCl (pH7.6)溶液にエタノールに溶解した基質セレンテラジン(1μg/μl)を混合した後、ZZドメイン-gCys (5μg)を加えることにより発光反応を開始させた。発光測定装置Luminescencer-PSN AB2200(アトー社製)で60秒間発光活性を測定した。発光活性は、最大発光値(Imax)で示した。コントロール実験として、5μgのプロテインA(RepliGen社製)および牛血清アルブミン(シグマ社製)を用いて、同様に発光活性を測定した。酵素的反応であることを示す為に、熱処理を95℃で10分間行ない、同様に発光活性を測定した。発光活性の測定結果を表3にまとめた。
【0181】
その結果、ZZドメイン-gCysは、発光を触媒する蛋白質(ルシフェラーゼ)であることが明らかとなった。また、牛血清アルブミンの約100倍の活性をしめし、十分に発光酵素として、使用可能であることが分かった。
【0182】
【表3】

【0183】
さらに、ZZドメイン-gCysの蛋白質濃度(1〜15μg)と発光活性の関係を調べると、表4に示すように、濃度依存的に発光強度が増すことから、ZZドメイン-gCysが通常のルシフェラーゼと同様な性質を示すことが分かる。
【0184】
【表4】

【0185】
また、ZZドメイン-gCysの発光パターンを図4に示した。ZZドメイン-gCysは、発光反応開始後、急激に減衰する発光パターンを示す。
【0186】
実施例5 発光スペクトルの測定による分光学的解析
精製ZZドメイン-gCys(500 μg)を500 μlの10 mM EDTA を含む30 mM Tris-HCl(pH7.6) 溶液に溶解したのち、そのZZドメイン-gCys溶液に、エタノールに溶解した基質セレンテラジン(5μg/5μl)を添加することにより発光反応を開始させ、光路長10mmの石英セルにて、蛍光測定装置(日本分光社製、FP-6500)の励起光源をオフにして発光スペクトルを測定し、スペクトル補正を行なった。測定条件は、次の通りである:バンドパス:20nm、レスポンス:0.5sec、スキャンスピード:2000nm/min、温度:22〜25℃。測定した発光スペクトルより発光極大値(λmax, nm)と半値幅(nm)を求め、その結果を表5にまとめた。また、発光スペクトルを図5に示した。このスペクトル結果は、セレンテラジンを基質とするルシフェラーゼの青色発光とよく類似している。
【0187】
【表5】

【0188】
実施例6 ZZドメイン-gCysの基質特異性
100μlの10mM EDTAを含む30mM Tris-HCl (pH7.6)にエタノールに溶解した基質セレンテラジン(CTZ)またはその誘導体(Bis-CTZ〜8-(3-benzo[b]thienyl)-CTZ)(1μg/μl)を混合した後、ZZドメイン-gCys 1μl(4.25μg蛋白質)を加えることにより発光反応を開始させた。基質セレンテラジンまたはその誘導体は、市販のもの、あるいは、WO2010/090319号公報またはInouye et al.(2010) Anal. Biochem.407, 247-252に記載の合成方法またはそれに準ずる方法により調製したものなどを用いた。具体的には、CTZ、Bis-CTZ、hcp-CTZおよびh-CTZは、プロメガ社から入手したもの用いた。n-CTZ、3iso-CTZ、3meo-CTZ、cf3-CTZ、i-CTZ、et-CTZ、meo-CTZ、me-CTZ、3me-CTZ、αmeh-CTZ、8-(1-naphthyl)-CTZ、8-(2-naphthyl)-CTZ、8-(2-thienyl)-CTZ、8-(4-hydroxyphenyl)-CTZ、8-(2-benzothienyl)-CTZ、8-(b-styryl)-CTZ、8-phenyl-CTZ、8-(3-thienyl)-CTZ、8-(3-benzo[b]thienyl)-CTZ、6,8-di(2-thienyl)-CTZ、6-deoxy-CTZは、Inouye et al.(2010) Anal. Biochem.407, 247-252に記載の合成方法またはそれに準ずる方法にて調製したものを用いた。発光測定装置Luminescencer-PSN AB2200(アトー社製)で30秒間発光活性を測定した。発光活性は最大発光値(Imax)をセレンテラジン(CTZ)に対する相対活性(%)で示した(表6)。その結果、ZZドメイン-gCysのための最も良い発光基質はセレンテラジンであるが、セレンテラジンの誘導体も、発光基質になることが明らかとなった。
【0189】
【表6】

【0190】
ここで、CTZの最大発光値 (Imax)は27,084 rlu (100%)であり、30 秒間の発光積算値は、2,052,125 rlu (100%)である。相対発光強度の1 rlu は、1.8 x 106 フォトンに相当する。
【0191】
実施例7 ZZドメイン-gCysの最適pH
100μlの100 mM酢酸ナトリウム緩衝液 (pH5.0)、100 mMリン酸ナトリウム緩衝液(pH6.0, pH6.5, pH7.0, およびpH7.5)、100 mM Tris-HCl緩衝液 (pH7.0, pH7.5, pH8.0, pH8.5, およびpH9.0)、または100 mMグリシン-水酸化ナトリウム緩衝液 (pH8.0, pH9.0, およびpH10.0)に、エタノールに溶解した基質セレンテラジン(1μg/μl)を混合した後、混合溶液にZZドメイン-gCys 1μl(4.25μg蛋白質)を加えることにより発光反応を開始させた。発光測定装置Luminescencer-PSN AB2200(アトー社製)で60秒間発光活性を測定した。発光活性は最大発光値(Imax)を相対活性(%)で示した(図6)。その結果、ZZドメイン-gCysの最適な緩衝液および至適pHは、100 mM Tris-HCl (pH7.5)であることが示された。Tris-HCl緩衝液のみで活性が検出できたのは、緩衝剤由来のナトリウムウイオン、酢酸イオン、リン酸イオンによる効果でなく、Tris-HCl緩衝液に含まれるトリスアミノメタンあるは塩素イオン(Cl-)による効果による可能性が示唆された。
【0192】
実施例8 塩化ナトリウムによるZZドメイン-gCysの発光活性の活性化
100μlの塩化ナトリウム溶液を含む100 mMリン酸ナトリウム緩衝液 (pH7.5)をはじめとする各種濃度のリン酸ナトリウム緩衝液に、エタノールに溶解した基質セレンテラジン(1μg/μl)を混合した後、混合溶液にZZドメイン-gCys 1μlを加えることにより発光反応を開始させた。発光測定装置Luminescencer-PSN AB2200(アトー社製)で10秒間発光活性を測定した。発光活性は最大値(Imax)を相対活性(%)で示した(図7)。その結果、ZZドメイン-gCysの活性化がもっとも高い塩化ナトリウム濃度は、100 mMであることが示された。すなわち、塩素イオン(Cl-)効果による活性化がおきることが明らかとなった。
【0193】
実施例9 ハロゲンイオンによるZZドメイン-gCysの発光活性の活性化
さらに、他のハロゲンイオンによる活性化効果を調べるために、50μlの100 mMリン酸ナトリウム緩衝液 (pH7.5)に、50μlの純水に溶解した100 mMのハロゲン化合物(MgCl2、NaF、KCl、NaCl、KBr、NaBr、KI、またはNaI)(最終濃度50 mM)およびエタノールに溶解した基質セレンテラジン(1μg/μl)を混合した後、混合溶液にZZドメイン-gCys 1μl(4.25μg蛋白質)を加えることにより発光反応を開始させた。発光測定装置Luminescencer-PSN AB2200(アトー社製)で10秒間発光活性を測定した。発光活性は最大発光値(Imax)を相対活性(%)で示した(表7)。ハロゲンイオンのBr-, Cl-, I-の添加により、無添加の場合と比較してZZドメイン-gCysの発光活性が著しく活性化し、NaFの添加によって無添加の場合と比較して10%強の活性化を示した。これにより、ZZドメイン-gCysの発光活性は、一般にハロゲンイオンにより活性化がおきることが明らかとなった。
【0194】
【表7】

【0195】
実施例10 Tween 20によるZZドメイン-gCysの発光活性の活性化
界面活性剤の添加による発光活性の効果を調べるために、各種濃度の非イオン性界面活性剤であるTween 20(シグマ社製)を含む100μlのPBS(シグマ社製)に、ZZドメイン-gCys 1μl(4.25μg蛋白質)を混合した後、混合溶液に、エタノールに溶解した基質セレンテラジン(1μg/μl)を加えることにより発光反応を開始させた。発光測定装置Luminescencer-PSN AB2200(アトー社製)で60秒間発光活性を測定した。発光活性は最大値(Imax)を相対活性で示した(図8)。その結果、非イオン性界面活性剤Tween 20の添加により、ZZドメイン-gCysの発光活性の活性化がおこり、至適Tween 20の濃度は、0.01 %(w/v)であることが明らかとなった。
【0196】
実施例11 ヒトIgGによるZZドメイン-gCysの発光活性の阻害効果
発光触媒活性を有するZZドメイン-gCysのZZドメインはIgG 結合能を有する。IgG結合部位と発光触媒部位が同一であるか確認するため、ZZドメイン-gCyにヒトIgG を添加し、その発光活性への影響を調べた。
【0197】
具体的には、100μlのPBS(シグマ社製)中に、ZZドメイン-gCys 1μl(18kDa, 5.0μg蛋白質)とヒトIgG (150 kDa, 10 mg/ml, オリエンタル酵母社製)のモル比が, 1:0、1:0.5、1:1、0:0.5、および0:1になるように混合し、25 oCで10分間放置したのち、エタノールに溶解した基質セレンテラジン(1μg/μl)を加えることにより発光反応を開始させた。発光測定装置Luminescencer-PSN AB2200(アトー社製)で60秒間発光活性を測定した。発光活性は最大値(Imax)で示した。その結果、表8に示すように、ヒトIgG添加によるZZドメイン-gCysの発光活性への阻害効果がみられないことより、IgG結合部位と発光触媒部位が異なることが明らかとなった。
このことは、ZZドメイン-gCysは、IgG結合と発光触媒活性を有する蛋白質であることを示している。
【0198】
【表8】

【配列表フリーテキスト】
【0199】
[配列番号:1]実施例1で作製した発現ベクター pCold-ZZ-gCysに挿入されたZZドメイン-gCys (ZZドメインとペプチドリンカーおよびシステイン残基とを含む)をコードするDNAの塩基配列を示す。
[配列番号:2]実施例1で作製した発現ベクターpCold-ZZ-gCys挿入された、ZZドメイン-gCysのアミノ酸配列を示す。
[配列番号:3]実施例1で用いられたペプチドリンカーおよびシステイン残基の塩基配列を示す。
[配列番号:4]実施例1で用いられたペプチドリンカーおよびシステイン残基の塩基配列を示す。
[配列番号:5]ペプチドリンカーおよびシステイン残基をコードするDNAの塩基配列を示す。
[配列番号:6]配列番号:5ペプチドリンカーおよびシステイン残基のアミノ酸配列を示す。
[配列番号:7]式Zで表されるポリペプチドをコードするDNAの塩基配列を示す。
[配列番号:8]式Zで表されるポリペプチドのアミノ酸配列を示す。
[配列番号:9]式(Z)2で表されるポリペプチドをコードするDNAの塩基配列を示す。
[配列番号:10]式(Z)2で表されるポリペプチドのアミノ酸配列を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(1)式(Z)n
(式中、nは1〜5の整数を表し、Zは以下の(a)〜(d)からなる群から選択されるポリペプチドを表す:
(a)配列番号:8のアミノ酸配列からなるポリペプチド、
(b)配列番号:8のアミノ酸配列において1〜複数個のアミノ酸が欠失、置換、挿入および/または付加したアミノ酸配列からなるポリペプチド、
(c)配列番号:8のアミノ酸配列に対して90%以上の同一性を有するアミノ酸配列からなるポリペプチド、および
(d)配列番号:7の塩基配列に相補的な塩基配列からなるポリヌクレオチドとストリンジェントな条件下でハイブリダイズするポリヌクレオチドによってコードされるアミノ酸配列からなるポリペプチド)
で表され、かつ、修飾可能なポリペプチドとの融合蛋白質として発現させたときに、ルシフェリンを基質とする発光触媒活性を有するポリペプチドのアミノ酸配列を含有する第1の領域;と
(2)チオール基を介して他の有用な化合物を結合させるためのシステイン残基を1つ以上有する修飾可能なポリペプチドのアミノ酸配列を含有する第2の領域;と
を含有する、融合蛋白質。
【請求項2】
前記第2の領域が以下の(e)〜(h)からなる群:
(e)配列番号:6のアミノ酸配列からなるポリペプチド、
(f)配列番号:6のアミノ酸配列において1〜複数個のアミノ酸が欠失、置換、挿入および/または付加したアミノ酸配列からなり、かつ、チオール基を介して他の有用な化合物を結合させるためのシステイン残基を1つ以上有するポリペプチド、
(g)配列番号:6のアミノ酸配列に対して70%以上の同一性を有するアミノ酸配列からなり、かつ、チオール基を介して他の有用な化合物を結合させるためのシステイン残基を1つ以上有するポリペプチド、および
(h)配列番号:5の塩基配列に相補的な塩基配列からなるポリヌクレオチドとストリンジェントな条件下でハイブリダイズするポリヌクレオチドによってコードされるアミノ酸配列からなり、かつ、チオール基を介して他の有用な化合物を結合させるためのシステイン残基を1つ以上有するポリペプチド;
から選択されるポリペプチドのアミノ酸配列を含有する領域である、請求項1記載の融合蛋白質。
【請求項3】
前記第2の領域が以下の(e)〜(h)からなる群:
(e)配列番号:6のアミノ酸配列からなるポリペプチド、
(f)配列番号:6のアミノ酸配列において1〜3個のアミノ酸が欠失、置換、挿入および/または付加したアミノ酸配列からなり、かつ、チオール基を介して他の有用な化合物を結合させるためのシステイン残基を1つ以上有するポリペプチド、
(g)配列番号:6のアミノ酸配列に対して90%以上の同一性を有するアミノ酸配列からなり、かつ、チオール基を介して他の有用な化合物を結合させるためのシステイン残基を1つ以上有するポリペプチド、および
(h)配列番号:5の塩基配列に相補的な塩基配列からなるポリヌクレオチドと高ストリンジェントな条件下でハイブリダイズするポリヌクレオチドによってコードされるアミノ酸配列からなり、かつ、チオール基を介して他の有用な化合物を結合させるためのシステイン残基を1つ以上有するポリペプチド;
から選択されるポリペプチドのアミノ酸配列を含有する領域である、請求項2記載の融合蛋白質。
【請求項4】
前記式(Z)nで表されるポリペプチドが、(Z)2で表されるポリペプチドである、請求項1〜3のいずれか1項記載の融合蛋白質。
【請求項5】
前記式(Z)2で表されるポリペプチドが、
(a)配列番号:10のアミノ酸配列からなるポリペプチド、
(b)配列番号:10のアミノ酸配列において1〜複数個のアミノ酸が欠失、置換、挿入および/または付加したアミノ酸配列からなり、かつ、修飾可能なポリペプチドとの融合蛋白質として発現させたときに、ルシフェリンを基質とする発光触媒活性を有するポリペプチド、
(c)配列番号:10のアミノ酸配列に対して90%以上の同一性を有するアミノ酸配列からなり、かつ、修飾可能なポリペプチドとの融合蛋白質として発現させたときに、ルシフェリンを基質とする発光触媒活性を有するポリペプチド、および
(d)配列番号:9の塩基配列に相補的な塩基配列からなるポリヌクレオチドとストリンジェントな条件下でハイブリダイズするポリヌクレオチドによってコードされるアミノ酸配列からなり、かつ、修飾可能なポリペプチドとの融合蛋白質として発現させたときに、ルシフェリンを基質とする発光触媒活性を有するポリペプチド
からなる群から選択されるポリペプチドである、請求項4記載の融合蛋白質。
【請求項6】
前記式(Z)nで表されるポリペプチドが、IgGのFc領域と結合することができる機能を有する、請求項1〜5のいずれか1項記載の融合蛋白質。
【請求項7】
(1)前記第1の領域が配列番号:10のアミノ酸配列からなる領域であり、
(2)前記第2の領域が配列番号:6のアミノ酸配列からなる領域である、請求項1記載の融合蛋白質。
【請求項8】
さらに、翻訳促進のためのアミノ酸配列および/または精製のためのアミノ酸配列を含有する、請求項1〜7のいずれか1項記載の融合蛋白質。
【請求項9】
配列番号:2のアミノ酸配列からなる融合蛋白質。
【請求項10】
請求項1〜9のいずれか1項記載の融合蛋白質をコードするポリヌクレオチドを含有するポリヌクレオチド。
【請求項11】
(1)式(Z)n
(式中、nは1〜5の整数を表し、Zは以下の(a)〜(d)からなる群から選択されるポリペプチドを表す:
(a)配列番号:8のアミノ酸配列からなるポリペプチド、
(b)配列番号:8のアミノ酸配列において1〜複数個のアミノ酸が欠失、置換、挿入および/または付加したアミノ酸配列からなるポリペプチド、
(c)配列番号:8のアミノ酸配列に対して90%以上の同一性を有するアミノ酸配列からなるポリペプチド、および
(d)配列番号:7の塩基配列に相補的な塩基配列からなるポリヌクレオチドとストリンジェントな条件下でハイブリダイズするポリヌクレオチドによってコードされるアミノ酸配列からなるポリペプチド)
で表され、かつ、修飾可能なポリペプチドとの融合蛋白質として発現させたときに、ルシフェリンを基質とする発光触媒活性を有するポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを含有する第1のコード配列;と
(2)チオール基を介して他の有用な化合物を結合させるためのシステイン残基を1つ以上有する修飾可能なポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを含有する第2のコード配列;と
を含有する、ポリヌクレオチド。
【請求項12】
前記第2のコード配列が以下の(e)〜(h)からなる群:
(e)配列番号:5の塩基配列からなるポリヌクレオチド、
(f)配列番号:5の塩基配列に相補的な塩基配列からなるポリヌクレオチドとストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、かつ、チオール基を介して他の有用な化合物を結合させるためのシステイン残基を1つ以上有するポリペプチドをコードするポリヌクレオチド、
(g)配列番号:6のアミノ酸配列からなるポリペプチドをコードするポリヌクレオチド、および
(h)配列番号:6のアミノ酸配列において1〜複数個のアミノ酸が欠失、置換、挿入および/または付加したアミノ酸配列からなり、かつ、チオール基を介して他の有用な化合物を結合させるためのシステイン残基を1つ以上有するポリペプチドをコードするポリヌクレオチド;
から選択されるポリヌクレオチドを含有するコード配列である、請求項11記載のポリヌクレオチド。
【請求項13】
前記第2のコード配列が以下の(e)〜(h)からなる群:
(e)配列番号:5の塩基配列からなるポリヌクレオチド、
(f)配列番号:5の塩基配列に相補的な塩基配列からなるポリヌクレオチドと高ストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、かつ、チオール基を介して他の有用な化合物を結合させるためのシステイン残基を1つ以上有するポリペプチドをコードするポリヌクレオチド、
(g)配列番号:6のアミノ酸配列からなるポリペプチドをコードするポリヌクレオチド、および
(h)配列番号:6のアミノ酸配列において1〜3個のアミノ酸が欠失、置換、挿入および/または付加したアミノ酸配列からなり、かつ、チオール基を介して他の有用な化合物を結合させるためのシステイン残基を1つ以上有するポリペプチドをコードするポリヌクレオチド;
から選択されるポリヌクレオチドを含有するコード配列である、請求項12記載のポリヌクレオチド。
【請求項14】
前記式(Z)nで表されるポリペプチドが(Z)2で表されるポリペプチドである、請求項11〜13のいずれか1項記載のポリヌクレオチド。
【請求項15】
前記式(Z)2で表されるポリペプチドが、
(a)配列番号:10のアミノ酸配列からなるポリペプチド、
(b)配列番号:10のアミノ酸配列において1〜複数個のアミノ酸が欠失、置換、挿入および/または付加したアミノ酸配列からなり、かつ、修飾可能なポリペプチドとの融合蛋白質として発現させたときに、ルシフェリンを基質とする発光触媒活性を有するポリペプチド、
(c)配列番号:10のアミノ酸配列に対して90%以上の同一性を有するアミノ酸配列からなり、かつ、修飾可能なポリペプチドとの融合蛋白質として発現させたときに、ルシフェリンを基質とする発光触媒活性を有するポリペプチド、および
(d)配列番号:9の塩基配列に相補的な塩基配列からなるポリヌクレオチドとストリンジェントな条件下でハイブリダイズするポリヌクレオチドによってコードされるアミノ酸配列からなり、かつ、修飾可能なポリペプチドとの融合蛋白質として発現させたときに、ルシフェリンを基質とする発光触媒活性を有するポリペプチド
からなる群から選択されるポリペプチドである、請求項14記載のポリヌクレオチド。
【請求項16】
前記式(Z)nで表されるポリペプチドが、IgGのFc領域と結合することができる機能を有する、請求項11〜15のいずれか1項記載のポリヌクレオチド。
【請求項17】
(1)前記第1のコード配列が配列番号:10のアミノ酸配列からなるポリペプチドをコードするポリヌクレオチドからなるコード配列であり、
(2)前記第2のコード配列が配列番号:6のアミノ酸配列からなるポリペプチドをコードするポリヌクレオチドからなるコード配列である、請求項11記載のポリヌクレオチド。
【請求項18】
(1)前記第1のコード配列が配列番号:9の塩基配列からなるポリヌクレオチドからなるコード配列であり、
(2)前記第2のコード配列が配列番号:5の塩基配列からなるポリヌクレオチドからなるコード配列である、請求項11記載のポリヌクレオチド。
【請求項19】
さらに、翻訳促進のためのアミノ酸配列からなるポリペプチドおよび/または精製のためのアミノ酸配列からなるポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを含有する、請求項11〜18のいずれか1項記載のポリヌクレオチド。
【請求項20】
配列番号:1の塩基配列からなるポリヌクレオチドを含有するポリヌクレオチド。
【請求項21】
請求項10〜20のいずれか1項記載のポリヌクレオチドを含有する組換えベクター。
【請求項22】
請求項21記載の組換えベクターが導入された形質転換体。
【請求項23】
請求項22記載の形質転換体を培養し、請求項1〜9のいずれか1項記載の融合蛋白質を生成させる工程を含む、請求項1〜9のいずれか1項記載の融合蛋白質の製造方法。
【請求項24】
請求項1〜9のいずれか1項記載の融合蛋白質に、該融合蛋白質の第2の領域のシステイン残基のチオール基を介して、他の有用な化合物を結合した複合体。
【請求項25】
他の有用な化合物が蛍光物質および/または検出すべき物質に特異的なリガンドである、請求項24記載の複合体。
【請求項26】
請求項1〜9のいずれか1項記載の融合蛋白質を含むキット。
【請求項27】
請求項10〜20のいずれか1項記載のポリヌクレオチド、請求項21記載の組換えベクターまたは請求項22記載の形質転換体を含むキット。
【請求項28】
請求項24または25記載の複合体を含むキット。
【請求項29】
さらにルシフェリンを含む、請求項26〜28のいずれか1項記載のキット。
【請求項30】
ルシフェリンがセレンテラジン類である、請求項29記載のキット。
【請求項31】
セレンテラジン類がセレンテラジンである、請求項30記載のキット。
【請求項32】
請求項1〜9のいずれか1項記載の融合蛋白質または請求項24または25記載の複合体と、ルシフェリンとを接触させることを含む、発光反応を行う方法。
【請求項33】
請求項1〜9記載の融合蛋白質または請求項24または25記載の複合体をドナー蛋白質として用いて、生物発光共鳴エネルギー移動(BRET)法を行うことを特徴とする、生理機能の解析または酵素活性の測定方法。
【請求項34】
請求項25記載の複合体を用いる、リガンドに特異的な物質を測定する方法。
【請求項35】
請求項1〜9のいずれか1項記載の融合蛋白質を用いたイムノアッセイ法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−130282(P2012−130282A)
【公開日】平成24年7月12日(2012.7.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−284895(P2010−284895)
【出願日】平成22年12月21日(2010.12.21)
【出願人】(311002067)JNC株式会社 (208)
【Fターム(参考)】