説明

発光測定装置の試薬開封機構および試薬開封機構における開封針制御方法

【課題】発光測定装置において、装置内部への生菌の持ち込みや、装置内部での汚染の発生を抑制することができる手段を提供する。
【解決手段】水平方向への移動軸をX軸およびY軸とし、垂直方向の移動軸をZ軸とした3軸アクチュエータと、当該3軸アクチュエータにより駆動される試薬分注ノズル24を備え、試薬分注ノズル24によって分取される試薬が凹部に充填され、前記凹部の開口部がアルミシートにより封止された試薬カートリッジのセットを可能とする発光測定装置の試薬開封機構であって、前記3軸アクチュエータにより駆動されて前記アルミシートに孔をあける開封針102と、試薬分注ノズル24と開封針102との間に、開封時または試薬分取分注時のZ軸動作において試薬分注ノズル24または開封針102が試薬カートリッジを含む構造物と接触しない位置に両者を配置する固定ブロック28とを有することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発光測定装置に係り、特に、発光測定装置による試験に用いられる試薬パックの開封を自動で行うための機構および、当該機構における開封針の制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
各種臨床医学や食品工場、医薬品製造工場、および基礎研究の現場等といった無菌性や生物的清浄度が要求される環境では、空気中の微生物(空中浮遊菌)の数(生菌数)や落下菌、および付着菌等の計数が成される。空中浮遊菌の測定方法として、浮遊菌の捕集には、浮遊菌の自然落下や、一定量の空気を吸引することにより捕集を行う空中浮遊菌サンプラを利用することが一般的である。
これらの方法では、普通寒天平板培地上に浮遊菌を捕集し、恒温器により2〜3日培養し、培養後に発生したコロニー数をもって生菌の数とする。しかしこのような方法では、生菌を培養するのに時間がかかるという問題が生ずることとなる。
【0003】
これに対し、短時間に微生物数の計測を行うことを可能とする方法として、細胞内成分であるアデノシン3リン酸(ATP:Adenosine TriPhosphate)を生物発光法により測定することにより、微生物数を換算する方法が知られている。
生物発光法は、ルシフェリン−ルシフェラーゼ発光反応が用いられ、基質ルシフェリンと酵素ルシフェラーゼを含む発光試薬と、微生物の細胞から抽出したATPを含むサンプル溶液を混合し、反応させることにより生ずる光の発光量からATP量を求め、生菌1当たりのATP量に基づいて、生菌数を算出するというものである。特許文献1には、このような発光反応を利用して生菌の数を計測するためのキットが開示されている。
【0004】
特許文献1に開示されているキットによる生菌数の計測方法は、計測時間の短縮として確かな効果を挙げることができる。しかし、極微量の生菌計測を対象とした場合には、発光量自体が微量となるため、残留ATPや計測対象外のATPの混入などの影響によるバックグラウンド発光の影響が大きくなり、良好な測定精度を得ることができないという問題があった。
【0005】
これに対し特許文献2には、試薬を分注するためのノズルに付着した生菌や、残留ATPに由来するバックグラウンド発光を抑え、高精度で迅速な発光測定を行うことのできる発光測定装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平11−155597号公報
【特許文献2】特開2008−249628号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献2に開示されているような発光測定装置であれば、極微量の生菌計測を対象とした発光計測であっても、高精度かつ迅速に行うことが可能となると考えられる。しかし、特許文献2に開示されているような装置により極微量な生菌計測を可能とした場合、装置内部での汚染が計測値に大きな影響を及ぼすこととなる。
例えば、発光測定に用いられる試薬は、装置外部で開封された後、装置内にセットされるが、開封後、装置内へのセットまでの間に汚染される可能性がある。
本発明では、装置内部への生菌の持ち込みや、装置内部での汚染の発生を抑制することができる手段を提供することを目的とし、特に発光測定装置における試薬自動開封機構、および試薬開封機構の開封針制御方法を提供することとする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するための本発明に係る発光測定装置の試薬開封機構は、水平方向への移動軸をX軸およびY軸とし、垂直方向の移動軸をZ軸とした3軸アクチュエータと、当該3軸アクチュエータにより駆動される試薬分注ノズルを備え、前記試薬分注ノズルによって分取される試薬が凹部に充填され、前記凹部の開口部が膜により封止された試薬カートリッジのセットを可能とする発光測定装置の試薬開封機構であって、前記3軸アクチュエータにより駆動されて前記膜に孔をあける開封針と、前記試薬分注ノズルと前記開封針との間に、前記膜開封時または試薬分取分注時の前記Z軸動作において前記試薬分注ノズルまたは前記開封針が前記試薬カートリッジを含む前記発光測定装置の構成要素と接触しない位置に両者を配置する固定ブロックとを有することを特徴とする。
【0009】
また、上記のような特徴を有する発光測定装置の試薬開封機構は、前記開封針の直径を、前記試薬分注ノズルの直径よりも太くすることが望ましい。このような構成とすることにより、開封後の膜表面と試薬分注ノズルとが接触する虞が無い。よって、膜表面を介した試薬分注ノズルの汚染を防ぐことができる。
【0010】
また、上記のような特徴を有する発光測定装置の試薬開封機構は、前記開封針は先端を斜めにカットした円柱とし、端面に、側面と前記端面との間で鋭角となる部分と鈍角となる部分を設けるようにすると良い。このような構成とすることにより、鋭角部分では膜が破られ、鈍角部分では膜が破られず(切断されず)に押し曲げられることとなる。このため、凹部の開口部を覆っていた膜の破片が試薬に落下する虞が無い。よって、膜を介した試薬の汚染を防ぐことができる。
【0011】
また、上記のような特徴を有する発光測定装置の試薬開封機構は、前記開封針を前記膜に刺した状態で、前記凹部の開口範囲内において前記開封針をX軸方向および/またはY軸方向へ移動させる駆動信号を前記3軸アクチュエータに出力する制御部を備えるようにすると良い。このような構成とすることにより、膜に形成する孔を広げることができる。よって、開封後の膜表面と試薬分注ノズルとが接触する虞が無い。よって、膜表面を介した試薬分注ノズルの汚染を防ぐことができる。
【0012】
また、上記のような特徴を有する発光測定装置の試薬開封機構において前記制御部は、前記3軸アクチュエータに対し、前記開封針の先端が、前記膜と前記試薬カートリッジに充填された試薬の界面との間に位置するように、Z軸方向への動作信号を出力するようにすると良い。このような構成とすることにより、開封針が試薬カートリッジに充填された試薬と接触する虞が無い。このため、開封対象とする凹部が複数あった場合でも、凹部に充填された試薬間のクロスコンタミを生じさせる虞が無い。
【0013】
また、上記目的を達成するための、本発明に係る試薬開封機構における開封針制御方法は、水平方向への移動軸をX軸およびY軸とし、垂直方向の移動軸をZ軸とした3軸アクチュエータと、当該3軸アクチュエータにより駆動される試薬分注ノズルと前記3軸アクチュエータにより駆動される開封針を備え、前記試薬分注ノズルによって分取される試薬が凹部に充填され、前記凹部の開口部が膜により封止された試薬カートリッジのセットを可能とする発光測定装置における開封針の制御方法であって、開封対象とする前記凹部の直上に前記開封針を移動させる第1の水平移動動作と、前記膜に孔をあけるように前記開封針を下降させる垂直移動動作と、下降させた前記開封針をX軸方向および/またはY軸方向へ移動させて前記膜の開口を広げる第2の水平移動動作を有することを特徴とする。
また、上記のような試薬開封機構における開封針制御方法において前記垂直動作は、前記開封針の先端を、前記膜と前記凹部に充填された試薬の界面との間に位置させるようにすると良い。このような制御を行うことにより、開封針が試薬カートリッジに充填された試薬と接触する虞が無い。このため、開封対象とする凹部が複数あった場合でも、凹部に充填された試薬間のクロスコンタミを生じさせる虞が無い。
【0014】
また、上記のような試薬開封機構における開封針制御方法において前記第2の水平動作は、前記凹部の開口部の範囲内で行うようにすると良い。このような制御を行うことにより、開封針が試薬カートリッジに接触する虞が無い。このため、開封針の接触による試薬カートリッジのパッケージの破損や、試薬の飛び跳ねによるクロスコンタミを防止することができる。
【発明の効果】
【0015】
上記のような特徴を有する発光測定装置の試薬開封機構によれば、試薬の汚染に伴う装置内部への生菌の持ち込みや、試薬を媒介とした装置内部での汚染の発生を抑制することができる。
また、上記のような特徴を有する試薬開封機構における開封針制御方法によれば、上記装置における効果と同様に、試薬の汚染に伴う装置内部への生菌の持ち込みや、試薬を媒介とした装置内部での汚染の発生を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】発光測定装置の構成を示すブロック図である。
【図2】計測ユニットの側面構成を示す概略図である。
【図3】実施形態に係る試薬開封機構の主要構成を示すブロック図である。
【図4】Z軸機構部と固定ブロック、試薬分注ノズル、および開封針の関係を示す参考斜視図である。
【図5】試薬・担体容器搭載部の構成を示す上面図である。
【図6】発光測定装置による発光測定の様子を示すフロー図である。
【図7】実施形態に係る試薬開封機構による試薬開封動作のうちの、第1水平移動動作を説明する図である。
【図8】実施形態に係る試薬開封機構による試薬開封動作のうちの、垂直移動動作を説明する図である。
【図9】実施形態に係る試薬開封機構による試薬開封動作のうちの、第2水平移動動作を説明する図である。
【図10】実施形態に係る試薬開封機構による試薬開封動作のうちの、開封針退避動作を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の発光測定装置の試薬開封機構および試薬開封機構における開封針の制御方法に係る実施の形態について、図面を参照して詳細に説明する。
まず、図1を参照して、本発明の発光測定装置(バイオメイテクター)の試薬開封機構(以下、単に試薬開封機構100(図3参照)と称す)を搭載する発光測定装置10の全体構成について説明する。本実施形態で説明する発光測定装置10は、計測ユニット12と、捕集ユニット80とによって構成されている。
【0018】
計測ユニット12は、試薬分注部14、温水供給部42、試薬・担体容器搭載部54、バッファ供給部64、濾過部72、PMT(Photomultiplier Tube:光電子増倍管)部78、および図示しない入力・制御部(制御部)11を有する。このような各構成要素を外殻内に配置している。
【0019】
試薬分注部14は、3軸アクチュエータ16、試薬分注ノズル24、およびシリンジポンプ32を基本として構成されている。3軸アクチュエータ16は、詳細を後述する試薬分注ノズル24を所望位置へ移動させるための手段である。このため、3軸アクチュエータ16は図2に詳細を示すように、Y軸機構部18とX軸機構部20、およびZ軸機構部22より構成されることとなる。Y軸機構部18は、装置上部に配置可能とすることより、スペース的な制限が少ない。このため、本実施形態における計測ユニット12では、ステッピングモータ18aを駆動アクチュエータとし、リニアガイド18bに取り付けた稼動部18cを駆動ベルト18dにより摺動させる構成としている。
【0020】
これに対し、稼動部18cに取り付けられるX軸機構部20とZ軸機構部22は、スペース的な余裕を持たせることが難しい。このため、X軸機構部20とZ軸機構部22には共に、コンパクトアクチュエータを採用した。コンパクトアクチュエータとは、中空ロータに、大口径スラスト軸系を組み込むことで、モータと凸出軸を一体化させた小型アクチュエータである。動作原理としては、駆動系をステッピングモータとし、突出軸をボールネジとしている。このため、小型でありながら、高精度な位置決めを可能とする。
【0021】
試薬分注ノズル24は、発光計測に用いる各種試薬を所望量分取・分注する役割を担うノズルである。試薬分注ノズル24は図3、図4に示すように、Z軸機構部22であるコンパクトアクチュエータに取り付けられたスライドガイド26に備えられた固定ブロック28により支持されている。このような支持形態を採ることにより、昇降動作の安定化を図ることができる。なお、図3において、図3(A)は、3軸アクチュエータ16の概略構成と試薬分注ノズル24との関係を示す正面ブロック図であり、図3(B)は、同図(A)における上面構成を示すブロック図である。また、図4は、Z軸機構部22と試薬分注ノズル24との関係を示す参考斜視図である。
【0022】
試薬分注ノズル24の後端には、詳細を後述するシリンジポンプ32に接続された分注動作用配管30が接続されている。試薬分注ノズル24は、この分注動作用配管30を介してノズル内に負圧をかけることにより試薬を分取し、ノズル内に正圧をかけることにより、分取した試薬を分注する。なお、試薬分注ノズル24は、ガラス製の管の他、樹脂製や金属性の管により構成しても良い。
【0023】
シリンジポンプ32は、上述した試薬分注ノズル24による試薬の分取、分注を行うための作動流体(本実施形態では純水)の制御を行う役割を担う。シリンジポンプ32は、シリンジ34とプランジャ36、およびアクチュエータ38を基本として構成される。シリンジ34は、作動流体である純水を貯留するタンクである。プランジャ36は、シリンジ34内に負圧または正圧をかけることにより、シリンジ34内への純水の導入と純水の排出を行う役割を担う押し棒である。アクチュエータ38は、プランジャ36の押し込み、あるいは引抜きを行うための駆動手段である。アクチュエータ38には、ステッピングモータとボールネジなどを用いることにより、高精度な位置制御が可能となる。
【0024】
このような構成のシリンジポンプ32におけるシリンジ34の先端には、分注動作用配管30の一端が接続されており、分注動作用配管30の他端は、上述した試薬分注ノズル24に接続されている。分注動作用配管30をこのように接続することにより、プランジャ36を引抜くことによりシリンジ34内には純水が溜まり、試薬分注ノズル24のノズル内に負圧が付与され、試薬分注ノズル24内への試薬の注入(分取)が成されることとなる。逆に、プランジャ36を押し込んだ場合には、シリンジ34内から排出された純水が試薬分注ノズル24へ移行されるため、試薬分注ノズル24内の圧力が上がり、試薬分注ノズル24内に溜められた試薬が吐出(分注)されることとなる。
【0025】
分注動作用配管30には、3方弁などの分配弁40を介して、詳細を後述するバッファ供給部64に接続されるバッファ供給配管70が接続されている。このような構成とすることにより、分注動作用配管30内に貯留された動作流体である純水を定期的に入れ替える事ができる。これにより、動作流体が汚染されることによる計測データの誤差を抑制することが可能となる。
【0026】
温水供給部42は、捕集担体を希釈するための温水を供給する役割を担う。温水供給部42は、ペリスタルティックポンプ44、ヒータ46、および温水供給ノズル48を基本として構成される。ペリスタルティックポンプ44は、樹脂チューブとローラ、およびアクチュエータとを基本として構成される(いずれも不図示)。樹脂チューブは、送液用に用いられるチューブであり、搬送流体(本実施形態では純水)が流されることとなる。機構上、ローラにより押し潰されることとなるため、可撓性と耐久性を備えていることが望ましく、例えばシリコンチューブなどであれば良い。ローラは、樹脂チューブを押し潰しながら、自転と公転を繰り返すことで、押し潰し領域に閉じ込められた搬送流体をローラの公転方向へ押出す役割を担う。ローラにより押し潰された樹脂チューブには、元の形状に戻ろうとする力が働く。そして、搬送流体は非圧縮性流体であるため、複数のローラが連続的に公転することにより、搬送流体の押出しも連続的に行われることとなる。なおアクチュエータは、複数配置されたローラを回転させることのできるものであれば良い。
【0027】
このような構成のペリスタルティックポンプ44によれば、搬送流体(本実施形態では純水)と接触する箇所は、搬送流体が流れるチューブ内のみであるため、ポンプ自体が汚染されない。このため、無菌状態の維持と洗浄が容易となる。
ヒータ46は、搬送流体である純水を加熱する役割を担う。ヒータ46の構成については特に限定することは無いが、小型化を重視する場合には、カートリッジヒータやチューブヒータを採用することが望ましい。例えばカートリッジヒータを採用した場合には、ヒータ本体46aの外周に、金属性の配管(以下、単に金属配管46bと称す)を巻回させ、当該巻回させた金属配管46bの内部に搬送流体である純水を送通させるようにすれば良い。このような構成とすることにより、金属配管46b内部の純水は、熱伝達により加熱されることとなるからである。また、チューブヒータを採用した場合には、樹脂配管(チューブ)などの回りにラバーヒータを巻回させ、樹脂チューブ内を送通させる搬送流体である純水を加熱することとなる。このような構成では、樹脂チューブにシリコン樹脂などを採用することにより、熱伝達率が良好となる。また、樹脂チューブ、ラバーヒータともに可撓性を有することとなるため、配置の自由度が高く、加熱領域を長く確保することが可能となる。このため、加熱後の温度低下の回避、すなわち温度の安定化を図ることができる。ヒータ46の配置位置については特に限定することは無いが、加熱後の温度低下を防ぐためには、加熱後の送液距離を短くすることが望ましい。よって、本実施形態に係る計測ユニット12では、上述したペリスタルティックポンプ44と、詳細を後述する温水供給ノズル48との間に配置している。
【0028】
温水供給ノズル48は、ペリスタルティックポンプ44により送液され、ヒータ46により加熱された温水(純水)を、詳細を後述する試薬・担体容器搭載部54に配置された捕集担体カートリッジ82に供給するための吐出ノズルである。構成としては、金属(SUS)管などであれば良く、ガラス管や、樹脂管などであっても良い。温水供給ノズル48における吐出口と反対側の端部には、ヒータ46を介してペリスタルティックポンプ44に接続された温水供給配管50が接続されている。なお、ペリスタルティックポンプ44における吸引側配管52は、詳細を後述するバッファ供給部64に接続されている。
【0029】
このように構成された温水供給部42によれば、ペリスタルティックポンプ44を駆動させることにより、温水供給ノズル48から連続的に温水を吐出させることが可能となる。
試薬・担体容器搭載部54は、発光測定に用いる試薬や、捕集担体を配置するためのステージである。試薬・担体容器搭載部54には、捕集担体カートリッジホルダ56や、試薬ラック58、および発光計測チューブホルダ60aなどが配置される。捕集担体カートリッジホルダ56は、捕集担体カートリッジ82をセットするホルダである。捕集担体カートリッジホルダ56には、ヒータを備えたヒートブロックが設けられ、セットした捕集担体カートリッジ82を加熱可能な構成とされている。
【0030】
試薬ラック58には、発光測定に用いる試薬を充填した試薬カートリッジが配置される。試薬カートリッジは、図5に示すように、複数に仕切られた各凹部(図5(B)に示す例では9つ)に、それぞれ種類の異なる試薬や純水等が充填されたパッケージであり、凹部の上部開口部は、アルミシート(膜)などにより封止されている。このような構成とすることにより、アルミシートが剥がされて開封されるまでは、試薬が外部に晒されることが無く、ストックされている試薬が生菌等により汚染されることが無い。なお、図5において、図5(A)は、試薬・担体容器搭載部54の上面図であり、図5(B)は、試薬カートリッジ62の上面図である。
【0031】
発光計測チューブホルダ60aには、発光計測チューブ60が配置されている。発光計測チューブ60は、捕集担体カートリッジ82により捕集された生菌から抽出したATPの発光反応を実施するためのマイクロチューブである。
バッファ供給部64は、試薬分注ノズル制御用水タンク(以下、単に制御用水タンク66と称す)と、温水供給用水タンク68を有する。試薬分注ノズル24を使用した後の工程には、遊離ATPを除去する工程を含まないため、シリンジポンプ32と試薬分注ノズル24を繋ぐ分注動作用配管30に充填される制御用水タンク66内の水(純水)は、温水供給用水タンク68内の水(純水)よりも清浄度を高く保つ必要がある。このため、制御用水タンク66は、温水供給用タンク68に比べて、その容量を小さくし、貯留水の交換を適宜行うようにしている。なお、温水供給用水タンク68内の水は、捕集担体カートリッジホルダ56にセットされた捕集担体カートリッジ82に注がれるため、制御用水タンク66に比べて多くの容量を必要とする。
【0032】
このように設定された制御用水タンク66は、バッファ供給配管70により、分注動作用配管30における分配弁40に接続され、当該分配弁40の切り替えにより、分注動作用配管30への純水の供給を可能な構成としている。また、温水供給用水タンク68は、上述したペリスタルティックポンプ44の吸引側に接続され、ペリスタルティックポンプ44の駆動により吸い上げられることとなる。
【0033】
濾過部72は、温水供給ノズル48から吐出された温水により希釈された捕集担体カートリッジ82内の捕集担体を除去する役割を担う。濾過部72は、吸引ポンプ74と吸引ヘッド76を基本として構成される。吸引ポンプ74は、詳細を後述する吸引ヘッド76の内部に負圧を生じさせるためのポンプである。また吸引ヘッド76は、先端開放型の筒状体である。
このような基本構成を有する濾過部72では、先端を捕集担体カートリッジホルダ56の下部に接続し、吸引ポンプ74を稼動させることにより、温水により希釈された捕集担体を、回収フィルタ90(図6参照)を介して吸引除去することができる。
【0034】
PMT部78は、発光計測チューブ60内におけるATPの発光量を測定する役割を担う。本実施形態における計測ユニット12では、PMT部78をヘッドオン型とし、上述した発光計測チューブ60の下部に配置する構成とした。このような構成とすることにより、発光計測チューブ60内で生じた光がPMT部78の上部から入射され、その発光量が計測されることとなる。
なお、入力・制御部11は、発光計測装置に対する入力値に対して、上記各構成要素を制御することで、発光測定の自動化を図る要素である。
【0035】
捕集ユニット80は、捕集担体カートリッジ82内に、空気中の生菌を捕集するための装置である。捕集ユニット80は、捕集担体カートリッジ82、送風ファン84、インパクタノズルヘッド86、および排気フィルタ88を基本として構成される。
捕集担体カートリッジ82は、空気中に浮遊する生菌を捕集するための役割を担う。捕集担体カートリッジ82には、生菌を捕集するための捕集担体82a(図6参照)が備えられる。本実施形態に係る捕集担体カートリッジ82に備えられる捕集担体82aは、常温においてはゲル状を成し、加熱によりゾル化する性質を持つ。また、捕集担体82aの下部には、希釈用温水を充填するためのキャビティ(不図示)が設けられている。そして、キャビティの下部には、捕集担体82aを希釈した温水の濾過を行うための回収フィルタ90(図6参照)が備えられる。
【0036】
送風ファン84は、捕集ユニット80内に空気を吸引し、上述した捕集担体カートリッジ82における捕集担体82aに、空気中の浮遊菌を衝突させる役割を担う。送風ファン84自体の汚染による検出誤差を避けるため、送風ファン84は、上述した捕集担体カートリッジ82の配置位置よりも下流側(本実施形態に係る捕集ユニット80では上部を吸引口とするため下部側)に配置することが望ましい。捕集ユニット80では、送風ファン84の送風量と稼動時間により、捕集対象とする空気の量を定めることができる。
【0037】
インパクタノズルヘッド86は、捕集ユニット80の上部に配置され、捕集担体カートリッジ82のカバー兼加速器としての役割を担う。捕集担体カートリッジ82に生菌を衝突させて担持させるためには、捕集ユニット80へ流入する空気の流速が、ある程度速い必要がある。しかし、速い流速を得るためには、送風ファン84を大きくしたり、高回転化させる必要が生じ、捕集ユニット80の大型化などが懸念される。
【0038】
インパクタノズルヘッド86には、複数の小径口が設けられ、送風ファン84により吸引された空気が、当該小径口を通過して捕集担体82aへ衝突させられることとなる。空気の流量を一定とした場合、通過流路の面積を狭めることにより、通過する流体の流速を上げることができる。このため、送風ファン84の大型化や高回転化を行う事無く、必要な流速を得ることができるようになる。
【0039】
排気フィルタ88は、送風ファン84の下流側(本実施形態に係る捕集ユニット80では下側)に配置され、排気に含まれる塵埃を除去する役割を担う。
このような構成とすることにより、本実施形態に係る捕集ユニット80は、小型軽量なものとすることができる。
上記のような基本構成を有する計測ユニット12と捕集ユニット80から成る発光測定装置10では、まず、捕集ユニット80により空気中の生菌を捕集する(ステップ100:図6参照)。
【0040】
次に、生菌を捕集した捕集担体カートリッジ82を捕集ユニット80から取り出し、計測ユニット12の捕集担体カートリッジホルダ56にセットする。捕集担体カートリッジホルダ56にセットされた捕集担体カートリッジ82は、ヒートブロックにより加熱される。加熱により、捕集担体はゾル化する。ゾル化した捕集担体82aは、温水供給ノズル48から供給される温水により希釈される。そして、希釈された捕集担体82aは、回収フィルタ90を介して濾過部72により吸引除去され、回収フィルタ90には、捕集担体82aに捕集された生菌および遊離ATPが残留することとなる(ステップ110:図6参照)。
【0041】
捕集担体82aを濾過した後、試薬分注部14を稼動させて遊離ATPの除去と、生菌サンプルの分取を行う。まず、試薬分注ノズル24により試薬カートリッジ62から(ATP除去)試薬を分取し、捕集担体カートリッジ82に分注し、遊離ATPを除去する。この作業により、遊離ATPに起因する発光反応による発光量の計測誤差の発生を防ぐことができる。次いで、遊離ATPを除去した後の捕集担体カートリッジ82における回収フィルタ90上に(ATP抽出)試薬を分注し、回収フィルタ90上の生菌からATPを抽出する(ステップ120:図6参照)。
【0042】
捕集担体カートリッジ82における回収フィルタ90から、ATP抽出サンプルを分取し、発光計測チューブ60へ分注する。発光計測チューブ60には、予め発光試薬が分注してあり、ATP抽出サンプルの分注と同時に発光反応が開始されることとなる。発光計測チューブ60内での発光反応は、PMT部78により、その発光強度の計測が行われる(ステップ130:図6参照)。
【0043】
このような基本構成を有する発光測定装置10では、捕集担体カートリッジ82からの生菌サンプル分取から、発光量の計測までを、外殻で覆われた計測ユニット12内部において自動で行うため、生菌サンプルがコンタミの影響を受ける虞が少ない。また、試薬・担体容器搭載部54にセットされた発光計測チューブ60に対して予め発光試薬を分注し、その後に生菌からのATP抽出サンプルを分注するため、試薬の自家背景光をも計測することができる。このため、発光量と発光時間との関係を正確に得ることができ、発光量に基づくATP量の算出、すなわち生菌数の計測を精度良く行うことができる。
【0044】
次に、本実施形態に係る試薬開封機構100について説明する。試薬開封機構100は、開封針102と、上述した固定ブロック28とを基本として構成される。開封針102は、上述した試薬分注ノズル24と共に固定ブロック28に保持され、3軸アクチュエータ16により駆動する構成とされている。開封針102の構成部材は、上述した試薬カートリッジ62におけるアルミシート(膜)に孔あけができる強度を持っていれば、特に限定するものでは無い。本実施形態の開封針102は、金属性の棒状(筒状又は柱状)部材により構成されており、先端を傾斜状にカットすることにより、端面に鋭角部と鈍角部を備えるようにした。このような構成とすることにより、鋭角部ではアルミシートが破られ、鈍角部分では破られず(切断されず)に押し曲げられることとなる。このため、凹部の開口部を覆っていたアルミシートの破片が試薬に落下する虞が無い。よって、アルミシートを介した試薬の汚染を防ぐことができる。また、アルミシートへの孔あけ動作に必要とされる圧力を小さくすることもできる。
【0045】
固定ブロック28は、開封時または試薬分取分注時のZ軸動作において試薬分注ノズル24または開封針102が試薬カートリッジ62を含む計測ユニット12の構成要素と接触しない位置に試薬分注ノズル24と開封針102とを固定する。このような構成により、開封針102によるアルミシートへの孔あけの際、試薬分注ノズル24が試薬カートリッジ62に接触する虞が無くなる。また逆に、試薬分注ノズル24が試薬カートリッジ62から試薬を分取する際に、開封針102が試薬カートリッジ62に接触する虞も無くなる。
【0046】
このような保持状態とされる開封針102はその直径が、試薬分注ノズル24の直径よりも大きく(太く)なるように構成されている。アルミシートにより封止された試薬カートリッジ62における凹部の内側は、アルミシートが開封されるまでは清浄状態が維持されている。しかし、外部に晒されていたアルミシートの表面は、必ずしも清浄であるとは限らない。このため、開封針102によりアルミシートに形成する孔の直径を、試薬分注ノズル24の直径よりも大きくすることにより、試薬分取時に試薬分注ノズル24がアルミシートの表面に接触することが無くなる。これにより、試薬分注ノズル24がアルミシートとの接触に起因して汚染されることが無くなる。なお、開封針102の直径は、試薬分注ノズル24の直径に対し、2倍以上の太さとすることが望ましい。
【0047】
開封針102と試薬分注ノズル24を備えた3軸アクチュエータ16は、上述した入力・制御部11からの駆動信号により駆動し、開封針102および試薬分注ノズル24を移動させる。本実施形態に係る試薬開封機構100では、入力・制御部11は、3軸アクチュエータ16に対して、Z軸方向移動後、すなわち開封動作終了後の開封針102を、X軸方向とY軸方向のうちの少なくとも一方へ微動させる駆動信号を出力する。なお、微動の範囲は、試薬カートリッジ62に形成された凹部の開口部の範囲内とし、開封針102が試薬カートリッジ62のパッケージに接触しないようにする。このような動作を行うことにより、試薬カートリッジ62におけるアルミシートの孔を広げることができる。これにより、試薬分取時における試薬分注ノズル24とアルミシートとの接触の確率を、より下げることができ、試薬分注ノズル24が汚染される危険性を低減することができる。
【0048】
また、本実施形態の入力・制御部11は、アルミシートの開封動作を行うZ軸方向への駆動制御を行う際、開封針102の先端が、アルミシートの表面(孔あけされる前のアルミシートの表面)から試薬カートリッジ62の凹部に充填された試薬の界面までの間に位置するように、駆動信号を出力する。このような構成とすることにより、開封針102が凹部に充填された試薬に接触することが無い。このため、種類の異なる試薬を充填された複数の凹部間において、試薬同士のクロスコンタミが生ずる虞が無い。
【0049】
このような構成の試薬開封機構100では、まず、入力・制御部11からの駆動信号により3軸アクチュエータ16が駆動して、試薬カートリッジ62における開封対象となる凹部の直上位置に、開封針102を移動させる(第1の水平移動動作:図7参照)。
次に、3軸アクチュエータ16におけるZ軸機構部22を駆動させ、開封針102を垂直降下させて試薬カートリッジ62の凹部を封止しているアルミシートに孔をあける。この際、入力・制御部11はZ軸機構部22に対し、開封針102の先端が、アルミシートの表面と凹部に充填された試薬の界面との間に位置することとなるように、駆動信号を出力する(垂直移動動作:図8参照)。
【0050】
次に入力・制御部11は、3軸アクチュエータ16におけるX軸機構部20とY軸機構部18に対し、X軸方向およびY軸方向のうちの少なくとも一方に、開封針102を微動させる駆動信号を出力する(第2の水平移動動作:図9参照)。
最後に、入力・制御部11からZ軸機構部22に対して、開封針102を引き上げる旨の駆動信号を出力することで、開封針102が上部へ引抜かれる(図10参照)。
【0051】
このような構成とされる本実施形態に係る試薬開封機構100によれば、試薬カートリッジ62の開封を、試薬ラック58にセットした状態で行うことができる。このため、試薬カートリッジ62の開封は計測ユニット12の内部で行われることとなり、試薬の汚染を抑制することができる。これに伴い、試薬の汚染による装置内部への生菌の持ち込みや、試薬を媒介とした装置内部での汚染の発生を抑制することができる。
【0052】
また、開封針102の駆動機構として、試薬分注ノズル24を駆動させる3軸アクチュエータ16を利用したため、開封針102を駆動させるためだけのアクチュエータを備える必要が無く、装置をコンパクト化することができる。
【符号の説明】
【0053】
10………発光測定装置(バイオメイテクター)、11………入力・制御部、12………計測ユニット、14………試薬分注部、16………3軸アクチュエータ、18………Y軸機構部、20………X軸機構部、22………Z軸機構部、24………試薬分注ノズル、26………スライドガイド、28………固定ブロック、30………分注動作用配管、32………シリンジポンプ、34………シリンジ、36………プランジャ、38………アクチュエータ、40………分配弁、42………温水供給部、44………ペリスタルティックポンプ、46………ヒータ、48………温水供給ノズル、50………温水供給配管、52………吸引側配管、54………試薬・担体容器搭載部、56………捕集担体カートリッジホルダ、58………試薬ラック、60………発光計測チューブ、62………試薬カートリッジ、64………バッファ供給部、66………制御用水タンク、68………温水供給用水タンク、70………バッファ供給配管、72………濾過部、74………吸引ポンプ、76………吸引ヘッド、78………PMT部、80………捕集ユニット、82………捕集担体カートリッジ、84………送風ファン、86………インパクタノズルヘッド、88………排気フィルタ、90………回収フィルタ、100………試薬開封機構、102………開封針。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
水平方向への移動軸をX軸およびY軸とし、垂直方向の移動軸をZ軸とした3軸アクチュエータと、当該3軸アクチュエータにより駆動される試薬分注ノズルを備え、前記試薬分注ノズルによって分取される試薬が凹部に充填され、前記凹部の開口部が膜により封止された試薬カートリッジのセットを可能とする発光測定装置の試薬開封機構であって、
前記3軸アクチュエータにより駆動されて前記膜に孔をあける開封針と、
前記試薬分注ノズルと前記開封針との間に、前記膜開封時または試薬分取分注時の前記Z軸動作において前記試薬分注ノズルまたは前記開封針が前記試薬カートリッジを含む前記発光測定装置の構成要素と接触しない位置に両者を配置する固定ブロックとを有することを特徴とする発光測定装置の試薬開封機構。
【請求項2】
前記開封針の直径を、前記試薬分注ノズルの直径よりも太くしたことを特徴とする請求項1に記載の発光測定装置の試薬開封機構。
【請求項3】
前記開封針は先端を斜めにカットした円柱とし、端面に、側面と前記端面との間で鋭角となる部分と鈍角となる部分を設けたことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の発光測定装置の試薬開封機構。
【請求項4】
前記開封針を前記膜に刺した状態で、前記凹部の開口範囲内において前記開封針をX軸方向および/またはY軸方向へ移動させる駆動信号を前記3軸アクチュエータに出力する制御部を備えたことを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載の発光測定装置の試薬開封機構。
【請求項5】
前記制御部は、前記3軸アクチュエータに対し、前記開封針の先端が、前記膜と前記試薬カートリッジに充填された試薬の界面との間に位置するように、Z軸方向への動作信号を出力することを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれか1項に記載の発光測定装置の試薬開封機構。
【請求項6】
水平方向への移動軸をX軸およびY軸とし、垂直方向の移動軸をZ軸とした3軸アクチュエータと、当該3軸アクチュエータにより駆動される試薬分注ノズルと前記3軸アクチュエータにより駆動される開封針を備え、前記試薬分注ノズルによって分取される試薬が凹部に充填され、前記凹部の開口部が膜により封止された試薬カートリッジのセットを可能とする発光測定装置における開封針の制御方法であって、
開封対象とする前記凹部の直上に前記開封針を移動させる第1の水平移動動作と、
前記膜に孔をあけるように前記開封針を下降させる垂直移動動作と、
下降させた前記開封針をX軸方向および/またはY軸方向へ移動させて前記膜の開口を広げる第2の水平移動動作を有することを特徴とする試薬開封機構における開封針制御方法。
【請求項7】
前記垂直動作は、前記開封針の先端を、前記膜と前記凹部に充填された試薬の界面との間に位置させることを特徴とする請求項6に記載の試薬開封機構における開封針制御方法。
【請求項8】
前記第2の水平動作は、前記凹部の開口部の範囲内で行うことを特徴とする請求項6または請求項7に記載の試薬開封機構における開封針制御方法。



【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2011−128123(P2011−128123A)
【公開日】平成23年6月30日(2011.6.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−289736(P2009−289736)
【出願日】平成21年12月21日(2009.12.21)
【出願人】(000005452)株式会社日立プラントテクノロジー (1,767)
【Fターム(参考)】