説明

発光素子、発光装置、照明装置、および電子機器

【課題】新規なバイポーラ性の有機化合物、耐熱性に優れたバイポーラ性の有機化合物、電気化学的に安定なバイポーラ性の有機化合物、および該バイポーラ性の有機化合物を用いることで、駆動電圧が低く消費電力の小さい発光素子および発光装置、耐熱性に優れた発光素子および発光装置、長寿命な発光素子および発光装置を提供する。
【解決手段】一般式(1)で表されるキノキサリン誘導体。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、キノキサリン誘導体、およびキノキサリン誘導体を用いた発光素子、発光装
置、電子機器に関する。
【背景技術】
【0002】
有機化合物は無機化合物に比べて、材料系が多様であり、分子設計により様々な機能を
有する材料を合成できる可能性がある。これらの利点から、近年、機能性有機材料を用い
たフォトエレクトロニクスやエレクトロニクスに注目が集まっている。
【0003】
例えば、有機化合物を機能性有機材料として用いたエレクトロニクスデバイスの例とし
て、太陽電池や発光素子、有機トランジスタ等が挙げられる。これらは有機化合物の電気
物性および光物性を利用したデバイスであり、特に発光素子はめざましい発展を見せてい
る。
【0004】
発光素子の発光機構は、一対の電極間に発光層を挟んで電圧を印加することにより、陰
極から注入された電子および陽極から注入された正孔が発光層の発光中心で再結合して分
子励起子を形成し、その分子励起子が基底状態に戻る際にエネルギーを放出して発光する
といわれている。励起状態には一重項励起と三重項励起が知られ、発光はどちらの励起状
態を経ても可能であると考えられている。
【0005】
このような発光素子に関しては、その素子特性を向上させる上で、材料に依存した問題
が多く、これらを克服するために素子構造の改良や材料開発等が行われている。
【0006】
発光素子の最も基本的な構造としては、正孔輸送性の有機化合物からなる正孔輸送層と
、電子輸送性の有機化合物からなる電子輸送性発光層を積層させた合計約100nm程度
の薄膜を電極で挟んだ構造が知られている(例えば、非特許文献1参照)。
【0007】
非特許文献1に記載されている発光素子に電圧を印加すると、発光性および電子輸送性
を有する有機化合物からの発光を得ることができる。
【0008】
また、非特許文献1に記載されている発光素子は、正孔の輸送は正孔輸送層が行い、電
子の輸送および発光は電子輸送層が行うという、機能分離が行われている。しかし、積層
した層の界面では、様々な相互作用(例えば、エキサイプレックスの形成等)が生じ、そ
の結果、発光スペクトルの変化や発光効率の低下が生じる場合がある。
【0009】
界面での相互作用に起因した発光スペクトルの変化や発光効率の低下を改善するため、
さらに機能分離した発光素子が考えられた。例えば、正孔輸送層と電子輸送層との間に発
光層を挟む構造の発光素子が提案されている(例えば、非特許文献2参照)。
【0010】
非特許文献2に記載されているような発光素子において、界面で生じる相互作用をさら
に抑制するには、電子輸送性および正孔輸送性の両方を有するバイポーラ性の有機化合物
を用いて発光層を形成することが好ましい。
【0011】
しかしながら、有機化合物の多くは正孔輸送性または電子輸送性に偏ったモノポーラ性
の材料である。
【0012】
したがって、電子輸送性および正孔輸送性の両方を有するバイポーラ性の有機化合物の
開発が求められている。
【0013】
特許文献1では、バイポーラ性のキノキサリン誘導体について記載されている。しかし
ながら、耐熱性等の特性は未だ十分ではなく、より多様なバイポーラ性の有機化合物の開
発が求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【特許文献1】国際公開第2004/094389号パンフレット
【非特許文献】
【0015】
【非特許文献1】C.W.タン、外1名、アプライド フィジクス レターズ、vol.51、No.12、913−915(1987)
【非特許文献2】チハヤ アダチ、外3名、ジャパニーズ ジャーナル オブ アプライド フィジクス、vol.27、No.2、L269−L271(1988)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
上記問題を鑑み、本発明は、新規なバイポーラ性の有機化合物を提供することを目的と
する。特に、耐熱性に優れたバイポーラ性の有機化合物を提供することを目的とする。ま
た、電気化学的に安定なバイポーラ性の有機化合物を提供することを目的とする。
【0017】
また、本発明のバイポーラ性の有機化合物を用いることで、駆動電圧が低く、消費電力
の小さい発光素子および発光装置を提供することを目的とする。また、本発明のバイポー
ラ性の有機化合物を用いることで、耐熱性に優れた発光素子および発光装置を提供するこ
とを目的とする。また、本発明のバイポーラ性の有機化合物を用いることで、長寿命な発
光素子および発光装置を提供することを目的とする。
【0018】
また、本発明のバイポーラ性の有機化合物を用いることで、消費電力が小さく、耐熱性
が高く、長寿命な電子機器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0019】
本発明の一は、下記一般式(1)で表されるキノキサリン誘導体である。
【0020】
【化1】

【0021】
(式中、R〜R12はそれぞれ同一でも異なっていてもよく、水素原子、またはハロゲ
ン原子、またはアルキル基、またはアルコキシ基、またはアシル基、またはジアルキルア
ミノ基、またはジアリールアミノ基、または置換または無置換のビニル基、または置換ま
たは無置換のアリール基、または置換または無置換の複素環基、のいずれかを表す。また
、RとR10、R10とR11、R11とR12はそれぞれ互いに結合し、縮合環を形
成してもよい。さらに、Arは置換または無置換のビフェニル基、または置換または無
置換のターフェニル基を表し、Arは置換または無置換のフェニル基、置換または無置
換のビフェニル基、置換または無置換のターフェニル基、置換または無置換の単環の複素
環基を表す。)
【0022】
本発明の一は、下記一般式(2)で表されるキノキサリン誘導体である。
【0023】
【化2】

【0024】
(式中、R〜R12はそれぞれ同一でも異なっていてもよく、水素原子、またはハロゲ
ン原子、またはアルキル基、またはアルコキシ基、またはアシル基、またはジアルキルア
ミノ基、またはジアリールアミノ基、または置換または無置換のビニル基、または置換ま
たは無置換のアリール基、または置換または無置換の複素環基、のいずれかを表す。また
、RとR10、R10とR11、R11とR12はそれぞれ互いに結合し、縮合環を形
成してもよい。さらに、Arは置換または無置換のビフェニル基、または置換または無
置換のターフェニル基を表し、Arは置換または無置換のフェニル基、置換または無置
換のビフェニル基、置換または無置換のターフェニル基、置換または無置換の単環の複素
環基を表す。)
【0025】
本発明の一は、下記一般式(3)で表されるキノキサリン誘導体である。
【0026】
【化3】

【0027】
(式中、R〜R12はそれぞれ同一でも異なっていてもよく、水素原子、またはハロゲ
ン原子、またはアルキル基、またはアルコキシ基、またはアシル基、またはジアルキルア
ミノ基、またはジアリールアミノ基、または置換または無置換のビニル基、または置換ま
たは無置換のアリール基、または置換または無置換の複素環基、のいずれかを表す。また
、RとR10、R10とR11、R11とR12はそれぞれ互いに結合し、縮合環を形
成してもよい。さらに、Aは構造式(4)または構造式(5)で表される置換基を表し、
Arは置換または無置換のフェニル基、置換または無置換のビフェニル基、置換または
無置換のターフェニル基、置換または無置換の単環の複素環基を表す。)
【0028】
本発明の一は、下記一般式(6)で表されるキノキサリン誘導体である。
【0029】
【化4】

【0030】
(式中、R〜R12はそれぞれ同一でも異なっていてもよく、水素原子、またはハロゲ
ン原子、またはアルキル基、またはアルコキシ基、またはアシル基、またはジアルキルア
ミノ基、またはジアリールアミノ基、または置換または無置換のビニル基、または置換ま
たは無置換のアリール基、または置換または無置換の複素環基、のいずれかを表す。また
、RとR10、R10とR11、R11とR12はそれぞれ互いに結合し、縮合環を形
成してもよい。さらに、Aは構造式(7)または構造式(8)で表される置換基を表し、
Bは水素原子、または構造式(7)または構造式(8)で表される置換基を表す。)
【0031】
本発明の一は、下記一般式(9)で表されるキノキサリン誘導体である。
【0032】
【化5】

【0033】
(式中、Aは構造式(10)または構造式(11)で表される置換基を表し、Bは水素原
子、または構造式(10)または構造式(11)で表される置換基を表す。)
【0034】
本発明の一は、下記構造式(14)で表されるキノキサリン誘導体である。
【0035】
【化6】

【0036】
本発明の一は、下記構造式(39)で表されるキノキサリン誘導体である。
【0037】
【化7】

【0038】
また、本発明の一は、上記キノキサリン誘導体を用いた発光素子である。具体的には、
一対の電極間に上述したキノキサリン誘導体を有することを特徴とする発光素子である。
【0039】
また、本発明の一は、一対の電極間に発光層を有し、発光層は上述したキノキサリン誘
導体を有することを特徴とする発光素子である。
【0040】
また、本発明の一は、一対の電極間に発光層を有し、発光層は上述したキノキサリン誘
導体と蛍光発光性物質を有することを特徴とする発光素子である。
【0041】
また、本発明の一は、一対の電極間に発光層を有し、発光層は上述したキノキサリン誘
導体と燐光発光性物質を有することを特徴とする発光素子である。
【0042】
上記構成において、燐光発光性物質は、一般式(101)で表される構造を含む有機金
属錯体であることが好ましい。
【化8】

(式中、R〜Rは、それぞれ、水素、ハロゲン元素、アシル基、アルキル基、アルコ
キシル基、アリール基、シアノ基、複素環基のいずれかを表す。Arはアリール基または
複素環基を表す。また、Mは第9族元素または第10族元素を表す。)
【0043】
また、上記燐光発光性物質としては、一般式(104)で表される有機金属錯体である
ことが好ましい。
【化9】

(式中、R〜Rは、それぞれ、水素、ハロゲン元素、アシル基、アルキル基、アルコ
キシル基、アリール基、シアノ基、複素環基のいずれかを表す。Arはアリール基または
複素環基を表す。Mは第9族元素または第10族元素を表す。Mが第9族元素のときはn
=2、Mが第10族元素のときはn=1である。Lは、ベータジケトン構造を有するモノ
アニオン性の配位子、またはカルボキシル基を有するモノアニオン性の二座キレート配位
子、またはフェノール性水酸基を有するモノアニオン性の二座キレート配位子、のいずれ
かを表す。)
【0044】
特に、一般式(105)で表される有機金属錯体であることが好ましい。
【化10】

(式中、R11は炭素数1〜4のアルキル基のいずれかを表す。また、R12〜R15
、それぞれ、水素、ハロゲン元素、アシル基、アルキル基、アルコキシル基、アリール基
、シアノ基、複素環基のいずれかを表す。また、R16〜R19は、それぞれ、水素、ア
シル基、アルキル基、アルコキシル基、アリール基、複素環基、電子吸引性置換基のいず
れかを表す。また、Mは第9族元素または第10族元素を表す。Mが第9族元素のときは
n=2、Mが第10族元素のときはn=1である。Lは、ベータジケトン構造を有するモ
ノアニオン性の配位子、またはカルボキシル基を有するモノアニオン性の二座キレート配
位子、またはフェノール性水酸基を有するモノアニオン性の二座キレート配位子、のいず
れかを表す。)
【0045】
また特に、一般式(106)で表される有機金属錯体であることが好ましい。
【化11】

(式中、R22〜R34は、それぞれ、水素、ハロゲン元素、アシル基、アルキル基、ア
ルコキシル基、アリール基、シアノ基、複素環基、電子吸引性置換基のいずれかを表す。
Mは第9族元素または第10族元素を表す。また、Mは第9族元素または第10族元素を
表す。Mが第9族元素のときはn=2、Mが第10族元素のときはn=1である。Lは、
ベータジケトン構造を有するモノアニオン性の配位子、またはカルボキシル基を有するモ
ノアニオン性の二座キレート配位子、またはフェノール性水酸基を有するモノアニオン性
の二座キレート配位子、のいずれかを表す。)
【0046】
また、上記構成において、燐光発光性物質の発光スペクトルのピークが560nm以上
700nm以下であることが好ましい。
【0047】
また、本発明の発光装置は、一対の電極間に発光物質を含む層を有し、発光物質を含む
層に、上記のキノキサリン誘導体を含む発光素子と、発光素子の発光を制御する制御手段
とを有することを特徴とする。なお、本明細書中における発光装置とは、画像表示デバイ
ス、発光デバイス、もしくは光源(照明装置含む)を含む。また、パネルにコネクター、
例えばFPC(Flexible printed circuit)もしくはTAB(
Tape Automated Bonding)テープもしくはTCP(Tape C
arrier Package)が取り付けられたモジュール、TABテープやTCPの
先にプリント配線板が設けられたモジュール、または発光素子にCOG(Chip On
Glass)方式によりIC(集積回路)が直接実装されたモジュールも全て発光装置
に含むものとする。
【0048】
また、本発明の発光素子を表示部に用いた電子機器も本発明の範疇に含めるものとする
。したがって、本発明の電子機器は、表示部を有し、表示部は、上述した発光素子と発光
素子の発光を制御する制御手段とを備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0049】
本発明のキノキサリン誘導体は、バイポーラ性であり、電子輸送性および正孔輸送性の
双方に優れている。また、本発明のキノキサリン誘導体はガラス転移点が高く、優れた耐
熱性を有する。また、本発明のキノキサリン誘導体は、電気化学的な酸化や還元に対して
安定である。
【0050】
さらに、本発明のキノキサリン誘導体はバイポーラ性を有しているため、発光素子に用
いることで、駆動電圧が低く、消費電力の小さい発光素子および発光装置を得ることがで
きる。
【0051】
また、本発明のキノキサリン誘導体は高いガラス転移点を有するため、発光素子に用い
ることで、耐熱性の高い発光素子および発光装置を得ることができる。
【0052】
また、本発明のキノキサリン誘導体は電気化学的な酸化や還元に対して安定であるため
、発光素子に用いることで、長寿命な発光素子および発光装置を得ることができる。
【0053】
また、本発明のキノキサリン誘導体を用いることで、消費電力が小さく、耐熱性が高く
、長寿命な電子機器を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0054】
【図1】本発明の発光素子を説明する図。
【図2】本発明の発光素子を説明する図。
【図3】本発明の発光装置を説明する図。
【図4】本発明の発光装置を説明する図。
【図5】本発明の電子機器を説明する図。
【図6】本発明の電子機器を説明する図。
【図7】本発明の有機半導体素子を説明する断面図。
【図8】本発明のキノキサリン誘導体である2,3−ビス{4−[N−(4−ビフェニリル)−N−フェニルアミノ]フェニル}キノキサリンのH NMRチャートを示す図。
【図9】本発明のキノキサリン誘導体である2,3−ビス{4−[N−(4−ビフェニリル)−N−フェニルアミノ]フェニル}キノキサリンのトルエン溶液中の吸収スペクトルを示す図。
【図10】本発明のキノキサリン誘導体である2,3−ビス{4−[N−(4−ビフェニリル)−N−フェニルアミノ]フェニル}キノキサリンの薄膜の吸収スペクトルを示す図。
【図11】本発明のキノキサリン誘導体である2,3−ビス{4−[N−(4−ビフェニリル)−N−フェニルアミノ]フェニル}キノキサリンのトルエン溶液中の励起スペクトルおよび発光スペクトルを示す図。
【図12】本発明のキノキサリン誘導体である2,3−ビス{4−[N−(4−ビフェニリル)−N−フェニルアミノ]フェニル}キノキサリンの薄膜の発光スペクトルを示す図。
【図13】本発明のキノキサリン誘導体である2,3−ビス{4−[N−(4−ビフェニリル)−N−フェニルアミノ]フェニル}キノキサリンの酸化側のCV測定結果を示す図。
【図14】本発明のキノキサリン誘導体である2,3−ビス{4−[N−(4−ビフェニリル)−N−フェニルアミノ]フェニル}キノキサリンの還元側のCV測定結果を示す図。
【図15】本発明のキノキサリン誘導体である2,3−ビス{4−[N−(4−ビフェニリル)−N−フェニルアミノ]フェニル}キノキサリンのDSCチャートを示す図。
【図16】本発明のキノキサリン誘導体である2,3−ビス{4−[N,N−ジ(4−ビフェニリル)アミノ]フェニル}キノキサリンのH NMRチャートを示す図。
【図17】本発明のキノキサリン誘導体である2,3−ビス{4−[N,N−ジ(4−ビフェニリル)アミノ]フェニル}キノキサリンのトルエン溶液中の吸収スペクトルを示す図。
【図18】実施例3の発光素子の電流密度―輝度特性を示す図。
【図19】実施例3の発光素子の電圧―輝度特性を示す図。
【図20】実施例3の発光素子の輝度―電流効率特性を示す図。
【図21】本発明のキノキサリン誘導体である2,3−ビス{4−[N,N−ジ(4−ビフェニリル)アミノ]フェニル}キノキサリンの酸化側のCV測定結果を示す図。
【図22】本発明のキノキサリン誘導体である2,3−ビス{4−[N,N−ジ(4−ビフェニリル)アミノ]フェニル}キノキサリンの還元側のCV測定結果を示す図。
【図23】本発明のキノキサリン誘導体である2,3−ビス{4−[N,N−ジ(4−ビフェニリル)アミノ]フェニル}キノキサリンのDSCチャートを示す図。
【図24】実施例4の発光素子の電流密度―輝度特性を示す図。
【図25】実施例4の発光素子の電圧―輝度特性を示す図。
【図26】実施例4の発光素子の輝度―電流効率特性を示す図。
【図27】実施例5の発光素子の電流密度―輝度特性を示す図。
【図28】実施例5の発光素子の電圧―輝度特性を示す図。
【図29】実施例5の発光素子の輝度―電流効率特性を示す図。
【図30】実施例6の発光素子の電流密度―輝度特性を示す図。
【図31】実施例6の発光素子の電圧―輝度特性を示す図。
【図32】実施例6の発光素子の輝度―電流効率特性を示す図。
【図33】実施例3の発光素子の発光スペクトルを示す図。
【図34】実施例4の発光素子の発光スペクトルを示す図。
【図35】実施例5の発光素子の発光スペクトルを示す図。
【図36】実施例6の発光素子の発光スペクトルを示す図。
【図37】本発明の発光素子を説明する図。
【図38】実施例7の発光素子の電流密度―輝度特性を示す図。
【図39】実施例7の発光素子の電圧―輝度特性を示す図。
【図40】実施例7の発光素子の輝度―電流効率特性を示す図。
【図41】実施例7の発光素子の発光スペクトルを示す図。
【発明を実施するための形態】
【0055】
以下、本発明の実施の態様について図面を用いて詳細に説明する。但し、本発明は以下
の説明に限定されず、本発明の趣旨及びその範囲から逸脱することなくその形態及び詳細
を様々に変更し得ることは当業者であれば容易に理解される。従って、本発明は以下に示
す実施の形態の記載内容に限定して解釈されるものではない。
【0056】
(実施の形態1)
本発明のキノキサリン誘導体は、下記一般式(1)で表される。
【0057】
【化12】

【0058】
(式中、R〜R12はそれぞれ同一でも異なっていてもよく、水素原子、またはハロゲ
ン原子、またはアルキル基、またはアルコキシ基、またはアシル基、またはジアルキルア
ミノ基、またはジアリールアミノ基、または置換または無置換のビニル基、または置換ま
たは無置換のアリール基、または置換または無置換の複素環基、のいずれかを表す。また
、RとR10、R10とR11、R11とR12はそれぞれ互いに結合し、縮合環を形
成してもよい。さらに、Arは置換または無置換のビフェニル基、または置換または無
置換のターフェニル基を表し、Arは置換または無置換のフェニル基、置換または無置
換のビフェニル基、置換または無置換のターフェニル基、置換または無置換の単環の複素
環基を表す。)
【0059】
上記一般式(1)において、置換基を有するビフェニル基、置換基を有するターフェニ
ル基、置換基を有する単環の複素環基は、それぞれ置換基として、アルキル基またはフェ
ニル基を有することが好ましい。アルキル基としては、メチル基、エチル基、イソプロピ
ル基、tert−ブチル基等が挙げられる。
【0060】
特に、下記一般式(2)で表されるキノキサリン誘導体であることが好ましい。
【0061】
【化13】

【0062】
(式中、R〜R12はそれぞれ同一でも異なっていてもよく、水素原子、またはハロゲ
ン原子、またはアルキル基、またはアルコキシ基、またはアシル基、またはジアルキルア
ミノ基、またはジアリールアミノ基、または置換または無置換のビニル基、または置換ま
たは無置換のアリール基、または置換または無置換の複素環基、のいずれかを表す。また
、RとR10、R10とR11、R11とR12はそれぞれ互いに結合し、縮合環を形
成してもよい。さらに、Arは置換または無置換のビフェニル基、または置換または無
置換のターフェニル基を表し、Arは置換または無置換のフェニル基、置換または無置
換のビフェニル基、置換または無置換のターフェニル基、置換または無置換の単環の複素
環基を表す。)
【0063】
また、特に下記一般式(3)で表されるキノキサリン誘導体であることが好ましい。
【0064】
【化14】

【0065】
(式中、R〜R12はそれぞれ同一でも異なっていてもよく、水素原子、またはハロゲ
ン原子、またはアルキル基、またはアルコキシ基、またはアシル基、またはジアルキルア
ミノ基、またはジアリールアミノ基、または置換または無置換のビニル基、または置換ま
たは無置換のアリール基、または置換または無置換の複素環基、のいずれかを表す。また
、RとR10、R10とR11、R11とR12はそれぞれ互いに結合し、縮合環を形
成してもよい。さらに、Aは構造式(4)または構造式(5)で表される置換基を表し、
Arは置換または無置換のフェニル基、置換または無置換のビフェニル基、置換または
無置換のターフェニル基、置換または無置換の単環の複素環基を表す。)
【0066】
また特に、下記一般式(6)で表されるキノキサリン誘導体であることが好ましい。
【0067】
【化15】

【0068】
(式中、R〜R12はそれぞれ同一でも異なっていてもよく、水素原子、またはハロゲ
ン原子、またはアルキル基、またはアルコキシ基、またはアシル基、またはジアルキルア
ミノ基、またはジアリールアミノ基、または置換または無置換のビニル基、または置換ま
たは無置換のアリール基、または置換または無置換の複素環基、のいずれかを表す。また
、RとR10、R10とR11、R11とR12はそれぞれ互いに結合し、縮合環を形
成してもよい。さらに、Aは構造式(7)または構造式(8)で表される置換基を表し、
Bは水素原子、または構造式(7)または構造式(8)で表される置換基を表す。)
【0069】
また特に、下記一般式(9)で表されるキノキサリン誘導体であることが好ましい。
【0070】
【化16】

【0071】
(式中、Aは構造式(10)または構造式(11)で表される置換基を表し、Bは水素原
子、または構造式(10)または構造式(11)で表される置換基を表す。)
【0072】
また、本発明のキノキサリン誘導体の具体例としては、構造式(14)〜(65)に示
されるキノキサリン誘導体を挙げることができる。ただし、本発明はこれらに限定されな
い。
【0073】
【化17】

【0074】
【化18】

【0075】
【化19】

【0076】
【化20】

【0077】
【化21】

【0078】
【化22】

【0079】
【化23】

【0080】
【化24】

【0081】
【化25】

【0082】
【化26】

【0083】
【化27】

【0084】
【化28】

【0085】
【化29】

【0086】
【化30】

【0087】
【化31】

【0088】
【化32】

【0089】
【化33】

【0090】
【化34】

【0091】
【化35】

【0092】
【化36】

【0093】
【化37】

【0094】
【化38】

【0095】
【化39】

【0096】
【化40】

【0097】
【化41】

【0098】
【化42】

【0099】
【化43】

【0100】
【化44】

【0101】
【化45】

【0102】
【化46】

【0103】
【化47】

【0104】
【化48】

【0105】
【化49】

【0106】
【化50】

【0107】
【化51】

【0108】
【化52】

【0109】
【化53】

【0110】
【化54】

【0111】
【化55】

【0112】
【化56】

【0113】
【化57】

【0114】
【化58】

【0115】
【化59】

【0116】
【化60】

【0117】
【化61】

【0118】
【化62】

【0119】
【化63】

【0120】
【化64】

【0121】
【化65】

【0122】
【化66】

【0123】
【化67】

【0124】
【化68】

【0125】
本発明のキノキサリン誘導体の合成方法としては、種々の反応の適用が可能である。例
えば、下記の反応スキーム(A−1)および(A−2)に示す合成反応を行うことによっ
て製造することができる。
【0126】
【化69】

【0127】
【化70】

【0128】
まず、ハロゲン原子Xで置換されたジベンジルと1、2−ジアミノベンゼンとの縮合反
応によってキノキサリン骨格を形成する。ハロゲン原子としては臭素、ヨウ素、塩素が挙
げられるが、取扱の容易さ、適度な反応性を考慮すると臭素が好ましい。
【0129】
得られるハロゲン置換キノキサリンに対し、塩基存在下、2当量のジアリールアミン(
Ar−NH−Ar)をパラジウム触媒、あるいは一価の銅を用いてカップリングする
ことで、目的とする本発明のキノキサリン誘導体を合成することができる。塩基は炭酸カ
リウム、炭酸ナトリウムなどの無機塩基や、金属アルコキシドなどの有機塩基などを用い
ることができる。パラジウム触媒としては酢酸パラジウム、塩化パラジウム、ビス(ジベ
ンジリデンアセトン)パラジウムなどを用いることができる。
【0130】
なお、上記スキーム中のジアリールアミン(Ar−NH−Ar)は、例えば以下の
ようなスキームで合成することができる。
【0131】
まず、Arがビフェニル基の場合、下記合成スキーム(A−3)に示すように、2位
または3位または4位がハロゲンで置換されたハロゲン置換ビフェニルに対し、塩基存在
下、1等量のアリールアミン(Ar−NH)をパラジウム触媒、あるいは一価の銅を
用いてカップリングすることで、目的とするアリールアミン(Ar−NH−Ar;A
はビフェニル基)を得ることができる。塩基は炭酸カリウム、炭酸ナトリウムなどの
無機塩基や、金属アルコキシドなどの有機塩基などを用いることができる。パラジウム触
媒としては酢酸パラジウム、塩化パラジウム、ビス(ジベンジリデンアセトン)パラジウ
ムなどを用いることができる。
【0132】
【化71】

【0133】
また、Arがビフェニル基で、かつArもビフェニル基の場合、下記合成スキーム
(A−4)に示すように、二つのフェニル基がいずれもハロゲン置換されたジフェニルア
ミンに対し、塩基存在下、2当量のフェニルボロン酸をパラジウム触媒やニッケル触媒を
用いてカップリングすることで、目的とするアリールアミン(Ar−NH−Ar;A
、Ar共にビフェニル基)を得ることもできる。塩基は炭酸カリウム、炭酸ナトリ
ウムなどの無機塩基や、金属アルコキシドなどの有機塩基などを用いることができる。パ
ラジウム触媒としては酢酸パラジウム、塩化パラジウム、ビス(ジベンジリデンアセトン
)パラジウムなどを用いることができる。この方法の場合、人体に有害な物質である4−
アミノビフェニルを用いることなく、N,N−ジ(4−ビフェニリル)アミンを合成する
ことができるというメリットがある。
【0134】
【化72】

【0135】
一方、Arがターフェニル基であるアリールアミン(Ar−NH−Ar)を合成
する場合、下記合成スキーム(A−5)に示すように、まず、2位または3位または4位
がハロゲン置換されたアニリンに対し、塩基存在下、2位または3位または4位がボロン
酸基で置換された1当量のビフェニルボロン酸をパラジウム触媒やニッケル触媒を用いて
カップリングすることで、置換位置の異なる種々のターフェニルアミンを合成できる。そ
して、下記合成スキーム(A−6)に示すように、ハロゲン置換されたアレーン(Ar
−X)に対し、塩基存在下、上記で得られたターフェニルアミン1等量をパラジウム触媒
、あるいは一価の銅を用いてカップリングすることで、目的とするアリールアミン(Ar
−NH−Ar;Arはターフェニル基)を得ることができる。塩基は炭酸カリウム
、炭酸ナトリウムなどの無機塩基や、金属アルコキシドなどの有機塩基などを用いること
ができる。パラジウム触媒としては酢酸パラジウム、塩化パラジウム、ビス(ジベンジリ
デンアセトン)パラジウムなどを用いることができる。
【0136】
【化73】

【0137】
また、Arがターフェニル基の場合で、かつターフェニル基の中心のベンゼン環がア
ミノ基で置換されている場合は、下記合成スキーム(A−7)に示すように、まず2箇所
がハロゲン置換されたアニリンに対し、塩基存在下、2当量のフェニルボロン酸をパラジ
ウム触媒やニッケル触媒を用いてカップリングすることで、ターフェニル基の中心のベン
ゼン環がアミノ基で置換されたターフェニルアミンを合成する。そして、下記合成スキー
ム(A−8)に示すように、ハロゲン置換されたアレーン(Ar−X)に対し、塩基存
在下、得られたターフェニルアミン1等量をパラジウム触媒、あるいは一価の銅を用いて
カップリングすることで、目的とするアリールアミン(Ar−NH−Ar;Ar
ターフェニル基)を得ることができる。塩基は炭酸カリウム、炭酸ナトリウムなどの無機
塩基や、金属アルコキシドなどの有機塩基などを用いることができる。パラジウム触媒と
しては酢酸パラジウム、塩化パラジウム、ビス(ジベンジリデンアセトン)パラジウムな
どを用いることができる。
【0138】
【化74】

【0139】
なお、本発明のキノキサリン誘導体は、上記合成スキーム(A−2)に示す合成反応に
より沈殿物として析出するため、再結晶により精製することが可能である。すなわち、抽
出等に伴う不純物の混入を避けることができるため、複雑なあるいは煩雑な精製過程を必
要としない。したがって、純度の高い状態で本発明のキノキサリン誘導体を得ることがで
きる。
【0140】
また、本発明のキノキサリン誘導体は、バイポーラ性であり、電子輸送性および正孔輸
送性の双方に優れている。よって、本発明のキノキサリン誘導体をエレクトロニクスデバ
イスに用いることにより、良好な電気特性を得ることができる。また、本発明のキノキサ
リン誘導体はガラス転移点が高く、耐熱性に優れているため、本発明のキノキサリン誘導
体をエレクトロニクスデバイスに用いることにより、耐熱性に優れたエレクトロニクスデ
バイスを得ることができる。また、本発明のキノキサリン誘導体は電気化学的な酸化や還
元に対して安定であるため、本発明のキノキサリン誘導体をエレクトロニクスデバイスに
用いることにより、長寿命なエレクトロニクスデバイスを得ることができる。
【0141】
(実施の形態2)
本発明のキノキサリン誘導体を用いた発光素子の一態様について図1(A)を用いて以
下に説明する。
【0142】
本発明の発光素子は、一対の電極間に複数の層を有する。当該複数の層は、電極から離
れたところに発光領域が形成されるように、つまり電極から離れた部位でキャリア(担体
)の再結合が行われるように、キャリア注入性の高い物質やキャリア輸送性の高い物質か
らなる層を組み合わせて積層されたものである。
【0143】
本形態において、発光素子は、第1の電極102と、第1の電極102の上に順に積層
した第1の層103、第2の層104、第3の層105、第4の層106と、さらにその
上に設けられた第2の電極107とから構成されている。なお、本形態では第1の電極1
02は陽極として機能し、第2の電極107は陰極として機能するものとして以下説明を
する。
【0144】
基板101上は発光素子の支持体として用いられる。基板101としては、例えばガラ
ス、またはプラスチックなどを用いることができる。なお、発光素子を作製工程において
支持体として機能するものであれば、これら以外のものでもよい。
【0145】
第1の電極102としては、仕事関数の大きい(具体的には4.0eV以上)金属、合
金、導電性化合物、およびこれらの混合物などを用いることが好ましい。具体的には、例
えば、インジウム錫酸化物(ITO:Indium Tin Oxide)、珪素を含有
したインジウム錫酸化物、酸化インジウムに2〜20wt%の酸化亜鉛(ZnO)を混合
したIZO(Indium Zinc Oxide)、酸化タングステンを0.5〜5w
t%、酸化亜鉛を0.1〜1wt%含有したインジウム酸化物(IWZO)等が挙げられ
る。これらの導電性金属酸化物膜は、通常スパッタにより成膜されるが、ゾル−ゲル法な
どを応用して作製しても構わない。その他、金(Au)、白金(Pt)、ニッケル(Ni
)、タングステン(W)、クロム(Cr)、モリブデン(Mo)、鉄(Fe)、コバルト
(Co)、銅(Cu)、パラジウム(Pd)、または金属材料の窒化物(例えば、窒化チ
タン:TiN)等が挙げられる。
【0146】
第1の層103は、正孔注入性の高い物質を含む層である。モリブデン酸化物(MoO
x)やバナジウム酸化物(VOx)、ルテニウム酸化物(RuOx)、タングステン酸化
物(WOx)、マンガン酸化物(MnOx)等を用いることができる。この他、フタロシ
アニン(略称:HPc)や銅フタロシアニン(CuPC)等のフタロシアニン系の化合
物、或いはポリ(エチレンジオキシチオフェン)/ポリ(スチレンスルホン酸)(PED
OT/PSS)等の高分子等によっても第1の層103を形成することができる。
【0147】
また、第1の層103に、有機化合物と無機化合物とを複合してなる複合材料を用いて
もよい。特に、有機化合物と、有機化合物に対して電子受容性を示す無機化合物とを含む
複合材料は、有機化合物と無機化合物との間で電子の授受が行われ、キャリア密度が増大
するため、正孔注入性、正孔輸送性に優れている。この場合、有機化合物としては、正孔
の輸送に優れた材料であることが好ましい。具体的には、芳香族アミン系の有機化合物ま
たはカルバゾール系の有機化合物であることが好ましい。また、有機化合物として、芳香
族炭化水素を用いてもよい。無機化合物としては、有機化合物に対し電子受容性を示す物
質であればよく、具体的には、遷移金属の酸化物であることが好ましい。例えば、チタン
酸化物(TiOx)、バナジウム酸化物(VOx)、モリブデン酸化物(MoOx)、タ
ングステン酸化物(WOx)、レニウム酸化物(ReOx)、ルテニウム酸化物(RuO
x)、クロム酸化物(CrOx)、ジルコニウム酸化物(ZrOx)、ハフニウム酸化物
(HfOx)、タンタル酸化物(TaOx)、銀酸化物(AgOx)、マンガン酸化物(
MnOx)等の金属酸化物を用いることができる。第1の層103に有機化合物と無機化
合物とを複合してなる複合材料を用いた場合、第1の電極102とオーム接触をすること
が可能となるため、仕事関数に関わらず第1の電極を形成する材料を選ぶことができる。
【0148】
第2の層104を形成する物質としては、正孔輸送性の高い物質、具体的には、芳香族
アミン系(すなわち、ベンゼン環−窒素の結合を有するもの)の化合物であることが好ま
しい。広く用いられている材料として、4,4’−ビス[N−(3−メチルフェニル)−
N−フェニルアミノ]ビフェニル、その誘導体である4,4’−ビス[N−(1−ナフチ
ル)−N−フェニルアミノ]ビフェニル(以下、NPBと記す)、4,4’,4’’−ト
リス(N,N−ジフェニル−アミノ)トリフェニルアミン、4,4’,4’’−トリス[
N−(3−メチルフェニル)−N−フェニルアミノ]トリフェニルアミンなどのスターバ
ースト型芳香族アミン化合物が挙げられる。ここに述べた物質は、主に10−6cm
Vs以上の正孔移動度を有する物質である。但し、電子よりも正孔の輸送性の高い物質で
あれば、これら以外のものを用いてもよい。なお、第2の層104は、単層のものだけで
なく、上記物質の混合層、あるいは二層以上積層したものであってもよい。
【0149】
第3の層105は、発光性の物質を含む層である。本実施の形態では、第3の層105
は実施の形態1で示した本発明のキノキサリン誘導体を含む。本発明のキノキサリン誘導
体は、青〜青緑色の発光を示すため、発光性物質として発光素子に好適に用いることがで
きる。
【0150】
第4の層106は、電子輸送性の高い物質、例えばトリス(8−キノリノラト)アルミ
ニウム(略称:Alq)、トリス(5−メチル−8−キノリノラト)アルミニウム(略称
:Almq)、ビス(10−ヒドロキシベンゾ[h]−キノリナト)ベリリウム(略称
:BeBq)、ビス(2−メチル−8−キノリノラト)−4−フェニルフェノラト−ア
ルミニウム(略称:BAlq)など、キノリン骨格またはベンゾキノリン骨格を有する金
属錯体等からなる層である。また、この他ビス[2−(2−ヒドロキシフェニル)−ベン
ゾオキサゾラト]亜鉛(略称:Zn(BOX))、ビス[2−(2−ヒドロキシフェニ
ル)−ベンゾチアゾラト]亜鉛(略称:Zn(BTZ))などのオキサゾール系、チア
ゾール系配位子を有する金属錯体なども用いることができる。さらに、金属錯体以外にも
、2−(4−ビフェニリル)−5−(4−tert−ブチルフェニル)−1,3,4−オ
キサジアゾール(略称:PBD)や、1,3−ビス[5−(p−tert−ブチルフェニ
ル)−1,3,4−オキサジアゾール−2−イル]ベンゼン(略称:OXD−7)、3−
(4−tert−ブチルフェニル)−4−フェニル−5−(4−ビフェニリル)−1,2
,4−トリアゾール(略称:TAZ)、3−(4−tert−ブチルフェニル)−4−(
4−エチルフェニル)−5−(4−ビフェニリル)−1,2,4−トリアゾール(略称:
p−EtTAZ)、バソフェナントロリン(略称:BPhen)、バソキュプロイン(略
称:BCP)なども用いることができる。ここに述べた物質は、主に10−6cm/V
s以上の電子移動度を有する物質である。なお、正孔よりも電子の輸送性の高い物質であ
れば、上記以外の物質を第4の層106として用いても構わない。また、第4の層106
は、単層のものだけでなく、上記物質からなる層が二層以上積層したものとしてもよい。
【0151】
第2の電極107を形成する物質としては、仕事関数の小さい(具体的には3.8eV
以下)金属、合金、電気伝導性化合物、およびこれらの混合物などを用いることができる
。このような陰極材料の具体例としては、元素周期表の1族または2族に属する元素、す
なわちリチウム(Li)やセシウム(Cs)等のアルカリ金属、およびマグネシウム(M
g)、カルシウム(Ca)、ストロンチウム(Sr)等のアルカリ土類金属、およびこれ
らを含む合金(MgAg、AlLi)、ユウロピウム(Eu)、イッテルビウム(Yb)
等の希土類金属およびこれらを含む合金等が挙げられる。しかしながら、第2の電極10
7と発光層との間に、電子注入を促す機能を有する層を、当該第2の電極と積層して設け
ることにより、仕事関数の大小に関わらず、Al、Ag、ITO、珪素を含むITO等様
々な導電性材料を第2の電極107として用いることができる。
【0152】
なお、電子注入を促す機能を有する層としては、フッ化リチウム(LiF)、フッ化セ
シウム(CsF)、フッ化カルシウム(CaF)等のようなアルカリ金属又はアルカリ
土類金属の化合物を用いることができる。また、この他、電子輸送性を有する物質からな
る層中にアルカリ金属又はアルカリ土類金属、アルカリ金属化合物、アルカリ土類金属化
合物を含有させたもの、例えばAlq中に酸化リチウム(LiOx)や窒化マグネシウム
(MgOx)、マグネシウム(Mg)、リチウム(Li)を含有させたもの等を用いるこ
とができる。
【0153】
また、第1の層103、第2の層104、第3の層105、第4の層106の形成方法
は、蒸着法の他、例えばインクジェット法またはスピンコート法など種々の方法を用いて
も構わない。また各電極または各層ごとに異なる成膜方法を用いて形成しても構わない。
【0154】
以上のような構成を有する本発明の発光素子は、第1の電極102と第2の電極107
との間に生じた電位差により電流が流れ、発光性の高い物質を含む層である第3の層10
5において正孔と電子とが再結合し、発光するものである。つまり第3の層105に発光
領域が形成されるような構成となっている。
【0155】
発光は、第1の電極102または第2の電極107のいずれか一方または両方を通って
外部に取り出される。従って、第1の電極102または第2の電極107のいずれか一方
または両方は、透光性を有する物質で成る。第1の電極102のみが透光性を有する物質
からなるものである場合、図1(A)に示すように、発光は第1の電極102を通って基
板側から取り出される。また、第2の電極107のみが透光性を有する物質からなるもの
である場合、図1(B)に示すように、発光は第2の電極107を通って基板と逆側から
取り出される。第1の電極102および第2の電極107がいずれも透光性を有する物質
からなるものである場合、図1(C)に示すように、発光は第1の電極102および第2
の電極107を通って、基板側および基板と逆側の両方から取り出される。
【0156】
なお第1の電極102と第2の電極107との間に設けられる層の構成は、上記のもの
には限定されない。発光領域と金属とが近接することによって生じる消光が抑制されるよ
うに、第1の電極102および第2の電極107から離れた部位に正孔と電子とが再結合
する発光領域を設けた構成であれば、上記以外のものでもよい。
【0157】
つまり、層の積層構造については特に限定されず、電子輸送性の高い物質または正孔輸送
性の高い物質、電子注入性の高い物質、正孔注入性の高い物質、バイポーラ性(電子及び
正孔の輸送性の高い物質)の物質、正孔ブロック材料等から成る層を、本発明のキノキサ
リン誘導体と自由に組み合わせて構成すればよい。
【0158】
図2に示す発光素子は、陰極として機能する第1の電極302の上に電子輸送性の高い
物質からなる第1の層303、発光性物質を含む第2の層304、正孔輸送性の高い物質
からなる第3の層305、正孔注入性の高い物質からなる第4の層306、陽極として機
能する第2の電極307とが順に積層された構成となっている。なお、301は基板であ
る。
【0159】
本実施の形態においては、ガラス、プラスチックなどからなる基板上に発光素子を作製
している。一基板上にこのような発光素子を複数作製することで、パッシブ型の発光装置
を作製することができる。また、ガラス、プラスチックなどからなる基板上に、例えば薄
膜トランジスタ(TFT)を形成し、TFTと電気的に接続された電極上に発光素子を作
製してもよい。これにより、TFTによって発光素子の駆動を制御するアクティブマトリ
クス型の発光装置を作製できる。なお、TFTの構造は、特に限定されない。スタガ型の
TFTでもよいし逆スタガ型のTFTでもよい。また、TFTに用いる半導体の結晶性に
ついても特に限定されず、非晶質半導体を用いてもよいし、結晶性半導体を用いてもよい
。また、TFTアレイ基板に形成される駆動用回路についても、N型およびP型のTFT
からなるものでもよいし、若しくはN型またはP型のいずれか一方からのみなるものであ
ってもよい。
【0160】
本発明のキノキサリン誘導体は、バイポーラ性を有し、また発光性を有する材料である
ため、本実施の形態に示すように、他の発光性物質を含有することなく発光層として用い
ることが可能である。
【0161】
また、バイポーラ性であるため、積層した膜の界面に発光領域が偏りにくく、エキサイ
プレックス等の相互作用に起因した発光スペクトルの変化や、発光効率の低下が少ない良
好な特性を有する発光素子を作製できる。
【0162】
また、成膜中に含有される微結晶成分が非常に少なく、成膜した膜に微結晶成分が少な
く、アモルファス状態の膜を得ることができる。つまり、膜質がよいため、電界集中によ
る絶縁破壊などの素子不良の少ない良好な発光素子を作製することができる。
【0163】
また、本発明のキノキサリン誘導体は、バイポーラ性であり、キャリア輸送性(電子輸
送性および正孔輸送性)に優れた材料であるため、発光素子に用いることで、発光素子の
駆動電圧を低減することができ、消費電力の低減に繋がる。
【0164】
また、本発明のキノキサリン誘導体はガラス転移点が高いため、発光素子に用いること
で、耐熱性に優れた発光素子を得ることができる。
【0165】
また、本発明のキノキサリン誘導体は、酸化反応および引き続く還元反応、還元反応お
よび引き続く酸化反応を繰り返しても安定である。つまり、電気化学的に安定である。よ
って、本発明のキノキサリン誘導体を発光素子に用いることにより、長寿命な発光素子を
得ることができる。
【0166】
なお、本発明のキノキサリン誘導体は、溶液状態において青から青緑色の短波長域の発
光を示すが、固体状態においても溶液の状態と同様に、短波長域の発光を示す。このこと
は、以下のように説明される。本発明のキノキサリン誘導体においては、アミノ基に対し
、ナフチル基やフルオレニル基などの平面的な縮合芳香環ではなく、ねじれを有するビフ
ェニル基が結合している。そして、そのビフェニル骨格のねじれのために固体状態で会合
しにくくなっており、固体状態での発光色と溶液状態での発光色がほぼ一致するようにな
ったと考えられる。すなわち、本発明のキノキサリン誘導体は、溶液状態のときの発光ス
ペクトルのピークと固体状態のときの発光スペクトルのピークがほぼ変わらないという特
徴を有しており、本発明のキノキサリン誘導体を薄膜(固体状態)で発光素子に用いても
、短波長の発光を得ることができる。
【0167】
(実施の形態3)
本実施の形態では、実施の形態2で示した構成と異なる構成の発光素子について説明す
る。
【0168】
実施の形態2で示した第3の層105を、本発明のキノキサリン誘導体を他の物質に分
散させた構成とすることで、本発明のキノキサリン誘導体からの発光を得ることができる
。本発明のキノキサリン誘導体は青〜青緑色の発光を示すため、青〜青緑色の発光を示す
発光素子を得ることができる。
【0169】
ここで、本発明のキノキサリン誘導体を分散させる物質としては、種々の材料を用いる
ことができ、実施の形態2で述べた正孔輸送の高い物質や電子輸送性の高い物質の他、4
,4’−ジ(N−カルバゾリル)−ビフェニル(略称:CBP)や、2,2’,2”−(
1,3,5−ベンゼントリ−イル)−トリス[1−フェニル−1H−ベンゾイミダゾール
](略称:TPBI)、9,10−ジ(2−ナフチル)アントラセン(略称:DNA)、
2−tert−ブチル−9,10−ジ(2−ナフチル)アントラセン(略称:t−BuD
NA)などが挙げられる。
【0170】
本発明のキノキサリン誘導体は、バイポーラ性であり、キャリア輸送性(電子輸送性お
よび正孔輸送性)に優れた材料であるため、発光素子に用いることで、発光素子の駆動電
圧を低減することができ、消費電力の低減に繋がる。
【0171】
また、本発明のキノキサリン誘導体はガラス転移点が高いため、発光素子に用いること
で、耐熱性に優れた発光素子を得ることができる。
【0172】
また、本発明のキノキサリン誘導体は、酸化反応および引き続く還元反応、還元反応お
よび引き続く酸化反応を繰り返しても安定である。つまり、電気化学的に安定である。よ
って、本発明のキノキサリン誘導体を発光素子に用いることにより、長寿命な発光素子を
得ることができる。
【0173】
なお、第3の層105以外は、実施の形態2に示した構成を適宜用いることができる。
【0174】
(実施の形態4)
本実施の形態では、実施の形態2および実施の形態3で示した構成と異なる構成の発光
素子について説明する。
【0175】
実施の形態2で示した第3の層105を、本発明のキノキサリン誘導体に発光性の物質
を分散させた構成とすることで、発光性の物質からの発光を得ることができる。
【0176】
本発明のキノキサリン誘導体はバイポーラ性を有し、また成膜中に含有される微結晶成
分が非常に少なく膜質がよいため、他の発光性物質を分散させる材料として好適に用いる
ことができる。
【0177】
本発明のキノキサリン誘導体を他の発光性物質を分散させる材料として用いる場合、発
光性物質に起因した発光色を得ることができる。また、本発明のキノキサリン誘導体に起
因した発光色と、キノキサリン誘導体中に分散されている発光性物質に起因した発光色と
の混色の発光色を得ることもできる。
【0178】
ここで、本発明のキノキサリン誘導体に分散させる発光性物質としては、種々の材料を
用いることができ、具体的には、4−(ジシアノメチレン)−2−メチル−6−(p−ジ
メチルアミノスチリル)−4H−ピラン(略称:DCM1)、4−(ジシアノメチレン)
−2−メチル−6−(ジュロリジン−4−イル−ビニル)−4H−ピラン(略称:DCM
2)、N,N’−ジメチルキナクリドン(略称:DMQd)、9,10−ジフェニルアン
トラセン(略称:DPA)、5,12−ジフェニルテトラセン(略称:DPT)、クマリ
ン6、ペリレン、ルブレンなどの蛍光発光性物質の他、ビス[2−(2’−ベンゾチエニ
ル)ピリジナト−N,C3’](アセチルアセトナト)イリジウム(略称:Ir(btp
(acac))などの燐光発光性物質も用いることができる。
【0179】
また、本発明のキノキサリン誘導体に分散させる発光性物質としては、下記一般式(1
01)で表される構造を含む有機金属錯体を用いることができる。
【0180】
【化75】

【0181】
(式中、R〜Rは、それぞれ、水素、ハロゲン元素、アシル基、アルキル基、アル
コキシル基、アリール基、シアノ基、複素環基のいずれかを表す。Arはアリール基また
は複素環基を表す。また、Mは第9族元素または第10族元素を表す。)
【0182】
一般式(101)において、Arは電子吸引性置換基を有するアリール基または電子吸
引性置換基を有する複素環基であることが好ましい。Arが電子吸引性置換基を有する基
であることによって、発光強度のより大きな燐光を発光する有機金属錯体を得ることがで
きる。
【0183】
特に、下記一般式(102)で表される構造を有する有機金属錯体が好ましい。
【0184】
【化76】

【0185】
(式中、R11は炭素数1〜4のアルキル基のいずれかを表す。また、R12〜R15
、それぞれ、水素、ハロゲン元素、アシル基、アルキル基、アルコキシル基、アリール基
、シアノ基、複素環基のいずれかを表す。また、R16〜R19は、それぞれ、水素、ア
シル基、アルキル基、アルコキシル基、アリール基、複素環基、電子吸引性置換基のいず
れかを表す。また、Mは第9族元素または第10族元素を表す。)
【0186】
一般式(102)において、R16〜R19の中で少なくとも一は、電子吸引性置換基
であることが好ましい。これによって、発光強度のより大きな燐光を発光する有機金属錯
体を得ることができる。
【0187】
また、特に、下記一般式(103)で表される構造を有する有機金属錯体が好ましい。
【0188】
【化77】

【0189】
(式中、R22〜R34は、それぞれ、水素、ハロゲン元素、アシル基、アルキル基、ア
ルコキシル基、アリール基、シアノ基、複素環基、電子吸引性置換基のいずれかを表す。
Mは第9族元素または第10族元素を表す。)
【0190】
一般式(103)において、R26〜R29の中で少なくとも一は、電子吸引性置換基
であることが好ましい。これによって、発光強度のより大きな燐光を発光する有機金属錯
体を得ることができる。
【0191】
上記一般式(101)で表される構造を有する有機金属錯体としては、一般式(104
)で表される有機金属錯体が挙げられる。
【0192】
【化78】

【0193】
(式中、R〜Rは、それぞれ、水素、ハロゲン元素、アシル基、アルキル基、アルコ
キシル基、アリール基、シアノ基、複素環基のいずれかを表す。Arはアリール基または
複素環基を表す。Mは第9族元素または第10族元素を表す。Mが第9族元素のときはn
=2、Mが第10族元素のときはn=1である。Lは、ベータジケトン構造を有するモノ
アニオン性の配位子、またはカルボキシル基を有するモノアニオン性の二座キレート配位
子、またはフェノール性水酸基を有するモノアニオン性の二座キレート配位子、のいずれ
かを表す。)
【0194】
一般式(104)において、Arは電子吸引性置換基を有するアリール基または電子吸
引性置換基を有する複素環基であることが好ましい。Arが電子吸引性置換基を有する基
であることによって、発光強度のより大きな燐光を発光する有機金属錯体を得ることがで
きる。
【0195】
特に、一般式(105)で表される有機金属錯体が好ましい。
【0196】
【化79】

【0197】
(式中、R11は炭素数1〜4のアルキル基のいずれかを表す。また、R12〜R15
、それぞれ、水素、ハロゲン元素、アシル基、アルキル基、アルコキシル基、アリール基
、シアノ基、複素環基のいずれかを表す。また、R16〜R19は、それぞれ、水素、ア
シル基、アルキル基、アルコキシル基、アリール基、複素環基、電子吸引性置換基のいず
れかを表す。また、Mは第9族元素または第10族元素を表す。Mが第9族元素のときは
n=2、Mが第10族元素のときはn=1である。Lは、ベータジケトン構造を有するモ
ノアニオン性の配位子、またはカルボキシル基を有するモノアニオン性の二座キレート配
位子、またはフェノール性水酸基を有するモノアニオン性の二座キレート配位子、のいず
れかを表す。)
【0198】
一般式(105)において、R16〜R19の中で少なくとも一は、電子吸引性置換基
であることが好ましい。これによって、発光強度のより大きな燐光を発光する有機金属錯
体を得ることができる。
【0199】
また、特に、一般式(106)で表される有機金属錯体が好ましい。
【0200】
【化80】

【0201】
(式中、R22〜R34は、それぞれ、水素、ハロゲン元素、アシル基、アルキル基、ア
ルコキシル基、アリール基、シアノ基、複素環基、電子吸引性置換基のいずれかを表す。
Mは第9族元素または第10族元素を表す。Mが第9族元素のときはn=2、Mが第10
族元素のときはn=1である。Lは、ベータジケトン構造を有するモノアニオン性の配位
子、またはカルボキシル基を有するモノアニオン性の二座キレート配位子、またはフェノ
ール性水酸基を有するモノアニオン性の二座キレート配位子、のいずれかを表す。)
【0202】
一般式(106)において、R26〜R29の中で少なくとも一は、電子吸引性置換基
であることが好ましい。これによって、発光強度のより大きな燐光を発光する有機金属錯
体を得ることができる。
【0203】
一般式(101)〜(103)で表される構造を含む有機金属錯体、および一般式(1
04)〜(106)で表される有機金属錯体において、電子吸引性置換基は、ハロゲン基
、ハロアルキル基、シアノ基のいずれかであることが好ましい。これにより、有機金属錯
体の色度及び量子効率が向上する。また、ハロゲン基の中でも特にフルオロ基が好ましく
、ハロアルキル基の中でも特にトリフルオロメチル基が好ましい。これにより、電子をト
ラップする効率もよくなる。
【0204】
一般式(101)〜(103)で表される構造を含む有機金属錯体、および一般式(1
04)〜(106)で表される有機金属錯体において中心金属Mは、重い金属が好ましく
、特にイリジウム又は白金であることが好ましい。これによって、重原子効果を得ること
ができる。
【0205】
なお、上記一般式(104)〜(106)において、配位子Lは、ベータジケトン構造
を有するモノアニオン性の配位子、またはカルボキシル基を有するモノアニオン性の二座
キレート配位子、またはフェノール性水酸基を有するモノアニオン性の二座キレート配位
子であれば何でもよいが、以下の構造式(107)〜(113)に示すモノアニオン性の
配位子のいずれかが好ましい。これらのモノアニオン性のキレート配位子は、配位能力が
高く、また、安価に入手することができるため、有効である。
【0206】
【化81】

【0207】
上記一般式(101)〜(106)で表される有機金属錯体の具体例としては、構造式
(114)〜(126)で表される有機金属錯体が挙げられる。
【0208】
【化82】

【0209】
【化83】

【0210】
【化84】

【0211】
【化85】

【0212】
【化86】

【0213】
【化87】

【0214】
【化88】

【0215】
【化89】

【0216】
【化90】

【0217】
【化91】

【0218】
【化92】

【0219】
【化93】

【0220】
【化94】

【0221】
なお、上記の有機金属錯体である燐光発光性物質を本発明のキノキサリン誘導体に添加し
て三重項励起状態からの発光を得る発光素子は、駆動電圧が低く、電流効率も高い。した
がって、消費電力の小さい発光素子を得ることができる。
【0222】
本発明のキノキサリン誘導体は、バイポーラ性であり、キャリア輸送性(電子輸送性お
よび正孔輸送性)に優れた材料であるため、本発明のキノキサリン誘導体を用いることで
、発光素子の駆動電圧を低減することができる。
【0223】
また、本発明のキノキサリン誘導体はガラス転移点が高いため、発光素子に用いること
で、耐熱性に優れた発光素子を得ることができる。
【0224】
また、本発明のキノキサリン誘導体は、酸化反応および引き続く還元反応、還元反応お
よび引き続く酸化反応を繰り返しても安定である。つまり、電気化学的に安定である。よ
って、本発明のキノキサリン誘導体を発光素子に用いることにより、長寿命の発光素子を
得ることができる。
【0225】
また特に、上述した一般式(101)で表される特定の有機金属錯体を本発明のキノキ
サリン誘導体に分散させた発光層を適用することにより、顕著に消費電力が小さく長寿命
な発光素子を得ることができる。
【0226】
なお、本発明のキノキサリン誘導体は、溶液状態において青から青緑色の短波長域の発
光を示すが、固体状態においても溶液の状態と同様に、短波長域の発光を示す。このこと
は、以下のように説明される。本発明のキノキサリン誘導体においては、アミノ基に対し
、ナフチル基やフルオレニル基などの平面的な縮合芳香環ではなく、ねじれを有するビフ
ェニル基が結合している。そして、そのビフェニル骨格のねじれのために固体状態で会合
しにくくなっており、固体状態での発光色と溶液状態での発光色がほぼ一致するようにな
ったと考えられる。すなわち、本発明のキノキサリン誘導体は、溶液状態のときの発光ス
ペクトルのピークと固体状態のときの発光スペクトルのピークがほぼ変わらないという特
徴を有しており、本発明のキノキサリン誘導体を薄膜(固体状態)で発光素子に用いるこ
とにより、本発明のキノキサリン誘導体に分散させる発光性物質の選択肢が広がる。具体
的には、分散させる発光物質として、燐光発光性物質を用いる場合には、燐光性発光物質
の発光スペクトルのピークが560nm以上700nm以下であることが好ましい。また
、蛍光発光性物質を用いる場合には、発光スペクトルのピークが500nm以上700n
m以下であることが好ましい。さらに好ましくは、500nm以上600nm以下である
ことが好ましい。
【0227】
なお、第3の層105以外は、実施の形態2に示した構成を適宜用いることができる。
【0228】
(実施の形態5)
本実施の形態では、本発明のキノキサリン誘導体を有機半導体素子の一種である縦型ト
ランジスタ(SIT)の活性層として用いる形態を例示する。
【0229】
素子の構造としては、図7に示すように、本発明のキノキサリン誘導体を含む薄膜状の
活性層1202をソース電極1201およびドレイン電極1203で挟み、ゲート電極1
204が活性層1202に埋め込まれた構造を有する。ゲート電極1204は、ゲート電
圧を印加するための手段に電気的に接続されており、ソース電極1201およびドレイン
電極1203は、ソース−ドレイン間の電圧を制御するための手段に電気的に接続されて
いる。
【0230】
このような素子構造において、ゲート電圧を印加しない状態においてソース−ドレイン
間に電圧を印加すると、電流が流れる(ON状態となる)。そして、その状態でゲート電
圧を印加するとゲート電極1204周辺に空乏層が発生し、電流が流れなくなる(OFF
状態となる)。以上の機構により、トランジスタとして動作する。
【0231】
縦型トランジスタにおいては、発光素子と同様、キャリア輸送性と良好な膜質を兼ね備
えた材料が活性層に求められるが、本発明のキノキサリン誘導体はその条件を十分に満た
しており、有用である。
【0232】
(実施の形態6)
本実施の形態では、本発明のキノキサリン誘導体を用いて作製された発光装置について
図3を用いて説明する。
【0233】
なお、図3(A)は、発光装置を示す上面図、図3(B)は図3(A)をA−A’およ
びB−B’で切断した断面図である。点線で示された601は駆動回路部(ソース側駆動
回路)、602は画素部、603は駆動回路部(ゲート側駆動回路)である。また、60
4は封止基板、605はシール材であり、シール材605で囲まれた内側は、空間607
になっている。
【0234】
なお、引き回し配線608はソース側駆動回路601及びゲート側駆動回路603に入
力される信号を伝送するための配線であり、外部入力端子となるFPC(フレキシブルプ
リントサーキット)609からビデオ信号、クロック信号、スタート信号、リセット信号
等を受け取る。なお、ここではFPCしか図示されていないが、このFPCにはプリント
配線基盤(PWB)が取り付けられていても良い。本明細書における発光装置には、発光
装置本体だけでなく、それにFPCもしくはPWBが取り付けられた状態をも含むものと
する。
【0235】
次に、断面構造について図3(B)を用いて説明する。素子基板610上には駆動回路
部及び画素部が形成されているが、ここでは、駆動回路部であるソース側駆動回路601
と、画素部602中の一つの画素が示されている。
【0236】
なお、ソース側駆動回路601はnチャネル型TFT623とpチャネル型TFT62
4とを組み合わせたCMOS回路が形成される。また、駆動回路を形成するTFTは、種
々のCMOS回路、PMOS回路もしくはNMOS回路で形成しても良い。また、本実施
例では、基板上に駆動回路を形成したドライバ一体型を示すが、必ずしもその必要はなく
、駆動回路を基板上ではなく外部に形成することもできる。また、TFTに用いる半導体
の結晶性についても特に限定されず、非晶質半導体を用いてもよいし、結晶性半導体を用
いてもよい。
【0237】
また、画素部602はスイッチング用TFT611と、電流制御用TFT612とその
ドレインに電気的に接続された第1の電極613とを含む複数の画素により形成される。
なお、第1の電極613の端部を覆って絶縁物614が形成されている。ここでは、ポジ
型の感光性アクリル樹脂膜を用いることにより形成する。
【0238】
また、被覆性を良好なものとするため、絶縁物614の上端部または下端部に曲率を有
する曲面が形成されるようにする。例えば、絶縁物614の材料としてポジ型の感光性ア
クリルを用いた場合、絶縁物614の上端部のみに曲率半径(0.2μm〜3μm)を有
する曲面を持たせることが好ましい。また、絶縁物614として、光の照射によってエッ
チャントに不溶解性となるネガ型、或いは光の照射によってエッチャントに溶解性となる
ポジ型のいずれも使用することができる。
【0239】
第1の電極613上には、発光物質を含む層616、および第2の電極617がそれぞ
れ形成されている。ここで、陽極として機能する第1の電極613に用いる材料としては
、仕事関数の大きい材料を用いることが望ましい。例えば、ITO膜、または珪素を含有
したインジウム錫酸化物膜、2〜20wt%の酸化亜鉛を含む酸化インジウム膜、窒化チ
タン膜、クロム膜、タングステン膜、Zn膜、Pt膜などの単層膜の他、窒化チタン膜と
アルミニウムを主成分とする膜との積層、窒化チタン膜とアルミニウムを主成分とする膜
と窒化チタン膜との3層構造等を用いることができる。なお、積層構造とすると、配線と
しての抵抗も低く、良好なオーミックコンタクトがとれ、さらに陽極として機能させるこ
とができる。
【0240】
また、発光物質を含む層616は、蒸着マスクを用いた蒸着法、インクジェット法、ス
ピンコート法等の種々の方法によって形成される。発光物質を含む層616は、実施の形
態1で示した本発明のキノキサリン誘導体を含んでいる。また、発光物質を含む層616
を構成する他の材料としては、低分子系材料、中分子材料(オリゴマー、デンドリマーを
含む)、または高分子系材料であっても良い。また、発光物質を含む層に用いる材料とし
ては、通常、有機化合物を単層もしくは積層で用いる場合が多いが、本発明においては、
有機化合物からなる膜の一部に無機化合物を用いる構成も含めることとする。
【0241】
さらに、発光物質を含む層616上に形成され、陰極として機能する第2の電極617
に用いる材料としては、仕事関数の小さい材料(Al、Mg、Li、Ca、またはこれら
の合金や化合物MgAg、MgIn、AlLi、LiF、CaF等)を用いることが好
ましい。なお、発光物質を含む層616で生じた光が第2の電極617を透過させる場合
には、第2の電極617として、膜厚を薄くした金属薄膜と、透明導電膜(ITO、2〜
20wt%の酸化亜鉛を含む酸化インジウム、珪素を含有したインジウム錫酸化物、酸化
亜鉛(ZnO)等)との積層を用いるのが良い。
【0242】
さらにシール材605で封止基板604を素子基板610と貼り合わせることにより、
素子基板610、封止基板604、およびシール材605で囲まれた空間607に発光素
子618が備えられた構造になっている。なお、空間607には、充填材が充填されてお
り、不活性気体(窒素やアルゴン等)が充填される場合の他、シール材605で充填され
る場合もある。
【0243】
なお、シール材605にはエポキシ系樹脂を用いるのが好ましい。また、これらの材料
はできるだけ水分や酸素を透過しない材料であることが望ましい。また、封止基板604
に用いる材料としてガラス基板や石英基板の他、FRP(Fiberglass−Rei
nforced Plastics)、PVF(ポリビニルフロライド)、マイラー、ポ
リエステルまたはアクリル等からなるプラスチック基板を用いることができる。
【0244】
以上のようにして、本発明のキノキサリン誘導体を用いて作製された発光装置を得るこ
とができる。
【0245】
本発明の発光装置は、実施の形態1で示したキノキサリン誘導体を用いているため、良
好な特性を備えた発光装置を得ることができる。具体的には、耐熱性の高い発光装置を得
ることができる。
【0246】
また、本発明のキノキサリン誘導体は、電気化学的に安定であるため、長寿命な発光装置
を得ることができる。
【0247】
また、本発明のキノキサリン誘導体は、バイポーラ性であり、キャリア輸送性(電子輸
送性および正孔輸送性)に優れた材料であるため、本発明のキノキサリン誘導体を用いる
ことで、発光素子の駆動電圧を低減することができ、発光装置の消費電力を低減すること
ができる。特に、発光性物質として燐光発光性物質を用いた場合、発光効率も高く、より
消費電力の低減された発光装置を得ることができる。
【0248】
以上のように、本実施の形態では、トランジスタによって発光素子の駆動を制御するア
クティブ型の発光装置について説明したが、この他、トランジスタ等の駆動用の素子を特
に設けずに発光素子を駆動させるパッシブ型の発光装置であってもよい。図4には本発明
を適用して作製したパッシブ型の発光装置の斜視図を示す。図4において、基板951上
には、電極952と電極956との間には発光物質を含む層955が設けられている。電
極952の端部は絶縁層953で覆われている。そして、絶縁層953上には隔壁層95
4が設けられている。隔壁層954の側壁は、基板面に近くなるに伴って、一方の側壁と
他方の側壁との間隔が狭くなっていくような傾斜を有する。つまり、隔壁層954の短辺
方向の断面は、台形状であり、底辺(絶縁層953の面方向と同様の方向を向き、絶縁層
953と接する辺)の方が上辺(絶縁層953の面方向と同様の方向を向き、絶縁層95
3と接しない辺)よりも短い。このように、隔壁層954を設けることで、静電気等に起
因した発光素子の不良を防ぐことが出来る。また、パッシブ型の発光装置においても、低
駆動電圧で動作する本発明の発光素子を含むことによって、低消費電力で駆動させること
ができる。
【0249】
(実施の形態7)
本実施の形態では、実施の形態4に示す発光装置をその一部に含む本発明の電子機器に
ついて説明する。本発明の電子機器は、実施の形態1に示したキノキサリン誘導体を含み
、耐熱性が高い表示部を有する。また、長寿命の表示部を有する。また、消費電力の低減
された表示部を有する。
【0250】
本発明のキノキサリン誘導体を用いて作製された発光素子を有する電子機器として、ビ
デオカメラ、デジタルカメラ、ゴーグル型ディスプレイ、ナビゲーションシステム、音響
再生装置(カーオーディオ、オーディオコンポ等)、コンピュータ、ゲーム機器、携帯情
報端末(モバイルコンピュータ、携帯電話、携帯型ゲーム機または電子書籍等)、記録媒
体を備えた画像再生装置(具体的にはDigital Versatile Disc(
DVD)等の記録媒体を再生し、その画像を表示しうる表示装置を備えた装置)などが挙
げられる。これらの電子機器の具体例を図5に示す。
【0251】
図5(A)は本発明に係るテレビ装置であり、筐体9101、支持台9102、表示部
9103、スピーカー部9104、ビデオ入力端子9105等を含む。このテレビ装置に
おいて、表示部9103は、実施の形態2〜4で説明したものと同様の発光素子をマトリ
クス状に配列して構成されている。当該発光素子は、低電圧駆動が可能であり、長寿命で
あるという特徴を有している。また、耐熱性が高いという特徴を有している。その発光素
子で構成される表示部9103も同様の特徴を有するため、このテレビ装置は画質の劣化
が少なく、低消費電力化が図られている。このような特徴により、テレビ装置において、
劣化補償機能や電源回路を大幅に削減、若しくは縮小することができるので、筐体910
1や支持台9102の小型軽量化を図ることが可能である。本発明に係るテレビ装置は、
低消費電力、高画質及び小型軽量化が図られているので、それにより住環境に適合した製
品を提供することができる。
【0252】
図5(B)は本発明に係るコンピュータであり、本体9201、筐体9202、表示部
9203、キーボード9204、外部接続ポート9205、ポインティングマウス920
6等を含む。このコンピュータにおいて、表示部9203は、実施の形態2〜4で説明し
たものと同様の発光素子をマトリクス状に配列して構成されている。当該発光素子は、低
電圧駆動が可能であり、長寿命であるという特徴を有している。また、耐熱性が高いとい
う特徴を有している。その発光素子で構成される表示部9203も同様の特徴を有するた
め、このコンピュータは画質の劣化が少なく、低消費電力化が図られている。このような
特徴により、コンピュータにおいて、劣化補償機能や電源回路を大幅に削減、若しくは縮
小することができるので、本体9201や筐体9202の小型軽量化を図ることが可能で
ある。本発明に係るコンピュータは、低消費電力、高画質及び小型軽量化が図られている
ので、環境に適合した製品を提供することができる。
【0253】
図5(C)は本発明に係る携帯電話であり、本体9401、筐体9402、表示部94
03、音声入力部9404、音声出力部9405、操作キー9406、外部接続ポート9
407、アンテナ9408等を含む。この携帯電話において、表示部9403は、実施の
形態2〜4で説明したものと同様の発光素子をマトリクス状に配列して構成されている。
当該発光素子は、低電圧駆動が可能であり、長寿命であるという特徴を有している。また
、耐熱性が高いという特徴を有している。その発光素子で構成される表示部9403も同
様の特徴を有するため、この携帯電話は画質の劣化が少なく、低消費電力化が図られてい
る。このような特徴により、携帯電話において、劣化補償機能や電源回路を大幅に削減、
若しくは縮小することができるので、本体9401や筐体9402の小型軽量化を図るこ
とが可能である。本発明に係る携帯電話は、低消費電力、高画質及び小型軽量化が図られ
ているので、携帯に適した製品を提供することができる。
【0254】
図5(D)は本発明の係るカメラであり、本体9501、表示部9502、筐体950
3、外部接続ポート9504、リモコン受信部9505、受像部9506、バッテリー9
507、音声入力部9508、操作キー9509、接眼部9510等を含む。このカメラ
において、表示部9502は、実施の形態2〜4で説明したものと同様の発光素子をマト
リクス状に配列して構成されている。当該発光素子は、低電圧駆動が可能であり、長寿命
であるという特徴を有している。また、耐熱性が高いという特徴を有している。その発光
素子で構成される表示部9502も同様の特徴を有するため、このカメラは画質の劣化が
少なく、低消費電力化が図られている。このような特徴により、カメラにおいて、劣化補
償機能や電源回路を大幅に削減、若しくは縮小することができるので、本体9501の小
型軽量化を図ることが可能である。本発明に係るカメラは、低消費電力、高画質及び小型
軽量化が図られているので、携帯に適した製品を提供することができる。
【0255】
以上の様に、本発明の発光装置の適用範囲は極めて広く、この発光装置をあらゆる分野
の電子機器に適用することが可能である。本発明のキノキサリン誘導体を用いることによ
り、低消費電力で、長寿命であり、耐熱性の高い表示部を有する電子機器を提供すること
が可能となる。
【0256】
また、本発明の発光装置は、照明装置として用いることもできる。本発明の発光素子を
照明装置として用いる一態様を、図6を用いて説明する。
【0257】
図6は、本発明の発光装置をバックライトとして用いた液晶表示装置の一例である。図
6に示した液晶表示装置は、筐体901、液晶層902、バックライト903、筐体90
4を有し、液晶層902は、ドライバIC905と接続されている。また、バックライト
903は、本発明の発光装置が用いられおり、端子906により、電流が供給されている

【0258】
本発明の発光装置を液晶表示装置のバックライトとして用いることにより、消費電力の
低減されたバックライトが得られる。また、本発明の発光装置は、面発光の照明装置であ
り大面積化も可能であるため、バックライトの大面積化が可能であり、液晶表示装置の大
面積化も可能になる。さらに、本発明の発光装置は薄型で低消費電力であるため、表示装
置の薄型化、低消費電力化も可能となる。また、本発明の発光装置は長寿命であり、耐熱
性に優れているため、本発明の発光装置は液晶表示装置も、長寿命であり、耐熱性に優れ
ている。
【実施例1】
【0259】
本実施例では、下記構造式(14)で表される本発明のキノキサリン誘導体である2,
3−ビス{4−[N−(4−ビフェニリル)−N−フェニルアミノ]フェニル}キノキサ
リン(以下、BPAPQと記す)の合成例を具体的に例示する。
【0260】
【化95】

【0261】
[ステップ1]
2,3−ビス(4−ブロモフェニル)キノキサリンの合成方法について説明する。2,
3−ビス(4−ブロモフェニル)キノキサリンの合成スキームを(B−1)に示す。
【0262】
【化96】

【0263】
窒素雰囲気下、4,4’−ジブロモベンジル30.0g(81.5mmol)とo−フ
ェニレンジアミン9.00g(83.2mmol)のクロロホルム溶液(200mL)を
80℃で3時間還流した。反応溶液を室温に冷却した後、反応溶液を水で洗浄した。得ら
れた水層をクロロホルムで抽出し、抽出溶液を有機層と合わせて飽和食塩水で洗浄した。
有機層を硫酸マグネシウムで乾燥した後、混合物を吸引ろ過し、ろ液を濃縮したところ、
目的物である2,3−ビス(4−ブロモフェニル)キノキサリンを白色固体として33g
、収率92%で得た。
【0264】
[ステップ2]
N−(4−ビフェニリル)−N−フェニルアミンの合成方法について説明する。N−(
4−ビフェニリル)−N−フェニルアミンの合成スキームを(B−2)に示す。
【0265】
【化97】

【0266】
窒素雰囲気下、4−ブロモビフェニル20.0g(85.8mmol)、アニリン16
.0g(172mmol)、酢酸パラジウム0.19g(0.86mmol)、炭酸カリ
ウム23.7g(172mmol)のキシレン懸濁液(150mL)にトリ−tert−
ブチルホスフィン(10%ヘキサン溶液)5.2g(2.5mmol)を加え、その混合
物を120℃で10時間還流した。反応終了後、反応混合物を水で洗浄し、水層をトルエ
ンで抽出した。トルエン層と有機層を合わせ、飽和食塩水で洗浄し、得られた有機層を硫
酸マグネシウムで乾燥した。混合物を吸引ろ過し、ろ液を濃縮した。得られた残渣をシリ
カゲルカラムクロマトグラフィー(展開溶媒:トルエン)により精製した。得られた溶液
を濃縮し、N−(4−ビフェニリル)−N−フェニルアミンを白色固体として13.5g
、収率64%で得た。
【0267】
[ステップ3]
2,3−ビス{4−[N−(4−ビフェニリル)−N−フェニルアミノ]フェニル}キ
ノキサリン(以下、BPAPQと記す)の合成方法について説明する。BPAPQの合成
スキームを(B−3)に示す。
【0268】
【化98】

【0269】
窒素雰囲気下、2,3−ビス(4−ブロモフェニル)キノキサリン5.0g(11.4
mmol)、N−(4−ビフェニリル)−N−フェニルアミン6.1g(25.0mmo
l)、ビス(ジベンジリデンアセトン)パラジウム(0)0.33g(0.58mmol
)、tert−ブトキシナトリウム5.5g(56.8mmol)のトルエン懸濁液(8
0mL)にトリ−tert−ブチルホスフィン(10%ヘキサン溶液)1.2g(0.5
8mmol)を加え、その混合物を80℃で7時間加熱した。反応終了後、反応混合物を
室温まで冷却し、析出物を吸引濾過により回収した。得られたろ物をトルエンに溶解し、
この溶液をセライト、フロリジール、アルミナを通して吸引濾過し、ろ液を濃縮した。得
られた残渣をクロロホルム、ヘキサンで再結晶したところ、BPAPQを黄色粉末状固体
として8.1g、収率78%で得た。
【0270】
BPAPQのプロトン核磁気共鳴分光法(H NMR)による分析結果は以下のとお
りであった。H NMR(300MHz, CDCl);δ=8.16−8.13(
m, 2H),7.75−7.72(m, 2H),7.58−7.04(m, 36H
)。図8(A)にBPAPQのNMRチャートを、図8(B)に6〜9ppmの部分を拡
大したNMRチャート示す。
【0271】
BPAPQの分解温度(Td)を示差熱熱重量同時測定装置(セイコー電子株式会社製
、TG/DTA320型)により測定したところ、Td=436℃であり、良好な耐熱性
を示すことが分かった。
【0272】
また、示差走査熱量測定装置(DSC、パーキンエルマー社製、Pyris1)を用い
てガラス転移点を測定した。まず、サンプルを40℃/minで300℃まで加熱して試
料を溶融させた後、40℃/minで室温まで冷却した。その後10℃/minで300
℃まで昇温することにより、図15のDSCチャートを得た。このチャートから、BPA
PQのガラス転移点(Tg)は114℃、融点は268℃であることがわかった。このこ
とから、BPAPQは高いガラス転移点を有することがわかった。
【0273】
BPAPQのトルエン溶液の吸収スペクトルを図9に、薄膜の吸収スペクトルを図10
にそれぞれ示す。トルエン溶液では325および402nmにピークを有しており、薄膜
状態では328、418nmにピークを有することが分かった。
【0274】
BPAPQのトルエン溶液の発光スペクトルおよび励起スペクトルを図11に示す。ト
ルエン溶液中では483nmに発光極大を示すことが分かった。また、波長365nmの
紫外線で励起したBPAPQの薄膜(固体状態)の発光スペクトルを図12に示す。図1
2において、固体状態では499nmに発光極大を示しており、トルエン溶液と固体状態
で、発光極大に大きな差が無いことが分かった。すなわち、BPAPQはビフェニル骨格
のねじれに由来して固体状態で会合しにくく、固体状態でも溶液状態の発光色と同様に短
波長の発光を得ることができる。
【0275】
また、薄膜状態におけるHOMO準位を大気中の光電子分光法(理研計器社製、AC−
2)で測定した結果、−5.31eVであった。さらに、図10の吸収スペクトルのデー
タを用い、直接遷移を仮定したTaucプロットから光学的エネルギーギャップを求めた
ところ、エネルギーギャップは2.66eVであった。したがって、LUMO準位は−2
.65eVである。
【0276】
また、BPAPQの電気化学的安定性をサイクリックボルタンメトリ(CV)により評
価した。測定装置は、電気化学アナライザー(ビー・エー・エス(株)製、型番:ALS
モデル600A)を用いた。CV測定における溶液は、溶媒として脱水ジメチルホルムア
ミド(DMF)を用い、支持電解質である過塩素酸テトラ−n−ブチルアンモニウム(n
−BuNClO)を100mMの濃度となるように溶解させ、さらに測定対象である
BPAPQを1mMの濃度となるように溶解させて調製した。また、作用電極としては白
金電極(ビー・エー・エス(株)製、PTE白金電極)を、補助電極としては白金電極(
ビー・エー・エス(株)製、VC−3用Ptカウンター電極(5cm))を、基準電極と
してはAg/Ag電極(ビー・エー・エス(株)製、RE5非水溶媒系参照電極)をそ
れぞれ用いた。スキャン速度は0.1V/secとし、酸化側、還元側、それぞれ100
サイクルのCV測定を行った。
【0277】
図13にBPAPQの酸化側のCV測定結果を、図14にBPAPQの還元側のCV測
定結果をそれぞれ示す。酸化側、還元側両方とも可逆的なピークを与えることが分かった
。また、100回の酸化あるいは還元を繰り返しても、サイクリックボルタモグラムにほ
とんど変化がないことがわかった。このことは、BPAPQが酸化および還元に対して安
定であることを意味している。つまり、電気化学的に安定であることを意味している。
【実施例2】
【0278】
本実施例では、下記構造式(39)で表される本発明のキノキサリン誘導体である2,
3−ビス{4−[N,N−ジ(4−ビフェニリル)アミノ]フェニル}キノキサリン(以
下、BBAPQと記す)の合成例を具体的に例示する。
【0279】
【化99】

【0280】
[ステップ1]
N,N−ビス(4−ブロモフェニル)アミンの合成方法について説明する。N,N−ビ
ス(4−ブロモフェニル)アミンの合成スキームを(C−1)に示す。
【0281】
【化100】

【0282】
ジフェニルアミン10g(59mmol)の酢酸エチル溶液(400mL)にN−ブロ
モコハク酸イミド22.1g(124mmol)を加え、室温で16時間撹拌した。反応
終了後、反応混合物を水で洗浄し、水層を酢酸エチルで抽出し、抽出溶液を有機層と併せ
た。得られた有機層を飽和食塩水で洗浄後、有機層を硫酸マグネシウムで乾燥した。混合
物を吸引ろ過し、ろ液を濃縮した。得られた残渣をヘキサンで洗浄し、ヘキサン懸濁液を
吸引濾過して固体を回収したところ、目的物であるN、N−ビス(4−ブロモフェニル)
アミンを白色固体として9.5g、収率49%で得た。
【0283】
[ステップ2]
N,N−ジ(4−ビフェニリル)アミンの合成方法について説明する。N,N−ジ(4
−ビフェニリル)アミンの合成スキームを(C−2)に示す。
【0284】
【化101】

【0285】
窒素雰囲気下、N,N−ビス(4−ブロモフェニル)アミン9.5g(29mmol)
、フェニルボロン酸7.9g(65mmol)、酢酸パラジウム0.15g(0.646
mmol)、トリス(o−トリル)ホスフィン1.4g(4.5mmol)のエチレング
リコールジメチルエーテル(20mL)溶液に、炭酸カリウム水溶液(2.0mol/L
)95mLを加え、その溶液を90℃で7時間還流した。反応終了後、反応混合物をろ過
し、得られた固体をクロロホルム、ヘキサンにより再結晶したところ、目的物であるN,
N−ジ(4−ビフェニリル)アミンを白色粉末状固体として6.7g収率72%で得た。
【0286】
[ステップ3]
2,3−ビス{4−[N,N−ジ(4−ビフェニリル)アミノ]フェニル}キノキサリ
ン(以下、BBAPQと記す)の合成方法について説明する。BBAPQの合成スキーム
を(C−3)に示す。
【0287】
【化102】

【0288】
窒素雰囲気下、実施例1のステップ1で合成した2,3−ビス(4−ブロモフェニル)
キノキサリン3.0g(8.1mmol)、N,N−ジ(4−ビフェニリル)アミン5.
7g(18mmol)、ビス(ジベンジリデンアセトン)パラジウム(0)0.23g(
0.41mmol)、tert−ブトキシナトリウム3.9g(41mmol)のトルエ
ン懸濁液(80mL)にトリ−tert−ブチルホスフィン0.082g(0.41mm
ol)を加え、その混合物を80℃で8時間加熱した。反応終了後、反応混合物を吸引ろ
過し、得られた固体をクロロホルムに溶解し、この溶液をセライト、フロリジール、アル
ミナを通して吸引ろ過した。ろ液を濃縮し、得られた残渣をクロロホルム、ヘキサンによ
り再結晶したところ目的物であるBBAPQを黄色固体として5.7g収率76%で得た

【0289】
BBAPQのプロトン核磁気共鳴分光法(H NMR)による分析結果は以下のとお
りであった。H NMR(300MHz,CDCl);δ=8.18−8.15(m
, 2H),7.76−7.73(m, 2H),7.58−7.16(m, 44H)
。図16(A)にBBAPQのNMRチャートを、図16(B)に6〜9ppmの部分を
拡大したNMRチャート示す。
【0290】
BBAPQの分解温度(Td)を示差熱熱重量同時測定装置(セイコー電子株式会社製
、TG/DTA320型)により測定したところ、Td=486℃であり、良好な耐熱性
を示すことが分かった。
【0291】
また、示差走査熱量測定装置(DSC、パーキンエルマー社製、Pyris1)を用い
てガラス転移点を測定した。まず、サンプルを40℃/minで380℃まで加熱して試
料を溶融させた後、40℃/minで−10℃まで冷却した。その後10℃/minで3
80℃まで昇温することにより、図23のDSCチャートを得た。このチャートから、B
BAPQのガラス転移点(Tg)は140℃であることがわかった。なお、最初に試料を
溶融させた際のDSCチャートから、融点は321℃であることがわかっている。このこ
とから、BBAPQは高いガラス転移点を有することがわかった。
【0292】
BBAPQのトルエン溶液の吸収スペクトルを図17に示す。トルエン溶液では305
および375nmにピークを有することが分かった。
【0293】
次に、BBAPQの電気化学的安定性を評価した。評価方法は、実施例1で示したBP
APQの電気化学的安定性の評価方法と同様である。
【0294】
図21に、BBAPQの酸化側のCV測定結果を、図22にBBAPQの還元側のCV
測定結果をそれぞれ示す。酸化側、還元側両方とも可逆的なピークを与えることが分かっ
た。また、100回の酸化あるいは還元を繰り返しても、サイクリックボルタモグラムに
ほとんど変化がないことがわかった。このことは、BBAPQが酸化および還元に対して
安定であることを意味している。つまり、電気化学的に安定であることを意味している。
【実施例3】
【0295】
本実施例では、本発明の発光素子について、図37を用いて説明する。
【0296】
まず、ガラス基板2101上に、酸化珪素を含むインジウム錫酸化物をスパッタリング
法にて成膜し、第1の電極2102を形成した。なお、その膜厚は110nmとし、電極
面積は2mm×2mmとした。
【0297】
次に、第1の電極が形成された面が下方となるように、第1の電極が形成された基板を
真空蒸着装置内に設けられた基板ホルダーに固定した。その後真空装置内を排気し、10
−4Pa程度まで減圧した後、第1の電極2102上に、NPBと酸化モリブデン(VI
)とを共蒸着することにより、複合材料を含む層2103を形成した。その膜厚は50n
mとし、NPBと酸化モリブデン(VI)との比率は、重量比で4:1(=NPB:酸化
モリブデン)となるように調節した。なお、共蒸着法とは、一つの処理室内でそれぞれ異
なる材料が保持された複数の蒸発源から同時に蒸着を行う蒸着法である。
【0298】
次に、抵抗加熱を用いた蒸着法により、複合材料を含む層2103上にNPBを10n
mの膜厚となるように成膜し、正孔輸送層2104を形成した。
【0299】
さらに、構造式(14)で表される本発明のキノキサリン誘導体である2,3−ビス{
4−[N−(4−ビフェニリル)−N−フェニルアミノ]フェニル}キノキサリン(以下
、BPAPQと記す)と、構造式(114)で表される(アセチルアセトナト)ビス[2
,3−ビス(4−フルオロフェニル)キノキサリナト]イリジウム(III)(以下略、
Ir(Fdpq)(acac)と記す)とを共蒸着することにより、正孔輸送層210
4上に30nmの膜厚の発光層2105を形成した。ここで、BPAPQとIr(Fdp
q)acacとの重量比は、1:0.1(=BPAPQ:Ir(Fdpq)acac
)となるように調節した。これによって、Ir(Fdpq)acacはBPAPQから
成る層中に分散した状態となる。
【0300】
その後抵抗加熱による蒸着法を用いて、発光層2105上にAlqを10nmの膜厚と
なるように成膜し、電子輸送層2106を形成した。
【0301】
さらに、電子輸送層2106上に、Alqとリチウムを共蒸着することにより、Alq
上に、50nmの膜厚で電子注入層2107を形成した。ここで、Alqとリチウムとの
重量比は、1:0.01(=Alq:リチウム)となるように調節した。これによって、
リチウムはAlqから成る層中に分散した状態となる。
【0302】
最後に、抵抗加熱による蒸着法を用い、電子注入層2107上にアルミニウムを200
nmの膜厚となるように成膜することにより、第2の電極2108を形成することで、実
施例3の発光素子を作製した。
【0303】
本実施例3の発光素子の電流密度―輝度特性を図18に示す。また、輝度―電圧特性を
図19に示す。電流効率―輝度特性を図20に示す。また、1mAの電流を流したときの
発光スペクトルを図33に示す。本実施例3の発光素子において、970cd/mの輝
度を得るために必要な電圧は6.2Vであり、その時流れた電流は1.40mA(電流密
度は34.9mA/cm)であり、CIE色度座標は(x=0.66、y=0.32)
であった。また、この時の電流効率は2.8cd/A、電力効率は1.4lm/Wであっ
た。
【0304】
このように、本発明のキノキサリン誘導体と有機金属錯体を組み合わせることで、消費
電力の小さい赤色発光素子を得ることができた。
【0305】
また、上記の発光素子と同様な構造の発光素子を作製し、初期輝度を1000cd/m
として、定電流駆動による連続点灯試験を行ったところ、860時間後でも初期輝度の
82%の輝度を保っていることがわかった。よって、本発明のキノキサリン誘導体用いる
ことにより、長寿命の発光素子を得ることができた。
【実施例4】
【0306】
本実施例では、本発明の発光素子について、図37を用いて説明する。
【0307】
まず、ガラス基板2101上に、酸化珪素を含むインジウム錫酸化物をスパッタリング
法にて成膜し、第1の電極2102を形成した。なお、その膜厚は110nmとし、電極
面積は2mm×2mmとした。
【0308】
次に、第1の電極が形成された面が下方となるように、第1の電極が形成された基板を
真空蒸着装置内に設けられた基板ホルダーに固定した。その後真空装置内を排気し、10
−4Pa程度まで減圧した後、第1の電極2102上に、NPBと酸化モリブデン(VI
)とを共蒸着することにより、複合材料を含む層2103を形成した。その膜厚は50n
mとし、NPBと酸化モリブデン(VI)との比率は、重量比で4:1(=NPB:酸化
モリブデン)となるように調節した。
【0309】
次に、抵抗加熱を用いた蒸着法により、複合材料を含む層2103上にNPBを10n
mの膜厚となるように成膜し、正孔輸送層2104を形成した。
【0310】
さらに、構造式(39)で表される本発明のキノキサリン誘導体である2,3−ビス{
4−[N,N−ジ(4−ビフェニリル)アミノ]フェニル}キノキサリン(以下、BBA
PQと記す)と、構造式(114)で表される(アセチルアセトナト)ビス[2,3−ビ
ス(4−フルオロフェニル)キノキサリナト]イリジウム(III)(以下略、Ir(F
dpq)(acac)と記す)とを共蒸着することにより、正孔輸送層2104上に3
0nmの膜厚の発光層2105を形成した。ここで、BBAPQとIr(Fdpq)
cacとの重量比は、1:0.1(=BBAPQ:Ir(Fdpq)acac)となる
ように調節した。これによって、Ir(Fdpq)acacはBBAPQから成る層中
に分散した状態となる。
【0311】
その後抵抗加熱による蒸着法を用いて、発光層2105上にAlqを10nmの膜厚と
なるように成膜し、電子輸送層2106を形成した。
【0312】
さらに、電子輸送層2106上に、Alqとリチウムを共蒸着することにより、Alq
上に、50nmの膜厚で電子注入層2107を形成した。ここで、Alqとリチウムとの
重量比は、1:0.01(=Alq:リチウム)となるように調節した。これによって、
リチウムはAlqから成る層中に分散した状態となる。
【0313】
最後に、抵抗加熱による蒸着法を用い、電子注入層2107上にアルミニウムを200
nmの膜厚となるように成膜することにより、第2の電極2108を形成することで、実
施例4の発光素子を作製した。
【0314】
本実施例4の発光素子の電流密度―輝度特性を図24に示す。また、輝度―電圧特性を
図25に示す。また、電流効率―輝度特性を図26に示す。また、1mAの電流を流した
ときの発光スペクトルを図34に示す。本実施例4の発光素子において、900cd/m
の輝度を得るために必要な電圧は6.4Vであり、その時流れた電流は1.39mA(
電流密度は34.8mA/cm)であり、CIE色度座標は(x=0.65、y=0.
33)であった。また、この時の電流効率は2.6cd/A、電力効率は1.3lm/W
であった。
【0315】
このように、本発明のキノキサリン誘導体と有機金属錯体を組み合わせることで、消費
電力の小さい赤色発光素子を得ることができた。
【実施例5】
【0316】
本実施例では、本発明の発光素子について、図37を用いて説明する。
【0317】
まず、ガラス基板2101上に、酸化珪素を含むインジウム錫酸化物をスパッタリング
法にて成膜し、第1の電極2102を形成した。なお、その膜厚は110nmとし、電極
面積は2mm×2mmとした。
【0318】
次に、第1の電極が形成された面が下方となるように、第1の電極が形成された基板を
真空蒸着装置内に設けられた基板ホルダーに固定した。その後真空装置内を排気し、10
−4Pa程度まで減圧した後、第1の電極2102上に、DNTPDと酸化モリブデン(
VI)とを共蒸着することにより、複合材料を含む層2103を形成した。その膜厚は5
0nmとし、DNTPDと酸化モリブデン(VI)との比率は、重量比で4:2(=DN
TPD:酸化モリブデン)となるように調節した。
【0319】
次に、抵抗加熱を用いた蒸着法により、複合材料を含む層2103上にNPBを10n
mの膜厚となるように成膜し、正孔輸送層2104を形成した。
【0320】
さらに、構造式(14)で表される本発明のキノキサリン誘導体である2,3−ビス{
4−[N−(4−ビフェニリル)−N−フェニルアミノ]フェニル}キノキサリン(以下
、BPAPQと記す)と、構造式(114)で表される(アセチルアセトナト)ビス[2
,3−ビス(4−フルオロフェニル)キノキサリナト]イリジウム(III)(以下略、
Ir(Fdpq)(acac)と記す)とを共蒸着することにより、正孔輸送層210
4上に30nmの膜厚の発光層2105を形成した。ここで、BPAPQとIr(Fdp
q)acacとの重量比は、1:0.1(=BPAPQ:Ir(Fdpq)acac
)となるように調節した。これによって、Ir(Fdpq)acacはBPAPQから
成る層中に分散した状態となる。
【0321】
その後抵抗加熱による蒸着法を用いて、発光層2105上にAlqを10nmの膜厚と
なるように成膜し、さらにBPhenを50nmの膜厚となるように成膜して、電子輸送
層2106を形成した。
【0322】
さらに、電子輸送層2106上に、フッ化リチウムを1nm成膜して電子注入層210
7を形成した。
【0323】
最後に、抵抗加熱による蒸着法を用い、電子注入層2107上にアルミニウムを200
nmの膜厚となるように成膜することにより、第2の電極2108を形成することで、実
施例5の発光素子を作製した。
【0324】
本実施例5の発光素子の電流密度―輝度特性を図27に示す。また、輝度―電圧特性を
図28に示す。また、電流効率―輝度特性を図29に示す。また、1mAの電流を流した
ときの発光スペクトルを図35に示す。本実施例5の発光素子において、1100cd/
の輝度を得るために必要な電圧は6.8Vであり、その時流れた電流は0.99mA
(電流密度は24.8mA/cm)であり、CIE色度座標は(x=0.68、y=0
.31)であった。また、この時の電流効率は4.5cd/A、電力効率は2.1lm/
Wであった。
【0325】
このように、本発明のキノキサリン誘導体と有機金属錯体を組み合わせることで、消費
電力の小さい赤色発光素子を得ることができた。
【実施例6】
【0326】
本実施例では、本発明の発光素子について、図37を用いて説明する。
【0327】
まず、ガラス基板2101上に、酸化珪素を含むインジウム錫酸化物をスパッタリング
法にて成膜し、第1の電極2102を形成した。なお、その膜厚は110nmとし、電極
面積は2mm×2mmとした。
【0328】
次に、第1の電極が形成された面が下方となるように、第1の電極が形成された基板を
真空蒸着装置内に設けられた基板ホルダーに固定した。その後真空装置内を排気し、10
−4Pa程度まで減圧した後、第1の電極2102上に、t−BuDNAと酸化モリブデ
ン(VI)とを共蒸着することにより、複合材料を含む層2103を形成した。その膜厚
は50nmとし、t−BuDNAと酸化モリブデン(VI)との比率は、重量比で4:1
(=t−BuDNA:酸化モリブデン)となるように調節した。
【0329】
次に、抵抗加熱を用いた蒸着法により、複合材料を含む層2103上にNPBを10n
mの膜厚となるように成膜し、正孔輸送層2104を形成した。
【0330】
さらに、構造式(14)で表される本発明のキノキサリン誘導体である2,3−ビス{
4−[N−(4−ビフェニリル)−N−フェニルアミノ]フェニル}キノキサリン(以下
、BPAPQと記す)と構造式(114)で表される(アセチルアセトナト)ビス[2,
3−ビス(4−フルオロフェニル)キノキサリナト]イリジウム(III)(以下略、I
r(Fdpq)(acac)と記す)とを共蒸着することにより、正孔輸送層2104
上に30nmの膜厚の発光層2105を形成した。ここで、BPAPQとIr(Fdpq
acacとの重量比は、1:0.1(=BPAPQ:Ir(Fdpq)acac)
となるように調節した。これによって、Ir(Fdpq)acacはBPAPQから成
る層中に分散した状態となる。
【0331】
その後抵抗加熱による蒸着法を用いて、発光層2105上にAlqを10nmの膜厚と
なるように成膜し、電子輸送層2106を形成した。
【0332】
さらに、電子輸送層2106上に、Alqとリチウムを共蒸着することにより、Alq
上に、50nmの膜厚で電子注入層2107を形成した。ここで、Alqとリチウムとの
重量比は、1:0.01(=Alq:リチウム)となるように調節した。これによって、
リチウムはAlqから成る層中に分散した状態となる。
【0333】
最後に、抵抗加熱による蒸着法を用い、電子注入層2107上にアルミニウムを200
nmの膜厚となるように成膜することにより、第2の電極2108を形成することで、実
施例6の発光素子を作製した。
【0334】
本実施例6の発光素子の電流密度―輝度特性を図30に示す。また、輝度―電圧特性を
図31に示す。また、電流効率―輝度特性を図32に示す。また、1mAの電流を流した
ときの発光スペクトルを図36に示す。本実施例6の発光素子において、1000cd/
の輝度を得るために必要な電圧は5.4Vであり、その時流れた電流は1.36mA
(電流密度は33.9mA/cm)であり、CIE色度座標は(x=0.65、y=0
.33)であった。また、この時の電流効率は3.0cd/A、電力効率は1.7lm/
Wであった。
【0335】
このように、本発明のキノキサリン誘導体と有機金属錯体を組み合わせることで、消費
電力の小さい赤色発光素子を得ることができた。
【0336】
また、本実施例6の発光素子に関し、初期輝度を1000cd/mとして、定電流駆
動による連続点灯試験を行ったところ、2500時間後でも初期輝度の70%の輝度を保
っていることがわかった。よって、本発明のキノキサリン誘導体用いることにより、長寿
命の発光素子を得ることができた。
【実施例7】
【0337】
本実施例では、本発明の発光素子について、図37を用いて説明する。
【0338】
まず、ガラス基板2101上に、酸化珪素を含むインジウム錫酸化物をスパッタリング
法にて成膜し、第1の電極2102を形成した。なお、その膜厚は110nmとし、電極
面積は2mm×2mmとした。
【0339】
次に、第1の電極が形成された面が下方となるように、第1の電極が形成された基板を
真空蒸着装置内に設けられた基板ホルダーに固定した。その後真空装置内を排気し、10
−4Pa程度まで減圧した後、第1の電極2102上に、NPBと酸化モリブデン(VI
)とを共蒸着することにより、複合材料を含む層2103を形成した。その膜厚は50n
mとし、NPBと酸化モリブデン(VI)との比率は、重量比で4:1(=NPB:酸化
モリブデン)となるように調節した。
【0340】
次に、抵抗加熱を用いた蒸着法により、複合材料を含む層2103上にNPBを10n
mの膜厚となるように成膜し、正孔輸送層2104を形成した。
【0341】
さらに、構造式(14)で表される本発明のキノキサリン誘導体である2,3−ビス{
4−[N−(4−ビフェニリル)−N−フェニルアミノ]フェニル}キノキサリン(以下
、BPAPQと記す)と構造式(123)で表される(アセチルアセトナト)ビス[2−
(4−フルオロフェニル)−3−メチルキノキサリナト]イリジウム(III)(以下略
、Ir(MFpq)(acac)と記す)とを共蒸着することにより、正孔輸送層21
04上に30nmの膜厚の発光層2105を形成した。ここで、BPAPQとIr(MF
pq)acacとの重量比は、1:0.01(=BPAPQ:Ir(MFpq)ac
ac)となるように調節した。これによって、Ir(MFpq)acacはBPAPQ
から成る層中に分散した状態となる。
【0342】
その後抵抗加熱による蒸着法を用いて、発光層2105上にBAlqを10nmの膜厚
となるように成膜し、電子輸送層2106を形成した。
【0343】
さらに、電子輸送層2106上に、Alqとリチウムを共蒸着することにより、Alq
上に、50nmの膜厚で電子注入層2107を形成した。ここで、Alqとリチウムとの
重量比は、1:0.01(=Alq:リチウム)となるように調節した。これによって、
リチウムはAlqから成る層中に分散した状態となる。
【0344】
最後に、抵抗加熱による蒸着法を用い、電子注入層2107上にアルミニウムを200
nmの膜厚となるように成膜することにより、第2の電極2108を形成することで、実
施例6の発光素子を作製した。
【0345】
本実施例7の発光素子の電流密度―輝度特性を図38に示す。また、輝度―電圧特性を
図39に示す。また、電流効率―輝度特性を図40に示す。また、1mAの電流を流した
ときの発光スペクトルを図41に示す。本実施例7の発光素子において、1000cd/
の輝度を得るために必要な電圧は5.6Vであり、その時流れた電流は0.43mA
(電流密度は10.8mA/cm)であり、CIE色度座標は(x=0.69、y=0
.31)であった。また、この時の電流効率は9.1cd/A、電力効率は5.11m/
Wであった。
【0346】
また、本実施例7の発光素子に関し、初期輝度を1000cd/mとして、定電流駆
動による連続点灯試験を行ったところ、310時間後でも初期輝度の90%の輝度を保っ
ており、長寿命な発光素子であることがわかった。つまり、本発明を適用することにより
、長寿命の発光素子を得ることができた。
【0347】
また、本発明のキノキサリン誘導体と有機金属錯体を組み合わせることで、消費電力の
小さい赤色発光素子を得ることができた。
【0348】
また、本実施例の発光素子は、発光効率が高い。よって、消費電力の低減された発光素
子を得ることができた。
【符号の説明】
【0349】
101 基板
102 第1の電極
103 第1の層
104 第2の層
105 第3の層
106 第4の層
107 第2の電極
302 第1の電極
303 第1の層
304 第2の層
305 第3の層
306 第4の層
307 第2の電極
601 ソース側駆動回路
602 画素部
603 ゲート側駆動回路
604 封止基板
605 シール材
607 空間
608 配線
609 FPC(フレキシブルプリントサーキット)
610 素子基板
611 スイッチング用TFT
612 電流制御用TFT
613 第1の電極
614 絶縁物
616 発光物質を含む層
617 第2の電極
618 発光素子
623 nチャネル型TFT
624 pチャネル型TFT
901 筐体
902 液晶層
903 バックライト
904 筐体
905 ドライバIC
906 端子
951 基板
952 電極
953 絶縁層
954 隔壁層
955 発光物質を含む層
956 電極
1201 ソース電極
1202 活性層
1203 ドレイン電極
1204 ゲート電極
2101 基板
2102 第1の電極
2103 複合材料を含む層
2104 正孔輸送層
2105 発光層
2106 電子輸送層
2107 電子注入層
2108 第2の電極
9101 筐体
9102 支持台
9103 表示部
9104 スピーカー部
9105 ビデオ入力端子
9201 本体
9202 筐体
9203 表示部
9204 キーボード
9205 外部接続ポート
9206 ポインティングマウス
9401 本体
9402 筐体
9403 表示部
9404 音声入力部
9405 音声出力部
9406 操作キー
9407 外部接続ポート
9408 アンテナ
9501 本体
9502 表示部
9503 筐体
9504 外部接続ポート
9505 リモコン受信部
9506 受像部
9507 バッテリー
9508 音声入力部
9509 操作キー
9510 接眼部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
キノキサリン骨格と、
アミノ基に結合しているビフェニル骨格と、
燐光発光性物質と、
を含む発光層を有する発光素子。
【請求項2】
キノキサリン骨格と、
アミノ基に結合しているターフェニル骨格と、
燐光発光性物質と、
を含む発光層を有する発光素子。
【請求項3】
請求項1または請求項2において、
前記燐光発光性物質は、イリジウムを含む有機金属錯体であることを特徴とする発光素子。
【請求項4】
請求項1または請求項2において、
前記燐光発光性物質は、一般式(101)で表される構造を含む有機金属錯体であることを特徴とする発光素子。
【化1】


(式中、R〜Rは、それぞれ、水素、ハロゲン元素、アシル基、アルキル基、アルコキシル基、アリール基、シアノ基、複素環基のいずれかを表す。Arはアリール基または複素環基を表す。また、Mは第9族元素または第10族元素を表す。)
【請求項5】
請求項1または請求項2において、
前記燐光発光性物質は、一般式(104)で表される有機金属錯体であることを特徴とする発光素子。
【化2】


(式中、R〜Rは、それぞれ、水素、ハロゲン元素、アシル基、アルキル基、アルコキシル基、アリール基、シアノ基、複素環基のいずれかを表す。Arはアリール基または複素環基を表す。Mは第9族元素または第10族元素を表す。Mが第9族元素のときはn=2、Mが第10族元素のときはn=1である。Lは、ベータジケトン構造を有するモノアニオン性の配位子、またはカルボキシル基を有するモノアニオン性の二座キレート配位子、またはフェノール性水酸基を有するモノアニオン性の二座キレート配位子、のいずれかを表す。)
【請求項6】
請求項1または請求項2において、
前記燐光発光性物質は、一般式(105)で表される有機金属錯体であることを特徴とする発光素子。
【化3】


(式中、R11は炭素数1〜4のアルキル基のいずれかを表す。また、R12〜R15は、それぞれ、水素、ハロゲン元素、アシル基、アルキル基、アルコキシル基、アリール基、シアノ基、複素環基のいずれかを表す。また、R16〜R19は、それぞれ、水素、アシル基、アルキル基、アルコキシル基、アリール基、複素環基、電子吸引性置換基のいずれかを表す。また、Mは第9族元素または第10族元素を表す。Mが第9族元素のときはn=2、Mが第10族元素のときはn=1である。Lは、ベータジケトン構造を有するモノアニオン性の配位子、またはカルボキシル基を有するモノアニオン性の二座キレート配位子、またはフェノール性水酸基を有するモノアニオン性の二座キレート配位子、のいずれかを表す。)
【請求項7】
請求項1または請求項2において、
前記燐光発光性物質は、一般式(106)で表される有機金属錯体であることを特徴とする発光素子。
【化4】


(式中、R22〜R34は、それぞれ、水素、ハロゲン元素、アシル基、アルキル基、アルコキシル基、アリール基、シアノ基、複素環基、電子吸引性置換基のいずれかを表す。Mは第9族元素または第10族元素を表す。また、Mは第9族元素または第10族元素を表す。Mが第9族元素のときはn=2、Mが第10族元素のときはn=1である。Lは、ベータジケトン構造を有するモノアニオン性の配位子、またはカルボキシル基を有するモノアニオン性の二座キレート配位子、またはフェノール性水酸基を有するモノアニオン性の二座キレート配位子、のいずれかを表す。)
【請求項8】
請求項1乃至請求項7のいずれか一項において、
前記燐光発光性物質の発光スペクトルのピークが560nm以上700nm以下であることを特徴とする発光素子。
【請求項9】
請求項1乃至請求項8のいずれか一項に記載の発光素子と、前記発光素子の発光を制御する制御手段とを有する発光装置。
【請求項10】
請求項1乃至請求項8のいずれか一項に記載の発光素子を有する照明装置。
【請求項11】
表示部を有し、
前記表示部は、請求項1乃至請求項8のいずれか一項に記載の発光素子と前記発光素子の発光を制御する制御手段とを備えたことを特徴とする電子機器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【図29】
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【図30】
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【図31】
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【図32】
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【図33】
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【図34】
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【図35】
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【図36】
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【図37】
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【図38】
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【図39】
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【図40】
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【図41】
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【公開番号】特開2012−256898(P2012−256898A)
【公開日】平成24年12月27日(2012.12.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−157156(P2012−157156)
【出願日】平成24年7月13日(2012.7.13)
【分割の表示】特願2006−245094(P2006−245094)の分割
【原出願日】平成18年9月11日(2006.9.11)
【出願人】(000153878)株式会社半導体エネルギー研究所 (5,264)
【Fターム(参考)】