説明

発光素子、発光装置、表示装置、照明装置及び電子機器

【課題】高い発光効率を実現することが可能な発光素子を提供する。また、低駆動電圧化が可能な発光素子を提供する。
【解決手段】ホスト材料と正孔輸送材料に、カルバゾール骨格を有する異なる物質を用い、且つ、正孔輸送材料は最高被占軌道(HOMO)及び最低空軌道(LUMO)が共にカルバゾール骨格に分布する物質であり、ホスト材料は、HOMOがカルバゾール骨格、LUMOがカルバゾール骨格以外の骨格にそれぞれ分布する物質である発光素子を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一対の電極間に有機化合物を含む発光層を有する発光素子およびそれを用いた発光装置、表示装置、照明装置及び電子機器に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、一対の電極間に有機化合物を含む発光層(以下EL層とも称する)を有する発光素子(エレクトロルミネッセンス素子:EL素子ともいう)の開発が盛んに行われており、その用途は、表示装置や照明装置、電子機器の光源などの多くの分野に及んでいる。この理由としては、EL素子が、入力に対して高速に応答することが可能であること、薄型軽量に作製できること、面での発光が可能であること等、多くの有利な特徴を備えることが挙げられる。
【0003】
また、EL素子は電力の光への変換効率が高く、省エネルギー性能でも高いポテンシャルを秘めている点でも注目されている。また、基板の選択によっては可撓性を有する表示装置や照明装置、物理的な破壊に強い耐衝撃性を有する表示装置や照明装置、非常に軽量な表示装置や照明装置を提供できる点も特徴的である。
【0004】
エネルギー問題がますます深刻化する昨今、これら表示装置、照明装置などの低消費電力化はさらに重要性を増しつつある課題である。特許文献1では、特定のホスト材料を用いた発光層とともに特定の材料からなる正孔輸送層を設けることで、発光効率の良好な発光素子を得ることができるとしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2009−010364号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
発光効率の高い有機発光素子を得る方法の一つとして、りん光を発する発光物質を発光中心物質(ゲスト)として利用することが挙げられる。
【0007】
しかし、りん光が放出されるエネルギー準位である三重項準位は、蛍光を放出する一重項準位よりもエネルギー的に低い位置にある。このため、蛍光発光素子とりん光発光素子で同じ波長の光を得るためには、りん光発光素子ではより広いエネルギーギャップを有するホスト材料、キャリア輸送材料が必要となるが、そのような材料の開発は他の材料の開発と比較して遅れているのが現状である。
【0008】
また、上述のような広いエネルギーギャップを有する材料を用意できたとしても、各層に用いられる材料の組み合わせによっては、りん光発光物質本来の発光効率を発揮できない場合や、駆動電圧が上昇してしまう場合がある。
【0009】
そこで本発明では、高い発光効率の発光素子を提供することを課題とする。また、低い駆動電圧の発光素子を提供することを課題とする。また、消費電力の小さい発光素子、発光装置、表示装置、照明装置及び電子機器を提供することを課題とする。
【0010】
本発明では、上記課題の少なくとも1を達成すればよい。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を鑑み、本発明者らは、ホスト材料と正孔輸送材料に、各々カルバゾール骨格を有する異なる物質を用い、且つ、正孔輸送材料は最高被占分子軌道(HOMO)及び最低空分子軌道(LUMO)が共にカルバゾール骨格に分布する物質であり、ホスト材料は、HOMOがカルバゾール骨格、LUMOがカルバゾール骨格以外の骨格にそれぞれ分布する物質である発光素子が、上記課題を達成することができることを見出した。なお本明細書中において、「HOMOがある骨格に分布する」とは、HOMOが他の骨格上と比較して該骨格上に大きく広がっているということを意味する。同様に、「LUMOがある骨格に分布する」とは、LUMOが他の骨格上と比較して該骨格上に大きく広がっているということを意味する。
【0012】
すなわち、本発明の一態様は、以下の構成を有する発光素子である。陽極と陰極と、陽極及び陰極間に挟まれたEL層を有する発光素子において、EL層は少なくとも発光中心物質と発光中心物質を分散するホスト材料を含む発光層と、発光層の陽極側に接して設けられた正孔輸送材料を含む正孔輸送層とを有し、正孔輸送材料はカルバゾール骨格とカルバゾール骨格以外の骨格からなる第1のカルバゾール誘導体であり、ホスト材料はカルバゾール骨格とカルバゾール骨格以外の骨格からなる第2のカルバゾール誘導体であり、第1のカルバゾール誘導体は、HOMO及びLUMOが共にカルバゾール骨格に分布する物質であり、第2のカルバゾール誘導体は、HOMOがカルバゾール骨格に分布し、且つLUMOがカルバゾール骨格以外の骨格に分布している物質であることを特徴とする発光素子である。
【0013】
また、本発明の他の構成は上記構成において、第1のカルバゾール誘導体は、N−フェニルカルバゾール誘導体であることを特徴とする発光素子である。
【0014】
また、本発明の他の構成は、上記構成において、第2のカルバゾール誘導体のカルバゾール骨格以外の骨格が電子輸送性の骨格を有することを特徴とする発光素子である。
【0015】
また、本発明の他の構成は、上記構成において、第2のカルバゾール誘導体は、アリール基を有するカルバゾール誘導体であることを特徴とする発光素子である。
【0016】
また、本発明の他の構成は、上記構成において、第2のカルバゾール誘導体はヘテロアリール基を有するカルバゾール誘導体であることを特徴とする発光素子である。
【0017】
また、本発明の他の態様は、上記構成において、第1のカルバゾール誘導体が9,9′‐(1,3‐フェニレン)ビス(9H‐カルバゾール)(略称:mCP)であり、第2のカルバゾール誘導体が9,9′‐(3′,5′‐ジフェニル‐1,1′‐ビフェニル‐3,5‐ジイル)ビス(9H‐カルバゾール)(略称:mTPmCP)であることを特徴とする発光素子である。
【0018】
また、本発明の他の構成は、上記構成において、発光中心物質から放出される光は青色の蛍光であることを特徴とする発光素子である。
【0019】
また、本発明の他の構成は、上記構成において、発光中心物質発光物質から放出される光は青緑よりも短波長のりん光であることを特徴とする発光素子である。
【0020】
また、本発明の他の構成は、上述の発光素子を光源として備えた発光装置である。
【0021】
また、本発明の他の構成は、上述の発光素子を表示部に備えた表示装置である。
【0022】
また、本発明の他の構成は、上述の発光素子を光源とする照明装置である。
【0023】
また、本発明の他の構成は、上述の発光素子を備えた電子機器である。
【発明の効果】
【0024】
本発明の発光素子は、高い発光効率を実現することが可能な発光素子である。また、低駆動電圧化が可能な発光素子である。また、本発明では、消費電力の小さい発光素子、発光装置、表示装置、照明装置及び電子機器を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】発光素子の概念図。
【図2】アクティブマトリクス型発光装置の概念図。
【図3】パッシブマトリクス型発光装置の概念図。
【図4】電子機器を表す図。
【図5】電子機器を表す図。
【図6】照明装置を表す図。
【図7】照明装置を表す図。
【図8】車載表示装置及び照明装置を表す図。
【図9】照明装置を表す図。
【図10】発光素子1乃至発光素子4の電流密度−輝度特性を表すグラフ。
【図11】発光素子1乃至発光素子4の電圧−輝度特性を表すグラフ。
【図12】発光素子1乃至発光素子4の輝度−電流効率特性を表すグラフ。
【図13】発光素子1乃至発光素子4の電圧−電流特性を表すグラフ。
【図14】発光素子1乃至発光素子4の輝度−パワー効率特性を表すグラフ。
【図15】発光素子1乃至発光素子4の輝度−外部量子効率特性を表すグラフ。
【図16】発光素子1乃至発光素子4の発光スペクトルを表す図。
【図17】mCPのHOMO、LUMOの分布位置を説明する図。
【図18】mTPmCPのHOMO、LUMOの分布位置を説明する図。
【図19】発光素子5乃至発光素子8の電流密度−輝度特性を表すグラフ。
【図20】発光素子5乃至発光素子8の電圧−輝度特性を表すグラフ。
【図21】発光素子5乃至発光素子8の輝度−電流効率特性を表すグラフ。
【図22】発光素子5乃至発光素子8の電圧−電流特性を表すグラフ。
【図23】発光素子5乃至発光素子8の輝度−パワー効率特性を表すグラフ。
【図24】発光素子5乃至発光素子8の輝度−外部量子効率特性を表すグラフ。
【図25】発光素子5乃至発光素子8の発光スペクトルを表す図。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら説明する。但し、本発明は多くの異なる態様で実施することが可能であり、本発明の趣旨及びその範囲から逸脱することなくその形態及び詳細を様々に変更し得ることは当業者であれば容易に理解される。従って、本実施の形態の記載内容に限定して解釈されるものではない。
【0027】
なお、説明に用いる図はわかりやすさを優先し、各要素における拡大、縮小率は一定ではない。そのため、図における各要素の厚さ、長さ、大きさの比率がそのまま本発明の一態様である発光装置の厚さ、長さ、大きさの比率を表すわけではないことに留意されたい。また、数値が同一であり、アルファベットの符号のみが異なる符合については、同一のグループとして扱う場合があり、上述のような符号に関して数値のみ示された場合は、アルファベットの異なる符号をすべて含めたグループを指すものとする。
【0028】
(実施の形態1)
図1(A)、(B)は本発明の一態様である発光素子の断面図の模式図である。本実施の形態で説明する発光素子は、陽極として機能する電極(以下陽極と称する)と陰極として機能する電極(以下陰極と称する)からなる一対の電極(第1の電極101、第2の電極102)に挟まれたEL層103を有している。EL層103は機能分離された複数層からなり、本実施の形態の発光素子は、少なくとも電流が流れることによって発光を呈する発光層113と当該発光層の陽極側に接して設けられた正孔輸送層112とを含む。
【0029】
正孔輸送層112は、カルバゾール骨格を含む第1のカルバゾール誘導体である正孔輸送材料を含む層である。なお、第1のカルバゾール誘導体は、そのHOMOとLUMOが共にカルバゾール骨格に分布する物質であるとする。このようなカルバゾール誘導体としては、N−フェニルカルバゾール誘導体を好適に用いることができる。
【0030】
発光層113は、所望の発光を得るための発光中心物質と、発光中心物質を分散するためのホスト材料とを少なくとも含んでいる。そして、ホスト材料は、カルバゾール骨格を含む第2のカルバゾール誘導体からなっている。第2のカルバゾール誘導体は、カルバゾール骨格の他に、他の骨格をさらに有する物質であり、そのHOMOがカルバゾール骨格に分布し、LUMOがカルバゾール骨格に分布せず、カルバゾール骨格以外の骨格に分布する物質であるとする。
【0031】
以上のような構成を有する本実施の形態における発光素子は、正孔輸送層112の正孔輸送材料のHOMOと発光層113のホスト材料のHOMOが、共にカルバゾール骨格にあることから、いずれもホールがカルバゾール骨格に注入される。従って、HOMO準位はカルバゾール骨格で実質的に決まるため、HOMO準位を発光層113と正孔輸送層112とでそろえることが容易に可能となる。このため、正孔輸送層112から発光層113への正孔の注入がスムーズになり、駆動電圧の小さい発光素子を得ることが容易となる。
【0032】
一方で、本実施の形態における発光素子は、正孔輸送層112の正孔輸送材料のLUMOはカルバゾール骨格に、発光層113のホスト材料のLUMOはカルバゾール以外の骨格にある。このため、電子が注入される骨格が異なる。カルバゾール骨格には電子が注入されにくいことから、正孔輸送材料のLUMO準位はホスト材料のLUMO準位より浅い(絶対値が小さい)。これにより、発光層113から正孔輸送層112への電子の突き抜けを防ぐことができ、再結合確率を増大させることができることから、発光効率の高い発光素子を得ることができる。
【0033】
また、カルバゾール骨格のバンドギャップは非常に大きいことから、第1のカルバゾール誘導体は大きなバンドギャップ、ひいては高いT1準位を有することとなる。また、カルバゾール骨格のHOMO準位が深い(絶対値が大きい)ことから、第2のカルバゾール誘導体も比較的バンドギャップの大きい物質となる。そのため、本実施の形態における発光素子の構成は、青色の蛍光や緑色〜青色のりん光を利用する発光素子に好適に適用することが可能である。
【0034】
また、第2のカルバゾール誘導体における、カルバゾール骨格以外の骨格は、電子輸送性を有する骨格を含むことが好ましい。これは、電子輸送性を有する骨格を有することによって、発光層113に電子を流しやすくなり、駆動電圧の低減を図ることができるからである。また、発光層113における電子輸送層側での発光領域の偏りを防ぎ、濃度消光やT−Tアニヒレイションの発生を抑制することができ、発光効率の低下を小さくすることが可能となる。また、当該骨格によって電子輸送性が大きくなったとしても、正孔輸送材料のLUMOがホスト材料のLUMOより浅いことから、正孔輸送層112への電子の突き抜けを防ぐことができ、発光効率の低下を抑制することができる。なお、この場合、第2のカルバゾール誘導体のLUMOは当該電子輸送性を有する骨格にあってもよいが、カルバゾール骨格以外の骨格がさらにその他の骨格を有するならば、当該骨格にLUMOが分布していても良い。
【0035】
電子輸送性を有する骨格としては、例えば芳香族炭化水素基やπ電子不足系へテロ芳香族基などが挙げられる。これらの中では、芳香族炭化水素基の方が好ましい。
【0036】
芳香族炭化水素基としては、ナフチル基、ビフェニル基、ターフェニル基、フルオレニル基、トリフェニレニル基などを用いることが、第2のカルバゾール誘導体のバンドギャップや三重項エネルギー準位をより高く保つことが可能であるため好ましい構成である。
【0037】
また、ヘテロ芳香族基としては、ピラゾリル基、イミダゾリル基、トリアゾリル基、オキサジアゾリル基、ベンゾイミダゾリル基、ベンゾオキサゾリル基、ピリジニル基、ピラジニル基、ピリミジニル基、フェナントロリニル基などを用いることが、第2のカルバゾール誘導体のバンドギャップや三重項エネルギー準位をより高く保つことが可能であるため好ましい構成である。
【0038】
第1のカルバゾール誘導体として好適に用いることが可能なカルバゾール誘導体の例を以下の構造式(100)乃至(107)に具体的に例示する。なお、第1のカルバゾール誘導体に適用可能なカルバゾール誘導体はこれらに限られることはない。
【0039】
【化1】

【0040】
また、第2のカルバゾール誘導体として好適に用いることが可能なカルバゾール誘導体の具体例を以下の構造式(200)乃至(220)に具体的に例示する。なお、第2のカルバゾール誘導体に適用可能なカルバゾール誘導体はこれらに限られることはない。
【0041】
【化2】

【0042】
【化3】

【0043】
【化4】

【0044】
【化5】

【0045】
以下からは発光素子の構成について説明する。
【0046】
図1(A)における第1の電極101と第2の電極102はそれぞれ陽極と陰極である。これら電極のうち、少なくとも一方の電極は透光性を有する材料で形成されている。これらの電極の間には、EL層103が挟まれており、これらの電極間に電圧を印加し、EL層103に電流を流すことによってEL層103に形成された発光層113から発光を得ることができる。EL層103は上述したように、少なくとも発光中心物質をホスト材料に分散した構成を有する発光層113と、発光層113の陽極側に接して形成された正孔輸送層112を有している。
【0047】
陽極を形成する物質としては、仕事関数の大きい(具体的には4.0eV以上)金属、合金、導電性化合物、およびこれらの混合物などを用いることが好ましい。具体的には、例えば、酸化インジウム−酸化スズ(ITO:Indium Tin Oxide)、ケイ素若しくは酸化ケイ素を含有した酸化インジウム−酸化スズ、酸化インジウム−酸化亜鉛(Indium Zinc Oxide)、酸化タングステン及び酸化亜鉛を含有した酸化インジウム等が挙げられる。これらの導電性金属酸化物膜は、通常スパッタにより成膜されるが、ゾル−ゲル法などを応用して作製しても構わない。例えば、酸化インジウム−酸化亜鉛は、酸化インジウムに対し1〜20wt%の酸化亜鉛を加えたターゲットを用いてスパッタリング法により形成することができる。また、酸化タングステン及び酸化亜鉛を含有した酸化インジウムは、酸化インジウムに対し酸化タングステンを0.5〜5wt%、酸化亜鉛を0.1〜1wt%含有したターゲットを用いてスパッタリング法により形成することができる。この他、金(Au)、白金(Pt)、ニッケル(Ni)、タングステン(W)、クロム(Cr)、モリブデン(Mo)、鉄(Fe)、コバルト(Co)、銅(Cu)、パラジウム(Pd)、または金属材料の窒化物(例えば、窒化チタン)等が挙げられる。また、グラフェンも用いることができる。
【0048】
陰極を形成する物質としては、仕事関数の小さい(具体的には3.8eV以下)金属、合金、導電性化合物、およびこれらの混合物などを用いることができる。このような陰極材料の具体例としては、リチウム(Li)やセシウム(Cs)、マグネシウム(Mg)、カルシウム(Ca)、ストロンチウム(Sr)等の元素周期表の第1族または第2族に属する元素、及びこれらを含む合金(MgAg、AlLi)やユウロピウム(Eu)、イッテルビウム(Yb)等の希土類金属及びこれらを含む合金等が挙げられる。しかしながら、陰極と電子輸送層114との間に、電子注入層115を設けることにより、仕事関数の大小に関わらず、Al、Ag、ITO、ケイ素若しくは酸化ケイ素を含有した酸化インジウム−酸化スズ等様々な導電性材料を陰極として用いることができる。これら導電性材料は、スパッタリング法やインクジェット法、スピンコート法等を用いて成膜することが可能である。
【0049】
EL層103の積層構造については、上述した構成以外は特に限定されず、キャリア輸送性の高い物質を含むキャリア輸送層、キャリア注入性の高い物質を含むキャリア注入層、バイポーラ性(電子及び正孔の輸送性の高い物質)の物質を含む層等を適宜組み合わせて構成すればよい。例えば、図1(A)のように正孔注入層111、電子輸送層114、電子注入層115等を正孔輸送層112と発光層113に適宜組み合わせて構成することができる。もちろんその他の機能を有する層が含まれていても良いし、一層で複数の機能を担う層があっても良い。本実施の形態では、第1の電極101の上から、正孔注入層111、正孔輸送層112、発光層113、電子輸送層114、電子注入層115の順に各機能層が積層した構成を有するEL層103について説明する。各層を構成する材料について以下に具体的に示す。
【0050】
正孔注入層111は、陽極に接して設けられ、正孔注入性の高い物質を含む層である。モリブデン酸化物やバナジウム酸化物、ルテニウム酸化物、タングステン酸化物、マンガン酸化物等を用いることができる。この他、フタロシアニン(略称:HPc)や銅フタロシアニン(CuPc)等のフタロシアニン系の化合物、4,4’−ビス[N−(4−ジフェニルアミノフェニル)−N−フェニルアミノ]ビフェニル(略称:DPAB)、N,N’−ビス{4−[ビス(3−メチルフェニル)アミノ]フェニル}−N,N’−ジフェニル−(1,1’−ビフェニル)−4,4’−ジアミン(略称:DNTPD)等の芳香族アミン化合物、或いはポリ(エチレンジオキシチオフェン)/ポリ(スチレンスルホン酸)(PEDOT/PSS)等の高分子等によっても正孔注入層111を形成することができる。
【0051】
また、正孔注入層111として、正孔輸送性の高い物質に当該正孔輸送性の高い物質に対してアクセプター性を示す物質を含有させた複合材料を用いることもできる。なお、前記複合材料を陽極に接して形成することにより、仕事関数に依らず陽極を形成する材料を選ぶことができる。つまり、陽極を構成する材料として仕事関数の大きい材料だけでなく、仕事関数の小さい材料も用いることができる。アクセプター性を示す物質としては、7,7,8,8−テトラシアノ−2,3,5,6−テトラフルオロキノジメタン(略称:F−TCNQ)、クロラニル等を挙げることができる。また、遷移金属酸化物を挙げることができる。例えば、元素周期表における第4族乃至第8族に属する金属の酸化物を用いることもできる。具体的には、酸化バナジウム、酸化ニオブ、酸化タンタル、酸化クロム、酸化モリブデン、酸化タングステン、酸化マンガン、酸化レニウムは電子受容性が高いため好ましい。中でも特に、酸化モリブデンは大気中でも安定であり、吸湿性が低く、扱いやすいため好ましい。
【0052】
複合材料に用いる正孔輸送性の高い物質としては、芳香族アミン化合物、カルバゾール誘導体、芳香族炭化水素、高分子化合物(オリゴマー、デンドリマーを含む)など、種々の化合物を用いることができる。具体的には、10−6cm/Vs以上の正孔移動度を有する物質であることが好ましい。但し、電子よりも正孔の輸送性の高い物質であれば、これら以外のものを用いてもよい。以下では、複合材料に用いることのできる有機化合物を具体的に列挙する。
【0053】
例えば、芳香族アミン化合物としては、N,N’−ジ(p−トリル)−N,N’−ジフェニル−p−フェニレンジアミン(略称:DTDPPA)、DPAB、DNTPD、1,3,5−トリス[N−(4−ジフェニルアミノフェニル)−N−フェニルアミノ]ベンゼン(略称:DPA3B)等を挙げることができる。
【0054】
複合材料に用いることのできるカルバゾール誘導体としては、具体的には、3−[N−(9−フェニルカルバゾール−3−イル)−N−フェニルアミノ]−9−フェニルカルバゾール(略称:PCzPCA1)、3,6−ビス[N−(9−フェニルカルバゾール−3−イル)−N−フェニルアミノ]−9−フェニルカルバゾール(略称:PCzPCA2)、3−[N−(1−ナフチル)−N−(9−フェニルカルバゾール−3−イル)アミノ]−9−フェニルカルバゾール(略称:PCzPCN1)等を挙げることができる。
【0055】
また、複合材料に用いることのできるカルバゾール誘導体としては、他に、4,4’−ジ(N−カルバゾリル)ビフェニル(略称:CBP)、1,3,5−トリス[4−(N−カルバゾリル)フェニル]ベンゼン(略称:TCPB)、9−[4−(10−フェニル−9−アントリル)フェニル]−9H−カルバゾール(略称:CzPA)、1,4−ビス[4−(N−カルバゾリル)フェニル]−2,3,5,6−テトラフェニルベンゼン等を用いることができる。
【0056】
また、複合材料に用いることのできる芳香族炭化水素としては、例えば、2−tert−ブチル−9,10−ジ(2−ナフチル)アントラセン(略称:t−BuDNA)、2−tert−ブチル−9,10−ジ(1−ナフチル)アントラセン、9,10−ビス(3,5−ジフェニルフェニル)アントラセン(略称:DPPA)、2−tert−ブチル−9,10−ビス(4−フェニルフェニル)アントラセン(略称:t−BuDBA)、9,10−ジ(2−ナフチル)アントラセン(略称:DNA)、9,10−ジフェニルアントラセン(略称:DPAnth)、2−tert−ブチルアントラセン(略称:t−BuAnth)、9,10−ビス(4−メチル−1−ナフチル)アントラセン(略称:DMNA)、2−tert−ブチル−9,10−ビス[2−(1−ナフチル)フェニル]アントラセン、9,10−ビス[2−(1−ナフチル)フェニル]アントラセン、2,3,6,7−テトラメチル−9,10−ジ(1−ナフチル)アントラセン、2,3,6,7−テトラメチル−9,10−ジ(2−ナフチル)アントラセン、9,9’−ビアントリル、10,10’−ジフェニル−9,9’−ビアントリル、10,10’−ビス(2−フェニルフェニル)−9,9’−ビアントリル、10,10’−ビス[(2,3,4,5,6−ペンタフェニル)フェニル]−9,9’−ビアントリル、アントラセン、テトラセン、ルブレン、ペリレン、2,5,8,11−テトラ(tert−ブチル)ペリレン等が挙げられる。また、この他、ペンタセン、コロネン等も用いることができる。このように、1×10−6cm/Vs以上の正孔移動度を有し、炭素数14〜42である芳香族炭化水素を用いることがより好ましい。
【0057】
複合材料に用いることのできる芳香族炭化水素は、ビニル骨格を有していてもよい。ビニル基を有している芳香族炭化水素としては、例えば、4,4’−ビス(2,2−ジフェニルビニル)ビフェニル(略称:DPVBi)、9,10−ビス[4−(2,2−ジフェニルビニル)フェニル]アントラセン(略称:DPVPA)等が挙げられる。
【0058】
また、ポリ(N−ビニルカルバゾール)(略称:PVK)やポリ(4−ビニルトリフェニルアミン)(略称:PVTPA)、ポリ[N−(4−{N’−[4−(4−ジフェニルアミノ)フェニル]フェニル−N’−フェニルアミノ}フェニル)メタクリルアミド](略称:PTPDMA)、ポリ[N,N’−ビス(4−ブチルフェニル)−N,N’−ビス(フェニル)ベンジジン](略称:Poly−TPD)等の高分子化合物を用いることもできる。
【0059】
なお、このような複合材料からなる層は、その膜厚が厚くても薄くても駆動電圧の変化がほとんど無いことから、発光層113から発する光の取り出し効率や指向性などを制御するための光学設計を行う際に非常に好適に用いることができる。
【0060】
正孔輸送層112は、カルバゾール骨格を含む第1のカルバゾール誘導体である正孔輸送材料を含む層である。なお、第1のカルバゾール誘導体は、そのHOMOとLUMOが共にカルバゾール骨格に分布する物質であるとする。
【0061】
上記第1のカルバゾール誘導体としては、上述の構造式(100)乃至(107)で表される物質を用いることができる。
【0062】
発光層113は、発光物質を含む層である。発光層113は上述したように、ホスト材料中に発光中心物質を分散するいわゆるホスト−ゲスト型の発光層である。
【0063】
用いられる発光中心物質に制限は無く、公知の蛍光又は燐光を発する材料を用いることができる。蛍光発光性材料としては、例えばN,N’−ビス[4−(9H−カルバゾール−9−イル)フェニル]−N,N’−ジフェニルスチルベン−4,4’−ジアミン(略称:YGA2S)、4−(9H−カルバゾール−9−イル)−4’−(10−フェニル−9−アントリル)トリフェニルアミン(略称:YGAPA)、等の他、発光波長が450nm以上の4−(9H−カルバゾール−9−イル)−4’−(9,10−ジフェニル−2−アントリル)トリフェニルアミン(略称:2YGAPPA)、N,9−ジフェニル−N−[4−(10−フェニル−9−アントリル)フェニル]−9H−カルバゾール−3−アミン(略称:PCAPA)、ペリレン、2,5,8,11−テトラ−tert−ブチルペリレン(略称:TBP)、4−(10−フェニル−9−アントリル)−4’−(9−フェニル−9H−カルバゾール−3−イル)トリフェニルアミン(略称:PCBAPA)、N,N’’−(2−tert−ブチルアントラセン−9,10−ジイルジ−4,1−フェニレン)ビス[N,N’,N’−トリフェニル−1,4−フェニレンジアミン](略称:DPABPA)、N,9−ジフェニル−N−[4−(9,10−ジフェニル−2−アントリル)フェニル]−9H−カルバゾール−3−アミン(略称:2PCAPPA)、N−[4−(9,10−ジフェニル−2−アントリル)フェニル]−N,N’,N’−トリフェニル−1,4−フェニレンジアミン(略称:2DPAPPA)、N,N,N’,N’,N’’,N’’,N’’’,N’’’−オクタフェニルジベンゾ[g,p]クリセン−2,7,10,15−テトラアミン(略称:DBC1)、クマリン30、N−(9,10−ジフェニル−2−アントリル)−N,9−ジフェニル−9H−カルバゾール−3−アミン(略称:2PCAPA)、N−[9,10−ビス(1,1’−ビフェニル−2−イル)−2−アントリル]−N,9−ジフェニル−9H−カルバゾール−3−アミン(略称:2PCABPhA)、N−(9,10−ジフェニル−2−アントリル)−N,N’,N’−トリフェニル−1,4−フェニレンジアミン(略称:2DPAPA)、N−[9,10−ビス(1,1’−ビフェニル−2−イル)−2−アントリル]−N,N’,N’−トリフェニル−1,4−フェニレンジアミン(略称:2DPABPhA)、9,10−ビス(1,1’−ビフェニル−2−イル)−N−[4−(9H−カルバゾール−9−イル)フェニル]−N−フェニルアントラセン−2−アミン(略称:2YGABPhA)、N,N,9−トリフェニルアントラセン−9−アミン(略称:DPhAPhA)、クマリン545T、N,N’−ジフェニルキナクリドン(略称:DPQd)、ルブレン、5,12−ビス(1,1’−ビフェニル−4−イル)−6,11−ジフェニルテトラセン(略称:BPT)、2−(2−{2−[4−(ジメチルアミノ)フェニル]エテニル}−6−メチル−4H−ピラン−4−イリデン)プロパンジニトリル(略称:DCM1)、2−{2−メチル−6−[2−(2,3,6,7−テトラヒドロ−1H,5H−ベンゾ[ij]キノリジン−9−イル)エテニル]−4H−ピラン−4−イリデン}プロパンジニトリル(略称:DCM2)、N,N,N’,N’−テトラキス(4−メチルフェニル)テトラセン−5,11−ジアミン(略称:p−mPhTD)、7,14−ジフェニル−N,N,N’,N’−テトラキス(4−メチルフェニル)アセナフト[1,2−a]フルオランテン−3,10−ジアミン(略称:p−mPhAFD)、2−{2−イソプロピル−6−[2−(1,1,7,7−テトラメチル−2,3,6,7−テトラヒドロ−1H,5H−ベンゾ[ij]キノリジン−9−イル)エテニル]−4H−ピラン−4−イリデン}プロパンジニトリル(略称:DCJTI)、2−{2−tert−ブチル−6−[2−(1,1,7,7−テトラメチル−2,3,6,7−テトラヒドロ−1H,5H−ベンゾ[ij]キノリジン−9−イル)エテニル]−4H−ピラン−4−イリデン}プロパンジニトリル(略称:DCJTB)、2−(2,6−ビス{2−[4−(ジメチルアミノ)フェニル]エテニル}−4H−ピラン−4−イリデン)プロパンジニトリル(略称:BisDCM)、2−{2,6−ビス[2−(8−メトキシ−1,1,7,7−テトラメチル−2,3,6,7−テトラヒドロ−1H,5H−ベンゾ[ij]キノリジン−9−イル)エテニル]−4H−ピラン−4−イリデン}プロパンジニトリル(略称:BisDCJTM)などが挙げられる。燐光発光性材料としては、例えば、ビス[2−(4’,6’−ジフルオロフェニル)ピリジナト−N,C2’]イリジウム(III)テトラキス(1−ピラゾリル)ボラート(略称:FIr6)、の他、発光波長が470nm〜500nmの範囲にある、ビス[2−(4’,6’−ジフルオロフェニル)ピリジナト−N,C2’]イリジウム(III)ピコリナート(略称:FIrpic)、ビス[2−(3’,5’−ビストリフルオロメチルフェニル)ピリジナト−N,C2’]イリジウム(III)ピコリナート(略称:Ir(CFppy)(pic))、ビス[2−(4’,6’−ジフルオロフェニル)ピリジナト−N,C2’]イリジウム(III)アセチルアセトナート(略称:FIracac)、発光波長が500nm(緑色発光)以上のトリス(2−フェニルピリジナト)イリジウム(III)(略称:Ir(ppy))、ビス(2−フェニルピリジナト)イリジウム(III)アセチルアセトナート(略称:Ir(ppy)(acac))、トリス(アセチルアセトナト)(モノフェナントロリン)テルビウム(III)(略称:Tb(acac)(Phen))、ビス(ベンゾ[h]キノリナト)イリジウム(III)アセチルアセトナート(略称:Ir(bzq)(acac))、ビス(2,4−ジフェニル−1,3−オキサゾラト−N,C2’)イリジウム(III)アセチルアセトナート(略称:Ir(dpo)(acac))、ビス[2−(4’−パーフルオロフェニルフェニル)ピリジナト]イリジウム(III)アセチルアセトナート(略称:Ir(p−PF−ph)(acac))、ビス(2−フェニルベンゾチアゾラト−N,C2’)イリジウム(III)アセチルアセトナート(略称:Ir(bt)(acac))、ビス[2−(2’−ベンゾ[4,5−α]チエニル)ピリジナト−N,C3’]イリジウム(III)アセチルアセトナート(略称:Ir(btp)(acac))、ビス(1−フェニルイソキノリナト−N,C2’)イリジウム(III)アセチルアセトナート(略称:Ir(piq)(acac))、(アセチルアセトナト)ビス[2,3−ビス(4−フルオロフェニル)キノキサリナト]イリジウム(III)(略称:Ir(Fdpq)(acac))、(アセチルアセトナト)ビス(2,3,5−トリフェニルピラジナト)イリジウム(III)(略称:Ir(tppr)(acac))、2,3,7,8,12,13,17,18−オクタエチル−21H,23H−ポルフィリン白金(II)(略称:PtOEP)、トリス(1,3−ジフェニル−1,3−プロパンジオナト)(モノフェナントロリン)ユーロピウム(III)(略称:Eu(DBM)(Phen))、トリス[1−(2−テノイル)−3,3,3−トリフルオロアセトナト](モノフェナントロリン)ユーロピウム(III)(略称:Eu(TTA)(Phen))等が挙げられる。以上のような材料又は他の公知の材料の中から、各々のEL素子における発光色を考慮し選択すれば良い。
【0064】
ホスト材料は、カルバゾール骨格を含む第2のカルバゾール誘導体からなっている。第2のカルバゾール誘導体は、カルバゾール骨格の他に、他の骨格(第2の骨格)をさらに有する物質であり、そのHOMOがカルバゾール骨格に分布し、LUMOがカルバゾール骨格以外の骨格に分布する物質であるとする。
【0065】
第2のカルバゾール誘導体として用いることが可能な物質としては、上記構造式(200)乃至(220)で表されるカルバゾール誘導体を用いることができる。構造式(200)で表わされるmTPmCPは、後述するように、HOMOがカルバゾール骨格に分布している。また、上記第2の骨格としてm−テルフェニル骨格を有し、且つ、そのLUMOがm−テルフェニル骨格に分布している物質である。
【0066】
電子輸送層114は、電子輸送性の高い物質を含む層である。例えば、トリス(8−キノリノラト)アルミニウム(略称:Alq)、トリス(4−メチル−8−キノリノラト)アルミニウム(略称:Almq)、ビス(10−ヒドロキシベンゾ[h]キノリナト)ベリリウム(略称:BeBq)、ビス(2−メチル−8−キノリノラト)(4−フェニルフェノラト)アルミニウム(略称:BAlq)など、キノリン骨格またはベンゾキノリン骨格を有する金属錯体等からなる層である。また、この他ビス[2−(2−ヒドロキシフェニル)ベンズオキサゾラト]亜鉛(略称:Zn(BOX))、ビス[2−(2−ヒドロキシフェニル)ベンゾチアゾラト]亜鉛(略称:Zn(BTZ))などのオキサゾール系、チアゾール系配位子を有する金属錯体なども用いることができる。さらに、金属錯体以外にも、2−(4−ビフェニリル)−5−(4−tert−ブチルフェニル)−1,3,4−オキサジアゾール(略称:PBD)や、1,3−ビス[5−(p−tert−ブチルフェニル)−1,3,4−オキサジアゾール−2−イル]ベンゼン(略称:OXD−7)、3−(4−ビフェニリル)−4−フェニル−5−(4−tert−ブチルフェニル)−1,2,4−トリアゾール(略称:TAZ)、バソフェナントロリン(略称:BPhen)、バソキュプロイン(略称:BCP)なども用いることができる。ここに述べた物質は、主に10−6cm/Vs以上の電子移動度を有する物質である。なお、正孔よりも電子の輸送性の高い物質であれば、上記以外の物質を電子輸送層114として用いても構わない。
【0067】
また、電子輸送層114は、単層のものだけでなく、上記物質からなる層が二層以上積層したものとしてもよい。
【0068】
また、電子輸送層114と発光層113との間に電子の移動を制御する層を設けても良い。これは上述したような電子輸送性の高い材料に、電子トラップ性の高い物質を少量添加した層であって、電子の移動を抑制することによって、キャリアバランスを調節することが可能となる。このような構成は、発光層113を電子が再結合せずに突き抜けてしまうことにより発生する問題(例えば素子寿命の低下)の抑制に大きな効果を発揮する。
【0069】
電子注入層115としては、リチウム、カルシウム、フッ化リチウム(LiF)、フッ化セシウム(CsF)、フッ化カルシウム(CaF)等のようなアルカリ金属又はアルカリ土類金属又はこれらの化合物を用いることができる。または、電子輸送性を有する物質からなる層中に当該電子輸送性を有する物質に対して電子供与性を示す物質(代表的にはアルカリ金属又はアルカリ土類金属又はそれらの化合物)を含有させた材料(ドナー準位を有する材料)、例えばAlq中にMgを含有させた材料等を電子注入層115として用いることができる。なお、電子注入層115として、ドナー準位を有する材料を用いた構成は、陰極からの電子注入が効率良く行われるため、より好ましい構成である。
【0070】
なお、上述のEL層103は、図1(B)のように第1の電極501と第2の電極502との間に発光ユニットが複数積層されている構造であっても良い。この場合、積層された第1の発光ユニット511と第2の発光ユニット512との間には、電荷発生層513を設けることが好ましい。電荷発生層513は上述の複合材料で形成することができる。また、電荷発生層513は複合材料からなる層と他の材料からなる層との積層構造でもよい。この場合、他の材料からなる層としては、電子供与性物質と電子輸送性の高い物質とを含む層や、透明導電膜からなる層などを用いることができる。
【0071】
このような構成を有するEL素子は、発光ユニット間におけるエネルギーの移動や消光などの問題が起こり難く、材料の選択の幅が広がることで高い発光効率と長い寿命とを併せ持つEL素子とすることが容易である。また、一方の発光ユニットで燐光発光、他方で蛍光発光を得ることも容易である。
【0072】
図1(B)においては、二つの発光ユニット(第1の発光ユニット511及び第2の発光ユニット512)が積層されている構成を例示したが、3層以上の発光ユニットを積層することも可能である。この際も各発光ユニットの間には電荷発生層が設けられていることが好ましい。
【0073】
各発光ユニットは、図1(A)におけるEL層103と同様の構成をそれぞれ有しており、発光層と正孔輸送層の他、電子輸送層、電子注入層、正孔注入層、バイポーラ層など、図1(A)の説明の際にEL層の構成として説明した各機能層を適宜組み合わせて構成すればよい。なお、これら機能層は、本実施の形態における発光素子の場合は発光層及び正孔輸送層以外は必須ではなく、また、上述以外の他の機能層を備えていても良い。これらの層の詳しい説明は上述したとおりであるので繰り返しとなる説明を省略する。図1(A)におけるEL層103の説明を参照されたい。
【0074】
EL層103の形成方法としては、乾式法、湿式法を問わず、種々の方法を用いることができる。例えば、真空蒸着法、インクジェット法またはスピンコート法など用いても構わない。また各電極または各層ごとに異なる成膜方法を用いて形成しても構わない。
【0075】
電極についても、ゾル−ゲル法を用いて湿式法で形成しても良いし、金属材料のペーストを用いて湿式法で形成してもよい。また、スパッタリング法や真空蒸着法などの乾式法を用いて形成しても良い。
【0076】
以上のような構成を有する発光素子は、第1の電極101と第2の電極102との間に生じた電位差により電流が流れ、発光性の高い物質を含む層である発光層113において正孔と電子とが再結合し、発光するものである。つまり発光層113に発光領域が形成されるような構成となっている。
【0077】
発光は、第1の電極101または第2の電極102のいずれか一方または両方を通って外部に取り出される。従って、第1の電極101または第2の電極102のいずれか一方または両方は、透光性を有する電極で成る。第1の電極101のみが透光性を有する電極である場合、発光は第1の電極101を通って基板側から取り出される。また、第2の電極102のみが透光性を有する電極である場合、発光は第2の電極102を通って基板と逆側から取り出される。第1の電極101および第2の電極102がいずれも透光性を有する電極である場合、発光は第1の電極101および第2の電極102を通って、基板側および基板と逆側の両方から取り出される。
【0078】
なお、第1の電極101と第2の電極102との間に設けられる層の構成は、上記のものには限定されない。しかし、発光領域と電極やキャリア注入層に用いられる金属とが近接することによって生じる消光が抑制されるように、第1の電極101および第2の電極102から離れた部位に正孔と電子とが再結合する発光領域を設けた構成が好ましい。
【0079】
また、直接発光層に接する電子輸送層114は、発光層113で生成した励起子からのエネルギー移動を抑制するため、そのエネルギーギャップが発光層113に含まれるホスト材料、及び発光中心物質のエネルギーギャップより大きいことが好ましい。なお、本実施の形態における発光素子においては、正孔輸送層112を構成する正孔輸送材料は必然的にホスト材料よりも大きいエネルギーギャップを有するため、発光層113から正孔輸送層112へのエネルギー移動は抑制されており、発光効率の低下抑制に寄与している。
【0080】
(実施の形態2)
本実施の形態では、実施の形態1に記載の発光素子を用いた発光装置について説明する。
【0081】
本実施の形態では、実施の形態1に記載の発光素子を用いて作製された発光装置の一例について図2を用いて説明する。なお、図2(A)は、発光装置を示す上面図、図2(B)は図2(A)をA−BおよびC−Dで切断した断面図である。この発光装置は、発光素子の発光を制御するものとして、点線で示された駆動回路部(ソース線駆動回路)601、画素部602、駆動回路部(ゲート線駆動回路)603を含んでいる。また、604は封止基板、605はシール材であり、シール材605で囲まれた内側は、空間607になっている。
【0082】
なお、引き回し配線608はソース線駆動回路601及びゲート線駆動回路603に入力される信号を伝送するための配線であり、外部入力端子となるFPC(フレキシブルプリントサーキット)609からビデオ信号、クロック信号、スタート信号、リセット信号等を受け取る。なお、ここではFPCしか図示されていないが、このFPCにはプリント配線基板(PWB)が取り付けられていても良い。本明細書における発光装置には、発光装置本体だけでなく、それにFPCもしくはPWBが取り付けられたモジュールをも含むものとする。
【0083】
次に、断面構造について図2(B)を用いて説明する。素子基板610上には駆動回路部(601、603)及び画素部602が形成されているが、ここでは、駆動回路部であるソース線駆動回路601と、画素部602中の一つの画素が示されている。
【0084】
なお、ソース線駆動回路601はnチャネル型TFT623とpチャネル型TFT624とを組み合わせたCMOS回路が形成される。また、駆動回路は、種々のCMOS回路、PMOS回路もしくはNMOS回路で形成しても良い。また、本実施の形態では、基板上に駆動回路を形成したドライバ一体型を示すが、必ずしもその必要はなく、駆動回路を基板上ではなく外部に形成することもできる。
【0085】
また、画素部602はスイッチング用TFT611と、電流制御用TFT612とそのドレインに電気的に接続された第1の電極613とを含む複数の画素により形成される。なお、第1の電極613の端部を覆って絶縁物614が形成されている。ここでは、ポジ型の感光性アクリル樹脂膜を用いることにより形成する。
【0086】
また、被覆性を良好なものとするため、絶縁物614の上端部または下端部に曲面が形成されるようにする。例えば、絶縁物614の材料としてポジ型の感光性アクリルを用いた場合、絶縁物614の上端部のみに曲率半径(0.2μm〜3μm)を有する曲面を持たせることが好ましい。また、絶縁物614として、ネガ型の感光性樹脂、或いはポジ型の感光性樹脂のいずれも使用することができる。
【0087】
第1の電極613上には、有機化合物を含む層616、および第2の電極617がそれぞれ形成されている。ここで、陽極として機能する第1の電極613に用いる材料としては、仕事関数の大きい材料を用いることが望ましい。例えば、ITO膜、またはケイ素を含有したインジウム錫酸化物膜、2〜20wt%の酸化亜鉛を含む酸化インジウム膜、窒化チタン膜、クロム膜、タングステン膜、Zn膜、Pt膜などの単層膜の他、窒化チタンとアルミニウムを主成分とする膜との積層、窒化チタン膜とアルミニウムを主成分とする膜と窒化チタン膜との3層構造等を用いることができる。なお、積層構造とすると、配線としての抵抗も低く、良好なオーミックコンタクトがとれ、さらに陽極として機能させることができる。
【0088】
また、有機化合物を含む層616は実施の形態1で説明したEL層であり、蒸着マスクを用いた蒸着法、インクジェット法、スピンコート法等の種々の方法によって形成される。また、有機化合物を含む層616を構成する他の材料としては、低分子化合物、または高分子化合物(オリゴマー、デンドリマーを含む)であっても良い。
【0089】
さらに、有機化合物を含む層616上に形成され、陰極として機能する第2の電極617に用いる材料としては、仕事関数の小さい材料(Al、Mg、Li、Ca、またはこれらの合金や化合物、MgAg、MgIn、AlLi等)を用いることが好ましい。なお、有機化合物を含む層616で生じた光が第2の電極617を透過させる場合には、第2の電極617として、膜厚を薄くした金属薄膜と、透明導電膜(ITO、2〜20wt%の酸化亜鉛を含む酸化インジウム、ケイ素を含有したインジウム錫酸化物、酸化亜鉛(ZnO)等)との積層を用いるのが良い。
【0090】
なお、第1の電極613、有機化合物を含む層616、第2の電極617でもって、発光素子618が形成されている。当該発光素子618は実施の形態1に記載の構成を有する発光素子である。なお、画素部は複数の発光素子が形成されてなっているが、本実施の形態における発光装置では、実施の形態1で説明した構成を有する発光素子と、それ以外の構成を有する発光素子の両方が含まれていても良い。
【0091】
さらにシール材605で封止基板604を素子基板610と貼り合わせることにより、素子基板610、封止基板604、およびシール材605で囲まれた空間607に発光素子618が備えられた構造になっている。なお、空間607には、充填材が充填されており、例えば不活性気体(窒素やアルゴン等)が充填される場合の他、シール材605で充填される場合もある。本実施の形態では、空間607には不活性気体が充填されており、さらに乾燥剤625が設置されている。
【0092】
なお、シール材605にはエポキシ系樹脂を用いるのが好ましい。また、これらの材料はできるだけ水分や酸素を透過しない材料であることが望ましい。また、封止基板604に用いる材料としてガラス基板や石英基板の他、FRP(Fiberglass−Reinforced Plastics)、PVF(ポリビニルフロライド)、ポリエステルまたはアクリル樹脂等からなるプラスチック基板を用いることができる。
【0093】
以上のようにして、実施の形態1に記載の発光素子を用いて作製された発光装置を得ることができる。
【0094】
本実施の形態における発光装置は、実施の形態1に記載の発光素子を用いているため、良好な特性を備えた発光装置を得ることができる。具体的には、実施の形態1で示した発光素子は発光効率が良好な発光素子であることから消費電力の低減された発光装置とすることができる。また、駆動電圧の小さい発光素子を得ることができることから、駆動電圧の小さい発光装置を得ることができる。また、信頼性の良好な発光素子をえることができることから、信頼性の高い発光装置をえることができる。
【0095】
ここまでは、アクティブマトリクス型の発光装置について説明したが、以下からはパッシブマトリクス型の発光装置について説明する。図3には本発明を適用して作製したパッシブマトリクス型の発光装置を示す。なお、図3(A)は、発光装置を示す斜視図、図3(B)は図3(A)をX−Yで切断した断面図である。図3において、基板951上には、電極952と電極956との間には、実施の形態1で説明したEL層である有機化合物を含む層955が設けられている。電極952の端部は絶縁層953で覆われている。そして、絶縁層953上には隔壁層954が設けられている。隔壁層954の側壁は、基板面に近くなるに伴って、一方の側壁と他方の側壁との間隔が狭くなっていくような傾斜を有する。つまり、隔壁層954の短辺方向の断面は、台形状であり、底辺(絶縁層953の面方向と同様の方向を向き、絶縁層953と接する辺)の方が上辺(絶縁層953の面方向と同様の方向を向き、絶縁層953と接しない辺)よりも短い。このように、隔壁層954を設けることで、クロストーク等に起因した発光素子の不良を防ぐことが出来る。また、パッシブマトリクス型の発光装置においても、低駆動電圧で動作する実施の形態1に記載の発光素子を有することによって、低消費電力で駆動させることができる。
【0096】
以上、説明した発光装置は、マトリクス状に配置された多数の微小な発光素子をそれぞれ制御することが可能であるため、画像の表現を行う表示装置として好適に利用できる発光装置である。
【0097】
(実施の形態3)
本実施の形態では、実施の形態1に示す発光素子をその一部に含む電子機器について説明する。実施の形態1に記載の発光素子は発光効率が高く、消費電力が低減された発光素子である。その結果、本実施の形態に記載の電子機器は、消費電力が低減された電子機器とすることが可能である。
【0098】
上記発光素子を適用した電子機器として、例えば、テレビジョン装置(テレビ、またはテレビジョン受信機ともいう)、コンピュータ用などのモニタ、デジタルカメラ、デジタルビデオカメラ、デジタルフォトフレーム、携帯電話機(携帯電話、携帯電話装置ともいう)、携帯型ゲーム機、携帯情報端末、音響再生装置、パチンコ機などの大型ゲーム機などが挙げられる。これらの電子機器の具体例を以下に示す。
【0099】
図4(A)は、テレビジョン装置の一例を示している。テレビジョン装置は、筐体7101に表示部7103が組み込まれている。また、ここでは、スタンド7105により筐体7101を支持した構成を示している。表示部7103により、映像を表示することが可能であり、表示部7103は、実施の形態1で説明した発光素子をマトリクス状に配列して構成されている。当該発光素子は、発光効率が高く、駆動電圧が小さいので、当該発光素子で構成される表示部7103を有するテレビ装置は消費電力の低減されたテレビ装置とすることができる。
【0100】
テレビジョン装置の操作は、筐体7101が備える操作スイッチや、別体のリモコン操作機7110により行うことができる。リモコン操作機7110が備える操作キー7109により、チャンネルや音量の操作を行うことができ、表示部7103に表示される映像を操作することができる。また、リモコン操作機7110に、当該リモコン操作機7110から出力する情報を表示する表示部7107を設ける構成としてもよい。
【0101】
なお、テレビジョン装置は、受信機やモデムなどを備えた構成とする。受信機により一般のテレビ放送の受信を行うことができ、さらにモデムを介して有線または無線による通信ネットワークに接続することにより、一方向(送信者から受信者)または双方向(送信者と受信者間、あるいは受信者間同士など)の情報通信を行うことも可能である。
【0102】
図4(B)はコンピュータであり、本体7201、筐体7202、表示部7203、キーボード7204、外部接続ポート7205、ポインティングデバイス7206等を含む。なお、このコンピュータは、実施の形態1で説明した発光素子をマトリクス状に配列して表示部7203に用いることにより作製される。当該発光素子は発光効率が高く、駆動電圧が小さいため、当該発光素子で構成される表示部7203を有するコンピュータは消費電力の低減されたコンピュータとすることができる。
【0103】
図4(C)は携帯型遊技機であり、筐体7301と筐体7302の2つの筐体で構成されており、連結部7303により、開閉可能に連結されている。筐体7301には、実施の形態1で説明した発光素子をマトリクス状に配列して作製された表示部7304が組み込まれ、筐体7302には表示部7305が組み込まれている。また、図4(C)に示す携帯型遊技機は、その他、スピーカ部7306、記録媒体挿入部7307、LEDランプ7308、入力手段(操作キー7309、接続端子7310、センサ7311(力、変位、位置、速度、加速度、角速度、回転数、距離、光、液、磁気、温度、化学物質、音声、時間、硬度、電場、電流、電圧、電力、放射線、流量、湿度、傾度、振動、におい又は赤外線を測定する機能を含むもの)、マイクロフォン7312)等を備えている。もちろん、携帯型遊技機の構成は上述のものに限定されず、少なくとも表示部7304および表示部7305の両方、または一方に実施の形態1で説明したものと同様の発光素子をマトリクス状に配列して作製された表示部を用いていればよく、その他付属設備が適宜設けられた構成とすることができる。図4(C)に示す携帯型遊技機は、記録媒体に記録されているプログラム又はデータを読み出して表示部に表示する機能や、他の携帯型遊技機と無線通信を行って情報を共有する機能を有する。なお、図4(C)に示す携帯型遊技機が有する機能はこれに限定されず、様々な機能を有することができる。上述のような表示部7304を有する携帯型遊技機は、表示部7304に用いられている発光素子が、良好な発光効率を有することから、消費電力の低減された携帯型遊技機とすることができる。
【0104】
図4(D)は、携帯電話機の一例を示している。携帯電話機は、筐体7401に組み込まれた表示部7402の他、操作ボタン7403、外部接続ポート7404、スピーカ7405、マイク7406などを備えている。なお、携帯電話機は、実施の形態1で説明した発光素子をマトリクス状に配列して作製された表示部7402を有している。当該発光素子は発光効率のが高く、駆動電圧が小さいため、当該発光素子で構成される表示部7402を有する携帯電話機は消費電力の低減された携帯電話機とすることができる。
【0105】
図4(D)に示す携帯電話機は、表示部7402を指などで触れることで、情報を入力することができる構成とすることもできる。この場合、電話を掛ける、或いはメールを作成するなどの操作は、表示部7402を指などで触れることにより行うことができる。
【0106】
表示部7402の画面は主として3つのモードがある。第1は、画像の表示を主とする表示モードであり、第2は、文字等の情報の入力を主とする入力モードである。第3は表示モードと入力モードの2つのモードが混合した表示+入力モードである。
【0107】
例えば、電話を掛ける、或いはメールを作成する場合は、表示部7402を文字の入力を主とする文字入力モードとし、画面に表示させた文字の入力操作を行えばよい。この場合、表示部7402の画面のほとんどにキーボードまたは番号ボタンを表示させることが好ましい。
【0108】
また、携帯電話機内部に、ジャイロ、加速度センサ等の傾きを検出するセンサを有する検出装置を設けることで、携帯電話機の向き(縦か横か)を判断して、表示部7402の画面表示を自動的に切り替えるようにすることができる。
【0109】
また、画面モードの切り替えは、表示部7402を触れること、又は筐体7401の操作ボタン7403の操作により行われる。また、表示部7402に表示される画像の種類によって切り替えるようにすることもできる。例えば、表示部に表示する画像信号が動画のデータであれば表示モード、テキストデータであれば入力モードに切り替える。
【0110】
また、入力モードにおいて、表示部7402の光センサでタッチ操作による入力を検知し、タッチ操作による入力が一定期間ない場合には、画面のモードを入力モードから表示モードに切り替えるように制御してもよい。
【0111】
表示部7402は、イメージセンサとして機能させることもできる。例えば、表示部7402に掌や指で触れ、掌紋、指紋等を撮像することで、本人認証を行うことができる。また、表示部に近赤外光を発光するバックライトまたは近赤外光を発光するセンシング用光源を用いれば、指静脈、掌静脈などを撮像することもできる。
【0112】
なお、本実施の形態に示す構成は、実施の形態1又は実施の形態2に示した構成を適宜組み合わせて用いることができる。
【0113】
以上の様に実施の形態1に記載の発光素子を備えた発光装置の適用範囲は極めて広く、この発光装置をあらゆる分野の電子機器に適用することが可能である。実施の形態1に記載の発光素子を用いることにより、消費電力の低減された電子機器を得ることができる。
【0114】
また、実施の形態1に記載の発光素子は、照明装置に用いることもできる。実施の形態1に記載の発光素子を照明装置に用いる一態様を、図5を用いて説明する。なお、照明装置とは、実施の形態1に記載の発光素子を光の照射手段として有し、且つ少なくとも当該発光素子へ電流を供給する入出力端子部を有するものとする。また、当該発光素子は、封止手段によって、外部雰囲気(特に水)より遮断されていることが好ましい。
【0115】
図5は、実施の形態1に記載の発光素子をバックライトに適用した液晶表示装置の一例である。図5に示した液晶表示装置は、筐体901、液晶層902、バックライト903、筐体904を有し、液晶層902は、ドライバIC905と接続されている。また、バックライト903には、実施の形態1に記載の発光素子が用いられおり、端子906により、電流が供給されている。
【0116】
実施の形態1に記載の発光素子を液晶表示装置のバックライトに適用したことにより、消費電力の低減されたバックライトが得られる。また、実施の形態1に記載の発光素子を用いることで、面発光の照明装置が作製でき、また大面積化も可能である。これにより、バックライトの大面積化が可能であり、液晶表示装置の大面積化も可能になる。さらに、実施の形態1に記載の発光素子を適用したバックライトは従来と比較し厚みを小さくできるため、表示装置の薄型化も可能となる。
【0117】
図6は、実施の形態1に記載の発光素子を、照明装置である電気スタンドに用いた例である。図6に示す電気スタンドは、筐体2001と、光源2002を有し、光源2002として実施の形態1に記載の発光素子が用いられている。
【0118】
図7は、実施の形態1に記載の発光素子を、室内の照明装置3001に適用した例である。実施の形態1に記載の発光素子は消費電力の低減された発光素子であるため、消費電力の低減された照明装置とすることができる。また、実施の形態1に記載の発光素子は、大面積化が可能であるため、大面積の照明装置として用いることができる。また、実施の形態1に記載の発光素子は厚みが小さいため、薄型化した照明装置を作製することが可能となる。
【0119】
実施の形態1に記載の発光素子は、自動車のフロントガラスやダッシュボードにも搭載することができる。図8に実施の形態1に記載の発光素子を自動車のフロントガラスやダッシュボードに用いる一態様を示す。領域5000乃至領域5005は実施の形態1に記載の発光素子を用いて設けられた表示である。
【0120】
領域5000と領域5001は自動車のフロントガラスに設けられた実施の形態1に記載の発光素子を搭載した発光装置である。実施の形態1に記載の発光素子は、第1の電極と第2の電極を透光性を有する電極で作製することによって、反対側が透けて見える、いわゆるシースルー状態の発光装置とすることができる。シースルー状態の表示であれば、自動車のフロントガラスに設置したとしても、視界の妨げになることなく設置することができる。なお、駆動のためのトランジスタなどを発光装置に設ける場合には、有機半導体材料による有機トランジスタや、酸化物半導体を用いたトランジスタなど、透光性を有するトランジスタを用いると良い。
【0121】
領域5002はピラー部分に設けられた実施の形態1に記載の発光素子を搭載した発光装置である。領域5002には、車体に設けられた撮像手段からの映像を映し出すことによって、ピラーで遮られた視界を補完することができる。また、同様に、ダッシュボード部分に設けられた領域5003は車体によって遮られた視界を、自動車の外側に設けられた撮像手段からの映像を映し出すことによって、死角を補い、安全性を高めることができる。見えない部分を補完するように映像を映すことによって、より自然に違和感なく安全確認を行うことができる。
【0122】
領域5004や領域5005はナビゲーション情報、スピードメーターやタコメーター、走行距離、給油量、ギア状態、エアコンの設定など、その他様々な情報を提供することができる。表示は使用者の好みに合わせて適宜その表示項目やレイアウトを変更することができる。なお、これら情報は領域5000乃至領域5003にも設けることができる。また、領域5000乃至領域5005は照明として用いることも可能である。
【0123】
実施の形態1に記載の発光素子は駆動電圧の小さい発光素子である。また、消費電力の小さい発光素子である。このことから、領域5000乃至領域5005のような大きな画面を数多く設けても、バッテリーに負荷をかけることが少なく、快適に使用することができることから実施の形態1に記載の発光素子を用いた発光装置は、車載用の発光装置として好適に用いることができる。
【0124】
(実施の形態4)
本実施の形態では、実施の形態1に記載の発光素子を照明装置として用いる例を図9を参照しながら説明する。図9(B)は照明装置の上面図、図9(A)は図9(B)におけるe−f断面図である。
【0125】
本実施の形態における照明装置は、支持体である透光性を有する基板400上に、第1の電極401が形成されている。第1の電極401は実施の形態1における第1の電極101に相当する。第1の電極401側から発光を取り出す場合、第1の電極401は透光性を有する材料により形成する。
【0126】
第2の電極404に電圧を供給するためのパッド412が基板400上に形成される。
【0127】
第1の電極401上にはEL層403が形成されている。EL層403は実施の形態1におけるEL層103の構成、又は発光ユニット511、512及び電荷発生層513を合わせた構成などに相当する。なお、これらの構成については当該記載を参照されたい。
【0128】
EL層403を覆って第2の電極404を形成する。第2の電極404は実施の形態1における第2の電極102に相当する。発光を第1の電極401側から取り出す場合、第2の電極404は反射率の高い材料によって形成される。第2の電極404はパッド412と接続することによって、電圧が供給される。
【0129】
以上、第1の電極401、EL層403、及び第2の電極404を有する発光素子を本実施の形態で示す照明装置は有している。当該発光素子は発光効率の高い発光素子であるため、本実施の形態における照明装置は消費電力の小さい照明装置とすることができる。
【0130】
以上の構成を有する発光素子を、シール材405、406を用いて封止基板407を固着し、封止することによって照明装置が完成する。シール材405、406はどちらか一方でもかまわない。また、内側のシール材406(図9(B)では図示せず)には乾燥剤を混ぜることもでき、これにより、水分を吸着することができ、信頼性の向上につながる。
【0131】
また、パッド412と第1の電極401の一部をシール材405、406の外に伸張して設けることによって、外部入力端子とすることができる。また、その上にコンバーターなどを搭載したICチップ420などを設けても良い。
【0132】
以上、本実施の形態に記載の照明装置は、実施の形態1に記載の発光素子を含むことから、消費電力の小さい照明装置とすることができる。
【実施例1】
【0133】
9,9′‐(1,3‐フェニレン)ビス(9H‐カルバゾール)(略称:mCP)及び9,9′‐(3′,5′‐ジフェニル‐1,1′‐ビフェニル‐3,5‐ジイル)ビス(9H‐カルバゾール)(略称:mTPmCP)のHOMO、LUMOの分布を量子化学計算により求めた。結果を図17、図18に示す。
【0134】
計算では、分子の構造最適化を実施後、最安定構造におけるHOMOとLUMOを解析した。
【0135】
構造最適化計算には、Gauss基底を用いた密度汎関数法(DFT)を用いた。DFTでは、交換相関相互作用を電子密度で表現された一電子ポテンシャルの汎関数(関数の関数の意)で近似しているため、計算は高速である。ここでは、混合汎関数であるB3LYPを用いて、交換と相関エネルギーに係る各パラメータの重みを規定した。また、基底関数として、6−311G(それぞれの原子価軌道に三つの短縮関数を用いたtriple split valence基底系の基底関数)を全ての原子に適用した。上述の基底関数により、例えば、水素原子であれば、1s〜3sの軌道が考慮され、また、窒素原子であれば、1s〜4s、2p〜4pの軌道が考慮される。さらに、計算精度向上のため、分極基底系として、水素原子にはp関数を、水素原子以外にはd関数を加え、p軌道やd軌道も考慮した計算とした。
【0136】
量子化学計算プログラムとしては、Gaussian 09を使用した。計算は、ハイパフォーマンスコンピュータ(SGI社製、Altix4700)を用いて行った。
【0137】
図17(A)(B)にはmCPの構造最適化計算により得られた最安定構造におけるHOMOとLUMOを、Gauss View5.0.8により可視化した図を示した。また、図18(A)(B)には同様に、mTPmCPの構造最適化計算により得られた最安定構造におけるHOMOとLUMOを、Gauss View5.0.8により可視化した図を示した。なお、図17、図18共に(A)がLUMO、(B)がHOMOの分布位置を表している。
【0138】
図17より、正孔輸送層における正孔輸送材料であるmCPはHOMO、LUMO共にカルバゾール骨格に主に分布する材料であることがわかった。また、図18からmTPmCPのHOMOはカルバゾール骨格に、LUMOはm−テルフェニル骨格に分布する材料であることがわかった。
【0139】
以上の結果より、mCPを正孔輸送層に含まれる正孔輸送材料として用い、且つmTPmCPを発光層に含まれるホスト材料として用いた、実施の形態1の実施例である発光素子1を作製し、評価を行った。なお、比較として発光素子2乃至発光素子4も同時に作製して評価を行った。
【0140】
また本実施例では、青色のりん光を発する発光中心物質を用いた発光素子を作製した。本実施例で用いた有機化合物の分子構造を以下に示す。
【0141】
【化6】

【0142】
≪発光素子1乃至発光素子4の作製≫
まず、第1の電極101として110nmの膜厚でケイ素を含むインジウム錫酸化物(ITSO)が成膜されたガラス基板を用意した。ITSO表面は、2mm角の大きさで表面が露出するよう周辺をポリイミド膜で覆い、電極面積は2mm×2mmとした。この基板上に発光素子を形成するための前処理として、基板表面を水で洗浄し、200℃で1時間焼成した後、UVオゾン処理を370秒行った。その後、10−4Pa程度まで内部が減圧された真空蒸着装置に基板を導入し、真空蒸着装置内の加熱室において170℃で30分間の真空焼成を行った後、基板を30分程度放冷した。
【0143】
次に、第1の電極101が形成された面が下方となるように、基板を真空蒸着装置内に設けられたホルダーに固定した。
【0144】
真空装置内を10−4Paに減圧した後、上記構造式(i)で表されるCBPと酸化モリブデン(VI)とを、CBP:酸化モリブデン=2:1(重量比)となるように共蒸着することにより、正孔注入層111を形成した。膜厚は80nmとした。なお、共蒸着とは、異なる複数の物質をそれぞれ異なる蒸発源から同時に蒸発させる蒸着法である。
【0145】
続いて、発光素子1及び発光素子2では上記構造式(ii)で表されるmCPを20nm蒸着することにより、発光素子3及び発光素子4では上記構造式(iv)で表されるmTPmCPを20nm蒸着することによりそれぞれ正孔輸送層112を形成した。
【0146】
さらに、正孔輸送層112上に、発光素子1及び発光素子4ではmTPmCPと上記構造式(iii)で表されるトリス[3−メチル−1−(2−メチルフェニル)−5−フェニル−1H−1,2,4−トリアゾラト]イリジウム(III)(略称:[Ir(Mptz1−mp)]とをmTPmCP:[Ir(Mptz1−mp)]=1:0.08(重量比)となるように30nm蒸着した後、上記構造式(v)で表される2−[3−(ジベンゾチオフェン−4−イル)フェニル]−1−フェニル−1H−ベンゾイミダゾール(略称:mDBTBIm−II)と[Ir(Mptz1−mp)]とをmDBTBIm−II:[Ir(Mptz1−mp)]=1:0.08(重量比)となるように10nm蒸着して積層することにより、発光層113を形成した。
【0147】
発光素子2及び発光素子3ではmCPと[Ir(Mptz1−mp)]とをmCP:[Ir(Mptz1−mp)]=1:0.08(重量比)となるように30nm蒸着した後、mDBTBIm−IIと[Ir(Mptz1−mp)]とをmDBTBIm−II:[Ir(Mptz1−mp)]=1:0.08(重量比)となるように10nm蒸着して積層することにより、発光層113を形成した。
【0148】
次に、上記構造式(vi)で表されるバソフェナントロリン(略称:BPhen)を15nm蒸着することにより、電子輸送層114を形成した。
【0149】
さらに電子輸送層114上にフッ化リチウムを1nmとなるように蒸着することによって電子注入層115を形成した。最後に、陰極として機能する第2の電極102としてアルミニウムを200nm成膜し、発光素子1乃至発光素子4を完成させた。上述した蒸着過程においては、蒸着は全て抵抗加熱法を用いた。
【0150】
完成させた発光素子は、発光素子1が実施の形態1の構成を有する実施例の発光素子であり、発光素子2乃至発光素子4が比較例として作製した発光素子である。以下にそれぞれの発光素子の素子構成をまとめた表を示す。
【0151】
【表1】

【0152】
≪発光素子1乃至発光素子4の動作特性≫
以上により得られた発光素子1乃至発光素子4を、窒素雰囲気のグローブボックス内において、発光素子が大気に曝されないように封止する作業を行った後、これらの発光素子の動作特性について測定を行った。なお、測定は室温(25℃に保たれた雰囲気)で行った。
【0153】
発光素子1乃至発光素子4の電流密度−輝度特性を図10、電圧−輝度特性を図11、輝度−電流効率特性を図12に、電圧−電流特性を図13、輝度−パワー効率特性を図14に、輝度−外部量子効率特性を図15に示す。図10では縦軸が輝度(cd/m)、横軸が電流密度(mA/cm)を示す。図11では縦軸が輝度(cd/m)、横軸が電圧(V)を示す。図12では縦軸が電流効率(cd/A)、横軸が輝度(cd/m)を示す。図13では縦軸が電流(mA)、横軸が電圧(V)を示す。図14では縦軸がパワー効率(lm/W)、横軸が輝度(cd/m)を示す。図15では縦軸が外部量子効率(%)、横軸が輝度(cd/m)を示す。
【0154】
図12、図14、図15から、実施例である発光素子1は発光素子2乃至発光素子4と比較しても非常に高い輝度−電流効率特性、輝度−パワー効率特性及び輝度−外部量子効率特性を示し、発光効率が高い発光素子であることがわかった。また、図11、図13から、発光素子1は、高い電圧−輝度特性、電圧−電流特性を示し、駆動電圧の小さな発光素子であることがわかった。
【0155】
また、作製した発光素子1乃至発光素子4に0.1mAの電流を流したときの規格化された発光スペクトルを図16に示す。図16より、これらの発光スペクトルはほぼかさなっており、発光素子1乃至発光素子4は、いずれも発光中心物質である[Ir(Mptz1−mp)]起因の青色の発光を呈することがわかった。なお、図中、一本だけ太線で示されている実線が実施例である発光素子1のスペクトルを表している。
【0156】
発光素子1乃至発光素子4の1000cd/m付近における主要な特性をまとめた表を以下に示す。
【0157】
【表2】

【0158】
このように実施の形態1に記載の発光素子である発光素子1は、発光効率の高い発光素子であることがわかった。また、発光素子1は、駆動電圧の小さい発光素子であることがわかった。ここで発光素子1と発光素子2を比較すると、正孔輸送材料(mCP)と発光層のホスト(mTPmCP)を互いに入れ替えたに過ぎない。また、これらの材料は互いに非常に類似した構造を有している。すなわち、発光素子1と発光素子2の構造は極めて類似していると言える。しかしながら上述したように、発光素子1と発光素子2ではその特性に大きな差が存在している。従って、構造が互いに類似している材料を用いているものの、HOMOおよびLUMOの分布が異なる点を利用してEL素子を構築することで素子の特性を飛躍的に向上させることができることは、本発明の特筆に値する点と言える。
【実施例2】
【0159】
本実施例では、mCPを正孔輸送層に含まれる正孔輸送材料として用い、且つ3,5−ビス[3−(9H−カルバゾール−9−イル)フェニル]ピリジン(略称:35DCzPPy)を発光層に含まれるホスト材料として用い、青色のりん光を発する発光中心物質を用いた発光素子を作製した。なお、mCPはHOMOとLUMOが共にカルバゾール骨格に分布する物質であり、35DCzPPyはHOMOがカルバゾール骨格に、LUMOがカルバゾール骨格に分布せず、他の骨格に分布する物質である。本実施例で用いた有機化合物の分子構造を以下に示す。
【0160】
【化7】

【0161】
≪発光素子5乃至発光素子8の作製≫
まず、第1の電極101として110nmの膜厚でケイ素を含むインジウム錫酸化物(ITSO)が成膜されたガラス基板を用意した。ITSO表面は、2mm角の大きさで表面が露出するよう周辺をポリイミド膜で覆い、電極面積は2mm×2mmとした。この基板上に発光素子を形成するための前処理として、基板表面を水で洗浄し、200℃で1時間焼成した後、UVオゾン処理を370秒行った。その後、10−4Pa程度まで内部が減圧された真空蒸着装置に基板を導入し、真空蒸着装置内の加熱室において170℃で30分間の真空焼成を行った後、基板を30分程度放冷した。
【0162】
次に、第1の電極101が形成された面が下方となるように、基板を真空蒸着装置内に設けられたホルダーに固定した。
【0163】
真空装置内を10−4Paに減圧した後、上記構造式(i)で表されるCBPと酸化モリブデン(VI)とを、CBP:酸化モリブデン=2:1(重量比)となるように共蒸着することにより、正孔注入層111を形成した。膜厚は80nmとした。
【0164】
続いて、発光素子5及び発光素子6では上記構造式(ii)で表されるmCPを20nm蒸着することにより、発光素子7及び発光素子8では上記構造式(vii)で表される35DCzPPyを20nm蒸着することによりそれぞれ正孔輸送層112を形成した。
【0165】
さらに、正孔輸送層112上に、発光素子5及び発光素子8では35DCzPPyと上記構造式(iii)で表される[Ir(Mptz1−mp)]とを35DCzPPy:[Ir(Mptz1−mp)]=1:0.08(重量比)となるように30nm蒸着した後、上記構造式(v)で表されるmDBTBIm−IIと[Ir(Mptz1−mp)]とをmDBTBIm−II:[Ir(Mptz1−mp)]=1:0.08(重量比)となるように10nm蒸着して積層することにより、発光層113を形成した。
【0166】
発光素子6及び発光素子7ではmCPと[Ir(Mptz1−mp)]とをmCP:[Ir(Mptz1−mp)]=1:0.08(重量比)となるように30nm蒸着した後、mDBTBIm−IIと[Ir(Mptz1−mp)]とをmDBTBIm−II:[Ir(Mptz1−mp)]=1:0.08(重量比)となるように10nm蒸着して積層することにより、発光層113を形成した。
【0167】
次に、上記構造式(vi)で表されるBPhenを15nm蒸着することにより、電子輸送層114を形成した。
【0168】
さらに電子輸送層114上にフッ化リチウムを1nmとなるように蒸着することによって電子注入層115を形成した。最後に、陰極として機能する第2の電極102としてアルミニウムを200nm成膜し、発光素子5乃至発光素子8を完成させた。上述した蒸着過程においては、蒸着は全て抵抗加熱法を用いた。
【0169】
完成させた発光素子は、発光素子5が実施の形態1の構成を有する実施例の発光素子であり、発光素子6乃至発光素子8が比較例として作製した発光素子である。以下にそれぞれの発光素子の素子構成をまとめた表を示す。
【0170】
【表3】

【0171】
≪発光素子5乃至発光素子8の動作特性≫
以上により得られた発光素子5乃至発光素子8を、窒素雰囲気のグローブボックス内において、発光素子が大気に曝されないように封止する作業を行った後、これらの発光素子の動作特性について測定を行った。なお、測定は室温(25℃に保たれた雰囲気)で行った。
【0172】
発光素子5乃至発光素子8の電流密度−輝度特性を図19、電圧−輝度特性を図20、輝度−電流効率特性を図21に、電圧−電流特性を図22、輝度−パワー効率特性を図23に、輝度−外部量子効率特性を図24に示す。各軸の定義は図10から図15と同じである。
【0173】
図21、図23、図24から、実施例である発光素子5は発光素子6乃至発光素子8と比較しても非常に良好な輝度−電流効率特性、輝度−パワー効率特性及び輝度−外部量子効率特性を示し、発光効率が良好な発光素子であることがわかった。また、図20、図22から、発光素子5は、良好な電圧−輝度特性、電圧−電流特性を示し、駆動電圧の小さな発光素子であることがわかった。
【0174】
また、作製した発光素子5乃至発光素子8に0.1mAの電流を流したときの規格化された発光スペクトルを図25に示す。図25より、これらの発光スペクトルはほぼかさなっており、発光素子5乃至発光素子8は、いずれも発光中心物質である[Ir(Mptz1−mp)]起因の青色の発光を呈することがわかった。なお、図中、一本だけ太線で示されている実線が実施例である発光素子5のスペクトルを表している。
【0175】
発光素子5乃至発光素子8の1000cd/m付近における主要な特性をまとめた表を以下に示す。
【0176】
【表4】

【0177】
このように実施の形態1に記載の発光素子である発光素子5は、発光効率の良好な発光素子であることがわかった。また、発光素子5は、消費電力の小さい発光素子であることがわかった。
【0178】
(参考例1)
実施例で用いた材料であるトリス[3−メチル−1−(2−メチルフェニル)−5−フェニル−1H−1,2,4−トリアゾラト]イリジウム(III)(略称:[Ir(Mptz1−mp)]を合成する例を示す。
【0179】
[ステップ1:N−(1−エトキシエチリデン)ベンズアミドの合成]
まず、アセトイミド酸エチル塩酸塩15.5g、トルエン150mL、トリエチルアミン(EtN)31.9gを500mL三ツ口フラスコに入れ、室温で10分間撹拌した。この混合物にベンゾイルクロリド17.7gのトルエン30mL溶液を50mL滴下ロートより滴下し、室温で24時間撹拌した。反応後、反応混合物を吸引ろ過し、固体をトルエンで洗浄した。得られたろ液を、濃縮してN−(1−エトキシエチリデン)ベンズアミドを得た(赤色油状物、収率82%)。ステップ1の合成スキームを以下に示す。
【0180】
【化8】

【0181】
[ステップ2:3−メチル−1−(2−メチルフェニル)−5−フェニル−1H−1,2,4−トリアゾール(略称:HMptz1−mp)の合成]
次に、o−トリルヒドラジン塩酸塩8.68g、四塩化炭素100mL、トリエチルアミン(EtN)35mLを300mLナスフラスコに入れ、室温で1時間撹拌した。反応後、この混合物に上記ステップ1で得られたN−(1−エトキシエチリデン)ベンズアミド8.72gを加えて室温で24時間撹拌した。反応後、反応混合物に水を加え、水層をクロロホルムで抽出した。この有機層を飽和食塩水で洗浄し、無水硫酸マグネシウムを加えて乾燥させた。得られた混合物を自然濾過し、ろ液を濃縮して油状物を得た。得られた油状物をシリカゲルカラムクロマトグラフィーにより精製した。展開溶媒にはジクロロメタンを用いた。得られたフラクションを濃縮して、HMptz1−mpを得た(橙色油状物、収率84%)。ステップ2の合成スキームを以下に示す。
【0182】
【化9】

【0183】
[ステップ3;[Ir(Mptz1−mp)]の合成]
次に、上記ステップ2で得られた配位子HMptz1−mp2.71g、トリス(アセチルアセトナト)イリジウム(III)1.06gを、三方コックを付けた反応容器に入れた。この反応容器をアルゴン置換し、250℃にて48時間加熱し、反応させた。この反応混合物をジクロロメタンに溶解し、シリカゲルカラムクロマトグラフィーにより精製した。展開溶媒には、まず、ジクロロメタン用い、次いでジクロロメタン:酢酸エチル=10:1(v/v)の混合溶媒を用いた。得られたフラクションを濃縮して固体を得た。この固体を酢酸エチルで洗浄し、次いで、ジクロロメタンと酢酸エチルの混合溶媒にて再結晶し、有機金属錯体[Ir(Mptz1−mp)]を得た(黄色粉末、収率35%)。ステップ3の合成スキームを以下に示す。
【0184】
【化10】

【0185】
上記ステップ3で得られた黄色粉末の核磁気共鳴分光法(H NMR)による分析結果を下記に示す。この結果から、[Ir(Mptz1−mp)]が得られたことがわかった。
【0186】
得られた物質のH NMRデータを以下に示す。
H NMR.δ(CDCl):1.94−2.21(m,18H),6.47−6.76(m,12H),7.29−7.52(m,12H)
【0187】
(参考例2)
実施例で用いた材料であるmDBTBIm−IIを合成する例を示す。
【0188】
[mDBTBIm−IIの合成]
2−(3−ブロモフェニル)−1−フェニル−1H−ベンゾイミダゾール1.2g(3.3mmol)と、ジベンゾチオフェン−4−ボロン酸0.8g(3.3mmol)と、トリ(オルト−トリル)ホスフィン50mg(0.2mmol)を50mLの三口フラスコに入れ、フラスコ内を窒素置換した。この混合物に2.0mmol/L炭酸カリウム水溶液3.3mLと、トルエン12mLと、エタノール4mLを加え、減圧下で攪拌することにより脱気した。この混合物に酢酸パラジウム(II)7.4mg(33μmol)を加え、窒素気流下、80℃で6時間攪拌した。所定時間経過後、得られた混合物の水層をトルエンで抽出した。得られた抽出溶液と有機層を合わせ、飽和食塩水で洗浄後、硫酸マグネシウムで乾燥した。この混合物を自然濾過により濾別し、濾液を濃縮して油状物を得た。この油状物をシリカゲルカラムクロマトグラフィーにより精製した。シリカゲルカラムクロマトグラフィーは、トルエンを展開溶媒に用いて行った。得られたフラクションを濃縮して油状物を得た。この油状物を高速液体クロマトグラフィーにより精製した。高速液体クロマトグラフィーはクロロホルムを展開溶媒に用いて行った。得られたフラクションを濃縮して油状物を得た。この油状物をトルエンとヘキサンの混合溶媒で希釈して固体を析出させたところ、目的物である淡黄色粉末を収量0.8g、収率51%で得た。合成スキームを下記式に示す。
【0189】
【化11】

【0190】
得られた淡黄色粉末0.8gをトレインサブリメーション法により昇華精製した。昇華精製は、圧力3.0Pa、アルゴン流量5mL/minの条件で、淡黄色粉末を215℃で加熱して行った。昇華精製後、目的物の白色粉末を収量0.6g、収率82%で得た。
【0191】
核磁気共鳴法(NMR)によって、この化合物が目的物である2−[3−(ジベンゾチオフェン−4−イル)フェニル]−1−フェニル−1H−ベンゾイミダゾール(略称:mDBTBIm−II)であることを確認した。
【0192】
得られた化合物のH NMRデータを以下に示す。
H NMR(CDCl,300MHz):δ(ppm)=7.23−7.60(m,13H)、7.71−7.82(m,3H)、7.90−7.92(m,2H)、8.10−8.17(m,2H)
【符号の説明】
【0193】
101 第1の電極
102 第2の電極
103 EL層
111 正孔注入層
112 正孔輸送層
113 発光層
114 電子輸送層
115 電子注入層
400 基板
401 第1の電極
402 補助電極
403 EL層
404 第2の電極
405 シール材
406 シール材
407 封止基板
412 パッド
420 ICチップ
501 第1の電極
502 第2の電極
511 第1の発光ユニット
512 第2の発光ユニット
513 電荷発生層
601 駆動回路部(ソース線駆動回路)
602 画素部
603 駆動回路部(ゲート線駆動回路)
604 封止基板
605 シール材
607 空間
608 配線
609 FPC(フレキシブルプリントサーキット)
610 素子基板
611 スイッチング用TFT
612 電流制御用TFT
613 第1の電極
614 絶縁物
616 有機化合物を含む層
617 第2の電極
618 発光素子
623 nチャネル型TFT
624 pチャネル型TFT
901 筐体
902 液晶層
903 バックライト
904 筐体
905 ドライバIC
906 端子
951 基板
952 電極
953 絶縁層
954 隔壁層
955 有機化合物を含む層
956 電極
2001 筐体
2002 光源
3001 照明装置
5000 領域
5001 領域
5002 領域
5003 領域
5005 領域
7101 筐体
7103 表示部
7105 スタンド
7107 表示部
7109 操作キー
7110 リモコン操作機
7201 本体
7202 筐体
7203 表示部
7204 キーボード
7205 外部接続ポート
7206 ポインティングデバイス
7301 筐体
7302 筐体
7303 連結部
7304 表示部
7305 表示部
7306 スピーカ部
7307 記録媒体挿入部
7308 LEDランプ
7309 操作キー
7310 接続端子
7311 センサ
7312 マイクロフォン
7401 筐体
7402 表示部
7403 操作ボタン
7404 外部接続ポート
7405 スピーカ
7406 マイク

【特許請求の範囲】
【請求項1】
陽極と陰極と、
前記陽極及び陰極間に挟まれたEL層を有する発光素子において、
前記EL層は少なくとも発光中心物質と前記発光中心物質を分散するホスト材料を含む発光層と、前記発光層の前記陽極側に接して設けられた正孔輸送材料を含む正孔輸送層とを有し、
前記正孔輸送材料はカルバゾール骨格を有する第1のカルバゾール誘導体であり、
前記ホスト材料はカルバゾール骨格とカルバゾール骨格以外の骨格を有する第2のカルバゾール誘導体であり、
前記第1のカルバゾール誘導体は、最高被占軌道及び最低空軌道が共にカルバゾール骨格に分布する物質であり、
前記第2のカルバゾール誘導体は、最高被占軌道がカルバゾール骨格に分布し、最低空軌道がカルバゾール骨格に分布しない物質であることを特徴とする発光素子。
【請求項2】
請求項1において、前記第1のカルバゾール誘導体は、フェニルカルバゾール誘導体であることを特徴とする発光素子。
【請求項3】
請求項1又は請求項2において、前記カルバゾール骨格以外の骨格が電子輸送性を有する骨格であることを特徴とする発光素子。
【請求項4】
請求項1乃至請求項3のいずれか一項において、前記第2のカルバゾール誘導体は、芳香族炭化水素基を有するカルバゾール誘導体であることを特徴とする発光素子。
【請求項5】
請求項1乃至請求項3のいずれか一項において、前記第2のカルバゾール誘導体はヘテロ芳香族基を有するカルバゾール誘導体であることを特徴とする発光素子。
【請求項6】
請求項1乃至請求項5のいずれか一項において、前記第1のカルバゾール誘導体が9,9′‐(1,3‐フェニレン)ビス(9H‐カルバゾール)(略称:mCP)であり、前記第2のカルバゾール誘導体が9,9′‐(3′,5′‐ジフェニル‐1,1′‐ビフェニル‐3,5‐ジイル)ビス(9H‐カルバゾール)(略称:mTPmCP)であることを特徴とする発光素子。
【請求項7】
請求項1乃至請求項6のいずれか一項において、前記発光中心物質から放出される光は青色の蛍光であることを特徴とする発光素子。
【請求項8】
請求項1乃至請求項6のいずれか一項において、前記発光中心物質から放出される光は青緑よりも短波長のりん光であることを特徴とする発光素子。
【請求項9】
請求項1乃至請求項8のいずれかに記載の発光素子を光源として備えた発光装置。
【請求項10】
請求項1乃至請求項8のいずれかに記載の発光素子を表示部に備えた表示装置。
【請求項11】
請求項1乃至請求項8のいずれかに記載の発光素子を光源とする照明装置。
【請求項12】
請求項1乃至請求項8のいずれかに記載の発光素子を備えた電子機器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図17】
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【図18】
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【公開番号】特開2013−33958(P2013−33958A)
【公開日】平成25年2月14日(2013.2.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−150365(P2012−150365)
【出願日】平成24年7月4日(2012.7.4)
【出願人】(000153878)株式会社半導体エネルギー研究所 (5,264)
【Fターム(参考)】