説明

発光素子、発光装置、表示装置および電子機器

【課題】発光バランスおよび発光効率を優れたものとしつつ、長寿命化を図ることができる発光素子、この発光素子を備えた信頼性の高い発光装置、表示装置および電子機器を提供すること。
【解決手段】発光素子1は、陰極12と、陽極3と、陰極12と陽極3との間に設けられた赤色発光層6と、赤色発光層6と陰極12との間に設けられた青色発光層8と、赤色発光層6と青色発光層8との層間にこれらに接するように設けられた中間層7とを有し、中間層7は、赤色発光層6に接し、正孔輸送性材料を主材料として構成された第1の層71と、第1の層71に接するとともに青色発光層8に接し、アセン骨格を有する材料と正孔輸送材料との混合材料を主材料として構成された第2の層72とで構成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発光素子、発光装置、表示装置および電子機器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
有機エレクトロルミネセンス素子(いわゆる有機EL素子)は、陽極と陰極との間に少なくとも1層の発光性有機層を介挿した構造を有する発光素子である。このような発光素子では、陰極と陽極との間に電界を印加することにより、発光層に陰極側から電子が注入されるとともに陽極側から正孔が注入され、発光層中で電子と正孔が再結合することにより励起子が生成し、この励起子が基底状態に戻る際に、そのエネルギー分が光として放出される。
【0003】
このような発光素子としては、例えば、陰極と陽極との間に、R(赤色)、G(緑色)、B(青色)の3色に対応する3層の発光層を積層し、白色発光させるものが知られている(例えば、特許文献1参照)。このような白色発光する発光素子は、R(赤色)、G(緑色)、B(青色)の3色が画素ごとに塗り分けられたカラーフィルタと組み合わせて用いることで、フルカラー画像を表示することができる。
【0004】
特許文献1にかかる発光素子では、発光層同士の間に、正孔輸送材料で構成された中間層が設けられている。このような中間層は、陰極側の発光層から陽極側の発光層への電子の輸送を制限することで、各発光層をバランスよく発光させることができる。また、このような中間層は、陽極側の発光層から陰極側の発光層へ正孔を効率よく輸送することで、発光素子の発光効率を優れたものとすることができる。
しかしながら、特許文献1にかかる発光素子では、中間層と陰極側の発光層との界面付近に電子が蓄積し、陰極側の発光層が劣化し、その結果、発光素子の寿命が短くなると言う問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2005−100921号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、発光バランスおよび発光効率を優れたものとしつつ、長寿命化を図ることができる発光素子、この発光素子を備えた信頼性の高い発光装置、表示装置および電子機器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
このような目的は、下記の本発明により達成される。
本発明の発光素子は、陰極と、
陽極と、
前記陰極と前記陽極との間に設けられ、第1の色に発光する第1の発光層と、
前記第1の発光層と前記陰極との間に設けられ、前記第1の色とは異なる第2の色に発光する第2の発光層と、
前記第1の発光層と前記第2の発光層との層間にこれらに接するように設けられ、前記第1の発光層と前記第2の発光層との間で正孔および電子の移動を調整する機能を有する中間層とを有し、
前記中間層は、前記第1の発光層に接し、正孔輸送材料を主材料として構成された第1の層と、該第1の層に接するとともに前記第2の発光層に接し、アセン骨格を有する材料と正孔輸送材料との混合材料を主材料として構成された第2の層とで構成されていることを特徴とする。
【0008】
これにより、中間層の第2の層は、第2の発光層から中間層の第1の層へ電子を効率よく輸送することができる。そのため、中間層と第2の発光層との界面付近に蓄積する電子の量を抑えることができる。その結果、第2の発光層の劣化を抑え、発光素子の長寿命化を図ることができる。
また、中間層の第1の層は、中間層の第2の層から第1の発光層への電子の輸送量を制限することができる。そのため、第1の発光層に注入される電子の量と第2の発光層に注入される電子の量との均一化を図ることができる。その結果、発光素子の第1の発光層と第2の発光層との発光バランスを優れたものとすることができる。
さらに、中間層の第1の層は、第1の発光層から中間層の第2の層へ正孔を効率よく輸送することができる。そのため、第1の発光層から中間層を介して第2の発光層へ正孔を効率よく輸送することができる。その結果、発光素子の発光効率を優れたものとすることができる。
【0009】
本発明の発光素子では、前記第1の層は、前記第2の発光層側から前記第1の発光層側へ電子をトンネル注入するように構成されていることが好ましい。
これにより、中間層の第2の層から第1の層を介して第1の発光層に電子を輸送することができる。そのため、第1の層と第2の層との界面付近に蓄積する電子の量を抑えることができる。その結果、中間層(特に第1の層)の劣化を防止し、発光素子の長寿命化を図ることができる。
本発明の発光素子では、前記第1の層の主材料となる正孔輸送材料と、前記第2の層に含まれる正孔輸送材料とが同種であることが好ましい。
これにより、中間層の第1の層から第2の層への正孔輸送性を向上させることができる。その結果、発光素子の発光効率を高めることができる。
【0010】
本発明の発光素子では、前記第2の発光層は、アセン骨格を有する材料を含んで構成され、前記第2の層に含まれるアセン骨格を有する材料と、前記第2の発光層に含まれるアセン骨格を有する材料とが同種であることが好ましい。
これにより、第2の発光層から中間層の第2の層への電子輸送性を向上させることができる。その結果、発光素子の発光効率を高めることができる。
【0011】
本発明の発光素子では、前記第1の層の厚さは、前記第2の層の厚さよりも薄いことが好ましい。
これにより、中間層と第2の発光層との界面付近に蓄積する電子の量を抑えつつ、中間層の第2の層から第1の発光層へ電子を輸送することができる。
本発明の発光素子では、前記第1の層の厚さは、1〜10nmであることが好ましい。
これにより、中間層の第1の層は、中間層の第2の層から第1の発光層への電子の輸送量を制限しつつ、中間層の第2の層から第1の発光層へ電子を輸送することができる。また、中間層の第1の層は、第1の発光層から中間層の第2の層へ正孔を効率よく輸送することができる。
本発明の発光素子では、前記第2の層の厚さは、1.5〜10nmであることが好ましい。
これにより、中間層と第2の発光層との界面付近に蓄積する電子の量を抑えることができる。
【0012】
本発明の発光素子では、前記第2の層中における前記アセン骨格を有する材料の含有量をA[質量%]とし、前記第2の層中における前記正孔輸送材料の含有量をB[質量%]としたときに、A:Bは、10:90〜90:10であることが好ましい。
これにより、中間層の第2の層の電子輸送性および正孔輸送性を優れたものとすることができる。
【0013】
本発明の発光素子では、前記第1の色は、600nm以上にピーク波長を有するものであり、前記第2の色は、550nm以下にピーク波長を有するものであることが好ましい。
これにより、発光素子の第1の発光層と第2の発光層との発光バランスを優れたものとすることができる。
【0014】
本発明の発光素子では、前記第2の発光層と前記陰極との間に設けられ、前記第1の色および前記第2の色とは異なる第3の色に発光する第3の発光層を有することが好ましい。
これにより、発光素子の第1の発光層と第2の発光層と第3の発光層との発光バランスを優れたものとすることができる。
本発明の発光素子では、前記第1の色は、赤色であり、前記第2の色は、青色であり、前記第3の色は、緑色であることが好ましい。
これにより、発光効率を優れたものとしつつ、長寿命化を図ることができる白色発光の発光素子を提供することができる。
【0015】
本発明の発光装置は、本発明の発光素子を備えることを特徴とする。
これにより、信頼性の高い発光装置を提供することができる。
本発明の表示装置は、本発明の発光素子を備えることを特徴とする。
これにより、信頼性の高い表示装置を提供することができる。
本発明の電子機器は、本発明の表示装置を備えることを特徴とする。
これにより、信頼性の高い電子機器を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の実施形態にかかる発光素子の縦断面を模式的に示す図である。
【図2】図1に示す発光素子における中間層の作用を説明するための図である。
【図3】本発明の表示装置を適用したディスプレイ装置の実施形態を示す縦断面図である。
【図4】本発明の電子機器を適用したモバイル型(またはノート型)のパーソナルコンピュータの構成を示す斜視図である。
【図5】本発明の電子機器を適用した携帯電話機(PHSも含む)の構成を示す斜視図である。
【図6】本発明の電子機器を適用したディジタルスチルカメラの構成を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の発光素子、発光装置、表示装置および電子機器を添付図面に示す好適な実施形態について説明する。
図1は、本発明の実施形態にかかる発光素子の縦断面を模式的に示す図、図2は、図1に示す発光素子における中間層の作用を説明するための図である。なお、以下では、説明の都合上、図1中の上側を「上」、下側を「下」として説明を行う。
【0018】
図1に示す発光素子(エレクトロルミネッセンス素子)1は、R(赤色)、G(緑色)、B(青色)を発光させて、白色発光するものである。
このような発光素子1は、陽極3と正孔注入層4と正孔輸送層5と赤色発光層(第1の発光層)6と中間層7と青色発光層(第2の発光層)8と緑色発光層(第3の発光層)9と電子輸送層10と電子注入層11と陰極12とがこの順に積層されてなるものである。
【0019】
言い換えすれば、発光素子1は、2つの電極間(陽極3と陰極12との間)に、陽極3側から陰極12側へ、正孔注入層4と正孔輸送層5と赤色発光層6と中間層7と青色発光層8と緑色発光層9と電子輸送層10と電子注入層11とがこの順に積層で積層された積層体15が介挿されて構成されている。
そして、発光素子1は、その全体が基板2上に設けられるとともに、封止部材13で封止されている。
【0020】
このような発光素子1にあっては、赤色発光層6、青色発光層8、および緑色発光層9の各発光層に対し、陰極12側から電子が供給(注入)されるとともに、陽極3側から正孔が供給(注入)される。そして、各発光層では、正孔と電子とが再結合し、この再結合に際して放出されたエネルギーによりエキシトン(励起子)が生成し、エキシトンが基底状態に戻る際にエネルギー(蛍光やりん光)を放出(発光)する。これにより、発光素子1は、白色発光する。
【0021】
基板2は、陽極3を支持するものである。本実施形態の発光素子1は、基板2側から光を取り出す構成(ボトムエミッション型)であるため、基板2および陽極3は、それぞれ、実質的に透明(無色透明、着色透明または半透明)とされている。
基板2の構成材料としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリプロピレン、シクロオレフィンポリマー、ポリアミド、ポリエーテルサルフォン、ポリメチルメタクリレート、ポリカーボネート、ポリアリレートのような樹脂材料や、石英ガラス、ソーダガラスのようなガラス材料等が挙げられ、これらのうちの1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
このような基板2の平均厚さは、特に限定されないが、0.1〜30mm程度であるのが好ましく、0.1〜10mm程度であるのがより好ましい。
【0022】
なお、発光素子1が基板2と反対側から光を取り出す構成(トップエミッション型)の場合、基板2には、透明基板および不透明基板のいずれも用いることができる。
不透明基板としては、例えば、アルミナのようなセラミックス材料で構成された基板、ステンレス鋼のような金属基板の表面に酸化膜(絶縁膜)を形成したもの、樹脂材料で構成された基板等が挙げられる。
【0023】
以下、発光素子1を構成する各部を順次説明する。
(陽極)
陽極3は、後述する正孔注入層4を介して正孔輸送層5に正孔を注入する電極である。この陽極3の構成材料としては、仕事関数が大きく、導電性に優れる材料を用いるのが好ましい。
【0024】
陽極3の構成材料としては、例えば、ITO(Indium Tin Oxide)、IZO(Indium Zinc Oxide)、In、SnO、Sb含有SnO、Al含有ZnO等の酸化物、Au、Pt、Ag、Cuまたはこれらを含む合金等が挙げられ、これらのうちの1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
このような陽極3の平均厚さは、特に限定されないが、10〜200nm程度であるのが好ましく、50〜150nm程度であるのがより好ましい。
【0025】
(陰極)
一方、陰極12は、後述する電子注入層11を介して電子輸送層10に電子を注入する電極である。この陰極12の構成材料としては、仕事関数の小さい材料を用いるのが好ましい。
陰極12の構成材料としては、例えば、Li、Mg、Ca、Sr、La、Ce、Er、Eu、Sc、Y、Yb、Ag、Cu、Al、Cs、Rbまたはこれらを含む合金等が挙げられ、これらのうちの1種または2種以上を組み合わせて(例えば、複数層の積層体等)用いることができる。
【0026】
特に、陰極12の構成材料として合金を用いる場合には、Ag、Al、Cu等の安定な金属元素を含む合金、具体的には、MgAg、AlLi、CuLi等の合金を用いるのが好ましい。かかる合金を陰極12の構成材料として用いることにより、陰極12の電子注入効率および安定性の向上を図ることができる。
このような陰極12の平均厚さは、特に限定されないが、100〜1000nm程度であるのが好ましく、100〜500nm程度であるのがより好ましい。
なお、本実施形態の発光素子1は、ボトムエミッション型であるため、陰極12に、光透過性は、特に要求されない。
【0027】
(正孔注入層)
正孔注入層4は、陽極3からの正孔注入効率を向上させる機能を有するものである。
この正孔注入層4の構成材料(正孔注入材料)としては、特に限定されないが、例えば、銅フタロシアニンや、下記化1で表わされる4,4’,4’’−トリス(N,N−フェニル−3−メチルフェニルアミノ)トリフェニルアミン(m−MTDATA)等が挙げられる。
【0028】
【化1】

【0029】
このような正孔注入層4の平均厚さは、特に限定されないが、5〜150nm程度であるのが好ましく、10〜100nm程度であるのがより好ましい。
なお、この正孔注入層4は、省略することができる。
【0030】
(正孔輸送層)
正孔輸送層5は、陽極3から正孔注入層4を介して注入された正孔を赤色発光層6まで輸送する機能を有するものである。
この正孔輸送層5の構成材料には、各種p型の高分子材料や、各種p型の低分子材料を単独または組み合わせて用いることができる。
このような正孔輸送層5の平均厚さは、特に限定されないが、10〜150nm程度であるのが好ましく、10〜100nm程度であるのがより好ましい。
なお、この正孔輸送層5は、省略することができる。
【0031】
(赤色発光層)
この赤色発光層(第1の発光層)6は、赤色(第1の色)に発光する赤色発光材料を含んで構成されている。
このような赤色発光材料としては、特に限定されず、各種赤色蛍光材料、赤色燐光材料を1種または2種以上組み合わせて用いることができる。
【0032】
赤色蛍光材料としては、赤色の蛍光を発するものであれば特に限定されず、例えば、下記化2で表わされる化合物等のペリレン誘導体、ユーロピウム錯体、ベンゾピラン誘導体、ローダミン誘導体、ベンゾチオキサンテン誘導体、ポルフィリン誘導体、ナイルレッド、2−(1,1−ジメチルエチル)−6−(2−(2,3,6,7−テトラヒドロ−1,1,7,7−テトラメチル−1H,5H−ベンゾ(ij)キノリジン−9−イル)エテニル)−4H−ピラン−4H−イリデン)プロパンジニトリル(DCJTB)、4−(ジシアノメチレン)−2−メチル−6−(p−ジメチルアミノスチリル)−4H−ピラン(DCM)等を挙げられる。
【0033】
【化2】

【0034】
赤色燐光材料としては、赤色の燐光を発するものであれば特に限定されず、例えば、イリジウム、ルテニウム、白金、オスミウム、レニウム、パラジウム等の金属錯体が挙げられ、これら金属錯体の配位子の内の少なくとも1つがフェニルピリジン骨格、ビピリジル骨格、ポルフィリン骨格等を持つものも挙げられる。より具体的には、トリス(1−フェニルイソキノリン)イリジウム、ビス[2−(2’−ベンゾ[4,5−α]チエニル)ピリジネート−N,C’]イリジウム(アセチルアセトネート)(btp2Ir(acac))、2,3,7,8,12,13,17,18−オクタエチル−12H,23H−ポルフィリン−白金(II)、ビス[2−(2’−ベンゾ[4,5−α]チエニル)ピリジネート−N,C’]イリジウム、ビス(2−フェニルピリジン)イリジウム(アセチルアセトネート)が挙げられる。
【0035】
また、赤色発光層6の構成材料としては、前述したような赤色発光材料に加えて、この赤色発光材料をゲスト材料とするホスト材料を用いることができる。このホスト材料は、正孔と電子とを再結合して励起子を生成するとともに、その励起子のエネルギーを赤色発光材料に移動(フェルスター移動またはデクスター移動)させて、赤色発光材料を励起する機能を有する。このようなホスト材料を用いる場合、例えば、ゲスト材料である赤色発光材料をドーパントとしてホスト材料にドープして用いることができる。
【0036】
このようなホスト材料としては、用いる赤色発光材料に対して前述したような機能を発揮するものであれば、特に限定されないが、赤色発光材料が赤色蛍光材料を含む場合、例えば、ジスチリルアリーレン誘導体、下記化3で表わされるルブレン等のナフタセン誘導体、ペリレン誘導体、ジスチリルベンゼン誘導体、ジスチリルアミン誘導体、下記化4で表わされるトリス(8−キノリノラト)アルミニウム錯体(Alq)等のキノリノラト系金属錯体、トリフェニルアミンの4量体等のトリアリールアミン誘導体、オキサジアゾール誘導体、シロール誘導体、ジカルバゾール誘導体、オリゴチオフェン誘導体、ベンゾピラン誘導体、トリアゾール誘導体、ベンゾオキサゾール誘導体、ベンゾチアゾール誘導体、キノリン誘導体、4,4’−ビス(2,2’−ジフェニルビニル)ビフェニル(DPVBi)等が挙げられ、これらのうち1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることもできる。
【0037】
【化3】

【0038】
【化4】

【0039】
また、赤色発光材料が赤色燐光材料を含む場合、ホスト材料としては、例えば、3−フェニル−4−(1’−ナフチル)−5−フェニルカルバゾール、4,4’−N,N’−ジカルバゾールビフェニル(CBP)等のカルバゾール誘導体等が挙げられ、これらのうち1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることもできる。
前述したような赤色発光材料(ゲスト材料)およびホスト材料を用いる場合、赤色発光層6中における赤色発光材料の含有量(ドープ量)は、0.01〜10wt%であるのが好ましく、0.1〜5wt%であるのがより好ましい。赤色発光材料の含有量をこのような範囲内とすることで、発光効率を最適化することができ、後述する青色発光層8や緑色発光層9の発光量とのバランスをとりつつ赤色発光層6を発光させることができる。
【0040】
また、前述したような赤色の発光材料はバンドギャップが比較的小さく、正孔や電子を捕獲しやすく、発光しやすい。したがって、陽極3側に赤色発光層を設けることで、バンドギャップが大きく発光し難い青色発光層8や緑色発光層9を陰極側とし、各発光層をバランスよく発光させることができる。
このような赤色発光層6の平均厚さは、特に限定されないが、10〜150nm程度であるのが好ましく、10〜100nm程度であるのがより好ましい。
【0041】
(中間層)
この中間層7は、前述した赤色発光層6と後述する青色発光層8との層間にこれらに接するように設けられている。そして、中間層7は、赤色発光層6と青色発光層8との間でキャリア(正孔および電子)の移動を調整する機能を有する。また、中間層7は、赤色発光層6と青色発光層8との間で励起子のエネルギーが移動するのを阻止する機能を有する。これらの機能により、赤色発光層6および青色発光層8をそれぞれ効率よく発光させることができる。
【0042】
特に、中間層7は、赤色発光層6に接する第1の層71と、該第1の層71に接するとともに青色発光層8に接する第2の層72との2層で構成されている。そして、第1の層71は、正孔輸送材料を主材料として構成され、第2の層72は、アセン骨格を有する材料(以下、「アセン系材料」とも言う)と正孔輸送材料との混合材料を主材料として構成されている。
このような2層で中間層7を構成することにより、中間層7の第2の層72は、青色発光層8から中間層7の第1の層71へ電子を効率よく輸送することができる。そのため、中間層7と青色発光層8との界面付近に蓄積する電子の量を抑えることができる。その結果、青色発光層8の劣化を抑え、発光素子1の長寿命化を図ることができる。
【0043】
また、中間層7の第1の層71は、中間層7の第2の層72から赤色発光層6への電子の輸送量を制限することができる。そのため、赤色発光層6に注入される電子の量と青色発光層8に注入される電子の量との均一化を図ることができる。その結果、発光素子1の赤色発光層6と青色発光層8との発光バランスを優れたものとすることができる。
さらに、中間層7の第1の層71は、赤色発光層6から中間層7の第2の層72へ正孔を効率よく輸送することができる。そのため、赤色発光層6から中間層7を介して青色発光層8へ正孔を効率よく輸送することができる。その結果、発光素子1の発光効率を優れたものとすることができる。
このようにして、発光素子1は、発光バランスおよび発光効率を優れたものとしつつ、長寿命化を図ることができる。
【0044】
特に、本実施形態では、この中間層7の陽極3側に隣接する発光層(第1の発光層)を赤色発光層6とし、中間層7の陰極12側に隣接する発光層(第2の発光層)を青色発光層8としている。赤色発光層6の発光色(第1の色)は、600nm以上にピーク波長を有するものであり、青色発光層8の発光色(第2の色)は、550nm以下にピーク波長を有するものである。このような場合、赤色発光層6、中間層7、青色発光層8の各層間のバンドギャップを図2に示すような関係とすることができる。そのため、発光素子1の赤色発光層6と青色発光層8との発光バランスを優れたものとすることができる。
【0045】
第1の層71および第2の層72に用いる正孔輸送材料としては、それぞれ、正孔輸送性に優れるものであれば、特に限定されないが、アミン系材料(すなわちアミン骨格を有する材料)が好適に用いられる。
正孔輸送材料として用いられるアミン系材料としては、アミン骨格を有し、かつ、前述したような効果を発揮するものであれば、特に限定されず、例えば、ベンジジン系アミン誘導体を用いるのが好ましい。
【0046】
特に、ベンジジン系アミン誘導体のなかでも、中間層7に用いられるアミン系材料としては、2つ以上のナフチル基を導入したものが好ましい。このようなベンジジン系アミン誘導体としては、例えば、下記化5で表されるようなN,N’−ビス(1−ナフチル)−N,N’−ジフェニル〔1,1’−ビフェニル〕−4,4’−ジアミン(α−NPD)や、下記化6で表されるようなN,N,N’,N’−テトラナフチル−ベンジジン(TNB)などが挙げられる。
【0047】
【化5】

【0048】
【化6】

【0049】
このようなアミン系材料は、正孔輸送性に優れている。したがって、このような正孔輸送材料を主材料とする第1の層71は、赤色発光層6から第2の層72へ正孔を円滑に受け渡すことができる。また、このような第1の層71は、第2の層72から赤色発光層6への電子の輸送量を制限する機能をも有する。
一方、中間層7の第2の層72(混合材料)に用いられるアセン系材料としては、アセン骨格を有し、かつ、前述したような効果を発揮するものであれば、特に限定されず、例えば、ナフタレン誘導体、アントラセン誘導体、テトラセン誘導体、ペンタセン誘導体、ヘキサセン誘導体、ヘプタセン誘導体等が挙げられ、これらのうち1種または2種以上を組み合わせて用いることができるが、アントラセン誘導体を用いるのが好ましい。
【0050】
アントラセン誘導体は、優れた電子輸送性を有しながらも、気相成膜法により簡単に成膜することができる。したがって、アセン系材料としてアントラセン誘導体を用いることにより、アセン系材料(ひいては中間層7)の電子輸送性を優れたものとしつつ、均質な中間層7の形成を容易なものとすることができる。
特に、アントラセン誘導体のなかでも、中間層7に用いられるアセン系材料としては、アントラセン骨格の9位および10位のそれぞれにナフチル基が導入されたものが好ましい。これにより、前述した効果が顕著となる。このようなアントラセン誘導体としては、例えば、下記化7で表されるような9,10−ジ(2−ナフチル)アントラセン(ADN)や、下記化8で表されるような2−t−ブチル−9,10−ジ(2−ナフチル)アントラセン(TBADN)、下記化9で表されるような2−メチル−9,10−ジ(2−ナフチル)アントラセン(MADN)などが挙げられる。
【0051】
【化7】

【0052】
【化8】

【0053】
【化9】

【0054】
このようなアセン系材料は、電子輸送性に優れている。したがって、このようなアセン系材料と前述したような正孔輸送材料との混合材料を主材料とする第2の層72は、第1の層71から青色発光層8へ正孔を円滑に受け渡すととともに、青色発光層8から第1の層71へ電子を円滑に受け渡すことができる。すなわち、このような第2の層72は、バイポーラ性を有する。そのため、第2の層72は、電子および正孔に対して優れた耐性を有する。そのため、中間層7の劣化を防止し、その結果、発光素子1の耐久性を向上させることができる。
【0055】
第1の層71中における正孔輸送材料の含有量は、特に限定されないが、50〜100質量%であるのが好ましく、70〜100質量%であるのがより好ましく、80〜100質量%であるのがさらに好ましい。
また、第2の層72中におけるアセン系材料の含有量をA[質量%]とし、第2の層72中における正孔輸送材料の含有量をB[質量%]としたときに、A:Bは、10:90〜90:10であるのが好ましく、30:70〜70:30であるのがより好ましく、40:60〜60:40であるのがさらに好ましい。これにより、中間層7の第2の層72の電子輸送性および正孔輸送性を優れたものとすることができる。
これに対し、AおよびBが前記範囲から外れると、発光素子1の発光バランスが低下したり、発光素子1の駆動電圧が著しく上昇したりする傾向を示す。
【0056】
このような中間層7では、図2に示すように、第1の層71が、青色発光層8側から赤色発光層6側へ電子をトンネル注入するように構成されているのが好ましい。より具体的には、例えば、第1の層71は、青色発光層8側から赤色発光層6側へ電子をトンネル注入するように薄層化されているのが好ましい。これにより、中間層7の第2の層72から第1の層71を介して赤色発光層6に電子を輸送することができる。そのため、第1の層71と第2の層72との界面付近に蓄積する電子の量を抑えることができる。その結果、中間層7(特に第1の層71)の劣化を防止し、発光素子1の長寿命化を図ることができる。
【0057】
また、図2に示すように、第1の層71の主材料となる正孔輸送材料と、第2の層72に含まれる正孔輸送材料とが同種であるのが好ましい。これにより、中間層7の第1の層71から第2の層72への正孔輸送性を向上させることができる。その結果、発光素子1の発光効率を高めることができる。
また、第1の層71の厚さ(平均厚さ)は、第2の層72の厚さ(平均厚さ)よりも薄いのが好ましい。これにより、中間層7と青色発光層8との界面付近に蓄積する電子の量を抑えつつ、中間層7の第2の層72から赤色発光層6へ電子を輸送することができる。
【0058】
より具体的には、第1の層71の厚さは、1〜10nmであるのが好ましく、3〜7nmであるのがより好ましく、3〜5nmであるのがさらに好ましい。これにより、中間層7の第1の層71は、中間層7の第2の層72から赤色発光層6への電子の輸送量を制限しつつ、中間層7の第2の層72から赤色発光層6へ電子を輸送することができる。また、中間層7の第1の層71は、赤色発光層6から中間層7の第2の層72へ正孔を効率よく輸送することができる。
【0059】
これに対し、第1の層71の厚さが前記下限値未満であると、均質な層を形成することが難しく、第1の層71の作用(電子ブロック性)を発揮することができず、発光素子1の赤色発光層6と青色発光層8との発光バランスが悪化する傾向となる。また、赤色発光層6から中間層7の第2の層72への正孔輸送性が低下する。一方、第1の層71の厚さが前記上限値を超えると、第1の層71を介して第2の層72から赤色発光層6へ電子を輸送しづらくなり、発光素子1の駆動電圧の上昇を招いたり、第1の層71と第2の層72との界面付近に蓄積される電子の量の増加により、中間層7の劣化を招いて、発光素子1の寿命が低下したりするおそれがある。
【0060】
また、第2の層72の厚さは、1.5〜10nmであるのが好ましく、3〜10nmであるのがより好ましく、3〜8nmであるのがさらに好ましい。これにより、中間層7と青色発光層8との界面付近に蓄積する電子の量を抑えることができる。
これに対し、第2の層72の厚さが前記下限値未満であると、第1の層71の構成材料や厚さ等によっては、第1の層71と第2の層72との界面付近に蓄積された電子が第2の層72と青色発光層8との界面付近にまで及び、青色発光層8の劣化を招いて、発光素子1の寿命が低下するおそれがある。一方、第2の層72の厚さが前記上限値を超えると、第2の層72が正孔および電子を輸送しづらくなり、発光素子1の発光効率の低下や駆動電圧の上昇を招く場合がある。
【0061】
また、中間層7の厚さは、特に限定されないが、2.5〜20nmであるのが好ましく、6〜17nmであるのがより好ましく、6〜13nmであるのがさらに好ましい。これにより、駆動電圧を抑えつつ、中間層7が赤色発光層6と青色発光層8との間での励起子のエネルギー移動をより確実に阻止することができる。
これに対し、中間層7の平均厚さが前記上限値を超えると、中間層7の構成材料等によっては、駆動電圧が著しく高くなったり、発光素子1の発光(特に白色発光)が難しくなったりする場合がある。一方、中間層7の平均厚さが前記下限値未満であると、中間層7の構成材料や駆動電圧等によっては、中間層7が赤色発光層6と青色発光層8との間での励起子によるエネルギー移動を防止または抑制するのが難しく、また、キャリアや励起子に対する中間層7の耐久性が低下する傾向を示す。
【0062】
(青色発光層)
青色発光層(第2の発光層)8は、青色(第2の色)に発光する青色発光材料を含んで構成されている。
このような青色発光材料としては、特に限定されず、各種青色蛍光材料、青色燐光材料を1種または2種以上組み合わせて用いることができる。
【0063】
青色蛍光材料としては、青色の蛍光を発するものであれば、特に限定されず、例えば、ジスチリル誘導体、フルオランテン誘導体、ピレン誘導体、ペリレンおよびペリレン誘導体、アントラセン誘導体、ベンゾオキサゾール誘導体、ベンゾチアゾール誘導体、ベンゾイミダゾール誘導体、クリセン誘導体、フェナントレン誘導体、ジスチリルベンゼン誘導体、テトラフェニルブタジエン、4,4’−ビス(9−エチル−3−カルバゾビニレン)−1,1’−ビフェニル(BCzVBi)、ポリ[(9.9−ジオクチルフルオレン−2,7−ジイル)−コ−(2,5−ジメトキシベンゼン−1,4−ジイル)]、ポリ[(9,9−ジヘキシルオキシフルオレン−2,7−ジイル)−オルト−コ−(2−メトキシ−5−{2−エトキシヘキシルオキシ}フェニレン−1,4−ジイル)]、ポリ[(9,9−ジオクチルフルオレン−2,7−ジイル)−コ−(エチルニルベンゼン)]等が挙げられ、これらのうち1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることもできる。
【0064】
青色燐光材料としては、青色の燐光を発するものであれば、特に限定されず、例えば、イリジウム、ルテニウム、白金、オスミウム、レニウム、パラジウム等の金属錯体が挙げられる。より具体的には、ビス[4,6−ジフルオロフェニルピリジネート−N,C’]−ピコリネート−イリジウム、トリス[2−(2,4−ジフルオロフェニル)ピリジネート−N,C’]イリジウム、ビス[2−(3,5−トリフルオロメチル)ピリジネート−N,C’]−ピコリネート−イリジウム、ビス(4,6−ジフルオロフェニルピリジネート−N,C’)イリジウム(アセチルアセトネート)が挙げられる。
【0065】
また、青色発光層8の構成材料としては、赤色発光層6と同様に、前述したような青色発光材料に加えて、この青色発光材料をゲスト材料するホスト材料を用いることができる。
また、青色発光層8は、前述した中間層7の第2の層72に含まれるアセン系材料と同種のアセン系材料を含んでいるのが好ましい。すなわち、第2の層72に含まれるアセン骨格を有する材料と、青色発光層8に含まれるアセン骨格を有する材料とが同種であるのが好ましい。これにより、青色発光層8から中間層7の第2の層72への電子輸送性を向上させることができる。その結果、発光素子1の発光効率を高めることができる。
【0066】
前述したような青色発光材料(ゲスト材料)およびホスト材料を用いる場合、青色発光層8中における青色発光材料の含有量(ドープ量)は、0.01〜10wt%であるのが好ましく、0.1〜5wt%であるのがより好ましい。
このような青色発光層8の平均厚さは、特に限定されないが、10〜150nm程度であるのが好ましく、10〜100nm程度であるのがより好ましい。
【0067】
(緑色発光層)
緑色発光層(第3の発光層)9は、緑色(第3の色)に発光する緑色発光材料を含んで構成されている。
このような緑色発光材料としては、特に限定されず、各種緑色蛍光材料、緑色燐光材料を1種または2種以上組み合わせて用いることができる。
【0068】
緑色蛍光材料としては、緑色の蛍光を発するものであれば特に限定されず、例えば、クマリン誘導体、下記化10で表わされる化合物等のキナクリドン誘導体、9,10−ビス[(9−エチル−3−カルバゾール)−ビニレニル]−アントラセン、ポリ(9,9−ジヘキシル−2,7−ビニレンフルオレニレン)、ポリ[(9,9−ジオクチルフルオレン−2,7−ジイル)−コ−(1,4−ジフェニレン−ビニレン−2−メトキシ−5−{2−エチルヘキシルオキシ}ベンゼン)]、ポリ[(9,9−ジオクチル−2,7−ジビニレンフルオレニレン)−オルト−コ−(2−メトキシ−5−(2−エトキシルヘキシルオキシ)−1,4−フェニレン)]等が挙げられ、これらのうち1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることもできる。
【0069】
【化10】

【0070】
緑色燐光材料としては、緑色の燐光を発するものであれば特に限定されず、例えば、例えば、イリジウム、ルテニウム、白金、オスミウム、レニウム、パラジウム等の金属錯体が挙げられる。中でも、これら金属錯体の配位子の内の少なくとも1つが、フェニルピリジン骨格、ビピリジル骨格、ポルフィリン骨格等を持つものが好ましい。より具体的には、ファク−トリス(2−フェニルピリジン)イリジウム(Ir(ppy)3)、ビス(2−フェニルピリジネート−N,C2’)イリジウム(アセチルアセトネート)、ファク−トリス[5−フルオロ−2−(5−トリフルオロメチル−2−ピリジン)フェニル−C,N]イリジウムが挙げられる。
また、緑色発光層9の構成材料としては、赤色発光層6と同様に、前述したような緑色発光材料に加えて、この緑色発光材料をゲスト材料するホスト材料を用いることができる。
【0071】
前述したような緑色発光材料(ゲスト材料)およびホスト材料を用いる場合、緑色発光層9中における緑色発光材料の含有量(ドープ量)は、0.01〜10wt%であるのが好ましく、0.1〜5wt%であるのがより好ましい。
このような緑色発光層9の平均厚さは、特に限定されないが、10〜150nm程度であるのが好ましく、10〜100nm程度であるのがより好ましい。
【0072】
(電子輸送層)
電子輸送層10は、陰極12から電子注入層11を介して注入された電子を緑色発光層9に輸送する機能を有するものである。
電子輸送層10の構成材料(電子輸送材料)としては、例えば、トリス(8−キノリノラト)アルミニウム(Alq)等の8−キノリノールなしいその誘導体を配位子とする有機金属錯体などのキノリン誘導体、オキサジアゾール誘導体、ペリレン誘導体、ピリジン誘導体、ピリミジン誘導体、キノキサリン誘導体、ジフェニルキノン誘導体、ニトロ置換フルオレン誘導体等が挙げられ、これらのうちの1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
電子輸送層10の平均厚さは、特に限定されないが、0.5〜100nm程度であるのが好ましく、1〜50nm程度であるのがより好ましい。
【0073】
(電子注入層)
電子注入層11は、陰極12からの電子注入効率を向上させる機能を有するものである。
この電子注入層11の構成材料(電子注入材料)としては、例えば、各種の無機絶縁材料、各種の無機半導体材料が挙げられる。
【0074】
このような無機絶縁材料としては、例えば、アルカリ金属カルコゲナイド(酸化物、硫化物、セレン化物、テルル化物)、アルカリ土類金属カルコゲナイド、アルカリ金属のハロゲン化物およびアルカリ土類金属のハロゲン化物等が挙げられ、これらのうちの1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。これらを主材料として電子注入層を構成することにより、電子注入性をより向上させることができる。特にアルカリ金属化合物(アルカリ金属カルコゲナイド、アルカリ金属のハロゲン化物等)は仕事関数が非常に小さく、これを用いて電子注入層11を構成することにより、発光素子1は、高い輝度が得られるものとなる。
【0075】
アルカリ金属カルコゲナイドとしては、例えば、LiO、LiO、NaS、NaSe、NaO等が挙げられる。
アルカリ土類金属カルコゲナイドとしては、例えば、CaO、BaO、SrO、BeO、BaS、MgO、CaSe等が挙げられる。
アルカリ金属のハロゲン化物としては、例えば、CsF、LiF、NaF、KF、LiCl、KCl、NaCl等が挙げられる。
アルカリ土類金属のハロゲン化物としては、例えば、CaF、BaF、SrF、MgF、BeF等が挙げられる。
【0076】
また、無機半導体材料としては、例えば、Li、Na、Ba、Ca、Sr、Yb、Al、Ga、In、Cd、Mg、Si、Ta、SbおよびZnのうちの少なくとも1つの元素を含む酸化物、窒化物または酸化窒化物等が挙げられ、これらのうちの1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
電子注入層11の平均厚さは、特に限定されないが、0.1〜1000nm程度であるのが好ましく、0.2〜100nm程度であるのがより好ましく、0.2〜50nm程度であるのがさらに好ましい。
【0077】
(封止部材)
封止部材13は、陽極3、積層体15、および陰極12を覆うように設けられ、これらを気密的に封止し、酸素や水分を遮断する機能を有する。封止部材13を設けることにより、発光素子1の信頼性の向上や、変質・劣化の防止(耐久性向上)等の効果が得られる。
【0078】
封止部材13の構成材料としては、例えば、Al、Au、Cr、Nb、Ta、Tiまたはこれらを含む合金、酸化シリコン、各種樹脂材料等を挙げることができる。なお、封止部材13の構成材料として導電性を有する材料を用いる場合には、短絡を防止するために、封止部材13と陽極3、積層体15、および陰極12との間には、必要に応じて、絶縁膜を設けるのが好ましい。
また、封止部材13は、平板状として、基板2と対向させ、これらの間を、例えば熱硬化性樹脂等のシール材で封止するようにしてもよい。
【0079】
以上のように構成された発光素子1によれば、正孔輸送材料を主材料として構成された第1の層71と、アセン系材料と正孔輸送材料との混合材料を主材料として構成された第2の層72との2層で中間層7を構成することにより、発光バランスおよび発光効率を優れたものとしつつ、長寿命化を図ることができる。
また、本実施形態では、陽極3側から陰極12側へ、赤色発光層6、中間層7、青色発光層8、緑色発光層9の順に設けることで、比較的簡単に、R(赤色)、G(緑色)、B(青色)をバランスよく発光させて、白色発光させることができる。すなわち、発光効率を優れたものとしつつ、長寿命化を図ることができる白色発光の発光素子1を提供することができる。
【0080】
以上のような発光素子1は、例えば、次のようにして製造することができる。
[1] まず、基板2を用意し、この基板2上に陽極3を形成する。
陽極3は、例えば、プラズマCVD、熱CVDのような化学蒸着法(CVD)、真空蒸着等の乾式メッキ法、電解メッキ等の湿式メッキ法、溶射法、ゾル・ゲル法、MOD法、金属箔の接合等を用いて形成することができる。
【0081】
[2] 次に、陽極3上に正孔注入層4を形成する。
正孔注入層4は、例えば、CVD法や、真空蒸着、スパッタリング等の乾式メッキ法等を用いた気相プロセスにより形成することができる。
また、正孔注入層4は、例えば、正孔注入材料を溶媒に溶解または分散媒に分散してなる正孔注入層形成用材料を、陽極3上に供給した後、乾燥(脱溶媒または脱分散媒)することによっても形成することができる。
【0082】
正孔注入層形成用材料の供給方法としては、例えば、スピンコート法、ロールコート法、インクジェット印刷法等の各種塗布法を用いることもできる。かかる塗布法を用いることにより、正孔注入層4を比較的容易に形成することができる。
正孔注入層形成用材料の調製に用いる溶媒または分散媒としては、例えば、各種無機溶媒や、各種有機溶媒、または、これらを含む混合溶媒等が挙げられる。
【0083】
なお、乾燥は、例えば、大気圧または減圧雰囲気中での放置、加熱処理、不活性ガスの吹付け等により行うことができる。
また、本工程に先立って、陽極3の上面には、酸素プラズマ処理を施すようにしてもよい。これにより、陽極3の上面を親液性を付与すること、陽極3の上面に付着する有機物を除去(洗浄)すること、陽極3の上面付近の仕事関数を調整すること等を行うことができる。
ここで、酸素プラズマ処理の条件としては、例えば、プラズマパワー100〜800W程度、酸素ガス流量50〜100mL/min程度、被処理部材(陽極3)の搬送速度0.5〜10mm/sec程度、基板2の温度70〜90℃程度とするのが好ましい。
【0084】
[3] 次に、正孔注入層4上に正孔輸送層5を形成する。
正孔輸送層5は、例えば、CVD法や、真空蒸着、スパッタリング等の乾式メッキ法等を用いた気相プロセスにより形成することができる。
また、正孔輸送材料を溶媒に溶解または分散媒に分散してなる正孔輸送層形成用材料を、正孔注入層4上に供給した後、乾燥(脱溶媒または脱分散媒)することによっても形成することができる。
[4] 次に、正孔輸送層5上に、赤色発光層6を形成する。
赤色発光層6は、例えば、CVD法や、真空蒸着、スパッタリング等の乾式メッキ法等を用いた気相プロセスにより形成することができる。
【0085】
[5] 次に、赤色発光層6上に、第1の層71、第2の層72をこの順で形成して、中間層7を形成する。
第1の層71および第2の層72は、それぞれ、例えば、CVD法や、真空蒸着、スパッタリング等の乾式メッキ法等を用いた気相プロセスにより形成することができる。
[6] 次に、中間層7上に、青色発光層8を形成する。
青色発光層8は、例えば、CVD法や、真空蒸着、スパッタリング等の乾式メッキ法等を用いた気相プロセスにより形成することができる。
【0086】
[7] 次に、青色発光層8上に、緑色発光層9を形成する。
緑色発光層9は、例えば、CVD法や、真空蒸着、スパッタリング等の乾式メッキ法等を用いた気相プロセスにより形成することができる。
[8] 次に、緑色発光層9上に電子輸送層10を形成する。
電子輸送層10は、例えば、CVD法や、真空蒸着、スパッタリング等の乾式メッキ法等を用いた気相プロセスにより形成することができる。
また、電子輸送層10は、例えば、電子輸送材料を溶媒に溶解または分散媒に分散してなる電子輸送層形成用材料を、緑色発光層9上に供給した後、乾燥(脱溶媒または脱分散媒)することによっても形成することができる。
【0087】
[9] 次に、電子輸送層10上に、電子注入層11を形成する。
電子注入層11の構成材料として無機材料を用いる場合、電子注入層11は、例えば、CVD法や、真空蒸着、スパッタリング等の乾式メッキ法等を用いた気相プロセス、無機微粒子インクの塗布および焼成等を用いて形成することができる。
[10] 次に、電子注入層11上に、陰極12を形成する。
陰極12は、例えば、真空蒸着法、スパッタリング法、金属箔の接合、金属微粒子インクの塗布および焼成等を用いて形成することができる。
以上のような工程を経て、発光素子1が得られる。
最後に、得られた発光素子1を覆うように封止部材13を被せ、基板2に接合する。
【0088】
以上説明したような発光素子1は、例えば光源等として使用することができる。また、複数の発光素子1をマトリックス状に配置することにより、照明器具や液晶ディスプレイのバックライト等の発光装置、ディスプレイ装置等の表示装置を構成することができる。
なお、ディスプレイ装置の駆動方式としては、特に限定されず、アクティブマトリックス方式、パッシブマトリックス方式のいずれであってもよい。
【0089】
次に、本発明の表示装置を適用したディスプレイ装置の一例について説明する。
図3は、本発明の表示装置を適用したディスプレイ装置の実施形態を示す縦断面図である。
図3に示すディスプレイ装置100は、基板21と、サブ画素100R、100G、100Bに対応して設けられた複数の発光素子1R、1G、1Bおよびカラーフィルタ19R、19G、10Bと、各発光素子1R、1G、1Bをそれぞれ駆動するための複数の駆動用トランジスタ24とを有している。ここで、ディスプレイ装置100は、トップエミッション構造のディスプレイパネルである。
【0090】
基板21上には、複数の駆動用トランジスタ24が設けられ、これらの駆動用トランジスタ24を覆うように、絶縁材料で構成された平坦化層22が形成されている。
各駆動用トランジスタ24は、シリコンからなる半導体層241と、半導体層241上に形成されたゲート絶縁層242と、ゲート絶縁層242上に形成されたゲート電極243と、ソース電極244と、ドレイン電極245とを有している。
平坦化層22上には、各駆動用トランジスタ24に対応して発光素子1R、1G、1Bが設けられている。
【0091】
発光素子1Rは、平坦化層22上に、反射膜32、腐食防止膜33、陽極3、積層体(有機EL発光部)15、陰極12、陰極カバー34がこの順に積層されている。本実施形態では、各発光素子1R、1G、1Bの陽極3は、画素電極を構成し、各駆動用トランジスタ24のドレイン電極245に導電部(配線)27により電気的に接続されている。また、各発光素子1R、1G、1Bの陰極12は、共通電極とされている。
なお、発光素子1G、1Bの構成は、発光素子1Rの構成と同様である。また、図3では、図1と同様の構成に関しては、同一符号を付してある。また、反射膜32の構成(特性)は、光の波長に応じて、発光素子1R、1G、1B間で異なっていてもよい。
隣接する発光素子1R、1G、1B同士の間には、隔壁31が設けられている。また、これらの発光素子1R、1G、1B上には、これらを覆うように、エポキシ樹脂で構成されたエポキシ層35が形成されている。
【0092】
カラーフィルタ19R、19G、19Bは、前述したエポキシ層35上に、発光素子1R、1G、1Bに対応して設けられている。
カラーフィルタ19Rは、発光素子1Rからの白色光Wを赤色に変換するものである。また、カラーフィルタ19Gは、発光素子1Gからの白色光Wを緑色に変換するものである。また、カラーフィルタ19Bは、発光素子1Bからの白色光Wを青色に変換するものである。このようなカラーフィルタ19R、19G、19Bを発光素子1R、1G、1Bと組み合わせて用いることで、フルカラー画像を表示することができる。
【0093】
また、隣接するカラーフィルタ19R、19G、19B同士の間には、遮光層36が形成されている。これにより、意図しないサブ画素100R、100G、100Bが発光するのを防止することができる。
そして、カラーフィルタ19R、19G、19Bおよび遮光層36上には、これらを覆うように封止基板20が設けられている。
以上説明したようなディスプレイ装置100は、単色表示であってもよく、各発光素子1R、1G、1Bに用いる発光材料を選択することにより、カラー表示も可能である。
このようなディスプレイ装置100(本発明の表示装置)は、各種の電子機器に組み込むことができる。
【0094】
図4は、本発明の電子機器を適用したモバイル型(またはノート型)のパーソナルコンピュータの構成を示す斜視図である。
この図において、パーソナルコンピュータ1100は、キーボード1102を備えた本体部1104と、表示部を備える表示ユニット1106とにより構成され、表示ユニット1106は、本体部1104に対しヒンジ構造部を介して回動可能に支持されている。
このパーソナルコンピュータ1100において、表示ユニット1106が備える表示部が前述のディスプレイ装置100で構成されている。
【0095】
図5は、本発明の電子機器を適用した携帯電話機(PHSも含む)の構成を示す斜視図である。
この図において、携帯電話機1200は、複数の操作ボタン1202、受話口1204および送話口1206とともに、表示部を備えている。
携帯電話機1200において、この表示部が前述のディスプレイ装置100で構成されている。
【0096】
図6は、本発明の電子機器を適用したディジタルスチルカメラの構成を示す斜視図である。なお、この図には、外部機器との接続についても簡易的に示されている。
ここで、通常のカメラは、被写体の光像により銀塩写真フィルムを感光するのに対し、ディジタルスチルカメラ1300は、被写体の光像をCCD(Charge Coupled Device)などの撮像素子により光電変換して撮像信号(画像信号)を生成する。
【0097】
ディジタルスチルカメラ1300におけるケース(ボディー)1302の背面には、表示部が設けられ、CCDによる撮像信号に基づいて表示を行う構成になっており、被写体を電子画像として表示するファインダとして機能する。
ディジタルスチルカメラ1300において、この表示部が前述のディスプレイ装置100で構成されている。
【0098】
ケースの内部には、回路基板1308が設置されている。この回路基板1308は、撮像信号を格納(記憶)し得るメモリが設置されている。
また、ケース1302の正面側(図示の構成では裏面側)には、光学レンズ(撮像光学系)やCCDなどを含む受光ユニット1304が設けられている。
撮影者が表示部に表示された被写体像を確認し、シャッタボタン1306を押下すると、その時点におけるCCDの撮像信号が、回路基板1308のメモリに転送・格納される。
【0099】
また、このディジタルスチルカメラ1300においては、ケース1302の側面に、ビデオ信号出力端子1312と、データ通信用の入出力端子1314とが設けられている。そして、図示のように、ビデオ信号出力端子1312にはテレビモニタ1430が、デ−タ通信用の入出力端子1314にはパーソナルコンピュータ1440が、それぞれ必要に応じて接続される。さらに、所定の操作により、回路基板1308のメモリに格納された撮像信号が、テレビモニタ1430や、パーソナルコンピュータ1440に出力される構成になっている。
【0100】
なお、本発明の電子機器は、図4のパーソナルコンピュータ(モバイル型パーソナルコンピュータ)、図5の携帯電話機、図6のディジタルスチルカメラの他にも、例えば、テレビや、ビデオカメラ、ビューファインダ型、モニタ直視型のビデオテープレコーダ、ラップトップ型パーソナルコンピュータ、カーナビゲーション装置、ページャ、電子手帳(通信機能付も含む)、電子辞書、電卓、電子ゲーム機器、ワードプロセッサ、ワークステーション、テレビ電話、防犯用テレビモニタ、電子双眼鏡、POS端末、タッチパネルを備えた機器(例えば金融機関のキャッシュディスペンサー、自動券売機)、医療機器(例えば電子体温計、血圧計、血糖計、心電表示装置、超音波診断装置、内視鏡用表示装置)、魚群探知機、各種測定機器、計器類(例えば、車両、航空機、船舶の計器類)、フライトシュミレータ、その他各種モニタ類、プロジェクター等の投射型表示装置等に適用することができる。
【0101】
以上、本発明の発光素子、発光装置、表示装置および電子機器を、図示の実施形態に基づいて説明したが、本発明はこれらに限定されるものでない。
例えば、前述した実施形態では、発光素子が3層の発光層を有するものについて説明したが、発光層が2層または4層以上であってもよい。また、発光層の発光色としては、前述した実施形態のR、G、Bに限定されない。発光層が2層または4層以上である場合でも、各発光層の発光スペクトルを適宜設定することで、白色発光させることができる。
また、中間層は、発光層同士の少なくとも1つの層間に設けられていればよく、2層以上の中間層を有していてもよい。
【実施例】
【0102】
次に、本発明の具体的実施例について説明する。
1.発光素子の製造
(実施例1)
<1> まず、平均厚さ0.5mmの透明なガラス基板を用意した。次に、この基板上に、スパッタ法により、平均厚さ100nmのITO電極(陽極)を形成した。
そして、基板をアセトン、2−プロパノールの順に浸漬し、超音波洗浄した後、酸素プラズマ処理を施した。
<2> 次に、ITO電極上に、前述した化1で表わされるm−MTDATAを真空蒸着法により蒸着させ、平均厚さ30nmの正孔注入層を形成した。
<3> 次に、正孔注入層上に、前述した化5で表わされるα−NPDを真空蒸着法により蒸着させ、平均厚さ20nmの正孔輸送層を形成した。
【0103】
<4> 次に、正孔輸送層上に、赤色発光層の構成材料を真空蒸着法により蒸着させ、平均厚さ10nmの赤色発光層(第1の発光層)を形成した。赤色発光層の構成材料としては、赤色発光材料(ゲスト材料)として前述した化2で表わされる化合物を用い、ホスト材料として前述した化3で表わされるルブレンを用いた。また、赤色発光層中の発光材料(ドーパント)の含有量(ドープ濃度)は、1.0wt%とした。
【0104】
<5> 次に、赤色発光層上に、中間層の第1の層、第2の層の構成材料をそれぞれ真空蒸着法により蒸着させ、第1の層および第2の層を有する平均厚さ10nmの中間層を形成した。
ここで、第1の層の構成材料としては、正孔輸送材料として前述した化5で表されるα−NPDを用い、第2の層の構成材料としては、正孔輸送材料として前述した化5で表されるα−NPD、アセン系材料として前述した化8で表されるTBADNを用いた(これらの混合材料を用いた)。また、第2の層中における正孔輸送材料の含有量は、50wt%とし、第2の層中におけるアセン系材料の含有量は、50wt%とした。
また、第1の層の厚さを5nm、第2の層の厚さを5nmとした。
【0105】
<6> 次に、中間層(第2の層)上に、青色発光層の構成材料を真空蒸着法により蒸着させ、平均厚さ7nmの青色発光層(第2の発光層)を形成した。青色発光層の構成材料としては、青色発光材料としてBD102(出光興産社製)を用い、ホスト材料として前述した化8で表されるTBADNを用いた。また、青色発光層中の青色発光材料(ドーパント)の含有量(ドープ濃度)は、5.0wt%とした。
【0106】
<7> 次に、青色発光層上に、緑色発光層の構成材料を真空蒸着法により蒸着させ、平均厚さ20nmの緑色発光層(第3の発光層)を形成した。緑色発光層の構成材料としては、緑色発光材料(ゲスト材料)として前述した化10で表されるキナクリドン誘導体を用い、ホスト材料として前述した化4で表されるAlqを用いた。また、緑色発光層中の緑色発光材料(ドーパント)の含有量(ドープ濃度)は、5.0wt%とした。
【0107】
<8> 次に、緑色発光層上に、前述した化4で表されるAlqを真空蒸着法により成膜し、平均厚さ20nmの電子輸送層を形成した。
<9> 次に、電子輸送層上に、フッ化リチウム(LiF)を真空蒸着法により成膜し、平均厚さ1nmの電子注入層を形成した。
<10> 次に、電子注入層上に、Alを真空蒸着法により成膜した。これにより、Alで構成される平均厚さ200nmの陰極を形成した。
<11> 次に、形成した各層を覆うように、ガラス製の保護カバー(封止部材)を被せ、エポキシ樹脂により固定、封止した。
以上の工程により、図1に示すような発光素子を製造した。
【0108】
(実施例2)
中間層の第1の層の厚さを3nmとした以外は、前述した実施例1と同様にして発光素子を製造した。
(実施例3)
中間層の第1の層の厚さを1nmとした以外は、前述した実施例1と同様にして発光素子を製造した。
【0109】
(比較例1)
前述した化5で表わされるα−NPDのみで厚さ7nmの中間層を形成した以外は、前述した実施例1と同様にして発光素子を製造した。すなわち、第2の層を省略し、第1の層の厚さを7nmとした以外は、前述した実施例1と同様にして発光素子を製造した。
(比較例2)
前述した化5で表されるα−NPDと前述した化8で表されるTBADNとの混合材料(50:50)のみで厚さ7nmの中間層を形成した以外は、前述した実施例1と同様にして発光素子を製造した。すなわち、第1の層を省略し、第2の層の厚さを7nmとした以外は、前述した実施例1と同様にして発光素子を製造した。
(比較例3)
中間層の厚さを15nmとした以外は、前述した比較例2と同様にして発光素子を製造した。すなわち、第1の層を省略し、第2の層の厚さを15nmとした以外は、前述した実施例1と同様にして発光素子を製造した。
【0110】
2.評価
2−1.発光ピーク強度比の評価
各実施例および各比較例について、直流電源を用いて発光素子に定電流を流し、発光ピーク強度比を測定した。
その結果を表1に示す。
【0111】
【表1】

【0112】
2−2.発光寿命の評価
各実施例および各比較例について、直流電源を用いて発光素子に100mA/cmの定電流を流しつづけ、その間、輝度計を用いて輝度を測定し、その輝度が初期の輝度の80%となる時間(LT80)を測定した。なお、各実施例および各比較例において、半減期の値をそれぞれ5個の発光素子について測定した。
その結果を表1に示す。なお、表1に示す寿命特性は、比較例1の発光素子の寿命を1(基準)とした相対的な数値で示している。
【0113】
2−3.発光効率(発光強度)の評価
各実施例および各比較例について、直流電源を用いて発光素子に定電流を流し、輝度計を用いて輝度(初期の輝度)を測定した。なお、各実施例および各比較例において、輝度をそれぞれ5個の発光素子について測定した。
その結果を表1に示す。
【0114】
表1からわかるように、各実施例の発光素子は、発光バランスおよび発光効率を優れたものとしつつ、長寿命化を図ることができた。
これに対し、比較例1の発光素子は、発光バランス(発光ピーク強度比のバランス)および発光効率(発光強度)が良好であるものの、耐久性(寿命特性)が低いものとなった。また、比較例2、3の発光素子は、耐久性(寿命特性)が優れているものの、発光バランス(発光ピーク強度比のバランス)および発光効率(発光強度)が低下した。
【符号の説明】
【0115】
1、1B、1G、1R……発光素子 2……基板 3……陽極 4……正孔注入層 5……正孔輸送層 6……赤色発光層 7……中間層 71……第1の層 72……第2の層 8……青色発光層 9……緑色発光層 10……電子輸送層 11……電子注入層 12……陰極 13……封止部材 15……積層体 19B、19G、19R……カラーフィルタ 100……ディスプレイ装置 100R、100G、100B……サブ画素 20……封止基板 21……基板 22……平坦化層 24……駆動用トランジスタ 241……半導体層 242……ゲート絶縁層 243……ゲート電極 244……ソース電極 245……ドレイン電極 26……第2層間絶縁層 27……配線 31……隔壁 32……反射膜 33……腐食防止膜 34……陰極カバー 35……エポキシ層 36……遮光層 1100……パーソナルコンピュータ 1102……キーボード 1104……本体部 1106……表示ユニット 1200……携帯電話機 1202……操作ボタン 1204……受話口 1206……送話口 1300……ディジタルスチルカメラ 1302……ケース(ボディー) 1304……受光ユニット 1306……シャッタボタン 1308……回路基板 1312……ビデオ信号出力端子 1314……データ通信用の入出力端子 1430……テレビモニタ 1440……パーソナルコンピュータ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
陰極と、
陽極と、
前記陰極と前記陽極との間に設けられ、第1の色に発光する第1の発光層と、
前記第1の発光層と前記陰極との間に設けられ、前記第1の色とは異なる第2の色に発光する第2の発光層と、
前記第1の発光層と前記第2の発光層との層間にこれらに接するように設けられ、前記第1の発光層と前記第2の発光層との間で正孔および電子の移動を調整する機能を有する中間層とを有し、
前記中間層は、前記第1の発光層に接し、正孔輸送性材料を主材料として構成された第1の層と、該第1の層に接するとともに前記第2の発光層に接し、アセン骨格を有する材料と正孔輸送材料との混合材料を主材料として構成された第2の層とで構成されていることを特徴とする発光素子。
【請求項2】
前記第1の層は、前記第2の発光層側から前記第1の発光層側へ電子をトンネル注入するように構成されている請求項1に記載の発光素子。
【請求項3】
前記第1の層の主材料となる正孔輸送性材料と、前記第2の層に含まれる正孔輸送材料とが同種である請求項1または2に記載の発光素子。
【請求項4】
前記第2の発光層は、アセン骨格を有する材料を含んで構成され、前記第2の層に含まれるアセン骨格を有する材料と、前記第2の発光層に含まれるアセン骨格を有する材料とが同種である請求項1ないし3のいずれかに記載の発光素子。
【請求項5】
前記第1の層の厚さは、前記第2の層の厚さよりも薄い請求項1ないし4のいずれかに記載の発光素子。
【請求項6】
前記第1の層の厚さは、1〜10nmである請求項5に記載の発光素子。
【請求項7】
前記第2の層の厚さは、1.5〜10nmである請求項5または6に記載の発光素子。
【請求項8】
前記第2の層中における前記アセン骨格を有する材料の含有量をA[質量%]とし、前記第2の層中における前記正孔輸送性材料の含有量をB[質量%]としたときに、A:Bは、10:90〜90:10である請求項1ないし7のいずれかに記載の発光素子。
【請求項9】
前記第1の色は、600nm以上にピーク波長を有するものであり、前記第2の色は、550nm以下にピーク波長を有するものである請求項1ないし8のいずれかに記載の発光素子。
【請求項10】
前記第2の発光層と前記陰極との間に設けられ、前記第1の色および前記第2の色とは異なる第3の色に発光する第3の発光層を有する請求項1ないし7のいずれかに記載の発光素子。
【請求項11】
前記第1の色は、赤色であり、前記第2の色は、青色であり、前記第3の色は、緑色である請求項10に記載の発光素子。
【請求項12】
請求項1ないし11のいずれかに記載の発光素子を備えることを特徴とする発光装置。
【請求項13】
請求項1ないし11のいずれかに記載の発光素子を備えることを特徴とする表示装置。
【請求項14】
請求項13に記載の表示装置を備えることを特徴とする電子機器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2010−218850(P2010−218850A)
【公開日】平成22年9月30日(2010.9.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−63556(P2009−63556)
【出願日】平成21年3月16日(2009.3.16)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】