説明

発光素子、発光装置、電子機器、および照明装置

【課題】本発明では、長寿命な発光素子を得ることを課題とする。また、発光効率や駆動電圧に優れた発光素子を得ることを課題とする。本発明の発光素子を用いることで、寿命が長く、消費電力の低い発光装置、電子機器、照明装置を提供することを課題とする。
【解決手段】本発明の一態様は、陽極と陰極との間に、前記陽極側から順に、第1の層と、第2の層と、発光層とが設けられた積層構造を少なくとも有し、前記第1の層は、第1の有機化合物と、電子受容性化合物とを含み、前記第2の層は、前記第1の有機化合物のHOMO準位に対して±0.2eV以内のHOMO準位を有する第2の有機化合物を含み、前記発光層は、前記第2の有機化合物のHOMO準位に対して±0.2eV以内のHOMO準位を有する第3の有機化合物と、前記第3の有機化合物に対して正孔トラップ性を示す発光物質とを含む発光素子である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発光素子、発光装置、電子機器、および照明装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、エレクトロルミネッセンス(Electroluminescence;EL)を利用した発光素子の研究開発が盛んに行われている。これら発光素子の基本的な構成は、一対の電極間に発光性の物質を挟んだものである。この素子に電圧を印加することにより、発光性の物質からの発光を得ることができる。
【0003】
このような発光素子は自発光型であるため、液晶ディスプレイに比べ画素の視認性が高く、バックライトが不要である等の利点があり、フラットパネルディスプレイ素子として好適であると考えられている。また、このような発光素子は、薄型軽量に作製できることも大きな利点である。また、非常に応答速度が速いことも特徴の一つである。
【0004】
また、これらの発光素子は膜状に形成することが可能であるため、面状の発光を容易に得ることができる。よって、面状の発光を利用した大面積の素子を形成することができる。このことは、白熱電球やLEDに代表される点光源、あるいは蛍光灯に代表される線光源では得難い特色であるため、照明等に応用できる面光源としての利用価値も高い。
【0005】
エレクトロルミネッセンスを利用した発光素子は、発光性の物質が有機化合物であるか、無機化合物であるかによって大きく分けられる。
【0006】
発光性の物質が有機化合物である場合、発光素子に電圧を印加することにより、陽極から正孔が、陰極から電子がそれぞれ発光性の有機化合物を含む層に注入され、電流が流れる。そして、それらキャリア(正孔および電子)が再結合することにより、発光性の有機化合物が励起状態を形成し、その励起状態が基底状態に戻る際に発光する。このような発光性の有機化合物を用いた電流励起型の発光素子は、一般に有機EL素子と呼ばれている。
【0007】
なお、有機化合物が形成する励起状態の種類としては、一重項励起状態と三重項励起状態が可能である。一般的な有機EL素子に用いられる有機化合物は、基底状態が一重項状態であるため、一重項励起状態からの発光は蛍光、三重項励起状態からの発光は燐光と呼ばれている。
【0008】
このような発光素子は、異なる有機化合物の層を積層するヘテロ構造が提案されたことにより、大きな発展につながった(非特許文献1参照)。ヘテロ構造を採用することにより、キャリアの再結合効率が高まり、発光効率が向上するためである。非特許文献1では、正孔輸送層と電子輸送性の発光層とを積層している。
【0009】
その後、ヘテロ構造と駆動電圧、あるいはヘテロ構造と寿命の関係について、数多くの研究がなされてきた。例えば、正孔輸送層が陽極と接しているような素子においては、その正孔輸送層のイオン化ポテンシャルの数値が寿命に影響を与えるという報告がある(非特許文献2参照)。非特許文献2で開示されている素子においては、正孔輸送層のイオン化ポテンシャルが小さい方が、長寿命であるとされている。さらに、イオン化ポテンシャルの小さい正孔注入層を、陽極と正孔輸送層との間に挿入することにより、素子が長寿命化するという報告もある(非特許文献3および非特許文献4参照)。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0010】
【非特許文献1】C.W.Tang、外1名、アプライド フィジクス レターズ、Vol.51、No.12、913−915(1987)
【0011】
【非特許文献2】Chihaya Adachi、外2名、アプライド フィジクス レターズ、Vol.66、No.20、2679−2681(1995)
【0012】
【非特許文献3】Yasuhiko Shirota、外7名、アプライド フィジクス レターズ、Vol.65、No.7、807−809(1994)
【0013】
【非特許文献4】S.A.Van Slyke、外2名、アプライド フィジクス レターズ、Vol.69、No.15、2160−2162(1996)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
非特許文献2〜4における報告を鑑みると、陽極に接する正孔注入層の有機材料のイオン化ポテンシャル(換言すればHOMO準位)は、なるべく陽極の仕事関数に近い準位とすることが望ましいと言える。その結果、正孔注入層、正孔輸送層、発光層を積層する発光素子の場合、非特許文献3のFIG.2で示されているように、陽極の仕事関数から発光層に至るまで、HOMO準位が階段状になるよう設計される。つまり、陽極の仕事関数から発光層のHOMO準位に向けて、少しずつHOMO準位が低くなっていくように、正孔注入層・正孔輸送層の材料を選択する。
【0015】
このような階段状の設計は、これまで有機EL素子のスタンダードな素子設計とされてきた。そして、このような素子設計の元、正孔注入層、正孔輸送層、および発光層の材料の種類を変え、最も寿命や効率が良くなる材料の組み合わせを探索してきたのが有機EL素子の開発の流れであり、現在も主流である。
【0016】
しかしながら、陽極の仕事関数と発光層のHOMO準位との差が大きくなればなるほど、このような設計では困難が生じてくる。なぜならばこの場合、陽極−発光層間の正孔注入障壁を低減するためには、HOMO準位の階段を数多く設ける、すなわち数多くの層を陽極と発光層との間に挿入する必要が生じるためである。このような素子は現実的ではないため、多くの発光素子においては、正孔注入層および正孔輸送層のせいぜい二層を形成するに止まる。
【0017】
したがって、正孔注入層と正孔輸送層との間、あるいは正孔輸送層と発光層との間における正孔注入障壁は、軽減することはできても、実質的になくすことは難しい。特に、青色の発光素子や燐光発光素子の場合、発光層の材料(特に発光層のホスト材料)のエネルギーギャップが大きいため、それに伴ってHOMO準位はかなり低くなる傾向にある。そのため、陽極の仕事関数と発光層のHOMO準位との差が大きくなり、大きな正孔注入障壁が生じてしまう。多くの場合、正孔輸送層と発光層との間に大きな正孔注入障壁が生じやすい。
【0018】
そして本発明者らは、発光層の材料や構成を改善していくうちに、これらの正孔注入障壁が現在では寿命に対する問題点となりつつあることを見出した。つまり、非特許文献2〜4が報告された頃においては、発光層が寿命の律速点となっていたが、発光層が改善されてきた昨今においては、階段状に設計された正孔注入障壁も問題となりつつあると我々は認識した。
【0019】
また、従来のヘテロ構造を導入することで、発光効率は確保できるが、寿命に関しては、導入するヘテロ構造(材料の種類)によっては向上することもあれば激減することもあり、その原因の解明はなされていない。それ故、このような現象は、材料の相性の一言で済まされがちなのが現状であり、材料の組み合わせに関する指針は確立されていない。
【0020】
そこで本発明者らは、従来のヘテロ構造とは異なる素子設計を行うことで、駆動電圧や発光効率を損なうことなく、長寿命な発光素子を得ることを試みた。また、その素子設計における材料の組み合わせ方についても、詳細に検討を行った。
【0021】
以上のことから、本発明では、長寿命な発光素子を得ることを課題とする。また、発光効率や駆動電圧に優れた発光素子を得ることを課題とする。
【0022】
さらに、本発明の発光素子を用いることで、寿命が長く、消費電力の低い発光装置を提供することを課題とする。また、寿命が長く、消費電力の低い電子機器や照明装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0023】
本発明者らはまず、陽極から発光層に至るまでの正孔注入障壁を、実質的になくすような素子構造を見出した。さらに、鋭意検討を重ねた結果、このような素子構造に対して、発光物質として正孔トラップ性を示す物質を発光層に添加することで、課題を解決できることを見出した。
【0024】
すなわち本発明の一態様は、陽極と陰極との間に、前記陽極側から順に、第1の層と、第2の層と、発光層とが設けられた積層構造を少なくとも有し、前記第1の層は、第1の有機化合物と、電子受容性化合物とを含み、前記第2の層は、前記第1の有機化合物のHOMO準位に対して±0.2eV以内のHOMO準位を有する第2の有機化合物を含み、前記発光層は、前記第2の有機化合物のHOMO準位に対して±0.2eV以内のHOMO準位を有する第3の有機化合物と、前記第3の有機化合物に対して正孔トラップ性を示す発光物質とを含む発光素子である。
【0025】
なお、本明細書中において、陽極とは正孔が放出する電極、陰極とは陽極から放出された正孔を受け取る電極のことを言う。または、陰極とは電子を放出する電極、陽極とは陰極から放出された電子を受け取る電極を言う。
【0026】
なお、正孔注入層、正孔輸送層、および発光層に用いる有機化合物の正孔輸送骨格は、同じとすることが好ましい。したがって本発明の一態様は、陽極と陰極との間に、前記陽極側から順に、第1の層と、第2の層と、発光層とが設けられた積層構造を少なくとも有し、前記第1の層は、第1の正孔輸送骨格を有する第1の有機化合物と、電子受容性化合物とを含み、前記第2の層は、第2の正孔輸送骨格を有する第2の有機化合物を含み、前記発光層は、第3の正孔輸送骨格を有する第3の有機化合物と、前記第3の有機化合物に対して正孔トラップ性を示す発光物質とを含み、前記第1の正孔輸送骨格、前記第2の正孔輸送骨格、および前記第3の正孔輸送骨格が同じである発光素子である。
【0027】
ここで本発明者らは、正孔注入層、正孔輸送層、および発光層に用いる有機化合物の正孔輸送骨格に、ある特定の骨格を適用した場合は、各層間の正孔注入障壁が低減されることを見出した。また、その正孔注入層に電子受容性化合物を添加すれば、陽極と正孔注入層との間の正孔注入障壁も低減できることを見出した。すなわち本発明の一態様は、陽極と陰極との間に、前記陽極側から順に、第1の層と、第2の層と、発光層とが設けられた積層構造を少なくとも有し、前記第1の層は、第1の正孔輸送骨格を有する第1の有機化合物と、電子受容性化合物とを含み、前記第2の層は、第2の正孔輸送骨格を有する第2の有機化合物を含み、前記発光層は、第3の正孔輸送骨格を有する第3の有機化合物と、前記第3の有機化合物に対して正孔トラップ性を示す発光物質とを含み、前記第1の正孔輸送骨格、前記第2の正孔輸送骨格、および前記第3の正孔輸送骨格は、それぞれ独立に、π過剰系ヘテロ芳香環、3環系縮合芳香族炭化水素環、または4環系縮合芳香族炭化水素環の少なくともいずれか一の骨格を含む発光素子である。
【0028】
なお、正孔輸送骨格としては、カルバゾール、ジベンゾフラン、ジベンゾチオフェン、またはアントラセンの少なくともいずれか一の骨格が好ましい。
【0029】
また、上述した特定の骨格を正孔輸送骨格に用いた場合においても、正孔注入層、正孔輸送層、および発光層に用いる有機化合物の正孔輸送骨格を同じとすることが好ましい。したがって本発明の一態様は、陽極と陰極との間に、前記陽極側から順に、第1の層と、第2の層と、発光層とが設けられた積層構造を少なくとも有し、前記第1の層は、第1の正孔輸送骨格を有する第1の有機化合物と、電子受容性化合物とを含み、前記第2の層は、前記第1の正孔輸送骨格を有する第2の有機化合物を含み、前記発光層は、前記第1の正孔輸送骨格を有する第3の有機化合物と、前記第3の有機化合物に対して正孔トラップ性を示す発光物質とを含み、前記第1の正孔輸送骨格は、π過剰系ヘテロ芳香環、3環系縮合芳香環、または4環系縮合芳香環の少なくともいずれか一の骨格を含む発光素子である。
【0030】
なお、正孔輸送骨格としては、カルバゾール、ジベンゾフラン、ジベンゾチオフェン、またはアントラセンの少なくともいずれか一の骨格が好ましい。
【0031】
ここで、上述した発光素子の構成において、前記発光物質としては、芳香族アミン化合物、または有機金属錯体が、正孔トラップ性が高いため好ましい。特に、ピレンジアミン化合物、またはイリジウム錯体は、正孔トラップ性が高い上に発光効率も高く、好適である。
【0032】
さらに本発明者らは、以上で述べた本発明の一態様の発光素子に対して、ある特定の条件の発光層をもう一層設けることで、正孔の陰極への抜けをさらに抑制し、寿命、発光効率共に飛躍的に向上させることができることを見出した。すなわち本発明の一態様は、陽極と陰極との間に、前記陽極側から順に、第1の層と、第2の層と、第1の発光層と、第2の発光層とが設けられた積層構造を少なくとも有し、前記第1の層は、第1の有機化合物と、電子受容性化合物とを含み、前記第2の層は、前記第1の有機化合物のHOMO準位に対して±0.2eV以内のHOMO準位を有する第2の有機化合物を含み、前記第1の発光層は、前記第2の有機化合物のHOMO準位に対して±0.2eV以内のHOMO準位を有する第3の有機化合物と、前記第3の有機化合物に対して正孔トラップ性を示す第1の発光物質とを含み、前記第2の発光層は、前記第3の有機化合物のHOMO準位に対して±0.2eV以内のHOMO準位を有すると共に前記第3の有機化合物のLUMO準位に対して±0.2eV以内のLUMO準位を有する第4の有機化合物と、前記第4の有機化合物に対して正孔トラップ性を示す第2の発光物質とを含み、前記第4の有機化合物は、前記第3の有機化合物とは異なる化合物である発光素子である。
【0033】
なお、本明細書中において、正孔の陰極への抜けとは、陽極より注入された正孔が電子と再結合することなく、陰極側へ通り抜けることを言う。
【0034】
なお、正孔注入層、正孔輸送層、第1の発光層、および第2の発光層に用いる有機化合物の正孔輸送骨格は、同じとすることが好ましい。また、第1の発光層と第2の発光層の電子輸送骨格を同じとすることが好ましい。したがって本発明の一態様は、陽極と陰極との間に、前記陽極側から順に、第1の層と、第2の層と、第1の発光層と、第2の発光層とが設けられた積層構造を少なくとも有し、前記第1の層は、第1の正孔輸送骨格を有する第1の有機化合物と、電子受容性化合物とを含み、前記第2の層は、第2の正孔輸送骨格を有する第2の有機化合物を含み、前記第1の発光層は、第3の正孔輸送骨格および電子輸送骨格を有する第3の有機化合物と、前記第3の有機化合物に対して正孔トラップ性を示す第1の発光物質とを含み、前記第2の発光層は、第4の正孔輸送骨格および前記電子輸送骨格を有する第4の有機化合物と、前記第4の有機化合物に対して正孔トラップ性を示す第2の発光物質とを含み、前記第4の有機化合物は、前記第3の有機化合物とは異なる化合物であり、前記第1の正孔輸送骨格、前記第2の正孔輸送骨格、前記第3の正孔輸送骨格、および前記第4の正孔輸送骨格が同じである発光素子である。
【0035】
ここで本発明者らは、正孔注入層、正孔輸送層、第1の発光層、および第2の発光層に用いる有機化合物の正孔輸送骨格に、ある特定の骨格を適用した場合は、各層間の正孔注入障壁が低減されることを見出した。また、その正孔注入層に電子受容性化合物を添加すれば、陽極と正孔注入層との間の正孔注入障壁も低減できることを見出した。すなわち本発明の一態様は、陽極と陰極との間に、前記陽極側から順に、第1の層と、第2の層と、第1の発光層と、第2の発光層とが設けられた積層構造を少なくとも有し、前記第1の層は、第1の正孔輸送骨格を有する第1の有機化合物と、電子受容性化合物とを含み、前記第2の層は、第2の正孔輸送骨格を有する第2の有機化合物を含み、前記第1の発光層は、第3の正孔輸送骨格および電子輸送骨格を有する第3の有機化合物と、前記第3の有機化合物に対して正孔トラップ性を示す第1の発光物質とを含み、前記第2の発光層は、第4の正孔輸送骨格および前記電子輸送骨格を有する第4の有機化合物と、前記第4の有機化合物に対して正孔トラップ性を示す第2の発光物質とを含み、前記第4の有機化合物は、前記第3の有機化合物とは異なる化合物であり、前記第1の正孔輸送骨格、前記第2の正孔輸送骨格、前記第3の正孔輸送骨格、および前記第4の正孔輸送骨格は、それぞれ独立に、π過剰系ヘテロ芳香環、3環系縮合芳香環、または4環系縮合芳香環の少なくともいずれか一の骨格を含む発光素子である。
【0036】
なお、正孔輸送骨格としては、カルバゾール、ジベンゾフラン、ジベンゾチオフェン、またはアントラセンの少なくともいずれか一の骨格が好ましい。
【0037】
また、上述した特定の骨格を正孔輸送骨格に用いた場合においても、正孔注入層、正孔輸送層、第1の発光層、および第2の発光層に用いる有機化合物の正孔輸送骨格を同じとすることが好ましい。したがって本発明の一態様は、陽極と陰極との間に、前記陽極側から順に、第1の層と、第2の層と、第1の発光層と、第2の発光層とが設けられた積層構造を少なくとも有し、前記第1の層は、第1の正孔輸送骨格を有する第1の有機化合物と、電子受容性化合物とを含み、前記第2の層は、前記第1の正孔輸送骨格を有する第2の有機化合物を含み、前記第1の発光層は、前記第1の正孔輸送骨格および電子輸送骨格を有する第3の有機化合物と、前記第3の有機化合物に対して正孔トラップ性を示す第1の発光物質とを含み、前記第2の発光層は、前記第1の正孔輸送骨格および前記電子輸送骨格を有する第4の有機化合物と、前記第4の有機化合物に対して正孔トラップ性を示す第2の発光物質とを含み、前記第4の有機化合物は、前記第3の有機化合物とは異なる化合物であり、前記第1の正孔輸送骨格は、π過剰系ヘテロ芳香環、3環系縮合芳香環、または4環系縮合芳香環の少なくともいずれか一の骨格を含む発光素子である。
【0038】
なお、正孔輸送骨格としては、カルバゾール、ジベンゾフラン、ジベンゾチオフェン、またはアントラセンの少なくともいずれか一の骨格が好ましい。
【0039】
ここで、以上で述べたような第1の発光層および第2の発光層を有する構成においては、キャリアの再結合効率を高めるため、前記第1の発光層の正孔輸送性は前記第2の発光層の正孔輸送性より高く、前記第1の発光層の電子輸送性は前記第2の発光層の電子輸送性より低いことが好ましい。
【0040】
また、前記第1の発光物質および前記第2の発光物質としては、芳香族アミン化合物、または有機金属錯体が、正孔トラップ性が高いため好ましい。特に、ピレンジアミン化合物、またはイリジウム錯体は、正孔トラップ性が高い上に発光効率も高く、好適である。
【0041】
さらに、前記第1の発光物質と前記第2の発光物質が同じ物質である場合も、本発明の効果が得られるため、本発明の一態様である。
【0042】
以上で述べた発光素子においては、発光層のHOMO準位に近いHOMO準位を有する有機化合物、換言すれば、従来に比べて非常に深いHOMO準位を有する有機化合物を、正孔注入層に用いている点が特徴である。したがって本発明の一態様は、上述した発光素子において、前記第1の有機化合物のHOMO準位が、−6.0ev以上、−5.7eV以下であることを特徴とする発光素子である。
【0043】
なお、以上で述べた発光素子において、前記積層構造(第1の層と、第2の層と、発光層とが設けられた積層構造、または、第1の層と、第2の層と、第1の発光層と、第2の発光層とが設けられた積層構造)は、前記陽極と前記陰極との間に複数設けられていてもよい。
【0044】
また、本発明の一態様は、陽極と陰極との間に、前記陽極側から順に、第1の層と、第2の層と、発光層とが設けられた積層構造を少なくとも有し、前記第1の層は、第1の有機化合物と、電子受容性化合物とを含み、前記第2の層は、前記第1の有機化合物のHOMO準位に対して±0.2eV以内のHOMO準位を有する第2の有機化合物を含み、前記発光層は、前記第2の有機化合物のHOMO準位に対して±0.2eV以内のHOMO準位を有する第3の有機化合物と、前記第3の有機化合物に対して正孔トラップ性を示す発光物質と、発光性物質とを含む発光素子である。
【0045】
前記発光性物質としては、前記正孔トラップ性を示す発光物質の励起エネルギー以下の励起エネルギーを有する発光素子である。
【0046】
上述した本発明の一態様の発光素子は、様々な発光装置に応用可能であり、有用である。したがって、本発明の一態様である発光素子を用いた発光装置も、本発明に含むものとする。なお、本明細書において発光装置とは、画像表示デバイス、発光デバイス、もしくは光源を指す。また、発光装置にコネクター、例えばFPC(Flexible printed circuit)もしくはTAB(Tape Automated Bonding)テープもしくはTCP(Tape Carrier Package)が取り付けられたモジュール、TABテープやTCPの先にプリント配線板が設けられたモジュール、または発光素子が形成された基板にCOG(Chip On Glass)方式によりIC(集積回路)が直接実装されたモジュールも全て発光装置に含むものとする。
【0047】
さらに、上記の本発明の一態様である発光装置は、様々な電子機器の表示部や発光部、光源等に適用可能であり、有用である。したがって、本発明の一態様である発光装置を有する電子機器も、本発明に含むものとする。
【0048】
また、上記の本発明の一態様である発光装置は、様々な照明装置の光源等にも有用である。したがって、本発明の一態様である発光装置を有する照明装置も、本発明に含むものとする。
【発明の効果】
【0049】
本発明を用いることで、長寿命な発光素子を提供できる。また、発光効率や駆動電圧に優れた発光素子を提供できる。
【0050】
また、寿命が長く、消費電力の低い発光装置を提供できる。さらに、寿命が長く、消費電力の低い電子機器や照明装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0051】
【図1】実施の形態に係わる発光素子を説明する図。
【図2】従来の発光素子を説明する図。
【図3】実施の形態に係わる発光素子を説明する図。
【図4】実施の形態に係わる発光素子を説明する図。
【図5】実施の形態に係わる発光素子を説明する図。
【図6】実施の形態に係わる発光素子に用いられる化合物を説明する図。
【図7】実施の形態に係わる発光素子に用いられる化合物を説明する図。
【図8】実施の形態に係わる発光素子に用いられる化合物を説明する図。
【図9】実施の形態に係わる発光素子に用いられる化合物を説明する図。
【図10】実施の形態に係わる発光素子に用いられる化合物を説明する図。
【図11】実施の形態に係わる発光素子に用いられる化合物を説明する図。
【図12】実施の形態に係わる発光素子に用いられる化合物を説明する図。
【図13】実施の形態に係わる発光素子に用いられる化合物を説明する図。
【図14】実施の形態に係わる発光素子に用いられる化合物を説明する図。
【図15】実施の形態に関わる発光素子を説明する図。
【図16】実施例に関わる発光素子に用いられる化合物を説明する図。
【図17】実施例に関わる発光素子を説明する図。
【図18】実施例に関わる発光素子を説明する図。
【図19】実施例に関わる発光素子を説明する図。
【図20】実施例に関わる発光素子を説明する図。
【図21】実施例に関わる発光素子を説明する図。
【図22】実施例に関わる発光素子を説明する図。
【図23】実施例に関わる発光素子を説明する図。
【図24】実施例に関わる発光素子を説明する図。
【図25】実施例に関わる発光素子を説明する図。
【図26】実施の形態に係わる発光装置を説明する図。
【図27】実施の形態に係わる発光装置を説明する図。
【図28】実施の形態に係わる表示装置を説明する図。
【図29】実施の形態に係わる電子機器を説明する図。
【図30】実施の形態に係わる照明装置を説明する図。
【図31】実施の形態に係わる表示装置を説明する図。
【図32】実施例に関わる発光素子を説明する図。
【図33】実施例に関わる発光素子を説明する図。
【図34】実施例に関わる発光素子を説明する図。
【発明を実施するための形態】
【0052】
以下では、本発明の実施の形態について図面を用いて詳細に説明する。ただし、本発明は以下の説明に限定されず、本発明の趣旨およびその範囲から逸脱することなくその形態および詳細を様々に変更し得ることは、当業者であれば容易に理解される。したがって、本発明は以下に示す実施の形態の記載内容に限定して解釈されるものではない。
【0053】
なお、本明細書において、物質Aを他の物質Bからなるマトリクス中に分散する場合、マトリクスを構成する物質Bをホスト材料と呼び、マトリクス中に分散される物質Aをゲスト材料と呼ぶものとする。なお、物質A並びに物質Bは、それぞれ単一の物質であっても良いし、2種類以上の物質の混合物であっても良いものとする。
【0054】
また、本明細書において、HOMO準位とは最高被占有軌道(Highest Occupied Molecular Orbital)が有する準位であり、LUMO準位とは最低空軌道(Lowest Unoccupied molecular orbital)が有する準位である。
【0055】
さらに、本明細書中において、HOMO準位又はLUMO準位が高いとは、そのエネルギーレベルが大きいことを意味し、HOMO準位又はLUMO準位が低いとは、そのエネルギーレベルが小さいことを意味する。例えば、−5.5eVのHOMO準位を有する物質Aは、−5.2eVのHOMO準位を有する物質BよりHOMO準位が0.3eV低く、−5.7eVのHOMO準位を有する物質CよりHOMO準位が0.2eV高いと言うことができる。
【0056】
(実施の形態1)
本実施の形態1では、本発明の一態様である発光素子の構成に関し、用いる材料や作製方法を交えて説明する。なお、本実施の形態1においては、陽極と陰極で挟まれた領域をEL層と称する。
【0057】
まず、本発明の一態様の発光素子に関して、素子構造の概念を図1(a)に、そのバンド図を図1(b)に、それぞれ示す。また比較のため、従来の発光素子に関して、素子構造を図2(a)に、そのバンド図を図2(b)に、それぞれ示す。
【0058】
図2(a)は、例えば非特許文献3に示されているような従来の発光素子の素子構造であり、陽極201と陰極202との間にEL層203が設けられている。EL層203は、陽極201側から順に、正孔注入層211と、正孔輸送層212と、発光層221とが設けられた積層構造を有する。
【0059】
従来は、図2(b)に示すように、陽極201に接する正孔注入層211のHOMO準位233が、なるべく陽極201の仕事関数231に近い準位とすることが望ましいとされている。その結果、正孔注入層のHOMO準位233、正孔輸送層のHOMO準位234、発光層のHOMO準位235は、徐々に低くなっていくように階段状に設計される。正孔はこれらのHOMO準位を伝導し、陰極202から注入された電子と発光層221にて再結合して、発光が得られる。なお、232は陰極の仕事関数である。
【0060】
しかしながら、発光層の材料(特に発光層のホスト材料)のエネルギーギャップが大きくなると、それに伴い、発光層のHOMO準位235は低くなっていく傾向にある。その場合、陽極の仕事関数231と発光層のHOMO準位235との差は大きくなる。したがって、従来の発光素子においては、正孔注入層のHOMO準位233と正孔輸送層のHOMO準位234との間の正孔注入障壁、あるいは正孔輸送層のHOMO準位234と発光層のHOMO準位235との間の正孔注入障壁の少なくともいずれか一方は、非常に大きくなってしまう。多くの場合、正孔輸送層212と発光層221との間に大きな正孔注入障壁が生じやすい。
【0061】
そして、従来の発光素子ではむしろ、この正孔注入障壁を利用し、正孔を蓄積させることによって正孔の陰極への抜けを防ぎ、高い発光効率を得ることが重要と考えられてきた。正孔の陰極への抜けを防止する手段として、例えば、正孔注入障壁の大きい正孔ブロック層を発光層の陰極側に導入する手段などもよく検討されている。このように、障壁を利用して高い発光効率へと導くのが、そもそも従来のヘテロ構造の発光素子の概念と言える。
【0062】
しかしながら先に述べたとおり、本発明者らは、これらの正孔注入障壁が寿命に対する問題点となりつつあることを認識し、本発明に至った。図1(a)は、本発明の一態様の発光素子における素子構造の概念を示したものであり、陽極101と陰極102との間にEL層103が設けられている。EL層103は、陽極101側から順に、第1の層111と、第2の層112と、発光層121とが設けられた積層構造を、少なくとも有している。また、第1の層111は、第1の有機化合物と電子受容性化合物とを含んでおり、第2の層112は第2の有機化合物を含んでおり、発光層121は、第3の有機化合物と、第3の有機化合物に対して正孔トラップ性を示す発光物質とを含んでいる。
【0063】
本発明者らはまず、図1(b)に示すように、第1の層における第1の有機化合物のHOMO準位133と、第2の層における第2の有機化合物のHOMO準位134とを、同程度に揃えることを考えた。また、第2の層における第2の有機化合物のHOMO準位134と、発光層における第3の有機化合物のHOMO準位135とを、同程度に揃えることを考えた。これにより、第1の層111と第2の層112との間の正孔注入障壁、および第2の層112と発光層121との間の正孔注入障壁は、いずれも極めて低減される。
【0064】
なお、本明細書中における同程度のHOMO準位とは、具体的には、HOMO準位の差が±0.2eV以内の状態を指す。通常、2種類の物質がある場合に、電気化学反応のエネルギー差が0.2eV以内であれば、2種類双方の電気化学反応が起こるため、電気化学エネルギーとしては概ね同等と見なせるからである(逆に、電気化学反応のエネルギー差が0.2eVを大きく上回ると、選択的に一方のみ電気化学反応が起こる)。また、実施例で後述するが、実験的にも、HOMO準位の差が±0.2eV以内であれば、発明の効果が得られている。さらに、HOMO準位の差が±0.1eV以内の状態が好ましく、より発明の効果をえることができる。
【0065】
ここで、発光層121における第3の有機化合物のエネルギーギャップが大きくなると、それに伴い、第3の有機化合物のHOMO準位135は低くなっていく傾向にある。したがって、上述のような構成によって、第1の層111と第2の層112との間の正孔注入障壁、および第2の層112と発光層121との間の正孔注入障壁を低減した場合、第1の有機化合物、第2の有機化合物、および第3の有機化合物のいずれの化合物のHOMO準位も、陽極の仕事関数131に比べて大きく低下することになる。その結果、陽極の仕事関数131と第1の有機化合物のHOMO準位133との間には大きな正孔注入障壁が形成され、陽極101から第1の層111への正孔注入が困難になってしまう。
【0066】
そこで本発明者らは、この陽極界面の障壁に関しては、第1の層111に電子受容性化合物を添加することで克服することを考えた。第1の層111に電子受容性化合物を添加することにより、陽極の仕事関数131と、第1の層111に含まれる第1の有機化合物のHOMO準位133との間に隔たりがあった場合でも、正孔注入が潤滑に行われ、実質的には正孔注入障壁が消失する。なお第1の層111は、電子受容性化合物と第1の有機化合物が混合された構成でも良いし、電子受容性化合物と第1の有機化合物とが、陽極側から順に積層された構成でも良い。
【0067】
以上で述べたような構成により、従来の素子において問題と考えられる陽極から発光層に至るまでの正孔注入障壁は、ほぼ解消することになる。しかしながら、このような構成を適用するだけでは、正孔が陰極に抜けやすくなってしまい、発光効率が低下してしまうことがわかった。また、電子輸送層が発光層121と陰極102との間に設けられている場合、その電子輸送層が発光してしまうことがわかった。
【0068】
障壁(正孔のブロック)を用いることなく、正孔の陰極への抜けを防ぐには、正孔トラップ性の物質を添加するのが有効であるが、本発明者らはその正孔トラップ性の物質の種類や添加領域について、鋭意検討を重ねた。その結果、発光層に添加する発光物質に正孔トラップ性を付与することにより、駆動電圧の上昇を招くことなく、この問題点を克服できることを見出した。なお、正孔を発光物質によりトラップさせるためには、第3の有機化合物をホスト材料とし、正孔トラップ性の発光物質をゲスト材料とすることが好ましい。また、正孔トラップ性の発光物質のHOMO準位136は、上述した電気化学的な選択性の観点から、第3の有機化合物のHOMO準位135よりも0.3eV以上高いことが好ましい。
【0069】
正孔の陰極への抜けを防ぎ、発光効率を高めるだけであれば、正孔をトラップする材料を陽極101と発光層121との間に添加することによっても可能である。しかしながらそのような手法の場合、正孔が発光層121に到達して発光に至るまでの移動速度が遅くなるため、どうしても駆動電圧が上昇してしまう。また、場合によっては、キャリアの再結合領域が陽極側に引き寄せられ、逆に電子が陽極に抜けてしまい、発光効率が低下してしまうこともある。一方、図1に示したような本発明の一態様の構成であれば、正孔は陽極101から発光層121に至るまで、障壁およびトラップを感じることなく輸送されるため、駆動電圧の上昇は最小限に抑えることができる。すなわち、第2の層には正孔トラップ性の材料が添加されていないことが好ましい。
【0070】
さらに、図1(b)に示すように、発光層121に到達した正孔は、正孔トラップ性の発光物質のHOMO準位136にトラップされ、発光層121内では急速に移動速度が遅くなる。そして、この移動速度が低減された正孔と、陰極102から注入された電子が効率よく再結合して、効率の高い発光が得られる。図1(b)において、132は陰極の仕事関数である。なお、駆動電圧の観点からは、発光層121内で十分に電子が輸送される必要があるため、発光層121のホスト材料となる第3の有機化合物は正孔輸送性だけでなく電子輸送性も有することが好ましい。すなわち、バイポーラ性の材料であることが好ましい。
【0071】
なお本明細書中において、バイポーラ性の材料とは、EL層において正孔注入(電子を奪われる反応)及び電子注入(電子を受け取る反応)が可能な材料であって、どちらの反応に対しても比較的安定であり、正孔および電子のいずれも十分に輸送可能な材料を指す。
【0072】
以上で述べた通り、本発明の一態様の発光素子において重要な点は、陽極から発光層に至るまでは障壁やトラップに出会うことなく正孔を潤滑に輸送し、一方で発光層においては、障壁を使うことなく正孔の移動速度を低減し、効率のよい再結合に導いている点である。障壁を用いていないため、正孔や電子が狭い領域(障壁周辺)に蓄積・集中して劣化を促進する現象が起きにくく、長寿命化につながる。また、発光層までの正孔注入障壁や正孔トラップが実質的にないため、駆動電圧を低くすることができる。さらに、正孔トラップ性の発光物質を発光層に用いることにより、正孔の移動速度を発光層外ではなく発光層内で低減しているため、障壁を用いていないにもかかわらず正孔と電子とを効率よく再結合させることができ、長寿命と同時に発光効率の高い発光素子が実現できる。さらに、正孔トラップ性の発光物質である発光物質自体が正孔をトラップしているので、正孔と電子とをより効率的に再結合させることができ発光効率の高い発光素子が実現できる。
【0073】
なお、このような観点から、発光層121の正孔輸送性は、第2の層112の正孔輸送性よりも低いことが好ましい。発光層121の正孔輸送性を第2の層112の正孔輸送性よりも低くするには、例えば、第2の有機化合物と第3の有機化合物を同じ化合物とすればよい。この手法により、発光層121の正孔輸送性は、正孔トラップ性の発光物質が含まれている分だけ、必ず第2の層112よりも低くなる。
【0074】
以上の要点を元に、第1の有機化合物、第2の有機化合物、および第3の有機化合物に用いることのできる材料のコンセプトおよび具体例について、以下に説明する。
【0075】
上述したとおり、第1の有機化合物と第2の有機化合物との間の正孔注入障壁、および第2の有機化合物と第3の有機化合物との間の正孔注入障壁を実質的になくすことが本発明における要点の一つである。その手法の一つとして、第1の有機化合物の正孔輸送骨格、第2の有機化合物の正孔輸送骨格、および第3の有機化合物の正孔輸送骨格を同じとする手法を本発明者らは発案した。
【0076】
正孔輸送骨格とは、化合物の骨格において、HOMOが分布している骨格の一部または全部のことを指す。HOMOの分布については、分子軌道計算を用いて知ることができる。各化合物(本実施の形態1では、第1の有機化合物、第2の有機化合物、および第3の有機化合物)の正孔輸送骨格を同じとすることにより、各化合物のHOMO準位は互いに近くなり、結果、各化合物間の電気化学的な障壁は低減される。
【0077】
正孔輸送骨格に関し、具体的な例を図6〜図14を用いて説明する。図6〜図14はそれぞれ、9−[4−(10−フェニル−9−アントリル)フェニル]−9H−カルバゾール(略称:CzPA)、3−フェニル−9−[4−(10−フェニル−9−アントリル)フェニル]−9H−カルバゾール(略称:CzPAP)、9−フェニル−3−[4−(10−フェニル−9−アントリル)フェニル]−9H−カルバゾール(略称:PCzPA)、4−[3−(9,10−ジフェニル−2−アントリル)フェニル]ジベンゾフラン(略称:2mPDBFPA−II)、4−[4−(9,10−ジフェニル−2−アントリル)フェニル]ジベンゾフラン(略称:2PDBFPA−II)、4−[3−(トリフェニレン−2−イル)フェニル]ジベンゾチオフェン(略称:mDBTPTp−II)、9−[4−(5−フェニル−1,3,4−オキサジアゾール−2−イル)フェニル]−9H−カルバゾール(略称:CO11)、9−[4’’’−(5−フェニル−1,3,4−オキサジアゾール−2−イル)−[1,1’:2’,1’’:2’’,1’’’]クアテルフェニル−4−イル]−9H−カルバゾール(略称:Z−CzPO11)、9−[4’’’−(ベンゾオキサゾール−2−イル)−[1,1’:2’,1’’:2’’,1’’’]クアテルフェニル−4−イル]−9H−カルバゾール(略称:Z−CzPBOx)の各化合物に関している。図6〜図14の各図面の(a)には化学式を示し、(b)、(c)には分子軌道計算により最高被占有軌道(HOMO)と最低空軌道(LUMO)を可視化したものを示す。
【0078】
なお、分子軌道計算は、以下のような手順で行った。まず、各化合物の基底状態における最適分子構造を、密度汎関数法(DFT)を用いて計算した。DFTの全エネルギーはポテンシャルエネルギー、電子間静電エネルギー、電子の運動エネルギーと複雑な電子間の相互作用を全て含む交換相関エネルギーの和で表される。DFTでは、交換相関相互作用を電子密度で表現された一電子ポテンシャルの汎関数(関数の関数の意)で近似しているため、計算は高速かつ高精度である。ここでは、混合汎関数であるB3LYPを用いて、交換と相関エネルギーに係る各パラメータの重みを規定した。また、基底関数として、6−311(それぞれの原子価軌道に三つの短縮関数を用いたtriple split valence基底系の基底関数)を全ての原子に適用した。上述の基底関数により、例えば、水素原子であれば、1s〜3sの軌道が考慮され、また、炭素原子であれば、1s〜4s、2p〜4pの軌道が考慮されることになる。さらに、計算精度向上のため、分極基底系として、水素原子にはp関数を、水素原子以外にはd関数を加えた。なお、量子化学計算プログラムとしては、Gaussian03を使用した。計算は、ハイパフォーマンスコンピュータ(SGI社製、Altix4700)を用いて行った。
【0079】
そして、計算によって求めた各化合物の最適分子構造におけるHOMOとLUMOを、Gauss View4.1により可視化したものが図6〜図14の(b)と(c)である。図中の球は、各化合物を構成する原子を表しており、原子の周辺に存在する雲状物は、HOMOまたはLUMOを表している。これらの図から、各化合物において、HOMOが存在している骨格を正孔輸送骨格と言うことができる。
【0080】
図6〜8に示す通り、CzPA、CzPAP、およびPCzPAは、アントラセン骨格とカルバゾール骨格が組み合わさった化合物である。CzPAおよびPCzPAは、HOMOがアントラセン骨格に分布しており、アントラセン骨格が正孔輸送骨格であると言える。一方、CzPAPは、HOMOは概ねアントラセン骨格に分布しているが、カルバゾール骨格もHOMOに対して多少の寄与が見られるため、アントラセン骨格およびカルバゾール骨格の双方が正孔輸送骨格であると言える(ただし、寄与はアントラセン骨格の方が大きい)。
【0081】
また、図9〜10に示す通り、2mPDBFPA−II、および2PDBFPA−IIは、アントラセン骨格とジベンゾフラン骨格が組み合わさった化合物である。2mPDBFPA−IIは、HOMOがアントラセン骨格に分布しており、アントラセン骨格が正孔輸送骨格であると言える。一方、2PDBFPA−IIは、HOMOは概ねアントラセン骨格に分布しているが、ジベンゾフラン骨格もHOMOに対して若干の寄与が見られるため、アントラセン骨格およびジベンゾフラン骨格の双方が正孔輸送骨格であると言える(ただし、寄与はアントラセン骨格の方が大きい)。
【0082】
また、図11に示す通り、mDBTPTp−IIは、トリフェニレン骨格とジベンゾチオフェン骨格が組み合わさった化合物である。mDBTPTp−IIは、HOMOがトリフェニレン骨格およびジベンゾチオフェン骨格の双方に分布しており、トリフェニレン骨格およびジベンゾチオフェン骨格の双方が正孔輸送骨格であると言える(HOMOへの寄与も、概ね同等である)。
【0083】
また、図12〜図13に示す通り、CO11、およびZ−CzPO11は、1,3,4−オキサジアゾール骨格とカルバゾール骨格が組み合わさった化合物である。いずれの化合物も、HOMOがカルバゾール骨格に局在しているため、カルバゾール骨格が正孔輸送骨格であると言える。
【0084】
また、図14に示す通り、Z−CzPBOxは、ベンゾオキサゾール骨格とカルバゾール骨格が組み合わさった化合物である。Z−CzPBOxは、HOMOがカルバゾール骨格に局在しているため、カルバゾール骨格が正孔輸送骨格であると言える。
【0085】
以上で示したように、分子軌道計算から正孔輸送骨格を見積もることが可能であり、第1の有機化合物、第2の有機化合物、および第3の有機化合物の正孔輸送骨格を同じとすることが本発明の一態様である。
【0086】
正孔輸送骨格としては、電子供与性の高い骨格が好ましく、代表的には芳香族アミン骨格がよく知られている。その他、π過剰系ヘテロ芳香環や、縮合芳香族炭化水素環が有用である。なお、π過剰系ヘテロ芳香環とは、モノヘテロ5員芳香環(ピロール、フラン、チオフェン)、および芳香環(代表的にはベンゼン環)が縮環したモノヘテロ5員芳香環を有する骨格を指す。
【0087】
さらに本発明者らは、第1の有機化合物と第2の有機化合物との間の正孔注入障壁、および第2の有機化合物と第3の有機化合物との間の正孔注入障壁を低減する手法の一つとして、以下の組み合わせを見出した。すなわち、第1の有機化合物の正孔輸送骨格(第1の正孔輸送骨格)、第2の有機化合物の正孔輸送骨格(第2の正孔輸送骨格)、および第3の有機化合物の正孔輸送骨格(第3の正孔輸送骨格)が、それぞれ独立に、π過剰系ヘテロ芳香環、3環系縮合芳香族炭化水素環、4環系縮合芳香族炭化水素環の少なくともいずれか一の骨格を含む構成とする手法である。この場合、第1の正孔輸送骨格、第2の正孔輸送骨格、および第3の正孔輸送骨格は、互いに異なっていたとしても、実質的に正孔注入障壁が解消されることを本発明者らは実験的に見出した。したがって、このような組み合わせも本発明の一態様である。
【0088】
π過剰系ヘテロ芳香環として、具体的には、ピロール、フラン、チオフェン、インドール、イソインドール、ベンゾフラン、イソベンゾフラン、ベンゾチオフェン、イソベンゾチオフェン、カルバゾール、ジベンゾフラン、ジベンゾチオフェンの各骨格が挙げられる。また、3環系縮合芳香族炭化水素環または4環系縮合芳香族炭化水素環として、具体的には、フェナントレン、アントラセン、ピレン、クリセン、トリフェニレンのいずれか一の骨格が挙げられる。
【0089】
これらの中でも特に、正孔輸送骨格は、カルバゾール、ジベンゾフラン、ジベンゾチオフェン、またはアントラセンの少なくともいずれか一の骨格を含むことが好ましい。これらの骨格は正孔注入障壁の問題を解消するだけでなく、電気化学的にも非常に安定で、かつ正孔輸送性にも優れているためである。
【0090】
なお、第1の有機化合物、第2の有機化合物、および第3の有機化合物の正孔輸送骨格として、上述したπ過剰系へテロ芳香環(好ましくは、カルバゾール、ジベンゾフラン、またはジベンゾチオフェンの骨格)や、上述した3環系縮合芳香族炭化水素環または4環系縮合芳香族炭化水素環(好ましくはアントラセンの骨格)の少なくともいずれか一の骨格を適用する場合においても、第1の有機化合物の正孔輸送骨格、第2の有機化合物の正孔輸送骨格、および第3の有機化合物の正孔輸送骨格を同じとすることが好ましい。先にも述べたとおり、同じ骨格間であれば、電気化学的な障壁が低減されるためである。
【0091】
なお、上述した本発明の一態様の発光素子において、第1の有機化合物、第2の有機化合物、および第3の有機化合物が同じ化合物であることが好ましい。正孔輸送骨格だけでなく、化合物そのものを同じとすることで、分子軌道が重なりやすくなり、正孔の移動が極めて容易となるためである。また、同じ化合物を連続成膜することになるため、素子の作製も容易となる。
【0092】
以下では、第1の有機化合物、第2の有機化合物、および第3の有機化合物として好適な化合物を具体的に列挙する。上述したとおり、正孔輸送骨格としては、芳香族アミン骨格、π過剰系ヘテロ芳香環、縮合芳香族炭化水素環のいずれか一を有する骨格が有用である。
【0093】
芳香族アミン骨格を正孔輸送骨格として有する化合物としては、4,4’−ビス[N−(1−ナフチル)−N−フェニルアミノ]ビフェニル(略称:NPBまたはα―NPD)、4−(10−フェニル−9−アントリル)トリフェニルアミン(略称:DPhPA)、N,N−ジフェニル−9−[4−(10−フェニル−9−アントリル)フェニル]−9H−カルバゾール−3−アミン(略称:CzA1PA)、4−(9H−カルバゾール−9−イル)−4’−(10−フェニル−9−アントリル)トリフェニルアミン(略称:YGAPA)、N,9−ジフェニル−N−[4−(10−フェニル−9−アントリル)フェニル]−9H−カルバゾール−3−アミン(略称:PCAPA)、N,9−ジフェニル−N−{4−[4−(10−フェニル−9−アントリル)フェニル]フェニル}−9H−カルバゾール−3−アミン(略称:PCAPBA)、N,9−ジフェニル−N−(9,10−ジフェニル−2−アントリル)−9H−カルバゾール−3−アミン(略称:2PCAPA)、4,4’−(キノキサリン−2,3−ジイル)ビス(N,N−ジフェニルアニリン)(略称:TPAQn)、N,N’−(キノキサリン−2,3−ジイルジ−4,1−フェニレン)ビス(N−フェニル−1,1’−ビフェニル−4−アミン)(略称:BPAPQ)、N,N’−(キノキサリン−2,3−ジイルジ−4,1−フェニレン)ビス[ビス(1,1’−ビフェニル−4−イル)アミン](略称:BBAPQ)、4,4’−(キノキサリン−2,3−ジイル)ビス{N−[4−(9H−カルバゾール−9−イル)フェニル]−N−フェニルアニリン}(略称:YGAPQ)、N,N’−(キノキサリン−2,3−ジイルジ−4,1−フェニレン)ビス(N,9−ジフェニル−9H−カルバゾール−3−アミン)(略称:PCAPQ)、4−(9H−カルバゾール−9−イル)−4’−(3−フェニルキノキサリン−2−イル)トリフェニルアミン(略称:YGA1PQ)、N,9−ジフェニル−N−[4−(3−フェニルキノキサリン−2−イル)フェニル]−9H−カルバゾール−3−アミン(略称:PCA1PQ)、N,N,N’−トリフェニル−N’−[4−(3−フェニルキノキサリン−2−イル)フェニル]−1,4−フェニレンジアミン(略称:DPA1PQ)、4−(9H−カルバゾール−9−イル)−4’−(5−フェニル−1,3,4−オキサジアゾール−2−イル)トリフェニルアミン(略称:YGAO11)、N,9−ジフェニル−N−[4−(5−フェニル−1,3,4−オキサジアゾール−2−イル)フェニル]−9H−カルバゾール−3−アミン(略称:PCAO11)、N,N,N’−トリフェニル−N’−[4−(5−フェニル−1,3,4−オキサジアゾール−2−イル)フェニル]−1,4−フェニレンジアミン(略称:DPAO11)、4−(9H−カルバゾール−9−イル)−4’−(4,5−ジフェニル−4H−1,2,4−トリアゾール−3−イル)トリフェニルアミン(略称:YGATAZ1)、4−(9H−カルバゾール−9−イル)−4’−(3,5−ジフェニル−4H−1,2,4−トリアゾール−4−イル)トリフェニルアミン(略称:YGATAZ2)などが挙げられる。
【0094】
また、π過剰系ヘテロ芳香環、および/または縮合芳香族炭化水素環を正孔輸送骨格として有する化合物としては、1,1’,1’’−(ベンゼン−1,3,5−トリイル)トリピレン、9,10−ジフェニルアントラセン(略称:DPAnth)、9−(2−ナフチル)−10−[4−(1−ナフチル)フェニル]アントラセン、9−[4−(10−フェニル−9−アントリル)フェニル]−9H−カルバゾール(略称:CzPA)、3−フェニル−9−[4−(10−フェニル−9−アントリル)フェニル]−9H−カルバゾール(略称:CzPAP)、3,6−ジフェニル−9−[4−(10−フェニル−9−アントリル)フェニル]−9H−カルバゾール(略称:DPCzPA)、3−(1−ナフチル)−9−[4−(10−フェニル−9−アントリル)フェニル]−9H−カルバゾール(略称:CzPAαN)、3−(ビフェニル−3−イル)−9−[4−(10−フェニル−9−アントリル)フェニル]−9H−カルバゾール(略称:CzPAmB)、3−[4−(1−ナフチル)フェニル]−9−[4−(10−フェニル−9−アントリル)フェニル]−9H−カルバゾール(略称:CzPAαNP)、9−フェニル−3−[4−(10−フェニル−9−アントリル)フェニル]−9H−カルバゾール(略称:PCzPA)、9−(9,10−ジフェニル−2−アントリル)−9H−カルバゾール(略称:2CzPA)、9−[4−(9,10−ジフェニル−2−アントリル)フェニル]−9H−カルバゾール(略称:2CzPPA)、4−[3−(9,10−ジフェニル−2−アントリル)フェニル]ジベンゾフラン(略称:2mPDBFPA−II)、4−[4−(9,10−ジフェニル−2−アントリル)フェニル]ジベンゾフラン(略称:2PDBFPA−II)、4−{3−[10−(2−ナフチル)−9−アントリル]フェニル}ジベンゾフラン、4−[3−(9,10−ジフェニル−2−アントリル)フェニル]ジベンゾチオフェン(略称:2mPDBTPA−II)、4−[3−(トリフェニレン−2−イル)フェニル]ジベンゾチオフェン(略称:mDBTPTp−II)、9−[4−(5−フェニル−1,3,4−オキサジアゾール−2−イル)フェニル]−9H−カルバゾール(略称:CO11)、9−[4−(5−フェニル−1,3,4−オキサジアゾール−2−イル)フェニル]−3−フェニル−9H−カルバゾール(略称:CO11−II)、9−[4−(5−フェニル−1,3,4−オキサジアゾール−2−イル)フェニル]−3,6−ジフェニル−9H−カルバゾール(略称:CO11−III)、9−[4’’’−(5−フェニル−1,3,4−オキサジアゾール−2−イル)−[1,1’:2’,1’’:2’’,1’’’]クアテルフェニル−4−イル]−9H−カルバゾール(略称:Z−CzPO11)、9−[4−(ベンゾオキサゾール−2−イル)フェニル]−3−フェニル−9H−カルバゾール(略称:CzBOx−II)、9−[4−(ベンゾオキサゾール−2−イル)フェニル]−3,6−ジフェニル−9H−カルバゾール(略称:CzBOx−III)、9−[4’’’−(ベンゾオキサゾール−2−イル)−[1,1’:2’,1’’:2’’,1’’’]クアテルフェニル−4−イル]−9H−カルバゾール(略称:Z−CzPBOx)などが挙げられる。
【0095】
なお、以上で述べた化合物は、いずれもバイポーラ性の化合物であり、第3の有機化合物として特に好ましい化合物群である。
【0096】
次に、発光層121に含まれる正孔トラップ性の発光物質について説明する。正孔トラップ性の発光物質は、発光層121に含まれる第3の有機化合物に対して正孔トラップ性を示す物質であれば、特に限定はされない。換言すれば、添加することで第3の有機化合物の正孔移動度を小さくできるものであればよい。具体的には、第3の有機化合物よりも0.3eV以上高いHOMO準位を有する物質が好ましい。
【0097】
ここで、本発明者らは、芳香族アミン化合物、または有機金属錯体からなる発光物質が、多くの有機化合物に対して正孔トラップ性を示すため、本発明の発光物質として好適であることを見出した。特に、ピレンジアミン化合物、またはイリジウム錯体が、正孔トラップ性が高く、好適であることを見出した。
【0098】
なお、ピレンジアミン化合物やイリジウム錯体は、正孔輸送骨格がアントラセン、カルバゾール、ジベンゾフラン、またはジベンゾチオフェンの少なくともいずれか一の骨格を含む化合物に対し、非常に強い正孔トラップ性を示すことがわかっている。したがって、これらの骨格を含む第3の有機化合物と、ピレンジアミン化合物またはイリジウム錯体からなる発光物質とを組み合わせることが好ましい。
【0099】
また実験的には、ピレンジアミン化合物は、HOMO準位が同程度の他の芳香族アミン化合物と比べると、正孔トラップ性が高い(発光層に添加した場合に、発光層の正孔移動度を大きく下げる)ことがわかっており、本発明における発光物質として特に好適である。
【0100】
以下では、発光物質として好適なものを列挙する。上述したとおり、発光物質としては、芳香族アミン化合物、または有機金属錯体が好適である。芳香族アミン化合物としては、N,N’−ビス[4−(9H−カルバゾール−9−イル)フェニル]−N,N’−ジフェニルスチルベン−4,4’−ジアミン(略称:YGA2S)、4−(9H−カルバゾール−9−イル)−4’−(10−フェニル−9−アントリル)トリフェニルアミン(略称:YGAPA)、4−(9H−カルバゾール−9−イル)−4’−(9,10−ジフェニル−2−アントリル)トリフェニルアミン(略称:2YGAPPA)、N,9−ジフェニル−N−[4−(10−フェニル−9−アントリル)フェニル]−9H−カルバゾール−3−アミン(略称:PCAPA)、4−(10−フェニル−9−アントリル)−4’−(9−フェニル−9H−カルバゾール−3−イル)トリフェニルアミン(略称:PCBAPA)、N,N’’−(2−tert−ブチルアントラセン−9,10−ジイルジ−4,1−フェニレン)ビス[N,N’,N’−トリフェニル−1,4−フェニレンジアミン](略称:DPABPA)、N,9−ジフェニル−N−[4−(9,10−ジフェニル−2−アントリル)フェニル]−9H−カルバゾール−3−アミン(略称:2PCAPPA)、N−[4−(9,10−ジフェニル−2−アントリル)フェニル]−N,N’,N’−トリフェニル−1,4−フェニレンジアミン(略称:2DPAPPA)、N,N,N’,N’,N’’,N’’,N’’’,N’’’−オクタフェニルジベンゾ[g,p]クリセン−2,7,10,15−テトラアミン(略称:DBC1)、クマリン30、N−(9,10−ジフェニル−2−アントリル)−N,9−ジフェニル−9H−カルバゾール−3−アミン(略称:2PCAPA)、N−[9,10−ビス(1,1’−ビフェニル−2−イル)−2−アントリル]−N,9−ジフェニル−9H−カルバゾール−3−アミン(略称:2PCABPhA)、N−(9,10−ジフェニル−2−アントリル)−N,N’,N’−トリフェニル−1,4−フェニレンジアミン(略称:2DPAPA)、N−[9,10−ビス(1,1’−ビフェニル−2−イル)−2−アントリル]−N,N’,N’−トリフェニル−1,4−フェニレンジアミン(略称:2DPABPhA)、N−[9,10−ビス(1,1’−ビフェニル−2−イル)]−N−[4−(9H−カルバゾール−9−イル)フェニル]−N−フェニルアントラセン−2−アミン(略称:2YGABPhA)、N,N,9−トリフェニルアントラセン−9−アミン(略称:DPhAPhA)、4−(10−フェニル−9−アントリル)−4’−(9−フェニル−9H−フルオレン−9−イル)トリフェニルアミン(略称:FLPAPA)、N,N,N’,N’−テトラフェニルピレン−1,6−ジアミン、N,N’−(3−メチルフェニル)−N,N’−ジフェニルピレン−1,6−ジアミン、N,N’−ビス〔4−(9−フェニル−9H−フルオレン−9−イル)フェニル〕−N,N’−ジフェニルピレン−1,6−ジアミン(略称:1,6FLPAPrn)、N,N’−ビス(4−tert−ブチルフェニル)−N,N’−ビス〔4−(9−フェニル−9H−フルオレン−9−イル)フェニル〕ピレン−1,6−ジアミン(略称:1,6tBu−FLPAPrn)などが挙げられる。
【0101】
また、有機金属錯体としては、ビス[2−(4’,6’−ジフルオロフェニル)ピリジナト−N,C2’]イリジウム(III)アセチルアセトナート(略称:FIracac)、トリス(2−フェニルピリジナト−N,C2’)イリジウム(III)(略称:Ir(ppy))、ビス(2−フェニルピリジナト−N,C2’)イリジウム(III)アセチルアセトナート(略称:Ir(ppy)(acac))、トリス(ベンゾ[h]キノリナト)イリジウム(III)(略称:Ir(bzq))、ビス(ベンゾ[h]キノリナト)イリジウム(III)アセチルアセトナート(略称:Ir(bzq)(acac))、ビス(2,4−ジフェニル−1,3−オキサゾラト−N,C2’)イリジウム(III)アセチルアセトナート(略称:Ir(dpo)(acac))、ビス(2−フェニルベンゾチアゾラト−N,C2’)イリジウム(III)アセチルアセトナート(略称:Ir(bt)(acac))、ビス[2−(2’−ベンゾ[4,5−α]チエニル)ピリジナト−N,C3’]イリジウム(III)アセチルアセトナート(略称:Ir(btp)(acac))、トリス(1−フェニルイソキノリナト−N,C2’)イリジウム(III)(略称:Ir(piq))、ビス(1−フェニルイソキノリナト−N,C2’)イリジウム(III)アセチルアセトナート(略称:Ir(piq)(acac))、2,3,7,8,12,13,17,18−オクタエチル−21H,23H−ポルフィリン白金(II)(略称:PtOEP)などが挙げられる。
【0102】
次に、第1の層111に含まれる電子受容性化合物について説明する。電子受容性化合物は、第1の有機化合物と混合する(接触する)だけで第1の有機化合物から電子を受容するか、あるいは、電界を印加することにより容易に第1の有機化合物から電子を受容する化合物であればよい。例えば、遷移金属酸化物や元素周期表における第4族乃至第8族に属する金属の酸化物を挙げることができる。具体的には、酸化バナジウム、酸化ニオブ、酸化タンタル、酸化クロム、酸化モリブデン、酸化タングステン、酸化マンガン、酸化レニウムは電子受容性が高いため好ましい。特に、酸化モリブデンは吸湿性が低いという特徴を有しているため好ましい。この他にも、7,7,8,8−テトラシアノ−2,3,5,6−テトラフルオロキノジメタン(略称:F−TCNQ)、クロラニル等の有機化合物を挙げることができる。
【0103】
なお、第1の層111において、第1の有機化合物に対して質量比で、0.1以上4.0以下の比率で電子受容性化合物を添加することが好ましい。
【0104】
なお、電子受容性化合物が、第1の有機化合物と混合する(接触する)だけで第1の有機化合物から電子を受容する場合、第1の層では電荷移動錯体が形成される。この時、電荷移動相互作用に基づく吸収が赤外領域に見られるが、第1の有機化合物が芳香族アミン化合物の場合、可視光領域にも吸収が現れることが多い。このことは、透過率の観点で不利となる。例えば、特開2003−272860公報では、芳香族アミン骨格を有する化合物と酸化バナジウムを混合することにより、500nm付近および1300nm付近に新たな吸収が生じている。また、芳香族アミン骨格を有する化合物とF−TCNQを混合することにより、700nm、900nmおよび1200nm付近に新たな吸収が生じている。この場合、特に可視光領域の吸収ピークは発光効率を低下させる要因となってしまう。
【0105】
しかしながら本発明者らは、π過剰系へテロ芳香環(好ましくは、カルバゾール、ジベンゾフラン、またはジベンゾチオフェンの骨格)や、上述した3環系縮合芳香族炭化水素環または4環系縮合芳香族炭化水素環(好ましくはアントラセンの骨格)を正孔輸送骨格として含む第1の有機化合物と、電子受容性化合物とを用いて第1の層を形成した場合、電荷移動相互作用に基づく吸収が発生しないにも関わらず、陽極からの正孔注入障壁が実質的に消失することを見出した。このことにより、可視光領域に吸収ピークを有さない第1の層を形成することが容易となるため、透過率の低下による発光効率の低下を防ぐことができる。
【0106】
このことは、以下のような効果をもたらす。EL層103の膜厚を変化させ、光学設計を行う際には、駆動電圧の変動が少ない第1の層111を厚膜化し、他の層を薄くすることが好ましい。しかしながら、可視光領域に吸収スペクトルのピークが存在する第1の層を厚膜化すると、発光層121から得られた発光は、第1の層111に吸収されてしまい、発光効率の低下を招く。そこで、上記のような電荷移動相互作用に基づく吸収が発生しない第1の層111を適用することにより、発光効率を最大限に発揮させることができる。また、第1の層111を厚膜化することで、発光素子の短絡を防止する際にも有効である。
【0107】
したがって、以上のような電子受容性化合物との組み合わせの観点から、第1の有機化合物の正孔輸送骨格は、π過剰系へテロ芳香環や3環系縮合芳香族炭化水素環または4環系縮合芳香族炭化水素環を有する骨格が好ましい。特に、カルバゾール、ジベンゾフラン、ジベンゾチオフェン、アントラセンは、電気化学的にも非常に安定で、かつ正孔輸送性にも優れているため好適である。
【0108】
なお、第1の有機化合物が芳香族アミン骨格を有する場合、第1の有機化合物の正孔輸送骨格が芳香族アミン骨格となる場合が多い。その場合、上述した電荷移動相互作用に基づく吸収が現れるため、第1の有機化合物は芳香族アミン骨格を有さないことが好ましい。
【0109】
また従来は、有機化合物のイオン化ポテンシャルが5.7eV以上(HOMO準位が−5.7eV以下)になると、電子受容性化合物との間で酸化還元反応が起こりにくくなるとされている(例えば、特開2003−272860公報を参照)。そのため、電子受容性化合物との間で酸化還元反応を起こすための有機化合物としては、イオン化ポテンシャルが5.7eVより小さい(HOMO準位が−5.7eVより高い)物質、具体的には芳香族アミンのような電子供与性の高い物質が必要と考えられてきた。一方で、本発明の一態様では、第1の有機化合物が芳香族アミン骨格を含まない化合物であっても、少なくともHOMO準位が−6.0eV以上−5.7eV以下であれば、電子受容性化合物との間で電荷移動相互作用に基づく吸収を示さないにも関わらず、第1の層が機能することが実験的にわかっている。
【0110】
したがって、上述した本発明の一態様の発光素子において、第1の有機化合物のHOMO準位は、−6.0eV以上−5.7eV以下であることが好ましい。この構成により、発光層のエネルギーギャップが大きく、HOMOが低い場合でも、本発明の概念を実現しやすくなる。
【0111】
なお、アミン骨格を含まない化合物として好ましくは、上述した9,10−ジフェニルアントラセン(略称:DPAnth)、9−(2−ナフチル)−10−[4−(1−ナフチル)フェニル]アントラセン、9−[4−(10−フェニル−9−アントリル)フェニル]−9H−カルバゾール(略称:CzPA)、3−フェニル−9−[4−(10−フェニル−9−アントリル)フェニル]−9H−カルバゾール(略称:CzPAP)、3,6−ジフェニル−9−[4−(10−フェニル−9−アントリル)フェニル]−9H−カルバゾール(略称:DPCzPA)、3−(1−ナフチル)−9−[4−(10−フェニル−9−アントリル)フェニル]−9H−カルバゾール(略称:CzPAαN)、3−(ビフェニル−3−イル)−9−[4−(10−フェニル−9−アントリル)フェニル]−9H−カルバゾール(略称:CzPAmB)、3−[4−(1−ナフチル)フェニル]−9−[4−(10−フェニル−9−アントリル)フェニル]−9H−カルバゾール(略称:CzPAαNP)、9−フェニル−3−[4−(10−フェニル−9−アントリル)フェニル]−9H−カルバゾール(略称:PCzPA)、9−(9,10−ジフェニル−2−アントリル)−9H−カルバゾール(略称:2CzPA)、9−[4−(9,10−ジフェニル−2−アントリル)フェニル]−9H−カルバゾール(略称:2CzPPA)、4−[3−(9,10−ジフェニル−2−アントリル)フェニル]ジベンゾフラン(略称:2mPDBFPA−II)、4−[4−(9,10−ジフェニル−2−アントリル)フェニル]ジベンゾフラン(略称:2PDBFPA−II)、4−{3−[10−(2−ナフチル)−9−アントリル]フェニル}ジベンゾフラン、4−[3−(9,10−ジフェニル−2−アントリル)フェニル]ジベンゾチオフェン(略称:2mPDBTPA−II)、4−[3−(トリフェニレン−2−イル)フェニル]ジベンゾチオフェン(略称:mDBTPTp−II)、9−[4−(5−フェニル−1,3,4−オキサジアゾール−2−イル)フェニル]−9H−カルバゾール(略称:CO11)、9−[4−(5−フェニル−1,3,4−オキサジアゾール−2−イル)フェニル]−3−フェニル−9H−カルバゾール(略称:CO11−II)、9−[4−(5−フェニル−1,3,4−オキサジアゾール−2−イル)フェニル]−3,6−ジフェニル−9H−カルバゾール(略称:CO11−III)、9−[4’’’−(5−フェニル−1,3,4−オキサジアゾール−2−イル)−[1,1’:2’,1’’:2’’,1’’’]クアテルフェニル−4−イル]−9H−カルバゾール(略称:Z−CzPO11)、9−[4−(ベンゾオキサゾール−2−イル)フェニル]−3−フェニル−9H−カルバゾール(略称:CzBOx−II)、9−[4−(ベンゾオキサゾール−2−イル)フェニル]−3,6−ジフェニル−9H−カルバゾール(略称:CzBOx−III)、9−[4’’’−(ベンゾオキサゾール−2−イル)−[1,1’:2’,1’’:2’’,1’’’]クアテルフェニル−4−イル]−9H−カルバゾール(略称:Z−CzPBOx)が挙げられる。さらに、ポリ(N−ビニルカルバゾール)(略称:PVK)のようなカルバゾール誘導体のポリマーを用いても良い。
【0112】
以上では、EL層103の具体的な構成について述べた。以下では、陽極101および陰極102について説明する。
【0113】
陽極101としては、仕事関数の大きい(具体的には4.0eV以上であることが好ましい)金属、合金、電気伝導性化合物、およびこれらの混合物などを用いることが好ましい。例えば、酸化インジウム−酸化スズ(ITO:Indium Tin Oxide)、珪素若しくは酸化珪素を含有した酸化インジウム−酸化スズ、酸化インジウム−酸化亜鉛(IZO:Indium Zinc Oxide)、酸化タングステン及び酸化亜鉛を含有した酸化インジウム(IWZO)等が挙げられる。これらの電気伝導性金属酸化物膜は、通常スパッタリング法により成膜されるが、ゾル−ゲル法などを応用して、インクジェット法、スピンコート法などにより作製しても構わない。例えば、酸化インジウム−酸化亜鉛(IZO)は、酸化インジウムに対し1〜20wt%の酸化亜鉛を加えたターゲットを用いてスパッタリング法により形成することができる。また、酸化タングステン及び酸化亜鉛を含有した酸化インジウム(IWZO)は、酸化インジウムに対し酸化タングステンを0.5〜5wt%、酸化亜鉛を0.1〜1wt%含有したターゲットを用いてスパッタリング法により形成することができる。この他、金(Au)、白金(Pt)、ニッケル(Ni)、タングステン(W)、クロム(Cr)、モリブデン(Mo)、鉄(Fe)、コバルト(Co)、銅(Cu)、パラジウム(Pd)、チタン(Ti)、または金属材料の窒化物(例えば、窒化チタン等)、モリブデン酸化物、バナジウム酸化物、ルテニウム酸化物、タングステン酸化物、マンガン酸化物、チタン酸化物等が挙げられる。また、ポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)/ポリ(スチレンスルホン酸)(PEDOT/PSS)、ポリアニリン/ポリ(スチレンスルホン酸)(PAni/PSS)等の導電性ポリマーを用いても良い。
【0114】
また陰極102としては、仕事関数の小さい(具体的には3.8eV以下であることが好ましい)金属、合金、電気伝導性化合物、およびこれらの混合物などを用いることができる。このような陰極材料の具体例としては、元素周期表の第1族または第2族に属する元素、すなわちリチウム(Li)やセシウム(Cs)等のアルカリ金属、およびマグネシウム(Mg)、カルシウム(Ca)、ストロンチウム(Sr)等のアルカリ土類金属、およびこれらを含む合金(MgAg、AlLi)、ユウロピウム(Eu)、イッテルビウム(Yb)等の希土類金属およびこれらを含む合金等が挙げられる。また、アルカリ金属化合物、アルカリ土類金属化合物、または希土類金属の化合物(例えば、フッ化リチウム(LiF)、酸化リチウム(LiOx)、フッ化セシウム(CsF)、フッ化カルシウム(CaF)、フッ化エルビウム(ErF)など)の薄膜と、アルミニウム等の金属膜とを積層することによって、陰極とすることも可能である。アルカリ金属、アルカリ土類金属、これらを含む合金の膜は、真空蒸着法を用いて形成することができる。また、アルカリ金属またはアルカリ土類金属を含む合金はスパッタリング法により形成することも可能である。また、銀ペーストなどをインクジェット法などにより成膜することも可能である。
【0115】
なお、本発明の一態様の発光素子においては、陽極および陰極のうち、少なくとも一方が透光性を有すればよい。透光性は、ITOのような透明電極を用いるか、あるいは電極の膜厚を薄くすることにより確保できる。
【0116】
また、本発明の一態様の発光素子を形成するための基板は、陽極101側に設けられていても良いし、陰極102側に設けられていても良い。基板の種類としては、例えばガラス、またはプラスチック、金属などを用いることができる。なお、発光素子の支持体として機能するものであれば、これら以外のものでもよい。また、発光素子からの発光を、基板を通して外部へ取り出す場合には、基板は透光性を有する基板であることが好ましい。
【0117】
以上で述べたような構成により、本発明の一態様の発光素子を作製することができる。なお、EL層103には、さらに他の層を導入しても良い。具体的には、図3に示すように、電子輸送層113や電子注入層114を導入した素子構造であっても良い。
【0118】
電子輸送層113としては、例えば、トリス(8−キノリノラト)アルミニウム(略称:Alq)、トリス(4−メチル−8−キノリノラト)アルミニウム(略称:Almq)、ビス(10−ヒドロキシベンゾ[h]キノリナト)ベリリウム(略称:BeBq)、ビス(2−メチル−8−キノリノラト)(4−フェニルフェノラト)アルミニウム(略称:BAlq)など、キノリン骨格またはベンゾキノリン骨格を有する金属錯体等からなる層である。また、この他ビス[2−(2−ヒドロキシフェニル)ベンズオキサゾラト]亜鉛(略称:Zn(BOX))、ビス[2−(2−ヒドロキシフェニル)ベンゾチアゾラト]亜鉛(略称:Zn(BTZ))などのオキサゾール系、チアゾール系配位子を有する金属錯体なども用いることができる。さらに、金属錯体以外にも、2−(4−ビフェニリル)−5−(4−tert−ブチルフェニル)−1,3,4−オキサジアゾール(略称:PBD)や、1,3−ビス[5−(p−tert−ブチルフェニル)−1,3,4−オキサジアゾール−2−イル]ベンゼン(略称:OXD−7)、3−(4−ビフェニリル)−4−フェニル−5−(4−tert−ブチルフェニル)−1,2,4−トリアゾール(略称:TAZ)、バソフェナントロリン(略称:BPhen)、バソキュプロイン(略称:BCP)なども用いることができる。ここに述べた物質は、主に10−6cm/Vs以上の電子移動度を有する物質である。なお、正孔よりも電子の輸送性の高い物質であれば、上記以外の物質を電子輸送層として用いても構わない。また、電子輸送層は、単層のものだけでなく、上記物質からなる層が二層以上積層したものとしてもよい。
【0119】
また、高分子化合物を用いることもできる。例えば、ポリ[(9,9−ジヘキシルフルオレン−2,7−ジイル)−co−(ピリジン−3,5−ジイル)](略称:PF−Py)、ポリ[(9,9−ジオクチルフルオレン−2,7−ジイル)−co−(2,2’−ビピリジン−6,6’−ジイル)](略称:PF−BPy)などを用いることができる。
【0120】
電子注入層114としては、例えば、リチウム、カルシウム、マグネシウム、フッ化リチウム(LiF)、酸化リチウム(LiO)、フッ化セシウム(CsF)、フッ化カルシウム(CaF)等のようなアルカリ金属、アルカリ土類金属、またはそれらの化合物を用いることができる。
【0121】
その他、電子輸送性を有する物質にアルカリ金属、アルカリ土類金属、またはそれらの化合物を含有させたもの、具体的にはAlq中にマグネシウム(Mg)を含有させたもの等を用いてもよい。なお、この場合には、陰極102からの電子注入をより効率良く行うことができる。
【0122】
次に、本発明の一態様の発光素子の作製方法について述べる。作製方法としては、真空蒸着法に代表されるドライプロセスが好ましい。なぜならば、本発明の一態様の発光素子は、第1の層、第2の層、および発光層を積層するため、ドライプロセスの方が各領域を作り分けやすいためである。このような観点から、第1の有機化合物、第2の有機化合物、第3の有機化合物、および発光物質は低分子化合物が好ましい。
【0123】
ただし、本発明の一態様の発光素子は、ドライプロセス、ウェットプロセスを問わず、種々の方法を用いて形成してよい。ウェットプロセスとしては、インクジェット法またはスピンコート法などがその代表例として挙げられるが、これらに限定されることはない。
【0124】
以上で述べたように、本発明を適用することで、長寿命な発光素子を提供できる。また、発光効率や駆動電圧に優れた発光素子を提供できる。
【0125】
(実施の形態2)
本実施の形態2では、本発明の一態様である発光素子において、キャリアの再結合効率を高める観点でさらに好ましい構成について、用いる材料や作製方法を交えて説明する。なお、本実施の形態2においては、陽極と陰極で挟まれた領域をEL層と称する。
【0126】
本実施の形態2における本発明の一態様の発光素子に関して、素子構造の概念を図4(a)に、そのバンド図を図4(b)に、それぞれ示す。図4(a)に示すように、本発明の一態様の発光素子においては、陽極401と陰極402との間にEL層403が設けられている。EL層403は、陽極401側から順に、第1の層411と、第2の層412と、第1の発光層421と、第2の発光層422とが設けられた積層構造を、少なくとも有している。また、第1の層411は、第1の有機化合物と電子受容性化合物とを含んでおり、第2の層412は第2の有機化合物を含んでおり、第1の発光層421は、第3の有機化合物と、第3の有機化合物に対して正孔トラップ性を示す第1の発光物質とを含んでおり、第2の発光層422は、第4の有機化合物と、第4の有機化合物に対して正孔トラップ性を示す第2の発光物質とを含んでおり、第4の有機化合物と第3の有機化合物は異なる化合物である。
【0127】
本発明者らはまず、図4(b)に示すように、第1の層における第1の有機化合物のHOMO準位433と、第2の層における第2の有機化合物のHOMO準位434とを、同程度に揃えることを考えた。また、第2の層における第2の有機化合物のHOMO準位434と、第1の発光層における第3の有機化合物のHOMO準位435とを、同程度に揃えることを考えた。また、第1の発光層における第3の有機化合物のHOMO準位435と、第2の発光層における第4の有機化合物のHOMO準位437とを、同程度に揃えることを考えた。これにより、第1の層411と第2の層412との間の正孔注入障壁、第2の層412と第1の発光層421との間の正孔注入障壁、および第1の発光層421と第2の発光層422との間の正孔注入障壁は、いずれも極めて低減される。
【0128】
なお、実施の形態1で述べた電気化学的な選択性の観点から、本明細書中における同程度のHOMO準位とは、具体的には、HOMO準位の差が±0.2eV以内の状態を指す。
【0129】
また、実施の形態1で述べた通り、第1の層411に電子受容性化合物を添加することにより、陽極の仕事関数431と、第1の層411に含まれる第1の有機化合物のHOMO準位433との間に隔たりがあった場合でも、正孔注入が潤滑に行われ、実質的には正孔注入障壁が消失する。なお第1の層411は、電子受容性化合物と第1の有機化合物が混合された構成でも良いし、電子受容性化合物と第1の有機化合物とが、陽極側から順に積層された構成でも良い。
【0130】
以上で述べたような構成により、陽極から第1の発光層および第2の発光層に至るまでの正孔注入障壁は、ほぼ解消することになる。
【0131】
さらに発光層には、実施の形態1と同様の理由により、正孔トラップ性の発光物質が添加されている。具体的には、第1の発光層421には、第1の発光層421における第3の有機化合物に対して正孔トラップ性を示す第1の発光物質が添加されている。また、第2の発光層422には、第2の発光層422における第4の有機化合物に対して正孔トラップ性を示す第2の発光物質が添加されている。これにより、駆動電圧の上昇を招くことなく、正孔の陰極への抜けを克服できる。
【0132】
なお、正孔を発光物質によりトラップさせるためには、第1の発光層421において、第3の有機化合物をホスト材料とし、正孔トラップ性の第1の発光物質をゲスト材料とすることが好ましい。また、第2の発光層422において、第4の有機化合物をホスト材料とし、正孔トラップ性の第2の発光物質をゲスト材料とすることが好ましい。
【0133】
さらに、正孔トラップ性の第1の発光物質のHOMO準位436は、上述した電気化学的な選択性の観点から、第3の有機化合物のHOMO準位435よりも0.3eV以上高いことが好ましい。また、正孔トラップ性の第2の発光物質のHOMO準位438は、上述した電気化学的な選択性の観点から、第4の有機化合物のHOMO準位437よりも0.3eV以上高いことが好ましい。
【0134】
正孔の陰極への抜けを防ぎ、発光効率を高めるだけであれば、正孔をトラップする材料を陽極401と第1の発光層421との間に添加することによっても可能である。しかしながらそのような手法の場合、正孔が第1の発光層421に到達して発光に至るまでの移動速度が遅くなるため、どうしても駆動電圧が上昇してしまう。一方、図4に示したような本発明の一態様の構成であれば、正孔は陽極401から第1の発光層421に至るまで、障壁およびトラップを感じることなく輸送されるため、駆動電圧の上昇は最小限に抑えることができる。すなわち、第2の層には正孔トラップ性の材料が添加されていないことが好ましい。
【0135】
さらに、図4(b)に示すように、発光層に到達した正孔は、正孔トラップ性の第1の発光物質のHOMO準位436、および第2の発光物質のHOMO準位438にトラップされ、第1の発光層421内および第2の発光層422内では、急速に移動速度が遅くなる。そして、この移動速度が低減された正孔と、陰極402から注入された電子が効率よく再結合して、効率の高い発光が得られる。図4(b)において、432は陰極の仕事関数である。なお、駆動電圧の観点からは、第1の発光層421内および第2の発光層422内で十分に電子が輸送される必要があるため、第1の発光層421のホスト材料となる第3の有機化合物および第2の発光層422のホスト材料となる第4の有機化合物は、いずれも正孔輸送性だけでなく電子輸送性も有することが好ましい。すなわち、バイポーラ性の材料であることが好ましい。
【0136】
なお、本明細書中において、バイポーラ性の材料とは、EL層において正孔注入(電子を奪われる反応)及び電子注入(電子を受け取る反応)が可能な材料であって、どちらの反応に対しても比較的安定であり、正孔および電子のいずれも十分に輸送可能な材料を指す。
【0137】
なお、第1の層411に含まれる第1の有機化合物のLUMO準位439、第2の層における第2の有機化合物のLUMO準位440、正孔トラップ性の第1の発光物質のLUMO準位443、および第2の発光物質のLUMO準位444である。
【0138】
ここで、発光層内での再結合効率を、障壁を用いることなくさらに高める工夫として、本実施の形態2においては、第3の有機化合物を用いた第1の発光層421と、第4の有機化合物を用いた第2の発光層422とを積層させ、かつ第3の有機化合物と第4の有機化合物を敢えて異なる化合物としている点が特徴である。
【0139】
上述したとおり、第3の有機化合物と第4の有機化合物との間に、電気化学的な正孔注入障壁は実質的にない状態(HOMO準位が同程度)であるが、同種物質間の正孔移動に比べれば、異種物質間の正孔移動は多少遅くなる。
【0140】
一方、電子に関しても、図4に示す本発明の一態様では、第3の有機化合物のLUMO準位441と第4の有機化合物のLUMO準位442を同程度としているため、第4の有機化合物から第3の有機化合物への電気化学的な電子注入障壁は実質的にない状態である。しかしながら、第3の有機化合物と第4の有機化合物は異なる化合物であるため、正孔同様、電子移動も同種物質間に比べれば多少抑制されることになる。なお、電気化学的な選択性の観点から、本明細書中における同程度のLUMO準位とは、具体的には、LUMO準位の差が±0.2eV以内の状態を指す。
【0141】
したがって、第1の発光層421および第2の発光層422の界面では、正孔および電子の双方の移動が抑制される。この界面では電気化学的な障壁がないため、その抑制効果はそれほど大きくはない。しかしながら、正孔および電子の双方に影響を及ぼすため、キャリアの再結合領域はこの界面を中心にして形成されることになる。しかも、障壁を用いて再結合に導いているわけではないので、再結合領域は局在することはなく、正孔や電子が狭い領域(障壁周辺)に蓄積または集中して劣化を促進する現象は起きにくい。
【0142】
以上のような設計により、障壁を用いることなく、発光層の内部(第1の発光層421と第2の発光層422との界面付近)を中心にしてキャリアを再結合させることができることを、本発明者らは見出した。このように、正孔・電子の双方を流すバイポーラ材料を異なる組み合わせで接合した発光層を適用することでキャリアを再結合させる思想は、バイポーラへテロ接合ともいうべき新たな概念であり、本発明の重要な思想の一つである。これにより、障壁に由来する劣化を防ぐと同時に、発光効率も高めることができる。
【0143】
以上で述べた通り、本発明の一態様の発光素子において重要な点は、陽極から発光層に至るまでは障壁やトラップに出会うことなく正孔を潤滑に輸送し、一方で発光層においては、障壁を使うことなく正孔の移動速度だけでなく電子の移動速度も制御し、効率のよい再結合に導いている点である。障壁を用いていないため、正孔や電子が狭い領域(障壁周辺)に蓄積・集中して劣化を促進する現象が起きにくく、長寿命化につながる。また、発光層までの正孔注入障壁や正孔トラップが実質的にないため、駆動電圧を低くすることができる。さらに、正孔トラップ性の発光物質を発光層に用い、さらにバイポーラへテロ接合を適用することにより、障壁を用いていないにもかかわらず正孔と電子と効率よく再結合さることができ、長寿命と同時に発光効率の高い発光素子が実現できる。
【0144】
なお、このような観点から、第1の発光層421の正孔輸送性は、第2の層412の正孔輸送性よりも低いことが好ましい。第1の発光層421の正孔輸送性を第2の層412の正孔輸送性よりも低くするには、例えば、第2の有機化合物と第3の有機化合物を同じ化合物とすればよい。この手法により、第1の発光層421の正孔輸送性は、正孔トラップ性の第1の発光物質が含まれている分だけ、必ず第2の層412よりも低くなる。
【0145】
以上の要点を元に、第1の有機化合物、第2の有機化合物、第3の有機化合物、および第4の有機化合物に用いることのできる材料のコンセプトおよび具体例について、以下に説明する。
【0146】
実施の形態1と同様、第1の有機化合物の正孔輸送骨格、第2の有機化合物の正孔輸送骨格、第3の有機化合物の正孔輸送骨格、第4の有機化合物の正孔輸送骨格を同じとすることが好ましい。正孔輸送骨格については、実施の形態1において図6〜図14を用いて説明した通りである。
【0147】
さらに、本実施の形態2においては、第3の有機化合物と第4の有機化合物との間の電子注入障壁を実質的になくすことも要点の一つである。その手法の一つとして、第3の有機化合物の電子輸送骨格、および第4の有機化合物の電子輸送骨格を同じとする手法を本発明者らは発案した。
【0148】
電子輸送骨格とは、化合物の骨格において、LUMOが分布している骨格の一部または全部のことを指す。LUMOの分布については、分子軌道計算を用いて知ることができる。各化合物(本実施の形態2では、第3の有機化合物、および第4の有機化合物)の電子輸送骨格を同じとすることにより、各化合物のLUMO準位は互いに近くなり、結果、各化合物間の電気化学的な障壁は低減される。
【0149】
電子輸送骨格に関し、具体的な例を図6〜図14を用いて説明する。図6〜8に示す通り、CzPA、CzPAP、およびPCzPAは、アントラセン骨格とカルバゾール骨格が組み合わさった化合物である。いずれの化合物もLUMOがアントラセン骨格に分布しており、アントラセン骨格が電子輸送骨格であると言える。
【0150】
また、図9、図10に示す通り、2mPDBFPA−II、および2PDBFPA−IIは、アントラセン骨格とジベンゾフラン骨格が組み合わさった化合物である。いずれの化合物も、LUMOは概ねアントラセン骨格に分布しているが、ジベンゾフラン骨格もLUMOに対して多少の寄与が見られるため、アントラセン骨格およびジベンゾフラン骨格の双方が電子輸送骨格であると言える(ただし、寄与はアントラセン骨格の方が大きい)。
【0151】
また、図11に示す通り、mDBTPTp−IIは、トリフェニレン骨格とジベンゾチオフェン骨格が組み合わさった化合物である。mDBTPTp−IIは、LUMOは概ねトリフェニレン骨格に分布しているが、ジベンゾチオフェン骨格もLUMOに対して若干の寄与が見られるため、トリフェニレン骨格およびジベンゾチオフェン骨格の双方が電子輸送骨格であると言える(ただし、寄与はトリフェニレン骨格の方が大きい)。
【0152】
また、図12、図13に示す通り、CO11、およびZ−CzPO11は、1,3,4−オキサジアゾール骨格とカルバゾール骨格が組み合わさった化合物である。いずれの化合物も、LUMOが1,3,4−オキサジアゾール骨格を中心に分布しているため、1,3,4−オキサジアゾール骨格が電子輸送骨格であると言える。
【0153】
また、図14に示す通り、Z−CzPBOxは、ベンゾオキサゾール骨格とカルバゾール骨格が組み合わさった化合物である。Z−CzPBOxは、LUMOがベンゾオキサゾール骨格を中心に分布しているため、ベンゾオキサゾール骨格が電子輸送骨格であると言える。
【0154】
以上で示したように、分子軌道計算から正孔輸送骨格および電子輸送骨格を見積もることが可能であり、第1の有機化合物、第2の有機化合物、第3の有機化合物、および第4の有機化合物の正孔輸送骨格を同じとし、さらに第3の有機化合物の電子輸送骨格と第4の有機化合物の電子輸送骨格を同じとすることが本発明の一態様である。
【0155】
なお、正孔輸送骨格としては、電子供与性の高い骨格が好ましく、代表的には芳香族アミン骨格がよく知られている。その他、π過剰系ヘテロ芳香環や、縮合芳香族炭化水素環が有用である。なお、π過剰系ヘテロ芳香環とは、モノヘテロ5員芳香環(ピロール、フラン、チオフェン)、および芳香環(代表的にはベンゼン環)が縮環したモノヘテロ5員芳香環を有する骨格を指す。
【0156】
さらに本発明者らは、第1の有機化合物と第2の有機化合物との間の正孔注入障壁、および第2の有機化合物と第3の有機化合物との間の正孔注入障壁、および第3の有機化合物と第4の有機化合物との間の正孔注入障壁を低減する手法の一つとして、以下の組み合わせを見出した。すなわち、第1の有機化合物の正孔輸送骨格(第1の正孔輸送骨格)、第2の有機化合物の正孔輸送骨格(第2の正孔輸送骨格)、第3の有機化合物の正孔輸送骨格(第3の正孔輸送骨格)、および第4の有機化合物の正孔輸送骨格(第4の正孔輸送骨格)が、それぞれ独立に、π過剰系ヘテロ芳香環、3環系縮合芳香族炭化水素環、または4環系縮合芳香族炭化水素環の少なくともいずれか一の骨格を含む構成とする手法である。この場合、第1の正孔輸送骨格、第2の正孔輸送骨格、第3の正孔輸送骨格、および第4の正孔輸送骨格は、互いに異なっていたとしても、実質的に正孔注入障壁が解消されることを本発明者らは実験的に見出した。したがって、このような組み合わせも本発明の一態様である。
【0157】
π過剰系ヘテロ芳香環、3環系縮合芳香族炭化水素環、及び4環系縮合芳香族炭化水素環の具体例および好ましい例としては、実施の形態1で述べたものと同様である。
【0158】
なお、第1の有機化合物、第2の有機化合物、第3の有機化合物、および第4の有機化合物の正孔輸送骨格として、π過剰系へテロ芳香環、3環系縮合芳香族炭化水素環、または4環系縮合芳香族炭化水素環の少なくともいずれか一の骨格を適用する場合においても、第1の有機化合物の正孔輸送骨格、第2の有機化合物の正孔輸送骨格、第3の有機化合物の正孔輸送骨格、および第4の有機化合物の正孔輸送骨格を同じとすることが好ましい。先にも述べたとおり、同じ骨格間であれば、電気化学的な障壁が低減されるためである。
【0159】
なお、上述した本発明の一態様の発光素子において、第1の有機化合物、第2の有機化合物、および第3の有機化合物が同じ化合物であることが好ましい。正孔輸送骨格だけでなく、化合物そのものを同じとすることで、分子軌道が重なりやすくなり、正孔の移動が極めて容易となるためである。また、同じ化合物を連続成膜することになるため、素子の作製も容易となる。ただし、第4の有機化合物は、上述したバイポーラヘテロ接合(障壁を用いずにキャリアの再結合領域を制御する)を形成するため、第1の有機化合物、第2の有機化合物、および第3の有機化合物とは異なる化合物である。
【0160】
なお、第1の有機化合物、第2の有機化合物、第3の有機化合物、および第4の有機化合物として好適な化合物の具体例としては、実施の形態1で述べた芳香族アミン骨格を正孔輸送骨格として有する化合物や、π過剰系ヘテロ芳香環および/または縮合芳香族炭化水素環を正孔輸送骨格として有する化合物が挙げられる。
【0161】
なお、発光層内での再結合効率を高めるためには、第1の発光層421の正孔輸送性は、第2の発光層422の正孔輸送性より高く、第1の発光層421の電子輸送性は、第2の発光層422の電子輸送性より低いことが好ましい。このような組み合わせのバイポーラへテロ接合を形成するのも、本発明の特徴の一つである。
【0162】
このような特性は、例えば、PCzPA(HOMO準位は、CV測定によれば−5.79eV)に1,6−FLPAPrn(HOMO準位は−5.40eV)を第1の発光物質として5wt%添加した層を第1の発光層とし、CzPA(HOMO準位は−5.79eV)に同じ発光物質である1,6−FLPAPrnを第2の発光物質として5wt%添加した層を第2の発光層とすることで得られる。
【0163】
なお、上記のように、第1の発光物質と第2の発光物質を同じ化合物とすると、第1の発光層および第2の発光層の正孔輸送性および電子輸送性を制御しやすいため、好ましい。
【0164】
ただし、第1の発光物質と第2の発光物質を異なる発光色の発光物質として、それぞれからの発光色が混色した発光を得てもよい。例えば、第1の発光物質を黄色とし、第2の発光物質を青色とすることで、白色発光が得られる。
【0165】
次に、第1の発光層421に含まれる正孔トラップ性の第1の発光物質と、第2の発光層422に含まれる正孔トラップ性の第2の発光物質について説明する。
【0166】
第1の発光物質は、第1の発光層421に含まれる第3の有機化合物に対して正孔トラップ性を示す物質であれば、特に限定はされない。換言すれば、添加することで第3の有機化合物の正孔移動度を小さくできるものであればよい。具体的には、第3の有機化合物よりも0.3eV以上高いHOMO準位を有する物質が好ましい。
【0167】
同様に、第2の発光物質は、第2の発光層422に含まれる第4の有機化合物に対して正孔トラップ性を示す物質であれば、特に限定はされない。換言すれば、添加することで第4の有機化合物の正孔移動度を小さくできるものであればよい。具体的には、第4の有機化合物よりも0.3eV以上高いHOMO準位を有する物質が好ましい。
【0168】
なお、第1の発光物質および第2の発光物質としては、実施の形態1と同様に、芳香族アミン化合物、または有機金属錯体からなる発光物質が好適であり、特にピレンジアミン化合物、またはイリジウム錯体が好ましい。なお、ピレンジアミン化合物やイリジウム錯体は、正孔輸送骨格がアントラセン、カルバゾール、ジベンゾフラン、またはジベンゾチオフェンの少なくともいずれか一の骨格を含む化合物に対し、非常に強い正孔トラップ性を示すことがわかっている。したがって、第3の有機化合物および第4の有機化合物はこれらの正孔輸送骨格を含むことが好ましい。
【0169】
また実験的には、ピレンジアミン化合物は、HOMO準位が同程度の他の芳香族アミン化合物と比べると、正孔トラップ性が高い(発光層に添加した場合に、発光層の正孔移動度を大きく下げる)ことがわかっており、本発明における第1の発光物質および/または第2の発光物質として特に好適である。
【0170】
なお、第1の発光物質および第2の発光物質の具体的な例としては、実施の形態1で列挙した正孔トラップ性の発光物質と同じものを用いることができる。
【0171】
次に、第1の層411に含まれる電子受容性化合物について説明する。電子受容性化合物についても、実施の形態1で述べたものと同様の化合物を用いることができる。なお、第1の層411において、第1の有機化合物に対して質量比で、0.1以上4.0以下の比率で電子受容性化合物を含ませることが好ましい。
【0172】
また、第1の層411において、第1の有機化合物は芳香族アミン骨格を含まない化合物であることが好ましい点や、第1の有機化合物のHOMO準位は、−6.0eV以上−5.7eV以下であることが好ましい点も、実施の形態1と同様である。
【0173】
以上では、EL層403の具体的な構成について述べた。以下では、陽極401および陰極402について説明する。
【0174】
陽極401および陰極402の具体的な構成は、実施の形態1と同じ構成を用いることができる。なお、本発明の一態様の発光素子においては、陽極および陰極のうち、少なくとも一方が透光性を有すればよい。透光性は、ITOのような透明電極を用いるか、あるいは電極の膜厚を薄くすることにより確保できる。
【0175】
また、本発明の一態様の発光素子を形成するための基板は、陽極401側に設けられていても良いし、陰極402側に設けられていても良い。基板の種類としては、例えばガラス、またはプラスチック、金属などを用いることができる。なお、発光素子の支持体として機能するものであれば、これら以外のものでもよい。また、発光素子からの発光を、基板を通して外部へ取り出す場合には、基板は透光性を有する基板であることが好ましい。
【0176】
以上で述べたような構成により、本発明の一態様の発光素子を作製することができる。なお、EL層403には、さらに他の層を導入しても良い。具体的には、図5に示すように、電子輸送層413や電子注入層414を導入した素子構造であっても良い。電子輸送層413や電子注入層414としては、実施の形態1で述べた構成と同じ構成を用いることができる。
【0177】
次に、本発明の一態様の発光素子の作製方法について述べる。作製方法としては、真空蒸着法に代表されるドライプロセスが好ましい。なぜならば、本発明の一態様の発光素子は、第1の層、第2の層、第1の発光層、および第2の発光層を積層するため、ドライプロセスの方が各領域を作り分けやすいためである。このような観点から、第1の有機化合物、第2の有機化合物、第3の有機化合物、第4の有機化合物、第1の発光物質、および第2の発光物質は低分子化合物が好ましい。
【0178】
ただし、本発明の一態様の発光素子は、ドライプロセス、ウェットプロセスを問わず、種々の方法を用いて形成してよい。ウェットプロセスとしては、インクジェット法またはスピンコート法などがその代表例として挙げられるが、これらに限定されることはない。
【0179】
以上で述べたように、本発明を適用することで、長寿命な発光素子を提供できる。また、発光効率や駆動電圧に優れた発光素子を提供できる。
【0180】
本実施の形態は、他の全ての実施の形態、他の全ての実施例と組み合わせることが可能である。
【0181】
(実施の形態3)
本実施の形態では、実施の形態1及び2における発光層の他の構成に関して説明する。なお、発光素子の構成は図1を用いて説明する。
【0182】
本実施の形態では、図1において、発光層121は、第3の有機化合物と、第3の有機化合物に対して正孔トラップ性を示す発光物質とを含んでいる場合について、実施の形態1で述べたが、本実施の形態では、正孔トラップ性を示す発光物質とは異なる発光を示す発光物質(発光性物質)が含まれる場合について、説明する。つまり、本実施の形態の発光層121は、正孔トラップ性の発光物質のほかに、発光性物質を含んでいる構成である。
【0183】
本実施の形態における図1の発光層121以外の構成については、実施の形態1で説明したため、ここでは詳細な説明を省略する。
【0184】
発光層121は、実施の形態1で説明した第3の有機化合物と第3の有機化合物に対して正孔トラップ性を示す発光物質を含み、さらに、発光性物質を含んでいる。
【0185】
なお、発光性物質としては、正孔トラップ性を示す発光物質の励起エネルギー以下の励起エネルギーを有するものを用いることができる。
【0186】
発光性物質としては、蛍光材料や燐光材料を用いることができる。具体的にはN,N’−ビス[4−(9H−カルバゾール−9−イル)フェニル]−N,N’−ジフェニルスチルベン−4,4’−ジアミン(略称:YGA2S)、4−(9H−カルバゾール−9−イル)−4’−(10−フェニル−9−アントリル)トリフェニルアミン(略称:YGAPA)、N−(9,10−ジフェニル−2−アントリル)−N,9−ジフェニル−9H−カルバゾール−3−アミン(略称:2PCAPA)、N−[9,10−ビス(1,1’−ビフェニル−2−イル)−2−アントリル]−N,9−ジフェニル−9H−カルバゾール−3−アミン(略称:2PCABPhA)、N−(9,10−ジフェニル−2−アントリル)−N,N’,N’−トリフェニル−1,4−フェニレンジアミン(略称:2DPAPA)、N−[9,10−ビス(1,1’−ビフェニル−2−イル)−2−アントリル]−N,N’,N’−トリフェニル−1,4−フェニレンジアミン(略称:2DPABPhA)、N−[9,10−ビス(1,1’−ビフェニル−2−イル)]−N−[4−(9H−カルバゾール−9−イル)フェニル]−N−フェニルアントラセン−2−アミン(略称:2YGABPhA)、N,N,9−トリフェニルアントラセン−9−アミン(略称:DPhAPhA)、ルブレン、5,12−ビス(1,1’−ビフェニル−4−イル)−6,11−ジフェニルテトラセン(略称:BPT)、N,N,N’,N’−テトラキス(4−メチルフェニル)テトラセン−5,11−ジアミン(略称:p−mPhTD)、7,14−ジフェニル−N,N,N’,N’−テトラキス(4−メチルフェニル)アセナフト[1,2−a]フルオランテン−3,10−ジアミン(略称:p−mPhAFD)、ビス[2−(2’−ベンゾ[4,5−α]チエニル)ピリジナト−N,C’)]イリジウム(III)アセチルアセトナート(略称:Ir(btp)(acac))、ビス(1−フェニルイソキノリナト−N,C2’)イリジウム(III)アセチルアセトナート(略称:Ir(piq)(acac))、(アセチルアセトナト)ビス[2,3−ビス(4−フルオロフェニル)キノキサリナト]イリジウム(III)(略称:Ir(Fdpq)(acac))、2,3,7,8,12,13,17,18−オクタエチル−21H,23H−ポルフィリン白金(II)(略称:PtOEP)等の有機金属錯体、ペリレン、2,5,8,11−テトラ(tert−ブチル)ペリレン(略称:TBP)、4,4’−ビス(2,2−ジフェニルビニル)ビフェニル(略称:DPVBi)、4,4’−ビス[2−(N−エチルカルバゾール−3−イル)ビニル]ビフェニル(略称:BCzVBi)、ビス(2−メチル−8−キノリノラト)(4−フェニルフェノラト)アルミニウム(略称:BAlq)、ビス(2−メチル−8−キノリノラト)ガリウムクロリド(略称:Gamq2Cl)、ビス{2−[3’,5’−ビス(トリフルオロメチル)フェニル]ピリジナト−N,C2’}イリジウム(III)ピコリナート(略称:Ir(CFppy)(pic))、ビス[2−(4’,6’−ジフルオロフェニル)ピリジナト−N,C2’]イリジウム(III)アセチルアセトナート(略称:FIr(acac))、ビス[2−(4’,6’−ジフルオロフェニル)ピリジナト−N,C2’]イリジウム(III)ピコリナート(略称:FIrpic)、ビス[2−(4’,6’−ジフルオロフェニル)ピリジナト−N,C2’]イリジウム(III)テトラ(1−ピラゾリル)ボラート(略称:FIr)、2,3−ビス(4−ジフェニルアミノフェニル)キノキサリン(略称:TPAQn)、4,4’−ビス[N−(1−ナフチル)−N−フェニルアミノ]ビフェニル(略称:NPB)のようなアリールアミン骨格を有する化合物の他、4,4’−ジ(N−カルバゾリル)ビフェニル(略称:CBP)、4,4’,4’’−トリ(N−カルバゾリル)トリフェニルアミン(略称:TCTA)等のカルバゾール誘導体や、ビス[2−(2−ヒドロキシフェニル)ピリジナト]亜鉛(略称:Znpp)、ビス[2−(2−ヒドロキシフェニル)ベンズオキサゾラト]亜鉛(略称:ZnBOX)、ビス(2−メチル−8−キノリノラト)(4−フェニルフェノラト)アルミニウム(略称:BAlq)、トリス(8−キノリノラト)アルミニウム(略称:Alq)等の金属錯体、ポリ(N−ビニルカルバゾール)(略称:PVK)のような高分子化合物などを適宜用いることができる。
【0187】
このような本実施の形態の発光層を用いて、同一基板上に異なる色を発色させる発光素子を形成する場合、第1の層111と第2の層112を構成する材料、及び形成する工程を共通化することができ、工程を簡略化することが可能である。
【0188】
例えば、同一基板上に2色を発光させたい場合、第1の色を発光させる発光素子と、第2の色を発光させる発光素子において、それぞれの発光素子における第1の層111と第2の層112の材料は、正孔トラップ性の発光物質のHOMO準位とLUMO準位によって決定される。そのため、第1の色を発光させる正孔トラップ性の発光物質と第2の色を発光させる正孔トラップ性の発光物質を用いる場合、第1の色を発光させる正孔トラップ性の発光物質を含む発光素子と第2の色を発光させる正孔トラップ性の発光物質を含む発光素子とでは、第1の層111と第2の層112の材料は異なる材料を用いる必要があるため、工程が複雑化する。
【0189】
しかし、本実施の形態の発光層のように、発光層が正孔トラップ性の発光物質のほかに、発光性物質を含んでいる構成を用いると、発光色にかかわらず第1の層111と第2の層112の材料が共通化することが可能となる。
【0190】
本発明の一態様の発光素子において重要な点は、陽極から発光層に至るまでは障壁やトラップに出会うことなく正孔を潤滑に輸送し、一方で発光層においては、障壁を使うことなく正孔の移動速度を低減し、効率のよい再結合に導いている点である。そのため、正孔トラップ性の発光物質によって、発光層の第3の有機化合物のHOMO準位及びLUMO準位を決定する。それに伴って第1の層111と第2の層112の材料も決まる。従来は、同一基板上に2色を発光させたい場合、第1の色を発光させる発光素子と第2の色を発光させる発光素子では、それぞれ発光層の第3の有機化合物のHOMO準位及びLUMO準位が異なり、第1の層111と第2の層112の材料を変える必要が生じてしまう。
【0191】
一方、本実施の形態の発光層を用いた第1の色を発光させる発光素子と第2の色を発光させる発光素子においては、第1の層111、第2の層112、並びに発光層121の第3の有機化合物と第3の有機化合物に対して正孔トラップ性を示す発光物質は共通の材料とすることができる。そして、発光層121に添加する発光性物質を第1の色を発光させる発光素子と第2の色を発光させる発光素子で変えることで、第1の色を発光させる発光素子と第2の色を発光させる発光素子で異なる発色が可能となる。
【0192】
この場合、第1の色を発光させる発光素子と第2の色を発光させる発光素子に本実施の形態の発光層を用いたが、いずれか一方に、実施の形態1の発光層を用いても良い。つまり、第1の色を発光させる発光素子と第2の色を発光させる発光素子に本実施の形態の発光層を用いた発光素子と実施の形態1の発光層を用いた発光素子とを組み合わせて用いても良い。
【0193】
また、図4においても、本実施の形態の発光層を適用できる。この場合、第1の発光層421、第2の発光層422のどちらか一方に適用しても、両方の発光層に適用することもできる。
【0194】
この場合も、上記の説明と同様に同一基板上に異なる色を発色させる発光素子を形成する場合には、図1と同様の効果を生じる。さらに、上記の説明と同様に異なる色の発光素子の発光層は、本実施の形態の発光層を用いた発光素子と実施の形態1の発光層を用いた発光素子とを組み合わせて用いても良い。また、同一の発光層中で複数の発光物質を発光させてもよい。
【0195】
なお、同一基板上に2色を発光させたい場合について、説明したが、これに特に限定されず、同一基板上に2色以上を発色させたい場合でもいいし、同一基板上に2色以上発色させて、白色等の単色光を発色させる構成に用いても良い。
【0196】
本実施の形態は、他の全ての実施の形態、他の全ての実施例と組み合わせることが可能である。
【0197】
(実施の形態4)
本実施の形態4では、本発明の一態様である発光素子の構成に関して説明する。なお、本実施の形態4においては、陽極と陰極で挟まれた領域に、実施の形態1や実施の形態2で述べたようなEL層が複数設けられた発光素子(以下、タンデム型発光素子と称する)について、図15を用いて説明する。
【0198】
図15(a)は、陽極501と陰極502との間に二つのEL層、すなわち第1のEL層503と第2のEL層504が積層されたタンデム型発光素子の一例である。第1のEL層503および第2のEL層504は、実施の形態1や実施の形態2で開示したEL層を適用することができる。
【0199】
実施の形態1や実施の形態2で述べたように、各EL層の陽極側(実施の形態1および2における第1の層)には、電子受容性化合物が含まれている。この電子受容性化合物が含まれた領域(図15における511および512)は電荷発生層として機能する。したがって、各EL層を接続する部分に、適切な電子注入層513を設けることにより、第1のEL層503と第2のEL層504は直列に接続され、タンデム型発光素子として機能する。電子注入層513の種類としては、実施の形態1で開示した電子注入層と同様のものを用いればよい。
【0200】
また、図15(b)に示したように、電子注入層513とEL層(図15(b)では第2のEL層504)との間に、さらに補助層514を設けてもよい。補助層514としては、例えば光学調整を行うために、ITOのような透明導電膜を形成してもよい。また、酸化モリブデンに代表される電子受容性化合物を形成してもよい。さらに、以下で説明する電子リレー層を補助層514として設けてもよい。
【0201】
電子リレー層は、電荷発生層(図15(b)では電子受容性化合物が含まれた領域512)において、電子受容性化合物がひき抜いた電子を速やかに受け取ることができる層である。従って、電子リレー層は電子輸送性の高い物質を含む層であり、またそのLUMO準位は、該電子受容性化合物のアクセプター準位と、第1のEL層503のLUMO準位との間の準位を占めるような材料を用いて形成するのが好ましい。具体的には、およそ−5.0eV以上のLUMO準位を有する材料を用いるのが好ましく、およそ−5.0eV以上−3.0eV以下のLUMO準位を有する材料を用いるのがより好ましい。電子リレー層に用いる物質としては、例えば、ペリレン誘導体や、含窒素縮合芳香族化合物が挙げられる。なお、含窒素縮合芳香族化合物は、安定な化合物であるため電子リレー層に用いる物質として好ましい。さらに、含窒素縮合芳香族化合物のうち、シアノ基やフルオロ基などの電子吸引基を有する化合物を用いることにより、電子リレー層における電子の受け取りがさらに容易になるため、好ましい。
【0202】
電子リレー層に用いることができるペリレン誘導体の具体例としては、3,4,9,10−ペリレンテトラカルボン酸二無水物(略称:PTCDA)、3,4,9,10−ペリレンテトラカルボキシリックビスベンゾイミダゾール(略称:PTCBI)、N,N’−ジオクチルー3,4,9,10−ペリレンテトラカルボン酸ジイミド(略称:PTCDI−C8H)等が挙げられる。また、含窒素縮合芳香族化合物の具体例としては、ピラジノ[2,3−f][1,10]フェナントロリン−2,3−ジカルボニトリル(略称:PPDN)、2,3,6,7,10,11−ヘキサシアノ−1,4,5,8,9,12−ヘキサアザトリフェニレン(略称:HAT(CN))、2,3−ジフェニルピリド[2,3−b]ピラジン(略称:2PYPR)、2,3−ビス(4−フルオロフェニル)ピリド[2,3−b]ピラジン(略称:F2PYPR)等が挙げられる。その他にも、パーフルオロペンタセン、7,7,8,8−テトラシアノキノジメタン(略称:TCNQ)、1,4,5,8−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物(略称:NTCDA)、銅ヘキサデカフルオロフタロシアニン(略称:F16CuPc)、N,N’−ビス(2,2,3,3,4,4,5,5,6,6,7,7,8,8,8−ベンタデカフルオロオクチル)−1、4、5、8−ナフタレンテトラカルボン酸ジイミド(略称:NTCDI−C8F)、3’,4’−ジブチル−5,5’’−ビス(ジシアノメチレン)−5,5’’−ジヒドロ−2,2’:5’,2’’−テルチオフェン)(略称:DCMT)、メタノフラーレン類(例えば、[6,6]−フェニルC61酪酸メチルエステル(略称:PCBM))等を電子リレー層に用いることができる。
【0203】
また、電子リレー層は電子供与性化合物を含んでいてもよい。電子供与性化合物としては、アルカリ金属、アルカリ土類金属、若しくは希土類金属、又はアルカリ金属、アルカリ土類金属、若しくは希土類金属の化合物(酸化物、ハロゲン化物、炭酸塩を含む)を適用することが可能である。具体的には、リチウム(Li)、セシウム(Cs)、マグネシウム(Mg)、カルシウム(Ca)、ストロンチウム(Sr)、ユウロピウム(Eu)、イッテルビウム(Yb)等の金属及びこれらの金属の化合物が挙げられる。当該金属又は金属化合物は、電子注入性が高いため好ましい。
【0204】
本実施の形態では、2つのEL層を有する発光素子について説明したが、3つ以上のEL層を積層した発光素子についても、同様に適用することが可能である。このようなタンデム型発光素子は、電流密度を低く保ったまま、高輝度領域での発光が可能であるため、長寿命素子を実現できる。また、照明を応用例とした場合は、電極材料の抵抗による電圧降下を小さくできるので、大面積での均一発光が可能となる。また、消費電力が低い発光装置を実現することができる。したがって、実施の形態1や実施の形態2で述べたEL層の構成を用いてタンデム型発光素子を作製することにより、寿命や消費電力において相乗的な効果が得られる。
【0205】
また、それぞれのEL層の発光色を異なるものにすることで、発光素子全体として、所望の色の発光を得ることができる。例えば、2つのEL層を有する発光素子において、第1のEL層の発光色と第2のEL層の発光色を補色の関係になるようにすることで、発光素子全体として白色発光する発光素子を得ることも可能である。なお、補色とは、混合すると無彩色になる色同士の関係をいう。つまり、補色の関係にある色を発光する物質から得られた光を混合すると、白色発光を得ることができる。また、3つの発光ユニットを有する発光素子の場合でも同様であり、例えば、第1のEL層の発光色が赤色であり、第2のEL層の発光色が緑色であり、第3のEL層の発光色が青色である場合、発光素子全体としては、白色発光を得ることができる。
【0206】
本実施の形態は、他の全ての実施の形態、他の全ての実施例と組み合わせることが可能である。
【0207】
(実施の形態5)
本実施の形態では、上記実施の形態で説明した発光素子を用いて作製される発光装置の一例である、パッシブマトリクス型の発光装置、及びアクティブマトリクス型の発光装置について説明する。
【0208】
図26、図27にパッシブマトリクス型の発光装置の例を示す。
【0209】
パッシブマトリクス型(単純マトリクス型ともいう)の発光装置は、ストライプ状(帯状)に並列された複数の陽極と、ストライプ状に並列された複数の陰極とが互いに直交するように設けられており、その交差部に発光層が挟まれた構造となっている。従って、選択された(電圧が印加された)陽極と選択された陰極との交点にあたる画素が点灯することになる。
【0210】
図26(A)乃至図26(C)は、封止前における画素部の上面図を示す図であり、図26(A)乃至図26(C)中の鎖線A−A’で切断した断面図が図26(D)である。
【0211】
基板601上には、下地絶縁層として絶縁層602が形成されている。なお、絶縁層602が必要でなければ特に形成しなくともよい。絶縁層602上には、ストライプ状の複数の第1の電極603が等間隔で配置されている(図26(A))。なお、本実施の形態で示す第1の電極603は、本明細書中の陽極または陰極に相当する。
【0212】
また、第1の電極603上には、各画素に対応する開口部605を有する隔壁604が設けられている。隔壁604は、絶縁材料で形成されている。例えば、ポリイミド、アクリル、ポリアミド、ポリイミドアミド、レジスト、もしくはベンゾシクロブテン等の感光性または非感光性の有機材料や、アルキル基を含むSiOx膜等のSOG膜を絶縁材料として用いることができる。また、各画素に対応する開口部605は、発光領域となる(図26(B))。
【0213】
開口部を有する隔壁604上には、第1の電極603と交差する複数の隔壁606が設けられている(図26(C))。複数の隔壁606は、それぞれ互いに平行に設けられており、逆テーパ状をなしている。
【0214】
第1の電極603及び隔壁604上には、EL層607及び第2の電極608が順次積層されている(図26(D))。なお、第2の電極608は、本明細書中の陽極または陰極に相当する。隔壁604及び隔壁606を合わせた高さは、EL層607及び第2の電極608の膜厚より大きくなるように設定されているため、図26(D)に示すように複数の領域に分離されたEL層607、及び第2の電極608が形成される。なお、複数に分離された領域は、それぞれ電気的に独立している。
【0215】
第2の電極608は、第1の電極603と交差する方向に伸長するストライプ状の電極である。なお、逆テーパ状の隔壁606上にもEL層607及び第2の電極608を形成する導電層の一部が形成されるが、EL層607、及び第2の電極608とは分断されている。
【0216】
また、必要であれば、基板601に封止缶やガラス基板などの封止材をシール材などの接着剤で貼り合わせて封止し、発光素子が密閉された空間に配置されるようにしても良い。これにより、発光素子の劣化を防止することができる。なお、密閉された空間には、充填材や、乾燥した不活性ガスを充填しても良い。さらに、水分などによる発光素子の劣化を防ぐために基板と封止材との間に乾燥材などを封入することが好ましい。乾燥剤によって微量な水分が除去され、十分乾燥される。乾燥剤としては、酸化カルシウムや酸化バリウムなどのアルカリ土類金属の酸化物、ゼオライト、またはシリカゲル等を用いることができる。アルカリ土類金属の酸化物は、化学吸着によって水分を吸収する性質を有する。また、ゼオライトやシリカゲルは、物理吸着によって水分を吸着する性質を有する。
【0217】
次に、図26(A)乃至図26(D)に示したパッシブマトリクス型の発光装置にFPC(フレキシブルプリントサーキット)などを実装した場合の上面図を図27に示す。
【0218】
図27において、画像表示を構成する画素部は、走査線群とデータ線群が互いに直交するように交差している。
【0219】
ここで、図26における第1の電極603が、図27の走査線703に相当し、図26における第2の電極608が、図27のデータ線708に相当し、逆テーパ状の隔壁606が隔壁706に相当する。データ線708と走査線703の間には、図26のEL層607が挟まれており、領域705で示される交差部が画素1つ分となる。
【0220】
走査線703は配線端で接続配線709と電気的に接続され、接続配線709が入力端子710を介してFPC711bに接続される。また、データ線708は入力端子712を介してFPC711aに接続される。
【0221】
また、必要に応じて、光の射出面に偏光板、円偏光板(楕円偏光板を含む)、位相差板(λ/4板、λ/2板)、カラーフィルタなどの光学フィルムを適宜設けてもよい。また、偏光板または円偏光板に加えて反射防止膜を設けてもよい。反射防止膜を設けることにより、表面の凹凸により反射光を拡散し、映り込みを低減できるアンチグレア処理を施すことができる。
【0222】
なお、図27では、駆動回路を基板上に設けない例を示したが、基板上に駆動回路を有するICチップを実装させてもよい。
【0223】
また、ICチップを実装させる場合には、画素部の周辺(外側)の領域に、画素部へ各信号を伝送する駆動回路が形成されたデータ線側IC、走査線側ICをそれぞれ実装する。実装方式は、COG方式、TCP、ワイヤボンディング方式等を用いることができる。TCPはTABテープにICを実装したものであり、TABテープを素子形成基板上の配線に接続してICを実装する。データ線側IC及び走査線側ICは、シリコン基板やSOI(Silicon On Insulator)基板に形成されたものであってもよいし、ガラス基板、石英基板、またはプラスチック基板上に形成されたものであってもよい。
【0224】
次に、アクティブマトリクス型の発光装置の例について、図28を用いて説明する。なお、図28(A)は発光装置を示す上面図であり、図28(B)は図28(A)を鎖線A−A’で切断した断面図である。本実施の形態に係るアクティブマトリクス型の発光装置は、素子基板801上に設けられた画素部802と、駆動回路部(ソース側駆動回路)803と、駆動回路部(ゲート側駆動回路)804とを有する。画素部802、駆動回路部803、及び駆動回路部804は、シール材805によって、素子基板801と封止基板806との間に封止されている。
【0225】
素子基板801上には、駆動回路部803及び駆動回路部804に外部からの信号(ビデオ信号、クロック信号、スタート信号、またはリセット信号等)や電位を伝達する外部入力端子を接続するための引き回し配線807が設けられる。ここでは、外部入力端子としてFPC808を設ける例を示している。なお、ここではFPCしか図示されていないが、このFPCにはプリント配線基板(PWB)が取り付けられていてもよい。本明細書における発光装置は、発光装置本体だけでなく、発光装置本体にFPCまたはPWBが取り付けられた状態のものも範疇に含むものとする。
【0226】
次に、アクティブマトリクス型の発光装置の断面構造について図28(B)を用いて説明する。なお、素子基板801上には駆動回路部803及び駆動回路部804及び画素部802が形成されているが、図28(B)においては、ソース側駆動回路である駆動回路部803と、画素部802を示している。
【0227】
駆動回路部803は、nチャネル型TFT809とpチャネル型TFT810とを組み合わせたCMOS回路を有する例を示している。なお、駆動回路部を形成する回路は、種々のCMOS回路、PMOS回路、またはNMOS回路で形成することができる。また、本実施の形態では、画素部が形成された基板上に駆動回路が形成されたドライバー一体型を示すが、本発明はこの構成に限定されるものではなく、画素部が形成された基板とは別の基板に駆動回路を形成することもできる。
【0228】
画素部802は、スイッチング用のTFT811と、電流制御用のTFT812と、電流制御用TFT812の配線(ソース電極またはドレイン電極)に電気的に接続された陽極813とを含む複数の画素により形成されている。また、陽極813の端部を覆って絶縁物814が形成されている。ここでは、ポジ型の感光性アクリル樹脂を用いることにより形成する。なお、スイッチング用のTFT811や電流制御用のTFT812といったTFTの構造は、特に限定されない。例えば、スタガ型のTFTでもよいし、逆スタガ型のTFTでもよい。また、トップゲート型のTFTでもよいし、ボトムゲート型のTFTでもよい。また、TFTに用いる半導体の材料についても特に限定されず、シリコンを用いてもよいし、インジウム、ガリウム、及び亜鉛を含む酸化物等の酸化物半導体を用いてもよい。また、TFTに用いる半導体の結晶性についても特に限定されず、非晶質半導体を用いてもよいし、結晶性半導体を用いてもよい。
【0229】
発光素子817は、陽極813、EL層815、及び陰極816によって構成されている。発光素子の構造、材料等については上記実施の形態で説明したため、ここでは詳細な説明を省略する。なお、図28における陽極813、EL層815、及び陰極816はそれぞれ図1、図3における陽極101、EL層103、陰極102に相当する。また、ここでは図示しないが、陰極816は外部入力端子であるFPC808に電気的に接続されている。
【0230】
絶縁物814は、陽極813の端部に設けられている。そして、絶縁物814の上層に形成される陰極816の被覆性を少なくとも良好なものとするため、絶縁物814の上端部または下端部に曲率を有する曲面が形成されるようにするのが好ましい。例えば、絶縁物814の上端部または下端部に曲率半径(0.2μm〜3μm)を有する曲面を持たせるのが好ましい。また、絶縁物814の材料としては、光によってエッチャントに不溶解性となるネガ型の感光性樹脂、或いは光によってエッチャントに溶解性となるポジ型の感光性樹脂などの有機化合物や、酸化シリコン、酸窒化シリコン等の無機化合物を用いることができる。
【0231】
また、図28(B)に示す断面図では発光素子817を1つのみ図示しているが、画素部802においては、複数の発光素子がマトリクス状に配置されている。例えば、画素部802に3種類(R、G、B)の発光が得られる発光素子をそれぞれ選択的に形成し、フルカラー表示可能な発光装置を形成することができる。また、カラーフィルタと組み合わせることによってフルカラー表示可能な発光装置としてもよい。
【0232】
また、発光素子817は、素子基板801、封止基板806、及びシール材805で囲まれた空間818に設けられている。空間818は、希ガスまたは窒素ガスが充填されていてもよいし、シール材805で充填されていてもよい。
【0233】
シール材805は、できるだけ水分や酸素を透過しない材料であることが好ましく、例えばエポキシ系樹脂を用いるのが好ましい。また、封止基板806としては、ガラス基板、石英基板、またはFRP(Fiberglass−Reinforced Plastics)、PVF(ポリビニルフロライド)、ポリエステル、もしくはアクリルからなるプラスチック基板等を用いることができる。
【0234】
以上のようにして、アクティブマトリクス型の発光装置を得ることができる。
【0235】
本実施の形態は、他の全ての実施の形態、他の全ての実施例と組み合わせることが可能である。
【0236】
(実施の形態6)
本実施の形態では、上記実施の形態で説明した発光装置を用いて作製される電子機器、照明装置の具体例について、図29、図30を用いて説明する。
【0237】
本発明に適用可能な電子機器の一例として、テレビジョン装置(テレビ、またはテレビジョン受信機ともいう)、コンピュータ用などのモニタ、デジタルカメラ、デジタルビデオカメラ、デジタルフォトフレーム、携帯電話機、携帯型ゲーム機、携帯情報端末、音響再生装置、遊技機(パチンコ機、スロットマシン等)が挙げられる。これらの電子機器および照明装置の具体例を図29、図30に示す。
【0238】
図29(A)は、テレビジョン装置9100の一例を示している。テレビジョン装置9100は、筐体9101に表示部9103が組み込まれている。本発明の一態様を用いて作製される発光装置は、表示部9103に用いることが可能であり、表示部9103により映像を表示することが可能である。なお、ここではスタンド9105により筐体9101を支持した構成を示している。
【0239】
テレビジョン装置9100の操作は、筐体9101が備える操作スイッチや、別体のリモコン操作機9110により行うことができる。リモコン操作機9110が備える操作キー9109により、チャンネルや音量の操作を行うことができ、表示部9103に表示される映像を操作することができる。また、リモコン操作機9110に、当該リモコン操作機9110から出力する情報を表示する表示部9107を設ける構成としてもよい。
【0240】
図29(A)に示すテレビジョン装置9100は、受信機やモデムなどを備えている。テレビジョン装置9100は、受信機により一般のテレビ放送の受信を行うことができ、さらにモデムを介して有線または無線による通信ネットワークに接続することにより、一方向(送信者から受信者)または双方向(送信者と受信者間、あるいは受信者間同士など)の情報通信を行うことも可能である。
【0241】
本発明の一態様を用いて作製される発光装置は、高い発光効率と、長い寿命であるため、当該発光装置をテレビジョン装置9100の表示部9103に用いることで、従来に比べて画質の向上した画像を表示することが可能となる。
【0242】
図29(B)はコンピュータであり、本体9201、筐体9202、表示部9203、キーボード9204、外部接続ポート9205、ポインティングデバイス9206等を含む。コンピュータは、本発明の一態様を用いて作製される発光装置をその表示部9203に用いることにより作製される。
【0243】
また、本発明の一態様を用いて作製される発光装置は、高い発光効率と、長い寿命な発光装置であるため、当該発光装置をコンピュータの表示部9203に用いることで、従来に比べて画質の向上した画像を表示することが可能となる。
【0244】
図29(C)は携帯型ゲーム機であり、筐体9301と筐体9302の2つの筐体で構成されており、連結部9303により、開閉可能に連結されている。筐体9301には表示部9304が組み込まれ、筐体9302には表示部9305が組み込まれている。また、図29(C)に示す携帯型ゲーム機は、操作キー9309、接続端子9310、センサ9311(力、変位、位置、速度、加速度、角速度、回転数、距離、光、液、磁気、温度、化学物質、音声、時間、硬度、電場、電流、電圧、電力、放射線、流量、湿度、傾度、振動、においまたは赤外線を測定する機能を含むもの)、マイクロフォン9312等の入力手段を備えている。さらに、スピーカ部9306、記録媒体挿入部9307、LEDランプ9308等を備えていてもよい。もちろん、携帯型ゲーム機の構成は上述のものに限定されず、表示部9304および表示部9305の両方、または一方に上記実施の形態を適用して形成される発光装置が少なくとも用いられていればよい。
【0245】
図29(C)に示す携帯型ゲーム機は、記録媒体に記録されているプログラムまたはデータを読み出して表示部に表示する機能や、他の携帯型ゲーム機と無線通信を行って情報を共有する機能を有する。なお、図29(C)に示す携帯型ゲーム機が有する機能はこれに限定されず、様々な機能を有することができる。
【0246】
また、本発明の一態様を用いて作製される発光装置は、高い発光効率と、長い寿命な発光装置であるため、当該発光装置を携帯型ゲーム機の表示部(9304、9305)に用いることで、従来に比べて画質の向上した画像を表示することが可能となる。
【0247】
図29(D)は、携帯電話機の一例を示している。携帯電話機9400は、筐体9401に組み込まれた表示部9402の他、操作ボタン9403、外部接続ポート9404、スピーカ9405、マイク9406、アンテナ9407などを備えている。携帯電話機9400は、本発明の一態様を用いて作製される発光装置を表示部9402に用いることにより作製される。
【0248】
図29(D)に示す携帯電話機9400は、表示部9402を指などで触れることで、情報を入力する、電話を掛ける、またはメールを作成するなどの操作を行うことができる。
【0249】
表示部9402の画面は、主として3つのモードがある。第1は、画像の表示を主とする表示モードであり、第2は、文字等の情報の入力を主とする入力モードである。第3は表示モードと入力モードの2つのモードが混合した表示+入力モードである。
【0250】
例えば、電話を掛ける、またはメールを作成する場合は、表示部9402を文字の入力を主とする入力モードとし、画面に表示させた文字の入力操作を行えばよい。この場合、表示部9402の画面のほとんどにキーボードまたは番号ボタンを表示させることが好ましい。
【0251】
また、携帯電話機9400内部に、ジャイロ、加速度センサ等の傾きを検出するセンサを有する検出装置を設けることで、携帯電話機9400の向き(縦向きか横向きか)を判断して、表示部9402の画面表示を自動的に切り替えるようにすることができる。
【0252】
また、画面モードの切り替えは、表示部9402を触れる、または筐体9401の操作ボタン9403の操作により行われる。また、表示部9402に表示される画像の種類によって切り替えるようにすることもできる。例えば、表示部に表示する画像信号が動画のデータであれば表示モード、テキストデータであれば入力モードに切り替える。
【0253】
また、入力モードにおいて、表示部9402の光センサで検出される信号を検知し、表示部9402のタッチ操作による入力が一定期間ない場合には、画面のモードを入力モードから表示モードに切り替えるように制御してもよい。
【0254】
また、表示部9402は、イメージセンサとして機能させることもできる。例えば、表示部9402に掌や指を触れ、掌紋、指紋等を撮像することで、本人認証を行うことができる。また、表示部に近赤外光を発光するバックライトまたは近赤外光を発光するセンシング用光源を用いれば、指静脈、掌静脈などを撮像することもできる。
【0255】
本発明の一態様を用いて作製される発光装置は、高い発光効率と、長い寿命な発光装置であるため、当該発光装置を携帯電話機の表示部9402に用いることで、従来に比べて画質の向上した画像を表示することが可能となる。
【0256】
図29(E)は卓上型の照明装置であり、照明部9501、傘9502、可変アーム9503、支柱9504、台9505、電源9506を含む。卓上型の照明装置は、本発明の一態様を用いて作製される発光装置を照明部9501に用いることにより作製される。なお、照明装置の形式は、卓上型に限らず、天井固定型や、壁掛け型、携帯型も含まれる。
【0257】
図30は、本発明の一態様を用いて作製される発光装置を、室内の照明装置1001として用いた例である。本発明の一態様を用いて作製される発光装置は大面積化も可能であるため、大面積の照明装置として用いることができる。また、上記実施の形態で示した発光装置は、薄型化が可能であるため、ロール型の照明装置1002として用いることもできる。なお、図30に示すように、室内の照明装置1001を備えた部屋で、図29(E)で説明した卓上型の照明装置1003を併用してもよい。
【0258】
また、本発明の一態様の発光装置は、照明装置として用いることもできる。図31は、本発明の一態様の発光装置をバックライトとして用いた液晶表示装置の一例である。図31に示した液晶表示装置は、筐体1101、液晶層1102、バックライト1103、筐体1104を有し、液晶層1102は、ドライバIC1105と電気的に接続されている。また、バックライト1103は、本発明の一態様の発光装置が用いられおり、端子1106により、電流が供給されている。
【0259】
このように本発明の一態様の発光装置を液晶表示装置のバックライトとして用いることにより、低消費電力のバックライトが得られる。また、本発明の一態様の発光装置は、面発光の照明装置であり大面積化も可能であるため、バックライトの大面積化も可能である。
従って、低消費電力であり、大面積化された液晶表示装置を得ることができる。
【0260】
本実施の形態は、他の全ての実施の形態、他の全ての実施例と組み合わせることが可能である。
【0261】
以上のように、本発明の一態様を用いて作製される発光装置を用いて電子機器や照明装置を提供することができる。本発明の一態様を用いて作製される発光装置の適用範囲は極めて広く、様々な分野の電子機器に適用することが可能である。
【実施例1】
【0262】
本実施例1では、本発明の一態様の発光素子における第1の有機化合物、第2の有機化合物、第3の有機化合物、または第4の有機化合物として好適な化合物に関し、HOMO準位を測定した例を示す。なお、HOMO準位は、サイクリックボルタンメトリ(CV)測定によって調べた。測定には、電気化学アナライザー(ビー・エー・エス(株)製、型番:ALSモデル600Aまたは600C)を用いた。
【0263】
また、測定した25種類の化合物を下記に示す。化合物1〜2は、3環系縮合芳香環であるアントラセンを骨格に含む化合物である。また化合物3〜4は、π過剰系ヘテロ芳香環であるカルバゾールを骨格に含む化合物である。また化合物5〜12は、アントラセンとカルバゾールの双方を骨格に含む化合物である。また化合物13〜15は、アントラセンと、π過剰系ヘテロ芳香環であるジベンゾフランの双方を骨格に含む化合物である。また化合物16は、アントラセンと、π過剰系ヘテロ芳香環であるジベンゾチオフェンの双方を骨格に含む化合物である。化合物17は、4環系縮合芳香環であるピレンである。また化合物18〜24は、カルバゾールを骨格に含む化合物である。
【0264】
【化1】

【0265】
【化2】

【0266】
【化3】

【0267】
【化4】

【0268】
まず、以下に具体的な測定方法について示す。CV測定における溶液は、溶媒として脱水ジメチルホルムアミド(DMF)((株)アルドリッチ製、99.8%、カタログ番号:22705−6)を用い、支持電解質である過塩素酸テトラ−n−ブチルアンモニウム(n−BuNClO)((株)東京化成製、カタログ番号:T0836)を100mmol/Lの濃度となるように溶解させ、さらに測定対象を2mmol/Lの濃度となるように溶解させて調製した。ただし、溶解性が低く、2mmol/Lの濃度で溶解できないものに関しては、溶け残りを濾別した後、ろ液を用いて測定を行った。また、作用電極としては白金電極(ビー・エー・エス(株)製、PTE白金電極)を、補助電極としては白金電極(ビー・エー・エス(株)製、VC−3用Ptカウンター電極(5cm))を、参照電極としてはAg/Ag電極(ビー・エー・エス(株)製、RE7非水溶媒系参照電極)をそれぞれ用いた。なお、測定は室温(20〜25℃)で行った。また、CV測定時のスキャン速度は、0.1V/secに統一した。
【0269】
(参照電極の真空準位に対するポテンシャルエネルギーの算出)
まず、本実施例で用いる参照電極(Ag/Ag電極)の真空準位に対するポテンシャルエネルギー(eV)を算出した。つまり、Ag/Ag電極のフェルミ準位を算出した。メタノール中におけるフェロセンの酸化還元電位は、標準水素電極に対して+0.610[V vs. SHE]であることが知られている(参考文献:Christian R.Goldsmith et al., J.Am.Chem.Soc., Vol.124, No.1,83−96, 2002)。一方、本実施例で用いる参照電極を用いて、メタノール中におけるフェロセンの酸化還元電位を求めたところ、+0.11V[vs.Ag/Ag]であった。したがって、本実施例で用いる参照電極のポテンシャルエネルギーは、標準水素電極に対して0.50[eV]低くなっていることがわかった。
【0270】
ここで、標準水素電極の真空準位からのポテンシャルエネルギーは−4.44eVであることが知られている(参考文献:大西敏博・小山珠美著、高分子EL材料(共立出版)、p.64−67)。以上のことから、本実施例で用いる参照電極の真空準位に対するポテンシャルエネルギーは、−4.44−0.50=−4.94[eV]であると算出できた。
【0271】
(化合物1(DPAnth)の測定例)
化合物1(DPAnth)を例に、HOMO準位の算出方法を示す。まず、測定対象の溶液に対し、−0.20Vから1.30Vまで電位を走査した後、1.30Vから−0.20Vまで電位を走査した。その結果、酸化ピーク電位Epaが0.97Vに、還元ピーク電位Epcが0.83Vに、それぞれ観測された。したがって、半波電位(EpcとEpaの中間の電位)は0.90Vと算出できる。このことは、DPAnthは0.90[V vs.Ag/Ag]の電気エネルギーにより酸化されることを示しており、このエネルギーはHOMO準位に相当する。ここで、上述した通り、本実施例で用いる参照電極の真空準位に対するポテンシャルエネルギーは、−4.94[eV]であるため、DPAnthのHOMO準位は、−4.94−(0.90)=−5.84[eV]であることがわかった。
【0272】
(測定結果)
他の化合物2〜24に関しても、同様の測定を行い、HOMO準位を測定した。測定結果を図16に示す。図16に示すとおり、π過剰系ヘテロ芳香環を有する化合物、および3環系縮合芳香族炭化水素環、または4環系縮合芳香族炭化水素環を有する化合物のHOMO準位の差は、0.2eV以内に概ね収まっていることがわかる。また、いずれの化合物のHOMO準位も、−5.7〜−6.0eVの範囲(小数点第二位を四捨五入)に入っていることがわかる。この結果から、これらの骨格群から選ばれる骨格を正孔輸送骨格として有する化合物間においては、正孔注入障壁がほとんどないことが示唆される。
【0273】
したがって、本発明における第1の有機化合物、第2の有機化合物、第3の有機化合物、および第4の有機化合物の正孔輸送骨格が、π過剰系ヘテロ芳香環を有する化合物(特にカルバゾール、ジベンゾフラン、またはジベンゾチオフェン)、および3乃至4環系縮合芳香族炭化水素環(特にアントラセン)の少なくともいずれかを含むことにより、本発明の特に好ましい一態様が実現される。
【実施例2】
【0274】
本実施例2では、本発明の一態様である発光素子の作製例およびその特性に関して、比較例も交えながら説明する。本実施例2で用いた材料の構造式を以下に示す。
【0275】
【化5】

【0276】
まず以下に、本発明の一態様である発光素子(発光素子1)の作製方法を示す。素子構造を図5に示す。
【0277】
(発光素子1)
まず、陽極401として110nmの膜厚で酸化珪素を含むインジウム錫酸化物(略称:ITSO)が成膜されたガラス基板を用意した。ITSO表面は、2mm角の大きさで表面が露出するよう周辺をポリイミド膜で覆い、電極面積は2mm×2mmとした。この基板上に発光素子を形成するための前処理として、基板表面を水で洗浄し、200℃で1時間焼成した後、UVオゾン処理を370秒行った。その後、10−5Pa程度まで内部が減圧された真空蒸着装置に基板を導入し、真空蒸着装置内の加熱室で、170℃で30分間の真空焼成を行った。その後、基板を30分程度、放冷した。
【0278】
次に、陽極401が形成された面を下方となるように、陽極401が形成されたガラス基板を真空蒸着装置内の成膜室に設けられた基板ホルダーに固定した。
【0279】
そして、まず陽極401上に、9−フェニル−3−[4−(10−フェニル−9−アントリル)フェニル]−9H−カルバゾール(略称:PCzPA)と酸化モリブデン(VI)とを共蒸着することにより、電子受容性化合物である酸化モリブデンが第1の有機化合物であるPCzPAに添加された第1の層411を形成した。蒸着は抵抗加熱を用いた。また、第1の層411の膜厚は50nmとし、PCzPAと酸化モリブデン(VI)の比率は、重量比で1:0.5(=PCzPA:酸化モリブデン(VI))となるように蒸着レートを調節した。なお、共蒸着法とは、一つの処理室内で複数の蒸発源から同時に蒸着を行う蒸着法である。
【0280】
引き続き、抵抗加熱を用いた蒸着法により、PCzPAのみを30nm成膜することにより、第2の有機化合物であるPCzPAからなる第2の層412を形成した。
【0281】
次に、PCzPAとN,N’−ビス〔4−(9−フェニル−9H−フルオレン−9−イル)フェニル〕−N,N’−ジフェニルピレン−1,6−ジアミン(略称:1,6FLPAPrn)とを共蒸着することにより、第3の有機化合物であるPCzPAと、PCzPAに対して正孔トラップ性を示す第1の発光物質1,6FLPAPrnとを含む第1の発光層421を形成した。第1の発光層421の膜厚は20nmとし、PCzPAと1,6FLPAPrnの比率は、重量比で1:0.05(=PCzPA:1,6FLPAPrn)となるように蒸着レートを調節した。
【0282】
さらに、9−[4−(10−フェニル−9−アントリル)フェニル]−9H−カルバゾール(略称:CzPA)と1,6FLPAPrnとを共蒸着することにより、第4の有機化合物であるCzPAと、CzPAに対して正孔トラップ性を示す第2の発光物質である1,6FLPAPrnとを含む第2の発光層422を形成した。第2の発光層422の膜厚は25nmとし、CzPAと1,6FLPAPrnの比率は、重量比で1:0.05(=CzPA:1,6FLPAPrn)となるように蒸着レートを調節した。
【0283】
なお、第1〜第3の有機化合物であるPCzPAの正孔輸送骨格、および第4の有機化合物であるCzPAの正孔輸送骨格は、実施の形態で述べた通りいずれもアントラセンである。また、いずれの化合物も電子輸送骨格はアントラセンであるが、化合物は異なるため、第1の発光層421と第2の発光層422との間で、バイポーラへテロ接合を形成している。
【0284】
その後、トリス(8−キノリノラト)アルミニウム(略称:Alq)を10nm成膜し、次いでバソフェナントロリン(略称:BPhen)を15nm成膜することにより、電子輸送層413を形成した。さらに、フッ化リチウムを1nm成膜することで、電子注入層414を形成した。
【0285】
最後に、抵抗加熱による蒸着法を用い、アルミニウムを200nmの膜厚となるように成膜することにより陰極402を形成し、発光素子1を作製した。
【0286】
(比較発光素子A)
比較のため、発光素子1における第1の層411および第2の層412に用いる有機化合物(PCzPA)を他の化合物に換えた比較発光素子Aを作製した。
【0287】
比較発光素子Aは以下のようにして作製した。まず陽極401上に、4−フェニル−4’−(9−フェニル−9H−フルオレン−9−イル)トリフェニルアミン(略称:BPAFLP)と酸化モリブデン(VI)とを共蒸着することにより、第1の層411を形成した。蒸着は抵抗加熱を用いた。また、第1の層411の膜厚は50nmとし、BPAFLPと酸化モリブデン(VI)の比率は、重量比で1:0.5(=BPAFLP:酸化モリブデン(VI))となるように蒸着レートを調節した。
【0288】
引き続き、抵抗加熱を用いた蒸着法により、BPAFLPのみを10nm成膜することにより、第2の層412を形成した。
【0289】
次に、第1の発光層421は、発光素子1と同じ層を形成した。また、第2の発光層422は、膜厚を25nmから30nmとした以外は、発光素子1と同様の構成とした。
【0290】
さらに、電子輸送層413、電子注入層414、および陰極402は、発光素子1と同じ構成とした。
【0291】
(比較発光素子B)
比較のため、発光素子1における第2の層412を設けない比較発光素子Bを作製した。
【0292】
比較発光素子Bは以下のようにして作製した。まず陽極401上に、発光素子1と同じ構成の第1の層411を形成した。次に、第2の層412を設けることなく、第1の発光層421を発光素子1と同じ構成で形成した。また、第2の発光層422は、膜厚を25nmから30nmとした以外は、発光素子1と同様の構成とした。
【0293】
さらに、電子輸送層413、電子注入層414、および陰極402は、発光素子1と同じ構成とした。
【0294】
作製した発光素子1、比較発光素子A、および比較発光素子Bの素子構造を、下記表1にまとめた。
【0295】
【表1】

【0296】
(素子の評価)
以上により得られた発光素子1、比較発光素子A、および比較発光素子Bを、窒素雰囲気のグローブボックス内において、発光素子が大気に曝されないように封止する作業を行った後、これらの発光素子の動作特性について測定を行った。なお、測定は室温(25℃に保たれた雰囲気)で行った。
【0297】
発光素子1、比較発光素子A、および比較発光素子Bの輝度−電流効率特性を図17(a)に、輝度−外部量子効率特性を図17(b)に、それぞれ示す。また、電圧−輝度特性を図18に示す。また、25mA/cmの電流密度で発光させた際の発光スペクトルを図19に示す。
【0298】
発光素子1は、1000cd/mの輝度で発光させた際の駆動電圧が4.6V、電流効率が9.3cd/A、外部量子効率が7.5%、電力効率が6.3[lm/W]の非常に良好な特性が得られた。特に外部量子効率に関しては、従来の蛍光素子では得られないほどの高い発光効率が得られている。なお、図19から、発光素子1は1,6−FLPAPrnに由来するシャープな発光スペクトルが得られており、色度がCIE(x,y)=(0.14,0.18)の純青色発光が得られた。
【0299】
比較発光素子Aは、外部量子効率を見ると5%台に止まっており、本発明の一態様の発光素子1ほどの発光効率は得られていない。また、駆動電圧に関しては、発光素子1に比べて高くなっていることがわかる。なお、電流効率は高い数値が出ているが、これは図19を見るとわかるように、発光スペクトルの長波長側にショルダーピークが現れ、色純度が悪くなっているためである(CIE(x,y)=(0.16,0.25))。
【0300】
このように、比較発光素子Aが駆動電圧や発光効率の点で発光素子1に劣る理由は、以下の通りと考えられる。比較発光素子Aの第1の層411および第2の層412に用いているBPAFLPのHOMO準位は、CV測定によると−5.51eVであるが、一方で第1の発光層に用いているPCzPAのHOMO準位は、実施例1で開示したとおり−5.79eVである。すなわち、第2の層と第1の発光層との間には、0.3eV近い正孔注入障壁がある。このことが、特性の低下につながったと考えられる。
【0301】
一方、比較発光素子Bは、低輝度領域においては比較的高い外部量子効率・電流効率が得られているが、高輝度側では大きく効率が低下してしまう。これは、高輝度側では電子が陽極側に抜けてしまい、再結合効率が低下しているためと考えられる。したがって、発光素子1において、正孔トラップ性の物質が添加されていない第2の層412は重要な役割を果たしている。
【0302】
次に、発光素子1、比較発光素子A、および比較発光素子Bに関し、初期輝度1000cd/mの条件で定電流駆動し、連続点灯試験を行った。結果を図20に示す。図20において、縦軸は初期輝度を100%として規格化した規格化輝度であり、横軸は駆動時間である。また、図20(a)は横軸(駆動時間)をログスケールとしたものであり、図20(b)は横軸(駆動時間)をリニアスケールにしたものである。
【0303】
図20からわかるように、発光素子1は1000時間後でも初期輝度の92%以上を保っており、非常に長寿命であることがわかる。一方、比較発光素子Aは、駆動200時間程度で初期輝度の90%程度にまで輝度が低下している。上述したBPAFLPからPCzPAへの正孔注入障壁が影響していると考えられる。さらに、比較発光素子Bは、図20(b)を見るとわかるように、長期的な劣化はさほど悪くないが、初期劣化が大きいという問題がある。
【0304】
以上の結果から、本発明の一態様である発光素子1は、非常に高い発光効率と、非常に長い寿命を両立できることがわかった。
【0305】
そこで、発光素子1に関して、初期輝度1000cd/mにおける輝度半減寿命を見積もるため、輝度加速試験を行った。輝度加速試験は、発光素子1と同じ構造の素子に対し、初期輝度を3000、5000、8000、10000、12000、および15000cd/mの各輝度に設定し、定電流試験を行った。そして、各輝度での輝度半減寿命を求め、初期輝度−輝度半減寿命の相関プロットから初期輝度1000cd/mにおける輝度半減寿命を見積もった。
【0306】
輝度加速試験の結果を図21(a)に、初期輝度−輝度半減寿命の相関プロットを図21(b)に、それぞれ示す。初期輝度3000および5000cd/mについては、未だ輝度半減に至っていないため、劣化曲線を外挿して輝度半減寿命を見積もった。輝度加速試験の結果を下記表2にまとめる。
【0307】
【表2】

【0308】
表2の結果をプロットしたのが、図21(b)の初期輝度−輝度半減寿命の相関プロットである。発光素子1の輝度半減寿命は初期輝度の1.7乗に反比例する形となり、非常に相関が取れていることがわかる。またこの結果から、初期輝度1000cd/mにおける輝度半減寿命は42000時間と見積もられ、極めて長寿命な素子であることがわかった。
【実施例3】
【0309】
本実施例3では、本発明の一態様である発光素子の作製例およびその特性に関して説明する。本実施例3で用いた材料の構造式を以下に示す。なお、実施例2でも用いた材料については省略する。
【0310】
【化6】

【0311】
まず以下に、本発明の一態様である発光素子(発光素子2)の作製方法を示す。素子構造を図5に示す。
【0312】
(発光素子2)
まず、陽極401として110nmの膜厚でインジウム錫珪素酸化物(ITSO)が成膜されたガラス基板を用意した。ITSO表面は、2mm角の大きさで表面が露出するよう周辺をポリイミド膜で覆い、電極面積は2mm×2mmとした。この基板上に発光素子を形成するための前処理として、基板表面を水で洗浄し、200℃で1時間焼成した後、UVオゾン処理を370秒行った。その後、10−5Pa程度まで内部が減圧された真空蒸着装置に基板を導入し、真空蒸着装置内の加熱室で、170℃で30分間の真空焼成を行った。その後、基板を30分程度、放冷した。
【0313】
次に、陽極401が形成された面を下方となるように、陽極401が形成されたガラス基板を真空蒸着装置内の成膜室に設けられた基板ホルダーに固定した。
【0314】
そして、まず陽極401上に、9−フェニル−3−[4−(10−フェニル−9−アントリル)フェニル]−9H−カルバゾール(略称:PCzPA)と酸化モリブデン(VI)とを共蒸着することにより、電子受容性化合物である酸化モリブデンが第1の有機化合物であるPCzPAに添加された第1の層411を形成した。蒸着は抵抗加熱を用いた。また、第1の層411の膜厚は50nmとし、PCzPAと酸化モリブデン(VI)の比率は、重量比で1:0.5(=PCzPA:酸化モリブデン(VI))となるように蒸着レートを調節した。なお、共蒸着法とは、一つの処理室内で複数の蒸発源から同時に蒸着を行う蒸着法である。
【0315】
続いて、抵抗加熱を用いた蒸着法により、4−[3−(9,10−ジフェニル−2−アントリル)フェニル]ジベンゾフラン(略称:2mPDBFPA−II)のみを50nm成膜することにより、第2の有機化合物である2mPDBFPA−IIからなる第2の層412を形成した。
【0316】
次に、2mPDBFPA−IIとN,N’−ビス〔4−(9−フェニル−9H−フルオレン−9−イル)フェニル〕−N,N’−ジフェニルピレン−1,6−ジアミン(略称:1,6FLPAPrn)とを共蒸着することにより、第3の有機化合物である2mPDBFPA−IIと、2mPDBFPA−IIに対して正孔トラップ性を示す第1の発光物質1,6FLPAPrnとを含む第1の発光層421を形成した。第1の発光層421の膜厚は10nmとし、2mPDBFPA−IIと1,6FLPAPrnの比率は、重量比で1:0.05(=2mPDBFPA−II:1,6FLPAPrn)となるように蒸着レートを調節した。
【0317】
さらに、9−[4−(10−フェニル−9−アントリル)フェニル]−9H−カルバゾール(略称:CzPA)と1,6FLPAPrnとを共蒸着することにより、第4の有機化合物であるCzPAと、CzPAに対して正孔トラップ性を示す第2の発光物質である1,6FLPAPrnとを含む第2の発光層422を形成した。第2の発光層422の膜厚は25nmとし、CzPAと1,6FLPAPrnの比率は、重量比で1:0.05(=CzPA:1,6FLPAPrn)となるように蒸着レートを調節した。
【0318】
なお、第1の有機化合物であるPCzPA、第2〜第3の有機化合物である2mPDBFPA−II、および第4の有機化合物であるCzPAの正孔輸送骨格は、実施の形態で述べた通りいずれもアントラセンである。また、実施例2と同様、バイポーラへテロ接合を形成している。
【0319】
その後、2−[4−(10−フェニル−9−アントリル)フェニル]ベンゾオキサゾール(略称:PABOx)を10nm成膜し、次いでバソフェナントロリン(略称:BPhen)を15nm成膜することにより、電子輸送層413を形成した。さらに、フッ化リチウムを1nm成膜することで、電子注入層414を形成した。
【0320】
最後に、抵抗加熱による蒸着法を用い、アルミニウムを200nmの膜厚となるように成膜することにより陰極402を形成し、発光素子2を作製した。
【0321】
(素子の評価)
以上により得られた発光素子2を、窒素雰囲気のグローブボックス内において、発光素子が大気に曝されないように封止する作業を行った後、発光素子2の動作特性について測定を行った。なお、測定は室温(25℃に保たれた雰囲気)で行った。
【0322】
発光素子2の輝度−電流効率特性を図22(a)に、輝度−外部量子効率特性を図22(b)に、それぞれ示す。また、電圧−輝度特性を図23に示す。また、25mA/cmの電流密度で発光させた際の発光スペクトルを図24に示す。
【0323】
発光素子2は、1000cd/mの輝度で発光させた際の駆動電圧が3.4V、電流効率が11cd/A、外部量子効率が8.0%、電力効率が10[lm/W]の非常に良好な特性が得られた。特に外部量子効率に関しては、従来の蛍光素子では得られないほどの高い発光効率が得られている。なお、図24から、発光素子2は1,6−FLPAPrnに由来するシャープな発光スペクトルが得られており、色度がCIE(x,y)=(0.14,0.21)の青色発光が得られた。
【0324】
次に、発光素子2に関し、初期輝度5000cd/mの条件で定電流駆動し、連続点灯試験を行った。結果を図25に示す。図25において、縦軸は初期輝度を100%として規格化した規格化輝度であり、横軸は駆動時間である。また、横軸(駆動時間)はリニアスケールである。
【0325】
図25から、発光素子2の初期輝度5000cd/mにおける輝度半減寿命は、2500時間以上と見積もられる。これは、実施例2で開示した発光素子1の初期輝度5000cd/mにおける輝度半減寿命とほぼ同等である。したがって、輝度加速係数を同じとすると、初期輝度1000cd/mにおける輝度半減寿命は、発光素子1と同様40000時間以上が見積もられる。したがって、極めて長寿命な素子である。
【0326】
以上の結果から、本発明の一態様である発光素子2は、非常に高い発光効率と、非常に長い寿命を両立できることがわかった。特に、10[lm/W]を超える電力効率でありながら長寿命を達成しているため、照明の青色発光成分として用いても、十分に耐えうる性能と考えられる。
【実施例4】
【0327】
本実施例4では、本発明の一態様である発光素子の作製例およびその特性に関して説明する。なお、実施例2、3でも用いた材料については省略する。
【0328】
まず以下に、本発明の一態様である発光素子(発光素子3)の作製方法を示す。素子構造を図3に示す。
【0329】
(発光素子3)
まず、陽極101として110nmの膜厚でインジウム錫珪素酸化物(ITSO)が成膜されたガラス基板を用意した。ITSO表面は、2mm角の大きさで表面が露出するよう周辺をポリイミド膜で覆い、電極面積は2mm×2mmとした。この基板上に発光素子を形成するための前処理として、基板表面を水で洗浄し、200℃で1時間焼成した後、UVオゾン処理を370秒行った。その後、10−5Pa程度まで内部が減圧された真空蒸着装置に基板を導入し、真空蒸着装置内の加熱室で、170℃で30分間の真空焼成を行った。その後、基板を30分程度、放冷した。
【0330】
次に、陽極101が形成された面を下方となるように、陽極101が形成されたガラス基板を真空蒸着装置内の成膜室に設けられた基板ホルダーに固定した。
【0331】
そして、まず陽極101上に、9−フェニル−3−[4−(10−フェニル−9−アントリル)フェニル]−9H−カルバゾール(略称:PCzPA)と酸化モリブデン(VI)とを共蒸着することにより、電子受容性化合物である酸化モリブデンが第1の有機化合物であるPCzPAに添加された第1の層111を形成した。蒸着は抵抗加熱を用いた。また、第1の層111の膜厚は70nmとし、PCzPAと酸化モリブデン(VI)の比率は、重量比で1:0.5(=PCzPA:酸化モリブデン(VI))となるように蒸着レートを調節した。なお、共蒸着法とは、一つの処理室内で複数の蒸発源から同時に蒸着を行う蒸着法である。
【0332】
引き続き、抵抗加熱を用いた蒸着法により、PCzPAのみを30nm成膜することにより、第2の有機化合物であるPCzPAからなる第2の層112を形成した。
【0333】
次に、9−[4−(10−フェニル−9−アントリル)フェニル]−9H−カルバゾール(略称:CzPA)とN,N’−ビス〔4−(9−フェニル−9H−フルオレン−9−イル)フェニル〕−N,N’−ジフェニルピレン−1,6−ジアミン(略称:1,6FLPAPrn)とを共蒸着することにより、第3の有機化合物であるCzPAと、CzPAに対して正孔トラップ性を示す発光物質である1,6FLPAPrnとを含む発光層121を形成した。発光層121の膜厚は20nmとし、CzPAと1,6FLPAPrnの比率は、重量比で1:0.05(=CzPA:1,6FLPAPrn)となるように蒸着レートを調節した。
【0334】
なお、第1〜第2の有機化合物であるPCzPA、第3の有機化合物であるCzPAの正孔輸送骨格は、実施の形態で述べた通りいずれもアントラセンである。また、実施例2、3と同様、バイポーラへテロ接合を形成している。
【0335】
その後、CzPAを10nm成膜し、次いでバソフェナントロリン(略称:BPhen)を15nm成膜することにより、電子輸送層113を形成した。さらに、フッ化リチウムを1nm成膜することで、電子注入層114を形成した。
【0336】
最後に、抵抗加熱による蒸着法を用い、アルミニウムを200nmの膜厚となるように成膜することにより陰極102を形成し、発光素子3を作製した。
【0337】
(素子の評価)
以上により得られた発光素子3を、窒素雰囲気のグローブボックス内において、発光素子が大気に曝されないように封止する作業を行った後、発光素子3の動作特性について測定を行った。なお、測定は室温(25℃に保たれた雰囲気)で行った。
【0338】
発光素子3の輝度−電流効率特性、外部量子効率を図32に示す。また、電圧−輝度特性を図33に示す。また、25mA/cmの電流密度で発光させた際の発光スペクトルを図34に示す。
【0339】
発光素子3は、1000cd/mの輝度で発光させた際の駆動電圧が3.1V、電流効率が12cd/A、外部量子効率が10.0%、電力効率が13[lm/W]の非常に良好な特性が得られた。特に外部量子効率に関しては、従来の蛍光素子では得られないほどの高い発光効率が得られている。なお、図34から、発光素子3は発光波長が467nmに由来するシャープな発光スペクトルが得られており、色度がCIE(x,y)=(0.14,0.17)の青色発光が得られた。
【0340】
次に、初期輝度を5000cd/mに設定し、定電流で駆動試験を行ったところ、輝度半減寿命は810時間であった。実施例2、3の結果から、輝度半減寿命は初期輝度の1.7乗に反比例するため、初期輝度1000cd/mでの半減寿命は12000時間と算出される。
【0341】
以上の結果から、本発明の一態様である発光素子3は、極めて低い駆動電圧と、非常に高い発光効率と、非常に長い寿命であることがわかった。特に、10[lm/W]を超える電力効率でありながら長寿命を達成しているため、照明の青色発光成分として用いても、十分に耐えうる性能と考えられる。
【符号の説明】
【0342】
101 陽極
102 陰極
103 EL層
111 第1の層
112 第2の層
113 電子輸送層
114 電子注入層
121 発光層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
陽極と陰極との間に、
前記陽極側から順に、第1の層と、第2の層と、発光層とが設けられた積層構造を少なくとも有し、
前記第1の層は、第1の有機化合物と、電子受容性化合物とを含み、
前記第2の層は、前記第1の有機化合物のHOMO準位に対して±0.2eV以内のHOMO準位を有する第2の有機化合物を含み、
前記発光層は、前記第2の有機化合物のHOMO準位に対して±0.2eV以内のHOMO準位を有する第3の有機化合物と、前記第3の有機化合物に対して正孔トラップ性を示す発光物質とを含む発光素子。
【請求項2】
陽極と陰極との間に、
前記陽極側から順に、第1の層と、第2の層と、発光層とが設けられた積層構造を少なくとも有し、
前記第1の層は、第1の正孔輸送骨格を有する第1の有機化合物と、電子受容性化合物とを含み、
前記第2の層は、第2の正孔輸送骨格を有する第2の有機化合物を含み、
前記発光層は、第3の正孔輸送骨格を有する第3の有機化合物と、前記第3の有機化合物に対して正孔トラップ性を示す発光物質とを含み、
前記第1の正孔輸送骨格、前記第2の正孔輸送骨格、および前記第3の正孔輸送骨格が同じである発光素子。
【請求項3】
陽極と陰極との間に、
前記陽極側から順に、第1の層と、第2の層と、発光層とが設けられた積層構造を少なくとも有し、
前記第1の層は、第1の正孔輸送骨格を有する第1の有機化合物と、電子受容性化合物とを含み、
前記第2の層は、第2の正孔輸送骨格を有する第2の有機化合物を含み、
前記発光層は、第3の正孔輸送骨格を有する第3の有機化合物と、前記第3の有機化合物に対して正孔トラップ性を示す発光物質とを含み、
前記第1の正孔輸送骨格、前記第2の正孔輸送骨格、および前記第3の正孔輸送骨格は、それぞれ独立に、π過剰系ヘテロ芳香環、3環系縮合芳香族炭化水素環、または4環系縮合芳香族炭化水素環の少なくともいずれか一の骨格を含む発光素子。
【請求項4】
陽極と陰極との間に、
前記陽極側から順に、第1の層と、第2の層と、発光層とが設けられた積層構造を少なくとも有し、
前記第1の層は、第1の正孔輸送骨格を有する第1の有機化合物と、電子受容性化合物とを含み、
前記第2の層は、第2の正孔輸送骨格を有する第2の有機化合物を含み、
前記発光層は、第3の正孔輸送骨格を有する第3の有機化合物と、前記第3の有機化合物に対して正孔トラップ性を示す発光物質とを含み、
前記第1の正孔輸送骨格、前記第2の正孔輸送骨格、および前記第3の正孔輸送骨格は、それぞれ独立に、カルバゾール、ジベンゾフラン、ジベンゾチオフェン、またはアントラセンの少なくともいずれか一の骨格を含む発光素子。
【請求項5】
陽極と陰極との間に、
前記陽極側から順に、第1の層と、第2の層と、発光層とが設けられた積層構造を少なくとも有し、
前記第1の層は、第1の正孔輸送骨格を有する第1の有機化合物と、電子受容性化合物とを含み、
前記第2の層は、前記第1の正孔輸送骨格を有する第2の有機化合物を含み、
前記発光層は、前記第1の正孔輸送骨格を有する第3の有機化合物と、前記第3の有機化合物に対して正孔トラップ性を示す発光物質とを含み、
前記第1の正孔輸送骨格は、π過剰系ヘテロ芳香環、3環系縮合芳香環、または4環系縮合芳香環の少なくともいずれか一の骨格を含む発光素子。
【請求項6】
陽極と陰極との間に、
前記陽極側から順に、第1の層と、第2の層と、発光層とが設けられた積層構造を少なくとも有し、
前記第1の層は、第1の正孔輸送骨格を有する第1の有機化合物と、電子受容性化合物とを含み、
前記第2の層は、前記第1の正孔輸送骨格を有する第2の有機化合物を含み、
前記発光層は、前記第1の正孔輸送骨格を有する第3の有機化合物と、前記第3の有機化合物に対して正孔トラップ性を示す発光物質とを含み、
前記第1の正孔輸送骨格は、それぞれ独立に、カルバゾール、ジベンゾフラン、ジベンゾチオフェン、またはアントラセンの少なくともいずれか一の骨格を含む発光素子。
【請求項7】
請求項1乃至請求項6のいずれか一項に記載の発光素子において、
前記発光物質は、芳香族アミン化合物、または有機金属錯体であることを特徴とする発光素子。
【請求項8】
請求項1乃至請求項6のいずれか一項に記載の発光素子において、
前記発光物質は、ピレンジアミン化合物、またはイリジウム錯体であることを特徴とする発光素子。
【請求項9】
陽極と陰極との間に、
前記陽極側から順に、第1の層と、第2の層と、第1の発光層と、第2の発光層とが設けられた積層構造を少なくとも有し、
前記第1の層は、第1の有機化合物と、電子受容性化合物とを含み、
前記第2の層は、前記第1の有機化合物のHOMO準位に対して±0.2eV以内のHOMO準位を有する第2の有機化合物を含み、
前記第1の発光層は、前記第2の有機化合物のHOMO準位に対して±0.2eV以内のHOMO準位を有する第3の有機化合物と、前記第3の有機化合物に対して正孔トラップ性を示す第1の発光物質とを含み、
前記第2の発光層は、前記第3の有機化合物のHOMO準位に対して±0.2eV以内のHOMO準位を有すると共に前記第3の有機化合物のLUMO準位に対して±0.2eV以内のLUMO準位を有する第4の有機化合物と、前記第4の有機化合物に対して正孔トラップ性を示す第2の発光物質とを含み、
前記第4の有機化合物は、前記第3の有機化合物とは異なる化合物である発光素子。
【請求項10】
陽極と陰極との間に、
前記陽極側から順に、第1の層と、第2の層と、第1の発光層と、第2の発光層とが設けられた積層構造を少なくとも有し、
前記第1の層は、第1の正孔輸送骨格を有する第1の有機化合物と、電子受容性化合物とを含み、
前記第2の層は、第2の正孔輸送骨格を有する第2の有機化合物を含み、
前記第1の発光層は、第3の正孔輸送骨格および電子輸送骨格を有する第3の有機化合物と、前記第3の有機化合物に対して正孔トラップ性を示す第1の発光物質とを含み、
前記第2の発光層は、第4の正孔輸送骨格および前記電子輸送骨格を有する第4の有機化合物と、前記第4の有機化合物に対して正孔トラップ性を示す第2の発光物質とを含み、
前記第4の有機化合物は、前記第3の有機化合物とは異なる化合物であり、
前記第1の正孔輸送骨格、前記第2の正孔輸送骨格、前記第3の正孔輸送骨格、および前記第4の正孔輸送骨格が同じである発光素子。
【請求項11】
陽極と陰極との間に、
前記陽極側から順に、第1の層と、第2の層と、第1の発光層と、第2の発光層とが設けられた積層構造を少なくとも有し、
前記第1の層は、第1の正孔輸送骨格を有する第1の有機化合物と、電子受容性化合物とを含み、
前記第2の層は、第2の正孔輸送骨格を有する第2の有機化合物を含み、
前記第1の発光層は、第3の正孔輸送骨格および電子輸送骨格を有する第3の有機化合物と、前記第3の有機化合物に対して正孔トラップ性を示す第1の発光物質とを含み、
前記第2の発光層は、第4の正孔輸送骨格および前記電子輸送骨格を有する第4の有機化合物と、前記第4の有機化合物に対して正孔トラップ性を示す第2の発光物質とを含み、
前記第4の有機化合物は、前記第3の有機化合物とは異なる化合物であり、
前記第1の正孔輸送骨格、前記第2の正孔輸送骨格、前記第3の正孔輸送骨格、および前記第4の正孔輸送骨格は、それぞれ独立に、π過剰系ヘテロ芳香環、3環系縮合芳香環、または4環系縮合芳香環の少なくともいずれか一の骨格を含む発光素子。
【請求項12】
陽極と陰極との間に、
前記陽極側から順に、第1の層と、第2の層と、第1の発光層と、第2の発光層とが設けられた積層構造を少なくとも有し、
前記第1の層は、第1の正孔輸送骨格を有する第1の有機化合物と、電子受容性化合物とを含み、
前記第2の層は、第2の正孔輸送骨格を有する第2の有機化合物を含み、
前記第1の発光層は、第3の正孔輸送骨格および電子輸送骨格を有する第3の有機化合物と、前記第3の有機化合物に対して正孔トラップ性を示す第1の発光物質とを含み、
前記第2の発光層は、第4の正孔輸送骨格および前記電子輸送骨格を有する第4の有機化合物と、前記第4の有機化合物に対して正孔トラップ性を示す第2の発光物質とを含み、
前記第4の有機化合物は、前記第3の有機化合物とは異なる化合物であり、
前記第1の正孔輸送骨格、前記第2の正孔輸送骨格、前記第3の正孔輸送骨格、および前記第4の正孔輸送骨格は、それぞれ独立に、カルバゾール、ジベンゾフラン、ジベンゾチオフェン、またはアントラセンの少なくともいずれか一の骨格を含む発光素子。
【請求項13】
陽極と陰極との間に、
前記陽極側から順に、第1の層と、第2の層と、第1の発光層と、第2の発光層とが設けられた積層構造を少なくとも有し、
前記第1の層は、第1の正孔輸送骨格を有する第1の有機化合物と、電子受容性化合物とを含み、
前記第2の層は、前記第1の正孔輸送骨格を有する第2の有機化合物を含み、
前記第1の発光層は、前記第1の正孔輸送骨格および電子輸送骨格を有する第3の有機化合物と、前記第3の有機化合物に対して正孔トラップ性を示す第1の発光物質とを含み、
前記第2の発光層は、前記第1の正孔輸送骨格および前記電子輸送骨格を有する第4の有機化合物と、前記第4の有機化合物に対して正孔トラップ性を示す第2の発光物質とを含み、
前記第4の有機化合物は、前記第3の有機化合物とは異なる化合物であり、
前記第1の正孔輸送骨格は、π過剰系ヘテロ芳香環、3環系縮合芳香環、または4環系縮合芳香環の少なくともいずれか一の骨格を含む発光素子。
【請求項14】
陽極と陰極との間に、
前記陽極側から順に、第1の層と、第2の層と、第1の発光層と、第2の発光層とが設けられた積層構造を少なくとも有し、
前記第1の層は、第1の正孔輸送骨格を有する第1の有機化合物と、電子受容性化合物とを含み、
前記第2の層は、前記第1の正孔輸送骨格を有する第2の有機化合物を含み、
前記第1の発光層は、前記第1の正孔輸送骨格および電子輸送骨格を有する第3の有機化合物と、前記第3の有機化合物に対して正孔トラップ性を示す第1の発光物質とを含み、
前記第2の発光層は、前記第1の正孔輸送骨格および前記電子輸送骨格を有する第4の有機化合物と、前記第4の有機化合物に対して正孔トラップ性を示す第2の発光物質とを含み、
前記第4の有機化合物は、前記第3の有機化合物とは異なる化合物であり、
前記第1の正孔輸送骨格は、カルバゾール、ジベンゾフラン、ジベンゾチオフェン、またはアントラセンの少なくともいずれか一の骨格を含む発光素子。
【請求項15】
請求項9乃至請求項14のいずれか一項に記載の発光素子において、
前記第3の有機化合物の正孔輸送性は、前記第4の有機化合物の正孔輸送性より高く、
前記第3の有機化合物の電子輸送性は、前記第4の有機化合物の電子輸送性より低いことを特徴とする発光素子。
【請求項16】
請求項9乃至請求項15のいずれか一項に記載の発光素子において、
前記第1の発光物質および前記第2の発光物質は、それぞれが芳香族アミン化合物、または有機金属錯体であることを特徴とする発光素子。
【請求項17】
請求項9乃至請求項15のいずれか一項に記載の発光素子において、
前記第1の発光物質および前記第2の発光物質は、それぞれがピレンジアミン化合物、またはイリジウム錯体であることを特徴とする発光素子。
【請求項18】
請求項9乃至請求項17のいずれか一項に記載の発光素子において、
前記第1の発光物質と前記第2の発光物質が同じであることを特徴とする発光素子。
【請求項19】
請求項1乃至請求項18のいずれか一項に記載の発光素子において、
前記第1の有機化合物のHOMO準位が、−6.0eV以上、−5.7eV以下であることを特徴とする発光素子。
【請求項20】
請求項1乃至請求項19のいずれか一項に記載の発光素子において、
前記陽極と前記陰極との間に、前記積層構造が複数設けられていることを特徴とする発光素子。
【請求項21】
請求項1乃至請求項20のいずれか一項に記載の発光素子を用いた発光装置。
【請求項22】
請求項21に記載の発光装置を有する電子機器。
【請求項23】
請求項21に記載の発光装置を有する照明装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【図29】
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【図30】
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【図31】
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【図32】
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【図33】
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【図34】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2011−139044(P2011−139044A)
【公開日】平成23年7月14日(2011.7.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−264025(P2010−264025)
【出願日】平成22年11月26日(2010.11.26)
【出願人】(000153878)株式会社半導体エネルギー研究所 (5,264)
【Fターム(参考)】