説明

発光素子、表示装置および電子機器

【課題】発光効率および耐久性(寿命)に優れる発光素子、この発光素子を備えた信頼性の高い表示装置および電子機器を提供すること。
【解決手段】発光素子1は、陰極12と、陽極3と、陰極12と陽極3との間に設けられ、赤色に発光する赤色発光層6と、赤色発光層6と陰極12との間に設けられ、青色に発光する青色発光層8と、赤色発光層6と青色発光層8との層間にこれらに接するように設けられ、赤色発光層6と青色発光層8との間で励起子のエネルギーが移動するのを阻止する機能を有する中間層7とを有し、中間層7は、赤色発光層6に接するとともに、第1の中間材料を主材料として構成された第1の中間層71と、青色発光層8に接するとともに、第1の中間材料とは異なる第2の中間材料を主材料として構成された第2の中間層72とを含んで構成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発光素子、表示装置および電子機器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
有機エレクトロルミネセンス素子(いわゆる有機EL素子)は、陽極と陰極との間に少なくとも1層の発光性有機層を介挿した構造を有する発光素子である。このような発光素子では、陰極と陽極との間に電界を印加することにより、発光層に陰極側から電子が注入されるとともに陽極側から正孔が注入され、発光層中で電子と正孔が再結合することにより励起子が生成し、この励起子が基底状態に戻る際に、そのエネルギー分が光として放出される。
【0003】
このような発光素子としては、例えば、陰極と陽極との間に、R(赤色)、G(緑色)、B(青色)の3色に対応する3層の発光層を積層し、白色発光させるものが知られている(例えば、特許文献1参照)。このような白色発光する発光素子は、R(赤色)、G(緑色)、B(青色)の3色が画素ごとに塗り分けられたカラーフィルタと組み合わせて用いることで、フルカラー画像を表示することができる。
【0004】
特許文献1にかかる発光素子では、発光層同士の間に中間層を設けることで、発光層間での励起子のエネルギーの移動を防止することができる。これにより、各発光層をバランスよく発光させて、白色発光させることができる。
しかしながら、特許文献1にかかる発光素子では、中間層が単層で構成されているため、発光素子の耐久性を優れたものとしつつ各発光層にキャリア(正孔・電子)を効率よく注入することが難しいという問題があった。
【0005】
【特許文献1】特開2005−100921号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、複数の発光層が積層した構成において、耐久性および発光効率を優れたものとしつつ、各発光層をバランスよく発光させることができる発光素子、この発光素子を備えた信頼性の高い表示装置および電子機器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
このような目的は、下記の本発明により達成される。
本発明の発光素子は、陰極と、
陽極と、
前記陰極と前記陽極との間に設けられ、第1の色に発光する第1の発光層と、
前記第1の発光層と前記陰極との間に設けられ、前記第1の色とは異なる第2の色に発光する第2の発光層と、
前記第1の発光層と前記第2の発光層との層間にこれらに接するように設けられ、前記第1の発光層と前記第2の発光層との間の励起子のエネルギー移動を阻止する機能を有する中間層とを有し、
前記中間層は、前記第1の発光層に接するとともに、第1の中間材料を主材料として構成された第1の中間層と、前記第2の発光層に接するとともに、前記第1の中間材料とは異なる第2の中間材料を主材料として構成された第2の中間層とを含んで構成されていることを特徴とする。
【0008】
これにより、第1の中間材料および第2の中間材料を適宜選択することにより、各発光層をバランスよく発光させることができる。
特に、第1の中間材料と第2の中間材料との組み合わせとして、キャリア(電子および/または正孔)輸送性に優れた材料と、キャリア耐性に優れた材料との組み合わせを選択することにより、前述したようなバランスのよい各発光層の発光を実現しつつ、耐久性および発光効率を優れたものとすることができる。
【0009】
本発明の発光素子では、前記第1の中間材料または前記第2の中間材料における最高被占軌道のエネルギー準位は、前記第1の発光層の構成材料の最高被占軌道のエネルギー準位よりも高いことが好ましい。
これにより、第1の中間層または第2の中間層が第1の発光層から第2の発光層への正孔の移動量を制限することで、第1の発光層と第2の発光層とをバランスよく発光させることができる。
【0010】
本発明の発光素子では、前記第1の中間材料および前記第2の中間材料におけるそれぞれの最高被占軌道のエネルギー準位は、前記第1の発光層における最高被占軌道のエネルギー準位と前記第2の発光層における最高被占軌道のエネルギー順位との間にあることが好ましい。
これにより、中間層が第1の発光層の最高被占軌道と第2の発光層の最高被占軌道との間のエネルギーギャップを緩和して(エネルギーギャップによる障壁の高さを低くして)、発光素子の駆動電圧を低減することができる。
【0011】
本発明の発光素子では、前記第1の中間材料における最高被占軌道のエネルギー準位が前記第1の発光層の構成材料の最高被占軌道のエネルギー準位よりも高く、かつ、前記第1の中間材料の最高被占軌道のエネルギー準位と、前記第1の発光層の構成材料の最高被占軌道のエネルギー準位との差が、0.1〜0.4eVであることが好ましい。
これにより、第1の発光層と第2の発光層との発光バランスを優れたものとしつつ、発光素子の駆動電圧を低減することができる。
【0012】
本発明の発光素子では、前記第1の中間材料または前記第2の中間材料における最低空軌道のエネルギー準位は、前記第2の発光層の構成材料の最低空軌道のエネルギー順位よりも低いことが好ましい。
これにより、第1の中間層または第2の中間層が第2の発光層から第1の発光層への電子の移動量を制限することで、第1の発光層と第2の発光層とをバランスよく発光させることができる。
【0013】
本発明の発光素子では、前記第1の中間材料および前記第2の中間材料におけるそれぞれの最低空軌道のエネルギー準位は、前記第1の発光層における最低空軌道のエネルギー準位と前記第2の発光層における最低空軌道のエネルギー順位との間にあることが好ましい。
これにより、中間層が第1の発光層の最低空軌道と第2の発光層の最低空軌道との間のエネルギーギャップを緩和して(エネルギーギャップによる障壁の高さを低くして)、発光素子の駆動電圧を低減することができる。
【0014】
本発明の発光素子では、前記第2の中間材料における最低空軌道のエネルギー準位が前記第2の発光層の構成材料の最低空軌道のエネルギー順位よりも低く、かつ、前記第2の中間材料の最低空軌道のエネルギー準位と、前記第2の発光層の構成材料の最低空軌道のエネルギー準位との差が、0.1〜0.4eVであることが好ましい。
これにより、第1の発光層と第2の発光層との発光バランスを優れたものとしつつ、発光素子の駆動電圧を低減することができる。
【0015】
本発明の発光素子では、前記第1の中間材料における最低空軌道と最高被占軌道との間のエネルギーギャップは、前記第1の発光層における最低空軌道と最高被占軌道との間のエネルギーギャップよりも大きいことが好ましい。
これにより、第1の発光層で生成した励起子のエネルギーが第1の中間層へ移動するのを防止することができる。その結果、第1の発光層と第2の発光層とをバランスよく発光させることができる。
【0016】
本発明の発光素子では、前記第2の中間材料における最低空軌道と最高被占軌道との間のエネルギーギャップは、前記第2の発光層における最低空軌道と最高被占軌道との間のエネルギーギャップよりも大きいことが好ましい。
これにより、第2の発光層で生成した励起子のエネルギーが第2の中間層へ移動するのを防止することができる。その結果、第1の発光層と第2の発光層とをバランスよく発光させることができる。
【0017】
本発明の発光素子では、前記第1の中間層は、前記第2の中間層よりも高い正孔輸送性を有することが好ましい。
これにより、第1の発光層から中間層を介して第2の発光層へ正孔を円滑に受け渡すことができる。
本発明の発光素子では、前記第1の中間材料は、アミン系の正孔輸送材料を含んでいることが好ましい。
アミン系の正孔輸送材料は、優れた正孔輸送性を有する。そのため、このような正孔輸送材料を第1の中間材料として用いることにより、第1の発光層から中間層を介して第2の発光層への正孔の受け渡しを極めて円滑に行うことができる。
本発明の発光素子では、前記第2の中間層は、前記第1の中間材料よりも高い電子輸送性を有することが好ましい。
これにより、第2の発光層から中間層を介して第1の発光層へ電子を円滑に受け渡すことができる。
【0018】
本発明の発光素子では、前記第2の中間材料は、アセン系のバイポーラ材料を含んでいることが好ましい。
アセン系のバイポーラ材料は、優れたキャリア輸送性(正孔輸送性、電子輸送性)およびキャリア耐性を有する。そのため、このようなバイポーラ材料を第2の中間材料として用いることにより、第2の中間層のキャリア耐性を優れたものとしつつ、第1の発光層から中間層を介して第2の発光層への正孔の受け渡し、および、第2の発光層から中間層を介して第1の発光層への電子の受け渡しを極めて円滑に行うことができる。
【0019】
本発明の発光素子では、前記中間層は、前記第1の中間層と前記第2の中間層との層間にこれらに接するように設けられ、前記第1の中間材料および前記第2の中間材料とは異なる第3の中間材料を含んで構成された第3の中間層を含むことが好ましい。
これにより、第1の中間材料、第2の中間材料、および第3の中間材料を適宜選択することにより、第1の発光層と第2の発光層とをバランスよく発光させることができる。そのため、発光素子を構成する材料の選択の幅が拡がり、発光素子の設計の自由度を高めることができる。
【0020】
本発明の発光素子では、前記第3の中間材料の最高被占軌道のエネルギー準位は、前記第1の中間材料の最高被占軌道のエネルギー準位と前記第2の中間材料の最高被占軌道のエネルギー準位との間にあることが好ましい。
これにより、第1の中間層から第3の中間層を介して第2の中間層へ正孔を円滑に受け渡すことができる。
【0021】
本発明の発光素子では、前記第3の中間材料の最低空軌道のエネルギー準位は、前記第1の中間材料の最低空軌道のエネルギー準位と前記第2の中間材料の最低空軌道のエネルギー準位との間にあることが好ましい。
これにより、第2の中間層から第3の中間層を介して第1の中間層へ電子を円滑に受け渡すことができる。
【0022】
本発明の発光素子では、前記第1の発光層と前記陽極との間、または、前記第2の発光層と前記陰極との間に設けられ、前記第1の色および前記第2の色とは異なる第3の色に発光する第3の発光層を有することが好ましい。
これにより、例えば、R(赤色)、G(緑色)、B(青色)を発光させて、白色発光する発光素子を実現することができる。
【0023】
本発明の発光素子では、前記第3の発光層は、前記第2の発光層と前記陰極との間に設けられており、前記第1の発光層は、前記第1の色として赤色に発光する赤色発光層であり、前記第2の発光層は、前記第2の色として青色に発光する青色発光層であり、前記第3の発光層は、前記第3の色として緑色に発光する緑色発光層であることが好ましい。
これにより、耐久性および電流効率を極めて優れたものとしつつ、第1の発光層と第2の発光層と第3の発光層とをバランスよく発光させて、白色発光させることができる。
【0024】
本発明の発光素子では、前記中間層は、その平均厚さが100nm以下であることが好ましい。
これにより、発光素子の駆動電圧を低減しつつ、第1の発光層と第2の発光層とをバランスよく発光させることができる。
本発明の発光素子では、前記第1の中間層および前記第2の中間層は、それぞれの平均厚さが1〜50nm以下であることが好ましい。
これにより、発光素子の駆動電圧を低減しつつ、第1の発光層と第2の発光層とをバランスよく発光させることができる。
本発明の表示装置は、本発明の発光素子を備えることを特徴とする。
これにより、優れた信頼性を有する表示装置を提供することができる。
本発明の電子機器は、本発明の表示装置を備えることを特徴とする。
これにより、優れた信頼性を有する電子機器を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
以下、本発明の発光素子、表示装置および電子機器を添付図面に示す好適な実施形態について説明する。
<第1実施形態>
図1は、本発明の発光素子の第1実施形態の縦断面を模式的に示す図、図2は、図1に示す発光素子における各層のエネルギー準位を説明するための図である。なお、以下では、説明の都合上、図1中の上側を「上」、下側を「下」として説明を行う。
【0026】
図1に示す発光素子(エレクトロルミネッセンス素子)1は、R(赤色)、G(緑色)、B(青色)を発光させて、白色発光するものである。
このような発光素子1は、陽極3と正孔注入層4と正孔輸送層5と赤色発光層(第1の発光層)6と中間層7と青色発光層(第2の発光層)8と緑色発光層(第3の発光層)9と電子輸送層10と電子注入層11と陰極12とがこの順に積層されてなるものである。
【0027】
言い換えすれば、発光素子1は、正孔注入層4と正孔輸送層5と赤色発光層6と中間層7と青色発光層8と緑色発光層9と電子輸送層10と電子注入層11と陰極12とがこの順に積層で積層された積層体15が2つの電極間(陽極3と陰極12との間)に介挿されて構成されている。
そして、発光素子1は、その全体が基板2上に設けられるとともに、封止部材13で封止されている。
【0028】
このような発光素子1にあっては、赤色発光層6、青色発光層8、および緑色発光層9の各発光層に対し、陰極12側から電子が供給(注入)されるとともに、陽極3側から正孔が供給(注入)される。そして、各発光層では、正孔と電子とが再結合し、この再結合に際して放出されたエネルギーによりエキシトン(励起子)が生成し、エキシトンが基底状態に戻る際にエネルギー(蛍光やりん光)を放出(発光)する。これにより、発光素子1は、白色発光する。
基板2は、陽極3を支持するものである。本実施形態の発光素子1は、基板2側から光を取り出す構成(ボトムエミッション型)であるため、基板2および陽極3は、それぞれ、実質的に透明(無色透明、着色透明または半透明)とされている。
【0029】
基板2の構成材料としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリプロピレン、シクロオレフィンポリマー、ポリアミド、ポリエーテルサルフォン、ポリメチルメタクリレート、ポリカーボネート、ポリアリレートのような樹脂材料や、石英ガラス、ソーダガラスのようなガラス材料等が挙げられ、これらのうちの1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
このような基板2の平均厚さは、特に限定されないが、0.1〜30mm程度であるのが好ましく、0.1〜10mm程度であるのがより好ましい。
【0030】
なお、発光素子1が基板2と反対側から光を取り出す構成(トップエミッション型)の場合、基板2には、透明基板および不透明基板のいずれも用いることができる。
不透明基板としては、例えば、アルミナのようなセラミックス材料で構成された基板、ステンレス鋼のような金属基板の表面に酸化膜(絶縁膜)を形成したもの、樹脂材料で構成された基板等が挙げられる。
【0031】
以下、発光素子1を構成する各部を順次説明する。
(陽極)
陽極3は、後述する正孔注入層4を介して正孔輸送層5に正孔を注入する電極である。この陽極3の構成材料としては、仕事関数が大きく、導電性に優れる材料を用いるのが好ましい。
【0032】
陽極3の構成材料としては、例えば、ITO(Indium Tin Oxide)、IZO(Indium Zinc Oxide)、In、SnO、Sb含有SnO、Al含有ZnO等の酸化物、Au、Pt、Ag、Cuまたはこれらを含む合金等が挙げられ、これらのうちの1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
このような陽極3の平均厚さは、特に限定されないが、10〜200nm程度であるのが好ましく、50〜150nm程度であるのがより好ましい。
【0033】
(陰極)
一方、陰極12は、後述する電子注入層11を介して電子輸送層10に電子を注入する電極である。この陰極12の構成材料としては、仕事関数の小さい材料を用いるのが好ましい。
陰極12の構成材料としては、例えば、Li、Mg、Ca、Sr、La、Ce、Er、Eu、Sc、Y、Yb、Ag、Cu、Al、Cs、Rbまたはこれらを含む合金等が挙げられ、これらのうちの1種または2種以上を組み合わせて(例えば、複数層の積層体等)用いることができる。
【0034】
特に、陰極12の構成材料として合金を用いる場合には、Ag、Al、Cu等の安定な金属元素を含む合金、具体的には、MgAg、AlLi、CuLi等の合金を用いるのが好ましい。かかる合金を陰極12の構成材料として用いることにより、陰極12の電子注入効率および安定性の向上を図ることができる。
このような陰極12の平均厚さは、特に限定されないが、100〜10000nm程度であるのが好ましく、200〜500nm程度であるのがより好ましい。
なお、本実施形態の発光素子1は、ボトムエミッション型であるため、陰極12に、光透過性は、特に要求されない。
【0035】
(正孔注入層)
正孔注入層4は、陽極3からの正孔注入効率を向上させる機能を有するものである。
この正孔注入層4の構成材料(正孔注入材料)としては、特に限定されないが、例えば、銅フタロシアニンや、4,4’,4’’−トリス(N,N‐フェニル‐3‐メチルフェニルアミノ)トリフェニルアミン(m−MTDATA)等が挙げられる。
このような正孔注入層4の平均厚さは、特に限定されないが、5〜150nm程度であるのが好ましく、10〜100nm程度であるのがより好ましい。
なお、この正孔注入層4は、省略することができる。
【0036】
(正孔輸送層)
正孔輸送層5は、陽極3から正孔注入層4を介して注入された正孔を赤色発光層6まで輸送する機能を有するものである。
この正孔輸送層5の構成材料には、各種p型の高分子材料や、各種p型の低分子材料を単独または組み合わせて用いることができる。
【0037】
p型の高分子材料(有機ポリマー)としては、例えば、ポリアリールアミンのようなアリールアミン骨格を有するもの、フルオレン−ビチオフェン共重合体のようなフルオレン骨格を有するもの、フルオレン−アリールアミン共重合体のようなアリールアミン骨格およびフルオレン骨格の双方を有するもの、ポリ(N−ビニルカルバゾール)、ポリビニルピレン、ポリビニルアントラセン、ポリチオフェン、ポリアルキルチオフェン、ポリヘキシルチオフェン、ポリ(p−フェニレンビニレン)、ポリチニレンビニレン、ピレンホルムアルデヒド樹脂、エチルカルバゾールホルムアルデヒド樹脂またはその誘導体等が挙げられる。
このようなp型の高分子材料は、他の化合物との混合物として用いることもできる。一例として、ポリチオフェンを含有する混合物としては、ポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン/スチレンスルホン酸)(PEDOT/PSS)等が挙げられる。
【0038】
一方、p型の低分子材料としては、例えば、1,1−ビス(4−ジ−パラ−トリアミノフェニル)シクロへキサン、1,1’−ビス(4−ジ−パラ−トリルアミノフェニル)−4−フェニル−シクロヘキサンのようなアリールシクロアルカン系化合物、4,4’,4’’−トリメチルトリフェニルアミン、N,N,N’,N’−テトラフェニル−1,1’−ビフェニル−4,4’−ジアミン、N,N’−ジフェニル−N,N’−ビス(3−メチルフェニル)−1,1’−ビフェニル−4,4’−ジアミン(TPD1)、N,N’−ジフェニル−N,N’−ビス(4−メトキシフェニル)−1,1’−ビフェニル−4,4’−ジアミン(TPD2)、N,N,N’,N’−テトラキス(4−メトキシフェニル)−1,1’−ビフェニル−4,4’−ジアミン(TPD3)、N,N’−ビス(1−ナフチル)−N,N’−ジフェニル−1,1’−ビフェニル−4,4’−ジアミン(α−NPD)、TPTEのようなアリールアミン系化合物、N,N,N’,N’−テトラフェニル−パラ−フェニレンジアミン、N,N,N’,N’−テトラ(パラ−トリル)−パラ−フェニレンジアミン、N,N,N’,N’−テトラ(メタ−トリル)−メタ−フェニレンジアミン(PDA)のようなフェニレンジアミン系化合物、カルバゾール、N−イソプロピルカルバゾール、N−フェニルカルバゾールのようなカルバゾール系化合物、スチルベン、4−ジ−パラ−トリルアミノスチルベンのようなスチルベン系化合物、OZのようなオキサゾール系化合物、トリフェニルメタン、m−MTDATAのようなトリフェニルメタン系化合物、1−フェニル−3−(パラ−ジメチルアミノフェニル)ピラゾリンのようなピラゾリン系化合物、ベンジン(シクロヘキサジエン)系化合物、トリアゾールのようなトリアゾール系化合物、イミダゾールのようなイミダゾール系化合物、1,3,4−オキサジアゾール、2,5−ジ(4−ジメチルアミノフェニル)−1,3,4,−オキサジアゾールのようなオキサジアゾール系化合物、アントラセン、9−(4−ジエチルアミノスチリル)アントラセンのようなアントラセン系化合物、フルオレノン、2,4,7,−トリニトロ−9−フルオレノン、2,7−ビス(2−ヒドロキシ−3−(2−クロロフェニルカルバモイル)−1−ナフチルアゾ)フルオレノンのようなフルオレノン系化合物、ポリアニリンのようなアニリン系化合物、シラン系化合物、1,4−ジチオケト−3,6−ジフェニル−ピロロ−(3,4−c)ピロロピロールのようなピロール系化合物、フローレンのようなフローレン系化合物、ポルフィリン、金属テトラフェニルポルフィリンのようなポルフィリン系化合物、キナクリドンのようなキナクリドン系化合物、フタロシアニン、銅フタロシアニン、テトラ(t−ブチル)銅フタロシアニン、鉄フタロシアニンのような金属または無金属のフタロシアニン系化合物、銅ナフタロシアニン、バナジルナフタロシアニン、モノクロロガリウムナフタロシアニンのような金属または無金属のナフタロシアニン系化合物、N,N’−ジ(ナフタレン−1−イル)−N,N’−ジフェニル−ベンジジン、N,N,N’,N’−テトラフェニルベンジジンのようなベンジジン系化合物等が挙げられる。
【0039】
これらの中でも、正孔輸送層5の構成材料としては、低分子材料を主とするものが好ましい。これにより、真空蒸着などの気相成膜法を用いて正孔輸送層5を形成して、簡単に、正孔輸送層5を均質な薄膜とすることができる。このような均質な薄膜として形成された正孔輸送層5上に、後述する赤色発光層6を真空蒸着などの気相成膜法を用いて形成すると、赤色発光層6も均質な薄膜とすることができる。そのため、発光素子1を優れた特性を有し、発光ムラのないものとしつつ歩留まりよく生産することができる。 このような正孔輸送層5の平均厚さは、特に限定されないが、10〜150nm程度であるのが好ましく、10〜100nm程度であるのがより好ましい。
なお、この正孔輸送層5は、省略することができる。
【0040】
(赤色発光層)
この赤色発光層(第1の発光層)6は、赤色(第1の色)に発光する赤色発光材料を含んで構成されている。
このような赤色発光材料としては、特に限定されず、各種赤色蛍光材料、赤色燐光材料を1種または2種以上組み合わせて用いることができる。
【0041】
赤色蛍光材料としては、赤色の蛍光を発するものであれば特に限定されず、例えば、ペリレン誘導体、ユーロピウム錯体、ベンゾピラン誘導体、ローダミン誘導体、ベンゾチオキサンテン誘導体、ポルフィリン誘導体、ナイルレッド、2−(1,1−ジメチルエチル)−6−(2−(2,3,6,7−テトラヒドロ−1,1,7,7−テトラメチル−1H,5H−ベンゾ(ij)キノリジン−9−イル)エテニル)−4H−ピラン−4H−イリデン)プロパンジニトリル(DCJTB)、4−(ジシアノメチレン)−2−メチル−6−(p−ジメチルアミノスチリル)−4H−ピラン(DCM)、ポリ[2,5−ビス(3、7−ジメチルオクチロキシ)−1,4−フェニレンビニレン]、ポリ[2−メトキシ−5−(2’−エチルヘキシルオキシ)−1,4−(1−シアノビニレン)フェニレン]、ポリ[2−メトキシ−5−(3,7−ジメチルオクチルオキシ)−1,4−フェニレンビニレン]等を挙げられる。
【0042】
赤色燐光材料としては、赤色の燐光を発するものであれば特に限定されず、例えば、イリジウム、ルテニウム、白金、オスミウム、レニウム、パラジウム等の金属錯体が挙げられ、これら金属錯体の配位子の内の少なくとも1つがフェニルピリジン骨格、ビピリジル骨格、ポルフィリン骨格等を持つものも挙げられる。より具体的には、トリス(1−フェニルイソキノリン)イリジウム、ビス[2−(2’−ベンゾ[4,5−α]チエニル)ピリジネート−N,C’]イリジウム(アセチルアセトネート)(btp2Ir(acac))、2,3,7,8,12,13,17,18−オクタエチル−12H,23H−ポルフィリン−白金(II)、ビス[2−(2’−ベンゾ[4,5−α]チエニル)ピリジネート−N,C’]イリジウム、ビス(2−フェニルピリジン)イリジウム(アセチルアセトネート)が挙げられる。
【0043】
また、赤色発光層6の構成材料としては、前述したような赤色発光材料と併用して、この赤色発光材料をゲスト材料とするホスト材料を用いることができる。このホスト材料は、正孔と電子とを再結合して励起子を生成するとともに、その励起子のエネルギーを赤色発光材料に移動(フェルスター移動またはデクスター移動)させて、赤色発光材料を励起する機能を有する。このようなホスト材料を用いる場合、例えば、ゲスト材料である赤色発光材料をドーパントとしてホスト材料にドープして用いることができる。
【0044】
このようなホスト材料としては、用いる赤色発光材料に対して前述したような機能を発揮するものであれば、特に限定されないが、赤色発光材料が赤色蛍光材料を含む場合、例えば、ジスチリルアリーレン誘導体、ナフタセン誘導体、ペリレン誘導体、ジスチリルベンゼン誘導体、ジスチリルアミン誘導体、トリス(8−キノリノラト)アルミニウム錯体(Alq)等のキノリノラト系金属錯体、トリフェニルアミンの4量体等のトリアリールアミン誘導体、オキサジアゾール誘導体、シロール誘導体、ジカルバゾール誘導体、オリゴチオフェン誘導体、ベンゾピラン誘導体、トリアゾール誘導体、ベンゾオキサゾール誘導体、ベンゾチアゾール誘導体、キノリン誘導体、4,4’−ビス(2,2’−ジフェニルビニル)ビフェニル(DPVBi)等が挙げられ、これらのうち1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることもできる。
【0045】
また、赤色発光材料が赤色燐光材料を含む場合、ホスト材料としては、例えば、3−フェニル−4−(1’−ナフチル)−5−フェニルカルバゾール、4,4’−N,N’−ジカルバゾールビフェニル(CBP)等のカルバゾール誘導体、フェナントロリン誘導体、トリアゾール誘導体、トリス(8−キノリノラト)アルミニウム(Alq)、ビス−(2−メチル−8−キノリノラト)−4−(フェニルフェノラト)アルミニウム等のキノリノラト系金属錯体、N−ジカルバゾリル−3,5−ベンゼン、ポリ(9−ビニルカルバゾール)、4,4’,4’’−トリス(9−カルバゾリル)トリフェニルアミン、4,4’−ビス(9−カルバゾリル)−2,2’−ジメチルビフェニル等のカルバリゾル基含有化合物、2,9−ジメチル−4,7−ジフェニル−1,10−フェナントロリン(BCP)等が挙げられ、これらのうち1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることもできる。
【0046】
前述したような赤色発光材料(ゲスト材料)およびホスト材料を用いる場合、赤色発光層6中における赤色発光材料の含有量(ドープ量)は、0.01〜10wt%であるのが好ましく、0.1〜5wt%であるのよりに好ましい。赤色発光材料の含有量をこのような範囲内とすることで、後述する青色発光層8や緑色発光層9の発光量とのバランスをとりつつ赤色発光層6を発光させることができる。
また、前述したような赤色の発光材料はその最低空軌道と最高被占軌道との間のエネルギーギャップ(バンドギャップ)が比較的小さく発光しやすい。したがって、陽極3側に赤色発光層6を設けることで、バンドギャップが大きく発光し難い青色発光層8や緑色発光層9を陰極側とし、各発光層をバランスよく発光させることができる。
【0047】
(中間層)
この中間層7は、前述した赤色発光層6と後述する青色発光層8との層間にこれらに接するように設けられている。そして、中間層7は、赤色発光層6と青色発光層8との間で励起子のエネルギーが移動するのを阻止する機能を有する。この機能により、赤色発光層6および青色発光層8をそれぞれ効率よく発光させることができる。
【0048】
特に、この中間層7は、赤色発光層6側に設けられた第1の中間層71と、青色発光層8側に設けられた第2の中間層72とで構成されている。
そして、第1の中間層71が、赤色発光層6に接するとともに、第1の中間材料を主材料として構成され、第2の中間層72が、青色発光層8に接するとともに、第1の中間材料とは異なる第2の中間材料を主材料として構成されている。
このような第1の中間層71および第2の中間層72で構成された中間層7は、第1の中間材料および第2の中間材料を適宜選択することにより、赤色発光層6と青色発光層8とをバランスよく発光させることができる。
【0049】
特に、第1の中間材料と第2の中間材料との組み合わせとして、キャリア(電子および/または正孔)輸送性に優れた材料と、キャリア耐性に優れた材料との組み合わせを選択することにより、前述したようなバランスのよい赤色発光層6および青色発光層8の発光を実現しつつ、耐久性および発光効率(電流効率や駆動電圧)を優れたものとすることができる。
【0050】
また、赤色発光層6の構成材料のバンドギャップと青色発光層8のバンドギャップとの差が大きいため、本発明にかかる中間層7を赤色発光層6と青色発光層8との間に設けることで、前述したような効果を顕著に発揮することができる。
より具体的に説明すると、発光素子1では、図2に示すように、発光素子1を構成する各層の構成材料の最高被占軌道(HOMO)および最低空軌道(LUMO)のそれぞれのエネルギー準位が、陽極3側から陰極12側へ向け順に高くなっている。このように発光素子1を構成する各層の構成材料の最高被占軌道(HOMO)および最低空軌道(LUMO)が設定されていることにより、発光素子1の駆動電圧を低減しつつ、各層でのキャリアの注入バランスを優れたものとすることができる。
【0051】
なお、図2では、上側から下側へ向け、エネルギー準位が高くなっている。本明細書では、エネルギー準位は、エネルギーレベル(電位[eV])が小さいほど高く、エネルギーレベル(電位[eV])が大きいほど低い。したがって、図2では、上側から下側へ向け、エネルギーレベル(電位[eV])が小さくなっている。
中間層7の最高被占軌道(HOMO)および最低空軌道(LUMO)について、さらに詳細に説明すると、第1の中間材料における最高被占軌道のエネルギー準位が赤色発光層6(第1の発光層)の構成材料の最高被占軌道のエネルギー準位よりも高い。これにより、第1の中間層71が赤色発光層6から青色発光層8への正孔の移動量を制限することで、赤色発光層6と青色発光層8とをバランスよく発光させることができる。また、第2の中間材料における最高被占軌道のエネルギー準位も赤色発光層6(第1の発光層)の構成材料の最高被占軌道のエネルギー準位よりも高い。これにより、第2の中間層72も赤色発光層6から青色発光層8への正孔の移動量を制限することで、赤色発光層6と青色発光層8とをバランスよく発光させることができる。
【0052】
ここで、赤色発光層6や青色発光層8等の発光層の構成材料の最高被占軌道(HOMO)および最低空軌道(LUMO)とは、発光層が発光材料のみで構成されている場合、発光材料の最高被占軌道(HOMO)および最低空軌道(LUMO)を言い、発光層が発光材料(ゲスト材料)とホスト材料とで構成されている場合、発光材料またはホスト材料の最高被占軌道(HOMO)および最低空軌道(LUMO)を言う。以下、同じ。
【0053】
また、第1の中間材料および第2の中間材料におけるそれぞれの最高被占軌道のエネルギー準位は、赤色発光層6における最高被占軌道のエネルギー準位と青色発光層8における最高被占軌道のエネルギー順位との間にある。これにより、赤色発光層6の最高被占軌道と青色発光層8の最高被占軌道との間のエネルギーギャップを緩和して(エネルギーギャップによる障壁の高さを低くして)、発光素子1の駆動電圧を低減することができる。
【0054】
特に、前述したように第1の中間材料における最高被占軌道のエネルギー準位が赤色発光層6の構成材料の最高被占軌道のエネルギー準位よりも高い場合、第1の中間材料の最高被占軌道のエネルギー準位と、赤色発光層の構成材料の最高被占軌道のエネルギー準位との差が、0.1〜0.4eVであるのが好ましい。これにより、赤色発光層6と青色発光層8との発光バランスを優れたものとしつつ、発光素子1の駆動電圧を低減することができる。
【0055】
また、第1の中間材料における最低空軌道のエネルギー準位が青色発光層8の構成材料の最低空軌道のエネルギー順位よりも低い。これにより、第1の中間層71が青色発光層8から赤色発光層6への電子の移動量を制限することで、赤色発光層6と青色発光層8とをバランスよく発光させることができる。また、第2の中間材料における最低空軌道のエネルギー準位も青色発光層8の構成材料の最低空軌道のエネルギー順位よりも低い。これにより、第2の中間層72も青色発光層8から赤色発光層6への電子の移動量を制限することで、赤色発光層6と青色発光層8とをバランスよく発光させることができる。
【0056】
また、第1の中間材料および第2の中間材料におけるそれぞれの最低空軌道のエネルギー準位は、赤色発光層6における最低空軌道のエネルギー準位と青色発光層8における最低空軌道のエネルギー順位との間にある。これにより、赤色発光層6の最低空軌道と青色発光層8の最低空軌道との間のエネルギーギャップを緩和して(エネルギーギャップによる障壁の高さを低くして)、発光素子1の駆動電圧を低減することができる。
【0057】
特に、前述したように第2の中間材料における最低空軌道のエネルギー準位が青色発光層8の構成材料の最低空軌道のエネルギー順位よりも低い場合、第2の中間材料の最低空軌道のエネルギー準位と、青色発光層8の構成材料の最低空軌道のエネルギー準位との差が、0.1〜0.4eVであるのが好ましい。これにより、赤色発光層6と青色発光層8との発光バランスを優れたものとしつつ、発光素子1の駆動電圧を低減することができる。
【0058】
さらに、第1の中間材料における最低空軌道と最高被占軌道との間のエネルギーギャップ(バンドギャップ)は、赤色発光層6における最低空軌道と最高被占軌道との間のエネルギーギャップ(バンドギャップ)よりも大きいのが好ましい。これにより、赤色発光層6で生成した励起子のエネルギーが第1の中間層71へ移動するのを防止することができる。その結果、赤色発光層6と青色発光層8とをバランスよく発光させることができる。
【0059】
また、第2の中間材料における最低空軌道と最高被占軌道との間のエネルギーギャップ(バンドギャップ)は、青色発光層8における最低空軌道と最高被占軌道との間のエネルギーギャップ(バンドギャップ)よりも大きいのが好ましい。これにより、青色発光層8で生成した励起子のエネルギーが第2の中間層72へ移動するのを防止することができる。その結果、赤色発光層6と青色発光層8とをバランスよく発光させることができる。
このような第1の中間層71は、中間層7が赤色発光層6と青色発光層8との間で正孔および電子を受け渡す必要があることから、正孔輸送性および電子輸送性を有しているが、第2の中間層72よりも高い正孔輸送性を有するのが好ましい。これにより、赤色発光層6から中間層7を介して青色発光層8へ正孔を円滑に受け渡すことができる。
【0060】
このような観点から、第1の中間材料は、アミン系の正孔輸送材料(すなわちアミン骨格を有する正孔輸送材料)を含んでいるのが好ましい。アミン系の正孔輸送材料は、優れた正孔輸送性を有する。そのため、このような正孔輸送材料を第1の中間材料として用いることにより、赤色発光層6から中間層7を介して青色発光層8への正孔の受け渡しを極めて円滑に行うことができる。
このような第1の中間層71に用いられるアミン系の正孔輸送材料としては、アミン骨格を有し、かつ、前述したような効果を発揮するものであれば、特に限定されず、例えば、前述した正孔輸送材料のうちのアミン骨格を有する材料を用いることができるが、ベンジジン系アミン誘導体を用いるのが好ましい。
【0061】
特に、ベンジジン系アミン誘導体のなかでも、中間層7に用いられるアミン系の正孔輸送材料としては、2つ以上のナフチル基を導入したものが好ましい。このようなベンジジン系アミン誘導体としては、例えば、下記化1で表されるようなN,N’−ビス(1−ナフチル)−N,N’−ジフェニル〔1,1’−ビフェニル〕−4,4’−ジアミン(α−NPD)や、下記化2で表されるようなN,N,N’,N’−テトラナフチル−ベンジジン(TNB)、下記化3で表わされるようなトリフェニルジアミン(TPD)などが挙げられる。
【0062】
【化1】

【0063】
【化2】

【0064】
【化3】

【0065】
このようなアミン系の正孔輸送材料は、一般に、正孔輸送性に優れており、アミン系の正孔輸送材料の正孔移動度は、後述するアセン系のバイポーラ材料の正孔移動度よりも高い。したがって、赤色発光層6から中間層7を介して青色発光層8へ正孔を円滑に受け渡すことができる。
また、第1の中間層71中におけるアミン系の正孔輸送材料の含有量は、特に限定されないが、10〜90vol%であるのが好ましく、30〜70vol%であるのがより好ましく、40〜60vol%であるのがさらに好ましい。
なお、第1の中間層71には、前述したような第1の中間材料以外の材料が含まれていてもよい。
【0066】
また、第1の中間層71は、その平均厚さが1〜50nm以下であるのが好ましく、3〜30nm以下であるのがより好ましく、5〜20nm以下であるのがさらに好ましい。これにより、発光素子1の駆動電圧を低減しつつ、赤色発光層6と青色発光層8とをバランスよく発光させることができる。
これに対し、第1の中間層71の厚さが前記下限値未満であると、第1の中間材料の種類や第1の中間層71の膜質などによっては、耐久性および電流効率を優れたものとするのが難しい。また、第2の中間層72の厚さなどによっては、中間層7が赤色発光層6と青色発光層8との間での励起子のエネルギー移動を十分に阻止することができずに、赤色発光層6と青色発光層8とをバランスよく発光させるのが難しい。一方、第1の中間層71の厚さが前記上限値を超えると、発光素子1の駆動電圧が上昇する傾向を示す。
【0067】
また、第2の中間層72も、中間層7が赤色発光層6と青色発光層8との間で正孔および電子を受け渡す必要があることから、正孔輸送性および電子輸送性を有しているが、第2の中間層72は、第1の中間材料よりも高い電子輸送性を有するのが好ましい。これにより、青色発光層から中間層7を介して赤色発光層6へ電子を円滑に受け渡すことができる。
【0068】
このような観点から、第2の中間材料は、アセン系のバイポーラ材料を含んでいるのが好ましい。アセン系のバイポーラ材料は、優れたキャリア輸送性(正孔輸送性、電子輸送性)およびキャリア耐性を有する。そのため、このようなバイポーラ材料を第2の中間材料として用いることにより、第2の中間層72のキャリア耐性を優れたものとしつつ、赤色発光層から中間層7を介して青色発光層8への正孔の受け渡し、および、青色発光層8から中間層7を介して赤色発光層6への電子の受け渡しを極めて円滑に行うことができる。
【0069】
このような第2の中間層72に用いられるアセン系のバイポーラ材料としては、アセン骨格を有し、かつ、前述したような効果を発揮するものであれば、特に限定されず、例えば、ナフタレン誘導体、アントラセン誘導体、テトラセン誘導体、ペンタセン誘導体、ヘキサセン誘導体、ヘプタセン誘導体等が挙げられ、これらのうち1種または2種以上を組み合わせて用いることができるが、アントラセン誘導体を用いるのが好ましい。
【0070】
アントラセン誘導体は、優れた電子輸送性を有しながらも、気相成膜法により簡単に成膜することができる。したがって、アセン系のバイポーラ材料としてアントラセン誘導体を用いることにより、アセン系のバイポーラ材料(ひいては第2の中間層72)の電子輸送性を優れたものとしつつ、均質な第2の中間層72の形成を容易なものとすることができる。
【0071】
特に、アントラセン誘導体のなかでも、第2の中間層72に用いられるアセン系のバイポーラ材料としては、アントラセン骨格の9位および10位のそれぞれにナフチル基が導入されたものが好ましい。これにより、前述した効果が顕著となる。このようなアントラセン誘導体としては、例えば、下記化4で表されるような9,10−ジ(2−ナフチル)アントラセン(ADN)や、下記化5で表されるような2−t−ブチル−9,10−ジ(2−ナフチル)アントラセン(TBADN)、下記化6で表されるような2−メチル−9,10−ジ(2−ナフチル)アントラセン(MADN)などが挙げられる。
【0072】
【化4】

【0073】
【化5】

【0074】
【化6】

【0075】
このようなアセン系のバイポーラ材料は、一般に、電子輸送性に優れており、アセン系のバイポーラ材料の電子移動度は、前述したアミン系の正孔輸送材料の電子移動度よりも高い。したがって、青色発光層8から中間層7を介して赤色発光層6へ電子を円滑に受け渡すことができる。
【0076】
また、第2の中間層72中におけるアセン系のバイポーラ材料の含有量は、特に限定されないが、10〜90vol%であるのが好ましく、30〜70vol%であるのがより好ましく、40〜60vol%であるのがさらに好ましい。
なお、第2の中間層72には、前述したような第2の中間材料以外の材料が含まれていてもよい。
【0077】
また、第2の中間層72は、その平均厚さが1〜50nm以下であるのが好ましく、3〜30nm以下であるのがより好ましく、3〜20nm以下であるのがさらに好ましい。これにより、発光素子1の駆動電圧を低減しつつ、赤色発光層6と青色発光層8とをバランスよく発光させることができる。
これに対し、第2の中間層72の厚さが前記下限値未満であると、第2の中間材料の種類や第2の中間層72の膜質などによっては、耐久性および電流効率を優れたものとするのが難しい。また、第1の中間層71の厚さなどによっては、中間層7が赤色発光層6と青色発光層8との間での励起子のエネルギー移動を十分に阻止することができずに、赤色発光層6と青色発光層8とをバランスよく発光させるのが難しい。一方、第2の中間層72の厚さが前記上限値を超えると、発光素子1の駆動電圧が上昇する傾向を示す。
【0078】
また、中間層7全体の平均厚さは、100nm以下(1〜100nm)であるのが好ましく、3〜50nmであるのがより好ましく、5〜30nmであるのがさらに好ましい。これにより、発光素子1の駆動電圧を低減しつつ、赤色発光層6と青色発光層8とをバランスよく発光させることができる。
また、中間層7全体の平均厚さは、赤色発光層6の平均厚さよりも厚いのが好ましい。これにより、中間層7の耐久性、ひいては発光素子1の耐久性を向上させることができる。
また、中間層7の平均厚さは、青色発光層8の平均厚さよりも厚いのが好ましい。これにより、中間層7の耐久性、ひいては発光素子1の耐久性を向上させることができる。
【0079】
(青色発光層)
青色発光層(第2の発光層)8は、青色(第2の色)に発光する青色発光材料を含んで構成されている。
このような青色発光材料としては、特に限定されず、各種青色蛍光材料、青色燐光材料を1種または2種以上組み合わせて用いることができる。
【0080】
青色蛍光材料としては、青色の蛍光を発するものであれば、特に限定されず、例えば、ジスチリル誘導体、フルオランテン誘導体、ピレン誘導体、ペリレンおよびペリレン誘導体、アントラセン誘導体、ベンゾオキサゾール誘導体、ベンゾチアゾール誘導体、ベンゾイミダゾール誘導体、クリセン誘導体、フェナントレン誘導体、ジスチリルベンゼン誘導体、テトラフェニルブタジエン、4,4’−ビス(9−エチル−3−カルバゾビニレン)−1,1’−ビフェニル(BCzVBi)、ポリ[(9.9−ジオクチルフルオレン−2,7−ジイル)−コ−(2,5−ジメトキシベンゼン−1,4−ジイル)]、ポリ[(9,9−ジヘキシルオキシフルオレン−2,7−ジイル)−オルト−コ−(2−メトキシ−5−{2−エトキシヘキシルオキシ}フェニレン−1,4−ジイル)]、ポリ[(9,9−ジオクチルフルオレン−2,7−ジイル)−コ−(エチルニルベンゼン)]等が挙げられ、これらのうち1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることもできる。
【0081】
青色燐光材料としては、青色の燐光を発するものであれば、特に限定されず、例えば、イリジウム、ルテニウム、白金、オスミウム、レニウム、パラジウム等の金属錯体が挙げられる。より具体的には、ビス[4,6−ジフルオロフェニルピリジネート−N,C’]−ピコリネート−イリジウム、トリス[2−(2,4−ジフルオロフェニル)ピリジネート−N,C’]イリジウム、ビス[2−(3,5−トリフルオロメチル)ピリジネート−N,C’]−ピコリネート−イリジウム、ビス(4,6−ジフルオロフェニルピリジネート−N,C’)イリジウム(アセチルアセトネート)が挙げられる。
また、青色発光層8の構成材料としては、赤色発光層6と同様に、前述したような青色発光材料と併用して、この青色発光材料をゲスト材料するホスト材料を用いることができる。
【0082】
(緑色発光層)
緑色発光層(第3の発光層)9は、緑色(第3の色)に発光する緑色発光材料を含んで構成されている。
このような緑色発光材料としては、特に限定されず、各種緑色蛍光材料、緑色燐光材料を1種または2種以上組み合わせて用いることができる。
【0083】
緑色蛍光材料としては、緑色の蛍光を発するものであれば特に限定されず、例えば、クマリン誘導体、キナクリドン誘導体、9,10−ビス[(9−エチル−3−カルバゾール)−ビニレニル]−アントラセン、ポリ(9,9−ジヘキシル−2,7−ビニレンフルオレニレン)、ポリ[(9,9−ジオクチルフルオレン−2,7−ジイル)−コ−(1,4−ジフェニレン−ビニレン−2−メトキシ−5−{2−エチルヘキシルオキシ}ベンゼン)]、ポリ[(9,9−ジオクチル−2,7−ジビニレンフルオレニレン)−オルト−コ−(2−メトキシ−5−(2−エトキシルヘキシルオキシ)−1,4−フェニレン)]等が挙げられ、これらのうち1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることもできる。
【0084】
緑色燐光材料としては、緑色の燐光を発するものであれば特に限定されず、例えば、例えば、イリジウム、ルテニウム、白金、オスミウム、レニウム、パラジウム等の金属錯体が挙げられる。中でも、これら金属錯体の配位子の内の少なくとも1つが、フェニルピリジン骨格、ビピリジル骨格、ポルフィリン骨格等を持つものが好ましい。より具体的には、ファク−トリス(2−フェニルピリジン)イリジウム(Ir(ppy)3)、ビス(2−フェニルピリジネート−N,C2’)イリジウム(アセチルアセトネート)、ファク−トリス[5−フルオロ−2−(5−トリフルオロメチル−2−ピリジン)フェニル−C,N]イリジウムが挙げられる。
また、緑色発光層9の構成材料としては、赤色発光層6と同様に、前述したような緑色発光材料と併用して、この緑色発光材料をゲスト材料するホスト材料を用いることができる。
【0085】
(電子輸送層)
電子輸送層10は、陰極12から電子注入層11を介して注入された電子を緑色発光層9に輸送する機能を有するものである。
電子輸送層10の構成材料(電子輸送材料)としては、例えば、トリス(8−キノリノラト)アルミニウム(Alq)等の8−キノリノールなしいその誘導体を配位子とする有機金属錯体などのキノリン誘導体、オキサジアゾール誘導体、ペリレン誘導体、ピリジン誘導体、ピリミジン誘導体、キノキサリン誘導体、ジフェニルキノン誘導体、ニトロ置換フルオレン誘導体等が挙げられ、これらのうちの1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
電子輸送層10の平均厚さは、特に限定されないが、0.1〜1000nm程度であるのが好ましく、0.5〜100nm程度であるのがより好ましく、1〜50nm程度であるのがさらに好ましい。
【0086】
(電子注入層)
電子注入層11は、陰極12からの電子注入効率を向上させる機能を有するものである。
この電子注入層11の構成材料(電子注入材料)としては、例えば、各種の無機絶縁材料、各種の無機半導体材料が挙げられる。
【0087】
このような無機絶縁材料としては、例えば、アルカリ金属カルコゲナイド(酸化物、硫化物、セレン化物、テルル化物)、アルカリ土類金属カルコゲナイド、アルカリ金属のハロゲン化物およびアルカリ土類金属のハロゲン化物等が挙げられ、これらのうちの1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。これらを主材料として電子注入層を構成することにより、電子注入性をより向上させることができる。特にアルカリ金属化合物(アルカリ金属カルコゲナイド、アルカリ金属のハロゲン化物等)は仕事関数が非常に小さく、これを用いて電子注入層11を構成することにより、発光素子1は、高い輝度が得られるものとなる。
【0088】
アルカリ金属カルコゲナイドとしては、例えば、LiO、LiO、NaS、NaSe、NaO等が挙げられる。
アルカリ土類金属カルコゲナイドとしては、例えば、CaO、BaO、SrO、BeO、BaS、MgO、CaSe等が挙げられる。
アルカリ金属のハロゲン化物としては、例えば、CsF、LiF、NaF、KF、LiCl、KCl、NaCl等が挙げられる。
アルカリ土類金属のハロゲン化物としては、例えば、CaF、BaF、SrF、MgF、BeF等が挙げられる。
【0089】
また、無機半導体材料としては、例えば、Li、Na、Ba、Ca、Sr、Yb、Al、Ga、In、Cd、Mg、Si、Ta、SbおよびZnのうちの少なくとも1つの元素を含む酸化物、窒化物または酸化窒化物等が挙げられ、これらのうちの1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
電子注入層11の平均厚さは、特に限定されないが、0.1〜1000nm程度であるのが好ましく、0.2〜100nm程度であるのがより好ましく、0.2〜50nm程度であるのがさらに好ましい。
【0090】
(封止部材)
封止部材13は、陽極3、積層体15、および陰極12を覆うように設けられ、これらを気密的に封止し、酸素や水分を遮断する機能を有する。封止部材13を設けることにより、発光素子1の信頼性の向上や、変質・劣化の防止(耐久性向上)等の効果が得られる。
【0091】
封止部材13の構成材料としては、例えば、Al、Au、Cr、Nb、Ta、Tiまたはこれらを含む合金、酸化シリコン、各種樹脂材料等を挙げることができる。なお、封止部材13の構成材料として導電性を有する材料を用いる場合には、短絡を防止するために、封止部材13と陽極3、積層体15、および陰極12との間には、必要に応じて、絶縁膜を設けるのが好ましい。
また、封止部材13は、平板状として、基板2と対向させ、これらの間を、例えば熱硬化性樹脂等のシール材で封止するようにしてもよい。
【0092】
以上のように構成された発光素子1によれば、中間層7を前述したような第1の中間層71および第2の中間層72で構成することで、第1の中間材料および第2の中間材料を適宜選択することにより、赤色発光層6と青色発光層8とをバランスよく発光させることができる。
特に、第1の中間材料と第2の中間材料との組み合わせとして、キャリア(電子および/または正孔)輸送性に優れた材料と、キャリア耐性に優れた材料との組み合わせを選択することにより、前述したようなバランスのよい赤色発光層6および青色発光層8の発光を実現しつつ、耐久性および電流効率を優れたものとすることができる。
【0093】
また、本実施形態では、陽極3側から陰極12側へ、赤色発光層6、中間層7、青色発光層8、緑色発光層9の順に設けることで、比較的簡単に、R(赤色)、G(緑色)、B(青色)をバランスよく発光させて、白色発光させることができる。
特に、このような積層順では、赤色発光層6と青色発光層8との間に中間層7が設けられているため、耐久性および電流効率を極めて優れたものとしつつ、赤色発光層6と青色発光層8と緑色発光層9とをバランスよく発光させて、白色発光させることができる。
【0094】
以上のような発光素子1は、例えば、次のようにして製造することができる。
[1] まず、基板2を用意し、この基板2上に陽極3を形成する。
陽極3は、例えば、プラズマCVD、熱CVDのような化学蒸着法(CVD)、真空蒸着等の乾式メッキ法、電解メッキ等の湿式メッキ法、溶射法、ゾル・ゲル法、MOD法、金属箔の接合等を用いて形成することができる。
【0095】
[2] 次に、陽極3上に正孔注入層4を形成する。
正孔注入層4は、例えば、CVD法や、真空蒸着、スパッタリング等の乾式メッキ法等を用いた気相プロセスにより形成することができる。
また、正孔注入層4は、例えば、正孔注入材料を溶媒に溶解または分散媒に分散してなる正孔注入層形成用材料を、陽極3上に供給した後、乾燥(脱溶媒または脱分散媒)することによっても形成することができる。
【0096】
正孔注入層形成用材料の供給方法としては、例えば、スピンコート法、ロールコート法、インクジェット印刷法等の各種塗布法を用いることもできる。かかる塗布法を用いることにより、正孔注入層4を比較的容易に形成することができる。
正孔注入層形成用材料の調製に用いる溶媒または分散媒としては、例えば、各種無機溶媒や、各種有機溶媒、または、これらを含む混合溶媒等が挙げられる。
【0097】
なお、乾燥は、例えば、大気圧または減圧雰囲気中での放置、加熱処理、不活性ガスの吹付け等により行うことができる。
また、本工程に先立って、陽極3の上面には、酸素プラズマ処理を施すようにしてもよい。これにより、陽極3の上面を親液性を付与すること、陽極3の上面に付着する有機物を除去(洗浄)すること、陽極3の上面付近の仕事関数を調整すること等を行うことができる。
ここで、酸素プラズマ処理の条件としては、例えば、プラズマパワー100〜800W程度、酸素ガス流量50〜100mL/min程度、被処理部材(陽極3)の搬送速度0.5〜10mm/sec程度、基板2の温度70〜90℃程度とするのが好ましい。
【0098】
[3] 次に、正孔注入層4上に正孔輸送層5を形成する。
正孔輸送層5は、例えば、CVD法や、真空蒸着、スパッタリング等の乾式メッキ法等を用いた気相プロセスにより形成することができる。
また、正孔輸送材料を溶媒に溶解または分散媒に分散してなる正孔輸送層形成用材料を、正孔注入層4上に供給した後、乾燥(脱溶媒または脱分散媒)することによっても形成することができる。
【0099】
[4] 次に、正孔輸送層5上に、赤色発光層6を形成する。
赤色発光層6は、例えば、CVD法や、真空蒸着、スパッタリング等の乾式メッキ法等を用いた気相プロセスにより形成することができる。
[5] 次に、赤色発光層6上に、第1の中間層71、第2の中間層72を順次形成することにより、中間層7を形成する。
第1の中間層71および第2の中間層72は、それぞれ、例えば、CVD法や、真空蒸着、スパッタリング等の乾式メッキ法等を用いた気相プロセスにより形成することができる。
【0100】
[6] 次に、中間層7上に、青色発光層8を形成する。
青色発光層8は、例えば、CVD法や、真空蒸着、スパッタリング等の乾式メッキ法等を用いた気相プロセスにより形成することができる。
[7] 次に、青色発光層8上に、緑色発光層9を形成する。
緑色発光層9は、例えば、CVD法や、真空蒸着、スパッタリング等の乾式メッキ法等を用いた気相プロセスにより形成することができる。
【0101】
[8] 次に、緑色発光層9上に電子輸送層10を形成する。
電子輸送層10は、例えば、CVD法や、真空蒸着、スパッタリング等の乾式メッキ法等を用いた気相プロセスにより形成することができる。
また、電子輸送層10は、例えば、電子輸送材料を溶媒に溶解または分散媒に分散してなる電子輸送層形成用材料を、緑色発光層9上に供給した後、乾燥(脱溶媒または脱分散媒)することによっても形成することができる。
【0102】
[9] 次に、電子輸送層10上に、電子注入層11を形成する。
電子注入層11の構成材料として無機材料を用いる場合、電子注入層11は、例えば、CVD法や、真空蒸着、スパッタリング等の乾式メッキ法等を用いた気相プロセス、無機微粒子インクの塗布および焼成等を用いて形成することができる。
[10] 次に、電子注入層11上に、陰極12を形成する。
陰極12は、例えば、真空蒸着法、スパッタリング法、金属箔の接合、金属微粒子インクの塗布および焼成等を用いて形成することができる。
以上のような工程を経て、発光素子1が得られる。
最後に、得られた発光素子1を覆うように封止部材13を被せ、基板2に接合する。
【0103】
<第2実施形態>
図3は、本発明の発光素子の第2実施形態の縦断面を模式的に示す図、図4は、図3に示す発光素子における各層のエネルギー準位を説明するための図である。なお、以下では、説明の都合上、図3中の上側を「上」、下側を「下」として説明を行う。
本実施形態にかかる発光素子1Aは、中間層が第1の中間層と第2の中間層との間に第3の中間層が介挿されて構成されている以外は、前述した第1実施形態の発光素子1と同様である。
【0104】
本実施形態にかかる発光素子1Aでは、陽極3と正孔注入層4と正孔輸送層5と赤色発光層(第1の発光層)6と中間層7Aと青色発光層(第2の発光層)8と緑色発光層(第3の発光層)9と電子輸送層10と電子注入層11と陰極12とがこの順に積層されてなるものである。
中間層7Aは、第1の中間層71と第2の中間層72との層間にこれらに接するように設けられた第3の中間層73を有する。
【0105】
第3の中間層73は、前述した第1の中間材料および第2の中間材料とは異なる第3の中間材料を含んで構成されている。これにより、第1の中間材料、第2の中間材料、および第3の中間材料を適宜選択することにより、赤色発光層6と青色発光層8とをバランスよく発光させることができる。そのため、発光素子1Aを構成する材料の選択の幅が拡がり、発光素子1Aの設計の自由度は高いものとなる。
【0106】
より具体的に説明すると、発光素子1Aにおいても、図4に示すように、発光素子1Aを構成する各層の構成材料の最高被占軌道(HOMO)および最低空軌道(LUMO)のそれぞれのエネルギー準位が、陽極3側から陰極12側へ向け順に高くなっている。このように発光素子1Aを構成する各層の構成材料の最高被占軌道(HOMO)および最低空軌道(LUMO)が設定されていることにより、発光素子1Aの駆動電圧を低減しつつ、各層でのキャリアの注入バランスを優れたものとすることができる。
【0107】
なお、図4では、図2と同様、上側から下側へ向け、エネルギー準位が高くなっている。したがって、図4では、上側から下側へ向け、エネルギーレベル(電位[eV])が小さくなっている。
中間層7Aの最高被占軌道(HOMO)および最低空軌道(LUMO)について、さらに詳細に説明すると、第3の中間材料の最高被占軌道のエネルギー準位は、第1の中間材料の最高被占軌道のエネルギー準位と第2の中間材料の最高被占軌道のエネルギー準位との間にある。これにより、第1の中間層71から第3の中間層73を介して第2の中間層72へ正孔を円滑に受け渡すことができる。
【0108】
また、第3の中間材料の最低空軌道のエネルギー準位は、第1の中間材料の最低空軌道のエネルギー準位と第2の中間材料の最低空軌道のエネルギー準位との間にある。これにより、第2の中間層72から第3の中間層73を介して第1の中間層71へ電子を円滑に受け渡すことができる。
このような第3の中間層73は、中間層7が赤色発光層6と青色発光層8との間で正孔および電子を受け渡す必要があることから、正孔輸送性および電子輸送性を有しているが、前述した第1の中間層71と第2の中間層72との中間的な正孔輸送性および電子輸送性などの特性を有するのが好ましい。これにより、赤色発光層6から中間層7を介して青色発光層8へ正孔を円滑に受け渡すことができる。
このような第3の中間層73の第3の中間材料は、前述した第1の中間材料や第2の中間材料と同様のものを単独または組み合わせて用いることができる。
【0109】
以上説明したような発光素子1や発光素子1Aは、例えば光源等として使用することができる。また、複数の発光素子1や発光素子1Aをマトリックス状に配置することにより、ディスプレイ装置(本発明の表示装置)を構成することができる。これにより、優れた信頼性を有する表示装置や電子機器を提供することができる。
なお、ディスプレイ装置の駆動方式としては、特に限定されず、アクティブマトリックス方式、パッシブマトリックス方式のいずれであってもよい。
【0110】
次に、本発明の表示装置を適用したディスプレイ装置の一例について説明する。
図5は、本発明の表示装置を適用したディスプレイ装置の実施形態を示す縦断面図である。
図5に示すディスプレイ装置100は、カラーフィルタ19と、このカラーフィルタ19上に設けられた複数の発光素子1と、複数の発光素子1上に設けられた回路部22とを有している。
【0111】
カラーフィルタ19は、基板20と、基板20上に設けられた隔壁211および複数の着色部212とで構成されている。
基板20は、例えば無色透明のガラス基板である。
隔壁211は、基板20上を複数の区画に仕切るものである。この隔壁(遮光部)211の色は、特に限定されないが、黒色であるのが好ましい。これにより、隣接する着色部212同士が混色してしまうのを確実に防止することができ、その結果、鮮明な画像を確実に表示することができる。
【0112】
各着色部212は、隔壁211により囲まれた各区画に設けられている。図3に示すように、複数の着色部212を赤色の着色部212Rと緑色の着色212Gと青色の着色部212Bとを組み合わせて構成することにより、発光素子1からの白色光を着色部212Rは赤色、着色部212Gは緑色、着色部212Bは青色に変換することができる。これにより、フルカラー画像を表示することができる。
【0113】
複数の発光素子1は、それぞれ、各着色部212に対応して設けられている。また、隣接する発光素子1同士は、第1隔壁部31および第2隔壁部32により区画されている。
回路部22は、例えば酸化シリコン層からなる保護層23と、各発光素子1に対応して保護層23上に形成された駆動用TFT(スイッチング素子)24と、第1層間絶縁層25と、第2層間絶縁層26とを有している。
駆動用TFT24は、シリコンからなる半導体層241と、半導体層241上に形成されたゲート絶縁層242と、ゲート絶縁層242上に形成されたゲート電極243と、ソース電極244と、ドレイン電極245とを有している。
【0114】
本実施形態では、各発光素子1の陽極3は、画素電極を構成し、各駆動用TFT24のドレイン電極245に配線27により電気的に接続されている。また、各発光素子1の陰極12は、共通電極とされている。
ディスプレイ装置100は、単色表示であってもよく、各発光素子1に用いる発光材料を選択することにより、カラー表示も可能である。
このようなディスプレイ装置100(本発明の表示装置)は、各種の電子機器に組み込むことができる。
【0115】
図6は、本発明の電子機器を適用したモバイル型(またはノート型)のパーソナルコンピュータの構成を示す斜視図である。
この図において、パーソナルコンピュータ1100は、キーボード1102を備えた本体部1104と、表示部を備える表示ユニット1106とにより構成され、表示ユニット1106は、本体部1104に対しヒンジ構造部を介して回動可能に支持されている。
このパーソナルコンピュータ1100において、表示ユニット1106が備える表示部が前述のディスプレイ装置100で構成されている。
【0116】
図7は、本発明の電子機器を適用した携帯電話機(PHSも含む)の構成を示す斜視図である。
この図において、携帯電話機1200は、複数の操作ボタン1202、受話口1204および送話口1206とともに、表示部を備えている。
携帯電話機1200において、この表示部が前述のディスプレイ装置100で構成されている。
【0117】
図8は、本発明の電子機器を適用したディジタルスチルカメラの構成を示す斜視図である。なお、この図には、外部機器との接続についても簡易的に示されている。
ここで、通常のカメラは、被写体の光像により銀塩写真フィルムを感光するのに対し、ディジタルスチルカメラ1300は、被写体の光像をCCD(Charge Coupled Device)などの撮像素子により光電変換して撮像信号(画像信号)を生成する。
【0118】
ディジタルスチルカメラ1300におけるケース(ボディー)1302の背面には、表示部が設けられ、CCDによる撮像信号に基づいて表示を行う構成になっており、被写体を電子画像として表示するファインダとして機能する。
ディジタルスチルカメラ1300において、この表示部が前述のディスプレイ装置100で構成されている。
ケースの内部には、回路基板1308が設置されている。この回路基板1308は、撮像信号を格納(記憶)し得るメモリが設置されている。
【0119】
また、ケース1302の正面側(図示の構成では裏面側)には、光学レンズ(撮像光学系)やCCDなどを含む受光ユニット1304が設けられている。
撮影者が表示部に表示された被写体像を確認し、シャッタボタン1306を押下すると、その時点におけるCCDの撮像信号が、回路基板1308のメモリに転送・格納される。
【0120】
また、このディジタルスチルカメラ1300においては、ケース1302の側面に、ビデオ信号出力端子1312と、データ通信用の入出力端子1314とが設けられている。そして、図示のように、ビデオ信号出力端子1312にはテレビモニタ1430が、デ−タ通信用の入出力端子1314にはパーソナルコンピュータ1440が、それぞれ必要に応じて接続される。さらに、所定の操作により、回路基板1308のメモリに格納された撮像信号が、テレビモニタ1430や、パーソナルコンピュータ1440に出力される構成になっている。
【0121】
なお、本発明の電子機器は、図6のパーソナルコンピュータ(モバイル型パーソナルコンピュータ)、図7の携帯電話機、図8のディジタルスチルカメラの他にも、例えば、テレビや、ビデオカメラ、ビューファインダ型、モニタ直視型のビデオテープレコーダ、ラップトップ型パーソナルコンピュータ、カーナビゲーション装置、ページャ、電子手帳(通信機能付も含む)、電子辞書、電卓、電子ゲーム機器、ワードプロセッサ、ワークステーション、テレビ電話、防犯用テレビモニタ、電子双眼鏡、POS端末、タッチパネルを備えた機器(例えば金融機関のキャッシュディスペンサー、自動券売機)、医療機器(例えば電子体温計、血圧計、血糖計、心電表示装置、超音波診断装置、内視鏡用表示装置)、魚群探知機、各種測定機器、計器類(例えば、車両、航空機、船舶の計器類)、フライトシュミレータ、その他各種モニタ類、プロジェクター等の投射型表示装置等に適用することができる。
【0122】
以上、本発明の発光素子、表示装置および電子機器を、図示の実施形態に基づいて説明したが、本発明はこれらに限定されるものでない。
例えば、前述した実施形態では、発光素子が3層の発光層を有するものについて説明したが、発光層が2層または4層以上であってもよい。また、発光層の発光色としては、前述した実施形態のR、G、Bに限定されない。また、発光層の積層順も、前述した実施形態のものに限定されず、陽極側から陰極側へ、RBGの順でも、BRGの順でも、BGRの順でも、GBRの順でも、GRBの順でもよい。また、発光層が2層または4層以上である場合でも、各発光層の発光スペクトルを適宜設定することで、白色発光させることができる。
また、中間層は、発光層同士の少なくとも1つの層間に設けられていればよく、2層以上の中間層を有していてもよい。
【実施例】
【0123】
次に、本発明の具体的実施例について説明する。
1.発光素子の製造
(実施例1)
<1> まず、平均厚さ0.5mmの透明なガラス基板を用意した。次に、この基板上に、スパッタ法により、平均厚さ100nmのITO電極(陽極)を形成した。
そして、基板をエタノールに浸漬し、超音波洗浄した後、酸素プラズマ処理を施した。
【0124】
<2> 次に、ITO電極上に、CuPcを真空蒸着法により蒸着させ、平均厚さ20nmの正孔注入層を形成した。
<3> 次に、正孔注入層上に、α−NPDを真空蒸着法により蒸着させ、平均厚さ40nmの正孔輸送層を形成した。
<4> 次に、正孔輸送層上に、赤色発光層の構成材料を真空蒸着法により蒸着させ、平均厚さ10nmの赤色発光層(第1の発光層)を形成した。赤色発光層の構成材料としては、赤色発光材料(ゲスト材料)としてRD001(出光興産社製)を用い、ホスト材料としてRD001(出光興産社製)を用いた。また、赤色発光層中の発光材料(ドーパント)の含有量(ドープ濃度)は、1.0wt%とした。
【0125】
<5> 次に、赤色発光層上に、第1の中間材料を真空蒸着法により蒸着させ、平均厚さ10nmの第1の中間層を形成した。次いで、第1の中間層上に、第2の中間材料を真空蒸着法により蒸着させ、平均厚さ10nmの第2の中間層を形成して、中間層を形成した。第1の中間材料としては、アミン系の正孔輸送材料として前述した化1で表されるα−NPDを用い、第2の中間材料としては、アセン系のバイポーラ材料として前述した化5で表されるTBADNを用いた。
【0126】
<6> 次に、中間層上に、青色発光層の構成材料を真空蒸着法により蒸着させ、平均厚さ15nmの青色発光層(第2の発光層)を形成した。青色発光層の構成材料としては、青色発光材料としてBD102(出光興産社製)を用い、ホスト材料としてBH215(出光興産社製)を用いた。また、青色発光層中の青色発光材料(ドーパント)の含有量(ドープ濃度)は、5.0wt%とした。
【0127】
<7> 次に、青色発光層上に、緑色発光層の構成材料を真空蒸着法により蒸着させ、平均厚さ25nmの緑色発光層(第3の発光層)を形成した。緑色発光層の構成材料としては、緑色発光材料(ゲスト材料)としてGD206(出光興産社製)を用い、ホスト材料としてBH215(出光興産社製)を用いた。また、緑色発光層中の緑色発光材料(ドーパント)の含有量(ドープ濃度)は、8.0wt%とした。
【0128】
<8> 次に、緑色発光層上に、トリス(8−キノリノラト)アルミニウム(Alq)を真空蒸着法により成膜し、平均厚さ20nmの電子輸送層を形成した。
<9> 次に、電子輸送層上に、フッ化リチウム(LiF)を真空蒸着法により成膜し、平均厚さ0.5nmの電子注入層を形成した。
<10> 次に、電子注入層上に、Alを真空蒸着法により成膜した。これにより、Alで構成される平均厚さ150nmの陰極を形成した。
<11> 次に、形成した各層を覆うように、ガラス製の保護カバー(封止部材)を被せ、エポキシ樹脂により固定、封止した。
【0129】
以上の工程により、図1に示すような発光素子を製造した。
ここで、第1の中間材料のHOMOのエネルギー準位は、赤色発光層の構成材料(ホスト材料)のHOMOのエネルギー準位よりも大きく、その差が0.2eVであった。
また、第2の中間材料のLUMOのエネルギー準位は、青色発光層の構成材料(ホスト材料)のLUMOのエネルギー準位よりも小さく、その差が0.2eVであった。
【0130】
(実施例2)
第1の中間層の厚さを5nmとした以外は、前述した実施例1と同様にして発光素子を製造した。
ここで、第1の中間材料のHOMOのエネルギー準位は、赤色発光層の構成材料(ホスト材料)のHOMOのエネルギー準位よりも大きく、その差が0.2eVであった。
また、第2の中間材料のLUMOのエネルギー準位は、青色発光層の構成材料(ホスト材料)のLUMOのエネルギー準位よりも小さく、その差が0.2eVであった。
【0131】
(実施例3)
第2の中間層の厚さを1nmとした以外は、前述した実施例1と同様にして発光素子を製造した。
ここで、第1の中間材料のHOMOのエネルギー準位は、赤色発光層の構成材料(ホスト材料)のHOMOのエネルギー準位よりも大きく、その差が0.2eVであった。
また、第2の中間材料のLUMOのエネルギー準位は、青色発光層の構成材料(ホスト材料)のLUMOのエネルギー準位よりも小さく、その差が0.2eVであった。
【0132】
(実施例4)
第2の中間層の厚さを5nmとした以外は、前述した実施例1と同様にして発光素子を製造した。
ここで、第1の中間材料のHOMOのエネルギー準位は、赤色発光層の構成材料(ホスト材料)のHOMOのエネルギー準位よりも大きく、その差が0.2eVであった。
【0133】
また、第2の中間材料のLUMOのエネルギー準位は、青色発光層の構成材料(ホスト材料)のLUMOのエネルギー準位よりも小さく、その差が0.2eVであった。
【0134】
(実施例5)
第1の中間材料として前述した化3で表されるTPDを用いた以外は、前述した実施例1と同様にして発光素子を製造した。
ここで、第1の中間材料のHOMOのエネルギー準位は、赤色発光層の構成材料(ホスト材料)のHOMOのエネルギー準位よりも大きく、その差が0.3eVであった。
また、第2の中間材料のLUMOのエネルギー準位は、青色発光層の構成材料(ホスト材料)のLUMOのエネルギー準位よりも小さく、その差が0.2eVであった。
【0135】
(実施例6)
第2の中間材料として前述した化4で表わされるADNを用いた以外は、前述した実施例1と同様にして発光素子を製造した。
ここで、第1の中間材料のHOMOのエネルギー準位は、赤色発光層の構成材料(ホスト材料)のHOMOのエネルギー準位よりも大きく、その差が0.2eVであった。
また、第2の中間材料のLUMOのエネルギー準位は、青色発光層の構成材料(ホスト材料)のLUMOのエネルギー準位よりも小さく、その差が0.3eVであった。
【0136】
(実施例7)
工程<5>において、第1の中間層の形成と第2の中間層の形成との間に第3の中間層の形成を行うとともに、第2の中間材料として前述した化4で表わされるADN、第3の中間材料として前述した化5で表わされるTBADNを用いた以外は、前述した実施例1と同様にして発光素子を製造した。これにより、図3に示すような発光素子を製造した。
【0137】
ここで、第3の中間層の形成は、第1の中間層上に、第3の中間材料を真空蒸着法により蒸着させることによりおこなった。また、第3の中間層の平均厚さは10nmであった。
また、第1の中間材料のHOMOのエネルギー準位は、赤色発光層の構成材料(ホスト材料)のHOMOのエネルギー準位よりも大きく、その差が0.2eVであった。
また、第2の中間材料のLUMOのエネルギー準位は、青色発光層の構成材料(ホスト材料)のLUMOのエネルギー準位よりも小さく、その差が0.2eVであった。
【0138】
(実施例8)
第2の中間層の厚さを30nmとした以外は、前述した実施例7と同様にして発光素子を製造した。
ここで、第1の中間材料のHOMOのエネルギー準位は、赤色発光層の構成材料(ホスト材料)のHOMOのエネルギー準位よりも大きく、その差が0.2eVであった。
また、第2の中間材料のLUMOのエネルギー準位は、青色発光層の構成材料(ホスト材料)のLUMOのエネルギー準位よりも小さく、その差が0.2eVであった。
【0139】
(比較例1)
第2の中間層を省略した以外は、前述した実施例1と同様にして発光素子を製造した。
ここで、第1の中間材料のHOMOのエネルギー準位は、赤色発光層の構成材料(ホスト材料)のHOMOのエネルギー準位よりも大きく、その差が0.3eVであった。
また、第2の中間材料のLUMOのエネルギー準位は、青色発光層の構成材料(ホスト材料)のLUMOのエネルギー準位よりも小さく、その差が0.3eVであった。
【0140】
(比較例2)
第2の中間層を省略した以外は、前述した実施例1と同様にして発光素子を製造した。
ここで、第1の中間材料のHOMOのエネルギー準位は、赤色発光層の構成材料(ホスト材料)のHOMOのエネルギー準位よりも大きく、その差が0.2eVであった。
また、第2の中間材料のLUMOのエネルギー準位は、青色発光層の構成材料(ホスト材料)のLUMOのエネルギー準位よりも小さく、その差が0.3eVであった。
【0141】
2.評価
2−1.発光効率の評価
各実施例および各比較例について、直流電源を用いて発光素子に10mA/cmの定電流を流したときの電圧値(駆動電圧)および電流効率を測定した。なお、各測定では、各実施例および各比較例において、電圧値および電流効率をそれぞれ5個の発光素子について測定した。
その結果を表1に示す。
【0142】
【表1】

【0143】
2−2.発光寿命の評価
各実施例および各比較例について、直流電源を用いて発光素子に100mA/cmの定電流を流しつづけ、その間、輝度計を用いて輝度を測定し、その輝度が初期の輝度の80%となる時間(LT80)を測定した。なお、各実施例および各比較例において、半減期の値をそれぞれ5個の発光素子について測定した。その結果を表1に示す。
【0144】
2−3.色度の評価
各実施例および各比較例について、直流電源を用いて発光素子に1mA/cmの定電流を流し、色度計を用いて光の色度(x,y)を求めた。また、各実施例および各比較例について、直流電源を用いて発光素子に50mA/cmの定電流を流し、色度計を用いて光の色度(x,y)を求めた。
表1から明らかなように、各実施例の発光素子は、比較例の発光素子に比し、色度バランスおよび発光効率を同等またはそれ以上なものとしつつ、耐久性に優れていることがわかる。
【図面の簡単な説明】
【0145】
【図1】本発明の発光素子の第1実施形態の縦断面を模式的に示す図である。
【図2】図1に示す発光素子における各層のエネルギー準位を説明するための図である。
【図3】本発明の発光素子の第2実施形態の縦断面を模式的に示す図である。
【図4】図3に示す発光素子における各層のエネルギー準位を説明するための図である。
【図5】本発明の表示装置を適用したディスプレイ装置の実施形態を示す縦断面図である。
【図6】本発明の電子機器を適用したモバイル型(またはノート型)のパーソナルコンピュータの構成を示す斜視図である。
【図7】本発明の電子機器を適用した携帯電話機(PHSも含む)の構成を示す斜視図である。
【図8】本発明の電子機器を適用したディジタルスチルカメラの構成を示す斜視図である。
【符号の説明】
【0146】
1、1A……発光素子 2……基板 3……陽極 4……正孔注入層 5……正孔輸送層 6……赤色発光層 7、7A……中間層 71……第1の中間層 72……第2の中間層 73……第3の中間層 8……青色発光層 9……緑色発光層 10……電子輸送層 11……電子注入層 12……陰極 13……封止部材 15……積層体 19……カラーフィルター 100……ディスプレイ装置 20……基板 211……隔壁 212、212R、212G、212B……着色部 22……回路部 23……保護層 24……駆動用TFT 241……半導体層 242……ゲート絶縁層 243……ゲート電極 244……ソース電極 245……ドレイン電極 25……第1層間絶縁層 26……第2層間絶縁層 27……配線 31……第1隔壁部 32……第2隔壁部 1100……パーソナルコンピュータ 1102……キーボード 1104……本体部 1106……表示ユニット 1200……携帯電話機 1202……操作ボタン 1204……受話口 1206……送話口 1300……ディジタルスチルカメラ 1302……ケース(ボディー) 1304……受光ユニット 1306……シャッタボタン 1308……回路基板 1312……ビデオ信号出力端子 1314……データ通信用の入出力端子 1430……テレビモニタ 1440……パーソナルコンピュータ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
陰極と、
陽極と、
前記陰極と前記陽極との間に設けられ、第1の色に発光する第1の発光層と、
前記第1の発光層と前記陰極との間に設けられ、前記第1の色とは異なる第2の色に発光する第2の発光層と、
前記第1の発光層と前記第2の発光層との層間にこれらに接するように設けられ、前記第1の発光層と前記第2の発光層との間の励起子のエネルギー移動を阻止する機能を有する中間層とを有し、
前記中間層は、前記第1の発光層に接するとともに、第1の中間材料を主材料として構成された第1の中間層と、前記第2の発光層に接するとともに、前記第1の中間材料とは異なる第2の中間材料を主材料として構成された第2の中間層とを含んで構成されていることを特徴とする発光素子。
【請求項2】
前記第1の中間材料または前記第2の中間材料における最高被占軌道のエネルギー準位は、前記第1の発光層の構成材料の最高被占軌道のエネルギー準位よりも高い請求項1に記載の発光素子。
【請求項3】
前記第1の中間材料および前記第2の中間材料におけるそれぞれの最高被占軌道のエネルギー準位は、前記第1の発光層における最高被占軌道のエネルギー準位と前記第2の発光層における最高被占軌道のエネルギー順位との間にある請求項2に記載の発光素子。
【請求項4】
前記第1の中間材料における最高被占軌道のエネルギー準位が前記第1の発光層の構成材料の最高被占軌道のエネルギー準位よりも高く、かつ、前記第1の中間材料の最高被占軌道のエネルギー準位と、前記第1の発光層の構成材料の最高被占軌道のエネルギー準位との差が、0.1〜0.4eVである請求項2または3に記載の発光素子。
【請求項5】
前記第1の中間材料または前記第2の中間材料における最低空軌道のエネルギー準位は、前記第2の発光層の構成材料の最低空軌道のエネルギー順位よりも低い請求項1ないし4のいずれかに記載の発光素子。
【請求項6】
前記第1の中間材料および前記第2の中間材料におけるそれぞれの最低空軌道のエネルギー準位は、前記第1の発光層における最低空軌道のエネルギー準位と前記第2の発光層における最低空軌道のエネルギー順位との間にある請求項5に記載の発光素子。
【請求項7】
前記第2の中間材料における最低空軌道のエネルギー準位が前記第2の発光層の構成材料の最低空軌道のエネルギー順位よりも低く、かつ、前記第2の中間材料の最低空軌道のエネルギー準位と、前記第2の発光層の構成材料の最低空軌道のエネルギー準位との差が、0.1〜0.4eVである請求項5または6に記載の発光素子。
【請求項8】
前記第1の中間材料における最低空軌道と最高被占軌道との間のエネルギーギャップは、前記第1の発光層における最低空軌道と最高被占軌道との間のエネルギーギャップよりも大きい請求項1ないし7のいずれかに記載の発光素子。
【請求項9】
前記第2の中間材料における最低空軌道と最高被占軌道との間のエネルギーギャップは、前記第2の発光層における最低空軌道と最高被占軌道との間のエネルギーギャップよりも大きい請求項1ないし8のいずれかに記載の発光素子。
【請求項10】
前記第1の中間層は、前記第2の中間層よりも高い正孔輸送性を有する請求項1ないし9のいずれかに記載の発光素子。
【請求項11】
前記第1の中間材料は、アミン系の正孔輸送材料を含んでいる請求項10に記載の発光素子。
【請求項12】
前記第2の中間層は、前記第1の中間材料よりも高い電子輸送性を有する請求項1ないし11のいずれかに記載の発光素子。
【請求項13】
前記第2の中間材料は、アセン系のバイポーラ材料を含んでいる請求項12に記載の発光素子。
【請求項14】
前記中間層は、前記第1の中間層と前記第2の中間層との層間にこれらに接するように設けられ、前記第1の中間材料および前記第2の中間材料とは異なる第3の中間材料を含んで構成された第3の中間層を含む請求項1ないし13のいずれかに記載の発光素子。
【請求項15】
前記第3の中間材料の最高被占軌道のエネルギー準位は、前記第1の中間材料の最高被占軌道のエネルギー準位と前記第2の中間材料の最高被占軌道のエネルギー準位との間にある請求項14に記載の発光素子。
【請求項16】
前記第3の中間材料の最低空軌道のエネルギー準位は、前記第1の中間材料の最低空軌道のエネルギー準位と前記第2の中間材料の最低空軌道のエネルギー準位との間にある請求項14または15に記載の発光素子。
【請求項17】
前記第1の発光層と前記陽極との間、または、前記第2の発光層と前記陰極との間に設けられ、前記第1の色および前記第2の色とは異なる第3の色に発光する第3の発光層を有する請求項1ないし16のいずれかに記載の発光素子。
【請求項18】
前記第3の発光層は、前記第2の発光層と前記陰極との間に設けられており、前記第1の発光層は、前記第1の色として赤色に発光する赤色発光層であり、前記第2の発光層は、前記第2の色として青色に発光する青色発光層であり、前記第3の発光層は、前記第3の色として緑色に発光する緑色発光層である請求項17に記載の発光素子。
【請求項19】
前記中間層は、その平均厚さが100nm以下である請求項1ないし18のいずれかに記載の発光素子。
【請求項20】
前記第1の中間層および前記第2の中間層は、それぞれの平均厚さが1〜50nm以下である請求項19に記載の発光素子。
【請求項21】
請求項20に記載の発光素子を備えることを特徴とする表示装置。
【請求項22】
請求項21に記載の表示装置を備えることを特徴とする電子機器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2009−93810(P2009−93810A)
【公開日】平成21年4月30日(2009.4.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−260408(P2007−260408)
【出願日】平成19年10月3日(2007.10.3)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】