説明

発光素子、表示装置および電子機器

【課題】高温下での安定性および耐久性(寿命)を優れたものとしつつ、駆動電圧を低減することができる発光素子、この発光素子を備える表示装置および電子機器を提供すること。
【解決手段】発光素子1は、陽極3と、陰極9と、陽極3と陰極9との間に設けられ、発光材料を含んで構成された発光層6と、陽極3と発光層6との間に設けられ正孔を輸送する機能を有する正孔輸送材料で構成された正孔輸送層5と、陽極3と正孔輸送層5との間に正孔輸送層5に接合して設けられ正孔および電子を発生させるキャリア発生層4とを有し、キャリア発生層4は、正孔輸送層5と接触することにより正孔および電子を発生させる機能を有するキャリア発生材料を主材料として含み、電気化学的に不活性な不活性材料が添加されて構成されていることを有することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発光素子、表示装置および電子機器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
有機エレクトロルミネッセンス素子(いわゆる有機EL素子)は、陽極と陰極との間に少なくとも1層の発光性有機層を介挿した構造を有する発光素子である。このような発光素子では、陰極と陽極との間に電界を印加することにより、発光層に陰極側から電子が注入されるとともに陽極側から正孔が注入され、発光層中で電子と正孔が再結合することにより励起子が生成し、この励起子が基底状態に戻る際に、そのエネルギー分が光として放出される。
【0003】
このような発光素子としては、例えば、陰極と陽極との間に、陰極側から陽極側へ、正孔注入層、電荷発生層(キャリア発生層)、正孔輸送層、発光層および電子輸送層をこの順で積層したものが知られている(例えば、特許文献1参照)。かかる発光素子では、電荷発生層が正孔輸送層および正孔注入層との接触によりキャリア(正孔および電子)を発生させる。そのため、発光素子の発光効率を高め、発光素子の駆動電圧を低減することができる。
しかしながら、キャリア発生層を構成する材料は、一般に、通電時や、加熱時において結晶化しやすいものが多い。このため、特許文献1にかかる発光素子では、比較的高温の環境下において、キャリア発生層を構成する材料が結晶化して、駆動電圧が高くなりやすく、発光寿命が短い欠点があった。
【0004】
【特許文献1】特開2007−173779号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、高温下での安定性および耐久性(寿命)を優れたものとしつつ、駆動電圧を低減することができる発光素子、この発光素子を備える表示装置および電子機器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
このような目的は、下記の本発明により達成される。
本発明の発光素子は、陽極と、
陰極と、
前記陽極と前記陰極との間に設けられ、発光材料を含んで構成された発光層と、
前記陽極と前記発光層との間に設けられ、正孔を輸送する機能を有する正孔輸送材料で構成された正孔輸送層と、
前記陽極と前記正孔輸送層との間に前記正孔輸送層に接合して設けられ、正孔および電子を発生させるキャリア発生層とを有し、
前記キャリア発生層は、前記正孔輸送層と接触することにより前記正孔および前記電子を発生させる機能を有するキャリア発生材料を主材料として含み、電気化学的に不活性な不活性材料が添加されて構成されていることを有することを特徴とする。
これにより、高温下での安定性および耐久性(寿命)を優れたものとしつつ、駆動電圧を低減することができる発光素子を提供することができる。
【0007】
本発明の発光素子では、前記不活性材料の最高占有分子軌道のエネルギー準位と、前記キャリア発生材料の最低非占有分子軌道のエネルギー準位との差の絶対値は、0.20eV以上であることが好ましい。
これにより、不活性材料は、キャリア発生材料に電子を渡しにくいものとなり、不活性材料とキャリア発生材料との間での電気的な相互作用がより少ないものとなる。
【0008】
本発明の発光素子では、前記正孔輸送材料の最高占有分子軌道のエネルギー準位と、前記キャリア発生材料の最低非占有分子軌道のエネルギー準位との差の絶対値は、0.15eV以下であることが好ましい。
これにより、正孔輸送材料の最高占有分子軌道にある電子が、容易にキャリア発生材料の最低非占有分子軌道に移動することができ、キャリア発生層と正孔輸送層との境界付近に十分に正孔および電子が発生する。
【0009】
本発明の発光素子では、前記不活性材料は、前記キャリア発生層において、非晶質の状態で存在しているものであることが好ましい。
これにより、高温環境下において、キャリア発生材料が不活性材料の結晶面に沿って規則正しく配列することが防止され、キャリア発生材料がより結晶化しにくいものとなる。
本発明の発光素子では、前記不活性材料のガラス転移点は、85℃以上であることが好ましい。
これにより、高温環境下においても不活性材料は、変質することが防止され、この結果、キャリア発生材料が結晶化することもより確実に防止される。
【0010】
本発明の発光素子では、前記不活性材料は、芳香環を含む炭化水素であることが好ましい。
このような芳香環を含む炭化水素は、電子の授受を行いにくく、また、高温下において自身が変質しにくい物質である。このため、不活性物質として好適に用いられる。
本発明の発光素子では、前記不活性材料は、フルオレン構造および/またはビフェニル構造を有するものであることが好ましい。
このような構造を有する不活性材料は、化合物自身が励起されにくい材料であると共に、他の化合物との電子の授受を行いにくいものである。一方で、芳香環を多量に有することから、上述したようなキャリア発生材料との親和性が良好であり、キャリア発生材料の結晶化を好適に防止することができる。
【0011】
本発明の発光素子では、前記不活性材料は、下記化1ないし化4に示される化合物のうち少なくとも1種以上を含んで構成されることが好ましい。
【化1】

【化2】

【化3】

【化4】

このような構造を有する不活性材料は、化合物自身が励起されにくい材料であると共に、他の化合物との電子の授受を行いにくいものである。一方で、芳香環を多量に有することから、上述したようなキャリア発生材料との親和性が良好であり、キャリア発生材料の結晶化を好適に防止することができる。
【0012】
本発明の発光素子では、前記キャリア発生材料は、ヘキサアザトリフェニレン誘導体であることが好ましい。
このような化合物は、キャリア発生材料としての機能に優れており、正孔輸送層から十分に電子を引き抜くことができる。
本発明の発光素子では、前記キャリア発生材料は、下記化5に示される化合物であることが好ましい。
【化5】

このように電子吸引性の高いシアノ基を複数有することにより、化5に示す化合物は、正孔輸送材料からより効率よく電子を引き抜くことができ、キャリア(電子および正孔)を十分に発生させることができる。
【0013】
本発明の発光素子では、前記正孔輸送層は、ベンジジン構造を有する化合物で構成されていることが好ましい。
これにより、正孔輸送層とキャリア発生層との境界付近で十分な電子および正孔を発生させることができるとともに、正孔を発光層に効率よく輸送することができる。
【0014】
本発明の発光素子では、前記キャリア発生層中における前記キャリア発生材料の含有量をA[wt%]、前記不活性材料の含有量をB[wt%]としたとき、5≦B/(A+B)≦30であることが好ましい。
これにより、高温環境下におけるキャリア発生材料の結晶化をより確実に防止しつつ、キャリア発生層と正孔輸送層との間で十分な量のキャリアを発生させることができる。
【0015】
本発明の表示装置は、本発明の発光素子を備えることを特徴とする。
これにより、高品位な画像を長期にわたり表示することができる表示装置を提供することができる。
本発明の電子機器は、本発明の表示装置を備えることを特徴とする。
これにより、高品位な画像を長期にわたり表示することができる電子機器を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、本発明の発光素子、表示装置および電子機器を添付図面に示す好適な実施形態について説明する。
図1は、本発明の実施形態にかかる発光素子の縦断面を模式的に示す図である。なお、以下では、説明の都合上、図1中の上側を「上」、下側を「下」として説明を行う。
このような発光素子(エレクトロルミネッセンス素子)1は、陽極3とキャリア発生層4と正孔輸送層5と発光層6と電子輸送層7と電子注入層8と陰極9とがこの順に積層されてなるものである。
【0017】
言い換えすれば、発光素子1は、キャリア発生層4と正孔輸送層5と発光層6と電子輸送層7と電子注入層8とがこの順に積層で積層された積層体15が2つの電極間(陽極3と陰極9との間)に介挿されて構成されている。
そして、発光素子1は、その全体が基板2上に設けられるとともに、封止部材10で封止されている。
【0018】
このような発光素子1にあっては、発光層6に対し、陰極9側から電子が供給(注入)されるとともに、陽極3側から正孔が供給(注入)される。そして、各発光層では、正孔と電子とが再結合し、この再結合に際して放出されたエネルギーによりエキシトン(励起子)が生成し、エキシトンが基底状態に戻る際にエネルギー(蛍光やりん光)を放出(発光)する。
【0019】
基板2は、陽極3を支持するものである。本実施形態の発光素子1は、基板2側から光を取り出す構成(ボトムエミッション型)であるため、基板2および陽極3は、それぞれ、実質的に透明(無色透明、着色透明または半透明)とされている。
基板2の構成材料としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリプロピレン、シクロオレフィンポリマー、ポリアミド、ポリエーテルサルフォン、ポリメチルメタクリレート、ポリカーボネート、ポリアリレートのような樹脂材料や、石英ガラス、ソーダガラスのようなガラス材料等が挙げられ、これらのうちの1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0020】
このような基板2の平均厚さは、特に限定されないが、0.1〜30mm程度であるのが好ましく、0.1〜10mm程度であるのがより好ましい。
なお、発光素子1が基板2と反対側から光を取り出す構成(トップエミッション型)の場合、基板2には、透明基板および不透明基板のいずれも用いることができる。
不透明基板としては、例えば、アルミナのようなセラミックス材料で構成された基板、ステンレス鋼のような金属基板の表面に酸化膜(絶縁膜)を形成したもの、樹脂材料で構成された基板等が挙げられる。
以下、発光素子1を構成する各部を順次説明する。
【0021】
(陽極)
陽極3は、後述するキャリア発生層4に正孔を注入する電極である。この陽極3の構成材料としては、仕事関数が大きく、導電性に優れる材料を用いるのが好ましい。
陽極3の構成材料としては、例えば、ITO(Indium Tin Oxide)、IZO(Indium Zinc Oxide)、In、SnO、Sb含有SnO、Al含有ZnO等の酸化物、Au、Pt、Ag、Cuまたはこれらを含む合金等が挙げられ、これらのうちの1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
このような陽極3の平均厚さは、特に限定されないが、10〜200nm程度であるのが好ましく、50〜150nm程度であるのがより好ましい。
【0022】
(キャリア発生層)
キャリア発生層4は、後述する正孔輸送層5との接触によりキャリア(正孔および電子)を発生させる機能を有するものである。
このようなキャリア発生層4は、キャリア発生材料を主材料として含み、電気化学的に不活性な不活性材料が添加されて構成されている。
【0023】
キャリア発生材料は、正孔輸送層5と接触することにより正孔および電子を発生させる機能を有する。言い替えると、キャリア発生材料は、高い電子吸引性を有する化合物で構成されており、正孔輸送層5と接触することにより、正孔輸送層5を構成する正孔輸送材料から電子を引き抜く機能を有する。この結果、キャリア発生層4と正孔輸送層5とが接触すると、印加されていなくても、キャリア発生層4と正孔輸送層5との界面付近において、キャリア発生層4側には電子が発生し、正孔輸送層5側には正孔が発生する。このような状態で、陽極3と陰極9との間に駆動電圧を印加すると、キャリア発生層4と正孔輸送層5との界面付近で発生した正孔および電子は、その駆動電圧により輸送されて発光層6の発光に寄与する。この結果、駆動電圧が比較的低い場合であっても、発光素子1は、十分な発光輝度を有するものとなる。
【0024】
また、このようなキャリア発生材料は、通常、キャリア発生層4中において非晶質の状態で存在している。
このようなキャリア発生材料としては、前述したような機能を発揮し得るものであれば、特に限定されないが、例えば、下記化6で示すようなヘキサアザトリフェニレン誘導体を用いるのが好ましい。
【0025】
【化6】

【0026】
上記化6中、Rは、シアノ基(−CN)、スルホン基(−SOR’)、スルホキシド基(−SOR’)、スルホンアミド基(−SONR’)、スルホネート基(−SOR’)、ニトロ基(−NO)、またはトリフルオロメタン(−CF)基であり、R’は、アミン基、アミド基、エーテル基、もしくはエステル基で置換されているかまたは非置換である炭素数1〜60のアルキル基、アリール基、または複素環基である。
【0027】
上記化6に示すような化合物は、キャリア発生材料としての機能に優れており、正孔輸送層5から十分に電子を引き抜くことができる。
特に、キャリア発生材料としては、前述したような化6に示す化合物において、Rはシアノ基であるのが好ましい。すなわち、キャリア発生材料としては、下記化7に示すようなヘキサシアノヘキサアザトリフェニレンを用いるのが好ましい。このように電子吸引性の高いシアノ基を複数有することにより、化7に示す化合物は、正孔輸送材料からより効率よく電子を引き抜くことができ、キャリア(電子および正孔)を十分に発生させることができる。
【0028】
【化7】

【0029】
正孔輸送材料の最高占有分子軌道(HOMO)のエネルギー準位と、キャリア発生材料の最低非占有分子軌道(LUMO)のエネルギー準位との差の絶対値は、0.15eV以下であることが好ましく、0.10eV以下であることがより好ましい。これにより、正孔輸送材料の最高占有分子軌道にある電子が、容易にキャリア発生材料の最低非占有分子軌道に移動することができる。言いかえると、キャリア発生材料は、正孔輸送材料からより容易に電子を引き抜くことができる。
【0030】
なお、上記化7に示すようなヘキサシアノヘキサアザトリフェニレンは、その最高被占軌道のエネルギー準位が−9.8〜−9.6eV、すなわちその絶対値が9.6〜9.8eVである。また、ヘキサシアノヘキサアザトリフェニレンの最低空軌道のエネルギー準位は、−5.5eV程度、すなわちその絶対値が5.5eV程度である。このようなエネルギー準位を有する化合物は、後述するような正孔輸送材料に対し、前述したようなエネルギー準位の関係を有するものとすることができる。
【0031】
また、キャリア発生層4には、上述したように、電気的に不活性な不活性材料が添加されている。キャリア発生層4は、このような不活性材料を含むことにより、キャリア発生層4と正孔輸送層5との間でのキャリアの発生を阻害することなく、高温環境下におけるキャリア発生材料の結晶化を防止することができる。
すなわち、高温環境下において、不活性材料が存在することにより、キャリア発生材料の分子(原子)が規則正しく配列することが阻害され、この結果、キャリア発生材料の結晶化が防止される。この結果、本発明の発光素子1は、高温下での安定性および耐久性(寿命)が優れたものとなる。
【0032】
一方で、不活性材料は、上述したように電気的に不活性であるため、キャリア発生材料と電気的な相互作用を及ぼすことがなく、キャリア発生材料と不活性材料との間でキャリアが発生することがない。
以上より、キャリア発生材料と不活性材料とを同時に用いることにより、本発明の発光素子1は、高温下での安定性および耐久性(寿命)を優れたものとしつつ、駆動電圧を低減することができる。
【0033】
なお、本明細書中において、「電気的に不活性」な状態とは、当該物質が、電荷を帯びない状態をいう。すなわち、「電気的に不活性」な物質は、電子を放出しにくく、また、電子を受け取りにくい物質であり、他の物質に対し、電気的な相互作用を及ぼしにくい物質である。
このような不活性材料としては、電気的に不活性であれば特に限定されないが、例えば、フルオレン構造、ビフェニル構造、ナフタレン構造を有する炭化水素等の芳香環を含む炭化水素が挙げられ、これらのうち、1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。このような芳香環を含む炭化水素は、電子の授受を行いにくく、また、高温下において自身が変質しにくい物質である。このため、不活性物質として好適に用いられる。
【0034】
このなかでも、不活性材料は、フルオレン構造、ビフェニル構造のうちいずれか1つ以上の構造を有することが好ましい。このような構造を有する不活性材料は、化合物自身が励起されにくい材料であると共に、他の化合物との電子の授受を行いにくいものである。一方で、芳香環を多量に有することから、上述したようなキャリア発生材料との親和性が良好であり、キャリア発生材料の結晶化を好適に防止することができる。
また、不活性材料は、特に上述した中でも、下記化8ないし化11に示される化合物のうち少なくとも1種以上を含んで構成されることが好ましい。これらの化合物を不活性材料として用いることにより、上述したような効果をより顕著に得ることができる。
【0035】
【化8】

【0036】
【化9】

【0037】
【化10】

【0038】
【化11】

【0039】
また、不活性材料の最高占有分子軌道(HOMO)のエネルギー準位と、キャリア発生材料の最低非占有分子軌道(LUMO)のエネルギー準位との差の絶対値は、0.20eV以上であることが好ましく、0.30eV以上であることがより好ましい。これにより、不活性材料の最高占有分子軌道にある電子が、キャリア発生材料の最低非占有分子軌道に移動することがより確実に防止される。言いかえると、不活性材料は、キャリア発生材料に電子を渡しにくいものとなり、不活性材料とキャリア発生材料との間での電気的な相互作用がより少ないものとなる。
【0040】
不活性材料は、キャリア発生層において、非晶質の状態で存在していることが好ましい。これにより、高温環境下において、キャリア発生材料が不活性材料の結晶面に沿って規則正しく配列することが防止され、キャリア発生材料がより結晶化しにくいものとなる。なお、後述するように、真空蒸着法によって不活性材料およびキャリア発生材料を共蒸着してキャリア発生層を成膜することにより、成膜後のキャリア発生層中における不活性材料およびキャリア発生材料は非晶質の状態となる。
【0041】
また、不活性材料のガラス転移点は、85℃以上であることが好ましく、90℃以上であることがより好ましい。これにより、高温環境下においても不活性材料は、変質することが防止され、この結果、キャリア発生材料が結晶化することもより確実に防止される。特に、キャリア発生層4中で不活性材料が非晶質である場合において、このような効果は顕著なものとなる。
【0042】
また、不活性材料は、キャリア発生層4中において、均一に分布(分散)していることが好ましい。これにより、キャリア発生材料の結晶化をより確実に防止することができる。
また、キャリア発生層4中におけるキャリア発生材料の含有量をA[wt%]、不活性材料の含有量をB[wt%]としたとき、5≦B/(A+B)≦30であることが好ましく、5≦B/(A+B)≦20であることがより好ましい。これにより、高温環境下におけるキャリア発生材料の結晶化をより確実に防止しつつ、キャリア発生層4と正孔輸送層5との間で十分な量のキャリアを発生させることができる。
【0043】
(正孔輸送層)
正孔輸送層5は、陽極3からキャリア発生層4を介して注入された正孔を発光層6まで輸送する機能を有するものである。
この正孔輸送層5の構成材料には、各種p型の高分子材料や、各種p型の低分子材料を単独または組み合わせて用いることができ、例えば、下記化12に示す化合物、N,N’−ジ(1−ナフチル)−N,N’−ジフェニル−1,1’−ジフェニル−4,4’−ジアミン(NPD)、N,N’−ジフェニル−N,N’−ビス(3−メチルフェニル)−1,1’−ジフェニル−4,4’−ジアミン(TPD)等のテトラアリールベンジジン誘導体、テトラアリールジアミノフルオレン化合物またはその誘導体(アミン系化合物)等が挙げられ、これらのうちの1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0044】
【化12】

【0045】
上述した中でも、正孔輸送材料は、ベンジジン構造を有するものであることが好ましく、テトラアリールベンジジンまたはその誘導体であることがより好ましい。これにより、正孔輸送層5とキャリア発生層4との境界付近で十分な電子および正孔を発生させることができるとともに、正孔を発光層6に効率よく輸送することができる。特に、正孔輸送材料が化12で示す化合物である場合、このような効果はより顕著なものとなる。
このような正孔輸送層5の平均厚さは、特に限定されないが、10〜150nm程度であるのが好ましく、10〜100nm程度であるのがより好ましい。
【0046】
(発光層)
この発光層6は、発光材料を含んで構成されている。より具体的には、発光層6は、発光材料と、この発光材料をゲスト材料とするホスト材料とを含んで構成されている。このような発光層6は、例えば、ゲスト材料である発光材料をドーパントとしてホスト材料にドープすることにより形成することができる。
【0047】
発光材料は、陰極9側から電子が供給(注入)されるとともに、陽極3側から正孔が供給(注入)されることにより、正孔と電子とが再結合し、この再結合に際して放出されたエネルギーによりエキシトン(励起子)が生成し、エキシトンが基底状態に戻る際にエネルギー(蛍光やりん光)を放出(発光)するものである。
このような発光材料としては、特に限定されず、各種蛍光材料、各種燐光材料を1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0048】
赤色の蛍光材料としては、例えば、テトラフェニルジインデノペリレン誘導体等のペリレン誘導体、ユーロピウム錯体、ベンゾピラン誘導体、ローダミン誘導体、ベンゾチオキサンテン誘導体、ポルフィリン誘導体、ナイルレッド、2−(1,1−ジメチルエチル)−6−(2−(2,3,6,7−テトラヒドロ−1,1,7,7−テトラメチル−1H,5H−ベンゾ(ij)キノリジン−9−イル)エテニル)−4H−ピラン−4H−イリデン)プロパンジニトリル(DCJTB)、4−(ジシアノメチレン)−2−メチル−6−(p−ジメチルアミノスチリル)−4H−ピラン(DCM)等を挙げられる。
【0049】
青色の蛍光材料としては、例えば、ジスチリルジアミン誘導体、ジスチリル誘導体、フルオランテン誘導体、ピレン誘導体、ペリレンおよびペリレン誘導体、アントラセン誘導体、ベンゾオキサゾール誘導体、ベンゾチアゾール誘導体、ベンゾイミダゾール誘導体、クリセン誘導体、フェナントレン誘導体、ジスチリルベンゼン誘導体、テトラフェニルブタジエン、4,4’−ビス(9−エチル−3−カルバゾビニレン)−1,1’−ビフェニル(BCzVBi)、ポリ[(9.9−ジオクチルフルオレン−2,7−ジイル)−コ−(2,5−ジメトキシベンゼン−1,4−ジイル)]、ポリ[(9,9−ジヘキシルオキシフルオレン−2,7−ジイル)−オルト−コ−(2−メトキシ−5−{2−エトキシヘキシルオキシ}フェニレン−1,4−ジイル)]、ポリ[(9,9−ジオクチルフルオレン−2,7−ジイル)−コ−(エチルニルベンゼン)]等が挙げられる。
【0050】
緑色の蛍光材料としては、例えば、クマリン誘導体、キナクリドン誘導体、9,10−ビス[(9−エチル−3−カルバゾール)−ビニレニル]−アントラセン、ポリ(9,9−ジヘキシル−2,7−ビニレンフルオレニレン)、ポリ[(9,9−ジオクチルフルオレン−2,7−ジイル)−コ−(1,4−ジフェニレン−ビニレン−2−メトキシ−5−{2−エチルヘキシルオキシ}ベンゼン)]、ポリ[(9,9−ジオクチル−2,7−ジビニレンフルオレニレン)−オルト−コ−(2−メトキシ−5−(2−エトキシルヘキシルオキシ)−1,4−フェニレン)]等が挙げられる。
黄色の蛍光材料としては、例えば、ルブレン系材料等のナフタセン骨格を有する化合物であって、ナフタセンにアリール基(好ましくはフェニル基)が任意の位置で任意の数(好ましくは2〜6)置換された化合物、モノインデノペリレン誘導体等を用いることができる。ルブレン系材料としては、例えば、下記化13に示すよう化合物が挙げられる。
【0051】
【化13】

【0052】
赤色の燐光材料としては、例えば、イリジウム、ルテニウム、白金、オスミウム、レニウム、パラジウム等の金属錯体が挙げられ、これら金属錯体の配位子の内の少なくとも1つがフェニルピリジン骨格、ビピリジル骨格、ポルフィリン骨格等を持つものも挙げられる。より具体的には、トリス(1−フェニルイソキノリン)イリジウム、ビス[2−(2’−ベンゾ[4,5−α]チエニル)ピリジネート−N,C’]イリジウム(アセチルアセトネート)(btp2Ir(acac))、2,3,7,8,12,13,17,18−オクタエチル−12H,23H−ポルフィリン−白金(II)、ビス[2−(2’−ベンゾ[4,5−α]チエニル)ピリジネート−N,C’]イリジウム、ビス(2−フェニルピリジン)イリジウム(アセチルアセトネート)が挙げられる。
【0053】
青色の燐光材料としては、例えば、イリジウム、ルテニウム、白金、オスミウム、レニウム、パラジウム等の金属錯体が挙げられる。より具体的には、ビス[4,6−ジフルオロフェニルピリジネート−N,C’]−ピコリネート−イリジウム、トリス[2−(2,4−ジフルオロフェニル)ピリジネート−N,C’]イリジウム、ビス[2−(3,5−トリフルオロメチル)ピリジネート−N,C’]−ピコリネート−イリジウム、ビス(4,6−ジフルオロフェニルピリジネート−N,C’)イリジウム(アセチルアセトネート)が挙げられる。
【0054】
緑色の燐光材料としては、例えば、イリジウム、ルテニウム、白金、オスミウム、レニウム、パラジウム等の金属錯体が挙げられる。中でも、これら金属錯体の配位子の内の少なくとも1つが、フェニルピリジン骨格、ビピリジル骨格、ポルフィリン骨格等を持つものが好ましい。より具体的には、ファク−トリス(2−フェニルピリジン)イリジウム(Ir(ppy)3)、ビス(2−フェニルピリジネート−N,C2’)イリジウム(アセチルアセトネート)、ファク−トリス[5−フルオロ−2−(5−トリフルオロメチル−2−ピリジン)フェニル−C,N]イリジウムが挙げられる。
このような発光材料をゲスト材料とするホスト材料は、正孔と電子とを再結合して励起子を生成するとともに、その励起子のエネルギーを発光材料に移動(フェルスター移動またはデクスター移動)させて、発光材料を励起する機能を有する。
【0055】
このようなホスト材料としては、用いる発光材料に対して前述したような機能を発揮するものであれば、特にBU体、ベンゾオキサゾール誘導体、ベンゾチアゾール誘導体、キノリン誘導体、4,4’−ビス(2,2’−ジフェニルビニル)ビフェニル(DPVBi)等が挙げられ、これらのうち1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることもできる。好ましくは、発光材料が青色または緑色の場合にはアントラセン誘導体、ジアントラセン誘導体が好ましく、発光材料が赤色の場合にはナフタセン誘導体、ペリレン誘導体が好ましい。
【0056】
【化14】

【0057】
また、ホスト材料としては、例えば、発光材料が燐光材料を含む場合、3−フェニル−4−(1’−ナフチル)−5−フェニルカルバゾール、4,4’−N,N’−ジカルバゾールビフェニル(CBP)等のカルバゾール誘導体等が挙げられ、これらのうち1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることもできる。
前述したような発光材料(ゲスト材料)およびホスト材料を用いる場合、発光層6中における発光材料の含有量(ドープ量)は、0.1〜10wt%であるのが好ましく、1〜5wt%であるのがより好ましい。発光材料の含有量をこのような範囲内とすることで、発光効率を最適化することができる。
【0058】
また、発光層6の平均厚さは、特に限定されないが、1〜100nmであるのが好ましく、3〜50nmであるのがより好ましく、5〜30nmであるのがさらに好ましい。
なお、本実施形態では、発光部が1層の発光層を備えるものを例に説明しているが、発光部には、複数の発光層が設けられていてもよい。この場合、複数の発光層の発光色が互いに同じであっても異なっていてもよい。例えば、発光部が赤色の発光層と青色の発光層と緑色の発光層との3層の発光層を備える場合や、発光層が青色の発光層と黄色の発光層との2層の発光層を備える場合、発光部全体で白色発光させることができる。また、発光部が複数の発光層を有する場合、発光層同士の間に中間層が設けられていてもよい。
【0059】
(電子輸送層)
電子輸送層7は、陰極9から電子注入層8を介して注入された電子を発光層6に輸送する機能を有するものである。
電子輸送層7の構成材料(電子輸送性材料)としては、例えば、トリス(8−キノリノラト)アルミニウム(Alq)等の8−キノリノールなしいその誘導体を配位子とする有機金属錯体などのキノリン誘導体、オキサジアゾール誘導体、ペリレン誘導体、ピリジン誘導体、ピリミジン誘導体、キノキサリン誘導体、ジフェニルキノン誘導体、ニトロ置換フルオレン誘導体等が挙げられ、これらのうちの1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
電子輸送層7の平均厚さは、特に限定されないが、0.5〜100nm程度であるのが好ましく、1〜50nm程度であるのがより好ましい。
【0060】
(電子注入層)
電子注入層8は、陰極9らの電子注入効率を向上させる機能を有するものである。
この電子注入層8の構成材料(電子注入材料)としては、例えば、各種の無機絶縁材料、各種の無機半導体材料が挙げられる。
このような無機絶縁材料としては、例えば、アルカリ金属カルコゲナイド(酸化物、硫化物、セレン化物、テルル化物)、アルカリ土類金属カルコゲナイド、アルカリ金属のハロゲン化物およびアルカリ土類金属のハロゲン化物等が挙げられ、これらのうちの1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。これらを主材料として電子注入層を構成することにより、電子注入性をより向上させることができる。特にアルカリ金属化合物(アルカリ金属カルコゲナイド、アルカリ金属のハロゲン化物等)は仕事関数が非常に小さく、これを用いて電子注入層8を構成することにより、発光素子1は、高い輝度が得られるものとなる。
【0061】
アルカリ金属カルコゲナイドとしては、例えば、LiO、LiO、NaS、NaSe、NaO等が挙げられる。
アルカリ土類金属カルコゲナイドとしては、例えば、CaO、BaO、SrO、BeO、BaS、MgO、CaSe等が挙げられる。
アルカリ金属のハロゲン化物としては、例えば、CsF、LiF、NaF、KF、LiCl、KCl、NaCl等が挙げられる。
【0062】
アルカリ土類金属のハロゲン化物としては、例えば、CaF、BaF、SrF、MgF、BeF等が挙げられる。
また、無機半導体材料としては、例えば、Li、Na、Ba、Ca、Sr、Yb、Al、Ga、In、Cd、Mg、Si、Ta、SbおよびZnのうちの少なくとも1つの元素を含む酸化物、窒化物または酸化窒化物等が挙げられ、これらのうちの1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
電子注入層8の平均厚さは、特に限定されないが、0.1〜1000nm程度であるのが好ましく、0.2〜100nm程度であるのがより好ましく、0.2〜50nm程度であるのがさらに好ましい。
【0063】
(陰極)
陰極9は、前述した電子注入層8を介して電子輸送層7に電子を注入する電極である。この陰極9の構成材料としては、仕事関数の小さい材料を用いるのが好ましい。
陰極9の構成材料としては、例えば、Li、Mg、Ca、Sr、La、Ce、Er、Eu、Sc、Y、Yb、Ag、Cu、Al、Cs、Rbまたはこれらを含む合金等が挙げられ、これらのうちの1種または2種以上を組み合わせて(例えば、複数層の積層体等)用いることができる。
【0064】
特に、陰極9の構成材料として合金を用いる場合には、Ag、Al、Cu等の安定な金属元素を含む合金、具体的には、MgAg、AlLi、CuLi等の合金を用いるのが好ましい。かかる合金を陰極9の構成材料として用いることにより、陰極9の電子注入効率および安定性の向上を図ることができる。
このような陰極9の平均厚さは、特に限定されないが、100〜10000nm程度であるのが好ましく、200〜500nm程度であるのがより好ましい。
なお、本実施形態の発光素子1は、ボトムエミッション型であるため、陰極9に、光透過性は、特に要求されない。
【0065】
(封止部材)
封止部材10は、陽極3、積層体15、および陰極9を覆うように設けられ、これらを気密的に封止し、酸素や水分を遮断する機能を有する。封止部材10を設けることにより、発光素子1の信頼性の向上や、変質・劣化の防止(耐久性向上)等の効果が得られる。
封止部材10の構成材料としては、例えば、Al、Au、Cr、Nb、Ta、Tiまたはこれらを含む合金、酸化シリコン、各種樹脂材料等を挙げることができる。なお、封止部材10の構成材料として導電性を有する材料を用いる場合には、短絡を防止するために、封止部材10と陽極3、積層体15、および陰極9との間には、必要に応じて、絶縁膜を設けるのが好ましい。
【0066】
また、封止部材10は、平板状として、基板2と対向させ、これらの間を、例えば熱硬化性樹脂等のシール材で封止するようにしてもよい。
以上のように構成された発光素子1によれば、正孔輸送層5とキャリア発生層4とが接触して設けられていることにより、キャリア発生層4と正孔輸送層5との間で電子および正孔を発生させることができる。その結果、発生した正孔および電子を発光層6の発光に効果的に寄与させて、発光効率を高め、駆動電圧を低減することができる。
【0067】
また、キャリア発生層4がキャリア発生材料に加えて不活性材料を含むことで、キャリア発生材料の結晶化を防止することができる。この結果、発光素子1が高温下に曝されたり、長期使用により発光素子1が高温となっても、キャリア発生層4が陽極3の影響を受けず、キャリア発生層4の結晶化による発光素子1の特性変化を防止することができる。そのため、本発明の発光素子1は、高温下での安定性および耐久性に優れる。
以上のように構成された発光素子1は、例えば、次のようにして製造することができる。
[1] まず、基板2を用意し、この基板2上に陽極3を形成する。
陽極3は、例えば、プラズマCVD、熱CVDのような化学蒸着法(CVD)、真空蒸着等の乾式メッキ法、電解メッキ等の湿式メッキ法、溶射法、ゾル・ゲル法、MOD法、金属箔の接合等を用いて形成することができる。
【0068】
[2] 次に、陽極3上にキャリア発生層4を形成する。
キャリア発生層4は、例えば、CVD法や、真空蒸着、スパッタリング等の乾式メッキ法等を用いた気相プロセスにより形成することができる。
このように、気相プロセスによりキャリア発生層4を形成することにより、形成されたキャリア発生層4中において、キャリア発生材料および不活性材料は、非晶質の状態となる。特に、真空蒸着を用いた場合、より確実に、キャリア発生層4中のキャリア発生材料および不活性材料を、非晶質とすることができる。
【0069】
また、真空蒸着を行う際には、キャリア発生材料および不活性材料を同時に蒸着させることが好ましい。すなわち、キャリア発生材料および不活性材料を材料として共蒸着を行うことが好ましい。これにより、不活性材料は、キャリア発生層4中において均一に分布するものとなる。
また、本工程に先立って、陽極3の上面には、酸素プラズマ処理を施すようにしてもよい。これにより、陽極3の上面に親液性を付与すること、陽極3の上面に付着する有機物を除去(洗浄)すること、陽極3の上面付近の仕事関数を調整すること等を行うことができる。
ここで、酸素プラズマ処理の条件としては、例えば、プラズマパワー100〜800W程度、酸素ガス流量50〜100mL/min程度、被処理部材(陽極3)の搬送速度0.5〜10mm/sec程度、基板2の温度70〜90℃程度とするのが好ましい。
【0070】
[3] 次に、キャリア発生層4上に正孔輸送層5を形成する。
正孔輸送層5は、例えば、CVD法や、真空蒸着、スパッタリング等の乾式メッキ法等を用いた気相プロセスにより形成することができる。
また、正孔輸送性材料を溶媒に溶解または分散媒に分散してなる正孔輸送層形成用材料を、キャリア発生層4上に供給した後、乾燥(脱溶媒または脱分散媒)することによっても形成することができる。
【0071】
正孔輸送層形成用材料の供給方法としては、例えば、スピンコート法、ロールコート法、インクジェット印刷法等の各種塗布法を用いることもできる。かかる塗布法を用いることにより、正孔注入層4を比較的容易に形成することができる。
正孔輸送層形成用材料の調製に用いる溶媒または分散媒としては、例えば、各種無機溶媒や、各種有機溶媒、または、これらを含む混合溶媒等が挙げられる。
なお、乾燥は、例えば、大気圧または減圧雰囲気中での放置、加熱処理、不活性ガスの吹付け等により行うことができる。
【0072】
[4] 次に、正孔輸送層5上に、発光層6を形成する。
第1の発光層6は、例えば、CVD法や、真空蒸着、スパッタリング等の乾式メッキ法等を用いた気相プロセスにより形成することができる。
[5] 次に、発光層6上に電子輸送層7を形成する。
電子輸送層7は、例えば、CVD法や、真空蒸着、スパッタリング等の乾式メッキ法等を用いた気相プロセスにより形成することができる。
また、電子輸送層7は、例えば、電子輸送性材料を溶媒に溶解または分散媒に分散してなる電子輸送層形成用材料を、発光層6上に供給した後、乾燥(脱溶媒または脱分散媒)することによっても形成することができる。
【0073】
[6] 次に、電子輸送層7上に、電子注入層8を形成する。
電子注入層8の構成材料として無機材料を用いる場合、電子注入層8は、例えば、CVD法や、真空蒸着、スパッタリング等の乾式メッキ法等を用いた気相プロセス、無機微粒子インクの塗布および焼成等を用いて形成することができる。
[7] 次に、電子注入層8上に、陰極9を形成する。
陰極9は、例えば、真空蒸着法、スパッタリング法、金属箔の接合、金属微粒子インクの塗布および焼成等を用いて形成することができる。
以上のような工程を経て、発光素子1が得られる。
最後に、得られた発光素子1を覆うように封止部材10を被せ、基板2に接合する。
【0074】
以上説明したような発光素子1は、例えば光源等として使用することができる。また、複数の発光素子1をマトリックス状に配置することにより、ディスプレイ装置(本発明の表示装置)を構成することができる。このような表示装置は、前述したような発光素子1を用いるため、高温環境下における安定性および耐久性に優れたものとしつつ、発光効率を高め、駆動電圧を低減することができる。そのため、高品位な画像を長期にわたり表示することができる。
なお、ディスプレイ装置の駆動方式としては、特に限定されず、アクティブマトリックス方式、パッシブマトリックス方式のいずれであってもよい。
次に、本発明の表示装置を適用したディスプレイ装置の一例について説明する。
【0075】
図2は、本発明の表示装置を適用したディスプレイ装置の実施形態を示す縦断面図である。
図2に示すディスプレイ装置100は、基板21と、サブ画素100R、100G、100Bに対応して設けられた複数の発光素子1R、1G、1Bおよびカラーフィルタ19R、19G、19Bと、各発光素子1R、1G、1Bをそれぞれ駆動するための複数の駆動用トランジスタ24とを有している。ここで、ディスプレイ装置100は、トップエミッション構造のディスプレイパネルである。
【0076】
基板21上には、複数の駆動用トランジスタ24が設けられ、これらの駆動用トランジスタ24を覆うように、絶縁材料で構成された平坦化層22が形成されている。
各駆動用トランジスタ24は、シリコンからなる半導体層241と、半導体層241上に形成されたゲート絶縁層242と、ゲート絶縁層242上に形成されたゲート電極243と、ソース電極244と、ドレイン電極245とを有している。
【0077】
平坦化層上には、各駆動用トランジスタ24に対応して発光素子1R、1G、1Bが設けられている。
発光素子1Rは、平坦化層22上に、反射膜32、腐食防止膜33、陽極3、積層体(有機EL発光部)15、陰極9、陰極カバー34がこの順に積層されている。本実施形態では、各発光素子1R、1G、1Bの陽極3は、画素電極を構成し、各駆動用トランジスタ24のドレイン電極245に導電部(配線)27により電気的に接続されている。また、各発光素子1R、1G、1Bの陰極9は、共通電極とされている。
【0078】
なお、発光素子1G、1Bの構成は、発光素子1Rの構成と同様である。また、図2では、図1と同様の構成に関しては、同一符号を付してある。また、反射膜32の構成(特性)は、光の波長に応じて、発光素子1R、1G、1B間で異なっていてもよい。
隣接する発光素子1R、1G、1B同士の間には、隔壁31が設けられている。また、これらの発光素子1R、1G、1B上には、これらを覆うように、エポキシ樹脂で構成されたエポキシ層35が形成されている。
【0079】
カラーフィルタ19R、19G、19Bは、前述したエポキシ層35上に、発光素子1R、1G、1Bに対応して設けられている。
カラーフィルタ19Rは、発光素子1Rからの白色光Wを赤色に変換するものである。また、カラーフィルタ19Gは、発光素子1Gからの白色光Wを緑色に変換するものである。また、カラーフィルタ19Bは、発光素子1Bからの白色光Wを青色に変換するものである。このようなカラーフィルタ19R、19G、19Bを発光素子1R、1G、1Bと組み合わせて用いることで、フルカラー画像を表示することができる。
【0080】
また、隣接するカラーフィルタ19R、19G、19B同士の間には、遮光層36が形成されている。これにより、意図しないサブ画素100R、100G、100Bが発光するのを防止することができる。
そして、カラーフィルタ19R、19G、19Bおよび遮光層36上には、これらを覆うように封止基板20が設けられている。
【0081】
以上説明したようなディスプレイ装置100は、単色表示であってもよく、各発光素子1R、1G、1Bに用いる発光材料を選択することにより、カラー表示も可能である。
このようなディスプレイ装置100(本発明の表示装置)は、各種の電子機器に組み込むことができる。このような電子機器は、前述したような表示装置を用いているため、高温環境下における安定性および耐久性に優れたものとしつつ、発光効率を高め、駆動電圧を低減することができる。そのため、高品位な画像を長期にわたり表示することができる。
【0082】
図3は、本発明の電子機器を適用したモバイル型(またはノート型)のパーソナルコンピュータの構成を示す斜視図である。
この図において、パーソナルコンピュータ1100は、キーボード1102を備えた本体部1104と、表示部を備える表示ユニット1106とにより構成され、表示ユニット1106は、本体部1104に対しヒンジ構造部を介して回動可能に支持されている。
このパーソナルコンピュータ1100において、表示ユニット1106が備える表示部が前述のディスプレイ装置100で構成されている。
【0083】
図4は、本発明の電子機器を適用した携帯電話機(PHSも含む)の構成を示す斜視図である。
この図において、携帯電話機1200は、複数の操作ボタン1202、受話口1204および送話口1206とともに、表示部を備えている。
携帯電話機1200において、この表示部が前述のディスプレイ装置100で構成されている。
【0084】
図5は、本発明の電子機器を適用したディジタルスチルカメラの構成を示す斜視図である。なお、この図には、外部機器との接続についても簡易的に示されている。
ここで、通常のカメラは、被写体の光像により銀塩写真フィルムを感光するのに対し、ディジタルスチルカメラ1300は、被写体の光像をCCD(Charge Coupled Device)などの撮像素子により光電変換して撮像信号(画像信号)を生成する。
【0085】
ディジタルスチルカメラ1300におけるケース(ボディー)1302の背面には、表示部が設けられ、CCDによる撮像信号に基づいて表示を行う構成になっており、被写体を電子画像として表示するファインダとして機能する。
ディジタルスチルカメラ1300において、この表示部が前述のディスプレイ装置100で構成されている。
【0086】
ケースの内部には、回路基板1308が設置されている。この回路基板1308は、撮像信号を格納(記憶)し得るメモリが設置されている。
また、ケース1302の正面側(図示の構成では裏面側)には、光学レンズ(撮像光学系)やCCDなどを含む受光ユニット1304が設けられている。
撮影者が表示部に表示された被写体像を確認し、シャッタボタン1306を押下すると、その時点におけるCCDの撮像信号が、回路基板1308のメモリに転送・格納される。
【0087】
また、このディジタルスチルカメラ1300においては、ケース1302の側面に、ビデオ信号出力端子1312と、データ通信用の入出力端子1314とが設けられている。そして、図示のように、ビデオ信号出力端子1312にはテレビモニタ1430が、デ−タ通信用の入出力端子1314にはパーソナルコンピュータ1440が、それぞれ必要に応じて接続される。さらに、所定の操作により、回路基板1308のメモリに格納された撮像信号が、テレビモニタ1430や、パーソナルコンピュータ1440に出力される構成になっている。
【0088】
なお、本発明の電子機器は、図3のパーソナルコンピュータ(モバイル型パーソナルコンピュータ)、図4の携帯電話機、図5のディジタルスチルカメラの他にも、例えば、テレビや、ビデオカメラ、ビューファインダ型、モニタ直視型のビデオテープレコーダ、ラップトップ型パーソナルコンピュータ、カーナビゲーション装置、ページャ、電子手帳(通信機能付も含む)、電子辞書、電卓、電子ゲーム機器、ワードプロセッサ、ワークステーション、テレビ電話、防犯用テレビモニタ、電子双眼鏡、POS端末、タッチパネルを備えた機器(例えば金融機関のキャッシュディスペンサー、自動券売機)、医療機器(例えば電子体温計、血圧計、血糖計、心電表示装置、超音波診断装置、内視鏡用表示装置)、魚群探知機、各種測定機器、計器類(例えば、車両、航空機、船舶の計器類)、フライトシュミレータ、その他各種モニタ類、プロジェクター等の投射型表示装置等に適用することができる。
以上、本発明の発光素子、表示装置および電子機器を、図示の実施形態に基づいて説明したが、本発明はこれらに限定されるものでない。
【実施例】
【0089】
次に、本発明の具体的実施例について説明する。
1.発光素子の製造
(実施例1)
<1> まず、平均厚さ0.5mmの透明なガラス基板を用意した。次に、この基板上に、スパッタ法により、平均厚さ100nmのITO電極(陽極)を形成した。
そして、基板をアセトン、2−プロパノールの順に浸漬し、超音波洗浄した後、酸素プラズマ処理を施した。
【0090】
<2> 次に、ITO電極上に、キャリア発生材料としての前述した化7で表わされる化合物と、不活性材料としての前述した化8で表わされる化合物とを真空蒸着法により蒸着させ、平均厚さ30nmのキャリア発生層を形成した。
また、キャリア発生層中におけるキャリア発生材料の含有量を93.0wt%、キャリア発生層中における不活性材料の含有量を7.0wt%とした。また、化7で表わされる化合物のLUMOのエネルギー準位の絶対値は、5.5eVであり、化8で表わされる化合物のHOMOのエネルギー準位の絶対値は、5.8eV以上であった。また、化8で表わされる化合物のガラス転移点は、160℃であった。なお、当該化合物のHOMOのエネルギー準位の絶対値は、AC−1(理研計器社製)を用いて測定した。また、以降の各化合物のHOMOのエネルギー準位の絶対値についても同様にして測定した。
【0091】
また、化7で表わされる化合物のLUMOのエネルギー準位の絶対値は、AC−1を用いて測定されたHOMOのエネルギー準位の絶対値から、蛍光スペクトル法によって算出されたバンドギャップ値を減算して求めた。化7で表わされる化合物のバンドギャップ値は、具体的には、以下のようにして求めた。まず、化7で示される化合物を、ガラス板上に100nmの厚さとなるように蒸着させた。次に、蛍光スペクトル法により、ガラス板上に蒸着された当該化合物のエキサイテイション波形(蛍光励起スペクトル)およびエミッション波形(蛍光発光スペクトル)を測定した。得られたエキサイテイション波形とエミッション波形との交点をエキサイテイション波形の吸収端の波長:λ[nm]として求めた。そして、式:E[eV]=1240/λ[nm]に当該吸収端の波長を代入することによりバンドギャップ値:E[eV]を算出した。
【0092】
<3> 次に、キャリア発生層上に、前述した化12で表わされる化合物を真空蒸着法により蒸着させ、平均厚さ20nmの正孔輸送層を形成した。なお、化12で表わされる化合物のHOMOのエネルギー準位の絶対値は、5.4eVであった。
<4> 次に、正孔輸送層上に、発光材料(黄色発光材料)およびホスト材料を真空蒸着法により蒸着させ、平均厚さ40nmの発光層を形成した。
ここで、発光材料(ゲスト材料)として前述した化13で表わされるルブレン系材料を用い、ホスト材料として前述した化14で表わされるアントラセン誘導体を用いた。また、発光層中の発光材料(ドーパント)の含有量(ドープ濃度)は、3.0wt%とした。
【0093】
<5> 次に、発光層上に、トリス(8−キノリノラト)アルミニウム(Alq)を真空蒸着法により成膜し、平均厚さ30nmの電子輸送層を形成した。
<6> 次に、電子輸送層上に、フッ化リチウム(LiF)を真空蒸着法により成膜し、平均厚さ0.5nmの電子注入層を形成した。
<7> 次に、電子注入層上に、Alを真空蒸着法により成膜した。これにより、Alで構成される平均厚さ100nmの陰極を形成した。
<8> 次に、形成した各層を覆うように、ガラス製の保護カバー(封止部材)を被せ、エポキシ樹脂により固定、封止した。
以上の工程により、図1に示すような発光素子を製造した。
【0094】
(実施例2)
キャリア発生層を形成する際に不活性材料として、化9に表わされる化合物を用いた以外は、前述した実施例1と同様にして発光素子を製造した。
また、キャリア発生層中におけるキャリア発生材料の含有量を93.0wt%、キャリア発生層中における不活性材料の含有量を7.0wt%とした。また、化9で表わされる化合物のHOMOのエネルギー準位の絶対値は、5.9eV以上であった。
【0095】
(実施例3)
キャリア発生層を形成する際に不活性材料として、化10に表わされる化合物を用いた以外は、前述した実施例1と同様にして発光素子を製造した。
また、キャリア発生層中におけるキャリア発生材料の含有量を93.0wt%、キャリア発生層中における不活性材料の含有量を7.0wt%とした。また、化10で表わされる化合物のHOMOのエネルギー準位の絶対値は、5.9eV以上であった。
【0096】
(実施例4)
キャリア発生層を形成する際に不活性材料として、化11に表わされる化合物を用いた以外は、前述した実施例1と同様にして発光素子を製造した。
また、キャリア発生層中におけるキャリア発生材料の含有量を93.0wt%、キャリア発生層中における不活性材料の含有量を7.0wt%とした。また、化11で表わされる化合物のHOMOのエネルギー準位の絶対値は、5.9eV以上であった。
【0097】
(実施例5)
キャリア発生層を形成する際に不活性材料として、化11に表わされる化合物を用い、キャリア発生層中における不活性材料の含有量を変更した以外は、前述した実施例1と同様にして発光素子を製造した。
また、キャリア発生層中におけるキャリア発生材料の含有量を93.0wt%、キャリア発生層中における不活性材料の含有量を7.0wt%とした。
(比較例)
前述した化7で表わされる化合物(キャリア発生材料)のみでキャリア発生層を形成した以外は、前述した実施例1と同様にして発光素子を製造した。
【0098】
2.評価
2−1.発光効率の評価
各実施例および各比較例について、直流電源を用いて発光素子に10mA/cmの定電流を流し、輝度計を用いて輝度(初期の輝度)を測定した。その結果を表1に示す。また、各実施例および各比較例について、上記輝度測定時における色度(x,y)も表1に示す。
また、図6に、上記輝度測定時における実施例1の発光素子の発光スペクトルを示す。なお、実施例2〜5、比較例の発光素子の発光スペクトルも同様の波形を示していた。
【0099】
【表1】

【0100】
2−2.熱安定性の評価
各実施例および各比較例について、製造直後の発光素子に直流電源を用いて10mA/cmの定電流を流した際における駆動電圧を測定した。次に、発光素子を85℃の環境下に100時間放置した後、直流電源を用いて発光素子に10mA/cmの定電流を流した際における駆動電圧を測定した。その結果を表1に示す。
【0101】
2−3.発光寿命の評価
各実施例および各比較例について、直流電源を用いて発光素子に200mA/cmの定電流を流しつづけ、その間、輝度計を用いて輝度を測定し、その輝度が初期の輝度の50%となる時間(LT50)を測定した。その結果を表1に示す。なお、各実施例および各比較例において、80℃環境下および室温(25℃)環境下のそれぞれの環境下で、半減期の値を測定した。
表1から明らかなように、各実施例の発光素子は、各比較例の発光素子に比し、熱安定性に優れており、高温環境下に放置後の駆動電圧は、放置前の駆動電圧とほぼ同等の値となっていた。また、各実施例の発光素子は、各比較例の発光素子に比して高温環境下において、長寿命であった。
【図面の簡単な説明】
【0102】
【図1】本発明の第1実施形態にかかる発光素子の縦断面を模式的に示す図である。
【図2】本発明の表示装置を適用したディスプレイ装置の実施形態を示す縦断面図である。
【図3】本発明の電子機器を適用したモバイル型(またはノート型)のパーソナルコンピュータの構成を示す斜視図である。
【図4】本発明の電子機器を適用した携帯電話機(PHSも含む)の構成を示す斜視図である。
【図5】本発明の電子機器を適用したディジタルスチルカメラの構成を示す斜視図である。
【図6】本発明の実施例1における発光素子の発光スペクトルを示すグラフである。
【符号の説明】
【0103】
1、1G、1R、1B……発光素子 2……基板 3……陽極 4……キャリア発生層 5……正孔輸送層 6……発光層 7……電子輸送層 8……電子注入層 9……陰極 10……封止部材 15……積層体 19B、19G、19R……カラーフィルタ 100……ディスプレイ装置 100R、100G、100B……サブ画素 20……封止基板 21……基板 22……平坦化層 24……駆動用トランジスタ 241……半導体層 242……ゲート絶縁層 243……ゲート電極 244……ソース電極 245……ドレイン電極 27……配線 31……隔壁 32……反射膜 33……腐食防止膜 34……陰極カバー 35……エポキシ層 36……遮光層 1100……パーソナルコンピュータ 1102……キーボード 1104……本体部 1106……表示ユニット 1200……携帯電話機 1202……操作ボタン 1204……受話口 1206……送話口 1300……ディジタルスチルカメラ 1302……ケース(ボディー) 1304……受光ユニット 1306……シャッタボタン 1308……回路基板 1312……ビデオ信号出力端子 1314……データ通信用の入出力端子 1430……テレビモニタ 1440……パーソナルコンピュータ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
陽極と、
陰極と、
前記陽極と前記陰極との間に設けられ、発光材料を含んで構成された発光層と、
前記陽極と前記発光層との間に設けられ、正孔を輸送する機能を有する正孔輸送材料で構成された正孔輸送層と、
前記陽極と前記正孔輸送層との間に前記正孔輸送層に接合して設けられ、正孔および電子を発生させるキャリア発生層とを有し、
前記キャリア発生層は、前記正孔輸送層と接触することにより前記正孔および前記電子を発生させる機能を有するキャリア発生材料を主材料として含み、電気化学的に不活性な不活性材料が添加されて構成されていることを有することを特徴とする発光素子。
【請求項2】
前記不活性材料の最高占有分子軌道のエネルギー準位と、前記キャリア発生材料の最低非占有分子軌道のエネルギー準位との差の絶対値は、0.20eV以上である請求項1に記載の発光素子。
【請求項3】
前記正孔輸送材料の最高占有分子軌道のエネルギー準位と、前記キャリア発生材料の最低非占有分子軌道のエネルギー準位との差の絶対値は、0.15eV以下である請求項1または2に記載の発光素子。
【請求項4】
前記不活性材料は、前記キャリア発生層において、非晶質の状態で存在しているものである請求項1ないし3のいずれかに記載の発光素子。
【請求項5】
前記不活性材料のガラス転移点は、85℃以上である請求項1ないし4のいずれかに記載の発光素子。
【請求項6】
前記不活性材料は、芳香環を含む炭化水素である請求項1ないし5のいずれかに記載の発光素子。
【請求項7】
前記不活性材料は、フルオレン構造および/またはビフェニル構造を有するものである請求項1ないし6のいずれかに記載の発光素子。
【請求項8】
前記不活性材料は、下記化1ないし化4に示される化合物のうち少なくとも1種以上を含んで構成される請求項7に記載の発光素子。
【化1】

【化2】

【化3】

【化4】

【請求項9】
前記キャリア発生材料は、ヘキサアザトリフェニレン誘導体である請求項1ないし8のいずれかに記載の発光素子。
【請求項10】
前記キャリア発生材料は、下記化5に示される化合物である請求項1ないし9のいずれかに記載の発光素子。
【化5】

【請求項11】
前記正孔輸送層は、ベンジジン構造を有する化合物で構成されている請求項1ないし10のいずれかに記載の発光素子。
【請求項12】
前記キャリア発生層中における前記キャリア発生材料の含有量をA[wt%]、前記不活性材料の含有量をB[wt%]としたとき、5≦B/(A+B)≦30である請求項1ないし11のいずれかに記載の発光素子。
【請求項13】
請求項1ないし12のいずれかに記載の発光素子を備えることを特徴とする表示装置。
【請求項14】
請求項13に記載の表示装置を備えることを特徴とする電子機器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2010−50281(P2010−50281A)
【公開日】平成22年3月4日(2010.3.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−213200(P2008−213200)
【出願日】平成20年8月21日(2008.8.21)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】