説明

発光素子、表示装置および電子機器

【課題】陰極と陽極の間に複数の発光する機能を有する層を備えた発光素子において、これら複数の発光する機能を有する層のうち、所望の層を選択的または支配的に、長時間に亘って発光させることができる発光素子、表示装置および電子機器を提供すること。
【解決手段】発光素子1Rは、陽極3Rと陰極8との間に設けられた青色発光機能層5Bと、陽極3Rと青色発光機能層5Bとの間に設けられた赤色発光機能層5Rとを有し、さらに、青色発光機能層5Bと、赤色発光機能層5Rとの間に、この青色発光機能層5B側から、正孔輸送層43と拡散調整層44と第1電子注入層61とがこの順で積層された積層体で構成されるキャリア選択層46を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発光素子、表示装置および電子機器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
有機エレクトロルミネッセンス素子(いわゆる有機EL素子)の製造において、各色に発光する有機EL素子が備える赤色発光層と緑色発光層とを塗布法で形成し、青色発光層を真空蒸着法(蒸着法)で形成した表示装置が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
これは、インクジェット法のような塗布法を用いて作製された有機EL素子は、赤色および緑色に発光する有機EL素子では、実用レベルの発光寿命(輝度寿命)や発光効率(電流効率または外部量子効率)を有するものの、青色に発光する有機EL素子では、実用レベルの発光寿命や発光効率に達しないことが多く、また、真空蒸着法を用いて作製された青色に発光する有機EL素子は、塗布法を用いて作製されたものと比較して、その発光寿命が数倍以上長く、実用レベルに達していることが多い点に着目した技術である。つまり、インクジェット法のような液相プロセスを用いて作製されたある発光色の有機EL素子が、実用レベルの発光寿命や発光効率に達しない場合でも、真空蒸着法のような気相プロセスを用いて作製された同様の発光色の有機EL素子は、実用レベルの発光寿命や発光効率を有する場合がある。
【0003】
このような表示装置において、赤色有機EL素子(赤色画素)および緑色有機EL素子(緑色画素)は、それぞれ、これらが有する赤色発光層および緑色発光層上に、真空蒸着法を用いて青色発光層が形成された構成、すなわち、赤色発光層および緑色発光層を含む全面に、真空蒸着法により青色発光層が形成された構成となっている。そのため、かかる構成の表示装置の製造方法は、高精細マスクを用いて、青色有機EL素子(青色画素)のみに選択的に青色発光層を蒸着(成膜)する必要がないことから、大型パネルを備える表示装置の製造に最適である。
【0004】
しかしながら、この場合、赤色有機EL素子および緑色有機EL素子において、青色発光層は、それぞれ、赤色発光層および緑色発光層上に接触して設けられているため、青色発光層から、赤色発光層および緑色発光層へ、電子が十分注入されない場合が多い。
そのため、赤色有機EL素子(赤色画素)および緑色有機EL素子(緑色画素)において、意図しない青色発光層が発光することにより、それぞれ、赤色および緑色としての色純度が低くなってしまうことがあった。
すなわち、陰極と陽極の間に複数の発光する機能を有する層(発光機能層)を備えた発光素子において、前記発光する機能を有する層のうち、所望の層を選択的または支配的に発光させることができないという課題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2007−73532号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、陰極と陽極の間に複数の発光する機能を有する層を備えた発光素子において、これら複数の発光する機能を有する層のうち、所望の層を選択的または支配的に、長時間に亘って発光させることができる発光素子、表示装置および電子機器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
このような目的は、下記の本発明により達成される。
本発明の発光素子は、陽極と、
陰極と、
前記陽極と前記陰極との間に設けられた第1の色を発光する機能を有する第1の層と、
前記陽極と前記第1の層との間に設けられた第2の層と、
前記陽極と前記第2の層との間に設けられた第3の層と、を備え、
前記第2の層は、電子注入層と、拡散調整層と、前記電子注入層および前記拡散調整層よりも前記陰極側に配置されている正孔輸送層と、を有し、
前記第2の層は、前記第3の層の機能によってキャリアの流れが選択される機能を有することを特徴とする。
これにより、第2の層が第3の層の機能によって適宜キャリアの流れが選択されるので第1の層を発光させたい場合と、発光を抑制したい場合とを第3の層により選択することが可能となる。そして、第1の層を発光させる場合、この第1の層を長時間に亘って選択的に発光させることができる。
【0008】
本発明の発光素子は、
前記第2の層は、前記電子注入層と、前記拡散調整層と、前記正孔輸送層とが、前記陽極側からこの順で積層されていることが好ましい。
これにより、電子注入層に含まれる構成材料の拡散を抑制することが可能となる。
本発明の発光素子は、
前記第2の層と前記第3の層は直接接していることが好ましい。
第3の層に第2の層が直接接することにより、第3の層の機能によって決まる第2の層の機能による作用が強化される。
本発明の発光素子は、
前記第3の層は、第2の色を発光する機能を有することが好ましい。
第3の層は、第2の色を発光する機能を有するものであってもよい。
【0009】
本発明の発光素子は、前記第2の層はキャリアを流す機能を有することが好ましい。
第3の層が、第2の色を発光する機能を有するものであるとき、第2の層はキャリアを流す機能を有するようになり、正孔と電子との再結合が第1の層内よりも第3の層内で起こる確率を高くすることができる。これにより、第2の色を効率的に発光させることができる。
【0010】
本発明の発光素子は、
前記第3の層は、正孔注入層であることが好ましい。
第3の層は、正孔注入層であってもよい。
本発明の発光素子は、前記正孔注入層はイオン伝導性を有することが好ましい。
また、その正孔注入層がイオン伝導性を有するものであることが望ましい。
【0011】
本発明の発光素子は、前記第2の層はキャリアの流れを抑制する機能を有することが好ましい。
第3の層が正孔注入層であるとき、さらにその正孔注入層がイオン伝導性を有するときは特に、第2の層はキャリアの流れを抑制する機能を有するようになり、正孔と電子との再結合が第1の層で起こる確率を高くすることができる。これにより、第1の色を効率的に発光させることができる。
【0012】
本発明の発光素子は、
前記電子注入層は、アルカリ金属、アルカリ土類金属、もしくはそれらの化合物で構成されることが好ましい。
これにより、正孔輸送層と電子注入層とを介した、第1の層から第3の層への電子の注入性をより向上させることができるようになる。
【0013】
本発明の発光素子は、
前記拡散調整層は、Al、Ag、Cu、Au、Mg、Ca、Sr、Ba、Ti、Zr、Sn、Zn、Nb、Cr、Moのうちから選択される金属、もしくはこれらの合金で構成されることが好ましい。
これにより、電子注入層に含まれる構成材料の拡散をより確実に抑制することが可能となる。
【0014】
本発明の発光素子は、
前記第1の層は、気相プロセスを用いて形成されたものであることが好ましい。
気相プロセスを経て形成される第1の層を備える発光素子は、実用レベルの発光寿命特性を十分に備えるものである。
本発明の発光素子は、
前記正孔輸送層は、気相プロセスを用いて形成されたものであることが好ましい。
気相プロセスを経て形成される正孔輸送層を備える発光素子は、液相プロセスを経て形成される正孔輸送層を備える発光素子よりも、優れた発光寿命特性を備えるものである。
【0015】
本発明の発光素子は、
前記第1の色は青色であることが好ましい。
このように青色の光を発光する機能を有する第1の層を備える発光素子に、本発明の発光素子が好適に適用される。
本発明の発光素子は、
前記第2の色は、赤色または緑色であることが好ましい。
このように赤色または緑色の光を発光する機能を有する第3の層を備える発光素子に、本発明の発光素子が好適に適用される。
本発明の発光素子は、前記第3の層は、液相プロセスを用いて形成されたものであることが好ましい。
液相プロセスを経て形成される第3の層を備える発光素子を備える表示装置は、容易に大面積化が可能である。
【0016】
本発明の表示装置は、本発明の発光素子を備えることが好ましい。
これにより、信頼性の高い表示装置を得ることができる。
本発明の電子機器は、本発明の表示装置を備えることが好ましい。
これにより、信頼性の高い電子機器を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の表示装置を適用したディスプレイ装置の実施形態を示す縦断面図である。
【図2】本発明の電子機器を適用したモバイル型(またはノート型)のパーソナルコンピュータの構成を示す斜視図である。
【図3】本発明の電子機器を適用した携帯電話機(PHSも含む)の構成を示す斜視図である。
【図4】本発明の電子機器を適用したディジタルスチルカメラの構成を示す斜視図である。
【図5】実施例1、2の表示装置を模式的に示した縦断面図である。
【図6】参考例1、2の表示装置を模式的に示した縦断面図である。
【図7】比較例1の表示装置を模式的に示した縦断面図である。
【図8】比較例2の表示装置を模式的に示した縦断面図である。
【図9】比較例3の表示装置を模式的に示した縦断面図である。
【図10】比較例4R、7Rの表示装置を模式的に示した縦断面図である。
【図11】比較例4G、7Gの表示装置を模式的に示した縦断面図である。
【図12】比較例4B、7Bの表示装置を模式的に示した縦断面図である。
【図13】比較例5Bの表示装置を模式的に示した縦断面図である。
【図14】比較例6Bの表示装置を模式的に示した縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の発光素子、表示装置および電子機器を添付図面に示す好適な実施形態について説明する。なお、本実施形態、本実施例、本比較例における発光効率とは、電流効率または外部量子効率のことを指す。
(表示装置)
まず、本発明の発光素子を説明するのに先立って、本発明の表示装置について説明する。
なお、以下では、本発明の表示装置を、ディスプレイ装置に適用した場合を一例に説明する。
【0019】
図1は、本発明の表示装置を適用したディスプレイ装置の実施形態を示す縦断面図である。
図1に示すディスプレイ装置100は、基板21と、サブ画素100R、100G、100Bに対応して設けられた複数の発光素子1R、1G、1Bと、各発光素子1R、1G、1Bをそれぞれ駆動するための複数の駆動用トランジスタ24とを有している。
なお、本実施形態において、ディスプレイ装置100は、各発光素子1R、1G、1Bが光R、G、Bを発光すると、その光R、G、Bを基板21側から透過させるボトムエミッション構造のディスプレイパネルである。
【0020】
基板21上には、複数の駆動用トランジスタ24が設けられ、これらの駆動用トランジスタ24を覆うように、絶縁材料で構成された平坦化層22が形成されている。
各駆動用トランジスタ24は、シリコン等の半導体材料からなる半導体層241と、半導体層241上に形成されたゲート絶縁層242と、ゲート絶縁層242上に形成されたゲート電極243と、ソース電極244と、ドレイン電極245とを有している。
また、平坦化層22上には、各駆動用トランジスタ24に対応して、発光素子(有機EL素子)1R、1G、1Bが設けられている。
発光素子1R、1G、1Bは、それぞれ、陽極3R、3G、3Bと、陰極8の間に、陰極8側から、第1の層と、第2の層と、第3の層とをこの順に備える。
【0021】
第1の層は、第1の色を発光する機能を有する層である。以下、ある色を発光する機能を有する層を発光機能層と称する。本実施形態では、第1の色は青色であり、第1の層は、青色発光機能層5Bである。
第2の層は、キャリア選択層46である。キャリア選択層とは、第3の層の機能によってキャリアの流れが選択される機能を有する層であり、以下、第3の層の機能によってキャリアの流れが選択される機能を有する層のことをキャリア選択層と称する。本実施形態では、キャリア選択層46は、第1電子注入層61と拡散調整層44と正孔輸送層43とが、陽極(3R、3G、3B)側からこの順に積層された積層体により構成される。
【0022】
発光素子1Rと1Gにおいては、第3の層は第2の色を発光する機能を有する層であり、それぞれ、赤色発光機能層5Rと緑色発光機能層5Gである。つまり、本実施形態における第2の色は、発光素子1Rと1Gにおいて、それぞれ、赤色と緑色である。
また、発光素子1Bにおいては、第3の層は正孔注入層41Bである。
発光素子1Rは、平坦化層22上に、陽極3Rと、正孔注入層41Rと、中間層42Rと、第3の層としての赤色発光機能層5Rと、第2の層としてのキャリア選択層46と、第1の層としての青色発光機能層5Bと、電子輸送層62と、第2電子注入層63と、陰極8とが、この順に積層されている。
【0023】
また、発光素子1Gは、平坦化層22上に、陽極3Gと、正孔注入層41Gと、中間層42Gと、第3の層としての緑色発光機能層5Gと、第2の層としてのキャリア選択層46と、第1の層としての青色発光機能層5Bと、電子輸送層62と、第2電子注入層63と、陰極8とが、この順に積層されている。
さらに、発光素子1Bは、平坦化層22上に、陽極3Bと、第3の層としての正孔注入層41Bと、第2の層としてのキャリア選択層46と、第1の層としての青色発光機能層5Bと、電子輸送層62と、第2電子注入層63と、陰極8とが、この順に積層されている。
かかる構成の発光素子1R、1G、1Bの隣接するもの同士の間には、隔壁31が設けられ、これにより各発光素子1R、1G、1Bが個別に設けられている。
【0024】
本実施形態では、各発光素子1R、1G、1Bにおいて、各陽極3R、3G、3B、各正孔注入層41R、41G、41B、各中間層42R、42Gおよび各発光機能層5R、5Gが、隔壁31で区画されることにより個別に設けられ、第1電子注入層61、拡散調整層44、正孔輸送層43、青色発光機能層5B、電子輸送層62、第2電子注入層63および陰極8が、一体的に設けられている。かかる構成とすることで、各発光素子1R、1G、1Bの各陽極3R、3G、3Bは、画素電極(個別電極)を構成し、さらに、各発光素子1R、1G、1Bの陰極8は、共通電極を構成する。また、各発光素子1R、1G、1Bの各陽極3R、3G、3Bは、各駆動用トランジスタ24のドレイン電極245に導電部(配線)27により電気的に接続されている。
【0025】
このように、発光素子1R、1G、1Bを備えるディスプレイ装置100において、各発光素子1R、1G、1Bの発光輝度を、駆動用トランジスタ24を用いて制御することにより、すなわち各発光素子1R、1G、1Bへ印加する電圧を制御することにより、ディスプレイ装置100のフルカラー表示が可能となる。
かかる構成の発光素子1R、1G、1Bに本発明の発光素子が適用されるが、これら発光素子1R、1G、1Bの詳細については後に説明する。
【0026】
さらに、これらの発光素子1R、1G、1B上には、本実施形態では、これらを覆うように、エポキシ樹脂で構成されたエポキシ層35が形成されている。
そして、エポキシ層35上に、これを覆うように封止基板20が設けられている。これにより、発光素子1R、1G、1Bの気密性が確保され、酸素や水分の浸入を防止できることから、発光素子1R、1G、1Bの信頼性の向上を図ることができる。
【0027】
以上説明したようなディスプレイ装置100は、各発光素子1R、1G、1Bを同時に発光させることで単色表示が可能であり、各発光素子1R、1G、1Bを組み合わせて発光させることでフルカラー表示も可能となる。
かかる構成のディスプレイ装置100において、本発明の発光素子が適用される。以下、本発明の発光素子が適用された各発光素子1R、1G、1Bについて、順次説明する。
【0028】
(発光素子1R)
発光素子(赤色発光素子)1Rは、正孔注入層41Rと、中間層42Rと、赤色発光機能層5Rと、キャリア選択層46と、青色発光機能層5Bと、電子輸送層62と、第2電子注入層63とが、陽極3R側からこの順に積層された積層体が、陽極3Rと陰極8との間に介挿されてなるものである。
【0029】
発光素子1Rにおいて、キャリア選択層46は、第1電子注入層61と正孔輸送層43とが、陽極3R側からこの順に積層された積層体により構成される。また、発光素子1Rにおいて、陽極3Rおよび陰極8は、それぞれ、個別電極および共通電極を構成し、陽極3Rは正孔注入層41Rに正孔を注入する電極として機能し、陰極8は第2電子注入層63を介して電子輸送層62に電子を注入する電極として機能する。
【0030】
以下、発光素子1Rを構成する各部について順次説明する。
[陽極3R]
陽極3Rは、正孔注入層41Rに正孔を注入する電極である。
この陽極3Rの構成材料としては、特に限定されないが、仕事関数が大きく、導電性に優れる材料が好適に用いられる。
【0031】
陽極3Rの構成材料としては、例えば、ITO(Indium Tin Oxide)、IZO(Indium Zinc Oxide)、In、SnO、フッ素添加SnO、Sb添加SnO、ZnO、Al添加ZnO、Ga添加ZnO等の金属酸化物、Au、Pt、Ag、Cuまたはこれらを含む合金等が挙げられ、これらのうちの1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0032】
このような陽極3Rの平均厚さは、特に限定されないが、10nm以上、200nm以下程度であるのが好ましく、30nm以上、150nm以下程度であるのがより好ましい。
なお、ディスプレイ装置100を、ボトムエミッション構造のディスプレイパネルとする場合、陽極3Rには光透過性が求められるため、上述した構成材料のうち、光透過性を有する金属酸化物が好適に用いられる。
【0033】
[正孔注入層41R]
正孔注入層41Rは、陽極3Rからの正孔注入を容易にする機能を有するものである。
この正孔注入層41Rの構成材料(正孔注入材料)としては、特に限定されないが、後述する、正孔注入層41Rの形成工程において、液相プロセスを用いて形成し得るように、導電性高分子材料(または導電性オリゴマー材料)に電子受容性ドーパントを添加したイオン伝導性正孔注入材料が好適に用いられる。
【0034】
このようなイオン伝導性正孔注入材料としては、例えば、ポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)−ポリ(スチレンスルホン酸)(PEDOT/PSS)のようなポリチオフォン系正孔注入材料や、ポリアニリン−ポリ(スチレンスルホン酸)(PANI/PSS)のようなポリアニリン系正孔注入材料や、下記一般式(1)で表わされるオリゴアニリン誘導体と、下記一般式(4)で表わされる電子受容性ドーパントとで塩を形成してなるオリゴアニリン系正孔注入材料が挙げられる。
【0035】
【化1】

[式中、R、RおよびRは、それぞれ独立して未置換もしくは置換の一価炭化水素基またはオルガノオキシ基を示し、AおよびBは、それぞれ独立して下記一般式(2)または下記一般式(3)で表される二価の基であり、R〜R11、はそれぞれ独立して水素原子、水酸基、未置換もしくは置換の一価炭化水素基またはオルガノオキシ基、アシル基、またはスルホン酸基であり、mおよびnは、それぞれ独立して1以上の正数で、m+n≦20を満足する。]
【0036】
【化2】

【0037】
【化3】

[式中、Dは、ベンゼン環、ナフタレン環、アトラセン環、フェナントレン環または複素環を表し、R12、R13は、それぞれ独立してカルボキシル基またはヒドロキシル基を表す。]
【0038】
このような正孔注入層の平均厚さは、特に限定されないが、5nm以上、150nm以下程度であるのが好ましく、10nm以上、100nm以下程度であるのがより好ましい。
なお、この正孔注入層41Rは、発光素子1Rを構成する、陽極3R、中間層42Rおよび赤色発光機能層5Rの構成材料の種類およびその膜厚等の組み合わせによっては省略することもできる。
【0039】
[中間層42R]
中間層42Rは、正孔注入層41Rから注入された正孔を赤色発光機能層5Rまで輸送する機能を有する。また、中間層42Rは、赤色発光機能層5Rから中間層42Rへ通過しようとする電子をブロックする機能を有する場合もある。
この中間層42Rの構成材料としては、特に限定されないが、後述する、中間層42Rの形成工程において、液相プロセスを用いて形成し得るように、例えば、下記一般式(5)で表わされるトリフェニルアミン系ポリマー等のアミン系化合物が好適に用いられる。
【0040】
【化4】

【0041】
このような中間層42Rの平均厚さは、特に限定されないが、5nm以上、100nm以下程度であるのが好ましく、10nm以上、50nm以下程度であるのがより好ましい。
なお、この中間層42Rは、発光素子1Rを構成する、陽極3R、正孔注入層41R、赤色発光機能層5R、第1電子注入層61、正孔輸送層43、青色発光機能層5B、電子輸送層62、第2電子注入層63および陰極8の構成材料の種類およびその膜厚等の組み合わせによっては省略することもできる。
【0042】
[赤色発光機能層5R]
赤色発光機能層5Rは、赤色に発光する赤色発光材料を含んで構成される。
発光素子1Rでは、この赤色発光機能層5Rが、陽極3Rとキャリア選択層(第2の層)46との間に設けられた第3の層を構成し、この赤色発光機能層5Rが発光素子1Rにおける第2の色(赤色)を発光する機能を有する。
【0043】
このような赤色発光機能層5Rの構成材料は、特に限定されないが、後述する、赤色発光機能層5Rの形成工程において、液相プロセスを用いて形成し得るように、溶液化または分散液化できることが望ましい。そこで、赤色発光機能層5Rの構成材料としては、溶媒または分散媒に、溶解または分散することができる、高分子赤色発光材料および低分子赤色発光材料が好適に用いられ、例えば、下記一般式(6)および下記一般式(7)で表わされる高分子赤色発光材料が挙げられる。
【0044】
【化5】

【0045】
なお、このような液相プロセスを経て形成される赤色発光機能層5Rを備える発光素子1Rは、実用レベルの発光寿命特性を十分に備えるものである。
このような赤色発光機能層5Rの平均厚さは、特に限定されないが、10nm以上、150nm以下程度であるのが好ましく、20nm以上、100nm以下程度であるのがより好ましい。
【0046】
[キャリア選択層46]
第1電子注入層61と拡散調整層44と正孔輸送層43とが、陽極3R側からこの順に積層された積層体により、キャリア選択層(第2の層)46が構成される。
発光素子1Rにおいて、キャリア選択層46は、青色発光機能層5Bからキャリア選択層46に流れてくる電子を赤色発光機能層5Rに円滑に注入するというキャリア注入動作を行う。このため、発光素子1Rにおいて、青色発光機能層5Bの発光は大幅に抑制され、赤色発光機能層5Rが選択的もしくは支配的に発光する。
【0047】
[第1電子注入層61]
第1電子注入層61は、キャリア選択層46を構成する層の一つであり、赤色発光機能層5Rに接する層である。
この第1電子注入層61の構成材料としては、例えば、アルカリ金属、アルカリ土類金属、希土類金属、アルカリ金属塩(酸化物、フッ化物、塩化物等)、アルカリ土類金属塩(酸化物、フッ化物、塩化物等)、希土類金属塩(酸化物、フッ化物、塩化物等)、金属錯体等のような電子注入材料が挙げられ、これらのうちの1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
第1電子注入層61をこのような電子注入材料を主材料として構成されるものとすることで、キャリア選択層46を介した、青色発光機能層5Bから赤色発光機能層5Rへの電子の注入効率をより向上させることができる。
【0048】
アルカリ金属としては、例えば、Li、Na、K、Rb、Csが挙げられる。また、アルカリ土類金属としては、例えば、Mg、Ca、Sr、Baが挙げられる。さらに、希土類金属としては、例えば、Nd、Sm、Y、Tb、Euが挙げられる。
アルカリ金属塩としては、例えば、LiF、LiCO、LiCl、NaF、NaCO、NaCl、CsF、CsCO、CsClが挙げられる。また、アルカリ土類金属塩としては、例えば、CaF、CaCO、SrF、SrCO、BaF、BaCOが挙げられる。さらに、希土類金属塩としては、例えば、SmF、ErFが挙げられる。
金属錯体としては、例えば、8−キノリノラトリチウム(Liq)やトリス(8−キノリノラト)アルミニウム(Alq)等の8−キノリノールなしいその誘導体を配位子とする有機金属錯体が挙げられる。
【0049】
また、第1電子注入層61の形成プロセスは、真空蒸着法(蒸着法)やスパッタ法のような気相プロセスを用いても良いし、インクジェット法やスリットコート法のような液相プロセスを用いても良い。
さらに、第1電子注入層61は、2種以上の電子注入層が積層される形で形成されていても良い。これによって、キャリア選択層46の発光素子1Rにおけるキャリア注入動作が的確に行われる。
第1電子注入層61の平均厚さは、特に限定されないが、0.01nm以上、10nm以下程度であるのが好ましく、0.1nm以上、5nm以下程度であるのがより好ましい。第1電子注入層61の平均厚さをかかる範囲内に設定することにより、キャリア選択層46の発光素子1Rにおけるキャリア注入動作が的確に行われる。
【0050】
[拡散調整層44]
拡散調整層44は、キャリア選択層46を構成する層の一つであり、第1電子注入層61と正孔輸送層43との間に位置して、これらの双方に接する層である。
この拡散調整層44の構成材料としては、第1電子注入層61を構成する電子注入材料と親和性が高く、かつ電子注入材料よりも拡散しにくい材料が用いられ、これにより、電子注入材料を拡散調整層44中において吸着させることができる。このような拡散調整層44の構成材料としては、具体的には、電子注入材料の種類によっても若干異なるが、例えば、Al、Ag、Cu、Au、Mg、Ca、Sr、Ba、Ti、Zr、Sn、Zn、Nb、Cr、Moのうちから選択される金属、もしくはこれらの合金等が挙げられる。
【0051】
拡散調整層44をこのような金属またはこれらの合金で構成されるものとすることで、キャリア選択層46を介した、青色発光機能層5Bから赤色発光機能層5Rへの電子の注入効率を長時間に亘ってより安定的に向上させることができる。
また、拡散調整層44の形成プロセスは、真空蒸着法(蒸着法)やスパッタ法のような気相プロセスを用いても良いし、インクジェット法やスリットコート法のような液相プロセスを用いても良い。
拡散調整層44の平均厚さは、特に限定されないが、0.01nm以上、10nm以下程度であるのが好ましく、0.1nm以上、5nm以下程度であるのがより好ましい。拡散調整層44の平均厚さをかかる範囲内に設定することにより、キャリア選択層46の発光素子1Rにおけるキャリア注入動作が的確に行われる。
【0052】
[正孔輸送層43]
正孔輸送層43は、キャリア選択層46を構成する層の一つであり、青色発光機能層5Bに接する層である。
この正孔輸送層43の構成材料としては、特に限定されないが、後述する、正孔輸送層43の形成工程において、真空蒸着法のような気相プロセスを用いて形成し得るように、例えば、N,N’−ジフェニル−N,N’−ジ(m−トリル)−ベンジジン(TPD)、下記式(8)で表わされるビス[N−(1−ナフチル)−N−フェニル]ベンジジン(α−NPD)、下記式(9)で表わされる化合物のようなベンジジン誘導体等のアミン系化合物が挙げられ、これらのうちの1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0053】
【化6】

【0054】
このような正孔輸送層43の平均厚さは、特に限定されないが、1nm以上、50nm以下程度であるのが好ましく、5nm以上、30nm以下程度であるのがより好ましい。正孔輸送層43の平均厚さをかかる範囲内に設定することにより、キャリア選択層46の発光素子1Rにおけるキャリア注入動作が的確に行われる。
【0055】
[青色発光機能層5B]
青色発光機能層5Bは、青色に発光する青色発光材料を含んで構成されている。
本実施形態では、この青色発光機能層5Bが、陽極(3R、3G、3B)と陰極8との間に設けられた第1の層を構成し、この青色発光機能層5Bが第1の色(青色)を発光する機能を有する。
この青色発光機能層5Bの構成材料としては、特に限定されないが、後述する、青色発光機能層5Bの形成工程において、気相プロセスを用いて形成し得るものが好適に用いられ、例えば、下記式(10)で表わされるスチリル誘導体の青色発光材料が挙げられる。
【0056】
【化7】

【0057】
また、その他に青色発光機能層5Bの構成材料としては、青色発光材料をゲスト材料としてホスト材料にドープしたものが用いられる。ホスト材料は、正孔と電子とを再結合させて励起子を生成するとともに、その励起子のエネルギーを青色発光材料に移動(フェルスター移動またはデクスター移動)させる機能を有する。このホスト材料の機能により、ゲスト材料である青色発光材料が効率よく励起され、発光する。
【0058】
ここで、ホスト材料としては、例えば、下記式(11)、下記式(12)および下記式(13)で表わされるアントラセン誘導体が挙げられ、これらのうちの1種または2種以上を組み合わせて用いることもできる。また、ゲスト材料としての青色発光材料としては、例えば、下記式(14)、下記式(15)および下記式(16)で表わされるスチリル誘導体が挙げられ、これらのうちの1種または2種以上を組み合わせて用いることもできる。
【0059】
【化8】

【0060】
なお、このような気相プロセスを経て形成される青色発光機能層5Bを備える発光素子1Bは、実用レベルの発光寿命特性を十分に備えるものである。
さらに、このようなゲスト材料およびホスト材料を用いる場合、青色発光機能層5B中におけるゲスト材料の含有量(ドープ量)は、ホスト材料に対して重量比で0.1%以上、20%以下程度であるのが好ましく、0.5%以上、10%以下程度であるのがより好ましい。ゲスト材料の含有量をこのような範囲内とすることで、発光効率を最適化することができる。
このような青色発光機能層5Bの平均厚さは、特に限定されないが、5nm以上、100nm以下程度であるのが好ましく、10nm以上、50nm以下程度であるのがより好ましい。
【0061】
[電子輸送層62]
電子輸送層62は、陰極8から第2電子注入層63を介して電子輸送層62に注入された電子を青色発光機能層5Bに輸送する機能を有するものである。また、電子輸送層62は、青色発光機能層5Bから電子輸送層62へ通過しようとする正孔をブロックする機能を有する場合もある。
【0062】
電子輸送層62の構成材料(電子輸送材料)としては、特に限定されないが、後述する、電子輸送層62の形成工程において、気相プロセスを用いて形成し得るように、例えば、トリス(8−キノリノラト)アルミニウム(Alq)や8−キノリノラトリチウム(Liq)等の8−キノリノールなしいその誘導体を配位子とする有機金属錯体などのキノリン誘導体、2−(4−tert−ブチルフェニル)−5−(4−ビフェニル)−1,3,4−オキサジアゾール(tBu−PBD)、2,5−ビス(1−ナフチル)−1,3,4−オキサジアゾール(BND)のようなオキサジアゾール誘導体、3−(4−ビフェニル)−4−フェニル−5−(4−tert−ブチルフェニル)−1,2,4−トリアゾール(TAZ)のようなトリアゾール誘導体、下記式(17)で表わされる化合物のようなシロール誘導体、ピリジン誘導体、ピリミジン誘導体、キノキサリン誘導体、下記式(18)で表わされる化合物のような含窒素複素環誘導体等が好適に用いられ、これらのうちの1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0063】
【化9】

【0064】
電子輸送層62の平均厚さは、特に限定されないが、1nm以上、100nm以下程度であるのが好ましく、5nm以上、50nm以下程度であるのがより好ましい。これにより、第2電子注入層63から注入された電子を好適に青色発光機能層5Bに輸送することができる。
なお、この電子輸送層62は、発光素子1Rを構成する赤色発光機能層5R、第1電子注入層61、正孔輸送層43、青色発光機能層5B、第2電子注入層63および陰極8の構成材料の種類およびその膜厚等の組み合わせによっては省略することもできる。
【0065】
[第2電子注入層63]
第2電子注入層63は、陰極8から電子輸送層62への電子の注入効率を向上させる機能を有するものである。
この第2電子注入層63の構成材料(電子注入材料)としては、特に限定されないが、例えば、前述の第1電子注入層61の構成材料として挙げたものと同様のものを用いることができる。
なお、第2電子注入層63および第1電子注入層61の構成材料(電子注入材料)は、それぞれ、これらを挾持する2つの層の構成材料の組み合わせに応じて、最適な注入効率が得られるものが選択されるため、第2電子注入層63の構成材料と第1電子注入層61の構成材料とは、同一であっても異なっていてもよい。
【0066】
第2電子注入層63の平均厚さは、特に限定されないが、0.01nm以上、100nm以下程度であるのが好ましく、0.1nm以上、10nm以下程度であるのがより好ましい。
なお、この第2電子注入層63は、電子輸送層62と陰極8の構成材料の種類およびその膜厚等の組み合わせによっては省略することもできる。
【0067】
[陰極8]
陰極8は、第2電子注入層63を介して電子輸送層62に電子を注入する電極である。
この陰極8の構成材料としては、仕事関数の小さい材料を用いるのが好ましい。陰極8の構成材料のとしては、後述する、陰極8の形成工程において、気相プロセスを用いて形成し得るように、例えば、Li、Mg、Ca、Sr、La、Ce、Er、Eu、Sc、Y、Yb、Ag、Cu、Al、Cs、Rb、Auまたはこれらを含む合金等が用いられ、これらのうちの1種または2種以上を組み合わせて(例えば、複数層の積層体等)用いることができる。
【0068】
特に、本実施形態のように、ボトムエミッション構造のディスプレイ装置100とする場合、陰極8には光透過性が求められず、陰極8の構成材料のとしては、例えば、Al、Ag、AlAg、AlNd等の金属または合金が好ましく用いられる。かかる金属または合金を陰極8の構成材料として用いることにより、陰極8の電子注入効率および安定性の向上を図ることができる。
このような陰極8の平均厚さは、特に限定されないが、50nm以上、1000nm以下程度であるのが好ましく、100nm以上、500nm以下程度であるのがより好ましい。
【0069】
なお、ディスプレイ装置100がトップエミッション構造の表示装置である場合、陰極8の構成材料としては、MgAg、MgAl、MgAu、AlAg等の金属または合金を用いるのが好ましい。かかる金属または合金を陰極8の構成材料として用いることにより、陰極8の光透過性を維持しつつ、陰極8の電子注入効率および安定性の向上を図ることができる。
【0070】
このような陰極8の平均厚さは、特に限定されないが、1nm以上、50nm以下程度であるのが好ましく、5nm以上、20nm以下程度であるのがより好ましい。
なお、かかる構成の発光素子1Rの陽極3R、正孔注入層41R、中間層42R、赤色発光機能層5R、第1電子注入層61、正孔輸送層43、青色発光機能層5B、電子輸送層62、第2電子注入層63および陰極8の各層の間には、任意の層が設けられていてもよい。
【0071】
(発光素子1G)
発光素子(緑色発光素子)1Gは、正孔注入層41Gと、中間層42Gと、緑色発光機能層5Gと、キャリア選択層46と、青色発光機能層5Bと、電子輸送層62と、第2電子注入層63とが、陽極3G側からこの順に積層された積層体が、陽極3Gと陰極8との間に介挿されてなるものである。
【0072】
発光素子1Gにおいて、キャリア選択層46は、第1電子注入層61と拡散調整層44と正孔輸送層43とが、陽極3G側からこの順に積層された積層体により構成される。また、発光素子1Gにおいて、陽極3Gおよび陰極8は、それぞれ、個別電極および共通電極を構成し、陽極3Gは正孔注入層41Gに正孔を注入する電極として機能し、陰極8は第2電子注入層63を介して電子輸送層62に電子を注入する電極として機能する。
【0073】
以下、発光素子1Gについて説明するが、前述した発光素子1Rとの相違点を中心に説明し、同様の事項については、その説明を省略する。
発光素子1Gは、赤色発光機能層5Rに代えて緑色発光機能層5Gを備えること以外は、前述の発光素子1Rと同様の構成のものである。
【0074】
[緑色発光機能層5G]
緑色発光機能層5Gは、緑色に発光する緑色発光材料を含んで構成される。
発光素子1Gでは、この緑色発光機能層5Gが、陽極3Gとキャリア選択層(第2の層)46との間に設けられた第3の層を構成し、この緑色発光機能層5Gが発光素子1Gにおける第2の色(緑色)を発光する機能を有する。
【0075】
このような緑色発光機能層5Gの構成材料は、特に限定されないが、後述する、緑色発光機能層5Gの形成工程において、液相プロセスを用いて形成し得るように、溶液化または分散液化できることが望ましい。そこで、緑色発光機能層5Gの構成材料としては、溶媒または分散媒に、溶解または分散することができる、高分子緑色発光材料および低分子緑色発光材料が好適に用いられ、例えば、下記一般式(19)および下記一般式(20)で表わされる高分子緑色発光材料が挙げられる。
【0076】
【化10】

【0077】
なお、このような液相プロセスを経て形成される緑色発光機能層5Gを備える発光素子1Gは、実用レベルの発光寿命特性を十分に備えるものである。
このような緑色発光機能層5Gの平均厚さは、特に限定されないが、10nm以上、150nm以下程度であるのが好ましく、20nm以上、100nm以下程度であるのがより好ましい。
なお、かかる構成の発光素子1Gの陽極3G、正孔注入層41G、中間層42G、緑色発光機能層5G、第1電子注入層61、拡散調整層44、正孔輸送層43、青色発光機能層5B、電子輸送層62、第2電子注入層63および陰極8の各層の間には、任意の層が設けられていてもよい。
【0078】
(発光素子1B)
発光素子(青色発光素子)1Bは、正孔注入層41Bと、キャリア選択層46と、青色発光機能層5Bと、電子輸送層62と、第2電子注入層63とが、陽極3B側からこの順に積層された積層体が、陽極3Bと陰極8との間に介挿されてなるものである。
発光素子1Bにおいて、キャリア選択層46は、第1電子注入層61と拡散調整層44と正孔輸送層43とが、陽極3B側からこの順に積層された積層体により構成される。また、発光素子1Bにおいて、陽極3Bおよび陰極8は、それぞれ、個別電極および共通電極を構成し、陽極3Bは正孔注入層41Bに正孔を注入する電極として機能し、陰極8は第2電子注入層63を介して電子輸送層62に電子を注入する電極として機能する。
【0079】
以下、発光素子1Bについて説明するが、前述した発光素子1Rとの相違点を中心に説明し、同様の事項については、その説明を省略する。
発光素子1Bは、中間層42Rおよび赤色発光機能層5Rの形成を省略して、正孔注入層41Bとキャリア選択層46とが互いに接する構成としたこと以外は、前記発光素子1Rと同様の構成のものである。但し、正孔注入層41Bとキャリア選択層46とが互いに接する構成としたことに起因して、発光素子1Bにおけるキャリア選択層46の機能は、発光素子1Rおよび1Gにおけるキャリア選択層46の機能とは大きく異なる。また、正孔注入層41Bに求められる機能も異なる場合がある。
【0080】
[正孔注入層41B]
正孔注入層41Bは、陽極3Bからの正孔注入を容易にする機能を有するものである。
この正孔注入層41Bの構成材料(正孔注入材料)としては、特に限定されないが、後述する、正孔注入層41Bの形成工程において、液相プロセスを用いて形成し得るように、導電性高分子材料(または導電性オリゴマー材料)に電子受容性ドーパントを添加したイオン伝導性正孔注入材料が好適に用いられる。
【0081】
また、正孔注入層41Bの構成材料(正孔注入材料)としては、第1電子注入層61を構成する電子注入材料が、拡散もしくは吸着しやすい材料を選択することが望ましい。これによって、キャリア選択層46の発光素子1Bにおけるキャリアブロック動作が的確に行われる。第1電子注入層61を構成する電子注入材料が、拡散もしくは吸着しやすい正孔注入材料としては、例えば、イオン伝導性正孔注入材料が挙げられる。
このようなイオン伝導性正孔注入材料としては、正孔注入層41Rの構成材料(正孔注入材料)として挙げたものと同様のものを用いることができる。
【0082】
[キャリア選択層46]
第1電子注入層61と拡散調整層44と正孔輸送層43とが、陽極3B側からこの順に積層された積層体により、キャリア選択層(第2の層)46が構成される。これら第1電子注入層61、拡散調整層44および正孔輸送層43を構成する材料としては、それぞれ、前述の発光素子1Rの第1電子注入層61および正孔輸送層43と同様のものを用いることができる。
【0083】
発光素子1Bにおいて、キャリア選択層46は、青色発光機能層5Bからキャリア選択層46に流れてくる電子をブロックし、これら電子を青色発光機能層5Bに留めるというキャリアブロック動作を行う。このため、発光素子1Bにおいて、青色発光機能層5Bは効率よく発光する。このキャリアブロック動作を的確に行うためには、発光素子1Bの正孔輸送層43には、キャリアブロック機能を有するものを用いることが望ましい。例えば、前述の発光素子1Rの正孔輸送層43の構成材料として挙げたアミン系化合物を用いることにより、正孔輸送層43は電子ブロック機能を有するものとなる。
なお、かかる構成の発光素子1Bの陽極3B、正孔注入層41B、第1電子注入層61、拡散調整層44、正孔輸送層43、青色発光機能層5B、電子輸送層62、第2電子注入層63および陰極8の各層の間には、任意の層が設けられていてもよい。
【0084】
以下、発光素子1R、1G、1Bにおける作用効果について、キャリア選択層46の機能を中心に説明する。
本実施形態では、キャリア選択層(第2の層)46は、第1電子注入層61と拡散調整層44と正孔輸送層43とが、陽極(3R、3G、3B)側からこの順に積層された積層体により構成される。
かかる構成のキャリア選択層46は、青色発光機能層5Bからキャリア選択層46に注入される電子の量を、キャリア選択層46の陽極(3R、3G、3B)側に接する層(第3の層)に応じて、選択的に制御する層である。すなわち、キャリア選択層(第2の層)46は、第3の層の機能によってキャリアの流れが選択される機能を有する層である。
【0085】
具体的には、発光素子1Rおよび1Gのように、キャリア選択層46の陽極(3R、3G)側に直接接する層が、それぞれ、赤色発光機能層5Rおよび緑色発光機能層5Gの場合、すなわち、キャリア選択層の陽極側界面に第2の色を発光する機能を有する発光機能層が接触する場合、キャリア選択層46は青色発光機能層5Bからキャリア選択層46に流れてくる電子を赤色発光機能層5Rおよび緑色発光機能層5Gに円滑に注入する(キャリア注入動作)。このため、発光素子1Rの青色発光機能層5Bでは、正孔と電子との再結合が的確に抑制または防止されるため、発光素子1Rの青色発光機能層5Bは、青色発光しないか、青色発光したとしてもその発光は的確に抑制される。これに対して、赤色発光機能層5Rには、陰極8側から青色発光機能層5Bを介して電子が供給(注入)されるとともに、陽極3R側から正孔が供給(注入)される。そして、赤色発光機能層5Rでは、正孔と電子とが再結合し、この再結合によって励起子(エキシトン)が生成し、励起子が基底状態に戻る際にエネルギーを蛍光やりん光として放出するため、赤色発光機能層5Rが赤色に発光する。その結果、発光素子1Rは赤色に発光する。同様に、発光素子1Gにおいても、青色発光機能層5Bの発光は大幅に抑制され、緑色発光機能層5Gが選択的もしくは支配的に発光する。その結果、発光素子1Gは緑色に発光する。
【0086】
一方、発光素子1Bのように、キャリア選択層46の陽極3B側に接する層が正孔注入層41Bの場合、すなわち、キャリア選択層の陽極側界面に正孔注入層が接触する場合、キャリア選択層46は青色発光機能層5Bからキャリア選択層46に流れてくる電子をブロックし、これら電子を青色発光機能層5Bに留める(キャリアブロック動作)。このため、青色発光機能層5Bにおいて、陽極3B側から供給(注入)された正孔と、陰極8側から供給(注入)された電子とが、再結合しやすくなる。この再結合によって励起子(エキシトン)が生成し、励起子が基底状態に戻る際にエネルギーを蛍光やりん光として放出するため、青色発光機能層5Bは効率良く発光する。その結果、発光素子1Bは高効率で青色に発光する。
このように、キャリア選択層46は、キャリア選択層(第2の層)46に接する第3の層の種類によって、キャリア注入動作を行ったり、キャリアブロック動作を行ったりする。
【0087】
発光素子1Rと発光素子1Gにおけるキャリア選択層46の電子に対する挙動と、発光素子1Bにおけるキャリア選択層46の電子に対する挙動が異なる理由について、正孔注入層41Bがイオン伝導性の正孔注入材料だった場合を例に説明を行う。
まず、発光素子1Rおよび1Gのように、キャリア選択層46の陽極(3R、3G)側に接する層が、それぞれ、赤色発光機能層5Rおよび緑色発光機能層5Gの場合、発光素子1Rおよび1Gのキャリア選択層46内の第1電子注入層61を構成している電子注入材料が、それぞれ、発光素子1Rおよび1Gの正孔輸送層43内に拡散し、これによって発光素子1Rおよび1Gの正孔輸送層43に備わっている電子ブロック機能が大きく低下する。この結果、発光素子1Rおよび1Gでは、青色発光機能層5Bから正孔輸送層43へ電子が円滑に注入される。さらに、赤色発光機能層5Rおよび緑色発光機能層5Gと、正孔輸送層43との間に存在する第1電子注入層61の機能により、正孔輸送層43から、赤色発光機能層5Rおよび緑色発光機能層5Gへの電子の注入も円滑に行われる。以上より、発光素子1Rおよび1Gのように、キャリア選択層46の陽極(3R、3G)側に接する層が、それぞれ、赤色発光機能層5Rおよび緑色発光機能層5Gの場合、キャリア選択層46は、青色発光機能層5Bからキャリア選択層46に流れてくる電子を、それぞれ、赤色発光機能層5Rおよび緑色発光機能層5Gに円滑に注入する(キャリア注入動作)。すなわち、キャリア選択層46は、青色発光機能層5Bから、赤色発光機能層5Rおよび緑色発光機能層5Gに、電子(キャリア)を円滑に流す動作を行う。
【0088】
ところで、上述のように、発光素子1Rおよび1Gでは、第1電子注入層61を構成している電子注入材料が正孔輸送層43内に拡散し、これにより、発光素子1Rおよび1Gの正孔輸送層43に備わっている電子ブロック機能を大きく低下させる必要がある。しかしながら、必要量以上に正孔輸送層43内に早期に拡散してしまうと、使用の初期では、正孔輸送層43の電子ブロック機能を大きく低下させることができるが、発光素子1Rおよび1Gの使用に伴い、電子注入材料がさらに拡散し、正孔輸送層43内における電子注入材料の含有率が低下してしまい、その結果、正孔輸送層43の電子ブロック機能が再度、向上するという問題がある。
【0089】
かかる問題点を考慮して、本実施形態では、キャリア選択層46は、第1電子注入層61と拡散調整層44と正孔輸送層43とが、陽極3R、3G側からこの順に積層された積層体により構成される。ここで、拡散調整層44は、上述したように、第1電子注入層61を構成する電子注入材料と親和性が高く、かつ電子注入材料よりも拡散しにくい材料で構成されている。そのため、キャリア選択層46を、このような拡散調整層44を備える構成とすることで、拡散調整層44において、電子注入材料を捕捉することができるようになるため、必要量以上に正孔輸送層43内に電子注入材料が早期に拡散してしまうのを的確に抑制することができるようになる。その結果、発光素子1Rおよび1Gの長時間の使用(連続駆動)によっても、正孔輸送層43の電子ブロック機能を大きく低下させることができる。そのため、発光素子1Rおよび1Gにおいて、青色発光機能層5Bを発光させることなく、それぞれ、赤色発光機能層5Rおよび緑色発光機能層5Gを選択的に発光させることができるようになる。
【0090】
なお、第1電子注入層61を構成している電子注入材料の正孔輸送層43内における拡散は、上述したような長時間の使用によっても生じるが、ディスプレイ装置100の高温下における保存によっても生じることが判っている。そのため、キャリア選択層46を、第1電子注入層61と拡散調整層44と正孔輸送層43とが、陽極(3R、3G、3B)側からこの順に積層された積層体とすることによる効果を、ディスプレイ装置100の高温下における保存時においても同様に得ることができる。
【0091】
一方、発光素子1Bのように、キャリア選択層46の陽極3B側に接する層が正孔注入層41Bで、且つ、その正孔注入層41Bがイオン伝導性の正孔注入材料によって構成されている場合、発光素子1Bのキャリア選択層46内の第1電子注入層61を構成している電子注入材料が、正孔注入層41B内に激しく拡散、もしくは正孔注入層41Bの陰極8側界面に吸着するため、発光素子1Bの第1電子注入層61を構成している電子注入材料が、発光素子1Bの正孔輸送層43内に拡散せず、発光素子1Bの正孔輸送層43に備わっている電子ブロック機能が低下することはない。この結果、発光素子1Bでは、青色発光機能層5Bから正孔輸送層43へ流れてくる電子が、正孔輸送層43によってブロックされ、青色発光機能層5B内に留まる。以上より、キャリア選択層46の陽極3B側に接する層が正孔注入層41Bの場合、キャリア選択層46は青色発光機能層5Bからキャリア選択層46に流れてくる電子をブロックし、これら電子を青色発光機能層5Bに留める(キャリアブロック動作)。すなわち、キャリア選択層46は、青色発光機能層5Bから流れてくる電子(キャリア)の流れを抑制する動作を行う。
【0092】
本発明者の検討により、発光素子1Rからキャリア選択層46を除き、青色発光機能層5Bと、赤色発光機能層5Rとが接触して積層された構成の赤色発光素子(キャリア選択層除外赤色発光素子)では、当該キャリア選択層除外赤色発光素子が備える陽極3Rと、陰極8との間に電圧を印加すると、陰極8側から青色発光機能層5Bに注入された電子を、赤色発光機能層5Rに円滑に注入(供給)することができず、これに起因して、青色発光機能層5Bにおいて、正孔と電子とが再結合するため、青色発光機能層5Bが青色に発光し、当該キャリア選択層除外赤色発光素子の赤色の色純度が悪化することが判っている。また、キャリア選択層除外赤色発光素子では、陰極8側から青色発光機能層5Bに注入された電子を、赤色発光機能層5Rに円滑に注入(供給)することができないことに起因して、赤色発光機能層5Rにおける電子と正孔のキャリアバランスが崩れ、発光効率が低下することが判っている。さらに、キャリア選択層除外赤色発光素子では、陰極8側から青色発光機能層5Bに注入された電子を、赤色発光機能層5Rに円滑に注入(供給)することができないことに起因して、赤色発光機能層5Rの陰極側界面でのキャリアに対するエネルギー障壁が増加し、駆動電圧が上昇することが判っている。
【0093】
このように、キャリア選択層除外赤色発光素子では、赤色の色純度の悪化、発光効率の低下および駆動電圧の上昇という問題がある。しかしながら、発光素子1Rのように、青色発光機能層5Bと赤色発光機能層5Rとの間にキャリア選択層46を介挿する構成とすることで、陰極8側から青色発光機能層5Bに注入された電子を、青色発光機能層5Bに留まらせることなく、赤色発光機能層5Rに円滑に注入(供給)することができるようになるので、これらの問題は全て解決される。
【0094】
同様に、発光素子1Gからキャリア選択層46を除き、青色発光機能層5Bと、緑色発光機能層5Gとが接触して積層された構成の緑色発光素子(キャリア選択層除外緑色発光素子)では、陰極8側から青色発光機能層5Bに注入された電子を、緑色発光機能層5Gに円滑に注入(供給)することができず、これに起因して、緑色の色純度の悪化、発光効率の低下および駆動電圧の上昇という問題が生じる。しかしながら、発光素子1Gのように、青色発光機能層5Bと緑色発光機能層5Gとの間にキャリア選択層46を介挿する構成とすることで、陰極8側から青色発光機能層5Bに注入された電子を、青色発光機能層5Bに留まらせることなく、緑色発光機能層5Gに円滑に注入(供給)することができるようになるので、これらの問題は全て解決される。
【0095】
また、本実施形態の正孔輸送層43と青色発光機能層5Bは、気相プロセスを用いて形成することができる。本発明者の検討により、発光素子1Bにおいて、正孔輸送層43と青色発光機能層5Bのうち少なくとも1つの層の形成に、インクジェット法のような液相プロセスを用いた構成の青色発光素子では、発光素子1Bと比較して、その発光寿命や発光効率が低下するという問題があることが判っている。
【0096】
正孔輸送層43と青色発光機能層5Bのうち少なくとも1つの層の汚染がこの問題の要因の1つになっていると考えられる。つまり、発光素子1Bのように気相プロセスを用いて正孔輸送層43と青色発光機能層5Bを形成することが可能な場合、正孔輸送層43の陰極側界面を、真空以外の雰囲気にさらすことなく、次の青色発光機能層5Bの成膜を連続的に行うことができるが、正孔輸送層43と青色発光機能層5Bのうち少なくとも1つの層の形成に液相プロセスを用いると、液相プロセスによる成膜は真空雰囲気で行うことが困難であるため、液相プロセスによる成膜は真空以外の雰囲気(例えば大気や窒素)で行うことになり、少なくとも正孔輸送層43の陰極8側界面は真空以外の雰囲気にさらされることになる。このように、液相プロセスを用いて正孔輸送層43と青色発光機能層5Bのうち少なくとも1つの層を成膜した場合、正孔輸送層43の陰極8側界面が汚染され易くなることは明白である。また、液相プロセスで正孔輸送層43の成膜を行う場合、正孔輸送材料を溶媒または分散媒に、溶解または分散させた溶液を成膜に用いるため、正孔輸送層43内に極微量の溶媒が残留し、これが正孔輸送層43全体を汚染する可能性がある。同様に、液相プロセスで青色発光機能層5Bの成膜を行う場合、青色発光機能層5B内に極微量の溶媒が残留し、これが青色発光機能層5B全体を汚染する可能性がある。
【0097】
これに対して、発光素子1Bのように、気相プロセスを用いて正孔輸送層43と青色発光機能層5Bを形成することが可能な場合、液相プロセスを用いて正孔輸送層43と青色発光機能層5Bのうち少なくとも1つの層を形成したことによる正孔輸送層43と青色発光機能層5Bの汚染を回避でき、液相プロセスを用いて正孔輸送層43と青色発光機能層5Bのうち少なくとも1つの層を形成したことによる青色発光素子の発光寿命や発光効率の低下という問題は全て解決される。
【0098】
本実施形態では、正孔注入層41Bがイオン伝導性の正孔注入材料を主材料として構成されるのが好ましく、第1電子注入層61がアルカリ金属、アルカリ土類金属、もしくはそれらの化合物の電子注入材料を主材料として構成されるのが好ましいが、この場合、発光素子1Bおいて、第1電子注入層61に含まれるこれら電子注入材料が、正孔輸送層43側に拡散すると、電子注入材料が正孔輸送層43に拡散することによる正孔輸送層43の電子ブロック性の低下およびそれに伴う青色発光機能層5Bにおける発光効率の低下や、電子注入材料が青色発光機能層5Bへ拡散することによる青色発光機能層5Bにおける発光の阻害およびそれに伴う発光効率の低下という問題が起こる。しかしながら、本実施形態では、発光素子1Bにおいて、第1電子注入層61とイオン伝導性の正孔注入層41Bとが接触しているため、正孔注入層41B内に激しく拡散、もしくは正孔注入層41Bの陰極8側界面に吸着するため、これに起因して、電子注入材料の正孔輸送層43側への拡散が的確に抑制または防止され、前述の電子注入材料が正孔輸送層43側へ拡散することによって起こる問題は全て解決される。
【0099】
(ディスプレイ装置100の製造方法)
以上のようなディスプレイ装置100は、例えば、次のようにして製造することができる。
[1]まず、基板21を用意し、形成すべきサブ画素100R、100G、100Bに対応するように、複数の駆動用トランジスタ24を形成したのち、これら駆動用トランジスタ24を覆うように平坦化層22を形成する(第1の工程)。
[1−A]まず、基板21を用意し、基板21上に、駆動用トランジスタ24を形成する。
【0100】
[1−Aa]まず、基板21上に、例えばプラズマCVD法等により、平均厚さが30nm以上、70nm以下程度のアモルファスシリコンを主材料として構成される半導体膜を形成する。
[1−Ab]次いで、半導体膜に対して、レーザアニールまたは固相成長法等により結晶化処理を行い、アモルファスシリコンをポリシリコンに変化させる。
ここで、レーザアニール法では、例えば、エキシマレーザでビームの長寸が400mmのラインビームを用い、その出力強度は、例えば200mJ/cm程度に設定される。
【0101】
[1−Ac]次いで、半導体膜をパターニングして島状とすることで半導体層241を得、これら島状の半導体層241を覆うように、例えば、TEOS(テトラエトキシシラン)や酸素ガスなどを原料ガスとして、プラズマCVD法等により、平均厚さが60nm以上、150nm以下程度の酸化シリコンまたは窒化シリコン等を主材料として構成されるゲート絶縁層242を形成する。
【0102】
[1−Ad]次いで、ゲート絶縁層242上に、例えば、スパッタ法等により、アルミニウム、タンタル、モリブデン、チタン、タングステンなどの金属を主材料として構成される導電膜を形成した後、パターニングし、ゲート電極243を形成する。
[1−Ae]次いで、この状態で、高濃度のリンイオンを打ち込んで、ゲート電極243に対して自己整合的にソース・ドレイン領域を形成する。なお、不純物が導入されなかった部分がチャネル領域となる。
【0103】
[1−B]次に、駆動用トランジスタ24に電気的に接続されるソース電極244およびドレイン電極245を形成する。
[1−Ba]まず、ゲート電極243を覆うように、第1平坦化層を形成した後、コンタクトホールを形成する。
[1−Bb]次いで、コンタクトホール内にソース電極244およびドレイン電極245を形成する。
【0104】
[1−C]次に、ドレイン電極245と、各陽極3R、3G、3Bとを電気的に接続する配線(中継電極)27を形成する。
[1−Ca]まず、第1平坦化層上に、第2平坦化層を形成した後、コンタクトホールを形成する。
[1−Cb]次いで、コンタクトホール内に配線27を形成する。
なお、[1−B]工程および[1−C]工程において形成された第1平坦化層および第2平坦化層により平坦化層22が構成される。
【0105】
[2]次に、平坦化層22上に、各配線27に対応するように、陽極(個別電極)3R、3G、3Bを形成する(第2の工程)。
この陽極3R、3G、3Bは、平坦化層22上に、陽極3R、3G、3Bの構成材料を主材料として構成される薄膜を形成した後、パターニングすることにより得ることができる。
【0106】
[3]次に、平坦化層22上に、各陽極3R、3G、3Bを区画するように、すなわち、各発光素子1R、1G、1B(サブ画素100R、100G、100B)を形成する領域を区画するように、隔壁(バンク)31を形成する(第3の工程)。
隔壁31は、各陽極3R、3G、3Bを覆うように平坦化層22上に、絶縁膜を形成した後、各陽極3R、3G、3Bが露出するようにフォトリソグラフィー法等を用いてパターニングすること等により形成することができる。
ここで、隔壁31の構成材料は、耐熱性、撥液性、インク溶剤耐性、平坦化層22等との密着性等を考慮して選択される。
具体的には、隔壁31の構成材料としては、例えば、アクリル系樹脂、ポリイミド系樹脂、エポキシ系樹脂のような有機材料や、SiOのような無機材料が挙げられる。
【0107】
また、隔壁31の開口の形状は、四角形の他、例えば、円形、楕円形、六角形等の多角形等、いかなるものであってもよい。
なお、隔壁31の開口の形状を多角形とする場合には、角部は丸みを帯びているのが好ましい。これにより、正孔注入層41R、41G、41B、中間層42R、42Gおよび発光機能層5R、5Gを、後述するような液状材料を用いて形成する際に、これらの液状材料を、隔壁31の内側の空間の隅々にまで確実に供給することができる。
このような隔壁31の高さは、発光素子1R、1G、1Bの厚さに応じて適宜設定され、特に限定されないが、0.5μm以上、5μm以下程度とするのが好ましい。かかる高さとすることにより、十分に隔壁(バンク)としての機能が発揮される。
【0108】
なお、インクジェット法によって、正孔注入層41R、41G、41B、中間層42R、42Gおよび発光機能層5R、5Gを形成する場合、隔壁31が形成された基板21は、プラズマ処理されることが望ましい。具体的には、隔壁31が形成された基板21の表面を、まずOガスを処理ガスとしてプラズマ処理する。これにより陽極3R、3G、3Bの表面と隔壁31の表面(壁面を含む)が活性化され親液化する。次にCF等のフッ素系ガスを処理ガスとしてプラズマ処理する。これにより、有機材料である感光性樹脂からなる隔壁31の表面のみにフッ素系ガスが反応して撥液化される。これによって、隔壁31の隔壁としての機能がより効果的に発揮される。
【0109】
[4]次に、発光素子1Rを形成すべき領域に位置する隔壁31の内側には、正孔注入層41R、中間層42Rおよび赤色発光機能層5Rを形成し、発光素子1Gを形成すべき領域に位置する隔壁31の内側には、正孔注入層41G、中間層42Gおよび緑色発光機能層5Gを形成し、さらに、発光素子1Bを形成すべき領域に位置する隔壁31の内側には、正孔注入層41Bを形成する(第4の工程)。この第4の工程について、発光素子1R、1G、1B毎に以下に詳述する。
【0110】
[発光素子1R]
発光素子1Rを形成すべき領域に位置する隔壁31の内側に、正孔注入層41R、中間層42Rおよび赤色発光機能層5Rをこの順番に形成する。それぞれの層を形成する工程を正孔注入層41R形成工程、中間層42R形成工程、赤色発光機能層5R形成工程とし、以下に詳述する。
【0111】
[正孔注入層41R形成工程]
まず、正孔注入層41Rをインクジェット法によって塗布する。具体的には、正孔注入材料を含有する正孔注入層41R形成用のインク(液状材料)を、インクジェットプリント装置のヘッドから吐出し、各陽極3R上に塗布する(塗布工程)。
ここで、正孔注入層形成用のインクの調製に用いる溶媒(インク溶媒)または分散媒(インク分散媒)としては、例えば、硝酸、硫酸、アンモニア、過酸化水素、水、二硫化炭素、四塩化炭素、エチレンカーボネイト等の各種無機溶媒や、メチルエチルケトン(MEK)、アセトン、ジエチルケトン、メチルイソブチルケトン(MIBK)、メチルイソプロピルケトン(MIPK)、シクロヘキサノン等のケトン系溶媒、メタノール、エタノール、イソプロパノール、エチレングリコール、ジエチレングリコール(DEG)、グリセリン等のアルコール系溶媒、ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、1,2−ジメトキシエタン(DME)、1,4−ジオキサン、テトラヒドロフラン(THF)、テトラヒドロピラン(THP)、アニソール、ジエチレングリコールジメチルエーテル(ジグリム)、ジエチレングリコールエチルエーテル(カルビトール)等のエーテル系溶媒、メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、フェニルセロソルブ等のセロソルブ系溶媒、ヘキサン、ペンタン、ヘプタン、シクロヘキサン等の脂肪族炭化水素系溶媒、シクロヘキサン、テトラリン等の脂環式炭化水素系溶媒、トルエン、キシレン、ベンゼン、トリメチルベンゼン、テトラメチルベンゼン等の芳香族炭化水素系溶媒、ピリジン、ピラジン、フラン、ピロール、チオフェン、メチルピロリドン等の芳香族複素環化合物系溶媒、N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)、N,N−ジメチルアセトアミド(DMA)等のアミド系溶媒、ジクロロメタン、クロロホルム、1,2−ジクロロエタン等のハロゲン化合物系溶媒、酢酸エチル、酢酸メチル、ギ酸エチル等のエステル系溶媒、ジメチルスルホキシド(DMSO)、スルホラン等の硫黄化合物系溶媒、アセトニトリル、プロピオニトリル、アクリロニトリル等のニトリル系溶媒、ギ酸、酢酸、トリクロロ酢酸、トリフルオロ酢酸等の有機酸系溶媒のような各種有機溶媒、または、これらを含む混合溶媒等が挙げられる。
なお、陽極3R上に塗布された液状材料は、流動性が高く(粘性が低く)、水平方向(面方向)に広がろうとするが、陽極3Rが隔壁31により囲まれているため、所定の領域以外に広がることが阻止され、正孔注入層41Rの輪郭形状が正確に規定される。
【0112】
次に、塗布した正孔注入層41Rに対して後処理を施す(後処理工程)。具体的には、各陽極3R上に塗布した正孔注入層形成用のインク(液状材料)を乾燥し、正孔注入層41Rを形成する。この乾燥によって、溶媒または分散媒を除去することができる。乾燥の手法としては、減圧雰囲気に放置する方法、熱処理(例えば40℃以上、80℃以下程度)による方法、窒素ガスのような不活性ガスのフローによる方法等が挙げられる。さらに、必要に応じて、正孔注入層41Rが形成された基板21を100℃以上、300℃以下程度で加熱(ベーク)する。この加熱により、乾燥後に正孔注入層41Rの膜内に残留した溶媒または分散媒を、取り除くことができる。また、加熱により架橋し溶媒に対して不溶化するような正孔注入材料を用いている場合は、この加熱によって正孔注入層41Rを不溶化させることもできる。また、この加熱後、正孔注入層41Rの未不溶化部分を除去するために、正孔注入層41Rが形成された基板21の表面を溶媒によってリンス(洗浄)することもある。このリンスによって、正孔注入層41Rの未不溶化部分が、正孔注入層41Rの上に形成される中間層42Rに、混入することを防ぐことができる。
【0113】
[中間層42R形成工程]
中間層42R形成工程では、まず中間層42Rを各正孔注入層41R上に正孔注入層41R形成工程と同様のインクジェット法によって塗布し、次に塗布した中間層42Rに対して正孔注入層41R形成工程と同様の後処理を施す。但し、中間層42R形成用のインクに用いるインク溶媒またはインク分散媒や、後処理の手法や条件等は、中間層42Rの形成に適したものを適宜選択する。
【0114】
[赤色発光機能層5R形成工程]
赤色発光機能層5R形成工程では、まず赤色発光機能層5Rを各中間層42R上に正孔注入層41R形成工程と同様のインクジェット法によって塗布し、次に塗布した赤色発光機能層5Rに対して正孔注入層41R形成工程と同様の後処理を施す。但し、赤色発光機能層5R形成用のインクに用いるインク溶媒またはインク分散媒や、後処理の手法や条件等は、赤色発光機能層5Rの形成に適したものを適宜選択する。
【0115】
以上の、正孔注入層41R形成工程、中間層42R形成工程、赤色発光機能層5R形成工程には、インクジェット法を用いることが好ましい。インクジェット法では、インクの吐出量およびインク滴の着弾位置を、基板の面積の大小に関わらず高精度に制御できるため、かかる方法を用いることにより、正孔注入層41Rの薄膜化、画素サイズの微小化、さらにはディスプレイ装置100の大面積化を図ることができる。また、各層を形成するためのインク(液状材料)を、隔壁31の内側に選択的に供給することができるため、インクのムダを省くことができる。但し、これら、正孔注入層41R形成工程、中間層42R形成工程、赤色発光機能層5R形成工程には、インクジェット法に限らず、例えば、スパッタ法、真空蒸着法、CVD法等の気相プロセスや、スピンコート法(パイロゾル法)、キャスティング法、マイクログラビアコート法、グラビアコート法、バーコート法、ロールコート法、ワイヤーバーコート法、ディップコート法、スプレーコート法、スクリーン印刷法、フレキソ印刷法、オフセット印刷法等の液相プロセスも用いることができる。
【0116】
[発光素子1G]
発光素子1Gを形成すべき領域に位置する隔壁31の内側に、正孔注入層41G、中間層42Gおよび緑色発光機能層5Gをこの順番に発光素子1Rと同様の手法を用いて形成する。但し、正孔注入層41G、中間層42G、緑色発光機能層5Gのそれぞれの層において、層の形成用のインクに用いるインク溶媒またはインク分散媒や、後処理の手法や条件等は、それぞれの層の形成に適したものを適宜選択する。
【0117】
[発光素子1B]
発光素子1Bを形成すべき領域に位置する隔壁31の内側に、正孔注入層41Bを発光素子1Rの正孔注入層41R形成工程と同様の手法を用いて形成する。但し、正孔注入層41B形成用のインクに用いるインク溶媒またはインク分散媒や、後処理の手法や条件等は、正孔注入層41Bの形成に適したものを適宜選択する。
以上のように、正孔注入層41R、41G、41B、中間層42R、42Gおよび発光機能層5R、5Gの各層をインクジェット法によって形成する場合、各層は塗布工程と後処理工程を経て完全に形成されるが、各層の塗布工程は、他の層の塗布工程と同時に行っても良いし、各層の後処理工程は、他の層の後処理工程と同時に行っても良い。
【0118】
[5]次に、赤色発光機能層5R、緑色発光機能層5G、正孔注入層41Bおよび隔壁31に重なるように、すなわち、隔壁31の平坦化層22と接している面と反対側の全面を覆うように、第1電子注入層61を形成する(第5の工程)。
これにより、各発光素子1R、1G、1Bに共通の第1電子注入層61が一括(一体的)に形成される。
【0119】
この第1電子注入層61も、前記工程[発光素子1R]で説明した気相プロセスや液相プロセスにより形成することができるが、中でも、気相プロセスを用いるのが好ましい。気相プロセスを用いることにより、赤色発光機能層5R、緑色発光機能層5G、正孔注入層41Bと第1電子注入層61との間での層溶解を防止しつつ、第1電子注入層61を確実に形成することができる。
【0120】
[6]次に、第1電子注入層61の全面を覆うように、拡散調整層44を形成する(第6の工程)。これにより、各発光素子1R、1G、1Bに共通の拡散調整層44が一括に形成される。
[7]次に、拡散調整層44の全面を覆うように、正孔輸送層43を形成する(第7の工程)。これにより、各発光素子1R、1G、1Bに共通の正孔輸送層43が一括に形成される。
【0121】
[8]次に、正孔輸送層43の全面を覆うように、青色発光機能層5Bを形成する(第8の工程)。これにより、各発光素子1R、1G、1Bに共通の青色発光機能層5Bが一括に形成される。
[9]次に、青色発光機能層5Bの全面を覆うように、電子輸送層62を形成する(第9の工程)。これにより、各発光素子1R、1G、1Bに共通の電子輸送層62が一括に形成される。
【0122】
[10]次に、電子輸送層62の全面を覆うように、第2電子注入層63を形成する(第10の工程)。これにより、各発光素子1R、1G、1Bに共通の第2電子注入層63が一括に形成される。
[11]次に、第2電子注入層63の全面を覆うように、陰極8を形成する(第11の工程)。これにより、各発光素子1R、1G、1Bに共通の陰極8が一括に形成される。
【0123】
なお、前記工程[6]〜[11]で形成する各層も、前記工程[発光素子1R]で説明した気相プロセスや液相プロセスにより形成することができるが、中でも、気相プロセスを用いるのが好ましい。気相プロセスを用いることにより、隣接する層同士間における層溶解を防止しつつ、形成すべき層を確実に形成することができる。
また、前記工程[発光素子1R]および[発光素子1G]において、それぞれ、発光機能層5Rおよび5Gをインクジェット法のような液層プロセスを用いて成膜することにより、発光色の異なる発光機能層5Rおよび5Gを容易に塗り分け、かつディスプレイ装置100の大面積化を容易に実現することができる。加えて、前記工程[6]〜[8]において、それぞれ、正孔輸送層43、拡散調整層44および青色発光機能層5Bを気相プロセス(気相成膜法)を用いて形成することにより、発光素子1Bは、実用レベルの発光寿命を十分に備えるものとなる。さらに、各発光素子1R、1G、1Bに共通の青色発光機能層5Bを一括して(一体的に)形成する構成としたことから、高精細マスクを用いて、発光素子1Bに対して選択的に青色発光機能層5Bを成膜する必要がないため、工程の簡略化、さらにはディスプレイ装置100の大面積化を容易に図ることができる。
【0124】
また、前記工程[5]〜[7]において、それぞれ、各発光素子1R、1G、1Bに共通の第1電子注入層61、拡散調整層44および正孔輸送層43を一括して形成する構成とした、すなわち第1電子注入層61、拡散調整層44および正孔輸送層43で構成されるキャリア選択層46を一体的に形成する構成としたことから、高精細マスクを用いて、発光素子1Bに対して選択的に第1電子注入層61、拡散調整層44および正孔輸送層43を成膜する必要がないため、工程の簡略化、さらにはディスプレイ装置100の大面積化を容易に図ることができる。
以上のようにして、駆動用トランジスタ24に対応して、複数の赤色、緑色および青色にそれぞれ発光する発光素子1R、1G、1Bが形成される。
【0125】
[12] 次に、封止基板20を用意し、陰極8と封止基板20との間にエポキシ系の接着剤を介在させた後、この接着剤を乾燥させる。
これにより、エポキシ層35を介して、封止基板20で陰極8を覆うように陰極8と封止基板20とを接合することができる。
この封止基板20は、各発光素子1R、1G、1Bを保護する保護基板としての機能を発揮する。このような封止基板20を、陰極8上に設ける構成とすることで、発光素子1R、1G、1Bが酸素や水分に接触するのをより好適に防止または低減できることから、発光素子1R、1G、1Bの信頼性の向上や、変質・劣化の防止等の効果をより確実に得ることができる。
以上のような工程を経て、各発光素子1R、1G、1Bが封止基板20により封止されたディスプレイ装置(本発明の表示装置)100が完成される。
このようなディスプレイ装置100(本発明の表示装置)は、各種の電子機器に組み込むことができる。
【0126】
図2は、本発明の電子機器を適用したモバイル型(またはノート型)のパーソナルコンピュータの構成を示す斜視図である。
この図において、パーソナルコンピュータ1100は、キーボード1102を備えた本体部1104と、表示部を備える表示ユニット1106とにより構成され、表示ユニット1106は、本体部1104に対しヒンジ構造部を介して回動可能に支持されている。
このパーソナルコンピュータ1100において、表示ユニット1106が備える表示部が前述のディスプレイ装置100で構成されている。
【0127】
図3は、本発明の電子機器を適用した携帯電話機(PHSも含む)の構成を示す斜視図である。
この図において、携帯電話機1200は、複数の操作ボタン1202、受話口1204および送話口1206とともに、表示部を備えている。
携帯電話機1200において、この表示部が前述のディスプレイ装置100で構成されている。
【0128】
図4は、本発明の電子機器を適用したディジタルスチルカメラの構成を示す斜視図である。なお、この図には、外部機器との接続についても簡易的に示されている。
ここで、通常のカメラは、被写体の光像により銀塩写真フィルムを感光するのに対し、ディジタルスチルカメラ1300は、被写体の光像をCCD(Charge Coupled Device)などの撮像素子により光電変換して撮像信号(画像信号)を生成する。
【0129】
ディジタルスチルカメラ1300におけるケース(ボディー)1302の背面には、表示部が設けられ、CCDによる撮像信号に基づいて表示を行う構成になっており、被写体を電子画像として表示するファインダとして機能する。
ディジタルスチルカメラ1300において、この表示部が前述のディスプレイ装置100で構成されている。
【0130】
ケースの内部には、回路基板1308が設置されている。この回路基板1308は、撮像信号を格納(記憶)し得るメモリが設置されている。
また、ケース1302の正面側(図示の構成では裏面側)には、光学レンズ(撮像光学系)やCCDなどを含む受光ユニット1304が設けられている。
撮影者が表示部に表示された被写体像を確認し、シャッタボタン1306を押下すると、その時点におけるCCDの撮像信号が、回路基板1308のメモリに転送・格納される。
【0131】
また、このディジタルスチルカメラ1300においては、ケース1302の側面に、ビデオ信号出力端子1312と、データ通信用の入出力端子1314とが設けられている。そして、図示のように、ビデオ信号出力端子1312にはテレビモニタ1430が、データ通信用の入出力端子1314にはパーソナルコンピュータ1440が、それぞれ必要に応じて接続される。さらに、所定の操作により、回路基板1308のメモリに格納された撮像信号が、テレビモニタ1430や、パーソナルコンピュータ1440に出力される構成になっている。
【0132】
なお、本発明の電子機器は、図2のパーソナルコンピュータ(モバイル型パーソナルコンピュータ)、図3の携帯電話機、図4のディジタルスチルカメラの他にも、例えば、テレビや、ビデオカメラ、ビューファインダ型、モニタ直視型のビデオテープレコーダ、ラップトップ型パーソナルコンピュータ、カーナビゲーション装置、ページャ、電子手帳(通信機能付も含む)、電子辞書、電卓、電子ゲーム機器、ワードプロセッサ、ワークステーション、テレビ電話、防犯用テレビモニタ、電子双眼鏡、POS端末、タッチパネルを備えた機器(例えば金融機関のキャッシュディスペンサー、自動券売機)、医療機器(例えば電子体温計、血圧計、血糖計、心電表示装置、超音波診断装置、内視鏡用表示装置)、魚群探知機、各種測定機器、計器類(例えば、車両、航空機、船舶の計器類)、フライトシュミレータ、その他各種モニタ類、プロジェクター等の投射型表示装置等に適用することができる。
【0133】
以上、本発明の発光素子、表示装置および電子機器を、図示の実施形態に基づいて説明したが、本発明はこれらに限定されるものでない。
例えば、前記実施形態では、表示装置は、青色よりも長波長の光を発光する発光素子として、赤色発光素子および緑色発光素子を備える場合としたが、この場合に限定されず、黄色発光素子や橙色発光素子のような青色よりも長波長の光を発光する発光素子を備えるものであってもよい。この場合、これら黄色発光素子および橙色発光素子に本発明の発光素子が適用される。
【実施例】
【0134】
次に、本発明の具体的実施例について説明する。
なお、本実施例および比較例は大面積のディスプレイ装置に関するものであり、赤色発光素子および緑色発光素子をインクジェット法で、青色発光素子を高精細マスクによる塗り分けを必要としない真空蒸着法にて形成するものである。まず、実施例1は、前述した本発明の実施形態の具体的実施結果である。次に、比較例1は、赤色発光素子および緑色発光素子をインクジェット法で、青色発光素子を高精細マスクによる塗り分けを必要としない真空蒸着法にて形成する場合に考えられる最も一般的な構造を示す。さらに、比較例2は比較例1において特性の悪かった赤色発光素子および緑色発光素子の特性の改善を企図した構造である。加えて、比較例3は比較例1において特性の悪かった青色発光素子の特性の改善を企図した構造である。
【0135】
1.表示装置(発光装置)および発光素子の製造
(実施例1)
<1> まず、平均厚さ1.0mmの透明なガラス基板を基板321として用意した。次に、この基板321上に、スパッタ法により、平均厚さ50nmのITO膜を形成した後、このITO膜をフォトリソグラフィー法を用いてパターニングすることでITO電極(陽極303R、303G、303B/個別電極)を形成した。
そして、陽極303R、303G、303Bが形成された基板321をアセトン、2−プロパノールの順に浸漬し、超音波洗浄した後、酸素プラズマ処理を施した。
【0136】
<2> 次に、陽極303R、303G、303Bが形成された基板321上に、スピンコート法により、アクリル系樹脂で構成される絶縁層を形成した後、この絶縁層をフォトリソグラフィー法を用いてITO電極を露出するようにパターニングすることで隔壁(バンク)を形成した。さらに、隔壁が形成された基板321の表面を、まずOガスを処理ガスとしてプラズマ処理する。これにより陽極303R、303G、303Bの表面と隔壁の表面(壁面を含む)が活性化され親液化する。続いて、隔壁が形成された基板321の表面を、CFガスを処理ガスとしてプラズマ処理する。これにより、アクリル系樹脂からなる隔壁の表面のみにCFガスが反応して撥液化される。
【0137】
<3A> 次に、赤色発光素子301Rを形成すべき領域に位置する隔壁の内側に、インクジェット法を用いて、1.0wt%PEDOT/PSS水分散液を塗布した。
<3B> 次に、緑色発光素子301Gを形成すべき領域に位置する隔壁の内側に、インクジェット法を用いて、1.0wt%PEDOT/PSS水分散液を塗布した。
<3C> 次に、青色発光素子301Bを形成すべき領域に位置する隔壁の内側に、インクジェット法を用いて、1.0wt%PEDOT/PSS水分散液を塗布した。
<3D> 次に、3A、3B、3Cの各工程で塗布したPEDOT/PSS水分散液を乾燥した後、大気中にて基板321を加熱し、各陽極303R、303G、303B上に、それぞれ、PEDOT/PSSで構成される平均厚さ50nmのイオン伝導性の正孔注入層341R、341G、341Bを形成した。
【0138】
<4A> 次に、赤色発光素子301Rを形成すべき領域に位置する隔壁の内側に、インクジェット法を用いて、上記一般式(5)で表わされる化合物の1.5wt%テトラメチルベンゼン溶液を塗布した。
<4B> 次に、緑色発光素子301Gを形成すべき領域に位置する隔壁の内側に、インクジェット法を用いて、上記一般式(5)で表わされる化合物の1.5wt%テトラメチルベンゼン溶液を塗布した。
【0139】
<4C> 次に、4Aおよび4Bの各工程で塗布した上記一般式(5)で表わされる化合物のテトラメチルベンゼン溶液を乾燥した後、窒素雰囲気中にて基板321を加熱した。さらに、基板321の、赤色発光素子301Rおよび緑色発光素子301Gを形成すべき領域をキシレンによってリンスした。これにより、各正孔注入層341Rおよび341G上に、それぞれ、上記一般式(5)で表わされる化合物で構成される平均厚さ10nmの中間層342Rおよび342Gを形成した。
【0140】
<5A> 次に、赤色発光素子301Rを形成すべき領域に位置する隔壁の内側に、インクジェット法を用いて、上記一般式(6)で表わされる化合物の1.2wt%テトラメチルベンゼン溶液を塗布した。
<5B> 次に、緑色発光素子301Gを形成すべき領域に位置する隔壁の内側に、インクジェット法を用いて、上記一般式(19)で表わされる化合物の1.2wt%テトラメチルベンゼン溶液を塗布した。
【0141】
<5C> 次に、5Aおよび5Bの各工程で塗布した、上記一般式(6)で表わされる化合物のテトラメチルベンゼン溶液と、上記一般式(19)で表わされる化合物のテトラメチルベンゼン溶液とを乾燥した後、窒素雰囲気中にて基板321を加熱する。これにより、各中間層342Rおよび342G上に、それぞれ、上記一般式(6)で表わされる化合物で構成される平均厚さ60nmの赤色発光機能層305Rと、上記一般式(19)で表わされる化合物で構成される平均厚さ60nmの緑色発光機能層305Gとを形成した。
【0142】
<6> 次に、赤色発光素子301Rを形成すべき領域、緑色発光素子301Gを形成すべき領域および青色発光素子301Bを形成すべき領域に、それぞれ位置する、赤色発光機能層305R、緑色発光機能層305Gおよび正孔注入層341B上に、CsCOを蒸着源として真空蒸着法にて形成した平均厚さ1.0nmのCsを含む蒸着膜を形成し、第1電子注入層361とした。
【0143】
ここで、Csを「含む薄膜」とは、少なくともCs塩を構成する金属材料であるCs単体を含む薄膜となっていることを意味しており、金属含有層が蒸着材料である金属塩を含んでいても良い。発明者は、別途行った予備実験により以下に示すような現象を観察しており、真空蒸着した膜がCs塩のみからなる膜ではなく、Cs単体を含む膜となっていることを間接的に確かめている。
【0144】
具体的には、CsCOを蒸着源として形成した蒸着膜にAlの蒸着膜を積層したものを大気に曝すと、Alの表面が激しく発砲し、表面に顕著な凹凸が生じることが確認された。蒸着膜としてCsCOが成膜されているならば、積層したAl膜に顕著な変化は起きないはずである。これは蒸着膜がCs単体を含むため、大気暴露によって急激にCs単体部が酸化や吸湿をしたためであると考えられる。
【0145】
<7> 次に、第1電子注入層361上に、真空蒸着法を用いて、Alで構成される平均厚さ0.5nmの拡散調整層344を形成した。
<8> 次に、拡散調整層344上に、真空蒸着法を用いて、α−NPDで構成される平均厚さ10nmの正孔輸送層343を形成した。
<9> 次に、正孔輸送層343上に、真空蒸着法を用いて以下に示す青色発光機能層の構成材料で構成される平均厚さ20nmの青色発光機能層305Bを形成した。
ここで、青色発光機能層305Bの構成材料としては、ホスト材料として上記式(11)で表わされる化合物を用い、ゲスト材料として上記式(14)で表わされる化合物を用いた。また、青色発光機能層中のゲスト材料(ドーパント)の含有量(ドープ濃度)は、ホスト材料に対して重量比で5.0%とした。
【0146】
<10> 次に、青色発光機能層305B上に、真空蒸着法を用いて、上記一般式(17)で表わされる化合物で構成される平均厚さ20nmの電子輸送層362を形成した。
<11> 次に、電子輸送層362上に、真空蒸着法を用いてフッ化リチウム(LiF)で構成される、平均厚さ0.5nmの第2電子注入層363を形成した。
<12> 次に、第2電子注入層363上に、真空蒸着法を用いてAlで構成される、平均厚さ100nmの陰極308を形成した。
<13> 次に、形成した各層を覆うように、ガラス製の保護カバー(封止部材)を被せ、エポキシ樹脂により固定、封止した。
以上の工程により、図5に示すようなボトムエミッション構造の表示装置を製造した。
【0147】
(参考例1)
前記実施例1における前記工程<7>を省略して、すなわち拡散調整層344の形成を省略して、第1電子注入層361上に、正孔輸送層343を形成したこと以外は、前記実施例1と同様にして、図6に示すようなボトムエミッション構造の表示装置を製造した。
【0148】
(実施例2)
前記実施例1における前記工程<5A>、前記工程<5B>、前記工程<5C>、前記工程<7>、前記工程<8>、前記工程<9>および前記工程<10>を、それぞれ、下記工程<5A’>、下記工程<5B’>、下記工程<5C’>、前記工程<7’>、前記工程<8’>、前記工程<9’>および前記工程<10’>のように変更したこと以外は、前記実施例1と同様にして、図5に示すようなボトムエミッション構造の表示装置を製造した。
【0149】
<5A’> 次に、赤色発光素子301Rを形成すべき領域に位置する隔壁の内側に、インクジェット法を用いて、上記一般式(7)で表わされる化合物の1.2wt%テトラメチルベンゼン溶液を塗布した。
<5B’> 次に、緑色発光素子301Gを形成すべき領域に位置する隔壁の内側に、インクジェット法を用いて、上記一般式(20)で表わされる化合物の1.2wt%テトラメチルベンゼン溶液を塗布した。
【0150】
<5C’> 次に、5Aおよび5Bの各工程で塗布した、上記一般式(7)で表わされる化合物のテトラメチルベンゼン溶液と、上記一般式(20)で表わされる化合物のテトラメチルベンゼン溶液とを乾燥した後、窒素雰囲気中にて基板321を加熱する。これにより、各中間層342Rおよび342G上に、それぞれ、上記一般式(7)で表わされる化合物で構成される平均厚さ60nmの赤色発光機能層305Rと、上記一般式(20)で表わされる化合物で構成される平均厚さ60nmの緑色発光機能層305Gとを形成した。
【0151】
<7’> 次に、第1電子注入層361上に、真空蒸着法を用いて、Mgで構成される平均厚さ1.0nmの拡散調整層344を形成した。
<8’> 次に、拡散調整層344上に、真空蒸着法を用いて、上記式(9)で表わされる化合物で構成される平均厚さ10nmの正孔輸送層343を形成した。
<9’> 次に、正孔輸送層343上に、真空蒸着法を用いて以下に示す青色発光機能層の構成材料で構成される平均厚さ10nmの青色発光機能層305Bを形成した。
ここで、青色発光機能層305Bの構成材料としては、ホスト材料として上記式(13)で表わされる化合物を用い、ゲスト材料として上記式(15)で表わされる化合物を用いた。また、青色発光機能層中のゲスト材料(ドーパント)の含有量(ドープ濃度)は、ホスト材料に対して重量比で5.0%とした。
【0152】
<10’> 次に、青色発光機能層305B上に、真空蒸着法を用いて、上記式(17)で表わされる化合物で構成される平均厚さ30nmの電子輸送層362を形成した。
【0153】
(参考例2)
前記実施例2における前記工程<7’>を省略して、すなわち拡散調整層344の形成を省略して、第1電子注入層361上に、正孔輸送層343を形成したこと以外は、前記実施例1と同様にして、図6に示すようなボトムエミッション構造の表示装置を製造した。
【0154】
(比較例1)
<1> まず、平均厚さ1.0mmの透明なガラス基板を基板421として用意した。次に、この基板421上に、スパッタ法により、平均厚さ50nmのITO膜を形成した後、このITO膜をフォトリソグラフィー法を用いてパターニングすることでITO電極(陽極403R、403G、403B/個別電極)を形成した。
そして、陽極403R、403G、403Bが形成された基板421をアセトン、2−プロパノールの順に浸漬し、超音波洗浄した後、酸素プラズマ処理を施した。
【0155】
<2> 次に、陽極403R、403G、403Bが形成された基板421上に、スピンコート法により、アクリル系樹脂で構成される絶縁層を形成した後、この絶縁層をフォトリソグラフィー法を用いてITO電極を露出するようにパターニングすることで隔壁を形成した。さらに、隔壁が形成された基板421の表面を、まずOガスを処理ガスとしてプラズマ処理する。これにより陽極403R、403G、403Bの表面と隔壁の表面(壁面を含む)が活性化され親液化する。続いて、隔壁が形成された基板421の表面を、CFガスを処理ガスとしてプラズマ処理する。これにより、アクリル系樹脂からなる隔壁の表面のみにCFガスが反応して撥液化される。
【0156】
<3A> 次に、赤色発光素子401Rを形成すべき領域に位置する隔壁の内側に、インクジェット法を用いて、1.0wt%PEDOT/PSS水分散液を塗布した。
<3B> 次に、緑色発光素子401Gを形成すべき領域に位置する隔壁の内側に、インクジェット法を用いて、1.0wt%PEDOT/PSS水分散液を塗布した。
<3C> 次に、青色発光素子401Bを形成すべき領域に位置する隔壁の内側に、インクジェット法を用いて、1.0wt%PEDOT/PSS水分散液を塗布した。
<3D> 次に、3A、3B、3Cの各工程で塗布したPEDOT/PSS水分散液を乾燥した後、大気中にて基板421を加熱し、各陽極403R、403G、403B上に、それぞれ、PEDOT/PSSで構成される平均厚さ50nmのイオン伝導性の正孔注入層441R、441G、441Bを形成した。
【0157】
<4A> 次に、赤色発光素子401Rを形成すべき領域に位置する隔壁の内側に、インクジェット法を用いて、上記一般式(5)で表わされる化合物の1.5wt%テトラメチルベンゼン溶液を塗布した。
<4B> 次に、緑色発光素子401Gを形成すべき領域に位置する隔壁の内側に、インクジェット法を用いて、上記一般式(5)で表わされる化合物の1.5wt%テトラメチルベンゼン溶液を塗布した。
【0158】
<4C> 次に、4Aおよび4Bの各工程で塗布した上記一般式(5)で表わされる化合物のテトラメチルベンゼン溶液を乾燥した後、窒素雰囲気中にて基板421を加熱した。さらに、基板421の、赤色発光素子401Rおよび緑色発光素子401Gを形成すべき領域をキシレンによってリンスした。これにより、各正孔注入層441Rおよび441G上に、それぞれ、上記一般式(5)で表わされる化合物で構成される平均厚さ10nmの中間層442Rおよび442Gを形成した。
【0159】
<5A> 次に、赤色発光素子401Rを形成すべき領域に位置する隔壁の内側に、インクジェット法を用いて、上記一般式(6)で表わされる化合物の1.2wt%テトラメチルベンゼン溶液を塗布した。
<5B> 次に、緑色発光素子401Gを形成すべき領域に位置する隔壁の内側に、インクジェット法を用いて、上記一般式(19)で表わされる化合物の1.2wt%テトラメチルベンゼン溶液を塗布した。
<5C> 次に、青色発光素子401Bを形成すべき領域に位置する隔壁の内側に、インクジェット法を用いて、α−NPDの1.0wt%テトラリン溶液を塗布した。
【0160】
<5D> 次に、5A、5Bおよび5Cの各工程で塗布した、上記一般式(6)で表わされる化合物のテトラメチルベンゼン溶液と、上記一般式(19)で表わされる化合物のテトラメチルベンゼン溶液と、α−NPDのテトラリン溶液とを乾燥した後、窒素雰囲気中にて基板421を加熱する。これにより、各中間層442Rおよび442G上に、それぞれ、上記一般式(6)で表わされる化合物で構成される平均厚さ60nmの赤色発光機能層405Rと、上記一般式(19)で表わされる化合物で構成される平均厚さ60nmの緑色発光機能層405Gとを形成した。さらに、正孔注入層441B上に、α−NPDで構成される平均厚さ10nmの正孔輸送層443Bを形成した。
【0161】
<6> 次に、赤色発光素子401Rを形成すべき領域、緑色発光素子401Gを形成すべき領域および青色発光素子401Bを形成すべき領域に、それぞれ位置する、赤色発光機能層405R、緑色発光機能層405Gおよび正孔輸送層443B上に、真空蒸着法を用いて、以下に示す構成材料で構成される平均厚さ20nmの青色発光機能層405Bを形成した。
ここで、青色発光機能層405Bの構成材料としては、ホスト材料として上記式(11)で表わされる化合物を用い、ゲスト材料として上記式(14)で表わされる化合物を用いた。また、青色発光機能層405B中のゲスト材料(ドーパント)の含有量(ドープ濃度)は、ホスト材料に対して重量比で5.0%とした。
【0162】
<7> 次に、青色発光機能層405B上に、真空蒸着法を用いて、上記一般式(17)で表わされる化合物で構成される平均厚さ20nmの電子輸送層462を形成した。
<8> 次に、電子輸送層462上に、真空蒸着法を用いてフッ化リチウム(LiF)で構成される、平均厚さ0.5nmの第2電子注入層463を形成した。
<9> 次に、第2電子注入層463上に、真空蒸着法を用いてAlで構成される、平均厚さ100nmの陰極408を形成した。
<10> 次に、形成した各層を覆うように、ガラス製の保護カバー(封止部材)を被せ、エポキシ樹脂により固定、封止した。
以上の工程により、実施例1に対して、第1電子注入層361の形成が省略され、正孔輸送層343が形成される代わりに正孔輸送層443Bが形成された、図7に示すようなボトムエミッション構造の表示装置を製造した。
【0163】
(比較例2)
<1> まず、平均厚さ1.0mmの透明なガラス基板を基板521として用意した。次に、この基板521上に、スパッタ法により、平均厚さ50nmのITO膜を形成した後、このITO膜をフォトリソグラフィー法を用いてパターニングすることでITO電極(陽極503R、503G、503B/個別電極)を形成した。
そして、陽極503R、503G、503Bが形成された基板521をアセトン、2−プロパノールの順に浸漬し、超音波洗浄した後、酸素プラズマ処理を施した。
【0164】
<2> 次に、陽極503R、503G、503Bが形成された基板521上に、スピンコート法により、アクリル系樹脂で構成される絶縁層を形成した後、この絶縁層をフォトリソグラフィー法を用いてITO電極を露出するようにパターニングすることで隔壁を形成した。さらに、隔壁が形成された基板521の表面を、まずOガスを処理ガスとしてプラズマ処理する。これにより陽極503R、503G、503Bの表面と隔壁の表面(壁面を含む)が活性化され親液化する。続いて、隔壁が形成された基板521の表面を、CFガスを処理ガスとしてプラズマ処理する。これにより、アクリル系樹脂からなる隔壁の表面のみにCFガスが反応して撥液化される。
【0165】
<3A> 次に、赤色発光素子501Rを形成すべき領域に位置する隔壁の内側に、インクジェット法を用いて、1.0wt%PEDOT/PSS水分散液を塗布した。
<3B> 次に、緑色発光素子501Gを形成すべき領域に位置する隔壁の内側に、インクジェット法を用いて、1.0wt%PEDOT/PSS水分散液を塗布した。
<3C> 次に、青色発光素子501Bを形成すべき領域に位置する隔壁の内側に、インクジェット法を用いて、1.0wt%PEDOT/PSS水分散液を塗布した。
<3D> 次に、3A、3B、3Cの各工程で塗布したPEDOT/PSS水分散液を乾燥した後、大気中にて基板521を加熱し、各陽極503R、503G、503B上に、それぞれ、PEDOT/PSSで構成される平均厚さ50nmのイオン伝導性の正孔注入層541R、541G、541Bを形成した。
【0166】
<4A> 次に、赤色発光素子501Rを形成すべき領域に位置する隔壁の内側に、インクジェット法を用いて、上記一般式(5)で表わされる化合物の1.5wt%テトラメチルベンゼン溶液を塗布した。
<4B> 次に、緑色発光素子501Gを形成すべき領域に位置する隔壁の内側に、インクジェット法を用いて、上記一般式(5)で表わされる化合物の1.5wt%テトラメチルベンゼン溶液を塗布した。
【0167】
<4C> 次に、4Aおよび4Bの各工程で塗布した上記一般式(5)で表わされる化合物のテトラメチルベンゼン溶液を乾燥した後、窒素雰囲気中にて基板521を加熱した。さらに、基板521の、赤色発光素子501Rおよび緑色発光素子501Gを形成すべき領域をキシレンによってリンスした。これにより、各正孔注入層541Rおよび541G上に、それぞれ、上記一般式(5)で表わされる化合物で構成される平均厚さ10nmの中間層542Rおよび542Gを形成した。
【0168】
<5A> 次に、赤色発光素子501Rを形成すべき領域に位置する隔壁の内側に、インクジェット法を用いて、上記一般式(6)で表わされる化合物の1.2wt%テトラメチルベンゼン溶液を塗布した。
<5B> 次に、緑色発光素子501Gを形成すべき領域に位置する隔壁の内側に、インクジェット法を用いて、上記一般式(19)で表わされる化合物の1.2wt%テトラメチルベンゼン溶液を塗布した。
<5C> 次に、青色発光素子501Bを形成すべき領域に位置する隔壁の内側に、インクジェット法を用いて、α−NPDの1.0wt%テトラリン溶液を塗布した。
【0169】
<5D> 次に、5A、5Bおよび5Cの各工程で塗布した、上記一般式(6)で表わされる化合物のテトラメチルベンゼン溶液と、上記一般式(19)で表わされる化合物のテトラメチルベンゼン溶液と、α−NPDのテトラリン溶液とを乾燥した後、窒素雰囲気中にて基板521を加熱する。これにより、各中間層542Rおよび542G上に、それぞれ、上記一般式(6)で表わされる化合物で構成される平均厚さ60nmの赤色発光機能層505Rと、上記一般式(19)で表わされる化合物で構成される平均厚さ60nmの緑色発光機能層505Gとを形成した。さらに、正孔注入層541B上に、α−NPDで構成される平均厚さ10nmの正孔輸送層543Bを形成した。
【0170】
<6> 次に、赤色発光素子501Rを形成すべき領域、緑色発光素子501Gを形成すべき領域および青色発光素子501Bを形成すべき領域に、それぞれ位置する、赤色発光機能層505R、緑色発光機能層505Gおよび正孔輸送層543B上に、CsCOを蒸着源として真空蒸着法にて形成した平均厚さ0.5nmのCsを含む蒸着膜を形成し、第1電子注入層561とした。
【0171】
<7> 次に、第1電子注入層561上に、真空蒸着法を用いて、以下に示す構成材料で構成される平均厚さ20nmの青色発光機能層505Bを形成した。
ここで、青色発光機能層505Bの構成材料としては、ホスト材料として上記式(11)で表わされる化合物を用い、ゲスト材料として上記式(14)で表わされる化合物を用いた。また、青色発光機能層505B中のゲスト材料(ドーパント)の含有量(ドープ濃度)は、ホスト材料に対して重量比で5.0%とした。
【0172】
<8> 次に、青色発光機能層505B上に、真空蒸着法を用いて、上記一般式(17)で表わされる化合物で構成される平均厚さ20nmの電子輸送層562を形成した。
<9> 次に、電子輸送層562上に、真空蒸着法を用いてフッ化リチウム(LiF)で構成される、平均厚さ0.5nmの第2電子注入層563を形成した。
<10> 次に、第2電子注入層563上に、真空蒸着法を用いてAlで構成される、平均厚さ100nmの陰極508を形成した。
<11> 次に、形成した各層を覆うように、ガラス製の保護カバー(封止部材)を被せ、エポキシ樹脂により固定、封止した。
以上の工程により、実施例1に対して、正孔輸送層343が形成される代わりに正孔輸送層543Bが形成された、図8に示すようなボトムエミッション構造の表示装置を製造した。
【0173】
(比較例3)
<1> まず、平均厚さ1.0mmの透明なガラス基板を基板621として用意した。次に、この基板621上に、スパッタ法により、平均厚さ50nmのITO膜を形成した後、このITO膜をフォトリソグラフィー法を用いてパターニングすることでITO電極(陽極603R、603G、603B/個別電極)を形成した。
そして、陽極603R、603G、603Bが形成された基板621をアセトン、2−プロパノールの順に浸漬し、超音波洗浄した後、酸素プラズマ処理を施した。
【0174】
<2> 次に、陽極603R、603G、603Bが形成された基板621上に、スピンコート法により、アクリル系樹脂で構成される絶縁層を形成した後、この絶縁層をフォトリソグラフィー法を用いてITO電極を露出するようにパターニングすることで隔壁を形成した。さらに、隔壁が形成された基板621の表面を、まずOガスを処理ガスとしてプラズマ処理する。これにより陽極603R、603G、603Bの表面と隔壁の表面(壁面を含む)が活性化され親液化する。続いて、隔壁が形成された基板621の表面を、CFガスを処理ガスとしてプラズマ処理する。これにより、アクリル系樹脂からなる隔壁の表面のみにCFガスが反応して撥液化される。
【0175】
<3A> 次に、赤色発光素子601Rを形成すべき領域に位置する隔壁の内側に、インクジェット法を用いて、1.0wt%PEDOT/PSS水分散液を塗布した。
<3B> 次に、緑色発光素子601Gを形成すべき領域に位置する隔壁の内側に、インクジェット法を用いて、1.0wt%PEDOT/PSS水分散液を塗布した。
<3C> 次に、青色発光素子601Bを形成すべき領域に位置する隔壁の内側に、インクジェット法を用いて、1.0wt%PEDOT/PSS水分散液を塗布した。
<3D> 次に、3A、3B、3Cの各工程で塗布したPEDOT/PSS水分散液を乾燥した後、大気中にて基板621を加熱し、各陽極603R、603G、603B上に、それぞれ、PEDOT/PSSで構成される平均厚さ50nmのイオン伝導性の正孔注入層641R、641G、641Bを形成した。
【0176】
<4A> 次に、赤色発光素子601Rを形成すべき領域に位置する隔壁の内側に、インクジェット法を用いて、上記一般式(5)で表わされる化合物の1.5wt%テトラメチルベンゼン溶液を塗布した。
<4B> 次に、緑色発光素子601Gを形成すべき領域に位置する隔壁の内側に、インクジェット法を用いて、上記一般式(5)で表わされる化合物の1.5wt%テトラメチルベンゼン溶液を塗布した。
【0177】
<4C> 次に、4Aおよび4Bの各工程で塗布した上記一般式(5)で表わされる化合物のテトラメチルベンゼン溶液を乾燥した後、窒素雰囲気中にて基板621を加熱した。さらに、基板621の、赤色発光素子601Rおよび緑色発光素子601Gを形成すべき領域をキシレンによってリンスした。これにより、各正孔注入層641Rおよび641G上に、それぞれ、上記一般式(5)で表わされる化合物で構成される平均厚さ10nmの中間層642Rおよび642Gを形成した。
【0178】
<5A> 次に、赤色発光素子601Rを形成すべき領域に位置する隔壁の内側に、インクジェット法を用いて、上記一般式(6)で表わされる化合物の1.2wt%テトラメチルベンゼン溶液を塗布した。
<5B> 次に、緑色発光素子601Gを形成すべき領域に位置する隔壁の内側に、インクジェット法を用いて、上記一般式(19)で表わされる化合物の1.2wt%テトラメチルベンゼン溶液を塗布した。
【0179】
<5C> 次に、5Aおよび5Bの各工程で塗布した、上記一般式(6)で表わされる化合物のテトラメチルベンゼン溶液と、上記一般式(19)で表わされる化合物のテトラメチルベンゼン溶液とを乾燥した後、窒素雰囲気中にて基板621を加熱する。これにより、各中間層642Rおよび642G上に、それぞれ、上記一般式(6)で表わされる化合物で構成される平均厚さ60nmの赤色発光機能層605Rと、上記一般式(19)で表わされる化合物で構成される平均厚さ60nmの緑色発光機能層605Gとを形成した。
【0180】
<6> 次に、赤色発光素子601Rを形成すべき領域、緑色発光素子601Gを形成すべき領域および青色発光素子601Bを形成すべき領域に、それぞれ位置する、赤色発光機能層605R、緑色発光機能層605Gおよび正孔注入層641B上に、真空蒸着法を用いて、α−NPDで構成される平均厚さ10nmの正孔輸送層643を形成した。
<7> 次に、正孔輸送層643上に、真空蒸着法を用いて以下に示す構成材料で構成される平均厚さ20nmの青色発光機能層605Bを形成した。
ここで、青色発光機能層605Bの構成材料としては、ホスト材料として上記式(11)で表わされる化合物を用い、ゲスト材料として上記式(14)で表わされる化合物を用いた。また、青色発光機能層中のゲスト材料(ドーパント)の含有量(ドープ濃度)は、ホスト材料に対して重量比で5.0%とした。
【0181】
<8> 次に、青色発光機能層605B上に、真空蒸着法を用いて、上記一般式(17)で表わされる化合物で構成される平均厚さ20nmの電子輸送層662を形成した。
<9> 次に、電子輸送層662上に、真空蒸着法を用いてフッ化リチウム(LiF)で構成される、平均厚さ0.5nmの第2電子注入層663を形成した。
<10> 次に、第2電子注入層663上に、真空蒸着法を用いてAlで構成される、平均厚さ100nmの陰極608を形成した。
<11> 次に、形成した各層を覆うように、ガラス製の保護カバー(封止部材)を被せ、エポキシ樹脂により固定、封止した。
以上の工程により、実施例1に対して、第1電子注入層361の形成が省略された、図9に示すようなボトムエミッション構造の表示装置を製造した。
【0182】
(比較例4R)
<1> まず、平均厚さ1.0mmの透明なガラス基板を基板721として用意した。次に、この基板721上に、スパッタ法により、平均厚さ50nmのITO膜を形成した後、このITO膜をフォトリソグラフィー法を用いてパターニングすることでITO電極(陽極703R)を形成した。
そして、陽極703Rが形成された基板721をアセトン、2−プロパノールの順に浸漬し、超音波洗浄した後、酸素プラズマ処理を施した。
【0183】
<2> 次に、陽極703Rが形成された基板721上に、スピンコート法により、アクリル系樹脂で構成される絶縁層を形成した後、この絶縁層をフォトリソグラフィー法を用いてITO電極を露出するようにパターニングすることで隔壁(バンク)を形成した。さらに、隔壁が形成された基板721の表面を、まずOガスを処理ガスとしてプラズマ処理する。これにより陽極703Rの表面と隔壁の表面(壁面を含む)が活性化され親液化する。続いて、隔壁が形成された基板721の表面を、CFガスを処理ガスとしてプラズマ処理する。これにより、アクリル系樹脂からなる隔壁の表面のみにCFガスが反応して撥液化される。
【0184】
<3> 次に、赤色発光素子701Rを形成すべき領域に位置する隔壁の内側に、インクジェット法を用いて、1.0wt%PEDOT/PSS水分散液を塗布した。さらに、塗布したPEDOT/PSS水分散液を乾燥した後、大気中にて基板721を加熱し、陽極703R上に、PEDOT/PSSで構成される平均厚さ50nmのイオン伝導性の正孔注入層741Rを形成した。
【0185】
<4> 次に、赤色発光素子701Rを形成すべき領域に位置する隔壁の内側に、インクジェット法を用いて、上記一般式(5)で表わされる化合物の1.5wt%テトラメチルベンゼン溶液を塗布した。さらに、塗布した上記一般式(5)で表わされる化合物のテトラメチルベンゼン溶液を乾燥した後、窒素雰囲気中にて基板721を加熱した。続いて、基板721の、赤色発光素子701Rを形成すべき領域をキシレンによってリンスした。これにより、各正孔注入層741R上に、上記一般式(5)で表わされる化合物で構成される平均厚さ10nmの中間層742Rを形成した。
【0186】
<5> 次に、赤色発光素子701Rを形成すべき領域に位置する隔壁の内側に、インクジェット法を用いて、上記一般式(6)で表わされる化合物の1.2wt%テトラメチルベンゼン溶液を塗布した。さらに、塗布した上記一般式(6)で表わされる化合物のテトラメチルベンゼン溶液を乾燥した後、窒素雰囲気中にて基板721を加熱する。これにより、各中間層742R上に、上記一般式(6)で表わされる化合物で構成される平均厚さ80nmの赤色発光機能層705Rを形成した。
【0187】
<6> 次に、赤色発光機能層705R上に、CsCOを蒸着源として真空蒸着法にて形成した平均厚さ1nmのCsを含む蒸着膜を形成し、第2電子注入層763とした。
<7> 次に、第2電子注入層763上に、真空蒸着法を用いてAlで構成される、平均厚さ100nmの陰極708を形成した。
<8> 次に、形成した各層を覆うように、ガラス製の保護カバー(封止部材)を被せ、エポキシ樹脂により固定、封止した。
以上の工程により、図10に示すようなボトムエミッション構造の赤色発光素子701Rを製造した。この赤色発光素子701Rは、実施例1の赤色発光素子301R、比較例1の赤色発光素子401R、比較例2の赤色発光素子501Rおよび比較例3の赤色発光素子601Rの特性を規格化するために用いた。
【0188】
(比較例4G)
<1> まず、平均厚さ1.0mmの透明なガラス基板を基板821として用意した。次に、この基板821上に、スパッタ法により、平均厚さ50nmのITO膜を形成した後、このITO膜をフォトリソグラフィー法を用いてパターニングすることでITO電極(陽極803G)を形成した。
そして、陽極803Gが形成された基板821をアセトン、2−プロパノールの順に浸漬し、超音波洗浄した後、酸素プラズマ処理を施した。
【0189】
<2> 次に、陽極803Gが形成された基板821上に、スピンコート法により、アクリル系樹脂で構成される絶縁層を形成した後、この絶縁層をフォトリソグラフィー法を用いてITO電極を露出するようにパターニングすることで隔壁(バンク)を形成した。さらに、隔壁が形成された基板821の表面を、まずOガスを処理ガスとしてプラズマ処理する。これにより陽極803Gの表面と隔壁の表面(壁面を含む)が活性化され親液化する。続いて、隔壁が形成された基板821の表面を、CFガスを処理ガスとしてプラズマ処理する。これにより、アクリル系樹脂からなる隔壁の表面のみにCFガスが反応して撥液化される。
【0190】
<3> 次に、緑色発光素子801Gを形成すべき領域に位置する隔壁の内側に、インクジェット法を用いて、1.0wt%PEDOT/PSS水分散液を塗布した。さらに、塗布したPEDOT/PSS水分散液を乾燥した後、大気中にて基板821を加熱し、陽極803G上に、PEDOT/PSSで構成される平均厚さ50nmのイオン伝導性の正孔注入層841Gを形成した。
【0191】
<4> 次に、緑色発光素子801Gを形成すべき領域に位置する隔壁の内側に、インクジェット法を用いて、上記一般式(5)で表わされる化合物の1.5wt%テトラメチルベンゼン溶液を塗布した。さらに、塗布した上記一般式(5)で表わされる化合物のテトラメチルベンゼン溶液を乾燥した後、窒素雰囲気中にて基板821を加熱した。続いて、基板821の、緑色発光素子801Gを形成すべき領域をキシレンによってリンスした。これにより、各正孔注入層841G上に、上記一般式(5)で表わされる化合物で構成される平均厚さ10nmの中間層842Gを形成した。
【0192】
<5> 次に、緑色発光素子801Gを形成すべき領域に位置する隔壁の内側に、インクジェット法を用いて、上記一般式(19)で表わされる化合物の1.2wt%テトラメチルベンゼン溶液を塗布した。さらに、塗布した上記一般式(19)で表わされる化合物のテトラメチルベンゼン溶液を乾燥した後、窒素雰囲気中にて基板821を加熱する。これにより、各中間層842G上に、上記一般式(19)で表わされる化合物で構成される平均厚さ80nmの緑色発光機能層805Gを形成した。
【0193】
<6> 次に、緑色発光機能層805G上に、CsCOを蒸着源として真空蒸着法にて形成した平均厚さ1nmのCsを含む蒸着膜を形成し、第2電子注入層863とした。
<7> 次に、第2電子注入層863上に、真空蒸着法を用いてAlで構成される、平均厚さ100nmの陰極808を形成した。
<8> 次に、形成した各層を覆うように、ガラス製の保護カバー(封止部材)を被せ、エポキシ樹脂により固定、封止した。
以上の工程により、図11に示すようなボトムエミッション構造の緑色発光素子801Gを製造した。この緑色発光素子801Gは、実施例1の緑色発光素子301G、比較例1の緑色発光素子401G、比較例2の緑色発光素子501Gおよび比較例3の緑色発光素子601Gの特性を規格化するために用いた。
【0194】
(比較例4B)
<1> まず、平均厚さ1.0mmの透明なガラス基板を基板921として用意した。次に、この基板921上に、スパッタ法により、平均厚さ50nmのITO膜を形成した後、このITO膜をフォトリソグラフィー法を用いてパターニングすることでITO電極(陽極903B)を形成した。
そして、陽極903Bが形成された基板921をアセトン、2−プロパノールの順に浸漬し、超音波洗浄した後、酸素プラズマ処理を施した。
【0195】
<2> 次に、陽極903Bが形成された基板921上に、スピンコート法により、アクリル系樹脂で構成される絶縁層を形成した後、この絶縁層をフォトリソグラフィー法を用いてITO電極を露出するようにパターニングすることで隔壁(バンク)を形成した。さらに、隔壁が形成された基板921の表面を、まずOガスを処理ガスとしてプラズマ処理する。これにより陽極903Bの表面と隔壁の表面(壁面を含む)が活性化され親液化する。続いて、隔壁が形成された基板921の表面を、CFガスを処理ガスとしてプラズマ処理する。これにより、アクリル系樹脂からなる隔壁の表面のみにCFガスが反応して撥液化される。
【0196】
<3> 次に、青色発光素子901Bを形成すべき領域に位置する隔壁の内側に、インクジェット法を用いて、1.0wt%PEDOT/PSS水分散液を塗布した。さらに、塗布したPEDOT/PSS水分散液を乾燥した後、大気中にて基板921を加熱し、陽極903B上に、PEDOT/PSSで構成される平均厚さ50nmのイオン伝導性の正孔注入層941Bを形成した。
【0197】
<4> 次に、正孔注入層941B上に、真空蒸着法を用いて、α−NPDで構成される平均厚さ10nmの正孔輸送層943Bを形成した。
<5> 次に、正孔輸送層943B上に、真空蒸着法を用いて以下に示す構成材料で構成される平均厚さ20nmの青色発光機能層905Bを形成した。
ここで、青色発光機能層905Bの構成材料としては、ホスト材料として上記式(11)で表わされる化合物を用い、ゲスト材料として上記式(14)で表わされる化合物を用いた。また、青色発光機能層中のゲスト材料(ドーパント)の含有量(ドープ濃度)は、ホスト材料に対して重量比で5.0%とした。
【0198】
<6> 次に、青色発光機能層905B上に、真空蒸着法を用いて、上記一般式(17)で表わされる化合物で構成される平均厚さ20nmの電子輸送層962を形成した。
<7> 次に、電子輸送層962上に、真空蒸着法を用いてフッ化リチウム(LiF)で構成される、平均厚さ0.5nmの第2電子注入層963を形成した。
<8> 次に、第2電子注入層963上に、真空蒸着法を用いてAlで構成される、平均厚さ100nmの陰極908を形成した。
<9> 次に、形成した各層を覆うように、ガラス製の保護カバー(封止部材)を被せ、エポキシ樹脂により固定、封止した。
以上の工程により、図12に示すようなボトムエミッション構造の青色発光素子901Bを製造した。この青色発光素子901Bは、実施例1の青色発光素子301B、比較例1の青色発光素子401B、比較例2の青色発光素子501Bおよび比較例3の青色発光素子601Bの特性を規格化するために用いた。
【0199】
(比較例5B)
<1> まず、平均厚さ1.0mmの透明なガラス基板を基板2121として用意した。次に、この基板2121上に、スパッタ法により、平均厚さ50nmのITO電極(陽極2103B)を形成した。
そして、陽極2103Bが形成された基板2121をアセトン、2−プロパノールの順に浸漬し、超音波洗浄した後、酸素プラズマ処理を施した。
【0200】
<2> 次に、陽極2103B上に、真空蒸着法を用いて、下記式(21)で表わされる化合物で構成される平均厚さ50nmの正孔注入層2141Bを形成した。
【0201】
【化11】

【0202】
<3> 次に、正孔注入層2141B上に、真空蒸着法を用いて、α−NPDで構成される平均厚さ10nmの正孔輸送層2143Bを形成した。
<4> 次に、正孔輸送層2143B上に、真空蒸着法を用いて以下に示す構成材料で構成される平均厚さ20nmの青色発光機能層2105Bを形成した。
ここで、青色発光機能層2105Bの構成材料としては、ホスト材料として上記式(11)で表わされる化合物を用い、ゲスト材料として上記式(14)で表わされる化合物を用いた。また、青色発光機能層中のゲスト材料(ドーパント)の含有量(ドープ濃度)は、ホスト材料に対して重量比で5.0%とした。
【0203】
<5> 次に、青色発光機能層2105B上に、真空蒸着法を用いて、上記一般式(17)で表わされる化合物で構成される平均厚さ20nmの電子輸送層2162を形成した。
<6> 次に、電子輸送層2162上に、真空蒸着法を用いてフッ化リチウム(LiF)で構成される、平均厚さ0.5nmの第2電子注入層2163を形成した。
<7> 次に、電子注入層上に、真空蒸着法を用いてAlで構成される、平均厚さ100nmの陰極2108を形成した。
<8> 次に、形成した各層を覆うように、ガラス製の保護カバー(封止部材)を被せ、エポキシ樹脂により固定、封止した。
以上の工程により、図13に示すような陽極2103B上の各層が蒸着層で構成され、正孔注入層2141Bにイオン伝導性の材料を用いず、かつ第1電子注入層を有しない、ボトムエミッション構造の青色発光素子2101Bを製造した。
【0204】
(比較例6B)
<1> まず、平均厚さ1.0mmの透明なガラス基板を基板2221として用意した。次に、この基板2221上に、スパッタ法により、平均厚さ50nmのITO電極(陽極2203B)を形成した。
そして、陽極2203Bが形成された基板2221をアセトン、2−プロパノールの順に浸漬し、超音波洗浄した後、酸素プラズマ処理を施した。
【0205】
<2> 次に、陽極2203B上に、真空蒸着法を用いて、上記式(21)で表わされる化合物で構成される平均厚さ50nmの正孔注入層2241Bを形成した。
<3> 次に、陽極2241B上に、CsCOを蒸着源として真空蒸着法にて形成した平均厚さ10nmのCsを含む蒸着膜を形成し、第1電子注入層2261Bとした。
<4> 次に、第1電子注入層2261B上に、真空蒸着法を用いて、Alで構成される平均厚さ0.5nmの拡散調整層2244Bを形成した。
【0206】
<5> 次に、拡散調整層2244B上に、真空蒸着法を用いて、α−NPDで構成される平均厚さ10nmの正孔輸送層2243Bを形成した。
<6> 次に、正孔輸送層2243B上に、真空蒸着法を用いて以下に示す構成材料で構成される平均厚さ20nmの青色発光機能層2205Bを形成した。
ここで、青色発光機能層2205Bの構成材料としては、ホスト材料として上記式(11)で表わされる化合物を用い、ゲスト材料として上記式(14)で表わされる化合物を用いた。また、青色発光機能層中のゲスト材料(ドーパント)の含有量(ドープ濃度)は、ホスト材料に対して重量比で5.0%とした。
【0207】
<7> 次に、青色発光機能層2205B上に、真空蒸着法を用いて、上記一般式(17)で表わされる化合物で構成される平均厚さ20nmの電子輸送層2262を形成した。
<8> 次に、電子輸送層2262上に、真空蒸着法を用いてフッ化リチウム(LiF)で構成される、平均厚さ0.5nmの第2電子注入層2263を形成した。
<9> 次に、電子注入層上に、真空蒸着法を用いてAlで構成される、平均厚さ100nmの陰極2208を形成した。
<10> 次に、形成した各層を覆うように、ガラス製の保護カバー(封止部材)を被せ、エポキシ樹脂により固定、封止した。
【0208】
以上の工程により、図14に示すような各層が蒸着層で構成される青色発光素子を製造した。
以上の工程により、図14に示すような陽極2203B上の各層が蒸着層で構成され、正孔注入層2241Bにイオン伝導性の材料を用いず、かつ第1電子注入層2261Bを有する、ボトムエミッション構造の青色発光素子2201Bを製造した。
【0209】
(比較例7R)
前記比較例4Rにおける前記工程<5>を、下記工程<5’>のように変更したこと以外は、前記比較例4Rと同様にして、図10に示すようなボトムエミッション構造の赤色発光素子701Rを製造した。この比較例7Rの赤色発光素子701Rは、実施例2の赤色発光素子301Rの特性を規格化するために用いた。
【0210】
<5’> 次に、赤色発光素子701Rを形成すべき領域に位置する隔壁の内側に、インクジェット法を用いて、上記一般式(7)で表わされる化合物の1.2wt%テトラメチルベンゼン溶液を塗布した。さらに、塗布した上記一般式(7)で表わされる化合物のテトラメチルベンゼン溶液を乾燥した後、窒素雰囲気中にて基板721を加熱する。これにより、各中間層742R上に、上記一般式(7)で表わされる化合物で構成される平均厚さ80nmの赤色発光機能層705Rを形成した。
【0211】
(比較例7G)
前記比較例4Gにおける前記工程<5>を、下記工程<5’>のように変更したこと以外は、前記比較例4Gと同様にして、図11に示すようなボトムエミッション構造の緑色発光素子801Gを製造した。この比較例7Gの緑色発光素子801Gは、実施例2の緑色発光素子301Gの特性を規格化するために用いた。
【0212】
<5’> 次に、緑色発光素子801Gを形成すべき領域に位置する隔壁の内側に、インクジェット法を用いて、上記一般式(20)で表わされる化合物の1.2wt%テトラメチルベンゼン溶液を塗布した。さらに、塗布した上記一般式(20)で表わされる化合物のテトラメチルベンゼン溶液を乾燥した後、窒素雰囲気中にて基板821を加熱する。これにより、各中間層842G上に、上記一般式(20)で表わされる化合物で構成される平均厚さ80nmの緑色発光機能層805Gを形成した。
【0213】
(比較例7B)
前記比較例4Bにおける前記工程<4>、前記工程<5>および前記工程<6>を、それぞれ、下記工程<4’>、下記工程<5’>および下記工程<6’>のように変更したこと以外は、前記比較例4Bと同様にして、図12に示すようなボトムエミッション構造の青色発光素子901Bを製造した。この比較例7Bの青色発光素子901Bは、実施例2の青色発光素子301Bの特性を規格化するために用いた。
【0214】
<4’> 次に、正孔注入層941B上に、真空蒸着法を用いて、上記式(9)で表わされる化合物で構成される平均厚さ10nmの正孔輸送層943Bを形成した。
<5’> 次に、正孔輸送層943B上に、真空蒸着法を用いて以下に示す構成材料で構成される平均厚さ10nmの青色発光機能層905Bを形成した。
ここで、青色発光機能層905Bの構成材料としては、ホスト材料として上記式(13)で表わされる化合物を用い、ゲスト材料として上記式(15)で表わされる化合物を用いた。また、青色発光機能層中のゲスト材料(ドーパント)の含有量(ドープ濃度)は、ホスト材料に対して重量比で5.0%とした。
<6’> 次に、青色発光機能層905B上に、真空蒸着法を用いて、上記式(17)で表わされる化合物で構成される平均厚さ30nmの電子輸送層962を形成した。
【0215】
2.評価
各実施例、各参考例および各比較例の表示装置および発光素子について、それぞれ、輝度が10cd/mとなるように発光素子に定電流を流し、このときに発光する発光素子の光の色を目視にて観察した。
ここで、10cd/mという低輝度の値を選んだ理由は、本発明の各実施例、各参考例の各発光素子および各比較例の各発光素子において、例え高輝度側(高電流密度側)で所望の発光色が得られたとしても、低輝度側(低電流密度側)に行くにつれて発光色が変化し、低輝度側(低電流密度側)では所望の発光色が得られない場合があったためである。逆に、低輝度側(低電流密度側)で所望の発光色が得られれば、高輝度側(高電流密度側)でも問題なく所望の発光色が得られた。なお、ここで所望の発光色が得られるとは、赤色発光素子では赤色発光が、緑色発光素子では緑色発光が、青色発光素子では青色発光が得られることを指す。
【0216】
また、各実施例、各参考例および各比較例の表示装置および発光素子について、それぞれ、輝度が1,000cd/mとなるように発光素子に定電流を流し、発光素子にかかる電圧、発光素子から放出された光の電流効率を測定した。
さらに、各実施例、各参考例および各比較例の表示装置および発光素子について、それぞれ、初期輝度が1,000cd/mとなるように発光素子に定電流を流し、初期輝度の80%となるまでの時間(LT80)を測定した。
そして、実施例1、参考例1、比較例1、2、3については、比較例4R、4G、4Bで測定された測定値を基準として規格した値を求めた。また、実施例2、参考例2については、比較例7R、7G、7Bで測定された測定値を基準として規格した値を求めた。
これらの結果を表1、表2に示す。
【0217】
【表1】

【0218】
【表2】

【0219】
表1、2から明らかなように、各実施例の表示装置において、これらが備える発光素子は、赤色発光素子301Rでは赤色発光機能層305Rと青色発光機能層305Bとの間に、緑色発光素子301Gでは緑色発光機能層305Gと青色発光機能層305Bとの間に、青色発光素子301Bでは正孔注入層341Bと青色発光機能層305Bとの間に、それぞれ、キャリア選択層として第1電子注入層361と拡散調整層344と正孔輸送層343とが介挿された構成となっていることにより、赤色発光素子301Rでは赤色発光機能層305Rが、緑色発光素子301Gでは緑色発光機能層305Gが、青色発光素子301Bでは青色発光機能層305Bが、それぞれ、選択的に発光した。その結果、赤色、緑色および青色の各発光素子301R、301G、301Bにおいて、それぞれ、高い色純度の赤色発光、緑色発光および青色発光が得られた。また、赤色、緑色および青色の発光素子301R、301G、301Bすべてにおいて、実施例1では0.92以上、実施例2では0.92以上という高い規格化電流効率が得られ、発光効率に優れた素子となった。さらに、赤色、緑色および青色の発光素子301R、301G、301Bすべてにおいて、実施例1では0.70以上、実施例2では0.63以上という優れた規格化寿命が得られ、長寿命化が図られたものとなった。加えて、赤色および緑色の発光素子301R、301Gの規格化電圧は、実施例1では1.08以下、実施例2では1.07以下、に抑えられており、駆動電圧の観点からも優れた特性が得られた。
【0220】
実施例1および実施例2に対して、比較例1の表示装置では、第1電子注入層361と拡散調整層344と正孔輸送層343との介挿が省略されている。このため、赤色発光素子401Rおよび緑色発光素子401Gでは、それぞれ、青色発光機能層405Bから赤色発光機能層405Rおよび緑色発光機能層405Gへの電子の注入が円滑に行われず、その結果、赤色および緑色の他に、青色が発光してしまう結果となった。これによって、赤色発光素子401Rおよび緑色発光素子401Gにおいて、それぞれ、赤色および緑色の色純度が大幅に低下した。これは、比較例1の赤色発光素子401Rおよび緑色発光素子401Gにおいて、青色発光機能層405Bから、赤色発光機能層405Rもしくは緑色発光機能層405Gへの電子注入性が不十分であるため、赤色発光機能層405Rもしくは緑色発光機能層405Gのみならず、青色発光機能層405Bも同時に発光したためである。
【0221】
さらに、比較例1の赤色発光素子401Rおよび緑色発光素子401Gの規格化寿命(LT80)が、それぞれ、0.11および0.35と低い値を示した。これは、比較例1の赤色発光素子401Rおよび緑色発光素子401Gにおいて、青色発光機能層405Bから、赤色発光機能層405Rもしくは緑色発光機能層405Gへの電子注入性が不十分であるため、赤色発光機能層405Rもしくは緑色発光機能層405Gの陰極408側界面の電子による劣化が大きかったためだと考えられる。
【0222】
また、比較例1の青色発光素子401Bの規格化寿命も0.50と低い値となった。これは、比較例1の青色発光素子401Bの正孔輸送層443Bをインクジェット法で成膜したためである。つまり、真空蒸着法のような気相プロセスを用いれば、正孔輸送層443Bの陰極408側界面を、真空以外の雰囲気にさらすことなく、次の青色発光機能層405Bの成膜を連続的に行うことができるが、インクジェット法のような液相プロセスを用いると、正孔輸送層443Bの成膜は真空雰囲気で行うことが困難であるため、正孔輸送層443Bの成膜は真空以外の雰囲気(例えば大気や窒素)で行うことになり、少なくとも正孔輸送層443Bの陰極408側界面は真空以外の雰囲気にさらされることになる。このように液相プロセスを用いて正孔輸送層443Bを成膜した場合、正孔輸送層443Bの陰極408側界面が汚染され易くなり、これが青色発光素子401Bの寿命を短くする。また、液相プロセスで正孔輸送層443Bの成膜を行う場合、正孔輸送材料を溶媒に溶解させた溶液を成膜に用いるため、正孔輸送層443B内に極微量の溶媒が残留し、これが正孔輸送層443B全体を汚染するため、青色発光素子401Bの寿命を短くなる。
【0223】
加えて、比較例1の赤色発光素子401Rおよび緑色発光素子401Gの規格化電圧が1.22および1.24と高い値を示した。これは、比較例1の赤色発光素子401Rおよび緑色発光素子401Gにおいて、青色発光機能層405Bから、赤色発光機能層405Rもしくは緑色発光機能層405Gへの電子注入性が不十分であるため、赤色発光機能層405Rおよび緑色発光機能層405Gの陰極408側界面での電子に対するエネルギー障壁が高いという状態が生じ、その結果、駆動電圧が2割以上上昇するという結果になったと考えられる。
【0224】
また、比較例2の表示装置では、実施例1および実施例2に対して、正孔輸送層343および拡散調整層344の介挿が省略されている。しかしながら、赤色発光素子501Rおよび緑色発光素子501Gにおいて、青色発光機能層505Bと赤色発光機能層505Rおよび緑色発光機能層505Gの間に第1電子注入層561が存在しているため、青色発光機能層505Bから赤色発光機能層505Rおよび緑色発光機能層505Gへの電子の注入が円滑に行われ、その結果、赤色発光素子501Rでは赤色発光機能層505Rのみが、緑色発光素子501Gでは緑色発光機能層505Gのみが、選択的に発光し、青色発光機能層505Bの発光を抑制することができた。但し、青色発光素子501Bにおいて、第1電子注入層561が青色発光機能層505Bに接する構造となっているため、この第1電子注入層561が青色発光機能層505Bの発光を阻害し、このため、規格化電流効率と規格化寿命が極端に低い値となり、実用レベルの特性に程遠い結果となった。なお、規格化寿命については、寿命が短すぎるため測定することができなかった。また、電流効率が極端に低くなったことに起因して、駆動電圧も大幅に上昇したため測定することができなかった。
【0225】
また、比較例3の表示装置では、実施例1および実施例2に対して、第1電子注入層361および拡散調整層344の介挿が省略されている。
このため、赤色発光素子601Rにおいて、青色発光機能層605Bから正孔輸送層643への電子注入、および正孔輸送層643から赤色発光機能層605Rへの電子の注入が円滑に行われない。このため、赤色発光機能層605Rはほとんど発光せず、青色発光機能層605Bが強く発光してしまう結果となった。
【0226】
同様に、比較例3の表示装置の緑色発光素子601Gにおいて、青色発光機能層605Bから正孔輸送層643への電子注入、および正孔輸送層643から緑色発光機能層605Gへの電子の注入が円滑に行わない。このため、緑色発光機能層605Gはほとんど発光せず、青色発光機能層605Bが強く発光してしまう結果となった。
つまり、比較例3の表示装置では、赤色発光素子601Rと緑色発光素子601Gと青色発光素子601Bの全てが青色に発光した。
【0227】
また、参考例1の表示装置では、実施例1に対して、拡散調整層344の介挿が省略され、参考例2の表示装置では、実施例2に対して、拡散調整層344の介挿が省略され、ている。
このため、参考例1および参考例2の表示装置では、それぞれ、実施例1および実施例2の表示装置と比較して、規格化寿命が短く、表示装置の使用に伴って、赤色発光素子301Rが赤色からピンク色を、緑色発光素子301Gが緑色から青緑色を発光してしまい、使用による色度変化が生じる結果となった。
【0228】
以上の各実施例と各比較例の結果をまとめると以下の通り。まず、赤色発光素子と緑色発光素子において、所望の発光色および0.60以上の実用レベルの規格化寿命が得られたのは、実施例1および実施例2および比較例2である。しかしながら、比較例2の青色発光素子501Bの電流効率は極端に低く、寿命も極端に短かったため、比較例2は表示装置として実用レベルに達しなかった。
次に、青色発光素子において、所望の発光色および0.60以上の実用レベルの規格化寿命が得られたのは、実施例1および実施例2および比較例3である。しかしながら、比較例3の赤色発光素子601Rと緑色発光素子601Gは、青色に発光したため、表示装置として実用レベルに達しなかった。
【0229】
以上より、表示装置として実用レベルに達したのは、実施例1と実施例2のみであった。
なお、本発明の実施例1および実施例2の赤色発光素子301R、緑色発光素子301Gおよび青色発光素子301Bの全てにおいて、所望の色が得られたのは、第1電子注入層361と拡散調整層344と正孔輸送層343の積層体がキャリア選択層として機能したためである。また、本発明の実施例1および実施例2の赤色発光素子301Rおよび緑色発光素子301Gにおいて、0.60以上の実用レベルの規格化寿命が得られたのも、第1電子注入層361と拡散調整層344と正孔輸送層343との積層体がキャリア選択層として機能したためである。さらに、本発明の実施例の青色発光素子301Bにおいて、0.60以上の実用レベルの規格化寿命が得られたのは、第1電子注入層361と拡散調整層344正孔輸送層343との積層体がキャリア選択層として機能し、且つ、正孔輸送層343と青色発光機能層305Bを真空蒸着法によって成膜したためである。
【0230】
比較例1と比較例3の青色発光素子の比較より、比較例3の真空蒸着法によって成膜した正孔輸送層643を有する青色発光素子601Bでは、比較例1のインクジェット法によって成膜した正孔輸送層443Bを有する青色発光素子401Bに比べ、2倍近い寿命が得られ、比較例3の青色発光素子601Bの発光寿命は実用レベルに達した。さらに実施例1と比較例3の青色発光素子の比較により、実施例1の青色発光素子301Bの発光寿命は、比較例3の青色発光素子601Bの発光寿命と同等であり、実用レベルに達していることがわかる。これは、実施例1の正孔輸送層343と青色発光機能層305Bを、比較例3の正孔輸送層643と青色発光機能層605Bと同様に、真空蒸着法にて成膜したことに起因する。
【0231】
同様に、実施例2と比較例7Bの青色発光素子の比較により、実施例2の青色発光素子301Bの発光寿命は、比較例7Bの青色発光素子901Bの発光寿命と同等であり、実用レベルに達していることがわかる。これは、実施例2の正孔輸送層343と青色発光機能層305Bを、比較例7Bの正孔輸送層943Bと青色発光機能層905Bと同様に、真空蒸着法にて成膜したことに起因する。
【0232】
また、前述の電流効率の測定方法に従って測定した測定値から、比較例3の青色発光素子601Bの電流効率と、実施例1の青色発光素子301Bの電流効率とを、それぞれ、比較例3の青色発光素子601Bの電流効率で規格化した値を求めた。さらに、比較例5Bの青色発光素子2101Bの電流効率と、比較例6Bの青色発光素子2201Bの電流効率とを、それぞれ、比較例5Bの青色発光素子2101Bの電流効率で規格化した値を求めた。
これらの結果を表3、表4に示す。
【0233】
【表3】

【0234】
【表4】

【0235】
ここで、表3は、青色発光素子601Bおよび301Bがそれぞれ有する正孔注入層641Bおよび341Bが、イオン伝導性の正孔注入材料で構成される場合において、第1電子注入層361の有無が青色発光素子601Bおよび301Bの電流効率にどう影響するかを示すものである。これに対し、表4は、青色発光素子2101Bおよび2201Bがそれぞれ有する正孔注入層2141Bおよび2241Bが、イオン伝導性の正孔注入材料で構成されない場合において、第1電子注入層2261Bの有無が青色発光素子2101Bおよび2201Bの電流効率にどう影響するかを示すものである。
【0236】
表3から明らかなように、正孔注入層641Bおよび341Bがイオン伝導性の正孔注入材料で構成される場合、第1電子注入層361を有する青色発光素子301Bの電流効率は、第1電子注入層361を有しない青色発光素子601Bの電流効率と、大きく変わらない。これに対して、表4から明らかなように、正孔注入層2141Bおよび2241Bがイオン伝導性の正孔注入材料で構成されない場合、第1電子注入層2261Bを有する青色発光素子2201Bの電流効率は、第1電子注入層2261Bを有しない青色発光素子2101Bの電流効率に比べ、大幅に低下する結果となった。
つまり、正孔注入層/電子注入層/正孔輸送層/青色発光機能層/電子輸送層という同一の積層構造(積層体)であっても、正孔注入層をイオン伝導性の正孔注入材料で構成しなければ、第1電子注入層2261Bの存在により、青色発光素子2201Bの青色発光が著しく阻害される結果となった。
【0237】
このことは、正孔注入層2241Bがイオン伝導性の正孔輸送材料で構成されない場合、第1電子注入層2261Bに含まれる電子注入材料が正孔輸送層2243Bや青色発光機能層2205Bに拡散し、これによって、青色発光機能層2205Bの青色発光が阻害されたことを示す。
これに対して、正孔注入層341Bがイオン伝導性の正孔輸送材料で構成される場合、第1電子注入層361に含まれる電子注入材料が主として、正孔注入層341Bに拡散、もしくは正孔注入層341Bの陰極308側界面に吸着するため、正孔輸送層343や青色発光機能層305Bへの拡散が大幅に抑制された。
つまり、実施例1および実施例2において、第1電子注入層361と正孔輸送層343の積層体から成るキャリア選択層を備える青色発光素子301Bを、高い電流効率(発光効率)で発光させるには、正孔注入層341Bにイオン伝導性の正孔注入材料を用いる必要がある。
【0238】
上記実施形態の他にも、様々な変形を加えることができる。以下、変形例を挙げて説明する。
(変形例1)
本実施形態では、キャリア選択層46は、第1電子注入層61と拡散調整層44と正孔輸送層43とが、陽極(3R、3G、3B)側からこの順に積層された積層体である場合について説明した。しかしながら、本発明の適用範囲は、かかる場合に限定されず、キャリア選択層46は、拡散調整層44と第1電子注入層61と正孔輸送層43とが、陽極(3R、3G、3B)側からこの順に積層された積層体であっても良い。
キャリア選択層46をかかる構成の積層体としても、拡散調整層44において電子注入材料を捕捉することができるため、長時間の使用によっても、発光素子1Rおよび1Gにおいて、青色発光機能層5Bを発光させることなく、それぞれ、赤色発光機能層5Rおよび緑色発光機能層5Gを選択的に発光させることができるようになる。
【0239】
(変形例2)
本実施形態では、発光素子1R、1Gおよび1Bに対して本発明の発光素子を適用して、発光素子1Rおよび1Gの第3の層が、それぞれ、赤色発光機能層5Rおよび緑色発光機能層5Gであり、且つ、発光素子1Rおよび1Gの第1の層が青色発光機能層5Bである場合について説明した。しかしながら、本発明の適用範囲は、かかる場合に限定されず、発光素子1Rおよび1Gの第3の層と第1の層が、それぞれ、異なる発光色の発光機能層であれば良く、例えば、発光素子1Rおよび1Gの第3の層が、それぞれ、黄色および橙色、第1の層が緑色を発光するものであっても良い。この場合、発光素子1Rは赤色発光機能層5Rに代えて黄色発光機能層を備え、発光素子1Gは緑色発光機能層5Gに代えて橙色発光機能層を備えるものとなる。さらに、発光素子1Rおよび1Gは、青色発光機能層5Bに代えて緑色発光機能層を備えるものとなる。
ただし、本実施形態のように、発光素子1Rおよび1Gの、それぞれの第3の層に赤色発光機能層5Rおよび緑色発光機能層5Gを、第1の層に青色発光機能層5Bを、適用することが好ましい。
【0240】
(変形例3)
本実施形態では、ディスプレイ装置100を、基板21側から光を取り出すボトムエミッション構造のディスプレイパネルに適用した場合について説明したが、これに限定されず、封止基板20側から光を取り出すトップエミッション構造のディスプレイパネルにも適用することが可能である。これによって、ディスプレイ装置100の色再現範囲を向上させることができる。
【0241】
(変形例4)
本実施形態では、ディスプレイ装置100の光R、G、Bを基板21側から透過させるにあたって、それぞれの光に対応したカラーフィルタ(色変換層)を設けていないが、基板21に接する面もしくは基板21内に、各サブ画素100R、100G、100Bに対応して設けられたカラーフィルタを有する構造としても良い。これによって、ディスプレイ装置100の色再現範囲を向上させることができる。
【符号の説明】
【0242】
1R、301R、401R、501R、601R、701R……赤色発光素子 1G、301G、401G、501G、601G、801G……緑色発光素子 1B、301B、401B、501B、601B、901B、2101B、2201B……青色発光素子 3R、3G、3B、303R、303G、303B、403R、403G、403B、503R、503G、503B、603R、603G、603B、703R、803G、903B、2103B、2203B……陽極 41R、41G、41B、341R、341G、341B、441R、441G、441B、541R、541G、541B、641R、641G、641B、741R、841G、941B、2141B、2241B……正孔注入層 42R、42G、342R、342G、442R、442G、542R、542G、642R、642G、742R、842G……中間層 43、343、443B、543B、643、943B、2143B、2243B……正孔輸送層 44、344、2244B……拡散調整層 46……キャリア選択層 5R、305R、405R、505R、605R、705R……赤色発光機能層 5G、305G、405G、505G、605G、805G……緑色発光機能層 5B、305B、405B、505B、605B、905B、2105B、2205B……青色発光機能層 61、361、561、2261B……第1電子注入層 63、363、463、563、663、763、863、963、2163、2263……第2電子注入層 62、362、462、562、662、962、2162、2262……電子輸送層 8、308、408、508、608、708、808、908、2108、2208……陰極 100……ディスプレイ装置 100R、100G、100B……サブ画素 20……封止基板 21、321、421、521、621、721、821、921、2121、2221……基板 22……平坦化層 24……駆動用トランジスタ 241……半導体層 242……ゲート絶縁層 243……ゲート電極 244……ソース電極 245……ドレイン電極 27……配線 31……隔壁 35……エポキシ層 1100……パーソナルコンピュータ 1102……キーボード 1104……本体部 1106……表示ユニット 1200……携帯電話機 1202……操作ボタン 1204……受話口 1206……送話口 1300……ディジタルスチルカメラ 1302……ケース(ボディー) 1304……受光ユニット 1306……シャッタボタン 1308……回路基板 1312……ビデオ信号出力端子 1314……データ通信用の入出力端子 1430……テレビモニタ 1440……パーソナルコンピュータ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
陽極と、
陰極と、
前記陽極と前記陰極との間に設けられた第1の色を発光する機能を有する第1の層と、
前記陽極と前記第1の層との間に設けられた第2の層と、
前記陽極と前記第2の層との間に設けられた第3の層と、を備え、
前記第2の層は、電子注入層と、拡散調整層と、前記電子注入層および前記拡散調整層よりも前記陰極側に配置されている正孔輸送層と、を有し、
前記第2の層は、前記第3の層の機能によってキャリアの流れが選択される機能を有することを特徴とする発光素子。
【請求項2】
請求項1に記載の発光素子であって、
前記第2の層は、前記電子注入層と、前記拡散調整層と、前記正孔輸送層とが、前記陽極側からこの順で積層されていることを特徴とする発光素子。
【請求項3】
請求項1または2に記載の発光素子であって、
前記第2の層と前記第3の層は直接接していることを特徴とする発光素子。
【請求項4】
請求項1乃至3のうちいずれか一項に記載の発光素子であって、
前記第3の層は、第2の色を発光する機能を有することを特徴とする発光素子。
【請求項5】
請求項4に記載の発光素子であって、前記第2の層はキャリアを流す機能を有することを特徴とする発光素子。
【請求項6】
請求項1乃至3のうちいずれか一項に記載の発光素子であって、
前記第3の層は、正孔注入層であることを特徴とする発光素子。
【請求項7】
請求項6に記載の発光素子であって、前記正孔注入層はイオン伝導性を有することを特徴とする発光素子。
【請求項8】
請求項6または7に記載の発光素子であって、前記第2の層はキャリアの流れを抑制する機能を有することを特徴とする発光素子。
【請求項9】
請求項1乃至8のいずれか一項に記載の発光素子であって、
前記電子注入層は、アルカリ金属、アルカリ土類金属、もしくはそれらの化合物で構成されることを特徴とする発光素子。
【請求項10】
請求項1乃至9のいずれか一項に記載の発光素子であって、
前記拡散調整層は、Al、Ag、Cu、Au、Mg、Ca、Sr、Ba、Ti、Zr、Sn、Zn、Nb、Cr、Moのうちから選択される金属、もしくはこれらの合金で構成されることを特徴とする発光素子。
【請求項11】
請求項1乃至10のうちいずれか一項に記載の発光素子であって、
前記第1の層は、気相プロセスを用いて形成されたものであることを特徴とする発光素子。
【請求項12】
請求項6乃至11のいずれか一項に記載の発光素子であって、
前記正孔輸送層は、気相プロセスを用いて形成されたものであることを特徴とする発光素子。
【請求項13】
請求項1乃至12のうちいずれか一項に記載の発光素子であって、
前記第1の色は青色であることを特徴とする発光素子。
【請求項14】
請求項1乃至13のうちいずれか一項に記載の発光素子であって、
前記第2の色は、赤色または緑色であることを特徴とする発光素子。
【請求項15】
請求項1乃至14のうちいずれか一項に記載の発光素子であって、前記第3の層は、液相プロセスを用いて形成されたものであることを特徴とする発光素子。
【請求項16】
請求項1乃至15のうちいずれか一項に記載の発光素子を備えることを特徴とする表示装置。
【請求項17】
請求項16に記載の表示装置を備えることを特徴とする電子機器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2013−41688(P2013−41688A)
【公開日】平成25年2月28日(2013.2.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−176318(P2011−176318)
【出願日】平成23年8月11日(2011.8.11)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】