説明

発光素子およびその製造方法

【課題】絶縁膜の剥がれを抑制することが可能な発光素子を提供する。
【解決手段】基板2上に、n型層3a、発光層3b、およびp型層3cを有する光半導体層3を形成する第1工程と、n型層上の露出領域Sp内に第1電極4を形成する第2工程と、p型層上に、発光層で発光した光を反射する第1金属層5a、および第1金属層を覆うとともに金を含む第2金属層5bを順次積層して第2電極5を形成する第3工程と、第2電極上に、チタンおよびシリコンの少なくとも一方を含む密着層6を形成する第4工程と、密着層を酸素雰囲気中で加熱して、密着層の表面を酸化させる第5工程と、表面を酸化させた密着層、第2電極、p型層および発光層を被覆するようにシリコンを含む絶縁膜7を形成する第6工程と、第2電極と重なる領域の一部に位置する、絶縁膜および密着層をエッチングして、第2電極の一部を露出させる第7工程とを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体を複数積層させた発光素子に関するものである。
【背景技術】
【0002】
現在、紫外光、青色光あるいは緑色光等を発光する発光素子として、単結晶基板上に光半導体層が積層されたものが種々提案されている。特に、光半導体層を構成する光半導体として窒化物半導体を用いた発光素子の開発において、発光素子の外部への光取り出し効率を向上させることが必要となっている。
【0003】
発光素子の光取り出し効率を向上させる技術として、光半導体層の一方主面に、高い反射率を持つ銀からなる反射電極を設けた発光素子を実装基板にフリップチップ方式で実装する技術が開示されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平11−220171号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載された発光素子によれば、発光素子の電気特性を向上させるため、反射電極上に形成したパッド電極の一部を残して絶縁膜(パッシベーション膜)を設ける際に、パッド電極と絶縁膜との剥がれが生じやすいという問題があった。そのため、発光素子を製造する際に歩留まりが低下しやすく、信頼性を低下しやすかった。
【0006】
本発明は上記課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、パッド電極上の絶縁膜がはがれにくくすることが可能な発光素子を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の発光素子の製造方法は、基板上に、n型層、該n型層の上面に該上面の一部が露出している露出領域を残して設けられた発光層、および該発光層上に設けられたp型層を有する光半導体層を形成する第1工程と、前記n型層上の前記露出領域内に第1電極を形成する第2工程と、前記p型層上に、前記発光層で発光した光を反射する第1金属層、および該第1金属層を覆うとともに金を含む第2金属層を順次積層して第2電極を形成する第3工程と、該第2電極上に、チタンおよびシリコンの少なくとも一方を含む密着層を形成する第4工程と、該密着層を酸素雰囲気中で加熱して、前記密着層の表面を酸化させる第5工程と、表面を酸化させた前記密着層、前記第2電極、前記p型層および前記発光層を被覆するようにシリコンを含む絶縁膜を形成する第6工程と、前記第2電極と重なる領域の一部に位置する、前記絶縁膜および前記密着層をエッチングして、前記第2電極の一部を露出させる第7工程とを有する。
【0008】
また、本発明の発光素子は、基板上に形成された、n型層、該n型層の上面に該上面の一部が露出している露出領域を残して設けられた発光層、および該発光層上に設けられたp型層を有する光半導体層と、前記n型層上の前記露出領域内に形成された第1電極と、前記p型層上に形成された、前記発光層で発光した光を反射する第1金属層、および該第1金属層を覆うとともに金を含む第2金属層が順次積層された第2電極と、該第2電極上に該第2電極の上面の一部が露出するように積層された、酸化チタンおよび酸化シリコンの少なくとも一方からなる酸化物を含むとともに、該酸化物の存在割合が上面から前記第2電極に向かって深さ方向に進むにつれて低くなっている密着層と、前記第2電極の前記上面の一部を露出させるとともに、前記密着層、前記第2電極、前記p型層および前記発光層を被覆した、シリコンを含む絶縁膜とを有する。
【発明の効果】
【0009】
本発明の発光素子の製造方法によれば、第2電極上に形成した、チタンおよびシリコンの少なくとも一方を含む密着層の表面を酸化させることにより、その後、密着層上に形成する絶縁膜との密着性を向上させることができる。そのため、密着層および絶縁膜の一部を除去する際に、第2電極と密着層との剥がれ、および密着層と絶縁膜との剥がれを抑制することができる。
【0010】
また、本発明の発光素子によれば、第2電極上に、酸化物の存在割合が上面から第2電極に向かって深さ方向に進むにつれて低くなっている密着層を有していることから、密着層上に形成する絶縁膜の接着信頼性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の発光素子の実施形態の断面図である。
【図2】図1に示す発光素子の製造方法の実施形態の一工程を示す断面図である。
【図3】図1に示す発光素子の製造方法の実施形態の一工程を示す断面図である。
【図4】図1に示す発光素子の製造方法の実施形態の一工程を示す断面図である。
【図5】図1に示す発光素子の製造方法の実施形態の一工程を示す断面図である。
【図6】図1に示す発光素子の製造方法の実施形態の一工程を示す断面図である。
【図7】図1に示す発光素子の製造方法の実施形態の一工程を示す断面図である。
【図8】図1に示す発光素子の製造方法の実施形態の一工程を示す断面図である。
【図9】図1に示す発光素子の製造方法の実施形態の変形例の一工程を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施の形態の例について図を参照しながら説明する。なお、本発明は以下の実施の形態の例に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内で種々の変更を施すことができる。
【0013】
<発光素子>
図1に、本発明の実施の形態の一例である発光素子1の断面図を示す。発光素子1は、図1に示すように、基板2、光半導体層3、第1電極4、第2電極5、密着層6および絶縁膜7から構成されている。
【0014】
基板2は、光半導体層3を結晶成長させることが可能な材料を用いることができ、例えばサファイア、窒化ガリウム、窒化アルミニウム、ホウ化ジルコニウムまたは酸化亜鉛などの結晶性材料を用いることができる。基板2は、平面視形状が四角形状となるように形成されている。基板2の厚みは、例えば10μm以上1000μm以下に設定されている。なお、基板2の平面視形状としては、例えば四角形状もしくは五角形状などの多角形状または円形状などに設定することができる。
【0015】
基板2は、後述する光半導体層3を成長させた後、エッチングなどを用いて除去してもよい。これにより、光半導体層3で発光した光が基板2で吸収されにくくなるため、光取り出し効率を向上させることができる。また、基板2が除去された光半導体層3の主面に凹凸構造を設けることにより、基板2が除去された光半導体層3の主面で全反射されにくくすることができ、光取り出し効率を向上させることができる。
【0016】
光半導体層3は、図2に示すように、基板2上に複数の半導体層を積層させることによって構成されている。光半導体層3の平面視形状は、基板2の平面視形状と同様に、例えば四角形状もしくは五角形状などの多角形状または円形状などとすることができる。光半導体層3は、全体の厚みが例えば100nm以上20μm以下で形成される。また、光半導体層3の各層の屈折率は、窒化ガリウムを用いた場合には、例えば1.80以上2.70以下に設定される。
【0017】
光半導体層3としては、III−V族半導体を用いることができる。このIII−V族半導体としては、III族窒化物半導体、ガリウム燐またはガリウムヒ素などを例示することができる。さらに、III族窒化物半導体としては、ボロン、アルミニウム、ガリウムおよびインジウムのうち少なくとも1種の窒化物からなる混晶を用いることができ、例えば窒化ガリウムを用いることができる。
【0018】
光半導体層3は、複数の半導体層として、n型層3a、発光層3bおよびp型層3cが積層されることによって構成されている。
【0019】
n型層3aは、基板2上に設けられる。n型層3aは、窒化ガリウムからなり、厚みが例えば50nm以上10μm以下に設定されている。n型層3aは、例えば不純物としてシリコンを含ませることにより、電子を多数キャリアとするn型の導電型が半導体に付与されている。
【0020】
発光層3bは、n型層3aの上面3a’に、上面3a’の一部が露出している露出領域Spを残して、n型層3a上に設けられる。発光層3bには、禁制帯幅の広い障壁層と禁制帯幅の狭い井戸層とからなる量子井戸構造が複数回繰り返し規則的に積層された多層量子井戸構造(MQW)を用いることができる。障壁層および井戸層としては、インジウムとガリウムとの窒化物からなる混晶においてインジウムとガリウムとの組成比を調整したものを用いることができる。このように構成された発光層3bは、例えば350nm以上600nm以下の波長で発光強度がピークとなる光を発光することができる。
【0021】
p型層3cは、発光層3b上に設けられる。p型層3cは、例えば不純物としてマグネシウムを含ませることによって、正孔を多数キャリアとするp型の導電型が半導体に付与されている。なお、n型層3aとp型層3cとは、互いに逆に配置されていてもよい。
【0022】
光半導体層3には、電圧を印加して発光させるために、第1電極4と第2電極5とが設けられている。第1電極4はn型層3aに電気的に接続されており、第2電極5はp型層3cに電気的に接続されている。
【0023】
第1電極4は、n型層3aの露出した露出領域Sp内に設けられている。第1電極4は、発光層3bおよびp型層3cと電気的に絶縁させるために、発光層3bおよびp型層3cと間を開けて設けられている。第1電極4と、発光層3bおよびp型層3cとの間隔は、例えば500nm以上2μm以下に設定することができる。
【0024】
第1電極4は、例えば、アルミニウム、チタン、ニッケル、クロム、インジウム、錫、モリブデン、銀、金、タンタルまたは白金などの金属や、それらの金属を含む合金膜や、酸化錫、酸化インジウムまたは酸化インジウム錫などの酸化物などを用いることができる。
【0025】
第2電極5は、光半導体層3のp型層3c上に形成されている。第2電極5は、第1金属層6a、および第1金属層5aを覆うとともに金を含む第2金属層5bが順次積層されている。第2電極5は、厚みが、例えば1μm以上5μm以下となるように設定されている。
【0026】
第1金属層5aは、p型層3c上に形成されている。第1金属層5aは、p型層3cの上面3c’よりも小さい面積で設けられている。第1金属層5aがp型層3cの上面3c’の面積に占める面積割合は、例えば80%以上95%以下となるように設けられる。第1金属層5aをp型層3cの上面3c’よりも小さい面積とすることによって、第2金属層5bで第1金属層5aを覆いやすくすることができる。なお、第1金属層5aから露出するp型層3cの上面3c’は、第1金属層5aによって覆われているp型層3cの上面3c’を環状に囲むように配置すればよい。
【0027】
また、第1金属層5aは、発光層3bで発光した光を反射する材料で構成されている。具体的に、第1金属層5aの材料としては、発光層3bで発光した光の波長に対する反射率が高い材料であって、p型層3cとの接触抵抗の低い材料を選択することができる。第1金属層5aの材料としては、例えば、アルミニウム、チタン、ニッケル、クロム、インジウム、錫、モリブデン、銀、亜鉛などを用いることができる。第1金属層5aは、厚みが、例えば0.5μm以上5μm以下となるように設定することができる。
【0028】
第2金属層5bは、第1金属層5aを覆うように形成されている。具体的には、第1金属層5aから露出しているp型層3c上および第1金属層5aの表面を覆うように第2金属層5bが形成されている。第2金属層5bは、第1金属層5aからの厚みが、例えば0.5μm以上5μm以下となるように設けられている。第2金属層5bは、第1金属層5aよりも酸化されにくい材料を用いることができ、一般的に酸化されにくい材料である金を含んでいる。
【0029】
密着層6は、第2電極5上に設けられており、第2電極5の上面5’の一部が露出するように積層されている。密着層6から露出している第2電極5の上面5’は、第2電極5の上面5’全体の面積に対して、例えば85%以上95%以下となるように設定されている。密着層6は、第2電極層5bからの厚みが、例えば0.5μm以上3μm以下となるように形成されている。密着層6は、チタン、シリコンなどの金属材料からなっている。
【0030】
密着層6は、酸化チタンおよび酸化シリコンの少なくとも一方からなる酸化物を含んでおり、該酸化物の存在割合が、密着層6の上面6’から第2電極5に向かって深さ方向に進むにつれて低くなっている。すなわち、密着層6の表面付近に酸化チタンおよび酸化シリコンの少なくとも一方からなる酸化物を有していれば良く、密着層6と第2電極5(第2金属層5b)との接触界面付近には含まれていなくてもよい。密着層6内の酸化物の存在割合を調べる方法としては、例えばダイナミック二次イオン質量分析(D-SIMS)法などを用いることができる。
【0031】
絶縁膜7は、第2電極5の上面5’の一部を露出させるとともに、密着層6、第2電極5、p型層3cおよび発光層3bを被覆するように形成されている。絶縁膜7は、シリコンを含む酸化物から構成されており、例えば酸化シリコンおよび酸化チタンの少なくとも一方を含んでいる。絶縁膜7は、密着層6からの厚みが、例えば1μm以上10μm以下となるように設けられている。
【0032】
本実施形態の発光素子1は、第2電極5と絶縁膜7との間に配置された密着層6の表面付近には、酸化チタンおよび酸化シリコンの少なくとも一方からなる酸化物を含んでいる。このように密着層6の表面付近に酸化物を含んでいることから、当該密着層6上に形成される絶縁膜7と密着層6とが酸化物同士で接着されることとなるため、密着層6と絶縁膜7との密着性を向上させることができる。その結果、密着層6と絶縁膜7との間で剥がれにくくすることができる。
【0033】
さらに発光素子1は、密着層6の酸化物の存在割合が、上面6’から第2電極5に向かって深さ方向に進むにつれて低くなっている。すなわち、第2電極5との接着界面付近において密着層6は、構成される金属材料の割合が多くなっている。これにより、密着層6と第2電極5との接着界面付近で、密着層6と第2電極とが金属材料同士で接着されることとなるため、密着層6と第2電極5との密着性を維持することができる。
【0034】
上述のように、密着層6の酸化物の存在割合が、上面6’から第2電極5に向かって深さ方向に進むにつれて低くなっていることから、当該密着層6は、絶縁膜7との間で密着性を向上させることができるとともに、第2電極5との間で密着性の低下を招きにくくすることができる。
【0035】
一方、密着層として、仮に、全体が酸化された酸化物を用いた場合、絶縁膜との接着強度を高めることができたとしても、第2電極との接着強度が劣化してしまい、密着層と第2電極との間で剥がれてしまうこととなる。
【0036】
<発光素子の製造方法>
次に、本発明の発光素子の製造方法の実施の形態の一例を説明する。図2から図8は、発光素子1の製造方法を説明するための断面図である。本実施形態の発光素子の製造方法は、主に、光半導体層を形成する第1工程、第1電極を形成する工程、第2電極を形成する工程、密着層を形成する工程、密着層の表面を酸化させる第5工程、絶縁膜を形成する第6工程、および第2電極の一部を露出させる第7工程を有している。以下、各工程について説明する。
【0037】
(第1工程)
まず、図2に示すように、基板2上に光半導体層3を形成する。光半導体層3は、n型層3a、発光層3bおよびp型層3cを順次積層した積層構造体で構成する。光半導体層3は、基板2上に例えば有機金属気相成長法によって成長させる。光半導体層3を成長させる他の方法として、例えば分子線エピタキシー法、ハイドライド気相成長法またはパルス・レーザ・デポジション法などを用いることができる。なお、光半導体層3としてはIII−V族半導体を用いることができ、p型またはn型の導電型を半導体に付与する際には、光半導体層3を結晶成長させながら添加物を混ぜればよい。
【0038】
発光層3bおよびp型層3cは、n型層3aの上面3a’に、上面3a’の一部を露出している露出領域Spを残して積層されている。露出領域Spは、面積が、例えば0.2μm以上3μm以下となるように設定することができる。n型層3aに上面3a’の一部を露出領域Spとして残すように発光層3bおよびp型層3cを積層させる方法としては、露出領域Spにマスクを形成した後、n型層3aの上面3a’に発光層3bおよびp型層3cを結晶成長させて、マスクを除去する方法を用いることができる。
【0039】
露出領域Spを形成する他の方法としては、基板2上に光半導体層3を成長させた後、エッチングなどでp型層3cおよび発光層3bの一部を除去することにより、n型層3aの上面3a’を露出させる方法を用いることができる。なお、露出領域Spは、n型層3aの上面3a’の一部だけでなく、n型層3aの一部がエッチングで削れることによって露出した表面であってもよい。
【0040】
(第2工程)
次に、図3に示すように、n型層3aの露出領域Spに、発光層3bおよびp型層3cと間をあけて第1電極4を形成する。第1電極4は、例えば、アルミニウム、チタン、ニッケル、クロム、インジウム、錫、モリブデン、銀、金、タンタルまたは白金などの金属や、それらの金属を含む合金膜や、酸化錫、酸化インジウムまたは酸化インジウム錫などの酸化物などを用いることができる。
【0041】
第1電極4を設ける方法としては、例えば金属を用いる場合は、スパッタリング法または蒸着法などを用いることができる。
【0042】
(第3工程)
また、図4および図5に示すように、p型層3c上に、第1金属層5aおよび第2金属層5bを積層してなる第2電極5を形成する。第1金属層5aは銀が主成分となるように設定されている。また、第2金属層5bは、銅、ニッケル、亜鉛、金およびパラジウムのうち少なくとも1種の金属材料が主成分となるように設定されている。本例において、第2金属層5bは、銅が主成分となるように設定されている。
【0043】
第2電極5を設ける方法は、例えば金属材料をスパッタリング法または蒸着法を用いることができる。第2電極5は、第1金属層5aおよび第2金属層5bが、p型層3c上に順次積層されている。
【0044】
第1金属層5aは、図4に示すように、p型層3c上に、p型層3cの上面3c’よりも小さい面積となるように設けられる。p型層3cの上面3c’が第1金属層5aから露出する領域は、第1金属層5aによって覆われているp型層3cの上面3c’を環状に取り囲むように配置されている。このように第1金属層5aをp型層3c上に設ける方法としては、例えばフォトリソグラフィ法およびリフトオフ法などを用いることができる。
【0045】
リフトオフ法を用いて第1金属層5aを形成する方法としては、マスクパターンをp型層3c上に、第1金属層5aの上面5a’が第1金属層5aから露出する領域に形成する。その後、第1金属層5aとなる金属材料を、p型層3c上およびp型層3c上に形成したマスクパターン上に積層する。この際に、第1金属層5aとなる金属材料を、マスクパターンの膜厚よりも薄くp型層3c上に積層させることにより、マスクパターンの端面で段切れさせることができる。そして、マスクパターンおよびマスクパターン上に積層した金属材料を除去することにより、p型層3cの上面3c’に、第1金属層5aと第1金属層5aから露出した領域を設けることができる。
【0046】
その後、第2金属層5bが、図5に示すように、第1金属層5aの表面を覆うように形成される。このように第2金属層5bを形成する方法としては、例えばフォトリソグラフィ法およびリフトオフ法を応用して行なうことができる。具体的には、第2金属層5bは、第1金属層5aの表面が露出するとともに、他の部分をマスクによって被覆した状態で、第2金属層5bとなる金を含む金属材料を積層させる。その後、マスクおよびマスク上に積層された第2金属層5bとなる金属材料を除去することによって、第1金属層5aの表面を被覆する第2金属層5bを形成することができる。
【0047】
(第4工程)
第3工程の後、図6に示すように、第2電極5上に、チタンおよびシリコンの少なくとも一方を含む密着層6となる金属膜6’を形成する。金属膜6’は、第2電極5の上面5’を覆うように形成する。金属膜6’を形成する方法としては、例えばフォトリソグラフィ法およびリフトオフ法などを応用して行なうことができる。なお、金属膜6’には、チタンおよびシリコンの両方が含まれていてもよいし、例えば、亜鉛、クロムおよびマグネシウムなどの金属がさらに含まれていてもよい。
【0048】
(第5工程)
そして、第4工程の後、このように形成された金属膜6’を酸素雰囲気中で加熱することによって、当該金属膜6’の表面を酸化させて密着層6を形成する。加熱温度は、例えば40℃以上100℃以下となるように設定することができる。なお、加熱温度および加熱温度は、金属膜6’を構成する金属材料によって、適宜設定すればよい。金属膜6’を加熱する際に、酸素雰囲気内の圧力を大気圧よりも高く設定してもよい。これにより、金属膜6’の表面に酸素が触れやすくすることができ、金属膜6’の表面を酸化されやすくすることができる。
【0049】
(第6工程)
第5工程の後、図7に示すように、表面を酸化させた密着層6、第2電極5、p型層3cおよび発光層3bを被覆するようにシリコンを含む絶縁膜7を形成する。絶縁膜7は、シリコンを含む溶剤を、密着層6、第2電極5、p型層3cおよび発光層3bを被覆するように、それぞれが露出している表面に塗布する。絶縁膜7は、例えば酸化シリコン、酸化チタンを含む材料を用いることができる。
【0050】
(第7工程)
その後、第6工程の後、図8に示すように、第2電極5と重なる領域の一部に位置する、絶縁膜7および密着層6をエッチングする。第2電極5と重なる領域の一部以外の領域には、エッチングされないように保護層などを設けた状態で、第2電極5と重なる領域の一部を除去する。このように第2電極5と重なる領域の一部に位置する、絶縁膜7および密着層6を除去することにより、第2電極5の上面5’の一部を露出させることができる。
【0051】
このように、密着層6の表面を酸化させた後、当該密着層6の表面が覆われるように絶縁層7を形成することから、密着層6と絶縁層7との密着性を向上させるとともに、密着層6と第2電極5との密着性を維持することができる。そのため、第7工程でエッチングによって絶縁層7および密着層6の一部を除去する際に、絶縁層7と密着層6とを剥がれにくくすることができる。
【0052】
さらに、密着層6として、チタンおよびシリコンの少なくともいずれかを含む材料によって構成されているとともに、絶縁膜7はシリコンを含む材料によって構成されている。そのため、第7工程において、絶縁膜7および密着層6を除去する際に、同じエッチング液で除去することができる。これにより密着層6を設けた場合であっても、絶縁膜7および密着層6を除去する工程の数を増えるのを抑制することができる。
【0053】
一方、密着層を設けずに第2電極上に絶縁膜を形成した場合、第2電極と重なる領域の一部に位置する絶縁膜を除去する際に、第2電極と絶縁膜との密着性が低いため、絶縁膜が第2電極から剥がれてしまい、良好な絶縁膜を形成することは困難だった。
【0054】
(発光素子の製造方法の変形例1)
第7工程において、フッ化アンモニウムを含む溶液を用いてエッチングしてもよい。これにより、シリコンを含む絶縁膜7とチタンおよびシリコンの少なくともいずれかを含む密着層6がフッ化アンモニウムに溶けやすいことから、第7工程の工程時間を短縮することができる。その結果、第7工程の生産性を向上させることができる。
【0055】
(発光素子の製造方法の変形例2)
第4工程において、図9に示すように、密着層6を形成すると中で密着層6よりも酸化されにくい金属材料からなる酸化抑制層8を形成して、密着層6中に介在させる工程を有していてもよい。図9は、酸化抑制層8を密着層6中に介在させる工程を説明する図であり、第2金属層5bおよび密着層6の一部を拡大した断面図である。酸化抑制層8は、密着層6よりも酸化されにくい金属材料であればよく、例えば金および白金などの金属材料、または酸化シリコンおよび酸化チタンなどの酸化物材料などを用いることができる。
【0056】
このように、密着層6の中に酸化抑制層8を介在させることにより、第5工程において、密着層6の表面を酸化させる際に、密着層6と第2金属層5bとの界面付近が酸化されるのを抑制することができる。これによって、密着層6と第2金属層5bとの界面付近の密着性が劣化するのを抑制することができる。
【0057】
(発光素子の製造方法の変形例3)
第4工程は、密着層6を形成するにつれて、密着層6を形成する雰囲気内の酸素濃度を高くしてもよい。密着層6を積層しながら雰囲気内の酸素濃度を高くすることにより、密着層6を表面に向かうにつれて酸化されやすくすることができる。これにより、密着層6の表面が酸化されている場合には、第5工程を行なう必要がなくなり、工程を短縮することができる。なお、密着層6の表面が酸化されるのを確実に行なうために、第5工程を行なって、密着層6の表面を酸化させてもよい。
【符号の説明】
【0058】
1 発光素子
2 基板
3 光半導体層
3a n型層
3b 発光層
3c p型層
3c’ 上面
4 第1電極
5 第2電極
5’ 上面
5a 第1金属層
5b 第2金属層
6 密着層
7 絶縁膜
8 酸化抑制層
Sp 露出領域


【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板上に、n型層、該n型層の上面に該上面の一部が露出している露出領域を残して設けられた発光層、および該発光層上に設けられたp型層を有する光半導体層を形成する第1工程と、
前記n型層上の前記露出領域内に第1電極を形成する第2工程と、
前記p型層上に、前記発光層で発光した光を反射する第1金属層、および該第1金属層を覆うとともに金を含む第2金属層を順次積層して第2電極を形成する第3工程と、
該第2電極上に、チタンおよびシリコンの少なくとも一方を含む密着層を形成する第4工程と、
該密着層を酸素雰囲気中で加熱して、前記密着層の表面を酸化させる第5工程と、
表面を酸化させた前記密着層、前記第2電極、前記p型層および前記発光層を被覆するようにシリコンを含む絶縁膜を形成する第6工程と、
前記第2電極と重なる領域の一部に位置する、前記絶縁膜および前記密着層をエッチングして、前記第2電極の一部を露出させる第7工程とを有する
発光素子の製造方法。
【請求項2】
前記第7工程において、フッ化アンモニウムを含む溶液を用いてエッチングする請求項1に記載の発光素子の製造方法。
【請求項3】
前記第4工程において、前記密着層を形成する途中で前記密着層よりも酸化されにくい金属材料からなる酸化抑制層を形成して、前記密着層中に介在させる工程を含む請求項1または2に記載の発光素子の製造方法。
【請求項4】
前記第4工程は、前記密着層を形成するにつれて、前記密着層を形成する雰囲気内の酸素濃度を高くすることを含む請求項1−3のいずれかに記載の発光素子の製造方法。
【請求項5】
基板上に形成された、n型層、該n型層の上面に該上面の一部が露出している露出領域を残して設けられた発光層、および該発光層上に設けられたp型層を有する光半導体層と、
前記n型層上の前記露出領域内に形成された第1電極と、
前記p型層上に形成された、前記発光層で発光した光を反射する第1金属層、および該第1金属層を覆うとともに金を含む第2金属層が順次積層された第2電極と、
該第2電極上に該第2電極の上面の一部が露出するように積層された、酸化チタンおよび酸化シリコンの少なくとも一方からなる酸化物を含むとともに、該酸化物の存在割合が上面から前記第2電極に向かって深さ方向に進むにつれて低くなっている密着層と、
前記第2電極の前記上面の一部を露出させるとともに、前記密着層、前記第2電極、前記p型層および前記発光層を被覆した、シリコンを含む絶縁膜とを有する
発光素子。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2012−248807(P2012−248807A)
【公開日】平成24年12月13日(2012.12.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−121798(P2011−121798)
【出願日】平成23年5月31日(2011.5.31)
【出願人】(000006633)京セラ株式会社 (13,660)
【Fターム(参考)】