説明

発光素子並びにこれを用いた画像表示装置及び照明装置

【課題】製造が容易である蛍光体を用いた演色性の高い発光素子、並びにこの発光素子を光源とする画像表示装置及び照明装置を提供する。
【解決手段】波長変換材料と、紫外光から可視光の範囲の光を発光する半導体発光素子とから構成されており、波長変換材料が下記一般式(I)で表されるガーネット結晶構造の化合物を母体とし、該母体内に発光中心イオンを含有してなる蛍光体であることを特徴とする発光素子。
1a 2b3cd (I)
〔式(I)中、M1は2価の金属元素、M2は3価の金属元素、M3は4価の金属元素をそ
れぞれ示し、aは2.7〜3.3、bは1.8〜2.2、cは2.7〜3.3、dは11.0〜13.0の範囲の数である。〕

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、波長変換材料として、紫外光から可視光の範囲の光を吸収してより長波長の可視光を発する蛍光体と、発光ダイオード(LED)やレーザーダイオード(LD)等の半導体発光素子とを組み合わせてなる演色性の高い発光素子、並びにその発光素子を光源とする画像表示装置、照明装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、半導体発光素子としての窒化ガリウム(GaN)系青色発光ダイオードと、波長変換材料としての蛍光体とを組み合わせて構成される白色発光の発光素子が、消費電力が小さく長寿命であるという特徴を活かして画像表示装置や照明装置の発光源として注目されている。
【0003】
この発光素子は、そこで用いられる蛍光体が、GaN系青色発光ダイオードの発する青色領域の可視光を吸収して黄色光を発光することから、蛍光体に吸収されなかったダイオードの青色光との混色により白色の発光が得られるものであって、その蛍光体としては、代表的には、イットリウム・アルミニウム複合酸化物(Y3 Al5 12)を母体とし、該母体内に発光中心イオンとしてのセリウム(Ce)を含有してなる蛍光体が知られているが、この蛍光体は、焼成温度が高い等、製造が必ずしも容易と言えるものではなかった。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、前述の従来技術に鑑み、製造が容易であり、更には、より演色性の高い発光素子を与えることができる蛍光体を用いた発光素子を開発すべくなされたものであって、従って、本発明は、製造が容易であると共に、演色性の高い発光素子を得ることができる蛍光体を用いた発光素子、並びに、その発光素子を光源とする画像表示装置及び照明装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者等は、前記課題を解決すべく鋭意検討した結果、特定のガーネット結晶構造の化合物を母体とし、該母体内に発光中心イオンを含有してなる蛍光体が、前記目的を達成できることを見い出し本発明に到達したもので、従って、本発明は、波長変換材料と、紫外光から可視光の範囲の光を発光する半導体発光素子とから構成されており、波長変換材料が下記一般式(I)で表されるガーネット結晶構造の化合物を母体とし、該母体内に発光中心イオンを含有してなる蛍光体である発光素子、並びに、該発光素子を光源とする画像表示装置及び照明装置、を要旨とする。
【0006】
1 a 2 b 3 c d (I)

〔式(I)中、M1 は2価の金属元素、M2 は3価の金属元素、M3 は4価の金属元素をそれぞれ示し、aは2.7〜3.3、bは1.8〜2.2、cは2.7〜3.3、dは11.0〜13.0の範囲の数である。〕
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、製造が容易である蛍光体を用いた演色性の高い発光素子、並びにこの発光素子を光源とする画像表示装置及び照明装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
本発明で用いる蛍光体は、前記一般式(I)で表されるガーネット結晶構造の化合物を母体とするものであり、一般に、M1 、M2 、及びM3 の金属元素を含む複合酸化物であり、M1 3 2 2 3 3 12で表される公知のガーネット結晶構造の化合物の中で、本発明においては、そのM1 が2価、M2 が3価、M3 が4価の金属元素である化合物を蛍光体の母体とすることを特徴とする。
【0009】
即ち、本発明は、蛍光体の母体として、例えば、前記Y3 Al5 12等の複合酸化物が知られ、又、M1 が2価、M2 が3価、M3 が4価の金属元素のガーネット結晶構造の化合物も前述の如く知られているものの、蛍光体としての特性はその母体を構成する元素及びその原子価等によって大きく変化するのに対して、このM1 が2価、M2 が3価、M3 が4価の金属元素のガーネット結晶構造の化合物が蛍光体の母体として優れていることを見い出したことに依拠するものである。
【0010】
ここで、式(I)における2価の金属元素M1 としては、発光効率等の面から、Mg、Ca、Zn、Sr、Cd、及びBaからなる群から選択された少なくとも1種であるのが好ましく、Mg、Ca、又はZnであるのが更に好ましく、Ca、又はCaとMgであるのが特に好ましい。
【0011】
又、式(I)における3価の金属元素M2 としては、同様の面から、Al、Sc、Ga、Y、In、La、Gd、及びLuからなる群から選択された少なくとも1種であるのが好ましく、Al、Sc、Y、又はLuであるのが更に好ましく、Sc、又はScとY、又はScとLuであるのが特に好ましい。
【0012】
又、式(I)における4価の金属元素M3 としては、同様の面から、Si、Ti、Ge、Zr、Sn、及びHfからなる群から選択された少なくとも1種であるのが好ましく、Si、Ge、又はSnである更に好ましく、Siであるのが特に好ましい。
【0013】
又、ガーネット結晶構造は、一般には、前述したように、式(I)におけるaが3、bが2、cが3で、dが12の体心立方格子の結晶であるが、本発明においては、後述する発光中心イオンの元素が、M1 、M2 、M3 のいずれかの金属元素の結晶格子の位置に置換するか、或いは、結晶格子間の隙間に配置する等により、式(I)においてaが3、bが2、cが3で、dが12とはならない場合もあり得、従って、aは2.7〜3.3、bは1.8〜2.2、cは2.7〜3.3、dは11.0〜13.0の範囲の数をとることとなり、aは2.9〜3.1、bは1.95〜2.05、cは2.9〜3.1の範囲の数であるのがそれぞれ好ましく、dは11.65〜12.35の範囲の数であるのが好ましい。
【0014】
又、前記ガーネット結晶構造の化合物母体内に含有される発光中心イオンとしては、前記と同様の面から、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Ce、Pr、Nd、Sm、Eu、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、及びYbからなる群から選択された少なくとも1種の2〜4価の元素であるのが好ましく、2価のMn、3価のCe、2〜3価のEu、又は3価のTbであるのが更に好ましく、3価のCeであるのが特に好ましい。
【0015】
本発明で用いる前記蛍光体は、前記一般式(I)における2価の金属元素M1 源化合物、3価の金属元素M2 源化合物、及び4価の金属元素M3 源化合物、並びに、発光中心イオンの元素源化合物を、ハンマーミル、ロールミル、ボールミル、ジェットミル等の乾式粉砕機を用いて粉砕した後、リボンブレンダー、V型ブレンダー、ヘンシェルミキサー等の混合機により混合するか、或いは、混合した後、乾式粉砕機を用いて粉砕する乾式法、又は、水等の媒体中にこれらの化合物を加え、媒体攪拌式粉砕機等の湿式粉砕機を用いて粉砕及び混合するか、或いは、これらの化合物を乾式粉砕機により粉砕した後、水等の媒
体中に加え混合することにより調製されたスラリーを、噴霧乾燥等により乾燥させる湿式法により、調製した粉砕混合物を、加熱処理して焼成することにより製造される。
【0016】
これらの粉砕混合法の中で、特に、発光中心イオンの元素源化合物においては、少量の化合物を全体に均一に混合、分散させる必要があることから液体媒体を用いるのが好ましく、又、他の元素源化合物において全体に均一な混合が得られる面からも、後者湿式法が好ましく、又、加熱処理法としては、アルミナや石英製の坩堝やトレイ等の耐熱容器中で、通常1000〜1600℃、好ましくは1200〜1500℃の温度で、大気、酸素、一酸化炭素、二酸化炭素、窒素、水素、アルゴン等の気体の単独或いは混合雰囲気下、10分〜24時間、加熱することによりなされる。尚、加熱処理後、必要に応じて、洗浄、乾燥、分級処理等がなされる。
【0017】
尚、前記加熱雰囲気としては、発光中心イオンの元素が発光に寄与するイオン状態(価数)を得るために必要な雰囲気が選択され、例えば、3価のEu等の場合には、大気、酸素、窒素、アルゴン等の酸化或いは中性雰囲気下、3価のCe等の場合には、大気、一酸化炭素、二酸化炭素、窒素等の弱酸化或いは弱還元雰囲気下、2価のMn、2価のEu、3価のTb等の場合には、一酸化炭素、窒素、水素、アルゴン等の中性若しくは還元雰囲気下、が採られる。
【0018】
又、ここで、M1 源化合物、M2 源化合物、及びM3 源化合物、並びに、発光中心イオンの元素源化合物としては、M1 、M2 、及びM3 、並びに発光中心イオンの元素の各酸化物、水酸化物、炭酸塩、硝酸塩、硫酸塩、蓚酸塩、カルボン酸塩、ハロゲン化物等が挙げられ、これらの中から、複合酸化物への反応性、及び、焼成時におけるNOx 、SOx 等の非発生性等を考慮して選択される。
【0019】
2価の金属元素M1 として好ましいとする前記Mg、Ca、及びZnについて、それらのM1 源化合物を具体的に例示すれば、Mg源化合物としては、MgO、Mg(OH)2 、MgCO3 、Mg(OH)2 ・3MgCO3 ・3H2 O、Mg(NO3 2 ・6H2 O、MgSO4 、Mg(OCO)2 ・2H2 O、Mg(OCOCH3 2 ・4H2 O、MgCl2 等が、又、Ca源化合物としては、CaO、Ca(OH)2 、CaCO3 、Ca(NO3 2 ・4H2 O、CaSO4 ・2H2 O、Ca(OCO)2 ・H2 O、Ca(OCOCH3 2 ・H2 O、CaCl2 等が、又、Zn源化合物としては、ZnO、Zn(OH)2 、ZnCO3 、Zn(NO3 2 、Zn(OCO)2 、Zn(OCOCH3 2 、ZnCl2 等が、それぞれ挙げられる。
【0020】
又、3価の金属元素M2 として好ましいとする前記Al、Sc、Y、及びLuについて、それらのM2 源化合物を具体的に例示すれば、Al源化合物としては、Al2 3 、Al(OH)3 、AlOOH、Al(NO3 3 ・9H2 O、Al2 (SO4 3 、AlCl3 等が、又、Sc源化合物としは、Sc2 3 、Sc(OH)3 、Sc2 (CO3 3 、Sc(NO3 3 、Sc2 (SO4 3 、Sc2 (OCO)6 、Sc(OCOCH3 3 、ScCl3 等が、又、Y源化合物としは、Y2 3 、Y(OH)3 、Y2 (CO3 3 、Y(NO3 3 、Y2 (SO4 3 、Y2 (OCO)6 、YCl3 等が、又、Lu源化合物としは、Lu2 3 、Lu2 (SO4 3 、LuCl3 等が、それぞれ挙げられる。
【0021】
又、4価の金属元素M3 として好ましいとする前記Si、Ge、及びSnについて、それらのM3 源化合物を具体的に例示すれば、Si源化合物としは、SiO2 、H4 SiO4 、Si(OCOCH3 4 等が、又、Ge源化合物としは、GeO2 、Ge(OH)4 、Ge(OCOCH3 4 、GeCl4 等が、又、Sn源化合物としは、SnO2 、SnO2 ・nH 2O、Sn(NO3 4 、Sn(OCOCH3 4 、SnCl4 等が、それぞ
れ挙げられる。
【0022】
更に、発光中心イオンの元素として好ましいとする前記Mn、Ce、Eu、及びTbについて、それらの元素源化合物を具体的に例示すれば、Mn源としては、MnO2 、Mn2 3 、Mn3 4 、MnOOH、MnCO3 、Mn(NO3 2 、MnSO4 、Mn(OCOCH3 2 、Mn(OCOCH3 3 、MnCl2 、MnCl3 等が、又、Ce源化合物としは、Ce2 3 、CeO2 、Ce(OH)3 、Ce(OH)4 、Ce2 (CO3 3 、Ce(NO3 3 、Ce2 (SO4 3 、Ce(SO4 2 、Ce2 (OCO)6 、Ce(OCOCH3 3 、CeCl3 、CeCl4 等が、又、Eu源化合物としは、Eu2 3 、Eu2 (SO4 3 、Eu2 (OCO)6 、EuCl2 、EuCl3 等が、又、Tb源化合物としは、Tb2 3 、Tb4 7 、Tb2 (CO3 3 、Tb2 (SO4 3 、TbCl3 等が、それぞれ挙げられる。
【0023】
以上、本発明で用いる前記ガーネット結晶構造の化合物を母体とし、該母体内に前記発光中心イオンを含有してなる蛍光体は、その発光中心イオンの含有量が、母体化合物1式量当たり0.0001〜0.3モルであるのが好ましく、0.001〜0.15モルであるのが更に好ましい。発光中心イオンの含有量が、前記範囲未満では、発光強度が小さくなる傾向となり、一方、前記範囲超過でも、濃度消光と呼ばれる現象により、やはり発光強度が減少する傾向となる。
【0024】
この蛍光体は、波長変換材料として用いられたとき、例えば、発光中心イオンが3価のCeである場合、紫外光から青色領域の可視光の範囲の光を吸収して、緑色、黄色、橙色、赤色、或いはそれらの中間色等の、より長波長の可視光を発する。その励起光の散乱成分を含まない、蛍光体の発光のみを分光測定した場合の発光色を、JIS Z8701で規定されるXYZ表色系で表したときの色度座標xとyの和が、(x+y)≧0.6を満足するのが好ましく、(x+y)≧0.8を満足するのが更に好ましい。
【0025】
本発明の発光素子は、波長変換材料としての前記蛍光体と、LEDやLD等の半導体発光素子とから構成されてなり、半導体発光素子の発する紫外光から可視光の範囲の光を吸収してより長波長の可視光を発する演色性の高い発光素子であり、カラー液晶ディスプレイ等の画像表示装置や面発光等の照明装置等の光源として好適である。
【0026】
本発明の発光素子を図面に基づいて説明すると、図2は、波長変換材料としての上記の蛍光体と、半導体発光素子とから構成される本発明の発光素子の一実施例を示す模式的断面図、図3は、図2に示す発光素子を組み込んだ面発光照明装置の一実施例を示す模式的断面図であり、図2及び図3において、1は発光素子、2はマウントリード、3はインナーリード、4は半導体発光素子、5は蛍光体含有樹脂部、6は導電性ワイヤー、7はモールド部材、8は面発光照明装置、9は拡散板、10は保持ケースである。
【0027】
本発明の発光素子1は、図2に示されるように、一般的な砲弾型の形態をなし、マウントリード2の上部カップ内には、GaN系青色発光ダイオード等からなる半導体発光素子4が、その上が、蛍光体をエポキシ樹脂やアクリル樹脂等のバインダーに混合、分散させ、カップ内に流し込むことにより形成された蛍光体含有樹脂部5で被覆されることにより固定されている。一方、半導体発光素子4とマウントリード2、及び半導体発光素子4とインナーリード3は、それぞれ導電性ワイヤー6、6で導通されており、これら全体がエポキシ樹脂等によるモールド部材7で被覆、保護されてなる。
【0028】
又、この発光素子1を組み込んだ面発光照明装置8は、図3に示されるように、内面を白色の平滑面等の光不透過性とした方形の保持ケース10の底面に、多数の発光素子1を、その外側に発光素子1の駆動のための電源及び回路等(図示せず。)を設けて配置し、
保持ケース10の蓋部に相当する箇所に、乳白色としたアクリル板等の拡散板9を発光の均一化のために固定してなる。
【0029】
そして、面発光照明装置8を駆動して、発光素子1の半導体発光素子4に電圧を印加することにより青色光等を発光させ、その発光の一部を、蛍光体含有樹脂部5における波長変換材料としての蛍光体が吸収し、より長波長の光を発光し、一方、蛍光体に吸収されなかった青色光等との混色により演色性の高い発光が得られ、この光が拡散板9を透過して、図面上方に出射され、保持ケース10の拡散板9面内において均一な明るさの照明光が得られることとなる。
【実施例】
【0030】
以下、本発明を実施例によりさらに具体的に説明するが、本発明はその要旨を越えない限り以下の実施例に限定されるものではない。
【0031】
実施例1
1 源化合物としてCaCO3 ;0.0297モル、M2 源化合物としてSc2 3 ;0.01モル、及びM3 源化合物としてSiO2 ;0.03モル、並びに発光中心イオンの元素源化合物としてCe(OCOCH3 3 ;0.0003モルを純水と共に、アルミナ製容器及びビーズの湿式ボールミル中で粉砕、混合し、乾燥後、ナイロンメッシュを通過させた後、得られた粉砕混合物をアルミナ製坩堝中で、大気下、1400℃で2時間、加熱することにより焼成し、引き続いて、水洗浄、乾燥、及び分級処理を行うことにより蛍光体を製造した。
【0032】
得られた蛍光体は、粉末X線回折による解析により、表1に示す組成のガーネット結晶構造の化合物を母体とし、該母体内に発光中心イオンとして3価のCeを含有するものであることが確認された。又、この蛍光体の発光スペクトルと励起スペクトルを測定し、図1に示した。この発光スペクトルから、JIS Z8722で規定されるXYZ表色系における色度座標xとyを、波長間隔5nmとして算出したところ、x=0.28、y=0.54であり、x+y=0.82であった。又、この蛍光体に、GaN系青色発光ダイオード(ピーク波長465nm)の青色光を照射し、その照射強度を調節したところ、その青色光を吸収して黄緑色光を発光し、蛍光体に吸収されなかったダイオードの青色光との混色によりやや青味がかった白色を示した。
【0033】
実施例2
1 源化合物としてCaCO3 ;0.0147モルと、Mg(OH)2 ・3MgCO3 ・3H2 O;Mgとして0.015モル、M2 源化合物としてSc2 3 ;0.0075モルと、Y2 3 ;0.0025モルを、それぞれ用いた外は、実施例1と同様にして蛍光体を製造した。得られた蛍光体は、粉末X線回折による解析により、表1に示す組成のガーネット結晶構造の化合物を母体とし、該母体内に発光中心イオンとして3価のCeを含有するものであることが確認された。又、この蛍光体の発光スペクトルと励起スペクトルを測定し、図2に示した。この発光スペクトルから、実施例1と同様にして色度座標xとyを算出したところ、x=0.43、y=0.53であり、x+y=0.96であった。又、この蛍光体に、実施例1と同様にして青色光を照射し、その照射強度を調節したところ、その青色光を吸収して黄色光を発光し、蛍光体に吸収されなかった青色光との混色により白色を示した。
【0034】
実施例3
加熱処理の温度を1200℃とした外は、実施例1と同様にして蛍光体を製造した。得られた蛍光体は、粉末X線回折による解析により、表1に示す組成のガーネット結晶構造の化合物を母体とし、該母体内に発光中心イオンとして3価のCeを含有するものである
ことが確認された。又、この蛍光体の発光スペクトルから、実施例1と同様にして色度座標xとyを算出したところ、x=0.28、y=0.54であり、x+y=0.82であった。又、この蛍光体に、実施例1と同様にして青色光を照射し、その照射強度を調節したところ、その青色光を吸収して黄緑色光を発光し、蛍光体に吸収されなかった青色光との混色によりよりやや青味がかった白色を示した。
【0035】
実施例4
2 源化合物としてSc2 3 ;0.0050モルと、Y2 3 ;0.0050モルを用いた外は、実施例2と同様にして蛍光体を製造した。得られた蛍光体は、粉末X線回折による解析により、表1に示す組成のガーネット結晶構造の化合物を母体とし、該母体内に発光中心イオンとして3価のCeを含有するものであることが確認された。又、この蛍光体の発光スペクトルから、実施例1と同様にして色度座標xとyを算出したところ、x=0.47、y=0.50であり、x+y=0.97であった。又、この蛍光体に、実施例1と同様にして青色光を照射し、その照射強度を調節したところ、その青色光を吸収して黄色光を発光し、蛍光体に吸収されなかった青色光との混色により白色を示した。
【0036】
実施例5
2 源化合物としてSc2 3 ;0.0050モルと、Lu2 3 ;0.0050モルを用いた外は、実施例2と同様にして蛍光体を製造した。得られた蛍光体は、粉末X線回折による解析により、表1に示す組成のガーネット結晶構造の化合物を母体とし、該母体内に発光中心イオンとして3価のCeを含有するものであることが確認された。又、この蛍光体の発光スペクトルから、実施例1と同様にして色度座標xとyを算出したところ、x=0.45、y=0.53であり、x+y=0.98であった。又、この蛍光体に、実施例1と同様にして青色光を照射し、その照射強度を調節したところ、その青色光を吸収して黄色光を発光し、蛍光体に吸収されなかった青色光との混色により白色を示した。
【0037】
実施例6
1 源化合物としてCaCO3 ;0.0147モルと、ZnO;0.015モルを用いた外は、実施例1と同様にして蛍光体を製造した。得られた蛍光体は、粉末X線回折による解析により、表1に示す組成のガーネット結晶構造の化合物を母体とし、該母体内に発光中心イオンとして3価のCeを含有するものであることが確認された。又、この蛍光体の発光スペクトルから、実施例1と同様にして色度座標xとyを算出したところ、x=0.29、y=0.54であり、x+y=0.83であった。又、この蛍光体に、実施例1と同様にして青色光を照射し、その照射強度を調節したところ、その青色光を吸収して黄緑色光を発光し、蛍光体に吸収されなかった青色光との混色によりやや青味がかった白色を示した。
【0038】
【表1】

【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】本発明の実施例1で得られた蛍光体の発光スペクトル及び励起スペクトルである。
【図2】本発明の実施例2で得られた蛍光体の発光スペクトル及び励起スペクトルである。
【図3】波長変換材料としての蛍光体と、半導体発光素子とから構成される発光素子の一実施例を示す模式的断面図である。
【図4】図3に示す発光素子を組み込んだ面発光照明装置の一実施例を示す模式的断面図である。
【符号の説明】
【0040】
1 発光素子
2 マウントリード
3 インナーリード
4 半導体発光素子
5 蛍光体含有樹脂部
6 導電性ワイヤー
7 モールド部材
8 面発光照明装置
9 拡散板
10 保持ケース

【特許請求の範囲】
【請求項1】
波長変換材料と、紫外光から可視光の範囲の光を発光する半導体発光素子とから構成されており、波長変換材料が下記一般式(I)で表されるガーネット結晶構造の化合物を母体とし、該母体内に発光中心イオンを含有してなる蛍光体であることを特徴とする発光素子。
1a 2b3cd (I)
〔式(I)中、M1は2価の金属元素、M2は3価の金属元素、M3は4価の金属元素をそ
れぞれ示し、aは2.7〜3.3、bは1.8〜2.2、cは2.7〜3.3、dは11.0〜13.0の範囲の数である。〕
【請求項2】
式(I)における2価の金属元素M1 が、Mg、Ca、Zn、Sr、Cd、及びBaからなる群から選択された少なくとも1種である請求項1に記載の発光素子。
【請求項3】
式(I)における2価の金属元素M1 が、Mg、Ca、又はZnである請求項2に記載の発光素子。
【請求項4】
式(I)における3価の金属元素M2 が、Al、Sc、Ga、Y、In、La、Gd、及びLuからなる群から選択された少なくとも1種である請求項1乃至3のいずれかに記載の発光素子。
【請求項5】
式(I)における3価の金属元素M2 が、Al、Sc、Y、又はLuである請求項4に記載の発光素子。
【請求項6】
式(I)における4価の金属元素M3 が、Si、Ti、Ge、Zr、Sn、及びHfからなる群から選択された少なくとも1種である請求項1乃至5のいずれかに記載の発光素子。
【請求項7】
式(I)における4価の金属元素M3 が、Si、Ge、又はSnである請求項6に記載の発光素子。
【請求項8】
蛍光体の発光中心イオンが、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Ce、Pr、Nd、Sm、Eu、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、及びYbからなる群から選択された少なくとも1種の元素である請求項1乃至7のいずれかに記載の発光素子。
【請求項9】
蛍光体の発光中心イオンが、3価のCeである請求項8に記載の発光素子。
【請求項10】
式(I)における2価の金属元素M1 がCaであり、3価の金属元素M2 がScであり、4価の金属元素M3 がSiである請求項1乃至9のいずれかに記載の発光素子。
【請求項11】
式(I)における2価の金属元素M1 がCaとMgであり、3価の金属元素M2 がScとY、又はScとLuであり、4価の金属元素M3 がSiである請求項1乃至9のいずれかに記載の発光素子。
【請求項12】
蛍光体の発光中心イオンの含有量が、母体化合物1式量当たり0.0001〜0.3モルである請求項1乃至11のいずれかに記載の発光素子。
【請求項13】
蛍光体の発光色を、XYZ表色系で表したときの色度座標xとyの和が、(x+y)≧0.6を満足する請求項1乃至12のいずれかに記載の発光素子。
【請求項14】
半導体発光素子が青色領域の範囲の光を発光するものである請求項1乃至13のいずれかに記載の発光素子。
【請求項15】
半導体発光素子が発光ダイオードである請求項1乃至14のいずれかに記載の発光素子。
【請求項16】
請求項1乃至15のいずれかに記載の発光素子を光源とする画像表示装置。
【請求項17】
請求項1乃至15のいずれかに記載の発光素子を光源とする照明装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2007−321149(P2007−321149A)
【公開日】平成19年12月13日(2007.12.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−144456(P2007−144456)
【出願日】平成19年5月31日(2007.5.31)
【分割の表示】特願2001−257420(P2001−257420)の分割
【原出願日】平成13年8月28日(2001.8.28)
【出願人】(000005968)三菱化学株式会社 (4,356)
【Fターム(参考)】