説明

発光素子及びその製造方法

本発明は発光素子及びその製造方法に関し、双安定伝導性特性と負抵抗特性を持つ電荷トラップ層と、電荷トラップ層と電気的に連結される有機発光層を含む発光素子及びその製造方法を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は発光素子に関し、特に電荷トラップ層及び有機発光層が導電層の間に積層形成された発光素子及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
液晶表示装置(Liquid Crystal Display:LCD)、プラズマ表示パネル(Plasma Display Panel:PDP)に引き続き、次世代平板表示装置として期待されている有機電界発光素子は、発光体である有機化合物を積層し、電圧を加えて電流を流すことで発光する素子であって、有機ELディスプレイ(Organic Electro Luminescent Display(OELD))、又は有機LED(Organic Light Emitting Diode (OLED))とも呼ばれる。
【0003】
LCDは光の選択的透過を通じて画像を表示し、PDPがプラズマ放電を通じて画像を表示するのに対し、有機電界発光素子は電界発光というメカニズムを通じて画像を表示する。これは二つの電極の間に有機発光材料を挿入し、各々の電極に電圧を加えれば、陽極と陰極においてそれぞれホールと電子が有機層の中に注入されて電子と正孔が再結合され、この時に発生する再結合エネルギが有機分子を刺激することで光を発生させる方式である。このような有機電界発光素子は自体発光の特性を持ち、視野の角度が広く、高鮮明、高画質、高速応答性などの長所があり、主に小型表示装置に適用され、テレビ、フレキシブル表示装置などの次世代表示装置として脚光を浴びている。
【0004】
最近の有機電界発光素子は、画面を成す最小単位であるピクセルを個別制御する能動型駆動方式であるアクティブマトリックス有機電界発光素子(Active Matrix Organic Light Emitting Diode:AMOLED)が主に使われている。AMOLEDは一方向に走査線が形成され、その一方向と交差される他方向に信号線及び電力供給線が形成されて一つの画素領域(pixel area)を定義する。画素領域には走査線と信号線の交差地点にスイッチング薄膜トランジスタ(switching TFT)が形成され、スイッチング薄膜トランジスタ及び電力供給線と連結されてストレージキャパシタ(storage capacitor)が形成され、ストレージキャパシタ及び電力供給線と連結されて電流を供給する駆動薄膜トランジスタが形成され、駆動薄膜トランジスタと連結されて有機電界発光素子が形成される。
【0005】
AMOLEDは、薄膜トランジスタを通じて電流を供給する。このようなAMOLEDは、薄膜トランジスタのチャンネルとして利用される活性層を非晶質シリコンで形成すると、キャリア移動度(mobility)が低くなる。従って、キャリア移動度が10cm2/V秒以上になるようにポリシリコンで活性層を形成する。ところが、ポリシリコン薄膜トランジスタは工程温度が非常に高いのでフレキシブル表示装置(flexible display)を製造するには様々な問題が発生する。
【0006】
また、薄膜トランジスタを製造するガラス基板は600℃以上の高温では変形されてしまうので、ポリシリコンを形成するために非晶質シリコンを形成した後、低温で結晶化する低温ポリシリコン(Low Temperature Poly Silicon:LTPS)が提案され、非晶質シリコンを結晶化させる方法としてエキシマレーザアニーリング(Excimer Laser Annealing:ELA)工程が提案された。しかし、ELA工程は、レーザの照査される部分が重なる領域があるので、レーザが重なる領域と重ならない領域の結晶化にバラツキがある。よって、結晶化による素子特性、特に閾値電圧(threshold voltage)の差によって薄膜トランジスタに流れる電流量にも差が発生するなど、安全性(stability)が落ちてしまう。そして、結晶粒の境界(grain boundary)が薄膜トランジスタごとに違うので、各薄膜トランジスタはバラツキのある電気的特性を有するようになる。
【0007】
既存の表示装置は薄膜トランジスタを使うので、非晶質シリコンやポリシリコンを形成しなければならず、また有機電界発光素子は電流で駆動するので、電流を償うための薄膜トランジスタを形成しなければならない。よって、現在は4個の薄膜トランジスタ、又は6個の薄膜トランジスタが必要であって、工程が非常に複雑で、単価も高くなる。そして裏面発光(bottom emission)方式は、薄膜トランジスタが開口率(aperture ratio)を減少させるので、開口率が約30〜50%で非常に低い。
【0008】
また、従来の表示装置は一つの電流レベルだけを持ち、64グレースケールを表現するためには電圧を64区間に分けなければならないが、分けられる電圧区間が小さい場合はグレースケールの表現に限度がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は薄膜トランジスタを利用しないで、開口率を上げながら工程効率及び動作速度を上げることができる発光素子及びその製造方法を提供する。
【0010】
本発明は電荷トラップ層及び有機発光層を導電層の間に形成することで、開口率及び動作速度を上げながら、グレースケール(gray scale)を容易に調節することができる発光素子及びその製造方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の一態様による発光素子は、双安定伝導性(bistable conductance)特性と負抵抗(negative differential resistance:NDR)特性を持つ電荷トラップ層と、前記電荷トラップ層と電気的に連結される有機発光層と、を含む。
【0012】
前記発光素子は、前記電荷トラップ層と前記有機発光層の上部及び下部にそれぞれ形成された上部導電層及び下部導電層を更に含み、前記発光素子は、前記電荷トラップ層と前記有機発光層の間に形成された中間導電層を更に含む。
【0013】
前記発光素子は、前記有機発光層と一つの前記導電層の間に位置するホール注入層とホール伝達層の少なくとも一つを更に含み、前記発光素子は、前記有機発光層ともう一つの前記導電層の間に電子伝達層と電子注入層の少なくとも一つを更に含む。
【0014】
前記電荷トラップ層は有機物層を含み、前記有機物層内に介在され、複数のナノクリスタルを含むナノクリスタル層を更に含む。また、前記ナノクリスタル層は複数のナノクリスタルを包むバリア層を更に含み、前記ナノクリスタルはAl、Ti、Zn、Fe、Ni、Cu、Au、Agとこれらの合金の少なくとも一つを含み、前記バリア層は酸化物又は有機物である。
【0015】
前記有機物層は低分子又は高分子有機物質の少なくとも一つを含み、前記有機発光層は低分子又は高分子有機物質の少なくとも一つを含む。
【0016】
前記発光素子は、前記上部導電層と下部導電層の間に印加される電圧の大きさによって、プログラム動作、消去動作又は読み取り動作を行い、前記読み取り動作の時に発光する。
【0017】
前記消去電圧の絶対値は前記プログラム電圧の絶対値より大きく、前記読み取り電圧の絶対値は前記プログラム電圧の絶対値より小さい。
【0018】
前記プログラム電圧、消去電圧及び読み取り電圧はポジティブ電圧であるか、或いはネガティブ電圧である。
【0019】
前記プログラム動作のために前記上部と下部導電層の間に複数の大きさを持つプログラム電圧が印加され、前記プログラム電圧は前記発光素子の閾値電圧以上、負抵抗領域以下から選択され、前記プログラム電圧の大きさによって前記読み取り動作の時に複数レベルの電流が出力される。
【0020】
前記読み取り動作のために前記上部と下部導電層の間に複数の大きさを持つ読み取り電圧が印加され、前記読み取り電圧は前記発光素子の閾値電圧より小さい領域から選択され、前記読み取り電圧の大きさによって前記読み取り動作の時に複数レベルの電流が出力される。
【0021】
前記発光素子は前面発光又は裏面発光し、前記発光素子はフレキシブル基板を更に含む。
【0022】
本発明の一態様による発光素子の製造方法は、基板上部に下部導電層を形成する段階と、前記下部導電層の上部に上部導電層を形成する段階と、前記下部導電層と前記上部導電層の間に双安定伝導性特性と負抵抗特性を持つ電荷トラップ層を形成する段階と、前記下部導電層と前記上部導電層の間に前記電荷トラップ層と電気的に連結されるように有機発光層を形成する段階と、を含む。
【0023】
前記電荷トラップ層は有機物層を含み、前記電荷トラップ層を形成する段階は前記有機物層内にナノクリスタル層を形成する段階を更に含む。
【0024】
前記有機物層は下部有機物層及び上部有機物層を含み、前記有機物層は低分子伝導性有機物を含む。
【0025】
前記ナノクリスタル層を形成する段階は前記下部有機物層と上部有機物層の間に金属層を形成し、前記金属層を酸化させてナノクリスタルと前記ナノクリスタルを包むバリア層を形成する段階を含み、前記酸化工程は酸素プラズマを利用する。
【0026】
前記有機物層は下部有機物層及び上部有機物層を含み、前記下部及び上部有機物層は高分子伝導性有機物を含む。
【0027】
前記ナノクリスタル層を形成する段階は前記下部と上部有機物層の間に第1バリア層、金属層及び第2バリア層を形成した後にキュアリング工程を実施して、ナノクリスタルと前記第1バリア層と第2バリア層によって形成されて前記ナノクリスタルを包んだバリア層を形成する段階を含む。
【0028】
前記第1及び第2バリア層は金属酸化物を含む。
【0029】
前記有機物層及び前記ナノクリスタル層はナノクリスタルを有機物質に分散させ、前記有機物質を前記基板上に回転塗布した後に熱処理して形成する。
【0030】
前記ナノクリスタル層は前記ナノクリスタル及び前記ナノクリスタルを包んだバリア層を含み、前記バリア物質を有機物質に更に添加して分散させ、前記有機物質を前記基板上に回転塗布した後に熱処理して形成する。
【0031】
前記有機物層と前記有機発光層の間に中間導電層を形成する段階を更に含み、前記基板はフレキシブル基板である。
【発明の効果】
【0032】
本発明による発光素子は単純な構造の素子を製造することができ、これによって工程効率を上げることができ、素子の信頼性を上げることができる。そして、このような発光素子を利用して表示装置を実現すれば、薄膜トランジスタを使用しなくても素子全体を表示装置として利用することが可能で、開口率をほとんど100%に近くなる。
【0033】
また、発光素子のプログラミング、消去及び読み取りの速度が数ナノ秒から数十ナノ秒(nano second)であるため動作速度を非常に速くし得る。
【0034】
そして、発光素子のプログラム電圧及び読み取り電圧によって多様な電流レベルを持ち、このような多様な電流レベルを利用して256グレースケール(gray scale)を容易に実現することができる。
【0035】
また、本発明による発光素子は消費電力が少なく、それによって温度上昇が少ないためフレキシブル表示装置(flexible display)を実現することができ、ほとんど有機物質で形成されるので、人が着用できるウエアラブル表示装置(wearable display)を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】は、本発明の一実施の形態による発光素子の断面図である。
【図2】は、本発明の他の実施の形態による発光素子の断面図である。
【図3】は、本発明による発光素子の動作速度を説明するためのグラフである。
【図4】は、本発明による発光素子にALDCNを利用した場合のポジティブ電圧とネガティブ電圧印加による電流−電圧特性グラフである。
【図5】は、本発明による発光素子にALDCNを利用した場合のポジティブ電圧とネガティブ電圧印加による電流−電圧特性グラフである。
【図6】は、本発明による発光素子にALDCNを利用した場合のリテンション特性グラフである。
【図7】は、本発明による発光素子にALDCNを利用した場合の断面写真である。
【図8】は、本発明による発光素子にα−NPDを利用した場合の電流−電圧特性グラフである。
【図9】は、本発明による発光素子にα−NPDを利用した場合の発光素子の断面写真である。
【図10】は、本発明による発光素子にα−NPDを利用した場合の発光特性を説明するための電流−電圧特性グラフである。
【図11】は、本発明による発光素子にα−NPDを利用した場合の発光状態を表すグラフ及びイメージである。
【図12】は、本発明による発光素子にα−NPDを利用した場合の発光状態を表すグラフ及びイメージである。
【図13】は、本発明による発光素子にAlqを利用した場合の電流−電圧特性グラフである。
【図14】は、本発明による発光素子にAlqを利用してポジティブ電圧とネガティブ電圧を印加する場合の発光特性を説明するための電流−電圧特性グラフである。
【図15】は、本発明による発光素子にAlqを利用した場合の駆動電圧による発光状態を表すグラフ及びイメージである。
【図16】は、本発明による発光素子にAlqを利用した場合の駆動電圧による発光状態を表すグラフ及びイメージである。
【図17】は、本発明第1実施の形態による発光素子の製造方法を順次に表す素子の断面図である。
【図18】は、本発明第1実施の形態による発光素子の製造方法を順次に表す素子の断面図である。
【図19】は、本発明第1実施の形態による発光素子の製造方法を順次に表す素子の断面図である。
【図20】は、本発明第1実施の形態による発光素子の製造方法を順次に表す素子の断面図である。
【図21】は、本発明の第1実施の形態による発光素子の製造方法でナノクリスタル層形成方法を説明するための概念断面図である。
【図22】は、本発明の第2実施の形態による発光素子の製造方法を順次に表す素子の断面図である。
【図23】は、本発明の第3実施の形態による発光素子の製造方法を順次に表す素子の断面図である。
【図24】は、本発明の第3実施の形態による発光素子の製造方法で有機物層形成方法を具体的に説明するための図面である。
【発明を実施するための形態】
【0037】
以下、添付された図面を参照して本発明の実施の形態を詳しく説明する。しかし、本発明は以下で開示される実施の形態に限定されることなく、互いに違う多様な形態に実現される。ただ、本実施の形態は本発明の開示を完全にさせ、通常の知識を有する者に発明の範疇を完全に知らせるためのものである。
【0038】
図1は本発明の一実施の形態による発光素子の断面図であって、裏面発光(bottom emission)型の発光素子の断面図である。
【0039】
図1を参照すれば、本発明の一実施の形態による発光素子は、第1導電層110と第2導電層130の間に有機発光層120が形成され、第2導電層130と第3導電層170の間に電荷トラップ層が形成される。即ち、本発明の一実施の形態による発光素子は基板100上部に順次に形成された第1導電層110、有機発光層120、第2導電層130、第1有機物層140、ナノクリスタル層150、第2有機物層160及び第3導電層170を含む。よって、第1有機物層140、ナノクリスタル層150及び第2有機物層160が電荷トラップ層を成す。また、第1導電層110と有機発光層120の間にホール注入層(hole injection layer)とホール伝達層(hole transport layer)の少なくとも一つを更に形成することができ、有機発光層120と第2導電層130の間に電子伝達層(electron transport layer)と電子注入層(electron injection layer)の少なくとも一つを更に形成することができる。
【0040】
基板100は光透過性の基板を利用し、絶縁性基板、半導体性基板又は導電性基板を利用することができる、即ち、プラスチック基板(PE、PES、PET、PENなど)、ガラス基板、Al基板、SiC 基板、ZnO基板、Si基板、GaAs基板、GaP 基板、LiAl基板、BN基板、AlN 基板、SOI基板とGaN基板の少なくとも一つの基板を利用することができる。一方、半導体性基板と導電性基板を利用する場合には、第1導電層110と基板100の間を絶縁させるためにアイソレータを形成しなければならない。また、基板100はフレキシブル(flexible)基板を利用することができる。フレキシブル基板を利用することでフレキシブル表示装置(flexible display)又はウエアラブル表示装置(wearable display)を実現することができる。
【0041】
第1導電層110はホール供給のための電極であり、仕事関数が高く、光を素子の外部に出すことができる透明金属酸化物、例えばITO(Indium Tin Oxide)を利用して約150nmの厚さで形成される。ITO以外には安全性が優秀なポリチオフェン(polythiophene)などを含む化学的にドーピング(chemically−doping)された共役高分子(conjugated polmer)が第1導電層110として利用されることができる。一方、第1導電層110は高い仕事関数を持つ金属物質を利用することも可能で、この場合第1導電層110での非発光再結合(recombination)による効率減少を防止することができる。
【0042】
有機発光層120はホールと電子を結合して光を生成する役割をし、高分子物質又は低分子物質を利用して約60nmの厚さで形成することができる。有機発光層120に利用される低分子物質としては、8−ヒドロキシキノリンアルミニウム(hydroxyquinoline aluminum:Alq3)などを利用することができ、高分子物質ではポリパラフェニレンビニレン(poly(p−phenylene vinylene):PPV )、ポリチオフェン(poly(thiophene)s:(PTh)s)、シアノ−PPV (Cyano−PPV )、ポリパラフェニレン(poly(p−phenylene):PPP)、ポリプルオレン(poly(fluorene)s)を利用することができる。また、第1導電層110と有機発光層120の間にはホール注入層及びホール伝達層を更に形成することができ、ホール注入層は銅フタロシアニン(copper phthalocyanine:CuPc)などを利用して約20nmの厚さで形成することができ、ホール伝達層はα−NPDなどの低分子物質又はポリ-N-ビニルカルバゾール(poly(n−vinylcarbazole):PVK)などの高分子物質を利用して約40nmの厚さで形成することができる。また、有機発光層120と第2導電層140の間には電子伝達層及び電子注入層を更に形成することができる。電子伝達層はAlq3などを利用して形成することができ、電子注入層はフッ化リチウム(lithium fluorine:LiF)などを利用して形成することができるが、これらはそれぞれ約0.5nmの厚さで形成することができる。
【0043】
第2導電層130は有機発光層120に電子注入のための電極として利用され、電気伝導性を持つ物質を利用することができ、20〜150nmの厚さで形成することができる。第2導電層130は電気的抵抗が低く、伝導性有機物質と界面特性が優秀なAl、Ag、Au、Pt、Cuなどの金属を利用することが望ましい。ところが、有機発光層120の間に形成される障壁(barrier)を低くして、電子注入において高い電流密度(current density)を得るために仕事関数が低い金属を利用することが更に望ましく、空気中で比較的安定した物質であるAlを利用することが望ましい。
【0044】
第1有機物層140は高分子物質又は低分子物質を利用して5〜50nmの厚さで形成することができる。高分子物質としてはPVK又はポリスチレン(Polystyrene:Ps)を利用することができ、低分子物質ではAIDCN、α−NPDとAlq3の少なくとも一つを利用することができる。このような第1有機物層140は双安定伝導性特性、即ち同一電圧で二つの導電性を持つことができる。
【0045】
ナノクリスタル層150は電荷が充電又は放電して、発光素子のプログラム又は消去状態を維持する。ナノクリスタル層150はナノクリスタル151とバリア層152を含む。ナノクリスタル151はAl、Mg、Zn、Ni、Fe、Cu、Au、Agの少なくともいずれかの一つ又はこれらの合金を利用して形成することができる。また、バリア層152はナノクリスタル151を包むように形成され、酸化物を形成することができる。例えばナノクリスタル151がAlで形成され、バリア層152はAlで形成することができる。ナノクリスタル層150は蒸発蒸着チャンバ内で金属を蒸着して酸化することで形成できる。そして、ナノクリスタル層150は単一層で形成することもでき、多層で形成することもできる。この時、単一層を構成するナノクリスタル層150の厚さは1〜40nmであることが望ましく、単一層のナノクリスタル層150を1〜10の層で積層することもできる。
【0046】
第2有機物層160は第1有機物層140と同じくPVK又はPsなどの高分子物質又はAIDCN、α−NPDとAlqの低分子物質の少なくとも一つを利用して形成することができ、5〜50nmの厚さで形成することができる。
【0047】
第3導電層170はナノクリスタル層150に電荷を充電する電極として利用され、第2導電層130と同じく電気伝導性を持つすべての物質を利用して形成することができ、2〜80nmの厚さで形成することができるが、Alを利用することが望ましい。
【0048】
前記各層の厚さは説明のための例示であって、本発明の一実施の形態による発光素子の各層の厚さがこれに限定されることはない。
【0049】
一方、本発明の一実施の形態による前記発光素子は有機発光層と有機物層を高分子物質と低分子物質を組み合わせて形成することができる。即ち、有機発光層と有機物層として、高分子物質と高分子物質、高分子物質と低分子物質、低分子物質と高分子物質又は低分子物質と低分子物質をそれぞれ利用して発光素子を製造することができる。ここで、有機発光層の高分子物質としてPPV 、(PTh)s、Cyano−PPV 、PPP、poly(fluorene)sなどを利用することができ、低分子物質としてAlqなどを利用することができる。また、有機物層の高分子物質としてPVK、Psなどを利用することができ、低分子物質としてAIDCN、α−NPD及びAlqなどを利用することができる。
【0050】
また、前記実施の形態による発光素子はナノクリスタル層150のナノクリスタル151をバリア層152が包むように形成し、これは金属を酸化させて形成した。しかし、これに限定されることなく、ナノクリスタル層150は多様に実現できる。例えば、第1と第2有機物層140、160の間に第1バリア層、金属層及び第2バリア層を形成した後にキュアリングして、ナノクリスタルがバリア層によって包まれるようにナノクリスタル層150を形成することができる。また、バリア層によって包まれるように、ナノクリスタルが分散された有機物質を形成してナノクリスタル層150及び有機物層を形成することもできる。このようなナノクリスタル層150を形成する多様な方法については、後に記述する。
【0051】
前記本発明の一実施の形態は裏面発光構造の発光素子について説明したが、有機発光層及び有機物層が積層された発光素子は前面発光(top emission)型で製造することもできる。即ち、図2に示すように第1導電層110と第2導電層130の間に第1有機物層140、ナノクリスタル層150及び第2有機物層160を積層して、第2導電層130と第3導電層170の間に有機発光層120を形成して前面発光型の発光素子を製造することができる。ここで、第1導電層110及び第2導電層130は電気伝導性を持つ物質、例えばAlを利用して形成することができ、第3導電層170は透明導電性物質、例えばITO又はIZOなどの透明導電性酸化物(transparent conductive oxide:TCO)を利用して形成することができる。また、第2導電層130は電子供給のための電極として利用され、第3導電層170はホール供給のための電極として利用される。
【0052】
また、前記前面発光型の発光素子は第2導電層130がホール供給のための電極として利用され、第3導電層170が電子供給のための電極として利用できる。この場合、第2導電層130はAuなどのように仕事関数が高い金属で形成するか、反射金属と仕事関数が高い透明導電性物質で形成することができる。反射金属としてはAl、Al:Nd、Ag又はこれらの合金を利用することができ、透明導電物質としてはITO又はIZOなどの透明導電性酸化物を利用できる。また、第3導電層170は第2導電層130より仕事関数が低い金属を含む光透過電極を利用でき、Mg、Mg:Ag、Ca、Ca:Ag、Ag、Al:Ca、Al:Ag、Li:Mg及びLiで成る群から選択された少なくとも一つを利用して形成することができる。
【0053】
前記のように構成された発光素子は、第1導電層110と第3導電層170の間に所定の電位差を持つようにプログラム電圧又は消去電圧を印加して、ナノクリスタル層150に電荷を充電又は放電させてプログラム(program)又は消去(erase)動作を行い、プログラム動作後に読み取り電圧を印加すれば、ナノクリスタル層150に保存された電荷、即ち電子が有機発光層120に注入されて有機発光層120から光が放出する。このような本発明による発光素子は数十ナノ秒の速度で駆動することが可能で、動作速度が早く、双安定伝導性及び負抵抗特性を持つ。また、本発明による発光素子はプログラム電圧及び読み取り電圧によって多様な電流レベルを持ち、これを利用してグレースケール(gray scale)を実現することができる。以下では本発明による発光素子のこのような特性を説明する。
【0054】
図3は本発明による発光素子の動作速度を説明するためのグラフであって、発光素子に電圧を印加した後に電流が流れる時間を測定したグラフである。
【0055】
図3を参照すれば、発光素子に電圧Aが印加された後に電流Bが流れ始める時までの時間が約数十ナノ秒必要である。よって、プログラム、消去及び読み取り動作が数十ナノ秒である超高速動作を実現できる。本発明による発光素子は数十ナノ秒の超高速動作が可能なので、従来のAMOLEDのピクセル選択速度が1/60秒であるのに対して駆動速度を大幅に改善することができ、残像を感じることができないので、表示品質も高めることができる。
【0056】
図4は第1及び第2有機物層140、160としてAIDCNを利用した発光素子において、フォワード方向に電圧を印加することによる電流−電圧I−V特性グラフであり、図5はリバース方向に電圧を印加することによる電流−電圧I−V特性グラフである。また、図6は前記発光素子のリテンション(retention)特性グラフであり、図7は断面写真である。前記発光素子は第1導電層として150nmのITO、ホール注入層として20nmのCuPc、ホール伝達層としては40nmのα−NPD、有機発光層としては60nmのAlq3、電子注入層としては0.5nmのLiF、第2導電層としては80nmのAl、第1有機物層としては30nmのAIDCN、金属層としては20nmのAl、第2有機物層としては30nmのAIDCN及び第3導電層としては80nmのAlを積層した構造である。
【0057】
第1導電層110のITOとナノクリスタル層150のAlを酸素プラズマ処理した。ここで、第1導電層110の酸素プラズマ処理はクリーニングと仕事関数を減少させるために約30秒実施し、Alの酸素プラズマ処理はナノクリスタル層150を形成するために約300秒実施する。
【0058】
図4を参照すれば、第1及び第2有機物層140、160としてAIDCNを利用し、Alナノクリスタル層150を利用した裏面発光素子の第1導電層110及び第3導電層170に所定の電圧を印加する場合、一定電圧範囲内で様々な電流状態を持つようになる。即ち、第1導電層110を陽極に連結し、第3導電層170を陰極に連結してフォワード方向に電圧を印加してその大きさを順次に増加させると、一定レベルの電圧までは電圧に対して電流も増加するが、ある領域からは電圧は増加するが電流は少なくなる負抵抗(Negative Differential Resistance :NDR)領域が表れる。そして、この領域を過ぎると、また電圧が増加することによって電流も増加するようになる。例えば第1導電層110を陽極に連結して、第3導電層170を陰極に連結してフォワード方向に電圧を10Vまで順次に増加させながら印加すれば(図面符号11)、約3Vの電圧である閾値電圧Vthから発光素子に流れる電流の量が増加するようになる。そして、約4.5Vの電圧Vimaxで電流が最大になり、その後に約4.5Vから約6Vまでの領域では、電圧が増加することによって電流が減少する負抵抗現象が表れる。その後に約6Vからまた電圧が増加することによって電流も増加し始める。よって、負抵抗領域以後の電流が増加する電圧、例えば8Vが消去電圧Veになる。
【0059】
従って、本発明では前記のような現象を利用して、本発明の一実施の形態による発光素子のプログラム動作、消去動作及び読み取り動作での電圧範囲を設定することができる。即ち、プログラム電圧は閾値電圧である約3V以上から負抵抗領域である6V以下から選択することができ、消去電圧は負抵抗領域以上の6V以上から選択することができ、読み取り電圧は閾値電圧である約3V以下から選択されることができる。
【0060】
そして、本発明による発光素子は、プログラム電圧の大きさによって読み取り動作の時に発光素子に違うレベルの電流が流れる特性を示す。
【0061】
図4の図面符号12を参照すれば、発光素子に4.5Vのプログラム電圧Vpを印加してプログラムした後に、また電圧を4.5Vまで増加させながら印加すれば、以前より電流が増加する。そして、図面符号13及び14を参照すれば、負抵抗領域の電圧である5.3Vの電圧と6Vの電圧をそれぞれ印加して発光素子をプログラムした後に、また5.3Vと6Vまで電圧を印加すれば、図面符号12より電流が低く、図面符号11の電流より高い中間電流値を持つようになる。即ち、発光素子に一定電圧を印加してプログラムした後に読み取り動作の時、図面符号11より高いレベルの電流が流れる。図面符号11による電流レベルは発光素子を消去させた後に読み取り動作を行った時と同じである場合もある。
【0062】
このような現象が発生される理由を説明する。本発明の一実施の形態による発光素子で第1及び第2有機物層140、160はショットキバリアとして作用し、バリア層(155)はトンネルリングバリアとして作用する。よって、閾値電圧以下ではナノクリスタル層150と第1及び第2有機物層140、160との間のエネルギレベルの差によってナノクリスタル層150内に電荷が充電されることないので、その電流の流れが少し増加する。しかし、第1及び第3導電層110、170の両端にかかる電圧が、本発明の一実施の形態による発光素子の閾値電圧Vth以上であるならば、ナノクリスタル層150内に電荷が充電されながら電流の流れが急激に増加する。以後、ナノクリスタル層150内に電荷が充電されている場合には、充電されない場合に比べて、その電流の流れが数十倍から数百倍になる。そして、第1及び第3導電層110、170の両端にかかる電圧が負抵抗領域電圧ならば、ナノクリスタル層150内に電荷が部分的に放電、又は部分的に充電されて電荷が充電されている場合、つまりVimaxを印加した場合よりは低く、消去電圧を印加した場合、つまり電荷が充電されない場合よりは高い電流の流れを持つようになる。そして、負抵抗領域以上の電圧(消去電圧)を印加すればナノクリスタル層150に充電された電荷が放電して充電されない状態に変化する。
【0063】
言い換えれば、第1導電層と第3導電層に印加される電圧が閾値電圧以上の場合、ナノクリスタルに電荷の充電が起こる。これはバリア層を通じて電荷がトンネルリングされ、ナノクリスタルに電荷がトラップされる現象に起因する。従って、閾値電圧以上では電流が急激に増加するようになる。以後、電圧の持続的な増加によって電圧が負抵抗領域に進入すれば、ナノクリスタルには電荷の部分的な放電と部分的な充電が起こる。また、ナノクリスタルにトラップされた電荷の電界の影響及び部分的な充放電によって印加される電圧が増加しても電流の量は少なくなる負抵抗現象が発生する。続けて電圧を増加させれば、電荷はナノクリスタルにトラップされなく、ナノクリスタルにトラップされた電荷もバリア層をトンネルリングして有機物層に進入する消去現象が発生する。よって、消去電圧の付近ではナノクリスタルにトラップされた電荷が除去され、電圧の増加によって電流が増加する。
【0064】
また、図4において、負抵抗領域の中から選択された高いプログラム電圧を印加した場合、ナノクリスタル層は高い抵抗状態を持つ。これは負抵抗領域から選択された比較的に低いプログラム電圧を印加した場合に比べて、ナノクリスタル層の電流が減少するからである。即ち、R=V/Iから分かるように、負抵抗領域では高い電圧において比較的に低い電流値を持つので、高いプログラム電圧の印加はナノクリスタル層の抵抗の減少をもたらす。
【0065】
従って、高いプログラム電圧を印加した後に読み取り電圧を印加すれば、ナノクリスタル層は高い抵抗状態によって、読み取り電圧で低い電流値を持つ。同じく低いプログラム電圧を印加した後に読み取り電圧を印加すれば、ナノクリスタル層は比較的に低い抵抗状態によって、読み取り電圧で高い電流値を持つようになる。
【0066】
上述のように、発光素子に流れる電流はプログラム電圧の大きさによって変わるように設定される。よって、発光動作のために必要な駆動電流をプログラム電圧の印加によって設定することができる。
【0067】
このように本発明による発光素子は負抵抗領域が存在するので、ナノクリスタル層150に電荷を充電する電圧、つまり複数の大きさを持つプログラム電圧を印加することができる。また、複数の大きさを持つプログラム電圧を印加することによって、複数の電流レベル、例えば4種類の電流レベルを実現することができる。また、本発明による発光素子は読み取り電圧によって、互いに違うレベルの電流が流れることができる。よって、一つの電流レベルで256グレースケールを実現する従来技術に比べて、本発明は一つの電流レベルで64グレースケールを実現し、4個の電流レベルを利用して256グレースケールを実現することで、グレースケールを効率的に実現することができる。ここで、プログラム電圧は閾値電圧以上から負抵抗領域の間の電圧を選択して印加することができ、閾値電圧ではVimax間は電流−電圧グラフの勾配が大きく、負抵抗領域ではその勾配が小さいので、負抵抗領域からプログラム電圧を選択することが正確な階調表現のためには望ましい。
【0068】
また、図4の特性グラフにおいて2Vの電圧で電流を測定すると、四種類の電流状態が表れる。つまり、4.5Vのプログラム電圧印加後に読み取り電圧Vrで高電流(低抵抗)状態であるオン電流Ion、負抵抗領域NDRである5.3V、6Vのプログラム電圧印加後に読み取り電圧Vrで中間電流(中間抵抗)状態である中間電流Iint1、Iint2、そして消去電圧Ve印加後に読み取り電圧で低電流(高抵抗)状態であるオフ電流Ioffが表れる。電流が大きいオン電流Ionに対する電流と小さいオフ電流Ioffとの比Ion/Ioffは約1.2×10で、読み取り電圧2Vでオン状態とオフ状態の電流の差が約10ある。よって、第1及び第2有機物層140、160でAIDCNを利用する場合、3〜6Vのプログラム電圧Vp、8Vの消去電圧Ve、2Vの読み取り電圧Vrを調節して、発光素子の動作を多様に制御することができる。つまり、閾値電圧と消去電圧の間に負抵抗領域が存在するので、複数の大きさを持つプログラム電圧を印加することができ、複数の大きさを持つプログラム電圧を印加することによって、読み取り状態で複数の電流レベルを得ることができる。よって、複数の電流レベルを利用して複数状態のグレースケール(gray scale)を容易に実現することができる。例えば、約1.2×10のオン/オフ電流比Ion/Ioffから四種類のグレースケールを実現することができ、オン/オフ電流比Ion/Ioffを調節することで、8、16、256グレースケールを実現することができる。これに対し、従来の場合、一つの電流レベルを持ち、これを利用して64グレースケールを実現するためには電圧を64区間に分けなければならない。従来の場合、分けることができる電圧区間が小さいと、グレースケール実現に限界がある。しかし、本発明の発光素子はプログラム電圧及び読み取り電圧によって多様な電流レベルを持ち、このような多様な電流レベルを利用して256グレースケール(gray scale)を実現することができる。
【0069】
図5は本発明の一実施の形態の発光素子にリバース方向に電圧を印加する場合の電流−電圧I−V特性グラフである。図5を参照すれば、電圧をリバース方向に順次に増加させると、一定レベルの電圧までは電圧に対して電流が増加するが、その一定レベルを超えると負抵抗領域が表れ、その後、電圧が増加することによって電流がまた増加するようになる。これは素子の対称的構造によるもので、前述したフォワード方向に電圧を印加した場合と同じメカニズムが作用する。
【0070】
本発明の発光素子はこのような原理を利用してプログラム電圧及び消去電圧を印加して、ナノクリスタル層150に電荷を充電及び放電してプログラム及び消去させ、読み取り電圧を印加してナノクリスタル層150に充電された電荷を利用して発光する。従って、一般の非揮発性メモリー素子の主要動作であるプログラム、読み取り及び消去動作を行うことができる。つまり、発光素子にプログラム電圧を印加すると、ナノクリスタル層150内に電荷を充電してロジッグのハイである‘1’のデータを保存し、消去電圧を印加すると、ナノクリスタル層150内に電荷を放電させてデータをロジッグのローである‘0’で消去する。また、発光素子に中間プログラム電圧、即ち負抵抗領域の電圧を印加すると、ナノクリスタル層150内に電荷を部分的に充電させてロジッグのハイとロジッグのローの中間状態のデータを発光素子にプログラムする。このような発光素子に読み取り電圧を印加すると、ナノクリスタル層150はその内部に電荷の充電の可否によって、その電流値が大きく変化され、この電流によって有機発光層120が発光する。ここで、前に説明したロジッグ値は、その測定する電流の方向によって変わることができる。
【0071】
図6は第1及び第2有機物層140、160でAIDCNを利用する場合、プログラム/消去の繰り返し回数と電流の関係を表すグラフである。図6に示すように、10Vの消去電圧を印加した後に2Vの読み取り電圧を印加する場合(図面符号11)、4.5Vの第1プログラム電圧を印加した後に2Vの読み取り電圧を印加する場合(図面符号12)、5.3Vの第2プログラム電圧を印加した後に2Vの読み取り電圧を印加する場合(図面符号13)及び6Vの第3プログラム電圧を印加した後に2Vの読み取り電圧を印加する場合(図面符号14)にも、プログラム/消去回数が増加しても一定の電流レベルを維持して四種類の電流状態を維持するので、四種類のグレースケール(gray scale)を実現することができる。
【0072】
そして、図7(a)に示すように、第1導電層、有機発光層、第2導電層、第1有機物層、ナノクリスタル層、第2有機物層及び第3導電層が明確に形成されたことが分かる。また、図7(b)に示すように、第1と第2有機物層の間のナノクリスタル層はアルミニウムナノクリスタルとアルミニウムナノクリスタルを包むアルミニウム酸化物で非結晶層であるバリア層からなり、多数のアルミニウムナノクリスタルはバリア層で包まれてお互いによく分離(isolation)されている。
【0073】
図8は第1及び第2有機物層140、160としてα−NPDを利用した発光素子の電流−電圧I−V特性グラフであり、図9は前記発光素子の断面写真である。
【0074】
本実施の形態では第1導電層として150nmのITO、ホール注入層として20nmのCuPc、ホール伝達層としては40nmのα−NPD、有機発光層としては60nmのAlq3、電子注入層としては0.5nmのLiF、第2導電層としては80nmのAl、第1有機物層としては30nmのα−NPD、金属層としては10nmのAl、第2有機物層としては30nmのα−NPD及び第3導電層としては80nmのAlを積層して発光素子を実現し、第1導電層110のITOとナノクリスタル層150のAlを酸素プラズマ処理した。第1導電層110の酸素プラズマ処理はクリーニングと仕事関数を減少させるために約30秒実施し、Alの酸素プラズマ処理はナノクリスタル層150を形成するために約300秒実施する。
【0075】
図8に示すように、第1導電層110を陽極に連結し、第3導電層170を陰極に連結して10Vまで順次に増加させながら印加すれば(図面符号21)、約3.6Vの閾値電圧以上で電流の量が急激に増加し、4.5Vの電圧Vimaxで電流が最大値になり、約4.5Vから8V間でまた電流が緩い勾配で減少し、また8V以上で電流が増加し始める。この時、最大の電流になる4.5Vの電圧を第1プログラム電圧に、負抵抗領域の6Vと8Vを第2及び第3プログラム電圧に、負抵抗領域以後に電流が増加する領域で10Vを消去電圧Veに設定した。発光素子に第1プログラム電圧まで印加した後に、また電圧を4.5Vまで増加させながら印加すると、以前より電流が増加する(図面符号22)。そして、それぞれ第2及び第3プログラム電圧として6Vと8Vをそれぞれ印加すれば(図面符号23及び24)図面符号22よりは電流が低く、図面符号21の電流よりは高い中間電流値を持つようになる。
【0076】
このような特性グラフで2Vの電圧で電流を測定すると、四種類の電流状態が表れる。電流が大きいオン電流Ionに対する電流が小さいオフ電流Ioffの比Ion/Ioffは約1.64×10で、読み取り電圧2Vからオン状態とオフ状態の電流の差が約102ある。よって、第1及び第2有機物層140、160としてα−NPDを利用する場合、4.5V、6V、8Vのプログラム電圧、10Vの消去電圧Ve、2Vの読み取り電圧Vrで発光素子の動作を制御することができる。即ち、閾値電圧と消去の間に負抵抗領域が存在するので、複数状態のグレースケール(gray scale)を実現することができる。そして、図9(a)に示すように第1導電層、有機発光層、第2導電層、第1有機物層、ナノクリスタル層、第2有機物層及び第3導電層が明確に形成されたことが分かる。また、図9(b)に示すように第1と第2有機物層の間にナノクリスタル層がナノクリスタルとバリア層からなり、ナノクリスタルがバリア層に包まれて、よく分離(isolation)されていることが分かる。
【0077】
一方、図10は第1及び第2有機物層140、160としてα−NPDを利用する場合の発光特性を観察するための電流−電圧I−V特性グラフであり、図11及び図12はプログラム電圧を印加した後に読み取り電圧を印加する場合と消去電圧を印加した後に読み取り電圧を印加する場合の発光状態を表すグラフ及び光学イメージである。
【0078】
図10に示すように0Vから9Vまで上昇させながらフォワード方向に電圧を印加すれば(図面符号21)、電圧が増加することによって電流が徐々に増加し、約5Vの閾値電圧Vthで電流が急激に上昇するようになる。以後、電圧が増加することによって電流が徐々に増加し、約7Vで電流が急激に低くなる負抵抗状態になった後に、また電流が増加するようになる。ここで、6Vの電圧がプログラム電圧になり、8Vの電圧が消去電圧になり、4Vの電圧が読み取り電圧になる。フォワード方向に6Vのプログラム電圧まで印加すれば素子がプログラムされる(図面符号22)。そして、また電圧を6Vのプログラム電圧まで印加すれば(図面符号23)、電流が増加するようになる。このように消去電圧を印加した後に読み取り電圧を印加して、プログラム電圧を印加した後に読み取り電圧を印加する場合の発光状態を図11及び図12に示す。図11に示すように消去電圧Veを印加した後とプログラム電圧Vpを印加した後、同じ読み取り電圧Vrを印加しても、消去電圧Veを印加した後には読み取り電圧Vrによる光の輝度が非常に低く、一方、プログラム電圧Vpを印加した後には読み取り電圧Vrで十分な輝度の光が得られることが分かる。即ち、図12に示すように消去電圧を印加した後には読み取り電圧を印加しても発光されないが、プログラム電圧を印加した後には読み取り電圧を印加すれば発光するようになる。
【0079】
図13は第1及び第2有機物層140、160としてAlq3を利用した発光素子の電流−電圧I−V特性グラフである。即ち、本発明のもう一つの実施の形態は第1導電層として150nmのITO、ホール注入層として20nmのCuPc、ホール伝達層としては40nmのα−NPD、有機発光層としては60nmのAlq、電子注入層としては0.5nmのLiF、第2導電層としては80nmのAl、第1有機物層としては30nmのAlq3、金属層としては10nmのAl、第2有機物層としては30nmのAlq及び第3導電層としては及び80nmのAlを積層して発光素子を実現し、第1導電層110のITOとナノクリスタル層150のAlを酸素プラズマ処理した。第1導電層110の酸素プラズマ処理はクリーニングと仕事関数を減少させるために約30秒実施し、Alの酸素プラズマ処理はナノクリスタル層150を形成するために約300秒実施する。
【0080】
第1導電層110を陽極に連結し、第3導電層170を陰極に連結して、図13に示すようにフォワード方向に電圧を10Vの電圧まで順次に増加させながら印加すれば(図面符号31)、約3.3Vの閾値電圧以上で電流の量が急激に増加し始め、約4.4Vの電圧で電流が最大値になり、約4.4Vから7Vまでの負抵抗領域の後に7V以後でまた電流が増加し始める。この時、最大の電流になる4.4Vの電圧が第1プログラム電圧に選択され、負抵抗領域である5.5Vと7Vを第2及び第3プログラム電圧に選択され、負抵抗領域以後に電流が増加する10Vを消去電圧に選択した。素子に第1プログラム電圧を印加してプログラムさせた後に、また4.4Vまで増加させながら印加すると、以前より電流が増加するようになる(図面符号32)。そして、負抵抗領域の5.5Vと7Vの第2及び第3プログラム電圧をそれぞれ印加した後に、また5.5Vと7Vで電圧を増加させるようにすれば(図面符号33及び34)、図面符号32より電流が低く、図面符号31の電流より高い中間電流値を持つようになる。
【0081】
このような特性グラフにおいて、2Vの電圧で電流を測定すると、四種類の電流状態が表れる。電流が大きいオン電流Ionに対する電流が小さいオフ電流Ioffの比Ion/Ioffは約7.6×10で、読み取り電圧2Vでオン状態とオフ状態の電流の差が約10ある。よって、第1及び第2有機物層140、160としてAlqを利用する場合、4.4V、5.5V、7Vのプログラム電圧Vp、10Vの消去電圧Ve、2Vの読み取り電圧Vrを印加することで発光素子の動作を制御することができる。即ち、閾値電圧と消去電圧の間に負抵抗領域が存在するので、複数状態のグレースケール(gray scale)を実現することができる。
【0082】
一方、図14は第1及び第2有機物層140、160としてAlqを利用する場合の発光特性を示すための電流−電圧I−V特性グラフであり、図15及び図16はプログラム電圧を印加した後に読み取り電圧を印加する場合と、消去電圧を印加した後に読み取り電圧を印加した後の発光状態を表すグラフ及び光学イメージである。
【0083】
図14に示すように0Vから10Vまで上昇させながらフォワード方向に電圧を印加すれば、電圧が増加することによって電流が徐々に増加し、約4Vの閾値電圧(Vth1)で電流が急激に上昇するようになる。以後、電圧が増加することによって電流が徐々に増加して約5Vで最大電流になる。以後、約6Vの負抵抗電圧で電流が急激に低くなる負抵抗状態になった後に、また電流が増加するようになる。ここで、5Vの電圧がプログラム電圧(Vp1)になり、9Vの電圧が消去電圧(Ve1)になり、2Vの電圧が読み取り電圧Vrになる。素子を5Vにプログラムした後に、またポジティブ方向に5Vまで電圧を増加させながら印加すると、以前より電流が増加するようになる。
【0084】
一方、ネガティブ電圧を印加する場合にも同じく0Vから−10Vまでリバース方向に電圧を上昇させながら印加すれば約−4Vの閾値電圧(Vth2)で電流が急激に上昇し、電圧が増加することによって電流が徐々に増加して約−5Vで最大電流になる。以後、約−6Vの負抵抗電圧で電流が急激に低くなる負抵抗状態になった後に、また電流が増加するようになる。ここで、−5Vの電圧がプログラム電圧(Vp2)になり、−10Vの電圧が消去電圧(Ve2)になり、2Vの電圧が読み取り電圧Vrになる。
【0085】
図15及び図16を参照すれば、前記のように消去電圧(Ve1)を印加した後に読み取り電圧Vrを印加し、プログラム電圧(Vp1)を印加した後に読み取り電圧Vrを印加する場合の発光状態が図示されている。図示のように消去電圧を印加した後には読み取り電圧を印加しても発光素子が発光しないが、プログラム電圧を印加した後には読み取り電圧を印加すれば発光素子が発光するようになる。
【0086】
以下、本発明による発光素子の多様な製造方法を説明する。
【0087】
図17ないし図20は本発明の第1実施の形態による発光素子の製造方法を説明するために素子の断面図を順次に表したもので、ナノクリスタル層を酸化工程で形成する方法を説明するための断面図である。
【0088】
図17を参照すれば、基板100上部に第1導電層110を形成する。ここで、基板100は透明基板を利用するのが望ましく、透明伝導性基板又はガラス基板を利用することができる。透明導電性基板を利用する場合、その上部に絶縁膜を形成しなければならない。この時、絶縁膜では酸化膜又は窒化膜系の物質を利用する。また、第1導電層110はホール注入が容易な伝導性金属又はその酸化物で形成することができ、ITO、IZO(Iindium Zinc Oxide)、Au、Ag、Pt などを利用することができる。そして、第1導電層110は100〜200nmの厚さで形成し、150nmの厚さで形成することが望ましい。以後、第1導電層110が形成された基板100を洗浄した後に、UV及びオゾン処理を行うことができる。この時、洗浄工程はイソプロパノール(IPA)、アセトンなどの有機溶媒を利用することができる。また、洗浄されたITO基板を真空下でプラズマ処理することが望ましい。
【0089】
第1導電層110が形成された基板100上部にホール注入層(図示せず)、ホール伝達層(図示せず)、有機発光層120及び電子注入層(図示せず)を順次に形成する。また、ホール注入層は真空熱吸着又はスピンコーティング方法で形成することができるし、CuPc又はスターバースト(Starburst)形アミン類であるTCTA、m−MTDATAなどを利用して形成することができる。ホール伝達層はα−NPDを利用して真空熱吸着又はスピンコーティング方法で形成することができる。有機発光層120も、真空熱吸着又はスピンコーティング方法を利用して形成することができるし、高分子物質又は低分子物質を利用して形成することができる。電子注入層も真空熱吸着又はスピンコーティング方法を利用して形成することができるし、LiF、NaCl、CsF、LiO、BaO、Liqなどの物質を利用して形成することができる。一方、ホール注入層、ホール伝達層、有機発光層120及び電子注入層それぞれは10〜30nm、10〜80nm、10〜100nm、0.1〜1nmの厚さで形成し、それぞれ20nm、40nm、60nm、0.5nmの厚さで形成することが望ましい。
【0090】
そして、第1有機物層120上部に第2導電層130を形成する。第2導電層130は真空熱吸着(Evaporation)を利用して形成することができる。この時、第2導電層130はAlを利用して形成することができるし、20〜150nmの厚さで形成する。
【0091】
図18を参照すれば、第2導電層130上部に第1有機物層140を形成する。第1有機物層140はチャンバ内部の圧力を10−6〜10−3Paにし、蒸着率を0.2〜2Å/sに維持し、150〜400℃の温度で有機物質を蒸発させて形成する。第1有機物層140はAIDCNを利用して形成することができるし、20〜150nmの厚さで形成するのが効果的である。
【0092】
図19及び図21を参照すれば、第1有機物層140上部にナノクリスタル層150を形成する。この時、ナノクリスタル層150が1〜30nmの均一な厚さ分布を持つようにするために、第1有機物層140上部に金属層150aを蒸着した後に酸素プラズマを利用した酸化工程を実施してナノクリスタル層150を形成する。このためにチャンバ内部の圧力を10−6〜10−3Paにして、蒸着率を0.1〜5.0Å/sに維持し、800〜1500℃の温度で金属物質、例えばアルミニウムを蒸発させて第1有機物層140上部に1〜30nmの厚さの金属層150aを形成する。
【0093】
この時、金属層150aは蒸着率が高いので、ナノクリスタルの形態に形成しないで、図21(a)に示すように結晶粒界(grain boundary)を持つ金属薄膜に形成する。
【0094】
次に、金属層150aが形成された基板100を酸化するためのチャンバ内にローディングする。チャンバに50〜300WのRFパワーと100〜200VのACバイアスを印加して、0.5〜3.0Pa圧力で100〜200sccmのOガスを注入して酸化工程を実施する。この時、工程時間は約30〜500秒実施することが望ましい。
【0095】
これを通して、図21(b)に示すように結晶粒界を持つ金属層150aの粒界に沿ってO2プラズマが進入して金属層150aが粒界に沿って酸化される。これにより、図21(c)に示すように同じ大きさのナノクリスタル151が形成され、その表面には非結晶質層であるバリア層152が形成される。この時、ナノクリスタル層150は金属層150aの厚さによって、その厚さを1〜30nmの範囲内に形成することができる。もちろん、金属層150aの厚さを厚く形成することもできるが、金属層150aが厚すぎる場合(50nm以上)には、金属層150aの結晶粒界内部にOプラズマが十分に進入できなくなり、ナノクリスタル層150が効果的に形成されないこともあり得る。図21(d)に示すように酸化工程完了後のナノクリスタル層150とナノクリスタル151とこれを包むAlのバリア層152から成る。
【0096】
ここで、上述した金属層150aの蒸着と酸化工程を数回繰り返して多層のナノクリスタル層150を形成することができる。この時、金属層150aの蒸着の厚さによって多層のナノクリスタル層150を全部同じ厚さで形成することもできるし、互いに違う厚さで形成することもできる。望ましくはそれぞれお互いに同じ厚さの1〜10層のナノクリスタル層150を形成するのが効果的である。
【0097】
図20を参照すれば、ナノクリスタル層150上部に第2有機物層160を形成する。第2有機物層160は10−5〜10−3Paの圧力を維持するチャンバ内で蒸着率を0.2〜2Å/sに維持して150〜400℃の温度で有機物質を蒸発させて形成する。第2有機物層160はAIDCNを利用することができ、10〜100nmの厚さで形成する。
【0098】
第2有機物層160を含む基板100上に第3導電層170を形成する。第3導電層170は10−6〜10−3Paの圧力を維持するチャンバで蒸着率を2〜7Å/sに維持して1000〜1500℃の温度で金属物質を蒸発させて形成する。第3導電層170はAlを利用するのが望ましく、20〜150nmの厚さで形成することが望ましい。
【0099】
また、上述した各層は真空雰囲気でインサイチュ(In−Situ)で行うことが望ましい。即ち、上述した説明で導電層、有機物層及びナノクリスタル層を形成するためのチャンバは単一蒸着システム内で蒸着されることができる。例えば導電層蒸着のためのチャンバと、有機物層蒸着のためのチャンバと、酸化のためのプラズマ発生チャンバと、冷却チャンバと、ロードロックチャンバと、シャドウマスクチャンバとが、一つのトランスファモジュールに接続されている単一のシステム内で蒸着を行うことができる。基板を導電層蒸着のためのチャンバから有機物層蒸着のためのチャンバに移送する場合、基板が大気中に露出しないで、真空状態であるトランスファモジュール内で移動することができるようになる。もちろんこれに限定されることなく、前記チャンバがそれぞれ他のシステムに接続されることもできる。
【0100】
上述した説明では発光素子はエッチング工程を実施しないでシャドウマスクと真空蒸着(vaccume vaporation)を通じて製造することができる。しかし、これに限定されることなく、多様な方法を通じて製造することができる。即ち、前記の導電層、有機物層及びナノクリスタル層は熱蒸着(thermal vaporation)工程以外にE−ビーム蒸着工程、スパッタリング工程、CVD工程、MOCVD工程、MBE工程、PVD工程、ALD工程などを通じて形成することができる。そして、導電層と、有機物層は全体構造の上に形成した後にパターニング工程を通じてその形象を製造することもできる。つまり、基板の上部に導電性物質を形成した後にマスクを利用したエッチング工程を通じて導電層を除く領域の導電性物質を除去して導電層を形成することもできる。また、湿式又は乾式酸化方式を利用して酸化工程を実施することもできる。
【0101】
前記本発明の第1実施の形態による発光素子の製造方法では、第1及び第2有機物層140、160で低分子物質、例えばAIDCN、Alq、又はα−NPDを利用し、金属層を酸素プラズマを利用して酸化させてナノクリスタル層150を形成した。しかし、第1及び第2有機物層140、160で高分子物質を利用することもでき、金属層の蒸着及び酸化によってナノクリスタル層150を形成する方法以外にもナノクリスタルがバリア層によって包まれるようにナノクリスタル層を形成するなど、多様な方式が存在する。以下、本発明の他の実施の形態として、高分子物質を第1及び第2有機物層140、160として利用する発光素子の製造方法を説明する。また、本発明の他の実施の形態は、上述された内容と重複される内容は簡単に説明する。
【0102】
図22(a)ないし図22(c)は、本発明の第2実施の形態による発光素子の製造方法を順次に説明するための断面図である。本実施の形態では高分子物質を利用して有機物層を形成し、蒸着及びキュアリングでナノクリスタル層を形成する発光素子の製造方法を説明する。
【0103】
図22(a)を参照すれば、基板100上部に第1導電層110を形成する。そして、第1導電層110上部に有機発光層120、第2導電層130及び第1有機物層140を形成する。ここで、第1有機物層140はPVK又はPsなどの高分子物質を利用して形成することができるし、スピンコーティング(spin coating)方式によって形成することができる。
【0104】
図22(b)を参照すれば、第1有機物層140上部に第1バリア層180、金属層150a、第2バリア層185及び第2有機物層160を順次に形成する。ここで、第1及び第2バリア層180、185は、後続工程で完成されるナノクリスタル層において、ナノクリスタルを包む電子のトンネルリングバリアを形成するためのものである。第1及び第2バリア層180、185はAl、TiOなどの金属酸化物を利用して形成することができるし、ALD方式で形成することができる。また、金属層150aを蒸着方式で形成することができるし、酸化可能な金属又は酸化不可能な金属すべてを利用することができる。特に、金属層150aはAuで形成するのが望ましく、約1〜10nmの厚さで形成することができる。そして、第2有機物層160を第1有機物層140と同じく形成することができ、例えばPVK又はPsなどの高分子物質を利用してスピンコーティング方式で形成することができる。
【0105】
図22(c)を参照すれば、第2有機物層160を形成した後にキュアリング(curing)工程を実施する。キュアリング工程によって金属層150a上部及び下部の第1及び第2バリア層180、185が金属層150a内の金属ナノクリスタル151を包むようになる。よって、ナノクリスタル151と、これを包むバリア153を含むナノクリスタル層150が形成される。このようなキュアリング工程は150℃〜300℃の温度で0.5〜4時間行うことが望ましい。ナノクリスタル層150を形成した後に第2有機物層160を含む基板100上部に第3導電層170を形成する。
【0106】
前記本発明の第2実施の形態による発光素子の製造方法は、第1有機物層140、第1バリア層180、金属層150a、第2バリア層185及び第2有機物層160が順次に積層される構造をキュアリングしてナノクリスタル151を包むバリア153で構成されるナノクリスタル層150を形成し、第1及び第2有機物層140、160は高分子物質で形成する。このような方法によっても、均一なサイズ及び分布を持つナノクリスタル層を形成することができ、安定した素子特性を確保することができる。
【0107】
図23(a)ないし図23(d)は、本発明の第3実施の形態による発光素子の製造方法を順次に表す素子の断面図であって、ナノクリスタルが分散された有機物質を蒸着して有機物層及びナノクリスタル層を形成する方法を説明するための断面図である。
【0108】
図23(a)を参照すれば、基板100上部に第1導電層110を形成した後に、その上部に有機発光層120を形成して、第2導電層130を形成する。
【0109】
図23(b)を参照すれば、第2導電層130上部に複数のナノクリスタル151が分散した有機物層145を形成する。ここで、バリア層154をナノクリスタル151それぞれを包むように形成することができ、バリア層154によって包まれたナノクリスタル151が分散された有機物質の形成方法については、図24を参照して後述する。また、有機物層145は回転塗布及び熱処理工程によって形成することができる。例えば基板100を1500〜3000rpmの回転速度で回転させながら基板100上にナノクリスタル151が分散された有機物質を落とした後に、100〜150℃の温度で30ないし90分間熱処理して有機物層145を形成することができる。ここで、有機物質を落とした後に基板100を約50秒ないし100秒間更に回転させて有機物質が均一に塗布されるようにすることもできる。
【0110】
図23(c)を参照すれば、有機物層145を含む基板100上部に第3導電層170を形成する。
【0111】
前記本発明の第3実施の形態による発光素子の製造方法において、ナノクリスタル151それぞれを包むバリア層154はトンネルリングバリアとして作用し、有機物層154はショットキバリアとして作用する。もちろん、バリア層154が形成されないでナノクリスタル151が有機物層145に分散するようにすることもできる。この場合にも有機物層145はショットキバリア均一にとして作用する。ナノクリスタル151を包むようにバリア154を形成すると、バリア154を形成しない場合に比べて素子信頼性及びインディユランス(endurance)特性を上げることができる。
【0112】
図24は図23(b)の有機物層形成方法を具体的に説明するための図面で、バリア層を持つナノクリスタルが分散された有機物質を例えて説明する。
【0113】
まず、バリア層153によって包まれたナノクリスタル151を合成するために、図24の(a)ないし(e)の過程を行う。
【0114】
即ち、図24(a)に示すように、金属塩としてHAuClを水性溶媒、例えば純水(DI water)に溶解させて金属塩の水溶液を製造する。この時、金属塩の水溶液内で金属塩はH+及びAuCl-にイオン化されてAuソースとして作用する。また、TOAB(tetraoctylammonium)を非水性溶媒、例えばトルエン(toluene)に溶解させてイオン化されたTOABを含むトルエン溶液を製造する。この時、イオン化されたTOABは後続工程で金属含有イオンであるAuCl-をトルエン溶液内に移動させる相転移(phase transfer)触媒の役割をする。
【0115】
引き続き、図24(b)に示すように、金属塩の水溶液とTOABが溶解されたトルエン溶液を撹拌させれば、金属含有イオンであるAuCl-がトルエン溶液に移動する。この時、撹拌は500rpm以上の速度に行われることが望ましい。
【0116】
前記トルエン溶液に後続Auナノクリスタルの分散を均一にする分散安定剤(stabilizer)としてCB(carbazole terminated thiol)を添加して撹拌を行う。この時、撹拌は常温で約5〜20分ぐらい行うことが望ましい。分散安定剤であるCBの分子式(molecular formula)はC2331NSであり、その化学名は11−Carbazolyl dodecane thiolである。
【0117】
引き続き、図24(c)に示すように、(b)のCBが添加されたトルエン溶液にAuCl-を還元させるための還元剤としてNaBH(sodium brohydride)を添加して撹拌を行う。この時、撹拌は500rpm以上の速度で常温で約3〜10時間行うことが望ましい。
【0118】
その結果、図24(d)に示すように、トルエン溶液内にはAuナノクリスタルとCBの結合物質が形成される。この時、CBはAuナノクリスタルを包む形態に形成されるので、分散安定剤の役割だけではなく、バリア物質と同じく電子のトンネルリングバリアとしても作用するようになる。
【0119】
引き続き、図24(e)に示すように、トルエン溶媒を蒸発させてAuナノクリスタルとCBの結合物質を残留させる。この蒸発はロータリー蒸発機(rotary evaporator)で−1Bar以下の比較的に低圧の条件に行われることが望ましい。
【0120】
引き続き、図24(f)に示すように、AuナノクリスタルとCBの結合物質をクロロホルム(chloroform)に溶解させる。これは高分子物質との混合のためである。このクロロホルム溶液に高分子物質としてPVKを混合させる。
【0121】
最終的に、図24(g)に示すように、CBによって包まれたAuナノクリスタルと高分子物質が混合した最終溶液が生成される。この溶液が基板上にスピンコーティングされれば、前記図24(b)に図示された有機物層145の構造が形成される。本実施の形態では有機物層145内に分散したナノクリスタル151がAuであり、これを包むバリア153がCBになる。
【0122】
前記本発明の第3実施の形態のような方式を利用する場合にも、均一なサイズ及び分布を持つナノクリスタルを形成することができるし、特にスピンコーティングによってナノクリスタルを含む有機物層を一度に形成することができるという点で工程過程が簡単で量産可能性が高いという長所がある。
【0123】
本発明では基板上に有機発光層を予め形成し、有機発光層の上部にナノクリスタル層を含む電荷トラップ層を形成することを説明したが、その製造順序ではこれに限らない。つまり、基板上にナノクリスタル層を含む電荷トラップ層を予め形成した後に、その上部に有機発光層を形成することができる。
【0124】
また、電極材料を変えて前面発光素子又は裏面発光素子として製造することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
双安定伝導性特性と負抵抗特性を持つ電荷トラップ層と、
前記電荷トラップ層と電気的に連結される有機発光層と、を含む発光素子。
【請求項2】
前記電荷トラップ層と前記有機発光層の上部及び下部にそれぞれ形成された上部導電層及び下部導電層を更に含むことを特徴とする請求項1記載の発光素子。
【請求項3】
前記電荷トラップ層と前記有機発光層の間に形成された中間導電層を更に含むことを特徴とする請求項2記載の発光素子。
【請求項4】
前記有機発光層と一つの前記導電層の間に位置するホール注入層とホール伝達層の少なくとも一つを更に含むことを特徴とする請求項3記載の発光素子。
【請求項5】
前記有機発光層と一つの前記導電層の間に電子伝達層と電子注入層の少なくとも一つを更に含むことを特徴とする請求項4記載の発光素子。
【請求項6】
前記電荷トラップ層は有機物層を含むことを特徴とする請求項1記載の発光素子。
【請求項7】
前記電荷トラップ層は前記有機物層内に介在され、複数のナノクリスタルを含むナノクリスタル層を更に含むことを特徴とする請求項6記載の発光素子。
【請求項8】
前記ナノクリスタル層は複数のナノクリスタルを包むバリア層を更に含むことを特徴とする請求項7記載の発光素子。
【請求項9】
前記ナノクリスタルはAl、Ti、Zn、Fe、Ni、Cu、Au、Ag及びこれらの合金の少なくとも一つを含むことを特徴とする請求項7記載の発光素子。
【請求項10】
前記バリア層は酸化物であることを特徴とする請求項8記載の発光素子。
【請求項11】
前記バリア層は有機物であることを特徴とする請求項8記載の発光素子。
【請求項12】
前記有機物層は低分子又は高分子有機物質の少なくとも一つを含むことを特徴とする請求項6記載の発光素子。
【請求項13】
前記有機発光層は低分子又は高分子有機物質の少なくとも一つを含むことを特徴とする請求項1記載の発光素子。
【請求項14】
前記発光素子は前記上部導電層及び下部導電層の間の印加される電圧の大きさによって、プログラム動作、消去動作、又は読み取り動作を行い、前記読み取り動作の時に発光することを特徴とする請求項2記載の発光素子。
【請求項15】
前記消去電圧の絶対値は前記プログラム電圧の絶対値より大きく、前記読み取り電圧の絶対値は前記プログラム電圧の絶対値より小さいことを特徴とする請求項14記載の発光素子。
【請求項16】
前記プログラム電圧、消去電圧及び読み取り電圧はポジティブ電圧であることを特徴とする請求項15記載の発光素子。
【請求項17】
前記プログラム電圧、消去電圧及び読み取り電圧はネガティブ電圧であることを特徴とする請求項15記載の発光素子。
【請求項18】
前記プログラム動作のために前記上部と下部導電層の間に複数の大きさを持つプログラム電圧が印加され、前記プログラム電圧は前記発光素子の閾値電圧以上、負抵抗領域以下から選択され、前記プログラム電圧の大きさによって前記読み取り動作の時に複数レベルの電流が出力されることを特徴とする請求項14記載の発光素子。
【請求項19】
前記読み取り動作のために前記上部と下部導電層の間に複数の大きさを持つ読み取り電圧が印加され、前記読み取り電圧は前記発光素子の閾値電圧より小さい領域から選択されて、前記読み取り電圧の大きさによって前記読み取り動作の時に複数レベルの電流が出力されることを特徴とする請求項18記載の発光素子。
【請求項20】
前記読み取り動作のために前記上部と下部導電層の間に複数の大きさを持つ読み取り電圧が印加され、前記読み取り電圧は前記発光素子の閾値電圧より小さい領域から選択され、前記読み取り電圧の大きさによって前記読み取り動作の時に複数レベルの電流が出力されることを特徴とする請求項14記載の発光素子。
【請求項21】
前記発光素子は前面発光又は裏面発光することを特徴とする請求項1記載の発光素子。
【請求項22】
前記発光素子はフレキシブル基板を更に含むことを特徴とする請求項1記載の発光素子。
【請求項23】
基板上部に下部導電層を形成する段階と、
前記下部導電層の上部に上部導電層を形成する段階と、
前記下部導電層と前記上部導電層の間に双安定伝導性特性と負抵抗特性を持つ電荷トラップ層を形成する段階と、
前記下部導電層と前記上部導電層の間に前記電荷トラップ層と電気的に連結されるように有機発光層を形成する段階と、を含む発光素子の製造方法。
【請求項24】
前記電荷トラップ層は有機物層を含むことを特徴とする請求項23記載の発光素子の製造方法。
【請求項25】
前記電荷トラップ層を形成する段階は前記有機物層内にナノクリスタル層を形成する段階を更に含むことを特徴とする請求項24記載の発光素子の製造方法。
【請求項26】
前記有機物層は下部有機物層及び上部有機物層を含み、前記有機物層は低分子伝導性有機物を含むことを特徴とする請求項25記載の発光素子の製造方法。
【請求項27】
前記ナノクリスタル層を形成する段階は前記下部有機物層と上部有機物層の間に金属層を形成し、前記金属層を酸化させてナノクリスタルと前記ナノクリスタルを包むバリア層を形成する段階を含むことを特徴とする請求項26記載の発光素子の製造方法。
【請求項28】
前記酸化工程は酸素プラズマを利用することを特徴とする請求項27記載の発光素子の製造方法。
【請求項29】
前記有機物層は下部有機物層及び上部有機物層を含み、前記下部及び上部有機物層は高分子伝導性有機物を含むことを特徴とする請求項25記載の発光素子の製造方法。
【請求項30】
前記ナノクリスタル層を形成する段階は、前記下部と上部有機物層の間に第1バリア層、金属層及び第2バリア層を形成した後にキュアリング工程を実施して、ナノクリスタルと前記第1バリア層と第2バリア層によって形成されて前記ナノクリスタルを包んだバリア層を形成する段階を含むことを特徴とする請求項29記載の発光素子の製造方法。
【請求項31】
前記第1及び第2バリア層は金属酸化物を含むことを特徴とする請求項30記載の発光素子の製造方法。
【請求項32】
前記有機物層及び前記ナノクリスタル層はナノクリスタルを有機物質に分散させ、前記有機物質を前記基板上に回転塗布した後に熱処理して形成することを特徴とする請求項25記載の発光素子の製造方法。
【請求項33】
前記ナノクリスタル層は前記ナノクリスタル及び前記ナノクリスタルを包んだバリア層を含み、前記バリア物質を有機物質に更に添加して分散させ、前記有機物質を前記基板上に回転塗布した後に熱処理して形成することを特徴とする請求項32記載の発光素子の製造方法。
【請求項34】
前記有機物層と前記有機発光層の間に中間導電層を形成する段階を更に含むことを特徴とする請求項23記載の発光素子の製造方法。
【請求項35】
前記基板はフレキシブル基板であることを特徴とする請求項23記載の発光素子の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図17】
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【図18】
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【図20】
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【図22(a)】
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【図22(b)】
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【図22(c)】
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【図23(a)】
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【図23(b)】
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【図23(c)】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図19】
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【図21】
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【図24】
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【公表番号】特表2010−525543(P2010−525543A)
【公表日】平成22年7月22日(2010.7.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−506048(P2010−506048)
【出願日】平成20年4月23日(2008.4.23)
【国際出願番号】PCT/KR2008/002309
【国際公開番号】WO2008/130194
【国際公開日】平成20年10月30日(2008.10.30)
【出願人】(506363805)
【Fターム(参考)】