説明

発光素子及び表示装置

【課題】発光効率に優れる発光素子及び該発光素子を有する表示装置を提供する。
【解決手段】発光素子は、一般式


(式中、Ar及びArは、それぞれ独立に、ベンゼン環と共同で環を形成してもよい置換若しくは無置換のアリール基、複素環基又は水素原子であり、Arは、置換又は無置換のアリール基である。)で表される化合物の芳香環が1個以上3個以下の一般式−X−Y−Z(式中、Xは、メチレン基、カルボニルオキシ基、オキシカルボニル基、カルボニル基、酸素原子又は硫黄原子であり、Yは、アルキレン基であり、Zは、カルボキシル基、ヒドロキシル基又はチオール基である。)で表される基で置換されているカルバゾール誘導体が配位結合又は付着している半導体ナノ結晶を含む発光層を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発光素子及び表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ナノスケールの材料は、原子又は分子的な挙動と巨視的固体(バルク形態)の挙動との中間的な挙動を示し、電荷キャリアと励起が3次元の全ての方向に閉じ込められたナノスケールの材料は、量子ドットと呼ばれている。量子ドットは、サイズの減少に伴い、有効なバンドギャップが増大するため、その吸収波長と発光波長が短波長側にシフトしたスペクトルが得られる。また、量子ドットのサイズと共に量子ドットの組成を組み合わせて制御することにより、赤外領域から紫外領域までの広範囲のスペクトルが得られ、さらにサイズ分布を制御することにより、半値幅の狭い、色純度に優れたスペクトルが得られる。
【0003】
このため、量子ドットは、生体分子の標識化、画像化又はエレクトロルミネッセンス素子、フォトルミネッセンス素子等の発光素子への応用が期待されている。
【0004】
しかしながら、発光効率が不十分であるという問題があった。
【0005】
そこで、特許文献1には、一対の電極と、電極間に配置され、発光層を含むエレクトロルミネッセンス層と、を備え、発光層は、保護材料によりその表面が保護された量子ドットが、有機化合物を含有するマトリックス材料中に分散した構造を有しているエレクトロルミネッセンス素子が開示されている。また、第1の保護材料のイオン化ポテンシャルの絶対値をIp(h)、電子親和力の絶対値をEa(h)、バンドギャップをEg(h)とし、マトリックス材料に含有される有機化合物のイオン化ポテンシャルの絶対値をIp(m)、電子親和力の絶対値をEa(m)、バンドギャップをEg(m)とし、量子ドットのバンドギャップをEg(q)としたときに、保護材料として、条件
(A)Ip(h)<Ip(m)+0.1eV
(B)Ea(h)>Ea(m)−0.1eV
(C)Eg(q)<Eg(h)<Eg(m)
を全て満たす第1の保護材料を含む。さらに、第1の保護材料が一分子中に親水基を1残基以上及び疎水基を有している場合の、第1の保護材料の疎水基/有機化合物/量子ドットの組み合わせとして、
(1)3−(2−ベンゾチアゾールイル)−7−(ジエチルアミノ)クマリンの残基/4,4'−ビス(カルバゾール−9−イル)ビフェニル/CdSe/ZnS(発光波長620nm)
(2)5,6,11,12−テトラフェニルナフタセンの残基/4,4'−ビス(カルバゾール−9−イル)ビフェニル/CdSe/ZnS(発光波長620nm)
(3)2,5,8,11−テトラ−tert−ブチルペリレンの残基/4,4'−ビス(カルバゾール−9−イル)ビフェニル/CdSe/ZnS(発光波長520nm)
が例示されている。
【0006】
しかしながら、依然として、発光効率が不十分であるという問題がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上記従来技術が有する問題に鑑み、発光効率に優れる発光素子及び該発光素子を有する表示装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1に記載の発明は、発光素子において、一般式
【0009】
【化1】

(式中、Ar及びArは、それぞれ独立に、ベンゼン環と共同で環を形成してもよい置換若しくは無置換のアリール基、複素環基又は水素原子であり、Arは、置換又は無置換のアリール基である。)
で表される化合物の芳香環が1個以上3個以下の一般式
【0010】
【化2】

(式中、Xは、メチレン基、カルボニルオキシ基、オキシカルボニル基、カルボニル基、酸素原子又は硫黄原子であり、Yは、置換又は無置換のアルキレン基であり、Zは、カルボキシル基、ヒドロキシル基又はチオール基である。)
で表される基で置換されているカルバゾール誘導体が配位結合又は付着している半導体ナノ結晶を含む発光層を有することを特徴とする。
【0011】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の発光素子において、前記カルバゾール誘導体は、一般式
【0012】
【化3】

(式中、Arは、置換又は無置換のアリーレン基である。)
で表される化合物であることを特徴とする。
【0013】
請求項3に記載の発明は、請求項2に記載の発光素子において、前記Ar及び前記Arは、それぞれ独立に、一般式
【0014】
【化4】

(式中、Rは、水素原子、置換若しくは無置換のアルキル基、置換若しくは無置換のアルコキシ基、ハロゲン原子又は置換若しくは無置換のアリール基である。)
で表される基であることを特徴とする。
【0015】
請求項4に記載の発明は、請求項2に記載の発光素子において、前記前記一般式(3)で表される化合物は、一般式
【0016】
【化5】

(式中、Rは、水素原子、置換若しくは無置換のアルキル基、置換若しくは無置換のアルコキシ基、ハロゲン原子又は置換若しくは無置換のアリール基である。)
で表されるベンゾカルバゾール誘導体であることを特徴とする。
【0017】
請求項5に記載の発明は、請求項1に記載の発光素子において、前記カルバゾール誘導体は、一般式
【0018】
【化6】

で表される化合物であることを特徴とする。
【0019】
請求項6に記載の発明は、表示装置において、請求項1乃至5のいずれか一項に記載の発光素子を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、発光効率に優れる発光素子及び該発光素子を有する表示装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】カルバゾール誘導体1の赤外吸収スペクトルである。
【図2】カルバゾール誘導体2の赤外吸収スペクトルである。
【図3】カルバゾール誘導体3の赤外吸収スペクトルである。
【図4】カルバゾール誘導体4の赤外吸収スペクトルである。
【図5】カルバゾール誘導体5の赤外吸収スペクトルである。
【図6】カルバゾール誘導体6の赤外吸収スペクトルである。
【図7】カルバゾール誘導体7の赤外吸収スペクトルである。
【図8】カルバゾール誘導体8の赤外吸収スペクトルである。
【図9】実施例1のEL素子の電流密度と外部量子効率の関係を示す図である。
【図10】実施例1のEL素子の電圧と電流密度の関係を示す図である。
【図11】実施例1のEL素子の発光スペクトルを示す図である。
【図12】実施例2のEL素子の電流密度と外部量子効率の関係を示す図である。
【図13】実施例2のEL素子の電圧と電流密度の関係を示す図である。
【図14】実施例2のEL素子の発光スペクトルを示す図である。
【図15】比較例1のEL素子の電流密度と外部量子効率の関係を示す図である。
【図16】比較例1のEL素子の電圧と電流密度の関係を示す図である。
【図17】比較例1のEL素子の発光スペクトルを示す図である。
【図18】実施例3のEL素子の電流密度と外部量子効率の関係を示す図である。
【図19】実施例3のEL素子の電圧と電流密度の関係を示す図である。
【図20】実施例3のEL素子の発光スペクトルを示す図である。
【図21】実施例4のEL素子の電流密度と外部量子効率の関係を示す図である。
【図22】実施例4のEL素子の電圧と電流密度の関係を示す図である。
【図23】実施例4のEL素子の発光スペクトルを示す図である。
【図24】実施例5のEL素子の電流密度と外部量子効率の関係を示す図である。
【図25】実施例5のEL素子の電圧と電流密度の関係を示す図である。
【図26】実施例5のEL素子の発光スペクトルを示す図である。
【図27】実施例6のEL素子の電流密度と外部量子効率の関係を示す図である。
【図28】実施例6のEL素子の電圧と電流密度の関係を示す図である。
【図29】実施例6のEL素子の発光スペクトルを示す図である。
【図30】実施例7のEL素子の電流密度と外部量子効率の関係を示す図である。
【図31】実施例7のEL素子の電圧と電流密度の関係を示す図である。
【図32】実施例7のEL素子の発光スペクトルを示す図である。
【図33】実施例8のEL素子の電流密度と外部量子効率の関係を示す図である。
【図34】実施例8のEL素子の電圧と電流密度の関係を示す図である。
【図35】実施例8のEL素子の発光スペクトルを示す図である。
【図36】実施例9のEL素子の電流密度と外部量子効率の関係を示す図である。
【図37】実施例9のEL素子の電圧と電流密度の関係を示す図である。
【図38】実施例9のEL素子の発光スペクトルを示す図である。
【図39】比較例2のEL素子の電流密度と外部量子効率の関係を示す図である。
【図40】比較例2のEL素子の電圧と電流密度の関係を示す図である。
【図41】比較例2のEL素子の発光スペクトルを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
次に、本発明を実施するための形態を図面と共に説明する。
【0023】
本発明の発光素子は、半導体ナノ結晶を含む発光層を有し、半導体ナノ結晶は、一般式(1)で表される化合物の芳香環が1〜3個の一般式(2)で表される基で置換されているカルバゾール誘導体が配位結合又は付着している。このとき、一般式(1)で表される化合物の芳香環が2個又は3個の一般式(2)で表される基で置換されている場合、2個又は3個の一般式(2)で表される基は、同一であってもよいし、異なっていてもよい。
【0024】
一般式(1)において、Ar、Ar及びArにおける無置換のアリール基としては、特に限定されないが、フェニル基、ナフチル基、ビフェニル基、ターフェニル基、ピレニル基、フルオレニル基、9,9−ジメチル−2−フルオレニル基、アズレニル基、アントリル基、トリフェニレニル基、クリセニル基、フルオレニリデンフェニル基、5H−ジベンゾ[a,d]シクロヘプテニリデンフェニル基等が挙げられる。
【0025】
一般式(1)において、Ar及びArにおける無置換の複素環基としては、特に限定されないが、フリル基、ベンゾフラニル基、カルバゾリル基、ピリジル基、ピロリジル基、チオフェニル基、メチルチオフェニル基、オキサゾリル基等が挙げられる。
【0026】
なお、無置換のアリール基及び無置換の複素環基は、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、s−ブチル基、t−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、3,7−ジメチルオクチル基、2−エチルヘキシル基、トリフルオロメチル基、2−シアノエチル基、ベンジル基、4−クロロベンジル基、4−メチルベンジル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基等の炭素数が1〜25の直鎖、分岐鎖又は環状のアルキル基を有していてもよい。
【0027】
また、Ar、Ar及びArにおけるアリール基の置換基としては、特に限定されないが、置換又は無置換の炭素数が1〜25の直鎖、分岐鎖又は環状のアルコキシ基、フッ素原子、塩素原子、臭素原子等のハロゲン原子、シアノ基、トリフェニルシリル基、フリル基、ベンゾフラニル基、カルバゾリル基、ピリジル基、ピロリジル基、チオフェニル基、メチルチオフェニル基、オキサゾリル基等の複素環基等が挙げられる。このとき、アルコキシ基の置換基としては、特に限定されないが、フッ素原子、シアノ基、置換又は無置換のフェニル基等が挙げられる。フェニル基の置換基としては、特に限定されないが、フッ素原子、塩素原子、臭素原子等のハロゲン原子、直鎖又は環状のアルキル基等が挙げられる。
【0028】
置換又は無置換のアルコキシ基としては、メトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、イソプロポキシ基、n−ブトキシ基、イソブトキシ基、s−ブトキシ基、t−ブトキシ基、ペンチルオキシ基、ヘキシルオキシ基、ヘプチルオキシ基、オクチルオキシ基、ノニルオキシ基、デシルオキシ基、3,7−ジメチルオクチルオキシ基、2−エチルヘキシルオキシ基、トリフルオロメトキシ基、2−シアノエトキシ基、ベンジルオキシ基、4−クロロベンジルオキシ基、4−メチルベンジルオキシ基、シクロペンチルオキシ基、シクロヘキシルオキシ基等が挙げられる。
【0029】
アリール基及び複素環基の炭素数は、それぞれ6〜30及び4〜28であることが好ましい。
【0030】
Ar及び/又はArがベンゼン環と共同で環を形成しているアリール基である場合の一般式(1)で表される化合物としては、ベンゾカルバゾールの誘導体、ジベンゾカルバゾールの誘導体等が挙げられる。
【0031】
一般式(2)において、Yにおける無置換のアルキレン基は、炭素数が1〜25であることが好ましい。無置換のアルキレン基としては、特に限定されないが、メチレン基、エチレン基、トリメチレン基、テトラメレン基、ペンタメチレン基、ヘキサメチレン基、ヘプタメチレン基、オクタメチレン基、ノナメチレン基、デカメチレン基、ウンデカメチレン基、ドデカメチレン基、トリデカメチレン基、テトラデカメチレン基、ペンタデカメチレン基、ヘキサデカメチレン基、ヘプタデカメチレン基、オクタデカメチレン基、ノナデカメチレン基、イコサメチレン基、ヘインコサメチレン基、ドコサメチレン基、トリコサメチレン基、テトラコサメチレン基、ペンタコサメチレン基等が挙げられる。
【0032】
また、Yにおけるアルキレン基の置換基としては、特に限定されないが、フッ素原子、塩素原子、臭素原子等のハロゲン原子、炭素数が1〜24の直鎖、分岐鎖又は環状のアルキル基等が挙げられる。
【0033】
本発明において、カルバゾール誘導体としては、特に限定されないが、以下の化合物が挙げられる。
【0034】
【化7】

【0035】
【化8】

【0036】
【化9】

【0037】
【化10】

【0038】
【化11】

【0039】
【化12】

【0040】
【化13】

一般式(2)で表される基としては、特に限定されないが、以下の基が挙げられる。
【0041】
【化14】

本発明において、カルバゾール誘導体は、一般式(3)又は(6)で表される化合物であることが好ましい。このとき、Arは、Ar由来のアリーレン基である。
【0042】
一般式(3)において、Ar及びArは、それぞれ独立に、一般式(4)で表される基であることが好ましい。また、一般式(3)で表される化合物は、一般式(5)で表されるベンゾカルバゾール誘導体であることが好ましい。
【0043】
一般式(4)及び(5)において、Rにおける無置換のアルキル基は、炭素数が1〜25の直鎖、分岐鎖又は環状であることが好ましく、Rにおける無置換のアルコキシ基は、炭素数が1〜25の直鎖、分岐鎖又は環状であることが好ましい。このとき、アルキル基又はアルコキシ基の置換基としては、特に限定されないが、フッ素原子、シアノ基、置換又は無置換のフェニル基等が挙げられる。フェニル基の置換基としては、特に限定されないが、フッ素原子、塩素原子、臭素原子等のハロゲン原子、直鎖又は環状のアルキル基等が挙げられる。
【0044】
置換又は無置換のアルキル基としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、s−ブチル基、t−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、3,7−ジメチルオクチル基、2−エチルヘキシル基、トリフルオロメチル基、2−シアノエチル基、ベンジル基、4−クロロベンジル基、4−メチルベンジル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基等が挙げられる。
【0045】
置換又は無置換のアルコキシ基としては、メトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、イソプロポキシ基、n−ブトキシ基、イソブトキシ基、s−ブトキシ基、t−ブトキシ基、ペンチルオキシ基、ヘキシルオキシ基、ヘプチルオキシ基、オクチルオキシ基、ノニルオキシ基、デシルオキシ基、3,7−ジメチルオクチルオキシ基、2−エチルヘキシルオキシ基、トリフルオロメトキシ基、2−シアノエトキシ基、ベンジルオキシ基、4−クロロベンジルオキシ基、4−メチルベンジルオキシ基、シクロペンチルオキシ基、シクロヘキシルオキシ基等が挙げられる。
【0046】
Rにおけるハロゲン原子としては、特に限定されないが、フッ素原子、塩素原子、臭素原子等が挙げられる。
【0047】
Rにおけるアリール基は、前述のAr、Ar及びArにおけるアリール基と同様である。
【0048】
[一般式(3)で表される化合物の合成例1]
一般式(3)で表される化合物は、以下のようにして、合成することができる。
【0049】
【化15】

(式中、Rxは、ハロゲン原子である。)
まず、パラジウム触媒を用いて、有機ハロゲン化合物(A−1)を、アリールボロン酸Ar−B(OH)と鈴木−宮浦クロスカップリング反応させることにより、カルバゾール誘導体(A−2)が得られる。
【0050】
パラジウム触媒としては、特に限定されないが、Pd(PPh、PdCl(PPh、Pd(OAc)、PdCl等が挙げられ、最も汎用的には、Pd(PPhが用いられる。
【0051】
このとき、アリールボロン酸の代わりに、熱的に安定で、空気中で容易に扱えるビス(ピナコラト)ジボロンとハロゲン化アリールから合成されるアリールボロン酸エステルを用いてもよい。また、有機ハロゲン化合物(A−1)が有するRxは、反応性の点から、ヨウ素原子又は臭素原子であることが好ましい。
【0052】
鈴木−宮浦クロスカップリング反応は、塩基を必要とするが、塩基として、NaCO、NaHCO等の比較的弱い塩基を用いることが好ましい。また、立体障害等の影響を受ける場合には、Ba(OH)、KPO等の強塩基が有効である。さらに、その他の塩基として、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムや、カリウムt−ブトキシド、ナトリウムt−ブトキシド、リチウムt−ブトキシド、カリウム2−メチル−2−ブトキシド、ナトリウム2−メチル−2−ブトキシド、ナトリウムメトキシド、ナトリウムエトキシド、カリウムエトキシド、カリウムメトキシド等の金属アルコシドも用いることができる。また、塩基として、トリエチルアミン等の有機塩基も用いることができる。
【0053】
反応溶媒としては、メタノール、エタノール、イソプロパノール、ブタノール、2−メトキシエタノール、1,2−ジメトキシエタン、ビス(2−メトキシエチル)エーテル等のアルコール及びエーテル系溶媒、ジオキサン、テトラヒドロフラン等の環状エーテル系溶媒の他、ベンゼン、トルエン、キシレン、ジメチルスルホキシド、N,N−ジメチルホルムアミド、N−メチルピロリドン、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン等を用いることができる。
【0054】
次に、パラジウム触媒とホスフィン配位子を用いて、カルバゾール誘導体(A−2)を、ハロゲン化アリールRx−Ar−X−Y−COOCとウルマン反応又はBuchwald−Hartwigアミノ化反応させることにより、カルバゾール誘導体(A−3)が得られる。
【0055】
パラジウム触媒としては、特に限定されないが、Pd(dba)、Pd(OAc)等が挙げられる。
【0056】
ホスフィン配位子としては、特に限定されないが、2,2'−ビス(ジフェニルホスフィノ)−1,1'−ビナフチル、ペンタフェニル(ジ−t−ブチルホスフィノ)フェロセン、ビス(1−アダマンチル)−n−ブチルホスフィン、ビス(1−アダマンチル)−n−ブチルホスホニウムアイオダイド、ビス(1−アダマンチル)ベンジルホスフィン等が挙げられる。
【0057】
ハロゲン化アリールが有するRxは、反応性の点から、臭素原子又は塩素原子であることが好ましい。
【0058】
ウルマン反応又はBuchwald−Hartwigアミノ化反応は、塩基を必要とするが、塩基として、KCO、CsCO、NaCO、NaHCO等の比較的弱い塩基を用いることができる。
【0059】
さらに、水酸化ナトリウム等の塩基を用いて、カルバゾール誘導体(A−3)を加水分解させることにより、カルバゾール誘導体(A−4)が得られる。
【0060】
[一般式(3)で表される化合物の合成例2]
一般式(3)で表される化合物は、以下のようにして、合成することができる。
【0061】
【化16】

(式中、Rxは、ハロゲン原子である。)
まず、カルバゾール誘導体(B−1)を、ハロゲン化アリールRx−Ar−OCHとウルマン反応又はBuchwald−Hartwigアミノ化反応させることにより、カルバゾール誘導体(B−2)が得られる。このとき、カルバゾール誘導体(B−1)は、カルバゾール誘導体(A−2)と同一である。
【0062】
次に、三臭化ホウ素を用いて、カルバゾール誘導体(B−2)を脱メチル化させることにより、カルバゾール誘導体(B−3)が得られる。
【0063】
さらに、カルバゾール誘導体(B−3)を、臭化アルコールBr−Y−OHとエーテル化させることにより、カルバゾール誘導体(B−4)が得られる。
【0064】
[一般式(3)で表される化合物の合成例3]
一般式(3)で表される化合物は、以下のようにして、合成することができる。
【0065】
【化17】

まず、ピリジン等の塩基の存在下、塩化p−トルエンスルホニルを用いて、カルバゾール誘導体(C−1)の水酸基をトシル化させることにより、カルバゾール誘導体(C−2)が得られる。
【0066】
次に、チオ酢酸カリウムを用いて、カルバゾール誘導体(C−2)をチオアセチル化させることにより、カルバゾール誘導体(C−3)が得られる。
【0067】
さらに、水酸化ナトリウム等の塩基を用いて、カルバゾール誘導体(C−3)を加水分解させることにより、カルバゾール誘導体(C−4)が得られる。
【0068】
[一般式(3)で表される化合物の合成例4]
一般式(5)で表される化合物は、以下のようにして、合成することができる。
【0069】
【化18】

まず、プロトン酸の存在下、テトラノン化合物(D−1)とフェニルヒドラジン化合物(D−2)を反応させることにより、ヒドラゾン化合物(D−3)が得られる。
【0070】
次に、ZnCl等のルイス酸の存在下、環化させることにより、環化合物(D−4)が得られる。
【0071】
さらに、Pd/C等の触媒を用いて、環化合物(D−4)を酸化させることにより、ベンゾカルバゾール誘導体(D−5)が得られる。
【0072】
次に、ベンゾカルバゾール誘導体(D−5)を、ヨウ化アリールI−Ar−X−Y−OHとウルマン反応又はBuchwald−Hartwigアミノ化反応させることにより、ベンゾカルバゾール誘導体(D−6)が得られる。
【0073】
さらに、ピリジン等の塩基の存在下、塩化p−トルエンスルホニルを用いて、ベンゾカルバゾール誘導体(D−6)の水酸基をトシル化させることにより、ベンゾカルバゾール誘導体(D−7)が得られる。
【0074】
次に、チオ酢酸カリウムを用いて、ベンゾカルバゾール誘導体(D−7)をチオアセチル化させることにより、ベンゾカルバゾール誘導体(D−8)が得られる。
【0075】
さらに、水酸化ナトリウム等の塩基を用いて、ベンゾカルバゾール誘導体(D−8)を加水分解させることにより、ベンゾカルバゾール誘導体(D−9)が得られる。
【0076】
[一般式(6)で表される化合物の合成例1]
一般式(6)で表される化合物は、以下のようにして、合成することができる。
【0077】
【化19】

(式中、Rxは、ハロゲン原子である。)
まず、ピリジン等の塩基の存在下、臭素を用いて、カルバゾール(E−1)を臭素化させることにより、3−ブロモカルバゾール(E−2)が得られる。
【0078】
次に、ヨウ化銅の存在下、ナトリウムメトキシドを用いて、3−ブロモカルバゾール(E−2)をエーテル化させることにより、3−メトキシカルバゾール(E−3)が得られる。
【0079】
さらに、3−メトキシカルバゾール(E−3)を、ハロゲン化アリールRx−Arとウルマン反応又はBuchwald−Hartwigアミノ化反応させることにより、カルバゾール誘導体(E−4)が得られる。
【0080】
次に、三臭化ホウ素を用いて、カルバゾール誘導体(E−4)を脱メチル化させることにより、カルバゾール誘導体(E−5)が得られる。
【0081】
さらに、カルバゾール誘導体(E−5)を、臭化アルコールBr−Y−OHとエーテル化させることにより、カルバゾール誘導体(E−6)が得られる。
【0082】
次に、ピリジン等の塩基の存在下、塩化p−トルエンスルホニルを用いて、カルバゾール誘導体(E−6)の水酸基をトシル化させることにより、カルバゾール誘導体(E−7)が得られる。
【0083】
さらに、チオ酢酸カリウムを用いて、カルバゾール誘導体(E−7)をチオアセチル化させることにより、カルバゾール誘導体(E−8)が得られる。
【0084】
次に、水酸化ナトリウム等の塩基を用いて、カルバゾール誘導体(E−8)を加水分解させることにより、カルバゾール誘導体(E−9)が得られる。
【0085】
本発明において、半導体ナノ結晶としては、特に限定されないが、周期表の第13属元素と第15属元素からなるIII−V属の化合物、周期表の第2属元素と第16属元素からなるIIA−VIB属の化合物、周期表の第12属元素と第16属元素からなるIIB−VIB属の化合物、周期表の第12属元素と第15属元素からなるII−V属の化合物、周期表の第13属元素と第15属元素からなるIII−V属の化合物、周期表の第13属元素と第14属元素からなるIII−IV属の化合物、周期表の第13属元素と第16属元素からなるIII−VI属の化合物、周期表の第14属元素と第16属元素からなるIV−VI属の化合物、周期表の第11属元素、第13属元素及び第15属元素からなるI−III−V属化合物周期表の第12属元素、第14属元素及び第16属元素からなるII−IV−VI属化合物等が挙げられ、二種以上併用してもよい。
【0086】
また、半導体ナノ結晶は、第3の元素、第4の元素又はドーピング剤を含んでもよい。 半導体ナノ結晶の形状としては、特に限定されないが、球状、半球状、棒状、円盤状、テトラポット形状、星形状等が挙げられる。
【0087】
また、半導体ナノ結晶が球状である場合、半導体ナノ結晶の平均一次粒径は、通常、0.5nm〜30nmであり、1〜15nmが好ましい。半導体ナノ結晶の粒度分布は、発光の色度に影響し、半値幅の狭い鮮明な発光色を得るためには、粒度分布は狭いことが好ましい。
【0088】
半導体ナノ結晶の製造方法としては、特に限定されないが、ナノ粒子科学―基本原理から応用まで―(株式会社エヌ・ティー・エス発行、ISBN978−4−86043−175−4 C3040)の27頁〜28頁及び48頁〜180頁に記載されている方法、特表2007−537886号公報(WO2005/106082号)、特表2009−504422号公報(WO2007/020416号)、特表2009−514993号公報(WO2007/049052号)、WO2010/015824号に記載されている方法等が挙げられる。
【0089】
カルバゾール誘導体が配位結合又は付着している半導体ナノ結晶は、半導体ナノ結晶の表面に存在するキャッピング剤(界面活性剤)をカルバゾール誘導体で置換することより得られる。例えば、不活性ガス下、塩化メチレン、クロロホルム、ジクロロエタン等の極性溶媒にカルバゾール誘導体を溶解させた溶液に、半導体ナノ結晶を加え、0〜30℃で、12時間以上、好ましくは24時間以上混合撹拌した後、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、塩化メチレン、クロロホルム、アセトン、テトラヒドロフラン、ヘキサン等の比較的低沸点の溶媒を用いて超音波洗浄することにより、カルバゾール誘導体が配位結合又は付着している半導体ナノ結晶が得られる。
【0090】
なお、半導体ナノ結晶の表面に存在するキャッピング剤(界面活性剤)のカルバゾール誘導体との置換は、FT−IR(赤外分光)又はXPS(X線光電子分光)により確認することができる。
【0091】
半導体ナノ結晶は、カルバゾール誘導体以外の成分が表面に存在していてもよい。カルバゾール誘導体以外の成分としては、特に限定されないが、半導体ナノ結晶を製造する際に用いられるキャッピング剤(界面活性剤)等が挙げられる。
【0092】
また、カルバゾール誘導体は、半導体ナノ結晶に配位結合していてもよいし、半導体ナノ結晶に配位結合しているカルバゾール誘導体との分子間力等の相互作用により半導体ナノ結晶に付着していてもよい。
【0093】
本発明において、半導体ナノ結晶は、発光の起源として作用する一方、カルバゾール誘導体は、励起エネルギーを双極子−双極子相互作用により半導体ナノ結晶にエネルギー移動、即ち、フェルスター型エネルギー移動させる機能及び/又は電荷(ホール及び電子)を半導体ナノ結晶に直接注入する機能を有する。これにより、半導体ナノ結晶の発光量子収率が増大するため、本発明の発光素子は、発光効率に優れる。
【0094】
半導体ナノ結晶へのフェルスター型エネルギー移動を効率的に行うためには、半導体ナノ結晶に配位結合又は付着しているカルバゾール誘導体は、半導体ナノ結晶よりも小さいイオン化ポテンシャル(Ip)及び半導体ナノ結晶よりも大きい電子親和力(Ea)を有している必要がある。このため、一般式(1)におけるAr、Ar及びArと、一般式(4)及び(5)におけるRが、半導体ナノ結晶に応じて、適宜選択される。
【0095】
また、半導体ナノ結晶へのフェルスター型エネルギー移動及び/又は電荷の注入を効率的に行うためには、カルバゾール誘導体の主骨格であるカルバゾール残基が半導体ナノ結晶と近接していることが好ましい。このため、一般式(2)におけるX及びYが、適宜選択される。
【0096】
さらに、一般式(2)において、Zは、半導体ナノ結晶に配位結合又は付着している基であり、半導体ナノ結晶に応じて、適宜選択される。
【0097】
以上のように、カルバゾール誘導体が配位結合又は付着している半導体ナノ結晶は、発光素子の発光材料として機能し、発光素子の目的に応じて、半導体ナノ結晶のサイズ、サイズ分布、形状及び組成と、カルバゾール誘導体の構造を適宜選択することにより、発光効率に優れる発光素子が得られる。
【0098】
本発明の発光素子としては、カルバゾール誘導体が配位結合又は付着している半導体ナノ結晶を含む発光層を有していれば、特に限定されないが、エレクトロルミネッセンス(EL)素子、フォトルミネッセンス(PL)素子等が挙げられる。
【0099】
本発明の発光素子としてのEL素子は、1種以上のカルバゾール誘導体が配位結合又は付着している半導体ナノ結晶を含む発光層と、公知の有機EL素子等で用いられているキャリア輸送材料を組み合わせることにより得られる。例えば、カルバゾール誘導体が配位結合又は付着している半導体ナノ結晶を含む発光層を、ホール注入層、ホール輸送層、ホールブロック層、電子輸送層及び電子注入層と適宜組み合わせることにより、EL素子が得られる。EL素子の構成としては、特に限定されないが、
陽極/ホール輸送層/発光層/陰極
陽極/ホール注入層/ホール輸送層/発光層/陰極
陽極/ホール輸送層/発光層/電子輸送層/陰極
陽極/ホール注入層/ホール輸送層/発光層/電子輸送層/陰極
陽極/ホール輸送層/発光層/電子輸送層/電子注入層/陰極
陽極/ホール注入層/ホール輸送層/発光層/電子輸送層/電子注入層/陰極
陽極/ホール輸送層/発光層/ホールブロック層/電子輸送層/陰極
陽極/ホール注入層/ホール輸送層/発光層/ホールブロック層/電子輸送層/陰極
陽極/ホール輸送層/発光層/ホールブロック層/電子輸送層/電子注入層/陰極
陽極/ホール注入層/ホール輸送層/発光層/ホールブロック層/電子輸送層/電子注入層/陰極
等の積層構造が挙げられ、必要に応じて、陰極上に封止層を形成することもできる。
【0100】
なお、上記の積層構造において、カルバゾール誘導体が配位結合又は付着している半導体ナノ結晶を含む発光層がホール輸送材料、電子輸送材料及び/又は双極性材料をさらに含んでもよい。
【0101】
また、上記の積層構成において、異なるカルバゾール誘導体が配位結合又は付着している半導体ナノ結晶を含む発光層が2層以上積層されていてもよい。
【0102】
さらに、カルバゾール誘導体が配位結合又は付着している半導体ナノ結晶を含む発光層がホール輸送材料、電子輸送材料、及び/又は双極性材料をさらに含み、
陽極/発光層/陰極
の積層構造としてもよい。
【0103】
EL素子は、上記の各層が基板上に積層されていることが好ましい。
【0104】
陽極の仕事関数は、通常、4eVよりも大きく、4.8eVより大きいことが好ましい。
【0105】
陽極を構成する材料としては、金、白金、パラジウム、銀、タングステン、ニッケル、コバルト等の金属、これらの金属の合金、ITO、SnO、ZnO等の金属酸化物、CuI等が挙げられる。
【0106】
ITOから構成される陽極は、表面が平滑であることが好ましく、通常、表面を洗浄して用いる。洗浄方法としては、特に限定されないが、オゾン雰囲気下、紫外線を照射する方法、酸素雰囲気下、プラズマ処理する方法等が挙げられる。
【0107】
陰極の仕事関数は、通常、4eVより小さい。金属、合金等が利用される。
【0108】
陰極を構成する材料としては、特に限定されないが、セシウム、ナトリウム、カルシウム、マグネシウム、リチウム、アルミニウム、サマリウム等の金属、これらの金属の合金等が挙げられる。
【0109】
EL素子を面発光素子として用いる場合は、陽極及び陰極の少なくとも一方が発光波長領域において十分透明であり、その反対側が発光波長領域において十分反射率が大きいことが好ましい。
【0110】
透明電極としては、特に限定されないが、ITO等が挙げられ、透明電極を形成する基板としては、特に限定されないが、ガラス板、プラスチック板等の透明基板が挙げられる。
【0111】
なお、EL素子を端面発光素子として用いる場合は、陽極及び陰極の少なくとも一方が発光波長領域において十分透明である必要は無い。
【0112】
ホール輸送層を構成する材料としては、特に限定されないが、低分子型又は高分子型のトリアリールアミン誘導体、特開2005−154412号公報、特開2005−158691号公報に記載されている低分子型又は高分子型の3、6−ジアリールカルバゾール誘導体、ポリチオフェン誘導体等が挙げられる。
【0113】
ホール注入層を構成する材料としては、特に限定されないが、フタロシアニン誘導体、ポルフィリン誘導体、オキサジアゾール誘導体、トリアゾール誘導体、トリアリールアミン誘導体、ポリフェニレンジアミン誘導体、ポリチオフェン誘導体、水溶性のPEDOT−PSS(ポリエチレンジオキサチオフェン−ポリスチレンスルホン酸)等が挙げられる。
【0114】
電子輸送層及びホールブロック層を構成する電子輸送性物質としては、特に限定されないが、フルオレノン誘導体、アントラキノジメタン誘導体、ジフェノキノン誘導体、チオピランジオキシド誘導体、ペリレンテトラカルボン酸誘導体、フルオレニリデンメタン誘導体、アントラキノジメタン誘導体、アントロン誘導体、フェナントロリン誘導体、オキサジアゾール誘導体、トリアゾール誘導体等が挙げられる。
【0115】
電子注入層を構成する材料としては、特に限定されないが、フッ化リチウム、8−ヒドロキシキノリノラトリチウム錯体、フェナントロリン誘導体のリチウム錯体、フェノキシピリジンのリチウム錯体等が挙げられる。
【0116】
発光層、ホール注入層、ホール輸送層、ホールブロック層、電子輸送層及び電子注入層の各層を形成する方法としては、特に限定されないが、真空蒸着法、イオン化蒸着法、スピンコート法、キャスト法、インクジェット法、マイクロコンタクト法等が挙げられる。スピンコート法、キャスト法、インクジェット法又はマイクロコンタクト法を用いて、各層を形成する際に用いる溶媒としては、特に限定されないが、炭化水素系溶媒、ハロゲン系溶媒、ケトン系溶媒、エーテル系溶媒、エステル系溶媒、非プロトン性溶媒、水等が挙げられる。
【0117】
発光層、ホール注入層、ホール輸送層、ホールブロック層、電子輸送層及び電子注入層の各層の厚さは、通常、1nm〜5μmである。
【0118】
本発明の発光素子としてのPL素子は、1種以上のカルバゾール誘導体が配位結合又は付着している半導体ナノ結晶を含む発光層を、カラーフィルター又は色変化フィルムとして、公知の液晶表示デバイスで用いられている液晶層、液晶配向層、透明電極、透明カウンター電極、偏光子、バックライト等と組み合わせることにより得られる。
【0119】
本発明の発光素子は、液晶表示装置等の表示装置に適用することができる。
【実施例】
【0120】
以下に、実施例を挙げて本発明をさらに具体的に説明する。本発明は、実施例によって制限されない。
【0121】
[カルバゾール誘導体1の合成]
3,6−ジブロモカルバゾール(A−1)14.31(44.0mol)、5−メチル−2−チオフェンボロン酸25.01g(176.1mmol)及びテトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム1.30gを、トルエン180mL及びエタノール60mLの混合溶媒に加えた後、炭酸ナトリウム37.3gを蒸留水90mLに溶解させた水溶液を加え、窒素雰囲気下、15時間加熱還流した。次に、熱時セライト濾過することにより不溶物を除去した後、有機層を分離し、減圧下、溶媒を留去した。さらに、残留物を水洗した後、乾燥させて、黄茶色の固体を得た。さらに、溶離液として、塩化メチレン/ヘキサン混合溶媒を用いて、シリカゲルカラムクロマトグラフィーにより精製して、3,6−ビス(5−メチルチオフェン−2−イル)カルバゾール(A−2)12.25gを得た。
【0122】
得られた3,6−ビス(5−メチルチオフェン−2−イル)カルバゾール8.07g(22.4mmol)、4−ヨードアニソール21.00g(89.7mmol)、銅粉0.71g及び炭酸カリウム12.40gを混合した後、窒素雰囲気下、6時間加熱還流し、100℃まで冷却した。次に、トルエン80mLを加え、セライト濾過することにより不溶物を除去した後、減圧下、溶媒を留去した。さらに、残留物を塩化メチレンに溶解させ、水洗した後、乾燥させて、茶色の液体を得た。次に、溶離液として、塩化メチレン/ヘキサン混合溶媒を用いて、シリカゲルカラムクロマトグラフィーにより精製して、3,6−ビス(5−メチルチオフェン−2−イル)−9−(4−メトキシフェニル)カルバゾール(B−2)4.39gを得た。
【0123】
得られた3,6−ビス(5−メチルチオフェン−2−イル)−9−(4−メトキシフェニル)カルバゾール3.73g(8.0mmol)を塩化メチレン30mLに溶解させた後、1M三臭化ホウ素の塩化メチレン溶液8mLを−10℃で滴下し、室温で攪拌した。次に、水洗し、乾燥させた後、溶媒を留去して、灰色の固体を得た。さらに、溶離液として、塩化メチレン/ヘキサン混合溶媒を用いて、シリカゲルカラムクロマトグラフィーにより精製して、3,6−ビス(5−メチルチオフェン−2−イル)−9−(4−ヒドロキシフェニル)カルバゾール(B−3)3.47gを得た。
【0124】
得られた3,6−ビス(5−メチルチオフェン−2−イル)−9−(4−ヒドロキシフェニル)カルバゾール1.81g(4.0mmol)及び1,8−ジブロモオクタン4.35g(16.0mmol)をメチルエチルケトン20mLに溶解させた後、炭酸カリウム0.83gを加え、7時間加熱還流した。次に、ろ過することにより不溶物を除去した後、減圧下、溶媒を留去した。さらに、残留物を塩化メチレンに溶解させ、水洗し、乾燥させた後、溶媒を留去して、淡黄色の液体を得た。次に、溶離液として、塩化メチレン/ヘキサン混合溶媒を用いて、シリカゲルカラムクロマトグラフィーにより精製して、3,6−ビス(5−メチルチオフェン−2−イル)−9−[4−(8−ブロモオクチルオキシ)フェニル]カルバゾール1.83gを得た。
【0125】
得られた3,6−ビス(5−メチルチオフェン−2−イル)−9−[4−(8−ブロモオクチルオキシ)フェニル]カルバゾール1.50g(2.3mmol)をTHF20mL及びエタノール20mLの混合溶媒に溶解させた後、窒素気流下、チオ酢酸カリウム0.40g(3.5mmol)を加え、5時間加熱還流し、室温まで放冷した。次に、水に注ぎ、塩化メチレンで抽出した。さらに、水洗し、乾燥させた後、溶媒を留去して、淡黄白色の固体を得た。さらに、溶離液として、塩化メチレン/ヘキサン混合溶媒を用いて、シリカゲルカラムクロマトグラフィーにより精製して、チオ酢酸8−{4−[3,6−ビス(5−メチルチオフェン−2−イル)カルバゾール−9−イル]フェノキシ}オクチルエステル(C−3)1.22gを得た。
【0126】
得られたチオ酢酸8−{4−[3,6−ビス(5−メチルチオフェン−2−イル)カルバゾール−9−イル]フェノキシ}オクチルエステル1.02g(1.6mmol)を、窒素気流下、THF30mL及びエタノール10mLの混合溶媒に溶解させた後、50質量%NaOH水溶液0.5mLを加え、室温で1時間攪拌した。次に、水に注ぎ、クロロホルムで抽出した。さらに、水洗し、乾燥させた後、溶媒を留去して、粗製物を得た。次に、溶離液として、クロロホルム/ヘキサン混合溶媒を用いて、シリカゲルカラムクロマトグラフィーにより精製して、化学式
【0127】
【化20】

で表される8−{4−[3,6−ビス(5−メチルチオフェン−2−イル)カルバゾール−9−イル]フェノキシ}オクタン−1−チオール(C−4)(以下、カルバゾール誘導体1という)0.86gを得た。
【0128】
図1に、カルバゾール誘導体1の赤外吸収スペクトルを示す。なお、赤外吸収スペクトルは、KBr錠剤法を用いて測定した。
【0129】
[カルバゾール誘導体2の合成]
一般式(3)で表される化合物の合成例3に従って、カルバゾール誘導体2を合成した。
【0130】
3,6−ジフェニル−9−(4−メトキシフェニル)カルバゾール(B−2)4.20g(9.9mmol)を塩化メチレン30mLに溶解させた後、1M三臭化ホウ素の塩化メチレン溶液10mLを−10℃で滴下し、室温で攪拌した。次に、水洗し、乾燥させた後、溶媒を留去して、3,6−ジフェニル−9−(4−ヒドロキシフェニル)カルバゾール(B−3)3.98gを得た。
【0131】
得られた3,6−ジフェニル−9−(4−ヒドロキシフェニル)カルバゾール1.54g(3.7mmol)をN,N−ジメチルホルムアミド20mLに溶解させた後、氷水冷却下、55質量%水素化ナトリウム0.25g(5.7mmol)を加え、1時間攪拌した。次に、8−ブロモ−1−オクタノール1.16g(5.5mmol)を加え、室温で3時間攪拌した。さらに、水に注ぎ、酢酸エチルで抽出した。次に、水洗し、乾燥させた後、溶媒を留去して、8−[4−(3,6−ジフェニルカルバゾール−9−イル)フェノキシ]オクタン−1−オール(B−4)1.90gを得た。
【0132】
得られた8−[4−(3,6−ジフェニルカルバゾール−9−イル)フェノキシ]オクタン−1−オール2.80g(5.2mmol)を塩化メチレン10mL及びピリジン5mLの混合溶媒に溶解させた後、−2℃で塩化p−トルエンスルホニル1.20g(6.3mmol)を加え、室温で攪拌した。次に、水に注ぎ、酢酸エチルで抽出した。さらに、希塩酸及び水で洗浄し、乾燥させた後、溶媒を留去して、粗製物を得た。さらに、溶離液として、酢酸エチル/トルエン混合溶媒を用いて、シリカゲルカラムクロマトグラフィーにより精製して、無色の板状晶のトルエン−4−スルホン酸8−[4−(3,6−ジフェニルカルバゾール−9−イル)フェノキシ]オクチルエステル(C−2)1.95gを得た。
【0133】
得られたトルエン−4−スルホン酸8−[4−(3,6−ジフェニルカルバゾール−9−イル)フェノキシ]オクチルエステル1.90g(2.7mmol)をTHF40mL及びエタノール20mLの混合溶媒に溶解させた後、窒素気流下、チオ酢酸カリウム0.55g(4.8mmol)を加え、7時間加熱還流し、室温まで放冷した。次に、水に注ぎ、酢酸エチルで抽出した。さらに、水洗し、乾燥させた後、溶媒を留去して、粗製物を得た。次に、溶離液として、トルエンを用いて、シリカゲルカラムクロマトグラフィーにより精製して、淡橙色の油状物のチオ酢酸8−[4−(3,6−ジフェニルカルバゾール−9−イル)フェノキシ]オクチルエステル(C−3)1.32gを得た。
【0134】
得られたチオ酢酸8−[4−(3,6−ジフェニルカルバゾール−9−イル)フェノキシ]オクチルエステル1.32g(2.2mmol)を、窒素気流下、THF25mL及びエタノール10mLの混合溶媒に溶解させた後、50質量%NaOH水溶液0.5mLを加え、室温で30分攪拌した。次に、水に注ぎ、クロロホルムで抽出した。さらに、水洗し、乾燥させた後、溶媒を留去して、粗製物を得た。次に、溶離液として、クロロホルム/ヘキサン混合溶媒を用いて、シリカゲルカラムクロマトグラフィーにより精製して、無色の針状晶の化学式
【0135】
【化21】

で表される8−[4−(3,6−ジフェニルカルバゾール−9−イル)フェノキシ]オクタン−1−チオール(C−4)(以下、カルバゾール誘導体2という)0.82gを得た。
【0136】
図2に、カルバゾール誘導体2の赤外吸収スペクトルを示す。なお、赤外吸収スペクトルは、KBr錠剤法を用いて測定した。
【0137】
また、カルバゾール誘導体2の分析結果を以下に示す。
【0138】
融点:131.0〜131.5℃
元素分析値(%)実測値(計算値):C 81.70(82.12);H 6.57(6.71);N 2.45(2.52);S 5.68(5.77)
[カルバゾール誘導体3の合成]
一般式(3)で表される化合物の合成例3に従って、カルバゾール誘導体3を合成した。
【0139】
3−メトキシ−9−フェニルカルバゾール(E−4)を、カルバゾール誘導体1と同様にして、脱メチル化させて、無色の針状晶の3−ヒドロキシ−9−フェニルカルバゾール(E−5)を収率91.8%で得た。
【0140】
得られた3−ヒドロキシ−9−フェニルカルバゾールを、カルバゾール誘導体2と同様にして、8−ブロモオクタノールとエーテル化させて、無色の針状晶の3−(8−ヒドロキシオクチルオキシ)−9−フェニルカルバゾール(E−6)を収率84.3%で得た。
【0141】
得られた3−(8−ヒドロキシオクチルオキシ)−9−フェニルカルバゾールを、カルバゾール誘導体2と同様にして、トシル化、チオアセチル化及び加水分解させて、化学式
【0142】
【化22】

で表される無色の針状晶の3−(8−メルカプトオクチルオキシ)−9−フェニルカルバゾール(E−9)(以下、カルバゾール誘導体3という)を得た。
【0143】
図3に、カルバゾール誘導体3の赤外吸収スペクトルを示す。なお、赤外吸収スペクトルは、KBr錠剤法を用いて測定した。
【0144】
また、カルバゾール誘導体3の分析結果を以下に示す。
【0145】
融点:52.5〜55.5℃
元素分析値(%)実測値(計算値):C 77.32(77.38);H 7.15(7.24);N 3.40(3.47);S 7.74(7.95)
[カルバゾール誘導体4の合成]
一般式(3)で表される化合物の合成例4に従って、カルバゾール誘導体4を合成した。
【0146】
ベンゾ〔a〕カルバゾール(D−5)2.17g、4−(8−ヒドロキシオクチルオキシ)ヨードベンゼン3.50g、炭酸カリウム2.80g、銅粉0.5g及びニトロベンゼン15mlを、窒素気流下、190〜200℃で6時間攪拌し、室温まで放冷した。次に、セライトろ過することにより不溶物を除去した後、減圧下、溶媒を加熱留去した。さらに、溶離液として、トルエン/酢酸エチル混合溶媒を用いて、シリカゲルカラムクロマトグラフィーにより精製して、淡褐色油状物のN−〔4−(8−ヒドロキシオクチルオキシフェニル)〕−11H−ベンゾ〔a〕カルバゾール(D−6)3.3gを得た。
【0147】
次に、得られたN−〔4−(8−ヒドロキシオクチルオキシフェニル)〕−11H−ベンゾ〔a〕カルバゾールを、カルバゾール誘導体2と同様にして、トシル化、チオアセチル化及び加水分解させて、化学式
【0148】
【化23】

で表される無色のプリズム結晶のN−〔4−(8−メルカプトオクチルオキシフェニル)〕−11H−ベンゾ〔a〕カルバゾール(D−9)(以下、カルバゾール誘導体4という)を得た。
【0149】
図4に、カルバゾール誘導体4の赤外吸収スペクトルを示す。なお、赤外吸収スペクトルは、KBr錠剤法を用いて測定した。
【0150】
また、カルバゾール誘導体4の分析結果を以下に示す。
【0151】
融点:75.0〜76.0℃
元素分析値(%)実測値(計算値):C 79.48(79.43);H 6.76(6.89);N 2.78(3.09);S 6.99(7.07)
[カルバゾール誘導体5の合成]
2,7−ジブロモカルバゾール6.50g、フェニルボロン酸7.32g及びテトラキストリフェニルホスフィンパラジウム0.734gに、トルエン80ml、エタノール20ml及び2M炭酸ナトリウム水溶液40gを加え、窒素気流下、3時間加熱還流し、室温まで放冷した。次に、ろ過することにより不溶物を除去した後、溶媒を留去して、淡褐色粉末の2,7−ジフェニルカルバゾール4.15gを得た。
【0152】
得られた2,7−ジフェニルカルバゾール4.01g、4−(8−ヒドロキシオクチルオキシ)ヨードベンゼン4.37g、炭酸カリウム3.45g、銅粉0.5g及びニトロベンゼン20mlを混合した後、窒素気流下、7時間加熱還流し、室温まで放冷した。次に、ろ過することにより不溶物を除去した後、溶媒を留去した。さらに、溶離液として、酢酸エチル/ヘキサン混合溶媒を用いて、シリカゲルカラムクロマトグラフィーにより精製して、淡褐色の油状物の2,7−ジフェニル−N−〔4−(8−ヒドロキシオクチルオキシフェニル)〕カルバゾール2.0gを得た。
【0153】
得られた2,7−ジフェニル−N−〔4−(8−ヒドロキシオクチルオキシフェニル)〕カルバゾールを、カルバゾール誘導体2と同様にして、トシル化、チオアセチル化及び加水分解させて、化学式
【0154】
【化24】

で表される無色の針状晶の2,7−ジフェニル−N−〔4−(8−メルカプトオクチルオキシフェニル)〕カルバゾール(以下、カルバゾール誘導体5という)を得た。
【0155】
図5に、カルバゾール誘導体5の赤外吸収スペクトルを示す。なお、赤外吸収スペクトルは、KBr錠剤法を用いて測定した。
【0156】
また、カルバゾール誘導体5の分析結果を以下に示す。
【0157】
融点:132.5〜133.5℃
元素分析値(%)実測値(計算値):C 82.37(82.12);H 6.66(6.71);N 2.43(2.52);S 5.70(5.77)
[カルバゾール誘導体6の合成]
3,6−ビス(5−メチルチオフェン−2−イル)−9−(4−メトキシフェニル)カルバゾール(B−2)の代わりに、3,6−ジフェニル−9−(3−メトキシフェニル)カルバゾールを用いた以外は、カルバゾール誘導体1と同様にして、化学式
【0158】
【化25】

で表される無色の高粘性体の8−[3−(3,6−ジフェニルカルバゾール−9−イル)フェノキシ]オクタン−1−チオール(C−4)(以下、カルバゾール誘導体6という)を得た。
【0159】
図6に、カルバゾール誘導体6の赤外吸収スペクトルを示す。なお、赤外吸収スペクトルは、液膜法を用いて測定した。
【0160】
[カルバゾール誘導体7の合成]
3,6−ジフェニルカルバゾール2.80g(8.77mmol)、1−ブロモ−3−ヨードベンゼン22.18g(87.7mmol)、銅粉0.279g及び炭酸カリウム4.85gを混合し、窒素雰囲気下、190℃で9時間加熱し、室温まで冷却した。次に、塩化メチレンで希釈した後、水洗し、乾燥させ、薄茶色の液体を得た。さらに、溶離液として、塩化メチレン/ヘキサン混合溶媒を用いて、シリカゲルカラムクロマトグラフィーにより精製して、9−(3−ブロモフェニル)−3,6−ジフェニルカルバゾール3.59gを得た。
【0161】
得られた9−(3−ブロモフェニル)−3,6−ジフェニルカルバゾール3.20g(6.75mmol)、3−メトキシフェニルボロン酸1.54g(10.1mmol)及びテトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム0.124gを、トルエン30mL及びエタノール10mLの混合溶媒に加えた後、炭酸ナトリウム37.3gを蒸留水90mLに溶解させた水溶液を加え、窒素雰囲気下、9時間加熱還流し、室温まで冷却した。次に、塩化メチレンで希釈し、濾過することにより不溶物を除去した後、有機層を水洗し、分離し、減圧下、溶媒を留去した。さらに、溶離液として、塩化メチレン/ヘキサン混合溶媒を用いて、シリカゲルカラムクロマトグラフィーにより精製して、[3'−(3,6−ジフェニルカルバゾール−9−イル)ビフェニル−3−イルオキシ]メタン2.89gを得た。
【0162】
得られた[3'−(3,6−ジフェニルカルバゾール−9−イル)ビフェニル−3−イルオキシ]メタンを、3,6−ビス(5−メチルチオフェン−2−イル)−9−(4−メトキシフェニル)カルバゾール(B−2)の代わりに用いた以外は、カルバゾール誘導体1と同様にして、化学式
【0163】
【化26】

で表される8−[3'−(3,6−ジフェニルカルバゾール−9−イル)ビフェニル−3−イルオキシ]オクタン−1−チオール(C−4)(以下、カルバゾール誘導体7という)を得た。
【0164】
図7に、カルバゾール誘導体7の赤外吸収スペクトルを示す。なお、赤外吸収スペクトルは、KBr錠剤法を用いて測定した。
【0165】
[カルバゾール誘導体8の合成]
5−メチル−2−チオフェンボロン酸の代わりに、4−トリフェニルシリルベンゼンボロン酸ネオペンチルグリコールエステルを用いた以外は、カルバゾール誘導体1と同様にして、化学式
【0166】
【化27】

で表される8−{4−[3,6−ビス(4−(トリフェニルシリル)フェニル)カルバゾール−9−イル]フェノキシ}オクタン−1−チオール(C−4)(以下、カルバゾール誘導体8という)を得た。
【0167】
図8に、カルバゾール誘導体8の赤外吸収スペクトルを示す。なお、赤外吸収スペクトルは、KBr錠剤法を用いて測定した。
【0168】
[半導体ナノ結晶InP/ZnS/ZnOの作製]
WO2010/015824号の実施例4及び5に記載されている方法と同様にして、キャッピング剤(界面活性剤)として、10−ウンデシレン酸を用いて、半導体ナノ結晶InP/ZnS/ZnOを得た。
【0169】
[カルバゾール誘導体が配位結合又は付着している半導体ナノ結晶の作製]
0.01gのカルバゾール誘導体を、アルゴン雰囲気下、室温で塩化メチレン2mLに溶解させた。次に、アルゴン雰囲気下、半導体ナノ結晶InP/ZnS/ZnOを10mg/mLでトルエンに分散させた分散液0.5mLを加え、室温で24時間撹拌した。さらに、乾燥テトラヒドロフラン20mLを加え、5分間超音波洗浄した後、遠心分離した。次に、沈降物を単離し、乾燥テトラヒドロフラン20mLを加え、5分間超音波洗浄した後、遠心分離する操作を2回繰り返した。さらに、沈降物を単離し、アルゴン気流下、風乾して、カルバゾール誘導体が配位結合又は付着している半導体ナノ結晶を得た。
【0170】
[実施例1]
厚さが110nmのITO基板を、中性洗剤、アセトン及びイソプロパノールで順次超音波洗浄した後、イソプロパノールで煮沸洗浄し、UV−オゾンチャンバ中で12分間処理をした。
【0171】
ITO基板上に、PEDOT−PSS溶液のBaytron(登録商標)P AI 4083(H.C.Starck社製)をスピンコートした後、150℃で30分間乾燥させて、厚さが40nmのホール注入層を形成した。
【0172】
窒素雰囲気下、ホール注入層上に、ポリカーボネートのクロロホルム溶液をスピンコートした後、100℃で30分間乾燥して、厚さが40nmのホール輸送層を形成した。なお、ポリカーボネートとしては、特開2005−54165号公報の実施例1に記載されている3,6−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−N−フェニルカルバゾール由来の構成単位及び4,4'−イソプロピリデンジフェノール由来の構成単位(モル比1:1)を有するポリカーボネートを用いた。
【0173】
窒素雰囲気下、ホール輸送層上に、カルバゾール誘導体1が配位結合又は付着している半導体ナノ結晶をトルエンに分散させた分散液をスピンコートした後、100℃で30分間乾燥して、厚さが15nmの発光層を形成した。
【0174】
真空蒸着装置を用いて、1×10−4Paの真空下、発光層上に、3,5,3'、5'−テトラキス(m−ピリド−3−イル)フェニル−[1,1']ビフェニルを蒸着して、厚さが50nmの電子輸送層を形成した。次に、シャドーマスクを介して、MgAg及びAgを、それぞれ100nm及び10nmの厚さで蒸着して、陰極を形成し、EL素子を得た。
【0175】
図9に、EL素子の電流密度と外部量子効率の関係を示す。図9から、EL素子の外部量子効率の最大値が1.4%であることがわかる。
【0176】
図10に、EL素子の電圧と電流密度の関係を示す。
【0177】
図11に、EL素子の電流密度が1mA/cmである時の発光スペクトルを示す。図11から、EL素子の発光の中心波長が624nmであることがわかる。
【0178】
[実施例2]
カルバゾール誘導体1が配位結合又は付着している半導体ナノ結晶の代わりに、カルバゾール誘導体2が配位結合又は付着している半導体ナノ結晶を用いた以外は、実施例1と同様にして、EL素子を得た。
【0179】
図12に、EL素子の電流密度と外部量子効率の関係を示す。図12から、EL素子の外部量子効率の最大値が2.3%であることがわかる。
【0180】
図13に、EL素子の電圧と電流密度の関係を示す。
【0181】
図14に、EL素子の電流密度が1mA/cmである時の発光スペクトルを示す。図14から、EL素子の発光の中心波長が630nmであることがわかる。
【0182】
[比較例1]
カルバゾール誘導体1が配位結合又は付着している半導体ナノ結晶の代わりに、半導体ナノ結晶InP/ZnS/ZnOを用いた以外は実施例1と同様にして、EL素子を得た。
【0183】
図15に、EL素子の電流密度と外部量子効率の関係を示す。図15から、EL素子の外部量子効率の最大値が0.3%であることがわかる。
【0184】
図16に、EL素子の電圧と電流密度の関係を示す。
【0185】
図17に、EL素子の電流密度が1mA/cmである時の発光スペクトルを示す。図17から、EL素子の発光の中心波長が625nmであることがわかる。
【0186】
[実施例3]
厚さが110nmのITO基板を、中性洗剤、アセトン及びイソプロパノールで順次超音波洗浄した後、イソプロパノールで煮沸洗浄し、UV−オゾンチャンバ中で12分間処理をした。
【0187】
ITO基板上に、PEDOT−PSS溶液(Aldrich社製;conductive grade)をスピンコートした後、150℃で30分間乾燥させて、厚さが40nmのホール注入層を形成した。
【0188】
窒素雰囲気下、ホール注入層上に、ポリカーボネートのクロロホルム溶液をスピンコートした後、100℃で30分間乾燥して、厚さが40nmのホール輸送層を形成した。なお、ポリカーボネートとしては、特開2005−54165号公報の実施例1に記載されている3,6−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−N−フェニルカルバゾール由来の構成単位及び4,4'−イソプロピリデンジフェノール由来の構成単位(モル比1:1)を有するポリカーボネートを用いた。
【0189】
窒素雰囲気下、ホール輸送層上に、カルバゾール誘導体3が配位結合又は付着している半導体ナノ結晶をトルエンに分散させた分散液をスピンコートした後、100℃で30分間乾燥して、厚さが12nmの発光層を形成した。
【0190】
真空蒸着装置を用いて、1×10−4Paの真空下、発光層上に、3,5,3'、5'−テトラキス(m−ピリド−3−イル)フェニル−[1,1']ビフェニルを蒸着して、厚さが50nmの電子輸送層を形成した。次に、シャドーマスクを介して、LiF及びAlを、それぞれ0.5nm及び80nmの厚さで蒸着して、陰極を形成し、EL素子を得た。
【0191】
図18に、EL素子の電流密度と外部量子効率の関係を示す。図18から、EL素子の外部量子効率の最大値が0.74%であることがわかる。
【0192】
図19に、EL素子の電圧と電流密度の関係を示す。
【0193】
図20に、EL素子の電圧が10V、12V及び14Vである時の発光スペクトルを示す。図20から、EL素子の発光の中心波長が621nmであることがわかる。
【0194】
[実施例4]
カルバゾール誘導体3が配位結合又は付着している半導体ナノ結晶の代わりに、カルバゾール誘導体4が配位結合又は付着している半導体ナノ結晶を用いた以外は、実施例3と同様にして、EL素子を得た。
【0195】
図21に、EL素子の電流密度と外部量子効率の関係を示す。図21から、EL素子の外部量子効率の最大値が0.34%であることがわかる。
【0196】
図22に、EL素子の電圧と電流密度の関係を示す。
【0197】
図23に、EL素子の電圧が10V、12V及び14Vである時の発光スペクトルを示す。図23から、EL素子の発光の中心波長が622nmであることがわかる。
【0198】
[実施例5]
カルバゾール誘導体3が配位結合又は付着している半導体ナノ結晶の代わりに、カルバゾール誘導体5が配位結合又は付着している半導体ナノ結晶を用いた以外は、実施例3と同様にして、EL素子を得た。
【0199】
図24に、EL素子の電流密度と外部量子効率の関係を示す。図24から、EL素子の外部量子効率の最大値が0.37%であることがわかる。
【0200】
図25に、EL素子の電圧と電流密度の関係を示す。
【0201】
図26に、EL素子の電圧が10V、12V及び14Vである時の発光スペクトルを示す。図26から、EL素子の発光の中心波長が621nmであることがわかる。
【0202】
[実施例6]
カルバゾール誘導体3が配位結合又は付着している半導体ナノ結晶の代わりに、カルバゾール誘導体6が配位結合又は付着している半導体ナノ結晶を用いた以外は、実施例3と同様にして、EL素子を得た。
【0203】
図27に、EL素子の電流密度と外部量子効率の関係を示す。図27から、EL素子の外部量子効率の最大値が0.52%であることがわかる。
【0204】
図28に、EL素子の電圧と電流密度の関係を示す。
【0205】
図29に、EL素子の電圧が10V、12V及び14Vである時の発光スペクトルを示す。図29から、EL素子の発光の中心波長が622nmであることがわかる。
【0206】
[実施例7]
カルバゾール誘導体3が配位結合又は付着している半導体ナノ結晶の代わりに、カルバゾール誘導体7が配位結合又は付着している半導体ナノ結晶を用いた以外は、実施例3と同様にして、EL素子を得た。
【0207】
図30に、EL素子の電流密度と外部量子効率の関係を示す。図30から、EL素子の外部量子効率の最大値が0.60%であることがわかる。
【0208】
図31に、EL素子の電圧と電流密度の関係を示す。
【0209】
図32に、EL素子の電圧が10V、12V及び14Vである時の発光スペクトルを示す。図32から、EL素子の発光の中心波長が620nmであることがわかる。
【0210】
[実施例8]
カルバゾール誘導体3が配位結合又は付着している半導体ナノ結晶の代わりに、カルバゾール誘導体8が配位結合又は付着している半導体ナノ結晶を用いた以外は、実施例3と同様にして、EL素子を得た。
【0211】
図33に、EL素子の電流密度と外部量子効率の関係を示す。図33から、EL素子の外部量子効率の最大値が1.2%であることがわかる。
【0212】
図34に、EL素子の電圧と電流密度の関係を示す。
【0213】
図35に、EL素子の電圧が10V、12V及び14Vである時の発光スペクトルを示す。図35から、EL素子の発光の中心波長が620nmであることがわかる。
【0214】
[実施例9]
カルバゾール誘導体3が配位結合又は付着している半導体ナノ結晶の代わりに、カルバゾール誘導体2が配位結合又は付着している半導体ナノ結晶を用いた以外は、実施例3と同様にして、EL素子を得た。
【0215】
図36に、EL素子の電流密度と外部量子効率の関係を示す。図36から、EL素子の外部量子効率の最大値が1.0%であることがわかる。
【0216】
図37に、EL素子の電圧と電流密度の関係を示す。
【0217】
図38に、EL素子の電圧が10V、12V及び14Vである時の発光スペクトルを示す。図38から、EL素子の発光の中心波長が619nmであることがわかる。
【0218】
[比較例2]
カルバゾール誘導体3が配位結合又は付着している半導体ナノ結晶の代わりに、半導体ナノ結晶InP/ZnS/ZnOを用いた以外は、実施例3と同様にして、EL素子を得た。
【0219】
図39に、EL素子の電流密度と外部量子効率の関係を示す。図39から、EL素子の外部量子効率の最大値が0.28%であることがわかる。
【0220】
図40に、EL素子の電圧と電流密度の関係を示す。
【0221】
図41に、EL素子の電圧が10V、12V及び14Vである時の発光スペクトルを示す。図41から、EL素子の発光の中心波長が622nmであることがわかる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0222】
【特許文献1】特開2009−99545号公報

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一般式
【化1】

(式中、Ar及びArは、それぞれ独立に、ベンゼン環と共同で環を形成してもよい置換若しくは無置換のアリール基、複素環基又は水素原子であり、Arは、置換又は無置換のアリール基である。)
で表される化合物の芳香環が1個以上3個以下の一般式
【化2】

(式中、Xは、メチレン基、カルボニルオキシ基、オキシカルボニル基、カルボニル基、酸素原子又は硫黄原子であり、Yは、置換又は無置換のアルキレン基であり、Zは、カルボキシル基、ヒドロキシル基又はチオール基である。)
で表される基で置換されているカルバゾール誘導体が配位結合又は付着している半導体ナノ結晶を含む発光層を有することを特徴とする発光素子。
【請求項2】
前記カルバゾール誘導体は、一般式
【化3】

(式中、Arは、置換又は無置換のアリーレン基である。)
で表される化合物であることを特徴とする請求項1に記載の発光素子。
【請求項3】
前記Ar及び前記Arは、それぞれ独立に、一般式
【化4】

(式中、Rは、水素原子、置換若しくは無置換のアルキル基、置換若しくは無置換のアルコキシ基、ハロゲン原子又は置換若しくは無置換のアリール基である。)
で表される基であることを特徴とする請求項2に記載の発光素子。
【請求項4】
前記一般式(3)で表される化合物は、一般式
【化5】

(式中、Rは、水素原子、置換若しくは無置換のアルキル基、置換若しくは無置換のアルコキシ基、ハロゲン原子又は置換若しくは無置換のアリール基である。)
で表されるベンゾカルバゾール誘導体であることを特徴とする請求項2に記載の発光素子。
【請求項5】
前記カルバゾール誘導体は、一般式
【化6】

で表される化合物であることを特徴とする請求項1に記載の発光素子。
【請求項6】
請求項1乃至5のいずれか一項に記載の発光素子を有することを特徴とする表示装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【図29】
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【図30】
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【図31】
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【図32】
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【図33】
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【図34】
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【図35】
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【図36】
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【図37】
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【図38】
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【図39】
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【図40】
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【図41】
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【公開番号】特開2012−54227(P2012−54227A)
【公開日】平成24年3月15日(2012.3.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−154838(P2011−154838)
【出願日】平成23年7月13日(2011.7.13)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】