説明

発光素子接着用樹脂組成物、発光素子の接着方法およびランプ

【課題】熱硬化型の接着剤と比較して硬化時間が十分に短く、生産性に優れ、高い接着強度が得られ、しかも、発光素子を発光させることに起因する光や熱による着色が生じにくい発光素子接着用樹脂組成物を提供する。
【解決手段】二つ以上のオキセタニル基を含有するシルセスキオキサン樹脂を含む樹脂成分と、カチオン重合開始剤とを含み、前記カチオン重合開始剤が、300nm〜400nmの波長の光で重合を開始する光重合開始剤である発光素子接着用樹脂組成物とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ディスプレイ、バックライト光源、照明、信号機、および各種インジケータなどに利用される発光素子を支持体上に接着する際に好適に用いられる発光素子接着用樹脂組成物およびこれを用いて発光素子を接着してなる発光素子の接着方法およびランプに関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、発光ダイオードを構成するLED素子(発光素子)は、支持体上に接着されて、封止用樹脂によって封止されている。
発光素子の接着に用いられる接着剤としては、シリコーンやエポキシなどを含有する熱硬化型のものがある。
【0003】
また、発光素子の接着に用いられる接着剤としては、ダイボンド樹脂中に光硬化性触媒および熱硬化性触媒を含有させたもの(例えば、特許文献1参照)もある。特許文献1には、ダイボンド樹脂として、エポキシ樹脂、ポリイミド樹脂、アクリル系樹脂、不飽和ポリエステルが記載されている。
また、特許文献2には、紫外線照射または加熱で硬化させるエポキシ系樹脂やアクリル系樹脂の接着剤を用いてLEDチップを実装する方法が記載されている。
【0004】
また、特許文献3には、可視光硬化型樹脂に熱硬化性を付与した接着剤を用いて、装着部材に光半導体素子を固着する技術が記載されており、接着剤の材料としてジメタクリレートの樹脂に光重合開始剤を添加し、これに、熱重合開始剤として過酸化ベンゾイルを添加したものが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平10−321918号公報
【特許文献2】特開2001−156082号公報
【特許文献3】特開平4−332142号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、LED素子の接着に熱硬化型の接着剤を用いた場合には、接着剤の硬化時間が長時間となるため、硬化時間を短縮させて生産性を向上させることが要求されている。また、LED素子の接着に熱硬化型の接着剤を用いた場合には、接着剤を硬化させるための熱処理が長時間であるため、接着剤を硬化させるための熱処理によってパッケージに歪みが生じる場合があった。また、LED素子を接着するためにシリコーンを用いた接着剤を用いた場合、十分な接着強度が得られず、LED素子が取れてしまう場合があった。
【0007】
また、LED素子を接着するために特許文献1〜特許文献3に記載の接着剤を用いた場合、LED素子を発光させることに起因する光や熱によって接着剤が劣化されて着色し、発光ダイオードの出力を低下させてしまう場合があった。特に、エポキシ樹脂やアクリル系樹脂を用いた接着剤は、着色されやすく、問題となっていた。
【0008】
本発明は上記課題に鑑みてなされたものであり、熱硬化型の接着剤と比較して硬化時間が十分に短く、生産性に優れ、高い接着強度が得られ、しかも、発光素子を発光させることに起因する光や熱による着色が生じにくい発光素子接着用樹脂組成物を提供することを目的とする。
また、上記の発光素子接着用樹脂組成物を用いて、効率よく、高い接着強度で発光素子を接着できる発光素子の接着方法を提供することを目的とする。
また、上記の発光素子接着用樹脂組成物によって、支持体上に発光素子が接着されてなり、発光素子を発光させることに起因する光や熱による発光素子接着用樹脂組成物の着色が生じにくく、長期にわたって高い出力を維持できるランプを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者は、上記問題を解決するために鋭意検討した結果、本発明を完成した。即ち、本発明は以下に関する。
(1) 二つ以上のオキセタニル基を含有するシルセスキオキサン樹脂を含む樹脂成分と、カチオン重合開始剤とを含み、前記カチオン重合開始剤が、300nm〜400nmの波長の光で重合を開始する光重合開始剤であることを特徴とする発光素子接着用樹脂組成物。
(2) 前記カチオン重合開始剤が、350nm〜400nmの波長の光で重合を開始する光重合開始剤であることを特徴とする(1)に記載の発光素子接着用樹脂組成物。
(3) 前記樹脂成分が、一つ以上のエポキシ基を含有する脂肪族炭化水素を含有するものであることを特徴とする(1)または(2)に記載の発光素子接着用樹脂組成物。
(4) 前記樹脂成分が、前記シルセスキオキサン樹脂を90質量%以上含むことを特徴とする(1)〜(3)のいずれかに記載の発光素子接着用樹脂組成物。
【0010】
(5) (1)〜(4)のいずれかに記載の発光素子接着用樹脂組成物の塗布された支持体上に発光素子を設置する工程と、前記発光素子を透過させて300nm〜400nmの波長の光を照射することにより前記発光素子接着用樹脂組成物を硬化させる第1硬化工程と、第1硬化工程後の前記発光素子接着用樹脂組成物を加熱して硬化させる第2硬化工程とを備えることを特徴とする発光素子の接着方法。
(6) 支持体上に(1)〜(4)のいずれかに記載の発光素子接着用樹脂組成物を塗布する工程と、300nm〜400nmの波長の光を照射することにより前記発光素子接着用樹脂組成物を硬化させる第1硬化工程と、第1硬化工程後の発光素子接着用樹脂組成物上に発光素子を設置する工程と、第1硬化工程後の前記発光素子接着用樹脂組成物を加熱して硬化させる第2硬化工程とを備えることを特徴とする発光素子の接着方法。
【0011】
(7) (1)〜(4)のいずれかに記載の発光素子接着用樹脂組成物によって、支持体上に発光素子が接着されていることを特徴とするランプ。
(8) (5)に記載の発光素子の接着方法によって、支持体上に発光素子が接着されていることを特徴とするランプ。
【発明の効果】
【0012】
本発明の発光素子接着用樹脂組成物によれば、熱硬化型の接着剤と比較して硬化時間が十分に短いものとなるため、硬化させるための熱処理によってパッケージに歪みが生じにくく、生産性に優れたものとなる。さらに、本発明の発光素子接着用樹脂組成物によれば、十分に高い接着強度が得られ、発光素子を発光させることに起因する光や熱による着色が生じにくいものとなる。
【0013】
また、本発明の発光素子の接着方法によれば、効率よく、高い接着強度で発光素子を接着できる。
また、本発明のランプは、本発明の発光素子接着用樹脂組成物によって、支持体上に発光素子が接着されているので、発光素子を発光させることに起因する光や熱による発光素子接着用樹脂組成物の着色が生じにくく、長期にわたって高い出力を維持できるものとなる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】図1は、本発明のランプの一例を模式的に示した概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の発光素子接着用樹脂組成物、発光素子の接着方法、ランプについて、詳細に説明する。
本実施形態の発光素子接着用樹脂組成物(以下、「樹脂組成物」と略記する。)は、二つ以上のオキセタニル基を含有するシルセスキオキサン樹脂を含む樹脂成分と、カチオン重合開始剤とを含有するものである。
【0016】
「シルセスキオキサン樹脂」
樹脂成分を構成するシルセスキオキサン樹脂としては、二つ以上のオキセタニル基を含有するものが用いられる。具体的には下記一般式(1)で示される籠型の骨格を有するシルセスキオキサン樹脂が挙げられる。
【0017】
【化1】

【0018】
上記一般式(1)において、Rは少なくとも二つ以上が下記一般式(2)で示されるオキセタニル基とされていればよく、Rのうち下記一般式(2)で示されるオキセタニル基であるものが多い程、十分に高い粘度が得られ、塗布した樹脂組成物が必要以上に広がった状態(ブリード)になりにくい樹脂組成物が得られるため好ましく、全てのRが下記一般式(2)で示されるオキセタニル基であることが最も好ましい。なお、Rは1種類でもよいし、2種類以上でも良い。
また、上記一般式(1)に示されるRのうち下記一般式(2)で示されるオキセタニル基でないものがある場合、下記一般式(2)で示されるオキセタニル基でないRとしては、H−、CH−、CHCH−、(CH)CH−、CHCHCH−、CHCH(CH)CH−、CHCHCHCH−、(CH)C−などが挙げられる。
【0019】
【化2】

【0020】
上記一般式(2)において、XはシルセスキオキサンのSi原子と、オキセタニル基との間の有機鎖であり、−(CHO−、−(CH−、−(CHCOO−、(n=1〜6)を表す。
【0021】
なお、シルセスキオキサン樹脂の骨格は、上記一般式(1)で示される籠型の他、下記一般式(3)(4)で示される籠型や、下記一般式(5)で示されるラダー型、下記一般式(6)で示される無定形、下記一般式(7)で示される寵型の一部開裂型のいずれの構造であってもよい。
【0022】
【化3】

【0023】
【化4】

【0024】
【化5】

【0025】
上記一般式(3)から(7)においても、Rは少なくとも二つ以上が上記一般式(2)で示されるオキセタニル基とされていればよく、Rのうち上記一般式(2)で示されるオキセタニル基であるものが多い程、十分に高い粘度が得られ、ブリードが生じにくい樹脂組成物が得られるため好ましく、全てのRが上記一般式(2)で示されるオキセタニル基であることが最も好ましい。なお、Rは1種類でもよいし、2種類以上でも良い。
また、上記一般式(3)から(7)に示されるRのうち上記一般式(2)で示されるオキセタニル基でないものがある場合、下記一般式(2)で示されるオキセタニル基でないRとしては、H−、CH−、CHCH−、(CH)CH−、CHCHCH−、CHCH(CH)CH−、CHCHCHCH−、(CH)C−などが挙げられる。
【0026】
また、シルセスキオキサン樹脂の骨格は、上記の構造うちの1種類の構造であってもよいし、2種類以上の構造が混合されていてもよい。
【0027】
また、樹脂成分中におけるシルセスキオキサン樹脂の含有量は60質量%以上であることが好ましく、90質量%以上であることがより好ましい。シルセスキオキサン樹脂の含有量が60質量%未満であると、耐光性や耐熱性が不十分となる場合がある。また、シルセスキオキサン樹脂の含有量が90質量%未満であると、ブリードが生じやすくなり、支持体上に配置されている電極の上面が樹脂組成物で覆われてしまう恐れがある。支持体に配置されている電極が樹脂組成物で覆われてしまうと、電極と発光素子上に設けられたボンディングパッドとをワイヤで電気的に接続するワイヤボンディング作業に支障を来たす恐れがある。
【0028】
「脂肪族炭化水素」
本実施形態の樹脂組成物を構成する樹脂成分中には、シルセスキオキサン樹脂の他に、脂肪族炭化水素が含まれていてもよい。樹脂成分中に脂肪族炭化水素を含有させることにより、樹脂組成物の硬化を促進させることができ、好ましい。
脂肪族炭化水素としては、一つ以上のエポキシ基を含有するものを用いることが好ましく、シクロヘキセンオキシド基を含み、反応性環状エーテルを二つ以上持つものであることがより好ましい。このような脂肪族炭化水素素を添加することで、樹脂組成物の硬化をより効果的に促進でき、樹脂組成物の硬化時間をより一層短時間とすることができる。
【0029】
反応性環状エーテルとしては、エポキシ基、オキセタニル基などが挙げられる。シクロヘキセンオキシド基を含み、反応性環状エーテルを2つ以上持つ脂肪族炭化水素としては、下記一般式(8)で示される3、4−エポキシシクロへキシルカルボン酸−3,4−エポキシシクロへキシルメチルエステル(商品名:セロキサイド2021P(ダイセル社製))や、下記一般式(9)で示される3、4−エポキシシクロへキサンカルボン酸−3−エチル−3−オキセタニルメチルエステル(昭和電工社製)、下記一般式(10)で示されるアジピン酸−ビス−3、4−エポキシシクロへキシルメチルエステル、下記一般式(11)で示されるジエポキシリモネンなどが挙げられる。
【0030】
【化6】

【0031】
また、シクロヘキセンオキシド基を持たず、反応性環状エーテルを2つ以上持つ脂肪族炭化水素としては、下記一般式(12)で示される1,4−ブタンジオールジグリシジルエーテル、下記一般式(13)で示される1,6−ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、下記一般式(14)で示されるジエチルグリコールジグリシジルエーテルなどが挙げられる。
【0032】
【化7】

【0033】
「カチオン重合開始剤」
カチオン重合開始剤としては、300nm〜400nmの波長の光、より好ましくは350nm〜400nmの波長の光で重合を開始する光重合開始剤が用いられる。上記波長が400nmを超えるものであると、樹脂組成物が着色しやすくなるため好ましくない。また、上記波長が400nmを超えるものである場合、カチオン重合開始剤が発光素子から出射される光を吸収しやすいものとなるため、発光素子の底面から出射された光をカチオン重合開始剤が吸収することによって、発光素子からの光取り出し効率を低下させてしまう恐れがある。また、上記波長が300nm未満であるものである場合、樹脂組成物を硬化させるための光が発光素子に吸収されやすくなるので、樹脂組成物を硬化させるための光が発光素子を透過して発光素子の下に配置されている樹脂組成物にまで到達しにくくなり、樹脂組成物を硬化させにくくなるので、好ましくない。
また、カチオン重合開始剤が350nm〜400nmの波長の光で重合を開始する光重合開始剤である場合、発光素子、樹脂組成物による光の吸収が少ないので、樹脂組成物全体に光が到達して硬化が十分に進み、また350nm〜400nmに強い発光のあるメタルハライドランプや365nmに強い輝線のある水銀ランプを用いることができるためより好ましい。
【0034】
また、300nm〜400nmの波長の光で重合を開始するカチオン重合開始剤としては、PFあるいはSbFを対イオンとするオニウム塩を用いることが好ましい。より具体的には、カチオン重合開始剤として、PFあるいはSbFを対イオンとするオニウム塩である三新化学工業社製のサンエイドSIシリーズや、アデカ社製のアデカオプトマーSPシリーズなどを用いることができる。より具体的には、三新化学工業社製のサンエイドSI−100L、アデカ社製のアデカオプトマーSP150、SP152、SP170、SP172、Dow社製のUVI−6976、サンアプロ社製のCPI―100P、CPI―101Aなどを好ましく用いることができる。
【0035】
また、カチオン重合開始剤のカチオン構造としては、下記一般式(15)に示されるものなどが挙げられる。
下記一般式(15)において、XはPFあるいはSbFであり、Rはそれぞれ同一でも異なっていてもよい水素原子、ハロゲン原子、あるいは酸素原子またはハロゲン原子を含んでもよい炭化水素基、もしくは置換基がついてもよいアルコキシ基、1以上の水素原子が置換されていてもよいフェニル基である。
【0036】
【化8】

【0037】
上記一般式(15)に示されるカチオン構造を有するカチオン重合開始剤としては、アデカ社製のアデカオプトマーSPシリーズなどが挙げられる。より具体的には、上記一般式(15)においてXがPFあるカチオン構造を有するアデカ社製のアデカオプトマーSP150、SP152、上記一般式(15)においてXがSbFあるカチオン構造を有するアデカ社製のアデカオプトマーSP170、SP172などが挙げられる。
【0038】
ここで、カチオン重合開始剤として好適に用いられるアデカ社製のアデカオプトマーSP150、SP152、SP170、SP172の分光感度(mJ/cm)を測定すると、SP172が365nmにおける感度が最も高く、発光素子を透過した光で容易に重合を開始するものであるため、好ましい。
【0039】
さらに、カチオン重合開始剤としては、300nm〜400nmの光で重合を開始するものであって、かつ、熱でも重合を開始するものを用いることが好ましい。この場合、樹脂組成物を硬化させるための光の一部が発光素子に吸収されることなどによって、発光素子の下に配置されている樹脂組成物に到達しにくい場合であっても、樹脂組成物を容易に硬化させることができ、好ましい。
300nm〜400nmの光で重合を開始するものであって、かつ、熱でも重合を開始するカチオン重合開始剤としては、具体的には、PFあるいはSbFを対イオンとするオニウム塩である三新化学工業社製のサンエイドSIシリーズなどを用いることができる。
【0040】
また、樹脂成分100質量%に対して添加されるカチオン重合開始剤の含有量は0.05質量%〜1質量%の範囲であることが好ましい。カチオン重合開始剤の含有量が0.05質量%未満であると、樹脂組成物の硬化が不十分となる恐れがある。また、カチオン重合開始剤の含有量が1質量%を超えると、樹脂組成物が着色しやすくなるため好ましくない。
【0041】
「添加剤」
本実施形態の樹脂組成物中には、上記のものの他、必要に応じて蛍光体、光散乱剤、酸化防止剤、紫外線遮蔽剤、フィラーなどの添加剤を添加できる。
【0042】
本実施形態の樹脂組成物は、上記のシルセスキオキサン樹脂と脂肪族炭化水素とカチオン重合開始剤とを混合し、攪拌脱泡を行うことによって製造できる。樹脂組成物の粘度は、シルセスキオキサン樹脂と脂肪族炭化水素の配合比を変更することにより、容易に調整できる。
【0043】
次に、本発明の発光素子の接着方法の一例として、本実施形態の樹脂組成物を用いて支持体上に発光素子を接着する接着方法について説明する。
本実施形態の樹脂組成物を用いて支持体上に発光素子を接着するには、まず、樹脂組成物をディスペンサから吐出させる方法などを用いて、支持体上に配置された電極上など、支持体上の発光素子が接着されるべき位置に樹脂組成物を塗布する。次いで、樹脂組成物の塗布された支持体上に発光素子を設置する。
【0044】
その後、発光素子を透過させて300nm〜400nmの波長の光を照射することにより樹脂組成物を硬化させる(第1硬化工程)。300nm〜400nmの波長の光の照射には、ブラックライトや、高圧水銀ランプ、メタルハライドランプなどを用いることができる。なお、300nm〜400nmの波長の光として、波長365nmの光を用いる場合には、強い光が得られる高圧水銀ランプやメタルハライドランプを用いることが好ましい。
第1硬化工程においては、0.5〜1000mW/cmの光を用いることができる。また、第1硬化工程においては、上記の光を1〜60秒照射することが好ましい。
【0045】
続いて、第1硬化工程後の樹脂組成物を加熱して硬化させる(第2硬化工程)。
第2硬化工程においては、温度を150〜200℃とすることが好ましい。また、加熱時間は、1〜15分とすることが好ましい。
【0046】
また、本実施形態の樹脂組成物を用いて支持体上に発光素子を接着する方法は、上記の方法に限定されるものではない。例えば、支持体上に樹脂組成物を塗布した後、支持体上に発光素子を設置せずに第1硬化工程を行い、第1硬化工程後の発光素子接着用樹脂組成物上に発光素子を設置し、第2硬化工程を行ってもよい。
この場合、第1硬化工程において樹脂組成物に照射される300nm〜400nmの波長の光を発光素子に透過させる必要がなく、300nm〜400nmの波長の光が、発光素子に妨げられることがなく、樹脂組成物の硬化むらが生じにくく、好ましい。
【0047】
本実施形態の樹脂組成物は、二つ以上のオキセタニル基を含有するシルセスキオキサン樹脂と、カチオン重合開始剤とを含み、カチオン重合開始剤が、300nm〜400nmの波長の光で重合を開始する光重合開始剤であるので、熱硬化型の接着剤と比較して硬化時間が十分に短いものとなり、硬化させるための熱処理によってパッケージ1に歪みが生じにくく、生産性に優れたものなる。さらに、本実施形態の樹脂組成物によれば、高い接着強度が得られるとともに、発光素子を発光させることに起因する光や熱による着色が生じにくいものとなる。
【0048】
また、本実施形態の樹脂組成物を構成する樹脂成分が、シルセスキオキサン樹脂を90質量%以上含む場合、より一層耐光性および耐熱性に優れ、ブリードが生じにくいものとなる。
【0049】
また、本実施形態の発光素子の接着方法は、本実施形態の樹脂組成物を用いて支持体上に発光素子を接着する方法であって、300nm〜400nmの波長の光を照射することにより樹脂組成物を硬化させる第1硬化工程と、第1硬化工程後の樹脂組成物を加熱して硬化させる第2硬化工程とを備えているので、効率よく、高い接着強度で発光素子を接着できる。
【0050】
(ランプ)
本発明のランプは、本発明の樹脂組成物によって、支持体上に発光素子が接着されているものである。
図1は、本発明のランプの一例を模式的に示した概略図であり、図1(a)は断面図であり、図1(b)は平面図である。図1(a)において、符号1はパッケージを示している。このパッケージ1は、図1(a)および図1(b)に示すように、基板2(支持体)と、基板2上に配置された第1電極3aおよび第2電極3bと、封止部4aと、パッケージ成型体4とを備えている。
【0051】
パッケージ成型体4としては、例えば、ポリフタルアミドやポリフェニレンスルフィドなどからなる白色の耐熱性樹脂からなるものなどが用いられる。また、封止部4aは、図1(a)および図1(b)に示すように、平面視円形のすり鉢状(カップ状)の形状とされており、封止部4aの底部には、図1(b)に示すように、基板2の帯状の絶縁領域9によって電気的に絶縁された第1電極3aおよび第2電極3bが露出されている。第1電極3aおよび第2電極3bとしては、例えば、CuやCu系合金、Fe系合金、Niなどの素地金属上に、AuやAgなどの貴金属メッキを施したものなどを好適に用いることができる。
【0052】
また、LED素子5としては、サファイヤなどからなる基板上に窒化ガリウム系半導体層が形成されてなる青色発光または緑色発光するものなどが用いられる。本実施形態においては、図1(a)および図1(b)に示すように、本発明の樹脂組成物6によって、封止部4aの底部に露出された第2電極3bと、表面実装型のLED素子5(発光素子)を構成する基板の裏面とが接着されることにより、基板2上にLED素子5が固定されている。また、LED素子5の上面には、図1(b)に示すように、Au、Al、Ni、Cuなどからなる陽極ボンディングパッド5aおよび陰極ボンディングパッド5bが設けられており、それぞれAuやAlなどからなるワイヤー7、7を介して第1電極3aおよび第2電極3bと電気的に接続されている。また、図1(a)に示すように、封止部4aの内部に封止用樹脂組成物8が充填されることにより、LED素子5が封止されている。
【0053】
図1に示すランプは、本発明の樹脂組成物6によって、基板2上にLED素子5が接着されているものであるので、LED素子5を発光させることに起因する光や熱による樹脂組成物6の着色が生じにくく、長期にわたって高い出力を維持できるものとなる。
また、図1に示すランプは、本発明の樹脂組成物6によって、基板2上にLED素子5が接着されているものであるので、LED素子5を短時間で効率よく基板2上に接着することができ、生産性に優れたものとなる。
【0054】
「実施例1〜実施例7、比較例1〜比較例3」
表1および以下に示す成分を、表1に示す成分比(A:シルセスキオキサン樹脂(比較例1〜比較例3においては樹脂)、B:脂肪族炭化水素、C:カチオン重合開始剤)で混合し、真空攪拌脱泡機を用いて減圧下で攪拌脱泡を行い、実施例1〜実施例7、比較例1〜比較例3の樹脂組成物を調製した。
【0055】
【表1】

【0056】
なお、表1において、OX−SQは、東亜合成社製のオキセタニルシルセスキオキサンの商品名であり、上記一般式(1)で示される構造を有し、上記一般式(1)における全てのRが上記一般式(2)で示されるオキセタニル基であり、上記一般式(2)におけるXが−(CHO−であるものである。
また、表1において、OX−SQHは、東亜合成社製のオキセタニルシルセスキオキサンの商品名であり、上記一般式(1)で示される構造を有し、上記一般式(1)におけるRのうち1つがHであり、他のRが上記一般式(2)で示されるオキセタニル基であり、上記一般式(2)におけるXが−(CHO−であるものである。
【0057】
また、表1において、Ce(セロキサイド)2021Pは、ダイセル社製の脂環式エポキシの商品名であり、上記一般式(8)で示される3、4−エポキシシクロへキシルカルボン酸−3,4−エポキシシクロへキシルメチルエステルである。
また、SP172、SP170は、アデカ社製のアデカオプトマーSPシリーズの商品名であり、SI−100Lは、三新化学工業社製のサンエイドSIシリーズの商品名である。
【0058】
また、表1において、エポキシ樹脂は、日本エイブルスティック社製のDX−10(商品名)であり、シリコーン樹脂は、信越化学社製のKER3000M2(商品名)であり、光硬化性エポキシ樹脂は、アデカ社製のアデカオプトマーKRX400−125(商品名)である。
【0059】
このようにして得られた実施例1〜実施例7、比較例3の樹脂組成物を用いて、以下に示すようにLED素子を接着して、図1に示すランプを得た。
まず、図1に示すパッケージ成型体4の封止部4aの底部に露出された第2電極3b上に、ディスペンサから実施例1〜実施例7、比較例3の樹脂組成物6の液滴を吐出させて塗布した。
【0060】
その後、塗布された樹脂組成物6上に発光素子を設置し、以下に示す方法により表1に示す硬化条件で樹脂組成物6を硬化させることにより、封止部4aの底部に表面実装型のLED素子5を接着した。
まず、高圧水銀ランプを用いて、表1に示す光照射条件で365nmの波長の光を発光素子に透過させて照射することにより樹脂組成物を硬化させた(第1硬化工程)。続いて、第1硬化工程後の樹脂組成物を、表1に示す熱処理条件で加熱して硬化させた(第2硬化工程)。
【0061】
次いで、ワイヤーボンディングを行うことにより、LED素子5の陽極ボンディングパッド5aおよび陰極ボンディングパッド5bと第1電極3aおよび第2電極3bとを、ワイヤー7、7を介して電気的に接続した。その後、封止部4aの内部に、封止用樹脂組成物8を充填して硬化させて、封止を完了し、図1に示すランプを得た。
【0062】
なお、実施例1〜実施例7、比較例3のランプにおいては、LED素子5として、サファイヤ基板上に窒化ガリウム系半導体層が形成されてなる青色発光するものを用い、パッケージ成型体4として、ポリフタルアミドからなるものを用い、第1電極3aおよび第2電極3bとして、AgメッキされたCuからなるものを用い、ワイヤー7、7として、Auからなるものを用いた。
【0063】
また、上記のようにして得られた比較例1または比較例2の樹脂組成物を用い、実施例1における第1硬化工程を行わず、表1に示す硬化条件(熱処理条件)で樹脂組成物6を硬化させたこと以外は、実施例1と同様にして、図1に示すランプを得た。
【0064】
このようにして得られた実施例1〜実施例7、比較例1〜比較例3のランプについて、以下に示す各項目について調べ、以下に示すように評価した。その結果を表1に示す。
「接着強度」
ダイシェア強度測定装置(デイジ社製)により、接触工具によって半導体チップに横方向に力を加え、基板から半導体素子が剥がれる時の強度を測定した。
「発光出力」
得られたランプに20mA通電し、積分球付LED分光測定装置(西進商事社製)で出力を測定した。
「出力維持率」
得られたランプに85℃環境下で1,000時間20mAの通電試験を行い、試験前後での出力を比較した。
「ブリード」
半導体素子を接着、硬化後に、目視で接着剤の基板上への広がりを確認した。
【0065】
表1に示すように、実施例1〜実施例7のランプでは、樹脂組成物として熱硬化型の接着剤を用いた比較例1および比較例2のランプと比較して硬化時間が短時間であった。
また、実施例1〜実施例7のランプでは、樹脂組成物としてシリコーン樹脂を用いた比較例2のランプと比較して、高い接着強度が得られた。
【0066】
また、実施例1、2、4のランプは、比較例1〜比較例3のランプと比較して出力維持率が高く、長期にわたって高い出力を維持できることが確認できた。これは、実施例1〜実施例7のランプでは、比較例1〜比較例3のランプと比較して、LED素子を発光させることに起因する光や熱による着色が生じにくいためであると推定される。
【0067】
また、シルセスキオキサン樹脂として、上記一般式(1)で示される構造を有し、上記一般式(1)における全てのRが上記一般式(2)で示されるオキセタニル基であるものを用い、樹脂成分(Aシルセスキオキサン樹脂+B脂肪族炭化水素)が、シルセスキオキサン樹脂を90質量%以上含む実施例1〜実施例4では、ブリードが生じなかった。
これに対し、実施例1〜実施例4と同じシルセスキオキサン樹脂を含むが、樹脂成分がシルセスキオキサン樹脂を60質量%含むものである実施例5や、シルセスキオキサン樹脂として、上記一般式(1)で示される構造を有し、上記一般式(1)におけるRのうち1つがHであり、他のRが上記一般式(2)で示されるオキセタニル基であるものを用いた実施例6および実施例7では、ブリードが生じた。
【符号の説明】
【0068】
1…パッケージ、2…基板(支持体)、3a…第1電極、3b…第2電極、4…パッケージ成型体、4a…封止部、5…LED素子、6…樹脂組成物、7…ワイヤー、8…封止用樹脂組成物。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
二つ以上のオキセタニル基を含有するシルセスキオキサン樹脂を含む樹脂成分と、カチオン重合開始剤とを含み、
前記カチオン重合開始剤が、300nm〜400nmの波長の光で重合を開始する光重合開始剤であることを特徴とする発光素子接着用樹脂組成物。
【請求項2】
前記カチオン重合開始剤が、350nm〜400nmの波長の光で重合を開始する光重合開始剤であることを特徴とする請求項1に記載の発光素子接着用樹脂組成物。
【請求項3】
前記樹脂成分が、一つ以上のエポキシ基を含有する脂肪族炭化水素を含有するものであることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の発光素子接着用樹脂組成物。
【請求項4】
前記樹脂成分が、前記シルセスキオキサン樹脂を90質量%以上含むことを特徴とする請求項1〜請求項3のいずれかに記載の発光素子接着用樹脂組成物。
【請求項5】
請求項1〜請求項4のいずれかに記載の発光素子接着用樹脂組成物の塗布された支持体上に発光素子を設置する工程と、
前記発光素子を透過させて300nm〜400nmの波長の光を照射することにより前記発光素子接着用樹脂組成物を硬化させる第1硬化工程と、
第1硬化工程後の前記発光素子接着用樹脂組成物を加熱して硬化させる第2硬化工程とを備えることを特徴とする発光素子の接着方法。
【請求項6】
支持体上に請求項1〜請求項4のいずれかに記載の発光素子接着用樹脂組成物を塗布する工程と、
300nm〜400nmの波長の光を照射することにより前記発光素子接着用樹脂組成物を硬化させる第1硬化工程と、
第1硬化工程後の発光素子接着用樹脂組成物上に発光素子を設置する工程と、
第1硬化工程後の前記発光素子接着用樹脂組成物を加熱して硬化させる第2硬化工程とを備えることを特徴とする発光素子の接着方法。
【請求項7】
請求項1〜請求項4のいずれかに記載の発光素子接着用樹脂組成物によって、支持体上に発光素子が接着されていることを特徴とするランプ。
【請求項8】
請求項5に記載の発光素子の接着方法によって、支持体上に発光素子が接着されていることを特徴とするランプ。

【図1】
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【公開番号】特開2010−180384(P2010−180384A)
【公開日】平成22年8月19日(2010.8.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−27827(P2009−27827)
【出願日】平成21年2月9日(2009.2.9)
【出願人】(000002004)昭和電工株式会社 (3,251)
【Fターム(参考)】