説明

発光素子

【課題】
高い発光効率が得られ、寿命の長い発光素子を提供すること。
【解決手段】
発光層と該発光層を介して、互いに対向する陽極と陰極とから構成される発光素子であって、該発光層が、数平均粒径が0.3nmから100.0nmである複数の無機結晶粒子を含有し、かつ、前記複数の無機結晶粒子の少なくとも一つに発光中心剤が付活されていることを特徴とする発光素子。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発光素子に関するものである。特に、ガラスやプラスチック等の安価な基板を用い、大面積化が容易で、かつ直流低電圧で発光するために発光効率が良好で、無機材料で構成されるために耐久性に優れる発光素子に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、液晶ディスプレイに代表されるフラットパネルディスプレイの大面積化に対応可能な面光源として、有機EL、無機ELといったエレクトロルミネッサンス(以下、EL)を利用した発光体に期待が集まっている。有機ELは、有機発光層を正孔注入層、電子注入層で挟んだ構造をガラス基板もしくはプラスチック基板上に形成し、直流、低電圧を印加する。直流により電子、正孔を注入され、これらが発光層内で再結合して発光する。有機EL素子は、直流、低電圧で発光するため、50lm/W以上の高効率が得られている。また、大面積化が可能な蒸着法や塗布で有機材料をガラス基板上に製膜すれば発光することから大面積化が容易である。しかし、有機材料であるために寿命が短く、用途が限定されている。
【0003】
無機ELは、半導体中に希土類などの発光中心剤を含ませた発光層を絶縁体の層で挟んだ構造を安価なガラス基板上に形成し、交流の高電圧を印加する。高電界下で半導体の電子が高速に加速されて発光中心剤に衝突して基底状態の電子を励起状態にし、励起状態から電子が基底状態に戻るときに発光する。ガラス基板を用い、多結晶の層を形成すれば発光することから大面積化は容易である。しかし数百Vという高い電圧を必要とするために発光効率が非常に低く、大きな電源を必要として簡易性に欠けると言う課題が有る。以上のように、従来の有機EL,無機EL素子では、発光効率や輝度、寿命といった点で、発光体としての性能が不十分であった。
【0004】
これに対し、無機ELの発光輝度と寿命を向上させ、低電圧で駆動させる方法として、活性化された硫化亜鉛ZnS:Cu、Cl発光体を、Mn存在下で加熱反応させ、ヒ化ガリウムGaAsを有する発光体を製造する製造方法(特許文献1)や、希土類硫化物にpr、Mn、及びAuを添加したものを母体材料とする発光体(特許文献2)が提案されている。また、発光効率を向上させる方法として、p型有機半導体粒子とn型有機半導体粒子とが均一に混合されている有機半導体層を用いた光電変換素子が提案(特許文献3)されている。
【特許文献1】特開2005−336275号公報
【特許文献2】特開2006−199794号公報
【特許文献3】特開2003−332600号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1、2に記載の方法では、交流の高電圧を印加する必要があるため効率の向上が望めず、簡易性に欠けるという課題が有る。また、絶縁破壊を起こしやすいために発光の寿命が非常に短い、と言う課題が有る。また、特許文献3に記載の方法では、発光効率のばらつきが大きく、寿命が短いという課題がある。以上より、本発明は、高い発光効率が得られ、寿命の長い発光素子を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、無機材料粒子の粒径を特定し、発光中心剤を添加することで上記課題を解決した。すなわち本発明は、
(1)発光層と該発光層を介して、互いに対向する陽極と陰極とから構成される発光素子であって、該発光層が、数平均粒径が0.3nmから100.0nmである複数の無機結晶粒子を含有し、かつ、前記複数の無機結晶粒子の少なくとも一つに発光中心剤が付活されていることを特徴とする発光素子、
(2)前記無機結晶粒子が、p型無機半導体粒子および/またはn型無機半導体粒子であることを特徴とする(1)に記載の発光素子、
(3)前記無機結晶粒子が、周期表第13族元素と周期表第15族元素との化合物を含有する粒子および/または周期表第12族元素と周期表第16族元素との化合物を含有する粒子であることを特徴とする(1)に記載の発光素子、
(4)前記発光中心剤が、少なくとも、テルビウム、ユーロピウム、セリウム、マンガン、銅、アルミニウム、銀のいずれか一つを含有することを特徴とする(1)から(3)のいずれかに記載の発光素子、
【0007】
(5)発光中心剤と、周期表第13族元素と周期表第15族元素との化合物と、周期表第12族元素と周期表第16族元素との化合物とを含有する溶液を、第一の電極上に塗布した後、加熱することにより、発光層を形成する工程と、前記発光層上に、第一の電極とは異なる極性を有する第二の電極を形成する工程とから構成される発光素子の製造方法であって、前記第一の電極または前記第二の電極のいずれか一方が透明電極であることを特徴とする(4)に記載の発光素子の製造方法、
に関する。
【発明の効果】
【0008】
本発明の発光素子は、発光中心剤が付活された無機結晶ナノ粒子を用いており、直流低電圧で駆動できるために発光効率に優れるという効果がある。さらに、粒径が小さく、絶縁破壊を起こしにくいため寿命が長く、全て無機材料から構成できるために耐久性に優れるという効果がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、本発明を実施することのできる形態について詳細に説明する。本発明の発光素子は、発光層と該発光層を介して、互いに対向する陽極と陰極とから構成される発光素子であって、該発光層が、数平均粒径が0.3nmから100.0nmでである複数の無機結晶粒子を含有し、かつ、前記複数の無機結晶粒子の少なくとも一つに発光中心剤が付活されていることを特徴とする発光素子である。また、本発明における発光素子においては、発光は電子と正孔を局在化させる発光中心剤にて起きる。
【0010】
[無機結晶粒子]
(粒径)
本発明で用いる、無機結晶粒子は、発光性能の観点から、数平均粒径が、0.3nmから100.0nmであることを特徴としている。より好ましい数平均粒径は0.3nm〜20.0nm、さらに好ましい数平均粒径は2.0nm〜10.0nmである。粒子の粒径が0.3nm未満の場合、結晶が小さすぎるために独立した結晶としての機能を発現せず、100.0nmより大きいとキャリアが粒子界面を流れる方が支配的となり発光の効率が低下する。
【0011】
無機半導体粒子の数平均粒径は、通常透過型電子顕微鏡による観察で測定するが、半導体結晶に含有される元素の原子番号が小さいために電子線によるコントラストが得にくい場合には、原子間力顕微鏡(AFM)による観察なども組み合わせて測定する。なお、数平均粒径の算出するには、200個程度の粒子の粒径を上記方法で測定し、それらの平均値を計算すればよい。半導体結晶粒子の粒径分布は特に限定されないが、発光波長幅を狭くしたい場合には、標準偏差として±40%以内、好ましくは±30%以内、更に好ましくは±20%以内である。
本発明で規定される数平均粒径を有する無機半導体粒子を用いることで、直流の電圧を印加しても、電子や正孔という電流を担うキャリアが粒子界面を流れることなくなり、無機半導体粒子間を電子がホッピングすることにより伝導が起きる。また、電子や正孔というキャリアが、付活された発光中心剤に局在化されて電子と正孔の再結合が起きやすくなるために効率の良い発光が得られる。
【0012】
(p型無機半導体粒子、n型無機半導体粒子)
本発明における無機結晶粒子は、p型無機半導体粒子および/またはn型半導体粒子であることが好ましい。また、発光層内には、複数の無機結晶粒子が存在し、各々がp型無機半導体粒子またはn型半導体粒子となっている。発光層全体では、発光層内に、少なくとも、p型無機半導体粒子またはn型半導体粒子のいずれか一方が含まれていればよく、p型無機半導体粒子とn型半導体粒子の両方が含まれていてもよい。特に、p型無機半導体粒子とn型無機半導体粒子の両方を含有する発光層は、キャリア移動の円滑性が向上するため好ましい。
【0013】
本発明における発光素子においては、発光層がp型無機半導体粒子、n型無機半導体粒子のどちらか一方で構成される場合にも、p型無機半導体粒子とn型無機半導体粒子の両方で構成される場合にも、p型無機半導体粒子、n型の無機半導体を構成する無機化合物は特に限定されず、各々独立に選択され、通常の半導体ドーピングの考え方に従って形成することができる。
発光層が、p型無機半導体粒子、n型無機半導体粒子の両方で構成される場合には、2種類以上の無機化合物の構成元素を相互に拡散させることにより、該無機化合物の一方を、p型半導体にし、(以下、p型化とも言う)、他方をn型半導体にする(以下、n型化とも言う)ことによって、p型無機半導体粒子およびn型無機半導体粒子生成させることが有効である。さらに、キャリア濃度が類似したドーピングが一度にできるので好ましい。また、p型無機半導体粒子およびn型無機半導体粒子生成に用いることのできる無機化合物としては、例えば、一元系無機化合物や、二元系、三元系等の多元系無機化合物を用いることができる。
【0014】
ここで、p型化、n型化の一例として、2種類の二元系無機化合物を用いた場合について説明する。例えば、ZnOとGaNという2種類の二元系無機化合物を用いた場合、GaNの構成元素であるGaを、ZnOに拡散させることでZnOがn型化し、ZnOの構成元素であるZnをGaNに拡散させることによってGaNがp型化する。これにより、ZnOにGaがドープされたn型半導体粒子と、GaNにZnがドープされたp型半導体粒子を生成することができる。また、同じ化合物を用いた場合でもGaNの構成元素であるNを、ZnOに拡散させることでZnOがp型化し、ZnOの構成元素であるOをGaNに拡散させることによってGaNがp型化する。これにより、ZnOにNがドープされたp型半導体粒子と、GaNにOがドープされたp型半導体粒子を生成することができる。
【0015】
また、本発明において、2種類以上の無機化合物の構成元素を相互に拡散させる方法をいくつか例示することができる。例えば、発光層を形成する2種以上の無機化合物粒子の分散液を作製し、それを電極が形成された基板上に塗布した後、所定の雰囲気中、例えば、Ar、Xe、Ne、窒素等の不活性ガス中で熱処理を行えばよい。なお、本発明において、加熱処理時に用いられるものは、上記不活性ガスに限られるものではなく、使用する無機材料に応じて、酸素や硫黄、硫化水素等を用いることもできる。別な方法として、例えば、発光層を電子線蒸着で形成する場合、双方の半導体を所定量で混合した蒸着源を用いる、もしくは別々の蒸着源に独立に電子線を照射して蒸着する方法で、基板温度を互いに拡散する温度にしながら蒸着する方法も挙げられる。
【0016】
(無機化合物)
本発明の無機結晶粒子に用いることのできる無機化合物は、p型化、n型化するものであれば特に限定されるものではない。これらの無機化合物としては、例えば一元系無機化合物や、二元系、三元系等の多元系無機化合物を用いることができる。
本発明における無機結晶粒子は、周期表第13族元素と周期表第15族元素との化合物(以下、III−V族化合物とも言う)を含有する粒子および/または周期表第12族元素と周期表第16族元素との化合物(以下、II−VI族化合物とも言う)を含有する粒子であることが好ましい。また、発光層内には、複数の無機結晶粒子が存在し、各々の無機結晶粒子がIII−V族化合物またはII−VI族化合物を含有している。発光層全体では、少なくとも、III−V族化合物またはII−VI族化合物のいずれか一方を含んでいればよく、III−V族化合物とII−VI族化合物の両方を含んでいてもよい。
【0017】
(互いにp型化、n型化する無機化合物)
本発明では、互いにp型化、n型化する無機化合物を用いることが好ましい。特に、III−V族化合物とII−VI族化合物の組み合わせは、容易にp型化、n型化する傾向があるため好ましい。具体的には、III−V族化合物にII族(周期表第12族元素)が拡散してIII−V族化合物がp型化し、II−VI族化合物にIII族(周期表第13族元素)が拡散してII−VI族化合物がn型化する。このように、互いにp型化、n型化する無機化合物の組み合わせとしては、他に、III−V族化合物とIV族(周期表第16族)単体および化合物の組み合わせが挙げられる。また、上記例では、2種類の二元系無機化合物の組み合わせや、二元系無機化合物と一元系無機化合物の組み合わせの場合を挙げているが、本発明で用いることのできるp型化、n型化する無機化合物の種類や組み合わせは、これに限定されるものではない。例えば、2種類の三元系無機化合物の組み合わせや、二元系無機化合物と三元系無機化合物の組み合わせ等も用いることができる。
【0018】
(p型化する無機化合物)
p型化する無機化合物としては、NiO、CuAlO、CuAlO、ZnRh、CuS、SrCu、LaCuOS、ZnMgO、Si、Ge、ZnSe、ZnTe、CdSe、CdTe、CuInS、CuInTe、CuAlSe、CuGaSe、CuInSe、GaAs、InAs、AlSb、GaSb、InSb等を挙げることができ、CuAlO、ZnTe、CdSe、CdTe、CuInS、CuGaSe、GaAs、InAs、AlSb、GaSb、InSb、Si、Geが特に好ましい。
【0019】
(n型化する無機化合物)
n型化する無機化合物としては、ZnO、GaN、ZnSe、ZnS、SnO、ZnSe、ZnTe、CdS、CdSe、CdTe、CuInS、CuInSe、CuInSe、CuGaSe、CuInTe、SrS,BaAl、CaGa、BaMgAl、CaAl等のIIa−IIIb2−S4で構成される材料、ZnMgS、CaS、SrGa、MgGa2、BaZnS等を挙げることができる。この中でも発光中心が付活されて発光しやすいと言う観点で、ZnS、SrS,BaAl、CaGa、BaMgAl、CaAl等のIIa−IIIb2−S4で構成される材料、ZnMgS、CaS、SrGa、MgGa2、BaZnSが特に好ましい。
【0020】
(無機半導体粒子の構造)
本発明における無機半導体粒子の構造として、粒子間をキャリアが流れることを抑制してキャリア輸送性を高めるために内殻(コア)と外殻(シェル)からなる所謂コア−シェル構造とすることも好ましく用いられる。内核(コア)と外殻(シェル)からなるいわゆるコア−シェル構造とすると、コアを成す半導体結晶の量子効果による発光能も改良される場合があり好適である。コア−シェル構造の場合、コアを形成する半導体結晶構造よりもバンドギャップエネルギーの大きな半導体結晶構造をシェルとして起用することにより、コア形成する半導体結晶界面を流れる電流を抑制でき、また発光効率を減衰させる表面準位や結晶格子欠陥準位等を経由するエネルギー損失を防ぐことが可能である。
【0021】
このようなコア−シェル構造におけるシェルに好適に用いられる半導体結晶としては、通常、温度300Kのバルク状態におけるバンドギャップが、2.0eV以上、好ましくは、2.3eV以上、さらに好ましくは2.5eV以上であるものが挙げられる。なお、バンドギャップはコアを形成する半導体結晶のバンドギャップエネルギーとの関係で決まるものである。
具体的には、例えば、周期表第13族元素と周期表第15族元素との化合物(III−V族化合物);周期表第12族元素と周期表第16族元素との化合物(II−VI族化合物);周期表第2族元素と周期表第16族元素との化合物等が好適に用いられる。これらの中、好ましいシェルとなる半導体結晶組成は、BN、BAs、GaN等のIII−V族化合物;ZnO、ZnS、ZnSe、CdS等のII−VI族化合物;MgS、MgSe等の周期表第2族元素と周期表第16族元素との化合物等が挙げられる。また、最も好ましいのは、BN、BAs、GaN、ZnO、ZnS、ZnSe、MgS、MgSe等である。 また、上述した二元系無機化合物のほか、一元系無機化合物や、三元系等の多元系無機化合物を用いることもできる。なお、コアに用いられる半導体結晶としては、上記シェルに用いられる半導体結晶と好適にコアーシェルを形成できるものであればよい。
【0022】
[発光層]
(発光層内での分散状態)
本発明では、発光層内でp型半導体粒子および/またはn型無機半導体粒子が均一に分散していることが好ましい。均一に分散しているとは、p型無機半導体粒子および/またはn型無機半導体粒子が発光層内で均一に分布しており、特定の積層構造をもたないことを言う。特に発光層がp型無機半導体粒子、n型無機半導体粒子の両方で構成される場合、均一に分散することにより、二つの化合物材料の接点をより多くできて好ましい。p型無機半導体粒子とn型無機半導体粒子の混合比は必ずしも限定されないが、片方が少なすぎると両方が入っている効果が発現しない。そのため、p型無機半導体粒子とn型無機半導体粒子の比率は、モル比で好ましくは8:2〜2:8の範囲であり、より好ましくは7:3〜3:7の範囲であり、さらに好ましくは6:4〜4:6の範囲である。但し、無機材料においては正孔の移動度が小さいため、p型無機半導体粒子を多めに用いるのが好ましい場合が多い。
【0023】
また、p型無機半導体粒子および/またはn型無機半導体粒子が発光層内で均一に分布する発光層では、該p型無機半導体粒子および/またはn型無機半導体粒子を構成する無機化合物、例えば、III−V族化合物および/またはII−VI族化合物が均一に分散していることとなる。従って、p型無機半導体粒子とn型無機半導体粒子の混合比の制御は、該p型無機半導体粒子および/またはn型無機半導体粒子を構成する無機化合物、例えば、III−V族化合物および/またはII−VI族化合物の混合比を調整することによって、達成することができる。また、上述した二元系無機化合物以外に、一元系無機化合物や、三元系等の多元系無機化合物を用いる場合も、同様に、一元系無機化合物あるいは多元系無機化合物の混合比を調整することによって、p型無機半導体粒子とn型無機半導体粒子の混合比を調整することができる。
【0024】
(膜厚)
本発明における発光素子の発光層の膜厚は特に限定されるものではないが、好ましくは100.0nm〜10μmの範囲であり、より好ましくは200nm〜5μmの範囲である。100.0nmよりも薄いと発光量が不十分となり、10μmよりも厚いと印加すべき電圧が高くなり過ぎる、そのために絶縁破壊がおきやすくなる等の問題が生じる。
【0025】
[発光中心剤]
本発明における発光中心剤は、発光層内に存在する複数の無機結晶粒子のすくなくとも一つに付活されていればよい。また、p型無機半導体粒子とn型無機半導体粒子の少なくとも一方に付活されていれば良く、両方に付活されていても構わない。なお、発光層内の、すべてのp型(またはn型)無機半導体粒子に発光中心剤が付活されていることは、必ずしも必要でない。すなわち、発光層内で、発光中心剤が付活されているp型半導体粒子および/またはn型半導体粒子と、発光中心剤が付活されていないp型半導体粒子および/またはn型半導体粒子とが混在する場合も本発明に含まれる。
【0026】
また、p型無機半導体粒子とn型無機半導体粒子を構成する無機化合物を用いる場合も同様に考えることができる。例えば、III−V族化合物とII−VI族化合物の少なくとも一方に発光中心剤が付活されていればよく、両方に付活されていても構わない。上述した二元系無機化合物以外に、一元系無機化合物、三元系等の多元系無機化合物を用いる場合も、同様に考えることができる。例えば、2種類の三元系無機化合物を用いる場合は、三元系無機化合物の少なくとも一方に発光中心剤が付活されていればよい。
本発明に用いられる発光中心剤としては、電子と正孔を引き付けて再結合確率を向上させる元素であれば特に限定されないが、例えば、テルビウム、ユーロピウム、セリウム、プラセオジウム等の希土類元素、マンガン、銅、アルミニウム、銀、等を用いることが出来る。この中でも、発光中心としての実績が高いテルビウム、ユーロピウム、セリウム、プラセオジウム等の希土類元素、マンガン、銅等が特に好ましく用いられる。
【0027】
これら発光中心剤は、得ようとする発光波長により、無機半導体粒子との最適な組み合わせを考慮して決定される。電子及び正孔のキャリア輸送を有効に行わせるためには、例えば発光中心剤がTbである場合、Tbの励起状態である5d軌道と基底状態である4f軌道が母材の価電子帯上端と伝導体下端の間に存在するように選択される。このような選択を行うことによって、陰極側から注入された電子が無機半導体粒子の伝導体に移動し、次に発光中心剤の励起準位へ移動、さらに発光中心剤の基底準位に遷移する際に発光が得られる。発光中心剤の基底準位に遷移した電子は、無機半導体粒子の価電子帯に移動して電流が流れる。
【0028】
無機化合物に発光中心剤を付活させる方法としては、例えば、予め、発光層を形成する材料である無機化合物に発光中心が付活された粒子を形成し、それを塗布して発光層を形成する場合には、発光層を形成する材料である無機化合物と、発光中心剤とが溶解した溶液を作成し、それらを混合して異なる溶媒を入れて溶液から無機物を析出する際に発光中心を無機化合物に付活させる方法等があげられる。この場合には、発光中心が付活された微粒子塗布の後工程において加熱処理を加えることにより、さらに付活性が向上するので好ましい。また、発光層を形成する場合には、無機化合物に必要な濃度の発光中心剤を添加した蒸着元もしくはスパッタターゲットを用いて製膜を行う、もしくは基板を所定温度に加熱しながらそれぞれを別なソースとして共蒸着、共スパッタを行う方法等を挙げる事ができる。この場合も、製膜後に加熱処理を加えることで発光中心の付活性を高めることができて好ましい。
【0029】
また、発光中心剤が無機半導体粒子に付活される濃度は特に限定されないが、好ましくは無機半導体粒子材に対して0.001〜5mol%の範囲であり、より好ましくは0.005〜3mol%の範囲である。0.001%より少ないと発光量が不十分となり、5mol%より多いと無機半導体粒子と固溶化して別な化合物を形成する、発光した光を自身が吸収してしまい発光の取り出し量が減少する等が起きる。
発光中心剤は、発光層内に存在する複数の無機結晶粒子の少なくとも一つに付活されていればよいが、上記濃度範囲で発光中心剤を付活させることにより、好ましい数の発光中心剤を付活させることができる。
【0030】
発光中心剤は、少なくとも1種類入っていることが必要である。発光波長は、無機材料と発光中心剤の組み合わせによって決まる。そのため、例えば青色の発光を得たい場合にはそのための無機材料と発光中心剤が選択される。例えば、青色を得ようとする場合にはSrS;Ce、SrS;Cu、ZnS;Tm、CaGa;Ce、BaAl;Eu、BaMgAlO17;Eu、BaMgSi;Eu等が、緑色を得ようとする場合にはSrGa;Eu、ZnS;Cu,Al、ZnS;Tb、ZnGa;Mn等が、赤色を得ようとする場合にはZnS;Eu、CaS;Eu、YOS;Eu、LaS;Eu、CaAlSiN;Eu、CaAlSiN;Eu等が挙げられる。発光層を形成する無機材料がナノ粒子である場合には、量子効果により無機材料のバンドギャップが広がるため、例えば上記で緑色発光を示す組み合わせでも青に近い発光を取得できたり、赤色発光を示す組み合わせでも緑色に近い発光を取得できることもある。また、白色を得ようとする場合には、青と緑、または青、緑、赤等の発光を示す複数の発光中心剤が付活されることも好ましく行われる。
【0031】
[基板]
本発明における発光素子に用いられる基板の種類は特に限定されない。サファイア、MgO、SiC、Si、GaAs等の単結晶基板でも良く、ガラスやポリエチレンテレフタレート、ポリエチレン、ポリプロピレン、等のプラスチック基板でも良い。発光層で生じた光を基板を通して取り出そうとする場合には、基板は透明である必要がある。不透明な基板を用いる場合には、上部の電極を透明とする。基板の中でも、安価で透明であるために自由度が広がると言う点で、ガラス、プラスチックが好ましい。
【0032】
[電極]
本発明における発光素子では、発光素子に電圧を印加するために発光層の両側に電極を配する必要がある。用いられる電極の種類は特に限定されず、ITO、ZnO、SnO等の透明電極、Au、Ag、Ni、Cu、Ti、Mg、Cu、pt、Ca等の金属電極、あるいはそれらの合金であるマグネシウム−銀合金、マグネシウム−インジウム合金、アルミニウム−リチウム合金、C12A7などの複合化合物電極を用いることができる。ここで、C12A7とは、12CaO・7Alで表されるカルシアアルミナ化合物で、籠状構造を有する酸化物材料である。籠状構造の中に、OH、O、H、e等を含む場合があるが、それら全てを表す。また、発光層で生じた発光を外部に取り出すために少なくとも一方の電極が透明であることが必要である。
【0033】
発光素子中の電子や正孔のキャリア輸送を有効に起こさせるためには、例えば陽極側の電極は仕事関数が大きな材料が好ましく、陰極側の電極には仕事関数の小さな材料が好ましい。それにより、陰極側において電極から発光層の伝導体への電子移動が、陽極側においては発光層の価電子帯から電極への電子移動が有効に行われる。低仕事関数金属からなる陰極を保護するために、陰極上に仕事関数が高く、安定な金属を積層することにより、素子の安定性を高めることが出来る。このような金属としては、例えば、銀、銅、ニッケル、クロム、金、白金等が挙げられる。
電極の膜厚は特に限定されないが、薄すぎると伝導性が確保されない。また、必要以上に厚過ぎると形成時間が長くなりすぎる。そのため、好ましくは10nm〜1μmの範囲であり、より好ましくは30nm〜0.5μmの範囲である。
【0034】
[キャリア輸送層]
本発明における発光素子では、本発明の発光素子においては発光層と電極の間にキャリア輸送層を形成することが好ましい。キャリア輸送層とは、陽極と発光層の間の陽極側キャリア輸送層、発光層と陽極の陰極側キャリア輸送層であり、電子や正孔のキャリア輸送の効率を高める役割をする。キャリア輸送層が存在することにより、発光層と電極が直接接続されるのではなく、伝導体である電極と半導体である発光層の間の電子やり取りを円滑にすることができる。
【0035】
用いる電極と発光層の種類により、陰極と発光層の間にのみキャリア輸送層を形成しても良く、また陽極と発光層の間にのみキャリア輸送層を形成しても良く、また両方のキャリア輸送層を形成しても良い。また、キャリア輸送層は各々一層でも構わず、キャリア移動を効率的に行おうとする際には各々二層以上にすることも好ましく行われる。キャリア輸送層の膜厚は特に限定されるものではないが、薄すぎるとキャリア輸送層として機能せず、厚過ぎると必要な電圧が高くなるため、好ましくは20nm〜5μmの範囲であり、より好ましくは50nm〜3μmの範囲である。
【0036】
キャリア輸送層は、各々正孔や電子を有効に輸送するために使われるため、陽極側キャリア輸送層はp型にドーピング、陰極側キャリア輸送層はn型にドーピングされ、伝導性が付与されていることが好ましい。キャリア輸送層の伝導度は高い方が抵抗が少なく有効にキャリアが移動する。そのため、伝導は高い方が好ましい。キャリア輸送層の抵抗が小さいことは、発光のために素子に印加する電圧低減にも繋がるのでより好ましい。
陽極側キャリア輸送層に用いる材料としては、イオン化エネルギーが低く、正孔注入が容易であるものが好ましく、例えばNiO、CuAlO、p−GaAs、p-Si等が挙げられる。また、陰極側キャリア輸送層に用いる材料としては、仕事関数が低く電子注入が容易であるものが好ましく、例えばZnO、ZnS、SnO等が挙げられる。
【0037】
[発光素子の製造方法]
本発明では、予め、発光層を形成する材料である無機化合物と、発光中心剤とを分散した溶液を作製して、それを第一の電極が形成された基板上に塗布し、その後加熱することにより、第一の電極上に発光層を形成することができる。そして、第一の電極上に形成された発光層に、第二の電極を形成することにより、発光素子を製造することができる。
第一の電極と第二の電極は異なる極性を持ち、各々陽極または陰極となるものである。 例えば、第一の電極が陽極であれば、第二の電極は陰極である。なお、陽極上に発光層を形成した後、陰極を形成してもよく、陰極上に発光層を形成したのち、陽極を形成してもよい。ただし、発光層で生じた発光を外部に取り出すため、少なくとも一方の電極が透明であることが必要である。なお電極に用いることの材料については上述した通りである。
【0038】
本発明において第一の電極上に発光層を形成する方法としては、塗布、真空製膜法等の方法を用いることができる。塗布方法を用いる場合、まず、無機化合物と、発光中心剤とを分散した溶液を作成する。次に、それらを混合して異なる溶媒を入れて溶液から無機物を析出させることで、無機化合物に発光中心剤を付活させることができる。その後、発光中心剤が付活された無機化合物粒子を塗布する。ここで塗布方法としては、一般的な塗布方法を用いることができ、例えば、スピンコート等の方法を用いることができる。
そして、加熱することで発光層を形成することができる。加熱方法としては、所定の雰囲気中、例えば、Ar、Xe、Ne、窒素等の不活性ガス中で熱処理を行う方法を挙げることができる。また、加熱することにより、2種類以上の無機化合物の構成元素を相互に拡散させることができる。さらに、発光中心剤の付活性を向上させることができる。
【0039】
ここで、2種類以上の無機化合物としては、―元系無機化合物や、二元系、三元系等の多元系無機化合物を用いることができる。二元系無機化合物としは、例えば、周期表第13族元素と周期表第15族元素との化合物と、周期表第12族元素と周期表第16族元素の化合物が好ましい。また、第一の電極が形成された基板上に金属の酢酸塩、アセチルアセトナト等の錯体を混合、溶媒に分散して塗布、その後、所定の雰囲気下加熱して酢酸塩や錯体を無機化する方法、及びこれらの方法の組み合わせによっても、発光層を形成することができる。
【0040】
真空製膜法を用いる場合、蒸着法、スパッタ法等の大面積の製膜が容易な方法を用いることが好ましい。また、無機化合物に必要な濃度の発光中心剤を添加した蒸着元もしくはスパッタターゲットを用いて、も良く、それぞれを別なソースとして共蒸着、共スパッタを行っても良い。また、2種類以上の無機化合物から、該化合物中の構成元素を相互に拡散させることで、p型無機半導体粒子およびn型無機半導体粒子を形成させる場合は、それらの化合物を混合した蒸着元もしくはスパッタターゲットを用いても良く、それぞれを別なソースとして共蒸着、共スパッタを行っても良い。この場合は異なる材料を独立に制御できると言う観点で異なる蒸着元もしくはスパッタターゲットとして独立に印加するエネルギーを制御して所望の無機半導体粒子を形成させる方が好ましい。いずれの場合にも、基板に無機半導体粒子を含有する発光層が形成されるように、蒸着元もしくはスパッタターゲットの焼結度、印加する電子線やプラズマのエネルギー、基板温度等を調整して製膜する。ナノ粒子を形成するための条件は用いる材料に依存するので、場合によっては蒸着元もしくはスパッタターゲットは作製しようとする無機化合物の構成元素を含むアモルファスの状態も好ましく用いられる。
【0041】
上述した方法で、第一の電極上に形成された発光層に、第二の電極を形成することにより、発光素子を製造することができる。第二の電極を設ける方法としては、例えば、真空蒸着等により、金属を蒸着させる方法を用いることができる。
また、必要に応じて、第一の電極と発光層の間、または第二の電極と発光層の間にキャリア輸送層を設けてもよい。キャリア輸送層を有する発光素子の製造方法としては、例えば、第一の電極上に、真空製膜によりキャリア輸送層、発光層、第二の電極等の必要な層を順次形成する方法、予めキャリア輸送層を形成する材料が分散した溶液や発光層を形成する粒子が分散した溶液を作製してそれを電極が形成された基板上に塗布する方法等が挙げられる。
【実施例】
【0042】
以下に実施例により本発明を具体的に説明する。
[実施例1]
【0043】
硝酸亜鉛6水和物2.231g(7.5mmol)、塩化テルビウム0.01g(0.038mmol)を25gの蒸留水に溶解した(溶液1)。また、硫化ナトリウム9水和物2.4g(10mmol)を25gの蒸留水に溶解した(溶液2)。同時にステンレス製のビーカーを用い、ヘプタン213gにC8H17COOCH2CH(COOC8H17)SO3Na 61.7gを溶解したものを二つ作製した(溶液3)。次に、一つの溶液3に溶液1を加え、窒素雰囲気で、氷浴で冷却しながら超音波分散を行い、ミセル溶液(溶液4)を作製した。また、溶液3に溶液2を加え、窒素雰囲気で、氷浴で冷却しながら超音波分散を行い、ミセル溶液(溶液5)を作製した。次に窒素雰囲気で、氷浴で冷却しながら超音波分散を行いながら溶液4に溶液5を少しずつ入れ、1時間超音波分散処理を実施した。その後、エタノールを加え、溶液が白濁させ、遠心分離して沈殿を分離、上澄みを捨てて蒸留水を加えて再分散、遠心分離を繰り返して、界面活性剤を除去し、硫化亜鉛にテルビウムが付活された微粒子分散液を作製した。得られたナノ粒子の数平均粒径は25nmであった。
【0044】
ITO付きガラス基板をトルエンにて超音波洗浄し、さらにアセトンで超音波洗浄後、乾燥した。そのITO電極上に、スピンコート1000rpmで得られた微粒子分散液を塗布し、自然乾燥した。この工程を5回繰り返した後、Ar雰囲気中550℃で5時間焼成して発光層を得た。次に、真空蒸着にて、真空度1.2×10−5Torr以下、基板40℃以下、蒸着速度1nm/秒で、マグネシウム層からなる陰極を形成し、発光素子とした。
得られた素子に直流電圧を印加したところ、5Vで30mAの電流が流れ、発光を示した。得られた発光は、発光層のみのフォトルミネッセンススペクトルとほぼ一致したことから、発光層に付活されたTbの発光であることが確認された。また、電圧を10分印加し続けても発光は継続された。
[実施例2]
【0045】
蒸留水2.0gにNiClを1.0g(7.71mol)、LiClを0.03g(0.77mmol)溶解し、これに4.0gのエタノールを加えた。次に、HO(CH2CH2O)20(CH2CH(CH3)O)70(CH2CH2O)20Hを2g加えて2時間攪拌混合してNiO;Liの前駆体溶液を得た。得られた溶液をITO付ガラス基板上に300rpmで3秒、次に2000rpmで10秒スピンコートした後、大気中500℃で30分焼成して陽極と発光層の間のキャリア輸送層としてNiO;Liナノ粒子薄膜を得た。
【0046】
この上に実施例1と全く同様にして発光層、電極を形成して発光素子を作製した。得られた素子に直流電圧を印加したところ、5Vで30mAの電流が流れ、発光を示した。得られた発光は、発光層のみのフォトルミネッセンススペクトルとほぼ一致したことから、発光層に付活されたTbの発光であることが確認された。また、電圧を10分印加し続けても発光は継続された。
[実施例3]
【0047】
エタノール(和光純薬製:特級)450mlをホットスターラー上で攪拌及び加熱しながら、酢酸亜鉛2水和物(和光純薬製:特級)6.585g(30mmol)と酢酸テルビウム4水和物(三津和化学製)0.588g(1.4mmol)を加え、還流しながら3時間混合した後に、冷蔵庫で冷却して亜鉛及びテルビウムを含む溶液を得た(溶液1)。また、水酸化リチウム1水和物1.762g(42mmol)を120mlのエタノールに溶解し、冷蔵庫で冷却してLiを含む溶液(溶液2)を得た。次に、氷浴中で超音波分散を行いながら、溶液1に溶液2をゆっくり加えて、20分間超音波分散させて加水分解し、反応液を得た(溶液3)。溶液3を冷蔵庫中で1週間静置して、発光中心剤としてテルビウムが付活された酸化亜鉛のナノ結晶を成長させ、ナノ結晶を含む溶液(溶液4)を得た。溶液4110gに対してヘプタンを180gの割合で加えて析出させ、遠心分離して上澄みを捨て、再度エタノールを加えて分散、ヘプタンを加えて析出、遠心分離という洗浄操作を2回繰り返し、副生成物を除去した。これらにより、酸化亜鉛結晶微粒子7.5t%含有するエタノール溶液とし、超音波分散して塗布溶液とした(溶液5)。得られた結晶ナノ粒子の数平均粒径は、約5〜6nmであった。
【0048】
市販のGan粉末を購入して微粉砕し、数平均粒径30nm程度のGaN粒子を得て、それを溶液5にZnO:GaNがモル比で1:1になるように加えてZnOとGaNを含有する微粒子分散液を得た。
ITO付きガラス基板をトルエンにて超音波洗浄し、さらにアセトンで超音波洗浄後、乾燥した。そのITO電極上に、スピンコート1000rpmで得られた微粒子分散液を塗布し、自然乾燥した。この工程を5回繰り返した後、Ar雰囲気中550℃で5時間焼成して発光層を得た。次に、真空蒸着にて、真空度1.2×10−5Torr以下、基板40℃以下、蒸着速度1nm/秒で、アルミニウム層からなる陰極を形成し、発光素子とした。
【0049】
得られた素子に直流電圧を印加したところ、5Vで30mAの電流が流れ、発光を示した。得られた発光は、発光層のみのフォトルミネッセンススペクトルとほぼ一致したことから、発光層に付活されたTbの発光であることが確認された。また、電圧を10分印加し続けても発光は継続された。
[実施例4]
【0050】
蒸留水2.0gにNiClを1.0g(7.71mol)、LiClを0.03g(0.77mmol)溶解し、これに4.0gのエタノールを加えた。次に、HO(CH2CH2O)20(CH2CH(CH3)O)70(CH2CH2O)20Hを2g加えて2時間攪拌混合してNiO;Liの前駆体溶液を得た。得られた前駆体溶液をITO付ガラス基板上に300rpmで3秒、次に2000rpmで10秒スピンコートした後、大気中500℃で30分焼成して陽極と発光層の間のキャリア輸送層としてNiO;Liナノ粒子薄膜を得た。この上に実施例3と全く同様にして発光層、電極を形成して発光素子を作製した。
【0051】
得られた素子に直流電圧を印加したところ、5Vで30mAの電流が流れ、発光を示した。得られた発光は、発光層のみのフォトルミネッセンススペクトルとほぼ一致したことから、発光層に付活されたTbの発光であることが確認された。また、電圧を10分印加し続けても発光は継続された。
[比較例1]
【0052】
実施例1におけるZnSナノ粒子作製に際し、実施例1では〔HO〕/[C8H17COOCH2CH(COOC8H17)SO3Na]=10であったところを、水を多く加えて100としたこと以外は実施例1と同様にして発光素子を作製した。得られたZnS粒子の数平均粒径は150nmであった。得られた素子に直流電圧を印加したところ、5Vで30mAの電流が流れ、発光を示したものの、発光輝度が低く、実施例に比べて、発光効率も低いものであった。また、初期に発光を観測したが電圧を印加して1分程度で絶縁破壊が起き、発光は継続しなかった。
【産業上の利用可能性】
【0053】
本発明の発光素子は、ガラス基板等の安価な基板上に形成できるために大面積化が容易でありながら、直流低電圧で駆動できるために発光効率に優れ、粒径が小さく、絶縁破壊を起こしにくいため寿命が長く、全て無機材料から構成できるために耐久性に優れるために実用的であり、LCDバックライトや一般照明の非水銀化に大きく貢献する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
発光層と該発光層を介して、互いに対向する陽極と陰極とから構成される発光素子であって、該発光層が、数平均粒径が0.3nmから100.0nmである複数の無機結晶粒子を含有し、かつ、前記複数の無機結晶粒子の少なくとも一つに発光中心剤が付活されていることを特徴とする発光素子。
【請求項2】
前記無機結晶粒子が、p型無機半導体粒子および/またはn型無機半導体粒子であることを特徴とする請求項1に記載の発光素子。
【請求項3】
前記無機結晶粒子が、周期表第13族元素と周期表第15族元素との化合物を含有する粒子および/または周期表第12族元素と周期表第16族元素との化合物を含有する粒子であることを特徴とする請求項1に記載の発光素子。
【請求項4】
前記発光中心剤が、少なくとも、テルビウム、ユーロピウム、セリウム、マンガン、銅、アルミニウム、銀のいずれか一つを含有することを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の発光素子。
【請求項5】
発光中心剤と、周期表第13族元素と周期表第15族元素との化合物と、周期表第12族元素と周期表第16族元素との化合物とを含有する溶液を、第一の電極上に塗布した後、加熱することにより、発光層を形成する工程と、前記発光層上に、第一の電極とは異なる極性を有する第二の電極を形成する工程とから構成される発光素子の製造方法。

【公開番号】特開2008−251269(P2008−251269A)
【公開日】平成20年10月16日(2008.10.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−89116(P2007−89116)
【出願日】平成19年3月29日(2007.3.29)
【出願人】(000000033)旭化成株式会社 (901)
【Fターム(参考)】