発光素子
【課題】低電圧で駆動し発光輝度が高く、寿命が長い発光素子を提供する。
【解決手段】この発光素子は、一対の第1電極及び第2電極と、前記第1電極と前記第2電極との間に配置された発光部と、を備え、前記発光部は、第1伝導型の半導体の部分と第2伝導型の半導体の部分とを有する発光粒子が前記第1電極及び第2電極の間に配置されて構成されており、前記発光粒子は、粒子表面に露出した前記第1伝導型の半導体の一部が前記第1電極と接していると共に、粒子表面に露出した前記第2伝導型の半導体の一部が前記第2電極に接しており、前記第1電極は、前記発光粒子の前記第1伝導型の半導体と接する部分以外の部分が絶縁体で覆われている。
【解決手段】この発光素子は、一対の第1電極及び第2電極と、前記第1電極と前記第2電極との間に配置された発光部と、を備え、前記発光部は、第1伝導型の半導体の部分と第2伝導型の半導体の部分とを有する発光粒子が前記第1電極及び第2電極の間に配置されて構成されており、前記発光粒子は、粒子表面に露出した前記第1伝導型の半導体の一部が前記第1電極と接していると共に、粒子表面に露出した前記第2伝導型の半導体の一部が前記第2電極に接しており、前記第1電極は、前記発光粒子の前記第1伝導型の半導体と接する部分以外の部分が絶縁体で覆われている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発光素子、特に、エレクトロルミネセンス素子に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、軽量・薄型の面発光型素子としてエレクトロルミネセンス素子(以下、EL素子という。)が注目されている。EL素子は大別すると、有機材料からなる蛍光体に直流電圧を印加し、電子と正孔とを再結合させて発光させる有機EL素子と、無機材料からなる蛍光体に交流電圧を印加し、およそ106V/cmもの高電界で加速された電子を無機蛍光体の発光中心に衝突させて励起させ、その緩和過程で無機蛍光体を発光させる無機EL素子とがある。
【0003】
さらに、この無機EL素子には、無機蛍光体粒子を高分子有機材料からなるバインダ中に分散させて発光層とする分散型EL素子と、厚さが1μm程度の薄膜発光層の両側あるいは片側に絶縁層を設けた薄膜型EL素子とがある。これらのうち分散型EL素子は、消費電力が少なく、しかも製造が簡単なため製造コストが安くなる利点があるとして注目されている。従来の分散型EL素子は、積層構造であり、基板側から順に、基板、第1電極、発光層、絶縁体層、第2電極が積層されて構成されている。発光層は、ZnS:Mn等の無機蛍光体粒子を有機バインダに分散させた構成を有しており、絶縁体層はBaTiO3などの強誘電体を有機バインダに分散させた構成を有している。第1電極と第2電極の間には交流電源が設置され、交流電源から第1電極、第2電極間へ電圧を印加することで分散型EL素子は発光する。
【0004】
分散型EL素子の構造において、発光層は分散型EL素子の輝度と効率を決定付ける層であり、この発光層の無機蛍光体粒子には、粒径15μm〜35μmの大きさのものが用いられている(例えば、特許文献1参照。)。また、分散型EL素子の発光層の発光色は発光層に用いられる無機蛍光体粒子によって決まり、例えば無機蛍光体粒子にZnS:Mnを用いた場合には橙色の発光を示し、例えば無機蛍光体粒子にZnS:Cuを用いた場合には青緑色の発光を示す。このように、発光色は使用する無機蛍光体粒子によって決まるため、それ以外の、例えば白色の発光色を得る場合、例えば、色変換特性を有する有機色素を有機バインダに混合させることで発光色を他の色に変換し、目的の発光色を得ている(例えば、特許文献2参照。)。
【0005】
しかしながら、分散型EL素子に用いられる発光体は、発光輝度が低く、また、寿命が短いという問題があった。
【0006】
発光輝度を上昇させる方法として、発光層への印加電圧を上げる方法が考えられる。この場合、印加電圧に反比例して発光体の光出力の半減期が減少してしまうという課題がある。一方、半減期を長くする、つまり寿命を長くする方法としては、発光層への印加電圧を下げる方法が考えられるが、発光輝度が低下してしまうという課題がある。このように、発光輝度と半減期とは、発光層への印加電圧の増減によって一方を改善しようとすると、もう一方が悪化する相反関係にある。したがって、発光輝度か寿命(光出力の半減期)の何れかを選択しなければならなくなる。なお、本明細書における半減期とは、発光体の光出力が当初の発光輝度の半分の出力に減少するまでの時間である。
【0007】
低電圧でEL素子を発光させる提案としては、GaNからなるN型半導体層のc面に対し非極性面と平行な面を構成面とするように段差を形成し、非極性面と平行な面を段差部の構成面とするように発光領域を形成し、発光層上にGaNからなるP型半導体層を形成した発光素子構造が提案されている(例えば特許文献3参照。)。上記発光素子構造では、低電圧で駆動可能であるという特徴がある。また、発光体としてGaNを使用することで寿命が長いという特徴がある。
【0008】
【特許文献1】国際公開第03/020848号パンフレット
【特許文献2】特開平7−216351号公報
【特許文献3】特開2003−092426号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、上記の方法では面状に発光層を形成するため、発光層が不均一な薄膜となる場合がある。このような場合、不均一な発光層に起因して面内の輝度ムラが発生し、非発光部分が形成され、発光素子とした場合、輝度ムラの小さい面発光が得にくい。
【0010】
本発明の目的は、上記課題を解決し、輝度の面内均一性を向上した発光素子を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題は、本発明に係る発光素子によって達成される。
本発明に係る発光素子は、一対の第1電極及び第2電極と、
前記第1電極と前記第2電極との間に配置された発光部と、
を備え、
前記発光部は、第1伝導型の半導体の部分と第2伝導型の半導体の部分とを有する発光粒子が前記第1電極及び第2電極の間に配置されて構成されており、
前記発光粒子は、粒子表面に露出した前記第1伝導型の半導体の一部が前記第1電極と接していると共に、粒子表面に露出した前記第2伝導型の半導体の一部が前記第2電極に接しており、
前記第1電極は、前記発光粒子の前記第1伝導型の半導体と接する部分以外の部分が絶縁体で覆われていることを特徴とする。
【0012】
また、前記発光粒子は、芯部の第1伝導型の半導体と、その表面の一部を覆う第2伝導型の半導体とで構成されていてもよい。前記発光粒子は、芯部の第2伝導型の半導体と、その表面の一部を覆う第1伝導型の半導体とで構成されていてもよい。
【0013】
さらに、前記第1伝導型の半導体はN型半導体であって、前記第2伝導型の半導体は、P型半導体であってもよい。あるいは、前記第1伝導型の半導体はP型半導体であって、前記第2伝導型の半導体は、N型半導体であってもよい。
【0014】
またさらに、前記発光粒子は、六角柱状形状を有し、長手軸が前記第1電極の面に平行に配置されていてもよい。
【0015】
また、前記第1伝導型の半導体及び前記第2伝導型の半導体は、それぞれ化合物半導体であってもよい。前記第1伝導型の半導体及び前記第2伝導型の半導体は、第III族−第V族間化合物半導体であってもよい。前記第1伝導型の半導体及び前記第2伝導型の半導体は、窒化ガリウムからなるものであってもよい。
【0016】
さらに、前記第1電極又は前記第2電極は、酸化亜鉛を主体とし、アルミニウム、ガリウム、チタン、ニオブ、タンタル、タングステン、銅、銀、ホウ素からなる群から選ばれる少なくとも一種を含んでもよい。
【0017】
またさらに、前記第1電極又は前記第2電極の少なくとも一方の電極に面して支持する支持体基板をさらに備えてもよい。
【0018】
前記第1電極及び前記第2電極のそれぞれに対向し、且つ、前記発光部からの発光の取出し方向の前方に色変換層をさらに備えてもよい。
【発明の効果】
【0019】
本発明に係る発光素子によれば、芯部の第1伝導型の半導体の表面の一部を露出させたまま、それ以外の周囲を覆う第2伝導型の半導体とで構成された発光粒子を、その長手軸が第1電極と平行になるように配置して発光部を構成していることを特徴としている。これによって、発光粒子を構成する第1伝導型の半導体と第2伝導型の半導体とがそれぞれ異なった電極と接する。その結果、電荷の伝導経路に対して、発光粒子内における第1伝導型の半導体と第2伝導型の半導体との界面を広範囲にわたって形成することができ、正孔の注入性が改善され、電子と正孔との再結合型発光を効率よく生じ、低電圧で高輝度発光する発光素子を実現することができる。
【0020】
さらに、発光粒子の第1伝導型の半導体と第2伝導型の半導体との界面をGaN結晶の非極性面(m面)に形成することにより、さらに発光効率を向上させることができる。
【0021】
本発明によれば、低電圧で発光し、しかも発光輝度が高く、寿命も長い高い発光素子を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
以下、本発明の実施の形態に係る発光素子について、添付図面を用いて説明する。なお、図面において、実質的に同一の部材には同一の符号を付している。
【0023】
(実施の形態1)
<EL素子の概略構成>
図1は、本発明の実施の形態1に係る発光素子10の発光面に垂直な方向から見た概略構成図である。この発光素子10は、第1基板11上に設けられた第1電極12と、第2基板16上に設けられた第2電極15とが互いに対向して配置され、その間にN型半導体の部分22とP型半導体の部分24とを有する発光粒子20が配置されて構成された発光部13を有する。さらに具体的には、発光粒子20は六角柱状形状のGaN結晶粒子からなり、芯部がN型半導体のN型GaN22であって、その表面の一部のN型GaN22の部分を露出させたまま、それ以外の周囲をP型半導体のP型GaN24が覆って構成されている。また、発光粒子20は、GaN結晶のc軸が第1基板11に平行であって、露出したN型GaN22の一部は第1電極12と接すると共に、P型GaN24の一部は第2電極15と接するように配置されている。なお、六方晶系のGaN結晶は六角柱状形状を呈し、そのc軸は長手軸と一致する。また、第1電極12は、発光粒子20のN型GaN22と接する部分以外の部分は絶縁層14で覆われている。
【0024】
発光粒子20は、N型GaN22が第1電極12と接しており、P型GaN24が第2電極15と接している。第1電極12と第2電極15との間に電力を供給すると、その間に電位差が生じ、発光粒子20を構成するN型GaN22と、P型GaN24との間に電流が流れ、N型GaN22とP型GaN24との界面において発光する。その光は、透明電極として設けられた第1電極12又は第2電極15、あるいは第1電極12と第2電極15の両方から外部に取り出される。
【0025】
この発光素子10は、芯部のN型GaN22の表面の一部を露出させたまま、それ以外の周囲を覆うP型GaN24とで構成された発光粒子20を、その長手軸であるc軸が第1基板11、第1電極12と平行になるように配置して発光部13を構成していることを特徴としている。これによって、図1に示すように、発光粒子20を構成するN型GaN22とP型GaN24とがそれぞれ異なった電極12、15と接する。その結果、電荷の伝導経路に対して、発光粒子20内におけるN型GaN22とP型GaN24との界面を広範囲にわたって形成することができ、正孔の注入性が改善され、電子と正孔との再結合型発光を効率よく生じ、低電圧で高輝度発光する発光素子を実現することができる。さらに、発光粒子20のN型GaN22とP型GaN24との界面をGaN結晶の非極性面(m面)に形成することにより、さらに発光効率を向上させることができる。
【0026】
なお、上述の構成に限られず、N型GaN22とP型GaN24との間に発光層を設けてもよい。また、発光粒子20は、実施例2に示すように芯部のN型GaN22と周囲のP型GaN24を入れ替えた構造、つまり、発光粒子は芯部のP型GaNと周囲のN型GaNとで構成されていてもよい。
【0027】
また、発光素子の光を取り出し方向の前方に色変換層を備えていてもよい。色変換層を備えることにより、フルカラーディスプレイの構造とすることが可能である。
【0028】
以下、この発光素子10を構成する各構成部材について説明する。
<基板>
第1基板11は、その上に形成する各層を支持できるものを用いる。また、第1基板11側から光を取り出す場合、発光体から発せられる光の波長に対し光透過性を有する材料であることが求められる。このような材料としては、例えば、コーニング1737等のガラス、石英、セラミック、サファイア等を用いることができる。通常のガラスに含まれるアルカリイオン等が発光素子へ影響しないように、無アルカリガラスや、ガラス表面にイオンバリア層としてアルミナ等をコートしたソーダライムガラスであってもよい。また、ポリエステル、ポリエチレンテレフタレート系、ポリクロロトリフルオロエチレン系とナイロン6の組み合わせやフッ素樹脂系材料、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリイミド、ポリアミドなどの樹脂フィルム等を用いることもできる。樹脂フィルムを用いる場合には、耐久性、柔軟性、透明性、電気絶縁性、防湿性の優れた材料を用いることが好ましい。なお、上記材料の記載は例示であって、基板11の材料は特にこれらに限定されるものではない。
【0029】
なお、第1基板11側から光を取り出さない構成の場合は、上述の光透過性は不要であり、透光性を有していない材料も用いることができる。これらの例としては、表面に絶縁層を有する金属基板やセラミックス基板、シリコンウエハ等がある。第2基板16についても、第1基板11と同様である。
【0030】
<電極>
第1電極12及び第2電極15として、光を取り出す側は透明電極を用い、取り出さない側は透明でない金属電極等を用いることができる。ここでは、図1に示すように、第2基板16の上の第2電極15を透明電極として設ける場合について説明するが、これに限られず、第1電極12を透明電極としてもよく、また第1電極12及び第2電極15の両方を透明電極としてもよい。
【0031】
まず、第2電極15を透明電極とする場合について説明する。透明電極の材料は、N型GaN22と、P型GaN24間で生じた発光を外部に取り出せるように光透過性を有するものであればよく、特に可視光領域において高い透過率を有することが好ましい。また、電極として低抵抗であることが好ましく、さらには第2基板16や発光粒子20を構成するP型GaN24との密着性に優れていることが好ましい。透明電極の材料として、特に好適なものは、ITO(In2O3にSnO2をドープしたものであり、インジウム錫酸化物ともいう。)やInZnO、ZnO、SnO2等を主体とする金属酸化物、Pt、Au、Pd、Ag、Ni、Cu、Al、Ru、Rh、Ir等の金属薄膜、あるいはポリアニリン、ポリピロール、PEDOT/PSS、ポリチオフェンなどの導電性高分子等が挙げられるが、特にこれらに限定されるものではない。これらの透明電極はその透明性を向上させ、あるいは抵抗率を低下させる目的で、スパッタリング法、エレクトロンビーム蒸着法、イオンプレーティング法、等の成膜方法で成膜できる。また成膜後に、抵抗率制御の目的でプラズマ処理などの表面処理を施してもよい。透明電極の膜厚は、必要とされるシート抵抗値と可視光透過率から決定される。
【0032】
透明電極のキャリア濃度は、1E17〜1E22cm−3の範囲であることが望ましい。また、透明電極として性能を出すために、透明電極の体積抵抗率は1E−3Ωcm以下であって、透過率は380〜780nmの波長において75%以上であることが望ましい。また、透明電極の屈折率は、1.85〜1.95が良い。さらに、透明電極の膜厚は30nm以下の場合に緻密で安定した特性を持つ膜が実現できる。
【0033】
また、透明電極を使用する必要のない側の電極としては、一般に良く知られている導電材料であればいずれでも適用できる。なお、N型GaN22との密着性に優れていることが好ましい。好適な例としては、例えば、ITOやInZnO、ZnO、SnO2等の金属酸化物、Pt、Au、Pd、Ag、Ni、Cu、Al、Ru、Rh、Ir、Cr、Mo、W、Ta、Nb等の金属、これらの積層構造体、あるいは、ポリアニリン、ポリピロール、PEDOT〔ポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)〕/PSS(ポリスチレンスルホン酸)等の導電性高分子、あるいは導電性カーボンなどを用いることができる。
【0034】
また、透明電極及び電極12、15は、それぞれ層内を全面覆うように構成してもよい。あるいは、層内に複数の電極をストライプ状に構成してもよい。さらに、透明電極および電極12、15をともに複数の電極をストライプ状として構成し、透明電極の各ストライプ状の電極と電極のすべてのストライプ状の電極とが、それぞれねじれの位置の関係であり、かつ、透明電極の各ストライプ状の電極を発光面に投影したものと電極のすべてのストライプ状の電極を発光面に投影したものとが互いに交わるように構成してもよい。この場合、透明電極のストライプ状の各電極、および、電極のストライプ状の各電極からそれぞれ選択した一対の電極間に電圧を印加することにより、所定位置が発光するディスプレイを構成することが可能となる。
【0035】
<発光部>
発光部13は、N型半導体の部分22とP型半導体の部分24とを有する発光粒子20が、一対の第1電極12と第2電極15の間に配置されて構成されている。また、発光粒子20は、N型半導体の部分22が第1の電極12と接し、P型半導体の部分24が第2の電極15と接するように配置されている。
【0036】
<発光粒子>
発光粒子20は、GaN結晶粒子からなる。このGaN結晶粒子はウルツ型の結晶構造を有し、結晶粒子の形状は六角柱状形状である。この六角柱の側面は非極性面といわれるm面となる。本発明の発光素子では、この非極性面(m面)上で発光する発光粒子を用いる。発光粒子20のGaN結晶粒子は、c軸が第1基板11の面に平行であって、N型半導体のN型GaN22が第1電極12に接し、P型半導体のP型GaN24が第2電極15に接するように配置されている。
【0037】
この発光粒子20は、上述のように第1電極12、第2電極15との間に配置されているが、上記の場合に限られず、次のうち、いずれかの構造を有していてもよい。
(a)N型GaN22芯粒子上にP型GaN24が形成されており、芯部のN型GaNが表面に一部露出している。
(b)核となる粒子上にN型GaN22が形成され、さらにP型GaN24がその上に形成されており、N型GaN22が一部露出している。
(c)N型GaN22芯粒子上に発光層が形成され、その上にP型GaN24が形成されており、N型GaN22が一部露出している。
(d)核となる粒子上にN型GaN22、発光層が形成され、その上にP型GaN24が形成されており、N型GaN22が一部露出している。
なお、核となる粒子は、その上にGaN結晶が成長しやすい粒子を選択することが望ましい。核粒子として、例えばサファイア、ZnOなどを用いることができる。
また、発光層はInGaNや、InGaNとGaNを積層した量子井戸構造のものなどが用いられる。
【0038】
また発光粒子20は、非極性面であるm面を電極と接触しやすくするために、非極性面であるm面の部分の幅が、c面の部分の幅の1.5倍以上であることが望ましい。m面の部分の幅がc面の幅より大きいことにより、m面を第1電極12に接触するように発光粒子20を並べることが容易となる。
【0039】
<実施例1>
本発明の第1の実施例として、図1に示す発光素子10の製造方法を、図2aから図2dを用いて説明する。
(a)まず、第1基板11の上に第1電極12を形成する(図2a)。
(b)次に、第1電極12の上に、GaN結晶のc軸が第1基板11に平行であって、N型GaN22が第1電極12に接するように配置する(図2b)。この場合に、N型GaN22が第1電極12と接している部分以外の第1電極12の上を絶縁層14で覆って、N型GaN22の各粒子間の間隙を埋めた状態とする。この絶縁層14には、例えばSOG(spin on glass)を用いることができる。具体的には、第1電極12上に絶縁層であるSOGを塗布し、N型GaN22の粒子を絶縁層14であるSOG上に配置し、N型GaN22の粒子に圧力を加えて、N型GaN22と第1電極12との間の絶縁層14を排除して、N型GaN22と第1電極12とが直接接するようにする。
(c)次いで、N型GaN22上にP型GaN24を形成する(図2c)。P型GaN24の形成方法としては、例えばMOCVD法が用いられる。なお、GaN結晶はSOG上に成長せずN型GaN22上にのみ成長するため、絶縁膜14上にはP型GaN24は成長しない。
(d)次に、第2電極15を形成した第2基板16を、P型GaN24が第2電極15に接するように張り合わせる(図2d)。
以上によって実施例1に係る発光素子10が得られる。
【0040】
なお、第2基板16を用いない場合は、図3に示すように、別例の発光素子10aのように、上記発光粒子20の表面のP型GaN24を覆うように第2電極15を形成してもよい。
【0041】
また、図3のような第2電極15を形成した場合であっても、図4に示すように、さらに別例の発光素子10bのように、第2基板16を用いてもよい。
【0042】
<実施例2>
本発明の実施例2に係る発光素子10cの製造方法について、図5aから図5dを用いて以下に説明する。
(a)まず、第1基板11の上に第1電極12を形成する(図5a)。
(b)次に、芯部のN型GaN22の表面をP型GaN24で覆った六角柱状粒子を形成する。このGaN結晶からなる六角柱状粒子の長手軸であるc軸が第1基板11に平行であって、P型GaN24が第1電極12と接するように配置する(図5b)。この場合に、P型GaN24が第1電極12と接している部分以外の第1電極12の上を絶縁層14で覆って、各粒子間の間隙を埋めた状態とする。この絶縁層14には、例えばSOG(spin on glass)を用いることができる。具体的には、第1電極12上に絶縁層であるSOGを塗布し、芯部のN型GaN22の表面をP型GaN24で覆った粒子をSOG14上に配置し、粒子に圧力を加えて、P型GaN24と第1電極12との間の絶縁層14を排除して、P型GaN24と第1電極12とが直接接するようにする。
(c)次いで、粒子表面のP型GaN24をエッチングして、芯部のN型GaN22の一部を粒子表面に露出させる(図5c)。
(d)次に、第2電極15を形成した第2基板16を、第2電極15が表面に露出したN型GaN22に接するように張り合わせる(図5d)。
以上によって実施例2に係る発光素子10cが得られる。
【産業上の利用可能性】
【0043】
本発明に係る発光素子は、低電圧にて発光し、寿命も長く、高い発光輝度を有するので、LCDのバックライト、照明、ディスプレイ等に利用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0044】
【図1】本発明の実施の形態1に係る発光素子の概略断面図である。
【図2a】実施例1に係る発光素子の製造方法における一工程を示す断面図である。
【図2b】実施例1に係る発光素子の製造方法における一工程を示す断面図である。
【図2c】実施例1に係る発光素子の製造方法における一工程を示す断面図である。
【図2d】実施例1に係る発光素子の製造方法における一工程を示す断面図である。
【図3】別例の発光素子の構成を示す断面図である。
【図4】さらに別例の発光素子の構成を示す断面図である。
【図5a】実施例2に係る発光素子の製造方法における一工程を示す断面図である。
【図5b】実施例2に係る発光素子の製造方法における一工程を示す断面図である。
【図5c】実施例2に係る発光素子の製造方法における一工程を示す断面図である。
【図5d】実施例2に係る発光素子の製造方法における一工程を示す断面図である。
【符号の説明】
【0045】
10、10a、10b、10c 発光素子
11 第1基板
12 第1電極
13 発光部
20 発光粒子
22 N型GaN
24 P型GaN
14 絶縁層
15 第2電極
16 第2基板
【技術分野】
【0001】
本発明は、発光素子、特に、エレクトロルミネセンス素子に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、軽量・薄型の面発光型素子としてエレクトロルミネセンス素子(以下、EL素子という。)が注目されている。EL素子は大別すると、有機材料からなる蛍光体に直流電圧を印加し、電子と正孔とを再結合させて発光させる有機EL素子と、無機材料からなる蛍光体に交流電圧を印加し、およそ106V/cmもの高電界で加速された電子を無機蛍光体の発光中心に衝突させて励起させ、その緩和過程で無機蛍光体を発光させる無機EL素子とがある。
【0003】
さらに、この無機EL素子には、無機蛍光体粒子を高分子有機材料からなるバインダ中に分散させて発光層とする分散型EL素子と、厚さが1μm程度の薄膜発光層の両側あるいは片側に絶縁層を設けた薄膜型EL素子とがある。これらのうち分散型EL素子は、消費電力が少なく、しかも製造が簡単なため製造コストが安くなる利点があるとして注目されている。従来の分散型EL素子は、積層構造であり、基板側から順に、基板、第1電極、発光層、絶縁体層、第2電極が積層されて構成されている。発光層は、ZnS:Mn等の無機蛍光体粒子を有機バインダに分散させた構成を有しており、絶縁体層はBaTiO3などの強誘電体を有機バインダに分散させた構成を有している。第1電極と第2電極の間には交流電源が設置され、交流電源から第1電極、第2電極間へ電圧を印加することで分散型EL素子は発光する。
【0004】
分散型EL素子の構造において、発光層は分散型EL素子の輝度と効率を決定付ける層であり、この発光層の無機蛍光体粒子には、粒径15μm〜35μmの大きさのものが用いられている(例えば、特許文献1参照。)。また、分散型EL素子の発光層の発光色は発光層に用いられる無機蛍光体粒子によって決まり、例えば無機蛍光体粒子にZnS:Mnを用いた場合には橙色の発光を示し、例えば無機蛍光体粒子にZnS:Cuを用いた場合には青緑色の発光を示す。このように、発光色は使用する無機蛍光体粒子によって決まるため、それ以外の、例えば白色の発光色を得る場合、例えば、色変換特性を有する有機色素を有機バインダに混合させることで発光色を他の色に変換し、目的の発光色を得ている(例えば、特許文献2参照。)。
【0005】
しかしながら、分散型EL素子に用いられる発光体は、発光輝度が低く、また、寿命が短いという問題があった。
【0006】
発光輝度を上昇させる方法として、発光層への印加電圧を上げる方法が考えられる。この場合、印加電圧に反比例して発光体の光出力の半減期が減少してしまうという課題がある。一方、半減期を長くする、つまり寿命を長くする方法としては、発光層への印加電圧を下げる方法が考えられるが、発光輝度が低下してしまうという課題がある。このように、発光輝度と半減期とは、発光層への印加電圧の増減によって一方を改善しようとすると、もう一方が悪化する相反関係にある。したがって、発光輝度か寿命(光出力の半減期)の何れかを選択しなければならなくなる。なお、本明細書における半減期とは、発光体の光出力が当初の発光輝度の半分の出力に減少するまでの時間である。
【0007】
低電圧でEL素子を発光させる提案としては、GaNからなるN型半導体層のc面に対し非極性面と平行な面を構成面とするように段差を形成し、非極性面と平行な面を段差部の構成面とするように発光領域を形成し、発光層上にGaNからなるP型半導体層を形成した発光素子構造が提案されている(例えば特許文献3参照。)。上記発光素子構造では、低電圧で駆動可能であるという特徴がある。また、発光体としてGaNを使用することで寿命が長いという特徴がある。
【0008】
【特許文献1】国際公開第03/020848号パンフレット
【特許文献2】特開平7−216351号公報
【特許文献3】特開2003−092426号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、上記の方法では面状に発光層を形成するため、発光層が不均一な薄膜となる場合がある。このような場合、不均一な発光層に起因して面内の輝度ムラが発生し、非発光部分が形成され、発光素子とした場合、輝度ムラの小さい面発光が得にくい。
【0010】
本発明の目的は、上記課題を解決し、輝度の面内均一性を向上した発光素子を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題は、本発明に係る発光素子によって達成される。
本発明に係る発光素子は、一対の第1電極及び第2電極と、
前記第1電極と前記第2電極との間に配置された発光部と、
を備え、
前記発光部は、第1伝導型の半導体の部分と第2伝導型の半導体の部分とを有する発光粒子が前記第1電極及び第2電極の間に配置されて構成されており、
前記発光粒子は、粒子表面に露出した前記第1伝導型の半導体の一部が前記第1電極と接していると共に、粒子表面に露出した前記第2伝導型の半導体の一部が前記第2電極に接しており、
前記第1電極は、前記発光粒子の前記第1伝導型の半導体と接する部分以外の部分が絶縁体で覆われていることを特徴とする。
【0012】
また、前記発光粒子は、芯部の第1伝導型の半導体と、その表面の一部を覆う第2伝導型の半導体とで構成されていてもよい。前記発光粒子は、芯部の第2伝導型の半導体と、その表面の一部を覆う第1伝導型の半導体とで構成されていてもよい。
【0013】
さらに、前記第1伝導型の半導体はN型半導体であって、前記第2伝導型の半導体は、P型半導体であってもよい。あるいは、前記第1伝導型の半導体はP型半導体であって、前記第2伝導型の半導体は、N型半導体であってもよい。
【0014】
またさらに、前記発光粒子は、六角柱状形状を有し、長手軸が前記第1電極の面に平行に配置されていてもよい。
【0015】
また、前記第1伝導型の半導体及び前記第2伝導型の半導体は、それぞれ化合物半導体であってもよい。前記第1伝導型の半導体及び前記第2伝導型の半導体は、第III族−第V族間化合物半導体であってもよい。前記第1伝導型の半導体及び前記第2伝導型の半導体は、窒化ガリウムからなるものであってもよい。
【0016】
さらに、前記第1電極又は前記第2電極は、酸化亜鉛を主体とし、アルミニウム、ガリウム、チタン、ニオブ、タンタル、タングステン、銅、銀、ホウ素からなる群から選ばれる少なくとも一種を含んでもよい。
【0017】
またさらに、前記第1電極又は前記第2電極の少なくとも一方の電極に面して支持する支持体基板をさらに備えてもよい。
【0018】
前記第1電極及び前記第2電極のそれぞれに対向し、且つ、前記発光部からの発光の取出し方向の前方に色変換層をさらに備えてもよい。
【発明の効果】
【0019】
本発明に係る発光素子によれば、芯部の第1伝導型の半導体の表面の一部を露出させたまま、それ以外の周囲を覆う第2伝導型の半導体とで構成された発光粒子を、その長手軸が第1電極と平行になるように配置して発光部を構成していることを特徴としている。これによって、発光粒子を構成する第1伝導型の半導体と第2伝導型の半導体とがそれぞれ異なった電極と接する。その結果、電荷の伝導経路に対して、発光粒子内における第1伝導型の半導体と第2伝導型の半導体との界面を広範囲にわたって形成することができ、正孔の注入性が改善され、電子と正孔との再結合型発光を効率よく生じ、低電圧で高輝度発光する発光素子を実現することができる。
【0020】
さらに、発光粒子の第1伝導型の半導体と第2伝導型の半導体との界面をGaN結晶の非極性面(m面)に形成することにより、さらに発光効率を向上させることができる。
【0021】
本発明によれば、低電圧で発光し、しかも発光輝度が高く、寿命も長い高い発光素子を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
以下、本発明の実施の形態に係る発光素子について、添付図面を用いて説明する。なお、図面において、実質的に同一の部材には同一の符号を付している。
【0023】
(実施の形態1)
<EL素子の概略構成>
図1は、本発明の実施の形態1に係る発光素子10の発光面に垂直な方向から見た概略構成図である。この発光素子10は、第1基板11上に設けられた第1電極12と、第2基板16上に設けられた第2電極15とが互いに対向して配置され、その間にN型半導体の部分22とP型半導体の部分24とを有する発光粒子20が配置されて構成された発光部13を有する。さらに具体的には、発光粒子20は六角柱状形状のGaN結晶粒子からなり、芯部がN型半導体のN型GaN22であって、その表面の一部のN型GaN22の部分を露出させたまま、それ以外の周囲をP型半導体のP型GaN24が覆って構成されている。また、発光粒子20は、GaN結晶のc軸が第1基板11に平行であって、露出したN型GaN22の一部は第1電極12と接すると共に、P型GaN24の一部は第2電極15と接するように配置されている。なお、六方晶系のGaN結晶は六角柱状形状を呈し、そのc軸は長手軸と一致する。また、第1電極12は、発光粒子20のN型GaN22と接する部分以外の部分は絶縁層14で覆われている。
【0024】
発光粒子20は、N型GaN22が第1電極12と接しており、P型GaN24が第2電極15と接している。第1電極12と第2電極15との間に電力を供給すると、その間に電位差が生じ、発光粒子20を構成するN型GaN22と、P型GaN24との間に電流が流れ、N型GaN22とP型GaN24との界面において発光する。その光は、透明電極として設けられた第1電極12又は第2電極15、あるいは第1電極12と第2電極15の両方から外部に取り出される。
【0025】
この発光素子10は、芯部のN型GaN22の表面の一部を露出させたまま、それ以外の周囲を覆うP型GaN24とで構成された発光粒子20を、その長手軸であるc軸が第1基板11、第1電極12と平行になるように配置して発光部13を構成していることを特徴としている。これによって、図1に示すように、発光粒子20を構成するN型GaN22とP型GaN24とがそれぞれ異なった電極12、15と接する。その結果、電荷の伝導経路に対して、発光粒子20内におけるN型GaN22とP型GaN24との界面を広範囲にわたって形成することができ、正孔の注入性が改善され、電子と正孔との再結合型発光を効率よく生じ、低電圧で高輝度発光する発光素子を実現することができる。さらに、発光粒子20のN型GaN22とP型GaN24との界面をGaN結晶の非極性面(m面)に形成することにより、さらに発光効率を向上させることができる。
【0026】
なお、上述の構成に限られず、N型GaN22とP型GaN24との間に発光層を設けてもよい。また、発光粒子20は、実施例2に示すように芯部のN型GaN22と周囲のP型GaN24を入れ替えた構造、つまり、発光粒子は芯部のP型GaNと周囲のN型GaNとで構成されていてもよい。
【0027】
また、発光素子の光を取り出し方向の前方に色変換層を備えていてもよい。色変換層を備えることにより、フルカラーディスプレイの構造とすることが可能である。
【0028】
以下、この発光素子10を構成する各構成部材について説明する。
<基板>
第1基板11は、その上に形成する各層を支持できるものを用いる。また、第1基板11側から光を取り出す場合、発光体から発せられる光の波長に対し光透過性を有する材料であることが求められる。このような材料としては、例えば、コーニング1737等のガラス、石英、セラミック、サファイア等を用いることができる。通常のガラスに含まれるアルカリイオン等が発光素子へ影響しないように、無アルカリガラスや、ガラス表面にイオンバリア層としてアルミナ等をコートしたソーダライムガラスであってもよい。また、ポリエステル、ポリエチレンテレフタレート系、ポリクロロトリフルオロエチレン系とナイロン6の組み合わせやフッ素樹脂系材料、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリイミド、ポリアミドなどの樹脂フィルム等を用いることもできる。樹脂フィルムを用いる場合には、耐久性、柔軟性、透明性、電気絶縁性、防湿性の優れた材料を用いることが好ましい。なお、上記材料の記載は例示であって、基板11の材料は特にこれらに限定されるものではない。
【0029】
なお、第1基板11側から光を取り出さない構成の場合は、上述の光透過性は不要であり、透光性を有していない材料も用いることができる。これらの例としては、表面に絶縁層を有する金属基板やセラミックス基板、シリコンウエハ等がある。第2基板16についても、第1基板11と同様である。
【0030】
<電極>
第1電極12及び第2電極15として、光を取り出す側は透明電極を用い、取り出さない側は透明でない金属電極等を用いることができる。ここでは、図1に示すように、第2基板16の上の第2電極15を透明電極として設ける場合について説明するが、これに限られず、第1電極12を透明電極としてもよく、また第1電極12及び第2電極15の両方を透明電極としてもよい。
【0031】
まず、第2電極15を透明電極とする場合について説明する。透明電極の材料は、N型GaN22と、P型GaN24間で生じた発光を外部に取り出せるように光透過性を有するものであればよく、特に可視光領域において高い透過率を有することが好ましい。また、電極として低抵抗であることが好ましく、さらには第2基板16や発光粒子20を構成するP型GaN24との密着性に優れていることが好ましい。透明電極の材料として、特に好適なものは、ITO(In2O3にSnO2をドープしたものであり、インジウム錫酸化物ともいう。)やInZnO、ZnO、SnO2等を主体とする金属酸化物、Pt、Au、Pd、Ag、Ni、Cu、Al、Ru、Rh、Ir等の金属薄膜、あるいはポリアニリン、ポリピロール、PEDOT/PSS、ポリチオフェンなどの導電性高分子等が挙げられるが、特にこれらに限定されるものではない。これらの透明電極はその透明性を向上させ、あるいは抵抗率を低下させる目的で、スパッタリング法、エレクトロンビーム蒸着法、イオンプレーティング法、等の成膜方法で成膜できる。また成膜後に、抵抗率制御の目的でプラズマ処理などの表面処理を施してもよい。透明電極の膜厚は、必要とされるシート抵抗値と可視光透過率から決定される。
【0032】
透明電極のキャリア濃度は、1E17〜1E22cm−3の範囲であることが望ましい。また、透明電極として性能を出すために、透明電極の体積抵抗率は1E−3Ωcm以下であって、透過率は380〜780nmの波長において75%以上であることが望ましい。また、透明電極の屈折率は、1.85〜1.95が良い。さらに、透明電極の膜厚は30nm以下の場合に緻密で安定した特性を持つ膜が実現できる。
【0033】
また、透明電極を使用する必要のない側の電極としては、一般に良く知られている導電材料であればいずれでも適用できる。なお、N型GaN22との密着性に優れていることが好ましい。好適な例としては、例えば、ITOやInZnO、ZnO、SnO2等の金属酸化物、Pt、Au、Pd、Ag、Ni、Cu、Al、Ru、Rh、Ir、Cr、Mo、W、Ta、Nb等の金属、これらの積層構造体、あるいは、ポリアニリン、ポリピロール、PEDOT〔ポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)〕/PSS(ポリスチレンスルホン酸)等の導電性高分子、あるいは導電性カーボンなどを用いることができる。
【0034】
また、透明電極及び電極12、15は、それぞれ層内を全面覆うように構成してもよい。あるいは、層内に複数の電極をストライプ状に構成してもよい。さらに、透明電極および電極12、15をともに複数の電極をストライプ状として構成し、透明電極の各ストライプ状の電極と電極のすべてのストライプ状の電極とが、それぞれねじれの位置の関係であり、かつ、透明電極の各ストライプ状の電極を発光面に投影したものと電極のすべてのストライプ状の電極を発光面に投影したものとが互いに交わるように構成してもよい。この場合、透明電極のストライプ状の各電極、および、電極のストライプ状の各電極からそれぞれ選択した一対の電極間に電圧を印加することにより、所定位置が発光するディスプレイを構成することが可能となる。
【0035】
<発光部>
発光部13は、N型半導体の部分22とP型半導体の部分24とを有する発光粒子20が、一対の第1電極12と第2電極15の間に配置されて構成されている。また、発光粒子20は、N型半導体の部分22が第1の電極12と接し、P型半導体の部分24が第2の電極15と接するように配置されている。
【0036】
<発光粒子>
発光粒子20は、GaN結晶粒子からなる。このGaN結晶粒子はウルツ型の結晶構造を有し、結晶粒子の形状は六角柱状形状である。この六角柱の側面は非極性面といわれるm面となる。本発明の発光素子では、この非極性面(m面)上で発光する発光粒子を用いる。発光粒子20のGaN結晶粒子は、c軸が第1基板11の面に平行であって、N型半導体のN型GaN22が第1電極12に接し、P型半導体のP型GaN24が第2電極15に接するように配置されている。
【0037】
この発光粒子20は、上述のように第1電極12、第2電極15との間に配置されているが、上記の場合に限られず、次のうち、いずれかの構造を有していてもよい。
(a)N型GaN22芯粒子上にP型GaN24が形成されており、芯部のN型GaNが表面に一部露出している。
(b)核となる粒子上にN型GaN22が形成され、さらにP型GaN24がその上に形成されており、N型GaN22が一部露出している。
(c)N型GaN22芯粒子上に発光層が形成され、その上にP型GaN24が形成されており、N型GaN22が一部露出している。
(d)核となる粒子上にN型GaN22、発光層が形成され、その上にP型GaN24が形成されており、N型GaN22が一部露出している。
なお、核となる粒子は、その上にGaN結晶が成長しやすい粒子を選択することが望ましい。核粒子として、例えばサファイア、ZnOなどを用いることができる。
また、発光層はInGaNや、InGaNとGaNを積層した量子井戸構造のものなどが用いられる。
【0038】
また発光粒子20は、非極性面であるm面を電極と接触しやすくするために、非極性面であるm面の部分の幅が、c面の部分の幅の1.5倍以上であることが望ましい。m面の部分の幅がc面の幅より大きいことにより、m面を第1電極12に接触するように発光粒子20を並べることが容易となる。
【0039】
<実施例1>
本発明の第1の実施例として、図1に示す発光素子10の製造方法を、図2aから図2dを用いて説明する。
(a)まず、第1基板11の上に第1電極12を形成する(図2a)。
(b)次に、第1電極12の上に、GaN結晶のc軸が第1基板11に平行であって、N型GaN22が第1電極12に接するように配置する(図2b)。この場合に、N型GaN22が第1電極12と接している部分以外の第1電極12の上を絶縁層14で覆って、N型GaN22の各粒子間の間隙を埋めた状態とする。この絶縁層14には、例えばSOG(spin on glass)を用いることができる。具体的には、第1電極12上に絶縁層であるSOGを塗布し、N型GaN22の粒子を絶縁層14であるSOG上に配置し、N型GaN22の粒子に圧力を加えて、N型GaN22と第1電極12との間の絶縁層14を排除して、N型GaN22と第1電極12とが直接接するようにする。
(c)次いで、N型GaN22上にP型GaN24を形成する(図2c)。P型GaN24の形成方法としては、例えばMOCVD法が用いられる。なお、GaN結晶はSOG上に成長せずN型GaN22上にのみ成長するため、絶縁膜14上にはP型GaN24は成長しない。
(d)次に、第2電極15を形成した第2基板16を、P型GaN24が第2電極15に接するように張り合わせる(図2d)。
以上によって実施例1に係る発光素子10が得られる。
【0040】
なお、第2基板16を用いない場合は、図3に示すように、別例の発光素子10aのように、上記発光粒子20の表面のP型GaN24を覆うように第2電極15を形成してもよい。
【0041】
また、図3のような第2電極15を形成した場合であっても、図4に示すように、さらに別例の発光素子10bのように、第2基板16を用いてもよい。
【0042】
<実施例2>
本発明の実施例2に係る発光素子10cの製造方法について、図5aから図5dを用いて以下に説明する。
(a)まず、第1基板11の上に第1電極12を形成する(図5a)。
(b)次に、芯部のN型GaN22の表面をP型GaN24で覆った六角柱状粒子を形成する。このGaN結晶からなる六角柱状粒子の長手軸であるc軸が第1基板11に平行であって、P型GaN24が第1電極12と接するように配置する(図5b)。この場合に、P型GaN24が第1電極12と接している部分以外の第1電極12の上を絶縁層14で覆って、各粒子間の間隙を埋めた状態とする。この絶縁層14には、例えばSOG(spin on glass)を用いることができる。具体的には、第1電極12上に絶縁層であるSOGを塗布し、芯部のN型GaN22の表面をP型GaN24で覆った粒子をSOG14上に配置し、粒子に圧力を加えて、P型GaN24と第1電極12との間の絶縁層14を排除して、P型GaN24と第1電極12とが直接接するようにする。
(c)次いで、粒子表面のP型GaN24をエッチングして、芯部のN型GaN22の一部を粒子表面に露出させる(図5c)。
(d)次に、第2電極15を形成した第2基板16を、第2電極15が表面に露出したN型GaN22に接するように張り合わせる(図5d)。
以上によって実施例2に係る発光素子10cが得られる。
【産業上の利用可能性】
【0043】
本発明に係る発光素子は、低電圧にて発光し、寿命も長く、高い発光輝度を有するので、LCDのバックライト、照明、ディスプレイ等に利用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0044】
【図1】本発明の実施の形態1に係る発光素子の概略断面図である。
【図2a】実施例1に係る発光素子の製造方法における一工程を示す断面図である。
【図2b】実施例1に係る発光素子の製造方法における一工程を示す断面図である。
【図2c】実施例1に係る発光素子の製造方法における一工程を示す断面図である。
【図2d】実施例1に係る発光素子の製造方法における一工程を示す断面図である。
【図3】別例の発光素子の構成を示す断面図である。
【図4】さらに別例の発光素子の構成を示す断面図である。
【図5a】実施例2に係る発光素子の製造方法における一工程を示す断面図である。
【図5b】実施例2に係る発光素子の製造方法における一工程を示す断面図である。
【図5c】実施例2に係る発光素子の製造方法における一工程を示す断面図である。
【図5d】実施例2に係る発光素子の製造方法における一工程を示す断面図である。
【符号の説明】
【0045】
10、10a、10b、10c 発光素子
11 第1基板
12 第1電極
13 発光部
20 発光粒子
22 N型GaN
24 P型GaN
14 絶縁層
15 第2電極
16 第2基板
【特許請求の範囲】
【請求項1】
一対の第1電極及び第2電極と、
前記第1電極と前記第2電極との間に配置された発光部と、
を備え、
前記発光部は、第1伝導型の半導体の部分と第2伝導型の半導体の部分とを有する発光粒子が前記第1電極及び第2電極の間に配置されて構成されており、
前記発光粒子は、粒子表面に露出した前記第1伝導型の半導体の一部が前記第1電極と接していると共に、粒子表面に露出した前記第2伝導型の半導体の一部が前記第2電極に接しており、
前記第1電極は、前記発光粒子の前記第1伝導型の半導体と接する部分以外の部分が絶縁体で覆われていることを特徴とする発光素子。
【請求項2】
前記発光粒子は、芯部の第1伝導型の半導体と、その表面の一部を覆う第2伝導型の半導体とで構成されていることを特徴とする請求項1に記載の発光素子。
【請求項3】
前記発光粒子は、芯部の第2伝導型の半導体と、その表面の一部を覆う第1伝導型の半導体とで構成されていることを特徴とする請求項1に記載の発光素子。
【請求項4】
前記第1伝導型の半導体はN型半導体であって、前記第2伝導型の半導体は、P型半導体であることを特徴とする請求項1から3のいずれか一項に記載の発光素子。
【請求項5】
前記第1伝導型の半導体はP型半導体であって、前記第2伝導型の半導体は、N型半導体であることを特徴とする請求項1から3のいずれか一項に記載の発光素子。
【請求項6】
前記発光粒子は、六角柱状形状を有し、長手軸が前記第1電極の面に平行に配置されていることを特徴とする請求項1から5のいずれか一項に記載の発光素子。
【請求項7】
前記第1伝導型の半導体及び前記第2伝導型の半導体は、それぞれ化合物半導体であることを特徴とする請求項1から6のいずれか一項に記載の発光素子。
【請求項8】
前記第1伝導型の半導体及び前記第2伝導型の半導体は、第III族−第V族間化合物半導体であることを特徴とする請求項1から6のいずれか一項に記載の発光素子。
【請求項9】
前記第1伝導型の半導体及び前記第2伝導型の半導体は、窒化ガリウムからなることを特徴とする請求項1から6のいずれか一項に記載の発光素子。
【請求項10】
前記第1電極又は前記第2電極は、酸化亜鉛を主体とし、アルミニウム、ガリウム、チタン、ニオブ、タンタル、タングステン、銅、銀、ホウ素からなる群から選ばれる少なくとも一種を含むことを特徴とする請求項1から9のいずれか一項に記載の発光素子。
【請求項11】
前記第1電極又は前記第2電極の少なくとも一方の電極に面して支持する支持体基板をさらに備えることを特徴とする請求項1から10のいずれか一項に記載の発光素子。
【請求項12】
前記第1電極及び前記第2電極のそれぞれに対向し、且つ、前記発光部からの発光の取出し方向の前方に色変換層をさらに備えることを特徴とする請求項1から11のいずれか一項に記載の発光素子。
【請求項1】
一対の第1電極及び第2電極と、
前記第1電極と前記第2電極との間に配置された発光部と、
を備え、
前記発光部は、第1伝導型の半導体の部分と第2伝導型の半導体の部分とを有する発光粒子が前記第1電極及び第2電極の間に配置されて構成されており、
前記発光粒子は、粒子表面に露出した前記第1伝導型の半導体の一部が前記第1電極と接していると共に、粒子表面に露出した前記第2伝導型の半導体の一部が前記第2電極に接しており、
前記第1電極は、前記発光粒子の前記第1伝導型の半導体と接する部分以外の部分が絶縁体で覆われていることを特徴とする発光素子。
【請求項2】
前記発光粒子は、芯部の第1伝導型の半導体と、その表面の一部を覆う第2伝導型の半導体とで構成されていることを特徴とする請求項1に記載の発光素子。
【請求項3】
前記発光粒子は、芯部の第2伝導型の半導体と、その表面の一部を覆う第1伝導型の半導体とで構成されていることを特徴とする請求項1に記載の発光素子。
【請求項4】
前記第1伝導型の半導体はN型半導体であって、前記第2伝導型の半導体は、P型半導体であることを特徴とする請求項1から3のいずれか一項に記載の発光素子。
【請求項5】
前記第1伝導型の半導体はP型半導体であって、前記第2伝導型の半導体は、N型半導体であることを特徴とする請求項1から3のいずれか一項に記載の発光素子。
【請求項6】
前記発光粒子は、六角柱状形状を有し、長手軸が前記第1電極の面に平行に配置されていることを特徴とする請求項1から5のいずれか一項に記載の発光素子。
【請求項7】
前記第1伝導型の半導体及び前記第2伝導型の半導体は、それぞれ化合物半導体であることを特徴とする請求項1から6のいずれか一項に記載の発光素子。
【請求項8】
前記第1伝導型の半導体及び前記第2伝導型の半導体は、第III族−第V族間化合物半導体であることを特徴とする請求項1から6のいずれか一項に記載の発光素子。
【請求項9】
前記第1伝導型の半導体及び前記第2伝導型の半導体は、窒化ガリウムからなることを特徴とする請求項1から6のいずれか一項に記載の発光素子。
【請求項10】
前記第1電極又は前記第2電極は、酸化亜鉛を主体とし、アルミニウム、ガリウム、チタン、ニオブ、タンタル、タングステン、銅、銀、ホウ素からなる群から選ばれる少なくとも一種を含むことを特徴とする請求項1から9のいずれか一項に記載の発光素子。
【請求項11】
前記第1電極又は前記第2電極の少なくとも一方の電極に面して支持する支持体基板をさらに備えることを特徴とする請求項1から10のいずれか一項に記載の発光素子。
【請求項12】
前記第1電極及び前記第2電極のそれぞれに対向し、且つ、前記発光部からの発光の取出し方向の前方に色変換層をさらに備えることを特徴とする請求項1から11のいずれか一項に記載の発光素子。
【図1】
【図2a】
【図2b】
【図2c】
【図2d】
【図3】
【図4】
【図5a】
【図5b】
【図5c】
【図5d】
【図2a】
【図2b】
【図2c】
【図2d】
【図3】
【図4】
【図5a】
【図5b】
【図5c】
【図5d】
【公開番号】特開2010−87164(P2010−87164A)
【公開日】平成22年4月15日(2010.4.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−253492(P2008−253492)
【出願日】平成20年9月30日(2008.9.30)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年4月15日(2010.4.15)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年9月30日(2008.9.30)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】
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