説明

発光素子

【課題】動作電圧の増加を抑制することのできる発光素子を提供する。
【解決手段】本発明に係る発光素子1は、第1導電型の第1半導体層と、第1導電型とは異なる第2導電型の第2半導体層と、第1半導体層と第2半導体層とに挟まれる発光層105とを有する半導体積層構造10と、半導体積層構造10の一方の面側に設けられ、発光層105が発する光を反射し、アルミニウムを含む反射層132と、半導体積層構造10と反射層132との間の一部に設けられ、半導体積層構造10と反射層132とを電気的に接続し、反射層132に接触する側にバリア層124を有する界面電極120とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発光素子に関する。特に、本発明は、赤色光より短波長で青色光より長波長である波長の光を発する発光素子に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、アノード電極を一方の表面に有するシリコン支持基板と、シリコン支持基板の他方の表面に金属接合層を介して設けられる金属反射層と、金属反射層上に設けられ、金属反射層にオーミック接触する光透過膜と、光透過膜上に設けられ、光透過膜にオーミック接触するp型半導体層とn型半導体層とに挟まれた活性層を有する半導体積層構造と、半導体積層構造の上に設けられるカソード電極とを備える発光素子が知られている(例えば、特許文献1参照。)。
【0003】
特許文献1に記載の発光素子は金属からなる反射層を備えている。したがって、反射層に入射した光は、反射層への入射角によらずに光取り出し面側に反射されるので、光取り出し効率を向上させることができる。また、特許文献1に記載の発光素子が備える活性層が発する光が赤色光又は赤外光である場合、反射層を金(Au)から形成することにより、光取り出し効率を大きく向上させることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2005−175462号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、特許文献1に記載の発光素子が、例えば、黄色又は橙色等の赤色光より短波長で青色光より長波長である波長の光を発する活性層を備える場合であって、反射層がAuから形成される場合、赤色光又は赤外光を発する活性層を備える場合に比べて高出力化を実現することは困難である。これは、Auからなる反射層における黄色又は橙色等の光の反射率が、赤色光又は赤外光の反射率に比べて低いことによる。また、特許文献1に記載の発光素子において、Auを含む金属材料から金属接合層を形成し、赤色光より短波長の光に対する反射率が高いアルミニウム(Al)から反射層を形成した場合、金属接合層と反射層との間で合金化が進行し、発光素子の動作電圧が高くなる場合がある。
【0006】
したがって、本発明の目的は、動作電圧の増加を抑制することのできる発光素子を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、上記目的を達成するため、第1導電型の第1半導体層と、第1導電型とは異なる第2導電型の第2半導体層と、第1半導体層と第2半導体層とに挟まれる発光層とを有する半導体積層構造と、半導体積層構造の一方の面側に設けられ、発光層が発する光を反射し、アルミニウムを含む反射層と、半導体積層構造と反射層との間の一部に設けられ、半導体積層構造と反射層とを電気的に接続し、反射層に接触する側にバリア層を有する界面電極とを備える発光素子が提供される。
【0008】
また、上記発光素子において、反射層の半導体積層構造側の反対側に、金属接合層を介して反射層を支持することにより半導体積層構造を支持する支持基板と、半導体積層構造と反射層との間に設けられ、半導体積層構造を構成する半導体の屈折率より低い屈折率を有する誘電体層とを更に備え、界面電極が、誘電体層を貫通し、半導体積層構造と反射層とを電気的に接続し、バリア層が、白金を含んで形成され、発光層が、発光ピーク波長で550nm以上615nm以下の光を発することもできる。
【0009】
また、上記発光素子において、金属接合層と反射層との間に、チタン及び白金の少なくとも一方を含む合金化バリア層を更に備え、金属接合層が、金を含むこともできる。
【0010】
また、上記発光素子において、界面電極が、半導体積層構造に接触する面にAuBe若しくはAuZnを含んで形成される電極層を有することもできる。
【0011】
また、上記発光素子において、バリア層が、30nm以上の厚さを有することもできる。
【0012】
また、上記発光素子において、電極層が、30nm以上の厚さを有することもできる。
【発明の効果】
【0013】
本発明に係る発光素子によれば、動作電圧の増加を抑制することのできる発光素子を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1A】本発明の実施の形態に係る発光素子の模式的な縦断面である。
【図1B】本発明の実施の形態に係る発光素子の模式的な上面図である。
【図2A】本発明の実施の形態に係る発光素子の製造工程の流れを示す図である。
【図2B】本発明の実施の形態に係る発光素子の製造工程の流れを示す図である。
【図2C】本発明の実施の形態に係る発光素子の製造工程の流れを示す図である。
【図2D】本発明の実施の形態に係る発光素子の製造工程の流れを示す図である。
【図2E】本発明の実施の形態に係る発光素子の製造工程の流れを示す図である。
【図2F】本発明の実施の形態に係る発光素子の製造工程の流れを示す図である。
【図2G】本発明の実施の形態に係る発光素子の製造工程の流れを示す図である。
【図2H】本発明の実施の形態に係る発光素子の製造工程の流れを示す図である。
【図2I】本発明の実施の形態に係る発光素子の製造工程の流れを示す図である。
【図3】実施例6及び実施例6の比較例に係る各発光素子の発光出力の評価結果を示す図である。
【図4】実施例6及び実施例6の比較例に係る各発光素子の動作電圧の評価結果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
[実施の形態の要約]
赤色光より短波長で青色光より長波長である波長の光を発する発光素子において、第1導電型の第1半導体層と、前記第1導電型とは異なる第2導電型の第2半導体層と、前記第1半導体層と前記第2半導体層とに挟まれる発光層とを有する半導体積層構造と、前記半導体積層構造の一方の面側に設けられ、前記発光層が発する光を反射し、アルミニウムを含む反射層と、前記半導体積層構造と前記反射層との間の一部に設けられ、前記半導体積層構造と前記反射層とを電気的に接続し、前記反射層に接触する側にバリア層を有する界面電極とを備える発光素子が提供される。
【0016】
[実施の形態]
図1Aは、本発明の実施の形態に係る発光素子の模式的な縦断面を示す。また、図1Bは、本発明の実施の形態に係る発光素子の模式的な上面を示す。
【0017】
(発光素子1の構造)
図1Aを参照すると、本実施の形態に係る発光素子1は、複数の半導体層の積層からなり、平板状の半導体積層構造10と、半導体積層構造10の一方の面側に設けられ、発光層105が発する光を反射する反射層132と、半導体積層構造10と反射層132との間の一部に設けられ、半導体積層構造10と反射層132とを電気的に接続する界面電極120とを備える。
【0018】
具体的に、発光素子1は、黄色光から橙色光の範囲内の波長の光(例えば、発光ピーク波長で580nm以上615nm以下の光)を発する発光層105を有する半導体積層構造10と、半導体積層構造10の一方の表面の一部に電気的に接続する表面電極110と、表面電極110の表面の一部に設けられるワイヤーボンディング用パッドとしてのパッド電極115と、半導体積層構造10の他方の表面の一部に電気的に接続する界面電極120と、半導体積層構造10と反射層132との間であって、半導体積層構造10を構成する半導体材料の屈折率より低い屈折率を有し、界面電極120が設けられている領域を除く半導体積層構造10の他方の表面に設けられる誘電体層140と、界面電極120及び誘電体層140の半導体積層構造10に接する面の反対側に設けられる反射層132とを備える。なお、界面電極120は、誘電体層140を貫通して設けられ、半導体積層構造10と反射層132とを電気的に接続する。
【0019】
更に、発光素子1は、反射層132の半導体積層構造10側の反対側に、金属接合層としての第1接合層136及び第1接合層136とは異なる第2接合層202を介して反射層132を支持することにより半導体積層構造10を支持する支持基板20と、第1接合層136と反射層132との間に設けられる合金化バリア層134と、支持基板20の第1接合層136及び第2接合層202側の反対側の面(すなわち、裏面)に設けられる裏面電極210とを備える。なお、支持基板20は、第2接合層202を構成する材料が支持基板20側に拡散することを抑制するバリア層としての機能と、支持基板20にオーミック接続するオーミック電極としての機能とを併せ持つコンタクト電極204を半導体積層構造10側の表面に有する。
【0020】
また、界面電極120は、半導体積層構造10にオーミック接触する電極層122と、反射層132に接触する側に設けられるバリア層124とを有する。ここで、本実施の形態において反射層132はAlを含んで形成され、好ましくはAlから形成される。また、電極層122は、例えば、AuBe若しくはAuZnを含んで形成される。更に、バリア層124はPtを含んで形成され、好ましくはPtから形成される。そして、第1接合層136はAuを含んで形成され、合金化バリア層134に接触する第1接合層136の面はAuから形成されることが好ましい。
【0021】
また、本実施の形態に係る発光素子1の半導体積層構造10は、界面電極120及び誘電体層140に接して設けられるp型コンタクト層109と、p型コンタクト層109の誘電体層140に接している面の反対側に設けられる第2導電型の第2半導体層としてのp型クラッド層107と、p型クラッド層107のp型コンタクト層109に接している面の反対側に設けられる発光層105と、発光層105のp型クラッド層107に接している面の反対側に設けられる第1導電型の第1半導体層としてのn型クラッド層103と、n型クラッド層103の発光層105に接している面の反対側の一部の領域に設けられるn型コンタクト層101とを有する。なお、半導体積層構造10の誘電体層140に接している側の反対側の表面は、本実施の形態に係る発光素子1の光取出し面となる。具体的には、n型クラッド層103の発光層105に接している面の反対側の表面の一部が光取出し面となる。
【0022】
また、図1Bに示すように、本実施形態に係る発光素子1は平面視にて略正方形に形成される。一例として、発光素子1の平面寸法は、縦寸法及び横寸法がそれぞれ300μmである。また、発光素子1の厚さは、210μm程度に形成される。なお、本実施の形態に係る発光素子1は、例えば、平面寸法が500μm以上の大型のチップサイズを有する発光素子として構成することもできる。
【0023】
(表面電極110と界面電極120との詳細)
表面電極110及び界面電極120の詳細を説明する。表面電極110は、n型コンタクト層101上に設けられる円電極と複数の細線電極とから構成される。例えば、表面電極110は、平面視にて、略矩形に形成される発光素子1の一の辺に近接して当該一の辺に略水平に設けられる細線電極110aと、当該一の辺の対辺に近接して当該対辺に略水平に設けられる細線電極110cと、細線電極110aと細線電極110cとの間において、細線電極110aと細線電極110cとの双方から略等しい位置に細線電極110a及び細線電極110cに対して略水平に設けられる細線電極110bとを有する。
【0024】
そして、表面電極110は、細線電極110a、細線電極110b、及び細線電極110cそれぞれの長手方向に対して略垂直な方向に延びると共に、これらの細線電極の略中間においてこれらの細線電極に接して設けられる細線電極110dを更に有する。また、表面電極110は、細線電極110bと細線電極110dとの交点を含む領域に円電極を有する。なお、図1Bおいて、円電極は、パッド電極115の直下に位置するので図示されていない。また、平面視にて、発光素子1の中心とパッド電極115の中心とが略一致する位置に、パッド電極115は設けられる。すなわち、パッド電極115は、円電極の直上に、円電極に接して設けられる。
【0025】
次に、界面電極120は、平面視にて、表面電極110の直下の誘電体層140の領域を除く部分に位置する開口内に、平面視にて切断されている部分のない単一の形状で設けられる。例えば、界面電極120は、平面視にて、発光素子1の外周に沿った形状を有する外周部120aと、外周部120aの一の辺から平面視における発光素子1の中心に向かって所定の長さを有して延びると共に、外周部120aに一方の端部が接して設けられる細線部120bと、細線部120bに隣接すると共に、細線部120bよりもパッド電極115に近い位置に設けられ、細線部120bよりも短い長さで形成される細線部120cとを有する。
【0026】
更に、界面電極120は、細線電極110bの長手方向に沿って延びる細線電極110bの仮想の中心線を対称軸(図示しない)として、細線部120b及び細線部120cに対して対称の位置に設けられる細線部120d及び細線部120eを有する。また、界面電極120は、細線電極110dの中心線を対象軸とした場合に、細線部120bないし細線部120eに対して対称の位置に設けられる複数の細線部を有する。
【0027】
そして、平面視にて、表面電極110と界面電極120とは重ならない配置になる。例えば、平面視にて、細線電極110aと細線電極110bとの間に、細線部120b及び細線部120cが位置すると共に、細線部120b及び細線部120cはそれぞれ、細線電極110dには接しない長さを有して形成される。同様に、平面視にて、細線電極110bと細線電極110cとの間に、細線部120d及び細線部120eが位置すると共に、細線部120d及び細線部120eはそれぞれ、細線電極110dには接しない長さを有して形成される。
【0028】
なお、表面電極110の円電極は、円電極上に設けられるパッド電極115の表面に接続されるAu等の金属材料からなるワイヤーのボール部分の直径に応じて、例えば75μm以上の直径を有して形成される。一例として、表面電極110の円電極は、直径が100μmの円形状に形成される。また、表面電極110の細線電極110aないし110dは、幅が10μmの線状に形成される。更に、界面電極120は、平面視にて、表面電極110の直下の領域を除いたp型コンタクト層109の表面に設けられる。そして、一例として、各細線部は5μm幅を有して形成される。界面電極120は、誘電体層140を貫通して設けられる開口内に形成されることにより、半導体積層構造10と反射層132とを電気的に接続する。
【0029】
(半導体積層構造10)
本実施の形態に係る半導体積層構造10は、例えば、III−V族化合物半導体であるAlGaInP系の化合物半導体を有して形成される。具体的に、半導体積層構造10は、不純物であるドーパントがドープされていないアンドープのAlGaInP系の化合物半導体から形成される発光層105を、n型のAlGaInPを含んで形成されるn型クラッド層103と、p型のAlGaInPを含んで形成されるp型クラッド層107とで挟んだ構成を有する。
【0030】
発光層105は、外部から電流が供給されると黄色光から橙色光の範囲の波長の光を発する。例えば、発光層105は、ピーク波長が595nm付近の黄色光を発する化合物半導体材料で形成される。発光層105は、一例として、アンドープの(Al0.1Ga0.90.5In0.5P層とアンドープの(Al0.6Ga0.40.5In0.5P層とのペアを含む多重量子井戸構造を有して形成される。また、n型クラッド層103は、Si、Se等のn型のドーパントを所定の濃度含む。一例として、n型クラッド層103は、Siがドープされたn型の(Al0.7Ga0.30.5In0.5P層から形成される。更に、p型クラッド層107は、Zn、Mg等のp型のドーパントを所定の濃度含む。一例として、p型クラッド層107は、Mgがドープされたp型の(Al0.7Ga0.30.5In0.5P層から形成される。
【0031】
更に、半導体積層構造10が有するp型コンタクト層109は、一例として、Mgが所定の濃度ドープされたp型のGaP層から形成される。そして、n型コンタクト層101は、Siが所定の濃度ドープされたGaAs層から形成される。ここで、n型コンタクト層101は、n型クラッド層103の上面において、少なくとも表面電極110が設けられる領域に設けられる。
【0032】
(誘電体層140)
誘電体層140は、p型コンタクト層109の表面(すなわち、p型クラッド層107に接している面の反対側の面)であって、界面電極20が設けられていない領域に設けられる。誘電体層140は、発光層105が発する光を透過する材料で形成される。例えば、誘電体層140は、発光層105が発する光に対して実質的に透明な材料から形成される。誘電体層140は、一例として、SiO、TiO、SiN等の等の透明誘電体から形成される。そして、誘電体層140の界面電極120が形成される所定の領域は厚さ方向に沿って貫通されており、貫通された部分に金属材料が充填されて界面電極120が形成される。
【0033】
(反射層132)
反射層132は、発光層105が発する光に対して高い反射率を有する導電性材料から形成される。一例として、反射層132は、当該光に対して80%以上の反射率を有する導電性材料から形成する。反射層132は、発光層105が発した光のうち、反射層132に達した光を発光層105側に向けて反射する。具体的に、反射層132は、黄色光から橙色光の波長領域において反射率が高いAlを含む金属、若しくはAlから形成される。そして、合金化バリア層134はPtから形成される。合金化バリア層134は、第1接合層136を構成する材料が反射層132に伝搬することを抑制する。また、第1接合層136は、第2接合層202と電気的及び機械的に接合する材料から形成され、一例として、所定膜厚のAuから形成される。
【0034】
(支持基板20)
支持基板20は、導電性材料から形成される。具体的に支持基板20は、p型又はn型の導電性Si基板、又はp型又はn型のGe基板から形成する。例えば、本実施の形態においては、0.01Ω・cm以下の抵抗率を有するSi基板を用いる。なお、支持基板20としてSi基板を用いる場合、Si基板の面方位は、いずれの面方位であってもよい。
【0035】
第2接合層202は、第1接合層136と同様に、所定膜厚のAuから形成することができる。また、コンタクト電極204は、支持基板20に電気的に接合すると共に、第2接合層202を構成する材料が支持基板20側に伝搬することを抑制する材料から形成される。例えば、コンタクト電極204は、所定膜厚のTiから形成される。
【0036】
裏面電極210は、支持基板20に電気的に接合する材料から形成される。そして、発光素子1は、裏面電極210の側を下に向けて、Agペースト等の導電性の接合材料、又はAuSn等の共晶材料を用いてAl、Cu等の金属材料から形成されるステムの所定の位置に搭載される。
【0037】
(変形例)
半導体積層構造10の発光層105の構造を制御して、例えば、緑色光から黄緑色光の波長範囲の光(例えば、550nm以上580nm以下の波長の光)を発する発光素子1を形成することもできる。
【0038】
また、発光素子1が備える半導体積層構造10は、半導体積層構造10を構成する化合物半導体層の導電型を、本実施の形態の反対にすることもできる。例えば、n型コンタクト層101及びn型クラッド層103の導電型をp型にすると共に、p型クラッド層107及びp型コンタクト層109の導電型をn型にすることもできる。
【0039】
また、表面電極110の平面視における形状は、本実施の形態に係る発光素子1における形状に限られず、平面視にて四角形、菱形、多角形等の形状にすることもできる。更に、界面電極120は、切断部のない単一な形状に形成されているが、変形例においては、界面電極120の一部に切断部を形成して、複数の領域からなる界面電極120を形成することもできる。例えば、界面電極120は、複数のドット状に形成することもできる。また、表面電極110を構成する材料及び厚さは適宜変更できる。更に、電極層122を構成する材料及び厚さ、並びにバリア層124の厚さも適宜変更できる。
【0040】
また、発光素子1の平面寸法は上記の実施形態に限られない。例えば、発光素子1の平面寸法は、縦寸法及び横寸法がそれぞれ1mm以上の寸法になるように設計することもできる。また、発光素子1の使用用途に応じて、縦寸法及び横寸法を適宜変更してすることができる。一例として、発光素子1の平面寸法を、縦寸法の方が横寸法より短くなるように設計すると、発光素子1の平面視における形状は、略長方形となる。
【0041】
また、発光層105は、単一量子井戸構造、多重量子井戸構造、又は歪み多重量子井戸構造のいずれの構造からも形成することができる。更に、発光層105は、ノンドープのバルクの活性層を含んで形成することもできる。
【0042】
(発光素子1の製造方法)
図2Aから図2Iは、本発明の実施の形態に係る発光素子の製造工程の流れの一例を示す。
【0043】
まず、図2A(a)に示すように、n型GaAs基板100の上に、例えば、有機金属気相エピタキシー法(Metal Organic Vapor Phase Epitaxy:MOVPE法)によって複数の化合物半導体層を含むAlGaInP系の半導体積層構造11を形成する。具体的には、n型GaAs基板100の上に、アンドープの(Al0.7Ga0.30.5In0.5Pを有するエッチングストップ層102と、Siがドープされたn型のGaAsを有するn型コンタクト層101と、Siがドープされたn型の(Al0.7Ga0.30.5In0.5Pを有するn型クラッド層103と、アンドープの(Al0.1Ga0.90.5In0.5P層とアンドープの(Al0.6Ga0.40.5In0.5P層とのペアを含む多重量子井戸構造を有する発光層105と、Mgがドープされたp型の(Al0.7Ga0.30.5In0.5Pを有するp型クラッド層107と、Mgがドープされたp型のGaPを有するp型コンタクト層109とをMOVPE法を用いてこの順に形成する。これにより、n型GaAs基板100上に半導体積層構造11が形成されたエピタキシャルウエハが形成される。
【0044】
なお、MOVPE法において用いる原料は、トリメチルガリウム(TMGa)、トリエチルガリウム(TEGa)、トリメチルアルミニウム(TMAl)、トリメチルインジウム(TMIn)等の有機金属化合物、及びアルシン(AsH)、ホスフィン(PH)等の水素化物ガスを用いることができる。更に、n型のドーパントの原料は、ジシラン(Si)を用いることができる。そして、p型のドーパントの原料は、ビスシクロペンタジエニルマグネシウム(CpMg)を用いることができる。
【0045】
また、n型のドーパントの原料として、セレン化水素(HSe)、モノシラン(SiH)、ジエチルテルル(DETe)、又はジメチルテルル(DMTe)を用いることもできる。そして、p型のドーパントの原料として、ジメチルジンク(DMZn)又はジエチルジンク(DEZn)を用いることもできる。
【0046】
また、n型GaAs基板100の上の半導体積層構造11は、分子線エピタキシー法(Molecular Beam Epitaxy:MBE)又はハライド気相エピタキシー法(Halide Vapor Phase Epitaxy:HVPE)等を用いて形成することもできる。
【0047】
次に、図2A(b)に示すように、図2A(a)において形成したエピタキシャルウエハをMOVPE装置から搬出した後、p型コンタクト層109の表面に誘電体層140を形成する。具体的には、プラズマCVD(Chemical Vapor Deposition)装置を用いて、誘電体層140としてのSiO層をp型コンタクト層109の表面に形成する。なお、誘電体層140は、真空蒸着法により形成することもできる。
【0048】
次に、図2B(c)に示すように、フォトリソグラフィー法及びエッチング法を用い、誘電体層140に開口140aを形成する。例えば、開口140aを形成すべき領域に溝を有するフォトレジストパターンを、誘電体層140上に形成する。開口140aは、誘電体層140の表面からp型コンタクト層109と誘電体層140との界面までを貫通して形成される。具体的には、フッ酸を純水で希釈したエッチャントを用いて、フォトレジストパターンが形成されていない領域の誘電体層140を除去することにより、誘電体層140に開口140aを形成する。なお、開口140aは、図1Bにおいて説明した界面電極120が設けられる領域に形成する。
【0049】
続いて、図2B(d)に示すように、真空蒸着法を用い、開口140aに界面電極120を構成する材料を形成する。まず、AuBe合金(すなわち、金・ベリリウム合金、Au:99wt%、Be:1wt%)又はAuZn合金(すなわち、金・亜鉛合金、Au:95wt%、Zn:5wt%)からなる電極層122を開口140a内に、開口140aを完全には埋めないように形成する。続いて、Ptからなるバリア層124を電極層122の上に重なるように開口140a内に形成する。例えば、開口140aを形成する際に用いるフォトレジストパターンをマスクとして、開口140a内にAuBe又はAuZnとPtとを真空蒸着することにより、界面電極120を形成する。これにより、図2B(d)に示すように、誘電体層140に界面電極120が形成される。なお、平面視における界面電極120の形状は、「(表面電極110とコンタクト部120との詳細)」において詳述したので説明を省略する。
【0050】
次に、図2C(e)に示すように、真空蒸着法又はスパッタ法を用いて、反射層132としてのAl層と、合金化バリア層134としてのTi層と、第1接合層136としてのAu層とを形成する。これにより、半導体積層構造体1aが形成される。
【0051】
そして、図2D(f)に示すように、支持基板20としての導電性のSi基板上に、コンタクト電極204としてのTiと、第2接合層202としてのAuとをこの順に真空蒸着法を用いて形成する。これにより、支持構造体20aが形成される。続いて、半導体積層構造体1aの第1接合層136の表面である接合面136aと、支持構造体20aの第2接合層202の表面である接合面202aとを対向させて重ね、この状態をカーボン等から形成される冶具で保持する。
【0052】
続いて、半導体積層構造体1aと支持構造体20aとが重なり合った状態を保持している冶具を、ウエハ貼合わせ装置内に導入する。そして、ウエハ貼合わせ装置内を所定圧力にする。一例として、1.333Pa(0.01Torr)の圧力に設定する。そして、互いに重なり合っている半導体積層構造体1aと支持構造体20aとに冶具を介して圧力を加える。一例として、15kgf/cmの圧力を加える。次に、冶具を所定温度まで所定の昇温速度で加熱する。
【0053】
具体的には、冶具の温度を350℃まで加熱する。そして、冶具の温度が350℃程度に達した後、冶具を当該温度で約30分保持する。その後、冶具を徐冷する。冶具の温度を、例えば室温まで十分に低下させる。冶具の温度が低下した後、冶具に加わっている圧力を開放する。そして、ウエハ貼合わせ装置内の圧力を大気圧にして冶具を取り出す。これにより、図2D(g)に示すように、半導体積層構造体1aと支持構造体20aとが接合層136と接合層202との間において機械的・電気的に接合した接合構造体1bが形成される。
【0054】
なお、本実施の形態において半導体積層構造体1aは、合金化バリア層134を有している。したがって、半導体積層構造体1aと支持構造体20aとを接合面136aと接合面202aとで接合させた場合であっても、第1接合層136及び第2接合層202を形成する材料が反射層132に拡散することを抑制して、反射層132の反射特性が劣化することを抑制できる。また、反射層132と電極層122との間にはバリア層124が形成されている。したがって、半導体積層構造体1aと支持構造体20aとの接合時における熱により電極層122を構成する材料が反射層132に拡散することを抑制できる。これにより、反射層132と界面電極120(より詳しくは、界面電極120が有する電極層122)との間で合金反応が進行することを抑制できる。
【0055】
次に、研磨装置の冶具に貼り付け用ワックスで接合構造体1bを貼り付ける。具体的に、支持基板20側を当該冶具に貼り付ける。そして、接合構造体1bのn型GaAs基板100を所定の厚さになるまで研磨する。続いて、研磨後の接合構造体1bを研磨装置の冶具から取り外して、支持基板20の表面に付着しているワックスを洗浄除去する。そして、図2E(h)に示すように、GaAsエッチング用のエッチャントを用いて、研磨後の接合構造体1bからn型GaAs基板100を選択的に完全に除去してエッチングストップ層102が露出した接合構造体1cを形成する。GaAsエッチング用のエッチャントとしては、例えば、アンモニア水と過酸化水素水との混合液が挙げられる。なお、n型GaAs基板100を研磨せずに、全てのn型GaAs基板100をエッチングにより除去することもできる。
【0056】
そして、図2E(i)に示すように、接合構造体1cからエッチングストップ層102を、所定のエッチャントを用いてエッチングにより除去する。これにより、エッチングストップ層102が除去された接合構造体1dが形成される。エッチングストップ層102がAlGaInP系の化合物半導体から形成されている場合、所定のエッチャントとしては、塩酸を含むエッチャントを用いることができる。これによりn型コンタクト層101の表面が外部に露出する。
【0057】
続いて、フォトリソグラフィー法及び真空蒸着法を用いて、n型コンタクト層101の表面の所定の位置に、表面電極110を形成する。表面電極110は、例えば、直径が100μmの円電極と幅が10μmの複数の細線電極とから形成される。また、表面電極110は、例えば、AuGe、Ni、Auをこの順にn型コンタクト層101上に蒸着することにより形成される。この場合に、表面電極110は、界面電極120の直上に位置しないように形成される。なお、表面電極110の形状の詳細は、「(表面電極110とコンタクト部120との詳細)」において説明したのでここでは省略する。これにより、図2Fに示すように、表面電極110を有する接合構造体1eが形成される。
【0058】
次に、図2Gに示すように、図2Fにおいて形成した表面電極110をマスクとして、表面電極110の直下に対応するn型コンタクト層101を除くn型コンタクト層101を、硫酸と過酸化水素水と水との混合液を用いてエッチングして除去する。これにより、接合構造体1fが形成される。なお、当該混合液を用いることにより、GaAsから形成されるn型コンタクト層101を、n型の(Al0.7Ga0.30.5In0.5Pから形成されるn型クラッド層103に対して選択的にエッチングできる。したがって、接合構造体1fにおいては、n型クラッド層103の表面が外部に露出することとなる。
【0059】
次に、図2Hに示すように、支持基板20の裏面(すなわち、支持基板20のコンタクト電極204が設けられている面の反対側の面)に、真空蒸着法によって裏面電極210を形成する。また、裏面電極210は、例えば、Ti、Auをこの順に支持基板20の裏面に蒸着することにより形成される。これにより、支持基板20の裏面に裏面電極210が形成される。
【0060】
続いて、接合構造体1gにアロイ処理を施す。このアロイ処理により、裏面電極210と支持基板20との間で合金反応が進行する。アロイ処理は、例えば、不活性雰囲気下である窒素ガス雰囲気下において、接合構造体1gを400℃まで加熱して、400℃の温度下で5分間保持することにより実施できる。具体的には、接合構造体1gをグラファイト製のトレー上に搭載して、接合構造体1gを搭載したトレーを、上部ヒータと上部ヒータから独立して存在する下部ヒータとを備え、400℃程度まで加熱されたアロイ装置中に挿入して実施できる。これにより、図2Hに示すように、接合構造体1gが形成される。
【0061】
続いて、フォトリソグラフィー法及び真空蒸着法を用いて、表面電極110の表面の一部、具体的には円電極上に、パッド電極115を形成する。パッド電極115は、例えば、Ti、Auをこの順に表面電極110の円電極の表面に蒸着することにより形成する。なお、パッド電極115に対しては、パッド電極115の表面と発光素子1に電力を供給するワイヤーとの接合強度を十分に確保することを目的として、アロイ処理を施さない。
【0062】
そして、ダイシングブレードを有するダイシング装置を用いて、接合構造体1gを素子分離する。これにより、図2Iに示すように、本実施の形態に係る複数の発光素子1が形成される。
【0063】
図2Aから図2Iの各工程を経て製造された発光素子1は、一例として、平面寸法が略260μm角の略四角形状を有する素子サイズ(すなわち、平面寸法)の発光ダイオード(Light Emitting Diode:LED)である。そして、この発光素子1をTO−18ステム等のステムに導電性の接合材料(例えば、Agエポキシ樹脂)を用いてダイボンディングすると共に、表面電極110とTO−18ステムの所定の領域をAu等のワイヤーで接続する。これにより、ワイヤーを介してパッド電極115に外部から電流を供給することにより、発光素子1の特性を評価することができる。
【0064】
(実施の形態の効果)
本実施の形態に係る発光素子1は、Alを含む金属若しくはAlから反射層132を形成すると共に、反射層132と界面電極120の電極層122との間にPtを含む金属若しくはPtからなるバリア層124を設けるので、電極層122を構成する材料が反射層132側に拡散することを抑制できる。これにより、電極層122を構成する材料と反射層132を構成する材料とで合金が形成されることを抑制できるので、発光素子1の動作電圧をバリア層124がない場合に比べて低く保つことができ、また、バリア層124がない場合に比べて発光出力の高い発光素子1を提供することができる。
【実施例】
【0065】
(実施例1)
実施例1においては、本発明の実施の形態に係る製造工程で製造した発光素子1と同様に図1A及び図1Bに示した構造を備えると共に、以下の構造を有する発光素子を製造した。
【0066】
まず、半導体積層構造10は、n型GaAsからなるn型コンタクト層101と、n型の(Al0.7Ga0.30.5In0.5Pからなるn型クラッド層103と、アンドープの(Al0.1Ga0.90.5In0.5P層とアンドープの(Al0.6Ga0.40.5In0.5P層とのペアを含む多重量子井戸構造(ただし、ペア数は20であり、発光ピーク波長は595nmの黄色になるように設計した。)を有する発光層105と、p型の(Al0.7Ga0.30.5In0.5Pからなるp型クラッド層107と、p型のGaPからなるp型コンタクト層109とから形成した。なお、半導体積層構造11が有するエッチングストップ層102は、アンドープの(Al0.7Ga0.30.5In0.5Pから形成した。そして、誘電体層140は、300nm厚のSiO層から形成した。また、界面電極120は、p型コンタクト層109に接する側から電極層122としての200nm厚のAuBe層と、バリア層124としての100nm厚のPt層とを蒸着することにより形成した。
【0067】
また、支持基板20としては、抵抗率が0.005Ω・cmのp型Si基板を用い、コンタクト電極204としては300nm厚のTi層を、第2接合層202としては500nm厚のAu層を用いた。そして、第1接合層136は500nm厚のAu層を用い、合金化バリア層134は100nm厚のTi層を用い、反射層132は400nm厚のAl層を用いた。また、界面電極120の平面視における幅は5μmとした。更に、表面電極110は、50nm厚のAuGe、10nm厚のNi、300nm厚のAuをこの順に形成した。表面電極110の円電極の直径を100μmにすると共に、細線電極の幅を10μmにした。そして、パッド電極115は、30nm厚のTiと、1000nm厚のAuとをこの順に形成した。なお、素子サイズは、平面視にて260μm角である。
【0068】
更に、裏面電極210は、支持基板20の裏面に10nm厚のTiと、300nm厚のAuとをこの順で形成した後、上述したアロイ処理を施すことにより形成した。アロイ処理前の裏面電極210の表面は、目視にて金属光沢を帯びた金色であった。一方、アロイ処理後の裏面電極210の表面は、金属光沢が消滅して、かつ、クリーム色に近似した色に変色した。これは、支持基板20とAuとが合金化したことを示す。
【0069】
また、素子分離工程は、所定のダイシング装置を用いて実施した。すなわち、接合構造体1gの裏面電極210をダイシングシートに貼り付け、この状態で素子分離を実施することにより、実施例1に係る発光素子を製造した。このようにして得られた実施例1に係る発光素子をTO−18ステムにAgエポキシ樹脂を用いてダイボンディングし、パッド電極115とTO−18ステムのリードとをAuワイヤーによりワイヤーボンディングした。
【0070】
実施例1に係る発光素子のLED特性を評価したところ、20mA駆動時において、発光出力が4.3mW、動作電圧(順方向電圧)が1.92V、発光ピーク波長が596.2nmであった。したがって、動作電圧が低く、光出力の高い黄色のLEDが得られた。
【0071】
(実施例2)
実施例2に係る発光素子は、実施例1に係る発光素子の平面視におけるチップサイズを変更して製造した点を除き、実施例1に係る発光素子と略同一の構成を備える。具体的に、実施例2においては、平面視における発光素子のサイズが210μm角、330μm角、及び510μm角である発光素子をそれぞれ作製した。なお、表面電極110及び界面電極120の平面視における形状は、チップサイズの変更に比例させて変更した。すなわち、表面電極110及び界面電極120の平面視における形状を、チップサイズの変更に応じ、実施例1に係る発光素子の表面電極110及び界面電極120の平面視における形状と相似形状になるように変更した。ただし、表面電極110の細線電極の幅、界面電極120の細線部の幅、及びパッド電極115の直径については実施例1と同一にした。
【0072】
作製した実施例2に係る発光素子の発光特性を評価した。その結果を表1に示す。
【0073】
【表1】

【0074】
表1を参照すると、実施例2に係る発光素子はいずれもチップサイズによらず、高い発光出力、及び低い動作電圧を実現することができた。なお、チップサイズにより発光出力及び動作電圧が異なる理由は、チップサイズの変化に伴い、発光素子の発光面積が変化すると共に、表面電極110、界面電極120、及び発光層105に流入する電流の電流密度が変化することによる。
【0075】
(実施例3)
実施例3に係る発光素子は、実施例1に係る発光素子とは、界面電極120の電極層122を200nm厚のAuZn合金(ただし、Au:95wt%、Zn:5wt%)から形成した点を除き、実施例1に係る発光素子と同一の構成を備える。
【0076】
実施例3に係る発光素子の発光特性を評価した結果、発光出力が4.3mWであり、動作電圧が1.94Vであり、発光ピーク波長が596.2nmであった。p型GaPからなるp型コンタクト層に対する接触抵抗が、AuBeよりAuZnの方がわずかに高いことにより、実施例3に係る発光素子の動作電圧が実施例1に係る発光素子の動作電圧より増加したが、従来の発光素子よりは低い動作電圧であることを確認した。
【0077】
(実施例4)
実施例4に係る発光素子は、実施例1に係る発光素子とは、発光層105の組成を変更することにより発光ピーク波長を変更した点を除き、実施例1に係る発光素子と同一の構成を備える。具体的に、実施例4に係る発光素子として、発光ピーク波長(ただし、設計上の発光ピーク波長)が605nm及び615nmの発光素子(すなわち、橙色光を発する発光素子)を作製した。また、実施例4の変形例に係る発光素子として、発光ピーク波長(ただし、設計上の発光ピーク波長)が630nmの発光素子(すなわち、赤色光を発する発光素子)も作製した。
【0078】
実施例4に係る各発光素子、及び実施例4の変形例に係る発光素子の発光特性を評価した。その結果を表2に示す。
【0079】
【表2】

【0080】
表2を参照すると、実施例1に係る発光素子の発光ピーク波長より長波長側に発光ピーク波長を変更した実施例4に係る各発光素子においても、高い発光出力、及び低い動作電圧を実現できることが示された。なお、発光ピーク波長が長波長化することに応じ、発光出力の増大が観察された。これは、発光層105を構成する多重量子井戸構造の井戸層のAl組成の低下に応じ、内部量子効率が向上することに起因すると考えられる。
【0081】
(実施例5)
実施例5に係る発光素子は、実施例1に係る発光素子が備える界面電極120の構造を変更した点を除き、実施例1に係る発光素子と同一の構成を備える。
【0082】
具体的に、実施例5の第1の例に係る発光素子は、電極層122を200nm厚のAuBeから形成し、バリア層124を100nm厚のPtから形成すると共に、電極層122とバリア層124との間に中間層としての30nm厚のTi層を形成した。
【0083】
また、実施例5の第2の例に係る発光素子は、電極層122を200nm厚のAuBeから形成し、バリア層124を80nm厚のPtから形成すると共に、電極層122とバリア層124との間に中間層としての50nm厚のTi層を形成した。
【0084】
また、実施例5の第3の例に係る発光素子は、電極層122を200nm厚のAuBeから形成し、バリア層124を100nm厚のPtから形成すると共に、電極層122とバリア層124との間に中間層としての30nm厚のAu層を形成した。
【0085】
実施例5の第1〜第3の例に係る発光素子の発光特性を評価した。その結果、実施例5の第1の例に係る発光素子においては、発光出力が4.2mWであり、動作電圧が1.92Vであり、発光ピーク波長が596.1nmであった。また、実施例5の第2の例に係る発光素子においては、発光出力が4.3mWであり、動作電圧が1.93Vであり、発光ピーク波長が596.4nmであった。更に、実施例5の第3の例に係る発光素子においては、発光出力が4.2mWであり、動作電圧が1.92Vであり、発光ピーク波長が596.2nmであった。
【0086】
以上の結果から、電極層122とバリア層124との間にTi層又はAu層を挿入した場合であっても、反射層132と電極層122との間であって反射層132に接触する部分にPtからなるバリア層124を設けることにより、低い動作電圧、及び高い発光出力の発光素子を実現できることが示された。
【0087】
(実施例6)
実施例6に係る発光素子は、実施例1に係る発光素子とは、電極層122の厚さとバリア層124との厚さとをそれぞれ変更した点を除き、実施例1に係る発光素子と同一の構成を備える。具体的に、実施例6においては、電極層122の厚さが30nm、50nm、75nm、100nm、125nm、150nm、及び200nmの7種類の発光素子と、バリア層124の厚さが30nm、50nm、75nm、100nm、125nm、150nm、及び200nmの7種類の発光素子との合計14種類の発光素子を作製した。なお、実施例6の比較例に係る発光素子として、電極層122の厚さが10nm及び20nmの2種類の発光素子と、バリア層124の厚さが10nm及び20nmの2種類の発光素子との合計4種類の発光素子を作製した。
【0088】
作製した18種類の発光素子の発光特性を評価した。その結果を図3及び図4に示す。
【0089】
図3は、実施例6及び実施例6の比較例に係る各発光素子の発光出力の評価結果を示し、図4は、実施例6及び実施例6の比較例に係る各発光素子の動作電圧の評価結果を示す。
【0090】
まず、実施例6及び実施例6の比較例に係る各発光素子の全てにおいて、発光ピーク波長は595nmから597nmの範囲であり、発光ピーク波長の相違による発光特性の相違は観察されなかった。
【0091】
一方、図3及び図4を参照すると、電極層122の厚さ及びバリア層124の厚さがそれぞれ30nm以上の場合に、高い発光出力及び低い動作電圧の双方が良好であることが示された。したがって、電極層122の厚さ及びバリア層124の厚さは少なくとも30nm以上にすることが好ましく、電極層122の厚さ及びバリア層124の厚さは少なくとも50nm以上にすることがより好ましい。
【0092】
なお、誘電体層140を300nm厚のSiOから形成し、バリア層124を30nm厚、電極層122を30nm厚にした構造(すなわち、界面電極120の厚さが60nm)の発光素子の場合、発光特性は、発光出力P0が4.15mWであり、順方向電圧Vfが2.02Vであり、良好であった。ただし、この構造の場合、誘電体層140の厚さが界面電極120の厚さより厚いので、反射層132と誘電体層140との接合面において界面電極120の部分が窪んだ状態になる。このため、半導体積層構造体を支持構造体に貼り合わせる際に、微小なボイドが誘電体層140と界面電極120との間の一部に発生する場合がある。ボイドの程度によっては、貼り合わせ面の剥がれや、貼り合わせ後におけるウェハ検査工程で電流リーク異常が発生し、歩留まり低下の原因になる場合がある。したがって、発光素子の発光特性においては、電極層122の厚さ及びバリア層124の厚さをそれぞれ30nm以上にすれば良好な特性が得られるが、工業生産性の点においては、界面電極120の厚さと誘電体層140の厚さとを一致させることが好ましい。
【0093】
(比較例1)
比較例1に係る発光素子は、実施例1に係る発光素子とは、界面電極120がバリア層124を有さず、電極層122のみから構成されている点を除き、実施例1に係る発光素子と同一の構成を備える。すなわち、比較例1に係る発光素子においては、300nm厚のAuBe合金からなる電極層122を界面電極120として形成した。
【0094】
比較例1に係る発光素子の発光特性を評価した。その結果、発光出力が3.9mWであり、動作電圧が2.09Vであり、発光ピーク波長が595.7nmであった。比較例1に係る発光素子の動作電圧は、実施例1に係る発光素子の動作電圧より150mV以上増加した。また、比較例1に係る発光素子の発光出力は、実施例1に係る発光素子の発光出力より約10%程度低下した。これは、比較例1に係る発光素子が備える界面電極120を構成する材料と反射層132を構成するAlとの間で合金化が進行したことにより、界面電極122のp型コンタクト層109に対する接触抵抗が増加したこと、及び合金化により界面電極120と反射層132との界面及び界面近傍における反射層132の反射率が低下したことに起因すると考えられた。
【0095】
(比較例2)
比較例2に係る発光素子は、実施例1に係る発光素子とは、Auから反射層132を形成し、誘電体層140と反射層132との間に密着層としての0.1nm厚のTi層を挿入した点、及び発光層105の多重量子井戸構造の組成を変更し、発光ピーク波長が595nm(すなわち、黄色光)、615nm(すなわち、橙色光)、630nm(すなわち、赤色光)になるようにした点を除き、実施例1に係る発光素子と同一の構成を備える。
【0096】
比較例2に係る各発光素子の発光特性の評価結果を表3に示す。
【0097】
【表3】

【0098】
表3を参照すると、実施例4に係る発光素子(ただし、発光ピーク波長が615nmの発光素子)と比較して、発光ピーク波長が615nmの比較例2に係る発光素子は、発光出力が10%程度低下した。一方、発光ピーク波長が630nmの発光素子においては、比較例2に係る発光素子の方が実施例4に係る発光素子よりわずかに発光出力が大きく、赤色領域におけるAuの反射率がAlの反射率より高いことを反映する結果となった。したがって、黄色光から橙色光の波長領域におけるAlからなる反射層132の有効性を確認することができた。
【0099】
以上、本発明の実施の形態及び実施例を説明したが、上記に記載した実施の形態及び実施例は特許請求の範囲に係る発明を限定するものではない。また、実施の形態及び実施例の中で説明した特徴の組合せの全てが発明の課題を解決するための手段に必須であるとは限らない点に留意すべきである。
【符号の説明】
【0100】
1 発光素子
1a 半導体積層構造体
1b、1c、1d、1e、1f、1g 接合構造体
10、11 半導体積層構造
20 支持基板
20a 支持構造体
100 n型GaAs基板
101 n型コンタクト層
102 エッチングストップ層
103 n型クラッド層
105 発光層
107 p型クラッド層
109 p型コンタクト層
110 表面電極
110a、110b、110c、110d 細線電極
115 パッド電極
120 界面電極
120b、120c、120d、120e 細線部
122 電極層
124 バリア層
132 反射層
134 合金化バリア層
136 第1接合層
136a 接合面
140 誘電体層
140a 開口
202 第2接合層
202a 接合面
204 コンタクト電極
210 裏面電極

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1導電型の第1半導体層と、前記第1導電型とは異なる第2導電型の第2半導体層と、前記第1半導体層と前記第2半導体層とに挟まれる発光層とを有する半導体積層構造と、
前記半導体積層構造の一方の面側に設けられ、前記発光層が発する光を反射し、アルミニウムを含む反射層と、
前記半導体積層構造と前記反射層との間の一部に設けられ、前記半導体積層構造と前記反射層とを電気的に接続し、前記反射層に接触する側にバリア層を有する界面電極と
を備える発光素子。
【請求項2】
前記反射層の前記半導体積層構造側の反対側に、金属接合層を介して前記反射層を支持することにより前記半導体積層構造を支持する支持基板と、
前記半導体積層構造と前記反射層との間に設けられ、前記半導体積層構造を構成する半導体の屈折率より低い屈折率を有する誘電体層と
を更に備え、
前記界面電極が、前記誘電体層を貫通し、前記半導体積層構造と前記反射層とを電気的に接続し、
前記バリア層が、白金を含んで形成され、
前記発光層が、発光ピーク波長で550nm以上615nm以下の光を発する請求項1に記載の発光素子。
【請求項3】
前記金属接合層と前記反射層との間に、チタン及び白金の少なくとも一方を含む合金化バリア層
を更に備え、
前記金属接合層が、金を含む請求項2に記載の発光素子。
【請求項4】
前記界面電極が、前記半導体積層構造に接触する面にAuBe若しくはAuZnを含んで形成される電極層を有する請求項3に記載の発光素子。
【請求項5】
前記バリア層が、30nm以上の厚さを有する請求項4に記載の発光素子。
【請求項6】
前記電極層が、30nm以上の厚さを有する請求項5に記載の発光素子。

【図1A】
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【図1B】
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【図2A】
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【図2B】
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【図2C】
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【図2D】
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【図2E】
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【図2F】
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【図2G】
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【図2H】
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【図2I】
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【図3】
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【図4】
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