説明

発光素子

【課題】発光効率を向上させた発光素子を提供する。
【解決手段】
本発明の発光素子は、結晶成長面を有する単結晶基板12であって、結晶成長面12は複数の凸部12aと、複数の凸部12a同士の間にそれぞれ設けられ、かつ複数の凸部12aから離隔する位置に設けられる凹部12bと、を備える単結晶基板12と、単結晶基板12上に設けられ、複数の凸部12aのうち、一対の互いに隣接する凸部12aと、当該一対の凸部12a同士の間に位置する凹部12bにおいて、凹部12bと一対の凸部12aとの間に位置する両結晶成長面から一対の凸部12a同士の間に向かって延びる複数の転位16を、一対の凸部12a同士の間で結合させた光半導体層13と、を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、発光素子に関するものである。
【背景技術】
【0002】
現在、単結晶基板上に、紫外光、青色光又は緑色光等を発する光半導体層を含む発光素子を形成する技術が提案されている。そのような発光素子として、例えば特許文献1が開示されている。
【0003】
発光素子の開発において、光半導体層の厚み方向に延在する転位を減らすため、複数の突起からなる凹凸を形成した半導体成長用基板上に光半導体層を成長させていた(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2002−164296号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、凹凸を形成した半導体成長用基板に光半導体層を成長させた場合でも、凹部の底面から光半導体層の厚み方向に延在する転位を減らすことが困難だった。
【0006】
そこで、本発明は、凹部の底面から光半導体層の厚み方向に延在する転位を減らした発光素子を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明にかかる発光素子は、結晶成長面を有する単結晶基板であって、前記結晶成長面は複数の凸部と、前記複数の凸部同士の間にそれぞれ設けられ、かつ前記複数の凸部から離隔する位置に設けられる凹部と、を備える単結晶基板と、前記単結晶基板上に設けられ、前記複数の凸部のうち、一対の互いに隣接する凸部と、当該一対の凸部同士の間に位置する前記凹部において、前記凹部と前記一対の凸部との間に位置する両結晶成長面から前記一対の凸部同士の間に向かって延びる複数の転位を、前記一対の凸部同士の間で結合させた光半導体層と、を有する。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、発光効率を向上させた発光素子を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明の実施形態にかかる発光素子を実装した発光装置を示す図であり、(a)は斜視図であり、(b)は(a)のA−A´線で切断したときの断面図である。
【図2】本発明の実施形態にかかる発光素子の斜視図である。
【図3】本発明の実施形態にかかる半導体成長用基板の平面図である。
【図4】本発明の実施形態にかかる発光素子の断面図であり、図2のB−B´線で切断したときの断面に相当する。
【図5】本発明の実施形態にかかる発光素子の一部を拡大した拡大断面図である。
【図6】本発明の実施形態にかかる発光素子の製造工程を示す断面図である。
【図7】本発明の実施形態にかかる発光素子の製造工程を示す断面図である。
【図8】本発明の実施形態にかかる発光素子の製造工程を示す断面図である。
【図9】本発明の実施形態にかかる発光素子の製造工程を示す断面図である。
【図10】本発明の実施形態にかかる発光素子の製造工程を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施形態について図を参照しながら説明する。
【0011】
本発明は以下の実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内で種々変更を施すことができる。
【0012】
<発光装置>
図1(a)は本実施形態にかかる発光装置1の斜視図、図1(b)は図1(a)に示す発光装置1の断面図であり、図1(a)のA−A´線で切断した時の断面に相当する。
【0013】
発光装置1は、図1(b)に示すように、発光素子2と、発光素子2が電気的に接続される配線導体3が設けられた実装基体4と、を有している。
【0014】
実装基体4は、例えばセラミックから成る第1シート4aおよび第2シート4bを積層した積層体により形成することができる。実装基体4は、具体的には、実装空間部5となる貫通孔を有する第1シート4aと、発光素子2の搭載面6から引き出し面7まで電気的な導通をさせる配線導体3を有する第2シート4bと、を張り合わせることにより形成することができる。
【0015】
発光素子2は、接合電極8を介して配線導体3と接続されるとともに、実装基体4の搭載面6上に実装されている。本実施形態においては、配線導体3に発光素子2がフリップチップ接続による配置で接続されていることから、発光素子2で発生した熱を効率よく実装基体1側に放熱させることができる。接合電極8は、配線導体3と、後述する発光素子2の第1電極層9および第2電極層10と配線導体3との間に介在し、それぞれが電気的に接合するように配置されている。このような接続電極8は、例えばニッケル、アルミニウム、チタンまたはクロムなどの導電性材料を用いることができる。
【0016】
モールド樹脂11は、実装基体4に実装された発光素子2を被覆するように、実装基体4の実装空間部5に充填されている。このように発光素子2をモールド樹脂11により被覆することで、電気的に周囲と絶縁させることができ、信頼性を向上させることができる。なお、モールド樹脂11としては、例えばエポキシ樹脂やシリコーン樹脂などの絶縁材料を用いることができる。
【0017】
<発光素子>
発光装置1に実装される発光素子2を、以下に詳細に説明する。
【0018】
図2は本実施形態にかかる発光素子2の斜視図を示している。図3は、発光素子2の一部を構成する単結晶基板12の平面図であり、B−B´線は図2のB−B´線に相当する。また、図4は、図2に示す発光素子2の断面図であり、図2および図3のB−B´線で切断したときの断面に相当する。さらに、図5は、図4の一部を拡大した拡大断面図を示している。
【0019】
発光素子2は、図2に示すように、単結晶基板12と、単結晶基板12上に設けられた光半導体層13と、を有している。
【0020】
単結晶基板12は、図3に示すように、凸部12aと凹部12bを有している。単結晶基板12の厚みは、例えば10μm以上1000μm以下に設定される。なお、単結晶基
板12の厚みは、単結晶基板12の第1主面14Aから第2主面14Bまでの厚みを指す。単結晶基板12は、光半導体層13を成長させることが可能な材料を用いることができ、例えばサファイア、窒化ガリウム、窒化アルミニウム、ホウ化ジルコニウムまたは酸化亜鉛などの結晶性材料を用いることができる。
【0021】
このような結晶性材料の中でも、光半導体層13で発光した光を単結晶基板12の第2主面14B側から取り出す場合、発光層13bで発光する光を50%以上透過させることができる、サファイアまたは窒化ガリウムなどの透光性材料を用いることができる。このような材料を用いることにより、発光素子2の光取り出し効率を向上させることができる。なお、単結晶基板12は、平面形状が多角形または円形などにより設定されている。
【0022】
単結晶基板12は、第1主面14Aが結晶成長面となっている。ここで、結晶成長面とは、結晶格子の結晶面が揃った平面を指し、例えばサファイアを用いた場合だと結晶格子のA面、C面またはR面などの結晶面用いることができる。このような結晶成長面上に半導体を結晶成長させることにより、かかる結晶成長面上に半導体の単位結晶格子を配列させることができる。なお、第1主面14Aとは、後述する単結晶基板12の凸部12aおよび凹部12bが設けられていない領域を指す。
【0023】
単結晶基板12には、第1主面14Aをなす結晶成長面から一部が上方へ突出するように凸部12aが複数設けられている。かかる凸部12aは、単結晶基板12と同じ材料からなり、単結晶基板12と一体的に設けられている。また、凸部12aは、上面12a´が結晶成長面となるように設けられている。
【0024】
複数の凸部12aは、第1主面14A上に設けられ、平面視して、それぞれの凸部12aが一定間隔を隔てるようにして配置されている。このように一定間隔を隔てて設けられた複数の凸部14aは、隣接する2つの凸部12aの間隔が、例えば1.0μm以上20μm以下に設定することができる。
【0025】
凸部12aは、平面形状が四角形などの多角形、或いは円形などの形状をなし、断面形状が台形又は四角形などの多角形をなしている。凸部12aの高さは、例えば0.50μm以上200μm以下に設定することができる。なお、凸部12aの高さは、第1主面14Aから凸部12aの上面12a´までを指す。
【0026】
さらに、単結晶基板12は、単結晶基板12の第1主面14Aから厚み方向に一部が窪む凹部12bを有する。凹部12bは、複数の凸部12aのうち一対の互いに隣接する凸部12aの間であって、それぞれの凸部12aから離隔する位置に設けられている。
【0027】
一対の互いに隣接する凸部12aの間の結晶成長面に凹部12bを設けることにより、かかる結晶成長面を横切る平面に垂直な方向から断面視したとき、隣接する凸部12aの間に位置する結晶成長面が、第1結晶成長面15aと第2結晶成長面15bに分断される。ここで、第1結晶成長面15aおよび第2結晶成長面15bは、図5に示すように、凹部12bの左側で凹部12bと凸部12aとの間にある結晶成長面を第1結晶成長面15aとし、凹部12bの右側で凹部12bと凸部12aとの間にある結晶成長面を第2結晶成長面15bとする。なお、第1結晶成長面15a幅および第2結晶成長面15bの幅は、第3結晶成長面である凸部12aの上面12a´の幅より小さくなるように設定されている。
【0028】
凹部12bは、断面視して、第1結晶成長面15aの幅と第2結晶成長面15bの幅とが同じになるように形成されている。なお、第1結晶成長面15aの幅と第2結晶成長面15bの幅との差が20%以下であればよい。さらに、第1結晶成長面15aおよび第2
結晶成長面15bを断面視したときの横幅の寸法は、凸部12aの高さの寸法より小さくなるように設定されている。
【0029】
凹部12bは、断面形状が台形又は四角形などの多角形をなしている。凹部12bの深さは、単結晶基板12の厚みを超えないように設定することができ、例えば0.50μm以上200μm以下に設定することができる。ここで、凹部12bの深さは、第1主面14Aから凹部12bの底面12b´までの深さを指す。なお凹部12bは、例えば平面形状が四角形などの多角形で形成することができる。
【0030】
単結晶基板12上には、図2および4に示すように、光半導体層13が設けられている。光半導体層13は、第1半導体層13a、発光層13bおよび第2半導体層13cを順次積層することにより構成されている。なお、光半導体層13は、全体の厚みが例えば0.1μm以上10μm以下で形成することができる。また、光半導体層13の各層の屈折率は、窒化ガリウムを用いた場合には例えば1.80以上2.70以下に設定される。
【0031】
光半導体層13としては、III−V族半導体を用いることができる。III−V族半導体としては、III族窒化物半導体、ガリウム燐またはガリウムヒ素などを例示することができる。III族窒化物半導体としては、ボロン、アルミニウム、ガリウムまたはインジウムのうち少なくとも1つの窒化物からなる混晶を用いることができる。
【0032】
第1半導体層13aは、凸部12aおよび凹部12bを被覆するように単結晶基板12a上に設けられている。第1半導体層13aには、単結晶基板12aから延びる転位16が複数存在している。
【0033】
転位16は、半導体の結晶格子がずれることにより形成され、結晶格子のずれ方によって例えば刃状転位、或いはらせん状転位などの種類がある。このような転位16すなわち結晶格子のずれは、第1半導体層13aの格子定数と単結晶基板12aの格子定数とが異なるため、単結晶基板12aと第1半導体層13aとの界面で発生しやすくなっている。なお、第1半導体層13aは、厚みが1μm以上250μm以下に設定されている。
【0034】
発光層13bは、第1半導体層13a上に設けられている。発光層13bは、禁制帯幅の広い障壁層と禁制帯幅の狭い井戸層とからなる量子井戸構造が複数回繰り返し規則的に積層された多層量子井戸構造(MQW)を用いることができる。
【0035】
障壁層および井戸層としては、インジウムとガリウムの窒化物からなる混晶においてインジウムとガリウムの組成比を調整したものを用いることができる。このように構成された発光層13bでは、例えば350nm以上600nm以下の波長の光を発光する。
【0036】
発光層13bは第1半導体層13a上に結晶成長させるため、転位16が第1半導体層13aの上面にまで延在している場合、かかる転位16が発光層13b内にまで延びやすくなる。これは、第1半導体層13aの上面にまで転位16が延びている場合、第1半導体層13aの上面における結晶格子がずれるため、発光層13bに転位16を延在させやすくなるからである。
【0037】
第2半導体層13cは、発光層13b上に設けられている。第2半導体層13cは、電子か正孔のどちらかを多数キャリアとすることにより、第1半導体層13aとは逆導電型を呈するように設定されている。半導体層に導電型を付与する方法としては、例えばマグネシウム、或いはシリコンを不純物として混ぜる方法を用いることができる。
【0038】
第1電極層9は第1半導体層13a上に、第2電極層10は第2半導体層13c上に、
設けられている。このような2つの電極層により、光半導体層13に電圧が印加される。かかる2つの電極層の材料としては、例えば、アルミニウム、チタン、ニッケル、クロム、インジウム、錫、モリブデン、銀、金、タンタルまたは白金などの金属や、それらの金属を組み合わせた合金、酸化錫、酸化インジウムまたは酸化インジウム錫などの酸化物を好適に用いることができる。なお、このような電極層は、それぞれ上記材質の中から選択した層を複数回積層しても構わない。
【0039】
このような発光素子2の光半導体層13aは、例えば横方向成長させることにより単結晶基板12上に設けられる。ここでファセットとは、結晶面が揃っている特定の結晶面を指し、例えば凸部12aの上面12a´を(0001)面とした場合には、(11−22)面などを指す。
【0040】
本実施形態においては、図5に示すように、光半導体層13aを単結晶基板12上に設ける際に、第1結晶成長面15a上および第2結晶成長面15b上にそれぞれファセット17を形成することができる。
【0041】
このように第1結晶成長面15aおよび第2結晶成長面15bにそれぞれファセット17を形成した後、光半導体層13を横方向成長させることにより、第1結晶成長面15a上のファセット17から延びる転位16は第2結晶成長面15bの方へ、第2結晶成長面15b上のファセット17から延びる転位16は第1結晶成長面15aの方へ、それぞれ進むようになる。
【0042】
このため、第1結晶成長面15aから延びる転位16と、第2結晶成長面15bから延びる転位16とを、一対の凸部12b同士の間で結合させやすくすることができる。その結果、単結晶基板12の第1主面14Aから延びる複数の転位16を互いに結合させることができ、光半導体層13の厚み方向に延在する転位16の数を減らすことができる。
【0043】
また、第1結晶成長面15aの幅より大きい高さを有する凸部12aが形成されていることから、第1結晶成長面15aに形成されるファセット17の高さより大きくなりやすくなる。そのため、第1結晶成長面15aから延び、ファセット17により凸部12a側に延びた転位16は、凸部12aの側面に衝突させることができる。
【0044】
これにより、転位16がさらに延びることを抑制することができ、単結晶基板12から延びる転位16の数を減らすことができる。また、第2結晶成長面15bに形成されるファセット17も同様に、ファセット17の右側には凸部12aが配置されているため、ファセット17から凸部12a側に延びた転位16を、凸部12の側面に衝突させることができ、転位16がさらに延びることを抑制することができる。
【0045】
仮に、一方主面に複数の凸部のみが設けられた単結晶基板の構成では、光半導体層を成長させた場合に、一対の隣接する凸部の間に延在する転位を減らしにくく、光半導体層の厚み方向に転位が延在しやすい。そのため、発光層で発光効率を向上させることが困難となる。
【0046】
また、本実施形態においては、第1結晶成長面15aの幅および第2結晶成長面15bの幅が略同一の大きさで設けられていることから、かかる第1結晶成長面15aおよび第2結晶成長面15b上にそれぞれ略同一の高さを有するファセット17を形成することができる。これにより、第1結晶成長面15aおよび第2結晶成長面15bから延びる複数の転位16がそれぞれのファセット17で曲げられた際に、互いに同じ高さ領域に転位16を曲げることができるため、転位16を結合させやすくすることができる。
【0047】
さらに、単結晶基板12が、一対の隣接する凸部12aの間に配置された凹部12bを有していることから、凹部12bの底面12b´からも光半導体層を成長させることができる。そのため、一対の隣接した凸部12a同士の間に、空隙が少なくなるように光半導体層13を単結晶基板12に成長させることができるため、単結晶基板12と光半導体層13との密着性を向上させることができ、光半導体層13で発生した熱を単結晶基板12へ逃がしやすくすることができる。
【0048】
<発光素子の製造方法>
次に、発光素子2の製造方法を説明する。図6から図10は、発光素子2の製造方法を説明するための断面図であり、図2に示す発光素子2のB−B´線における断面に相当する部分を示している。
【0049】
(単結晶基板の製造工程)
図6に示すように、単結晶基板12上に、単結晶基板12の一部を露出させた第1露出領域18´を有する第1マスクパターン18を積層した積層体19を準備する。第1マスクパターン18としては、後に容易に除去することができる材料を選択することができ、厚みは例えば400nm以上900nm以下に設定することができる。
【0050】
第1マスクパターン18の膜厚は、エッチングにより単結晶基板12の一部を除去する場合、単結晶基板12のエッチングレートと第1マスクパターン18のエッチングレートとの選択比によって適宜選択することができる。
【0051】
さらに、単結晶基板12の上面を露出させた露出領域からエッチング法などで、単結晶基板12の第1露出領域18´から厚さ方向に一部を除去した後、第1マスクパターン18を除去することにより、図7に示すような、溝部20を単結晶基板12に設けることができる。単結晶基板12の一部を除去する方法としては、ウエットエッチング又はドライエッチングなどエッチング法を用いることができる。
【0052】
次に、図8に示すように、溝部20を設けることにより区画された単結晶基板12の上面に、一部が露出されるような第2露出領域21´を有する第2マスクパターン21を形成する。第2マスクパターン21としては、第1マスクパターン18と同じ材料を用いることができる。
【0053】
第2マスクパターン21を形成した後、第2露出領域22´から単結晶基板12の厚み方向へ溝部20より小さい深さをドライエッチングして、単結晶基板12の一部をさらに除去する。その後、第2レジストパターン22を除去することにより、単結晶基板12に凸部12aおよび凹部12bを形成することができる。第2露出領域21´から単結晶基板12の一部をエッチングする際に、ドライエッチングを用いることにより、かかるエッチングによって形成される第1主面15Aを平坦にすることができる。
【0054】
第1マスクパターン18および第2マスクパターン21は、マスク材料をスパッタ法又は蒸着法などの真空積層法を用いることにより単結晶基板12上に積層膜を積層し、単結晶基板12の一部を露出させるための露出領域をパターニングすることにより形成することができる。単結晶基板12としてサファイアを用いてドライエッチングを行う場合、サファイアと反応しやすい塩素系ガスを反応ガスとして好適に用いることができるが、この場合、マスク材料としては、チタン、ニッケルまたはクロムなどの金属や酸化シリコンなどの耐塩素性の無機材料を用いることが望ましい。
【0055】
(発光素子の製造工程)
次に、図10に示すように、光半導体層13を、単結晶基板12上に横方向成長を用い
て形成する。光半導体層13を横方向成長させる方法としては、それぞれの層において組成比、成長温度および成長圧力などの成長条件を調整すればよい。このように成長条件を調整することにより、結晶の成長速度を単結晶基板12の第1主面15Aに対する垂直方向と平行方向とで制御することができる。
【0056】
第1半導体層13aは、単結晶基板12の凸部12aの上面12a´に第1半導体層13aのファセット17を形成して、横方向成長させることにより設けられる。具体的に、第1半導体層13aは、凸部12aの上面12a´に外部との界面が特定の結晶面すなわちファセット17となるように成長させた後、第1主面14Aに対して平行方向の成長を垂直方向に対して成長速度を早くすることにより設けられる。
【0057】
本実施形態において、凸部12aの上面12a´上にファセット17を形成するとともに、単結晶基板12の第1結晶成長面12aおよび第2結晶成長面12bにもファセット17を形成することができる。このようなファセット17を形成した後、第1半導体層13aを横方向成長させることにより、単結晶基板12から延びる転位16をそれぞれのファセット17で、第1主面14Aに対して平行な方向に沿うようにすることができる。
【0058】
その結果、一対の凸部12aの上面12a´上に成長させたファセット17で曲げられた複数の転位17を、平面透視して一対の凸部12aと重ならない領域で結合させることができ、厚み方向に延びる転位17の数を減らすことができる。
【0059】
また、第1結晶成長面15aから延びる転位16と、第2結晶成長面15bから延びる転位16とを、一対の凸部12b同士の間で結合させやすくすることができる。その結果、単結晶基板12の第1主面14Aから延びる複数の転位16を互いに結合させることができ、光半導体層13の厚み方向に延在する転位16の数を減らすことができる。
【0060】
第1半導体層13aとして窒化ガリウムを用いる場合、凸部12の上面14aにファセットを作成する方法としては、大気圧に近い圧力下で、第1半導体層13aの組成よりガリウムガスと窒素ガスの組成比が低い雰囲気中で結晶成長させればよい。その後、ガリウムガスと窒素ガスの組成比を第1半導体層13aの組成と同じにした雰囲気で、ファセット成長時の高い温度で結晶成長させることにより第1半導体層13aを横方向成長させることができる。
【0061】
その後、第1半導体層13a上に発光層13bおよび第2半導体層13cを積層することにより、光半導体層13が単結晶基板12上に形成される。
【0062】
このように単結晶基板12に凸部12aおよび凹部12bを設けることにより、第1半導体層13aの転位16の数を減らして結晶品質を向上させることができ、結果的に第1半導体層13aの上に形成される発光層13bおよび第2半導体層13cの結晶品質の向上に寄与することができる。
【0063】
このような光半導体層13すなわち第1半導体層13a、発光層13bおよび第2半導体層13cを成長させる方法として、有機金属気相成長法、分子線エピタキシー法、ハイドライド気相成長法またはパルスレーザデポジション法などを用いることができる。
【0064】
(電極形成工程)
次に、このようにして形成された光半導体層13に、電圧を印加して発光層13bを発光させる一対の電極層を形成する。このような一対の電極層は、第1半導体層13aと接続する第1電極層9と第2半導体層13cと接続する第2電極層10により構成されている。
【0065】
一対の電極層の材料としては、アルミニウム、チタン、ニッケル、クロム、インジウム、錫、モリブデン、銀、金、ニオブ、タンタル、バナジウム、白金、鉛またはベリリウムなどの金属や、酸化錫、酸化インジウムまたは酸化インジウム錫などの酸化物を好適に用いることができる。また、一対の電極層は、それぞれ上記材質の中から選択した層を複数層積層したものとしても構わない。
【符号の説明】
【0066】
1 発光装置
2 発光素子
3 配線導体
4 実装基体
4a 第1シート
4b 第2シート
5 実装空間部
6 搭載面
7 引き出し面
8 接合電極
9 第1電極層
10 第2電極層
11 モールド樹脂
12 単結晶基板
12a 凸部
12b 凹部
13 光半導体層
13a 第1半導体層
13b 発光層
13c 第2半導体層
14A 第1主面
14B 第2主面
15a 第1結晶成長面
15b 第2結晶成長面
16 転位
17 ファセット
18 第1マスクパターン
19 積層体
20 溝部
21 第2マスクパターン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
結晶成長面を有する単結晶基板であって、前記結晶成長面は複数の凸部と、前記複数の凸部同士の間にそれぞれ設けられ、かつ前記複数の凸部から離隔する位置に設けられる凹部と、を備える単結晶基板と、
前記単結晶基板上に設けられ、前記複数の凸部のうち、一対の互いに隣接する凸部と、当該一対の凸部同士の間に位置する前記凹部において、前記凹部と前記一対の凸部との間に位置する両結晶成長面から前記一対の凸部同士の間に向かって延びる複数の転位を、前記一対の凸部同士の間で結合させた光半導体層と、を有する発光素子。
【請求項2】
前記両結晶成長面は、該両結晶成長面を横切る平面を垂直な方向から断面視したとき、第1結晶成長面と、前記第1結晶成長面と同じ幅である第2結晶成長面からなる請求項1に記載の発光素子。
【請求項3】
前記結晶成長面は、断面視して、前記凸部上に第3結晶成長面を有しており、
前記第3結晶成長面は、前記第1結晶成長面および前記第2結晶成長面より大きい幅を有する請求項2に記載の発光素子。
【請求項4】
前記複数の転位が、断面視して、前記凸部の上部より低い位置で結合する請求項1〜3のいずれかに記載された発光素子。
【請求項5】
前記凸部の上面から延びる転位が、平面透視して前記一対の凸部と重ならない領域で結合する請求項1〜4のいずれかに記載の発光素子。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2011−211050(P2011−211050A)
【公開日】平成23年10月20日(2011.10.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−78693(P2010−78693)
【出願日】平成22年3月30日(2010.3.30)
【出願人】(000006633)京セラ株式会社 (13,660)
【Fターム(参考)】