説明

発光表示シート

【課題】船艇の手すりに引っ掛けて船外に警告信号を送ったり、不使用時には折り畳んで格納しておくといった使用方法が可能な発光表示シートを提供する。
【解決手段】柔軟性のあるシート1にグロメット10にLED15を取付けた複数個の発光体2が取付けられている。発光体2は、複数段かつ複数列のマトリックス状に並べられているので、点灯させる発光体2を選択することにより文字や図形を光で表示することができ、夜間や霧中など視認性の無い海上でも船以外にメッセージを送ることができる。しかも、シート1は柔軟なので船艇の手すりに引っ掛けて使用でき、使用しないときは折り畳んで格納しておくことができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発光表示シートに関する。さらに詳しくは、船舶の手すりに引っ掛けて使用し、光を発することによってメッセージを伝達するための発光表示シートに関する。
本発明の代表的な使用例としては、海上保安庁の巡視船艇や海上自衛隊の護衛艦が、船側の手すりに随時引っ掛けて使用し、不審船や違法漁船等への質問や退去命令等の警告を表示するもので、とくに夜間の海上でも、高い視認効果が得られる発光表示シートに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、視認性の高い照明器具として、LEDを用いた器具が交通信号機その他の分野で多用されている。これらの照明器具は指向性が強く、高輝度であるという特徴がある。
【0003】
LEDを用いた照明器具としては、数多くの文献が存在するが、そのうちの代表的なものとして特許文献1〜3がある。
しかし、これらの従来技術は、いずれも硬く曲がらない基板にLEDを取付けたものであり、基板は面状か枠状をしている。
したがって、柔軟性に欠けることから船艇の手すりに引っ掛けて船外に警告信号を送ったり、不使用時には折り畳んで格納しておくといった使用方法は不可能である。
【0004】
しかるに、海上での不審船の発見や追跡は不意に生じるものであり、とっさに警告を発するには、簡単に手すりを引っ掛けて信号を発する手段があると便利である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】WO2008/062812号公報
【特許文献2】特開2010−3600号公報
【特許文献3】特開2010−33757号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は上記事情に鑑み、船艇の手すりに引っ掛けて船外に警告信号を送ったり、不使用時には折り畳んで格納しておくといった使用方法が可能な発光表示シートを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
第1発明の発光表示シートは、柔軟性のあるシートと、グロメットに発光素子を取付けた複数個の発光体とからなり、該発光体は前記グロメットを介して前記シートに取付けられていることを特徴とする。
第2発明の発光表示シートは、第1発明において、前記複数個の発光体が、複数段かつ複数列のマトリックス状に並べられていることを特徴とする。
第3発明の発光表示シートは、第1発明において、前記シートが、縦0.5〜1.5m、横0.5〜6mの長方形であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
第1発明によれば、複数個の発光体により文字や図形を光で表示することができるので、夜間や霧中など視認性の無い海上でも船以外にメッセージを送ることができる。しかも、シートは柔軟なので船艇の手すりに引っ掛けて使用でき、使用しないときは折り畳んで格納しておくことができる。
第2発明によれば、複数の発光体がマトリクス状に並んでいるので、点灯する発光体を選択することにより、文字を表示したり図形を表示することが容易となる。このため、船外に送るメッセージの種類を豊富にできる。
第3発明によれば、シートが人手により扱いやすい大きさとなるので、用事に迅速に手すりに引っ掛けたり、撤収することが容易となる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明の一実施形態に係る発光表示シートAの正面図である。
【図2】図1の発光表示シートAの縦断面図である。
【図3】発光体2の一例の断面図である。
【図4】図1の発光表示シートAの一部正面図である。
【図5】図1の発光表示シートAの一部裏面図である。
【図6】本発明の発光表示シートAの使用状態説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
つぎに、本発明の実施形態を図面に基づき説明する。
図1に基づき本発明の一実施形態に係る発光表示シートAを説明する。
この発光表示シートAは、シート1に発光体2を複数段・複数列のマトリクス状に配置したものである。
本発明の発光表示シートAは、図6に示すように船艇5の手すりhrに引っ掛けて使用するため、シート1には柔軟性が要求される。また、発光体2は種々の文字を表示できるだけの数がマトリクス状に並べられたものである。表示する文字としては停船命令や領海外退去命令などの警告文があげられる。
【0011】
シート1は柔軟性のある素材が用いられ、たとえば、帆布や化学繊維シートなどが好ましい。
このような柔軟性のあるシートを用いると、不使用時には折り畳んで格納することが容易であり、使用時にも、船艇Sの手すりhrが湾曲していても、これに沿って引っ掛けることができる。
【0012】
シート1の最も好適な寸法は、縦1m、横4mであるが、これは取扱いの便宜から定めた寸法であり、これに限られない。取扱いの便宜からは、縦0.5〜1.5m、横0.5〜6mでもよく、さらに、表示する文字量を増やす場合は、これらの寸法より大きくすればよく、文字数が少なくてよい使い方をするなら、小さくてもよい。
【0013】
図示のシート1には、概ね4文字を表示するように縦16個×横16個のからなる発光体2の組が4組並んでおり、点灯する発光体2を選択することにより、例えば「STOP」等の文字が点灯するように配置されている。
なお、1組の発光体2の数は上記に限ることなく、16個より少なくてもよく、16個より多くてもよい。
【0014】
シート1の適所には発光体2の点灯制御をするための制御器3が取付けられている。
この制御器3により、発光体2の点灯、消灯、点滅等を多数の発光体2の中から選択して行うことにより警告光信号を生成することができる。
この制御器3は、リモートコントロールで船橋などから作動させることができ、これによって危険なデッキに乗員が出ていく必要はなくなる。
【0015】
図2に示すように、シート1には、その裏面を覆うカバー5を縫い付けている。カバー5はシート1と同材料でもよく異なる材料でもよいが、海水等に耐える材料で作るのが好ましい。シート1およびカバー5の周縁にはロープなどを通す孔があけられ、グロメット4で補強されている。このグロメット4にロープを通せば船艇Sの手すりhrにシート1を縄着することができる。
【0016】
つぎに、発光体2の詳細を説明する。
図3に示すように、シート1の孔にグロメット10が止められている。グロメット10は、互いに嵌合する上半体11と下半体12からなる。上半体11は、円環状の円環部11aと、この円環部11aの内側から下方に延びた筒状部11bからなる。筒状部11bはプレスにより折り曲げられる部材である。円環部11aの裏面には、シート1に喰い込む突起11eが形成されている。
下半体12は、円環状の円環部12aからなり、円環部12aの裏面には、シート1に喰い込む突起12eが形成されている。
【0017】
このグロメット10のシート1への固着は、つぎの要領で行われる。
シート1の孔に上半体11の筒状部11bを挿入し下半体12の円環部12aを筒状部11bの外に嵌める。ついで、上半体11と下半体12とが密着するようにプレスすると、筒状部11bが外向きに折り曲げられて、下半体12の円環部12aを止めることができる。また、この状態で、上半体11の突起11eと下半体12の突起12eがシート1の表裏両面に喰い込んで、シート1を固定することができる。
【0018】
上記のグロメット10の上半体11には、キャップ18が上から挿入される。キャップ18は、ドーム形の天面部18aと筒形の筒部18bが一体に形成された部材であって、光を透過する透明材料製のカバー形部材である。
このキャップ18を被せておくことで、後述するLED15を保護することができる。
【0019】
発光素子であるLED15は基板14に装着されている。LED15の本数は3本であるが、2本のものや、その他種々の形態のものを用いることができる。
基板13の裏面からは配線16が4本延びている。この4本の配線16は隣接する発光体2同士を電気的に接続するためである。
【0020】
本発明で用いる発光体2は図3の実施形態に限られない。たとえば、グロメット10は図3に例示以外の構造のものでよく、シート1に固着でき、LED15を取付け可能なものなら、どのような形態のものを用いてもよい。
キャップ18も図示の形態以外のものを用いてもよく、またキャップ18自体を用いなくてもよい。キャップ18を用いない場合は、グロメット10に直接、LED15を嵌めて固定するようにすればよい。
【0021】
図4はシート1の一部分における表面側を示している。
発光体2の直径Dは24mm、隣接する発光体2同士の間隔dは40mmであり、これが最適値であるが、これに限られるものではない。好ましい範囲としては、発光体2の直径Dは10mm〜40mmを例示でき、隣接する発光体2同士の間の間隔dは20mm〜60mmを例示でき、さらにはこれらの範囲外でも船外への警告発信に使えるなら使用可能である。
上記の最適値の寸法、間隔であると、1m弱四方の枠内に発光体2を16個×16個配置でき、文字を表示することができ、しかも遠方からでも視認しやすくなる。
【0022】
図5はシートの一部分における裏面側を示している。図示するように、配線16で隣接する発光体2同士が電気的に接続されており、全ての発光体2は既述の制御器3(図1参照)に接続されている。
【0023】
つぎに、本発明の発光表示シートAの使用法を説明する。
図6に示すように、船艇Sの手すりhrに、発光表示シートAをロープで縄着したり、適当なフックで引っ掛けることができる。手すりhrが湾曲していてもシート1は柔軟性があるので、手すりhrに取付け可能である。
図示の発光表示シートAは4文字が表示可能であるが、発光表示シートAを2枚以上連らねて用いると、8文字や12文字の表示が可能となる。
【0024】
図6では発光表示シートAに「STOP」の文字を発光表示した状態を示しているが、表示する文字の種類や数には制限がない。
代表的な例としては、不審船が違法操業漁船への停止命令、退去命令など種々の警告を発することができる。
【符号の説明】
【0025】
1 シート
2 発光体
3 制御器
4 グロメット
5 カバー
10 グロメット
11 上半体
12 下半体
15 LED
18 キャップ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
柔軟性のあるシートと、
グロメットに発光素子を取付けた複数個の発行体とからなり、
該発行体は前記グロメットを介して前記シートに取付けられている
ことを特徴とする発光表示シート。
【請求項2】
前記複数個の発行体が、複数段かつ複数列のマトリクス状に並べられている
ことを特徴とする請求項1記載の発光表示シート。
【請求項3】
前記シートが、縦0.5〜1.5m、横0.5〜6mの長方形である
ことを特徴とする請求項1記載の発光表示シート。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2013−3565(P2013−3565A)
【公開日】平成25年1月7日(2013.1.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−138227(P2011−138227)
【出願日】平成23年6月22日(2011.6.22)
【出願人】(593126019)高木綱業株式会社 (6)
【Fターム(参考)】