説明

発光表示装置及びその製造方法

【課題】信頼性の高い発光表示装置を提供する。
【解決手段】基板10と、基板10上に設けられる発光領域20と、基板10上であって、発光領域20の外縁に設けられる非発光領域30と、から構成され、発光領域20には、複数の発光画素21が周期的に配列され、発光画素21が、発光色が異なる複数種類の発光副画素を有し、前記発光副画素が、第一電極23と、有機化合物層24と、第二電極25と、をこの順に有し、非発光領域30には、複数の非発光副画素32を有する非発光画素31が複数配列され、前記発光副画素及び非発光副画素32が、それぞれ素子分離膜15によって区画され、非発光領域30のうち、発光領域20の行方向の外縁に設けられる非発光領域には、当該領域に含まれる非発光画素を区画するスペーサ16が設けられる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発光表示装置、特に、有機発光素子を備えた発光表示装置及びその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
有機発光素子は、一対の電極、即ち、第一電極と第二電極との間に、発光層を有する単層あるいは複数層の薄膜層からなる有機化合物層が挟持されている電子素子であり、電流の注入によって高輝度発光が可能な電子素子として知られている。
【0003】
一般に、有機発光素子は、素子を構成する有機化合物層へ水分が侵入すると、浸入した部分から有機化合物層の劣化が発生する。この有機化合物層の劣化によってこの有機化合物層を含む有機発光素子の輝度が低下し寿命低下等の不具合が発生する。従って、この不具合を防ぐために、有機発光素子は、大気に曝されないようにガラス板、金属板、あるいはSiN等の無機膜等の透水性の低い材料で封止した状態で使用される。また近年では、表示装置の薄型化、あるいは封止部材を設けることによって生じ得る光吸収損失を低減することを目的として、封止膜等のように封止部材を薄膜化することが要求されている。
【0004】
一方、上記有機発光素子が複数配列されているアクティブマトリクス型の発光表示装置(有機ELディスプレイ)は、画素単位でトランジスタ(Trnasitor(Tr))を備えている。ここでTrは、基板を構成する絶縁膜中に設けられたコンタクトホールを介して、基板上に複数設けられる有機発光素子の構成部材である第一電極に、Tr1組と第一電極1個とが対応するように電気的に導通されている。また各々の第一電極の周囲には、各第一電極を区画し所定の領域に開口を有する素子分離膜が設けられ、この素子分離膜が有する開口は各画素を設ける位置にそれぞれ対応している。
【0005】
ところで発光表示装置において、各有機発光素子にそれぞれ含まれる第一電極上に配置され、発光色がそれぞれ異なる有機化合物層を形成する際には、各々の発光色に対応して特定の領域に開口を備えた蒸着マスクを用いた真空蒸着法が利用される。ここで真空蒸着法を利用する際に使用される蒸着マスクは、蒸着を行う際に素子分離膜の表面に接触した状態で使用される。
【0006】
ここで、蒸着マスクと接触する素子分離膜は、画素間の間隔に応じた幅を有すると共に、各々の第一電極の周辺を囲むように配置されることから、蒸着マスクとの接触面積が大きいことが想定される。そうすると、下記(A)乃至(D)に示される現象のうちのいずれかが生じる可能性がある。
(A)蒸着マスクに付着した付着物が素子分離膜の表面に接する。
(B)蒸着マスクに付着した付着物が素子分離膜上にて押し付けられる。
(C)蒸着マスクの表面に凸部が生じ、当該凸部が素子分離膜の表面に接する。
(D)上記凸部が素子分離膜上にて強く押し付けられる。
【0007】
上記(A)乃至(D)に示される現象のいずれかが生じた場合、素子分離膜の表面は、当該付着物や当該凸部によって擦られる状態となり、引っかき傷等の損傷を受けることになる。特に、蒸着マスクが素子分離膜と接している状態においてこの蒸着マスクが基板面方向でずれ動作が生じると、素子分離膜が損傷して致命的な欠陥となりやすくなる。
【0008】
素子分離膜上に損傷部分が生じると、例えば、この損傷部分から水分が侵入しやすくなる。このため、有機発光素子の発光寿命が短くなるという問題があった。具体的には、表面に損傷を受けた素子分離膜上に有機化合物層、電極層(上部電極)及び封止膜を成膜すると、成膜された有機化合物層、電極又は封止膜の一部にカバレッジ欠陥が発生し、このカバレッジ欠陥部から大気中に含まれる水分が侵入することとなっていた。また、蒸着マスクを素子分離膜の表面に当接する以前の工程において、蒸着マスクが素子分離膜の表面上に成膜されている有機化合物層に接触することにより、有機化合物層の直下にある素子分離膜を損傷させることもあった。この場合も上記と同様に、損傷部分からカバレッジ欠陥が発生しやすい状態にあった。ここで上述した損傷部分が深い場合は、その損傷部分が表示性能を損なう致命的な傷になり得る。
【0009】
このような欠陥発生の問題を解決すべく様々な試みがなされている。例えば、特許文献1で開示されるように、発光領域内において、素子分離膜よりも基板面の垂直方向に突出したスペーサを備える表示装置が提案されている。特許文献1の表示装置は、素子分離膜上に設けられるスペーサ上に蒸着マスクを接触させることにより蒸着マスクを支持し、素子分離膜の表面及び素子分離膜上に堆積した有機化合物層から蒸着マスクを離間することができる。また特許文献1では、発光領域内で蒸着マスクを離間させるために、上記スペーサを、表示領域から外れた所定の設置ポイントに1の表示領域あたり4つほど配置させて蒸着マスクを支持している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2003−257650号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
ところで、単数又は複数の発光表示装置を作製するにあたり、複数の開口が周期的に形成されている蒸着マスクを用いて、発光表示装置を構成する有機化合物層を真空蒸着法により形成することになる。ここで蒸着マスクを素子分離膜上に設置する際に、周期的に形成される開口のうち最も端の部分では局所的な変形が発生する。そしてこの変形された部分が素子分離膜に接触することになる。そうすると、周期的に形成される有機化合物層のパターンの最も外周にあたる部分おいて素子分離膜及びこの素子分離膜上に形成される有機化合物層に損傷部分が発生することになる。このため第二電極あるいは封止膜を形成する際にその一部にカバレッジ不良が発生するという問題が生じていた。またこの損傷部分から水分が侵入した場合、浸入した水分が素子分離膜及び有機化合物層へと拡散する。そして浸入した水分が発光領域内にある有機化合物層に到達すると、素子の輝度低下を招き、発光寿命の低下領域(=ダークエリア)が発生する。
【0012】
特に、複数の発光表示装置を大型の素子基板から多面取りする形式で作製する場合、上述したカバレッジ不良の問題が顕著になる。ここで多面取りによって複数の発光表示装置を作製する場合、使用される蒸着マスクも複数ある発光表示装置の作製領域に対応するように複数組の開口を有することになる。そうすると、蒸着マスクには、発光表示装置一面あたりの蒸着領域に対応するように開口が複数配列されることになる。このとき図10に示されるように、蒸着マスク50の桟部53及び最も端にあるマスクスリット部52との間において局所的な変形が発生することがある。
【0013】
この局所的な変形が発生する原因としては、自重による基板やマスクの撓みが考えられる。つまり、基板と蒸着マスクとの位置合わせを行う際に、基板及びマスクは位置合わせが終わるまで互いに離間された状態で保持される。このとき基板及び蒸着マスクは、共に自重によって撓んだ状態になる。尚、自重による基板の撓みは、基板が大きくなれば大きくなるほど大きくなる。一方、蒸着マスクは蒸着マスクの周辺に設けられる枠体に固定された状態で一定の張力を加えられているので、仮に蒸着マスクが大きくなった場合、自重による撓みの大きさは基板と比較して相対的に小さくなる。例えば、360mm×460mm相当の基板において自重による撓みの量は数100μmである一方で、同じサイズの蒸着マスクにおける自重における撓みの量は数10μmである。
【0014】
このように撓みが異なると、基板・蒸着マスクの両者の間に曲率差が生じることになる。そしてこの曲率差が生じた状態で蒸着マスクと基板とを重ね合わせると、基板の中央からその周囲に向けて順次基板上の素子分離膜がマスクと接触する。このときに理想的な並行平板同士を重ねる場合には生じにくい面方向のずれが生じやすくなる。このように面方向のずれが伴う場合、上述したようにマスクが局所的に変形していると、マスクの変形部分においてマスクと素子分離膜とが強く接触して擦れる。その結果素子分離膜に傷が発生し、上述したカバレッジ欠陥を発生させることになる。このため、蒸着マスクと基板との位置合わせを行う際に、発光領域のうち最も外周にある画素において素子分離膜の表面あるいは素子分離膜表面に堆積された有機化合物層の損傷の発生頻度が高くなっている。
【0015】
また特許文献1のように、発光領域にスペーサを配置するだけでは、非発光領域で発生する蒸着マスクの変形に起因する蒸着マスクの素子基板への接触を十分に防ぐことはできなかった。
【0016】
本発明は、上述した課題を解決するためになされたものであり、その目的は、信頼性の高い発光表示装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0017】
本発明の発光表示装置は、基板と、
前記基板上に設けられる発光領域と、
前記基板上であって、前記発光領域の外縁に設けられる非発光領域と、から構成され、
前記発光領域には、複数の発光画素が周期的に配列され、
前記発光画素が、発光色が異なる複数種類の発光副画素を有し、
前記発光副画素が、前記基板上に設けられる第一電極と、第二電極と、前記第一電極と前記第二電極との間に挟持される有機化合物層と、を有し、
前記非発光領域には、複数の非発光画素が配列され、
前記非発光画素が、複数の非発光副画素を有し、
前記発光副画素及び前記非発光副画素が、それぞれ素子分離膜によって区画され、
前記非発光領域のうち、前記発光領域の行方向の外縁に設けられる非発光領域にはスペーサが設けられ、前記発光領域の行方向の外縁に設けられる非発光画素が、前記スペーサによって1個又は複数個の画素に区画されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0018】
本発明の発光表示装置は、蒸着マスクを用いた真空蒸着法を利用し、大型の素子基板から多面取りする形式で複数の発光表示装置を製造する際に、発光表示装置を構成する素子分離膜や有機化合物層に傷を付与することはない。このため電極あるいは封止膜にカバレッジ欠陥を発生させることはない。よって、本発明によれば、信頼性の高い発光表示装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の発光表示装置における第一の実施形態を示す平面模式図である。
【図2】図1の発光表示装置の部分拡大図である。
【図3】図2のAA’断面を示す断面模式図である。
【図4】スペーサの配置態様の他の具体例を示す平面模式図である。
【図5】(a)は、有機化合物層の形成工程における基板と蒸着マスクとの位置関係を示す平面模式図であり、(b)は、(a)の中の囲み領域の部分拡大図である。
【図6】有機化合物層の形成工程における基板と蒸着マスクとの位置関係を示す平面模式図である。
【図7】大判の基板から複数の発光表示装置を作製する際に使用される蒸着マスクを示す平面模式図である。
【図8】複数の発光表示装置を作製する際に使用される大判の基板を示す平面概略図であり、(a)は、基板全体の概略図であり、(b)は、(a)中の囲み部分を示す部分拡大図である。
【図9】図8の大判基板上に図7の蒸着マスクを載置したときの基板と蒸着マスクとの位置関係を示す模式図であり、(a)は、平面図、(b)は(a)中のBB’断面を示す断面図である。
【図10】従来の発光表示装置において、基板上に蒸着マスクを載置したときの様子を示す断面模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明の発光表示装置は、基板と、この基板上に設けられる発光領域と、この基板上であって、発光領域の外縁に設けられる非発光領域と、から構成されている。
【0021】
ここで発光領域には、複数の発光画素が周期的に配列されており、この発光画素は、発光色が異なる複数種類の発光副画素を有している。そして上記発光副画素は、基板上に設けられる第一電極と、第二電極と、前記第一電極と前記第二電極との間に挟持される有機化合物層と、を有している。
【0022】
一方、非発光領域には、複数の非発光画素が配列され、またこの非発光画素は、複数の非発光副画素を有している。
【0023】
本発明において、複数の発光副画素及び複数の非発光副画素は、それぞれ素子分離膜によって区画されている。
【0024】
また本発明において、非発光領域のうち、発光領域の行方向の外縁に設けられる非発光領域にはスペーサが設けられ、上記発光領域の行方向の外縁に設けられる非発光画素が、前記スペーサによって1個又は複数個の画素に区画されている。即ち、発光領域の行方向の外縁に設けられる非発光領域には一定の法則を持ってスペーサが設けられている。尚、スペーサの配置位置及び作用効果については、後述する。
【0025】
次に、図面を参照しながら、本発明の発光表示装置の実施形態について説明する。尚、以下の説明は、あくまでも本発明の発光表示装置の実施形態の例であり、本発明はこれら実施形態に制限されるものではない。
【0026】
図1は、本発明の発光表示装置における第一の実施形態を示す平面模式図である。図1には発光領域と発光領域の行方向の外縁に設けられる非発光領域の一部分しか示していないが、実際は行方向に同様の構成が繰り返し設けられている。図2は、図1の発光表示装置の部分拡大図、より具体的には、図1の囲み部分(符号2)の部分拡大図である。図3は、図2のAA’断面を示す断面模式図である。
【0027】
図1乃至図3にて示される発光表示装置1は、基板10上に、発光領域20と、非発光領域30と、が設けられている。
【0028】
まず発光領域20及び発光領域に含まれる画素について説明する。発光領域20は、表示を行うために外部回路からの制御により発光する発光画素21を有している。また発光画素21は、例えば、図2に示される三種類の副画素、即ち、R発光副画素21R、G発光副画素21G及びB発光副画素21Bを有する画素である。ただし発光画素21に含まれる発光副画素の数は、3個に限定されるものではなく、例えば、2個にしてもよいし、4個にしてもよい。
【0029】
本発明において、発光画素21に含まれる三種類の発光副画素(21R、21G、21B)の配列態様は、ストライプ配列、モザイク配列等が挙げられる。ただし本発明においては、特に限定されるものではない。例えば、図1及び図2に示されるように、列方向(X方向)には、R発光副画素21Rと、G発光副画素21Gと、B発光副画素21Bとが、RGBRGB・・・というように周期的に繰り返し配置され、行方向(Y方向)には、同色の画素が配列される態様がある。即ち、図1及び図2に示される三種類の発光副画素(21R、21G、21B)の配列態様は、ストライプ配列である。
【0030】
ここで、三種類の発光副画素(21R、21G、21B)に含まれる有機発光素子について、図3を参照しながら説明する。
【0031】
図3に示されるように、各発光副画素(21R、21G、21B)には、それぞれ基板10上に設けられる有機発光素子22を有している。尚、図3中に示される基板10は、基材11上に有機発光素子22を制御するためのTr回路12が設けられている。このように基板10内にTr回路12が内蔵されている場合、基材11上あるいはTr回路12上に絶縁層13及び平坦化膜14が設けられる。ここで絶縁層13及び平坦化層14は、隣接する1組の発光副画素にそれぞれ設けられるTr回路12とTr回路12との間を絶縁する役割を果たす。また絶縁層13及び平坦化層14は、Tr回路12を設けることによって生じた凹凸を埋めて基板10を平坦化させる役割も果たす。
【0032】
一方、有機発光素子22は、第一電極23と、有機化合物層24と、第二電極25と、から構成される。ここで有機発光素子22を構成する有機化合物層24は、少なくとも発光層を有する単層あるいは複数層からなる積層体である。また有機化合物層24に含まれ得る発光層以外の層としては、正孔注入層、正孔輸送層、電子ブロック層、正孔ブロック層、電子輸送層、電子注入層等が挙げられる。有機化合物層24の具体的な層構成として、例えば、(第一電極、)正孔輸送層、発光層、電子輸送層(、第二電極)が挙げられるが、本発明においては、これに限定されるものではない。
【0033】
一方、図1中の非発光領域30は、発光領域20の外縁に設けられる領域であり、表示には利用されない非発光画素31を有している。また非発光画素31は、図2に示されるように3個の非発光副画素32を有している。非発光副画素32は、発光副画素と同様に有機EL素子を有している。尚、本発明において、非発光画素31に含まれる副画素(非発光副画素)の数は、3個に限定されるものではない。
【0034】
ところで、本発明の発光表示装置には、図3に示されるように、発光副画素又は非発光副画素を構成する第一電極23と隣接する第一電極23との間に素子分離膜15が設けられている。この素子分離膜15は、各有機発光素子22を素子1個ごとに区画するために設けられる。また図3に示されるように、素子分離膜15上の特定の位置には、スペーサ16が設けられている。ここでスペーサ16が設けられる位置は、図1及び図2に示されるように、少なくとも発光領域20の行方向の外縁に設けられる非発光領域30に含まれる特定の非発光画素31間である。これにより、発光領域20の行方向の外縁に設けられる非発光領域30に含まれる非発光画素31は、スペーサ16により、1個あるいは複数個の画素に区画されることになる。ここで「区画」というのは、2個のスペーサ16間に一定数量(1個あるいは複数個)の非発光画素31が配置されているという各スペーサ16の配置位置の規則性に因むものである。ただし本発明において、非発光画素31を区画する部材としては、素子分離膜15上に連続的に配置される部材に限定されるものではなく、図1、図2に示される不連続的に列方向(X方向)に1列に配置されている1組のスペーサ群が含まれている。尚、スペーサ16を設ける位置は、非発光領域30のみに限定されるものではなく、発光領域20内又は発光領域20と非発光領域30との境界に設けてもよい。
【0035】
また本発明の発光表示装置には、図3に示されるように、有機発光素子22上に透水性の低い封止膜26と、封止膜26上に設けられ外的要因による封止膜26のキズを防止するための中間層27及び保護基板28を備えている。ここで封止膜26は、外部のから有機層への水分侵入を防止する機能を有する。
【0036】
以下、本発明の発光表示装置の製造方法について、詳細を説明する。
【0037】
本発明の発光表示装置の構成部材である基板10として、ガラス基板、合成樹脂等からなる絶縁性基板、表面に酸化シリコンや窒化シリコン等の絶縁層が形成された導電性基板若しくは半導体基板等が挙げられる。また素子基板10は、透明であっても不透明であってもよい。
【0038】
本発明の発光表示装置を製造する際に、Tr回路12を有する基板10を使用する際には、後述するように、Tr回路付基板を予め作製する必要がある。
【0039】
基板10として、例えば薄膜トランジスタ(Thin Film Transistor(TFT))を用いたTr回路付基板を作製する際には、まずガラス製の基材11上の全面に、バッファ層(不図示)を形成する。ここでバッファ層は基材11から生じ得る不純物をTr回路12等へ侵入するのを防ぐために設けられる。ここでバッファ層の構成材料として、SiNx、SiO2等が挙げられる。
【0040】
次に、バッファ層上に、Tr回路12を形成する。このときTr回路12は、発光領域20、非発光領域30に関わらず、副画素1個当たり1組設けておく。ただし、発光領域20に設けられるTr回路と非発光領域30に設けられるTr回路とは、以下に説明するように機能の点で異なる。
【0041】
即ち、発光領域20に設けられるTr回路は、副画素単位で有機発光素子22を制御するためのTr回路が形成されている。尚、発光領域20に設けられるTr回路12には、図示されていないが副画素ごとに設けられる保持容量やその他の機能を有するTrが含まれている。
【0042】
一方、非発光領域30に設けられるTr回路は、各副画素にデータ信号やゲート信号を供給するためのドライバ回路用のTrが形成されている。
【0043】
実際にTFTからなるTr回路12を作製する場合は、まずバッファ層上の所定の領域に半導体層12aを形成する。次に、半導体層12a(を含む基板全面)を被覆する目的でゲート絶縁層(不図示)を形成する。尚、ゲート絶縁層は絶縁層13の一部である。次に、ゲート絶縁層上にゲート電極12bを形成する。ここで半導体層12aが設けられている領域のうちゲート電極12bの直下に相当する領域がチャネル領域である。次に、ゲート電極12bを含む基板全面を被覆する目的で層間絶縁層(不図示)が形成される。尚、層間絶縁層は絶縁層13の一部である。次に、層間絶縁層の所定の領域に、層間絶縁層とゲート絶縁層とを貫通したコンタクトホール12cを形成する。次に、層間絶縁層上であって上記チャネル領域の両脇に、それぞれソース電極12dとドレイン電極12eとが形成される。尚、p−ch型のTFT回路12を作製する場合は、ソース電極12d及びドレイン電極12eを形成する際に、ホウ素等の13族元素がドープされる。一方、n−ch型のTFT回路12を作製する場合はリン等の15族元素がドープされる。またソース電極12d及びドレイン電極12eは、コンタクトホール内に形成され、コンタクトホールの下部に露出した半導体層12aのソース領域にはソース電極12d、ドレイン領域にはドレイン電極12eがそれぞれ接続されている。尚、上述したTr回路12の形成方法は、トップゲート構造のTr回路の形成方法であるが、本発明においては、Tr回路の構成はトップゲート構造に限定されるものではなく、公知となっている他の構造のTr回路を採用してもよい。
【0044】
以上のようにTr回路12を形成した後、このTr回路12を被覆する目的で低透水性層(不図示)を形成してもよい。この低透水性層は、絶縁層13の一部であってTr回路12への水分の侵入を防止する機能を有する。上記低透水性層の構成材料としては、SiNx、SiNOx、SiOx、TEOS膜等を使用することができる。
【0045】
Tr回路12又は上記低透水性層を形成した後、Tr回路12の形成によって生じた凹凸を平坦化させるための平坦化層14を形成する。平坦化層14はTr回路12の形成によって生じた凹凸を平坦化できるものであれば、その構成材料は特に限定されるものではない。平坦化層14の構成材料としては、アクリル樹脂、ポリイミド系樹脂、ノルボルネン系樹脂、フッ素系樹脂等が挙げられる。また平坦化層14を形成する際には、公知の薄膜形成方法や薄膜加工方法を採用することができる。例えば、塗布法等によって薄膜を形成した後、この薄膜をフォトリソグラフィー法等によって所望のパターンに加工して平坦化層14を形成する。
【0046】
次に、絶縁層13上又は平坦化膜14上に電極層を形成する。具体的には、外部接続端子40と第一電極23とを形成する。
【0047】
図1に示される外部接続端子40は、絶縁層13上に形成される。ここで外部接続端子40の構成材料は、Tr回路12を形成する際に使用される導電性材料であってもよいし、後述する第一電極23を形成する際に使用される導電性材料であってもよい。また外部接続端子40は一層で構成されてもよいし、複数の層で構成されていてもよい。
【0048】
平坦化層14上であって、少なくとも発光副画素(21R、21G、21B)を設ける領域には第一電極23が形成される。尚、第一電極23は、コンタクトホール17によってTr回路12と電気接続される。また非発光領域30に形成されるTr回路12の機能によっては、非発光副画素32を設ける領域に第一電極23を形成してもよい。
【0049】
第一電極23は、透明電極であってもよいし反射電極であってもよい。また透明電極と反射電極とを積層してなる積層電極を採用してもよい。ここで第一電極23を透明電極にする場合、第一電極23の構成材料として、インジウム錫酸化物、インジウム亜鉛酸化物等が挙げられる。また第一電極23を反射電極にする場合、第一電極23の構成材料として、Au、Ag、Al、Pt、Cr、Pd、Se、Ir等の金属単体、これら金属単体を複数組み合わせた合金、ヨウ化銅等の金属化合物等が挙げられる。第一電極23の膜厚は、好ましくは、0.01μm〜1μmである。
【0050】
既に説明したが、第一電極23は、発光領域20において、発光副画素(21R、21G、21B)を設ける領域に設けられている。ここで発光副画素(21R、21G、21B)は、図1及び図2のように周期的に配列されている。このため第一電極23も図1及び図2のように発光副画素の配列に対応して周期的に配列されている。ここで第一電極23の配列態様として、例えば、ストライプ配列が挙げられるが本発明においてはこれに限定されるものではない。ストライプ配列に代えてデルタ配置、千鳥配置等を採用してもよい。
【0051】
第一電極23を形成する際には、公知の方法を採用することができる。例えば、第一電極23となる導電性薄膜を形成した後、フォトリソグラフィー等の公知の薄膜加工技術を用いて当該導電性薄膜を加工(パターニング)する。これにより、各発光副画素の設置領域に対応する領域に複数の第一電極23が、所望のパターン形状でそれぞれ形成される。尚、第一電極23を形成する際に、外部接続端子40を同時に形成してもよい。
【0052】
第一電極23を形成した後、第一電極23の周縁部に素子分離膜15を形成する。素子分離膜15は、下記(i)及び(ii)に示される機能を有する部材である。
(i)各発光副画素(21R、21G、21B)や非発光副画素32を、副画素単位で区画する機能
(ii)各発光副画素(21R、21G、21B)の発光領域を規定する機能
【0053】
素子分離膜15の構成材料としては、窒化シリコン、酸化窒化シリコン、酸化シリコン等からなる無機絶縁層や、アクリル系樹脂、ポリイミド系樹脂、ノボラック系樹脂等が挙げられる。好ましくは、1.0×1012Ω・cm以上の体積抵抗率を有する絶縁体が用いられる。また素子分離膜15の膜厚は、好ましくは、0.1μm〜3μmである。
【0054】
次に、特定の素子分離膜15上にスペーサ16を形成する。
【0055】
スペーサ16の構成材料としては、素子分離膜15と同じ材料であってもよいし、異なる材料であってもよい。またスペーサ16の構成材料は導電性を有する材料であっても構わない。素子分離膜15と同じ材料でスペーサ16を形成する場合、スペーサ16は素子分離膜15と一括で形成されていてもよい。尚、同一の材料で素子分離膜15とスペーサ16とを一括して形成する方法としては、フォトリソプロセスを利用した形成方法が採用される。ここでフォトリソプロセスを利用する場合、多段階露光やグレートーン露光を採用することが好ましい。スペーサ16の膜厚は、好ましくは、0.1μm〜3μmである。
【0056】
尚、蒸着マスクで後述する有機化合物層24のパターニングを行う場合、蒸着マスクと基板10(の表面)との離間距離が大きくなるほど、回り込みによって蒸着物がマスク開口幅よりも広い領域に着膜してしまう。このことは、例えば、隣接画素へ意図せぬ着膜をする不具合の原因になることがある。従って、本発明においては素子分離膜15の高さは低く設定することが望ましく、スペーサ16の高さに比べて相対的に低く設定する、即ち、素子分離膜15の高さをスペーサ16よりも低くするのが好ましい。
【0057】
ここでスペーサ16の配置位置について、具体的に説明する。ただし本発明において、スペーサ16の配置態様は以下に説明する態様に限定されるものではない。
【0058】
本発明の第一の実施形態において、スペーサ16は、図1及び図2に示されるように、発光領域20、非発光領域30又は発光領域20と非発光領域30との境界線に設けられている。
【0059】
本発明の第一の実施形態において、発光領域20内に設けられるスペーサ16とは、具体的には、発光領域20内に配列されている発光副画素(21R、21G、21B)のうち最も端の行に配列されている発光副画素間に設けられるスペーサ16aをいう。
【0060】
本発明の第一の実施形態において、非発光領域30内に設けられるスペーサ16とは、具体的には、非発光領域30内に配列されている非発光副画素32間に設けられるスペーサ16bをいう。
【0061】
本発明の第一の実施形態において、発光領域20と非発光領域30との境界線に設けられるスペーサ16とは、具体的には、下記(i)に示される発光副画素と下記(ii)に示される非発光副画素との間に設けられるスペーサ16cをいう。
(i)発光領域20内に配列されている発光副画素(21R、21G、21B)のうち最も端の行に配列される発光副画素のうち、最も端の列に配置される発光副画素
(ii)上記(i)の発光副画素と行方向で隣接する非発光副画素
【0062】
図1及び図2において、スペーサ16は、発光色が異なる発光副画素が並ぶ列方向(X方向)では1画素ピッチで設けられている。一方で、同色の副画素が並ぶ行方向(Y方向)では2画素ピッチで備えられている。つまり本発明の第一の実施形態において、スペーサの配置態様は、列方向の方が行方向よりも相対的に密に配置されている。尚、図1及び図2の発光表示装置1では、行方向で隣接する副画素間において、1個のスペーサを複数マスクの支持に利用する構成となっているが、本発明においてはこの態様に限定されるものではない。また本発明においては、行方向に設けられるスペーサ16のピッチ(スペーサ16によって区画される行方向の非発光副画素30の数)は、上述した2画素ピッチに限定されるものではない。
【0063】
図4は、スペーサ16の配置態様の他の具体例を示す平面模式図である。尚、図4は、図2の変形例でもある。
【0064】
スペーサ16の配置態様としては、例えば、図1及び図2に示されるように、下記(a)乃至(c)の条件を全て満たす態様がある。
(a)スペーサの長手方向の幅が1個の副画素の短辺と等しい
(b)行方向にて隣接する副画素間に配置される
(c)列方向において、副画素1個を一区切りとして不連続的に配置される
【0065】
ただし上記(a)乃至(c)の条件は、本発明の要旨を変更しない範囲において適宜変更が可能である。例えば、図4(a)に示されるように、非発光領域30内に設けられるスペーサ16bについて、上記(c)の条件に代えて下記(c’)の条件にしてもよい。尚、上記(c)の条件に代えて下記(c’)の条件にした場合は、上記(a)の条件は除外される。
(c’)列方向において、複数の副画素にわたって連続的に配置される
【0066】
また図4(a)に示されるように、発光領域20内に設けられるスペーサ16aについて、その設置範囲を、最も端の行に配列されている発光副画素に限定せずにさらに拡張してもよい。係る場合、発光領域内かつ行方向に設けられるスペーサ16のピッチは、画素ピッチと同じ周期(1画素ピッチ)であってもよいし、画素ピッチよりも長い周期(2画素ピッチ以上)であってもよい。
【0067】
さらに図4(b)に示されるように、スペーサ16を、列方向にて隣接する副画素間に配置してもよいし、対角画素間に配置してもよい。
【0068】
一方、発光領域20、非発光領域30又は発光領域20と非発光領域30との境界線に設けられるスペーサ16が複数ある場合、各スペーサは、その形状、密度、配列が全て同一にそろえてもよいし、図4(b)に示されるように、スペーサごとに変えてもよい。
【0069】
ところで、本発明の発光表示装置においては、発光領域20の行方向の外縁に設けられる非発光領域30に、少なくとも1対以上のスペーサが配置される。この理由について、適宜図面を参照しながら以下に説明する。
【0070】
図5(a)は、有機化合物層の形成工程における基板と蒸着マスクとの位置関係を示す平面模式図である。また図5(b)は、図5(a)中の囲み領域(符号3)の部分拡大図である。尚、図5は、赤色発光副画素21Rを構成する赤色有機化合物層24(24R)の形成工程を示す図である。
【0071】
図5で示されるように、赤色有機化合物層24Rを形成する際には、行方向に配列されるR発光副画素21R又は非発光画素31中のR画素列32Rと、マスクの開口51と、がそれぞれ対応するように蒸着マスク50を載置する。尚、蒸着マスク50は、開口51と、開口51と開口51との間に設けられるスリット部52と、を有している。ここで開口51とスリット部52は蒸着領域53内に設けられており、この蒸着領域53から外れた領域、例えば、蒸着マスク50の外周部分は、マスクの桟部54である。
【0072】
図5で示されるように、蒸着マスク50を配置した際に、R画素列32Rに設けられるスペーサ161は、蒸着マスク50の開口51を介して視認することができる。一方、G画素列32G及びB画素列32Bにそれぞれ設けられるスペーサ162、163は、マスクのスリット部52に覆われるため、視認することができない。言い換えると、R発光副画素21RやR画素列32Rに含まれる赤色有機化合物層24Rを形成する際には、スペーサ162、163がマスク50を支持することになる。一方で、他の副画素、例えば、B発光副画素21BやB画素列32Bに含まれる青色有機化合物層24Bを形成する際には、スペーサ161、163がマスク50を支持することになる。このように、本発明においては、複数種類の有機化合物層を形成する場合において、いずれの場合においてもマスクを支持する機能を有するスペーサが存在する。
【0073】
また図5で示されるように、マスク50内に設けられる開口51は複数あり、R発光副画素21R又はR画素列32Rに対応する位置に周期的に設けられているが、各開口51の形状は共通している。具体的には、開口51の行方向(同種の副画素が配列されている方向)の寸法が発光領域20の行方向(同種の副画素が配列されている方向)の幅と同等の長さである。また開口51の列方向の寸法がR発光副画素21R又は画素列R32Rの短辺に素子分離膜15(1個分)の幅を足し合わせた長さである矩形形状である。
【0074】
尚、発光層の形成工程(発光層の塗りわけ工程)で使用される蒸着マスク50は、本発明の作用効果を奏するものであれば、公知の蒸着マスクを適用することが可能である。また蒸着マスク50が有する開口の形状は、図5(a)において示されたスリットタイプでもよいが、これ以外にも、図6にて示されるスロットタイプやドットタイプのマスクを使用することができる。ここで図6にて示されるスロットタイプの蒸着マスク50に備えられる長方形の開口51の長手(行)方向の幅は、画素複数個分に相当する。また図6にて示されるスロットタイプの蒸着マスク50には、行方向に並列される開口51間に小スリット部56が設けられており、この小スリット部56がスペーサ16上に載置されることになる。これにより一部のスペーサ16上に有機化合物層24が形成されることを防止することが可能となる。また図6にて示されるスロットタイプの蒸着マスク50を使用する場合、発光領域20内に備えられたスペーサ16上において有機化合物層24の損傷に伴う欠陥(カバレッジ欠陥)を回避することができるようになる。
【0075】
また蒸着マスクの開口の大きさが副画素1個分であるドットマスクにおいても、同様のことが可能である。
【0076】
ここで図5(a)に示されるスリット型の蒸着マスクを用いる場合には、両最端(右端、左端)の各開口の両端を支持するためにスペーサ16をシンメトリックに配置するのが好ましい。
【0077】
ここで基板10と蒸着マスク50との離間距離を小さくしていくと、蒸着マスク50はスペーサ162及び163の天面に接触する。このとき蒸着マスク50と素子分離膜15の表面とは、スペーサ162及び163によって、一定の離間距離を保ちつつ十分に離間されている状態になる。従って、スペーサ16は、基板10上に設けられる素子分離膜15の表面とこれに対向して配置される蒸着マスク50とを離間するという機能を有する。
【0078】
ところで、本発明は、大判基板に複数の発光表示装置を作製する際に特に有用である。
【0079】
図7は、大判の基板から複数の発光表示装置を作製する際に使用される蒸着マスクを示す平面模式図である。ここで図7に示される蒸着マスク50は、大判の基板上に3行3列、即ち、合計9個分の発光表示装置を大判の素子基板に形成した後、9個の発光表示装置毎に分割して作製する際に用いられる蒸着マスクである。また図7に示される蒸着マスク50は、各発光表示装置の発光領域に対応するように、マスクの開口51が設けられている。尚、開口51は、蒸着マスク50内に9組設けられているが、この数は発光表示装置の面取り数に対応する。一方、図7に示される蒸着マスク50は、蒸着マスク50自体がたわまないように一定の張力を加えた状態でマスク枠体に56に固定されている。
【0080】
尚、図7にて示される蒸着マスク50に設けられる開口51の形状は、図7にて示されるスリット型でもよいが、これ以外にも、スロットタイプやドットタイプのマスクを使用することができる。
【0081】
図8は、複数の発光表示装置を作製する際に使用される大判の基板を示す平面概略図であり、(a)は、基板全体の概略図であり、(b)は、(a)中の囲み部分(符号4)を示す部分拡大図である。図8の基板10は、図8(a)に示されるように、3行3列の配置されている発光表示装置を作製するために使用される基板であり、スクライブライン(分割ライン)60をはさんで発光領域20と非発光領域30とがそれぞれ配置されている。また図8(b)に示されるように、スペーサ16は、非発光領域30を非発光画素(31)2画素分ごとに区画するように配置されている。
【0082】
ここで、図7の蒸着マスク50を使用して、図8の大判基板(基板10)上に有機化合物層を塗り分けで形成する工程について以下に説明する。
【0083】
図9(a)は、図8の大判基板上に図6の蒸着マスクを載置したときの基板と蒸着マスクとの位置関係を示す平面模式図である。尚、図9(a)は、B発光副画素21Bを構成する青色有機化合物層24Bの形成工程における基板10と蒸着マスク50との位置関係を示す図である。
【0084】
図9(a)に示されるように、青色有機化合物層24Bの形成工程においては、B発光副画素21B又は非発光領域30に含まれるB画素列32Bに開口51を有する蒸着マスク50が使用される。青色有機化合物層24Bの形成工程において、基板10上に蒸着マスク50を載置する際に、B発光副画素21B又は非発光領域30に含まれるB画素列32Bに設けられるスペーサ163は、蒸着マスク50の開口51を介して視認することができる。一方、他の画素列(32R、32G)にそれぞれ設けられるスペーサ161、162は、マスクのスリット部52又は桟部54に覆われるため、視認することができない。
【0085】
また基板10に蒸着マスク50を近づけて両者の離間距離を小さくすると、最終的にはスペーサ161、162の天面に、蒸着マスク40のスリット部52又は桟部54が接触する。
【0086】
図9(b)は、図9(a)のBB’断面を示す断面模式図である。図10は、従来の発光表示装置において、基板上に蒸着マスクを載置したときの様子を示す断面模式図である。また、図10は、図9(b)の比較形態を示す断面模式図である。図10は、具体的には、図9(a)にて示されている態様において、非発光領域30内に設けられるスペーサ(161、162、163)を省略したときの態様である。尚、図9(b)及び図10にて示される有機化合物層24は、マスク成膜を利用して既に成膜された他色の有機化合物層を示しており、各副画素に共通して形成される共通層は表記を省略している。
【0087】
ところで蒸着マスク50には、マスクの開口51の長手方向に沿って強い張力が加わっている。ここでマスクのスリット部52においては、その幅が副画素の短辺の2倍程度(具体的には、約50μm〜200μm)となっている。このため当該スリット部52においては、短軸方向におけるスリット部52のゆがみ及びねじれはほとんど発生していない。しかし、発光表示装置間に位置するマスクの桟部54においては、その幅が発光表示装置の額縁の幅(少なくとも約2mm以上)程度ある。このためマスクの桟部54では、蒸着マスク50に加わっている張力により、図9(b)及び図10に示されるゆがみが発生する。
【0088】
ここで図9(b)に示されるように、非発光領域30においてスペーサ(161、162、163)を設ける場合、スリット部52又は桟部54に接触するスペーサ161、162によって蒸着マスク50と素子分離膜15(の表面)とは十分に離間している状態になる。このため、素子分離膜15にキズが付与されることがない。従って、後の工程で封止膜26を形成する際に、形成された封止膜26については欠陥部が発生することないので、表示劣化が発生することもない。
【0089】
一方、図10に示されるように、非発光領域30においてスペーサ(161、162、163)を設けないと、マスクの桟部54の短軸側の両端部及びこの桟部54に隣接するスリット部52の端部が素子分離膜15(の表面)と強く接触することになる。そうすると素子分離膜15又は素子分離膜15上に設けられる有機化合物層24にキズを付与することになる。この結果、後の工程で封止膜26を形成する際に、上記キズが発生している箇所にも封止膜26を形成することになる。そうすると、上記キズが発生している箇所にて形成されている封止膜26に欠陥が発生することになる。そしてこの欠陥が水分の侵入経路となり、表示劣化が発生する原因となる。
【0090】
ただし、スペーサ16を設ける際には、その数を一定量に制限するのが望ましい。スペーサ16の設置数が多いほど、スペーサ16と蒸着マスク50とが接触する機会が増し、スペーサ16自体が損傷するリスクが増し、必ずしも本発明の効果(表示劣化の発生の防止)が奏するわけではないからである。
【0091】
発明者らが実験を行って検討した結果、封止膜26の欠陥を誘発し得るレベルのスペーサ上の損傷発生率は数ppm〜数十ppmと推定される。この検討結果を考慮しつつ素子分離膜15(の表面)と蒸着マスク40との離間状態を損なわない範囲において、スペーサ16を必要最低限の数だけ配置することが望ましいといえる。
【0092】
封止膜26の欠陥の原因となるスペーサ16の傷を低減するためには、スペーサ16の配列ピッチを広くするのが好ましい。このため基板10上の素子分離膜15と蒸着マスク50との離間状態を保証できる範囲において、できるだけスペーサ16のピッチを広くするのが好ましい。スペーサ16のピッチを広くすることで発光領域におけるスペーサの数を低減することができるため、発光領域において発生し得る傷の発生率を低減することができるからである。尚、蒸着マスク50が素子分離膜15へ接触することを防止しつつ、素子分離膜15よりも可能な限り狭い面積でスペーサ16を形成することが重要となる。ここでスペーサ16の基板鉛直方向の断面積の最大は、同位置に設けられる素子分離膜15の断面積よりも小さい関係となることが好ましい。
【0093】
尚、本発明において、スペーサ16の形状は、例えば、円錐、角錐等の錘状の構造体が挙げられるが、必ずしもこの形状(構造体)に限定されることはない。図1、図2等にて示されるように、平面視で線状あるいは鎖線状となる構造体、具体的には、角柱、角錐台等の構造体であっても構わない。ここでスペーサ16の形状が角柱又は角錐台である場合、蒸着マスク面には深さ数100nm程度の凹み部が局所的に形成されている場合がある。このため、平面視で線状あるいは鎖線状である形状のスペーサにすることで蒸着マスクの凹み部では支持できなくとも、その凹み部の近傍において蒸着マスクを支持することができる。従って、素子分離膜15と蒸着マスク50との離間状態を局所的にし損ねるというリスクを回避できるようになる。尚、このような蒸着マスクの局所的な凹みはマスク製造工程に依存していることが多い。
【0094】
スペーサ16の高さは、マスク自体に加わった張力によってゆがんだマスク桟部54及び隣接するスリット部52の端部に対して、素子分離膜15の表面と対向する蒸着マスク50の面とを十分に離間できる距離を維持できれば特に限定されるものではない。
【0095】
具体的には、素子分離膜15上に堆積される有機化合物層24の膜厚あるいは素子分離膜15と対向する蒸着マスク50の面の凸サイズ以上の離間距離が少なくとも必要となる。一般的に有機発光素子を含む画素を構成する有機化合物層の膜厚は、数10nm〜300nmの範囲である。一方で、発光層等を塗り分けるために使用される蒸着マスク面の凸サイズはRa=100nm〜500nmの範囲である。従って、これらを考慮すると、発光領域20内において500nm以上の離間距離が維持されるには、スペーサ16の高さは、好ましくは、500nm以上である。
【0096】
本発明の発光表示装置を作製する際に使用される蒸着マスクにおいて、よれ及びゆがみの最も大きい箇所は、スリットの開口パターンの最外周となる開口部を成すマスクの桟部54及び隣接するスリット部52である。ここで最外周の有機化合物層のパターンを形成する際には、非発光領域30内で蒸着マスク50を支持するスペーサ16bは、発光領域20内に設けられるスペーサ16aと比べて、相対的に高く、かつ密度を高くするのが好ましい。こうすることで本発明の効果がより顕著に現れる。尚、上述した「密度を高くする」とは、単位面積当たりに設けられるスペーサ16の本数が、発光領域20に設けられるスペーサ16aよりも非発光領域30に設けられるスペーサ16bの方が多いことを意味する。
【0097】
以上のようにして特定の素子分離膜15上にスペーサ16を形成した後、各発光副画素(21R、21G、21B)ごとに有機発光素子22を形成する。ただし実際には、有機発光素子を形成する前に以下説明を続ける基板の前処理工程を行う。
【0098】
基板10の前処理は、具体的には、まず真空雰囲気下でベイク処理を行った後、酸素プラズマによって基板の処理を行う。
【0099】
上述したように基板の前処理を行った後、第一電極23以外の有機発光素子22の構成部材(有機化合物層24、第二電極25)を順次形成する。具体的には、第一電極23が形成されている基板10を真空雰囲気内に置き、真空雰囲気を維持した状態で、第一電極23上に、例えば、正孔輸送層、発光層、電子輸送層からなる有機化合物層24を形成する。有機化合物層24を構成する層の構成材料としては、公知の化合物を使用することができる。また有機化合物層23は、真空蒸着法、インクジェット法等の公知の薄膜形成方法により形成することができる。尚、図1及び図2に示される複数種類の副画素が特定のパターンを持って形成される発光表示装置を作製する場合において、蒸着法等を利用して有機化合物層24を形成する場合は、所望の発光エリアについて高精細マスクを用いて選択的に有機化合物層24を形成する。またインクジェット法等を利用して有機化合物層24を形成する場合は、高精度ノズル(吐出器)を用いて、所望の発光エリアについて選択的に有機化合物層24を形成する。
【0100】
ここで蒸着法を利用して、R発光副画素21R、G発光副画素21G、B発光副画素21Bに含まれる発光層(不図示)をそれぞれパターニング形成する工程について、図5を適宜参照しながら説明する。尚、上記パターニング形成工程は、具体的には、蒸着マスクを用いた各発光層(R発光層、G発光層、B発光層)の塗りわけ工程である。以下、R発光層の形成工程を具体例として説明する。
【0101】
第一電極23上に正孔輸送層を形成した後、R発光層を形成する成膜室に基板10を搬送する。次に、蒸着マスク50と基板10とのアライメント(位置合わせ)を行った後に基板10を蒸着マスク50に近接させ、蒸着マスク50を基板10上に載置させる。このとき蒸着マスク50はスペーサ16に接触することになる。尚、実際には、蒸着マスク50は、スペーサ16上に形成される正孔輸送層と接触することになる。このような状態でR発光副画素21Rに含まれる第一電極23上に、所定の膜厚に到達するまでR発光層を成膜する。同様に、G発光層、B発光層も成膜する。尚、有機化合物層24を構成する発光層以外の層は、各副画素に共通する層として所定の成膜室にてそれぞれ形成される。
【0102】
尚、本発明においては、基板10と蒸着マスク50とのアライメント工程から発光層の形成工程が完了するまでの期間において、蒸着マスク50は、基板10上に設けられる素子分離膜15(の表面)と離間されている状態は維持されている。このため蒸着マスク40が素子分離膜15の表面に損傷を与えることはない。また蒸着マスク50と接触するスペーサ16においては、画素数よりもスペーサの数を少なくして蒸着マスク50との接触面積を低減することによって、損傷の発生率を十分に抑制することが可能である。
【0103】
有機化合物層24を形成した後は第二電極25(上部電極)を形成する。第二電極25は、透明電極であってもよいし反射電極であってもよい。また第二電極25の構成材料としては、上述した第一電極23の構成材料と同様の材料を使用することができる。また第二電極25の形成方法としては、高知の薄膜形成方法を採用することができる。このように第二電極25を形成することにより、基板10上に、第一電極23と、有機化合物層24と、第二電極25と、がこの順で積層されてなる有機発光素子22が形成されることになる。尚、大判の基板から複数の発光表示装置1を形成する場合、この大判の基板上に、複数の発光表示装置1がマトリックス状に配列されることになる。
【0104】
第二電極25を形成した後、第二電極25上に封止膜26を基板10の全面を覆うように形成する。封止膜26の構成材料としては、電気絶縁性と気密性とを有し、有機発光素子の劣化を防止することができる材料であれば特に限定されるものではない。具体的には、窒化シリコン、酸化シリコン、窒化酸化シリコン等が挙げられる。
【0105】
封止膜26の形成方法としては、真空蒸着法、プラズマCVD法、スパッタ法等を採用することができるが、本発明においてはこれらに限定されるものではない。尚、封止膜26は、高温高湿条件下(例えば、温度60℃湿度90%の条件下)における耐久試験において水分等の浸入がないと確認された膜を使用するのがよい。また封止層26の厚さは、好ましくは、0.1μm〜10μmの範囲で形成する。封止層26を厚くし過ぎると、封止層26での光吸収損失が大きくなるためである。
【0106】
ところで、封止膜26は、外部からの酸素、水分の浸入を防ぎ、素子の劣化を防ぐ役割を果たすため、封止膜26中には欠陥の発生を極力抑える必要がある。このため、使用する基板10上に元々存在し得るパーティクル、封止膜26の形成工程を行うまでのプロセス中に発生し得るパーティクル及びプラズマCVDプロセス中に発生し得るパーティクルを、それぞれ管理する必要がある。また基板表面の凹凸が大きい場合においても封止膜26に欠陥が発生することがあるので、第一電極23の周辺に設けられる素子分離膜15の形状及びスルーホール(不図示)の形状は、水平方向に対して急峻な角度とならないようにするのが好ましい。
【0107】
封止膜26を形成した後、封止膜26上に、中間層27を介して保護基板28が配置される。
【0108】
中間層27は、封止膜26と保護基板28とを貼り合わせて固定するために設けられる。また中間層27は、高透過率であれば、材質、厚さ、製法は特に限定されない。例えば、粘着性もしくは粘着層を有する樹脂シートや、硬化性樹脂を塗布して形成することができる。
【0109】
ここで樹脂シートを用いて中間層27を形成する場合は、封止膜26まで形成した基板上に樹脂シートを介して保護基板28を減圧下にて貼り合わせ、続いてベイクする。尚、このとき使用される樹脂シートは大判の基板10の全面を覆うベタ形状でもよいが、発光表示装置1間のスクライブライン60において樹脂シートが打ち抜かれたパターン形状を有するものを採用することもできる。ここで樹脂シートの打ち抜きパターンは、スクライブライン60の一部であってもよい。またスクライブライン60上の中間層27を除去することにより、中間層27の切断及び切り離しが不要となり、切断位置の精度が向上する。また外部接続端子部40を露出させるために、発光領域20間にある保護基板28にいれるスクライブライン60の位置においても樹脂シートの打ち抜きパターンを設けることができる。
【0110】
一方、中間層27の構成材料として硬化性樹脂を用いる場合は、封止膜26上に硬化性樹脂を塗布し、その上から保護基板28を、位置を合わせて乗せ、所定の厚みまで押し広げた後に硬化作業を行うことにより、図3にて示される断面形態が得られる。
【0111】
保護基板28は、基本的には、所定の押圧強度がある材料が使用される。望ましくは、防湿性が高く、高透過率の基材であれば、材質、厚さは特に限定されない。例えば、ガラスやアクリル等の基板、樹脂フィルム等を用いることができる。
【0112】
保護基板28は、大判の基板10の全面を覆うベタ形状で形成することができる。一方で、発光表示装置のサイズに保護基板28を切断し、切断された保護基板13を個々の発光表示装置にそれぞれ貼り合わせる製法を選択することもできる。ただし保護基板28の取り扱い個数が増え、個々の発光表示装置に対して貼り合わせ精度を維持するために各発光表示装置に対して個別に位置合わせを行う必要がある。このため生産性が著しく損なわれる場合がある。
【0113】
続いて、スクライブライン60にて基板10及び保護基板28を切断し、外部接続端子部40を露出させた後、発光表示装置1を、副画素単位で発光制御を行うためのフレキシブル配線基板(不図示)に接続させる。以上の工程を経て、本発明の発光表示装置1が完成する。
【0114】
以上により製造された発光表示装置は、基板上の所定の位置にスペーサが配置されている。このため蒸着マスクの最も端の開口部で大きなマスク変形が発生したとしても、基板の表面と蒸着マスクとが離間されている。従って、素子分離膜の表面あるいは素子分離膜の表面に堆積された有機化合物が損傷したり、この損傷に起因する表示欠陥が発生したりするのを低減することができる。
【0115】
[実施例1]
図3に示されるアクティブマトリクス型の発光表示装置1(有機EL表示装置)を、以下に示す方法により作製した。尚、本実施例にて設けられるスペーサ16は、図1及び2に示されるように、発光領域20の行方向側の外縁にある非発光領域30に設けられており、この非発光領域30に含まれる非発光画素31を、画素1個分又は画素2個分に区画している。また本実施例にて設けられるスペーサ16は、図1及び2に示されるように、発光領域20の両端の行にある副画素間にも設けられている。また、本実施例で使用した基板10は、図3にて示されるTFT回路12が含まれている基板10である。
【0116】
(1)発光表示装置
本実施例で作製した発光表示装置1(有機EL表示装置)は、図1乃至図3に示される構成を有しており、表示装置の大きさは、対角3インチ(X方向61mm、Y方向46mm)である。また発光表示装置1に含まれる発光領域20には、副画素の数が640×480×RGB(VGA相当)であり(画素数:640×480)、副画素(21R、21G、21B)の長辺側のピッチは約95μmであり、短辺側のピッチは約32μmである。またスペーサ16の高さは1.5μm、長さ(X方向)は5μm、幅(Y方向)は3μmであり、これに対して素子分離膜15の高さは、0.8μmとスペーサ16よりも低く設定している。尚、素子分離膜15は、列方向(X方向)、行方向(Y方向)共に発光領域相当の長さを有するため、スペーサ16の断面積は素子分離膜15の断面積よりも十分に小さい。以下、素子分離膜及びスペーサの形成方法を中心に本発明の発光表示装置の製造方法について説明する。
【0117】
(2)素子分離膜の形成方法
基板10上に第一電極23を形成した後、第一電極23上及び基板10上に、ポリイミドを含むポジ型感光性レジストをスピンコート法により塗布してレジスト膜を形成した。次に、レジストを除去するべき領域に露光光を照射した後、現像及び焼成工程を行うことによって、素子分離膜15を形成した。尚、素子分離膜15は、第一電極23を露出させると共に、第一電極23の端部を被覆する役割を果たす。
【0118】
(3)スペーサの形成方法
素子分離膜15を形成した後、上述したレジスト(ポリイミドを含むポジ型感光性レジスト)を成膜し、素子分離膜15と同様の方法で処理することにより、特定の素子分離膜15上にスペーサ16を形成した。尚、本実施例において、スペーサ16の高さは1.5μmであった。
【0119】
(4)有機発光素子の形成工程
次に、素子分離膜15及びスペーサ16を形成した基板10を、真空雰囲気下でベイク処理を行った後、酸素プラズマによる基板の前処理を行った。次に、真空雰囲気を維持した状態で、正孔輸送層を発光領域の全面に形成した。このとき正孔輸送層の膜厚を約80nmとした。次に、R発光層を形成する成膜室に基板を搬送し、図7に示されるストライプ形状の開口51を有する蒸着マスク50と基板10とのアライメント工程を行った後、R発光層をR発光副画素21Rが設けられる領域に成膜した。尚、R発光層を成膜する際には、図8で示されるスペーサ16(図9で示されるスペーサ(161、162))上に蒸着マスク50が支持されている状態となっていた。ここで図9にて示されるように、スペーサ(161、162)上にのみ蒸着マスク50が支持されているのはスペーサ(161、162)の高さによるものである。即ち、スペーサ(161、162)の高さ(1.5μm)に対して、スペーサ16の天面より素子分離膜15側にはみ出している蒸着マスクの桟部54及びスリット部52の長さが短いからである。具体的には、最大で500nmである。また正孔輸送層の膜厚が80nmであるため、蒸着マスク50は、素子分離膜15上に成膜される正孔輸送層に接触することはなかった。R発光層を形成した後、別の成膜室にてG発光層及びB発光層を順次成膜した。次に、別の成膜室にて、電子輸送層を発光領域の全面に形成した。
【0120】
尚、基板10と蒸着マスク50とのアライメント工程から、各発光層の成膜工程を完了するまでの期間において、素子分離膜15の表面と蒸着マスク50とが離間されている状態は維持されている。このため、蒸着マスク50が素子分離膜15の表面及び素子分離膜15上に成膜される有機化合物層24に損傷を与えることはなかった。また蒸着マスク50と接触するスペーサ16においても、スペーサ16の数を合計2410本として蒸着マスク50との接触面積を低減した。これによって、スペーサ16上での欠陥確率(〜数十ppm)に対するスペーサ16の本数が少ないため、損傷の発生率を十分に抑制できていた。
【0121】
有機化合物層24を形成した後、有機化合物層24上に、Ag合金薄膜を、光を透過できる程度の膜厚で成膜して第二電極25を形成した。続いて、第二電極25上に窒化シリコン(SiNx)を成膜して封止層26を形成した。このときの封止層26の膜厚を2μmとした。中間層27を介して保護基板28を封止層26に接着した。以上により図3で示される断面構成を有する発光表示装置を得た。
【0122】
得られた発光表示装置は、60℃90%環境にて1000時間保管した後でも該当箇所で発光不良は発生することはなかった。つまり、蒸着マスクの最も端の開口位置で発生する封止不良の発生を防止することができた。また、本実施例と同様の方法で大判の基板から発光表示装置を500基し、個々の発光表示装置の評価を行った。その結果、発光領域内で発光不良が生じた発光表示装置が10基見つかった。
【0123】
[実施例2]
実施例1において、スペーサ16の配置位置及び形状を以下に説明するように変更したことを除いては、実施例1と同様の方法により発光表示装置を作製した。
【0124】
(a)スペーサの配置位置
図4(a)に示されるように、発光領域20及び非発光領域30を複数個の画素に区画するようにスペーサを設けた。
【0125】
(b)スペーサの形状
本実施例において、非発光領域30内に形成されているスペーサ16bを、図4(a)に示されるように、連続した線状とした。一方、表示領域20内に形成されているスペーサ16aを、図4(a)に示されるように、不連続の短線状とした。また表示領域20内に形成されているスペーサ16aが設けられている発光副画素は、左端又は右端から数えて6行目の発光副画素までである。尚、配置されるスペーサ16の断面積は、素子分離膜15の断面積よりも十分に小さい。
【0126】
本実施例において、スペーサ16a、16bの高さは、それぞれ1.5μm、2μmとした。また非発光領域30内に形成されているスペーサ16bの長さ(列方向)は、120μmとし、発光領域20内に形成されているスペーサ16aの長さ(列方向)は、10μmとした。また幅(行方向)は3μmとした。
【0127】
ところで、本実施例の発光表示装置において、発光領域20内に設けられているスペーサ16aは、列方向には断続的に配置されているが、行方向には等間隔で10か所配置されている。一方、素子分離膜15の高さはそれより低い(0.8μm)。
【0128】
上述した素子分離膜及びスペーサの具体的な形成方法を以下に説明する。
【0129】
まず第一電極23を形成した後、基板10にポリイミドを含むポジ型感光性レジストをスピンコート法により塗布した。このときと付したレジスト膜の膜厚は2μmであった。次に、(1)レジストを完全に除去する領域、(2)レジストを部分的に除去する領域、(3)レジストを除去しない領域の3つに分け、各領域に応じて透過光量を調整されたグレートーンマスクを使用して、露光光を照射した。次に、現像及び焼成工程を行うことにより、基板10上に素子分離膜15及びスペーサ16を形成した。ここで、(1)レジストを完全に除去する領域は、画素の開口部分に相当する領域となる。また(2)レジストを部分的に除去する領域は、基板10上に素子分離膜15又は素子分離膜15とスペーサ16aとがこの順に積層して設けられる領域である。また(3)レジストを除去しない領域は、素子分離膜15とスペーサ16bとがこの順に積層して設けられる領域である。
【0130】
以上に説明したように、スペーサ16a、16bを形成した後は、実施例1と同様の方法により有機発光画素を有する表示装置を形成した。
【0131】
得られた発光表示装置は、60℃90%環境にて1000時間保管した後でも該当箇所で発光不良は発生することはなかった。つまり、蒸着マスクの最も端の開口位置で発生する封止不良の発生を防止することができた。また、実施例1と同様の方法で大判の基板から発光表示装置を500基し、個々の発光表示装置の評価を行った。その結果、発光領域内で発光不良が生じた発光表示装置は見つからなかった。
【0132】
[比較例1]
実施例1において、スペーサ16を、発光領域内にのみ設ける点を除いては、実施例1と同様の方法により発光表示装置を得た。
【0133】
本比較例の発光表示装置を60℃90%環境にて1000時間保管したところ、表示領域Y方向の両辺の非発光画素を起点とする輝度低下領域(ダークエリア)が平均7か所発生していることが確認された。輝度低下領域の中心に当たる箇所を光学顕微鏡にて観察したところ、素子分離膜及び有機化合物層に3μm〜10μm大のキズが確認された。当該個所についてFIB加工し、断面SEMを観察したところ、キズ部を封止膜が被覆できておらず、素子分離膜及び有機層のキズを起点として封止膜にシームが形成されている様子が確認された。
【0134】
以上の説明のように、本発明の発光表示装置は、発光領域の外縁に設けられる非発光領域において少なくとも一対のスペーサを配置し、加えて表示領域内においてもスリット部を支持するスペーサを配置する。高精細な表示装置あるいは大判基板を用いた製造において蒸着マスク桟部及び隣接するスリット部のゆがみによる素子分離膜への接触を防止し、表示領域内で局所的に発生するスリット部の変形やゆがみ部も素子分離膜へ接触することを防止することができる。
【符号の説明】
【0135】
1:発光表示装置、10:基板、11:基材、12:TFT回路、13:絶縁層、14:平坦化層、15:素子分離膜、16(16a、16b、16c、161、162、163):スペーサ、20:発光領域、21:発光画素、21R(21G、21B):発光副画素、22:有機発光素子、23:第一電極、24:有機化合物層、25:第二電極、26:封止層、27:中間層、28:保護基板、30:非発光領域、31:非発光画素、32:非発光副画素、40:外部接続端子、50:蒸着マスク、51:(蒸着マスクの)開口、52:(蒸着マスクの)スリット部、53:蒸着領域、54:(蒸着マスクの)桟部、55:(蒸着マスクの)枠体、60:スクライブライン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板と、
前記基板上に設けられる発光領域と、
前記基板上であって、前記発光領域の外縁に設けられる非発光領域と、から構成され、
前記発光領域には、複数の発光画素が周期的に配列され、
前記発光画素が、発光色が異なる複数種類の発光副画素を有し、
前記発光副画素が、前記基板上に設けられる第一電極と、第二電極と、前記第一電極と前記第二電極との間に挟持される有機化合物層と、を有し、
前記非発光領域には、複数の非発光画素が配列され、
前記非発光画素が、複数の非発光副画素を有し、
前記発光副画素及び前記非発光副画素が、それぞれ素子分離膜によって区画され、
前記非発光領域のうち、前記発光領域の行方向の外縁に設けられる非発光領域にはスペーサが設けられ、前記発光領域の行方向の外縁に設けられる非発光画素が、前記スペーサによって1個又は複数個の画素に区画されていることを特徴とする、発光表示装置。
【請求項2】
前記スペーサが前記素子分離膜上に設けられており、
前記スペーサの基板鉛直方向の断面積の最大が、同位置に設けられる素子分離膜の断面積よりも小さいことを特徴とする、請求項1記載の発光表示装置。
【請求項3】
前記スペーサの一部が、発光領域内に含まれることを特徴とする、請求項1又は2に記載の発光表示装置。
【請求項4】
前記発光副画素の配列がストライプ配列であることを特徴とする、請求項1乃至3のいずれか一項に記載の発光表示装置。
【請求項5】
前記発光領域にはスペーサが設けられ、
前記発光領域に設けられるスペーサが、前記非発光領域に設けられるスペーサよりも高さが低いことを特徴とする、請求項1乃至4のいずれか一項に記載の発光表示装置。
【請求項6】
前記発光領域にはスペーサが設けられ、
前記発光領域に設けられるスペーサが、前記非発光領域に設けられるスペーサよりも単位面積当たりの本数が少ないことを特徴とする、請求項1乃至4のいずれか一項に記載の発光表示装置。
【請求項7】
前記第二電極を被覆する封止膜がさらに形成されていることを特徴とする、請求項1乃至6のいずれか一項に記載の発光表示装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2013−89475(P2013−89475A)
【公開日】平成25年5月13日(2013.5.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−229385(P2011−229385)
【出願日】平成23年10月19日(2011.10.19)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】