説明

発光表示装置用バリア膜及びその製造方法

効果的に有機EL素子を保護できるバリア膜、そのバリア膜の効率的な製造方法、及びダークスポット等の非発光部分の発生の少ない耐久性に優れた発光表示装置を提供する。
気相成長法により製造する、3成分以上からなるガラス材料を含む発光表示装置用バリア膜の製造方法。支持基板1、発光体2、及びこの製造方法により得られたバリア膜3を含んでなる発光表示装置。バリア膜は、ケイ素酸化物50〜90wt%、ホウ素酸化物5〜20wt%、アルミニウム酸化物1〜10wt%を含むガラス材料からなるターゲットを用いて、スパッタ法により製造できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発光表示装置用バリア膜及びその製造方法に関する。また、本発明は、かかるバリア膜を含む有機EL表示装置等の発光表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
有機EL表示装置は、互いに対向する電極間に有機発光媒体を挟持した有機EL素子から構成されている。有機EL素子の両電極間に電圧を印加すると、一方の電極から注入された電子と他方の電極から注入されたホールとが、有機発光媒体中の有機発光層で再結合する。有機発光層中の有機発光分子は、再結合エネルギーによりいったん励起状態となり、その後、励起状態から基底状態に戻る。この際に放出されるエネルギーを光として取り出すことにより、有機EL発光素子は発光する。
【0003】
このような発光原理を有する有機EL素子から構成された有機EL表示装置は、完全固体素子であり、視認性に優れ、軽量化、薄膜化が図れ、その上、わずか数ボルトという低電圧で駆動させることができる。このため、有機EL表示装置は、カラーディスプレイとしての利用が期待され、現在盛んに研究されている。
【0004】
しかしながら、有機EL素子は、外部から進入してくる水分や酸素、また、装置の他の構成部材から発生する水分やガスに弱く、発光領域中に存在する無発光領域又は無発光箇所(ダークスポット)の発生原因となっていた。しかも、ダークスポットは、侵入する水分やガス成分等により時間の経過と共に大きくなる。このダークスポットの成長により、有機EL素子が発光する光の光量は、時間の経過と共に小さくなるという問題があった。
このような水分や酸素の侵入による酸化の進行を抑制し、有機EL素子の製品寿命を長くするために、様々な試みがなされている。
【0005】
例えば、特開平10−12383号公報及び特開平08−279394号公報には、色変換層と有機EL素子との間に厚さが0.01〜200μmの透明な絶縁性無機酸化物層を配設している。
また、特開平11−97169号公報では、単独でアモルファス構造をとることができるホスト材料に不純物をゲスト材料としてドープしたガラス材料からなる保護層を有する有機EL素子を開示している。
【発明の開示】
【0006】
しかしながら、さらなる改善が必要とされ、より効果的に有機EL素子を保護できるバリア膜、及びそのバリア膜の効率的な製造方法が求められている。
従って、本発明は、効果的に有機EL素子を保護できるバリア膜、及びそのバリア膜の効率的な製造方法を提供することを目的とする。
また、本発明は、ダークスポット等の非発光部分の発生の少ない耐久性に優れた発光表示装置を提供することを目的とする。
【0007】
本発明によれば、以下の発光表示装置用バリア膜等が提供される。
1.気相成長法により製造する、3成分以上からなるガラス材料を含む発光表示装置用バリア膜の製造方法。
2.3成分以上からなるガラス材料を原料とする1に記載の発光表示装置用バリア膜の製造方法。
3.前記原料のガラス材料が、ケイ素、ホウ素及びアルミニウムを少なくとも含む2に記載の発光表示装置用バリア膜の製造方法。
4.前記原料のガラス材料が、ケイ素酸化物、ホウ素酸化物及びアルミニウム酸化物を少なくとも含む2又は3に記載の発光表示装置用バリア膜の製造方法。
5.前記原料のガラス材料が、ケイ素酸化物、ホウ素酸化物及びアルミニウム酸化物、及びアルカリ金属酸化物又はアルカリ土類金属酸化物を少なくとも含む2〜4のいずれか一に記載の発光表示装置用バリア膜の製造方法。
6.上記5記載の原料のガラス材料と希土類元素金属酸化物を併用する請求項1に記載の発光表示装置用バリア膜の製造方法。
7.前記原料のガラス材料が、ケイ素酸化物50〜90wt%、ホウ素酸化物5〜20wt%、アルミニウム酸化物1〜10wt%を含む4に記載の発光表示装置用バリア膜の製造方法。
8.前記原料のガラス材料からなるターゲットを用いて、スパッタ法により製造する2〜7のいずれか一に記載の発光表示装置用バリア膜の製造方法。
9.前記バリア膜が、有機EL表示装置用バリア膜である1〜8のいずれか一に記載の発光表示装置用バリア膜の製造方法。
10.1〜9のいずれか一に記載の製造方法により製造した発光表示装置用バリア膜。
11.水蒸気透過度が、0.01g/m・24hr未満である10に記載の発光表示装置用バリア膜。
12.支持基板、受けた光の色を調整及び/又は変換する色変換層、及び10又は11に記載のバリア膜を、この順に含んでなる発光表示装置用色変換基板。
13.支持基板、受けた光の色を調整及び/又は変換する色変換層、10又は11に記載のバリア膜、及び発光体を、この順に含んでなる発光表示装置。
14.支持基板、発光体、及び10又は11に記載のバリア膜を、この順に含んでなる発光表示装置。
15.基板の片面あるいは両面に10又は11に記載のバリア膜を形成してなる発光表示装置用支持基板又は対向基板。
16.前記支持基板又は対向基板が、プラスチック基板である15に記載の発光表示装置用支持基板又は対向基板。
17.前記支持基板が、ガラス基板又は16記載の支持基板である12〜14いずれかに記載の発光表示装置。
【0008】
本発明によれば、効果的に有機EL素子を保護できるバリア膜、及びそのバリア膜の効率的な製造方法を提供できる。
また、本発明によれば、ダークスポット等の非発光部分の発生の少ない耐久性に優れた発光表示装置を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明の一実施形態にかかる有機EL表示装置を示す図である。
【図2】本発明の他の実施形態にかかる有機EL表示装置を示す図である。
【図3】実施例1の有機EL表示装置の形成工程を示す図である。
【図4】ポリシリコンTFTの形成工程を示す図である。
【図5】ポリシリコンTFTを含む電気スイッチ接続構造を示す回路図である。
【図6】ポリシリコンTFTを含む電気スイッチ接続構造を示す平面透視図である。
【図7】実施例3の有機EL表示装置の形成工程を示す図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
実施形態1
図1(a),(b)に本発明の一実施形態にかかる有機EL表示装置を示す。
図1(a)に示す有機EL表示装置では、支持基板1の上に、有機EL素子2及びバリア膜3が形成されている。
このバリア膜3により有機EL素子2が外部からの水、酸素等から遮断されていて、バリア膜3は有機EL素子の封止材として機能している。
【0011】
バリア膜3の水蒸気透過度は少ないほどよく、0.01g/m・24hr未満が好ましい。
水蒸気透過度はJISZ0208、防湿包装材料の透湿度試験方法(カップ法)に準拠して測定する。
具体的には、透湿度は、温度25℃において、防湿包装材料を境界面とし、一方の側の空気を相対湿度90%、他の側の空気を吸湿剤によって乾燥状態に保ったとき、24時間にこの境界面を通過する水蒸気の量の質量(g)をその材料1m当たりに換算した値を言う。
【0012】
ここで、バリア膜3は、3成分以上を含むガラス材料から構成される。ここで、ガラス材料の成分は、酸化物、硫化物、ハロゲン化物(フッ化物、ヨウ化物等)、オキシナイトライド、カルコゲン化物、原子単体等から選択され、好ましくは酸化物、硫化物、原子単体、より好ましくは酸化物から選択される。
一般にガラス材料は、3次元綱目状構造の酸化物又は硫化物の分子間に、原子単体、酸化物、硫化物から選択される1種類以上の物質が混在している。
【0013】
本発明のバリア膜は、気相成長法により製造できる。その際、原料として、各種化合物のガラス材料、結晶性材料等を用いることができる。あるいは、各種金属に活性ガス(O、N、CH等)を反応させる方式等を用いて、ガラス材料薄膜を得ることができる。好ましくは、3成分以上を含むガラス材料を原料として用いる。
気相成長法の例として、スパッタ法、イオンビーム法、イオンプレーティング法が挙げられる。スパッタ法には、対向ターゲットスパッタ、マグネトロンスパッタ、イオンビームスパッタ、ECRスパッタが含まれる。
バリア膜は、好ましくは、ガラス材料からなるターゲットを用いて、スパッタ法により製造する。
【0014】
本発明で使用される原料のガラス材料は、少なくとも3成分からなるが、特に3種以上の酸化物からなることが好ましい。
ガラス材料の例として、ソーダー石灰ガラス、バリウム・ストロンチウム含有ガラス、鉛ガラス、アルミケイ酸塩ガラス、ホウケイ酸ガラス、バリウムホウケイ酸ガラスが挙げられる。好ましい材料は、アルミノケイ酸塩ガラス、ホウケイ酸ガラス、希土類金属含有ガラスである。尚、ガラスの分類名は「ガラスの事典」(作花済夫編 朝倉書店発行1988年)による。アルミケイ酸塩ガラスとしては、コーニング社製コーニング1737、ホウケイ酸ガラスとしては、コーニング社製パイレックス(登録商標)、希土類金属含有ガラスとして、コーニング社製バイコールが利用できる。また、他のメーカーの製品についても利用できる。
【0015】
さらに、本発明では、原料のガラス材料は、好ましくは、ケイ素、ホウ素及びアルミニウムを少なくとも含み、具体例として以下の材料が挙げられる。
(1)ケイ素酸化物、ホウ素酸化物及びアルミニウム酸化物を少なくとも含むガラス材料
(2)ケイ素酸化物、ホウ素酸化物、アルミニウム酸化物及びアルカリ金属酸化物を少なくとも含むガラス材料
(3)ケイ素酸化物、ホウ素酸化物、アルミニウム酸化物及びアルカリ土類金属酸化物を少なくとも含むガラス材料
(4)ケイ素酸化物、ホウ素酸化物、アルミニウム酸化物及び希土類元素金属酸化物を少なくとも含むガラス材料
【0016】
(1)のガラス材料の好適な配合量は、ケイ素酸化物50〜90wt%、ホウ素酸化物5〜20wt%、アルミニウム酸化物1〜10wt%であり、より好ましくは、ケイ素酸化物60〜90wt%、ホウ素酸化物5〜20wt%、アルミニウム酸化物1〜10wt%である。
【0017】
尚、図1(b)に示すように、支持基板1と有機EL素子2の間にも同様の第二のバリア膜4を介在させてもよい。特に、支持基板1がプラスチックフィルムの場合、支持基板1の上にバリア膜4があると、フィルムから発生する水分、ガス成分を内部に閉じ込められ、また、フィルムを透過してくる水分、酸素を遮断できる。
【0018】
また、気相成長法により、直接、有機EL素子上にバリア膜3を形成する代わりに、プラスチック等からなる基板の片面又は両面に、上記のバリア膜を形成した対向基板を、有機EL素子基板に対向して貼り付けることによって、有機EL素子を封止してもよい。対向基板の材料としては、後述する支持基板と同様のものが使用できる。
【0019】
実施形態2
図2に本発明の他の実施形態にかかる有機EL表示装置を示す。
図2に示す有機EL表示装置では、支持基板1の上に、色変換層5、バリア膜3及び有機EL素子2が形成されている。支持基板1、色変換層5、バリア膜3から色変換基板が構成される。
このバリア膜3により、色変換層5から発生する水、ガス成分が内部に閉じ込められ、有機EL素子2が保護される。
バリア膜3を構成する材料及びその製造方法は、実施形態1で説明したとおりである。
【0020】
尚、この実施形態では、色変換層5の上にバリア膜3を形成しているが、さらに、有機EL素子2を封止するために有機EL素子2の上にもバリア膜3を形成してもよい。また、支持基板1と色変換層5の間に設けることもできる。
【0021】
また、この実施形態の有機EL表示装置は、有機EL素子2から発せられた光を色変換層5が調整及び/又は変換して、支持基板1側からその光を取り出すボトムエミッションタイプであるが、支持基板1上に、有機EL素子2、色変換層5を形成して、支持基板1の反対側から光を取り出すトップエミッションタイプでもよい。この場合も、有機EL素子2を保護するために、支持基板と有機EL素子の間、有機EL素子と色変換層の間、色変換層の上等に、バリア膜3を形成できる。
【0022】
上記の実施形態では、ガラス材料を使用することにより、ガスバリア性の改善された膜が得られ、有機EL素子を連続表示させた時に発生する発光表示面積の縮小又はダークスポットの拡大が改善され、耐久性に優れた有機EL表示装置が得られる。
また、従来使用されているSiOx、SiON膜の成膜では、導入ガスが混合ガスとなるが、ガラス材料を用いる場合は、ガラスターゲットでArガス単独であり、製造安定性に優れ、量産性に適している。
【0023】
尚、上記の特開平10−12383号公報及び特開平08−279394号公報には、透明な絶縁性の薄厚ガラス板が記載されているが、本発明の特徴である気相成長による膜の製造方法は記載されていない。本発明のバリア膜は、気相成長法により成膜であるため、バリア膜の支持基板への密着性が向上し、耐衝撃性が高い。例えば、COF(チップオンフィルム)等のICの接続安定性に優れる。また、大画面均一性、量産安定性(周辺接着部からの封止破壊がない)が高い。
【0024】
上記の特開平11−97169号公報は、気相成膜法による製法を開示しているが、実施例において3成分以上からなるガラス材料を含むバリア膜は開示していない。3成分以上からなるガラス材料は安定性が高い。また、本公報は有機EL素子の封止しか開示してなく色変換層の封止は開示していない。さらに、本公報では、ホスト及びゲスト原料は独立しており、成膜(気相成膜)時にゲストをドーピングしている。これに対し、本発明は、既にゲストが混在しているガラス材料を原料に成膜する。その結果、原料であるガラス材料の特性がそのまま反映されたバリア膜となり、大画面均一性、量産安定性が高い。
【0025】
上記実施形態で使用する支持基板、有機EL素子、色変換層は、特に限定されず、通常のものを使用できる。これら部材について以下に説明する。
【0026】
支持基板の材料としては、例えば、ガラス板、金属板、セラミックス板又はプラスチック板(例えば、ポリカーボネート樹脂、アクリル樹脂、塩化ビニル樹脂、ポリエチレンテレフタレート樹脂、ポリイミド樹脂、ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、シリコン樹脂、フッ素樹脂、ポリエーテルサルフォン樹脂)等が挙げられる。
【0027】
有機EL素子は、通常、有機発光媒体と、これを挟持する陽極及び陰極とにより構成されている。
有機発光媒体の発光材料としては、例えば、p−クオーターフェニル誘導体、p−クィンクフェニル誘導体、ベンゾジアゾール系化合物、ベンゾイミダゾール系化合物、ベンゾオキサゾール系化合物、金属キレート化オキシノイド化合物、オキサジアゾール系化合物、スチリルベンゼン系化合物、ジスチリルピラジン誘導体、ブタジエン系化合物、ナフタルイミド化合物、ペリレン誘導体、アルダジン誘導体、ピラジリン誘導体、シクロペンタジエン誘導体、ピロロピロール誘導体、スチリルアミン誘導体、クマリン系化合物、芳香族ジメチリディン系化合物、8−キノリノール誘導体を配位子とする金属錯体、ポリフェニル系化合物等の一種単独又は二種以上の組合せが挙げられる。
【0028】
陽極の材料としては、仕事関数の大きい材料が好ましく、例えば、インジウムスズ酸化物(ITO)、インジウム亜鉛酸化物(IZO)、インジウム銅(CuIn)、酸化スズ(SnO2)、酸化亜鉛(ZnO)、酸化アンチモン(Sb23、Sb24、Sb25)、酸化アルミニウム(Al23)等の一種単独、又は、二種以上の組合せを用いることができる。
【0029】
陰極の材料としては、仕事関数の小さい材料が好ましく、例えば、ナトリウム、ナトリウム−カリウム合金、セシウム、マグネシウム、リチウム、マグネシウム−銀合金、アルミニウム、酸化アルミニウム、アルミニウム−リチウム合金、インジウム、希土類金属、これら金属と有機発光媒体材料との混合物、及び、これらの金属と電子注入層材料との混合物等からなる電極材料を一種単独、又は、二種以上組み合わせて使用することが好ましい。
【0030】
有機EL素子が発する光の色を調整及び/又は変換する色変換層としては、(1)カラーフィルタ単独の場合、(2)蛍光媒体単独の場合、又は、(3)カラーフィルタと蛍光媒体とを組み合わせた場合の三通りの場合が挙げられる。
カラーフィルタは、光を分解又はカットして色調整又はコントラストを向上させる機能を有する。
カラーフィルタの材料としては、例えば、下記色素又は、当該色素をバインダー樹脂中に溶解又は分散させた固体状態のものを挙げることができる。
赤色(R)色素:
ペリレン系顔料、レーキ顔料、アゾ系顔料、キナクリドン系顔料、アントラキノン系顔料、アントラセン系顔料、イソインドリン系顔料、イソインドリノン系顔料ジケトピロロピロール系顔料等の単品及び少なくとも二種類以上の混合物が使用可能である。
緑色(G)色素:
ハロゲン多置換フタロシアニン系顔料、ハロゲン多置換銅フタロシアニン系顔料、トリフェルメタン系塩基性染料、アゾ系顔料、イソインドリン系顔料、イソインドリノン系顔料等の単品及び少なくとも二種類以上の混合物が使用可能である。
青色(B)色素:
銅フタロシアニン系顔料、インダンスロン系顔料、インドフェノール系顔料、シアニン系顔料、ジオキサジン系顔料等の単品及び少なくとも二種類以上の混合物が使用可能である。
【0031】
カラーフィルタの材料のバインダー樹脂としては、透明な(可視光領域における透過率50%以上)材料を使用することが好ましい。例えば、ポリメチルメタクリレート、ポリアクリレート、ポリカーボネート、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロース等の透明樹脂(高分子)等が挙げられ、これらの1種又は2種以上の混合使用が可能である。
【0032】
蛍光媒体は、有機EL素子の発光を吸収して、より長波長の蛍光を発光する機能を有する。
蛍光媒体の材料は、例えば、蛍光色素及び樹脂、又は蛍光色素のみからなり、蛍光色素及び樹脂は、蛍光色素を顔料樹脂及び/又はバインダ−樹脂中に溶解又は分散させた固形状態のものを挙げることができる。
具体的な蛍光色素について説明すると、有機EL素子における近紫外光から紫色の発光を青色発光に変換する蛍光色素としては、1,4−ビス(2−メチルスチリル)ベンゼン(以下Bis−MBS)、トランス−4,4′−ジフェニルスチルベン(以下DPS)等のスチルベン系色素、7−ヒドロキシ−4−メチルクマリン(以下クマリン4)等のクマリン系色素が挙げられる。
【0033】
有機EL素子における青色、青緑色又は白色の発光を緑色発光に変換する場合の蛍光色素については、例えば、2,3,5,6−1H,4H−テトラヒドロ−8−トリフロルメチルキノリジノ(9,9a,1−gh)クマリン(以下クマリン153)、3−(2′−ベンゾチアゾリル)−7−ジエチルアミノクマリン(以下クマリン6)、3−(2′−ベンズイミダゾリル)−7−N,N−ジエチルアミノクマリン(以下クマリン7)等のクマリン色素、その他クマリン色素系染料であるベ−シックイエロ−51、また、ソルベントイエロ−11、ソルベントイエロ−116等のナフタルイミド色素が挙げられる。
【0034】
有機EL素子における青色から緑色までの発光、又は白色の発光を、橙色から赤色までの発光に変換する場合の蛍光色素については、例えば、4−ジシアノメチレン−2−メチル−6−(p−ジメチルアミノスチルリル)−4H−ピラン(以下DCM)等のシアニン系色素、1−エチル−2−(4−(p−ジメチルアミノフェニル)−1,3−ブタジエニル)−ピリジニウム−パ−クロレ−ト(以下ピリジン1)等のピリジン系色素、ロ−ダミンB、ロ−ダミン6G等のロ−ダミン系色素、その他にオキサジン系色素、ベーシックバイオレット11、クマリン6等が挙げられる。
バインダー樹脂については、カラーフィルタと同様のバインダー樹脂を使用できる。
【0035】
この他、支持基板、有機EL素子、色変換層等の構成部材については、国際公開第02/017689号公報、国際公開第03/043382号公報、国際公開第03/069957号公報、国際出願JP03/02798号、特願2002−301852号公報等に記載されているものを用いることができる。
〔実施例〕
【0036】
実施例1
この実施例では、図3(a)〜(c)に示すように、支持基板1上にTFT6、有機EL素子2及びバリア膜3を順次形成し、有機EL表示装置を作製した。
(1)TFTの作製(図3(a))
図4(a)〜(i)は、ポリシリコンTFTの形成工程を示す図である。また、図5は、ポリシリコンTFTを含む電気スイッチ接続構造を示す回路図であり、図6はポリシリコンTFTを含む電気スイッチ接続構造を示す平面透視図である。
【0037】
まず、112mm×143mm×1.1mmのガラス基板1(OAガラス、日本電気硝子(株)製)上に、減圧CVD(Low Pressure Chemical Vapor Deposition, LPCVD)等の手法により、α−Si層40を積層した(図4(a))。次に、KrF(248nm)レーザ等のエキシマーレーザをα−Si層40に照射して、アニール結晶化を行い、ポリシリコンとした(図4(b))。このポリシリコンを、フォトリソグラフィにより、アイランド状にパターン化した(図4(c))。得られたアイランド化ポリシリコン41及び基板1の表面に、絶縁ゲート材料42を化学蒸着(CVD)等により積層して、ゲート酸化物絶縁層42とした(図4(d))。次に、ゲート電極43を、蒸着又はスパッタリングで成膜して形成し(図4(e))、ゲート電極43をパターニングするとともに、陽極酸化を行った(図4(f)〜(h))。さらに、イオンドーピング(イオン注入)により、ドーピング領域を形成し、それにより活性層を形成して、ソース45及びドレイン47とし、ポリシリコンTFTを形成した(図4(i))。この際、ゲート電極43(及び図6の走査電極50、コンデンサー57の底部電極)をAl、TFTのソース45及びドレイン47をn+型とした。
【0038】
次に、得られた活性層上に、層間絶縁膜(SiO)を500nmの膜厚でCRCVD法にて形成した後、信号電極線51及び共通電極線52、コンデンサ上部電極(Al)の形成と、第2のトランジスタ(Tr2)56のソース電極と共通電極との連結、第1のトランジスタ(Tr1)55のドレインと信号電極との連結を行った(図5、図6)。各TFTと各電極の連結は、適宜、層間絶縁膜SiOを弗酸によるウエットエッチングにより開口して行った。
次に、CrとITOを順次、スパッタリングにより、それぞれ2000Å、1300Åで成膜した。この基板上にポジ型レジスト(HPR204:富士フィルムアーチ製)をスピンコートし、90μm×320μmのドット状のパターンになるようなフォトマスクを介して、紫外線露光し、TMAH(テトラメチルアンモニウムヒドロキシド)の現像液で現像し、130℃でベークし、レジストパターンを得た。
次に、47%臭化水素酸からなるITOエッチャントにて、露出している部分のITOをエッチングし、次に硝酸セリウムアンモニウム/過塩素酸水溶液(HCE:長瀬産業製)にて、Crをエッチングした。次に、レジストをエタノールアミンを主成分とする剥離液(N303:長瀬産業製)で処理して、Cr/ITOパターン(下部電極:陽極)を得た。
この際、Tr2 56と下部電極10が開口部59を介して接続された(図6)。
次に、第二の層間絶縁膜として、ネガ型レジスト(V259BK:新日鉄化学社製)をスピンコートし、紫外線露光し、TMAH(テトラメチルアンモニウムヒドロキシド)の現像液で現像した。次に、180℃でベークして、Cr/ITOのエッジを被覆した(ITOの開口部が70μm×200μm)有機膜の層間絶縁膜を形成した(図示せず)。
【0039】
(2)有機EL素子の作製(図3(b))
このようにして得られた層間絶縁膜付き基板を純水及びイソプロピルアルコール中で超音波洗浄し、Airブローにて乾燥後、UV洗浄した。
次に、TFT基板を、有機蒸着装置(日本真空技術製)に移動し、基板ホルダーに基板を固定した。尚、予め、それぞれのモリブテン製の加熱ボートに、正孔注入材料として、4,4’,4’’−トリス[N−(3−メチルフェニル)−N−フェニルアミノ]トリフェニルアミン(MTDATA)、4,4’−ビス[N−(1−ナフチル)−N−フェニルアミノ]ビフェニル(NPD)、発光材料のホストとして、4,4’−ビス(2,2−ジフェニルビニル)ビフェニル(DPVBi)、ドーパントとして、1,4−ビス[4−(N,N−ジフェニルアミノスチリルベンゼン)](DPAVB)、電子注入材料及び陰極として、トリス(8−キノリノール)アルミニウム(Alq)とLiをそれぞれ仕込み、さらに陰極の取出し電極としてIZO(インジウム亜鉛酸化物)ターゲットを別のスパッタリング槽に装着した。
【0040】
その後、真空槽を5×10−7torrまで減圧にしたのち、以下の順序で正孔注入層から陰極まで途中で真空を破らず一回の真空引きで順次積層した。
まず、正孔注入層としては、MTDATAを蒸着速度0.1〜0.3nm/秒、膜厚60nm及び、NPDを蒸着速度0.1〜0.3nm/秒、膜厚20nm、発光層としては、DPVBiとDPAVBをそれぞれ蒸着速度0.1〜0.3nm/秒、蒸着速度0.03〜0.05nm/秒を共蒸着して膜厚50nm、電子注入層としては、Alqを蒸着速度0.1〜0.3nm/秒、膜厚20nm、さらに、陰極として、AlqとLiをそれぞれ蒸着速度0.1〜0.3nm/秒、0.005nm/秒で共蒸着し、膜厚を20nmとした。
次に、基板をスパッタリング槽に移動し、陰極の取り出し電極としてIZOを、成膜速度0.1〜0.3nm/秒で、膜厚200nmとし、有機EL素子を作製した。
【0041】
(3)バリア膜の作製(図3(c))
次に、バリア膜として、有機EL素子の上部電極上にコーニング1737をターゲットとしてスパッタ成膜を行った。スパッタ圧0.7Pa、スパッタ出力1kWで、300nmの厚さで成膜した。表1に、コーニング1737の組成(コーニング社カタログ値)を示す。また、表2にコーニング1737の原子組成(コーニング社カタログ値より換算)及びバリア膜の元素分析値(X線光電子分光装置:XPS)を示す。ほぼターゲットの組成を反映したバリア膜が得られた。このようにEL封止膜としてバリア膜を形成した後、乾燥窒素を流通したドライボックスに基板を大気にふれないように移動し、そのドライボックス内にて、外部からの物理的な接触防止のために、有機EL素子を完全に覆うようにガラス蓋を、カチオン硬化性の接着剤(スリーボンド製3102)を用いて支持基板に接着した。これにより、有機EL素子基板を得た。
【0042】
(4)有機EL表示装置の信頼性評価
このようにして、アクティブ有機EL表示装置(図3(c))を作製し、その下部電極(ITO/Cr)と上部電極(IZO)にDC7Vの電圧を印加(下部電極:(+)、上部電極:(−))したところ、各電極の交差部分(画素)が発光した。
次に、この装置について、85℃保存試験を500時間実施し、下記に示す発光画素領域の縮小率を顕微鏡観察にて、測定したところ、3%であり、耐久性に優れた有機EL表示装置が得られたことを確認した。
縮小率(%)=(試験前の発光画素面積−試験後の発光画素面積)×100/
試験前の発光画素面積
【0043】
(5)水蒸気透過度の測定
水蒸気透過度をJISZ0208に基づき実施した。具体的には、ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムの上面に(3)のバリア膜を成膜し、試料とした。JISZ0208に示された方法に従い測定したところ、0.001g/m・24hrの測定限界以下であった。有機EL表示において、必要な性能であることが確認できた。
【0044】
実施例2
実施例1において、ターゲットとしてパイレックス(登録商標)を用いてバリア膜を形成したこと以外は、同一の条件にて、有機EL表示装置を作製し、実施例1と同様に信頼性評価及び水蒸気透過度の測定を実施した。結果を表3に示す。尚、表1に、パイレックス(登録商標)の組成(コーニング社カタログ値)を示す。また、表2にバリア膜の元素分析値を示す。
【0045】
比較例1
実施例1において、バリア膜を形成しなかったこと以外は、同一の条件にて、有機EL表示装置を作製し、実施例1と同様に信頼性評価及び水蒸気透過度の測定を実施した。結果を表3に示す。
【0046】
比較例2
実施例1において、スパッタ法によるバリア膜成膜の代わりに、50μm厚のガラス板を用いて有機EL素子と重ね合わせ、張り合わせた。
具体的には、作製した有機EL素子基板とガラス板を乾燥窒素を流通させたドライボックス内に移動し、有機EL素子基板の表示部(発光部)周辺にカチオン型光硬化型接着剤(スリーボンド製3102)をディスペンサーにて塗布した。次に、有機EL素子基板とガラス板を位置合せマークに合せて、光照射にて貼り合わせ、表示部に相当する部分には、予め脱気処理した不活性液体(フッ化炭化水素:スリーエム製FC70)を充填した。
次に、この有機EL表示装置について、実施例1と同様に信頼性評価及び水蒸気透過度の測定を実施した。その結果、表示部周辺から画素の縮小が観察された。
原因を調べてみると、封止部分のガラス板(50μm厚)にクラックが入っており、その部分から外部の水分等が有機EL表示部に浸透し、画素の縮小を引き起こしたと推定される。
【0047】
実施例3
この実施例では、図7(a)〜(c)に示すように、支持基板1上に色変換層5、バリア膜3、有機EL素子2及び封止部材7を順次形成し、有機EL表示装置を作製した。
【0048】
(1)色変換層の作製(図7(a))
102mm×133mm×1.1mmの支持基板(透明基板)(OAガラス:日本電気硝子社製)上に、ブラックマトリックス(BM)の材料としてV259BK(新日鉄化学社製)をスピンコートし、格子状のパターンになるようなフォトマスクを介して紫外線露光し、2%炭酸ナトリウム水溶液で現像後、200℃でベークして、ブラックマトリックス(膜厚1.5μm)のパターンを形成した。
【0049】
次に、青色カラーフィルタの材料として、V259B(新日鉄化学社製)をスピンコートし、長方形(90μmライン、240μmギャップ)のストライプパターンが320本得られるようなフォトマスクを介して、BMに位置合わせして紫外線露光し、2%炭酸ナトリウム水溶液で現像後、200℃でベークして、青色カラーフィルタ(膜厚1.5μm)のパターンを形成した。
次に、緑色カラーフィルタの材料として、V259G(新日鉄化学社製)をスピンコートし、長方形(90μmライン、240μmギャップ)のストライプパターンが320本得られるようなフォトマスクを介して、BMに位置合わせして紫外線露光し、2%炭酸ナトリウム水溶液で現像後、200℃でベークして、青色カラーフィルタの隣に緑色カラーフィルタ(膜厚1.5μm)のパターンを形成した。
次に、赤色カラーフィルタの材料として、V259R(新日鉄化学社製)をスピンコートし、長方形(90μmライン、240μmギャップ)のストライプパターンが320本得られるようなフォトマスクを介して、BMに位置合わせして紫外線露光し、2%炭酸ナトリウム水溶液で現像後、200℃でベークして、青色カラーフィルタと緑色カラーフィルタの間に赤色カラーフィルタ(膜厚1.5μm)のパターンを形成した。
【0050】
次に、緑色蛍光媒体の材料として、0.04mol/kg(対固形分)となる量のクマリン6をアクリル系ネガ型フォトレジスト(V259PA、固形分濃度50%:新日鉄化学社製)に溶解させたインキを調製した。
このインキを、先の基板上にスピンコートし、緑色カラーフィルタ上を紫外線露光し、2%炭酸ナトリウム水溶液で現像後、200℃でベークして、緑色カラーフィルタ上に緑色変換膜のパターン(膜厚10μm)を形成した。
次に、赤色蛍光媒体の材料として、クマリン6:0.53g、ベーシックバイオレット11:1.5g、ローダミン6G:1.5g、アクリル系ネガ型フォトレジスト(V259PA、固形分濃度50%:新日鉄化学社製):100gに溶解させたインキを調製した。
このインキを、先の基板上にスピンコートし、赤色カラーフィルタ上を紫外線露光し、2%炭酸ナトリウム水溶液で現像後、180℃でベークして、赤色カラーフィルタ上に赤色変換膜のパターン(膜厚10μm)を形成し、色変換基板を得た。
【0051】
平坦化膜として、アクリル系熱硬化性樹脂(V259PH:新日鉄化学製)を先の基板上にスピンコートし、180℃でベークして平坦化膜(膜厚12μm)を形成した。
【0052】
(2)バリア膜の作製(図7(b))
次に、コーニング1737をターゲットを用いて、マグネトロンスパッタ方式により成膜を行い、平坦化膜上にバリア膜を作製した。スパッタ圧0.7Pa、スパッタ出力500Wで、300nmの厚さで成膜した。これにより、色変換基板を得た。
【0053】
(3)有機EL素子の作製(図7(c))
次に、IZOをスパッタリングにより200nm膜厚で成膜した。
次に、この基板上にポジ型レジスト(HPR204:富士オーリン製)をスピンコートし、陰極の取り出し部と90μmライン、20μmギャップのストライプ状のパターンになるようなフォトマスクを介して、紫外線露光し、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド(TMAH)の現像液で現像し、130℃でベークし、所定のレジストパターンを得た。
次に、5%蓚酸水溶液からなるIZOエッチャントにて、露出している部分のIZOをエッチングした。次に、レジストをエタノールアミンを主成分とする剥離液(N303:長瀬産業製)で処理して、IZOパターン(下部電極:陽極、ライン数960本)を得た。
【0054】
次に、第一の層間絶縁膜として、ネガ型レジスト(V259PA:新日鉄化学社製)をスピンコートし、所定のパターンになるようなフォトマスクを介して、紫外線露光し、TMAHの現像液で現像した。次に、160℃でベークして、ITOのエッジを被覆した(IZOの開口部が70μm×290μm)層間絶縁膜を形成した。
【0055】
次に、第二の層間絶縁膜(隔壁)として、ネガ型レジスト(ZPN1100:日本ゼオン製)をスピンコートし、20μmライン、310μmギャップのストライプパターンになるようなフォトマスクを介して、紫外線露光後、さらに露光後ベークを行なった。次に、TMAHの現像液でネガレジストを現像し、IZOストライプに直交した有機膜の第二の層間絶縁膜(隔壁)を形成した。
このようにして得られた基板を純水及びイソプロピルアルコール中で超音波洗浄し、Airブローにて乾燥後、UV洗浄した。
【0056】
次に、基板を有機蒸着装置(日本真空技術製)に移動し、基板ホルダーに基板を固定した。なお、あらかじめ、それぞれのモリブテン製の加熱ボートに、正孔注入材料として、4,4’,4’’−トリス[N−(3−メチルフェニル)−N−フェニルアミノ]トリフェニルアミン(MTDATA)、4,4’−ビス[N−(1−ナフチル)−N−フェニルアミノ]ビフェニル(NPD)、発光材料として、4,4’−ビス(2,2−ジフェニルビニル)ビフェニル(DPVBi)、電子注入材料として、トリス(8−キノリノール)アルミニウム(Alq)をそれぞれ仕込み、さらに陰極としてAlLi合金(Li濃度:10atm%)をタングステン製フィラメントに装着してある。
【0057】
その後、真空槽を5×10−7torrまで減圧にしたのち、以下の順序で正孔注入層から陰極まで途中で真空を破らず一回の真空引きで順次積層していった。
まず、正孔注入層としては、MTDATAを蒸着速度0.1〜0.3nm/秒、膜厚60nm及び、NPDを蒸着速度0.1〜0.3nm/秒、膜厚20nm、
発光層としては、DPVBiを蒸着速度0.1〜0.3nm/秒、膜厚50nm、電子注入層としては、Alqを蒸着速度0.1〜0.3nm/秒、膜厚20nm、で蒸着し、さらに陰極としては、AlとLiを、それぞれ
蒸着速度0.5〜1.0nm/秒で蒸着し、膜厚を150nmとした。なお、有機層(正孔注入層〜電子注入層まで)及び陰極(上部電極)はマスク蒸着し、陰極は先に形成したIZO取り出し電極に接続できるようにした。陰極は、先に基板上に作製した隔壁により、自動的に分離されたパターン(ライン数240本)となっていた。
【0058】
このようにして、基板上に有機EL素子を作製後、実施例1と同様にバリア膜を作製し、その後、乾燥窒素を流通したドライボックスに基板を大気にふれないように移動し、そのドライボックス内にて、外部からの物理的な接触防止のために、封止基板の青板ガラス蓋で表示部を被覆し、表示部周辺部はカチオン硬化性の接着剤(TB3102:スリーボンド製)で光硬化させて封止した。
【0059】
(4)有機EL表示装置の信頼性評価及び水蒸気透過度の測定
このようにして、下部電極と上部電極がXYマトリックスを形成してなるフルカラー有機EL表示装置(開口率56%)を作製し、その下部電極と上部電極にDC7Vの電圧を印加(下部電極:(+)、上部電極:(−))したところ、各電極の交差部分(画素)が発光した。
次に、この装置について、実施例1と同様に信頼性評価及び水蒸気透過度の測定を実施した。結果を表3に示す。
【0060】
実施例4
実施例3において、ターゲットとして実施例2と同じパイレックス(登録商標)を用いてバリア膜を形成したこと以外は、同一の条件にて、有機EL表示装置(図7(c))を作製し、実施例1と同様に信頼性評価及び水蒸気透過度の測定を実施した。結果を表3に示す。
【0061】
実施例5
実施例3において、ターゲットとして実施例2と同じパイレックス(登録商標)とCeOを併置してバリア膜を形成したこと以外は、同一の条件にて、有機EL表示装置(図7(c))を作製し、実施例1と同様に信頼性評価及び水蒸気透過度の測定を実施した。結果を表3に示す。また、作製したバリア膜の元素分析値を表2に示す。
【0062】
比較例3
実施例3において、ターゲットとしてSiO、導入ガスとしてArガス90%、酸素ガス5%、窒素ガス5%を使用してバリア膜を形成したこと以外は、同一の条件にて、有機EL表示装置(図7(c))を作製し、実施例1と同様に信頼性評価及び水蒸気透過度の測定を実施した。結果を表3に示す。
【0063】
比較例4
実施例3において、ターゲットとしてSiO、導入ガスとしてArガス90%、窒素ガス10%を使用してバリア膜を形成したこと以外は、同一の条件にて、有機EL表示装置(図7(c))を作製し、実施例1と同様に信頼性評価及び水蒸気透過度の測定を実施した。結果を表3に示す。
【0064】
比較例5
実施例3において、ターゲットとして、SiOとAlを併置し、スパッタ法により成膜したこと以外は、同一の条件にて、有機EL表示装置(図7(c))を作製した。実施例1と同様に信頼性評価及び水蒸気透過度の測定を実施した。結果を表3に示す。その結果、基板面内に画素の縮小にばらつきがあり、SiとAlの比率にもばらつきが見られた。
【0065】
比較例6
実施例3において、ターゲットとして酸化ケイ素及び酸化セリウムを併置してバリア膜を形成したこと以外は、同一の条件にて、有機EL表示装置(図7(c))を作製し、実施例1と同様に信頼性評価及び水蒸気透過度の測定を実施した。結果を表3に示す。
【0066】
比較例7
実施例3において、バリア膜を形成しなかったこと以外は、同一の条件にて、有機EL表示装置を作製し、実施例1と同様に信頼性評価及び水蒸気透過度の測定を実施した。結果を表3に示す。
【0067】
実施例6
この実施例では、図1(a)に示すように、支持基板1上に有機EL素子2及びバリア膜3を順次形成し、有機EL表示装置を作製した。
有機EL素子の作製
まず、実施例3(3)と同様に、支持基板上に、下部電極(陽極)、層間絶縁膜及び第二の層間絶縁膜(隔壁)を形成し、洗浄した。
次に、湿式成膜(インクジェット法)にて、有機EL素子の発光層を形成した。インクジェットのインキは、以下の材料を混合して調製した。
PPV誘導体(ポリ(2−メトキシ,5−(2’−エチル−ヘキソキシ)−1,4−フェニレンビニレン)):0.375重量%
グリセリン:5重量%
ジエチレングリコール:10重量%
水:1.231重量%
メタノール:23.394重量%
DMF(N,N−ジメチルフォルムアミド):60重量%
ローダミンB:0.0075重量%(前駆体固形分比:2重量%)
【0068】
このインキを、インクジェットプリント用装置のヘッドから、前記基板の層間絶縁膜の開口部に向けて噴出させて塗布した後、窒素雰囲気下で、150℃、4時間加熱処理し、組成物の前駆体を高分子化させることにより、赤色の発光層を得た。
次に、基板を有機蒸着装置(日本真空技術製)に移動し、電子注入材料として、トリス(8−キノリノール)アルミニウム(Alq)を仕込み、蒸着速度0.1〜0.3nm/秒、膜厚20nmで蒸着した。
【0069】
次に、基板を以下の脱水ユニットに移動した。すなわち、ヘリウム、アルゴン、窒素等の不活性ガスが流通するドライボックスであって、ドライボックス内の露点が観測され、また、該ドライボックス内で基板をホットプレートで加熱可能なユニットである。
基板をホットプレートで60℃に加熱しながら、乾燥窒素を流通し、露点が−50℃に低下するまで、基板を保持して脱水した。
その後、ホットプレートの加熱を停止して、基板を室温まで冷却後、露点−50℃の環境を維持して、再び、有機蒸着装置(日本真空技術製)の真空槽に基板を移動し、基板ホルダーに基板を固定した。
【0070】
次に、真空槽を5×10−7torrまで減圧にしたのち、タングステン製フィラメントに装着した、陰極のAlLi合金(Li濃度:10atm%)を表示部のみが蒸着できるようなマスクを介して、AlとLiを、それぞれ
蒸着速度0.5〜1.0nm/秒で蒸着し、膜厚を150nmとした。なお、陰極(上部電極)は、先に基板上に作製した隔壁により、自動的に分離されたパターン(ライン数240本)となっていた。
(2)バリア膜の作製
このようにして、基板上に有機EL素子を作製後、次に、バリア膜として、有機EL素子の上部電極上にコーニング1737をターゲットとして対向ターゲット方式によるスパッタ成膜を行った。スパッタ圧0.7Pa、スパッタ出力1kWで、300nmの厚さで成膜した。これにより、有機EL素子基板を得た。
【0071】
(3)有機EL表示装置の信頼性評価及び水蒸気透過度の測定
このようにして、下部電極と上部電極がXYマトリックスを形成してなる有機EL表示装置を作製し、その下部電極と上部電極にDC10Vの電圧を印加(下部電極:(+)、上部電極:(−))したところ、各電極の交差部分(画素)が発光した。
次に、この装置について、実施例1と同様に信頼性評価及び水蒸気透過度の測定を実施した。結果を表3に示す。
【0072】
実施例7
実施例1において、支持基板をプラスチックフィルム基板であるポリエーテルサルフォン(住友ベークライト社製、厚さ100μm)基板の両面に実施例1で用いたバリア膜(厚さ300nm)を成膜した基板を用いたこと以外は同一の条件にて、有機EL表示装置(図7(c))を作製し、実施例1と同様に信頼性評価を実施した。結果を表4に示す。
【0073】
比較例8
実施例7において、支持基板として、バリア膜を成膜しないポリエーテルサルフォン基板を用いたこと以外は同一条件にて、有機EL表示装置(図7(c))を作製し、実施例1と同様に信頼性評価を実施した。結果を表4に示す。
【0074】
実施例8
実施例1において、スパッタ法によるバリア膜成膜の代わりに、実施例7で作製した、両面にバリア膜を成膜したポリエーテルサルフォン基板(対向基板)を、有機EL素子と重ね合わせ、張り合わせてEL素子を封止した。
具体的には、作製した有機EL素子基板とポリエーテルサルフォン基板を乾燥窒素を流通させたドライボックス内に移動し、有機EL素子基板の表示部(発光部)周辺にカチオン型光硬化型接着剤(スリーボンド製3102)をディスペンサーにて塗布した。次に、有機EL素子基板とポリエーテルサルフォン基板を位置合せマークに合せて、光照射にて貼り合わせ、表示部に相当する部分には、予め脱気処理した不活性液体(フッ化炭化水素:スリーエム製FC70)を充填した。結果を表4に示す。
【0075】
【表1】

【0076】
【表2】

【0077】
【表3】

【0078】
【表4】

【0079】
表3、4から分かるように、本発明の実施例によれば、耐久性に優れた有機EL表示装置が得られたことが確認できた。
【産業上の利用可能性】
【0080】
本発明のバリア膜は、民生用及び工業用のディスプレイ、具体的には、携帯電話、PDA、カーナビ、モニター、TV等の発光表示装置に使用できる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
気相成長法により製造する、3成分以上からなるガラス材料を含む発光表示装置用バリア膜の製造方法。
【請求項2】
3成分以上からなるガラス材料を原料とする請求項1に記載の発光表示装置用バリア膜の製造方法。
【請求項3】
前記原料のガラス材料が、ケイ素、ホウ素及びアルミニウムを少なくとも含む請求項2に記載の発光表示装置用バリア膜の製造方法。
【請求項4】
前記原料のガラス材料が、ケイ素酸化物、ホウ素酸化物及びアルミニウム酸化物を少なくとも含む請求項2又は3に記載の発光表示装置用バリア膜の製造方法。
【請求項5】
前記原料のガラス材料が、ケイ素酸化物、ホウ素酸化物及びアルミニウム酸化物、及びアルカリ金属酸化物又はアルカリ土類金属酸化物を少なくとも含む請求項2又は3に記載の発光表示装置用バリア膜の製造方法。
【請求項6】
請求項5記載の原料のガラス材料と希土類元素金属酸化物を併用する請求項1に記載の発光表示装置用バリア膜の製造方法。
【請求項7】
前記原料のガラス材料が、ケイ素酸化物50〜90wt%、ホウ素酸化物5〜20wt%、アルミニウム酸化物1〜10wt%を含む請求項4に記載の発光表示装置用バリア膜の製造方法。
【請求項8】
前記原料のガラス材料からなるターゲットを用いて、スパッタ法により製造する請求項2又は3に記載の発光表示装置用バリア膜の製造方法。
【請求項9】
前記バリア膜が、有機EL表示装置用バリア膜である請求項1〜3のいずれか一項に記載の発光表示装置用バリア膜の製造方法。
【請求項10】
請求項1〜3のいずれか一項に記載の製造方法により製造した発光表示装置用バリア膜。
【請求項11】
水蒸気透過度が、0.01g/m・24hr未満である請求項10に記載の発光表示装置用バリア膜。
【請求項12】
支持基板、受けた光の色を調整及び/又は変換する色変換層、及び請求項10に記載のバリア膜を、この順に含んでなる発光表示装置用色変換基板。
【請求項13】
支持基板、受けた光の色を調整及び/又は変換する色変換層、請求項10に記載のバリア膜、及び発光体を、この順に含んでなる発光表示装置。
【請求項14】
支持基板、発光体、及び請求項10に記載のバリア膜を、この順に含んでなる発光表示装置。
【請求項15】
基板の片面あるいは両面に請求項10に記載のバリア膜を形成してなる発光表示装置用支持基板又は対向基板。
【請求項16】
前記支持基板又は対向基板が、プラスチック基板である請求項15に記載の発光表示装置用支持基板又は対向基板。
【請求項17】
前記支持基板が、ガラス基板又は請求項16記載の支持基板である請求項12〜14いずれかに記載の発光表示装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【国際公開番号】WO2005/046291
【国際公開日】平成17年5月19日(2005.5.19)
【発行日】平成19年5月24日(2007.5.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−515275(P2005−515275)
【国際出願番号】PCT/JP2004/016108
【国際出願日】平成16年10月29日(2004.10.29)
【出願人】(000183646)出光興産株式会社 (2,069)
【Fターム(参考)】