説明

発光装置、その製造方法、画像形成装置、および画像読み取り装置

【課題】 発光素子とレンズとの位置関係の精度を高めることができる発光装置を提供す
る。
【解決手段】 発光装置10は、基板11と、基板11上に形成されて基板11上に凹部
を画定する隔壁19と、その凹部によって発光層16の位置が規制されるように基板11
上に形成された発光素子12と、発光素子12に重なり凹部内に形成されたレンズ20と
を備える。発光装置10の製造時には、発光素子12の正孔注入層15及び発光層16を
形成するのに利用した凹部内にレンズ20の材料を付与することにより、レンズ20を形
成することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基板上に発光素子を備えた発光装置、その製造方法、画像形成装置、および
画像読み取り装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、基板上にEL素子(エレクトロルミネッセンス素子)などの発光素子を備えた発
光装置が、表示装置や電子写真方式の画像形成装置の露光装置などとして広く利用されて
いる。
【0003】
このような発光装置には、発光素子が発する光を集束させたり、平行にしたりするため
のレンズを備えたものがある。例えば特許文献1には、発光素子としての無機EL素子を
基板上に形成した発光装置に、レンズを設けた構成が記載されている。例えば、特許文献
1の図6に記載された発光装置では、発光素子を封止するカバーガラスの表面上に、発光
素子と重なる位置にレンズが設けられている。これらのレンズは、エッチング処理によっ
てカバーガラスの表面上に一体的に形成されるか、または型を用いて成形されてからカバ
ーガラスの表面上に接着される。
【特許文献1】特開2004−58448号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、特許文献1に記載されているようにカバーガラスの表面上にレンズを設ける場
合には、発光素子に対してレンズの位置ずれが生じるおそれがある。このような位置ずれ
が生じた場合には、レンズが発光素子と正対せずに、そのレンズの機能が充分に発揮でき
ない。しかも、基板上の発光素子とカバーガラス上のレンズとの間が離れているため、発
光素子からの光のうちレンズを透過する光の割合が減少し、光の利用効率が低下してしま
う。
【0005】
本発明の目的は、発光素子とレンズとの位置関係の精度を高めることができる発光装置
、その製造方法、画像形成装置、および画像読み取り装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る発光装置は、基板と、前記基板上に形成されて前記基板上に凹部を画定す
る隔壁と、前記凹部により位置が規制された発光層を有しており前記基板上に形成された
発光素子と、前記発光素子に重なり前記凹部内に形成されたレンズと、を備える。このよ
うに、発光素子のうちの発光層の位置を規制する凹部内にレンズを形成することにより、
それらの発光素子とレンズとの位置関係の精度を高め、かつそれらの間の距離を小さくす
ることができる。これらの結果、発光素子が発する光を精度よくかつ効率よくレンズに導
くことができる。
ここで、「凹部内」とは、基板面に垂直な方向から見た時にレンズが凹部内にあること
を意味しており、基板を側方から見た時にレンズが凹部から突出していてもいなくてもよ
い。
【0007】
好ましい形態においては、前記基板と協働して、前記発光素子を前記レンズと共に封止
する封止体を備える。このように発光素子とレンズとを封止することにより、発光素子の
劣化の防止と共に、レンズを保護することができる。
【0008】
他の好ましい形態においては、前記発光素子と前記レンズとの間に介在し、前記基板と
協働して前記発光素子を封止する薄膜の封止層を備える。隔壁で画定された凹部内に発光
層が形成された発光装置では、発光素子を薄膜の封止層によって封止しても、封止層には
隔壁および凹部に相当する凸凹が生ずる。従って、封止層は、凹部に重なる位置にやはり
凹部を有することになるので、発光層の位置を規制する凹部内にレンズを形成することが
可能である。
【0009】
本発明に係る発光装置の製造方法は、基板上に凹部を画定するように前記基板上に隔壁
を形成する工程と、前記凹部により発光層の位置を規制するようにして、前記発光層を有
する発光素子を前記基板上に形成する工程と、前記凹部内にレンズ成形用の液体の成形材
料を付与してから、前記成形材料を硬化させることにより、前記発光素子に重なる位置に
レンズを形成する工程と、を含む。このように、発光素子の発光層の位置を規制する凹部
内に液体の成形材料を付与してから、それを硬化させてレンズを形成することにより、発
光素子とレンズとの位置関係の精度を高めることができる。また、発光素子を形成するの
に利用した凹部内にレンズの材料を付与するので、レンズの材料を付与するために特別な
凹部を設ける必要がない。
【0010】
好ましい形態においては、前記成形材料を液滴として吐出可能な液滴吐出装置を用いて
、前記凹部内に前記成形材料の液滴を付与する。このように、発光素子形成用の凹部内に
成形材料の液滴を付与することにより、発光素子にダメージを与えることなく成形材料を
付与することができる。
【0011】
本発明に係る画像形成装置は、像担持体と、前記像担持体を帯電する帯電器と、複数の
前記発光素子が配列され、前記像担持体の帯電された面に複数の前記発光素子により光を
照射して潜像を形成する前記発光装置と、前記潜像にトナーを付着させることにより前記
像担持体に顕像を形成する現像器と、前記像担持体から前記顕像を他の物体に転写する転
写機と、を備える。前記発光装置は、発光素子が発する光を精度よくレンズに導くことが
できるため、このような発光装置を用いることにより、像担持体に高解像度の潜像を良好
に形成して高品位の画像を形成することができる。
【0012】
本発明に係る画像読み取り装置は、複数の前記発光素子が配列された前記発光装置と、
前記発光素子から発して読み取り対象で反射した光を電気信号に変換する受光装置と、を
備える。前記発光装置は、発光素子が発する光を精度よくレンズに導くことができるため
、このような発光装置を用いることにより、読み取り対象に対して効率よく光を照射する
ことができるため、同程度の照度を得るために、発光素子に与える電圧を従来よりも低減
することが可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、添付の図面を参照しながら本発明に係る様々な実施の形態を説明する。なお、図
面においては、各部の寸法の比率は実際のものとは適宜に異ならせてある。
【0014】
<第1の実施の形態>
図1は、本発明の第1の実施の形態に係る発光装置を示す断面図であり、図2は、その
電気光学装置の平面図である。より具体的には、図1は図2のA−A線矢視断面図である

【0015】
図に例示された発光装置10は、基板11上に複数の発光素子12を備えており、例え
ば、電子写真方式を利用した画像形成装置における像担持体(例えば、感光体ドラム)に
潜像を書き込むためのライン型の光ヘッドとして用いられる。各発光素子12は、有機発
光ダイオード(Organic Light Emitting Diode、以下「OLED」と略称する)素子
であり、印加された電圧に応じて発光する。基板11は、ガラス、プラスチック、セラミ
ックまたは金属などの適切な材料により形成されており、透明であってもよいし不透明で
あってもよい。基板11の上には駆動素子層13が形成されており、その上に複数の発光
素子12が形成されている。駆動素子層13の内部の詳細な図示は省略するが、ここには
、複数のTFT(薄膜トランジスタ)素子およびTFT素子に電流を供給する配線が設け
られている。TFT素子は、それぞれ発光素子12に駆動電圧を与える。
【0016】
発光素子12は、図2に示すように、二列かつ千鳥状のパターンで配列されている。発
光素子12の配列パターンは図示の形態に限定されず、単列または三列以上でもよいし他
の適切なパターンで配列されていてもよい。
【0017】
各発光素子12から発せられた光は、基板11とは反対側に図1中の上方に放出される
。すなわち、発光装置10はトップエミッションタイプのOLED発光パネルである。発
光素子12の各々は、駆動素子層13の上に形成された陽極14と、その陽極14上に成
膜された正孔注入層15と、その上に成膜された発光層16と、その上に成膜された陰極
17とを有する。陰極17は、複数の発光素子12にとって共通である。
【0018】
発光層16から発せられた光を上方に進行させるために、陽極14は、例えばアルミニ
ウムのような光を反射する導電材料で形成されており、一方、陰極17は透明なITO(
Indium Tin Oxide)で形成されている。正孔注入層15および発光層16は、絶縁層1
8および隔壁19によって画定された凹部内に形成されている。その凹部は正孔注入層1
5および発光層16の位置、ひいては発光素子12の位置を規制することになる。正孔注
入層15は、その液状の成形材料を凹部内に付与してから、それを硬化させることにより
形成することができる。正孔注入層15の硬化後に、発光層16は同様にその液状の成形
材料を凹部内に付与してから、それを硬化させることにより形成することができる。正孔
注入層15および発光層16の形成において、液状の材料の供給には、液滴吐出装置(典
型的にはインクジェットプリンタと同じ原理の噴射装置)が使用される。絶縁層18の材
料は例えばSiOであり、隔壁19の材料は例えばポリイミドまたはアクリルである。
【0019】
この実施の形態の各発光素子12の構成は上記の通りであるが、本発明に利用可能な発
光素子のバリエーションとしては、陰極と発光層の間に電子注入層を設けたタイプや、適
切な位置に絶縁層を設けたタイプなど他の層を有するタイプであってもよい。
【0020】
発光層16および隔壁19の上には陰極17が形成され、発光層16の上方に位置する
凹部内には陰極17上に凸状のレンズ20が形成されている。レンズ20が形成される凹
部の下側には、上述したように隔壁19によって正孔注入層15および発光層16の位置
が規制された発光素子12が形成されているため、その凹部内にレンズ20を形成するこ
とにより、必然的に、そのレンズ20と発光素子12との位置関係の精度が高まることに
なる。つまり、発光素子12と正対する位置にレンズ20を高精度に形成することができ
る。
【0021】
レンズ20は、その成形材料としての液体を発光層16の上方の凹部内に付与してから
、それを硬化させることにより形成することができる。その液体の成形材料としては、紫
外線硬化性や熱硬化性のプラスチックを用いることができる。その液体の成形材料は凹部
内にて位置が規制されるため、発光素子12との位置関係がより高精度に定まることにな
る。その液体の成形材料は、発光素子12にダメージを与えないように付与することが望
ましく、そのためには、液滴を吐出可能な液滴吐出装置を用いることができる。その液滴
吐出装置は、例えば、ピエゾ素子を用いて液体のインクを噴射するインクジェットプリン
タと同じ原理の噴射装置でよい。
【0022】
陰極17およびレンズ20の上には、透明な接着剤21によって透明な封止体22が接
着されている。接着剤21としては、例えば、透明なエポキシ系の紫外線硬化性プラスチ
ック、透明なアクリル系の紫外線硬化性プラスチック、または各種の透明な熱硬化性プラ
スチックを用いることができる。封止体22は、基板11と協働して、レンズ20と共に
発光素子12を封止することにより、発光素子12を外気(特に、水分および酸素)から
離隔して、その劣化を抑制する。封止体22は、例えば、透明なガラスまたはプラスチッ
クによって形成することができる。レンズ20は接着剤21よりも屈折率が高く、接着剤
21の屈折率は封止体22の屈折率以上である。これらの屈折率の関係はこれに限定され
ず、発光装置の使用目的に応じて任意に設定することができる。
【0023】
レンズ20および接着剤21の成形材料としては、屈折率が異なる紫外線硬化型エポキ
シ系接着剤などの種々の材料を用いることができる。それらの成形材料としては、例えば
、屈折率がガラスに近い屈折率1.514の紫外線硬化型エポキシ系接着剤であるダイキ
ン工業(株)製のオプトダイン(商標)UV−3200、屈折率がガラスよりも大きい屈折
率1.63の紫外線硬化型エポキシ系接着剤である(株)アーデル製のオプトクレーブ(
商標)HV153、および屈折率が1.567の紫外線硬化型エポキシ系接着剤であるダ
イキン工業(株)製のオプトダイン(商標)UV−4000を挙げることができる。
【0024】
このように構成された発光装置10は、発光素子12からの光束を凸状のレンズ20に
よって集束させてから、図1中の上方に放出することができる。また、封止体22の上方
には不図示の集束性レンズアレイが備えられており、その集束性レンズアレイによって、
レンズ20からの光をさらに集束して利用することができる。集束性レンズアレイとは、
光を透過させて元の像に対する正立像を結像可能な屈折率分布型レンズが複数配列された
レンズアレイであり、複数の屈折率分布型レンズで結像された像は1つの連続した像とな
る。集束性レンズアレイとしては、例えば日本板硝子株式会社から入手可能なSLA(セ
ルフォック・レンズ・アレイ)がある(セルフォック\SELFOCは日本板硝子株式会
社の登録商標)。例えば、この発光装置10を電子写真方式の画像形成装置におけるライ
ン型の光ヘッドとして用いた場合には、レンズ20および集束性レンズアレイによって集
束された光を感光体ドラムなどの像担持体に到達させて、そこに静電潜像を形成すること
ができる。なお、レンズ20の集光性能およびその他の光学的な諸条件によっては、マイ
クロレンズは必ずしも備える必要はない。
【0025】
また上述したように、発光素子12の正孔注入層15および発光層16の位置を規制す
ることになる隔壁19を利用して、レンズ20の形成位置を規制するため、そのレンズ2
0は、発光素子12に対して高精度に位置決めされる。したがってレンズ20は、発光素
子12と精度よく正対してレンズ機能を充分に発揮し、発光素子12からの光束を精度よ
く集束させて、精密な像を投影することができる。
【0026】
しかも、レンズ20と発光素子12との間の距離がきわめて短いため、発光素子12か
らの光はレンズ20に入りやすい。つまり、発光素子12が発する光の利用効率を大幅に
高めることができる。従って、同程度の照度の像を得るために、発光素子に与える電圧を
従来よりも低減することが可能であり、その分発光素子の寿命を延ばすことも可能となる

【0027】
次に、発光装置10の製造方法について説明する。
まず、基板11上に、駆動素子層13、陽極14、絶縁層18、および隔壁19を形成
する。これらの成形方法としては、公知のいずれの方法であってもよいため、その説明は
省略する。
【0028】
その後、絶縁層18および隔壁19によって画定された凹部内の陽極14上に、液滴吐
出装置によって正孔注入層15の材料を投与して、これを硬化させる。正孔注入層15の
硬化後に、絶縁層18および隔壁19によって画定された凹部内の正孔注入層15上に、
液滴吐出装置によって発光層16の材料を投与して、これを硬化させる。さらに複数の発
光素子14の発光層16および隔壁19上に、一様な厚さの陰極17を堆積させる。
【0029】
その後、発光素子12の正孔注入層15および発光層16の位置を規制する隔壁19を
利用して、発光素子12の上方の凹部内にレンズ20を形成する。レンズ20は、液滴吐
出装置によって、その成形材料としての液体を凹部内に付与してから、それを硬化させる
ことにより成形することができる。このようにしてレンズ20を形成した後に、接着剤2
1によって封止体22を接着することによって、発光装置10を完成させる。この方法に
よれば、発光素子14の正孔注入層15および発光層16を形成するのに利用した凹部内
にレンズ20の材料を付与するので、レンズ20の材料を付与するために特別な凹部を設
ける必要がない。
【0030】
<第2の実施の形態>
図3は、本発明の第2の実施の形態に係る発光装置1110を示す断面図である。第2
の実施の形態においては、発光素子12の封止構造のみが前述した第1の実施の形態の発
光装置10と異なる。
【0031】
すなわち第2の実施の形態においては、基板11上に、ガラス等の透明の封止体111
2が接着剤1111によって接着されており、その封止体1112は、基板11と協働し
てレンズ20と発光素子12を封止する。より詳細には、基板11に形成された陰極17
上に封止体1112が接着され、その封止体1112と基板11との間に形成される封止
空間内に、レンズ20と共に発光素子12が封止される。その封止空間には、発光素子1
2に悪影響を及ぼすおそれのある湿気を吸収するための乾燥剤1113が備えられている
。接着剤1111は、透明であっても透明でなくてもよい。
【0032】
<第3の実施の形態>
図4は、本発明の第3の実施の形態に係る発光装置1210を示す断面図である。
第3の実施の形態においては、陰極17およびレンズ20の上に透明の薄膜の封止層1
211が形成されている。この封止層1211は、例えばCVD(化学気相成長法)など
によって成膜され、基板11と協働して、レンズ20と共に発光素子12を封止する。封
止層1211は、レンズ20よりも屈折率が低い。第1ないし第3の実施の形態によれば
、封止体12,1111,1211によって、発光素子14の劣化を防止するだけでなく
、レンズ20を保護することができる。
【0033】
<第4の実施の形態>
図5は、本発明の第4の実施の形態に係る発光装置1310を示す断面図である。
第4の実施の形態においては、陰極17の上に透明の薄膜の封止層1311が形成され
ており、その封止層1311が基板11と協働して発光素子12を封止する。この封止層
1311は、例えばCVD(化学気相成長法)などによって成膜することができ、陰極1
7の表面に薄く形成される。このような薄膜の封止層1311には隔壁19および凹部に
相当する凸凹が生ずる。従って、封止層1311は、隔壁19で画定された凹部に重なる
位置にやはり凹部を有することになるので、発光素子12の正孔注入層15および発光層
16の位置を規制する凹部内にレンズ20を形成することが可能である。レンズ20は、
その凹部内に前述した実施の形態と同様に形成される。
【0034】
<画像形成装置>
上述したように、発光装置10,1110,1210,1310は、電子写真方式を利
用した画像形成装置における像担持体に潜像を書き込むためのライン型の光ヘッドとして
用いることが可能である。画像形成装置の例としては、プリンタ、複写機の画像形成部分
およびファクシミリの画像形成部分がある。
【0035】
図6は、発光装置10,1110,1210,1310のいずれかをライン型の光ヘッ
ドとして用いた画像形成装置の一例を示す縦断面図である。この画像形成装置は、ベルト
中間転写体方式を利用したタンデム型のフルカラー画像形成装置である。
【0036】
この画像形成装置では、同様な構成の4個の有機ELアレイ露光ヘッド10K,10C
,10M,10Yが、同様な構成である4個の感光体ドラム(像担持体)110K,11
0C,110M,110Yの露光位置にそれぞれ配置されている。有機ELアレイ露光ヘ
ッド10K,10C,10M,10Yは上述した発光装置10,1110,1210,1
310のいずれかである。
【0037】
図6に示すように、この画像形成装置には、駆動ローラ121と従動ローラ122が設
けられており、これらのローラ121,122には無端の中間転写ベルト120が巻回さ
れて、矢印に示すようにローラ121,122の周囲を回転させられる。図示しないが、
中間転写ベルト120に張力を与えるテンションローラなどの張力付与手段を設けてもよ
い。
【0038】
この中間転写ベルト120の周囲には、互いに所定間隔をおいて4個の外周面に感光層
を有する感光体ドラム110K,110C,110M,110Yが配置される。添え字K
,C,M,Yはそれぞれ黒、シアン、マゼンタ、イエローの顕像を形成するために使用さ
れることを意味している。他の部材についても同様である。感光体ドラム110K,11
0C,110M,110Yは、中間転写ベルト120の駆動と同期して回転駆動される。
【0039】
各感光体ドラム110(K,C,M,Y)の周囲には、コロナ帯電器111(K,C,
M,Y)と、有機ELアレイ露光ヘッド10(K,C,M,Y)と、現像器114(K,
C,M,Y)が配置されている。コロナ帯電器111(K,C,M,Y)は、対応する感
光体ドラム110(K,C,M,Y)の外周面を一様に帯電させる。有機ELアレイ露光
ヘッド10(K,C,M,Y)は、感光体ドラムの帯電させられた外周面に静電潜像を書
き込む。各有機ELアレイ露光ヘッド10(K,C,M,Y)は、複数のOLED素子1
4の配列方向が感光体ドラム110(K,C,M,Y)の母線(主走査方向)に沿うよう
に設置される。静電潜像の書き込みは、上記の複数のOLED素子14により光を感光体
ドラムに照射することにより行う。現像器114(K,C,M,Y)は、静電潜像に現像
剤としてのトナーを付着させることにより感光体ドラムに顕像すなわち可視像を形成する

【0040】
このような4色の単色顕像形成ステーションにより形成された黒、シアン、マゼンタ、
イエローの各顕像は、中間転写ベルト120上に順次一次転写されることにより、中間転
写ベルト120上で重ね合わされて、この結果フルカラーの顕像が得られる。中間転写ベ
ルト120の内側には、4つの一次転写コロトロン(転写器)112(K,C,M,Y)
が配置されている。一次転写コロトロン112(K,C,M,Y)は、感光体ドラム11
0(K,C,M,Y)の近傍にそれぞれ配置されており、感光体ドラム110(K,C,
M,Y)から顕像を静電的に吸引することにより、感光体ドラムと一次転写コロトロンの
間を通過する中間転写ベルト120に顕像を転写する。
【0041】
最終的に画像を形成する対象としてのシート102は、ピックアップローラ103によ
って、給紙カセット101から1枚ずつ給送されて、駆動ローラ121に接した中間転写
ベルト120と二次転写ローラ126の間のニップに送られる。中間転写ベルト120上
のフルカラーの顕像は、二次転写ローラ126によってシート102の片面に一括して二
次転写され、定着部である定着ローラ対127を通ることでシート102上に定着される
。この後、シート102は、排紙ローラ対128によって、装置上部に形成された排紙カ
セット上へ排出される。
【0042】
図6の画像形成装置は、書き込み手段として有機ELアレイを有する発光装置10,1
110,1210,1310のいずれかを用いているので、レーザ走査光学系を用いた場
合よりも、装置の小型化を図ることができる。また上述した通り、発光装置の発光素子1
2とレンズ20とを高精度に位置決めして、発光素子12が発する光を精度よく集束させ
ることができるため、高解像度の画像を良好に形成することができる。
【0043】
次に、本発明に係る画像形成装置の他の実施の形態について説明する。
図7は、発光装置10,1110,1210,1310のいずれかをライン型の光ヘッ
ドとして用いた他の画像形成装置の縦断面図である。この画像形成装置は、ベルト中間転
写体方式を利用したロータリ現像式のフルカラー画像形成装置である。図7に示す画像形
成装置において、感光体ドラム(像担持体)165の周囲には、コロナ帯電器168、ロ
ータリ式の現像ユニット161、有機ELアレイ露光ヘッド167、中間転写ベルト16
9が設けられている。
【0044】
コロナ帯電器168は、感光体ドラム165の外周面を一様に帯電させる。有機ELア
レイ露光ヘッド167は、感光体ドラム165の帯電させられた外周面に静電潜像を書き
込む。有機ELアレイ露光ヘッド167は、上述した発光装置10,1110,1210
,1310のいずれかであり、複数の発光素子(OLED素子)12の配列方向が感光体
ドラム165の母線(主走査方向)に沿うように設置される。静電潜像の書き込みは、上
記の複数の発光素子12により光を感光体ドラムに照射することにより行う。
【0045】
現像ユニット161は、4つの現像器163Y,163C,163M,163Kが90
°の角間隔をおいて配置されたドラムであり、軸161aを中心にして反時計回りに回転
可能である。現像器163Y,163C,163M,163Kは、それぞれイエロー、シ
アン、マゼンタ、黒のトナーを感光体ドラム165に供給して、静電潜像に現像剤として
のトナーを付着させることにより感光体ドラム165に顕像すなわち可視像を形成する。
【0046】
無端の中間転写ベルト169は、駆動ローラ170a、従動ローラ170b、一次転写
ローラ166およびテンションローラに巻回されて、これらのローラの周囲を矢印に示す
向きに回転させられる。一次転写ローラ166は、感光体ドラム165から顕像を静電的
に吸引することにより、感光体ドラムと一次転写ローラ166の間を通過する中間転写ベ
ルト169に顕像を転写する。
【0047】
具体的には、感光体ドラム165の最初の1回転で、露光ヘッド167によりイエロー
(Y)像のための静電潜像が書き込まれて現像器163Yにより同色の顕像が形成され、
さらに中間転写ベルト169に転写される。また、次の1回転で、露光ヘッド167によ
りシアン(C)像のための静電潜像が書き込まれて現像器163Cにより同色の顕像が形
成され、イエローの顕像に重なり合うように中間転写ベルト169に転写される。そして
、このようにして感光体ドラム9が4回転する間に、イエロー、シアン、マゼンタ、黒の
顕像が中間転写ベルト169に順次重ね合わせられ、この結果フルカラーの顕像が転写ベ
ルト169上に形成される。最終的に画像を形成する対象としてのシートの両面に画像を
形成する場合には、中間転写ベルト169に表面と裏面の同色の顕像を転写し、次に中間
転写ベルト169に表面と裏面の次の色の顕像を転写する形式で、フルカラーの顕像を中
間転写ベルト169上で得る。
【0048】
画像形成装置には、シートが通過させられるシート搬送路174が設けられている。シ
ートは、給紙カセット178から、ピックアップローラ179によって1枚ずつ取り出さ
れ、搬送ローラによってシート搬送路174を進行させられ、駆動ローラ170aに接し
た中間転写ベルト169と二次転写ローラ171の間のニップを通過する。二次転写ロー
ラ171は、中間転写ベルト169からフルカラーの顕像を一括して静電的に吸引するこ
とにより、シートの片面に顕像を転写する。二次転写ローラ171は、図示しないクラッ
チにより中間転写ベルト169に接近および離間させられるようになっている。そして、
シートにフルカラーの顕像を転写する時に二次転写ローラ171は中間転写ベルト169
に当接させられ、中間転写ベルト169に顕像を重ねている間は二次転写ローラ171か
ら離される。
【0049】
上記のようにして画像が転写されたシートは定着器172に搬送され、定着器172の
加熱ローラ172aと加圧ローラ172bの間を通過させられることにより、シート上の
顕像が定着する。定着処理後のシートは、排紙ローラ対176に引き込まれて矢印Fの向
きに進行する。両面記録の場合には、シートの大部分が排紙ローラ対176を通過した後
、排紙ローラ対176が逆方向に回転させられ、矢印Gで示すように両面記録用搬送路1
75に導入される。そして、二次転写ローラ171により顕像がシートの他面に転写され
、再度定着器172で定着処理が行われた後、排紙ローラ対176でシートが排出される

【0050】
図7の画像形成装置は、書き込み手段として有機ELアレイを有する露光ヘッド167
(発光装置10,1110,1210,1310のいずれか)を用いているので、レーザ
走査光学系を用いた場合よりも、装置の小型化を図ることができる。また上述した通り、
発光装置の発光素子12とレンズ20とを高精度に位置決めして、発光素子12が発する
光を精度よく集束させることができるため、高解像度の画像を良好に形成することができ
る。
【0051】
以上、発光装置10,1110,1210,1310のいずれかを応用可能な画像形成
装置を例示したが、他の電子写真方式の画像形成装置にも発光装置10,1110,12
10,1310のいずれかを応用することが可能であり、そのような画像形成装置は本発
明の範囲内にある。例えば、中間転写ベルトを使用せずに感光体ドラムから直接シートに
顕像を転写するタイプの画像形成装置や、モノクロの画像を形成する画像形成装置にも発
光装置10,1110,1210,1310のいずれかを応用することが可能である。
【0052】
<画像読み取り装置>
また、発光装置10,1110,1210,1310は、画像読み取り装置における読
み取り対象に光を照射するためのライン型の光ヘッドとして用いることが可能である。画
像読み取り装置の例としては、スキャナ、複写機の読み取り部分、ファクシミリの読み取
り部分、バーコードリーダおよび、例えばQRコード(登録商標)のような二次元画像コ
ードを読む二次元画像コードリーダがある。
【0053】
図8は、発光装置10,1110,1210,1310のいずれかをライン型の光ヘッ
ドとして用いた画像読み取り装置の一例を示す縦断面図である。この画像読み取り装置の
キャビネット201の上部には、平板状のプラテンガラス202が設けられており、プラ
テンガラス202には原稿203がその画像面を下方に向けて載置される。そして、図示
しないプラテンカバーが原稿203をプラテンガラス202に向けて押さえる。
【0054】
キャビネット201の内部には、高速キャリッジ204と低速キャリッジ205が横方
向に移動可能に配置されている。高速キャリッジ204には原稿203を照射する有機E
Lアレイ露光ヘッド206(発光装置10,1110,1210,1310のいずれか)
と反射鏡207が搭載されており、低速キャリッジ205には二つの反射鏡208,20
9が搭載されている。これらの有機ELアレイ露光ヘッド206および反射鏡207,2
08,209は図8の紙面垂直方向(主走査方向)に延びている。また、有機ELアレイ
露光ヘッド206は、複数の発光素子(OLED素子)12の配列方向が主走査方向に沿
うように設置される。
【0055】
また、キャビネット201の内部の固定位置には、原稿読み取り器210が配置されて
いる。この原稿読み取り器210は、結像レンズ212と、多数の感光画素(電荷結合素
子)から構成されるラインセンサ(受光装置)213を備える。ラインセンサ213は図
20の紙面垂直方向(主走査方向)に延びており、複数の感光画素の配列方向が主走査方
向に沿うように設置される。
【0056】
有機ELアレイ露光ヘッド206(発光装置10,1110,1210,1310のい
ずれか)から発した光は、プラテンガラス202を透過して原稿203の下面で反射する
。原稿203からの反射光は、プラテンガラス202を透過し、反射鏡207〜209で
反射した後、結像レンズ212によりラインセンサ213で結像する。高速キャリッジ2
04は横方向に移動して、原稿203の全面が有機ELアレイ露光ヘッド206で照射さ
れるようにし、低速キャリッジ205は高速キャリッジ204の半分の速度で移動して、
原稿203からラインセンサ213に到る反射光路の長さを一定に維持する。
【0057】
以上、発光装置10,1110,1210,1310のいずれかを応用可能な画像読み
取り装置を例示したが、他の画像読み取り置にも発光装置10,1110,1210,1
310のいずれかを応用することが可能であり、そのような画像読み取り装置は本発明の
範囲内にある。例えば、受光装置が照明装置としての発光装置10,1110,1210
,1310のいずれかと共に移動してもよいし、受光装置と発光装置10,1110,1
210,1310のいずれかが共に固定されて原稿または読み取り対象が移動して読み取
られるようにしてもよい。
【0058】
<他の応用>
本発明に係る発光装置は、さらに各種の露光装置、照明装置および画像表示装置に応用
することが可能である。
【0059】
また、上記の発光装置では、与えられる電気的なエネルギを光学的エネルギに変換する
発光素子としてOLED素子が使用されているが、他の発光素子(例えば、無機EL素子
やプラズマディスプレイ素子)を発光パネルに使用してもよい。またレンズは、隔壁によ
って画定される凹部の内部空間に収まるように形成する必要はなく、前述した実施の形態
のように、その上部が凹部の上方に出ていてもよい。つまりレンズは、少なくとも一部が
凹部内に位置して、その形成位置が規制されるものであればよい。
【図面の簡単な説明】
【0060】
【図1】本発明の第1の実施の形態に係る発光装置を示す断面図である。
【図2】図1の発光装置の平面図である。
【図3】本発明の第2の実施の形態に係る発光装置を示す断面図である。
【図4】本発明の第3の実施の形態に係る発光装置を示す断面図である。
【図5】本発明の第4の実施の形態に係る発光装置を示す断面図である。
【図6】本発明の第1から第4の実施の形態のいずれかの発光装置を用いた画像形成装置の一例を示す縦断面図である。
【図7】本発明の第1から第4の実施の形態のいずれかの発光装置を用いた画像形成装置の他の例を示す縦断面図である。
【図8】本発明の第1から第4の実施の形態のいずれかの発光装置を用いた画像読み取り装置の一例を示す縦断面図である。
【符号の説明】
【0061】
10,1110,1210,1310…発光装置、11…基板、12…発光素子、13
…駆動素子層、14…陽極、15…正孔注入層、16…発光層、17…陰極、18…絶縁
層、19…隔壁、20…レンズ、21…接着剤、22,1112…封止体、1111…接
着剤、1113…乾燥剤、1211,1311…封止層、10K,10C,10M,10
Y,167,206…有機ELアレイ露光ヘッド(発光装置)。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板と、
前記基板上に形成されて前記基板上に凹部を画定する隔壁と、
前記凹部により位置が規制された発光層を有しており前記基板上に形成された発光素子
と、
前記発光素子に重なり前記凹部内に形成されたレンズと、
を備えることを特徴とする発光装置。
【請求項2】
前記基板と協働して、前記発光素子を前記レンズと共に封止する封止体を備えることを
特徴とする請求項1に記載の発光装置。
【請求項3】
前記発光素子と前記レンズとの間に介在し、前記基板と協働して前記発光素子を封止す
る薄膜の封止層を備えることを特徴とする請求項1に記載の発光装置。
【請求項4】
基板上に凹部を画定するように前記基板上に隔壁を形成する工程と、
前記凹部により発光層の位置を規制するようにして、前記発光層を有する発光素子を前
記基板上に形成する工程と、
前記凹部内にレンズ成形用の液体の成形材料を付与してから、前記成形材料を硬化させ
ることにより、前記発光素子に重なる位置にレンズを形成する工程と、
を含むことを特徴とする発光装置の製造方法。
【請求項5】
前記成形材料を液滴として吐出可能な液滴吐出装置を用いて、前記凹部内に前記成形材
料の液滴を付与することを特徴とする請求項4に記載の発光装置の製造方法。
【請求項6】
像担持体と、
前記像担持体を帯電する帯電器と、
複数の前記発光素子が配列され、前記像担持体の帯電された面に複数の前記発光素子に
より光を照射して潜像を形成する請求項1から5のいずれかに記載の発光装置と、
前記潜像にトナーを付着させることにより前記像担持体に顕像を形成する現像器と、
前記像担持体から前記顕像を他の物体に転写する転写機と、
を備えることを特徴とする画像形成装置。
【請求項7】
複数の前記発光素子が配列された請求項1から5のいずれかに記載の発光装置と、
前記発光素子から発して読み取り対象で反射した光を電気信号に変換する受光装置と、
を備えることを特徴とする画像読み取り装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate


【公開番号】特開2006−196197(P2006−196197A)
【公開日】平成18年7月27日(2006.7.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−3430(P2005−3430)
【出願日】平成17年1月11日(2005.1.11)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】