発光装置、その設計方法および電子機器
【課題】 共振光の強度を所期値に維持するために各層に要求される膜厚の精度を緩和する。
【解決手段】 発光装置Dは、半透過反射性の半透過反射層12と光反射性の第2電極22との間に介在する発光層352を具備する。この構成においては、発光層352からの出射光を半透過反射層12と第2電極22との間で共振させる共振器構造が形成される。この共振器構造における共振波長は、発光層352による内部発光スペクトルの強度変化率(波長に対する強度の変化率)が当該内部発光スペクトルのピークに対応して略極小値となる波長である。
【解決手段】 発光装置Dは、半透過反射性の半透過反射層12と光反射性の第2電極22との間に介在する発光層352を具備する。この構成においては、発光層352からの出射光を半透過反射層12と第2電極22との間で共振させる共振器構造が形成される。この共振器構造における共振波長は、発光層352による内部発光スペクトルの強度変化率(波長に対する強度の変化率)が当該内部発光スペクトルのピークに対応して略極小値となる波長である。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有機EL(Electro Luminescent)材料など各種の発光材料によって形成された発光層を発光させる技術に関する。
【背景技術】
【0002】
この種の発光層による出射光を共振させることによって、スペクトルのピーク幅が狭く強度が高い光を生成する技術が従来から提案されている。例えば特許文献1や特許文献2には、相互に対向する反射層と半透過反射層との間隙に発光層を介在させ、発光層からの出射光を反射層と半透過反射層との間で共振させる構造が開示されている。共振器構造における共振波長は、反射層と半透過反射層との光学的距離に応じた波長となる。この光学的距離は、例えば反射層と発光層との間に介在する電極の膜厚や屈折率に応じて決定される。
【特許文献1】特許第2797883号公報(段落0018および図1)
【特許文献2】特開2005−116516号公報(段落0041および図1)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ところで、共振器構造による共振を経て発光装置から出射する光の強度は、共振器構造を構成する各層の膜厚が僅かに設計値から相違するに過ぎない場合であっても大幅に変動する場合がある。したがって、所望の共振波長の成分を発光装置から所期の輝度で出射させるためには、共振器構造を構成する各層の寸法(特に膜厚)を極めて高い精度で制御することが要求される。しかしながら、このように高精度な膜厚の制御は製造技術上の理由から容易ではなく、たとえ可能であるとしてもその実現のためには製造コストの増大を避けることができないという問題がある。なお、特許文献1および特許文献2の何れにも、各層の膜厚に許容される誤差を拡大するという観点やこの課題を解決するための具体的な方策については言及されていない。本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、発光装置から出射される共振光の強度を所期値に維持するために各層に要求される膜厚の精度を緩和するという課題の解決を目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明に係る発光装置は、相互に対向して配置されて各々が光反射性を有する第1反射層および第2反射層と、第1反射層と第2反射層との間に介在する発光層とを具備する。この構成においては、発光層からの出射光を第1反射層と第2反射層との間で共振させる共振器構造が形成される。なお、第1反射層は、例えば、後掲の第1実施形態における半透過反射層12および第2電極22の一方、または、第2実施形態における反射層14および第2電極22の一方に相当する。第2電極は、例えば、第1実施形態における半透過反射層12および第2電極22の他方、または、第2実施形態における反射層14および第2電極22の他方に相当する。
【0005】
本発明の第1の特徴は、発光層による発光のスペクトルの強度変化率が当該スペクトルのピークに対応して略極小値となる波長を、共振器構造における共振波長として選定したことにある。本出願における「強度変化率」とは、波長の変化に対するスペクトルの強度の変化率の絶対値(すなわち各波長におけるスペクトルの接線の傾きの絶対値)である。
【0006】
第1の特徴に係る発光装置によれば、第1反射層と第2反射層との光学的距離(より具体的には第1反射層と第2反射層との間に介在する各層の膜厚)が所期値からズレた場合であっても、強度変化率の大小とは無関係に共振波長が選定された構成(例えば強度変化率が極小値とならない波長が共振波長とされた構成)と比較して、発光装置からの出射光の強度(さらには輝度)の変化を抑制することができる。
【0007】
本発明の第2の特徴は、発光層による発光のスペクトルの強度変化率の最大値Dmaxと波長λxでの強度変化率Dxとの差分値(Dmax−Dx)が、最大値Dmaxとスペクトルのピークに対応する強度変化率の極小値Dminとの差分値(Dmax−Dmin)に対して、(Dmax−Dx)≧0.9×(Dmax−Dmin)を満たす範囲内の波長λxとなるように、共振器構造における共振波長を選定したことにある(例えば図10参照)。この構成においては、第1の特徴に係る発光装置と同様に、発光層のスペクトルにおける強度変化率が略極小値となる波長を含む所定の範囲内の波長が共振器構造の共振波長として選定されているから、第1反射層と第2反射層との光学的距離が所期値からズレた場合であっても、発光装置からの出射光の強度の変化を抑制することができる。
【0008】
本発明における発光層は、各々が別個の波長に対応する第1のピークと第2のピークとが発光のスペクトルに現れる材料によって、複数の単位素子にわたって連続に分布するように形成された膜体であってもよい。この態様に係る第3の特徴は、複数の単位素子のうち第1の単位素子の共振器構造における共振波長が、スペクトルの強度変化率が第1のピークに対応して略極小値となる波長に選定され、複数の単位素子のうち第2の単位素子の共振器構造における共振波長が、スペクトルの強度変化率が第2のピークに対応して略極小値となる波長に選定されたことにある。この構成によれば、第1の単位素子および第2の単位素子の各々における共振波長が、発光層のスペクトルにおける強度変化率が略極小値となる波長に選定されているから、第1反射層と第2反射層との光学的距離が所期値からズレた場合であっても、第1の単位素子および第2の単位素子の各々からの出射光の強度の変化を抑制することができる。なお、第3の特徴に係る発光装置の具体例は第2実施形態として後述される。
【0009】
なお、本発明の第3の特徴に係る発光装置においては、第1の単位素子および第2の単位素子とは共振波長が相違する第3の単位素子を含む構成も採用される。この構成において、発光素子による発光のスペクトルが第1のピークや第2のピークとは波長が相違する第3のピークを含む場合には、第3の単位素子の共振波長を、スペクトルの強度変化率が第3のピークに対応して略極小値となる波長に選定することが望ましい。もっとも、発光素子の発光のスペクトルが第1のピークと第2のピークのみを含む場合(あるいは第3のピークに対応する波長が所望の波長とは相違する場合)には、第3の単位素子の共振波長を、スペクトルにおける強度変化率の大小とは無関係に所望の波長に選定してもよい。
【0010】
以上の各態様における発光層の発光のスペクトルの典型例は内部発光スペクトルである。この内部発光スペクトルは、発光層からの出射後に干渉や反射を経ていない光のスペクトルであり、例えば光励起による発光層の発光(フォトルミネセンス)のスペクトルや、透明な電極によって電界を印加したとき(すなわち干渉や反射が殆ど発生しないとき)の発光層の発光のスペクトルである。
【0011】
以上に例示した各態様の発光装置において、第1反射層は、光反射性と光透過性とを有する半透過反射層である。この構成によれば、共振器構造による共振光を第1反射層から確実に外部に出射させることができる。この態様における第1反射層(半透過反射層)の構造は任意であるが、例えば、各々の屈折率が相違する複数の光透過性の膜体を積層してなる構造(いわゆる誘電体ミラー)が好適に採用される。
【0012】
本発明の望ましい態様において、第1反射層を被覆する光透過性の透光層と、透光層と発光層との間に介在する光透過性の電極とが配置される。この態様においては、例えば電極の形成時(例えば導電膜の成膜時やそのパターニング時)における第1反射層の劣化や損傷を透光層によって防止することが可能である。そして、以上に説明したように、透光層や電極の膜厚にバラツキが発生した場合であっても、発光装置からの出射光の強度の変化を抑制することができる。
【0013】
本発明に係る発光装置は各種の電子機器に利用される。この電子機器の典型例は、発光装置を表示装置として利用した機器である。この種の電子機器としては、パーソナルコンピュータや携帯電話機などがある。もっとも、本発明に係る発光装置の用途は画像の表示に限定されない。例えば、光線の照射によって感光体ドラムなどの像担持体に潜像を形成するための露光装置(露光ヘッド)としても本発明の発光装置を適用することができる。また、例えば液晶パネルの背面に設置される照明装置(バックライト)としても本発明の発光装置を採用することができる。
【0014】
本発明は、以上に例示した各態様に係る発光装置を設計するための方法としても特定される。この方法は、相互に対向して配置されて各々が光反射性を有する第1反射層および第2反射層と、発光材料によって形成されて第1反射層と第2反射層との間に介在する発光層とを具備し、発光層からの出射光を第1反射層と第2反射層との間で共振させる共振器構造が形成された発光装置を設計する方法であって、発光材料による発光のスペクトルを測定する第1過程と、第1過程で測定したスペクトルの強度変化率が当該スペクトルのピークに対応して略極小値となる波長を、共振器構造における共振波長として選定する第2過程と、第1反射層と第2反射層との光学的距離を、第2過程で選定した共振波長に対応する光学的距離に選定する第3過程とを含む。この方法によって設計された発光装置によれば、第1反射層と第2反射層との光学的距離が所期値からズレた場合であっても、発光装置からの出射光の強度の変化を抑制することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
<A:第1実施形態>
図1は、本発明の第1実施形態に係る発光装置の構成を示す断面図である。同図に示すように、発光装置Dは、基板10の表面上にマトリクス状に配列された複数の単位素子U(Ur,Ug,Ub)を有する。各単位素子Uは、複数の色彩(赤色,緑色,青色)の何れかに対応した波長の光を発生する要素である。すなわち、単位素子Urは赤色光(R)を出射し、単位素子Ugは緑色光(G)を出射し、単位素子Ubは青色光(B)を出射する。本実施形態の発光装置Dは、各単位素子Uにて発生した光が基板10を透過して出射するボトムエミッション型である。したがって、ガラスやプラスチックなど光透過性を有する板状の部材が基板10として好適に採用される。なお、単位素子Uは板状の封止材によって基板10上に封止されてもよい。
【0016】
各単位素子Uは発光体35を含む。各発光体35は、正孔輸送層351と発光層352(352r,352g,352b)と電子輸送層353とが基板10側からこの順番に積層された構造となっている。発光層352は電界の印加によって発光する発光材料からなる。本実施形態における発光層352は、単位素子Uの発光色ごとに別個の発光材料によって形成される。すなわち、単位素子Urの発光体35は赤色光を発光する発光層352rを含み、単位素子Ugの発光体35は緑色光を発光する発光層352gを含み、単位素子Ubの発光体35は青色光を発光する発光層352bを含む。
【0017】
なお、発光体35の構造は以上の例示に限定されない。例えば、図1に示した各層に正孔注入層または電子注入層が追加された構成や、図1に示した正孔輸送層351や電子輸送層353が省略された構成としてもよい。すなわち、発光体35は少なくとも発光層352を含んでいれば足りる。
【0018】
図1に示すように、基板10の表面は半透過反射層12によって被覆される。この半透過反射層12は、発光体35から出射して表面に到達した光量の一部を発光体35側に反射させるとともに他の一部を基板10側に透過させる性質(半透過反射性)を備えた膜体であり、基板10の全域にわたって連続に分布する。半透過反射層12は、例えば、各々が屈折率の相違する光透過性の材料からなる複数の膜体を積層した構造(誘電体ミラー)となっている。各膜体の材料としては、窒化珪素(SiN)や酸化珪素(SiO2)・酸窒化珪素(SiON)・酸化チタン(TiO2)など各種の材料が好適に採用される。本実施形態の半透過反射層12は、酸化珪素からなる第1層121と窒化珪素からなる第2層122とを交互に積層した構造となっている。
【0019】
半透過反射層12の表面上には第1電極21が単位素子Uごとに相互に離間して形成される。各第1電極21は、ITO(Indium Tin Oxide)やIZO(Indium Zinc Oxide)など光透過性の導電材料によって形成された電極であり、発光体35の陽極として機能する。これらの第1電極21が形成された半透過反射層12の表面上にはバンク層32が形成される。このバンク層32は、基板10の表面上の空間を単位素子Uごとに仕切る形状(格子状)の隔壁であり、例えばアクリル系やエポキシ系といった樹脂材料または酸化珪素や窒化珪素といった無機材料など各種の絶縁材料によって形成される。各発光体35は、バンク層32の内壁に包囲されて第1電極21を底面とする空間(凹部)内に形成される。
【0020】
各発光体35は第2電極22によって被覆される。この第2電極22は、複数の単位素子Uにわたって連続に分布する膜体であり、発光体35の陰極として機能する。本実施形態における第2電極22は、光反射性を有する材料によって形成され、基板10とは反対側に向かって進行する光を基板10側に反射させる反射層として兼用される。第2電極22の材料としては、例えばアルミニウム(Al)や銀(Ag)といった単体金属、またはこれらの金属を主成分とする合金などが好適に採用される。
【0021】
各単位素子Uは、半透過反射層12と第1電極21と発光体35と第2電極22とを含む要素である。各単位素子Uにおいては、半透過反射層12と第2電極22との間で発光層352からの出射光を共振させる共振器構造が形成される。すなわち、発光体35の発光層352による出射光は半透過反射層12と第2電極22との間で往復し、共振器構造における共振波長の成分のみが多重干渉によって選択的に増幅されたうえで半透過反射層12を透過して出射する。このように共振を利用した構造によれば、スペクトルのピーク幅が狭く強度が高い光を発光装置Dから出射させることができる。
【0022】
共振器構造における共振波長λは、例えば以下の式(1)で表現されるように、半透過反射層12と第2電極22との光学的距離Lに応じて決定される。ただし、式(1)における「Φ(rad)」は、共振器構造の両端部にて発生する位相シフトであり、より具体的には、半透過反射層12の表面で反射するときの位相シフト「Φ1(rad)」と第2電極22の表面で反射するときの位相シフト「Φ2(rad)」との和(=Φ1+Φ2)である。また、「m」は光学的距離Lが正となる整数である。
(2L)/λ+Φ/2π=m ……(1)
各単位素子Uから出射されるべき所望の共振波長λを式(1)に代入することによって、この共振波長λによる光共振を実現するための光学的距離Lが単位素子Uごとに決定される。そして、ここで決定された光学的距離Lが得られるように、半透過反射層12と第2電極22との間に介在する各層の膜厚や材料が決定される。図1に例示された構成においては、第1電極21の膜厚の調整によって光学的距離L(さらには共振波長λ)を単位素子Uの発光色ごとに相違させる構成となっている。すなわち、単位素子Urの第1電極21は単位素子Ugの第1電極21よりも厚く、単位素子Ugの第1電極21は単位素子Ubの第1電極21よりも厚い。
【0023】
さらに、光学的距離Lの算定の基礎となる各単位素子Uの共振波長λは、その単位素子Uの発光層352(352r,352g,352b)を構成する発光材料の発光のスペクトルに応じて決定される。本実施形態における共振波長λの選定の方法について詳述すると以下の通りである。
【0024】
図2は、赤色の単位素子Urの発光層352rを構成する発光材料(以下「赤色発光材料」という)の発光のスペクトルを示すグラフである。同図においては横軸に波長(nm)が示されるとともに縦軸に強度(任意スケール)が示されている。同図に示されるスペクトルSP0_Rは、赤色発光材料からの出射後に反射や干渉を経ていない光(すなわち赤色発光材料から出射した直後の光)のスペクトルである。以下ではこのスペクトルを、半透過反射層12と第2電極22との間隙における共振(干渉)を経て基板10側から出射する光のスペクトルと区別するために特に「内部発光スペクトル」と表記する。
【0025】
図2に示した内部発光スペクトルSP0_Rは、光学的な励起(例えば紫外線の照射による励起)に起因した赤色発光材料の発光(フォトルミネセンス)を観察することによって特定される。すなわち、第1に、光透過性の板材の表面に蒸着などの成膜技術によって形成された赤色発光材料の膜体(あるいは板材の表面に散布された赤色発光材料の粉末)が用意され、第2に、この膜体に対して紫外線などの特定の波長の光が照射される。第3に、この照射による光励起で膜体から放射された光を公知の方法で測定および解析することによって内部発光スペクトルSP0_Rが特定される。したがって、半透過反射層12と第2電極22との間隙における共振(干渉)を経て発光装置Dの基板10側から出射した光のスペクトルとは異なり、内部発光スペクトルSP0_Rは、発光装置Dの各部の寸法や材質に依存せず、赤色発光材料の種類のみに応じて固有に形状が定まる。図2に示すように、本実施形態における赤色発光材料の内部発光スペクトルSP0_Rは、650nm程度の波長において強度のピークが現れる。
【0026】
なお、ここでは光励起による発光の観察によって内部発光スペクトルSP0_Rを測定する場合を例示したが、内部発光スペクトルSP0_Rを特定するための方法はこれに限定されない。例えば、赤色発光材料の膜体を一対の透明電極(例えばITOからなる電極)で挟持した構造を作成し、これらの電極で電界を印加したときの赤色発光材料からの出射光を測定してもよい。この方法によっても、赤色発光材料からの出射後に反射や干渉を経ていない光の内部発光スペクトルSP0_Rを特定することができる。
【0027】
さて、図2には、内部発光スペクトルSP0_Rにおける波長の変化に対する強度の変化率(すなわち内部発光スペクトルSP0_Rの各波長における接線の傾き)の絶対値である強度変化率Drが内部発光スペクトルSP0_Rに併記されている。本実施形態における単位素子Urの共振波長λは、赤色発光材料の内部発光スペクトルSP0_Rの強度変化率Drがそのピークに対応して略極小値(最小値)となる波長に選定される。例えば、図2に示された内部発光スペクトルSP0_Rでは660nm程度の波長において強度変化率Drが極小値(ゼロ)となる。したがって、本実施形態においては、単位素子Urの共振波長λが660nmに決定されたうえで、半透過反射層12と第2電極22との間の光学的距離Lがこの共振波長λに応じた数値となるように各部の膜厚や材料(屈折率)が選定される。以上のように強度変化率Drに応じて共振波長λ(さらには光学的距離L)を選定することによって、単位素子Urからの出射光を所期の輝度に確保するために各層の膜厚に要求される精度を緩和することができる(すなわち許容誤差を拡大することができる)という効果が奏される。この効果について詳述すると以下の通りである。
【0028】
図3に図示されたスペクトルSPout_Rは、以上の手順で共振波長λが決定された単位素子Urから基板10を透過して出射した光(すなわち共振器構造での共振を経た光)のスペクトル(以下「出射光スペクトル」という)である。また、図3に図示されたスペクトルSPcは、内部発光スペクトルSP0_Rの強度変化率Drが極小値とならない波長(ここでは615nm)が共振波長λに選定された構成(以下「対比構成」という)での出射光スペクトルである。なお、図3には、図2に示した内部発光スペクトルSP0_Rが参考のために併記されている。
【0029】
また、図3に図示された各スペクトルSPout_R[10]は、半透過反射層12と第2電極22との間に介在する各層の膜厚に、所期の寸法(すなわち出射光スペクトルSPout_Rが得られる構成における各層の寸法)と比較して±10%の誤差が発生した場合の出射光スペクトルである。一方、図3の図示された各スペクトルSPc[10]は、対比構成のもとで各層の膜厚に±10%の誤差が発生した場合の出射光スペクトルである。
【0030】
図3に示されるように、本実施形態のように強度変化率Drが極小値となる波長を共振波長λとした構成においては、強度変化率Drが極小値とならない波長を共振波長λとした対比構成と比較して、各層の膜厚に誤差が発生したときの出射光の強度の変動が低減される。より具体的には、対比構成のもとで各層の膜厚に±10%の誤差が生じると、単位素子Urからの出射光の輝度(図3に示した強度と人間の視感度との乗算値)が±23%程度の範囲で変動するのに対し、本実施形態の構成のもとで各層の膜厚に±10%の誤差が生じた場合、単位素子Urからの出射光の輝度の変動量は±10%程度の範囲に抑制される。換言すると、単位素子Urからの出射光について所期の輝度を得るために各層に許容される膜厚の誤差は、本実施形態の構成のほうが対比構成よりも大きい。このように、本実施形態によれば、各層の膜厚に要求される精度が緩和されるから、製造コストの低減や歩留まりの向上を実現することができる。
【0031】
なお、以上においては赤色の単位素子Urについて説明したが、単位素子Ugや単位素子Ubについても同様の手順で共振波長λ(さらには光学的距離L)を決定することができる。具体的には以下の通りである。
【0032】
図4は、単位素子Ugの発光層352gの内部発光スペクトルSP0_Gとその強度変化率Dgとを示すグラフである。同図に示されるように、内部発光スペクトルSP0_Gには530nm程度の波長に強度のピークが現れる。一方、このピークに対応して強度変化率Dgが極小値となる波長は570nm程度である。したがって、単位素子Ugの共振波長λは570nmに選定され、この共振波長λから式(1)に基づいて単位素子Ugの光学的距離Lが決定される。
【0033】
図5は、共振波長λが570nmに選定された単位素子Ugの出射光スペクトルSPout_Gと、共振器構造を構成する各層の寸法に±10%の誤差が発生したときの出射光スペクトルSPout_G[10]を示すグラフである。同図に示すように、単位素子Ugの共振波長λを570nmに選定した場合には、単位素子Urの場合と同様に、各層の膜厚に±10%程度の誤差が生じた場合であっても単位素子Ugからの出射光の強度の変動は±10%程度の範囲に抑制される。
【0034】
次に、図6は、単位素子Ubの発光層352bの内部発光スペクトルSP0_Bとその強度変化率Dbとを示すグラフである。単位素子Ubの共振波長λは、内部発光スペクトルSP0_Bのピーク(波長:465nm)に対応して強度変化率Dbが極小値となる波長である470nmとされる。図7は、このときの単位素子Ubの出射光スペクトルSPout_Bと、共振器構造の各層の膜厚に±10%の誤差が発生しときの出射光スペクトルSPout_B[10]を示すグラフである。同図に示すように、単位素子Ubについても出射光の強度の変動は±10%程度に抑制される。
【0035】
<B:第2実施形態>
次に、図8を参照して、本発明の第2実施形態に係る発光装置Dの構成を説明する。なお、本実施形態のうち第1実施形態と同様の要素については共通の符号を付してその説明を適宜に省略する。
【0036】
図8に示されるように、本実施形態における基板10の表面上には複数の反射層14が形成される。これらの反射層14は、例えば各単位素子Uの配列に沿うようにストライプ状に形成される。各反射層14は光反射性を有する材料によって形成される。この種の材料としては、アルミニウムや銀などの単体金属、またはこれらの金属を主成分とする合金などが好適に採用される。
【0037】
反射層14の表面および側端面(エッジ部分)は透光層16によって被覆される。この透光層16は、光透過性を有する絶縁性の材料によって形成された膜体である。このような材料としては、アクリル系やエポキシ系といった樹脂材料または酸化珪素(SiOx)や窒化珪素(SiNx)といった無機材料などが好適に採用される。
【0038】
発光体35の陽極として機能する第1電極21は、単位素子Uごとに相互に離間するように透光層16の表面上に形成される。この第1電極21は、基板10の全域を被覆する光透過性の導電膜をフォトリソグラフィ技術やエッチング技術によってパターニングすることによって形成される。透光層16が形成されていない構成においては、この第1電極21の形成に際して反射層14が劣化(酸化)または損傷する可能性がある。本実施形態においては、反射層14が透光層16によって被覆されているから、第1電極21の形成時(成膜時やパターニング時)における反射層14の劣化や損傷が有効に防止される。
【0039】
第1実施形態においては、各発光色の単位素子Uごとに別個の材料によって発光層352が形成された構成を例示した。これに対し、本実施形態においては、図8に示されるように、発光体35を構成する各層(正孔輸送層351・発光層352および電子輸送層353)が複数の単位素子Uにわたって連続に分布する構成となっている。したがって、発光層352の特性(例えば内部発光スペクトル)自体は複数の単位素子Uについて共通である。
【0040】
発光体35の陰極として機能する第2電極22は、第1実施形態と同様に、複数の単位素子Uにわたって連続に分布するとともに発光体35を挟んで第1電極21と対向する導電性の膜体である。ただし、本実施形態における第2電極22は、基板10側から到達した光の一部を透過させるとともに他の一部を反射させる半透過反射層として機能する。すなわち、本実施形態の発光装置Dは、発光体35からの出射光が共振後に基板10とは反対側(図8の上方)に出射するトップエミッション型である。したがって、基板10に光透過性は要求されない。
【0041】
このように半透過反射性を備えた電極は、光反射性を有する導電材料を充分に薄く形成することによって作成される。この種の材料としては、アルミニウムや銀などの単体金属やこれらの材料を主成分とする合金などが好適に採用される。例えば本実施形態の第2電極22は、各々が充分に薄く形成されたマグネシウム(Mg)および銀(Ag)の膜体を相互に積層した構造となっている。もっとも、第2電極22はITOやIZOなど光透過性を有する導電材料によって形成されてもよい。この種の材料によって第2電極22が形成されていても、第2電極22の表面上の屈折率が第2電極22よりも低い構成とすれば、第2電極22の表面において光の一部が透過するとともに他の一部が反射するから、第2電極22を半透過反射層として機能させることができる。
【0042】
次に、図9は、発光層352の内部発光スペクトルを示す図である。同図に示されるように、本実施形態の発光層352の内部発光スペクトルSP0は、465nm程度の波長(青色)における強度のピークP1と600nm程度の波長(黄色ないしオレンジ色)における強度のピークP2とを含む。このような特性の発光層352は、例えば、465nm程度の波長に内部発光スペクトルの強度のピークが現れる発光材料と、600nm程度の波長に内部発光スペクトルの強度のピークが現れる発光材料とを積層することによって形成される。
【0043】
また、図9には、内部発光スペクトルSP0の強度変化率Dが併記されている。同図に示されるように、本実施形態における発光層352の強度変化率Dは、波長λb(470nm程度)においてピークP1に対応して極小値となり、波長λr(620nm程度)においてピークP2に対応して極小値となる。したがって、反射層14と第2電極22との間の光学的距離Lは、単位素子Ubにおいては共振波長が波長λbとなるように決定され、単位素子Urにおいては共振波長が波長λrとなるように決定される。また、単位素子Ugについては、共振波長が波長λg(540nm程度)となるように光学的距離Lが決定される。この波長λgは、図9に示すように、ピークP1とピークP2との間のディップ(谷)に対応して強度変化率Dが極小値となる波長である。
【0044】
本実施形態においては、第1実施形態と同様に、第1電極21の膜厚の調整によって、反射層14と第2電極22との間の光学的距離Lが所望の共振波長λに対応した数値に制御される。各単位素子Uの共振波長(λr,λg,λb)は以上の手順で決定されるから、図8に示すように、単位素子Urの第1電極21は単位素子Ugの第1電極21の膜厚(例えば100nm)よりも厚い膜厚(例えば150nm)に形成され、単位素子Ugの第1電極21は単位素子Ubの第1電極21の膜厚(例えば50nm)よりも厚く形成される。
【0045】
本実施形態においては、発光体35が複数の単位素子Uにわたって共通するから、各発光色の単位素子Uごとに別個の材料によって発光体35(特に発光層352)が形成される構成と比較して、製造工程が簡素化されるとともに製造コストが低減される。しかも、本実施形態においては、強度変化率Dが極小値となる波長が各単位素子Uの共振波長λとして選定されるから、反射層14と第2電極22との間に介在する各層の膜厚に誤差が生じた場合であっても、各単位素子Uからの出射光の強度の変動は低減される。すなわち、各単位素子Uからの出射光を所期の輝度に維持するために各層の膜厚に要求される精度が緩和されるから、この観点からしても製造コストの低減や歩留まりの向上を実現することができる。
【0046】
なお、本実施形態においては、発光層352の内部発光スペクトルが2個のピーク(P1・P2)のみを含む場合を例示したが、これらのピークに加えて緑色に対応する波長(例えば540nm程度)でのピークP3を含む発光層352を利用してもよい。この構成において単位素子Ugの共振波長λは、強度変化率DがピークP3に対応して極小値となる波長に選定される。
【0047】
<C:変形例>
以上の各形態には様々な変形を加えることができる。具体的な変形の態様を例示すれば以下の通りである。なお、以下の各態様を適宜に組み合わせてもよい。
【0048】
(1)変形例1
以上の各実施形態においては、内部発光スペクトルSP0(SP0_R,SP0_G,SP0_B)の強度変化率D(Dr,Dg,Db)がピークに対応して極小値となる波長を単位素子Uの共振波長λとして選定したが、各単位素子Uの共振波長λは、強度変化率Dが極小値となる波長に必ずしも一致している必要はなく、強度変化率Dが極小値となる波長を含む所定の範囲内の波長に選定されていればよい。
【0049】
例えばいま、図10に示すように、強度変化率Dの最大値Dmaxと、内部発光スペクトルSP0がピークPとなる波長に対応した強度変化率Dの極小値Dminとの差分値を「ΔD」とする。そして、波長λxにおける強度変化率Dを「Dx」とすると、図10に示すように、最大値Dmaxと強度変化率Dxとの差分値ΔDx(=Dmax−Dx)が、最大値Dmaxと極小値Dminとの差分値ΔD(=Dmax−Dmin)に対して、以下の式(2)を満たすような波長λxの範囲Δλが画定される。図10に示すように範囲Δλは強度変化率Dが極小値Dminとなる波長を含む。
ΔDx≧0.9×ΔD ……(2)
以上のように定義される範囲Δλ内の波長λxとなるように各単位素子Uの共振波長λが選定される。この構成によれば、共振器構造を構成する各層の膜厚に±10%程度の誤差が生じた場合であっても、各単位素子Uからの出射光の誤差を実用上において問題とならない程度に抑制できる。
【0050】
(2)変形例2
以上の各実施形態においては、第1電極21の膜厚の調整によって光学的距離Lを単位素子Uごとに相違させる構成を例示したが、光学的距離Lを制御するための方法はこれに限定されない。例えば、第1実施形態においては、発光体35を構成する各層の膜厚を単位素子Uごとに調整することによって光学的距離Lを単位素子Uごとに制御してもよい。また、第2実施形態においては、透光層16の有無やその膜厚を単位素子Uごとに選定することによって光学的距離Lを単位素子Uごとに制御してもよい。
【0051】
(3)変形例3
単位素子Uを構成する要素が複数の単位素子Uにわたって連続に形成されるか単位素子Uごとに相互に離間して形成されるかは適宜に変更される。例えば、各実施形態における第2電極22や第1実施形態における半透過反射層12は、単位素子Uごとに相互に離間して形成されてもよい。また、第2実施形態における反射層14や透光層16は、複数の単位素子Uにわたって(例えば基板10の全域にわたって)連続に分布していてもよい。
【0052】
(4)変形例4
第1実施形態においては第2電極22が共振器構造の反射層として兼用される構成を例示したが、第2電極22とは別個に反射層が形成された構成としてもよい。また、第2実施形態においては第2電極22が共振器構造の半透過反射層として兼用される構成を例示したが、第2電極22とは別個に反射層が形成された構成としてもよい。すなわち、相互に対向する第1反射層と第2反射層との間に発光層352が介在する構成であれば足りる。ただし、典型的な構成においては第1反射層および第2反射層の少なくとも一方に透過性(半透過反射性)が付与される。
【0053】
(5)変形例5
発光装置Dを構成する各部の材料や各々を製造する方法は任意に変更される。例えば、各実施形態においては有機EL材料からなる発光層352を例示したが、例えば無機EL材料からなる発光層を含む発光装置や、発光ダイオードを発光体に利用した発光装置にも、以上の各実施形態と同様に本発明が適用される。
【0054】
<D:応用例>
次に、本発明に係る発光装置を利用した電子機器について説明する。図11は、以上に説明した何れかの形態に係る発光装置Dを表示装置として採用したモバイル型のパーソナルコンピュータの構成を示す斜視図である。パーソナルコンピュータ2000は、表示装置としての発光装置Dと本体部2010とを備える。本体部2010には、電源スイッチ2001およびキーボード2002が設けられている。この発光装置Dは発光素子に有機EL材料を使用しているので、視野角が広く見易い画面を表示できる。
【0055】
図12に、実施形態に係る発光装置Dを適用した携帯電話機の構成を示す。携帯電話機3000は、複数の操作ボタン3001およびスクロールボタン3002、ならびに表示装置としての発光装置Dを備える。スクロールボタン3002を操作することによって、発光装置Dに表示される画面がスクロールされる。
【0056】
図13に、実施形態に係る発光装置Dを適用した携帯情報端末(PDA:Personal Digital Assistants)の構成を示す。情報携帯端末4000は、複数の操作ボタン4001および電源スイッチ4002、ならびに表示装置としての発光装置Dを備える。電源スイッチ4002を操作すると、住所録やスケジュール帳といった各種の情報が発光装置Dに表示される。
【0057】
なお、本発明に係る発光装置が適用される電子機器としては、図11から図13に示したもののほか、デジタルスチルカメラ、テレビ、ビデオカメラ、カーナビゲーション装置、ページャ、電子手帳、電子ペーパー、電卓、ワードプロセッサ、ワークステーション、テレビ電話、POS端末、プリンタ、スキャナ、複写機、ビデオプレーヤ、タッチパネルを備えた機器等などが挙げられる。また、本発明に係る発光装置の用途は画像の表示に限定されない。例えば、光書込み型のプリンタや電子複写機といった画像形成装置においては、用紙などの記録材に形成されるべき画像に応じて感光体を露光する書込みヘッドが使用されるが、この種の書込みヘッドとしても本発明の発光装置は利用される。
【図面の簡単な説明】
【0058】
【図1】本発明の第1実施形態に係る発光装置の構成を示す断面図である。
【図2】赤色の発光層の内部発光スペクトルとその強度変化率とを示すグラフである。
【図3】単位素子Urの出射光スペクトルを示すグラフである。
【図4】緑色の発光層の内部発光スペクトルとその強度変化率とを示すグラフである。
【図5】単位素子Ugの出射光スペクトルを示すグラフである。
【図6】青色の発光層の内部発光スペクトルとその強度変化率とを示すグラフである。
【図7】単位素子Ubの出射光スペクトルを示すグラフである。
【図8】本発明の第2実施形態に係る発光装置の構成を示す断面図である。
【図9】発光層の内部発光スペクトルとその強度変化率とを示すグラフである。
【図10】共振波長を選定する他の方法を説明するためのグラフである。
【図11】本発明に係る電子機器の具体的な形態を示す斜視図である。
【図12】本発明に係る電子機器の具体的な形態を示す斜視図である。
【図13】本発明に係る電子機器の具体的な形態を示す斜視図である。
【符号の説明】
【0059】
D……発光装置、10……基板、12……半透過反射層、14……反射層、16……透光層、21……第1電極、22……第2電極、32……バンク層、35……発光体、351……正孔輸送層、352(352r,352g,352b)……発光層、353……電子輸送層、SP0(SP0_R,SP0_G,SP0_B)……内部発光スペクトル、D(Dr,Dg,Db)……強度変化率、SPout(SPout_R,SPout_G,SPout_B)……出射光スペクトル。
【技術分野】
【0001】
本発明は、有機EL(Electro Luminescent)材料など各種の発光材料によって形成された発光層を発光させる技術に関する。
【背景技術】
【0002】
この種の発光層による出射光を共振させることによって、スペクトルのピーク幅が狭く強度が高い光を生成する技術が従来から提案されている。例えば特許文献1や特許文献2には、相互に対向する反射層と半透過反射層との間隙に発光層を介在させ、発光層からの出射光を反射層と半透過反射層との間で共振させる構造が開示されている。共振器構造における共振波長は、反射層と半透過反射層との光学的距離に応じた波長となる。この光学的距離は、例えば反射層と発光層との間に介在する電極の膜厚や屈折率に応じて決定される。
【特許文献1】特許第2797883号公報(段落0018および図1)
【特許文献2】特開2005−116516号公報(段落0041および図1)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ところで、共振器構造による共振を経て発光装置から出射する光の強度は、共振器構造を構成する各層の膜厚が僅かに設計値から相違するに過ぎない場合であっても大幅に変動する場合がある。したがって、所望の共振波長の成分を発光装置から所期の輝度で出射させるためには、共振器構造を構成する各層の寸法(特に膜厚)を極めて高い精度で制御することが要求される。しかしながら、このように高精度な膜厚の制御は製造技術上の理由から容易ではなく、たとえ可能であるとしてもその実現のためには製造コストの増大を避けることができないという問題がある。なお、特許文献1および特許文献2の何れにも、各層の膜厚に許容される誤差を拡大するという観点やこの課題を解決するための具体的な方策については言及されていない。本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、発光装置から出射される共振光の強度を所期値に維持するために各層に要求される膜厚の精度を緩和するという課題の解決を目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明に係る発光装置は、相互に対向して配置されて各々が光反射性を有する第1反射層および第2反射層と、第1反射層と第2反射層との間に介在する発光層とを具備する。この構成においては、発光層からの出射光を第1反射層と第2反射層との間で共振させる共振器構造が形成される。なお、第1反射層は、例えば、後掲の第1実施形態における半透過反射層12および第2電極22の一方、または、第2実施形態における反射層14および第2電極22の一方に相当する。第2電極は、例えば、第1実施形態における半透過反射層12および第2電極22の他方、または、第2実施形態における反射層14および第2電極22の他方に相当する。
【0005】
本発明の第1の特徴は、発光層による発光のスペクトルの強度変化率が当該スペクトルのピークに対応して略極小値となる波長を、共振器構造における共振波長として選定したことにある。本出願における「強度変化率」とは、波長の変化に対するスペクトルの強度の変化率の絶対値(すなわち各波長におけるスペクトルの接線の傾きの絶対値)である。
【0006】
第1の特徴に係る発光装置によれば、第1反射層と第2反射層との光学的距離(より具体的には第1反射層と第2反射層との間に介在する各層の膜厚)が所期値からズレた場合であっても、強度変化率の大小とは無関係に共振波長が選定された構成(例えば強度変化率が極小値とならない波長が共振波長とされた構成)と比較して、発光装置からの出射光の強度(さらには輝度)の変化を抑制することができる。
【0007】
本発明の第2の特徴は、発光層による発光のスペクトルの強度変化率の最大値Dmaxと波長λxでの強度変化率Dxとの差分値(Dmax−Dx)が、最大値Dmaxとスペクトルのピークに対応する強度変化率の極小値Dminとの差分値(Dmax−Dmin)に対して、(Dmax−Dx)≧0.9×(Dmax−Dmin)を満たす範囲内の波長λxとなるように、共振器構造における共振波長を選定したことにある(例えば図10参照)。この構成においては、第1の特徴に係る発光装置と同様に、発光層のスペクトルにおける強度変化率が略極小値となる波長を含む所定の範囲内の波長が共振器構造の共振波長として選定されているから、第1反射層と第2反射層との光学的距離が所期値からズレた場合であっても、発光装置からの出射光の強度の変化を抑制することができる。
【0008】
本発明における発光層は、各々が別個の波長に対応する第1のピークと第2のピークとが発光のスペクトルに現れる材料によって、複数の単位素子にわたって連続に分布するように形成された膜体であってもよい。この態様に係る第3の特徴は、複数の単位素子のうち第1の単位素子の共振器構造における共振波長が、スペクトルの強度変化率が第1のピークに対応して略極小値となる波長に選定され、複数の単位素子のうち第2の単位素子の共振器構造における共振波長が、スペクトルの強度変化率が第2のピークに対応して略極小値となる波長に選定されたことにある。この構成によれば、第1の単位素子および第2の単位素子の各々における共振波長が、発光層のスペクトルにおける強度変化率が略極小値となる波長に選定されているから、第1反射層と第2反射層との光学的距離が所期値からズレた場合であっても、第1の単位素子および第2の単位素子の各々からの出射光の強度の変化を抑制することができる。なお、第3の特徴に係る発光装置の具体例は第2実施形態として後述される。
【0009】
なお、本発明の第3の特徴に係る発光装置においては、第1の単位素子および第2の単位素子とは共振波長が相違する第3の単位素子を含む構成も採用される。この構成において、発光素子による発光のスペクトルが第1のピークや第2のピークとは波長が相違する第3のピークを含む場合には、第3の単位素子の共振波長を、スペクトルの強度変化率が第3のピークに対応して略極小値となる波長に選定することが望ましい。もっとも、発光素子の発光のスペクトルが第1のピークと第2のピークのみを含む場合(あるいは第3のピークに対応する波長が所望の波長とは相違する場合)には、第3の単位素子の共振波長を、スペクトルにおける強度変化率の大小とは無関係に所望の波長に選定してもよい。
【0010】
以上の各態様における発光層の発光のスペクトルの典型例は内部発光スペクトルである。この内部発光スペクトルは、発光層からの出射後に干渉や反射を経ていない光のスペクトルであり、例えば光励起による発光層の発光(フォトルミネセンス)のスペクトルや、透明な電極によって電界を印加したとき(すなわち干渉や反射が殆ど発生しないとき)の発光層の発光のスペクトルである。
【0011】
以上に例示した各態様の発光装置において、第1反射層は、光反射性と光透過性とを有する半透過反射層である。この構成によれば、共振器構造による共振光を第1反射層から確実に外部に出射させることができる。この態様における第1反射層(半透過反射層)の構造は任意であるが、例えば、各々の屈折率が相違する複数の光透過性の膜体を積層してなる構造(いわゆる誘電体ミラー)が好適に採用される。
【0012】
本発明の望ましい態様において、第1反射層を被覆する光透過性の透光層と、透光層と発光層との間に介在する光透過性の電極とが配置される。この態様においては、例えば電極の形成時(例えば導電膜の成膜時やそのパターニング時)における第1反射層の劣化や損傷を透光層によって防止することが可能である。そして、以上に説明したように、透光層や電極の膜厚にバラツキが発生した場合であっても、発光装置からの出射光の強度の変化を抑制することができる。
【0013】
本発明に係る発光装置は各種の電子機器に利用される。この電子機器の典型例は、発光装置を表示装置として利用した機器である。この種の電子機器としては、パーソナルコンピュータや携帯電話機などがある。もっとも、本発明に係る発光装置の用途は画像の表示に限定されない。例えば、光線の照射によって感光体ドラムなどの像担持体に潜像を形成するための露光装置(露光ヘッド)としても本発明の発光装置を適用することができる。また、例えば液晶パネルの背面に設置される照明装置(バックライト)としても本発明の発光装置を採用することができる。
【0014】
本発明は、以上に例示した各態様に係る発光装置を設計するための方法としても特定される。この方法は、相互に対向して配置されて各々が光反射性を有する第1反射層および第2反射層と、発光材料によって形成されて第1反射層と第2反射層との間に介在する発光層とを具備し、発光層からの出射光を第1反射層と第2反射層との間で共振させる共振器構造が形成された発光装置を設計する方法であって、発光材料による発光のスペクトルを測定する第1過程と、第1過程で測定したスペクトルの強度変化率が当該スペクトルのピークに対応して略極小値となる波長を、共振器構造における共振波長として選定する第2過程と、第1反射層と第2反射層との光学的距離を、第2過程で選定した共振波長に対応する光学的距離に選定する第3過程とを含む。この方法によって設計された発光装置によれば、第1反射層と第2反射層との光学的距離が所期値からズレた場合であっても、発光装置からの出射光の強度の変化を抑制することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
<A:第1実施形態>
図1は、本発明の第1実施形態に係る発光装置の構成を示す断面図である。同図に示すように、発光装置Dは、基板10の表面上にマトリクス状に配列された複数の単位素子U(Ur,Ug,Ub)を有する。各単位素子Uは、複数の色彩(赤色,緑色,青色)の何れかに対応した波長の光を発生する要素である。すなわち、単位素子Urは赤色光(R)を出射し、単位素子Ugは緑色光(G)を出射し、単位素子Ubは青色光(B)を出射する。本実施形態の発光装置Dは、各単位素子Uにて発生した光が基板10を透過して出射するボトムエミッション型である。したがって、ガラスやプラスチックなど光透過性を有する板状の部材が基板10として好適に採用される。なお、単位素子Uは板状の封止材によって基板10上に封止されてもよい。
【0016】
各単位素子Uは発光体35を含む。各発光体35は、正孔輸送層351と発光層352(352r,352g,352b)と電子輸送層353とが基板10側からこの順番に積層された構造となっている。発光層352は電界の印加によって発光する発光材料からなる。本実施形態における発光層352は、単位素子Uの発光色ごとに別個の発光材料によって形成される。すなわち、単位素子Urの発光体35は赤色光を発光する発光層352rを含み、単位素子Ugの発光体35は緑色光を発光する発光層352gを含み、単位素子Ubの発光体35は青色光を発光する発光層352bを含む。
【0017】
なお、発光体35の構造は以上の例示に限定されない。例えば、図1に示した各層に正孔注入層または電子注入層が追加された構成や、図1に示した正孔輸送層351や電子輸送層353が省略された構成としてもよい。すなわち、発光体35は少なくとも発光層352を含んでいれば足りる。
【0018】
図1に示すように、基板10の表面は半透過反射層12によって被覆される。この半透過反射層12は、発光体35から出射して表面に到達した光量の一部を発光体35側に反射させるとともに他の一部を基板10側に透過させる性質(半透過反射性)を備えた膜体であり、基板10の全域にわたって連続に分布する。半透過反射層12は、例えば、各々が屈折率の相違する光透過性の材料からなる複数の膜体を積層した構造(誘電体ミラー)となっている。各膜体の材料としては、窒化珪素(SiN)や酸化珪素(SiO2)・酸窒化珪素(SiON)・酸化チタン(TiO2)など各種の材料が好適に採用される。本実施形態の半透過反射層12は、酸化珪素からなる第1層121と窒化珪素からなる第2層122とを交互に積層した構造となっている。
【0019】
半透過反射層12の表面上には第1電極21が単位素子Uごとに相互に離間して形成される。各第1電極21は、ITO(Indium Tin Oxide)やIZO(Indium Zinc Oxide)など光透過性の導電材料によって形成された電極であり、発光体35の陽極として機能する。これらの第1電極21が形成された半透過反射層12の表面上にはバンク層32が形成される。このバンク層32は、基板10の表面上の空間を単位素子Uごとに仕切る形状(格子状)の隔壁であり、例えばアクリル系やエポキシ系といった樹脂材料または酸化珪素や窒化珪素といった無機材料など各種の絶縁材料によって形成される。各発光体35は、バンク層32の内壁に包囲されて第1電極21を底面とする空間(凹部)内に形成される。
【0020】
各発光体35は第2電極22によって被覆される。この第2電極22は、複数の単位素子Uにわたって連続に分布する膜体であり、発光体35の陰極として機能する。本実施形態における第2電極22は、光反射性を有する材料によって形成され、基板10とは反対側に向かって進行する光を基板10側に反射させる反射層として兼用される。第2電極22の材料としては、例えばアルミニウム(Al)や銀(Ag)といった単体金属、またはこれらの金属を主成分とする合金などが好適に採用される。
【0021】
各単位素子Uは、半透過反射層12と第1電極21と発光体35と第2電極22とを含む要素である。各単位素子Uにおいては、半透過反射層12と第2電極22との間で発光層352からの出射光を共振させる共振器構造が形成される。すなわち、発光体35の発光層352による出射光は半透過反射層12と第2電極22との間で往復し、共振器構造における共振波長の成分のみが多重干渉によって選択的に増幅されたうえで半透過反射層12を透過して出射する。このように共振を利用した構造によれば、スペクトルのピーク幅が狭く強度が高い光を発光装置Dから出射させることができる。
【0022】
共振器構造における共振波長λは、例えば以下の式(1)で表現されるように、半透過反射層12と第2電極22との光学的距離Lに応じて決定される。ただし、式(1)における「Φ(rad)」は、共振器構造の両端部にて発生する位相シフトであり、より具体的には、半透過反射層12の表面で反射するときの位相シフト「Φ1(rad)」と第2電極22の表面で反射するときの位相シフト「Φ2(rad)」との和(=Φ1+Φ2)である。また、「m」は光学的距離Lが正となる整数である。
(2L)/λ+Φ/2π=m ……(1)
各単位素子Uから出射されるべき所望の共振波長λを式(1)に代入することによって、この共振波長λによる光共振を実現するための光学的距離Lが単位素子Uごとに決定される。そして、ここで決定された光学的距離Lが得られるように、半透過反射層12と第2電極22との間に介在する各層の膜厚や材料が決定される。図1に例示された構成においては、第1電極21の膜厚の調整によって光学的距離L(さらには共振波長λ)を単位素子Uの発光色ごとに相違させる構成となっている。すなわち、単位素子Urの第1電極21は単位素子Ugの第1電極21よりも厚く、単位素子Ugの第1電極21は単位素子Ubの第1電極21よりも厚い。
【0023】
さらに、光学的距離Lの算定の基礎となる各単位素子Uの共振波長λは、その単位素子Uの発光層352(352r,352g,352b)を構成する発光材料の発光のスペクトルに応じて決定される。本実施形態における共振波長λの選定の方法について詳述すると以下の通りである。
【0024】
図2は、赤色の単位素子Urの発光層352rを構成する発光材料(以下「赤色発光材料」という)の発光のスペクトルを示すグラフである。同図においては横軸に波長(nm)が示されるとともに縦軸に強度(任意スケール)が示されている。同図に示されるスペクトルSP0_Rは、赤色発光材料からの出射後に反射や干渉を経ていない光(すなわち赤色発光材料から出射した直後の光)のスペクトルである。以下ではこのスペクトルを、半透過反射層12と第2電極22との間隙における共振(干渉)を経て基板10側から出射する光のスペクトルと区別するために特に「内部発光スペクトル」と表記する。
【0025】
図2に示した内部発光スペクトルSP0_Rは、光学的な励起(例えば紫外線の照射による励起)に起因した赤色発光材料の発光(フォトルミネセンス)を観察することによって特定される。すなわち、第1に、光透過性の板材の表面に蒸着などの成膜技術によって形成された赤色発光材料の膜体(あるいは板材の表面に散布された赤色発光材料の粉末)が用意され、第2に、この膜体に対して紫外線などの特定の波長の光が照射される。第3に、この照射による光励起で膜体から放射された光を公知の方法で測定および解析することによって内部発光スペクトルSP0_Rが特定される。したがって、半透過反射層12と第2電極22との間隙における共振(干渉)を経て発光装置Dの基板10側から出射した光のスペクトルとは異なり、内部発光スペクトルSP0_Rは、発光装置Dの各部の寸法や材質に依存せず、赤色発光材料の種類のみに応じて固有に形状が定まる。図2に示すように、本実施形態における赤色発光材料の内部発光スペクトルSP0_Rは、650nm程度の波長において強度のピークが現れる。
【0026】
なお、ここでは光励起による発光の観察によって内部発光スペクトルSP0_Rを測定する場合を例示したが、内部発光スペクトルSP0_Rを特定するための方法はこれに限定されない。例えば、赤色発光材料の膜体を一対の透明電極(例えばITOからなる電極)で挟持した構造を作成し、これらの電極で電界を印加したときの赤色発光材料からの出射光を測定してもよい。この方法によっても、赤色発光材料からの出射後に反射や干渉を経ていない光の内部発光スペクトルSP0_Rを特定することができる。
【0027】
さて、図2には、内部発光スペクトルSP0_Rにおける波長の変化に対する強度の変化率(すなわち内部発光スペクトルSP0_Rの各波長における接線の傾き)の絶対値である強度変化率Drが内部発光スペクトルSP0_Rに併記されている。本実施形態における単位素子Urの共振波長λは、赤色発光材料の内部発光スペクトルSP0_Rの強度変化率Drがそのピークに対応して略極小値(最小値)となる波長に選定される。例えば、図2に示された内部発光スペクトルSP0_Rでは660nm程度の波長において強度変化率Drが極小値(ゼロ)となる。したがって、本実施形態においては、単位素子Urの共振波長λが660nmに決定されたうえで、半透過反射層12と第2電極22との間の光学的距離Lがこの共振波長λに応じた数値となるように各部の膜厚や材料(屈折率)が選定される。以上のように強度変化率Drに応じて共振波長λ(さらには光学的距離L)を選定することによって、単位素子Urからの出射光を所期の輝度に確保するために各層の膜厚に要求される精度を緩和することができる(すなわち許容誤差を拡大することができる)という効果が奏される。この効果について詳述すると以下の通りである。
【0028】
図3に図示されたスペクトルSPout_Rは、以上の手順で共振波長λが決定された単位素子Urから基板10を透過して出射した光(すなわち共振器構造での共振を経た光)のスペクトル(以下「出射光スペクトル」という)である。また、図3に図示されたスペクトルSPcは、内部発光スペクトルSP0_Rの強度変化率Drが極小値とならない波長(ここでは615nm)が共振波長λに選定された構成(以下「対比構成」という)での出射光スペクトルである。なお、図3には、図2に示した内部発光スペクトルSP0_Rが参考のために併記されている。
【0029】
また、図3に図示された各スペクトルSPout_R[10]は、半透過反射層12と第2電極22との間に介在する各層の膜厚に、所期の寸法(すなわち出射光スペクトルSPout_Rが得られる構成における各層の寸法)と比較して±10%の誤差が発生した場合の出射光スペクトルである。一方、図3の図示された各スペクトルSPc[10]は、対比構成のもとで各層の膜厚に±10%の誤差が発生した場合の出射光スペクトルである。
【0030】
図3に示されるように、本実施形態のように強度変化率Drが極小値となる波長を共振波長λとした構成においては、強度変化率Drが極小値とならない波長を共振波長λとした対比構成と比較して、各層の膜厚に誤差が発生したときの出射光の強度の変動が低減される。より具体的には、対比構成のもとで各層の膜厚に±10%の誤差が生じると、単位素子Urからの出射光の輝度(図3に示した強度と人間の視感度との乗算値)が±23%程度の範囲で変動するのに対し、本実施形態の構成のもとで各層の膜厚に±10%の誤差が生じた場合、単位素子Urからの出射光の輝度の変動量は±10%程度の範囲に抑制される。換言すると、単位素子Urからの出射光について所期の輝度を得るために各層に許容される膜厚の誤差は、本実施形態の構成のほうが対比構成よりも大きい。このように、本実施形態によれば、各層の膜厚に要求される精度が緩和されるから、製造コストの低減や歩留まりの向上を実現することができる。
【0031】
なお、以上においては赤色の単位素子Urについて説明したが、単位素子Ugや単位素子Ubについても同様の手順で共振波長λ(さらには光学的距離L)を決定することができる。具体的には以下の通りである。
【0032】
図4は、単位素子Ugの発光層352gの内部発光スペクトルSP0_Gとその強度変化率Dgとを示すグラフである。同図に示されるように、内部発光スペクトルSP0_Gには530nm程度の波長に強度のピークが現れる。一方、このピークに対応して強度変化率Dgが極小値となる波長は570nm程度である。したがって、単位素子Ugの共振波長λは570nmに選定され、この共振波長λから式(1)に基づいて単位素子Ugの光学的距離Lが決定される。
【0033】
図5は、共振波長λが570nmに選定された単位素子Ugの出射光スペクトルSPout_Gと、共振器構造を構成する各層の寸法に±10%の誤差が発生したときの出射光スペクトルSPout_G[10]を示すグラフである。同図に示すように、単位素子Ugの共振波長λを570nmに選定した場合には、単位素子Urの場合と同様に、各層の膜厚に±10%程度の誤差が生じた場合であっても単位素子Ugからの出射光の強度の変動は±10%程度の範囲に抑制される。
【0034】
次に、図6は、単位素子Ubの発光層352bの内部発光スペクトルSP0_Bとその強度変化率Dbとを示すグラフである。単位素子Ubの共振波長λは、内部発光スペクトルSP0_Bのピーク(波長:465nm)に対応して強度変化率Dbが極小値となる波長である470nmとされる。図7は、このときの単位素子Ubの出射光スペクトルSPout_Bと、共振器構造の各層の膜厚に±10%の誤差が発生しときの出射光スペクトルSPout_B[10]を示すグラフである。同図に示すように、単位素子Ubについても出射光の強度の変動は±10%程度に抑制される。
【0035】
<B:第2実施形態>
次に、図8を参照して、本発明の第2実施形態に係る発光装置Dの構成を説明する。なお、本実施形態のうち第1実施形態と同様の要素については共通の符号を付してその説明を適宜に省略する。
【0036】
図8に示されるように、本実施形態における基板10の表面上には複数の反射層14が形成される。これらの反射層14は、例えば各単位素子Uの配列に沿うようにストライプ状に形成される。各反射層14は光反射性を有する材料によって形成される。この種の材料としては、アルミニウムや銀などの単体金属、またはこれらの金属を主成分とする合金などが好適に採用される。
【0037】
反射層14の表面および側端面(エッジ部分)は透光層16によって被覆される。この透光層16は、光透過性を有する絶縁性の材料によって形成された膜体である。このような材料としては、アクリル系やエポキシ系といった樹脂材料または酸化珪素(SiOx)や窒化珪素(SiNx)といった無機材料などが好適に採用される。
【0038】
発光体35の陽極として機能する第1電極21は、単位素子Uごとに相互に離間するように透光層16の表面上に形成される。この第1電極21は、基板10の全域を被覆する光透過性の導電膜をフォトリソグラフィ技術やエッチング技術によってパターニングすることによって形成される。透光層16が形成されていない構成においては、この第1電極21の形成に際して反射層14が劣化(酸化)または損傷する可能性がある。本実施形態においては、反射層14が透光層16によって被覆されているから、第1電極21の形成時(成膜時やパターニング時)における反射層14の劣化や損傷が有効に防止される。
【0039】
第1実施形態においては、各発光色の単位素子Uごとに別個の材料によって発光層352が形成された構成を例示した。これに対し、本実施形態においては、図8に示されるように、発光体35を構成する各層(正孔輸送層351・発光層352および電子輸送層353)が複数の単位素子Uにわたって連続に分布する構成となっている。したがって、発光層352の特性(例えば内部発光スペクトル)自体は複数の単位素子Uについて共通である。
【0040】
発光体35の陰極として機能する第2電極22は、第1実施形態と同様に、複数の単位素子Uにわたって連続に分布するとともに発光体35を挟んで第1電極21と対向する導電性の膜体である。ただし、本実施形態における第2電極22は、基板10側から到達した光の一部を透過させるとともに他の一部を反射させる半透過反射層として機能する。すなわち、本実施形態の発光装置Dは、発光体35からの出射光が共振後に基板10とは反対側(図8の上方)に出射するトップエミッション型である。したがって、基板10に光透過性は要求されない。
【0041】
このように半透過反射性を備えた電極は、光反射性を有する導電材料を充分に薄く形成することによって作成される。この種の材料としては、アルミニウムや銀などの単体金属やこれらの材料を主成分とする合金などが好適に採用される。例えば本実施形態の第2電極22は、各々が充分に薄く形成されたマグネシウム(Mg)および銀(Ag)の膜体を相互に積層した構造となっている。もっとも、第2電極22はITOやIZOなど光透過性を有する導電材料によって形成されてもよい。この種の材料によって第2電極22が形成されていても、第2電極22の表面上の屈折率が第2電極22よりも低い構成とすれば、第2電極22の表面において光の一部が透過するとともに他の一部が反射するから、第2電極22を半透過反射層として機能させることができる。
【0042】
次に、図9は、発光層352の内部発光スペクトルを示す図である。同図に示されるように、本実施形態の発光層352の内部発光スペクトルSP0は、465nm程度の波長(青色)における強度のピークP1と600nm程度の波長(黄色ないしオレンジ色)における強度のピークP2とを含む。このような特性の発光層352は、例えば、465nm程度の波長に内部発光スペクトルの強度のピークが現れる発光材料と、600nm程度の波長に内部発光スペクトルの強度のピークが現れる発光材料とを積層することによって形成される。
【0043】
また、図9には、内部発光スペクトルSP0の強度変化率Dが併記されている。同図に示されるように、本実施形態における発光層352の強度変化率Dは、波長λb(470nm程度)においてピークP1に対応して極小値となり、波長λr(620nm程度)においてピークP2に対応して極小値となる。したがって、反射層14と第2電極22との間の光学的距離Lは、単位素子Ubにおいては共振波長が波長λbとなるように決定され、単位素子Urにおいては共振波長が波長λrとなるように決定される。また、単位素子Ugについては、共振波長が波長λg(540nm程度)となるように光学的距離Lが決定される。この波長λgは、図9に示すように、ピークP1とピークP2との間のディップ(谷)に対応して強度変化率Dが極小値となる波長である。
【0044】
本実施形態においては、第1実施形態と同様に、第1電極21の膜厚の調整によって、反射層14と第2電極22との間の光学的距離Lが所望の共振波長λに対応した数値に制御される。各単位素子Uの共振波長(λr,λg,λb)は以上の手順で決定されるから、図8に示すように、単位素子Urの第1電極21は単位素子Ugの第1電極21の膜厚(例えば100nm)よりも厚い膜厚(例えば150nm)に形成され、単位素子Ugの第1電極21は単位素子Ubの第1電極21の膜厚(例えば50nm)よりも厚く形成される。
【0045】
本実施形態においては、発光体35が複数の単位素子Uにわたって共通するから、各発光色の単位素子Uごとに別個の材料によって発光体35(特に発光層352)が形成される構成と比較して、製造工程が簡素化されるとともに製造コストが低減される。しかも、本実施形態においては、強度変化率Dが極小値となる波長が各単位素子Uの共振波長λとして選定されるから、反射層14と第2電極22との間に介在する各層の膜厚に誤差が生じた場合であっても、各単位素子Uからの出射光の強度の変動は低減される。すなわち、各単位素子Uからの出射光を所期の輝度に維持するために各層の膜厚に要求される精度が緩和されるから、この観点からしても製造コストの低減や歩留まりの向上を実現することができる。
【0046】
なお、本実施形態においては、発光層352の内部発光スペクトルが2個のピーク(P1・P2)のみを含む場合を例示したが、これらのピークに加えて緑色に対応する波長(例えば540nm程度)でのピークP3を含む発光層352を利用してもよい。この構成において単位素子Ugの共振波長λは、強度変化率DがピークP3に対応して極小値となる波長に選定される。
【0047】
<C:変形例>
以上の各形態には様々な変形を加えることができる。具体的な変形の態様を例示すれば以下の通りである。なお、以下の各態様を適宜に組み合わせてもよい。
【0048】
(1)変形例1
以上の各実施形態においては、内部発光スペクトルSP0(SP0_R,SP0_G,SP0_B)の強度変化率D(Dr,Dg,Db)がピークに対応して極小値となる波長を単位素子Uの共振波長λとして選定したが、各単位素子Uの共振波長λは、強度変化率Dが極小値となる波長に必ずしも一致している必要はなく、強度変化率Dが極小値となる波長を含む所定の範囲内の波長に選定されていればよい。
【0049】
例えばいま、図10に示すように、強度変化率Dの最大値Dmaxと、内部発光スペクトルSP0がピークPとなる波長に対応した強度変化率Dの極小値Dminとの差分値を「ΔD」とする。そして、波長λxにおける強度変化率Dを「Dx」とすると、図10に示すように、最大値Dmaxと強度変化率Dxとの差分値ΔDx(=Dmax−Dx)が、最大値Dmaxと極小値Dminとの差分値ΔD(=Dmax−Dmin)に対して、以下の式(2)を満たすような波長λxの範囲Δλが画定される。図10に示すように範囲Δλは強度変化率Dが極小値Dminとなる波長を含む。
ΔDx≧0.9×ΔD ……(2)
以上のように定義される範囲Δλ内の波長λxとなるように各単位素子Uの共振波長λが選定される。この構成によれば、共振器構造を構成する各層の膜厚に±10%程度の誤差が生じた場合であっても、各単位素子Uからの出射光の誤差を実用上において問題とならない程度に抑制できる。
【0050】
(2)変形例2
以上の各実施形態においては、第1電極21の膜厚の調整によって光学的距離Lを単位素子Uごとに相違させる構成を例示したが、光学的距離Lを制御するための方法はこれに限定されない。例えば、第1実施形態においては、発光体35を構成する各層の膜厚を単位素子Uごとに調整することによって光学的距離Lを単位素子Uごとに制御してもよい。また、第2実施形態においては、透光層16の有無やその膜厚を単位素子Uごとに選定することによって光学的距離Lを単位素子Uごとに制御してもよい。
【0051】
(3)変形例3
単位素子Uを構成する要素が複数の単位素子Uにわたって連続に形成されるか単位素子Uごとに相互に離間して形成されるかは適宜に変更される。例えば、各実施形態における第2電極22や第1実施形態における半透過反射層12は、単位素子Uごとに相互に離間して形成されてもよい。また、第2実施形態における反射層14や透光層16は、複数の単位素子Uにわたって(例えば基板10の全域にわたって)連続に分布していてもよい。
【0052】
(4)変形例4
第1実施形態においては第2電極22が共振器構造の反射層として兼用される構成を例示したが、第2電極22とは別個に反射層が形成された構成としてもよい。また、第2実施形態においては第2電極22が共振器構造の半透過反射層として兼用される構成を例示したが、第2電極22とは別個に反射層が形成された構成としてもよい。すなわち、相互に対向する第1反射層と第2反射層との間に発光層352が介在する構成であれば足りる。ただし、典型的な構成においては第1反射層および第2反射層の少なくとも一方に透過性(半透過反射性)が付与される。
【0053】
(5)変形例5
発光装置Dを構成する各部の材料や各々を製造する方法は任意に変更される。例えば、各実施形態においては有機EL材料からなる発光層352を例示したが、例えば無機EL材料からなる発光層を含む発光装置や、発光ダイオードを発光体に利用した発光装置にも、以上の各実施形態と同様に本発明が適用される。
【0054】
<D:応用例>
次に、本発明に係る発光装置を利用した電子機器について説明する。図11は、以上に説明した何れかの形態に係る発光装置Dを表示装置として採用したモバイル型のパーソナルコンピュータの構成を示す斜視図である。パーソナルコンピュータ2000は、表示装置としての発光装置Dと本体部2010とを備える。本体部2010には、電源スイッチ2001およびキーボード2002が設けられている。この発光装置Dは発光素子に有機EL材料を使用しているので、視野角が広く見易い画面を表示できる。
【0055】
図12に、実施形態に係る発光装置Dを適用した携帯電話機の構成を示す。携帯電話機3000は、複数の操作ボタン3001およびスクロールボタン3002、ならびに表示装置としての発光装置Dを備える。スクロールボタン3002を操作することによって、発光装置Dに表示される画面がスクロールされる。
【0056】
図13に、実施形態に係る発光装置Dを適用した携帯情報端末(PDA:Personal Digital Assistants)の構成を示す。情報携帯端末4000は、複数の操作ボタン4001および電源スイッチ4002、ならびに表示装置としての発光装置Dを備える。電源スイッチ4002を操作すると、住所録やスケジュール帳といった各種の情報が発光装置Dに表示される。
【0057】
なお、本発明に係る発光装置が適用される電子機器としては、図11から図13に示したもののほか、デジタルスチルカメラ、テレビ、ビデオカメラ、カーナビゲーション装置、ページャ、電子手帳、電子ペーパー、電卓、ワードプロセッサ、ワークステーション、テレビ電話、POS端末、プリンタ、スキャナ、複写機、ビデオプレーヤ、タッチパネルを備えた機器等などが挙げられる。また、本発明に係る発光装置の用途は画像の表示に限定されない。例えば、光書込み型のプリンタや電子複写機といった画像形成装置においては、用紙などの記録材に形成されるべき画像に応じて感光体を露光する書込みヘッドが使用されるが、この種の書込みヘッドとしても本発明の発光装置は利用される。
【図面の簡単な説明】
【0058】
【図1】本発明の第1実施形態に係る発光装置の構成を示す断面図である。
【図2】赤色の発光層の内部発光スペクトルとその強度変化率とを示すグラフである。
【図3】単位素子Urの出射光スペクトルを示すグラフである。
【図4】緑色の発光層の内部発光スペクトルとその強度変化率とを示すグラフである。
【図5】単位素子Ugの出射光スペクトルを示すグラフである。
【図6】青色の発光層の内部発光スペクトルとその強度変化率とを示すグラフである。
【図7】単位素子Ubの出射光スペクトルを示すグラフである。
【図8】本発明の第2実施形態に係る発光装置の構成を示す断面図である。
【図9】発光層の内部発光スペクトルとその強度変化率とを示すグラフである。
【図10】共振波長を選定する他の方法を説明するためのグラフである。
【図11】本発明に係る電子機器の具体的な形態を示す斜視図である。
【図12】本発明に係る電子機器の具体的な形態を示す斜視図である。
【図13】本発明に係る電子機器の具体的な形態を示す斜視図である。
【符号の説明】
【0059】
D……発光装置、10……基板、12……半透過反射層、14……反射層、16……透光層、21……第1電極、22……第2電極、32……バンク層、35……発光体、351……正孔輸送層、352(352r,352g,352b)……発光層、353……電子輸送層、SP0(SP0_R,SP0_G,SP0_B)……内部発光スペクトル、D(Dr,Dg,Db)……強度変化率、SPout(SPout_R,SPout_G,SPout_B)……出射光スペクトル。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
相互に対向して配置されて各々が光反射性を有する第1反射層および第2反射層と、前記第1反射層と前記第2反射層との間に介在する発光層とを具備し、前記発光層からの出射光を前記第1反射層と前記第2反射層との間で共振させる共振器構造が形成された発光装置であって、
前記共振器構造における共振波長は、前記発光層による発光のスペクトルの強度変化率が当該スペクトルのピークに対応して略極小値となる波長である
ことを特徴とする発光装置。
【請求項2】
相互に対向して配置されて各々が光反射性を有する第1反射層および第2反射層と、前記第1反射層と前記第2反射層との間に介在する発光層とを具備し、前記発光層からの出射光を前記第1反射層と前記第2反射層との間で共振させる共振器構造が形成された発光装置であって、
前記発光層による発光のスペクトルの強度変化率の最大値Dmaxと波長λxでの強度変化率Dxとの差分値(Dmax−Dx)と、前記最大値Dmaxと前記スペクトルのピークに対応する強度変化率の極小値Dminとの差分値(Dmax−Dmin)とが、(Dmax−Dx)≧0.9×(Dmax−Dmin)を満たすように決定された波長λxが、前記共振器構造における共振波長である
ことを特徴とする発光装置。
【請求項3】
相互に対向して配置されて各々が光反射性を有する第1反射層および第2反射層と、前記第1反射層と前記第2反射層との間に介在する発光層とを各々が含む複数の単位素子を具備し、前記発光層からの出射光を前記第1反射層と前記第2反射層との間で共振させる共振器構造が前記各単位素子に形成された発光装置であって、
前記発光層は、別個の波長に対応する第1のピークと第2のピークとが発光のスペクトルに現れる材料によって形成され、前記複数の単位素子にわたって連続に分布する膜体であり、
前記複数の単位素子のうち第1の単位素子の共振器構造における共振波長は、前記スペクトルの強度変化率が前記第1のピークに対応して略極小値となる波長に選定され、前記複数の単位素子のうち前記第2の単位素子の共振器構造における共振波長は、前記スペクトルの強度変化率が前記第2のピークに対応して略極小値となる波長である
ことを特徴とする発光装置。
【請求項4】
第1反射層は、光反射性と光透過性とを有する半透過反射層である
ことを特徴とする請求項1から請求項3の何れかに記載の発光装置。
【請求項5】
前記第1反射層は、各々の屈折率が相違する複数の光透過性の膜体を積層してなる
ことを特徴とする請求項4に記載の発光装置。
【請求項6】
第1反射層を被覆する透光層と、
前記透光層と前記発光層との間に介在する光透過性の電極と
を有することを特徴とする請求項1から請求項3の何れかに記載の発光装置。
【請求項7】
請求項1から請求項6の何れかに記載の発光装置を具備する電子機器。
【請求項8】
相互に対向して配置されて各々が光反射性を有する第1反射層および第2反射層と、発光材料によって形成されて前記第1反射層と前記第2反射層との間に介在する発光層とを具備し、前記発光層からの出射光を前記第1反射層と前記第2反射層との間で共振させる共振器構造が形成される発光装置を設計する方法であって、
前記発光材料による発光のスペクトルを測定する第1過程と、
前記第1過程で測定した前記スペクトルの強度変化率が当該スペクトルのピークに対応して略極小値となる波長を、前記共振器構造における共振波長として選定する第2過程と、
前記第1反射層と前記第2反射層との光学的距離を、前記第2過程で選定した共振波長に対応する光学的距離に選定する第3過程と
を有する発光装置の設計方法。
【請求項1】
相互に対向して配置されて各々が光反射性を有する第1反射層および第2反射層と、前記第1反射層と前記第2反射層との間に介在する発光層とを具備し、前記発光層からの出射光を前記第1反射層と前記第2反射層との間で共振させる共振器構造が形成された発光装置であって、
前記共振器構造における共振波長は、前記発光層による発光のスペクトルの強度変化率が当該スペクトルのピークに対応して略極小値となる波長である
ことを特徴とする発光装置。
【請求項2】
相互に対向して配置されて各々が光反射性を有する第1反射層および第2反射層と、前記第1反射層と前記第2反射層との間に介在する発光層とを具備し、前記発光層からの出射光を前記第1反射層と前記第2反射層との間で共振させる共振器構造が形成された発光装置であって、
前記発光層による発光のスペクトルの強度変化率の最大値Dmaxと波長λxでの強度変化率Dxとの差分値(Dmax−Dx)と、前記最大値Dmaxと前記スペクトルのピークに対応する強度変化率の極小値Dminとの差分値(Dmax−Dmin)とが、(Dmax−Dx)≧0.9×(Dmax−Dmin)を満たすように決定された波長λxが、前記共振器構造における共振波長である
ことを特徴とする発光装置。
【請求項3】
相互に対向して配置されて各々が光反射性を有する第1反射層および第2反射層と、前記第1反射層と前記第2反射層との間に介在する発光層とを各々が含む複数の単位素子を具備し、前記発光層からの出射光を前記第1反射層と前記第2反射層との間で共振させる共振器構造が前記各単位素子に形成された発光装置であって、
前記発光層は、別個の波長に対応する第1のピークと第2のピークとが発光のスペクトルに現れる材料によって形成され、前記複数の単位素子にわたって連続に分布する膜体であり、
前記複数の単位素子のうち第1の単位素子の共振器構造における共振波長は、前記スペクトルの強度変化率が前記第1のピークに対応して略極小値となる波長に選定され、前記複数の単位素子のうち前記第2の単位素子の共振器構造における共振波長は、前記スペクトルの強度変化率が前記第2のピークに対応して略極小値となる波長である
ことを特徴とする発光装置。
【請求項4】
第1反射層は、光反射性と光透過性とを有する半透過反射層である
ことを特徴とする請求項1から請求項3の何れかに記載の発光装置。
【請求項5】
前記第1反射層は、各々の屈折率が相違する複数の光透過性の膜体を積層してなる
ことを特徴とする請求項4に記載の発光装置。
【請求項6】
第1反射層を被覆する透光層と、
前記透光層と前記発光層との間に介在する光透過性の電極と
を有することを特徴とする請求項1から請求項3の何れかに記載の発光装置。
【請求項7】
請求項1から請求項6の何れかに記載の発光装置を具備する電子機器。
【請求項8】
相互に対向して配置されて各々が光反射性を有する第1反射層および第2反射層と、発光材料によって形成されて前記第1反射層と前記第2反射層との間に介在する発光層とを具備し、前記発光層からの出射光を前記第1反射層と前記第2反射層との間で共振させる共振器構造が形成される発光装置を設計する方法であって、
前記発光材料による発光のスペクトルを測定する第1過程と、
前記第1過程で測定した前記スペクトルの強度変化率が当該スペクトルのピークに対応して略極小値となる波長を、前記共振器構造における共振波長として選定する第2過程と、
前記第1反射層と前記第2反射層との光学的距離を、前記第2過程で選定した共振波長に対応する光学的距離に選定する第3過程と
を有する発光装置の設計方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公開番号】特開2007−52971(P2007−52971A)
【公開日】平成19年3月1日(2007.3.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−236331(P2005−236331)
【出願日】平成17年8月17日(2005.8.17)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成19年3月1日(2007.3.1)
【国際特許分類】
【出願日】平成17年8月17日(2005.8.17)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】
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