説明

発光装置、及びこれを用いた照明光源、表示装置ならびに電子機器

【課題】赤色蛍光体、青色固体発光素子、及び緑色固体発光素子を用いて、光の色調制御が容易な三波長形白色発光装置を提供する。
【解決手段】420nm以上480nm未満の波長領域に発光ピークを持つ青色光を発する青色固体発光素子と、当該青色固体発光素子を覆い、600nm以上680nm未満の波長領域に発光ピークを持つ赤色光を発する第1の赤色蛍光体を含む第1の赤色蛍光体層とを有する第1の半導体発光体素子、及び500nm以上550nm未満の波長領域に発光ピークを持つ緑色光を発する緑色固体発光素子と、当該緑色固体発光素子を覆い、600nm以上680nm未満の波長領域に発光ピークを持つ赤色光を発する第2の赤色蛍光体を含む第2の赤色蛍光体層とを有する第2の半導体発光体素子を備える発光装置とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、固体発光素子及び蛍光体を利用する発光装置に関する。本発明はまた、当該発光装置を用いたバックライト等の照明光源に関し、さらに、当該バックライトを用いた表示装置、及び当該表示装置を用いた電子機器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、照明光や表示装置用バックライト光として利用し得る三波長形の白色光を放つ発光装置(以後、三波長形白色発光装置と記する)には、発光ダイオード(以後、LEDと記する)等の固体発光素子と蛍光体とを組み合わせた発光装置が用いられている。
【0003】
当該発光装置では、固体発光素子が蛍光体層で覆われた構成が取られており、固体発光素子が放った光の一部は、蛍光体によって波長変換される。当該発光装置は、固体発光素子と蛍光体の種類を適切に選択することにより、固体発光素子の発光と蛍光体の発光で、光の三原色となる、赤、緑、青の各光成分が放たれるように設計されている。LED光は強い指向性を有するが、当該発光装置では、LEDが蛍光体層で覆われることにより、指向性を弱めることができる。
【0004】
上記の発光装置の一例として、特許文献1には、青色LED素子と緑色蛍光体の組み合わせによって青緑色光を出射する青緑色LEDランプと、青色LED素子と赤色蛍光体の組み合わせによって紫色光を出射する紫色LEDランプとを備える白色LED光源装置を備えるLEDバックライトが開示されている。このLEDバックライトにおいては、青緑色LEDランプからの青緑色光と紫色LEDランプからの紫色光との加法混色によって光の三原色の波長成分を含むスペクトル分布を有する白色光が生成される。
【0005】
また、例えば、特許文献2及び3に記載されているような、青色光をLEDが放ち、緑色光と赤色光を、各々、緑色蛍光体と赤色蛍光体が放つ構造とした三波長形白色発光装置が現在主流になっている。
【0006】
これらの発光装置は、青色光で励起可能な緑色蛍光体によってもたらされる緑色光を前記青緑色光又は白色光の出力光成分として利用することに起因して(緑色蛍光体が、吸収する青色光(約2.7eV)に対して光エネルギーが近接する緑色光(約2.4eV)に波長変換することに起因して)、エネルギー変換効率の面では優れるものの、以下の課題を抱えていた。
(1)蛍光体を照射する青色光に対する緑色光の光子変換効率が低いため、緑色蛍光体の使用量が増してコスト高になる。
(2)青色光の波長に対する緑色蛍光体の吸収特性が一般に急峻なため、青色LEDと緑色蛍光体の双方の僅かな特性差によって、前記青緑色光の分光分布が変動しやすい。
(3)緑色蛍光体の選択枝が限られており、緑色光の発光スペクトル半値幅が広いものになるため、出力光の青緑色と黄色の光成分割合が増して、赤、緑、青の色分離が不明瞭になり、RGBカラーフィルター透過後の輝度が下るだけでなく、RGBの各光の色純度が悪くなる。
【0007】
これに対し、緑色蛍光体を用いずに赤色蛍光体を用いた発光装置も提案されている。例えば、特許文献4には、青色LEDチップと、緑色LEDチップと、前記青色LEDチップと緑色LEDチップを封止するためのモールド部とを備え、前記モールド部は赤色蛍光体を含むことを特徴とする白色LEDが開示されている。この白色LEDは、具体的には、青色LEDチップと緑色LEDチップとを一つの実装基板上に実装し、赤色蛍光体を含む一つの蛍光体層で、青色LEDチップ及び緑色LEDチップの両方を同時に覆う構造を有している(特許文献4の図面参照)。
【0008】
しかしながら、特許文献4に記載の発光装置は、固体発光素子の発光層材料を含めて、少なくとも三種類の物質が放つ青と緑と赤の光の出力を同時に制御しなければならず、発光装置の構造面からこの出力制御が困難であった。
【0009】
このため、このような構造を持つ発光装置を、例えば、バックライトとして液晶ディスプレイパネル(以後、LCDと記す)に応用した場合、パネルの色むら及び輝度むらの発生原因となりやすく、パネルのロットばらつきが大きくなりやすいだけでなく、製品歩留まりが低下してコスト高要因になるという課題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2008−140704号公報
【特許文献2】米国特許第6,686,691号明細書
【特許文献3】米国特許第6,649,946号明細書
【特許文献4】特開2007−158296号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
そこで本発明は、赤色蛍光体、青色固体発光素子、及び緑色固体発光素子を用いて、光の色調制御が容易な三波長形白色発光装置を提供することを目的とする。本発明はまた、出力光の色むら及び輝度むらが抑制された照明光源、特に、バックライトを提供することを目的とする。本発明はさらに、色むら及び輝度むらが抑制され、製造時にロット間のばらつきがなく、製品歩留まりの高い表示装置、及びそれを用いた電子機器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記課題を解決した本発明の発光装置は、420nm以上480nm未満の波長領域に発光ピークを持つ青色光を発する青色固体発光素子と、当該青色固体発光素子を覆い、600nm以上680nm未満の波長領域に発光ピークを持つ赤色光を発する第1の赤色蛍光体を含む第1の赤色蛍光体層とを有する第1の半導体発光体素子、及び
500nm以上550nm未満の波長領域に発光ピークを持つ緑色光を発する緑色固体発光素子と、当該緑色固体発光素子を覆い、600nm以上680nm未満の波長領域に発光ピークを持つ赤色光を発する第2の赤色蛍光体を含む第2の赤色蛍光体層とを有する第2の半導体発光体素子を備えることを特徴とする。
【0013】
本発明の照明光源は、上記の発光装置を備えることを特徴とする。当該照明光源の好ましい一実施形態は、バックライトである。
【0014】
本発明の表示装置は、上記のバックライトを備えることを特徴とする。
【0015】
本発明の電子機器は、上記の表示装置を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、色調制御が容易な三波長形白色発光装置を提供することができる。また、本発明によれば、出力光の色むら及び輝度むらが抑制された照明光源、特に、バックライトを提供することができる。さらに、本発明によれば、色むら及び輝度むらが抑制され、製造時にロット間のばらつきがなく、製品歩留まりの高い表示装置及び電子機器を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の発光装置の一例を示す模式断面図と出力光の分光分布を同時に示す。
【図2】本発明の発光装置の別の一例を示す模式断面図である。
【図3】本発明の発光装置の出力光の分光分布の一例を示す図である。
【図4】本発明の発光装置にかかる第1の半導体発光素子が放つ光の分光分布の一例を示す図である。
【図5】本発明の発光装置にかかる第2の半導体発光素子が放つ光の分光分布の一例を示す図である。
【図6】本発明の発光装置のさらに別の一例を示す模式断面図である。
【図7】本発明のバックライトの一例を示す概略斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施形態を、図面を参照しながら説明する。
【0019】
(実施形態1)
図1および2は、本発明の発光装置である実施形態1の例を示す図である。
【0020】
実施形態1の発光装置は、420nm以上480nm未満の波長領域に発光ピークを持つ青色光を発する青色固体発光素子2aと、当該青色固体発光素子2aを覆い、600nm以上680nm未満の波長領域に発光ピークを持つ赤色光を発する第1の赤色蛍光体5aを含む第1の赤色蛍光体層4aとを有する第1の半導体発光体素子7a、及び500nm以上550nm未満の波長領域に発光ピークを持つ緑色光を発する緑色固体発光素子2bと、当該緑色固体発光素子2bを覆い、600nm以上680nm未満の波長領域に発光ピークを持つ赤色光を発する第2の赤色蛍光体5bを含む第2の赤色蛍光体層4bとを有する第2の半導体発光体素子7bを備えるという特徴を有する。
【0021】
図1において、基板1は、固体発光素子を搭載するベースになるものである。1対の基板1の左側には青色固体発光素子2aが搭載されており、青色固体発光素子2aは、第1の蛍光体層4aで覆われている。蛍光体層4aは、第1の赤色蛍光体5aを含んでなり、例えば、透光性樹脂(図示せず)と赤色蛍光体5aとを少なくとも含んでなる混合体で形成されている。パターニング配線3は固体発光素子に電力を供給するための電極である。パターニング配線3と青色固体発光素子2aとがワイヤによって電気的に接続されている。このようにして、第1の半導体発光体素子7aが構成されている。
【0022】
一方、1対の基板1の右側には、緑色固体発光素子2bが搭載されており、緑色固体発光素子2bは、第2の蛍光体層4bで覆われている。蛍光体層4bは、透光性樹脂(図示せず)と第2の赤色蛍光体5bとを少なくとも含んでなる混合体で形成されている。パターニング配線3と緑色固体発光素子2bとがワイヤによって電気的に接続されている。このようにして、第2の半導体発光体素子7bが構成されている。
【0023】
第1の半導体発光素子7aと第2の半導体発光素子7bが、基体6に備え付けられ、発光装置が構成されている。
【0024】
図2は実施形態1の別の例を示し、図1の発光装置とは、青色固体発光素子2a及び緑色固体発光素子2bが、同じ基板1上にあり、パターニング配線3上に直接設けられて給電されるように構成されている点で異なっている。
【0025】
上記の発光装置においては、第1の半導体発光体素子7aは、青色固体発光素子2aが発する青色光の少なくとも一部を第1の赤色蛍光体5aが波長変換した青/赤混色光(紫色系混色光)9を出光し、第2の半導体発光体素子7bは、緑色固体発光素子2bが発する緑色光の少なくとも一部を第2の赤色蛍光体5bが波長変換した緑/赤混色光(黄色系混色光)10を出光する。出光された青/赤混色光(紫色系混色光)9と、緑/赤混色光(黄色系混色光)10とがさらに混色されて、白色光11が得られる。
【0026】
このように、実施形態1では、青色固体発光素子2aと緑色固体発光素子2bがそれぞれ、独立した赤色蛍光体層によって覆われて、独立した1対の半導体発光体素子が形成される。
【0027】
一般に、LEDが放つ光は強い指向性を持つことが知られるが、このような構成にすると、青色固体発光素子2a及び緑色固体発光素子2bが放つ光が強い指向性を持っていても、赤色蛍光体5a,5bが光拡散体として機能するので、これらの固体発光素子が放つ一次光(青色光及び緑色光)の指向性を抑制するようになる。このため、蛍光体によるLED光の波長変換光とLED光との色分離現象(LED光が持つ強い指向性に起因して生じる現象である)が緩和され、色調むらや輝度むらが抑制された均一な照明光を放つものになる。従って、本発明の発光装置においては、赤色蛍光体層4a及び4bは、青色固体発光素子7a及び緑色固体発光素子7bの少なくとも主光取出し面をそれぞれ覆うように配置されていることが好ましい。
【0028】
また、従来の発光装置では、青色固体発光素子と緑色固体発光素子を1つの赤色蛍光体層が覆う構成が取られており、少なくとも三種類の物質が放つ青と緑と赤の光の出力を同時に制御する必要があった。しかし、実施形態1の発光装置では、青色固体発光素子と緑色固体発光素子とが、それぞれ赤色蛍光体層を有し、独立した1対の半導体発光素子を構成しているため、第1の半導体発光素子7aが放つ紫色系混色光9と、第2の半導体発光素子7bが放つ黄色系混色光10の2種類の光を少なくとも制御すればよい。紫色系混色光9と黄色系混色光10は独立して制御することが可能であり、赤色蛍光体の吸収する光は、青色光と緑色光の一方に限られるため、紫色系混色光9と黄色系混色光10の色調と発光強度を安定させることが容易であり、出力光の色調制御が極めて容易である。特に、赤色蛍光体層は、第1の半導体発光素子7a及び第2の半導体発光素子7bにおいて、別個に設計することが可能であるため、三波長形白色発光装置の出力光の色調制御が、青色光と緑色光の制御の繰り返しだけで足りるものになる。
【0029】
さらに、意に反して、第1の半導体発光素子7aや第2の半導体発光素子7bが、所望としない色調の光を放つものになった場合には、その時点で、最終的な発光装置を組み上げることなく、不良部品として、製造工程から外すことができるようにもなるので、製造ロスも低減できる。
【0030】
また、実施形態1では、青色光と緑色光の光源として固体発光素子(例えばLED)を用いる。従って、緑色蛍光体を使用した際の上述のデメリットがない。また、赤色蛍光体の励起の一部を、赤色光エネルギーとの光エネルギー差が比較的少ない緑色光で行うので、光エネルギーロスが比較的少ない。さらに、固体発光素子の発光は、スペクトル半値幅の狭い光であるため、青緑色と黄色の発光成分割合が少なく、得られる出力光はRGBの色分離が良好であるため、実施形態1の発光装置を表示装置に用いた場合には、RGBの色純度が良好で広色域表示が可能であり、高輝度で高コントラストの画像表示も可能である。このことから、本発明の発光装置の好ましい一実施態様は、480nm以上500nm未満の波長領域に発光ピークを持つ光を発する固体発光素子及び蛍光物質、ならびに550nm以上600nm未満の波長領域に発光ピークを持つ光を発する固体発光素子及び蛍光物質のいずれも含まない。
【0031】
参考のため、図3に、本発明の発光装置が放つ出力光11の分光分布の一例を示し、図4に、前記第1の半導体発光素子7aが放つ青/赤混色光9の分光分布の一例を示し、図5に、前記第2の半導体発光素子7bが放つ緑/赤混色光10の分光分布の一例を示した。
【0032】
図3から判るように、本発明の発光装置が放つ白色の出力光11の分光分布は、発光スペクトル半値幅の狭い緑色LEDが放つ緑色光を利用することによって、少なくとも490nmの青緑光及び575nmの黄色光の出力強度割合は、いずれも出力光11の分光ピークの20%以下、より好ましい形態では10%以下になる。
【0033】
このようにして、RGBの色分離を明確にすることが可能であり、青色光成分12、緑色光成分13、赤色光成分14の高色純度化が可能となり、高輝度広色域表示を実現できる。
【0034】
本発明の発光装置の好ましい一実施態様においては、第1の半導体発光素子と第2の半導体発光素子とは、空間を隔てて配置される。
【0035】
このとき、白色ではない光を放つ複数種の半導体発光素子を組み合わせて白色光を得るので、白色半導体発光素子の1種類を複数利用する場合よりも、単位面積当たりの実装する半導体発光素子の数が多い面状白色光源や線状白色光源を構成できる。この結果、半導体発光素子を分散させて配置することができ、輝度むらや色調むらの少ない白色光を得ることができる。また、例えば、第1の半導体発光素子からの青色光が、第2の半導体発光素子の赤色蛍光体を励起して発光するような、第1の半導体発光素子と第2の半導体発光素子間の相互干渉を抑制でき、この相互干渉により生じ得る白色光の色調ずれを抑制できる。さらに、一方の半導体発光素子が、所望としない色調の光を放つものになった場合には、その時点で、不良部品として良品と交換できる構造とすることも容易になるので、製造ロスを低減することができる。
【0036】
青色固体発光素子2aが発する青色光は、440nm以上470nm未満の波長領域に発光ピークを持つことが好ましい。第1の赤色蛍光体層4aが発する赤色光は、620nm以上660nm未満の波長領域に発光ピークを持つことが好ましい。緑色固体発光素子2bが発する緑色光は、510nm以上535nm未満の波長領域に発光ピークを持つことが好ましい。第2の赤色蛍光体層4bが発する赤色光は、620nm以上660nm未満の波長領域に発光ピークを持つことが好ましい。
【0037】
本発明の発光装置においては、発光種の選択により、出力光を構成する、青色光、緑色光、赤色光の全てを、1/10残光が3msec未満、特に1msec未満にすることも容易である。よって、本発明の発光装置をLCDの画像適応型調光及び立体画像表示に有利な短残光性を有する出力光を放つよう設計することも容易である。
【0038】
赤色蛍光体5a及び赤色蛍光体5bはそれぞれ、Eu2+で付活されたアルカリ土類金属窒化物蛍光体及びEu2+で付活されたアルカリ土類金属酸窒化物蛍光体からなる群より選ばれる少なくとも1種であることが好ましい。これらの蛍光体は、化学的に安定なだけでなく、耐熱性に優れ温度消光が少ないことが知られている。
【0039】
また、これらの蛍光体は、青〜緑色域に亘る広い波長領域の光励起下で、理論限界に近い高い光子変換効率(〜90%)で、青〜緑色光を赤色光に波長変換することも知られているし、1/10残光が1msec未満の超短残光性の赤色光を放つことも知られている。
【0040】
さらに、青色励起可能で発光スペクトル半値幅が比較的狭い高効率緑色蛍光体(一般にEu2+付活緑色蛍光体である)の青色領域(440〜470nm)における励起スペクトルと比較して、前記Eu2+で付活された赤色蛍光体の緑色領域(510〜535nm)における励起スペクトルは、励起波長の増加に伴う励起強度の低下が少なく、励起波長領域における励起スペクトルの傾斜が緩いので、例えば、緑色LEDと赤色蛍光体の双方の僅かな特性差に起因する、緑/赤混色光10(図5参照)の分光分布の変動は、例えば、従来知られる、特許文献1のタイプの発光装置(青色LEDと緑色蛍光体を組み合わせて青/緑混色光を放つ構造の発光装置)が放つ青/緑混色光の分光分布の変動よりも抑制されたものとなる。
【0041】
したがって、これによって、長期信頼性、高出力化、短残光化の全ての面で優れる赤色光を放つものになるだけでなく、発光特性のばらつきも少なく、工業生産に適する発光装置になる。
【0042】
前記Eu2+で付活された赤色蛍光体の具体例としては、以下(A)〜(C)に記載する蛍光体、及び、これらの結晶格子を基本骨格として、(SiN)+の一部を(AlO)+で置換した蛍光体が挙げられ、これらの中から選択される少なくとも1つの赤色蛍光体を適宜選択して利用するとよい。なお、下記化学式中のMは、アルカリ土類金属を示す。
(A)M2Si58:Eu2+
(B)MAlSiN3:Eu2+
(C)MAlSi47:Eu2+
【0043】
赤色蛍光体5a及び5bの種類は、同一であっても異なっていてもよいが、同一のものを用いることが製造面から好ましい。
【0044】
本発明の発光装置においては、一対の半導体発光素子が別個の赤色蛍光体層を有している。従って、第1の半導体発光素子7aと第2の半導体発光素子7bにおいては、蛍光体層の厚み及び/又は蛍光体層中に含まれる赤色蛍光体の濃度が異なっていてもよい。第1の赤色蛍光体層4a及び第2の赤色蛍光体層4bの厚み、及び/又は赤色蛍光体の濃度を適切に調整することにより、第1の半導体発光素子7aと第2の半導体発光素子7bとの駆動条件を変えることなく、所望とする白色の出力光11を得るために必要な、所望の紫色系混色光9と所望の黄色系混色光10とを得ることもできる。従って、本発明の発光装置を用いる各種装置は、駆動回路の制御による出力光の色調制御の必要性が薄れるため、シンプルな回路構成で駆動できるものになる。
【0045】
上記の例では、赤色蛍光体層は、蛍光体粉末を透光性樹脂中に分散させた樹脂蛍光体層としたが、これに限られない。赤色蛍光体層は、例えば、粒子状の蛍光体を透光性無機物質(ガラスなど)に含ませた構造の無機蛍光体層や、いわゆる透光性蛍光セラミックス層などであってもよい。
【0046】
本発明の発光装置においては、青色固体発光素子2aと緑色固体発光素子2bは、いずれも無機材料を発光層とする注入型のエレクトロルミネッセンス素子であることが好ましい。これによって、長期信頼性に優れ、高い光出力が得られるものになる。また、青色固体発光素子2aと緑色固体発光素子2bの発光層の無機材料は、同種のものを用いることが好ましい。この場合、電力投入時の投入電流に対する光出力特性が似通ったものになり、投入電力の増加に伴う色調ずれが軽減する。また、駆動回路に特別の技術的配慮を施す必要性が薄れて回路負担が少なくなるので、シンプルな駆動回路で駆動できるようになり、工業生産に適するものになる。
【0047】
当該発光層の無機材料の具体例としては、GaP、InGaN、GaInN、GaNなどのIII−V族半導体化合物が挙げられる。これらのうち、InGaN系の半導体化合物が好ましい。InGaN系の半導体化合物を発光層とする固体発光素子は、直接遷移型の発光を示し、残光が短く発光効率の面でも優れることが知られているので、これによって高出力化等が可能になる。
【0048】
図6は、実施形態1の別の一例を示すものであり、この例においては、第1の半導体発光素子7aが、青色固体発光素子2aと第1の赤色蛍光体層4aとの間に光拡散体8aをさらに有し、かつ第2の半導体発光素子7bが、緑色固体発光素子2bと第2の赤色蛍光体層4bとの間に光拡散体8bをさらに有する。
【0049】
このとき、固体発光素子2a,2bが放つ一次光(青色光及び緑色光)が光拡散体8a,8bによって拡散される。この拡散光をさらに赤色蛍光体層4a,4bが光拡散するようになるので、一次光の指向性をいっそう抑制し、色分離現象をいっそう緩和できることになる。
【0050】
光拡散体8a,8bには、例えば、無機粉末粒子群(例、アルミナ粒子群、シリカ粒子群等)を透光性樹脂中に分散させたもの、少なくとも1つの表面に微細な凹凸を設けて当該表面を擦りガラス状にした透光性基体などを利用することができる。
【0051】
なお、図は省略するものの、これとは逆に、本発明の発光装置において、紫色系混色光と黄色系混色光の少なくとも一方が光拡散体を通過した後、出力される構造、あるいは、紫色系混色光と黄色系混色光の混色光(白色光)が光拡散体を通過した後、出力される構造とすることもできる。これによっても、前記と同様に、前記色分離現象は抑制される。
【0052】
本発明の発光装置は、公知方法に従い製造することができる。
【0053】
以上のように、本発明の発光装置によれば、光の色調制御が極めて容易である。従って、動作中の特性のばらつきを抑制でき、ロット間の特性のばらつきも抑制される。また、出力光の色むら及び輝度むらも低減される。加えて、RGBの色分離も良好である。
【0054】
従って、本発明の発光装置は、一般照明装置用の光源、画像表示装置用の光源などに好適に利用可能である。
【0055】
さらに、本発明の発光装置をバックライトに用い、表示装置を構成すれば、出力光のRGBの色純度が良好で輝度が高く、広色域表示も可能である。また、製造時にロット間のばらつきがなく、製品歩留まりの高いものとなる。さらに、画像に合わせて調光する目的に対しては、赤緑青の光成分を全て含む白色光としての単なる光量調整だけでなく、青と赤の光成分、及び緑と赤の光成分を、それぞれ独立して制御できる発光装置になるので、画像を、より色鮮やかで高コントラストなものとすることができる。
【0056】
(実施形態2)
次に、本発明の照明光源の実施形態について説明する。
【0057】
公知方法に従い、実施形態1の発光装置を用いて、照明ランプ、薄型照明などの照明装置用の光源、画像表示装置用の光源(バックライト)等の照明光源を構成することができる。
【0058】
図7は、本発明の照明光源の一具体例として、バックライトの一例を示す概略斜視図である。バックライト16の内部には、複数の実施形態1の発光装置が分散して配置され、バックライト16は、実施形態1の発光装置が放つ出力光11、又は第1の半導体発光素子7aが放つ紫色系混色光9及び第2の半導体発光素子7bが放つ黄色系混色光10を、発光部15が放つ光として利用する。バックライト16に、点灯回路システムを付加するなどして、広色域表示用途に適する白色光を放つようにすることもできる。
【0059】
本発明の照明光源は、出力光の色むら及び輝度むらが抑制されたものとなる。
【0060】
(実施形態3)
次に、本発明の表示装置の実施形態について説明する。
【0061】
実施形態3の表示装置は、実施形態2のバックライトを備える表示装置であり、公知方法に従い、実施態様2のバックライトを用いて構成することができる。表示装置の代表例としては、LCD(液晶ディスプレイパネル)であり、実施形態2のバックライトと、光変調素子と、カラーフィルターとを少なくとも組み合わせて構成することができる。
【0062】
本発明の表示装置は、色むら及び輝度むらが抑制され、製造時にロット間のばらつきがなく、製品歩留まりの高いものとなる。また、出力光のRGBの色純度が良好で広色域表示が可能であり、高輝度で高コントラストの画像を表示することができる。
【0063】
(実施形態4)
次に本発明の電子機器について説明する。
【0064】
実施形態4の電子機器は、実施形態3の表示装置を備える電子機器であり、公知方法に従い、実施形態3の表示装置を用いて構成することができる。電子機器の例としては、液晶テレビ、携帯電話、ハンディタイプのビデオカメラ、小型ゲーム機器などが挙げられる。液晶テレビは、例えば、実施形態3の表示装置と、放送受信装置と、音響システムとを少なくとも組み合わせて構成することができる。
【0065】
本発明の電子機器は、色むら及び輝度むらが抑制され、出力光のRGBの色純度が良好で広色域表示が可能であり、高輝度で高コントラストの画像を表示することができる。さらに、外光の強い屋外での視認性にも優れるものになり、屋外での使用に適するものになる。
【産業上の利用可能性】
【0066】
本発明の発光装置は、一般照明装置用の光源、画像表示装置用の光源などに好適に利用可能である。本発明の発光装置をバックライトに用いて、表示装置、さらには、それを備える電子機器(例、液晶テレビ、携帯電話、ハンディタイプのビデオカメラ、小型ゲーム機器等)を構成することもできる。
【符号の説明】
【0067】
1 基板
2a 青色固体発光素子
2b 緑色固体発光素子
3 パターニング配線
4a 第1の赤色蛍光体層
4b 第2の赤色蛍光体層
5a 第1の赤色蛍光体
5b 第2の赤色蛍光体
6 基体
7a 第1の半導体発光素子
7b 第2の半導体発光素子
8a,8b 光拡散体
9 青/赤混色光(紫色系混色光)
10 緑/赤混色光(黄色系混色光)
11 出力光
12 青色光成分
13 緑色光成分
14 赤色光成分
15 発光部
16 バックライト

【特許請求の範囲】
【請求項1】
420nm以上480nm未満の波長領域に発光ピークを持つ青色光を発する青色固体発光素子と、当該青色固体発光素子を覆い、600nm以上680nm未満の波長領域に発光ピークを持つ赤色光を発する第1の赤色蛍光体を含む第1の赤色蛍光体層とを有する第1の半導体発光体素子、及び
500nm以上550nm未満の波長領域に発光ピークを持つ緑色光を発する緑色固体発光素子と、当該緑色固体発光素子を覆い、600nm以上680nm未満の波長領域に発光ピークを持つ赤色光を発する第2の赤色蛍光体を含む第2の赤色蛍光体層とを有する第2の半導体発光体素子を備える発光装置。
【請求項2】
前記第1の半導体発光体素子は、前記青色固体発光素子が発する青色光の少なくとも一部を前記第1の赤色蛍光体が波長変換した青/赤混色光を出光し、前記第2の半導体発光体素子は、前記緑色固体発光素子が発する緑色光の少なくとも一部を前記第2の赤色蛍光体が波長変換した緑/赤混色光を出光する請求項1に記載の発光装置。
【請求項3】
前記青/赤混色光と、前記緑/赤混色光とをさらに混色する請求項2に記載の発光装置。
【請求項4】
前記第1及び第2の赤色蛍光体層が、前記青色固体発光素子及び緑色固体発光素子の少なくとも主光取出し面をそれぞれ覆うように配置されている請求項1に記載の発光装置。
【請求項5】
前記第1の半導体発光素子と前記第2の半導体発光素子とが、空間を隔てて配置されている請求項1に記載の発光装置。
【請求項6】
前記第1及び第2の赤色蛍光体はそれぞれ、Eu2+で付活されたアルカリ土類金属窒化物蛍光体及びEu2+で付活されたアルカリ土類金属酸窒化物蛍光体からなる群より選ばれる少なくとも1種である請求項1に記載の発光装置。
【請求項7】
480nm以上500nm未満の波長領域に発光ピークを持つ光を発する固体発光素子及び蛍光物質、ならびに550nm以上600nm未満の波長領域に発光ピークを持つ光を発する固体発光素子及び蛍光物質のいずれも含まない請求項1に記載の発光装置。
【請求項8】
前記青色固体発光素子及び前記緑色固体発光素子が、無機材料を発光層とする注入型のエレクトロルミネッセンス素子である請求項1に記載の発光装置。
【請求項9】
前記無機材料が、InGaN系の半導体化合物である請求項8に記載の発光装置。
【請求項10】
前記第1の半導体発光素子と前記第2の半導体発光素子において、蛍光体層の厚み及び/又は蛍光体層中に含まれる赤色蛍光体の濃度が異なっている請求項1に記載の発光装置。
【請求項11】
前記第1の半導体発光素子が、前記青色固体発光素子と前記第1の赤色蛍光体層との間に光拡散体をさらに有し、かつ前記第2の半導体発光素子が、前記緑色固体発光素子と前記第2の赤色蛍光体層との間に光拡散体をさらに有する請求項1に記載の発光装置。
【請求項12】
請求項1〜11のいずれかに記載の発光装置を備える照明光源。
【請求項13】
バックライトである請求項12に記載の照明光源。
【請求項14】
請求項1〜11のいずれかに記載の発光装置が複数、分散して配置されてバックライトが構成されている請求項13に記載の照明光源。
【請求項15】
請求項13又は14に記載のバックライトを備える表示装置。
【請求項16】
請求項15に記載の表示装置を備える電子機器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2011−181579(P2011−181579A)
【公開日】平成23年9月15日(2011.9.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−42039(P2010−42039)
【出願日】平成22年2月26日(2010.2.26)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】