説明

発光装置、及び発光装置の製造方法

【課題】光源光を効率よく伝送し、導光部を自由な形状や色に設計することができる導光部材の製造方法を提供する。
【解決手段】基板1上に流体状の硬化性材料を硬化させてなる導光層を形成するため、基板1上に導光層を区画する堰5を設ける工程と、硬化性材料を基板1上に塗設する工程と、硬化性材料を硬化させる工程とを行なうようにする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、導光部材の製造方法並びに導光部材及びその導光部材を用いた導光板に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に、導光板は、例えば面状照明装置や液晶表示装置などの面状発光装置に用いられる。そして、例えば特許文献1〜3に記載されるように、フロントライトやバックライトの光源光を面状に導光させる機能を有する。
一方、近年、携帯電話や家電のデザイン性が向上する背景において、プッシュボタンや表示ボタンなど機体の所定の領域のみを発光させる技術が望まれている。特に、所定の領域を自由な形状や色に発光させる技術は係る分野における技術的価値は非常に高い。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2003−187624号公報
【特許文献2】特開2003−281912号公報
【特許文献3】特開2006−172785号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、導光板を自由な形状とすることは、生産技術、コストの面から望ましいとはいえない。特に自由な形状や色を求める場合は、大量生産は適当でないため、導光板の形状・規格を変更することなく、発光部分のみを自由に設計できる製造方法が確立されることが望ましい。
【0005】
本発明は、前述の課題に鑑みてなされたもので、光源光を効率よく伝送し、導光部を自由な形状や色に設計することができる導光部材の製造方法並びに導光部材及びその導光部材を用いた導光板を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者は、上記課題を解決すべく鋭意検討した結果、導光部材の製造時において、予め光を遮断或いは伝送させる機能を有する堰(境界部)を描画したのち、導光材料となる硬化性材料を塗設することにより、導光領域(例えば、形状など)、導光態様(例えば、色など)を自由に設計しうることを見出した。また、特定の描画方法により、オーダーに応じて多種のデザイン設計が可能な上に、堰において光取り出し効果も優れることを見出し、本発明を完成させたものである。
【0007】
即ち、本発明の要旨は、基板上に、流体状の硬化性材料を硬化させてなる導光層を備える導光部材の製造方法であって、該基板上に、該導光層を区画する堰を設ける工程と、該硬化性材料を該基板上に塗設する工程と、該硬化性材料を硬化させる工程とを有することを特徴とする、導光部材の製造方法に存する(請求項1)。
このとき、該堰は、ディスペンサーにより設けることが好ましい(請求項2)。
【0008】
本発明の別の要旨は、基板、導光層、及び、該導光層を区画する堰を備えた導光部材であって、該堰が稜線を有さないことを特徴とする、導光部材に存する(請求項3)。
このとき、該導光層が硬化性材料を硬化させてなるものであることが好ましい(請求項4)。
また、該導光層が高屈折率層及び低屈折率層を有することが好ましい(請求項5)。
さらに、該導光層が散乱層を有することが好ましい(請求項6)。
また、該導光層が蛍光体含有層を有することが好ましい(請求項7)。
【0009】
本発明の更に別の要旨は、前記のいずれかの導光部材を備えることを特徴とする、導光板に存する(請求項8)。
【発明の効果】
【0010】
本発明の導光部材の製造方法、導光部材及び導光板によれば、導光部材及び導光板の形状及び規格の変更を行なわなくとも、発光部分を自由に設計できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】(a)〜(c)は、いずれも本発明の第1実施形態としての導光部材の製造方法を模式的に示す断面図である。
【図2】(a)及び(b)はいずれも本発明の一実施形態について説明するため、堰を模式的に示す斜視図である。
【図3】本発明の第2実施形態としての導光部材の模式的な断面図である。
【図4】本発明の第3実施形態としての導光部材の模式的な断面図である。
【図5】本発明の第4実施形態としての導光部材の模式的な断面図である。
【図6】本発明の第5実施形態としての導光部材の模式的な断面図である。
【図7】本発明の第6実施形態としての導光部材の模式的な断面図である。
【図8】本発明の第7実施形態としての導光部材の模式的な断面図である。
【図9】本発明の第8実施形態としての導光部材の模式的な断面図である。
【図10】本発明の第9実施形態としての導光部材の模式的な断面図である。
【図11】本発明の第10実施形態としての導光部材の模式的な断面図である。
【図12】本発明の第11実施形態としての導光部材の模式的な断面図である。
【図13】本発明の第12実施形態としての導光部材の模式的な断面図である。
【図14】本発明の第13実施形態としての導光部材の模式的な断面図である。
【図15】本発明の第14実施形態としての導光部材の模式的な断面図である。
【図16】本発明の第15実施形態としての導光部材の模式的な断面図である。
【図17】本発明の第16実施形態としての導光部材の模式的な断面図である。
【図18】本発明の実施例1〜3の結果を示す表である。
【図19】本発明の実施例4〜8の結果を示す表である。
【図20】本発明の実施例9〜14の結果を示す表である。
【図21】本発明の実施例15で作製した発光装置の模式的な断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明について実施形態や例示物等を示して詳細に説明するが、本発明は以下の実施形態及び例示物等に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において任意に変更して実施できる。
【0013】
[1]導光部材の製造方法
本発明の導光部材の製造方法(以下適宜、「本発明の製造方法」という)は、基板上に、流体状の硬化性材料を硬化させてなる導光層を備える導光部材の製造方法であって、前記の基板上に導光層を区画する堰を設ける工程(以下適宜「堰形成工程」という)と、硬化性材料を基板上に塗設する工程(以下適宜「硬化性材料塗設工程」という)と、硬化性材料を硬化させる工程(以下適宜「硬化性材料硬化工程」という)とを有する。
【0014】
[1−1]堰形成工程
本発明の製造方法では、まず、基板を用意し、当該基板上に堰を設ける。
【0015】
[1−1−1]基板
基板は、本発明の導光部材の支持体となり得る部分であり、この基板上に、導光層及び堰が配置される。
基板の大きさ及び形状は、製造される導光部材の目的などに応じて任意に設定することができる。
【0016】
また、基板は、必要に応じて任意の部材を備えていても良い。例えば、基板は発光ダイオード(light emitting diode。以下適宜「LED」という)及び半導体レーザーダイオード(semiconductor laser diode。以下適宜「LD」という)等の半導体発光装置などの発光光源を備えていてもよい。この場合、発光光源が配置される位置も、導光部材の目的などに応じて任意に設定することができる。
また、基板上に予め所望の層を1層又は2層以上積層しておいてもよい。この場合には、後述する堰及び導光層は、これらの層を介して基板上に設けられることになる。
【0017】
基板を形成する材料は本発明の効果を著しく損なわない限り任意であるが、例えば、堰又は導光層を形成する硬化性材料との接着などの観点から、セラミック、金属、ガラス、樹脂などが好ましい。樹脂の中では、極性基を含むものや、セラミック、金属、ガラス等の接着性を向上するフィラーが含まれるものが好ましい。また、発光光源を備えた基板の場合、配線を有する基板が用いられることがある。この場合、例えば、ガラス繊維強化のエポキシ樹脂が積層されたプリント配線基板などが好適である。なお、基板は、1種の材料のみで形成してもよく、2種以上の材料を任意の組み合わせ及び種類で併用してもよい。
【0018】
[1−1−2]堰の形成
前記の基板上には、堰を設ける。この堰は、光源からの光を伝送または遮断しうる材料で形成されるもので、導光部材を所定の領域に区画する境界部として機能する部分である。堰の材料として光を伝送する材料を用いた場合は堰を含む領域まで光源光が伝送される。即ち、堰の内部にまで光が伝送されることになる。一方、堰の材料として光を遮断する材料を用いた場合は堰を含まない領域までだけ光源光が伝送される。即ち、堰の内部には光は伝送されなくなる。
【0019】
[1−1−2−1]堰の役割
通常、後述する導光層はこの堰に堰き止められるようにして形成される。また、堰が導光層を完全には堰き止めない場合(即ち、導光層が堰を乗り越えるようにして形成される場合)であっても、当該堰が形成されている部分は堰の分だけ導光層が薄く形成されて、結果として堰は部分的に導光層を区画する境界部として機能する。したがって、堰は導光層を区画し、いわば当該堰が描画された寸法、形状、位置等に応じて導光層の領域の寸法、形状、位置等が設定され、これにより、発光部分のデザインを決定付けることになる。
【0020】
例えば、堰が硬化性材料塗設工程において硬化性材料を完全に堰き止める場合には、区画された導光層の各領域の平面形状が堰の寸法、形状、配置等に応じて設定されることになる。
【0021】
また、例えば、堰が光を伝送しうる材料で形成されている場合には、光源から導光層を通じて伝送された光を、当該堰を通じて放射させることができ、これにより、導光部材が放射する光により形作られる形状や模様を、堰の寸法、形状、位置等に応じて設定することができる。
【0022】
また、例えば、堰が光を伝送し得ない材料で形成されている場合には、光源から導光層を通じて伝送された光を、当該堰から放射されないようにしたり、当該堰から先へは伝送されないようにしたり、当該堰から先へ伝送される光の強度を弱めたりすることができ、これにより、導光部材が放射する光により形作られる形状や模様を、堰の寸法、形状、位置等に応じて設定することができる。
【0023】
また、例えば、堰が光の波長を変換する機能(即ち、波長変換機能)を有している場合には、光源から導光層を通じて伝送された光を、当該堰を通じて所望の波長の光に変換してから放射させることができ、これにより、導光部材が放射する光により形作られる色彩を、堰の寸法、形状、位置等に応じて設定することができる。
【0024】
また、例えば、堰が光を拡散する機能を有する場合には、光源から導光層を通じて伝送された光を、当該堰から放射される光については拡散されるようにでき、これにより、導光部材が放射する光により形作られる形状や模様を、堰の寸法、形状、位置等に応じて設定することができる。
【0025】
[1−1−2−2]堰の材料
堰の材料は、本発明の効果を著しく損なわない限り任意のものを用いることができる。中でも、低透湿、光伝送または遮断特性、並びに基板に対する密着性などの観点から、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂、ポリイミド樹脂、アクリル樹脂、シリコーン樹脂などが好ましい。また、基板、導光層(硬化性材料)に対する密着性などの観点から、エポキシ樹脂、アクリル樹脂、シリコーン樹脂が特に好ましい。なお、堰の材料は、1種のみを用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
【0026】
さらに、堰の材料としては、液状のものを塗布して硬化させることができる材料(硬化性材料)が好ましい。中でも、塗布操作時に硬化せず硬化操作時に硬化する材料が好ましい。この観点からは、硬化性材料としては、熱硬化性樹脂、光硬化性樹脂などが好ましい。そのうち熱硬化性樹脂の中でも、できるだけ低温で硬化するものが、基板や光源などへの変質の影響が少なく、好ましい。
【0027】
硬化性材料の硬化速度に制限は無いが、速いほど好ましい。塗布時の形状保持特性に優れるからである。具体的な範囲を挙げると、通常10時間以内、中でも5時間以内、特には3時間以内に硬化するものが好ましい。
また、硬化性材料によっては、硬化途中に粘度が一旦低下するものもある。しかし、形状保持特性が悪化することを防ぐ観点から、前記の粘度低下は小さく抑制することが好ましい。その実現のためには、硬化性材料の特性を改良するほか、後述の無機粒子を活用することも有効である。
【0028】
また、堰の材料としては、本発明の効果を著しく損なわない限り、上記の樹脂などに、更にその他の成分を混合して用いることも可能である。なお、その他の成分は、1種のみを用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。その他の成分の例を挙げると、蛍光体、無機粒子、色材などが挙げられる。なお、これらの蛍光体及び無機粒子については、硬化性材料の説明と共に後述する。
色材は、堰の各機能向上を目的として、その材料や、色を適宜選択して用いることができる。例えば、異なる色を伝播させる2つの導光層領域を堰で区切る場合、堰が白色であると、各々の領域の光を白色の堰が反射し、隣の領域への光の漏れ出しを防止し混色を防ぐ効果がある。ただし、白色の堰を非常に細く又は薄くした場合には、光の遮蔽効果が不十分となる可能性がある。この場合には黒色の堰を用いると、光吸収による導光量のロスが生じるが、隣の領域への光の混色を確実に防止することが出来ると考えられる。
堰に色材を含有させて白色とする場合は、色材としては無機および/または有機の材料を用いることができ、例えば、無機粒子としてはアルミナ微粉、酸化珪素、酸化アルミニウム、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化マグネシウム等の金属酸化物;炭酸カルシウム、炭酸バリウム、炭酸マグネシウム、硫酸バリウム、水酸化アルミニウム、水酸化カルシウム、水酸化マグネシウム等の金属塩;窒化硼素、アルミナホワイト、コロイダルシリカ、珪酸アルミニウム、珪酸ジルコニウム、硼酸アルミニウム、クレー、タルク、カオリン、雲母、合成雲母などが挙げられる。また、有機微粒子としては、弗素樹脂粒子、グアナミン樹脂粒子、メラミン樹脂粒子、アクリル樹脂粒子、シリコン樹脂粒子等の樹脂粒子などを挙げることができるが、いずれもこれらに限定されるものではない。
また、堰に色材を含有させて黒色とする場合は、色材としては無機および/または有機の材料を用いることができ、例えば、無機粒子としてはチタンブラック、カーボンブラック、酸化鉄ブラック、硫酸ビスマス、などが挙げられる。また、有機微粒子としては、アニリンブラック、シアニンブラック、ペリレンブラック等を挙げることができるが、いずれもこれらに限定されるものではない。
また、色材は1種のみを用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
【0029】
[1−1−2−3]堰の形状及び寸法
堰の形状に特に制限は無い。通常は、基板表面に延在する凸状の部材として形成される。この際、堰は稜線を有さない形状に形成することが好ましい。ここで稜線とは、堰の表面に長手方向に連続的に形成された角のことをいう。したがって、稜線を有さない形状とは、堰を長手方向に交差する面で切った場合に、当該断面が角を有さない形状を言う。したがって、堰は、例えば、表面が曲面のみで形成された断面略半円状(いわゆる、かまぼこ状)の部材として形成することが好ましい(図2(b)を参照)。堰の表面を滑らかな凸曲面のみで形成すれば、断面多角形状に形成した場合よりも堰における光取り出し効果が優れるからである。これは、堰の表面を滑らかな面で形成することにより、伝送されてきた光が堰に当たって反射する際、堰の頂点から基板等との接着面まで連続する滑らかな光を取り出すことができるためである。
【0030】
堰の寸法は、導光部材のデザインに応じて任意に設定することができる。ただし、中でも堰の高さ(図1(a)の高さHを参照)は、通常1μm以上、中でも5μm以上、特には10μm以上が好ましく、通常5mm以下、中でも2mm以下、特には1mm以下が好ましい。堰が低すぎると導光した光の分割機能が無くなる可能性があり、高すぎると機械的強度が低下して実用的でなくなる可能性がある。
【0031】
また、堰の幅(図1(a)の幅Wを参照)は、通常1μm以上、中でも5μm以上、特には10μm以上が好ましく、通常20mm以下、中でも10mm以下、特には5mm以下が好ましい。堰の幅が狭すぎると機械的強度が不足する可能性があり、広すぎると無駄となる可能性がある。
【0032】
[1−1−2−4]堰の形成方法
堰の形成方法に制限は無いが、通常は、堰の材料を基板上の所望の部位に配置することで、当該材料により所望の形状を描画して、堰を形成する。この場合、描画の方法に制限は無いが、例えば、インクジェット、ディスペンサー等による描画法;凹版印刷、凸版印刷、平板印刷、孔版印刷(スクリーン印刷等)等の印刷法;レジスト法などを用いることができる。中でも、ディスペンサーによる描画法、スクリーン印刷、レジスト法が好ましい。
【0033】
ディスペンサーとは、液状材料を定量計量し、定量吐出する装置である。この装置は通常、高精度に圧力、時間等を制御されたエアパルスを作り出し、これがシリンジ等の容器に注入された液状材料を様々なサイズ、形状のノズル先端から押し出すものである。この場合の温度、湿度、圧力などに制限は無いが、通常0℃以上100℃以下、湿度5RH%以上90RH%以下、圧力1Pa以上200kPa以下で行なう。
【0034】
また、ディスペンサーでは、ノズル先端より吐出する液状材料を対象に滴下し、描画する。この描画は、手動、自動のいずれでも可能である。しかし、寸法の安定性の面から、自動のディスペンシングステージ(二次元の動きを記憶させたり、コンピュータにより制御させたりすることで、電子図面を直接描画させることができる装置)等を用いることが好ましい。
【0035】
また、シリンジ等の容器に液状材料を注入した後には、十分に泡抜き操作(脱泡操作)を行なうことが好ましい。液状材料に泡が混入すると、描画中にノズルからの吐出が断続的になり、描画精度の低下を招く可能性がある。また、肉眼では見えにくいような100μm以下程度の泡も除去することが望ましい。
泡抜き操作の方法に制限は無いが、例えば、真空下で液状材料を遠心させ(自転、公転タイプ)、または、超音波をかけて泡抜きすることができる。また、シリンジ等の容器に注入する前、及び/又は、シリンジ等に注入した後に処理することが好ましい。更に、シリンジにノズルを接続するときに泡が混入することがあるので、描画前に十分にノズルからの吐出を行ない、吐出を安定させることも好ましい。
【0036】
ディスペンサーの操作条件と液状材料の特性とによって、堰の寸法をコントロールすることができる。例えば、堰の高さは、液状材料の粘度が高いほど、液状材料のチキソ性が高いほど、ノズル径が大きいほど、描画速度が遅いほど、硬化時の粘度低下が小さいほど、高くすることができる。また、重ね塗りを行なうことにより、更に高くすることも可能である。また、例えば、堰の幅は、液状材料の粘度が低いほど、チキソ性が低いほど、ノズル径が大きいほど、速度が遅いほど、粘度低下が大きいほど、広くできる。また、水平方向に隣接した多重描画を行なうことにより、更に広くすることができる。さらに、隣接する複数のノズルを備えたディスペンサーを用いると、一度の描画で水平方向に隣接した多重描画を行なうことが可能である。
【0037】
また、スクリーン印刷とは、孔版と呼ばれる印刷技術の一種であり、版に微細な孔を多数設け、圧力によって孔を通過した液状材料を転写する印刷方法である。具体的には、メッシュとマスクで構成するスクリーンを印刷対象に重ねておき、上から液状材料を供給しながらステージでスクリーンを押し当てる。これにより、マスクの開口部に当たるメッシュから液状材料が吐出され、マスク開口部と同じ画像が形成される。
【0038】
スクリーン印刷の操作条件によって、堰の寸法をコントロールすることができる。例えば、堰の高さは、メッシュスクリーンの厚みが厚いほど、開口率が大きいほど、高くすることができる。また、繰り返し印刷することにより、更に高くすることも可能である。なお、堰の幅は、通常はマスクの寸法に従う。
【0039】
また、レジスト法とは、堰の材料としてレジスト材料を用いて、このレジスト材料を基板へ塗布し、現像により所望の画像を形成させる方法である。レジスト材料としては、ポジ型、ネガ型のいずれのものを用いることもできる。ポジ型のレジスト材料としては、例えば感光性ポジ型樹脂または樹脂組成物を使用することができる。一方、ネガ型のレジスト材料としては、例えば光重合性及び/又は熱重合性の樹脂または樹脂組成物を使用することができる。基板へのレジスト材料の塗布方法としては、従来公知の方法、例えば、スピナー法、ワイヤーバー法、フローコート法、スリット・アンド・スピン法、ダイコート法、ロールコート法、スプレーコート法等によって行なうことができる。基板へのレジスト材料の塗布後は、例えば感光性レジスト材料を用いる場合は、レジスト塗布の後、露光工程、現像工程、熱処理工程等を経て、所望の画像を形成することができる。
【0040】
これらの中でも、ディスペンサーにより堰を設けることが好ましい。ディスペンサーを用いる場合、工程が複雑でないため、オーダーに応じた多種のデザイン設計が容易であり、また、堰を稜線を有さない形状にしてその表面を滑らかな凸曲面のみで形成できるため、境界部における光取り出し効果も優れるためである。
また、前記の方法は、2以上の方法を組み合わせて実施することもできる。
【0041】
なお、前記のように堰を稜線を有さない形状に形成する場合には、例えば、前記の方法により堰を形成した後、当該堰を熱溶融させる等の方法により、その表面を曲面状にする処理を行なうことが好ましい。
【0042】
[1−2]硬化性材料塗設工程
堰形成工程の後、硬化性材料を基板上に塗設する硬化性材料塗設工程を行なう。
【0043】
[1−2−1]硬化性材料
硬化性材料は、流体状の材料であって、何らかの硬化処理を施すことにより硬化する材料のことをいう。ここで、流体状とは、例えば液状又はゲル状のことをいう。また、硬化性材料は、光源からの光を所定の位置に伝送する導光部の役割を担保するものである。このような硬化性材料の具体的な種類に制限は無い。また、硬化性材料は、1種のみを用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。したがって、硬化性材料としては、無機系材料及び有機系材料並びに両者の混合物のいずれを用いることも可能である。
【0044】
無機系材料としては、例えば、金属アルコキシド、セラミック前駆体ポリマー若しくは金属アルコキシドを含有する溶液をゾル−ゲル法により加水分解重合して成る溶液、またはこれらの組み合わせを固化した無機系材料(例えばシロキサン結合を有する無機系材料)等を挙げることができる。
【0045】
一方、有機系材料としては、例えば、熱硬化性樹脂、光硬化性樹脂等が挙げられる。具体例を挙げると、ポリメタアクリル酸メチル等のメタアクリル樹脂;ポリスチレン、スチレン−アクリロニトリル共重合体等のスチレン樹脂;ポリカーボネート樹脂;ポリエステル樹脂;フェノキシ樹脂;ブチラール樹脂;ポリビニルアルコール;エチルセルロース、セルロースアセテート、セルロースアセテートブチレート等のセルロース系樹脂;エポキシ樹脂;フェノール樹脂;シリコーン樹脂等が挙げられる。
【0046】
これら硬化性材料の中では、特に大出力の光源を用いる場合、耐熱性や耐光性等を目的として珪素含有化合物を使用することが好ましい。珪素含有化合物とは分子中に珪素原子を有する化合物をいい、ポリオルガノシロキサン等の有機材料(シリコーン系材料)、酸化ケイ素、窒化ケイ素、酸窒化ケイ素等の無機材料、及びホウケイ酸塩、ホスホケイ酸塩、アルカリケイ酸塩等のガラス材料を挙げることができる。中でも、透明性、接着性、ハンドリングの容易さ、機械的、熱適応力の緩和特性に優れる等の点から、シリコーン系材料が好ましい。
【0047】
[1−2−1−1]シリコーン系材料
シリコーン系材料とは、通常、シロキサン結合を主鎖とする有機重合体をいい、例えば、下記の一般組成式(1)で表わされる化合物及び/又はそれらの混合物が挙げられる。(R123SiO1/2M(R45SiO2/2D(R6SiO3/2T(SiO4/2Q・・・式(1)
【0048】
一般組成式(1)において、R1からR6は、有機官能基、水酸基及び水素原子よりなる群から選択されるものを表わす。なお、R1からR6は、同じであってもよく、異なってもよい。
また、一般組成式(1)において、M、D、T及びQは、0以上1未満の数を表わす。ただし、M+D+T+Q=1を満足する数である。
なお、前記のシリコーン系材料を硬化性材料として用いる場合、その塗設に際しては、液状のシリコーン系材料を用いて封止した後、熱や光によって硬化させればよい。
【0049】
[1−2−1−2]シリコーン系材料の種類
シリコーン系材料を硬化のメカニズムにより分類すると、通常、付加重合硬化タイプ、縮重合硬化タイプ、紫外線硬化タイプ、パーオキサイド架硫タイプなどのシリコーン系材料を挙げることができる。これらの中では、付加重合硬化タイプ(付加型シリコーン樹脂)、縮合硬化タイプ(縮合型シリコーン樹脂)、紫外線硬化タイプが好適である。以下、付加型シリコーン系材料、及び縮合型シリコーン系材料について説明する。
【0050】
[1−2−1−2−1]付加型シリコーン系材料
付加型シリコーン系材料とは、ポリオルガノシロキサン鎖が、有機付加結合により架橋されたものをいう。代表的なものとしては、例えばビニルシランとヒドロシランとをPt触媒などの付加型触媒の存在下反応させて得られる、Si−C−C−Si結合を架橋点に有する化合物等を挙げることができる。これらは市販のものを使用することができ、例えば付加重合硬化タイプの具体的商品名としては信越化学工業社製「LPS−1400」「LPS−2410」「LPS−3400」等が挙げられる。
【0051】
[1−2−1−2−2]縮合型シリコーン系材料
縮合型シリコーン系材料とは、例えば、アルキルアルコキシシランの加水分解・重縮合で得られるSi−O−Si結合を架橋点に有する化合物を挙げることができる。具体的には、下記一般式(2)及び/又は(3)で表わされる化合物、及び/又はそのオリゴマーを加水分解・重縮合して得られる重縮合物が挙げられる。
【0052】
m+n1m-n (2)
(式(2)中、Mは、ケイ素、アルミニウム、ジルコニウム、及びチタンからなる群より選択される少なくとも1種の元素を表わし、Xは、加水分解性基を表わし、Y1は、1価の有機基を表わし、mは、Mの価数を表わす1以上の整数を表わし、nは、X基の数を表わす1以上の整数を表わす。但し、m≧nである。)
【0053】
(Ms+t1s-t-1u2 (3)
(式(3)中、Mは、ケイ素、アルミニウム、ジルコニウム、及びチタンからなる群より選択される少なくとも1種の元素を表わし、Xは、加水分解性基を表わし、Y1は、1価の有機基を表わし、Y2は、u価の有機基を表わし、sは、Mの価数を表わす1以上の整数を表わし、tは、1以上、s−1以下の整数を表わし、uは、2以上の整数を表わす。)
【0054】
また、縮合型シリコーン系材料には、硬化触媒を含有させておいても良い。硬化触媒としては、本発明の効果を著しく損なわない限り任意のものを用いることができ、例えば、金属キレート化合物などを好適に用いることができる。金属キレート化合物は、アルミニウム、ジルコニウム、スズ、亜鉛、チタン及びタンタルからなる群より選ばれるいずれか1以上を含むものが好ましく、Zrを含むものがさらに好ましい。なお、硬化触媒は、1種のみを用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
【0055】
このような縮合型シリコーン系材料としては、例えば、特願2006−47274号明細書、特願2006−47275号明細書、特願2006−47276号明細書、特願2006−47277号明細書及び特願2006−176468号明細書に記載の半導体発光デバイス用部材が好適である。
縮合型シリコーン系材料の中で、特に好ましい材料について、以下に説明する。
【0056】
シリコーン系材料は、一般に半導体発光素子や当該素子を配置する基板、パッケージ等との接着性が弱いことが多い。そこで、本発明に係る硬化性材料としては密着性が高いシリコーン系材料を用いることが好ましく、特に、以下の特徴〈1〉〜〈3〉のうち、1つ以上を有する縮合型シリコーン系材料を用いることがより好ましい。
〈1〉ケイ素含有率が20重量%以上である。
〈2〉後に詳述する方法によって測定した固体Si−核磁気共鳴(NMR)スペクトルにおいて、下記(a)及び/又は(b)のSiに由来するピークを少なくとも1つ有する。
(a)ピークトップの位置がテトラメトキシシランを基準としてケミカルシフト−40ppm以上、0ppm以下の領域にあり、ピークの半値幅が0.3ppm以上、3.0ppm以下であるピーク。
(b)ピークトップの位置がテトラメトキシシランを基準としてケミカルシフト−80ppm以上、−40ppm未満の領域にあり、ピークの半値幅が0.3ppm以上5.0ppm以下であるピーク。
〈3〉シラノール含有率が0.01重量%以上、10重量%以下である。
【0057】
本発明に係る硬化性材料としては、上記の特徴〈1〉〜〈3〉のうち、特徴〈1〉を有するシリコーン系材料が好ましい。さらに好ましくは、上記の特徴〈1〉及び〈2〉を有するシリコーン系材料が好ましい。特に好ましくは、上記の特徴〈1〉〜〈3〉を全て有するシリコーン系材料が好ましい。以下、上記の特徴〈1〉〜〈3〉について説明する。
【0058】
〔特徴〈1〉(ケイ素含有率)〕
本発明に係る硬化性材料として好適なシリコーン系材料のケイ素含有率は、通常20重量%以上であるが、中でも25重量%以上が好ましく、30重量%以上がより好ましい。一方、上限としては、SiO2のみからなるガラスのケイ素含有率が47重量%であると
いう理由から、通常47重量%以下の範囲である。
【0059】
なお、シリコーン系材料のケイ素含有率は、例えば以下の方法を用いて誘導結合高周波プラズマ分光(inductively coupled plasma spectrometry:以下適宜「ICP」と略する。)分析を行ない、その結果に基づいて算出することができる。
【0060】
{ケイ素含有率の測定}
シリコーン系材料を白金るつぼ中にて大気中、450℃で1時間、次いで750℃で1時間、950℃で1.5時間保持して焼成し、炭素成分を除去した後、得られた残渣少量に10倍量以上の炭酸ナトリウムを加えてバーナー加熱し溶融させ、これを冷却して脱塩水を加え、更に塩酸にてpHを中性程度に調整しつつケイ素として数ppm程度になるよう定容し、ICP分析を行なう。
【0061】
〔特徴〈2〉(固体Si−NMRスペクトル)〕
本発明に係る硬化性材料として好適なシリコーン系材料の固体Si−NMRスペクトルを測定すると、有機基の炭素原子が直接結合したケイ素原子に由来する前記(a)及び/又は(b)のピーク領域に少なくとも1本、好ましくは複数本のピークが観測される。
【0062】
ケミカルシフト毎に整理すると、本発明に係る硬化性材料として好適なシリコーン系材料において、前記(a)に記載のピークの半値幅は、分子運動の拘束が小さいために全般に前記(b)に記載のピークの場合より小さく、通常3.0ppm以下、好ましくは2.0ppm以下、また、通常0.3ppm以上の範囲である。
一方、前記(b)に記載のピークの半値幅は、通常5.0ppm以下、好ましくは4.0ppm以下、また、通常0.3ppm以上、好ましくは0.4ppm以上の範囲である。
【0063】
上記のケミカルシフト領域において観測されるピークの半値幅が大きすぎると、分子運動の拘束が大きくひずみの大きな状態となり、クラックが発生し易く、耐熱・耐候耐久性に劣る部材となる場合がある。例えば、四官能シランを多用した場合や、乾燥工程において急速な乾燥を行ない大きな内部応力を蓄えた状態などにおいて、半値幅範囲が上記の範囲より大きくなることがある。
また、ピークの半値幅が小さすぎると、その環境にあるSi原子はシロキサン架橋に関わらないことになり、三官能シランが未架橋状態で残留する例など、シロキサン結合主体で形成される物質より耐熱・耐候耐久性に劣る部材となる場合がある。
但し、大量の有機成分中に少量のSi成分が含まれるシリコーン系材料においては、−80ppm以上に上述の半値幅範囲のピークが認められても、良好な耐熱・耐光性及び塗布性能は得られない場合がある。
【0064】
本発明に係る硬化性材料として好適なシリコーン系材料のケミカルシフトの値は、例えば、以下の方法を用いて固体Si−NMR測定を行ない、その結果に基づいて算出することができる。また、測定データの解析(半値幅やシラノール量解析)は、例えばガウス関数やローレンツ関数を使用した波形分離解析等により、各ピークを分割して抽出する方法で行なう。
【0065】
{固体Si−NMRスペクトル測定及びシラノール含有率の算出}
シリコーン系材料について固体Si−NMRスペクトルを行なう場合、以下の条件で固体Si−NMRスペクトル測定及び波形分離解析を行なう。また、得られた波形データより、シリコーン系材料について、各々のピークの半値幅を求める。また、全ピーク面積に対するシラノール由来のピーク面積の比率より、全ケイ素原子中のシラノールとなっているケイ素原子の比率(%)を求め、別に分析したケイ素含有率と比較することによりシラノール含有率を求める。
【0066】
{装置条件}
装置:Chemagnetics社 Infinity CMX−400 核磁気共鳴分光装置
29Si共鳴周波数:79.436MHz
プローブ:7.5mmφCP/MAS用プローブ
測定温度:室温
試料回転数:4kHz
測定法:シングルパルス法
1Hデカップリング周波数:50kHz
29Siフリップ角:90゜
29Si90゜パルス幅:5.0μs
繰り返し時間:600s
積算回数:128回
観測幅:30kHz
ブロードニングファクター:20Hz
基準試料 テトラメトキシシラン
【0067】
{データ処理例}
シリコーン系材料については、512ポイントを測定データとして取り込み、8192ポイントにゼロフィリングしてフーリエ変換する。
{波形分離解析法}
フーリエ変換後のスペクトルの各ピークについてローレンツ波形及びガウス波形或いは両者の混合により作成したピーク形状の中心位置、高さ、半値幅を可変パラメータとして、非線形最小二乗法により最適化計算を行なう。
なお、ピークの同定は、AIChE Journal, 44(5), p.1141, 1998年等を参考にする。
【0068】
〔特徴〈3〉(シラノール含有率)〕
本発明に係る硬化性材料として好適なシリコーン系材料は、シラノール含有率が、通常0.01重量%以上、好ましくは0.1重量%以上、より好ましくは0.3重量%以上、また、通常10重量%以下、好ましくは8重量%以下、更に好ましくは5重量%以下の範囲である。シラノール含有率を低くすることにより、シラノール系材料は経時変化が少なく、長期の性能安定性に優れ、吸湿・透湿性何れも低い優れた性能を有する。但し、シラノールが全く含まれない部材は密着性に劣るため、シラノール含有率に上記のごとく最適な範囲が存在する。
【0069】
なお、シリコーン系材料のシラノール含有率は、例えば、前記の{固体Si−NMRスペクトル測定及びシラノール含有率の算出}の項において説明した方法を用いて固体Si−NMRスペクトル測定を行ない、全ピーク面積に対するシラノール由来のピーク面積の比率より、全ケイ素原子中のシラノールとなっているケイ素原子の比率(%)を求め、別に分析したケイ素含有率と比較することにより算出することができる。
【0070】
また、本発明に係る硬化性材料として好適なシリコーン系材料は、適当量のシラノールを含有しているため、導光部材を構成する基板や堰等の部材の表面に存在する極性部分にシラノールが水素結合し、密着性が発現する。極性部分としては、例えば、水酸基やメタロキサン結合の酸素等が挙げられる。
さらに、本発明に係る硬化性材料として好適なシリコーン系材料は、適切な触媒の存在下で加熱することにより、導光部材を構成する基板や堰等の部材の表面の水酸基との間に脱水縮合による共有結合を形成し、更に強固な密着性を発現することができる。
【0071】
一方、シラノールが多過ぎると、系内が増粘して塗布が困難になったり、活性が高くなり加熱により軽沸分が揮発する前に固化したりすることによって、発泡や内部応力の増大が生じ、クラックなどを誘起する場合がある。
【0072】
[1−2−2]その他の成分
硬化性材料には、本発明の効果を著しく損なわない限り、上記の無機系材料及び/又は有機系材料などに、更にその他の成分を混合して用いることも可能である。なお、その他の成分は、1種のみを用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。その他の成分の例を挙げると、蛍光体、無機粒子などが挙げられる。
【0073】
[1−2−2−1]蛍光体
硬化性材料は、蛍光体を含有させても良い。これにより、当該蛍光体を含有する蛍光体含有層を形成することができる。なお、蛍光体は1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の組み合わせ及び比率で併用しても良い。また、蛍光体は、導光層を構成する層のうち、1層のみに含有されていてもよく、2層以上に含有されていても良い。
【0074】
[1−2−2−1−1]蛍光体の種類
蛍光体の組成には特に制限はないが、結晶母体であるY23、Zn2SiO4等に代表される金属酸化物、Ca5(PO43Cl等に代表されるリン酸塩及びZnS、SrS、CaS等に代表される硫化物に、Ce、Pr、Nd、Pm、Sm、Eu、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb等の希土類金属のイオンやAg、Cu、Au、Al、Mn、Sb等の金属のイオンを付活剤または共付活剤として組み合わせたものが好ましい。
【0075】
結晶母体の好ましい例としては、例えば、(Zn,Cd)S、SrGa24、SrS、ZnS等の硫化物、Y22S等の酸硫化物、(Y,Gd)3Al512、YAlO3、BaMgAl1017、(Ba,Sr)(Mg,Mn)Al1017、(Ba,Sr,Ca)(Mg,Zn,Mn)Al1017、BaAl1219、CeMgAl1119、(Ba,Sr,Mg)O・Al23、BaAl2Si28、SrAl24、Sr4Al1425、Y3Al512等のアルミン酸塩、Y2SiO5、Zn2SiO4等の珪酸塩、SnO2、Y23等の酸化物、GdMgB510、(Y,Gd)BO3等の硼酸塩、Ca10(PO46(F,Cl)2、(Sr,Ca,Ba,Mg)10(PO46Cl2等のハロリン酸塩、Sr227、(La,Ce)PO4等のリン酸塩等を挙げることができる。
【0076】
ただし、上記の結晶母体及び付活剤または共付活剤は、元素組成には特に制限はなく、同族の元素と一部置き換えることもでき、得られた蛍光体は近紫外から可視領域の光を吸収して可視光を発するものであれば用いることが可能である。
具体的には、蛍光体として以下に挙げるものを用いることが可能であるが、これらはあくまでも例示であり、本発明で使用できる蛍光体はこれらに限られるものではない。なお、本明細書における蛍光体の例示では、構造の一部のみが異なる蛍光体を、適宜省略して示している。例えば、「Y2SiO5:Ce3+」、「Y2SiO5:Tb3+」及び「Y2SiO5:Ce3+,Tb3+」を「Y2SiO5:Ce3+,Tb3+」と、「La22S:Eu」、「Y22S:Eu」及び「(La,Y)22S:Eu」を「(La,Y)22S:Eu」とまとめて示している。省略箇所はカンマ(,)で区切って示す。
【0077】
[1−2−2−1−1−1]赤色蛍光体
赤色の蛍光を発する蛍光体(以下適宜、「赤色蛍光体」という)が発する蛍光の具体的な波長の範囲を例示すると、ピーク波長が、通常570nm以上、好ましくは580nm以上、また、通常700nm以下、好ましくは680nm以下が望ましい。
【0078】
このような赤色蛍光体としては、例えば、赤色破断面を有する破断粒子から構成され、赤色領域の発光を行なう(Mg,Ca,Sr,Ba)2Si58:Euで表わされるユウロピウム付活アルカリ土類シリコンナイトライド系蛍光体、規則的な結晶成長形状としてほぼ球形状を有する成長粒子から構成され、赤色領域の発光を行なう(Y,La,Gd,Lu)22S:Euで表わされるユウロピウム付活希土類オキシカルコゲナイド系蛍光体等が挙げられる。
【0079】
さらに、特開2004−300247号公報に記載された、Ti、Zr、Hf、Nb、Ta、W、及びMoよりなる群から選ばれる少なくも1種の元素を含有する酸窒化物及び/又は酸硫化物を含有する蛍光体であって、Al元素の一部又は全てがGa元素で置換されたアルファサイアロン構造をもつ酸窒化物を含有する蛍光体も用いることができる。なお、これらは酸窒化物及び/又は酸硫化物を含有する蛍光体である。
【0080】
また、そのほか、赤色蛍光体としては、(La,Y)22S:Eu等のEu付活酸硫化物蛍光体、Y(V,P)O4:Eu、Y23:Eu等のEu付活酸化物蛍光体、(Ba,Sr,Ca,Mg)2SiO4:Eu,Mn、(Ba,Mg)2SiO4:Eu,Mn等のEu,Mn付活珪酸塩蛍光体、(Ca,Sr)S:Eu等のEu付活硫化物蛍光体、YAlO3:Eu等のEu付活アルミン酸塩蛍光体、LiY9(SiO462:Eu、Ca28(SiO462:Eu、(Sr,Ba,Ca)3SiO5:Eu、Sr2BaSiO5:Eu等のEu付活珪酸塩蛍光体、(Y,Gd)3Al512:Ce、(Tb,Gd)3Al512:Ce等のCe付活アルミン酸塩蛍光体、(Ca,Sr,Ba)2Si58:Eu、(Mg,Ca,Sr,Ba)SiN2:Eu、(Mg,Ca,Sr,Ba)AlSiN3:Eu等のEu付活窒化物蛍光体、(Mg,Ca,Sr,Ba)AlSiN3:Ce等のCe付活窒化物蛍光体、(Sr,Ca,Ba,Mg)10(PO46Cl2:Eu,Mn等のEu,Mn付活ハロリン酸塩蛍光体、(Ba3Mg)Si28:Eu,Mn、(Ba,Sr,Ca,Mg)3(Zn,Mg)Si28:Eu,Mn等のEu,Mn付活珪酸塩蛍光体、3.5MgO・0.5MgF2・GeO2:Mn等のMn付活ゲルマン酸塩蛍光体、Eu付活αサイアロン等のEu付活酸窒化物蛍光体、(Gd,Y,Lu,La)23:Eu,Bi等のEu,Bi付活酸化物蛍光体、(Gd,Y,Lu,La)22S:Eu,Bi等のEu,Bi付活酸硫化物蛍光体、(Gd,Y,Lu,La)VO4:Eu,Bi等のEu,Bi付活バナジン酸塩蛍光体、SrY24:Eu,Ce等のEu,Ce付活硫化物蛍光体、CaLa24:Ce等のCe付活硫化物蛍光体、(Ba,Sr,Ca)MgP27:Eu,Mn、(Sr,Ca,Ba,Mg,Zn)227:Eu,Mn等のEu,Mn付活リン酸塩蛍光体、(Y,Lu)2WO6:Eu,Mo等のEu,Mo付活タングステン酸塩蛍光体、(Ba,Sr,Ca)xSiyz:Eu,Ce(但し、x、y、zは、1以上の整数)等のEu,Ce付活窒化物蛍光体、(Ca,Sr,Ba,Mg)10(PO46(F,Cl,Br,OH):Eu,Mn等のEu,Mn付活ハロリン酸塩蛍光体、((Y,Lu,Gd,Tb)1-xScxCey2(Ca,Mg)1-r(Mg,Zn)2+rSiz-qGeq12+δ等のCe付活珪酸塩蛍光体等を用いることも可能である。
【0081】
赤色蛍光体としては、β−ジケトネート、β−ジケトン、芳香族カルボン酸、又は、ブレンステッド酸等のアニオンを配位子とする希土類元素イオン錯体からなる赤色有機蛍光体、ペリレン系顔料(例えば、ジベンゾ{[f,f’]−4,4’,7,7’−テトラフェニル}ジインデノ[1,2,3−cd:1’,2’,3’−lm]ペリレン)、アントラキノン系顔料、レーキ系顔料、アゾ系顔料、キナクリドン系顔料、アントラセン系顔料、イソインドリン系顔料、イソインドリノン系顔料、フタロシアニン系顔料、トリフェニルメタン系塩基性染料、インダンスロン系顔料、インドフェノール系顔料、シアニン系顔料、ジオキサジン系顔料を用いることも可能である。
【0082】
また、赤色蛍光体のうち、ピーク波長が580nm以上、好ましくは590nm以上、また、620nm以下、好ましくは610nm以下の範囲内にあるものは、橙色蛍光体として好適に用いることができる。このような橙色蛍光体の例としては、(Sr,Ba)3SiO5:Eu、(Sr,Mg)3(PO42:Sn2+、SrCaAlSiN3:Eu、Eu付活αサイアロン等のEu付活酸窒化物蛍光体等が挙げられる。
【0083】
[1−2−2−1−1−2]緑色蛍光体
緑色の蛍光を発する蛍光体(以下適宜、「緑色蛍光体」という)が発する蛍光の具体的な波長の範囲を例示すると、ピーク波長が、通常490nm以上、好ましくは500nm以上、また、通常570nm以下、好ましくは550nm以下が望ましい。
【0084】
このような緑色蛍光体として、例えば、破断面を有する破断粒子から構成され、緑色領域の発光を行なう(Mg,Ca,Sr,Ba)Si222:Euで表わされるユウロピウム付活アルカリ土類シリコンオキシナイトライド系蛍光体、破断面を有する破断粒子から構成され、緑色領域の発光を行なう(Ba,Ca,Sr,Mg)2SiO4:Euで表わされるユウロピウム付活アルカリ土類シリケート系蛍光体等が挙げられる。
【0085】
また、そのほか、緑色蛍光体としては、Sr4Al1425:Eu、(Ba,Sr,Ca)Al24:Eu等のEu付活アルミン酸塩蛍光体、(Sr,Ba)Al2Si28:Eu、(Ba,Mg)2SiO4:Eu、(Ba,Sr,Ca,Mg)2SiO4:Eu、(Ba,Sr,Ca)2(Mg,Zn)Si27:Eu等のEu付活珪酸塩蛍光体、Y2SiO5:Ce,Tb等のCe,Tb付活珪酸塩蛍光体、Sr227−Sr225:Eu等のEu付活硼酸リン酸塩蛍光体、Sr2Si38−2SrCl2:Eu等のEu付活ハロ珪酸塩蛍光体、Zn2SiO4:Mn等のMn付活珪酸塩蛍光体、CeMgAl1119:Tb、Y3Al512:Tb等のTb付活アルミン酸塩蛍光体、Ca28(SiO462:Tb、La3Ga5SiO14:Tb等のTb付活珪酸塩蛍光体、(Sr,Ba,Ca)Ga24:Eu,Tb,Sm等のEu,Tb,Sm付活チオガレート蛍光体、Y3(Al,Ga)512:Ce、(Y,Ga,Tb,La,Sm,Pr,Lu)3(Al,Ga)512:Ce等のCe付活アルミン酸塩蛍光体、Ca3Sc2Si312:Ce、Ca3(Sc,Mg,Na,Li)2Si312:Ce等のCe付活珪酸塩蛍光体、CaSc24:Ce等のCe付活酸化物蛍光体、SrSi222:Eu、(Sr,Ba,Ca)Si222:Eu、Eu付活βサイアロン等のEu付活酸窒化物蛍光体、BaMgAl1017:Eu,Mn等のEu,Mn付活アルミン酸塩蛍光体、SrAl24:Eu等のEu付活アルミン酸塩蛍光体、(La,Gd,Y)22S:Tb等のTb付活酸硫化物蛍光体、LaPO4:Ce,Tb等のCe,Tb付活リン酸塩蛍光体、ZnS:Cu,Al、ZnS:Cu,Au,Al等の硫化物蛍光体、(Y,Ga,Lu,Sc,La)BO3:Ce,Tb、Na2Gd227:Ce,Tb、(Ba,Sr)2(Ca,Mg,Zn)B26:K,Ce,Tb等のCe,Tb付活硼酸塩蛍光体、Ca8Mg(SiO44Cl2:Eu,Mn等のEu,Mn付活ハロ珪酸塩蛍光体、(Sr,Ca,Ba)(Al,Ga,In)24:Eu等のEu付活チオアルミネート蛍光体やチオガレート蛍光体、(Ca,Sr)8(Mg,Zn)(SiO44Cl2:Eu,Mn等のEu,Mn付活ハロ珪酸塩蛍光体等を用いることも可能である。
【0086】
また、緑色蛍光体としては、ピリジン−フタルイミド縮合誘導体、ベンゾオキサジノン系、キナゾリノン系、クマリン系、キノフタロン系、ナルタル酸イミド系等の蛍光色素、ヘキシルサリチレートを配位子として有するテルビウム錯体等の有機蛍光体を用いることも可能である。
【0087】
[1−2−2−1−1−3]青色蛍光体
青色の蛍光を発する蛍光体(以下適宜、「青色蛍光体」という)が発する蛍光の具体的な波長の範囲を例示すると、ピーク波長が、通常420nm以上、好ましくは440nm以上、また、通常480nm以下、好ましくは470nm以下が望ましい。
【0088】
このような青色蛍光体としては、規則的な結晶成長形状としてほぼ六角形状を有する成長粒子から構成され、青色領域の発光を行なうBaMgAl1017:Euで表わされるユウロピウム付活バリウムマグネシウムアルミネート系蛍光体、規則的な結晶成長形状としてほぼ球形状を有する成長粒子から構成され、青色領域の発光を行なう(Ca,Sr,Ba)5(PO43Cl:Euで表わされるユウロピウム付活ハロリン酸カルシウム系蛍光体、規則的な結晶成長形状としてほぼ立方体形状を有する成長粒子から構成され、青色領域の発光を行なう(Ca,Sr,Ba)259Cl:Euで表わされるユウロピウム付活アルカリ土類クロロボレート系蛍光体、破断面を有する破断粒子から構成され、青緑色領域の発光を行なう(Sr,Ca,Ba)Al24:Euまたは(Sr,Ca,Ba)4Al1425:Euで表わされるユウロピウム付活アルカリ土類アルミネート系蛍光体等が挙げられる。
【0089】
また、そのほか、青色蛍光体としては、Sr227:Sn等のSn付活リン酸塩蛍光体、Sr4Al1425:Eu、BaMgAl1017:Eu、BaAl813:Eu等のEu付活アルミン酸塩蛍光体、SrGa24:Ce、CaGa24:Ce等のCe付活チオガレート蛍光体、(Ba,Sr,Ca)MgAl1017:Eu、BaMgAl1017:Eu,Tb,Sm等のEu付活アルミン酸塩蛍光体、(Ba,Sr,Ca)MgAl1017:Eu,Mn等のEu,Mn付活アルミン酸塩蛍光体、(Sr,Ca,Ba,Mg)10(PO46Cl2:Eu、(Ba,Sr,Ca)5(PO43(Cl,F,Br,OH):Eu,Mn,Sb等のEu付活ハロリン酸塩蛍光体、BaAl2Si28:Eu、(Sr,Ba)3MgSi28:Eu等のEu付活珪酸塩蛍光体、Sr227:Eu等のEu付活リン酸塩蛍光体、ZnS:Ag、ZnS:Ag,Al等の硫化物蛍光体、Y2SiO5:Ce等のCe付活珪酸塩蛍光体、CaWO4等のタングステン酸塩蛍光体、(Ba,Sr,Ca)BPO5:Eu,Mn、(Sr,Ca)10(PO46・nB23:Eu、2SrO・0.84P25・0.16B23:Eu等のEu,Mn付活硼酸リン酸塩蛍光体、Sr2Si38・2SrCl2:Eu等のEu付活ハロ珪酸塩蛍光体等を用いることも可能であ
る。
また、青色蛍光体としては、例えば、ナフタル酸イミド系、ベンゾオキサゾール系、スチリル系、クマリン系、ピラゾリン系、トリアゾール系化合物の蛍光色素、ツリウム錯体等の有機蛍光体等を用いることも可能である。
【0090】
[1−2−2−1−1−4]黄色蛍光体
黄色の蛍光を発する蛍光体(以下適宜、「黄色蛍光体」という。)が発する蛍光の具体的な波長の範囲を例示すると、通常530nm以上、好ましくは540nm以上、より好ましくは550nm以上、また、通常620nm以下、好ましくは600nm以下、より好ましくは580nm以下の波長範囲にあることが好適である。黄色蛍光体の発光ピーク波長が短すぎると黄色成分が少なくなり演色性が劣ることとなる可能性があり、長すぎると導光部材から放射される光の輝度が低下する可能性がある。
【0091】
このような黄色蛍光体としては、例えば、各種の酸化物系、窒化物系、酸窒化物系、硫化物系、酸硫化物系等の蛍光体が挙げられる。特に、RE3512:Ce(ここで、REは、Y,Tb,Gd,Lu,Smの少なくとも1種類の元素を表わし、Mは、Al,Ga,Scの少なくとも1種類の元素を表わす。)やM23324312:Ce(ここで、M2
は2価の金属元素、M3は3価の金属元素、M4は4価の金属元素)等で表わされるガーネット構造を有するガーネット系蛍光体、AE254:Eu(ここで、AEは、Ba,Sr,Ca,Mg,Znの少なくとも1種類の元素を表わし、M5は、Si,Geの少なく
とも1種類の元素を表わす。)等で表わされるオルソシリケート系蛍光体、これらの系の蛍光体の構成元素の酸素の一部を窒素で置換した酸窒化物系蛍光体、AEAlSiN3:Ce(ここで、AEは、Ba,Sr,Ca,Mg,Znの少なくとも1種類の元素を表わす。)等のCaAlSiN3構造を有する窒化物系蛍光体等のCeで付活した蛍光体などが挙げられる。
また、そのほか、黄色蛍光体としては、CaGa24:Eu(Ca,Sr)Ga24:Eu、(Ca,Sr)(Ga,Al)24:Eu等の硫化物系蛍光体、Cax(Si,Al)12(O,N)16:Eu等のSiAlON構造を有する酸窒化物系蛍光体等のEuで付活した蛍光体を用いることも可能である。
【0092】
[1−2−2−1−1−5]その他の蛍光体
蛍光体としては、上述したもの以外の蛍光体を含有させることも可能である。例えば、導光層自体をイオン状の蛍光物質や有機・無機の蛍光成分を均一・透明に溶解・分散させた蛍光ガラスで形成することもできる。
【0093】
[1−2−2−1−2]蛍光体の粒径
蛍光体の粒径は特に制限はないが、中央粒径(D50)で、通常0.1μm以上、好ましくは2μm以上、さらに好ましくは5μm以上である。また、通常100μm以下、好ましくは50μm以下、さらに好ましくは20μm以下である。蛍光体の中央粒径(D50)が上記範囲にある場合は、蛍光体含有層において、光源から伝送された光が充分に散乱される。また、光源から伝達された光が充分に蛍光体粒子に吸収されるため、波長変換が高効率に行なわれると共に、蛍光体から発せられる光が全方向に照射される。これにより、複数種類の蛍光体からの一次光を混色して所望の色(例えば、白色)にすることができると共に、均一な色と照度が得られる。一方、蛍光体の中央粒径(D50)が上記範囲より大きい場合は、蛍光体が発光部の空間を充分に埋めることができないため、光源から伝達された光が充分に蛍光体に吸収されない可能性がある。また、蛍光体の中央粒径(D50)が、上記範囲より小さい場合は、蛍光体の発光効率が低下するため、照度が低下する可能性がある。
【0094】
蛍光体粒子の粒度分布(QD)は、蛍光体含有層での粒子の分散状態をそろえるために小さい方が好ましいが、小さくするためには分級収率が下がってコストアップにつながるので、通常0.03以上、好ましくは0.05以上、更に好ましくは0.07以上である。また、通常0.4以下、好ましくは0.3以下、更に好ましくは0.2以下である。
なお、中央粒径(D50)および粒度分布(QD)は、重量基準粒度分布曲線から求めることが出来る。前記重量基準粒度分布曲線は、レーザ回折・散乱法により粒度分布を測定し得られるもので、具体的には、例えば以下のように測定することが出来る。
【0095】
〔重量基準粒度分布曲線の測定方法〕
(1)気温25℃、湿度70%の環境下において、エチレングリコールなどの溶媒に蛍光体を分散させる。
(2)レーザ回折式粒度分布測定装置(堀場製作所 LA−300)により、粒径範囲0.1μm〜600μmにて測定する。
(3)この重量基準粒度分布曲線において積算値が50%のときの粒径値を中央粒径D50と表記する。また、積算値が25%及び75%の時の粒径値をそれぞれD25、D75と表記し、QD=(D75−D25)/(D75+D25)と定義する。QDが小さいことは粒度分布が狭いことを意味する。
【0096】
また、蛍光体粒子の形状も、蛍光体含有層の形成に影響を与えない限り、任意である。例えば、蛍光体含有層の形成のための硬化性材料の流動性等に影響を与えない限り、特に限定されない。
【0097】
[1−2−2−1−3]蛍光体の表面処理
蛍光体は、耐水性を高める目的で、または蛍光体含有層中で蛍光体の不要な凝集を防ぐ目的で、表面処理が行なわれていてもよい。かかる表面処理の例としては、特開2002−223008号公報に記載の有機材料、無機材料、ガラス材料などを用いた表面処理、特開2000−96045号公報等に記載の金属リン酸塩による被覆処理、金属酸化物による被覆処理、シリカコート等の公知の表面処理などが挙げられる。
【0098】
表面処理の具体例を挙げると、例えば蛍光体の表面に上記金属リン酸塩を被覆させるには、以下の(i)〜(iii)の表面処理を行なう。
(i)所定量のリン酸カリウム、リン酸ナトリウムなどの水溶性のリン酸塩と、塩化カルシウム、硫酸ストロンチウム、塩化マンガン、硝酸亜鉛等のアルカリ土類金属、Zn及びMnの中の少なくとも1種の水溶性の金属塩化合物とを蛍光体懸濁液中に混合し、攪拌する。
(ii)アルカリ土類金属、Zn及びMnの中の少なくとも1種の金属のリン酸塩を懸濁液中で生成させると共に、生成したこれらの金属リン酸塩を蛍光体表面に沈積させる。
(iii)水分を除去する。
【0099】
また、表面処理の他の例のうち好適な例を挙げると、シリカコートとしては、水ガラスを中和してSiO2を析出させる方法、アルコキシシランを加水分解したものを表面処理
する方法(例えば、特開平3−231987号公報)等が挙げられ、分散性を高める点においてはアルコキシシランを加水分解したものを表面処理する方法が好ましい。
【0100】
[1−2−2−1−4]蛍光体の混合方法
蛍光体粒子を硬化性材料に含有させる際の混合方法は特に制限されない。例えば、蛍光体粒子の分散状態が良好な場合であれば、上述の硬化性材料に後混合するだけでよい。即ち、硬化性材料と蛍光体とを混合し、この蛍光体を含有する硬化性材料を用意して、この蛍光体を含有する硬化性材料を塗設して層を作製すればよい。また、例えばアルキルアルコキシシランの加水分解・重縮合を硬化性材料として用いる場合、その硬化性材料中で蛍光体粒子の凝集が起こりやすいのであれば、加水分解前の原料化合物を含む反応用溶液(以下適宜「加水分解前溶液」という。)に蛍光体粒子を前もって混合し、蛍光体粒子の存在下で加水分解・重縮合を行なうと、粒子の表面が一部シランカップリング処理され、蛍光体粒子の分散状態が改善される。
【0101】
なお、蛍光体の中には加水分解性のものもあるが、前記のアルキルアルコキシシランの加水分解・重縮合物を硬化性材料として用いた場合には、塗布前の流体状態において、水分はシラノール体として潜在的に存在し、遊離の水分はほとんど存在しないので、そのような蛍光体でも加水分解してしまうことなく使用することが可能である。また、加水分解・重縮合後の硬化性材料を脱水・脱アルコール処理を行なってから使用すれば、そのような蛍光体との併用が容易となる利点もある。
【0102】
また、前記のアルキルアルコキシシランの加水分解・重縮合物を硬化性材料として用い、さらに、蛍光体粒子や無機粒子(後述する)を硬化性材料に含有させる場合には、粒子表面に分散性改善のため有機配位子による修飾を行なうことも可能である。他の付加型シリコーン樹脂は、このような有機配位子により硬化阻害を受けやすく、このような表面処理を行なった粒子を混合・硬化することができない場合がある。これは、付加反応型シリコーン樹脂に使用されている白金系の硬化触媒が、これらの有機配位子と強い相互作用を持ち、ヒドロシリル化の能力を失い、硬化不良を起こすためである。このような被毒物質としてはN、P、S等を含む有機化合物の他、Sn、Pb、Hg、Bi、As等の重金属のイオン性化合物、アセチレン基等、多重結合を含む有機化合物(フラックス、アミン類、塩ビ、硫黄加硫ゴム)などが挙げられる。これに対し、前記のアルキルアルコキシシランの加水分解・重縮合物は、これらの被毒物質による硬化阻害を起こしにくい縮合型の硬化機構によるものである。このため、前記のアルキルアルコキシシランの加水分解・重縮合物は、有機配位子により表面改質した蛍光体粒子や無機粒子、さらには錯体蛍光体などの蛍光成分との混合使用の自由度が大きく、蛍光体バインダや高屈折率ナノ粒子導入透明材料として優れた特徴を備えるものである。
【0103】
[1−2−2−1−5]蛍光体の含有率
硬化性材料中における蛍光体の含有率は、本発明の効果を著しく損なわない限り任意であり、その適用形態により自由に選定できる。ただし、蛍光体含有層中の蛍光体総量として、通常0.1重量%以上、好ましくは1重量%以上、より好ましくは5重量%以上、また、通常35重量%以下、好ましくは30重量%以下、より好ましくは28重量%以下である。また、流体状の硬化性材料における蛍光体の含有率は、蛍光体含有層における蛍光体の含有率が前記範囲に収まるように設定すればよい。したがって、流体状の硬化性材料が硬化性材料硬化工程において重量変化しない場合は硬化性材料における蛍光体の含有率は蛍光体含有層における蛍光体の含有率と同様になる。また、流体状の硬化性材料が溶媒等を含有している場合など、硬化性材料が硬化性材料硬化工程において重量変化する場合は、その溶媒等を除いた硬化性材料における蛍光体の含有率が蛍光体含有層における蛍光体の含有率と同様になるようにすればよい。
【0104】
一般に、光源から伝送される光の発光色と蛍光体の発光色とを混色して所望の発光色を得る場合、光源から伝送される光の発光色を一部透過させることになるため、蛍光体含有率は低濃度となり、上記範囲の下限近くの領域となる。一方、光源から伝送される光を全て蛍光体発光色に変換して所望の発光色を得る場合には、高濃度の蛍光体が好ましいため、蛍光体含有率は上記範囲の上限近くの領域となる。蛍光体含有率がこの範囲より多いと塗布性能が悪化したり、光学的な干渉作用により蛍光体の利用効率が低くなり、輝度が低くなったりする可能性がある。また、蛍光体含有率がこの範囲より少ないと、蛍光体による波長変換が不十分となり、目的とする発光色を得られなくなる可能性がある。
【0105】
ただし、前記の蛍光体の含有率は、特に白色の光を得る場合に好適なものである。したがって、具体的な蛍光体含有率は目的色、蛍光体の発光効率、混色形式、蛍光体比重、塗布膜厚、光学部材の形状により多様であり、この限りではない。
【0106】
ところで、前記のアルキルアルコキシシランの加水分解・重縮合物を硬化性材料として用いた場合には、当該加水分解・重縮合物はエポキシ樹脂やシリコーン樹脂などの他の硬化性材料と比較して低粘度であり、かつ蛍光体や無機粒子とのなじみが良く、高濃度の蛍光体や無機粒子を分散しても十分に塗布性能を維持することが出来る利点を有する。また、必要に応じて重合度の調整やアエロジル等チキソ材を含有させることにより高粘度にすることも可能であり、目的の蛍光体含有量に応じた粘度の調整幅が大きく、塗布対象物の種類や形状さらにはポッティング・スピンコート・印刷などの各種塗布方法に柔軟に対応できる塗布液を提供することが出来る。
【0107】
なお、前記の蛍光体の含有率は、蛍光体組成が特定出来ていれば、蛍光体含有試料を粉砕後予備焼成し炭素成分を除いた後にフッ酸処理によりケイ素成分をケイフッ酸として除去し、残渣を希硫酸に溶解して主成分の金属元素を水溶液化し、ICPや炎光分析、蛍光X線分析などの公知の元素分析方法により主成分金属元素を定量し、計算により蛍光体含有率を求めることが出来る。また、蛍光体形状や粒径が均一で比重が既知であれば塗布物断面の画像解析により単位面積あたりの粒子個数を求め蛍光体含有率に換算する簡易法も用いることが出来る。
【0108】
[1−2−2−2]無機粒子
また、硬化性材料には、光学的特性や作業性を向上させるため、また、以下の〔1〕〜〔5〕の何れかの効果を得ることを目的として、更に無機粒子を含有させても良い。なお、無機粒子は、1種のみを用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
【0109】
〔1〕硬化性材料に無機粒子を光散乱剤として含有させることにより、当該硬化性材料で形成された層を散乱層とする。これにより、光源から伝送された光を散乱層において散乱させることができ、導光部材から外部に放射される光の指向角を広げることが可能となる。また、蛍光体と組み合わせて無機粒子を光散乱剤として含有させれば、蛍光体に当たる光量を増加させ、波長変換効率を向上させることが可能となる。
〔2〕硬化性材料に無機粒子を結合剤として含有させることにより、当該硬化性材料で形成された層においてクラックの発生を防止することができる。
〔3〕硬化性材料に無機粒子を粘度調整剤として含有させることにより、当該硬化性材料の粘度を高くすることができる。
〔4〕硬化性材料に無機粒子を含有させることにより、当該硬化性材料で形成された層の収縮を低減することができる。
〔5〕硬化性材料に無機粒子を含有させることにより、当該硬化性材料で形成された層の屈折率を調整して、光取り出し効率を向上させることができる。
【0110】
ただし、硬化性材料に無機粒子を含有させる場合、その無機粒子の種類及び量によって得られる効果が異なる。
例えば、無機粒子が粒径約10nmの超微粒子状シリカ、ヒュームドシリカ(乾式シリカ。例えば、「日本アエロジル株式会社製、商品名:AEROSIL#200」、「トクヤマ社製、商品名:レオロシール」等)の場合、硬化性材料のチクソトロピック性が増大するため、上記〔3〕の効果が大きい。
また、例えば、無機粒子が粒径約数μmの破砕シリカ若しくは真球状シリカの場合、チクソトロピック性の増加はほとんど無く、当該無機粒子を含む層の骨材としての働きが中心となるので、上記〔2〕及び〔4〕の効果が大きい。
また、例えば、硬化性材料に用いられる他の化合物(前記の無機系材料及び/又は有機系材料など)とは屈折率が異なる粒径約1μmの無機粒子を用いると、前記化合物と無機粒子との界面における光散乱が大きくなるので、上記〔1〕の効果が大きい。
また、例えば、硬化性材料に用いられる他の化合物より屈折率の大きな、中央粒径が通常1nm以上、好ましくは3nm以上、また、通常10nm以下、好ましくは5nm以下、具体的には発光波長以下の粒径をもつ無機粒子を用いると、当該無機粒子を含む層の透明性を保ったまま屈折率を向上させることができるので、上記〔5〕の効果が大きい。
【0111】
従って、混合する無機粒子の種類は目的に応じて選択すれば良い。また、その種類は単一でも良く、複数種を組み合わせてもよい。また、分散性を改善するためにシランカップリング剤などの表面処理剤で表面処理されていても良い。
【0112】
[1−2−2−2−1]無機粒子の種類
使用する無機粒子の種類としては、例えば、シリカ、チタン酸バリウム、酸化チタン、酸化ジルコニウム、酸化ニオブ、酸化アルミニウム、酸化セリウム、酸化イットリウムなどの無機酸化物粒子やダイヤモンド粒子が挙げられるが、目的に応じて他の物質を選択することもでき、これらに限定されるものではない。
【0113】
無機粒子の形態は粉体状、スラリー状等、目的に応じいかなる形態でもよいが、透明性を保つ必要がある場合は、当該無機粒子を含有させる層に含有されるその他の材料と屈折率を同等としたり、水系・溶媒系の透明ゾルとして硬化性材料に加えたりすることが好ましい。
【0114】
[1−2−2−2−2]無機粒子の中央粒径
これらの無機粒子(一次粒子)の中央粒径は特に限定されないが、通常、蛍光体粒子の1/10以下程度である。具体的には、目的に応じて以下の中央粒径のものが用いられる。例えば、無機粒子を光散乱材として用いるのであれば、その中央粒径は通常0.05μm以上、好ましくは0.1μm以上、また、通常50μm以下、好ましくは20μm以下である。また、例えば、無機粒子を骨材として用いるのであれば、その中央粒径は1μm〜10μmが好適である。また、例えば、無機粒子を増粘剤(チキソ剤)として用いるのであれば、その中央粒子は10〜100nmが好適である。また、例えば、無機粒子を屈折率調整剤として用いるのであれば、その中央粒径は1〜10nmが好適である。
【0115】
[1−2−2−2−3]無機粒子の混合方法
無機粒子を混合する方法は特に制限されない。通常は、蛍光体と同様に遊星攪拌ミキサー等を用いて脱泡しつつ混合することが推奨される。例えばアエロジルのような凝集しやすい小粒子を混合する場合には、粒子混合後必要に応じビーズミルや三本ロールなどを用いて凝集粒子の解砕を行なってから蛍光体等の混合容易な大粒子成分を混合しても良い。
【0116】
[1−2−2−2−4]無機粒子の含有率
硬化性材料中における無機粒子の含有率は、本発明の効果を著しく損なわない限り任意であり、その適用形態により自由に選定できる。ただし、当該無機粒子を含有する層における無機粒子の含有率は、その適用形態により選定することが好ましい。例えば、無機粒子を光散乱剤として用いる場合は、その層内における含有率は0.01〜10重量%が好適である。また、例えば、無機粒子を骨材として用いる場合は、その層内における含有率は1〜50重量%が好適である。また、例えば、無機粒子を増粘剤(チキソ剤)として用いる場合は、その層内における含有率は0.1〜20重量%が好適である。また、例えば、無機粒子を屈折率調整剤として用いる場合は、その層内における含有率は10〜80重量%が好適である。無機粒子の量が少なすぎると所望の効果が得られなくなる可能性があり、多すぎると硬化物の密着性、透明性、硬度等の諸特性に悪影響を及ぼす可能性がある。また、流体状の硬化性材料における無機粒子の含有率は、各層における無機粒子の含有率が前記範囲に収まるように設定すればよい。したがって、流体状の硬化性材料が乾燥工程において重量変化しない場合は硬化性材料における無機粒子の含有率は形成される各層における無機粒子の含有率と同様になる。また、流体状の硬化性材料が溶媒等を含有している場合など、当該硬化性材料が乾燥工程において重量変化する場合は、その溶媒等を除いた硬化性材料における無機粒子の含有率が、形成される各層における無機粒子の含有率と同様になるようにすればよい。
【0117】
なお、無機粒子の含有率は、前出の蛍光体の含有率と同様に測定することが出来る。
【0118】
さらに、硬化性材料として前記のアルキルアルコキシシランの加水分解・重縮合物を用いる場合には、当該加水分解・重縮合物はエポキシ樹脂やシリコーン樹脂などの他の硬化性材料と比較して低粘度であり、かつ蛍光体や無機粒子とのなじみが良く、高濃度の無機粒子を分散しても十分に塗布性能を維持することが出来る利点を有する。また、必要に応じて重合度の調整やアエロジル等のチキソ材を含有させることにより高粘度にすることも可能であり、目的の無機粒子含有量に応じた粘度の調整幅が大きく、塗布対象物の種類や形状さらにはポッティング、スピンコート、印刷などの各種塗布方法に柔軟に対応できる塗布液を提供することが出来る。
【0119】
[1−2−2]硬化性材料の塗設方法
前記の硬化性材料を塗設する場合、その塗設方法に制限はない。塗設方法の例を挙げると、キャスト法、スピン法、ディップ法などを用いることができる。キャスト法とは、所定量の液状の硬化性材料を塗布面にのせ、自動的に又は刷毛などにより塗り広げる方法である。また、スピン法とは、遠心力により塗布面に載せた液状の硬化性材料を均一膜厚にする方法である。さらに、ディップ法とは、液状の硬化性材料に塗布面を浸し、一定速度で引き上げることにより、塗布面に所定量の硬化性材料を付着させる方法である。中でも、堰で囲まれた範囲に均一膜厚で硬化性材料を塗設するにはキャスト法が好ましい。他の方法では、堰に液溜りが生じやすく、均一な膜厚を実現しにくいので、導光特性の悪化を招く可能性がある。
【0120】
キャスト法の塗設条件に制限は無いが、通常は、ディスペンサーを用いて所定量の硬化性材料を所定の位置に吐出し、目的膜厚のクリアランスを設け、へら状のかきとり板で硬化性材料をしごいて平らにする。この際、粘性を低く調節した液状の硬化性材料をディスペンサーで計量吐出し、時間をおいたり、振動を与えたりして、膜面を均一化(レベリング)させることが好ましい。また、膜面の均一化のためには、ディスペンサーのマルチノズルを用いることも有用である。
キャスト法で硬化性材料の塗設を行なう場合の温度、湿度、圧力等の条件に制限は無いが、通常は、温度0℃以上100℃以下、相対湿度5%以上90%以下、圧力1Pa以上200kPa以下が好ましい。また、結露を生じるような環境は、好ましくない。
【0121】
硬化性材料の塗設の際、形成する塗膜の厚さに制限は無いが、通常1μm以上、中でも5μm以上、特には10μm以上が好ましく、また、通常5mm以下、中でも2mm以下、特には1mm以下が好ましい。塗膜が薄すぎると光の導光量が制限され、暗くなる可能性があり、厚すぎると重く大きくなるため、小型部品としての魅力が薄れる可能性がある。
【0122】
ただし、塗設の際、硬化性材料は、通常、前記の堰を利用してその塗膜の各領域の形成位置を制御される。即ち、硬化性材料が前記の堰によって堰き止められるようにして塗設される結果、形成される塗膜の平面形状は、堰により描画された形状に応じて堰に区画された領域ごとにその平面形状を制御される。例えば、堰が閉じた枠を形成している場合には、通常は、硬化性材料の塗膜は当該枠内に充填されるようにして形成されるので、当該塗膜の平面形状は当該枠内において堰が描画された形状に一致するようになる。また、例えば、堰が閉じた枠を形成していない場合でも、少なくとも当該堰に当接する部分では硬化性材料の塗膜の縁部は堰に沿って形成されるので、その縁部の平面形状は堰が描画された形状に一致するようになる。また、予め堰を設け、その堰に堰き止められるようにして硬化性材料を塗設するので、導光層を通じて伝送された光が当該堰まで確実に届くように設計することが可能となり、このため、堰による発光部分の制御も可能となる。
このように、堰形成工程の後で硬化性材料塗設工程を行なうことで、予め設けておいた堰によって硬化性材料の塗膜の平面形状を容易に且つ自由に設計できる。また、堰を利用して、堰により区画された領域毎に異なる材料及び層構成で、塗膜を容易且つ自由に設計できる。このため、従来のような大幅な形状及び規格の変更を行なわなくとも、導光部材の発光部分のデザインを自由に設計することが可能になっている。
【0123】
[1−3]硬化性材料硬化工程
硬化性材料塗設工程の後、基板上に塗設した硬化性材料を硬化させる硬化性材料硬化工程を行なう。これにより、基板上に形成された硬化性材料の塗膜が硬化され、導光層が形成される。
【0124】
硬化の方法は、硬化性材料の種類に応じて適切な条件を任意に選択すればよい。硬化性材料は、通常、光硬化性材料、熱硬化性材料及び光熱硬化性材料に分類されるため、各硬化性材料のタイプに応じた条件を設定すればよい。
【0125】
例えば硬化性材料が光硬化性材料である場合には、硬化に適した波長の光を照射すればよい。以下、具体例を挙げて説明する。
光硬化性材料には、重合して硬化に係る部分の構造に応じて、アクリル系、メタクリル系、エポキシ系などの種類がある。このうち、アクリル系及びメタクリル系のものは、通常、ラジカル発生型の重合開始剤を併用する。したがって、重合開始剤のラジカル発生に適した波長の光(例えば、紫外線)を照射して、当該アクリル系及びメタクリル系の硬化性材料を硬化させればよい。このラジカル発生型の重合開始剤の例としては、アルキルフェノン系、アシルフォスフィンオキサイド系、チタノセン系、オキシムエステル系などが挙げられ、これらは1種のみで用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。さらに、例えばアミノベンゾエート系等の重合促進剤を併用することもある。
【0126】
また、エポキシ系の硬化性材料は、光のみで硬化するもの、及び、光と熱とのいずれでも硬化するものがある。通常、このエポキシ系の硬化性材料を硬化させる場合には、カチオン発生型の重合開始剤を併用し、重合開始剤のカチオン発生に適した波長の光及び/又は熱を加えて硬化させる。このカチオン発生型の重合開始剤の例としてはスルホニウム塩、ヨードニウム塩などが挙げられ、これらは1種のみでも、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してでも用いられる。中でも、主に光のみで硬化させる場合には、PF6
(ヘキサフルオロフォスフェート)の塩等が好適であり、また、光及び熱で硬化させる場合には、SbF6(ヘキサフルオロアンチモン)の塩等が好適である。
【0127】
一方、硬化性材料が熱硬化性材料である場合には、硬化性材料を塗設後、加熱することにより硬化を行なう。加熱の方式に制限は無いが、例えば、熱風を当てる、ヒートブロックからの電熱を利用する、マイクロウェーブを利用する、輻射熱を利用する、などの方式が挙げられる。通常は、定置式の箱型オーブン、ホットプレート、電子レンジ、遠赤炉などを用いることが好ましい。
【0128】
硬化性材料が重縮合型の硬化メカニズムをもつ場合には、通常、硬化性材料中には重合に伴って揮発する成分が存在する。これらの揮発成分を除去することによって重合を更に促進できるため、硬化に用いる装置は、硬化の際の雰囲気を新鮮なガスで置換する手段を有することが好ましい。特に脱水縮合型の硬化性材料の場合、例えば、定期的に硬化還流ガスの置換を行なったり、ガスの流通下で硬化を行なったり、流通ガスの乾燥を行なったり、硬化還流乾燥剤を配置したりすることが好ましい。
【0129】
また、加熱炉を用いて加熱を行なう場合には、枚様処理、回分処理、移動ベルト、炉内を通過させる連続処理、担当数をまとめて炉に入れる処理のいずれを用いてもよく、生産性により選択できる。また、加熱炉としては、例えばトンネル炉、箱型炉などが好適に用いられる。
【0130】
ところで、導光層を構成する材料は、堰を形成する材料も含め、硬化により収縮することがある。したがって、これらの材料は、圧縮や引張りに対して耐性を有していることが好ましい。以下、この点を、例を挙げて説明する。
通常、導光層に対して基板は異なる熱膨張係数を有する。例えば、熱硬化時に熱によって硬化されると、当該硬化した熱硬化性材料は室温に冷却される際に収縮することがある。その収縮の傾向が基板の構成材料よりも導光層の構成材料の方が大きいと、大きな引っ張り応力が導光層に加わる。その際、応力を緩和できなくなると接着力の弱い部分に力が集中するため、剥離や割れが生じることがある。また、剥離や割れが生じない場合でも、基板が変形することがある。剥離、破壊、変形等が生じると、そこで導光された光が遮断され、導光層が機能しなくなる可能性がある。また、光源と組み合わせる場合に、通常は光源が発熱する。このため、光源の直近では、光源を構成する材料と導光層の構成材料との間での熱膨張係数の差により大きな応力が発生し、接着不良などが起きやすくなる。
以上のような観点から、導光層の材料自身が、大きく応力緩和するものが好ましい。具体的には、硬度が低いもの、及び/又は、ゴム性を有しているものが好ましい。
【0131】
[1−4]その他の工程
本発明の要旨を逸脱しない範囲において、上述した堰形成工程、硬化性材料塗設工程、硬化性材料硬化工程の工程前、工程中及び工程後のいずれかにおいて、その他の工程を行なうようにしてもよい。
例えば、導光層を2層以上の層により構成する場合は、前記の硬化性材料硬化工程の後、更に、所望の硬化性材料を用いて硬化性材料塗設工程及び硬化性材料硬化工程を行ない、2層以上の層を積層して導光層を形成するようにしても良い。
また、例えば、堰及び導光層を形成する前に、基板に、表面処理を行なうようにしてもよい。そのような表面処理の例としては、例えばプライマーやシランカップリング剤を用いた密着改善層の形成、酸やアルカリなどの薬品を用いた化学的表面処理、プラズマ照射やイオン照射・電子線照射を用いた物理的表面処理、サンドブラストやエッチング・微粒子塗布などによる粗面化処理等が挙げられる。また、密着性改善のための表面処理としては、その他に例えば、特開平5−25300号公報、稲垣訓宏著「表面化学」Vol.18 No.9、pp21−26、黒崎和夫著「表面化学」Vol.19 No.2、pp44−51(1998)等に開示される公知の表面処理方法が挙げられる。さらに、オゾン処理を行なうことも可能である。
【0132】
[2]導光部材
本発明の導光部材は、基板、堰及び導光層を備える。
【0133】
[2−1]基板
基板については、「[1−1−1]基板」の項で説明したとおりである。
【0134】
[2−2]堰
堰については、「[1−1]堰形成工程」の項で説明したとおりである。ただし、本発明の導光部材においては、当該堰は、上述したように稜線を有さない形状に形成され、いわゆるかまぼこ状の形状を有することが特徴である。換言すれば、堰は稜線を有しない形状を有することを特徴とする。ここで、「稜線を有しない」とは、堰の長手方向に平行でありかつ基板に接しない面が、2面以上を構成しないことをいう。境界部が2面以上で構成される場合は、合い隣り合う2つの面が交わる部分に稜線を有する。本発明は境界部に稜線を有しないことで、光取り出し効果を向上させることができる。
【0135】
[2−3]導光層
導光層は、導光部材において、光源から発せられた光を所定の位置まで伝送させる役割を有する層である。かかる導光層の材料としては、「[1−2]硬化性材料塗設工程」の項で前述した硬化性材料を用いる。
また、導光層は1層のみにより形成しても良いが、2層以上の層を積層して構成してもよい。この際、導光層を構成する層の例を挙げると、高屈折率層、低屈折率層、散乱層、蛍光体含有層などが挙げられる。
以下、これらの層について説明する。
【0136】
[2−3−1]高屈折率層
高屈折率層は、通常、光を伝送するコア層として機能するものである。したがって、光源から発せられた光は、通常、この高屈折率層を通じて所望の位置まで伝送されることになる。
【0137】
この高屈折率層の屈折率は、本発明の効果を著しく損なわない限り任意であるが、通常1.45以上、好ましくは1.5以上、さらに好ましくは1.6以上である。上限は特に制限されないが、例えば半導体発光装置を光源として用いる場合は、一般的な半導体発光装置の屈折率が約2.5であることから、通常2.5以下であり、屈折率調整を容易とする観点から、好ましくは2.0以下である。高屈折率層の屈折率が小さすぎると、光取り出し効率が向上しない可能性がある。一方、高屈折率層の屈折率が光源を構成する部材の屈折率より大きい場合にも、光取り出し効率は向上しない可能性がある。
【0138】
なお、屈折率は、液浸法(固体対象)のほかPulflich屈折計、Abbe屈折計、プリズムカプラー法、干渉法、最小偏角法などの公知の方法を用いて測定することが出来る。本発明における屈折率の測定波長は、Abbe屈折計などの機器を用いる場合に汎用に用いられるナトリウムD線(589nm)を選択することが出来る。
【0139】
高屈折率層は、その屈折率を相対的に高くするため、例えば、化合物中にフェニル基を導入するようにしてもよい。また、例えば、上述したように、屈折率調節剤として、中央粒径が1〜10nmの無機粒子を含有させるようにしてもよい。
なお、高屈折率層は、1層のみを設けてもよく、2層以上を設けても良い。
【0140】
[2−3−2]低屈折率層
低屈折率層は、通常、光を閉じ込めるクラッド層として機能するものである。したがって、高屈折率層、散乱層、蛍光体含有層等の層内を伝送される光は、当該層と低屈折率層との界面において反射し、所定の位置まで的確に伝送されるようになっている。
【0141】
低屈折率層の屈折率は、本発明の効果を著しく損なわない限り任意であるが、通常1.45未満、好ましくは1.43以下、さらに好ましくは1.42以下である。下限は、通常1.4以上であり、好ましくは1.41以上である。
【0142】
また、低屈折率層と高屈折率層とを組み合わせて用いる場合、高屈折率層と低屈折率層の屈折率差は、通常0.03〜0.2であるが、これを適宜調整することにより、高屈折率層中の光の伝送距離(導波距離)を調節することもできる。即ち、屈折率差を大きくすると、低屈折率層(クラッド層)が高屈折率層(コア層)の光を効率良く閉じ込めるため、低屈折率層への漏れ光が少なく、光の伝送距離を長くすることができる。一方、屈折率差を、例えば0.05以下というように小さく設定すると、高屈折率層から低屈折率層への漏れ光が増えるため、光の伝送距離は短くなる。
なお、低屈折率層は、1層のみを設けてもよく、2層以上を設けても良い。
【0143】
[2−3−3]散乱層
散乱層は、光源から伝送された光を外部に放射する際、その放射される光の指向角を広げる機能を有する層である。この散乱層には、上述したように、光散乱材として、中央粒径が所定の範囲にある無機粒子を含有させることが好ましい。
なお、散乱層は、1層のみを設けてもよく、2層以上を設けても良い。
【0144】
また、散乱層の別の構成としては、表面粗度を利用して導波した光を取り出すこともできる。これは、粗面上に散乱層を設けることで、導波した光が粗面で散乱して、光が取り出し面に対して垂直になる成分が増加するため、光が表面に出てくるようにしたものである。
【0145】
粗面は基板上、及び/又は各層上に形成することができる。この際、粗面は各層の上面(光取り出し面に近い面)、下面(光取り出し面から遠い面)いずれに形成されていてもよい。
粗面の荒さは、光を散乱させる性質を持てば特に限定されないが、高低差が通常0.2μm以上、好ましくは0.5μm以上であり、また50μm以下、好ましくは30μm以下である。
【0146】
基板に粗面を作る方法は限定されないが、例えば、精密機械加工、ブラスト処理、粉体コート、拡散粒子含有コーティング液の塗布、粒子貼り付け、薬液エッチング処理、光照射、インクジェット印刷、感光硬化(軟化)樹脂への露光・現像、感熱硬化樹脂への加熱・現像等が挙げられる。
また、積層させる各層表面を粗面化する方法としては、例えば、フッ酸やアルカリ等を用いる薬液処理、ブラスト処理、粉体コート、拡散粒子含有コーティング液の塗布、粒子貼り付け、光照射、インクジェット印刷等がある。また、例えば、構成させる層の中に沈降性、あるいは浮遊性の光拡散粒子を含有させ、コーティングしたあとに粒子を沈降または浮遊させて各層の界面により多くの拡散粒子を存在させる手法も、粗面を形成させる手法同様に好ましく用いることができる。
【0147】
[2−3−4]蛍光体含有層
蛍光体含有層は、蛍光体を含有する層であって、光源から伝送された光の波長を所望の波長に変換する機能を有する。蛍光体については、上述したとおりである。
また、蛍光体含有層には、蛍光体に当たる光量を増加させ、波長変換効率を向上させるために、光散乱剤として、中央粒径が0.1〜10μmの無機粒子を含有させてもよい。なお、蛍光体含有層は、1層のみを設けてもよく、2層以上を設けても良い。
【0148】
[2−4]導光部材の形状及び寸法
本発明の導光部材の形状及び寸法に制限は無く任意である。例えば、導光部材の光導波路や導光板として使用される場合には、本発明の導光部材の形状及び寸法は、その光導波路や導光板の基板の形状及び寸法に応じて決定される。
【0149】
ただし、本発明の導光部材は、前記のアルキルアルコキシシランの加水分解・重縮合物を硬化性材料として使用する場合には、導光層を厚膜に形成することができることを利点の一つとしている。その他の多くの導光部材は、その導光層を厚膜化すると内部応力等によりクラック等が生じて厚膜化が困難となる可能性があったが、前記の加水分解・重縮合物を用いた場合には導光部材はそのようなことは無く、安定して厚膜化が可能である。この場合、具体的範囲を挙げると、導光部材を導光板として用いる場合には、導光層を構成する各層の膜厚が、通常10μm以上、好ましくは30μm以上、通常500mm以下、好ましくは300mm以下、より好ましくは200mm以下である。ここで、膜の厚みが一定でない場合には、膜の厚みとは、その膜の最大の厚み部分の厚さのことを指すものとする。また、この場合、導光板基板を除く全層の膜厚の合計は、通常60μm以上、好ましくは80μm以上であり、通常500μm以下、好ましくは300μm以下、更に好ましくは200μm以下である。
【0150】
[3]導光板
本発明の導光板は、本発明の導光部材を備えて構成される。この場合、本発明の導光部材を板状に形成すれば、本発明の導光部材自体を導光板として用いることができる。また、本発明の導光部材に、必要に応じてその他の部材を組み合わせて、導光板を構成することもできる。
【0151】
ただし、導光板は面発光装置に適用されることが多い。この場合、通常は、本発明の導光部材の主面(発光面)から発光しうるよう、散乱層を設けたり、発光面に対向する面(通常は、基板と導光層との界面)に、溝、粗面、傾斜面等の凹凸を設けたりする。
また、導光板には、例えば、導光層内を伝送する光を反射させるために反射シート等の反射部材を設けたり、導光層内を伝送する光を拡散させるための拡散シート等の拡散部材を設けたり、導光層内を伝送する光を所望の方向に屈折させるためにプリズムシート等の屈折部材を設けたりしてもよい。
【0152】
さらに、導光板は光源から発せられた光を伝送することを目的とする光学部品であるため、通常は光源と組み合わせて用いる。導光板と光源とは別体に構成してもよいが、導光板が光源を備えるように構成してもよい。また、光源の数は1個でもよく、2個以上でもよい。
【0153】
光源の発光ピークの主波長の波長は特に制限は無く、幅広い発光波長の光源を用いることが可能である。通常は、近紫外領域から青色領域までの発光波長を有する発光体が使用され、具体的数値としては、通常300nm以上、好ましくは330nm以上、また、通常500nm以下、好ましくは480nm以下の発光波長を有する発光体が使用される。また、特に導光層内に蛍光体を含有する場合には、当該蛍光体の吸収波長と重複する発光波長を有する光源が好ましい。
【0154】
光源としては、通常は半導体発光素子を用いる。その例を挙げると、LEDまたはLD等を挙げることができる。その他、光源の例としては、有機エレクトロルミネッセンス発光素子、無機エレクトロルミネッセンス発光素子等が挙げられる。
【0155】
その中でも、GaN系化合物半導体を使用した、GaN系LEDやLDが好ましい。なぜなら、GaN系LEDやLDは、この領域の光を発するSiC系LED等に比し、発光出力や外部量子効率が格段に大きく、蛍光体と組み合わせることによって、非常に低電力で非常に明るい発光が得られるからである。例えば、20mAの電流負荷に対し、通常GaN系LEDやLDはSiC系の100倍以上の発光強度を有する。GaN系LEDやLDにおいては、AlXGaYN発光層、GaN発光層、またはInXGaYN発光層を有しているものが好ましい。GaN系LEDにおいては、それらの中でInXGaYN発光層を有するものが発光強度が非常に強いので、特に好ましく、GaN系LDにおいては、InXGaYN層とGaN層の多重量子井戸構造のものが発光強度が非常に強いので、特に好ましい。
【0156】
なお、上記においてX+Yの値は通常0.8〜1.2の範囲の値である。GaN系LEDにおいて、これら発光層にZnやSiをドープしたものやドーパント無しのものが発光特性を調節する上で好ましいものである。
GaN系LEDはこれら発光層、p層、n層、電極、及び基板を基本構成要素としたものであり、発光層をn型とp型のAlXGaYN層、GaN層、又はInXGaYN層などでサンドイッチにしたヘテロ構造を有しているものが発光効率が高く、好ましく、更にヘテロ構造を量子井戸構造にしたものが発光効率がさらに高く、より好ましい。
【0157】
[4]実施形態
以下、図面を用いて本発明の実施形態について説明する。ただし、以下の実施形態はいずれも例示であって、本発明は以下の実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で任意に変更して実施できる。
【0158】
[4−1]第1実施形態
図1(a)〜(c)は、本発明の第1実施形態としての導光部材の製造方法を模式的に示す断面図である。
この図1(a)に示すように、本実施形態において導光部材7(図1(c)参照)を製造する場合は、まず、基板1を用意する。本実施形態では、予め基板1の表面には、図1(a)に示すように、光源として、半導体発光素子2が封止材3により被覆されて構成された半導体発光装置4が設置されているものとする。なお、封止材3により封止されていない半導体発光装置4も、本発明に用いることは可能である。
【0159】
基板1を用意した後、上述した方法によって、所望の位置に堰5を設ける(堰形成工程)。本実施形態では、この堰5を、半導体発光装置4から伝送されてきた光を遮断しうるように、相対的に低い屈折率を有する材料を用い、この材料をディスペンサーにより描画して設けたものとする。
ただし、本実施形態では、堰5を稜線を有さない形状に形成し、堰5をいわゆるかまぼこ状に形成してあるものとする。即ち、上述したように、堰5の形状に制限は無いため、図2(a)に模式的に示すように断面多角形形状に形成することも可能であるが、本実施形態では、図2(b)に模式的に示すように表面を滑らかな凸曲面のみで形成してあるものとする。
【0160】
堰5を設けた後、図1(b)に示すように、上述した方法によって、流体状の硬化性材料を基板1上に塗設する(硬化性材料塗設工程)。この際、予め堰5を設けているため、硬化性材料は堰5によって堰き止められる。したがって、硬化性材料により形成される塗膜6’(ひいては、当該塗膜6’を硬化した高屈折率層6)は堰5により区画された構造となり、硬化性材料を所望の位置に容易に且つ正確に塗布することが可能となる。なお、本実施形態では、硬化後に半導体発光装置4から発せられる光を伝送しうるよう、高屈折率層6となりうる相対的に高い屈折率の硬化性材料を用いているものとする。
【0161】
そして、硬化性材料の塗設後、図1(c)に示すように、上述した方法によって、塗設された硬化性材料を硬化させる(硬化性材料硬化工程)。これにより、塗膜6’は硬化し、導光層である高屈折率層6が得られる。こうして、本実施形態の導光部材7が製造される。
【0162】
以上のように製造された本実施形態の導光部材7において、光源である半導体発光装置4から発せられた光は、導光層である高屈折率層6により伝送され、高屈折率層6の図中上側の表面から放射される。なお、本実施形態では堰5は低屈折率の材料で設けられているため、前記の光の大部分は当該堰5を透過できず、したがって、導光部材7の側面からは光がほとんど放射されない。
【0163】
このように、堰5を設けたことにより、高屈折率層6の平面形状は堰5の形状に応じて設定される。このため、導光部材7のどの位置から光が放射されるかについて、即ち、導光領域について、堰5により制御できることになる。したがって、本実施形態のようにして導光部材7を製造すれば、発光部分を自由に設計することが可能である。
また、本実施形態の導光部材7では堰5を稜線を有さない形状に形成してあるため、光の取り出し効果を向上させることができる。
【0164】
[4−2]第2実施形態
図3は、本発明の第2実施形態としての導光部材の模式的な断面図である。なお、図3において、図1,2と同様の部位については、同様の符号を用いて示すものとする。
この導光部材7は、堰5が、半導体発光装置4からの光を伝送させうると共に、蛍光体を含有する材料で形成されている点、及び、導光層である高屈折率層6が堰5によって部分的に区画されている点の他は、第1実施形態と同様になっている。
【0165】
本実施形態の導光部材を製造する場合も、基本的には第1実施形態と同様にして、堰形成工程を行なった後、硬化性材料塗設工程と、硬化性材料硬化工程とを行なえばよい。
ただし、堰形成工程においては、堰5の材料として、半導体発光装置4からの光を伝送させうると共に、光散乱剤及び/又は蛍光体を含有する材料を用いる。ここでは、高屈折率を有する樹脂に光散乱剤及び/又は蛍光体が分散された組成物を堰5の材料として用いているものとする。
また、硬化性材料塗設工程においては、堰5によって完全には堰き止められないように硬化性材料を塗設するものとする。この場合でも、堰5は硬化性材料を部分的に堰き止めるため、硬化性材料により形成される塗膜及び塗膜を硬化した高屈折率層6は堰5により少なくともその一部を区画された構造となり、硬化性材料を所望の位置に容易に且つ正確に塗布することが可能となる。
【0166】
このように製造された本実施形態の導光部材7において、光源である半導体発光装置4から発せられた光は、導光層である高屈折率層6により伝送され、高屈折率層6の表面から放射される。なお、本実施形態では堰5が光を伝送しうるため、高屈折率層6により伝送される光の一部は堰5を通ってから放射される。この場合、堰5が光散乱剤を含有する場合は、堰5を通って放射される光は散乱されてから放射されるため、光の取り出し効率を向上させることができる。これにより、堰5を設けた位置における光の明るさを他の位置よりも高めることができ、導光領域を制御できる。一方、堰5が蛍光体を含有する場合は、堰5を通って放射される光は波長変換されてから放射されるため、光の色を変更することができる。これにより、堰5を設けた位置における光の色を他の位置とは違うものとでき、導光態様を制御できる。
【0167】
以上のように、本実施形態のようにして導光部材7を製造すれば、堰5を設けたことにより、導光部材7の導光領域及び導光態様は堰5により制御できるようになる。したがって、本実施形態のようにして導光部材7を製造すれば、発光部分を自由に設計することが可能である。
また、本実施形態の導光部材7でも、第1実施形態と同様に、堰5を稜線を有さない形状に形成してあるため、光の取り出し効果を向上させることができる。
さらに、その他、第1実施形態と同様の構成に基づき、同様の効果を得ることができる。
【0168】
[4−3]第3実施形態
図4は、本発明の第3実施形態としての導光部材の模式的な断面図である。なお、図4において、図1〜3と同様の部位については、同様の符号を用いて示すものとする。
この導光部材7は、高屈折率層6の下部に低屈折率層8が形成され、高屈折率層6と低屈折率層8とから導光層が構成されている点の他は、第1実施形態と同様になっている。
【0169】
低屈折率層8は、半導体発光装置4から伝送されてきた光を遮断しうるように、基板1上に、相対的に低い屈折率を有する材料で形成された層である。この低屈折率層8には、半導体発光装置4の部分を覆わないように、円柱状またはすり鉢状の穴8Hが設けられている。
【0170】
本実施形態の導光部材を製造する場合、基本的には第1実施形態と同様に、堰形成工程を行なった後で、導光層を構成する各層それぞれに対応して硬化性材料塗設工程及び硬化性材料硬化工程を行なえばよい。具体的には、第1実施形態に堰形成工程を行なった後、低屈折率層8に対応する硬化性材料を用いて硬化性材料塗設工程及び硬化性材料硬化工程を行ない、低屈折率層8を形成する。ただし、この際、穴8Hを形成するため、穴8Hの部分はマスキング等により低屈折率層8が形成されないようにしておくものとする。そして、低屈折率層8の形成後、マスキング等を取り除き、高屈折率層6に対応する硬化性材料を用いて硬化性材料塗設工程及び硬化性材料硬化工程を行なって、低屈折率層8上に高屈折率層6を形成すればよい。
【0171】
このように製造された本実施形態の導光部材7において、光源である半導体発光装置4から発せられた光は、第1実施形態と同様に、高屈折率層6により伝送され、高屈折率層6の図中上側の表面から放射され、導光部材7の側面からは光が放射されない。
【0172】
以上のように、本実施形態のようにして導光部材7を製造すれば、堰5を設けたことにより、第1実施形態と同様に導光領域を制御でき、発光部分を自由に設計することが可能である。さらに、本実施形態の導光部材7では堰5を稜線を有さない形状に形成してあるため、光の取り出し効果を向上させることができる。
また、その他、第1実施形態と同様の構成に基づき、同様の効果を得ることができる。
【0173】
[4−4]第4実施形態
図5は、本発明の第4実施形態としての導光部材の模式的な断面図である。なお、図5において、図1〜4と同様の部位については、同様の符号を用いて示すものとする。
この導光部材7は、低屈折率層8の一部に散乱層及び/又は蛍光体含有層9が形成され、高屈折率層6と、低屈折率層8と、散乱層及び/又は蛍光体含有層9とから導光層が構成されている点の他は、第3実施形態と同様になっている。
【0174】
本実施形態において、散乱層及び/又は蛍光体含有層9は、相対的に高い屈折率を有する硬化性材料に光散乱剤及び/又は蛍光体を含有させて形成された層であるものとする。この散乱層及び/又は蛍光体含有層9を設けることにより、低屈折率層8と高屈折率層6との屈折率差を小さくでき、低屈折率層8に進入する光を利用して所望の効果を達成させることができる。
【0175】
本実施形態の導光部材を製造する場合、基本的には第3実施形態と同様に、堰形成工程を行なった後で、導光層を構成する各層それぞれに対応して硬化性材料塗設工程及び硬化性材料硬化工程を行なえばよい。具体的には、第3実施形態と同様に堰形成工程を行なった後、低屈折率層8に対応する硬化性材料を用いて硬化性材料塗設工程及び硬化性材料硬化工程を行ない、低屈折率層8を形成する。ただし、この際、第3実施形態と異なり、穴8Hの部分だけでなく、散乱層及び/又は蛍光体含有層9を形成しようとする部分もマスキング等により低屈折率層8が形成されないようにしておくものとする。そして、低屈折率層8の形成後、散乱層及び/又は蛍光体含有層9を形成しようとする部分のマスキング等を取り除き、この部分に硬化性材料塗設工程及び硬化性材料硬化工程を行ない散乱層及び/又は蛍光体含有層9を形成する。そして、穴8Hの部分のマスキング等を取り除き、その上に、第3実施形態と同様に高屈折率層6を形成して、導光部材7を製造すればよい。なお、低屈折率層8よりも先に散乱層及び/又は蛍光体含有層9を形成しても良い。
【0176】
このように製造された本実施形態の導光部材7において、光源である半導体発光装置4から発せられた光は、第3実施形態と同様に、高屈折率層6により伝送され、高屈折率層6の図中上側の表面から放射され、導光部材7の側面からは光が放射されない。この際、散乱層及び/又は蛍光体含有層9を設けたため、散乱層及び/又は蛍光体含有層9に入射した光を散乱させて導光部材7からの光取り出し効率を向上させたり、散乱層及び/又は蛍光体含有層9に入射した光の波長を変換して導光部材7から放射される光の色を制御したりすることができる。
【0177】
以上のように、本実施形態のようにして導光部材7を製造すれば、堰5を設けたことにより、第3実施形態と同様に導光領域を制御でき、さらに、散乱層及び/又は蛍光体含有層9により導光態様を制御できるため、発光部分を自由に設計することが可能である。さらに、本実施形態の導光部材7では堰5を稜線を有さない形状に形成してあるため、光の取り出し効果を向上させることができる。
また、その他、第3実施形態と同様の構成に基づき、同様の効果を得ることができる。
【0178】
[4−5]第5実施形態
図6は、本発明の第5実施形態としての導光部材の模式的な断面図である。なお、図6において、図1〜5と同様の部位については、同様の符号を用いて示すものとする。
この導光部材7は、高屈折率層6の代わりに散乱層及び/又は蛍光体含有層9が形成され、低屈折率層8と散乱層及び/又は蛍光体含有層9とから導光層が構成されている点の他は、第3実施形態と同様になっている。
【0179】
本実施形態の導光部材7を製造する場合、基本的には第3実施形態と同様に、堰形成工程を行なった後で、導光層を構成する各層それぞれに対応して硬化性材料塗設工程及び硬化性材料硬化工程を行なえばよい。具体的には、高屈折率層6の代わりに、散乱層及び/又は蛍光体含有層9に対応した硬化性材料を用いて硬化性材料塗設工程及び硬化性材料硬化工程を行ない散乱層及び/又は蛍光体含有層9を形成する他は、第3実施形態と同様にして、本実施形態の導光部材7を製造することができる。
【0180】
このように製造された本実施形態の導光部材7において、光源である半導体発光装置4から発せられた光は、散乱層及び/又は蛍光体含有層9により伝送され、散乱層及び/又は蛍光体含有層9の図中上側の表面から放射され、導光部材7の側面からは光が放射されない。この際、散乱層及び/又は蛍光体含有層9を設けたため、散乱層及び/又は蛍光体含有層9に入射した光の指向角を広くしたり、散乱層及び/又は蛍光体含有層9に入射した光の波長を変換して導光部材7から放射される光の色を制御したりすることができる。
【0181】
以上のように、本実施形態のようにして導光部材7を製造すれば、堰5を設けたことにより、第3実施形態と同様に導光領域を制御でき、さらに、散乱層及び/又は蛍光体含有層9により導光態様を制御できるため、発光部分を自由に設計することが可能である。さらに、本実施形態の導光部材7では堰5を稜線を有さない形状に形成してあるため、光の取り出し効果を向上させることができる。
また、その他、第3実施形態と同様の構成に基づき、同様の効果を得ることができる。
【0182】
[4−6]第6実施形態
図7は、本発明の第6実施形態としての導光部材の模式的な断面図である。なお、図7において、図1〜6と同様の部位については、同様の符号を用いて示すものとする。
この導光部材7は、高屈折率層6中の所定の領域に、散乱層及び/又は蛍光体含有層9が形成され、高屈折率層6と低屈折率層8と散乱層及び/又は蛍光体含有層9とから導光層が構成されている点の他は、第3実施形態と同様になっている。
【0183】
本実施形態の導光部材を製造する場合、基本的には第3実施形態と同様に、堰形成工程を行なった後で、導光層を構成する各層それぞれに対応して硬化性材料塗設工程及び硬化性材料硬化工程を行なえばよい。具体的には、第3実施形態と同様に、堰形成工程を行なった後低屈折率層8を形成し、その後、高屈折率層6に対応する硬化性材料を用いて硬化性材料塗設工程及び硬化性材料硬化工程を行ない、高屈折率層6を形成する。ただし、この際、散乱層及び/又は蛍光体含有層9を形成しようとする部分はマスキング等により高屈折率層6が形成されないようにしておくものとする。そして、高屈折率層6の形成後、マスキング等を取り除き、硬化性材料塗設工程及び硬化性材料硬化工程によって、マスキング等で保護していた部分に散乱層及び/又は蛍光体含有層9を形成すればよい。なお、高屈折率層6よりも先に散乱層及び/又は蛍光体含有層9を形成しても良い。
【0184】
このように製造された本実施形態の導光部材7において、光源である半導体発光装置4から発せられた光は、高屈折率層6により伝送され、高屈折率層6の図中上側の表面、並びに、散乱層及び/又は蛍光体含有層9の図中上側の表面から放射され、導光部材7の側面からは光が放射されない。この際、散乱層及び/又は蛍光体含有層9を設けたため、散乱層及び/又は蛍光体含有層9に入射した光の指向角を広くしたり、散乱層及び/又は蛍光体含有層9に入射した光の波長を変換して導光部材7から放射される光の色を制御したりすることができる。
【0185】
以上のように、本実施形態のようにして導光部材7を製造すれば、堰5を設けたことにより、第3実施形態と同様に導光領域を制御でき、さらに、散乱層及び/又は蛍光体含有層9により導光態様を制御できるため、発光部分を自由に設計することが可能である。さらに、本実施形態の導光部材7では堰5を稜線を有さない形状に形成してあるため、光の取り出し効果を向上させることができる。
また、その他、第3実施形態と同様の構成に基づき、同様の効果を得ることができる。
【0186】
[4−7]第7実施形態
図8は、本発明の第7実施形態としての導光部材の模式的な断面図である。なお、図8において、図1〜7と同様の部位については、同様の符号を用いて示すものとする。
この導光部材7は、高屈折率層6と散乱層及び/又は蛍光体含有層9との境界部分が堰5で区分されている点の他は、第6実施形態と同様になっている。ただし、図示しない部分において高屈折率層6と散乱層及び/又は蛍光体含有層9とは接しており、この部分を介して半導体発光装置4からの光は散乱層及び/又は蛍光体含有層9まで伝送されるようになっているものとする。
【0187】
本実施形態の導光部材を製造する場合、基本的には第3実施形態と同様に、堰形成工程を行なった後で、導光層を構成する各層それぞれに対応して硬化性材料塗設工程及び硬化性材料硬化工程を行なえばよい。具体的には、第3実施形態と同様に、堰形成工程を行なった後低屈折率層8を形成し、その後、高屈折率層6並びに散乱層及び/又は蛍光体含有層9に対応する硬化性材料を用いて硬化性材料塗設工程及び硬化性材料硬化工程をそれぞれ行ない、高屈折率層6と散乱層及び/又は蛍光体含有層9とを形成する。この際、第6実施形態とは異なり、マスキング等は不要である。高屈折率層6と散乱層及び/又は蛍光体含有層9との間に堰5が設けられるため、この堰5により高屈折率層6と散乱層及び/又は蛍光体含有層9との間で硬化性材料が交じり合うことが防止されるからである。
【0188】
このように製造された本実施形態の導光部材7において、光源である半導体発光装置4から発せられた光は、高屈折率層6により伝送され、高屈折率層6の図中上側の表面から放射される。また、光の一部は更に散乱層及び/又は蛍光体含有層9により伝送され、散乱層及び/又は蛍光体含有層9の図中上側の表面から放射される。一方、導光部材7の側面からは光が放射されない。
【0189】
以上のように、本実施形態のようにして導光部材7を製造すれば、堰5を設けたことにより、第3実施形態と同様に導光領域を制御でき、さらに、散乱層及び/又は蛍光体含有層9により導光態様を制御できるため、発光部分を自由に設計することが可能である。
さらに、本実施形態の導光部材7では堰5を稜線を有さない形状に形成してあるため、光の取り出し効果を向上させることができる。
また、その他、第6実施形態と同様の構成に基づき、同様の効果を得ることができる。
【0190】
[4−8]第8実施形態
図9は、本発明の第8実施形態としての導光部材の模式的な断面図である。なお、図9において、図1〜8と同様の部位については、同様の符号を用いて示すものとする。
この導光部材7は、高屈折率層6の上に散乱層及び/又は蛍光体含有層9が積層され、高屈折率層6と低屈折率層8と散乱層及び/又は蛍光体含有層9とから導光層が構成されている点の他は、第3実施形態と同様になっている。
【0191】
本実施形態の導光部材を製造する場合、基本的には第3実施形態と同様に、堰形成工程を行なった後で、導光層を構成する各層それぞれに対応して硬化性材料塗設工程及び硬化性材料硬化工程を行なえばよい。具体的には、第3実施形態と同様に、堰形成工程を行なった後低屈折率層8及び高屈折率層6を形成し、その後、高屈折率層6上に、散乱層及び/又は蛍光体含有層9に対応した硬化性材料を用いて、硬化性材料塗設工程及び硬化性材料硬化工程によって、散乱層及び/又は蛍光体含有層9を形成すればよい。
【0192】
このように製造された本実施形態の導光部材7において、光源である半導体発光装置4から発せられた光は、高屈折率層6及び散乱層及び/又は蛍光体含有層9により伝送され、散乱層及び/又は蛍光体含有層9の図中上側の表面から放射され、導光部材7の側面からは光が放射されない。この際、散乱層及び/又は蛍光体含有層9を設けたため、散乱層及び/又は蛍光体含有層9に入射した光の指向角を広くしたり、散乱層及び/又は蛍光体含有層9に入射した光の波長を変換して導光部材7から放射される光の色を制御したりすることができる。
【0193】
以上のように、本実施形態のようにして導光部材7を製造すれば、堰5を設けたことにより、第3実施形態と同様に導光領域を制御でき、さらに、散乱層及び/又は蛍光体含有層9により導光態様を制御できるため、発光部分を自由に設計することが可能である。さらに、本実施形態の導光部材7では堰5を稜線を有さない形状に形成してあるため、光の取り出し効果を向上させることができる。
また、その他、第3実施形態と同様の構成に基づき、同様の効果を得ることができる。
【0194】
[4−9]第9実施形態
図10は、本発明の第9実施形態としての導光部材の模式的な断面図である。なお、図10において、図1〜9と同様の部位については、同様の符号を用いて示すものとする。
この導光部材7は、散乱層及び/又は蛍光体含有層9の代わりに低屈折率層8が形成されて、高屈折率層6と低屈折率層8,8とから導光層が構成されている点、並びに、堰5が光を伝送させうる点の他は、第8実施形態と同様になっている。
【0195】
本実施形態の導光部材を製造する場合、基本的には第8実施形態と同様に、まず、堰形成工程を行なう。ただし、本実施形態では、堰5が光を伝送しうるよう、相対的に屈折率が高い材料によって堰5を形成しているものとする。そして、堰5の形成の後で、導光層を構成する各層それぞれに対応して硬化性材料塗設工程及び硬化性材料硬化工程を行なう。具体的には、散乱層及び/又は蛍光体含有層9の代わりに、低屈折率層8を形成する他は、第8実施形態と同様にして、導光層として低屈折率層8、高屈折率層6及び低屈折率層8を積層すればよい。
【0196】
このように製造された本実施形態の導光部材7において、光源である半導体発光装置4から発せられた光は、高屈折率層6により伝送され、堰5から放射される。したがって、発光部分の形状を堰5に応じて設定でき、このため、導光領域について堰5により制御できるようになる。一方、導光部材7の図中上側の表面には、低屈折率層10が形成されているために、当該表面からは光は放射されない。
【0197】
以上のように、本実施形態のようにして導光部材7を製造すれば、堰5を設けたことにより、導光領域を制御でき、発光部分を自由に設計することが可能である。さらに、本実施形態の導光部材7では堰5を稜線を有さない形状に形成してあるため、光の取り出し効果を向上させることができる。
また、その他、第8実施形態と同様の構成に基づき、同様の効果を得ることができる。
【0198】
[4−10]第10実施形態
図11は、本発明の第10実施形態としての導光部材の模式的な断面図である。なお、図11において、図1〜10と同様の部位については、同様の符号を用いて示すものとする。
この導光部材7は、高屈折率層6の上に形成された低屈折率層8の一部に散乱層及び/又は蛍光体含有層9が形成され、高屈折率層6と、低屈折率層8,8と、散乱層及び/又は蛍光体含有層9とから導光層が構成されている点の他は、第9実施形態と同様になっている。
【0199】
本実施形態の導光部材7を製造する場合、基本的には第9実施形態と同様に、堰形成工程を行なった後で、導光層を構成する各層それぞれに対応して硬化性材料塗設工程及び硬化性材料硬化工程を行なえばよい。具体的には、高屈折率層6の上に低屈折率層8と散乱層及び/又は蛍光体含有層9とを形成する際、第4実施形態と同様にして、低屈折率層8の一部に散乱層及び/又は蛍光体含有層9を形成する他は、第9実施形態と同様にすればよい。
【0200】
このように製造された本実施形態の導光部材7において、光源である半導体発光装置4から発せられた光は、高屈折率層6により伝送され、堰5から放射される。また、導光部材7の図中上側の表面では、散乱層及び/又は蛍光体含有層9を通じて光が放射される。
【0201】
以上のように、本実施形態のようにして導光部材7を製造すれば、堰5を設けたことにより、導光領域を制御でき、さらに、散乱層及び/又は蛍光体含有層9により導光態様を制御できるため、発光部分を自由に設計することが可能である。また、本実施形態の導光部材7では堰5を稜線を有さない形状に形成してあるため、光の取り出し効果を向上させることができる。
また、その他、第9実施形態と同様の構成に基づき、同様の効果を得ることができる。
【0202】
[4−11]第11実施形態
図12は、本発明の第11実施形態としての導光部材の模式的な断面図である。なお、図12において、図1〜11と同様の部位については、同様の符号を用いて示すものとする。
この導光部材7は、堰5が光を遮断する材料で形成されている点の他は、第10実施形態と同様になっている。
【0203】
本実施形態の導光部材7を製造する場合、基本的には第10実施形態と同様に、堰形成工程を行なった後で、導光層を構成する各層それぞれに対応して硬化性材料塗設工程及び硬化性材料硬化工程を行なえばよい。具体的には、堰5の材料として、光を遮断しうるものを用いる他は、第10実施形態と同様にして製造することができる。
【0204】
このように製造された本実施形態の導光部材7において、光源である半導体発光装置4から発せられた光は、高屈折率層6により伝送され、導光部材7の図中上側の表面において、散乱層及び/又は蛍光体含有層9を通じて放射される。ただし、堰5が光を遮断するため、導光部材7の側面からは光が放射されない。
【0205】
以上のように、本実施形態のようにして導光部材7を製造すれば、堰5を設けたことにより、導光領域を制御でき、さらに、散乱層及び/又は蛍光体含有層9により導光態様を制御できるため、発光部分を自由に設計することが可能である。また、本実施形態の導光部材7では堰5を稜線を有さない形状に形成してあるため、堰25を白色に形成した場合等のように堰25が光を反射できる場合には、光の取り出し効果を向上させることができる。
また、その他、第10実施形態と同様の構成に基づき、同様の効果を得ることができる。
【0206】
[4−12]第12実施形態
図13は、本発明の第12実施形態としての導光部材の模式的な断面図である。なお、図13において、図1〜12と同様の部位については、同様の符号を用いて示すものとする。
この導光部材7は、堰5が光散乱剤及び/又は蛍光体を含有する点の他は、第9実施形態と同様になっている。
【0207】
本実施形態の導光部材7を製造する場合、基本的には第9実施形態と同様に、堰形成工程を行なった後で、導光層を構成する各層それぞれに対応して硬化性材料塗設工程及び硬化性材料硬化工程を行なえばよい。具体的には、堰5の材料として、半導体発光装置4からの光を伝送させうると共に、光散乱剤及び/又は蛍光体を含有する材料を用いる他は、第9実施形態と同様にして、導光部材7を製造できる。
【0208】
このように製造された本実施形態の導光部材7において、光源である半導体発光装置4から発せられた光は、高屈折率層6により伝送され、堰5から放射される。この際、堰5は光散乱剤及び/又は蛍光体を含有するため、光の指向角を広くしたり、光の波長を変換して導光部材7から放射される光の色を制御したりすることができる。一方、導光部材7の図中上側の表面には、低屈折率層10が形成されているために、当該表面からは光は放射されない。
【0209】
以上のように、本実施形態のようにして導光部材7を製造すれば、堰5を設けたことにより、導光領域を制御でき、さらに、光散乱剤及び/又は蛍光体により導光態様を制御できるため、発光部分を自由に設計することが可能である。さらに、本実施形態の導光部材7では堰5を稜線を有さない形状に形成してあるため、光の取り出し効果を向上させることができる。
また、その他、第9実施形態と同様の構成に基づき、同様の効果を得ることができる。
【0210】
[4−13]第13実施形態
図14は、本発明の第13実施形態としての導光部材の模式的な断面図である。なお、図14において、図1〜13と同様の部位については、同様の符号を用いて示すものとする。
この導光部材7は、堰5が異なる寸法で(即ち、不均一に)形成されている点の他は、第9実施形態と同様になっている。具体的には、図中左側の堰5は低屈折率層8,8及び高屈折率層6の全体を貫通しているのに対し、図中右側の堰5は低く形成されていて、高屈折率層6及びその下の低屈折率層8は貫通しているが、高屈折率層6の上の低屈折率層8を貫通していない。
【0211】
本実施形態の導光部材7を製造する場合、基本的には第9実施形態と同様に、堰形成工程を行なった後で、導光層を構成する各層それぞれに対応して硬化性材料塗設工程及び硬化性材料硬化工程を行なえばよい。ただし、本実施形態では、堰形成工程において、図中右側の堰5は低く形成する。したがって、高屈折率層6の上の低屈折率層8を形成する工程においては、図中左側の堰5で硬化性材料を堰き止めることができるものの、図中右側の堰5では硬化性材料を堰き止めることができなくなっている。ただし、この場合でも、少なくとも高屈折率層6を形成するまでは図中右側の堰5を用いて硬化性材料を堰き止めることが可能であり、当該堰5は発光部分の自由な設計に寄与するものである。
【0212】
このように製造された本実施形態の導光部材7において、光源である半導体発光装置4から発せられた光は、高屈折率層6により伝送され、堰5から放射される。この際、図中左側の堰5からは図中左方向から上方向にかけて広い角度範囲に光が放射されるのに対し、図中右側の堰5からは、当該堰5の上には低屈折率層8が形成されているため、図中右方向の相対的に狭い角度範囲にのみ光を放射するように光の放射の態様を制御できる。
【0213】
以上のように、本実施形態のようにして導光部材7を製造すれば、堰5を設けたことにより、導光領域を制御できるため、発光部分を自由に設計することが可能である。さらに、本実施形態の導光部材7では堰5を稜線を有さない形状に形成してあるため、光の取り出し効果を向上させることができる。
また、その他、第9実施形態と同様の構成に基づき、同様の効果を得ることができる。
【0214】
[4−14]第14実施形態
図15は、本発明の第14実施形態としての導光部材の模式的な断面図である。なお、図15において、図1〜14と同様の部位については、同様の符号を用いて示すものとする。
この導光部材7は、堰5が他の層を介して基板1上に設けられている点の他は、第9実施形態と同様になっている。具体的には、堰5の一部(図中左側部)は基板1上に直接設けられ、堰5の他の部分(図中右側部)が低屈折率層8を介して設けられている。
【0215】
本実施形態の導光部材7を製造する場合、基本的には第9実施形態と同様に、堰形成工程を行なった後で、導光層を構成する各層それぞれに対応して硬化性材料塗設工程及び硬化性材料硬化工程を行なえばよい。ただし、本実施形態では、まず、堰形成工程において図中左側の堰5を形成し、その後低屈折率層8を形成してから当該低屈折率層8上に図中右側の堰5を設け、その後、高屈折率層6及び低屈折率層8を形成するようにする。この場合、図中右側の堰5は、高屈折率層6及びその上の低屈折率層8を形成する際には硬化性材料を堰き止めることが可能であり、当該堰5は発光部分の自由な設計に寄与するものである。
【0216】
このように製造された本実施形態の導光部材7において、光源である半導体発光装置4から発せられた光は、高屈折率層6により伝送され、堰5から放射される。一方、導光部材7の図中上側の表面には、低屈折率層10が形成されているために、当該表面からは光は放射されない。
【0217】
以上のように、本実施形態のようにして導光部材7を製造すれば、導光領域を制御できるため、発光部分を自由に設計することが可能である。さらに、本実施形態の導光部材7では堰5を稜線を有さない形状に形成してあるため、光の取り出し効果を向上させることができる。
また、その他、第9実施形態と同様の構成に基づき、同様の効果を得ることができる。
【0218】
[4−15]第15実施形態
図16は、本発明の第15実施形態としての導光部材の模式的な断面図である。なお、図16において、図1〜15と同様の部位については、同様の符号を用いて示すものとする。
この導光部材7は、基板1と導光層を構成する高屈折率層6との間に反射層10が形成されている点の他は、第9実施形態と同様になっている。具体的には、基板1の表面に、低屈折率層8の代わりに反射層10が形成された構成となっている。
【0219】
本実施形態の導光部材7を製造する場合、基板1上に反射層10を形成してから、第9実施形態と同様に、堰形成工程を行なった後で、高屈折率層6及び低屈折率層8それぞれに対応して硬化性材料塗設工程及び硬化性材料硬化工程を行なえばよい。反射層10は、例えば、反射層10の材料を蒸着することにより形成できる。なお、蒸着の際には、半導体発光装置4を反射層10が覆わないように、円柱状またはすり鉢状の穴10Hを形成する。
【0220】
このように製造された本実施形態の導光部材7において、光源である半導体発光装置4から発せられた光は、高屈折率層6により伝送され、堰5から放射される。この際、反射層10を形成したため、高屈折率層6内を光が効率よく伝送され、導光部材7からの光取り出し効率が向上する。一方、導光部材7の図中上側の表面には、低屈折率層10が形成されているために、当該表面からは光は放射されない。
【0221】
以上のように、本実施形態のようにして導光部材7を製造すれば、堰5を設けたことにより、導光領域を制御でき、発光部分を自由に設計することが可能である。さらに、本実施形態の導光部材7では堰5を稜線を有さない形状に形成してあるため、光の取り出し効果を向上させることができる。
また、その他、第9実施形態と同様の構成に基づき、同様の効果を得ることができる。
【0222】
[4−16]第16実施形態
図17は、本発明の第16実施形態としての導光部材の模式的な断面図である。なお、図17において、図1〜16と同様の部位については、同様の符号を用いて示すものとする。
この導光部材7は、基板1が平板状でない点の他は、第9実施形態と同様になっている。具体的には、基板1に円柱状またはすり鉢状の凹部1Hを形成し、この凹部1Hの底に半導体発光装置4を設置した構成となっている。
【0223】
本実施形態の導光部材7を製造する場合、基板1として凹部1Hが形成されているものを用いる他は、第9実施形態と同様にすればよい。
【0224】
このように製造された本実施形態の導光部材7において、光源である半導体発光装置4から発せられた光は、高屈折率層6により伝送され、堰5から放射される。一方、導光部材7の図中上側の表面には、低屈折率層10が形成されているために、当該表面からは光は放射されない。
【0225】
以上のように、本実施形態のようにして導光部材7を製造すれば、堰5を設けたことにより、導光領域を制御でき、発光部分を自由に設計することが可能である。さらに、本実施形態の導光部材7では堰5を稜線を有さない形状に形成してあるため、光の取り出し効果を向上させることができる。
また、その他、第9実施形態と同様の構成に基づき、同様の効果を得ることができる。
【0226】
[4−17]その他
本発明の実施形態について説明したが、上述した実施形態はいずれも本発明を制限するものではなく、それぞれ、その一部を他の実施形態に導入、または組合せなどすることにより、適宜変更することも可能である。
【0227】
また、上述した実施形態においては、本発明の要旨を逸脱しない限り、更に他の層を積層してもよく、また、更に他の部材を備えさせても良い。
更に、堰5は、異なるものを組み合わせても良い。例えば、構成する材料の屈折率が高い堰と低い堰とを組み合わせてもよく、形状及び寸法が異なる堰を組み合わせて用いてもよく、部分的にのみ光散乱剤及び/又は蛍光体を含有する堰を用いてもよい。
また、堰5は導光層の少なくとも一部を区画していれば良く、当該導光層を完全に区画していなくても良い。したがって、その区画は図中横方向に少なくとも一部を区画していればよく、また、図中高さ方向で少なくとも一部を区画していれば良い。したがって、第2実施形態のように、導光層に堰5が埋もれていてもよい。
【実施例】
【0228】
以下、実施例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、本発明は以下の実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において任意に変更して実施することができる。
【0229】
[1.各層の形成液の用意]
[1−1]特定層(低屈折率層)形成液の合成
モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ・ジャパン合同会社製両末端シラノールジメチルシリコーンオイルXC96−723を1450.82g、フェニルトリメトキシシランを145g、及び、ジルコニウムテトラアセチルアセトネート粉末を3.190g用意した。これを撹拌翼とコンデンサとを取り付けた2Lの三つ口コルベン中に入れ、室温で、ジルコニウムテトラアセチルアセトネート粉末が十分溶解するまで撹拌した。これにより、15分ほどで溶解した。この液を120℃まで昇温し、30分間還流させながら撹拌を行なった。
【0230】
続いて、ガス吹き込み管をコルベンの口に接続して、窒素をSV20で反応液中に吹き込みながら120℃で5時間、撹拌を続けた。なお、ここで「SV」とは「Space Velocity」の略称であり、単位時間当たりの吹き込み量を指す。よって、SV20とは、1時間に反応液の20倍体積のN2を吹き込むことをいう。
窒素の吹き込みを停止しコルベンをいったん室温まで冷却した後、反応液をナス型フラスコに移し、ロータリーエバポレーターを用いてオイルバス上120℃、1kPaで20分間減圧留去し、特定層(低屈折率層)形成液(粘度282mPa・s;以下適宜「低屈折率バインダ」という)を得た。
【0231】
[1−2]特定層(高屈折率層)形成液Aの合成
モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ・ジャパン合同会社製両末端シラノールジメチルシリコーンオイルXC96−723を42g、両末端シラノールメチルフェニルシリコーンオイルYF3804を98g、フェニルトリメトキシシランを14g、及び、触媒としてジルコニウムテトラアセチルアセトネート粉末を0.308g用意し、これを撹拌翼とコンデンサとを取り付けた200mLの三つ口コルベン中に計量した。室温で、ジルコニウムテトラアセチルアセトネート粉末が十分溶解するまで撹拌した。これにより、15分ほどで溶解した。この液を120℃まで昇温し、30分間還流させながら撹拌を行なった。
【0232】
続いて、ガス吹き込み管をコルベンの口に接続して、窒素をSV20で反応液中に吹き込みながら120℃で6時間、撹拌を続けた。
窒素の吹き込みを停止しコルベンをいったん室温まで冷却した後、反応液をナス型フラスコに移し、ロータリーエバポレーターを用いてオイルバス上120℃、1kPaで20分間減圧留去した。
【0233】
容器に無機粒子として、超微粒子状シリカ(日本アエロジル株式会社製、商品名:AEROSIL#RX200)0.1g、および、前記減圧留去後の反応液1.0gを入れて混合し、自転・公転方式ミキサー脱泡装置を使用し、遠心脱泡を行なった。その後、容器を真空チャンバーに入れて、さらに脱泡操作を行い、特定層(高屈折率層)形成液A(以下適宜、「高屈折率バインダA」という)を得た。
【0234】
[1−3]特定層(堰)形成液Bの合成
容器に無機粒子として、超微粒子状シリカ(日本アエロジル株式会社製、商品名:AEROSIL#130)0.78g、エポキシ樹脂(ジャパンエポキシレジン製、商品名:エピコート828US)4.98g、エポキシ樹脂硬化剤(ジャパンエポキシレジン製、商品名:JERエピキュアYLH1230)4.24gを入れて混合し、自転・公転方式ミキサー脱泡装置を使用し、遠心脱泡を行なった。その後、容器を真空としさらに脱泡操作を行ない、特定層(堰)形成液Bを得た。
【0235】
[1−4]特定層(堰)形成液Cの合成
容器に無機粒子として、超微粒子状シリカ(日本アエロジル株式会社製、商品名:AEROSIL#130)0.55g、非凝集タイプアルミナ(Baikowski社製、商品名:CR1、中央粒径0.95ミクロン)2.0g、エポキシ樹脂(ジャパンエポキシレジン製、商品名:エピコート828US)4.03g、エポキシ樹脂硬化剤(ジャパンエポキシレジン製、商品名:JERエピキュアYLH1230)3.42gを入れて混合し、自転・公転方式ミキサー脱泡装置を使用し、遠心脱泡を行なった。その後、容器を真空としさらに脱泡操作を行ない、特定層(堰)形成液Cを得た。
【0236】
[1−5]特定層(高屈折光散乱層/低散乱型)形成液の調液
モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ・ジャパン合同会社製両末端シラノールジメチルシリコーンオイルXC96−723を42g、両末端シラノールメチルフェニルシリコーンオイルYF3804を98g、フェニルトリメトキシシランを14g、及び、触媒としてジルコニウムテトラアセチルアセトネート粉末を0.308g用意し、これを攪拌翼とコンデンサとを取り付けた三つ口コルベン中に計量し、室温にて15分触媒が十分溶解するまで攪拌した。この後、反応液を120℃まで昇温し、120℃全還流下で2時間攪拌しつつ初期加水分解を行った。
続いて窒素をSV20で吹き込み生成メタノール及び水分、副生物の低沸ケイ素成分を留去しつつ120℃で攪拌し、さらに6時間重合反応を進めた。
窒素の吹き込みを停止し反応液をいったん室温まで冷却した後、ナス型フラスコに反応液を移し、ロータリーエバポレーターを用いてオイルバス上120℃、1kPaで20分間微量に残留しているメタノール及び水分、低沸ケイ素成分を留去し、無溶剤の高屈折率バインダ(n=1.46)を得た。
【0237】
光散乱粒子として、Al23微粉「CR1(中央粒径400nm)」0.1gを、前記の高屈折率バインダ(n=1.46)9.9gと混合し、自転・公転方式ミキサー脱泡装置を使用し、遠心脱泡・混合を行なった。その後、容器を真空としてさらに脱泡・混合を行い、特定層(高屈折光散乱層/低散乱型)形成液を得た。
【0238】
[1−6]特定層(高屈折光散乱層/中散乱型)形成液の調液
光散乱粒子として、モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ・ジャパン合同会社製「トスパール145(中央粒径5μm)」1.0g及びAl23微粉「CR1(中央粒径400nm)」0.1gを、前記の高屈折率バインダ(n=1.46)8.9gと混合し、自転・公転方式ミキサー脱泡装置を使用し、遠心脱泡・混合を行なった。その後、容器を真空としてさらに脱泡・混合を行い、特定層(高屈折光散乱層/中散乱型)形成液を得た。
【0239】
[1−7]特定層(高屈折光散乱層/強散乱型)形成液の調液
光散乱粒子として、モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ・ジャパン合同会社製「トスパール145(中央粒径5μm)」2.0g及びAl23微粉「CR1(中央粒径400nm)」0.2gを、前記の高屈折率バインダ(n=1.46)7.8gと混合し、自転・公転方式ミキサー脱泡装置を使用し、遠心脱泡・混合を行なった。その後、容器を真空としてさらに脱泡・混合を行い、特定層(高屈折光散乱層/強散乱型)形成液を得た。
【0240】
[1−8]特定層(低屈折光散乱層)形成液の調液
モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ・ジャパン合同会社製両末端シラノールジメチルシリコーンオイルXC96−723を1450.82g、フェニルトリメトキシシランを145g、及び、触媒としてジルコニウムテトラアセチルアセトネート粉末を3.190g用意し、これを攪拌翼とコンデンサとを取り付けた2Lの三つ口コルベン中に計量し、室温にて15分触媒が十分溶解するまで攪拌した。この後、反応液を120℃まで昇温し、120℃全還流下で30分間攪拌しつつ初期加水分解を行った。
【0241】
続いて窒素をSV20で吹き込み生成メタノール及び水分、副生物の低沸ケイ素成分を留去しつつ120℃で攪拌し、さらに5時間重合反応を進めた。
窒素の吹き込みを停止し反応液をいったん室温まで冷却した後、ナス型フラスコに反応液を移し、ロータリーエバポレーターを用いてオイルバス上120℃、1kPaで20分間微量に残留しているメタノール及び水分、低沸ケイ素成分を留去し、無溶剤の低屈折率バインダ(n=1.42)(282mPa・s)を得た。
【0242】
光散乱粒子として、2μm球状シリカ2.0g、及び、前記の低屈折率バインダ(n=1.42)8.0gを混合し、自転・公転方式ミキサー脱泡装置を使用し、遠心脱泡・混合を行なった。その後、容器を真空としてさらに脱泡・混合を行い、特定層(低屈折光散乱層)形成液を得た。
【0243】
[2.具体的な実施例の操作及び評価の説明]
[実施例1]
[導光板の製造]
厚さ0.43mmのガラス繊維強化エポキシ積層板に、ドリルにて2mmφの穴を開け、この穴の裏側から耐薬テープを貼り穴を塞いだ後、表側から穴の中に高屈折率バインダAを注入し、150℃で一時間保持して硬化させて穴を塞いだ。その後、耐薬テープを剥がした。
また、穴の直下には青色LEDを設置し、この青色LEDから発せられる光が前記の穴を塞ぐ高屈折率バインダAを通じて基板の上部に伝送されるようにした。具体的には、ポリフタルアミド製表面実装パッケージ(3.4mm×2.8mm)に、クリー社製C460MBチップをエポキシ銀ペーストにてダイボンディングし、金線にてワイヤボンディングしたランプを低屈折率バインダを用いて封止し、90℃で1時間、110℃で2時間、及び150℃で3時間保持し、硬化させた青色LEDを用いた。
【0244】
前記の基板上に、特定層(堰)形成液Bを用いて境界部を描画した。境界部は、当該青色LEDを囲む堰となるように描画した。また、境界部の描画は、ノズル径290μmのシリンジを用いて行なった。この際、当該シリンジのノズルから基板表面までの距離は500μmとした。また、描画速度は10cm/秒とした。さらに、シリンジから特定層(堰)形成液Bを押し出す際の圧力は、1.5MPaに設定した。
その後、これを空気雰囲気中、150℃、大気圧で0.5時間保持し、境界部を硬化させた。これにより、高さ500μm、幅1mmの、稜線のない形状の境界部が得られた。
【0245】
次いで、基板上の前記の境界部の内側部分に、低屈折率バインダを塗布した。この際、境界部が低屈折率バインダを堰き止める堰として作用し、境界部の内側にのみ低屈折率バインダが塗布され、境界部の外側には漏れ出さなかった。また、低屈折率バインダは、前記の穴を塞ぐ高屈折率バインダAの上部を覆わないように塗布し、低屈折率バインダにより形成される低屈折率層が、穴を通じて伝送される光の伝送を妨げないようにした。
そして、これを空気雰囲気中、150℃、大気圧で1時間保持し、低屈折率バインダを硬化させて、厚さ35μmの低屈折率層を形成した。
【0246】
さらに、低屈折率層上の前記の境界部の内側部分に、高屈折率バインダAを塗布した。この際も、境界部が高屈折率バインダAを堰き止める堰として作用し、境界部の内側にのみ高屈折率バインダAが塗布され、境界部の外側には漏れ出さなかった。
そして、これを空気雰囲気中、150℃、大気圧で1時間保持し、高屈折率バインダAを硬化させて、厚さ415μmの高屈折率層Aを形成した。
【0247】
さらに、高屈折率層A上の前記の境界部の内側部分に、低屈折率バインダを塗布した。この際も、境界部が低屈折率バインダを堰き止める堰として作用し、境界部の内側にのみ低屈折率バインダが塗布され、境界部の外側には漏れ出さなかった。
そして、これを空気雰囲気中、150℃、大気圧で1時間保持し、低屈折率バインダを硬化させて、厚さ30μmの低屈折率層を形成した。
以上のようにして、導光板を製造した。
【0248】
[評価]
得られた導光板の穴の下から、発光波長460nmの前記青色LEDを発光させて、その様子を観察した。
さらに、以下に説明する要領で、得られた導光板の各層について、密着性の評価、固体Si−NMRスペクトル測定、シラノール含有率、ケイ素含有率、硬度(ショアA)、屈折率、及びヘーズ値を測定した。
結果を、図18に示す表1に示す。
【0249】
[各層の分析、および導光板の評価方法]
[固体Si−NMRスペクトル測定及びシラノール含有率の算出]
実施例1の導光板の各層について、以下の条件で固体Si−NMRスペクトル測定及び波形分離解析を行なった。得られた波形データより、実施例1の導光板の各層について、各々のピークの半値幅を求めた。また、全ピーク面積に対するシラノール由来のピーク面積の比率より、全ケイ素原子中のシラノールとなっているケイ素原子の比率(%)を求め、別に分析したケイ素含有率と比較することによりシラノール含有率を求めた。
【0250】
<装置条件>
装置:Chemagnetics社 Infinity CMX−400 核磁気共鳴分光装置
29Si共鳴周波数:79.436MHz
プローブ:7.5mmφCP/MAS用プローブ
測定温度:室温
試料回転数:4kHz
測定法:シングルパルス法
1Hデカップリング周波数:50kHz
29Siフリップ角:90゜
29Si90゜パルス幅:5.0μs
くり返し時間:600s
積算回数:128回
観測幅:30kHz
ブロードニングファクター:20Hz
【0251】
<データ処理法>
512ポイントを測定データとして取り込み、8192ポイントにゼロフィリングしてフーリエ変換した。
【0252】
<波形分離解析法>
フーリエ変換後のスペクトルの各ピークについてローレンツ波形及びガウス波形或いは両者の混合により作成したピーク形状の中心位置、高さ、半値幅を可変パラメータとして、非線形最小二乗法により最適化計算を行なった。
なお、ピークの同定はAIChE Journal,44(5),p.1141,1998年等を参考にした。
【0253】
[ケイ素含有率の測定]
実施例1の導光板の各層(低屈折率層、高屈折率層、低屈折率層)の単独硬化物を100μm程度に粉砕し、白金るつぼ中にて大気中、450℃で1時間、ついで750℃で1時間、950℃で1.5時間保持して焼成し、炭素成分を除去した後、得られた残渣少量に10倍量以上の炭酸ナトリウムを加えてバーナー加熱し溶融させ、これを冷却して脱塩水を加え、更に塩酸にてpHを中性程度に調整しつつケイ素として数ppm程度になるよう定容し、セイコー電子社製「SPS1700HVR」を用いてICP分析を行なった。
【0254】
[硬度測定]
実施例1の導光板の各層(低屈折率層、高屈折率層、低屈折率層)について、古里精機製作所製A型(デュロメータタイプA)ゴム硬度計を使用し、JIS K6253に準拠して硬度(ショアA)を測定した。
[屈折率測定]
実施例1の導光板の各層(低屈折率層、高屈折率層、低屈折率層)の単独硬化物を数十μm程度の粉末状に粉砕し、予測される屈折率近傍の屈折率を有する屈折率標準液(屈折液)数点に分散し自然光下で観察した結果、浮遊する粉末が光散乱無く透明となり、目視で確認出来なくなる液の屈折率をもってバインダの屈折率とした(液浸法)。
【0255】
[密着性評価方法]
実施例1の導光板の塗布層(上層)の一端をピンセットでつまんで直角方向にゆっくり引き剥がした際に膜が容易に剥離せず、一部破壊するものを「良」(表1〜3では「○」で表わす)とし、容易にはがれるものを「不良」とした。
【0256】
[ヘーズ値評価方法]
実施例1の導光板の各層の、傷や凹凸による散乱の無い厚さ約1mmの平滑な表面の単独硬化物膜を用意し、この単独硬化膜を用いて、空気層をリファレンスとし、日本電色工業(株)製COH−300Aにてヘーズ値の測定を行なった。
【0257】
なお、表1の光取り出し性の項において、「遠くまで光るか」の欄が「○」であれば堰付近にまで発光面が達していることを意味し、「×」であればチップ直上のみ発光していることを意味する。
また、表1の光取り出し性の項において、「全面が光るか」の欄が「○」であれば堰で区切られた面全体が発光していることを意味し、「△」であればLEDと境界部との中間程度まで発光することを意味し、「×」であればチップ近傍の面のみが発光していることを意味する。
さらに、表1の光取り出し性の項において、「境界部での光の遮蔽」の欄が「○」であれば境界内部の面のみ発光していることを意味し、「×」であれば境界を越え隣接する面に発光が達していることを意味する。
【0258】
[実施例2]
高屈折率層Aの上に低屈折率層を形成しなかったこと以外は実施例1と同様にして、導光板を製造した。得られた導光板について、実施例1と同様にして評価を行なった。結果を、図18に示す表1に示す。
【0259】
[実施例3]
特定層(堰)形成液Bの代わりに特定層(堰)形成液Cを用いて境界部を形成したこと、及び、高屈折率層Aの上に低屈折率層を形成しなかったこと以外は実施例1と同様にして、導光板を製造した。得られた導光板について、実施例1と同様にして評価を行なった。結果を、図18に示す表1に示す。
【0260】
[実施例4]
[導光板の製造]
厚さ0.43mmのガラス繊維強化エポキシ積層板上の電極に、青色LEDチップ(クリー社製、商品名:C460MB290)を、エポキシ銀ペーストによるダイボンディングとAu線によるワイヤボンディングにより取り付けた。このLEDチップ上に高屈折率バインダAを盛り上げて塗布し、150℃で1時間保持して硬化させ、LEDチップを高屈折率層Aで封止した。
【0261】
前記の基板上に、特定層(堰)形成液Bを用いて境界部を描画した。境界部は、当該青色LEDを囲む堰となるように描画した。また、境界部の描画は、ノズル径570μmのシリンジを用いて行なった。この際、当該シリンジのノズルから基板表面までの距離は650μmとした。また、描画速度は10cm/秒とした。さらに、シリンジから特定層(堰)形成液Bを押し出す際の圧力は、2MPaに設定した。
その後、これを空気雰囲気中、150℃、大気圧で0.5時間保持し、境界部を硬化させた。これにより、高さ500μm、幅1mmの、稜線のない形状の境界部が得られた。
【0262】
次いで、基板上の前記の境界部の内側部分に、高屈折率バインダAを塗布した。この際、境界部が高屈折率バインダAを堰き止める堰として作用し、境界部の内側にのみ高屈折率バインダAが塗布され、境界部の外側には漏れ出さなかった。
そして、これを空気雰囲気中、150℃、大気圧で1時間保持し、高屈折率バインダAを硬化させて、厚さ500μmの高屈折率層Aを形成した。
【0263】
得られた導光板について、実施例1と同様にして基板のLEDを点灯させて評価を行なった。結果を、図19に示す表2に示す。
なお、表2の光取り出し性の項において、「遠くまで光るか」の欄が「○」であれば堰付近にまで発光面が達していることを意味し、「△」であればLEDと境界部との中間程度まで発光することを意味し、「×」であればチップ直上のみ発光していることを意味する。
また、表2の光取り出し性の項において、「全面が光るか」の欄が「○」であれば堰で区切られた面全体が発光していることを意味し、「△」であればLEDと境界部との中間程度まで発光することを意味し、「×」であればチップ近傍の面のみが発光していることを意味する。
さらに、表2の光取り出し性の項において、「境界部での光の遮蔽」の欄が「○」であれば境界内部の面のみ発光していることを意味し、「×」であれば境界を越え隣接する面に発光が達していることを意味する。
【0264】
[実施例5]
低屈折率層でLEDチップを封止し、基板上に高屈折率層Aの代わりに、実施例1と同様にして低屈折率層を形成し、その低屈折率層の上に、以下の要領で光散乱層を形成したこと以外は、実施例4と同様にして導光板を製造した。
光散乱層は、低屈折率層上の前記の境界部の内側部分に、特定層(低屈折光散乱層)形成液を塗布し、これを空気雰囲気中、150℃、大気圧で1時間保持して硬化させて形成した。この際、光散乱層の厚さは470μmであった。なお、この際も、境界部が特定層(低屈折光散乱層)形成液を堰き止める堰として作用し、境界部の内側にのみ特定層(低屈折光散乱層)形成液が塗布され、境界部の外側には漏れ出さなかった。
得られた導光板について、実施例1と同様にして評価を行なった。結果を、図19に示す表2に示す。
【0265】
[実施例6]
特定層(堰)形成液Bの代わりに特定層(堰)形成液Cを用いたこと、高屈折率層Aの代わりに実施例1と同様にして低屈折率層を形成したこと、その低屈折率層の上に実施例1と同様にして高屈折率層Aを形成したこと、及び、その高屈折率層Aの上に、特定層(低屈折光散乱層)形成液の代わりに特定層(高屈折光散乱層/低散乱型)形成液を用いたこと以外は実施例5と同様にして光散乱層を形成したこと以外は実施例4と同様にして、導光板を製造した。
得られた導光板について、実施例1と同様にして評価を行なった。結果を、図19に示す表2に示す。
【0266】
[実施例7]
特定層(堰)形成液Cの代わりに特定層(堰)形成液Bを用い、特定層(低屈折光散乱層)形成液の代わりに特定層(高屈折光散乱層/強散乱型)形成液を用いたこと以外は実施例6と同様にして、導光板を製造した。
得られた導光板について、実施例1と同様にして評価を行なった。結果を、図19に示す表2に示す。
【0267】
[実施例8]
特定層(高屈折光散乱層/強散乱型)形成液の代わりに特定層(高屈折光散乱層/中散乱型)形成液を用いたこと以外は実施例7と同様にして、導光板を製造した。
得られた導光板について、実施例1と同様にして評価を行なった。結果を、図19に示す表2に示す。
【0268】
[実施例9]
[導光板の製造]
厚さ0.43mmのガラス繊維強化エポキシ積層基板上の電極に青色LED(クリー社製、商品名:C460MB290)を、エポキシ銀ペーストによるダイボンディングとAu線によるワイヤボンディングにより取り付けた。このLEDを高屈折率バインダAにてドーム状に封止し、150℃で1時間保持して硬化させた。
【0269】
前記の基板上に、特定層(堰)形成液Cを用いて境界部を描画した。境界部は、当該青色LEDを囲む堰となるように描画した。また、境界部の描画は、ノズル径290μmのシリンジを用いて行なった。この際、当該シリンジのノズルから基板表面までの距離は350μmとした。また、描画速度は15cm/秒とした。さらに、シリンジから特定層(堰)形成液Cを押し出す際の圧力は、4MPaに設定した。
その後、これを空気雰囲気中、150℃、大気圧で0.5時間保持し、境界部を硬化させた。これにより、高さ300μm、幅1.3mmの、稜線のない形状の境界部が得られた。
【0270】
次いで、基板上の前記の境界部の内側部分に、実施例1と同様にして低屈折率層と高屈折率層Aとを形成した。そして、高屈折率層Aの上に、特定層(低屈折光散乱層)形成液の代わりに特定層(高屈折光散乱層/強散乱型)形成液を用いた他は実施例5と同様にして光散乱層を形成し、導光板を製造した。
得られた導光板について、実施例1と同様にして評価を行なった。結果を、図20に示す表3に示す。
【0271】
なお、表3の光取り出し性の項において、「遠くまで光るか」の欄が「○」であれば堰付近にまで発光面が達していることを意味し、「×」であればチップ直上のみ発光していることを意味する。
また、表3の光取り出し性の項において、「全面が光るか」の欄が「○」であれば堰で区切られた面全体が発光していることを意味し、「×」であればチップ近傍の面のみが発光していることを意味する。
さらに、表3の光取り出し性の項において、「境界部での光の遮蔽」の欄が「○」であれば境界内部の面のみ発光していることを意味し、「×」であれば境界を越え隣接する面に発光が達していることを意味する。
【0272】
[実施例10]
境界部を形成する際の描画速度を24cm/秒としたこと以外は実施例9と同様にして、導光板を製造した。これにより、高さ150μm、幅0.6mmの稜線の無い形状の境界部を有する導光板が得られた。
得られた導光板について、実施例1と同様にして評価を行なった。結果を、図20に示す表3に示す。
【0273】
[実施例11]
特定層(堰)形成液Bに代えて特定層(堰)形成液Cを用いて境界部を形成したこと以外は実施例9と同様にして、導光板を製造した。
得られた導光板について、実施例1と同様にして評価を行なった。結果を、図20に示す表3に示す。
【0274】
[実施例12]
特定層(堰)形成液Cの代わりに特定層(堰)形成液Bを用いたこと、及び、境界部を形成する際の描画速度を9cm/秒としたこと以外は実施例9と同様にして、導光板を製造した。
得られた導光板について、実施例1と同様にして評価を行なった。結果を、図20に示す表3に示す。
【0275】
[実施例13]
低屈折率層を形成せず、基板上に直接高屈折率層Aを形成し、その上に光散乱層を形成したこと以外は実施例9と同様にして、導光板を製造した。
得られた導光板について、実施例1と同様にして評価を行なった。結果を、図20に示す表3に示す。
【0276】
[実施例14]
光散乱層を形成しなかったこと以外は実施例9と同様にして、導光板を製造した。
得られた導光板について、実施例1と同様にして評価を行なった。結果を、図20に示す表3に示す。
【0277】
[まとめ]
図18〜20に表示した表1〜3から、屈折率異なる層の積層により導光を高めたものが遠方への光導光機能に優れ、また光取り出し面に散乱層を設けたものが面内の均一な発光(光取り出し)に優れていることがわかる。さらに境界部を設けることにより発光色の異なる導光層を隣接させても色の遮蔽が行なわれ混色することが無く、必要に応じて境界部を白色とすることにより境界部から導光面内への反射が起こり、LEDから最も遠く暗くなりがちな境界部付近の発光均一性を改善することが出来た。積層した特定層の総厚120μmの薄膜とした場合でも面内発光均一性の劣化は無く、極めて薄層の導光層の形成が可能であった。このように、屈折率が異なる層の積層及び散乱層・境界層の併用により、簡便な構造にて均一に面発光可能な導光層を構成することができる。
【0278】
[3]導光板の製造
[3−1]各層の形成液の用意
[3−1−1]特定層(低屈折率層)形成液A(低屈折率;n=1.41)の調液
モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ・ジャパン合同会社製両末端シラノールジメチルシリコーンオイルXC96−723を390g、メチルトリメトキシシランを10.41g、及び、触媒としてジルコニウムテトラアセチルアセトネート粉末を0.280gを、攪拌翼と、分留管、ジムロートコンデンサ及びリービッヒコンデンサとを取り付けた500ml三つ口コルベン中に計量し、室温にて15分触媒の粗大粒子が溶解するまで攪拌した。この後、反応液を100℃まで昇温して触媒を完全溶解し、100℃全還流下で30分間500rpmで攪拌しつつ初期加水分解を行った。
【0279】
続いて留出をリービッヒコンデンサ側に接続し、窒素をSV20で液中に吹き込み生成メタノール及び水分、副生物の低沸ケイ素成分を窒素に随伴させて留去しつつ100℃、500rpmにて1時間攪拌した。続いて窒素流量をSV40に増やし液中に吹き込みながらさらに130℃に昇温、保持しつつ4.7時間重合反応を継続し、粘度158.7mPa・sの反応液を得た。なお、ここで「SV」とは「Space Velocity」の略称であり、単位時間当たりの吹き込み体積量を指す。よって、SV20とは、1時間に反応液の20倍の体積のN2を吹き込むことをいう。
【0280】
窒素の吹き込みを停止し反応液をいったん室温まで冷却した後、ナス型フラスコに反応液を移し、ロータリーエバポレーターを用いてオイルバス上120℃、1kPaで20分間微量に残留しているメタノール及び水分、低沸ケイ素成分を留去し、粘度260mPa・sの無溶剤の液を得た。
【0281】
ガラススクリュー管瓶にこの液10gとジルコニウムテトラアセチルアセトネート粉末0.04gとを計量し、オイルバス中100℃で5分間攪拌し溶解させた(以下適宜「低屈折率バインダA」という)。透明溶解後の低屈折率バインダA液2g、日本アエロジル株式会社製疎水性ヒュームドシリカRX200を0.194g軟膏壷に計量し、自転・公転方式ミキサー脱泡装置を使用し、混合モードで3分、脱泡モードで1分攪拌を行い、特定層(低屈折率層)形成液A(低屈折率;n=1.41)を得た。
【0282】
[3−1−2]特定層(低屈折率層)形成液B(低屈折率;n=1.42)の調液
モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ・ジャパン合同会社製両末端シラノールジメチルシリコーンオイルXC96−723を1450.82g、フェニルトリメトキシシランを145g、及び、ジルコニウムテトラアセチルアセトネート粉末を3.190g用意した。これを撹拌翼とコンデンサとを取り付けた2Lの三つ口コルベン中に入れ、室温で、ジルコニウムテトラアセチルアセトネート粉末が十分溶解するまで撹拌した。これにより、15分ほどで溶解した。この液を120℃まで昇温し、30分間還流させながら撹拌を行なった。
【0283】
続いて、ガス吹き込み管をコルベンの口に接続して、窒素をSV20で反応液中に吹き込みながら120℃で5時間、撹拌を続けた。窒素の吹き込みを停止しコルベンをいったん室温まで冷却した後、反応液をナス型フラスコに移し、ロータリーエバポレーターを用いてオイルバス上120℃、1kPaで20分間減圧留去し、粘度282mPa・sの無溶剤の液を得た。
【0284】
ガラススクリュー管瓶にこの液10gとジルコニウムテトラアセチルアセトネート粉末0.06gとを計量し、オイルバス中100℃で5分間攪拌し溶解させた(以下適宜「低屈折率バインダB」という)。透明溶解後の低屈折率バインダB液2g、日本アエロジル株式会社製疎水性ヒュームドシリカRX200を0.196g軟膏壷に計量し、自転・公転方式ミキサー脱泡装置を使用し、混合モードで3分、脱泡モードで1分攪拌を行い、特定層(低屈折率層)形成液B(低屈折率;n=1.42)を得た。
【0285】
[3−1−3]特定層(高屈折率層)形成液C(高屈折率;n=1.46)の調液
モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ・ジャパン合同会社製両末端シラノールジメチルシリコーンオイルXC96−723を42g、両末端シラノールメチルフェニルシリコーンオイルYF3804を98g、フェニルトリメトキシシランを14g、及び、触媒としてジルコニウムテトラアセチルアセトネート粉末を0.308g用意し、これを攪拌翼とコンデンサとを取り付けた三つ口コルベン中に計量し、室温にて15分触媒が十分溶解するまで攪拌した。この後、反応液を120℃まで昇温し、120℃全還流下で2時間攪拌しつつ初期加水分解を行った。
続いて窒素をSV20で吹き込み生成メタノール及び水分、副生物の低沸ケイ素成分を留去しつつ120℃で攪拌し、さらに6時間重合反応を進めた。
窒素の吹き込みを停止し反応液をいったん室温まで冷却した後、ナス型フラスコに反応液を移し、ロータリーエバポレーターを用いてオイルバス上120℃、1kPaで20分間微量に残留しているメタノール及び水分、低沸ケイ素成分を留去し、粘度150mPa・sの無溶剤の液を得た。
【0286】
ガラススクリュー管瓶にこの液10gとジルコニウムテトラアセチルアセトネート粉末0.08gとを計量し、オイルバス中100℃で5分間攪拌し溶解させた(以下適宜「高屈折率バインダC」という)。透明溶解後の高屈折率バインダC液2g、日本アエロジル株式会社製疎水性ヒュームドシリカRX200を0.175g軟膏壷に計量し、自転・公転方式ミキサー脱泡装置を使用し、混合モードで3分、脱泡モードで1分攪拌を行い、特定層(高屈折率層)形成液C(高屈折率;n=1.46)を得た。
【0287】
[3−1−4]特定層(高屈折率光散乱層)形成液Dの調液
[3−1−3]の特定層(高屈折率層)形成液Cの液を5g、光散乱粒子として、Al23微粉「CR−1(中央粒径400nm)」を0.11g、モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ・ジャパン合同会社製「トスパール145(中央粒径5μm)」を1.09g混合用容器に計量し、自転・公転方式ミキサー脱泡装置を使用し、遠心脱泡・混合を行い、特定層(高屈折率光散乱層)形成液Dを得た。
【0288】
[3−2]堰形成液の用意
[3−2−1]堰形成液A(白色縮合型シリコーン樹脂)の調液
[3−1−2]の低屈折率バインダBの液4.2g、光散乱粒子として、Al23微粉「CR−1(中央粒径400nm)」を1.407g、日本アエロジル株式会社製疎水性ヒュームドシリカ アエロジルRX200を1.302gを混合用容器に計量し、自転・公転方式ミキサー脱泡装置を使用して遠心脱泡・混合を行い、白色の堰形成液Aを得た。
【0289】
[3−2−2]堰形成液B(白色付加型シリコーン樹脂)の調液
東レダウコーニング株式会社製シリコーン樹脂OE6336−A液を2.0g、同B液を2.0g、光散乱粒子として、Al23微粉「CR−1(中央粒径400nm)」を0.8g、日本アエロジル株式会社製疎水性ヒュームドシリカ アエロジルRX200を0.7g混合用容器に計量し、自転・公転方式ミキサー脱泡装置を使用して遠心脱泡・混合を行い、白色の堰形成液Bを得た。
【0290】
[3−2−3]堰形成液C(黒色付加型シリコーン樹脂)の調液
東レダウコーニング株式会社製シリコーン樹脂OE6336−A液を2.5g、同B液を2.5g、黒色顔料として、三菱マテリアル製チタンブラック粒子BM−Cを1.5g混合用容器に計量し、自転・公転方式ミキサー脱泡装置を使用して遠心脱泡・混合を行い、黒色の堰形成液Cを得た。
【0291】
[3−2−4]堰形成液D(白色縮合型シリコーン樹脂:低粘度)の調液
[3−1−2]の低屈折率バインダBの液を15g、光散乱粒子として、Al23微粉「CR−1(中央粒径400nm)」を4.34g、日本アエロジル株式会社製疎水性ヒュームドシリカ アエロジルRX200を2.8g混合用容器に計量し、自転・公転方式ミキサー脱泡装置を使用して遠心脱泡・混合を行い、白色の堰形成液Dを得た。
【0292】
[4.具体的な実施例の操作及び評価の説明]
[実施例15]
以下に堰を設け、塗布型導光層を有する発光装置の作製例を示す。
[導光板の製造]
中央にLEDを設置するための凹部を備え、凹部以外の部分に白色ソルダーペーストを塗布した配線基板を用意した。なお、前記凹部にはリフレクタが装着されている。
前記凹部に緑色LEDを実装した。次に、この基板上に、[3−2−1]で得られた堰形成液Aを用いて境界部を描画した。境界部は、当該緑色LEDを囲む堰となるように描画した。また、境界部の描画は、武蔵エンジニアリング株式会社製圧空型ディスペンサを使用し、同社製テーパーノズルTPN−22G(内径0.4mm)を用いて行なった。この際の描画速度は2mm/秒とした。さらに、シリンジから堰形成液Aを押し出す際の圧力は、0.364MPaに設定した。
その後、これを空気雰囲気中150℃、大気圧で1.0時間保持し、境界部を硬化させた。これにより高さ約300μmの、稜線のない形状の境界部が得られた。
【0293】
次いで、ディスペンサを用いて基板上の前記の境界部の内側部分に、特定層(低屈折率層)形成液Aを塗布した。ここで境界部が特定層(低屈折率層)形成液Aを堰き止める堰として作用し、境界部の内側にのみ特定層(低屈折率層)形成液Aが塗布され、境界部の外側には漏れ出さなかった。また、配線基板上の凹部には特定層(低屈折率層)形成液Aが侵入しないように塗布し、特定層(低屈折率層)形成液Aにより形成される低屈折率層が、凹部を通じて伝送される光の伝送を妨げないようにした。
そして、これを空気雰囲気中、150℃、大気圧で1時間保持し、特定層(低屈折率層)形成液Aを硬化させて、厚さ約50μmの低屈折率層を形成した。
【0294】
さらに、ディスペンサを用いて前記境界部内側の低屈折率層上に、特定層(低屈折率層)形成液Bを塗布した。この際も、境界部が特定層(低屈折率層)形成液Bを堰き止める堰として作用し、境界部の内側にのみ特定層(低屈折率層)形成液Bが塗布され、境界部の外側には漏れ出さなかった。
そして、これを空気雰囲気中、150℃、大気圧で1時間保持し、特定層(低屈折率層)形成液Bを硬化させて、厚さ約200μmの高屈折率層を形成した。
【0295】
さらに、ディスペンサを用いて前記境界部内側の高屈折率層上に、特定層(高屈折率光散乱層)形成液Dを塗布した。この際も、境界部が特定層(高屈折率光散乱層)形成液Dを堰き止める堰として作用し、境界部の内側にのみ特定層(高屈折率光散乱層)形成液Dが塗布され、境界部の外側には漏れ出さなかった。
そして、これを空気雰囲気中、150℃、大気圧で1時間保持し、特定層(高屈折率光散乱層)形成液Dを硬化させて、厚さ約50μmの高屈折率光散乱層を形成した。
以上のようにして、図21に模式的に示すような、塗布型導光層を有する発光装置を製造した。
【0296】
[評価]
得られた塗布型導光層を有する発光装置に通電を行い、前記緑色LEDを発光させて、その様子を観察した。
さらに、実施例1と同様の要領で、得られた導光板の各層について、密着性の評価、固体Si−NMRスペクトル測定、シラノール含有率、ケイ素含有率、硬度(ショアA)、及びヘーズ値を測定した。
【0297】
また、導光板の各層の屈折率を、以下の要領で測定した。
[屈折率測定]
各層の屈折率は、液浸法(固体対象)のほかPulflich屈折計、Abbe屈折計、プリズムカプラー法、干渉法、最小偏角法などの公知の方法を用いて測定することが出来る。本実施例の各層は硬化前後の屈折率変化は非常に僅かであるため、硬化前の液体状態にてAbbe屈折計(ナトリウムD線(589nm))により実施例15の導光板の各層(低屈折率層、高屈折率層、光散乱層)の形成液屈折率を測定した。
【0298】
結果を、表4に示す。
なお、表4において、密着性の評価結果におうて密着性が良好なものは「○」で示した。
また、表4の光取り出し性の項において、「遠くまで光るか」の欄が「○」であれば堰付近にまで発光面が達していることを意味し、「△」であればLEDと堰の中間付近にまで発光面が達していることを意味し、「×」であればチップ直上のみ発光していることを意味する。
また、表4の光取り出し性の項において、「全面が光るか」の欄が「○」であれば堰で区切られた面全体が発光していることを意味し、「△」であればLEDと境界部との中間程度まで発光することを意味し、「×」であればチップ近傍の面のみが発光していることを意味する。
さらに、表4の光取り出し性の項において、「境界部での光の遮蔽」の欄が「○」であれば境界内部の面のみ発光していることを意味し、「×」であれば境界を越え隣接する面に発光が達していることを意味する。
【0299】
[実施例16]
低屈折率層の形成液として特定層(低屈折率層)形成液Bを用いた他は全て実施例15と同様にして実施例16の発光装置を製造し、実施例15と同様の評価を行なった。結果を表4に示す。
【0300】
【表1】

【0301】
[実施例15,16からわかること]
堰の素材をシリコーン樹脂としても堰と導光層が剥離することなく好適に導光層を形成することができた。また、実施例16より高屈折率層と低屈折率層の屈折率差が大きな実施例15は、実施例16より光伝播効率が向上し、LEDより遠方まで均一に面発光させることが出来た。
【0302】
[5]その他の堰の製造例と評価
[5−1]堰の描画と硬化
[5−1−1]白色の堰(付加型シリコーン樹脂)
スライドガラス上に[3−2−2]で得られた白色の堰形成液Bを用いて1辺1cmの正方形の堰の描画を行なった。堰の描画は、武蔵エンジニアリング株式会社製圧空型ディスペンサを使用し、同社製テーパーノズルTPN−22G(内径0.4mm)を用いて行なった。この際の描画速度は3mm/秒とした。さらに、シリンジから堰形成液Bを押し出す際の圧力は、150kPaに設定した。
その後、これを空気雰囲気中150℃、大気圧で1.0時間保持し、堰を硬化させた。これにより高さ約300μmの、稜線のない形状の白色の堰が得られた。
【0303】
[5−1−2]黒色の堰 (付加型シリコーン樹脂)
スライドガラス上に[3−2−3]で得られた黒色の堰形成液Cを用いたことの他は[5−1−1]と同様にして堰の描画を行なった。これにより高さ約300μmの、稜線のない形状の黒色の堰が得られた。
【0304】
[5−2]堰の評価
堰を描画・硬化したのみのスライドガラスに応力をかけて二つに割り、堰の破断面の形状を実体顕微鏡で観察し、堰の高さや断面構造を調べた。[5−1−1]の堰については堰の内側に実施例15と同様の方法で低屈折率層、高屈折率層、光散乱層を積層・硬化させてこれを破断させ、実体顕微鏡で破断面を観察し、堰と導光層素材の密着性や濡れ性を調べた。
【0305】
[5−3]各種の堰の働き
実施例15および[5−1−1]、[5−1−2]の実験例より縮合型シリコーン樹脂や付加型シリコーン樹脂いずれも好適に堰を形成できることがわかった。また、いずれの樹脂により形成した堰も導光層を形成する特定層との密着性良く、堰と特定層の界面が剥離したり、特定層塗布時にはじきが発生したりすることはなかった。さらに堰を白色や黒色に着色形成できることもわかった。
【0306】
異なる色を伝播させる2つの導光層領域を堰で区切る場合、堰が白色であると、各々の領域の光を白色の堰が反射し、隣の領域への光の漏れ出しを防止し混色を防ぐ効果がある。ただし、白色の堰を非常に細く又は薄くした場合には、光の遮蔽効果が不十分となる可能性がある。この場合には、黒色の堰を用いると光吸収による導光量のロスが生じるが、隣の領域への光の混色を確実に防止することが出来ると考えられる。
【産業上の利用可能性】
【0307】
本発明の導光部材の製造方法並びに導光部材及び導光板は、産業上の任意の分野で使用可能であるが、特に、光導波路、照明、電飾、ディスプレイなどの用途に用いて好適である。
【符号の説明】
【0308】
1 基板
2 半導体発光素子
3 封止材
4 半導体発光装置
5 堰
6 高屈折率層
7 導光部材
8 低屈折率層
9 散乱層及び/又は蛍光体含有層
10 反射層
1H 凹部
8H,10H 穴

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板上に、流体状の硬化性材料を硬化させてなる導光層を備える導光部材の製造方法であって、
該基板上に、該導光層を区画する堰をディスペンサーにより設ける工程と、
該硬化性材料を該基板上に塗設する工程と、
該硬化性材料を硬化させる工程とを有し、
該堰を該ディスペンサーにより設ける工程では、該堰の材料により該堰の形状を描画して、該堰を形成する
ことを特徴とする、導光部材の製造方法。
【請求項2】
該堰の材料がシリコーン樹脂である
ことを特徴とする、請求項1に記載の導光部材の製造方法。
【請求項3】
該堰の材料が付加型シリコーン樹脂である
ことを特徴とする、請求項2に記載の導光部材の製造方法。
【請求項4】
該堰にヒュームドシリカを含有させる
ことを特徴とする、請求項2又は請求項3に記載の導光部材の製造方法。
【請求項5】
該堰に色材を含有させて白色とする
ことを特徴とする、請求項1〜4のいずれか一項に記載の導光部材の製造方法。
【請求項6】
該色材としてアルミナ微粉または酸化チタンを含有させる
ことを特徴とする、請求項5に記載の導光部材の製造方法。
【請求項7】
予め該基板の表面には半導体発光装置が設置されており、該堰を設ける工程では、該半導体発光装置を囲むように該堰を描画する
ことを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の導光部材の製造方法。
【請求項8】
該硬化性材料が以下の特徴<1>を有する縮合型シリコーン系材料である
ことを特徴とする請求項1〜7のいずれか一項に記載の導光部材の製造方法。
<1>ケイ素含有率が20重量%以上である。
【請求項9】
該硬化性材料が以下の特徴<2>を有する縮合型シリコーン系材料である
ことを特徴とする請求項1〜8のいずれか一項に記載の導光部材の製造方法。
<2>固体Si−核磁気共鳴(NMR)スペクトルにおいて、下記(a)及び/又は(b)のSiに由来するピークを少なくとも1つ有する。
(a)ピークトップの位置がテトラメトキシシランを基準としてケミカルシフト−40ppm以上、0ppm以下の領域にあり、ピークの半値幅が0.3ppm以上、3.0ppm以下であるピーク。
(b)ピークトップの位置がテトラメトキシシランを基準としてケミカルシフト−80ppm以上、−40ppm未満の領域にあり、ピークの半値幅が0.3ppm以上5.0ppm以下であるピーク。
【請求項10】
該硬化性材料が以下の特徴<3>を有する縮合型シリコーン系材料である
ことを特徴とする請求項1〜9のいずれか一項に記載の導光部材の製造方法。
<3>シラノール含有率が0.01重量%以上、10重量%以下である。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【公開番号】特開2012−256085(P2012−256085A)
【公開日】平成24年12月27日(2012.12.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−221132(P2012−221132)
【出願日】平成24年10月3日(2012.10.3)
【分割の表示】特願2007−303464(P2007−303464)の分割
【原出願日】平成19年11月22日(2007.11.22)
【出願人】(000005968)三菱化学株式会社 (4,356)
【Fターム(参考)】