説明

発光装置、照明装置および車両用前照灯

【課題】発光部を支持部材に密着させることによって発光部を支持する場合において、発光部からの発熱によって発光部と支持部材との密着性が低下したとしても、発光部を支持部材によって支持し続ける。
【解決手段】ヘッドランプ1は、半導体レーザ3から出射された励起光により発光し、照明光を放射する発光部7と、励起光が照射される位置に発光部7を支持する支持部材13と、発光部7の外面の少なくとも一部の面と接触すると共に、当該少なくとも一部の面と支持部材13との間に圧力を与え、発光部7を支持部材13に押しつける透明板9よびネジ14とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高輝度光源として機能する発光装置並びに、当該発光装置を備えた照明装置および車両用前照灯に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、励起光源として発光ダイオード(LED;Light Emitting Diode)や半導体レーザ(LD;Laser Diode)等の半導体発光素子を用い、これらの励起光源から生じた励起光を、蛍光体を含む発光部に照射することによって発生する蛍光を照明光として用いる発光装置の研究が盛んになって来ている。
【0003】
このような発光装置に関する技術の例として特許文献1に開示された灯具がある。この灯具では、高輝度光源を実現するために、励起光源として半導体レーザを用いている。半導体レーザから発振されるレーザ光は、コヒーレントな光であるため、指向性が強く、このため、当該レーザ光を励起光として無駄なく集光し、利用することができる。
【0004】
このような半導体レーザを励起光源として用いた発光装置は、車両用ヘッドランプに好適に適用することができる。励起光源として半導体レーザを用いることにより、LEDでは実現し得なかった高輝度の光源を実現できる。
【0005】
このようなレーザ光を励起光として用いた場合、微小な発光部、すなわち微小な体積の発光部において、発光部に照射されて吸収される励起光のうちの、蛍光体により蛍光に変換されること無く熱に変換されてしまう成分が、発光部の温度を容易に上昇させ、その結果、発光部の特性低下や熱による損傷を引き起こしてしまう。
【0006】
この問題を解決するために特許文献2の発明では、波長変換部材(発光部に相当)の周囲(外表面)を覆うように配置されるなどして、波長変換部材に熱的に接続された透光性で膜状の熱伝導部材を設け、この熱伝導部材により波長変換部材の発熱を軽減している。更に、例えば凸レンズや凹レンズといった所望の形状のガラスや樹脂等の周囲に高熱伝導物質を被覆させることにより、熱伝導部材を比較的容易に所望の形状とする方法も開示されている。
【0007】
また、特許文献3の発明では、波長変換部材を円筒形状のフェルールで保持し、このフェルールにワイヤ状の熱伝導部材を熱的に接続することにより波長変換部材の発熱を軽減している。
【0008】
また、特許文献4の発明では、光変換部材(発光部に相当)の、半導体発光素子が位置する側に、冷媒が流れる流路を有する放熱部材(支持部材に相当)を設け、光変換部材を冷却している。
【0009】
なお、光源としての高出力LEDチップ(発光部に相当)の表面に透光性のヒートシンク(支持部材に相当)を熱的に接続し、高出力LEDチップを冷却する構成が特許文献5に開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2005−150041号公報(2005年6月9日公開)
【特許文献2】特開2007−27688号公報(2007年2月1日公開)
【特許文献3】特開2007−335514号公報(2007年12月27日公開)
【特許文献4】特開2005−294185号公報(2005年10月20日公開)
【特許文献5】特表2009−513003号公報(2009年3月26日公表)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
上で述べた特許文献2〜5の発明のいずれにおいても、温度上昇を招く波長変換部材や光変換部材、高出力LED(以下、波長変換部材、光変換部材および高出力LEDを総称して波長変換部材と呼ぶ)を、それらから発生する熱を伝導する熱伝導部材や放熱部材、ヒートシンク(以下、熱伝導部材、放熱部材およびヒートシンクを総称して熱伝導部材と呼ぶ)に熱的に接続することによって、波長変換部材の発熱を低減させるものである。
【0012】
しかしながら、波長変換部材に励起光の照射が経時的に繰り返されることによって、波長変換部材からの発熱量が非常に大きな値となってしまう場合がある。この場合、熱伝導部材を通して波長変換部材から発生する熱をいくら逃がしたとしても、発生する熱量が逃がす熱量を大きく上回ってしまうと、波長変換部材からの発熱を十分に低減することができない状況が起り得る。
【0013】
このような状況の下では、波長変換部材と熱伝導部材との間の熱膨張率の違いに起因し、両者の間には熱膨張差が生じてしまう。ところが、波長変換部材と熱伝導部材とは、それらを熱的に接続するために、たとえばグリースといった密着材を用いて密着させており、上で述べた熱膨張差は両者の密着性を低下させるものである。
【0014】
波長変換部材と熱伝導部材との密着性の低下は、両者の間における熱的な接続の信頼性を損なうことはもちろんであるが、たとえば熱伝導部材を用いて波長変換部材を支持していた場合、波長変換部材を所定の位置に支持し続けることが困難となる。すなわち、波長変換部材の位置変動を招くことになる。
【0015】
波長変換部材は、半導体レーザ等の励起光源から出射される励起光が効率よく照射されるよう、励起光源に対する相対的な位置決めがなされている。波長変換部材の位置が変動すれば、励起光の照射効率を大きく低下させてしまう。
【0016】
さらに、波長変換部材を熱伝導部材に密着させることによって、その波長変換部材の位置を固定していた場合、上記のように熱膨張差がその密着性を低下させ、ひいては、波長変換部材の落下という事態を招くおそれもある。
【0017】
特に、特許文献2の発明では、膜状や層状といった熱伝導部材に波長変換部材を密着されている。このため、このような熱伝導部材に波長変換部材を押しつけ、その圧力を用いて、波長変換部材を熱伝導部材に固定することは困難である。なぜなら、熱伝導部材が膜状や層状といった外力に脆い形状である場合、上記のような圧力が印加されると、その圧力により、熱伝導部材の破壊を招いてしまうからである。
【0018】
本発明は、上記の課題を解決するためになされたもので、その目的は、発光部を支持部材に密着させることによって発光部を支持する場合において、発光部からの発熱によって発光部と支持部材との密着性が低下したとしても、発光部を支持部材によって支持し続けることができる発光装置、照明装置および車両用前照灯を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0019】
本発明に係る発光装置は、上記の課題を解決するために、励起光源から出射された励起光により発光し、照明光を放射する発光部と、前記励起光が照射される位置に前記発光部を支持する支持部材と、前記支持部材が前記発光部を支持できなくなったとき、前記発光部の外面の少なくとも一部の面と接触し、前記発光部が前記支持部材から落下することを防止する落下防止機構とを備える。
【0020】
発光部は励起光を受けて発光するが、その発光の際、励起光の照射によって発光部は発熱する。励起光の照射が繰り返されると、発光部からの発熱量は大きくなり、その結果、支持部材と発光部とのそれぞれの熱膨張率の違いにより、互いの熱膨張に差が生じてしまう。
【0021】
このため、落下防止機構を用いずに、接着剤やグリース等の密着材を用いて発光部を支持部材に密着させ、固定していた場合、上で述べた熱膨張の差による機械的ストレスが支持部材と発光部との間の密着箇所に加わり、その密着箇所の密着性を低下させてしまう。その結果、支持部材は発光部を支持し続けることが困難となり、発光部の落下を招くおそれがある。
【0022】
そこで、上記の構成では、落下防止機構は発光部の外面の少なくとも1つの部分と接触し、発光部が支持部材から落下することを防止する。
【0023】
そうすることにより、支持部材と発光部との間の熱膨張の差によって機械的ストレスが生じ、上で述べたような支持部材と発光部との間における密着箇所の密着性が低下したとしても、発光部が支持部材から落下することが防止されるので、発光部は支持部材によって支持し続けられることになる。
【0024】
前記落下防止機構は、前記発光部の外面の少なくとも一部の面と接触すると共に、当該少なくとも一部の面と前記支持部材との間に圧力を与え、前記発光部を前記支持部材側に押しつける圧力印加機構であることが好ましい。
【0025】
上記の構成では、圧力印加機構は発光部の外面の少なくとも1つの部分と接触する。そして、圧力印加機構はその少なくとも1つの部分と支持部材との間に圧力を印加する。このような圧力が印加されることにより、発光部は支持部材に押しつけられることになる。
【0026】
そうすることにより、支持部材と発光部との間の熱膨張の差によって機械的ストレスが生じ、上で述べたような支持部材と発光部との間における密着箇所の密着性が低下したとしても、発光部は支持部材に押しつけられているので、発光部は支持部材によって支持し続けられることになる。
【0027】
前記圧力印加機構は、前記発光部を挟みこむように前記支持部材と対向し、前記発光部の外面のうち前記支持部材側とは反対側の少なくとも一部の面と接触する対向部材を有し、前記支持部材と前記対向部材との間に圧力を印加することによって、前記支持部材と前記対向部材との間に前記発光部を固定することが好ましい。
【0028】
上記の構成では、発光部を挟みこむようにして支持部材と対向部材とを対向するように配置する。そして、支持部材と対向部材との間に圧力を印加する。このような圧力が印加されることにより、支持部材と対向部材とは、発光部をその両側から互いに押しつけあうことになる。
【0029】
そうすることにより、支持部材と発光部との間の熱膨張の差によって機械的ストレスが生じ、上で述べたような支持部材と発光部との間における密着箇所の密着性が低下したとしても、支持部材と対向部材との間に発光部を固定することができる。
【0030】
底部が開口し、前記底部を通して前記励起光源から前記発光部に向かう前記励起光を通過させる凹部を有し、前記凹部に前記発光部を収納する収納部材をさらに備え、前記収納部材は、前記支持部材と前記対向部材との間に挟みこまれており、前記支持部材と前記対向部材との間隔を維持していることが好ましい。
【0031】
上記の構成では、発光部は、収納部材の凹部の内部に収納され、収納部材と共に支持部材と対向部材との間に挟みこまれている。そして、凹部の底部は開口しており、励起光源から出射された励起光は、その底部を通って発光部に照射される。
【0032】
支持部材と対向部材との間には圧力が印加されているが、収納部材を用いないと、その圧力は直接、発光部に加わることになる。そのような圧力が加わり続けると、発光部が押しつぶされ、延いては発光部の破損を招くことも考えられる。
【0033】
そこで、上記の構成では、支持部材と対向部材との間隔を維持する収納部材に発光部を収納し、支持部材と対向部材との間に印加される圧力が発光部のみに直接加わらないようにしている。
【0034】
たとえば、収納部材の厚みを、発光部の厚みとほぼ一致させておけば、支持部材と対向部材との間隔が一定に保たれた状態で、発光部が支持部材および対向部材との間に挟みこまれることになる。発光部と収納部材との各々の厚みは、支持部材側から対向部材側へ向かう距離で定義することができる。
【0035】
そうすることにより、発光部が押しつぶされ、発光部の破損を招くことなく、支持部材と対向部材との間に発光部を固定することができる。
【0036】
前記凹部は、前記底部から離れるに従って開口面積が広がるすり鉢状の傾斜側壁面に囲まれており、前記傾斜側壁面は前記照明光を反射することが好ましい。
【0037】
上記の構成では、発光部が励起光を受けて発光する際、発光部を中心に四方八方に照明光が放射される。
【0038】
そして、発光部を収納する収納部材の凹部は、底部から離れるに従って開口面積が広がるすり鉢状の傾斜側壁面に囲まれている。
【0039】
このため、発光部から放射される光のうち一部を除き傾斜側壁面に到達し、反射することになる。
【0040】
そうすることにより、発光部を中心に四方八方に放射される照明光から所定の立体角内を進む光線束を形成することができる。
【0041】
前記対向部材を挟むようにして前記発光部と対向し、前記対向部材を透過した前記照明光を反射する反射部材をさらに備え、前記反射部材は、前記対向部材を介して前記傾斜側壁面と連続し、且つ、前記対向部材から離れるに従って開口面積が広がる、すり鉢状の反射面を有することが好ましい。
【0042】
上記の構成では、収納部材の凹部を囲む傾斜側壁面に反射部材の反射面を連続させ、凹部の傾斜側壁面と反射部材の反射面とからなる、大きなすり鉢状の反射面が実現されている。
【0043】
このため、このような大きなすり鉢状の反射面を用いて発光部を取り囲むことができるので、発光部から放射された照明光が反射面で反射する回数を増加させることができる。
【0044】
そうすることにより、収納部材だけを用いて照明光を反射させる場合よりも小さい立体角内を進む光線束を形成することができる。
【0045】
前記支持部材を挟むようにして前記発光部と対向し、前記励起光源から前記発光部に向かう前記励起光を通過させる透過部材をさらに備え、前記圧力印加機構は、前記反射部材および前記透過部材のいずれか一方を貫通し、他方に埋め込まれたネジをさらに有することが好ましい。
【0046】
上記の構成では、発光部を挟みこんでいる支持部材と対向部材とをさらに、反射部材と透過部材とで挟みこんでいる。そして、反射部材と透過部材とは、それらのうちのいずれか一方を貫通し、他方に埋め込まれたネジを用いて固定されている。
【0047】
このため、反射部材と透過部材とに挟みこまれている支持部材と対向部材とに圧力が印加される。このような圧力が印加されることにより、反射部材と透過部材とは、支持部材と対向部材とを、その両側から互いに押しつけあうことになる。その結果、支持部材と対向部材とは、発光部をその両側から互いに押しつけあうことになる。
【0048】
そうすることにより、支持部材と対向部材とに挟みこまれている発光部に一定の圧力を印加し続けることができるので、支持部材と対向部材との間に発光部を固定することができる。
【0049】
前記支持部材を挟むようにして前記発光部と対向し、前記励起光源から前記発光部に向かう前記励起光を通過させる透過部材をさらに備え、前記支持部材および前記透過部材はそれぞれ、前記透過部材と間隙層を介して、密着し、前記落下防止機構は、前記発光部と前記支持部材との間の間隙層の密着性が低下し、且つ、前記発光部と前記透過部材との間の間隙層の密着性が低下し、前記支持部材および前記透過部材のいずれもが、前記発光部を支持できなくなったとき、前記発光部が前記支持部材から落下することを防止することが好ましい。
【0050】
上記の構成では、発光部と支持部材との間の間隙層の密着性が低下し、且つ、発光部と透過部材との間の間隙層の密着性が低下し、支持部材および透過部材のいずれもが、発光部を支持できなくなったときでも、落下防止機構によって、発光部の落下を防止することができる。
【0051】
また、上記発光装置を備えている照明装置および車両用前照灯も本発明の技術的範囲に含まれる。
【発明の効果】
【0052】
本発明に係る発光装置は、以上のように、励起光源から出射された励起光により発光し、照明光を放射する発光部と、前記励起光が照射される位置に前記発光部を支持する支持部材と、前記支持部材が前記発光部を支持できなくなったとき、前記発光部の外面の少なくとも一部の面と接触し、前記発光部が前記支持部材から落下することを防止する落下防止機構とを備える。
【0053】
それゆえ、発光部を支持部材に密着させることによって発光部を支持する場合において、発光部からの発熱によって発光部と支持部材との密着性が低下したとしても、発光部を支持部材によって支持し続けることができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0054】
【図1】本発明の一実施形態に係るヘッドランプの構成を示す断面図である。
【図2】上記ヘッドランプが備える発光部と支持部材とが間隙層およびネジによって密着されている構造を示す図である。
【図3】(a)は、半導体レーザの回路図を模式的に示したものであり、(b)は、半導体レーザの基本構造を示す斜視図である。
【図4】上記ヘッドランプの変形例の構成を示す概略図である。
【図5】上記ヘッドランプの変形例の構成を示す概略図である。
【図6】上記ヘッドランプの変形例の構成を示す概略図である。
【図7】本発明の別の実施形態に係るヘッドランプの構成を示す概略図である。
【図8】本発明の一実施形態に係るレーザダウンライトが備える発光ユニットおよび従来のLEDダウンライトの外観を示す概略図である。
【図9】上記レーザダウンライトが設置された天井の断面図である。
【図10】上記レーザダウンライトの断面図である。
【図11】上記レーザダウンライトの設置方法の変更例を示す断面図である。
【図12】上記LEDダウンライトが設置された天井の断面図である。
【図13】上記レーザダウンライトおよび上記LEDダウンライトのスペックを比較するための図である。
【図14】本発明の別の実施形態に係るヘッドランプの構成を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0055】
(実施の形態1)
本発明の実施の一形態について図1〜図4に基づいて説明すれば、以下のとおりである。ここでは、本発明の照明装置の一例として、自動車用のヘッドランプ(発光装置、照明装置、車両用前照灯)1を例に挙げて説明する。ただし、本発明の照明装置は、自動車以外の車両・移動物体(たとえば、人間・船舶・航空機・潜水艇・ロケット等)のヘッドランプとして実現されてもよいし、その他の照明装置として実現されてもよい。その他の照明装置として、たとえば、サーチライト、プロジェクター、家庭用照明器具を挙げることができる。
【0056】
また、ヘッドランプ1は、走行用前照灯(ハイビーム)の配光特性基準を満たしていてもよいし、すれ違い用前照灯(ロービーム)の配光特性基準を満たしていてもよい。
【0057】
(ヘッドランプ1の構成)
まず、図1を参照しながら、ヘッドランプ1の構成について説明する。図1は、ヘッドランプ1の構成を示す断面図である。同図に示すように、ヘッドランプ1は、半導体レーザアレイ2と、非球面レンズ4と、光ファイバー5と、フェルール6と、発光部7と、反射鏡8と、透明板(落下防止機構、圧力印加機構、対向部材)9と、ハウジング10と、エクステンション11と、レンズ12と、支持部材13と、ネジ14(落下防止機構、圧力印加機構)と、間隙層15とを備えている。
【0058】
また、図2に示すように、発光部7は、この間隙層15を用いて支持部材13に密着しており、支持部材13によって発光部7の位置が支持されている。
【0059】
さらに、支持部材13は、その両端に、たとえば2本のネジ14を貫通させ、固定している。そして、このネジ14の先端が透明板9に埋め込まれている。図2は、発光部7と支持部材13とが間隙層15および2本のネジ14によって密着されている構造を示す図である。なお、間隙層15は透明接着剤が硬化した層のほか、透明の放熱グリースのように、それ自体は硬化していないものであってもよい。
【0060】
(半導体レーザアレイ2/半導体レーザ3)
半導体レーザアレイ2は、励起光を出射する励起光源として機能し、複数の半導体レーザ(励起光源)3を基板上に備えるものである。半導体レーザ3のそれぞれから励起光としてのレーザ光が発振される。なお、励起光源として複数の半導体レーザ3を用いる必要は必ずしもなく、半導体レーザ3を1つのみ用いてもよいが、高出力のレーザ光を得るためには、複数の半導体レーザ3を用いる方が容易である。
【0061】
半導体レーザ3は、1チップに1つの発光点を有するものであり、たとえば、405nm(青紫色)のレーザ光を発振し、出力1.0W、動作電圧5V、電流0.6Aのものであり、直径5.6mmのパッケージに封入されているものである。半導体レーザ3が発振するレーザ光は、405nmに限定されず、380nm以上470nm以下の波長範囲にピーク波長を有するレーザ光であればよい。
【0062】
なお、380nmより小さい波長のレーザ光を発振する良質な短波長用の半導体レーザを作製することが可能であれば、本実施の形態の半導体レーザ3として、380nmより小さい波長のレーザ光を発振するように設計された半導体レーザを用いることも可能である。
【0063】
また、本実施形態では、励起光源として半導体レーザを用いたが、半導体レーザの代わりに、LEDを用いることも可能である。
【0064】
その場合、励起光源としては高出力のLEDを用いることが好ましい。この場合には、450nmの波長の光(青色)を出射するLEDと、黄色の蛍光体、または緑色および赤色の蛍光体とを組み合わせることにより白色光を出射する発光装置を実現できる。
【0065】
また、励起光源として、半導体レーザ以外の固体レーザを用いてもよい。ただし、半導体レーザを用いる方が、励起光源を小型化できるため好ましい。
【0066】
(非球面レンズ4)
非球面レンズ4は、半導体レーザ3から発振されたレーザ光(励起光)を、光ファイバー5の一方の端部である入射端部5bに入射させるためのレンズである。たとえば、非球面レンズ4として、アルプス電気製のFLKN1 405を用いることができる。上述の機能を有するレンズであれば、非球面レンズ4の形状および材質は特に限定されないが、405nm近傍の透過率が高く、かつ耐熱性のよい材料であることが好ましい。
【0067】
(光ファイバー5)
(光ファイバー5の配置)
光ファイバー5は、半導体レーザ3が発振したレーザ光を発光部7へと導く導光部材であり、複数の光ファイバーの束である。この光ファイバー5は、上記レーザ光を受け取る複数の入射端部5bと、入射端部5bから入射したレーザ光を出射する複数の出射端部5aとを有している。複数の出射端部5aは、発光部7のレーザ光照射面7aにおける互いに異なる領域に対してレーザ光を出射する。
【0068】
たとえば、複数の光ファイバー5の出射端部5aは、レーザ光照射面7aに対して平行な平面において並んで配置されている。このような配置により、出射端部5aから出射されるレーザ光の光強度分布における最も光強度が大きいところ(各レーザ光がレーザ光照射面7aに形成する照射領域の中央部分(最大光強度部分))が、発光部7のレーザ光照射面7aの互いに異なる部分に対して出射されるため、発光部7のレーザ光照射面7aに対してレーザ光を2次元平面的に分散して照射することができる。
【0069】
それゆえ、発光部7にレーザ光が局所的に照射されることにより、発光部7の一部が著しく劣化することを防止できる。
【0070】
なお、光ファイバー5は複数の光ファイバーの束(すなわち複数の出射端部5aを備えた構成)である必要は必ずしもなく、出射端部5aは1つであってもよい。
【0071】
また、出射端部5aは、レーザ光照射面7aに接触していてもよいし、僅かに間隔をおいて配置されてもよい。特に、出射端部5aがレーザ光照射面7aと間隔をおいて配置される場合、その間隔は、出射端部5aから出射され円錐状に拡がるレーザ光が、レーザ光照射面7aに全て照射されるように定められることが好ましい。
【0072】
(光ファイバー5の材質および構造)
光ファイバー5は、中芯のコアを、当該コアよりも屈折率の低いクラッドで覆った2層構造をしている。コアは、レーザ光の吸収損失がほとんどない石英ガラス(酸化ケイ素)を主成分とするものであり、クラッドは、コアよりも屈折率の低い石英ガラスまたは合成樹脂材料を主成分とするものである。たとえば、光ファイバー5は、コアの径が200μm、クラッドの径が240μm、開口数NAが0.22の石英製のものであるが、光ファイバー5の構造、太さおよび材質は上述のものに限定されず、光ファイバー5の長軸方向に対して垂直な断面は矩形であってもよい。
【0073】
また、光ファイバー5は、可撓性を有しているため、出射端部5aの、発光部7のレーザ光照射面7aに対する配置を容易に変えることができる。それゆえ、発光部7のレーザ光照射面7aの形状に沿って出射端部5aを配置することができ、レーザ光を発光部7のレーザ光照射面7aの全面にわたってマイルドに照射することができる。
【0074】
また、光ファイバー5は、可撓性を有しているため、半導体レーザ3と発光部7との相対位置関係を容易に変更できる。また、光ファイバー5の長さを調整することにより、半導体レーザ3を発光部7から離れた位置に設置することができる。
【0075】
それゆえ、半導体レーザ3を、冷却しやすい位置または交換しやすい位置に設置できる等、ヘッドランプ1の設計自由度を高めることができる。すなわち、入射端部5bと出射端部5aとの位置関係を容易に変更することができ、半導体レーザ3と発光部7との位置関係を容易に変更することができるので、ヘッドランプ1の設計自由度を高めることができる。
【0076】
なお、導光部材として光ファイバー以外の部材、または光ファイバーと他の部材とを組み合わせたものを用いてもよい。たとえば、レーザ光の入射端部と出射端部とを有する円錐台形状(または角錐台形状)の導光部材を1つまたは複数用いてもよい。
【0077】
(フェルール6)
フェルール6は、光ファイバー5の複数の出射端部5aを発光部7のレーザ光照射面に対して所定のパターンで保持する。このフェルール6は、出射端部5aを挿入するための孔が所定のパターンで形成されているものでもよいし、上部と下部とに分離できるものであり、上部および下部の接合面にそれぞれ形成された溝によって出射端部5aを挟み込むものでもよい。
【0078】
このフェルール6は、反射鏡8から延出する棒状または筒状の部材等によって反射鏡8に対して固定されていてもよいし、支持部材13に対して固定されていてもよい。フェルール6の材質は、特に限定されず、たとえばステンレススチールである。また、1つの発光部7に対して、複数のフェルール6を配置してもよい。
【0079】
なお、光ファイバー5の出射端部5aが1つの場合には、フェルール6を省略することも可能である。ただし、出射端部5aのレーザ光照射面7aに対する相対位置を正確に固定するために、フェルール6を設けることが好ましい。
【0080】
(発光部7)
(発光部7の組成)
発光部7は、出射端部5aから出射されたレーザ光を受けて発光するものであり、レーザ光を受けて発光する蛍光体を含んでいる。具体的には、発光部7は、蛍光体保持物質(封止材)としてのシリコーン樹脂の内部に蛍光体が分散されているものである。シリコーン樹脂と蛍光体との割合は、10:1程度である。また、発光部7は、蛍光体を押し固めたものであってもよい。蛍光体保持物質は、シリコーン樹脂等の樹脂材料に限定されず、いわゆる有機無機ハイブリッドガラスや無機ガラスであってもよい。
【0081】
上記蛍光体は、たとえば、酸窒化物系のものであり、青色、緑色および赤色に発光する蛍光体のいずれか1つ以上がシリコーン樹脂に分散されている。半導体レーザ3は、405nm(青紫色)のレーザ光を発振するため、発光部7に当該レーザ光が照射されると複数の色が混合され白色光が発生する。それゆえ、発光部7は、波長変換材料であるといえる。
【0082】
なお、半導体レーザ3は、450nm(青色)のレーザ光(または、440nm以上490nm以下の波長範囲にピーク波長を有する、いわゆる「青色」近傍のレーザ光)を発振するものでもよく、この場合には、上記蛍光体は、黄色の蛍光体、または緑色の蛍光体と赤色の蛍光体との混合物である。黄色の蛍光体とは、560nm以上590nm以下の波長範囲にピーク波長を有する光を発する蛍光体である。緑色の蛍光体とは、510nm以上560nm以下の波長範囲にピーク波長を有する光を発する蛍光体である。赤色の蛍光体とは、600nm以上680nm以下の波長範囲にピーク波長を有する光を発する蛍光体である。
【0083】
(蛍光体の種類)
発光部7は、酸窒化物系蛍光体またはIII−V族化合物半導体ナノ粒子蛍光体を含んでいることが好ましい。これらの材料は、半導体レーザ3から発せられた極めて強いレーザ光(出力および光密度)に対しての耐性が高く、レーザ照明光源に最適である。
【0084】
代表的な酸窒化物系蛍光体として、サイアロン蛍光体と通称されるものがある。サイアロン蛍光体とは、窒化ケイ素のシリコン原子の一部がアルミニウム原子に、窒素原子の一部が酸素原子に置換された物質である。窒化ケイ素(Si)にアルミナ(Al)、シリカ(SiO)および希土類元素等を固溶させて作ることができる。
【0085】
一方、半導体ナノ粒子蛍光体の特徴の一つは、同一の化合物半導体(たとえばインジュウムリン:InP)を用いても、その粒子径をナノメータサイズに変更することにより、量子サイズ効果によって発光色を変化させることができる点である。たとえば、InPでは、粒子サイズが3〜4nm程度のときに赤色に発光する(ここで、粒子サイズは透過型電子顕微鏡(TEM)にて評価した)。
【0086】
また、この半導体ナノ粒子蛍光体は、半導体ベースであるので蛍光寿命が短く、励起光のパワーを素早く蛍光として放射できるのでハイパワーの励起光に対して耐性が強いという特徴もある。これは、この半導体ナノ粒子蛍光体の発光寿命が10ナノ秒程度と、希土類を発光中心とする通常の蛍光体材料に比べて5桁も小さいためである。
【0087】
さらに、上述したように、発光寿命が短いため、レーザ光の吸収と蛍光体の発光とを素早く繰り返すことができる。その結果、強いレーザ光に対して高効率を保つことができ、蛍光体からの発熱を低減させることができる。
【0088】
よって、発光部7が熱により劣化(変色や変形)するのを、より抑制することができる。これにより、光の出力が高い発光素子を光源として用いる場合に、発光装置の寿命が短くなるのをより抑制することができる。
【0089】
(発光部7の形状・サイズ)
発光部7の形状および大きさは、たとえば、直径2mmおよび厚さ0.5mmの円柱形状であり、出射端部5aから出射されたレーザ光を、当該円柱の底面であるレーザ光照射面7aにおいて受光する。
【0090】
また、発光部7は、円柱形状でなく、直方体であってもよい。たとえば、3mm×1mm×1mmの直方体である。この場合、半導体レーザ3からのレーザ光を受けるレーザ光照射面の面積は、3mmである。日本国内で法的に規定されている車両用ヘッドランプの配光パターン(配光分布)は、鉛直方向に狭く、水平方向に広いため、発光部7の形状を、水平方向に対して横長(断面略長方形形状)にすることにより、上記配光パターンを実現しやすくなる。
【0091】
さらに、発光部7のレーザ光照射面7aは、平面である必要は必ずしもなく、曲面であってもよい。ただし、レーザ光の反射を制御しやすくするためには、レーザ光照射面7aは平面であることが好ましい。
【0092】
また、発光部7は、図1および図2に示すように、支持部材13の面のうち、レーザ光が照射される側とは反対側の面に間隙層15によって密着、固定されている。
【0093】
(反射鏡8)
反射鏡8は、発光部7から出射した光を反射することにより、所定の立体角内を進む光線束を形成するものである。すなわち、反射鏡8は、発光部7からの光を反射することにより、ヘッドランプ1の前方へ進む光線束を形成する。この反射鏡8は、たとえば、金属薄膜がその表面に形成された曲面形状(カップ形状)の部材である。
【0094】
(透明板9)
透明板9は、反射鏡8の開口部を覆う透明な樹脂板である。この透明板9を、半導体レーザ3からのレーザ光を遮断するとともに、発光部7においてレーザ光を変換することにより生成された白色光(インコヒーレントな光)を透過する材質で形成することが好ましい。発光部7によってコヒーレントなレーザ光は、そのほとんどがインコヒーレントな白色光に変換される。しかし、何らかの原因でレーザ光の一部が変換されない場合も考えられる。このような場合でも、透明板9によってレーザ光を遮断することにより、レーザ光が外部に漏れることを防止できる。
【0095】
また、透明板9は、支持部材13に発光部7を押しつけるために用いられてもよい。言い換えれば、発光部7を支持部材13と透明板9とで挟持してもよい。上で述べたように、支持部材13には、その両端を貫通する2本のネジ14が固定されている。そして、このネジ14は透明板9に埋め込まれており、そうすることで、透明板9は、発光部7と支持部材13との間に圧力を印加することができる。すなわち、透明板9は、支持部材13に固定されたネジ14が埋め込まれることによって、発光部7を支持部材13に押しつけるための圧力を印加する圧力印加機構として機能する。
【0096】
透明板9によって発光部7を支持部材13に押しつけることにより、間隙層15の密着性が低下した場合でも、発光部7の位置を確実に支持し続けることができる。
【0097】
このとき、透明板9が、発光部7よりも高い熱伝導率を有しているもの(たとえば、ガラス)であれば、透明板9による発光部7の冷却効果を得ることができる。
【0098】
また、透明板9が発光部7に接着・接合、または融着されていてもよい。接着・接合、または融着(これらを総称して密着という)することによって、発光部7で発生した熱をより効果的に透明板9に伝えることができるようになる。
【0099】
(ハウジング10)
ハウジング10は、ヘッドランプ1の本体を形成しており、反射鏡8等を収納している。光ファイバー5は、このハウジング10を貫いており、半導体レーザアレイ2は、ハウジング10の外部に設置される。半導体レーザアレイ2は、レーザ光の発振時に発熱するが、ハウジング10の外部に設置することにより半導体レーザアレイ2を効率良く冷却することが可能となる。したがって、半導体レーザアレイ2から発生する熱による、発光部7の特性劣化や熱的損傷等が防止される。
【0100】
また、半導体レーザ3は、万一故障した時のことを考慮すると、交換しやすい位置に設置することが好ましい。これらの点を考慮しなければ、半導体レーザアレイ2をハウジング10の内部に収納してもよい。
【0101】
(エクステンション11)
エクステンション11は、反射鏡8の前方の側部に設けられており、ヘッドランプ1の内部構造を隠して、ヘッドランプ1の見栄えを良くするとともに、反射鏡8と車体との一体感を高めている。このエクステンション11も反射鏡8と同様に金属薄膜がその表面に形成された部材である。
【0102】
(レンズ12)
レンズ12は、ハウジング10の開口部に設けられており、ヘッドランプ1を密封している。発光部7が発生し、反射鏡8によって反射された光は、レンズ12を通ってヘッドランプ1の前方へ出射される。
【0103】
(支持部材13)
支持部材13は、発光部7における励起光が照射される面であるレーザ光照射面7aの側に配置され、発光部7の熱を受け取る透光性の部材であり、発光部7と熱的に(すなわち、熱エネルギーの授受が可能なように)接続されている。具体的には、発光部7と支持部材13とは、図2に示すように、間隙層15によって密着されている。
【0104】
また、支持部材13は、その両端に、たとえば2本のネジ14を貫通させ、ネジ14を固定している。そして、このネジ14の先端が透明板9に埋め込まれている。もちろん、ネジ14の数は2本に限られるものではない。たとえば、支持部材13の四隅に4本のネジを貫通させ、固定してもよい。そうすることにより、発光部7を支持部材13により強く押しつけることができる。
【0105】
半導体レーザ3から出射されたレーザ光は、支持部材13を透過して発光部7に到達する。そのため、支持部材13は、透光性の優れた材質からなるものであることが好ましい。
【0106】
支持部材13の材質としては、たとえば、サファイア(Al)やマグネシア(MgO)、窒化ガリウム(GaN)、スピネル(MgAl)を用いることができる。
【0107】
なお、支持部材13は、折れ曲がりのない板状のものであってもよいし、折れ曲がった部分や湾曲した部分を有していてもよい。ただし、発光部7が密着される部分は、密着の安定性の観点から平面(板状)である方が好ましい。
【0108】
支持部材13の厚みは、0.3mm以上、3.0mm以下が好ましい。0.3mmよりも薄いと発光部7の放熱を十分にできず、発光部7が劣化してしまう可能性がある。また、3.0mmを超えるような厚みにすると、照射されたレーザ光の支持部材13における吸収が大きくなり、励起光の利用効率が顕著に下がる。
【0109】
(支持部材13の変更例)
支持部材13は、透光性を有する部分(透光部)と透光性を有さない部分(遮光部)とを有していてもよい。この構成の場合、透光部は発光部7のレーザ光照射面7aを覆うように配置され、遮光部はその外側に配置される。
【0110】
遮光部は、金属(たとえば銅やアルミ)の放熱パーツであってもよいし、アルミや銀その他、照明光を反射させる効果のある膜が透光性部材の表面に形成されているものであってもよい。
【0111】
本実施形態では、接着剤の層である間隙層15を用いて発光部7を支持部材13に接着させているが、たとえば前述したようにグリースといった密着材を用いて発光部7を支持部材13に密着させるだけでもよい。なぜなら、上で述べたように、本実施形態では、発光部7を支持部材13に押しつけるための圧力を、発光部7に印加することができるからである。このため、接着力の強い接着剤を用いる必要性が無く、密着性さえ出せればよいことになる。グリースといった、比較的低価格の密着材を用いることができるので、ヘッドランプ1の製造コストの低減化が実現される。また、上記のグリースの他、例えば、粘性の高いオイルや、透明な基材の両面に粘着材がついたもの(例えば、透明両面テープ)も用いることができる。
【0112】
(半導体レーザ3の構造)
次に、半導体レーザ3の基本構造について説明する。図3(a)は、半導体レーザ3の回路図を模式的に示したものであり、図3(b)は、半導体レーザ3の基本構造を示す斜視図である。同図に示すように、半導体レーザ3は、カソード電極23、基板22、クラッド層113、活性層111、クラッド層112、アノード電極21がこの順に積層された構成である。
【0113】
基板22は、半導体基板であり、本願のように蛍光体を励起する為の青色〜紫外の励起光を得る為にはGaN、サファイア、SiCを用いることが好ましい。一般的には、半導体レーザ用の基板の他の例として、Si、GeおよびSiC等のIV属半導体、GaAs、GaP、InP、AlAs、GaN、InN、InSb、GaSbおよびAlNに代表されるIII−V属化合物半導体、ZnTe、ZeSe、ZnSおよびZnO等のII−VI属化合物半導体、ZnO、Al、SiO、TiO、CrOおよびCeO等の酸化物絶縁体、並びに、SiN等の窒化物絶縁体のいずれかの材料が用いられる。
【0114】
アノード電極21は、クラッド層112を介して活性層111に電流を注入するためのものである。
【0115】
カソード電極23は、基板22の下部から、クラッド層113を介して活性層111に電流を注入するためのものである。なお、電流の注入は、アノード電極21・カソード電極23に順方向バイアスをかけて行う。
【0116】
活性層111は、クラッド層113及びクラッド層112で挟まれた構造になっている。
【0117】
また、活性層111およびクラッド層の材料としては、青色〜紫外の励起光を得る為にはAlInGaNから成る混晶半導体が用いられる。一般に半導体レーザの活性層・クラッド層としては、Al、Ga、In、As、P、N、Sbを主たる組成とする混晶半導体が用いられ、そのような構成としても良い。また、Zn、Mg、S、Se、TeおよびZnO等のII−VI属化合物半導体によって構成されていてもよい。
【0118】
また、活性層111は、注入された電流により発光が生じる領域であり、クラッド層112及びクラッド層113との屈折率差により、発光した光が活性層111内に閉じ込められる。
【0119】
さらに、活性層111には、誘導放出によって増幅される光を閉じ込めるために互いに対向して設けられる表側へき開面114・裏側へき開面115が形成されており、この表側へき開面114・裏側へき開面115が鏡の役割を果す。
【0120】
ただし、完全に光を反射する鏡とは異なり、誘導放出によって増幅される光の一部は、活性層111の表側へき開面114・裏側へき開面115(本実施の形態では、便宜上表側へき開面114とする)から出射され、励起光L0となる。なお、活性層111は、多層量子井戸構造を形成していてもよい。
【0121】
なお、表側へき開面114と対向する裏側へき開面115には、レーザ発振のための反射膜(図示せず)が形成されており、表側へき開面114と裏側へき開面115との反射率に差を設けることで、低反射率端面である、たとえば、表側へき開面114より励起光L0の大部分を発光点103から照射されるようにすることができる。
【0122】
クラッド層113・クラッド層112は、n型およびp型それぞれのGaAs、GaP、InP、AlAs、GaN、InN、InSb、GaSb、及びAlNに代表されるIII−V属化合物半導体、並びに、ZnTe、ZeSe、ZnSおよびZnO等のII−VI属化合物半導体のいずれの半導体によって構成されていてもよく、順方向バイアスをアノード電極21及びカソード電極23に印加することで活性層111に電流を注入できるようになっている。
【0123】
クラッド層113・クラッド層112および活性層111等の各半導体層との膜形成については、MOCVD(有機金属化学気相成長)法やMBE(分子線エピタキシー)法、CVD(化学気相成長)法、レーザアブレーション法、スパッタ法等の一般的な成膜手法を用いて構成できる。各金属層の膜形成については、真空蒸着法やメッキ法、レーザアブレーション法、スパッタ法等の一般的な成膜手法を用いて構成できる。
【0124】
(発光部7の発光原理)
次に、半導体レーザ3から発振されたレーザ光による蛍光体の発光原理について説明する。
【0125】
まず、半導体レーザ3から発振されたレーザ光が発光部7に含まれる蛍光体に照射されることにより、蛍光体内に存在する電子が低エネルギー状態から高エネルギー状態(励起状態)に励起される。
【0126】
その後、この励起状態は不安定であるため、蛍光体内の電子のエネルギー状態は、一定時間後にもとの低エネルギー状態(基底準位のエネルギー状態または励起準位と基底準位との間の準安定準位のエネルギー状態)に遷移する。
【0127】
このように、高エネルギー状態に励起された電子が、低エネルギー状態に遷移することによって蛍光体が発光する。
【0128】
白色光は、等色の原理を満たす3つの色の混色、または補色の関係を満たす2つの色の混色で構成でき、この原理・関係に基づき、半導体レーザから発振されたレーザ光の色と蛍光体が発する光の色とを、上述のように組み合わせることにより白色光を発生させることができる。
【0129】
(ヘッドランプ1の効果)
発光部7はレーザ光を受けて発光するが、その発光の際、レーザ光の照射によって発熱する。レーザ光の照射が繰り返されると、発光部7からの発熱量は大きくなり、その結果、支持部材13と発光部7とのそれぞれの熱膨張率の違いにより、互いの熱膨張に差が生じてしまう。
【0130】
このため、上で述べたような圧力印加機構である透明板9およびネジ14を用いずに、接着剤の層からなる間隙層15やグリース等の密着材を用いて発光部7を支持部材13に固定していた場合、上で述べた熱膨張の差による機械的ストレスが支持部材13と発光部7との間の密着箇所に加わり、その密着箇所の密着性を低下させてしまう。その結果、支持部材13は発光部7を支持し続けることが困難となり、発光部7の落下を招くおそれもある。
【0131】
ヘッドランプ1では、透明板9およびネジ14を用いて発光部7と支持部材13との間に圧力を印加する。このような圧力が印加されることにより、発光部7は支持部材13に押しつけられることになる。
【0132】
そうすることにより、支持部材13と発光部7との間の熱膨張の差によって機械的ストレスが生じ、上で述べたような支持部材13と発光部7との間における密着箇所の密着性が低下したとしても、発光部7は支持部材13に押しつけられているので、発光部7は支持部材13によって支持し続けられることになる。
【0133】
(変形例1)
図4に、上記の一実施形態に係るヘッドランプ1の変形例1の概略構成を示す。図4に示すように、この変形例1では、透明板9に貫通穴を設け、この透明板9にピン31(圧力印加機構)を掛着している。円盤形の頭を有するピン31の首を透明板9の貫通穴に嵌合し、ピン31を透明板9に嵌着している。
【0134】
そして、このピン31が支持部材13に形成した貫通穴を遊貫している。この貫通穴から飛び出たピン31の頭に、バネ32(圧力印加機構)を挿入し、さらに、この貫通穴から飛び出たピン31の頭にナット33(圧力印加機構)を螺合している。
【0135】
このように、本変形例1では、透明板9、ピン31、バネ32およびナット33を用いて、発光部7を支持部材13に押しつけて固定することで、発光部7と支持部材13との間に圧力を印加する構造となっている。
【0136】
なお、ピン31の数は、上記の実施の形態1のネジ14と同様、2本であってよいし、4本であってもよいし、もちろん、その他の数であってもよい。
【0137】
本変形例1によれば、発光部7および支持部材13の各熱膨張の増減に応じて、より適切な大きさの圧力を印加することが可能となる。
【0138】
本変形例1および後述する変形例2、3では、間隙層15には拡散剤16が含まれている。レーザ光はコヒーレントな光であり、発光部7において蛍光に変換または拡散されずにそのまま外部に放射されると人体に害を及ぼす可能性がある。間隙層15に拡散剤16を含めることにより、光ファイバー5から出射されたレーザ光が拡散される。
【0139】
それゆえ、発光部7においてレーザ光が全て蛍光に変換または拡散されない事態が生じても、予めレーザ光を拡散剤16によって拡散しておくことで、コヒーレントな光が外部にもれる可能性を低減できる。
【0140】
さらに、反射膜17は、間隙層15の発光部7および支持部材13と接していない表面の少なくとも一部を覆う光反射性の膜であり、たとえば、金属薄膜(たとえば、アルミニウム薄膜)である。
【0141】
間隙層15が拡散剤16を含んでいるため、レーザ光が拡散剤16によって拡散されることで、発光部7に向かわずに、間隙層15の側面からもれるレーザ光(迷光と称する)が発生する。反射膜17を間隙層15の側面に設けることによって、上記迷光が反射膜17に反射し、間隙層15の内部にとどまる。それゆえ、レーザ光の利用効率を高めることができる。
【0142】
なお、図4に示すように、反射膜17を間隙層15の側面のみならず発光部7の側面にも設けてもよい。この構成により、反射膜17によっても発光部7の冷却効果を得ることができる。反射膜17を発光部7よりも熱伝導性の高い物質で形成することにより、この効果を高めることができる。
【0143】
(変形例2)
図5に、上記の一実施形態に係るヘッドランプ1の変形例2の概略構成を示す。図5に示すように、この変形例2では、支持部材13に貫通穴を設け、この支持部材13にピン31a(圧力印加機構)を掛着している。円盤形の頭を有するピン31aの首を支持部材13の貫通穴に嵌合し、ピン31aを支持部材13に嵌着している。
【0144】
そして、このピン31aが透明板9に形成した貫通穴を遊貫している。この貫通穴から飛び出たピン31aの頭に、バネ32a(圧力印加機構)を挿入し、さらに、この貫通穴から飛び出たピン31aの頭にナット33a(圧力印加機構)を螺合している。
【0145】
このように、本変形例2では、透明板9、ピン31、バネ32およびナット33を用いて、発光部7を支持部材13に押しつけて固定することで、発光部7と支持部材13との間に圧力を印加する構造となっている。
【0146】
本変形例2によれば、発光部7および支持部材13の各熱膨張の増減に応じて、より適切な大きさの圧力を印加することが可能となる。
【0147】
(変形例3)
図6に、上記の一実施形態に係るヘッドランプ1の変形例3の概略構成を示す。図6に示すように、この変形例3では、支持部材13に形成した貫通穴35と、透明板9に形成した貫通穴36とを共に遊貫したバネ34(圧力印加機構)によって、発光部7を支持部材13に押しつけて固定することで、発光部7と支持部材13との間に圧力を印加する構造となっている。
【0148】
本変形例3によれば、発光部7および支持部材13の各熱膨張の増減に応じて、より適切な大きさの圧力を印加することが可能となる。
【0149】
(実施の形態2)
本発明の他の実施形態について図14に基づいて説明すれば、以下のとおりである。なお、実施の形態1と同様の部材に関しては、同じ符号を付し、その説明を省略する。
【0150】
上記の実施形態1では、支持部材13の両端に、2本のネジ14を貫通させ、それらネジ14の先端が透明板9に埋め込まれていた。
【0151】
これに対し、本実施形態では、図14に示すように、実施形態1のネジ14に加えて、後述する金属リングや落下防止板、発光部固定構造を用いる実施形態である。このような金属リング等を用いることによって、発光部7と支持部材13との密着性が低下した場合でも、発光部7が支持部材13から落下することを防止できる。なお、図14では、図面の見易さのため、上記のネジ14は省略されている。
【0152】
例えば、図14(a)では、実施形態1のネジ14に加えて、金属リング51(落下防止機構)を設けた構成となっている。この場合、発光部7と支持部材13との密着性が低下した場合でも、発光部7は金属リング51の存在により、その落下が確実に防止される。この金属リング51は、発光部7の外周のすべてと接触する必要は無く、例えば発光部7が直方体や立方体である場合には、その3点で接していたり、4点で接していたりしてもよい。もちろん、金属リング51は、支持部材13と透明板9との間で予め固定されている。
【0153】
図14(b)では、実施形態1のネジ14に加えて、落下防止板52(落下防止機構)を設けた構成となっている。この場合、発光部7と支持部材13との密着性が低下した場合でも、発光部7は落下防止板52の存在により、その落下が確実に防止される。発光部7は、落下防止板52の上面に配置されていればよい。もちろん、落下防止板52は、支持部材13と透明板9との間で予め固定されている。
【0154】
図14(c)では、実施形態1のネジ14と透明板9とに加えて、その下方の端部に凸部を設けた支持部材53を設けた構成、すなわち、発光部固定構造(落下防止機構)を設けた構成である。支持部材53は、例えば、上で述べた落下防止板52と同様の板状の形状を、上記の凸部として、その下方の端部に設けている。この場合、発光部7は、支持部材53と透明板9とからなる箱の底部に配置されることになる。発光部7と支持部材53との密着性が低下した場合でも、その落下が確実に防止される。そもそも、この構成であれば、発光部7を支持部材53に接着する必要性は無く、発光部7は確実に支持部材53に固定されることになる。
【0155】
もちろん、透明板9の下方の端部に上で述べたような凸部を設けた構成であってもよい。
【0156】
なお、本実施形態では、実施形態1のネジ14に加えて、金属リング51や落下防止板52、発光部固定構造を用いたが、実施形態1のネジ14の代わりに、発光部7と支持部材13との間に間隙層15を入れたのと同様、発光部と透明板9との間にも間隙層を入れてもよい。この場合、発光部7と支持部材13、53との間の間隙層15の密着性が低下し、且つ、発光部7と透明板9との間の間隙層の密着性が低下し、支持部材53および透明板9のいずれもが、発光部7を支持できなくなったときでも、上で述べた金属リング51や落下防止板52、発光部固定構造によって、発光部7の落下を防止することができる。
【0157】
(実施の形態3)
本発明の他の実施形態について図7に基づいて説明すれば、以下のとおりである。なお、実施の形態1と同様の部材に関しては、同じ符号を付し、その説明を省略する。
【0158】
図7は、本実施形態のヘッドランプ30の構成を示す概略図である。図7に示すように、ヘッドランプ30は、透明板(圧力印加機構、対向部材)18、金属リング(収納部材)19、反射鏡(反射部材)81、基板82およびネジ83(圧力印加機構)を備えている。このヘッドランプ30では、発光部7は、支持部材13と透明板18とによって挟持されている。
【0159】
反射鏡81は、反射鏡8と同様の機能を有するものであるが、その焦点位置近傍で、光軸に対して垂直な平面によって切断された形状を有している。反射鏡81の材質については特に問われないが、反射率を考えると銅やSUS(ステンレス鋼)を用いて反射鏡を作製した後、銀メッキおよびクロメートコート等を施すことが好ましい。その他、反射鏡81をアルミニウムを用いて作製し、酸化防止膜を表面に付与してもよいし、樹脂性の反射鏡本体の表面に金属薄膜を形成してもよい。
【0160】
金属リング19は、反射鏡81が完全な反射鏡であった場合の、焦点位置近傍の形状を有するすり鉢形状(凹部)のリングであり、すり鉢の底部が開口した形状を有している。金属リング19のすり鉢形状は、底部から離れるに従って開口面積が広がる傾斜側壁面に囲まれている。この底部の開口部に発光部7が配置されている。
【0161】
金属リング19のすり鉢形状の部分の表面は、反射鏡として機能し、金属リング19と反射鏡81とを組み合わせることで完全な形状の反射鏡が形成される。それゆえ、金属リング19は、反射鏡の一部として機能する部分反射鏡であり、反射鏡81を第1部分反射鏡と称する場合、焦点位置近傍の部分を有する第2部分反射鏡と称することができる。発光部7から出射された蛍光の一部は、金属リング19の表面で反射し、照明光としてヘッドランプ30の前方へ出射される。
【0162】
金属リング19の材質は特に問われないが、放熱性を考えると銀、銅、アルミニウム等が好ましい。金属リング19が銀やアルミニウムの場合は、すり鉢部を鏡面に仕上げた後、黒ずみや酸化防止のための保護層(クロメートコートや樹脂層等)を設けることが好ましい。また、金属リング19が銅の場合は、銀メッキ、あるいはアルミニウム蒸着後、前述の保護層を設けることが好ましい。
【0163】
発光部7は、上記の実施形態1とは異なり、グリースといった密着材(図示省略)によって支持部材13に密着されており、金属リング19も支持部材13に当接している。金属リング19が支持部材13に当接することにより、支持部材13を冷却する効果が得られる。すなわち、金属リング19は、支持部材13の冷却部としても機能する。
【0164】
金属リング19と反射鏡81との間には透明板18が挟持されている。この透明板18は、発光部7のレーザ光照射面7aとは反対側の面と接しており、発光部7が支持部材13から剥がれないように抑えつける役割を有している。金属リング19のすり鉢形状の部分の深さは、発光部7の高さとほぼ一致しているため、透明板18と支持部材13との間の距離が一定に保たれた状態で、透明板18が発光部7に接している。そのため、支持部材13と透明板18とによって挟持されることにより発光部7が押しつぶされることはない。
【0165】
透明板18は、少なくとも透光性を有するものであればどのような材質のものでもよい。たとえば、透明板18はサファイア、窒化ガリウム、マグネシアまたはダイヤモンドを用いることができる。
【0166】
支持部材13および透明板18の厚さは、厚さは0.3mm以上3.0mm以下程度が好ましい。上記厚さが0.3mm以下になると発光部7と金属リング19とを挟みこんで固定する強度が得られず、3.0mm以上になるとレーザ光の吸収を無視できなくなるとともに、部材コストが上昇してしまう。
【0167】
基板82は、半導体レーザ3から出射されたレーザ光を通す開口部82aを有する板状の部材であり、この基板82に対して反射鏡81がネジ83によって固定されている。反射鏡81と基板82との間には支持部材13、金属リング19および透明板18が配置されており、開口部82aの中心と金属リング19の底部の開口部の中心とはほぼ一致している。そのため、半導体レーザ3から出射されたレーザ光は、基板82の開口部82aを通って、支持部材13を透過し、金属リング19の開口部を通って発光部7に到達する。
【0168】
なお、金属リング19を、支持部材13に対して確実に固定することが好ましい。基板82と反射鏡81とをネジ83によって固定することによって生じる圧力によって金属リング19を支持部材13に対してある程度固定できる。しかし、金属リング19を接着剤で支持部材13に接着する、支持部材13を挟んで金属リング19を基板82にネジ止めする等の方法により、確実に金属リング19を固定することで、金属リング19が動くことによって発光部7が剥離するという危険性を回避できる。
【0169】
また、金属リング19は、上述の部分反射鏡としての機能を有し、かつ、反射鏡81と基板82とをネジ83で固定するときの圧力に耐えられるものであればよく、必ずしも金属である必要はない。たとえば、金属リング19の代用となる部材は、上記圧力に耐えられる樹脂性リングの表面に金属薄膜が形成されているものであってもよい。
【0170】
(実施の形態4)
本発明の他の実施形態について図8〜図13に基づいて説明すれば、以下のとおりである。なお、実施の形態1と同様の部材に関しては、同じ符号を付し、その説明を省略する。
【0171】
ここでは、本発明の照明装置の一例としてのレーザダウンライト200について説明する。レーザダウンライト200は、家屋、乗物等の構造物の天井に設置される照明装置であり、半導体レーザ3から出射したレーザ光を発光部7に照射することによって発生する蛍光を照明光として用いるものである。
【0172】
なお、レーザダウンライト200と同様の構成を有する照明装置を、構造物の側壁または床に設置してもよく、上記照明装置の設置場所は特に限定されない。
【0173】
図8は、発光ユニット210および従来のLEDダウンライト300の外観を示す概略図である。図9は、レーザダウンライト200が設置された天井の断面図である。図10は、レーザダウンライト200の断面図である。図8〜図10に示すように、レーザダウンライト200は、天板400に埋設され、照明光を出射する発光ユニット210と、光ファイバー5を介して発光ユニット210へレーザ光を供給するLD光源ユニット220とを含んでいる。LD光源ユニット220は、天井には設置されておらず、ユーザが容易に触れることができる位置(たとえば、家屋の側壁)に設置されている。このようにLD光源ユニット220の位置を自由に決定できるのは、LD光源ユニット220と発光ユニット210とが光ファイバー5によって接続されているからである。この光ファイバー5は、天板400と断熱材401との間の隙間に配置されている。
【0174】
(発光ユニット210の構成)
発光ユニット210は、図10に示すように、筐体211と、光ファイバー5と、発光部7と、支持部材13と、対向部材41と、ピン、バネおよびナット42(以下、ピン、バネおよびナットを総称してピンと呼ぶ)と、透光板213とを備えている。発光部7は、間隙層15によって支持部材13に密着されている。
【0175】
筐体211には、凹部212が形成されており、この凹部212の底面に発光部7が配置されている。凹部212の表面には、金属薄膜が形成されており、凹部212は反射鏡として機能する。
【0176】
また、筐体211には、光ファイバー5を通すための通路214が形成されており、この通路214を通って光ファイバー5が支持部材13まで延びている。光ファイバー5の出射端部5aから出射されたレーザ光は、支持部材13および間隙層15を透過して発光部7に到達する。
【0177】
透光板213は、凹部212の開口部をふさぐように配置された透明または半透明の板である。この透光板213は、透明板9と同様の機能を有するものであり、発光部7の蛍光は、透光板213を透して照明光として出射される。透光板213は、筐体211に対して取外し可能であってもよく、省略されてもよい。
【0178】
対向部材41およびピン42は、上記の実施形態1の変形例1および2と同様、発光部7を支持部材13に押しつけて固定することで、発光部7と支持部材13との間に圧力を印加している。
【0179】
図8では、発光ユニット210は、円形の外縁を有しているが、発光ユニット210の形状(より厳密には、筐体211の形状)は特に限定されない。
【0180】
なお、ダウンライトでは、ヘッドランプの場合とは異なり、理想的な点光源は要求されず、発光点が1つというレベルで十分である。それゆえ、発光部7の形状、大きさおよび配置に関する制約は、ヘッドランプの場合よりも少ない。
【0181】
(LD光源ユニット220の構成)
LD光源ユニット220は、半導体レーザ3、非球面レンズ4および光ファイバー5を備えている。
【0182】
光ファイバー5の一方の端部である入射端部5bは、LD光源ユニット220に接続されており、半導体レーザ3から発振されたレーザ光は、非球面レンズ4を介して光ファイバー5の入射端部5bに入射される。
【0183】
図10に示すLD光源ユニット220の内部には、半導体レーザ3および非球面レンズ4が一対のみ示されているが、発光ユニット210が複数存在する場合には、発光ユニット210からそれぞれ延びる光ファイバー5の束を1つのLD光源ユニット220に導いてもよい。この場合、1つのLD光源ユニット220に複数の半導体レーザ3と非球面レンズ4との対が収納されることになり、LD光源ユニット220は集中電源ボックスとして機能する。
【0184】
(レーザダウンライト200の設置方法の変更例)
図11は、レーザダウンライト200の設置方法の変更例を示す断面図である。図11に示すように、レーザダウンライト200の設置方法の変形例として、天板400には光ファイバー5を通す小さな穴402だけを開け、薄型・軽量の特長を活かしてレーザダウンライト本体(発光ユニット210)を天板400に貼り付けるということもできる。この場合、レーザダウンライト200の設置に係る制約が小さくなり、また工事費用が大幅に削減できるというメリットがある。
【0185】
この構成では、支持部材13は、筐体211の底部に、レーザ光入射側の面を全面的に当接させて配置されている。それゆえ、筐体211を熱伝導率の高い物質からなるものにすることによって支持部材13の冷却部として機能させることができる。
【0186】
また、この構成では、透明板213と、ピン、バネおよびナット43とが、上記の実施形態1の変形例1および2と同様、発光部7を支持部材13に押しつけて固定することで、発光部7と支持部材13との間に圧力を印加している。
【0187】
(レーザダウンライト200と従来のLEDダウンライト300との比較)
従来のLEDダウンライト300は、図8に示すように、複数の透光板301を備えており、各透光板301からそれぞれ照明光が出射される。すなわち、LEDダウンライト300において発光点は複数存在している。LEDダウンライト300において発光点が複数存在しているのは、個々の発光点から出射される光の光束が比較的小さいため、複数の発光点を設けなければ照明光として十分な光束の光が得られないためである。
【0188】
これに対して、レーザダウンライト200は、高光束の照明装置であるため、発光点は1つでもよい。それゆえ、照明光による陰影がきれいに出るという効果が得られる。また、発光部7の蛍光体を高演色蛍光体(たとえば、数種類の酸窒化物蛍光体の組み合わせ)にすることにより、照明光の演色性を高めることができる。
【0189】
これにより、白熱電球ダウンライトに迫る高演色を実現することができる。たとえば、平均演色評価数Raが90以上のみならず、特殊演色評価数R9も95以上というLEDダウンライトや蛍光灯ダウンライトでは実現が難しい高演色光も高演色蛍光体と半導体レーザ3の組み合わせにより実現可能である。
【0190】
図12は、LEDダウンライト300が設置された天井の断面図である。図12に示すように、LEDダウンライト300では、LEDチップ、電源および冷却ユニットを収納した筐体302が天板400に埋設されている。筐体302は比較的大きなものであり、筐体302が配置されている部分の断熱材401には、筐体302の形状に沿った凹部が形成される。筐体302から電源ライン303が延びており、この電源ライン303はコンセント(不図示)につながっている。
【0191】
このような構成では、次のような問題が生じる。まず、天板400と断熱材401との間に発熱源である光源(LEDチップ)および電源が存在しているため、LEDダウンライト300を使用することにより天井の温度が上がり、部屋の冷房効率が低下するという問題が生じる。
【0192】
また、LEDダウンライト300では、光源ごとに電源および冷却ユニットが必要であり、トータルのコストが増大するという問題が生じる。
【0193】
また、筐体302は比較的大きなものであるため、天板400と断熱材401との間の隙間にLEDダウンライト300を配置することが困難な場合が多いという問題が生じる。
【0194】
これに対して、レーザダウンライト200では、発光ユニット210には、大きな発熱源は含まれていないため、部屋の冷房効率を低下させることはない。その結果、部屋の冷房コストの増大を避けることができる。
【0195】
また、発光ユニット210ごとに電源および冷却ユニットを設ける必要がないため、レーザダウンライト200を小型および薄型にすることができる。その結果、レーザダウンライト200を設置するためのスペースの制約が小さくなり、既存の住宅への設置が容易になる。
【0196】
また、レーザダウンライト200は、小型および薄型であるため、上述したように、発光ユニット210を天板400の表面に設置することができ、LEDダウンライト300よりも設置に係る制約を小さくすることができるとともに工事費用を大幅に削減できる。
【0197】
図13は、レーザダウンライト200およびLEDダウンライト300のスペックを比較するための図である。同図に示すように、レーザダウンライト200は、その一例では、LEDダウンライト300に比べて体積は94%減少し、質量は86%減少する。
【0198】
また、LD光源ユニット220をユーザの手が容易に届く所に設置できるため、半導体レーザ3が故障した場合でも、手軽に半導体レーザ3を交換できる。また、複数の発光ユニット210から延びる光ファイバー5を1つのLD光源ユニット220に導くことにより、複数の半導体レーザ3を一括管理できる。そのため、複数の半導体レーザ3を交換する場合でも、その交換が容易にできる。
【0199】
なお、LEDダウンライト300において、高演色蛍光体を用いたタイプの場合、消費電力10Wで約500lmの光束が出射できるが、同じ明るさの光をレーザダウンライト200で実現するためには、3.3Wの光出力が必要である。この光出力は、LD効率が35%であれば、消費電力10Wに相当し、LEDダウンライト300の消費電力も10Wであるため、消費電力では、両者の間に顕著な差は見られない。それゆえ、レーザダウンライト200では、LEDダウンライト300と同じ消費電力で、上述の種々のメリットが得られることになる。
【0200】
以上のように、レーザダウンライト200は、レーザ光を出射する半導体レーザ3を少なくとも1つ備えるLD光源ユニット220と、発光部7および反射鏡としての凹部212を備える少なくとも1つの発光ユニット210と、発光ユニット210のそれぞれへ上記レーザ光を導く光ファイバー5とを含んでいる。
【0201】
本発明は上述した各実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。
【産業上の利用可能性】
【0202】
本発明は、高輝度で長寿命な発光装置や照明装置、特に車両用等のヘッドランプに適用することができる。
【符号の説明】
【0203】
1 ヘッドランプ(発光装置、車両用前照灯)
2 半導体レーザアレイ(励起光源)
3 半導体レーザ(励起光源)
7 発光部
7a レーザ光照射面
9、18 透明板(落下防止機構、圧力印加機構、対向部材、透過部材)
13 支持部材
14、83 ネジ(落下防止機構、圧力印加機構)
15 間隙層
19 金属リング(収納部材)
30 ヘッドランプ
51 金属リング(落下防止機構)
52 落下防止板(落下防止機構)
53 支持部材(落下防止機構)
81 反射鏡(反射部材)
82 基板
200 レーザダウンライト(発光装置、照明装置)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
励起光源から出射された励起光により発光し、照明光を放射する発光部と、
前記励起光が照射される位置に前記発光部を支持する支持部材と、
前記支持部材が前記発光部を支持できなくなったとき、前記発光部の外面の少なくとも一部の面と接触し、前記発光部が前記支持部材から落下することを防止する落下防止機構と
を備えることを特徴とする発光装置。
【請求項2】
前記落下防止機構は、前記発光部の外面の少なくとも一部の面と接触すると共に、当該少なくとも一部の面と前記支持部材との間に圧力を与え、前記発光部を前記支持部材側に押しつける圧力印加機構であることを特徴とする請求項1に記載の発光装置。
【請求項3】
前記圧力印加機構は、前記発光部を挟みこむように前記支持部材と対向し、前記発光部の外面のうち前記支持部材側とは反対側の少なくとも一部の面と接触する対向部材を有し、前記支持部材と前記対向部材との間に圧力を印加することによって、前記支持部材と前記対向部材との間に前記発光部を固定することを特徴とする請求項2に記載の発光装置。
【請求項4】
底部が開口し、前記底部を通して前記励起光源から前記発光部に向かう前記励起光を通過させる凹部を有し、前記凹部に前記発光部を収納する収納部材をさらに備え、
前記収納部材は、前記支持部材と前記対向部材との間に挟みこまれており、前記支持部材と前記対向部材との間隔を維持していることを特徴とする請求項3に記載の発光装置。
【請求項5】
前記凹部は、前記底部から離れるに従って開口面積が広がるすり鉢状の傾斜側壁面に囲まれており、前記傾斜側壁面は前記照明光を反射することを特徴とする請求項4に記載の発光装置。
【請求項6】
前記対向部材を挟むようにして前記発光部と対向し、前記対向部材を透過した前記照明光を反射する反射部材をさらに備え、
前記反射部材は、前記対向部材を介して前記傾斜側壁面と連続し、且つ、前記対向部材から離れるに従って開口面積が広がる、すり鉢状の反射面を有することを特徴とする請求項5に記載の発光装置。
【請求項7】
前記支持部材を挟むようにして前記発光部と対向し、前記励起光源から前記発光部に向かう前記励起光を通過させる透過部材をさらに備え、
前記圧力印加機構は、前記反射部材および前記透過部材のいずれか一方を貫通し、他方に埋め込まれたネジをさらに有することを特徴とする請求項6に記載の発光装置。
【請求項8】
前記支持部材を挟むようにして前記発光部と対向し、前記励起光源から前記発光部に向かう前記励起光を通過させる透過部材をさらに備え、
前記支持部材および前記透過部材はそれぞれ、前記透過部材と間隙層を介して、密着し、
前記落下防止機構は、前記発光部と前記支持部材との間の間隙層の密着性が低下し、且つ、前記発光部と前記透過部材との間の間隙層の密着性が低下し、前記支持部材および前記透過部材のいずれもが、前記発光部を支持できなくなったとき、前記発光部が前記支持部材から落下することを防止することを特徴とする請求項1に記載の発光装置。
【請求項9】
請求項1〜8のいずれか1項に記載の発光装置を備えていることを特徴とする照明装置。
【請求項10】
請求項1〜8のいずれか1項に記載の発光装置を備えていることを特徴とする車両用前照灯。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2012−142187(P2012−142187A)
【公開日】平成24年7月26日(2012.7.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−294098(P2010−294098)
【出願日】平成22年12月28日(2010.12.28)
【出願人】(000005049)シャープ株式会社 (33,933)
【Fターム(参考)】