説明

発光装置、画像形成装置、表示装置、及び発光素子の駆動方法

【課題】温度検出素子を設けることなく簡単な構成で、発光素子の温度による光量変化を補正することができる発光装置を提供する。
【解決手段】1つ、あるいは複数の発光素子を有し、前記発光素子を入力データに基づいて発光させる発光装置において、本来の使用に供さない光量検出専用の光量検出用発光素子と、前記発光素子及び前記光量検出用発光素子を所定の駆動方式で駆動する駆動手段と、前記光量検出用発光素子の光量を検出する光量検出手段と、前記光量検出用発光素子の光量に基づいて前記発光素子の光量変化を抑制するように前記駆動手段による発光素子の駆動条件を補正する補正手段とを具備する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発光装置、画像形成装置、表示装置、及び発光素子の駆動方法に関する。
【背景技術】
【0002】
次世代の発光素子として、有機EL素子が期待されている。有機EL素子は、発光層である有機EL材を上下の電極間で挟持した構成になっており、電極に印加する駆動電圧によって、励起状態となった有機EL材の発光中心物質が基底状態に戻るときに発光することを利用したもので、発光装置、画像形成装置、及び画像表示装置等で用いられる。
【0003】
画像形成装置としてのプリンタは、近年高速高画質化が要求されているとともに、プリンタ自体の小型化も要求されている。かかる要求に応えるものとして、レーザ光源に代えて有機EL素子を複数配列してなる発光素子アレイを有するラインヘッドを備えた画像形成装置が知られている。この画像形成装置では、レーザプリンタに設けられるポリゴンミラー等の回転機構部が不要になるため、更なる高速化及び小型化が可能になっている(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
また、上記有機EL素子を基板面内に2次元的に複数配列した構成とし、画像表示装置として利用した有機ELディスプレイは、液晶ディスプレイと比較しても、高画質、薄型、軽量という面で有利であり、次世代フラットパネルディスプレイとして期待されている。
上記画像表示装置において、有機EL素子の発光プロセスで発生する熱によって、有機EL素子の電圧電流特性、及び光量特性に悪影響を及ぼし、表示画像の品質低下を招くという問題がある。このため、例えば以下の特許文献2では、有機EL素子に温度検出素子を設け、検出温度に対応した補正制御データに基づいて、信号処理回路及び駆動回路等を動作させる技術が開示されている。上記のような温度変化による有機EL素子の特性変化は、画像表示装置に限ったことではなく、有機EL素子を用いた装置全てに言えることである。
【特許文献1】特開平11−198433号公報
【特許文献2】特開2002−175046号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
このように、有機EL素子を用いた発光装置、画像形成装置、及び画像表示装置等では、有機EL素子の光量特性に温度依存性があるため、発光することで生じる熱によって、発光素子周辺の温度が上昇し、所望の光量が得られなくなってしまう問題がある。
【0006】
これを防止するために、上記特許文献2等、周辺温度の変化に対して光量を安定に保つ技術は何件か開示されているが、いずれも温度検出のために、サーミスタ等の温度検出素子を別途追加する必要があり、発光装置のコストアップや装置構成の複雑化の問題がある。
【0007】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、以下の点を目的とする。
(1)温度検出素子を必要としない簡単な構成で発光素子の温度変化による光量変化を抑制し、所望の光量を得る。
(2) 温度検出素子を必要としない低コストな発光装置、画像形成装置、表示装置、及
び発光素子の駆動方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本発明の発光装置は、1つ、あるいは複数の発光素子を有し、前記発光素子を入力データに基づいて発光させる発光装置において、本来の使用に供さない光量検出専用の光量検出用発光素子と、前記発光素子及び前記光量検出用発光素子を所定の駆動方式で駆動する駆動手段と、前記光量検出用発光素子の光量を検出する光量検出手段と、前記光量検出用発光素子の光量に基づいて前記発光素子の光量変化を抑制するように前記駆動手段による発光素子の駆動条件を補正する補正手段とを具備することを特徴とする。
この発明によれば、光量検出用発光素子の光量に基づいて発光素子の光量変化を抑制するように前記駆動手段による発光素子の駆動条件を補正するので、従来のように発光素子の温度を検出するための温度検出素子を各発光素子毎に設けることなく、簡単な構成で発光素子の光量変化を抑制することができ、所望の光量を得ることができる。また、温度検出素子を必要としないので、低コストな発光装置を提供することができる。
【0009】
また、本発明の発光装置において、前記駆動手段は、定電圧駆動方式で発光素子及び光量検出用発光素子を駆動することが好ましい。
この発明によれば、定電圧駆動方式で駆動される発光素子について、簡単な構成で発光素子の光量変化を抑制することができ、所望の光量を得ることができる。
【0010】
また、本発明の発光装置において、前記補正手段は、前記発光素子の温度特性データから導かれる光量と駆動電圧との関係と、前記光量検出手段にて検出される前記光量検出用発光素子の光量とに基づいて、前記発光素子の光量変化を抑制するように前記駆動電圧を補正することが好ましい。
この発明によれば、定電圧駆動方式で駆動される発光素子を採用した場合に、前記発光素子の温度特性データから導かれる光量と駆動電圧との関係と、前記光量検出手段にて検出される前記光量検出用発光素子の光量とに基づいて、温度変化によって生じる発光素子の光量変化を抑制するように前記駆動電圧を補正するので、従来のように発光素子の温度を検出するための温度検出素子を各発光素子毎に設けることなく、簡単な構成で発光素子の光量変化を抑制することができ、所望の光量を得ることができる。
【0011】
また、本発明の発光装置において、前記駆動手段は、定電流駆動方式で発光素子及び光量検出用発光素子を駆動することが好ましい。
この発明によれば、定電流駆動方式で駆動される発光素子について、簡単な構成で発光素子の光量変化を抑制することができ、所望の光量を得ることができる。
【0012】
また、本発明の発光装置において、前記補正手段は、前記発光素子の温度特性データから導かれる光量と駆動電流との関係と、前記光量検出手段にて検出される前記光量検出用発光素子の光量とに基づいて、前記発光素子の光量変化を抑制するように前記駆動電流を補正することが好ましい。
この発明によれば、定電流駆動方式で駆動される発光素子を採用した場合に、前記発光素子の温度特性データから導かれる光量と駆動電流との関係と、前記光量検出手段にて検出される前記光量検出用発光素子の光量とに基づいて、温度変化によって生じる発光素子の光量変化を抑制するように前記駆動電圧を補正するので、従来のように発光素子の温度を検出するための温度検出素子を各発光素子毎に設けることなく、簡単な構成で発光素子の光量変化を抑制することができ、所望の光量を得ることができる。
【0013】
また、本発明の発光装置において、前記駆動手段は、前記補正手段により補正された駆動条件にて前記発光素子及び光量検出用発光素子を一括して駆動することが好ましい。
この発明によれば、発光素子及び光量検出用発光素子を一括して駆動するので、特に発光素子が複数設けられている場合、駆動手段の内部構成を簡略化することができ、装置コストの低減に寄与することができる。
【0014】
また、本発明の発光装置において、前記駆動手段は、前記補正手段により補正された駆動条件にて前記発光素子及び光量検出用発光素子を個別的に駆動することが好ましい。
この発明によれば、発光素子及び光量検出用発光素子を個別的に駆動するので、各素子の特性バラツキをも考慮した光量制御を行うことができ、さらに正確に発光素子の光量変化を抑制することができ、所望の光量を得ることができる。
【0015】
また、本発明の発光装置において、発光素子及び光量検出用発光素子は有機EL(electroluminescence)素子であっても良い。
この発明によれば、発光素子及び光量検出用発光素子として有機EL素子を用いた発光装置であっても、発光素子の光量変化を抑制することができ、所望の光量を得ることができる。
【0016】
また、本発明の発光装置において、複数の発光素子を1ライン状に配列させても良い。
この発明によれば、複数の発光素子が1ライン状に配列された発光装置について、発光素子の光量変化を抑制することができ、所望の光量を得ることができる。また、1ライン状に配列した複数の発光素子について、従来のように各発光素子毎に温度検出素子を設ける必要がないので、低コスト化を実現することができる。
【0017】
また、本発明の発光装置において、複数の発光素子を2次元配列させても良い。
この発明によれば、複数の発光素子が2次元配列された発光装置について、発光素子の光量変化を抑制することができ、所望の光量を得ることができる。また、2次元配列した複数の発光素子について、従来のように各発光素子毎に温度検出素子を設ける必要がないので、低コスト化を実現することができる。
【0018】
一方、本発明の画像形成装置は、感光体と、該感光体を一様に帯電させる帯電手段と、上記のように複数の発光素子が1ライン状または2次元配列された発光装置を備え、前記感光体を露光することにより形成対象画像の静電潜像を前記感光体上に形成する露光手段と、前記感光体上の静電潜像をトナー像として現像する現像手段と、前記感光体上のトナー像を転写材に転写させる転写手段と、前記転写材上のトナー像を定着させる定着手段とを具備することを特徴とする。
この発明によれば、露光手段として用いられる発光装置に設けられた各発光素子の光量変化を抑制することができ、所望の光量を得ることができる。従って、露光ムラを低減することができ、高品質な画像を形成する画像形成装置を提供することができる。
【0019】
また、本発明の表示装置は、上記のように複数の発光素子が2次元配列された発光装置を備え、該発光装置の各発光素子を画素として発光させて画像を表示することを特徴とする。
この発明によれば、画素として発光する各発光素子の光量変化を抑制することができ、所望の光量を得ることができる。従って、輝度ムラのない高品質な画像を表示する表示装置を提供することができる。
【0020】
さらに本発明の発光素子の駆動方法は、1つ、あるいは複数の発光素子を有し、前記発光素子を入力データに基づいて発光させる駆動方法において、本来の使用に供さない光量検出専用の光量検出用発光素子を備え、前記発光素子及び前記光量検出用発光素子を所定の駆動方式で駆動する過程と、前記光量検出用発光素子の光量を検出する過程と、前記光量検出用発光素子の光量に基づいて、前記発光素子の光量変化を抑制するように前記発光素子の駆動条件を補正する過程とを有することを特徴とする。
この発明によれば、光量検出用発光素子の光量に基づいて発光素子の光量変化を抑制するように発光素子の駆動条件を補正するので、従来のように発光素子の温度を検出するための温度検出素子を各発光素子毎に設けることなく、簡単な構成で発光素子の光量変化を抑制することができ、所望の光量を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下、図面を参照して、本発明の実施形態について説明する。
〔第1実施形態〕
図1は、本発明の第1実施形態に係わる発光装置の構成図である。なお、本第1実施形態は、発光素子を定電圧駆動するタイプの発光装置に関する。この図において、符号A0は光量検出用発光素子、A1〜Anはn個の発光素子、Bは光量検出部、Cは光量比較部、Dは記憶部、Eはデータ補正部、Fは定電圧駆動部、T0〜Tnはトランジスタである。
【0022】
光量検出用発光素子A0及び発光素子A1〜Anは、半導体発光素子であり、例えば有機EL(electroluminescence)発光素子である。光量検出用発光素子A0は、本来の使用に供さない発光素子であり、光量検出専用として設置されるものである。発光素子A1〜Anは実際に使用する発光素子である。なお、光量検出用発光素子A0及び発光素子A1〜Anは同一工程を経て製造され、温度特性が一致しているものである。
【0023】
光量検出部Bは、フォトダイオードB1、オペアンプB2、抵抗器B3、B4、B5及びA/DコンバータB6から構成されており、光量検出用発光素子A0の光量を検出するものである。フォトダイオードB1は、カソード側が電源VCCに接続され、アノード側はオペアンプB2の正相入力端と抵抗器B3の一端に接続されている。抵抗器B3の他端はアースされている。オペアンプB2の逆相入力端は、抵抗器B4の一端と抵抗器B5の一端とに接続され、抵抗器B4の他端はアースされている。オペアンプB2の出力端は、抵抗器B5の他端とA/DコンバータB6に接続されている。
【0024】
上記の光量検出部Bにおいて、光量検出用発光素子A0の光量はフォトダイオードB1によって検出され、その光量に応じた電圧が抵抗器B3の端子間に生じる。抵抗器B3の端子間電圧は、オペアンプB2に入力され、抵抗器B4と抵抗器B5との比によって決まる増幅度で増幅され、A/DコンバータB6に出力される。A/DコンバータB6は、上記のように増幅された抵抗器B3の端子間電圧をデジタルデータである光量データ(検出光量データ)に変換して光量比較部Cへ出力する。
【0025】
光量比較部Cは、A/DコンバータB6から入力される検出光量データと、記憶部Dに記憶されている常温時の光量データ(基準光量データ)との大小判定を行い、その判定結果をデータ補正部Eに出力する。記憶部Dは、上記基準光量データと、以下で説明する補正テーブル、初期補正係数を記憶している。
【0026】
ここで、本第1実施形態における光量検出用発光素子A0の温度特性について図2を用いて説明する。図2(a)は光量検出用発光素子A0の光量Lと温度Tとの関係を示すもので、温度上昇とともに光量Lもおおよそ比例関係で上昇していくことがわかる。この現象は温度上昇とともに電流発光効率が上昇することに加えて、光量検出用発光素子A0の抵抗成分の低下によって流れる電流値が上昇することにより発生するものである(実際にはEL素子の種類によって、直線ではなく曲線を描くものもあるが、単調増加特性を示すため温度T−光量L特性は1対1の対応になる)。
【0027】
また、図2(b)は光量Lと駆動電圧V(図1のVE0〜VEnに対応する)との関係を示すもので、駆動電圧Vが上昇するにつれて光量Lも比例関係で上昇していくことがわかる。この関係から温度変化により光量Lが小さくなった時は駆動電圧Vを大きくし、光量Lが大きくなった時は駆動電圧Vを小さくすることで光量Lを一定に保持できることがわかる。
【0028】
以上の図2(a)及び図2(b)の関係から、温度変化によって光量Lが変化した時、駆動電圧Vをどのように補正すれば光量Lを一定にできるかということについての補正テーブルを求めることができる。
図2(c)は、上記の補正テーブルを表したものであり、光量Lを一定にするための駆動電圧Vと光量Lとの関係を示している。
【0029】
例えば、常温での駆動条件(駆動電圧V=V、光量L=L)で光量検出用発光素子A0を駆動させた場合において、周囲の温度が上昇し、光量LがLに上昇したとすると、図2(c)の関係から光量を常温時と同じ値にするための駆動電圧Vが求まり、常温での光量になるように補正することができる。
【0030】
つまり、予め図2(a)及び図2(b)の特性を確認し、図2(c)のような光量を一定に保つために設定すべき駆動電圧Vと光量Lとの関係を記憶しておけば、光量検出用発光素子A0の光量変化を検出することによって、光量を一定にするための駆動電圧を求めることが可能となる。そして、その駆動電圧によって発光素子A1〜Anを駆動させることによって光量変化を補正し、所望の光量を得ることができる。
【0031】
記憶部Dには、図2(c)のような駆動電圧Vと光量Lとの関係を示す補正テーブルと、基準光量データ(常温での光量L)とが予め記憶されている。
【0032】
データ補正部Eは、光量比較部Cによる判定結果と、記憶部Dに記憶されている補正テーブル及び初期補正係数とに基づいて、光量検出用発光素子A0及び発光素子A1〜Anの光量が常温時と同じ値となるように、外部から入力された入力データを補正し、光量補正データとして定電圧駆動部Fへ出力する。また、データ補正部EはトランジスタT0〜Tnのゲート電極に接続されており、トランジスタT0〜Tnのゲート電圧G0〜Gnを制御している。
【0033】
定電圧駆動部Fは、例えばD/Aコンバータであり、トランジスタT0〜Tnのソース電極とそれぞれ接続され、データ補正部Eから入力された光量補正データに基づいて駆動電圧VE0〜VEnを生成し、トランジスタT0〜Tnを介して光量検出用発光素子A0及び発光素子A1〜Anを駆動させる。
【0034】
トランジスタT0〜Tnのドレイン電極は、光量検出用発光素子A0及び発光素子A1〜Anのアノード側にそれぞれ接続されており、光量検出用発光素子A0及び発光素子A1〜Anのカソード側はそれぞれアースされている。
なお、トランジスタT0〜TnはMOS型トランジスタであり、例えばTFT(Thin Film Transistor)である。
【0035】
次に、本第1実施形態の発光装置の動作について説明する。
(1) 初期ばらつき補正
光量検出用発光素子A0及び発光素子A1〜Anは同じ製造工程を経て製造されているが、各素子毎に特性がばらつく可能性がある。そこで、初めに以下のような初期ばらつき補正を行う。まず、図3(a)のように光量検出用発光素子A0及び発光素子A1〜Anを常温での駆動条件である駆動電圧Vで駆動させる。その時の各発光素子の光量は特性のばらつきにより、例えば図3(b)のように常温での光量Lに対して発光素子A2の光量は小さくなり(L)、発光素子Anの光量は大きくなったとする(Ln)。
【0036】
図2(c)の関係から光量が低くなれば駆動電圧を上げ、光量が高くなれば駆動電圧を下げれば良いことがわかるので、図3(c)のように発光素子A2及びAnの駆動電圧をそれぞれVE2=V、VEn=Vnと補正すれば図3(d)のように各発光素子の光量をL一定にすることができる。この時、各発光素子の駆動電圧と常温での駆動電圧Vとの比から、各発光素子を常温での光量Lで駆動させるための初期補正係数kが求まる。光量検出用発光素子A0の初期補正係数をk、発光素子A1〜Anの初期補正係数をk〜knとすると、図3の例では、k=1、k=1、k=V/V、kn=Vn/Vとなる。これらの初期補正係数を事前に求め、予め記憶部Dに記憶しておく。
【0037】
(2) 光量補正
次に光量補正動作について説明する。ここでは説明の簡略化のため、光量検出用発光素子A0及び発光素子A1〜Anを常温での駆動条件(駆動電圧VE0=VE1=VE2=VEn=V、光量L=L)にて駆動させた場合について説明する。
【0038】
まず、光量検出用発光素子A0及び発光素子A1〜Anが常温の駆動条件にて発光しているとする。フォトダイオードB1は、光量検出用発光素子A0の光量を検出し、その光量に応じた電圧が抵抗器B3の端子間に生じる。この電圧は微小なのでオペアンプB2によって増幅した後、A/DコンバータB6へ出力される。A/DコンバータB6では上記のように入力された電圧を検出光量データに変換して光量比較部Cへ出力する。
【0039】
光量比較部Cは、記憶部Dから基準光量データ(常温での光量L)を取得し、上記検出光量データ(ここではLとする)とLの値とを比較し、大小判定を行う。ここで、L<Lと判定した場合、すなわち各発光素子の発光により周囲の温度が上昇し光量が上昇した場合、もしくは発光装置の使用環境の変化によって温度上昇した場合は、図2(c)の関係により駆動電圧をVに下げることによって常温での光量に保つことができることがわかる。
【0040】
光量比較部Cは、このような判定結果をデータ補正部Eに出力し、データ補正部Eは、上記判定結果と記憶部Dに記憶されている補正テーブルとに基づき、入力データに対して駆動電圧をVに下げるように補正を行う。さらに、データ補正部Eは、各発光素子毎に求めた初期補正係数k〜knを補正後の入力データに乗じることによって各発光素子毎の特性のばらつきも考慮した光量補正データを生成し、定電圧駆動部Fへ出力する。なお、L=Lならば補正テーブルに基づく補正は行われず、各発光素子の特性のばらつき補正のみが行われる。
【0041】
上記の動作を図4のタイムチャートを用いて詳細に説明する。
図4に示すように、データ補正部Eは光量検出用発光素子A0に対応した入力データDA0が入力されると、その入力データDA0に対して光量補正を行い(駆動電圧VをVに下げて補正する)、さらに各発光素子毎の特性ばらつきを補正するための初期補正係数kを乗じる。この光量補正データは定電圧駆動部Fに送られ、定電圧駆動部Fはその光量補正データに基づき光量検出用発光素子A0を駆動するための駆動電圧VE0=k・Vを生成する。そして、データ補正部Eはゲート電圧G0を出力してトランジスタT0をオンにし、駆動電圧k・Vが光量検出用発光素子A0に供給される。光量検出用発光素子A0はこの駆動電圧k・Vによって駆動されるので、常温での光量Lに保持される。
【0042】
次に発光素子A1に対応した入力データDA1がデータ補正部Eに入力されると、入力データDA1に対して上記と同様に駆動電圧VをVに下げるように光量補正が行われる。さらに各発光素子毎の特性ばらつきを補正するための初期補正係数kが乗じられ、光量補正データとして定電圧駆動部Fに送られる。定電圧駆動部Fはその光量補正データに基づき発光素子A1を駆動するための駆動電圧VE1=k・Vを生成する。そして、データ補正部Eはゲート電圧G1を出力してトランジスタT1をオンにし(トランジスタT0はオフになっている)、駆動電圧k・Vが発光素子A1に供給される。発光素子A1はこの駆動電圧k・Vによって駆動し、常温での光量Lに保持される。以下同様に、発光素子A2及びAnにはそれぞれが発光するタイミングで駆動電圧k・V及びkn・Vが供給され、それぞれ常温での光量Lに保つことができる。
【0043】
以上のように本第1実施形態によれば、1個の光量検出用発光素子A0の光量を監視することによって各発光素子の光量を補正するので、従来のように特別な温度検出素子を複数用いることなく簡単な構成で所望の光量を得ることができる。また、温度変化に対する光量補正に加えて、各発光素子毎の特性ばらつきも考慮した補正も行うので精度の良い光量補正が可能である。
【0044】
なお、上記のような光量補正を常時行う必要はなく、光量検出用発光素子A0の寿命を考慮し、所定のタイミングで光量補正を行えばよい。例えば、発光装置の起動直後や、発光中に一定時間間隔で間欠的に光量補正を行えばよく、光量補正を行わない時は光量検出用発光素子A0の発光動作を停止させておくことが好ましい。
【0045】
上述した発光装置では、データ補正部Eにより補正された駆動条件(駆動電圧)にて、光量検出用発光素子A0及び発光素子A1〜Anを個別的に駆動したが、図5に示すように、光量検出用発光素子A0及び発光素子A1〜Anを一括して駆動するようにしても良い。このような構成にすることで、特に発光素子が複数設けられている場合、定電圧駆動部Fの内部構成を簡略化することができ、装置コストの低減に寄与することができる。
なお、図5のような構成の場合、初期補正係数を光量検出用発光素子A0及び発光素子A1〜Anの入力データに応じて個別的に乗算することができないため、各発光素子毎の特性ばらつきは、各トランジスタのスイッチング時間(つまり発光期間)を調整することで補正を行う必要がある。
【0046】
次に図6を参照して、本発明の第2実施形態について説明する。
〔第2実施形態〕
図6は、本発明の第2実施形態に係わる発光装置の構成図である。なお、本第2実施形態は、発光素子を定電流駆動するタイプの発光装置に関する。この図において、符号A0は光量検出用発光素子、A1〜Anはn個の発光素子、Bは光量検出部、Cは光量比較部、Dは記憶部、Eはデータ補正部、Hは定電流駆動部、P0〜Pnはトランジスタである。
【0047】
光量検出用発光素子A0及び発光素子A1〜Anは、半導体発光素子であり、例えば有機EL(electroluminescence)発光素子である。光量検出用発光素子A0は、本来の使用に供さない発光素子であり、光量検出専用として設置されるものである。発光素子A1〜Anは実際に使用する発光素子である。なお、光量検出用発光素子A0及び発光素子A1〜Anは同一工程を経て製造され、温度特性が一致しているものである。
【0048】
光量検出部Bは、フォトダイオードB1、オペアンプB2、抵抗器B3、B4、B5及びA/DコンバータB6から構成されており、光量検出用発光素子A0の光量を検出するものである。フォトダイオードB1は、カソード側が電源VCCに接続され、アノード側はオペアンプB2の正相入力端と抵抗器B3の一端に接続されている。抵抗器B3の他端はアースされている。オペアンプB2の逆相入力端は、抵抗器B4の一端と抵抗器B5の一端とに接続され、抵抗器B4の他端はアースされている。オペアンプB2の出力端は、抵抗器B5の他端とA/DコンバータB6に接続されている。
【0049】
上記の光量検出部Bにおいて、光量検出用発光素子A0の光量はフォトダイオードB1によって検出され、その光量に応じた電圧が抵抗器B3の端子間に生じる。抵抗器B3の端子間電圧は、オペアンプB2に入力され、抵抗器B4と抵抗器B5との比によって決まる増幅度で増幅され、A/DコンバータB6に出力される。A/DコンバータB6は、上記のように増幅された抵抗器B3の端子間電圧をデジタルデータである光量データ(検出光量データ)に変換して光量比較部Cへ出力する。
【0050】
光量比較部Cは、A/DコンバータB6から入力される検出光量データと、記憶部Dに記憶されている常温時の光量データ(基準光量データ)との大小判定を行い、その判定結果をデータ補正部Eに出力する。記憶部Dは、上記基準光量データと、以下で説明する補正テーブル、初期補正係数を記憶している。
【0051】
ここで、本第2実施形態における光量検出用発光素子A0の温度特性について図7を用いて説明する。温度Tに対する光量Lの関係は図7(a)に示す通りであり、温度上昇による電流発光効率の上昇に伴い輝度も上昇する特性となる。なお、定電流駆動のため、図2(a)の定電圧駆動した場合の特性と比べて、光量検出用発光素子A0の抵抗成分の低下の影響は受けない。
【0052】
また、図7(b)は光量Lと駆動電流I(図6のIE0〜IEnに対応する)との関係を示すもので、駆動電流Iが上昇するにつれて光量Lも比例関係で上昇していくことがわかる。この関係から温度変化により光量Lが小さくなった時は駆動電流Iを大きくし、光量Lが大きくなった時は駆動電流Iを小さくすることで光量Lを一定に保持できることがわかる。
【0053】
以上の図7(a)及び図7(b)の関係から、温度変化によって光量Lが変化した時、駆動電流Iをどのように補正すれば光量Lを一定に保持できるかということについての補正テーブルを求めることができる。
図7(c)は、上記の補正テーブルを表したものであり、光量Lを一定にするための駆動電流Iと光量Lとの関係を示している。
【0054】
例えば、常温での駆動条件(駆動電流I=I、光量L=L)で光量検出用発光素子A0を駆動させた場合において、周囲の温度が上昇し、光量LがLに上昇したとすると、図7(c)の関係から光量を常温時と同じ値にするための駆動電流Iが求まり、常温での光量になるように補正することができる。
【0055】
つまり、予め図7(a)及び図7(b)の特性を確認し、図7(c)のような光量を一定に保つために設定すべき駆動電流Iと光量Lとの関係を記憶しておけば、光量検出用発光素子A0の光量変化を検出することによって、光量を一定にするための駆動電流を求めることが可能となる。そして、その駆動電流によって発光素子A1〜Anを駆動させることによって光量変化を補正し、所望の光量を得ることができる。
【0056】
記憶部Dには、図7(c)のような駆動電流Iと光量Lとの関係を示す補正テーブルと、基準光量データ(常温での光量L)とが予め記憶されている。
【0057】
データ補正部Eは、光量比較部Cによる判定結果と、記憶部Dに記憶されている補正テーブル及び初期補正係数とに基づいて、光量検出用発光素子A0及び発光素子A1〜Anの光量が常温時と同じ値となるように、外部から入力された入力データを補正し、光量補正データとして定電流駆動部Hへ出力する。また、データ補正部EはトランジスタP0〜Pnのゲート電極に接続されており、トランジスタP0〜Pnのゲート電圧G0〜Gnを制御している。
【0058】
定電流駆動部Hは、例えばD/Aコンバータであり、トランジスタP0〜Pnのソース電極とそれぞれ接続され、データ補正部Eから入力された光量補正データに基づいて駆動電流IE0〜IEnを生成し、トランジスタP0〜Pnを介して光量検出用発光素子A0及び発光素子A1〜Anを駆動させる。
【0059】
トランジスタP0〜Pnのドレイン電極は、光量検出用発光素子A0及び発光素子A1〜Anのアノード側にそれぞれ接続されており、光量検出用発光素子A0及び発光素子A1〜Anのカソード側はそれぞれアースされている。
なお、トランジスタP0〜PnはMOS型トランジスタであり、例えばTFT(Thin Film Transistor)である。
【0060】
次に、本第2実施形態の発光装置の動作について説明する。
(1) 初期ばらつき補正
第1実施形態と同様に、以下のような初期ばらつき補正を行う。まず、図8(a)のように光量検出用発光素子A0及び発光素子A1〜Anを常温での駆動条件である駆動電流Iで駆動させる。その時の各発光素子の光量は特性のばらつきにより、例えば図8(b)のように常温での光量Lに対して発光素子A2の光量は小さくなり(L)、発光素子Anの光量は大きくなったとする(Ln)。
【0061】
図7(c)の関係から光量が低くなれば駆動電流を上げ、光量が高くなれば駆動電流を下げれば良いことがわかるので、図8(c)のように発光素子A2及びAnの駆動電流をそれぞれIE2=I、IEn=Inと補正すれば図8(d)のように各発光素子の光量をL一定にすることができる。この時、各発光素子の駆動電流と常温での駆動電流Iとの比から、各発光素子を常温での光量Lで駆動させるための初期補正係数Jが求まる。光量検出用発光素子A0の初期補正係数をJ、発光素子A1〜Anの初期補正係数をJ〜Jnとすると、図8の例では、J=1、J=1、J=I/I、Jn=In/Iとなる。これらの初期補正係数を事前に求め、予め記憶部Dに記憶しておく。
【0062】
(2) 光量補正
次に光量補正動作について説明する。ここでは説明の簡略化のため、光量検出用発光素子A0及び発光素子A1〜Anを常温での駆動条件(駆動電流IE0=IE1=IE2=IEn=I、光量L=L)にて駆動させた場合について説明する。
【0063】
まず、光量検出用発光素子A0及び発光素子A1〜Anが常温の駆動条件にて発光しているとする。フォトダイオードB1は、光量検出用発光素子A0の光量を検出し、その光量に応じた電圧が抵抗器B3の端子間に生じる。この電圧は微小なのでオペアンプB2によって増幅した後、A/DコンバータB6へ出力される。A/DコンバータB6では上記のように入力された電圧を検出光量データに変換して光量比較部Cへ出力する。
【0064】
光量比較部Cは、記憶部Dから基準光量データ(常温での光量L)を取得し、上記検出光量データ(ここではLとする)とLの値とを比較し、大小判定を行う。ここで、L<Lと判定した場合、すなわち各発光素子の発光により周囲の温度が上昇し光量が上昇した場合、もしくは発光装置の使用環境の変化によって温度上昇した場合は、図7(c)の関係により駆動電流をIに下げることによって常温での光量に保つことができることがわかる。
【0065】
光量比較部Cは、このような判定結果をデータ補正部Eに出力し、データ補正部Eは、上記判定結果と記憶部Dに記憶されている補正テーブルとに基づき、入力データに対して駆動電流をIに下げるように補正を行う。さらに、データ補正部Eは、各発光素子毎に求めた初期補正係数J〜Jnを補正後の入力データに乗じることによって各発光素子毎の特性のばらつきも考慮した光量補正データを生成し、定電流駆動部Hへ出力する。なお、L=Lならば補正テーブルに基づく補正は行われず、各発光素子の特性のばらつき補正のみが行われる。
【0066】
上記の動作を図9のタイムチャートを用いて詳細に説明する。
図9に示すように、データ補正部Eは光量検出用発光素子A0に対応した入力データDA0が入力されると、その入力データDA0に対して光量補正を行い(駆動電流IをIに下げて補正する)、さらに各発光素子毎の特性ばらつきを補正するための初期補正係数Jを乗じる。この光量補正データは定電流駆動部Hに送られ、定電流駆動部Hはその光量補正データに基づき光量検出用発光素子A0を駆動するための駆動電流IE0=J・Iを生成する。そして、データ補正部Eはゲート電圧G0を出力してトランジスタP0をオンにし、駆動電流J・Iが光量検出用発光素子A0に供給される。光量検出用発光素子A0はこの駆動電流J・Iによって駆動されるので、常温での光量Lに保持される。
【0067】
次に発光素子A1に対応した入力データDA1がデータ補正部Eに入力されると、入力データDA1に対して上記と同様に駆動電流IをIに下げるように光量補正が行われる。さらに各発光素子毎の特性ばらつきを補正するための初期補正係数Jが乗じられ、光量補正データとして定電流駆動部Hに送られる。定電流駆動部Hはその光量補正データに基づき発光素子A1を駆動するための駆動電流IE1=J・Iを生成する。そして、データ補正部Eはゲート電圧G1を出力してトランジスタP1をオンにし(トランジスタP0はオフになっている)、駆動電流J・Iが発光素子A1に供給される。発光素子A1はこの駆動電流J・Iによって駆動し、常温での光量Lに保持される。以下同様に、発光素子A2及びAnにはそれぞれが発光するタイミングで駆動電流J・I及びJn・Iが供給され、それぞれ常温での光量Lに保つことができる。
【0068】
以上のように本第2実施形態によれば、定電流駆動型の発光装置についても、1個の光量検出用発光素子A0の光量を監視することによって各発光素子の光量を補正するので、従来のように特別な温度検出素子を複数用いることなく簡単な構成で所望の光量を得ることができる。また、温度変化に対する光量補正に加えて、各発光素子毎の特性ばらつきも考慮した補正も行うので精度の良い光量補正が可能である。
【0069】
なお、第1実施形態と同様に、上記のような光量補正を常時行う必要はなく、光量検出用発光素子A0の寿命を考慮し、所定のタイミングで光量補正を行えばよい。
【0070】
さらに、定電流駆動型の発光装置の回路構成として、図10に示すようなカレントミラー回路を用いることができる。以下では、このカレントミラー回路から構成される発光装置について説明する。なお、図10において、図6と同じ構成要素には同一符号を付し、説明を省略する。図10に示すように、カレントミラー回路から構成される発光装置は、上記第2実施形態の発光装置と比較して、定電流駆動部Hの替わりに、直流電源VCC、トランジスタQ1〜Qnを備えている。
【0071】
トランジスタQ1のドレイン電極は、直流電源VCCとトランジスタQ3〜Qnの各ドレイン電極とに接続され、ソース電極はゲート電極及びトランジスタQ2のドレイン電極と接続されている。また、トランジスタQ1のソース電極は、トランジスタQ3〜Qnの各ゲート電極と接続されている。トランジスタQ2のゲート電極はデータ補正部Eに接続され、ソース電極はアースされている。トランジスタQ3〜Qnの各ソース電極は、それぞれに対応するトランジスタP0〜Pnの各ドレイン電極に接続されている。
【0072】
データ補正部Eは、光量比較部Cによる判定結果に基づいて、光量検出用発光素子A0及び発光素子A1〜Anの光量が常温時と同じ値となるように、トランジスタQ2のゲート電圧Vgrefを制御する。また、データ補正部EはトランジスタP0〜Pnのゲート電極に接続されており、トランジスタP0〜Pnのゲート電圧G0〜Gnを制御している。
【0073】
次に、このようなカレントミラー回路から構成される発光装置の動作について説明する。
なお、カレントミラー回路については公知の技術なので詳細な説明を省略し、本実施形態の特徴的な動作について説明する。
【0074】
光量検出用発光素子A0及び発光素子A1〜Anが常温の駆動条件にて発光しているとする。フォトダイオードB1は、光量検出用発光素子A0の光量を検出し、その光量に応じた電圧が抵抗器B3の端子間に生じる。この電圧は微小なのでオペアンプB2によって増幅した後、A/DコンバータB6へ出力される。A/DコンバータB6では上記のように入力された電圧を検出光量データに変換して光量比較部Cへ出力する。
【0075】
光量比較部Cは、記憶部Dから基準光量データ(常温での光量L)を取得し、上記検出光量データ(ここではLとする)とLの値とを比較し、大小判定を行う。ここで、L<Lと判定した場合、すなわち各発光素子の発光により周囲の温度が上昇し光量が上昇した場合、もしくは発光装置の使用環境の変化によって温度上昇した場合は、図7(c)の関係により駆動電流をIに下げることによって常温での光量に保つことができることがわかる。
【0076】
カレントミラー回路の特性から、トランジスタQ2のドレイン・ソース間に流れる電流Irefと、光量検出用発光素子A0及び発光素子A1〜Anに流れる駆動電流IE0〜IEnとは同一の値となる。データ補正部Eは、上記光量比較部Cの判定結果に基づき、L<Lの場合は、各駆動電流IE0〜IEnが小さくなるように、つまり電流Irefが小さくなるように、トランジスタQ2のゲート電圧Vgrefを制御する。また、L>Lの場合は、各駆動電流IE0〜IEnが大きくなるように、つまり電流Irefが大きくなるように、トランジスタQ2のゲート電圧Vgrefを制御し、L=Lの場合は、トランジスタQ2のゲート電圧Vgrefを制御しない。なお、このようなゲート電圧Vgrefの制御量は、上述した補正テーブルに基づいて予め設定されているものである。
【0077】
このように、カレントミラー回路から構成される発光装置の場合、トランジスタQ2のゲート電圧Vgrefを制御することによって、光量の補正を行うことができる。ただし、初期補正係数を光量検出用発光素子A0及び発光素子A1〜Anの入力データに応じて個別的に乗算することができないため、各発光素子毎の特性ばらつきは、各トランジスタのスイッチング時間(つまり発光期間)を調整することで補正を行う必要がある。
【0078】
なお、上記第1及び第2実施形態では、各発光素子を順次発光させる場合の動作説明をしたが、このような動作に限らず、同時に各発光素子を発光させるような動作を行っても良い。また、より正確な光量補正を行うために、輝度検出用発光素子A0は他の発光素子と同じ駆動条件で駆動させるのが好ましい。
さらに、上記第1及び第2実施形態では、1つの定電圧駆動部Fまたは定電流駆動部Hによって、光量検出用発光素子A0及び発光素子A1〜Anを駆動したが、これに限定されず、各素子毎に個別に定電圧駆動部Fまたは定電流駆動部Hを設けても良い。
【0079】
次に、図11、図12を参照して、上述した発光装置を露光手段として用いた画像形成装置について説明する。
【0080】
図11は、本画像形成装置の機構構成を示す断面図である。
画像形成装置80は、4個のラインヘッド101K、101C、101M、101Yを、それらと対応する4個の感光体ドラム41K、41C、41M、41Yの露光位置に各々配置したもので、タンデム方式の画像形成装置として構成されている。
【0081】
各ラインヘッド101K、101C、101M、101Yは、図12に示すように、上述した発光装置において光量検出用発光素子A0及び発光素子A1〜Anを1ライン状に複数配列した構成を有するものである。図12において、符号B1はフォトダイオード、200はアレイ基板、201は封止基板、202は各発光素子からの光を感光体ドラムに集光させるためのSLA(セルフォック・レンズ・アレイ)である。光量検出用発光素子A0はその発光により感光体ドラムを露光しないよう、SLA202に光が入射しない位置に設置される。
また、各ラインヘッド101K、101C、101M、101Yの発光エネルギーのピーク波長は、感光体ドラム41K、41C、41M、41Yの感度ピーク波長と一致するように設定されている。なお、各ラインヘッド101K、101C、101M、101Yに付されているK、C、M、Yは、各々に黒、シアン、マゼンタ、イエロー用のラインヘッドであることを示しており、この点は他の構成要件についても同様である。なお、ラインヘッド101K、101C、101M、101Yはそれぞれ複数列からなる構成をとることも可能である。
【0082】
この画像形成装置80は、駆動ローラ91と従動ローラ92とテンションローラ93とを備え、これら各ローラに中間転写ベルト90を、矢印方向(反時計方向)に循環駆動するよう張架したものである。この中間転写ベルト90に対して、感光体ドラム41K、41C、41M、41Yが所定間隔で配置されている。これら感光体ドラム41K、41C、41M、41Yは、その外周面が感光体としての感光層となっている。
【0083】
感光体ドラム41K、41C、41M、41Yは、中間転写ベルト90の駆動と同期して、矢印方向(時計方向)に回転駆動するようになっている。各感光体ドラム41K、41C、41M、41Yの周囲には、それぞれ感光体ドラム41K、41C、41M、41Yの外周面を一様に帯電させる帯電手段としてのコロナ帯電器42K、42C、42M、42Yと、このコロナ帯電器42K、42C、42M、42Yによって一様に帯電させられた外周面を感光体ドラム41K、41C、41M、41Yの回転に同期して順次ライン走査するラインヘッド101K、101C、101M、101Yとが設けられている。
【0084】
また、このラインヘッド101K、101C、101M、101Yで形成された静電潜像に現像剤であるトナーを付与して可視像(トナー像)とする現像装置44(K、C、M、Y)と、この現像装置44K、44C、44M、44Yで現像されたトナー像を一次転写対象である中間転写ベルト90に順次転写する転写手段としての一次転写ローラ45K、45C、45M、45Yと、転写された後に感光体ドラム41K、41C、41M、41Yの表面に残留しているトナーを除去するクリーニング装置46K、46C、46M、46Yとが設けられている。
【0085】
現像装置44K、44C、44M、44Yは、例えば、現像剤として非磁性一成分トナーを用いるもので、その一成分現像剤を例えば供給ローラで現像ローラへ搬送し、現像ローラ表面に付着した現像剤の膜厚を規制ブレードで規制し、その現像ローラを感光体ドラム41K、41C、41M、41Yに接触させあるいは押圧せしめることにより、感光体ドラム41K、41C、41M、41Yの電位レベルに応じて現像剤を付着させ、トナー像として現像するものである。
【0086】
このような4色の単色トナー像形成ステーションにより形成された黒、シアン、マゼンタ、イエローの各トナー像は、一次転写ローラ45K、45C、45M、45Yに印加される一次転写バイアスによって中間転写ベルト90上に順次一次転写される。そして、中間転写ベルト90上で順次重ね合わされてフルカラーとなったトナー像は、二次転写ローラ66において用紙等の記録媒体P(転写材)に二次転写され、さらに定着部である定着ローラ対61を通ることで記録媒体P上に定着され、その後、排紙ローラ対62によって装置上部に形成された排紙トレイ68上に排出される。
【0087】
なお、符号63は多数枚の記録媒体Pが積層保持されている給紙カセット、64は給紙カセット63から記録媒体Pを一枚ずつ給送するピックアップローラ、65は二次転写ローラ66の二次転写部への記録媒体Pの供給タイミングを規定するゲートローラ対、66は中間転写ベルト90との間で二次転写部を形成する二次転写ローラ、67は二次転写後に中間転写ベルト90の表面に残留しているトナーを除去するクリーニングブレードである。
【0088】
このような画像形成装置によれば、各ラインヘッド101K、101C、101M、101Yにおける発光素子A1〜Anは、温度変化による光量変化を抑えるように補正が行われるので、露光ムラを低減することが可能であり、よって形成される画像の品質を向上させることができる。また、各ラインヘッド101K、101C、101M、101Yは、1個の光量検出用発光素子A0の光量変化に基づいて補正されるので、複数の温度検出素子を用いるよりも低コストであり、簡単な構成とすることができる。
【0089】
なお、上記第1及び第2実施形態に係わる発光装置では、駆動電圧あるいは駆動電流の値を調節して輝度を補正するようにしたが、画像形成装置に用いる発光装置、つまり各ラインヘッド101K、101C、101M、101Yは、感光体ドラム41K、41C、41M、41Yを露光するための露光手段をして機能するものであり、本質的に要求される性能は露光光量の正確さである。したがって、図13に示すように、駆動電圧または駆動電流を補正することに代えて、露光時間つまり発光素子A1〜Anの発光期間を温度に応じて補正することによっても正確な露光を実現できる。
【0090】
なお、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、例えば、表示装置にも適用可能である。この場合、本発光装置は複数の発光素子A1〜Anを2次元配列し、各々を画素として発光させるものである。そして、各発光素子A1〜Anの光量は、1個の光量検出用発光素子A0の光量変化に基づいて補正される。表示装置が大きくなれば光量検出用発光素子A0を複数個設置し、それらの光量変化の平均を求めて発光素子A1〜Anの光量補正を行うことによって、より精度の高い光量補正をすることができる。この場合でも、従来のように画素毎に温度検出素子を用いる必要がないので、低コストを実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0091】
【図1】本発明の第1実施形態に係わる発光装置の構成図である。
【図2】第1実施形態における発光素子の光量と駆動電圧との関係を示す特性図である。
【図3】第1実施形態における初期ばらつき補正方法を示す図である。
【図4】第1実施形態における光量補正動作のタイムチャート図である。
【図5】第1実施形態の変形例である。
【図6】本発明の第2実施形態に係わる発光装置の構成図である。
【図7】第2実施形態における発光素子の光量と駆動電流との関係を示す特性図である。
【図8】第2実施形態における初期ばらつき補正方法を示す図である。
【図9】第2実施形態における光量補正動作のタイムチャート図である。
【図10】第2実施形態の第1変形例である。
【図11】本発明の実施形態に係わる画像形成装置の機構構成を示す断面図である。
【図12】本発明の実施形態に係わる画像形成装置に用いられるラインヘッドの断面図である。
【図13】本発明の実施形態に係わる画像形成装置において発光期間調整による光量補正を示す図である。
【符号の説明】
【0092】
A0…光量検出用発光素子、A1〜An…発光素子、B…光量検出部、C…光量比較部、D…記憶部、E…データ補正部、F…定電圧駆動部、H…定電流駆動部



【特許請求の範囲】
【請求項1】
1つ、あるいは複数の発光素子を有し、前記発光素子を入力データに基づいて発光させる発光装置において、
本来の使用に供さない光量検出専用の光量検出用発光素子と、
前記発光素子及び前記光量検出用発光素子を所定の駆動方式で駆動する駆動手段と、
前記光量検出用発光素子の光量を検出する光量検出手段と、
前記光量検出用発光素子の光量に基づいて、前記発光素子の光量変化を抑制するように前記駆動手段による発光素子の駆動条件を補正する補正手段と
を具備することを特徴とする発光装置。
【請求項2】
駆動手段は、定電圧駆動方式で発光素子及び光量検出用発光素子を駆動することを特徴とする請求項1記載の発光装置。
【請求項3】
補正手段は、前記発光素子の温度特性データから導かれる光量と駆動電圧との関係と、前記光量検出手段にて検出される前記光量検出用発光素子の光量とに基づいて、前記発光素子の光量変化を抑制するように前記駆動電圧を補正することを特徴とする請求項2記載の発光装置。
【請求項4】
駆動手段は、定電流駆動方式で発光素子及び光量検出用発光素子を駆動することを特徴とする請求項1記載の発光装置。
【請求項5】
補正手段は、前記発光素子の温度特性データから導かれる光量と駆動電流との関係と、前記光量検出手段にて検出される前記光量検出用発光素子の光量とに基づいて、前記発光素子の光量変化を抑制するように前記駆動電流を補正することを特徴とする請求項4記載の発光装置。
【請求項6】
駆動手段は、前記補正手段により補正された駆動条件にて前記発光素子及び光量検出用発光素子を一括して駆動することを特徴とする請求項1〜5いずれかに記載の発光装置。
【請求項7】
駆動手段は、前記補正手段により補正された駆動条件にて前記発光素子及び光量検出用発光素子を個別的に駆動することを特徴とする請求項1〜5いずれかに記載の発光装置。
【請求項8】
発光素子及び光量検出用発光素子は有機EL(electroluminescence)素子であることを特徴とする請求項1〜7いずれかに記載の発光装置。
【請求項9】
複数の発光素子が1ライン状に配列することを特徴とする請求項1〜8いずれかに記載の発光装置。
【請求項10】
複数の発光素子が2次元配列することを特徴とする請求項1〜8いずれかに記載の発光装置。
【請求項11】
感光体と、
該感光体を一様に帯電させる帯電手段と、
請求項9または10記載の発光装置を備え、前記感光体を露光することにより形成対象画像の静電潜像を前記感光体上に形成する露光手段と、
前記感光体上の静電潜像をトナー像として現像する現像手段と、
前記感光体上のトナー像を転写材に転写させる転写手段と、
前記転写材上のトナー像を定着させる定着手段と
を具備することを特徴とする画像形成装置。
【請求項12】
請求項10記載の発光装置を備え、該発光装置の各発光素子を画素として発光させて画像を表示することを特徴とする表示装置。
【請求項13】
1つ、あるいは複数の発光素子を有し、前記発光素子を入力データに基づいて発光させる駆動方法において、
本来の使用に供さない光量検出専用の光量検出用発光素子を備え、前記発光素子及び前記光量検出用発光素子を所定の駆動方式で駆動する過程と、
前記光量検出用発光素子の光量を検出する過程と、
前記光量検出用発光素子の光量に基づいて、前記発光素子の光量変化を抑制するように前記発光素子の駆動条件を補正する過程と
を有することを特徴とする発光素子の駆動方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2006−201751(P2006−201751A)
【公開日】平成18年8月3日(2006.8.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−348953(P2005−348953)
【出願日】平成17年12月2日(2005.12.2)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.セルフォック
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】