説明

発光装置、画像形成装置および表示装置

【課題】 浮遊容量を削減する。
【解決手段】 OLED素子64は、陽極641と陰極645とを備え、駆動電流の量に
応じた大きさの光を発光する。駆動トランジスタ62と保持トランジスタ61は、接続配
線63によって接続される。ここで、陰極641は保持トランジスタ61およびデータ線
と対向しないように形成されており、それらの間に浮遊容量は付随しない。一方、接続配
線63と陰極645は対向しており、それらの間に発生する浮遊容量が保持容量Cとして
作用する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有機発光ダイオード素子のように陽極から陰極へ流れる電流の量に応じた大
きさの光を発光する発光素子を用いた発光装置、画像形成装置および表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、液晶素子に代わる次世代の発光デバイスとして、有機エレクトロルミネッセンス
素子や発光ポリマー素子などと呼ばれる有機発光ダイオード(Organic Light Emitting
Diode、以下適宜「OLED素子」と略称する)素子が注目されている。このOLED
素子を用いたパネルは、OLED素子が自発光型であるために視野角依存性が少なく、ま
た、バックライトや反射光が不要であるために低消費電力化や薄型化に向いている。
【0003】
ここで、OLED素子は、液晶素子のように電圧保持性を有さず、電流が途絶えると、
発光状態が維持できなくなる電流型の被駆動素子である。このため、OLED素子をアク
ティブ・マトリクス方式で駆動する場合、データ線を介して画素の階調に応じた駆動信号
を画素回路に供給し、書込期間において画素回路内の保持トランジスタを介して駆動信号
を供給することにより駆動トランジスタのゲートに電圧を書き込んで、電圧をゲート容量
などにより保持し、当該電圧に応じた駆動電流を駆動トランジスタがOLED素子に流し
続けることが一般的である。
【0004】
このような発光装置において、OLED素子は陽極と陰極とを備え、陽極は駆動トラン
ジスタに接続される。一方、陰極は、陽極と対抗する他、データ線および保持トランジス
タと対向するように形成される(例えば、特許文献1)。
【特許文献1】特開2003−316296号公報(図2および図3参照)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、陰極をデータ線と対向させると、それらの間で浮遊容量が発生する。こ
の浮遊容量は、データ線を駆動する駆動回路から見ると容量性の負荷として作用する。従
って、駆動回路の駆動能力が低いと、電圧信号をデータ線に高速に書き込むことが困難と
なり、OLED素子の発光輝度が低下するといった問題がある。一方、駆動能力の高い駆
動回路を採用しても高負荷を駆動することに変わりがないため、消費電力が増加するとい
った問題があった。また、保持トランジスタと陰極が対向する場合にも浮遊容量が大きく
なるため、データ線の場合と同様の問題がある。特に、所定のパルス幅を持つ駆動信号を
供給することにより駆動トランジスタの動作状態を制御し、所定のパルス幅によりOLE
D素子の発光輝度を制御する場合には、このような容量性の負荷により所定のパルス幅を
持つ駆動信号が劣化し、所定の発光輝度とならない問題がある。
特に、発光装置を画像形成装置のヘッド部に適用する場合には、感光体の感度との関係
でOLED素子の発光輝度として高輝度が要求されるため、浮遊容量による書き込み不足
が大きな問題となる。また、大型の表示パネルで書込期間が短い場合にも浮遊容量による
書き込み不足が大きな問題となる。
【0006】
本発明は、上述した事情に鑑みてなされたもので、その目的とするところは、浮遊容量
を削減して、輝度の低下を防止するとともに消費電力を削減することが可能な発光装置、
これを用いた画像形成装置および表示装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述した課題を解決するため、本発明に係る発光装置は、複数のデータ線と、複数の画
素回路とを備え、前記複数の画素回路の各々は、第1電極と第2電極を有し、駆動電流の
量に応じた大きさの光を発光する発光素子と、前記第1電極に前記駆動電流を供給する駆
動トランジスタと、前記データ線を介して供給される駆動信号を前記駆動トランジスタに
供給する保持トランジスタと、前記駆動トランジスタと前記保持トランジスタとを接続す
る接続配線とを備え、前記第2電極と前記データ線の一部または全部とが互いに対向しな
いように異なる領域に形成したことを特徴とする。
【0008】
この発明によれば、発光素子の第2電極はデータ線の一部または全部と対向しないので
、第2電極とデータ線との間で発生する浮遊容量を削減することができる。この結果、デ
ータ線の電圧を大振幅で変化させることが容易となり、発光素子の発光輝度を高くするこ
とができる。また、容量性の負荷が減少するから、駆動回路として駆動能力の低いものを
用いることができ、さらに、消費電力を削減することが可能となる。なお、浮遊容量の削
減の観点からは、第2電極がデータ線の全部と対向しないように互いに異なる領域に形成
することが好ましい。発光装置は、基板上に半導体層、層間絶縁膜、電極、および配線等
を形成することによって製造される。このため、データ線と第2電極が同一の空間を占め
ることはあり得ない。「領域」とは、平面的に発光装置を見たとき、例えば、平板上の第
2電極と垂直の方向から見たときの対象(第2電極、データ線)が形成される範囲の意味
である。
【0009】
特に、第2電極とデータ線の全部とが対向しないように互いに異なる領域に形成する場
合は、発光装置を画像形成装置のラインヘッドとして構成する場合に好適である。一方、
第2電極とデータ線の一部とが互いに対向しないように異なる領域に形成する場合は、発
光装置を表示装置に用いる場合に好適である。表示装置では、複数の走査線と、複数のデ
ータ線の交差に対応して画素回路がマトリックス状に配列される。画面全体の輝度を均一
にする観点から各画素回路の陰極の電位は一定であることが望ましい。このためには、各
第2電極を接続して全体のインピーダンスを下げる必要がある。しかし、データ線を覆う
ように第2電極を配置すると浮遊容量が発生してしまう。そこで、第2電極とデータ線の
一部とが互いに対向しないように形成することが好ましい。
【0010】
本発明に係る他の発光装置は、複数のデータ線と、複数の画素回路とを備え、前記複数
の画素回路の各々は、第1電極と第2電極を有し、駆動電流の量に応じた大きさの光を発
光する発光素子と、前記第1電極に前記駆動電流を供給する駆動トランジスタと、前記デ
ータ線を介して供給される駆動信号を前記駆動トランジスタに供給する保持トランジスタ
と、前記駆動トランジスタと前記保持トランジスタとを接続する接続配線とを備え、前記
第2電極と前記保持トランジスタとが互いに対向しないように異なる領域に形成したこと
を特徴とする。
【0011】
この発明によれば、発光素子の第2電極は保持トランジスタの一部または全部と対向し
ないので、第2電極とデータ線との間で発生する浮遊容量を削減することができる。この
結果、データ線の電圧を大振幅で変化させることが容易となり、発光素子の発光輝度を高
くすることができる。また、容量性の負荷が減少するから、駆動回路として駆動能力の低
いものを用いることができ、さらに、消費電力を削減することが可能となる。
【0012】
また、前記第2電極を前記接続配線の一部または全部と対向するように形成することが
好ましい。この場合には、第2電極と接続配線との間に発生する浮遊容量によって、駆動
信号を保持する保持容量を形成することができる。これにより、保持容量のために特別な
構造を形成しなくてもよいので、チップ面積を削減することができ、画素回路間のピッチ
を狭くすることができる。
【0013】
また、前記接続配線は、その一部に抵抗素子が形成され、前記第2電極を前記接続配線
の一部と対向し、前記抵抗素子と対向しないように形成することが好ましい。ノイズを除
去する観点から、抵抗素子と浮遊容量(接続配線と第2電極との間)とによって積分回路
が構成されることが好ましい。仮に、接続配線と第2電極とが対向する領域に抵抗素子を
設けると、容量値が減少してしまう。そこで、両者が対向しない領域に抵抗素子を設ける
ことによって、効率的に保持容量を形成することが可能となる。
【0014】
また、前記第1電極は前記発光素子の陽極であり、前記第2電極は前記発光素子の陰極
であることが好ましい。この場合には、例えば、保持トランジスタをpチャネルのTFT
で構成し、駆動トランジスタをnチャネルのTFTで構成して、駆動トランジスタのソー
スに高電位側電源を供給し、そのドレインを発光素子の陽極に接続し、陰極に低電位側電
源を供給することが好ましい。
【0015】
また、上述した発光装置は、前記駆動トランジスタに電源を供給する電源線と、第1の
端面と第2の端面を有し、それらの間に前記複数のデータ線、前記保持トランジスタ、前
記発光素子、前記駆動トランジスタ、及び前記電源線が順に形成された基板と、前記複数
のデータ線、前記保持トランジスタ、前記発光素子、前記駆動トランジスタ、及び前記電
源線を覆うように前記基板と接続された封止部材と、を備えることが好ましい。
【0016】
一般に、発光素子は酸素と触れることにより性能が劣化する。このため、発光装置は外
気を遮断すると共に内部回路を保護することを目的として、封止構造を採用する。封止構
造には、缶封止、薄膜封止、基板張り合わせ封止等の手法が知られているが、いずれの場
合であっても実際の封止構造では外部のガスが封止内に侵入する。このため、発光素子は
基板の中央付近に形成することが好ましい。本発明によれば、基板には複数のデータ線→
保持トランジスタ→発光素子→駆動トランジスタ→電源線が順に形成されているので、発
光素子の配置を基板に中央付近にすることができる。これにより、発光装置の信頼性を向
上させることができる。
【0017】
また、上述した発光装置において、前記第1電極は前記発光素子の陽極であり、前記第
2電極は前記発光素子の陰極であり、前記陰極に低電位側電源を供給する第1の電源線と
、前記駆動トランジスタに高電位側電源を供給する第2の電源線と、第1の端面と第2の
端面を有し、それらの間に前記複数のデータ線、前記保持トランジスタ、前記発光素子、
前記駆動トランジスタ、前記第1の電源線及び前記第2の電源線が順に形成された基板と
、前記複数のデータ線、前記保持トランジスタ、前記発光素子、前記駆動トランジスタ、
前記第1の電源線及び前記第2の電源線を覆うように前記基板と接続された封止部材と、
を備えることが好ましい。陰極は酸素と反応し易いので、陰極はなるべく基板の中央部分
に配置されることが好ましい。本発明によれば、陰極は、保持トランジスタと対向しない
ように基板の中央に形成されるので、発光装置の信頼性をより一層向上させることができ
る。さらに、陰極に接続される第1の電源線は、第2の電源線よりも第2の端面から離れ
て中央寄りに配置されるので、陰極をより一層中央に配置することができる。これにより
、発光装置の信頼性を向上させることができる。
【0018】
次に、本発明に係る画像形成装置は、光線の照射によって画像が形成される感光体と、
前記感光体に光線を照射して前記画像を形成するヘッド部とを備え、上述した発光装置を
前記ヘッド部に用いることが好ましい。この発明によれば、ヘッド部の構成を簡易にでき
るので、画像形成装置の構成を簡易にして小型化・軽量化を図ることができる。
【0019】
次に、本発明に係る表示装置は、上述した発光装置を備えることが好ましい。この表示
装置は、複数の走査線と、複数のデータ線と、走査線とデータ線の交差に対応して配列さ
れた複数の画素回路を備えることが望ましい。この場合、表示装置を高輝度にでき、デー
タ線の駆動回路として駆動能力の低いものを用いることができ、さらに、消費電力を削減
することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。
<発光装置>
図1は、本発明の実施形態に係る発光装置の構成を示すブロック図である。この発光装
置は、画像形成装置としてのプリンタのヘッド部10として用いられる。ヘッド部10は
ライン型の光ヘッドであり、入力保護回路20、バッファ部30、128本のデータ線L
0〜L127、出力保護回路40、シフトレジスタ50および画素ブロックB1〜B40
を備える。ヘッド部10にはデータ信号D0〜D127の他、各種の制御信号および電源
信号が供給されており、入力保護回路20は、制御信号を供給する配線に設けられた複数
の入力ESD保護ユニットUa、および電源信号を供給する複数の電源間に設けられた電
源間保護ユニットUa’から構成されている。制御信号としては、シフトパルス信号SP
、クロック信号CLK、およびイネーブル信号ENが含まれる。バッファ部30は、複数
のインバータ31で構成され、データ線L0〜L127にデータ信号D0〜D127を供
給するドライバとして機能するとともに、各制御信号のインピーダンスを低インピーダン
ス変換してシフトレジスタ50に供給する。
【0021】
シフトパルス信号SPは主走査期間の開始でアクティブとなるパルスであり、イネーブ
ル信号ENは、シフトレジスタ50から出力される選択信号SEL1〜SEL40の出力
を許可する信号である。シフトレジスタ50には電源電圧信号VHHとVLLが供給される。
電源電圧信号VHHは配線50bを介して供給され、電源電圧信号VLLは配線50aを介し
て供給される。シフトレジスタ50はイネーブル信号ENがアクティブな状態で、シフト
パルス信号SPをクロック信号CLKに従ってシフトして、選択信号SEL1〜SEL4
0を順次出力する。各選択信号SEL1〜SEL40は主走査期間の1/40の期間でア
クティブとなる。なお、クロック信号CLKは配線50cを介してシフトレジスタ50に
供給される。
【0022】
選択信号SEL1〜SEL40によって第1〜第40画素ブロックB1〜B40が排他
的に順次選択される。このように主走査期間を複数の選択期間(書込期間)に分割して、
時分割駆動したのでデータ線L0〜L127の本数を削減することができる。第1〜第4
画素ブロックB1〜B40の各々は、各データ線L0〜L127に対応する128個の画
素回路Pを備える。これらの画素回路Pには電源電圧信号VDDELとVSSELが供給される。
高電位側の電源電圧信号VDDELは電源線Ldを介して供給される一方、低電位側の電源電
圧信号VSSELは電源線Lsを介して供給される。そして、各選択期間においてデータ線L
0〜L127を介して供給されるデータ信号D0〜D127が画素回路Pに取り込まれる
。なお、この例のデータ信号D0〜D127はOLED素子の点灯・消灯を指示する2値
の信号である。
【0023】
図2に入力保護回路20に用いる入力ESD保護ユニットUaの回路図を示し、図3に
出力保護ユニット40に用いる出力ESD保護ユニットUbの回路図を示す。入力ESD
保護ユニットUaと出力ESD保護ユニットUbは高電位側電源と低電位側電源との間に
ダイオードd1およびd2が直列に接続されており、さらに入力ESD保護ユニットUa
においては抵抗器Rが設けられている。なお、電源間保護ユニットUa’は、電源配線の
間に逆方向にダイオードを接続して構成される。データ線L0〜L127の入力端と出力
端の両方に静電放電対策用の保護回路を設けたのは、この例のヘッド部10がA4縦の印
刷サイズに対応するため、データ線L0〜L127の長さが約215mmと長いためであ
る。また、電源にも静電放電対策用の保護回路を設けたのも同様の理由による。さらに、
バッファ部30を設けたのは、入力ESD保護ユニットUaは抵抗器Rを備えるので、仮
に、バッファ部30を設けることなく外部から駆動すると、信号の遅延時間が増大するか
らである。
【0024】
図4に画素回路Pの回路図を示す。画素回路Pは、保持トランジスタ61、駆動トラン
ジスタ62およびOLED素子64を備える。保持トランジスタ61のゲートにはシフト
レジスタ50から選択信号SEL1〜SEL40のいずれかが供給され、そのソースはデ
ータ線L0〜L127のいずれかと接続され、データ信号D0〜D127のいずれかが供
給される。保持トランジスタ61のドレインと駆動トランジスタ62のゲートは接続配線
63によって接続されている。後述するように接続配線63には浮遊容量が付随しており
、この容量が保持容量Cとして作用する。保持容量Cには選択期間において2値の電圧が
書き込まれ、次の選択期間まで書き込まれた電圧が保持される。したがって、保持トラン
ジスタを選択信号SEL1〜SEL40により選択した期間においてデータ信号D0〜D
127がOLED素子64の点灯を指示する信号である期間のみOLED素子64が発光
することになる。
【0025】
駆動トランジスタ62のドレインには電源電圧VDDELが供給され、そのソースはOLE
D素子64の陽極が接続される。駆動トランジスタ62は、保持容量Cに書き込まれた電
圧に応じた駆動電流をOLED素子64に供給する。OLED素子64の陰極は電源電圧
VSSELが供給される。OLED素子64は駆動電流の電流値に応じた量の光を発光する。
本実施形態の画素回路Pでは、保持トランジスタ61をPチャネルのTFT(薄膜トラン
ジスタ)で構成し、駆動トランジスタ62をNチャネルのTFTで構成した。Pチャネル
のトランジスタは電流の吸い込みに優れているので、図5に示すように駆動電流の立上り
波形は急峻となり、立下り波形はなだらかになる。この結果、OLED素子64の低階調
時の階調特性が悪くなるが、ピーク輝度を高くすることができる。一般に感光体の感度は
低いため、ピーク輝度を高くすることは重要である。一方、OLED素子64の閾値電流
付近の発光量であれば、感光体の感度が極めて低いため画質に悪影響はない。従って、ピ
ーク輝度を優先して、保持トランジスタ61をPチャネルで構成して、駆動トランジスタ
62をNチャネルで構成することが望ましい。
【0026】
図6に画素ブロックとデータ線の配線構造を示す。この図に示すようにデータ線L0〜
L127は、X方向に沿って平行に配列されており、保持トランジスタ61、駆動トラン
ジスタ62、接続配線63、およびOLED素子64から構成される画素回路PはY方向
に配列される。各保持トランジスタ61のゲートは配線Laによって共通に接続され、シ
フトレジスタ50に接続されている。データ線L0〜L127は、ソース線を用いて形成
される。各保持トランジスタ61とデータ線L0〜L127との接続にはゲート線を用い
た接続配線60が用いられる。保持トランジスタ61と駆動トランジスタ62との間には
OLED素子64が設けられ、各OLED素子64は千鳥状に配列されている。このよう
にOLED素子64を千鳥状に配列したので、画素回路Pのピッチを狭くすることができ
、高解像度の画像を形成することが可能となる。
【0027】
図7は、図6に示すZ−Z’線の断面図である。駆動トランジスタ62は、SiO
主体とする下地保護層11を介して基板1の表面に設けられている。下地保護層11の上
層にはシリコン層621が形成される。このため、駆動トランジスタ62は、Nチャネル
型のトランジスタとなる。ゲート絶縁層12はシリコン層621を覆うように下地保護層
11の上層に設けられる。ゲート絶縁層12の上面のうちシリコン層621に対向する部
分にゲート電極623が設けられる。このゲート電極623を介してシリコン層621に
はV族元素がドーピングされ、ドレイン領域621a及びソース領域621cが形成され
る。ここで、V族元素がドーピングされていない領域がチャネル領域621bとなる。第
1層間絶縁層13はゲート電極623を覆うようにゲート絶縁層12の上層に形成される
。さらに、ドレイン電極622がゲート絶縁層12および第1層間絶縁層13にわたって
開孔するコンタクトホールを介してドレイン領域621aと接続される。一方、ソース電
極624はゲート電極623を挟んでドレイン電極622と対向する位置に設けられ、ゲ
ート絶縁層12および第1層間絶縁層13にわたって開孔するコンタクトホールを介して
ソース領域621cと接続される。第2層間絶縁層14がドレイン電極622およびソー
ス電極624を覆うように第1層間絶縁層13の上層に設けられる。
【0028】
また、保持トランジスタ61も同様に、シリコン層611と、ゲート絶縁層12と、ゲ
ート電極613と、第1層間絶縁層13と、第1のドレイン/ソース電極612と、第2
のドレイン/ソース電極614とを備える。但し、シリコン層611にはこのゲート電極
613を介してIII族元素がドーピングされ、第1のドレイン/ソース611aおよび第
2のドレイン/ソース領域611cが形成される。ここで、III族元素がドーピングされ
ていない領域がチャネル領域611bとなる。保持トランジスタ61は、Pチャネル型の
トランジスタとなる。
【0029】
さらに、駆動トランジスタ62のゲート電極623は接続配線63を介して保持トラン
ジスタ61の第1のドレイン/ソース電極612と接続されている。この例の接続配線6
3は、第1配線631と第2配線632によって構成されている(図6参照)。第1配線
631は、保持トランジスタ61の第1のドレイン/ソース電極612および第2のドレ
イン/ソース電極614、ならびに駆動トランジスタ62のドレイン電極622およびソ
ース電極624と同じ層にて形成された配線を用いて形成され、第2配線632は、ゲー
ト電極623および613と同じ層で形成された配線を用いて形成される。
【0030】
OLED素子64は、陽極641と、正孔を輸送可能な正孔輸送層642と、発光能を
有する有機EL物質を含む発光層643と、発光層643の上面に設けられている電子輸
送層644と、電子輸送層644の上面に設けられた陰極645とを備える。陽極641
は配線625aと配線625bを介して駆動トランジスタ62のソース電極624と接続
されている。また、第1層間絶縁層13の表面のうちOLED素子64が設けられている
以外の部分と陰極645との間には、合成樹脂などからなる隔壁15が設けられている。
また、隔壁15は、駆動トランジスタ62毎に設けられたOLED素子64間を隔てるよ
うに形成される。陽極641は、発光層60に対して正孔を供給する機能を有しており、
ITO(インジウム錫酸化物)や酸化インジウム・酸化亜鉛系アモルファス透明導電膜(
Indium Zinc Oxide :IZO(登録商標))等の透明導電材料が用いられる。陽極641
は上述した各材料の合金や積層したものをも含む。陰極645は、電子注入効率を高める
ために、低仕事関数の金属元素(例えば、アルカリ金属,アルカリ土類金属,マグネシウ
ム,希土類元素(Pmを除く)、アルミニウム)で構成される。また、陰極645は、光
反射性或いは不透明な導電材料であることが望ましい。本例では発光層643からの光を
陽極641側から取り出す構成(ボトムエミッション型)であるが、これを陰極645側
から取り出すように構成(トップエミッション型)してもよい。
【0031】
ここで、陰極645は、隔壁15の全体を覆うのではなく、その一部を覆うように形成
されている。具体的には、図6および図7に示す矢印Aの領域に陰極645が形成されて
おり、データ線L0〜L127および保持トランジスタ61の領域には形成されていない
。このように、データ線L0〜L127や保持トランジスタ61に陰極645が重ならな
いようにしたのは、浮遊容量の低減を図るためである。データ線L0〜L127は、保持
トランジスタ61の第1のドレイン/ソース電極612および第2のドレイン/ソース電
極614、ならびに駆動トランジスタ62のドレイン電極622およびソース電極624
と同じ製造工程で形成される。従って、仮に、陰極645が第2絶縁層14の全面を覆お
うとすれば、陰極645とデータ線L0〜L127との間に浮遊容量が発生する。本実施
形態の発光装置は、プリンタのヘッド部10として用いられるため、データ線L0〜L1
27の長さが長く、これに付随する浮遊容量は大きい。この浮遊容量によって、バッファ
部30から見た負荷が大きくなってしまう。そこで、データ線L0〜L127の領域には
陰極645を形成しないようにした。これにより、限られた選択期間中にデータ信号D0
〜D127を確実に書き込むことが可能になり、さらに、データ信号D0〜D127の遅
延時間が大幅に短縮される。
【0032】
一方、陰極645は接続配線63の一部と対向しているので、これらの間に浮遊容量が
発生する。この浮遊容量によって保持容量Cが形成される。選択期間には保持トランジス
タ61がオン状態となり、データ信号が保持容量Cに書き込まれる。そして、選択期間が
終了して保持トランジスタ61がオフ状態になっても保持容量Cにデータ信号の電圧が保
持される。これによって、駆動トランジスタ62は、ある選択期間が終了してから次の選
択期間が開始するまでの期間においても所定の電流をOLED素子64に供給することが
できる。なお、この例では、陰極645が接続配線63の一部と対向したが、両者をどこ
まで重ねるかは、保持期間の長さ等によって定まる保持容量Cの容量値による。このため
、陰極645を接続配線63の全部に対向させてもよい。
【0033】
なお、ノイズを除去する観点から接続配線63に抵抗素子を設けてもよい。この場合、
抵抗素子は、図6に示す範囲Bに設けることが望ましい。即ち、陰極645と対向しない
領域に抵抗素子を設ける。仮に、接続配線63と陰極645とが対向する領域Aに抵抗素
子を設けると、保持容量Cの容量値が減少してしまう。そこで、両者が対向しない領域に
抵抗素子を設けることによって、効率的に保持容量Cを形成することが可能となる。特に
、所定のパルス幅を持つ駆動信号を供給することにより駆動トランジスタ62の動作状態
を制御し、所定のパルス幅によりOLED素子64の発光輝度を制御するサブフレーム方
式あるいはパルス幅変調方式による駆動方式の場合には、本発明を用いて容量性の負荷を
低減させることにより、駆動信号が劣化せず所定の発光輝度にてOLED素子64を発光
させることができる。
【0034】
図17に、ヘッド部10の外観構成を示す。この例では、ヘッド部10(発光装置)は
、基板1とその上面に設けられた封止部材2を有する。図18は、線S−S’でヘッド部
10を切断した断面の一例を示す断面図である。この図に示す領域E1にはデータ線L0
〜L127が形成される。領域E2には低電位側の電源電圧信号VLLを供給する配線50
aが形成される。領域E3にはデータ線駆動回路50が形成される。領域E4には高電位
側の電源電圧信号VHHを供給する配線50bが形成される。
【0035】
図18に示すように、基板1は、第1の端面F1と第2の端面F2と備える。そして、
基板1の上面には、第1の端面F1から第2の端面F2までの間に、データ線駆動回路5
0、データ線L0〜L127、保持トランジスタ61、OLED素子64、駆動トランジ
スタ62、電源線Ld、及び電源線Lsが順に配置されている。また、封止部材2が、デ
ータ線駆動回路50、データ線L0〜L127、保持トランジスタ61、OLED素子6
4、駆動トランジスタ62、電源線Ld、及び電源線Lsを覆うように基板2と接続され
ている。図18に示すように、封止部材2は、プレート部2aとフレーム部2bとを有す
る。プレート部2aは基板1に設けられたOLED素子64等と対向する位置に設けられ
ている。フレーム部2bは、基板1と接着剤22を介して接合するフレーム部2bを有し
ている。また、基板1と封止部材2とはフレーム部2bのみにより接合されており、基板
1に設けられたOLED素子64とプレート部2bとの間に封止空間23が設けられてい
る。この空間には乾燥窒素等の不活性ガスや液体などが封入され、発光層60や陰極64
5などが酸素や水分により劣化するのが防止されている。また、封止空間23に乾燥剤な
どを配置してもよい。この例では、このように所謂缶封止を採用した。また、薄膜封止や
基板張り合わせ封止を採用してもよい。薄膜封止では、例えば、封止部材2として化学気
相成長法などにより形成した酸化珪素、窒化珪素などの薄膜をOLED素子64上に形成
すればよい。基板張り合わせ封止では、例えば、OLED素子64上に配した接着剤を介
して封止部材2としてのガラスなどの基板と基板1とを貼り合わせればよい。ここで、基
板1と封止部材2とは、隔壁15等の有機材料が形成されていない部分において接合され
る。このようにすることにより、酸素や水分などが外部から封止した空間へ侵入するのを
未然に防ぐことができる。
【0036】
OLED素子64の発光層643は導電性ポリマーやモノマーなどの発光材料を含んで
構成される。この発光材料は酸化され易く、酸素に触れると特性が劣化する性質がある。
また、陰極645は電子を注入するため仕事関数の小さい材料が選ばれる。そのような材
料は、例えば、カルシウム等を含んでおり、外部から侵入した水と反応して水酸化膜を作
り易い。水酸化膜が形成されると電子の注入に不都合が生じる。
【0037】
封止部材2は、外部の空気から内部の構成を保護するためのものであり、ガスを遮断す
る機能がある。しかしながら、缶封止や基板張り合わせ封止の場合には、封止部材2と基
板1の接合した接着剤から、わずかながらガスが内部に侵入する。また、薄膜封止の場合
には、封止部材2と基板1との接合面から、わずかながらガスが内部に侵入する。このた
め、ガスの影響を受け易いOLED素子64及び陰極641は、基板1の第1及び第2の
端面F1及びF2からなるべく離して配置することが望ましい。
【0038】
図18に示す配置では、OLED素子64が保持トランジスタ61と駆動トランジスタ
62の間に配置されていおり、更に、保持トランジスタ61と第1の端面F1との間には
データ線L0〜L127及びデータ線駆動回路50が配置され、駆動トランジスタ62と
第2の端面F2との間には、電源線Ld及びLsが配置される。従って、OLED素子6
4を基板1の中央付近に配置することができる。この結果、信頼性を向上させることがで
きる。
また、陰極645は、保持トランジスタ61及び領域E1〜E4には配置されないので
、第1の端面F1の側から侵入するガスの影響を受け難い。従って、陰極645の特性劣
化を低減して、信頼性を向上させることが可能となる。
【0039】
図19に、線S−S’でヘッド部10を切断した断面の他の例を示す。この例が、図1
8と相違するのは電源線Lsと電源線Ldとの配置が逆転している点である。即ち、陰極
645が接続される電源線Lsが電源線Ldよりも第2の端面F2から離れた位置に配置
される。この場合、電源線Ldと駆動トランジスタ62のドレイン電極622はゲート配
線を介して接続される。この配置によれば、第2の端面F2の側から侵入するガスの影響
を受け難い。従って、陰極645の特性劣化を低減して、信頼性を向上させることが可能
となる。
【0040】
<画像形成装置>
図8は、上述したヘッド部10を用いた画像形成装置の一例を示す縦断側面図である。
この画像形成装置は、同様な構成の4個の有機ELアレイ露光ヘッド10K、10C、1
0M、10Yを、対応する同様な構成である4個の感光体ドラム(像担持体)110K、
110C、110M、110Yの露光位置にそれぞれ配置したものであり、タンデム方式
の画像形成装置として構成されている。有機ELアレイ露光ヘッド10K、10C、10
M、10Yは上述したヘッド部10によって構成されている。
【0041】
図8に示すように、この画像形成装置は、駆動ローラ121と従動ローラ122が設け
られており、図示矢印方向へ循環駆動される中間転写ベルト120を備えている。この中
間転写ベルト120に対して所定間隔で配置された4個の像担持体としての外周面に感光
層を有する感光体110K、110C、110M、110Yが配置される。前記符号の後
に付加されたK、C、M、Yはそれぞれ黒、シアン、マゼンタ、イエローを意味し、それ
ぞれ黒、シアン、マゼンタ、イエロー用の感光体であることを示す。他の部材についても
同様である。感光体110K、110C、110M、110Yは、中間転写ベルト120
の駆動と同期して回転駆動される。
【0042】
各感光体110(K、C、M、Y)の周囲には、それぞれ感光体110(K、C、M、
Y)の外周面を一様に帯電させる帯電手段(コロナ帯電器)111(K、C、M、Y)と
、この帯電手段111(K、C、M、Y)により一様に帯電させられた外周面を感光体1
10(K、C、M、Y)の回転に同期して順次ライン走査する本発明の上記のような有機
ELアレイ露光ヘッド10(K、C、M、Y)が設けられている。
また、この有機ELアレイ露光ヘッド10(K、C、M、Y)で形成された静電潜像に
現像剤であるトナーを付与して可視像(トナー像)とする現像装置114(K、C、M、
Y)を有している。
【0043】
ここで、各有機ELアレイ露光ヘッド10(K、C、M、Y)は、有機ELアレイ露光
ヘッド10(K、C、M、Y)のアレイ方向が感光体ドラム110(K、C、M、Y)の
母線に沿うように設置される。そして、各有機ELアレイ露光ヘッド10(K、C、M、
Y)の発光エナルギーピーク波長と、感光体110(K、C、M、Y)の感度ピーク波長
とは略一致するように設定されている。
【0044】
現像装置114(K、C、M、Y)は、例えば、現像剤として非磁性一成分トナーを用
いるもので、その一成分現像剤を例えば供給ローラで現像ローラヘ搬送し、現像ローラ表
面に付着した現像剤の膜厚を規制ブレードで規制し、その現像ローラを感光体110(K
、C、M、Y)に接触あるいは押厚させることにより、感光体110(K、C、M、Y)
の電位レベルに応じて現像剤を付着させることによりトナー像として現像するものである

【0045】
このような4色の単色トナー像形成ステーションにより形成された黒、シアン、マゼン
タ、イエローの各トナー像は、中間転写ベルト120上に順次一次転写され、中間転写ベ
ルト120上で順次重ね合わされてフルカラーとなる。ピックアップローラ103によっ
て、給紙カセット101から1枚ずつ給送された記録媒体102は、二次転写ローラ12
6に送られる。中間転写ベルト120上のトナー像は、二次転写ローラ126において用
紙等の記録媒体102に二次転写され、定着部である定着ローラ対127を通ることで記
録媒体102上に定着される。この後、記録媒体102は、排紙ローラ対128によって
、装置上部に形成された排紙トレイ上へ排出される。
このように、図8の画像形成装置は、書き込み手段として有機ELアレイを用いている
ので、レーザ走査光学系を用いた場合よりも、装置の小型化を図ることができる。
【0046】
次に、本発明に係る画像形成装置に係る他の実施の形態について説明する。図9は、画
像形成装置の縦断側面図である。図9において、画像形成装置には主要構成部材として、
ロータリ構成の現像装置161、像担持体として機能する感光体ドラム165、有機EL
アレイが設けられている露光ヘッド167、中間転写ベルト169、用紙搬送路174、
定着器の加熱ローラ172、給紙トレイ178が設けられている。露光ヘッド167は上
述したヘッド部10によって構成されている。
現像装置161は、現像ロータリ161aが軸161bを中心として反時計回り方向に
回転する。現像ロータリ161aの内部は4分割されており、それぞれイエロー(Y)、
シアン(C)、マゼンタ(M)、ブラック(K)の4色の像形成ユニットが設けられてい
る。現像ローラ162a〜162dおよびトナー供給ローラ163a〜163は、前記4
色の各像形成ユニットに各々配置されている。また、規制フレード164a〜164dに
よってトナーは所定の厚さに規制される。
【0047】
感光体ドラム165は、帯電器168によって帯電され、図示を省略した駆動モータ、
例えばステップモータにより現像ローラ162aとは逆方向に駆動される。中間転写ベル
ト169は、従動ローラ170bと駆動ローラ170a間に張架されており、駆動ローラ
170aが前記感光体ドラム165の駆動モータに連結されて、中間転写ベルトに動力を
伝達している。当該駆動モータの駆動により、中間転写ベルト169の駆動ローラ170
aは感光体ドラム165とは逆方向に回動される。
用紙搬送路174には、複数の搬送ローラと排紙ローラ対176などが設けられており
、用紙を搬送する。中間転写ベルト169に担持されている片面の画像(トナー像)が、
二次転写ローラ171の位置で用紙の片面に転写される。二次転写ローラ171は、クラ
ッチにより中間転写ベルト169に離当接され、クラッチオンで中間転写ベルト169に
当接されて用紙に画像が転写される。
【0048】
上記のようにして画像が転写された用紙は、次に、定着ヒータを有する定着器で定着処
理がなされる。定着器には、加熱ローラ172、加圧ローラ173が設けられている。定
着処理後の用紙は、排紙ローラ対176に引き込まれて矢視F方向に進行する。この状態
から排紙ローラ対176が逆方向に回転すると、用紙は方向を反転して両面プリント用搬
送路175を矢視G方向に進行する。用紙は、給紙トレイ178から、ピックアップロー
ラ179によって1枚ずつ取り出されるようになっている。
用紙搬送路において、搬送ローラを駆動する駆動モータは、例えば低速のブラシレスモ
ークが用いられる。また、中間転写ベルト169は色ずれ補正などが必要となるのでステ
ップモータが用いられている。これらの各モータは、図示を省略している制御手段からの
信号により制御される。
【0049】
図の状態で、イエロー(Y)の静電潜像が感光体ドラム165に形成され、現像ローラ
128aに高電圧が印加されることにより、感光体ドラム165にはイエローの画像が形
成される。イエローの裏側および表側の画像がすべて中間転写ベルト169に担持される
と、現像ロータリ161aが90度回転する。
中間転写ベルト169は1回転して感光体ドラム165の位置に戻る。次にシアン(C
)の2面の画像が感光体ドラム165に形成され、この画像が中間転写ベルト169に担
持されているイエローの画像に重ねて担持される。以下、同様にして現像ロータリ161
の90度回転、中間転写ベルト169への画像担持後の1回転処理が繰り返される。
【0050】
4色のカラー画像担持には中間転写ベルト169は4回転して、その後に更に回転位置
が制御されて二次転写ローラ171の位置で用紙に画像を転写する。給紙トレー178か
ら給紙された用紙を搬送路174で搬送し、二次転写ローラ171の位置で用紙の片面に
前記カラー画像を転写する。片面に画像が転写された用紙は前記のように排紙ローラ対1
76で反転されて、搬送径路で待機している。その後、用紙は適宜のタイミングで二次転
写ローラ171の位置に搬送されて、他面に前記カラー画像が転写される。ハウジング1
80には、排気ファン181が設けられている。
【0051】
<表示装置>
次に、上述した発光装置10を表示装置に適用する場合について説明する。
図10は、表示装置の構成を示すブロック図である。この表示装置は、画素領域AA、
走査線駆動回路100、データ線駆動回路200、制御回路300および電源回路500
を備える。このうち、画素領域AAには、X方向と平行にm本の走査線101が形成され
る。また、X方向と直交するY方向と平行にn本のデータ線103が形成される。そして
、走査線101とデータ線103との各交差に対応して画素回路Pが各々設けられている
。各画素回路400には、電源電圧VDDELが電源線105を介して供給される。画素回路
Pの回路構成は、上述した図4に示すものと同様である。なお、画素回路Pには、選択信
号SEL1〜SEL40の替わりに走査信号Y1〜Ymが供給され、データ信号D0〜D
127の替わりに階調信号X1〜Xnが供給される。
【0052】
走査線駆動回路100は、複数の走査線101を順次選択するための走査信号Y1、Y
2、Y3、…、Ymを生成する。走査信号Y1〜YmはY転送開始パルスDYをYクロッ
ク信号YCLKに同期して順次転送することにより生成される。
データ線駆動回路200は、出力階調データDoutに基づいて、選択された走査線1
01に位置する画素回路400の各々に対し階調信号X1、X2、X3、…、Xnを供給
する。この例において、階調信号X1〜Xnは階調輝度を指示する電圧信号として与えら
れる。
【0053】
制御回路300は、Yクロック信号YCLK、Xクロック信号XCLK、X転送開始パ
ルスDY、Y転送開始パルスDY等の各種の制御信号を生成してこれらを走査線駆動回路
100およびデータ線駆動回路200へ出力する。また、制御回路300は、外部から供
給される入力階調データDinにガンマ補正等の画像処理を施して出力階調データDou
tを生成する。
図11に画素回路Pの配線構造を示す。この図に示すように保持トランジスタ61は、
右下隅に形成され、駆動トランジスタ62は右上隅に形成される。そして、保持容量Cは
、電源線105とゲート配線の間に形成される。この例では、駆動トランジスタ62のド
レイン電極とOLED素子64の陽極641が一体に形成されている。
【0054】
上記配線構造において、OLED素子64の陰極645は、以下の工程で形成される。
第1工程では、図12に示すマスクM1を用いて陰極645を蒸着する。第2工程では、
図13に示すマスクM2を用いて陰極645を蒸着する。このように2段階の蒸着工程に
よって陰極645を形成したのはマスクM1およびM2の形を単純化すると共に、それら
の位置決めを簡易にするためである。この結果、図14に示すように陰極645は保持ト
ランジスタ61を除いた領域に形成される。これにより、保持トランジスタ61の浮遊容
量を削減して、データ線駆動回路200から見た負荷を低減することができる。
【0055】
この例では、データ線103は陰極645が覆われている。これは、各画素回路Pの陰
極645の電位を同一にするためである。但し、図15に示すようにデータ線103の引
き出し部分103aについては、陰極645を重ねないようにしてもよい。また、図16
に示すようにデータ線103に沿って、陰極645が重ならない領域Kを設けてもよい。
図15および図16に示すようにデータ線103の一部に陰極645が重ならない構造を
採用することにより、データ線駆動回路200から見た負荷をより一層低減することがで
きる。
【0056】
なお、表示装置を用いた電子機器としては、携帯電話機、パーソナルコンピュータ、携
帯情報端末、デジタルスチルカメラ、テレビジョンモニタ、ビューファインダ型、モニタ
直視型のビデオテープレコーダ、カーナビゲーション装置、ページャ、電子手帳、電卓、
ワードプロセッサ、ワークステーション、テレビ電話、POS端末、タッチパネルを備え
た機器等などが挙げられる。そして、これらの各種電子機器の表示部として、前述した表
示装置が適用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0057】
【図1】本発明の発光装置の構成を示すブロック図である。
【図2】同装置の入力ESD保護ユニットを示す回路図である。
【図3】同装置の出力ESD保護ユニットを示す回路図である。
【図4】同装置の画素回路の回路図である。
【図5】データ信号と駆動電流の関係を示す波形図である。
【図6】画素ブロックとデータ線の配線構造を示す平面図である。
【図7】図6に示すZ−Z’線の断面図である。
【図8】画像形成装置の一例を示す縦断側面図である。
【図9】画像形成装置の他の例を示す縦断側面図である。
【図10】表示装置の構成を示すブロック図である。
【図11】同装置における画素回路Pの配線構造を示す平面図である。
【図12】同装置の陰極を形成する第1工程を説明する説明図である。
【図13】同装置の陰極を形成する第2工程を説明する説明図である。
【図14】陰極の配置の一例を示す説明図である。
【図15】陰極の配置における他の例を示す説明図である。
【図16】陰極の配置における他の例を示す説明図である。
【図17】発光装置の外観構成を示す斜視図である。
【図18】同装置を線S-S’で切断した断面の一例を示す断面図である。
【図19】同装置を線S-S’で切断した断面の他の例を示す断面図である。
【符号の説明】
【0058】
10…発光装置(ヘッド部)、103…データ線、P…画素回路、645…陰極(第1
電極)、641…陽極(第2電極)、61…保持トランジスタ、62…駆動トランジスタ
、63…接続配線、64…OLED素子(発光素子)、110Y,110M,110C,
110K…感光体。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のデータ線と、
複数の画素回路とを備え、
前記複数の画素回路の各々は、
第1電極と第2電極を有し、駆動電流の量に応じた大きさの光を発光する発光素子と、
前記第1電極に前記駆動電流を供給する駆動トランジスタと、
前記データ線を介して供給される駆動信号を前記駆動トランジスタに供給する保持トラ
ンジスタと、
前記駆動トランジスタと前記保持トランジスタとを接続する接続配線とを備え、
前記第2電極と前記データ線の一部または全部とが互いに対向しないように異なる領域
に形成したことを特徴とする発光装置。
【請求項2】
複数のデータ線と、
複数の画素回路とを備え、
前記複数の画素回路の各々は、
第1電極と第2電極を有し、駆動電流の量に応じた大きさの光を発光する発光素子と、
前記第1電極に前記駆動電流を供給する駆動トランジスタと、
前記データ線を介して供給される駆動信号を前記駆動トランジスタに供給する保持トラ
ンジスタと、
前記駆動トランジスタと前記保持トランジスタとを接続する接続配線とを備え、
前記第2電極と前記保持トランジスタとが互いに対向しないように異なる領域に形成し
たことを特徴とする発光装置。
【請求項3】
前記第2電極を前記接続配線の一部または全部と対向するように形成したことを特徴と
する請求項1または2に記載の発光装置。
【請求項4】
前記接続配線は、その一部に抵抗素子が形成され、
前記第2電極を前記接続配線の一部と対向し、前記抵抗素子と対向しないように形成し
たことを特徴とする請求項3に記載の発光装置。
【請求項5】
前記第1電極は前記発光素子の陽極であり、前記第2電極は前記発光素子の陰極である
ことを特徴とする発光装置。
【請求項6】
前記駆動トランジスタに電源を供給する電源線と、
第1の端面と第2の端面を有し、それらの間に前記複数のデータ線、前記保持トランジ
スタ、前記発光素子、前記駆動トランジスタ、及び前記電源線が順に形成された基板と、
前記複数のデータ線、前記保持トランジスタ、前記発光素子、前記駆動トランジスタ、
及び前記電源線を覆うように前記基板と接続された封止部材と、
を備えることを特徴とする請求項1乃至5のういちいずれか1項に記載の発光装置。
【請求項7】
前記第1電極は前記発光素子の陽極であり、前記第2電極は前記発光素子の陰極であり

前記陰極に低電位側電源を供給する第1の電源線と、
前記駆動トランジスタに高電位側電源を供給する第2の電源線と、
第1の端面と第2の端面を有し、それらの間に前記複数のデータ線、前記保持トランジ
スタ、前記発光素子、前記駆動トランジスタ、前記第1の電源線及び前記第2の電源線が
順に形成された基板と、
前記複数のデータ線、前記保持トランジスタ、前記発光素子、前記駆動トランジスタ、
前記第1の電源線及び前記第2の電源線を覆うように前記基板と接続された封止部材と、
を備えることを特徴とする請求項1乃至4のういちいずれか1項に記載の発光装置。
【請求項8】
光線の照射によって画像が形成される感光体と、
前記感光体に光線を照射して前記画像を形成するヘッド部とを備え、
請求項1乃至7のうちいずれか1項に記載の発光装置を前記ヘッド部に用いたことを特
徴とする画像形成装置。
【請求項9】
請求項1乃至7のうちいずれか1項に記載の発光装置を備えた表示装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【公開番号】特開2006−66871(P2006−66871A)
【公開日】平成18年3月9日(2006.3.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−50323(P2005−50323)
【出願日】平成17年2月25日(2005.2.25)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】