説明

発光装置、発光装置の製造方法および電子機器

【課題】導電膜層における亀裂や断線等の欠陥を防止することが可能な、発光装置を提供する。
【解決手段】スイッチング素子124と画素電極23との間に形成された平坦化膜84と、平坦化膜84に形成されスイッチング素子124と画素電極23とを電気的接続するためのコンタクトホール70と、平坦化膜84の表面からコンタクトホール70の内面にかけて形成された画素電極23と、を備えた発光装置であって、コンタクトホール70の内面72が、階段状に形成されている。同様に、有機隔壁21の開口部20の内面22も、階段状に形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発光装置、発光装置の製造方法および電子機器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、ノートパソコン、携帯電話機、電子手帳等の電子機器において、情報を表示する手段として有機エレクトロルミネッセンス(以下有機ELと称す)素子を画素に対応させて複数備える有機EL装置等といった表示装置が提案されている。
【0003】
図7は、従来技術に係る有機EL装置であり、図2のA−A´線に相当する部分における断面図である。図7に示す有機EL装置は、複数の発光素子3をマトリクス状に整列配置したものである。その発光素子3は、陽極となる画素電極23と、陰極となる共通電極50との間に、有機EL材料からなる発光層60を挟持して構成されている。その発光層60の形成領域の周囲には、感光性樹脂材料からなる隔壁21が形成されている。その隔壁21には、画素電極23を露出させる開口部20が形成されている。その開口部20の内面および隔壁21の表面を覆うように、共通電極50が形成されている。
隔壁21の開口部20は、フォトリソグラフィ技術を利用して形成される。
【0004】
また有機EL装置は、画素電極23への通電を制御するスイッチング素子124を備えている。そのスイッチング素子124と画素電極23との間には、感光性樹脂材料からなる平坦化膜84が設けられている。その平坦化膜84には、スイッチング素子124のドレイン電極44を露出させるコンタクトホール70が形成されている。そのコンタクトホール70の内面および平坦化膜84の表面を覆うように、画素電極23が形成されている。
平坦化膜84のコンタクトホール70も、フォトリソグラフィ技術を利用して形成される。この場合、コンタクトホール70の内面72は完全な平坦面とはならず、平坦化膜84の厚さ方向の封止基板30側は凸状曲面72aとなり、厚さ方向の素子基板2側は凹状曲面72bとなる。なお、上述した隔壁21の開口部20の内面22も同様の形状となる。
【特許文献1】特開2004−342885号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述した有機EL装置では、平坦化膜84を例えば1μm以上に厚膜化する必要があり、コンタクトホール70の深さ方向に大きな段差が生じる。そのため、コンタクトホール70の内面72には、垂直面に近い部分72cが形成される。この略垂直部分72cに画素電極23が形成されると、その膜厚が極端に薄くなるので、画素電極23に亀裂や断線等の欠陥が発生しやすくなるという問題がある。
この問題は、隔壁21の開口部20の内面22に共通電極50を形成する場合についても同様である。
【0006】
本発明は、上記問題点を解決するためになされたものであって、導電膜層における亀裂や断線等の欠陥を防止することが可能な発光装置の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、本発明に係る発光装置は、貫通孔が形成された有機膜層と、前記有機膜層の上面から前記貫通孔の内面にかけて形成された導電膜層と、を備えた発光装置であって、前記貫通孔の内面が、階段状に形成されていることを特徴とする。
この構成によれば、貫通孔の深さ方向の大きな段差が、複数の小さな段差に分割されるので、貫通孔の内面に垂直面に近い部分が形成されにくくなる。これにより、貫通孔の内面(厳密には、内面に直接接触していない場合も含む)に導電膜層を形成しても、その膜厚が極端に薄くなることはなくなり、導電膜層に亀裂や断線等の欠陥が発生するのを防止することができる。
【0008】
また前記発光装置は、発光部に通電する画素電極と、前記画素電極への通電を制御するスイッチング素子とを備え、前記有機膜層は、前記スイッチング素子と前記画素電極との間に形成された平坦化膜であり、前記貫通孔は、前記スイッチング素子と前記画素電極とを電気的接続するためのコンタクトホールであってもよい。
この構成によれば、平坦化膜が厚く形成されても、コンタクトホールの内面に形成される導電膜層に亀裂や断線等の欠陥が発生するのを防止することができる。
【0009】
また前記発光装置は、発光部を備え、前記有機膜層は、前記発光部の周囲に形成された隔壁であり、前記貫通孔は、前記発光部の形成領域を区画する開口部であってもよい。
この構成によれば、隔壁が厚く形成されても、開口部の内面に形成される導電膜層に亀裂や断線等の欠陥が発生するのを防止することができる。
【0010】
また前記有機膜層は、感光性材料からなることが望ましい。
この構成によれば、有機膜層の露光条件を調整することにより、貫通孔の内面を階段状に形成することができる。
【0011】
一方、本発明に係る発光装置の製造方法は、貫通孔が形成された感光性材料からなる有機膜層と、前記有機膜層の上面から前記貫通孔の内面にかけて形成された導電膜層と、を備えた発光装置の製造方法であって、マスクを用いて前記有機膜層を露光し、前記貫通孔を形成する工程を有し、前記マスクとして、前記貫通孔の内面に対応する領域が中間調で描画されたものを用いることにより、前記貫通孔の内面を階段状に形成することを特徴とする。
この構成によれば、製造プロセスを増加させることなく、貫通孔の内面を階段状に形成することができる。
【0012】
また前記マスクは、前記貫通孔の内面の下端部に対応する領域が、連続的に変化する中間調で描画されていることが望ましい。
この構成によれば、貫通孔の内面の下端部を傾斜状に形成することができる。
【0013】
一方、本発明に係る電子機器は、上述した発光装置を備えたことを特徴とする。
この構成によれば、導電膜層に亀裂や断線等の欠陥が発生するのを防止することが可能な発光装置を備えているので、信頼性に優れた電子機器を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照しつつ説明する。なお、以下で参照する各図面においては、理解を容易にするために、各構成要素の寸法等を適宜変更して表示している。
【0015】
(等価回路)
図1は、上記有機EL装置1の等価回路を示している。有機EL装置は、複数の走査線131と、走査線131に対して交差する方向に延びる複数の信号線132と、信号線に並列に延びる複数の電源線133とを備えている。また、走査線131及び信号線132の各交点に画素領域Aが形成されている。信号線132には、例えば、シフトレジスタ、レベルシフタ、ビデオライン及びアナログスイッチを含むデータ側駆動回路103が接続されている。また、走査線131にはシフトレジスタ及びレベルシフタを含む走査側駆動回路104が接続されている。
【0016】
画素領域Aには走査線131を介して走査信号がゲート電極に供給されるスイッチング用の薄膜トランジスタ123と、このスイッチング用の薄膜トランジスタ123を介して信号線132から供給される画像信号を保持する保持容量135と、保持容量135によって保持された画像信号がゲート電極に供給される駆動用の薄膜トランジスタ124と、この駆動用の薄膜トランジスタ124を介して電源線133に電気的に接続したときに電源線133から駆動電流が流れ込む画素電極(陽極)23と、画素電極23と陰極50との間に挟み込まれる有機機能層110とが設けられている。有機機能層110は、有機EL素子としての発光層を含む。
【0017】
画素領域Aでは走査線131が駆動されてスイッチング用の薄膜トランジスタ123がオンとなると、そのときの信号線132の電位が保持容量135に保持され、この保持容量135の状態に応じて駆動用の薄膜トランジスタ124の導通状態が決まる。また、駆動用の薄膜トランジスタ124のチャネルを介して電源線133から画素電極23に電流が流れ、さらに有機機能層110を通じて陰極50に電流が流れる。そして、このときの電流量に応じて有機機能層110が発光するようになっている。
【0018】
(平面構造、断面構造)
図2および図3は、実施形態に係る発光装置の説明図である。なお図2は平面図であり、図3は図2のA−A´線における断面図である。なお、以下にはボトムエミッション型の有機EL装置を例にして説明するが、本発明をトップエミッション型の有機EL装置に適用することも可能である。
【0019】
図3に示すボトムエミッション型の有機EL装置では、発光層60における発光光を素子基板2側から取り出すので、素子基板2としては、ガラスや石英、樹脂(プラスチック、プラスチックフィルム)等の透明基板を用いることが可能であり、特にガラス基板が好適に用いられる。
【0020】
素子基板2上には、上述した駆動用の薄膜トランジスタ(駆動用TFT)124などを含む駆動回路部5が形成されている。なお、駆動回路を備えた半導体素子(ICチップ)を素子基板2に実装して、有機EL装置を構成することも可能である。
【0021】
駆動回路部5の表面には、駆動用TFT124やソース電極43、ドレイン電極44などによる表面の凹凸を緩和するため、平坦化膜84が形成されている。この平坦化膜84は、感光性、絶縁性および耐熱性を備えたアクリル系やポリイミド系等の樹脂材料を主体として、例えば厚さ2.0μm程度に形成されている。
【0022】
平坦化膜84の上面には、画素電極23が形成されている。画素電極23は、ITO(インジウム錫酸化物)等の透明導電材料によって形成されている。図2に示すように、画素電極23は発光素子3の形成領域よりも広く形成され、発光層の形成において均一化が図られている。
また発光素子3の形成領域に隣接して、コンタクトホール70が形成されている。図3に示すように、コンタクトホール70は、平坦化膜84に形成された貫通孔である。そのコンタクトホール70の内面72に画素電極23が延設され、コンタクトホール70の中央貫通部73において、画素電極23と駆動用TFT124のドレイン電極44とが電気的接続されている。
【0023】
図2に示すように、画素電極23の周囲には、ポリイミド等の有機絶縁材料からなる有機隔壁21が形成されている。図3に示すように、この有機隔壁21には、画素電極23を露出させる開口部(貫通孔)20が形成されている。その開口部20の内側に、後述する発光層60が形成されている。また有機隔壁21の表面から開口部20の内面22および発光層60の表面にかけて、後述する共通電極50が形成されている。このように、開口部20の内側に複数の機能膜が積層形成されて、後述する発光素子3が構成されている。すなわち、有機隔壁21の開口部20により、発光部の形成領域が区画されている。
【0024】
上述した平坦化膜84のコンタクトホール70の内面72、および有機隔壁21の開口部20の内面22は、いずれも階段状に形成されている。以下には、平坦化膜84のコンタクトホール70の内面72の形状を例にして説明するが、有機隔壁21の開口部20の内面22の形状についても同様である。また本実施形態では、コンタクトホール70の内面72を2段階に形成した場合を例に説明するが、3段階以上に形成することも可能である。
【0025】
図4は、コンタクトホールの内面の拡大図である。コンタクトホール70の内面は主に、下段傾斜部74、水平部76および上段傾斜部78で構成されている。水平部76は、平坦化膜84の下層部を、コンタクトホール70の中央に向かって、ドレイン電極44の表面上に延設した部分である。水平部76の表面は、素子基板(不図示)の表面と略平行の水平面になっている。この水平部76の膜厚hは、平坦化膜84の膜厚をHとして、H/2以下に形成されていることが望ましい。水平部76の膜厚hがH/2を超えると、下段傾斜部74の形成が困難になるからである。また水平部76の幅Wは、0.1μm以上1.0μm以下に形成されていることが望ましい。水平部76の幅Wが1.0μmより広くなると、コンタクトホール70の開口面積が小さくなる。これにより、画素電極とドレイン電極44との接触面積が小さくなって、両者間の電気的接続の信頼性が低下するからである。なお有機隔壁の開口部の場合には、水平部76の幅Wが1.0μmより広くなると、発光素子の開口率が低下することになる。
【0026】
また下段傾斜部74は、水平部76におけるコンタクトホール70の内側の端部と、ドレイン電極44の表面とを結ぶ部分である。この下段傾斜部74の表面は平坦面であり、素子基板の表面と所定角度で交差する傾斜面となっている。下段傾斜部74の表面の傾斜角度θは、20°未満であることが望ましい。20°以上になると、下段傾斜部74の上面に形成される画素電極の膜厚が薄くなるので、亀裂や断線などの欠陥が発生しやすくなり信頼性が低下するからである。なお有機隔壁の開口部の場合には、水平部76の幅Wが1.0μmより広くなると、発光素子の開口率が低下することになる。
また上段傾斜部78は、水平部76におけるコンタクトホール70の外側の端部と、平坦化膜84の表面とを結ぶ部分である。この上段傾斜部78は、平坦化膜84の表面側が凸状曲面78aに形成され、水平部76側が凹状曲面78bに形成されている。
【0027】
(発光素子)
図3に示すように、発光素子3は、少なくとも陽極として機能する画素電極23と、有機EL物質からなる発光層60と、陰極として機能する共通電極50とを積層して構成されている。この発光素子3により、画像表示単位となるサブ画素が構成されている。また図2に示すように、異なる色光の発光素子(緑色発光素子3G、青色発光素子3B、赤色発光素子3R)の組み合わせにより、1個の画素が構成されている。
【0028】
なお、図3に示す画素電極23と発光層60との間に、画素電極23から供給された正孔を発光層60に注入/輸送する正孔注入層を設けてもよい。正孔注入層の形成材料としては、特に3,4−ポリエチレンジオキシチオフェン/ポリスチレンスルフォン酸(PEDOT/PSS)の分散液が好適に用いられる。具体的には、分散媒としてのポリスチレンスルフォン酸に、3,4−ポリエチレンジオキシチオフェンを分散させ、さらにこれを水に分散させたものが好適に用いられる。
なお、正孔注入層の形成材料としては、前記のものに限定されることなく種々のものが使用可能である。例えば、ポリスチレン、ポリピロール、ポリアニリン、ポリアセチレンやその誘導体などを、適宜な分散媒、例えば前記のポリスチレンスルフォン酸に分散させたものなどが使用可能である。
【0029】
発光層60を形成するための材料としては、蛍光あるいは燐光を発光することが可能な公知の発光材料が用いられる。具体的には、(ポリ)フルオレン誘導体(PF)、(ポリ)パラフェニレンビニレン誘導体(PPV)、ポリフェニレン誘導体(PP)、ポリパラフェニレン誘導体(PPP)、ポリビニルカルバゾール(PVK)、ポリチオフェン誘導体、ポリメチルフェニルシラン(PMPS)などのポリシラン系などが好適に用いられる。また、これらの高分子材料に、ペリレン系色素、クマリン系色素、ローダミン系色素などの高分子系材料や、ルブレン、ペリレン、9,10−ジフェニルアントラセン、テトラフェニルブタジエン、ナイルレッド、クマリン6、キナクリドン等の低分子材料をドープして用いることもできる。
【0030】
陰極として機能する共通電極50は、主陰極および補助陰極を順に積層して構成されている。主陰極として、仕事関数が3.0eV以下のCaやMg、LiF等の材料を採用することが望ましい。これにより、主陰極に電子注入層としての機能が付与されるので、低電圧で発光層を発光させることができる。また補助陰極は、陰極全体の導電性を高めるとともに、主陰極を酸素や水分等から保護する機能を有している。そのため補助陰極として、導電性に優れたAlやAu、Ag等の金属材料を採用することが望ましい。
【0031】
共通電極50の表面には、SiO等からなる無機封止膜41が形成されている。さらに接着層40を介して、ガラス等の透明材料からなる封止基板30が貼り合わされている。この無機封止膜41により、封止基板30側から発光素子3への水分や酸素等の浸入が防止されている。なお、共通電極50の全体を覆う封止キャップを素子基板2の周縁部に固着し、その封止キャップの内側に水分や酸素等を吸収するゲッター剤を配置してもよい。
【0032】
上述した有機EL装置では、外部から供給された画像信号が、駆動用TFT124により所定のタイミングで画素電極23に印加される。そして、その画素電極23から注入された正孔と、共通電極50から注入された電子とが、発光層60で再結合して所定波長の光が放出される。なお発光層60は画素電極23との接触領域において正孔の注入を受けるので、発光層60のうち画素電極23との接触領域が発光部になる。その発光部から画素電極23側に放出された光は、透明材料からなる素子基板2を透過して外部に取り出される。また共通電極50側に放出された光は、金属材料等からなる共通電極50により反射されて、素子基板2から外部に取り出される。これにより、素子基板2側において画像表示が行われるようになっている。
【0033】
なおトップエミッション型の有機EL装置では、平坦化膜84と画素電極23との間に、反射膜および無機絶縁膜を形成する。この反射膜は、AgやAl等の高反射率の金属材料で構成することが望ましい。なお、画素電極23を高反射率の金属材料で形成することにより、画素電極23に反射膜の機能を付加することも可能である。逆にトップエミッション型の有機EL装置では、共通電極50を透明導電性材料で構成する。これにより、発光部から共通電極50側に放出された光は、透明材料からなる封止基板30を透過して外部に取り出される。また画素電極23側に放出された光は、反射膜により反射され、封止基板30から外部に取り出される。これにより、封止基板30側において画像表示を行うことが可能になる。
【0034】
(発光装置の製造方法)
次に、本実施形態に係る発光装置の製造方法について説明する。
図5は、実施形態に係る発光装置の製造方法の説明図であり、図2のA−A´線に相当する部分における断面図である。以下には、図5を用いて平坦化膜のコンタクトホール70の形成方法を主として説明するが、有機隔壁の開口部についても同様に形成することが可能である。
【0035】
平坦化膜のコンタクトホール70は、フォトリソグラフィ技術を利用して形成する。まず、駆動用TFTが形成された素子基板の表面に、平坦化膜の構成材料である感光性樹脂材料の被膜83を形成する。本実施形態ではポジ型の感光性樹脂材料を採用した場合を例にして説明するが、ネガ型の感光性樹脂材料を採用することも可能である。この樹脂膜83の形成には、樹脂材料の液状体を塗布して硬化させる液相プロセスを利用することが望ましい。なお樹脂材料の液状体の塗布には、スピンコート法やスプレーコート法、ディッピング法等を利用することが可能である。
【0036】
次に、フォトマスク90を用いて樹脂膜83を露光する。このフォトマスク90には、コンタクトホール70に対応したパターンが描画されている。本実施形態ではポジ型の感光性樹脂材料で樹脂膜83を形成したので、フォトマスク90は、コンタクトホール70の中央貫通部73の形成領域に対応する部分(貫通部形成部分)93が光透過性を示し、コンタクトホール70の非形成領域79に対応する部分(ホール非形成部分)99が遮光性を示すように形成されている。具体的には、フォトマスクの基体をガラス等の光透過性材料で構成し、ホール非形成部分99のみに金属クロム等の遮光性薄膜が形成されている。
【0037】
このフォトマスク90は、コンタクトホール70の内面における水平部76の形成領域に対応する部分(水平部形成部分)96が、中間調で描画されている。すなわち、フォトマスク90の水平部形成部分96は、光透過性と遮光性との中間的性質を示している。具体的には、遮光性薄膜に複数のスリット開口を設けることにより、限定的な光透過性が付与されている。なおスリット開口を設ける代わりに、ドット開口等を設けてもよい。水平部形成部分96は、全体が略一様な中間調で描画されている。具体的には、遮光性薄膜に略同一幅のスリットが略同一間隔で形成されている。なおスリットの幅や間隔、本数等を調整することにより、光透過性と遮光性との割合を調整することが可能である。
【0038】
またフォトマスク90は、コンタクトホール70の内面における下段傾斜部74の形成領域に対応する部分(下段傾斜部形成部分)94も、中間調で描画されている。すなわち下段傾斜部形成部分94でも、遮光性薄膜に複数のスリットが設けられている。ただし下段傾斜部形成部分94は、連続的に変化する中間調で描画されている。具体的には、水平部形成部分96から貫通部形成部分93にかけて、スリットの幅が広くなるか、またはスリットの間隔が狭くなっている。これにより、水平部形成部分96から貫通部形成部分93にかけて、光透過性が増加するようになっている。
またフォトマスク90では、コンタクトホール70の内面における上段傾斜部78の形成領域に対応する部分(上段傾斜部形成部分)98も、下段傾斜部形成部分94と同様に、連続的に変化する中間調で描画されている。
【0039】
このようなフォトマスク90を介して、樹脂膜83を露光する。露光光として、樹脂膜83を構成する感光性樹脂材料の吸収波長の光(例えば紫外光)を照射する。フォトマスク90における貫通部形成部分93は光透過性を示すので、樹脂膜83におけるコンタクトホール70の貫通部73の形成領域は露光され、フォトマスク90におけるホール非形成部分99は遮光性を示すので、樹脂膜83におけるコンタクトホール70の非形成領域79は露光されない。
【0040】
また、フォトマスク90における水平部形成部分96は中間調で描画されているので、樹脂膜83における水平部76の形成領域は、表面から所定深さまで露光される。特にフォトマスク90における水平部形成部分96は、全体が略一様な中間調で描画されているので、樹脂膜83における水平部76の形成領域は、全体が略同一の深さまで露光される。
これに対して、フォトマスク90における下段傾斜部形成部分94および上段傾斜部形成部分98は、連続的に変化する中間調で描画されている。そのため、樹脂膜83における下段傾斜部74および上段傾斜部78の形成領域は、露光深度が連続的に変化する。
【0041】
次に、樹脂膜83を現像する。ポジ型の樹脂膜83では、露光された部分が現像液に溶解し、露光されていない部分が素子基板上に残る。すなわち、樹脂膜83における貫通部73の形成領域が現像液に溶解し、コンタクトホールの非形成領域79が素子基板上に残る。また樹脂膜83における水平部76の形成領域では、全体が略同一の深さまで露光されているので、樹脂膜83の下層部が略同一の厚さに残って水平部76が形成される。また下段傾斜部74および上段傾斜部78の形成領域では、露光深度が連続的に変化しているので、樹脂膜83が傾斜状に残って下段傾斜部74および上段傾斜部78が形成される。
【0042】
そして図3に示すように、平坦化膜84の表面からコンタクトホール70の内面にかけて、画素電極23を形成する。これにより画素電極23は、コンタクトホール70の貫通部においてドレイン電極44と電気的接続される。
本実施形態では、コンタクトホール70の内面72が階段状に形成されている。この構成によれば、コンタクトホール70の深さ方向における1μm以上の大きな段差が、複数の小さな段差に分割されるので、コンタクトホール70の内面72に垂直面に近い部分が形成されにくくなる。これにより、コンタクトホール70の内面72に画素電極23を形成しても、その膜厚が極端に薄くなることはなくなり、画素電極23に亀裂や断線等の欠陥が発生するのを防止することができる。その結果、発光装置における発光欠陥の発生を防止することができる。
【0043】
次に、素子基板2の表面全体に有機隔壁21の構成材料からなる樹脂膜を形成する。次に、フォトリソグラフィ技術を用いて有機隔壁21の開口部20を形成する。その際、上記と同様に樹脂膜を露光することにより、開口部20の内面22を階段状に形成する。次に、開口部20の内側に、液相プロセス等により発光層60を形成する。さらに有機隔壁21の表面から開口部20の内面22にかけて、気相プロセス等により共通電極50を形成する。
【0044】
本実施形態では、開口部20の内面22が階段状に形成されている。この構成によれば、開口部20の深さ方向における1μm以上の大きな段差が、複数の小さな段差に分割されるので、開口部20の内面22に垂直面に近い部分が形成されにくくなる。これにより、開口部20の内面22に共通電極50等を形成しても、それらの膜厚が極端に薄くなることはなくなり、共通電極50等に亀裂や断線等の欠陥が発生するのを防止することができる。その結果、発光装置における発光欠陥の発生を防止することができる。
【0045】
(電子機器)
次に、上記実施形態の有機EL装置を備えた電子機器につき図6を用いて説明する。
図6は、電子機器の一例である携帯電話機の斜視構成図である。同図に示す携帯電話機1300は、複数の操作ボタン1302と、受話口1303と、送話口1304と、先の実施形態の有機EL装置からなる表示部1301とを備えて構成されている。この表示部には、上記実施形態の有機EL装置が採用されている。上記実施形態の発光装置では、ダークスポットの発生を防止することができるので、信頼性に優れた携帯電話機を提供することができる。
【0046】
なお、本発明における発光装置を備えた電子機器としては、上記のものに限らず、他に例えば、デジタルカメラ、パーソナルコンピュータ、テレビ、携帯用テレビ、ビューファインダ型・モニタ直視型のビデオテープレコーダ、PDA、携帯用ゲーム機、ページャ、電子手帳、電卓、時計、ワードプロセッサ、ワークステーション、テレビ電話、POS端末、タッチパネルを備えた機器などを挙げることができる。また、本発明における有機EL装置を備えた電子機器として、車載用オーディオ機器や自動車用計器、カーナビゲーション装置等の車載用ディスプレイ、プリンタ用の光書き込みヘッド等を挙げることもできる。
【0047】
なお、本発明の技術範囲は、上述した実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において、上述した実施形態に種々の変更を加えたものを含む。すなわち、実施形態で挙げた具体的な材料や構成などはほんの一例に過ぎず、適宜変更が可能である。
例えば、本実施形態では有機EL素子を備えた発光装置を例にして説明したが、発光ダイオードを備えた発光装置等の、他の発光装置に本発明を適用することも可能である。また、本実施形態では平坦化膜(有機膜層)に形成されたコンタクトホール(貫通孔)の内面に画素電極(導電膜層)を形成する場合、および有機隔壁(有機膜層)に形成された開口部(貫通孔)の内面に共通電極(導電膜層)を形成する場合について述べたが、他の有機膜層に形成された貫通孔の内面に導電膜層を形成する場合について、本発明を適用することも可能である。
【図面の簡単な説明】
【0048】
【図1】有機EL装置の等価回路図である。
【図2】実施形態に係る発光装置の平面図である。
【図3】実施形態に係る発光装置の断面図である。
【図4】コンタクトホールの内面の拡大図である。
【図5】実施形態に係る発光装置の製造方法の説明図である。
【図6】携帯電話の斜視図である。
【図7】従来技術に係る発光装置の断面図である。
【符号の説明】
【0049】
20…開口部 21…有機隔壁 22…内面 23…画素電極 60…発光層 70…コンタクトホール 72…内面 84…平坦化膜 90…マスク 124…スイッチング素子 1300…携帯電話(電子機器)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
貫通孔が形成された有機膜層と、前記有機膜層の上面から前記貫通孔にかけて形成された導電膜層と、を備えた発光装置であって、
前記貫通孔の内面が、階段状に形成されていることを特徴とする発光装置。
【請求項2】
前記発光装置は、発光部に通電する画素電極と、前記画素電極への通電を制御するスイッチング素子とを備え、
前記有機膜層は、前記スイッチング素子と前記画素電極との間に形成された平坦化膜であり、
前記貫通孔は、前記スイッチング素子と前記画素電極とを電気的接続するためのコンタクトホールであることを特徴とする請求項1に記載の発光装置。
【請求項3】
前記発光装置は、発光部を備え、
前記有機膜層は、前記発光部の周囲に形成された隔壁であり、
前記貫通孔は、前記発光部の形成領域を区画する開口部であることを特徴とする請求項1に記載の発光装置。
【請求項4】
前記有機膜層は、感光性材料からなることを特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれか1項に記載の発光装置。
【請求項5】
貫通孔が形成された感光性材料からなる有機膜層と、前記有機膜層の上面から前記貫通孔の内面にかけて形成された導電膜層と、を備えた発光装置の製造方法であって、
マスクを用いて前記有機膜層を露光し、前記貫通孔を形成する工程を有し、
前記マスクとして、前記貫通孔の内面に対応する領域が中間調で描画されたものを用いることにより、前記貫通孔の内面を階段状に形成することを特徴とする発光装置の製造方法。
【請求項6】
前記マスクは、前記貫通孔の内面の下端部に対応する領域が、連続的に変化する中間調で描画されていることを特徴とする請求項5に記載の発光装置の製造方法。
【請求項7】
請求項1ないし請求項4のいずれか1項に記載の発光装置を備えたことを特徴とする電子機器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2007−207962(P2007−207962A)
【公開日】平成19年8月16日(2007.8.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−24155(P2006−24155)
【出願日】平成18年2月1日(2006.2.1)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】