説明

発光装置およびその検査方法

【課題】光学測定器による測定可能な最小面積よりも小さな発光面積を有する発光素子を備え、その発光特性を検査するに際して好適な構成を提供する。
【解決手段】R(赤)、G(緑)、B(青)の各色を発光する発光素子Er,Eg,Ebがそれぞれ基板1上に直線状に形成されており、その配列パターンの長手方向両端には、モニタ用発光素子ER,EG,EBが形成されている。前記モニタ用発光素子は、その形成面積が発光領域を形成する前記発光素子Er,Eg,Ebの個々に比較して遥かに大きな面積となるように構成されている。前記個々の発光素子Er,Eg,Ebの発光特性は、形成面積が大きなモニタ用発光素子ER,EG,EBを用いて測定され、これにより、同一基板上に配列された発光素子Er,Eg,Ebが所定の規格内にあるか否かが検証される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、複数の発光素子を基板面に配列することで発光領域を形成し、当該発光領域に配列された前記発光素子を利用して、例えば感光体に対する露光もしくは画像表示を行う発光装置に関し、特に製造工程において前記発光素子の発光特性を検査する場合において好適な構成を具備した発光装置とその発光特性の検査方法に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば感光体上に潜像を書き込むための露光方式としては、高速化、小型化、高信頼性などの観点から従来よりLEDアレイ方式が多用されている。このLEDアレイ方式に利用される露光ディバイスとしては、多数の微小な発光ダイオードを基板上に直線状に配列した構成のものが利用される。この場合、多数の微小な発光ダイオードを一枚の基板上に一度にパターニングすることが不可能であるため、予め個々に形成された微小な発光ダイオードを精度よく基板上に配列させる必要がある。このために、各LEDチップの配列誤差を少なくするための高精度な実装技術が必要となり、これに伴い製造コストが高騰するなどの問題点を抱えている。
【0003】
そこで、前記した露光装置において、LEDに代わる露光ディバイスとして有機EL(エレクトロルミネッセンス)素子を用いた例が、次に示す特許文献1および2などに開示されている。これによれば、有機ELによる発光素子が基板面に直線状に配列させた構成とされ、一枚の基板上に前記発光素子をパターニング化させることが可能である。このために、前記したようなLEDチップを直線状に多数配列させる際の実装上の困難さが避けられ、低コスト化を図ることができる。
【特許文献1】特開平9−226171号公報
【特許文献2】特開平9−226172号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
図1は、前記した露光装置に用いられる露光ディバイスとして、有機EL素子を採用した構成例を示している。すなわち、基板1上にはR(赤)、G(緑)、B(青)の各色を発光する有機EL素子Er,Eg,Ebがそれぞれ直線状に配列されると共に、これらは互いに隣接して配置されている。すなわち、隣接する各R,G,BのEL素子によってカラー発光素子を構成し、このカラー発光素子が直線状に配列された構成にされている。
【0005】
図2は前記した1つの有機EL素子の積層構造の例を示したものである。この有機EL素子は、基本的にはガラス等の透明基板1上に、例えばITOによる透明電極(陽極)2と発光機能層3、およびアルミ合金などによる金属電極(陰極)4とが順次積層されることで構成されている。
【0006】
そして、前記発光機能層3は有機化合物による単一の発光層3a、あるいは有機正孔輸送層3bと発光層3aによる二層構造、または有機正孔輸送層3bと発光層3aおよび有機電子輸送層3cからなる三層構造、さらには前記透明電極2と正孔輸送層3bとの間に正孔注入層3dを、また前記金属電極4と電子輸送層3cとの間に電子注入層3eを挿入した多層構造になされる場合もある。そして、前記発光機能層3において発生する光は、矢印で示したように前記透明電極2および透明基板1を介して外部に導出される。
【0007】
ところで、図1に示した構成の露光装置においては、その製造過程における検査工程において、各R,G,Bを発光するEL素子Er,Eg,Ebの個々における発光特性を測定する測定工程が実行される。その測定工程としては、例えば色彩計測器等の光学測定器を用いてR,G,Bの各色のEL素子による色度、輝度、色温度等が所定の範囲内であるか否かが検証される。
【0008】
図3は前記した色彩計測器により素子の発光特性を測定する例を説明するものである。すなわち、被測定面(EL素子による発光面)11からの光は対物レンズ12および固定絞り13を介して射出立体角Ωが設定される。そして、固定絞り13を介した光はリレーレンズ14により平行光線になされ、視感度補正フィルタ15を介して光電変換器16に入射される。なお、前記視感度補正フィルタ15は、R,G,Bの各色のEL素子の測定に対応して例えばターレット回転により選択されるように構成されている。
【0009】
ところで、前記した露光装置においては益々その高解像度化の要求が高まり、これに伴い露光ディバイスとしての前記有機EL素子単体の発光面積はより微小化され、これが高密度に配列された構成が求められるようになっている。したがって、図3に示した色彩計測器などにより測定可能な被測定面の最小面積よりも、測定対象である発光素子単体の面積が小さくなる場合には、素子の正確な発光特性を測定することが不可能になる。
【0010】
すなわち、図1に示す符号Aは前記光学測定器による測定可能な最小面積の例を示しており、これに対して四角で区切られた素子単体の発光面積は、符号Aで示された測定可能な最小面積よりも小さな面積となる。この様な技術的な課題に対処するために複数の素子を同時に点灯させることで、測定可能な面積Aに対応した点灯領域を作ることも考えられるが、図1に示したように列毎に発光色が異なる前記した露光装置に用いられる発光装置においては、前記した手段を採用することも不可能となる。
【0011】
この発明は、前記した問題点に着目してなされたものであり、光学測定器による測定可能な最小面積よりも小さな発光面積を有する発光素子を備えた例えば露光装置に適用される発光装置において、その発光特性を検査するに際して好適な構成を具備した発光装置とその発光特性の検査方法を提供することを課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
前記した課題を解決するためになされたこの発明にかかる発光装置の好ましい形態は、請求項1に記載のとおり、複数の発光素子を配列することで発光領域を形成し、当該発光領域に配列された前記発光素子を利用して感光体に対する露光もしくは画像表示を行う発光装置であって、前記発光領域外に感光体に対する露光もしくは画像表示に寄与しないモニタ用発光素子を少なくとも1つ備え、前記モニタ用発光素子の発光面積が、前記発光領域に配列された個々の発光素子の発光面積よりも大きく形成されている点に特徴を有する。
【0013】
また、前記した課題を解決するためになされたこの発明にかかる検査方法は、請求項9に記載のとおり、前記した構成の発光装置における前記発光領域に配列された発光素子の発光特性を検査する検査方法であって、前記モニタ用発光素子に対して駆動電流を供給して発光駆動させる発光駆動工程と、発光状態の前記モニタ用発光素子からの光を取り込んで、光計測手段による発光特性を測定する測定工程とを実行することを特徴とする。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、この発明にかかる発光装置およびその検査方法について、図に示す実施の形態に基づいて説明する。なお、以下に説明する実施の形態においては、すでに説明した各図に示す構成要素と同一の機能を果たす部分を同一符号で示している。
【0015】
図4に示す実施の形態においてはR,G,Bの各色を発光する有機ELによる発光素子Er,Eg,Ebがそれぞれ直線状に、かつ互いに隣接して基板1上に積層されることにより形成されている。すなわち、この発光素子Er,Eg,Ebによって発光領域を形成しており、これらが前記したように感光体に対する露光ディバイスとして機能することになる。
【0016】
一方、前記した発光領域を形成する素子Er,Eg,Ebの配列パターンの長手方向両端には、モニタ用発光素子が同じく基板1上に積層されることにより形成されている。この図4に示す実施の形態においてはR,G,Bの各色に対応するモニタ用発光素子としてER,EG,EBが基板1上に積層形成されており、これらは発光領域を形成する前記素子Er,Eg,Ebと同一の層構造に構成されている。
【0017】
すなわち、前記モニタ用発光素子ER,EG,EBと、発光領域を形成する発光素子Er,Eg,Ebとは有機EL素子により構成され、同一の成膜工程において同時に基板1上に形成されている。したがって、モニタ用発光素子と発光領域を形成する発光素子とはR,G,Bの各色毎において電気的な特性を揃えることができ、その発光駆動電流に対する輝度特性および順方向電圧などについて、それぞれ略同一の温度依存特性および経時変化の特性を持たせたものとすることができる。
【0018】
加えて、前記モニタ用発光素子ER,EG,EBは、その成膜面積が発光領域を形成する前記発光素子Er,Eg,Ebの個々に比較して遥かに大きな面積となるように構成されている。これにより、モニタ用発光素子は図3に基づいて説明した光学的な測定器による測定可能な最小面積Aよりも大きな発光面積になされている。なお、前記した発光素子の光学的な特性を測定するためには、前記モニタ用発光素子ER,EG,EBと前記発光領域に配列された発光素子Er,Eg,Ebとは、個別に発光制御できるように構成されていることが望ましい。
【0019】
前記した構成を利用して発光素子の光学的な特性を測定するには、R,G,Bの各色毎のモニタ用発光素子に対して個別に駆動電流を供給して発光駆動させると共に、この時のモニタ用発光素子からの光を取り込んで、例えば図3に示した形態の光計測手段により発光特性(例えば前記した色度、輝度、色温度等)を、R,G,Bの各色毎に測定する工程が実行される。これにより、同一基板上に配列された発光素子Er,Eg,Ebの発光特性が所定の規格内にあるか否かを検証することができる。
【0020】
前記モニタ用発光素子ER,EG,EBは、前記したように発光素子の光学的な特性を検証することに利用できるだけでなく、前記各モニタ用発光素子に所定の定電流を供給した場合に発生する順方向電圧を利用することで、各発光素子Er,Eg,Ebの温度依存性および経時変化に基づく輝度特性を補償するために利用することができる。図5はこれを実現させる一例を説明するものである。
【0021】
符号1はすでに説明した発光装置を構成する基板を示しており、これには前記したとおり、モニタ用発光素子ER,EG,EBが配置されている。また、発光領域を形成する発光素子Er,Eg,Ebはそれぞれn個配列されており、説明の便宜上、これらに1〜nの符号を付けて示している。
【0022】
一方、モニタ用発光素子ER,EG,EBにそれぞれ定電流を供給する定電流源IR,IG,IBがそれぞれ備えられ、これら定電流源より各モニタ用発光素子に定電流を供給した時に発生する順方向電圧VfR,VfG,VfBが、それぞれサンプルホールド回路8R,8G,8Bに供給されるように構成されている。そして、前記各サンプルホールド回路8R,8G,8Bによってホールドされた順方向電圧VfR,VfG,VfBは、各DC−DCコンバータ9R,9G,9Bに対してそれぞれ制御電圧として供給されるように構成されている。
【0023】
前記各DC−DCコンバータ9R,9G,9Bは、前記各サンプルホールド回路8R,8G,8Bによりそれぞれホールドされた順方向電圧VfR,VfG,VfBに基づいて、各発光素子Er1〜Ern,Eg1〜Egn,Eb1〜Ebnに対して供給する駆動電圧の値を制御するように機能する。すなわち、コンバータ9Rからは前記VfRに基づいて駆動電圧VHRが出力され、コンバータ9Gからは前記VfGに基づいて駆動電圧VHGが出力され、同様にコンバータ9Bからは前記VfBに基づいて駆動電圧VHBが出力される。なお、前記各DC−DCコンバータはバッテリを一次側電源とする昇圧型のコンバータを構成している。
【0024】
前記した構成によると、R,G,Bに対応する各モニタ用発光素子ER,EG,EBにおける順方向電圧VfR,VfG,VfBに基づいて、同じくR,G,Bに対応する各発光素子Er1〜Ern,Eg1〜Egn,Eb1〜Ebnに対して供給される駆動電圧の値VHR,VHG,VHBが個々に制御されるので、R,G,Bごとに動作温度および経時変化に対応した適切な補償動作を実現させることができる。
【0025】
ところで、図4に示した構成による有機EL素子を用いた発光装置においては、EL素子自体が大気中の湿気を受けて酸化され易く、発光特性を劣化させるという問題を抱えている。そこで、この種の発光装置においてはEL素子を基板との間で封止部材によって封止する構成が採用される。
【0026】
図6は、その構成を断面図で示したものであり、これは図4に示す発光装置の上面を封止部材によって封止した構成において、中央で切断した状態の縦断面図で示している。なお、図6に示す構成においてはすでに説明した各モニタ用発光素子をER,G,Bとして示しており、また発光領域に配列された各発光素子をEr,g,bとして示している。この図6に示す構成においては、モニタ用発光素子と発光領域に配列された発光素子とは、それぞれに独立した封止空間を有する封止部材5によって、基板1との間において封止されている。なお符号5aは、モニタ用発光素子と発光領域との間を区画する隔壁を示しており、符号6は封止部材5と基板1との間に介在された接着剤を模式的に示している。
【0027】
そして前記モニタ用発光素子を、図5に示したように温度および経時変化に基づく輝度補償のために利用する構成の発光装置においては、図6に示した封止構成の状態で、そのまま利用することができる。また製造工程において前記モニタ用発光素子を発光特性の計測のみに利用する場合においては、前記測定工程の実行後に前記モニタ用発光素子を形成した基板1および封止部材5の一部を切除するようになされる。
【0028】
図6に示す矢印は、その切除部分を示すものであり、矢印で示す部分よりモニタ用発光素子の配置領域を切除することにより、発光領域を残した図7に示す発光装置として利用することができる。図7に示した構成によると、封止部材5に形成された前記隔壁5aが、モニタ用発光素子の配置領域の切除後の封止を行うように作用する。
【0029】
なお、以上説明した実施の形態においては、モニタ用発光素子を発光素子の配列パターンにおける長手方向の両端にそれぞれ形成しているが、これはいずれか一方のみに形成されていてもよい。また前記モニタ用発光素子は、R,G,Bに対応してそれぞれ形成されているが、これは発光領域に配列された発光素子の発光色に応じて、少なくとも2種類備えられた構成にされる場合もある。さらに、以上説明した実施の形態においては、露光装置に用いる発光装置として説明しているが、前記した構成は表示装置として利用することもできる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】露光装置に用いられる露光ディバイスとして、有機EL素子を採用した構成例を説明する平面図である。
【図2】有機EL素子の積層構成の例を説明する断面図である。
【図3】発光素子の発光特性を測定する例を説明する模式図である。
【図4】この発明にかかる発光装置の実施の形態を示す平面図である。
【図5】図4に示す発光装置を利用した駆動回路の例を説明するブロック図である。
【図6】図4に示す発光装置に封止部材を装着した状態の断面図である。
【図7】図6に示す構成よりモニタ用発光素子部分を切除した発光装置の構成を示す断面図である。
【符号の説明】
【0031】
1 基板
2 透明電極(陽極)
3 発光機能層
4 金属電極(陰極)
5 封止部材
5a 隔壁
6 接着剤
ER,EG,EB モニタ用発光素子(有機EL素子)
Er,Eg,Eb 発光素子(有機EL素子)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の発光素子を配列することで発光領域を形成し、当該発光領域に配列された前記発光素子を利用して感光体に対する露光もしくは画像表示を行う発光装置であって、
前記発光領域外に感光体に対する露光もしくは画像表示に寄与しないモニタ用発光素子を少なくとも1つ備え、前記モニタ用発光素子の発光面積が、前記発光領域に配列された個々の発光素子の発光面積よりも大きく形成されていることを特徴とする発光装置。
【請求項2】
前記モニタ用発光素子は、前記発光領域に配列された発光素子と同一の層構造に構成されていることを特徴とする請求項1に記載された発光装置。
【請求項3】
前記モニタ用発光素子は、前記発光領域に配列された発光素子の発光色に応じて、少なくとも2種類以上備えられていることを特徴とする請求項1または請求項2に記載された発光装置。
【請求項4】
前記モニタ用発光素子と前記発光領域に配列された発光素子とは、個別に発光制御できるように構成されていることを特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれか1項に記載された発光装置。
【請求項5】
前記モニタ用発光素子に所定の電流を供給することにより、前記発光領域に配列された発光素子における順方向電圧に対応する電圧を得ることができるように構成されていることを特徴とする請求項1ないし請求項4のいずれか1項に記載された発光装置。
【請求項6】
前記モニタ用発光素子と前記発光領域に配列された発光素子とは、それぞれに独立した封止空間を有する封止部材によって封止されていることを特徴とする請求項1ないし請求項5のいずれか1項に記載された発光装置。
【請求項7】
前記発光領域に配列された発光素子には、R(赤)、G(緑)、B(青)を発光する素子が含まれていることを特徴とする請求項1ないし請求項6のいずれか1項に記載された発光装置。
【請求項8】
前記モニタ用発光素子と前記発光領域に配列された発光素子とは、有機EL素子により構成されていることを特徴とする請求項1ないし請求項7のいずれか1項に記載された発光装置。
【請求項9】
請求項1ないし請求項8のいずれか1項に記載された発光装置における前記発光領域に配列された発光素子の発光特性を検査する検査方法であって、
前記モニタ用発光素子に対して駆動電流を供給して発光駆動させる発光駆動工程と、
発光状態の前記モニタ用発光素子からの光を取り込んで、光計測手段による発光特性を測定する測定工程と、
を実行することを特徴とする発光装置の検査方法。
【請求項10】
複数のモニタ用発光素子における各モニタ用発光素子毎に、前記発光駆動工程と測定工程とを個別に実行することを特徴とする請求項9に記載された発光装置の検査方法。
【請求項11】
前記測定工程の終了後に、前記発光領域を形成した基板より前記モニタ用発光素子を形成した基板を切除する切除工程をさらに実行することを特徴とする請求項9または請求項10に記載された発光装置の検査方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2006−337456(P2006−337456A)
【公開日】平成18年12月14日(2006.12.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−158870(P2005−158870)
【出願日】平成17年5月31日(2005.5.31)
【出願人】(000221926)東北パイオニア株式会社 (474)
【Fターム(参考)】