説明

発光装置および発光装置の製造方法

【課題】有機機能層の上層に積層された電極層で確実に酸素や水分の有機機能層への侵入を防止することのできる発光装置、およびその製造方法を提供すること。
【解決手段】発光装置の製造工程において、有機機能層113および隔壁105の上層に、蒸着法により成膜したアルミニウム膜を用いて対向電極112を形成した後、対向電極112に酸素プラズマを照射して対向電極112の表面にアルミニウム酸化膜からなる化合物層112xを形成する。その結果、対向電極112を構成するアルミニウム膜にピンホールが発生している場合でも、対向電極112の表面を反応させた際の体積膨張によりピンホールを塞ぐことができ、対向電極112自身によって有機機能層113への酸素や水分の侵入を防止できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有機エレクトロルミネッセンス素子を備えた発光装置、およびその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
各種の発光装置のうち、有機エレクトロルミネッセンス(Electroluminescence)装置では、第1電極層、発光層を含む有機機能層、および第2電極層がこの順に積層された有機エレクトロルミネッセンス素子が形成されている。このような有機エレクトロルミネッセンス素子では、有機機能層が酸素や水分などにより劣化しやすいため、第2電極層の側を封止基板や缶で覆うなどの対策が施されている。
【0003】
ここに、本願発明者は、第2電極層を利用して有機機能層への酸素や水分などの侵入を防止することを提案するものである。しかしながら、第2電極層として、蒸着により成膜したアルミニウム膜などの金属膜を用いた場合には、図8(A)に示すように、成膜時に金属膜にピンホールが発生することを防止することができず、第2電極層自身で有機機能層への酸素や水分などの侵入を確実に防止することが困難である。ここで、金属膜にピンホールが発生する理由としては、有機物の上層に金属膜を蒸着により成膜した際には、下地の熱伝導性が低いため、横方向の膜成長が網目状に起こる際に網目がピンホールとして残ってしまうためと考えられ、このような現象は、アルミニウム(融点約660℃)など、比較的融点の低い金属膜を蒸着により成膜する際に発生しやすい。また、このようなピンホールは金属膜を厚くしても塞ぐことができず、かつ、同一の金属膜の成膜を繰り返して多層膜とした場合でも塞ぐことができない。
【0004】
一方、第2電極層自身および第2電極層の上層に積層したバリア層で有機機能層への酸素や水分などの侵入を防止する技術としては、第2電極層をITO膜などの導電性無機酸化物膜で形成するとともに、その上に、シリコン酸化膜やシリコン窒化膜からなるガスバリア層を形成した構成が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0005】
また、アルミニウム膜からなる第2電極層の上層に、未反応部を残したポリシラザン膜を積層し、酸素や水分をポリシラザン膜の未反応部と反応させて酸素や水分を食い止める技術が提案されている(例えば、特許文献2参照)。
【特許文献1】特開2004−95199号公報
【特許文献2】特開平11−54266号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に開示の技術では、第2電極層を金属膜で形成した場合には適用できない。また、特許文献2に開示の技術のように、未反応部を残したポリシラザン膜で酸素や水分を食い止めるには、ポリシラザン膜を反応させる際の制御が極めて難しいという問題点がある。
【0007】
以上の問題点に鑑みて、本発明の課題は、有機機能層の上層に積層された電極層で確実に酸素や水分の有機機能層への侵入を防止することのできる発光装置、およびその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本発明では、第1電極層、有機機能層および第2電極層が順に積層された有機エレクトロルミネッセンス素子を備えた発光装置において、前記第2電極層は、金属材料から構成され、前記第2電極層の上層には、当該第2電極層を構成する金属材料の化合物層が積層されていることを特徴とする。
【0009】
本発明では、第1電極層、有機機能層および第2電極層が順に積層された有機エレクトロルミネッセンス素子を備えた発光装置の製造方法において、前記有機機能層を形成した後、当該有機機能層の上層に前記第2電極層を構成する金属膜を蒸着法により成膜する成膜工程と、前記第2電極層の表面を反応させて当該第2電極層の上層に該第2電極層を構成する金属材料の化合物層を形成する化合層形成工程とを有することを特徴とする。
【0010】
本発明では、有機機能層の上層に蒸着法で形成した金属膜で第2電極層を形成した後、第2電極層の表面を反応させて第2電極層の上層に化合物層を形成する。このため、第2電極層を構成する金属膜を有機機能層の上層に蒸着により成膜した際、下地が有機物層であることに起因してピンホールが発生している場合でも、第2電極層の表面を反応させた際の体積膨張によりピンホールを塞ぐことができる。従って、第2電極層自身によって有機機能層への酸素や水分の侵入を防止できるので、有機機能層の劣化を防止することができる。
【0011】
本発明は、前記第2電極層がアルミニウム膜(本発明では、アルミニウム単体膜およびアルミニウム合金膜層の双方を意味する)からなる場合に適用すると特に効果的である。アルミニウムのように低融点金属を蒸着により成膜した際には特にピンホールが発生しやすい傾向にあるが、本発明によれば、かかるピンホールに起因する有機機能層への酸素や水分の侵入を防止することができる。また、アルミニウムであれば、電気抵抗が低いので、電極あるいは配線を構成するのに適している。さらに、前記第2電極層がアルミニウム膜であれば、光反射性が高いので、基板側から光を出射するボトムエミッション型の有機エレクトロルミネッセンス装置において第2電極層を光反射層として用いることができる。
【0012】
この場合、前記化合物層としては、アルミニウム酸化膜あるいはアルミニウム窒化膜を用いることが好ましい。前記化合物層がアルミニウム酸化膜あるいはアルミニウム窒化膜であれば、前記第2電極層をアルミニウム膜により形成した後、酸素プラズマの照射や窒素プラズマの照射によりアルミニウム膜の表面を酸化あるいは窒化させることにより前記化合物層を形成することができる。
【0013】
本発明の別の形態では、第1の電極層、有機機能層および第2電極層が順に積層された有機エレクトロルミネッセンス素子を備えた発光装置において、前記第2電極層は、金属材料からなる第1導電層と、該第1導電層の上層に積層され、導電性有機膜、有機金属錯体膜、あるいは前記第1導電層を構成する金属材料より融点が高い高融点金属膜からなる第2導電層とを含んでいることを特徴とする。
【0014】
本発明では、第1電極層、有機機能層および第2電極層が順に積層された有機エレクトロルミネッセンス素子を備えた発光装置の製造方法において、前記有機機能層を形成した後、当該有機機能層の上層に前記第1導電層を構成する金属膜を蒸着法により成膜する成膜工程と、前記第1導電層の上層に、導電性有機膜、有機金属錯体膜、あるいは前記第1導電層を構成する金属材料より融点が高い高融点金属膜からなる第2導電層を形成する第2導電層形成工程とを有することを特徴とする。
【0015】
本発明では、有機機能層の上層に蒸着法で形成した金属膜で第2電極層の第1導電層を形成した後、この第1導電層の上層に導電性有機膜、有機金属錯体膜、あるいは高融点金属膜からなる第2導電層を形成する。ここで、導電性有機膜、有機金属錯体膜、あるいは高融点金属膜は、それを成膜する際、下地の影響を受けにくい。このため、第1導電層を構成するための金属膜を有機機能層の上層に蒸着により成膜した際、下地が有機物層であることに起因してピンホールが発生している場合でも、ピンホールは、導電性有機膜、有機金属錯体膜、あるいは高融点金属膜で覆われる。従って、第2電極層自身によって有機機能層への酸素や水分の侵入を防止できるので、有機機能層の劣化を防止することができる。また、第1導電層のピンホールを塞ぐ第2導電層自身が第2電極層の一部を構成するため、電気抵抗などを考慮しても第1導電層を薄くすることができ、その分、成膜時間を短縮することができる。
【0016】
前記第2電極層は、さらに、前記第2導電層の上層に、前記第1導電層と同一の金属材料からなる第3導電層を含んでいることが好ましい。この場合には、前記第2導電層形成工程の後、前記第2導電層の上層に、前記第1導電層と同一の金属材料からなる第3導電層を蒸着法におより形成する第3導電層形成工程を行えばよい。このように構成すると、第2導電層によって第1導電層のピンホールが埋められた上に第3導電層を形成するので、第3導電層にはピンホールが発生しない。ここで、第3導電層の下地は、有機機能層などからみて薄い導電性有機膜、有機金属錯体膜、あるいは高融点金属膜であるため、有機機能層の上に第1導電層を蒸着形成する場合と違ってピンホールが発生しにくい。それ故、第3導電層によっても、有機機能層への酸素や水分の侵入を防止できる。また、第3導電層自身が第2電極層の一部を構成するため、電気抵抗などを考慮しても第1導電層および第2導電層を薄くすることができ、その分、成膜時間を短縮することができる。
【0017】
本発明は、前記第2導電層がアルミニウム膜からなる場合に適用すると特に効果的である。アルミニウムのように低融点金属を蒸着により成膜した際には特にピンホールが発生しやすい傾向にあるが、本発明によれば、かかるピンホールに起因する有機機能層への酸素や水分の侵入を防止することができる。また、アルミニウムであれば、電気抵抗が低いので、電極あるいは配線を構成するのに適している。さらに、前記第2電極層がアルミニウム層であれば、光反射性が高いので、基板側から光を出射するボトムエミッション型の有機エレクトロルミネッセンス装置において第2電極層を光反射層として用いることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下に、図面を参照して、本発明の実施の形態を説明する。なお、以下の説明に用いた各図では、各層や各部材を図面上で認識可能な程度の大きさとするため、各層や各部材毎に縮尺を相違させてある。
【0019】
[実施の形態1]
(発光装置の全体構成)
図1は、発光装置の電気的構成を示すブロック図である。図1に示す発光装置100は、駆動電流が流れることによって発光する有機エレクトロルミネッセンス素子110を薄膜トランジスタで駆動制御する装置であり、このタイプの発光装置100では、有機エレクトロルミネッセンス素子110が自己発光するため、バックライトを必要とせず、また、視野角依存性が少ないなどの利点がある。
【0020】
本形態の発光装置100では、複数の走査線163と、この走査線163の延設方向に対して交差する方向に延設された複数のデータ線164と、これらのデータ線164に並列する複数の共通給電線165と、データ線164と走査線163との交差点に対応する画素115とが構成され、画素115は、画像表示領域にマトリクス状に配置されている。データ線164に対しては、シフトレジスタ、レベルシフタ、ビデオライン、アナログスイッチを備えるデータ線駆動回路151が構成されている。走査線163に対しては、シフトレジスタおよびレベルシフタを備える走査線駆動回路154が構成されている。また、複数の画素115の各々には、走査線163を介して走査信号がゲート電極に供給される画素スイチング用の薄膜トランジスタ106と、この薄膜トランジスタ106を介してデータ線164から供給される画像信号を保持する保持容量133と、この保持容量133によって保持された画像信号がゲート電極に供給される電流制御用の薄膜トランジスタ107と、薄膜トランジスタ107を介して共通給電線165に電気的に接続したときに共通給電線165から駆動電流が流れ込む有機エレクトロルミネッセンス素子110とが構成されている。
【0021】
(画素構成)
図2(A)、(B)は各々、本発明を適用した発光装置の1画素分の平面図および断面図である。本形態の発光装置100を構成するにあたっては、より具体的には、図2(A)、(B)に示すように、素子基板を構成するガラス基板などからなる基板120上にシリコン酸化膜からなる下地保護膜(図示せず)が形成され、この下地保護膜上に、薄膜トランジスタ107などを構成するためのポリシリコン膜からなる半導体膜109aが島状に形成されている。半導体膜109aには不純物の導入によってソース・ドレイン領域109b、109cが形成され、不純物が導入されなかった部分がチャネル領域109dとなっている。下地保護膜および半導体膜109aの上層側にはゲート絶縁膜121が形成され、ゲート絶縁膜121上にはアルミニウム(Al)、モリブデン(Mo)、タンタル(Ta)、チタン(Ti)、タングステン(W)などからなる走査線163およびゲート電極143が形成されている。走査線163、ゲート電極143およびゲート絶縁膜121の上層側には、第1層間絶縁膜122と第2層間絶縁膜123とがこの順に積層されている。ここで、第1層間絶縁膜122および第2層間絶縁膜123は、シリコン酸化物(SiO2)、チタン酸化物(TiO2)などの無機絶縁膜から構成されている。
【0022】
第1層間絶縁膜122の上層には、第1層間絶縁膜122およびゲート絶縁膜121のコンタクトホールを介してソース・ドレイン領域109b、109cにそれぞれ接続するソース・ドレイン電極126および共通給電線165が形成されている。また、第1層間絶縁膜122の上層にはデータ線164も形成されている。
【0023】
第2層間絶縁膜123上には、ITO(酸化インジウム−スズ/Indium Tin Oxide)層からなる光透過性の画素電極111が形成され、この画素電極111は、第2層間絶縁膜123のコンタクトホールを介してソース・ドレイン電極126に電気的に接続している。従って、画素電極111は、薄膜トランジスタ107を介して共通給電線165に電気的に接続したとき、共通給電線165から駆動電流が流れ込む。
【0024】
各画素115には、陽極層としての画素電極111(第1電極層)と、有機機能層113と、陰極層としての対向電極112(第2電極層)がこの順に積層された有機エレクトロルミネッセンス素子110が形成されている。有機機能層113は、画素電極111上に積層された正孔輸送層113aと、この正孔輸送層113aの上層側に形成された発光層113bとを備えている。発光層113bは、正孔輸送層113aの側から注入される正孔と、対向電極112の側から注入される電子とが結合して発光する領域としての機能を担っており、各画素115が赤色(R)、緑色(G)、青色(B)のいずれの色に対応するかは、発光層113bを構成する有機材料の種類によって規定されている。発光層113bの膜厚は約80〜150nmである。本形態では、正孔輸送層113aが、正孔を発光層113bに注入する正孔注入層としての機能も担っている。
【0025】
本形態では、隣接する画素115の境界領域には、画素電極111の周縁部を取り囲むように、感光性樹脂からなる隔壁105がバンクとして形成されている。隔壁105は、有機機能層113(正孔輸送層113aおよび発光層113b)を形成するのにインクジェット法(液体吐出法)を用いるとき、塗布される液状組成物の塗布領域を規定するものであり、その表面張力によって、液状組成物が均一な厚さで形成される。インクジェット式の液滴吐出装置としては、圧電振動子の体積変化により流動体を吐出させるピエゾジェットの液滴吐出装置や、エネルギー発生素子として電気熱変換体を用いた液滴吐出装置などが採用される。また、有機機能層113の形成にはスピンコート法を用いてもよい。ここで、液状組成物は、水性であると油性であるとを問わない。また、液状組成物については、流動性を備えていれば十分で、固体物質が混入していても全体として流動体であればよい。また、液体材料に含まれる固体物質は融点以上に加熱されて溶解されたものでも、溶媒中に微粒子として分散させたものでもよく、溶媒の他に染料や顔料その他の機能性材料を添加したものであってもよい。
【0026】
(対向電極側の構成)
本形態の発光装置100は、基板側に向けて表示光を出射するボトムエミッション型であり、本形態において、対向電極112は、基板120の略全面にあるいはストライプ状に形成されたアルミニウム膜により構成されている。このため、対向電極112は、光反射層としても機能する。従って、有機エレクトロルミネッセンス素子110の発光層113bから画素電極111および基板120に向けて出射された光は、画素電極111および基板120を透過して出射される一方、対向電極112に向かう光は、対向電極112で反射した後、画素電極111および基板120を透過して出射される。
【0027】
ここで、基板120の素子形成面側(対向電極112の側)には、酸素や水分の侵入を防ぐことによって有機機能層113の酸化による劣化を防止する封止樹脂(図示せず)が形成され、さらに封止基板(図示せず)が貼られることがある。また、基板120の素子形成面側の側には、酸素や水分の侵入を防ぐための缶(図示せず)が被せられ、缶の内側には脱酸素剤(図示せず)が配置されることもある。いずれの場合にも、本形態では、対向電極112自身によって、有機機能層113への酸素や水分の侵入を防止する。但し、対向電極112を構成するアルミニウム膜は、それを有機機能層113の上層に蒸着により成膜した際、下地が有機物層であることに起因してピンホールが発生しやすく、このようなピンホールが存在すると、対向電極112自身では、有機機能層113への酸素や水分の侵入を防止することができない。
【0028】
そこで、本形態では、製造方法については後述するが、有機機能層113の上層に蒸着法により形成したアルミニウム膜で対向電極112を形成した後、対向電極112の表面を反応させて対向電極112の上層にアルミニウム酸化膜からなる化合物層112xを形成する。このため、対向電極112を構成するアルミニウム膜を成膜した際、図8(A)に示すように、下地が有機機能層113であることに起因してアルミニウム膜にピンホールが発生している場合でも、図8(B)に示すように、対向電極112の表面を反応させて化合物層112xを形成すると、その体積膨張によりピンホールを塞ぐことができる。従って、対向電極112自身によって有機機能層113への酸素や水分の侵入を防止できるので、有機機能層113の劣化を防止することができる。
【0029】
特に本形態では、対向電極112がアルミニウム膜からなり、アルミニウムのように低融点金属を蒸着により成膜した際には特にピンホールが発生しやすい。しかるに本形態では、かかるピンホールを化合物層112xの形成によって塞ぐため、対向電極112をアルミニウム膜で形成した場合でも、有機機能層113への酸素や水分の侵入を防止することができる。また、アルミニウムであれば、電気抵抗が低いので、電極あるいは配線を構成するのに適している。さらに、対向電極112がアルミニウム膜であれば、光反射性が高いので、基板側から光を出射するボトムエミッション型の有機エレクトロルミネッセンス装置において対向電極112自身を光反射層として用いることができる。
【0030】
(発光装置の製造方法)
図3〜図5は、本形態の発光装置100を製造する方法を示す工程断面図である。なお、発光装置100でカラー表示を行う場合には、各画素115を赤色(R)、緑色(G)、青色(B)に対応させることになる。この場合、各色の画素115においても有機エレクトロルミネッセンス素子110の基本的な構成は共通であるが、図3〜図5には、各色に対応する画素115(R)、(G)、(B)、および有機エレクトロルミネッセンス素子110(R)、(G)、(B)を形成する様子を示してある。
【0031】
本形態の発光装置100を製造するには、まず、図3(A)に示すように、基板120を用意する。本形態の発光装置100は、ボトムエミッション型であるため、基板120としてはガラスや石英、樹脂などの透明ないし半透明なものが用いられるが、特にガラスが好適に用いられる。また、基板120に色フィルター膜や蛍光性物質を含む色変換膜、あるいは誘電体反射膜を配置して、発光色を制御するようにしてもよい。
【0032】
次に、基板120に対して、必要に応じてTEOS(テトラエトキシシラン)や酸素ガスなどを原料としてプラズマCVD法により厚さ約200〜500nmのシリコン酸化膜からなる下地保護膜(図示せず)を形成する。次に、基板120の温度を約350℃に設定して、下地保護膜の表面にプラズマCVD法により厚さ約30〜70nmのアモルファスシリコン膜からなる半導体膜109を形成する。次に、半導体膜109に対してレーザアニールまたは固相成長法などの結晶化工程を行い、半導体膜109をポリシリコン膜に結晶化する。レーザアニール法では、例えばエキシマレーザでビームの長寸が400mmのラインビームを用い、その出力強度は、例えば200mJ/cm2とする。ラインビームについては、その短寸方向におけるレーザ強度のピーク値の90%に相当する部分が各領域毎に重なるようにラインビームを走査する。
【0033】
次に、図3(B)に示すように、半導体膜(ポリシリコン膜)109をパターニングして島状の半導体膜109aとし、その表面に対して、TEOSや酸素ガスなどを原料としてプラズマCVD法により厚さ約60〜150nmのシリコン酸化膜または窒化膜からなるゲート絶縁膜121を形成する。なお、半導体膜109aは、図2に示す薄膜トランジスタ107のチャネル領域およびソース・ドレイン領域となるものであるが、異なる断面位置においては薄膜トランジスタ106のチャネル領域およびソース・ドレイン領域となる半導体膜も形成されている。すなわち、発光装置100では、二種類のトランジスタ106、107が同一の層間、あるいは異なる層間に形成されるが、概ね同一の手順で形成されるため、以下の説明では、薄膜トランジスタ107についてのみ説明し、薄膜トランジスタ106についてはその説明を省略する。
【0034】
次に、図3(C)に示すように、アルミニウム、タンタル、モリブデン、チタン、タングステンなどの金属膜からなる導電膜をスパッタ法などにより形成した後、これをパターニングし、ゲート電極143などを形成する。次に、この状態でリンなどの不純物を打ち込み、半導体膜109aに、ゲート電極143に対して自己整合的にソース・ドレイン領域109b、109cを形成する。なお、不純物が導入されなかった部分がチャネル領域109dとなる。
【0035】
次に、図3(D)に示すように、第1層間絶縁膜122を形成した後、コンタクトホールを形成し、これらのコンタクトホールを介してソース・ドレイン領域109b、109cに電気的に接続するソース・ドレイン電極126および共通給電線165を形成する。その際、データ線164なども形成する。
【0036】
次に、図3(E)に示すように、各配線の上面を覆うように、SiO2、TiO2などの無機絶縁膜からなる第2層間絶縁膜123を形成した後、第2層間絶縁膜123に対してソース・ドレイン電極126に対応する位置にコンタクトホールを形成する。次に、画素電極形成工程において、第2層間絶縁膜123の上層にITO膜を形成した後、ITO膜をパターニングして、データ線164、走査線163および共通給電線165に囲まれた所定位置に画素電極111を形成する。次に、必要に応じて、大気雰囲気中で酸素を処理ガスとするプラズマ処理(O2プラズマ処理)を行い、画素電極111あるいは、第2層間絶縁膜123のうち、画素電極111から露出している部分に親液性を付与する。
【0037】
次に、図3(F)に示す隔壁形成工程において、図2に示す有機機能層113の形成場所を囲むように隔壁105を形成する。その結果、隔壁105の内側には凹部150が形成される。隔壁105は、仕切り部材として機能するものであり、例えば、アクリル樹脂、ポリイミド樹脂などの絶縁性有機材料で形成する。隔壁105の膜厚については、例えば1〜2μmの高さとなるように形成する。なお、隔壁105は、ポリシラザンなどの絶縁性無機材料で形成してもよい。次に、必要に応じて、隔壁105に対して撥液化処理を行い、隔壁105に対して、有機機能層113を形成するための液状組成物に対する撥液性を付与する。このような撥液性を付与するためには、例えば、隔壁105の表面をフッ素系化合物などで表面処理するといった方法が採用される。フッ素化合物としては、例えばCF4、SF5、CHF3などがあり、表面処理としては、例えばプラズマ処理、UV照射処理などが挙げられる。
【0038】
次に、正孔輸送層113aを形成する。それには、図4(A)に示す吐出工程において、基板120の上面を上に向けた状態で、液滴吐出ヘッドから吐出された正孔輸送層形成液(液状組成物)の液滴Maを、隔壁105に囲まれた凹部150内に選択的に充填する。その際、正孔輸送層形成液は、流動性が高いため水平方向に広がろうとするが、塗布された位置を囲んで隔壁105が形成されているので、正孔輸送層形成液は隔壁105を越えてその外側に広がることがない。
【0039】
正孔輸送層形成液としては、例えば、ポリオレフィン誘導体である3,4−ポリエチレンジオキシチオフェン(導電性高分子材料)と、ポリスチレンスルホン酸(ドーパント)とを溶媒に分散させた溶液を用いる。このような正孔輸送層形成液としては、溶媒として水単独を用い、3,4−ポリエチレンジオキシチオフェンとポリスチレンスルホン酸を水に分散させたものを用いる。但し、正孔輸送層形成液の液滴Maを安定した状態に吐出し、乾燥させるために正孔輸送層形成液の粘度や沸点などを調整する必要がある場合には、ポリスチレンスルホン酸および3,4−ポリエチレンジオキシチオフェンを分散させる溶媒として、水に有機溶剤を配合した混合溶媒を用い、有機溶剤により正孔輸送層形成液の性質を最適化する。このような混合溶媒に使用可能な有機溶剤としては、アルコール類、エーテル類、グリコールモノエーテル類、ラクトン類、オキサゾリジノン類、カーボネート類、ニトリル類、アミド類、スルホン類などが挙げられる。
【0040】
このようにして正孔輸送層形成液を液滴吐出ヘッドから吐出した後、乾燥工程において、大気圧以下、例えば10-4〜10-6パスカル(Pa)程度の減圧雰囲気中に放置して、正孔輸送層形成液中の溶媒を蒸発させる。その結果、図4(B)に示すように、画素電極111上に、正孔輸送層113aが形成される。なお、乾燥工程では、40〜200℃程度で加熱して正孔輸送層形成液中の溶媒を蒸発させてもよい。
【0041】
次に、発光層113bを形成する。それには、図4(C)に示す吐出工程において、基板120の上面を上に向けた状態で、液滴吐出ヘッドから吐出された発光層形成液(液状組成物)の液滴Mbを、隔壁105に囲まれた凹部150内に選択的に充填する。発光材料としては、例えば分子量が1000以上の高分子材料が用いられる。具体的には、ポリフルオレン誘導体、ポリフェニレン誘導体、ポリビニルカルバゾール、ポリチオフェン誘導体、またはこれらの高分子材料に、ペリレン系色素、クマリン系色素、ローダミン系色素、例えばルブレン、ペリレン、9,10−ジフェニルアントラセン、テトラフェニルブタジエン、ナイルレッド、クマリン6、キナクリドンなどをドープしたものが用いられる。なお、このような高分子材料としては、二重結合のπ電子がポリマー鎖上で非極在化しているπ共役系高分子材料が、導電性高分子でもあることから発光性能に優れるため、好適に用いられる。特に、その分子内にフルオレン骨格を有する化合物、すなわちポリフルオレン系化合物がより好適に用いられる。また、このような材料以外にも、例えば特開平11−40358号公報に示される有機エレクトロルミネッセンス素子用組成物、すなわち共役系高分子有機化合物の前駆体と、発光特性を変化させるための少なくとも1種の蛍光色素とを含んでなる有機エレクトロルミネッセンス素子用組成物も、発光層形成材料として使用可能である。
【0042】
このような発光材料を溶解あるいは分散する有機溶媒としては、非極性溶媒が好適とされ、特に発光層113bが正孔輸送層113aの上に形成されることから、この正孔輸送層113aに対して不溶なものが用いられることが好ましい。具体的には、キシレン、シクロへキシルベンゼン、ジハイドロベンゾフラン、トリメチルベンゼン、テトラメチルベンゼンなどが好適に用いられる。なお、発光層形成液の吐出による発光層の形成は、赤色の発色光を発光する発光層の形成材料、緑色の発色光を発光する発光層の形成材料、青色の発色光を発光する発光層の形成材料を、それぞれ対応する画素に吐出し塗布することによって行う。また、各色に対応する画素は、これらが規則的な配置となるように予め決められている。
【0043】
次に、乾燥工程において、大気圧以下、例えば10-4〜10-6パスカル(Pa)程度の減圧雰囲気中に放置して発光層形成液中の溶媒を蒸発させる。その結果、図4(D)に示すように、正孔輸送層113a上に発光層113bが形成される。これにより、正孔輸送層113aおよび発光層113bからなる有機機能層113が形成される。なお、乾燥工程では、40〜200℃程度で加熱して発光層形成液中の溶媒を蒸発させてもよい。
【0044】
次に、図5(A)に示す成膜工程において、基板120の全面にアルミニウム膜を蒸着法により形成した後、アルミニウム膜をパターニングして対向電極112を基板120の略全面、あるいはストライプ状に形成する。いずれに場合にも、対向電極112は、有機機能層113および隔壁105を覆うように形成される。
【0045】
次に、図5(B)に示す化合物層形成工程において、対向電極112に酸素プラズマを照射して対向電極112の表面を反応させて対向電極112の上層にアルミニウム酸化膜からなる化合物層112xを形成する。その結果、図8(A)に示すように、対向電極112を構成するアルミニウム膜を有機機能層113の上層に蒸着により成膜した際、アルミニウム膜にピンホールが発生している場合でも、対向電極112の表面を反応させて化合物層112xを形成すると、その体積膨張によりピンホールを塞ぐことができる。従って、対向電極112自身によって有機機能層113への酸素や水分の侵入を防止できるので、有機機能層113の劣化を防止することができる。
【0046】
その後、所定の封止を行った後、さらに配線などの各種要素を形成することにより、有機エレクトロルミネッセンス素子110を各画素115に備えた発光装置100を製造することができる。
【0047】
[実施の形態1の変形例]
上記実施の形態1では、図5(B)に示す化合物層形成工程において、対向電極112に酸素プラズマを照射して対向電極112の表面にアルミニウム酸化膜からなる化合物層112xを形成したが、対向電極112に窒素プラズマを照射して対向電極112の表面にアルミニウム窒化膜からなる化合物層112xを形成してもよい。この場合も、対向電極112を構成するアルミニウム膜にピンホールが発生している場合でも、対向電極112の表面を窒化した際の体積膨張によりピンホールを塞ぐことができる。
【0048】
[実施の形態2]
図6は、本発明の実施の形態2に係る発光装置の1画素分の断面図である。図7は、図6に示す発光装置の製造工程のうち、有機機能層を形成した以降の工程を示す工程断面図である。なお、本形態の発光装置、およびその製造方法の基本的な構成は、実施の形態1と同様であるため、共通する部分には同一の符号を付して図示することにして、それらの説明を省略する。
【0049】
図6に示すように、本形態の発光装置でも、各画素115には、陽極層としての画素電極111(第1電極層)と、有機機能層113と、陰極層としての対向電極112(第2電極層)がこの順に積層された有機エレクトロルミネッセンス素子110が形成されている。有機機能層113は、画素電極111上に積層された正孔輸送層113aと、この正孔輸送層113aの上層側に形成された発光層113bとを備えている。また、対向電極112は、基板120の略全面にあるいはストライプ状に形成されたアルミニウム膜により構成されている。
【0050】
本形態の発光装置において、対向電極112は複数の導電層からなる多層膜から構成されているが、発光装置がボトムエミッション型であるため、対向電極112は、最も下層側に光反射層として機能するアルミニウム膜からなる第1導電層112aを備えている。また、対向電極112では、第1導電層112aの上層に、ポリピロール、ポルアニリン、3,4−ポリエチレンジオキシチオフェンなどの導電性有機材料層、アルミニウムキノリノール錯体などの有機金属錯体膜、あるいはタンタル(融点2996℃)、チタン(融点1660℃)、タングステン(融点3410℃)、モリブデン(融点2620℃)などの高融点金属材料層からなる第2導電層112bが積層されている。さらに、対向電極112では、第2導電層112bの上層に、第1導電層112aと同一の金属材料(アルミニウム)からなる第3導電層112cが積層されている。
【0051】
なお、基板120の素子形成面側(対向電極112の側)には、酸素や水分の侵入を防ぐことによって有機機能層113の酸化による劣化を防止する封止樹脂(図示せず)が形成され、さらに封止基板(図示せず)が貼られることがある。また、基板120の素子形成面側の側には、酸素や水分の侵入を防ぐための缶(図示せず)が被せられ、缶の内側には脱酸素剤(図示せず)が配置されることもある。
【0052】
このような構成の発光装置を製造するにあたっては、図3および図4を参照して説明した工程により有機機能層113を形成した後、図7(A)に示す成膜工程において、基板120の全面に、第1導電層112aを構成するためのアルミニウム膜を蒸着法により形成する。その結果、有機機能層113および隔壁105は第1導電層112aで覆われる。
【0053】
次に、図7(B)に示す第2導電層形成工程において、第1導電層112aの上層に、ポリピロール、ポルアニリン、3,4−ポリエチレンジオキシチオフェンなどの導電性有機膜、アルミニウムキノリノール錯体などの有機金属錯体膜、あるいはタンタル、チタン、タングステン、モリブデンなどの高融点金属膜からなる第2導電層112bを積層する。ここで、第2導電層112bが導電有機膜である場合には、有機機能層113と同様、液滴吐出法やスピンコート法、さらには蒸着法により第2導電層112bを形成することができ、第2導電層112bが高融点金属層である場合には、スパッタ法などにより第2導電層112bを形成することができる。
【0054】
次に、図7(C)に示す第3導電層形成工程において、第2導電層112bの上層に、第3導電層112cを構成するためのアルミニウム膜を蒸着法により積層する。
【0055】
次に、フォトリソグラフィ技術により、第1導電層112a、第2導電層112b、および第3導電層112cを一括してエッチングし、第1導電層112a、第2導電層112b、および第3導電層112cの多層膜からなる対向電極112を基板120の略全面、あるいはストライプ状に形成する。なお、第1導電層112a、第2導電層112b、および第3導電層112cを順次、エッチングして、第1導電層112a、第2導電層112b、および第3導電層112cの多層膜からなる対向電極112を形成してもよい。いずれの場合も、有機機能層113および隔壁105は対向電極112で覆われる。
【0056】
その後、所定の封止を行った後、さらに配線などの各種要素を形成することにより、有機エレクトロルミネッセンス素子110を各画素115に備えた発光装置を製造することができる。
【0057】
以上説明したように、本形態では、有機機能層113の上層に蒸着法で形成したアルミニウム膜で対向電極112の第1導電層112aを形成した後、この第1導電層112aの上層に導電性有機膜、有機金属錯体膜、あるいは高融点金属膜からなる第2導電層112bを形成する。ここで、導電性有機膜、有機金属錯体膜、あるいは高融点金属膜は、それを成膜する際、下地の影響を受けにくい。このため、図8(A)に示すように、第1導電層112aを構成するためのアルミニウム膜を有機機能層113の上層に蒸着により成膜した際、下地が有機物層であることに起因してアルミニウム膜にピンホールが発生している場合でも、ピンホールは、図8(C)に示すように、導電性有機膜、有機金属錯体膜、あるいは高融点金属膜からなる第2導電層112bで覆われる。従って、対向電極112自身によって有機機能層113への酸素や水分の侵入を防止できるので、有機機能層113の劣化を防止することができる。また、第1導電層112aのピンホールを塞ぐ第2導電層112b自身が対向電極112の一部を構成するため、電気抵抗などを考慮しても第1導電層112aを薄くすることができ、その分、成膜時間を短縮することができる。
【0058】
さらに、本形態では、導電性有機膜、有機金属錯体膜、あるいは高融点金属膜からなる第2導電層112bの上層に、第1導電層112aと同一の金属材料(アルミニウム)からなる第3導電層112cが積層され、かかる第3導電層112cによっても、有機機能層113への酸素や水分の侵入を防止することができる。すなわち、第3導電層112cの下地は、有機機能層113などからみて薄い導電性有機膜や有機金属錯体膜、あるいは高融点金属膜からなる第2導電層112bであるため、第3導電層112cを構成するアルミニウム膜を蒸着法により形成する際、下地の熱伝導性が低いことなどに起因するピンホールが発生しないので、第3導電層112cによっても、有機機能層113への酸素や水分の侵入を防止できる。また、第3導電層112c自身が対向電極112の一部を構成するため、電気抵抗などを考慮しても第1導電層112aおよび第2導電層112bを薄くすることができ、その分、成膜時間を短縮することができる。
【0059】
特に本形態では、第1導電層112aがアルミニウム膜からなり、アルミニウムのように低融点金属を蒸着により成膜した際には特にピンホールが発生しやすい。しかるに本形態では、かかるピンホールを第2導電層112bによって塞ぐため、第1導電層112aをアルミニウム膜で形成した場合でも、有機機能層113への酸素や水分の侵入を防止することができる。また、アルミニウムであれば、電気抵抗が低いので、電極あるいは配線を構成するのに適している。さらに、第1導電層112aがアルミニウム膜であれば、光反射性が高いので、基板側から光を出射するボトムエミッション型の有機エレクトロルミネッセンス装置において第1導電層112a自身を光反射層として用いることができる。
【0060】
[実施の形態2の変形例]
上記実施の形態2では、アルミニウム膜からなる第1導電層112a、有機金属錯体膜、導電性有機膜、有機金属錯体膜、あるいは高融点金属膜からなる第2導電層112b、およびアルミニウム膜からなる第3導電層112cの多層膜で対向電極112を形成したが、アルミニウム膜からなる第1導電層112aと、導電性有機膜、有機金属錯体膜、あるいは高融点金属膜からなる第2導電層112bとによって、有機機能層113への酸素や水分の侵入を防止でき、かつ、電気抵抗のレベルが低い場合には、第3導電層112cの形成を省略してもよい。
【0061】
[その他の実施の形態]
本発明の技術範囲は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えることが可能であり、実施形態で挙げた具体的な材料や構成などは一例に過ぎず、適宜変更が可能である。
【0062】
例えば、上記形態では、対向電極112あるいはその第1導電層112aとしてアルミニウムを用いた例を説明したが、対向電極112あるいはその第1導電層112aとしてマグネシウム(融点649℃)などを用いる場合に本発明を適用してもよい。また、上記形態では、正孔輸送層113aとして、3,4−ポリエチレンジオキシチオフェンを用いたが、その他のポリアルキルチオフェン誘導体や、ポリピロール誘導体を用いてもよい。また、正孔輸送層113aとしては、ポリテトラヒドロチオフェニルフェニレンであるポリフェニレンビニレン、1,1−ビス−(4−N,N−ジトリルアミノフェニル)シクロヘキサンなどを高分子前駆体として形成した層を用いた場合に本発明を適用してもよい。また、有機エレクトロルミネッセンス素子110から白色光を出射させ、この白色光をカラーフィルタで着色してカラー表示するタイプの発光装置100に本発明を適用してもよい。
【0063】
(電子機器への適用)
本発明を適用した発光装置は、携帯電話機、テレビ、車載パネル、パーソナルコンピュータやPDAなどの電子機器においてフルカラー表示装置として用いることができる。また、本発明を適用した発光装置は、各種光源や、デジタル複写機やプリンタなどの画像形成装置における露光用ヘッドとして用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【0064】
【図1】本発明を適用した発光装置のブロック図である。
【図2】(A)、(B)は各々、本発明の実施の形態1に係る発光装置の1画素分の平面図および断面図である。
【図3】本発明の実施の形態1に係る発光装置の薄膜トランジスタなどを形成する方法を示す工程断面図である。
【図4】本発明の実施の形態1に係る発光装置の正孔輸送層および発光層を形成する方法を示す工程断面図である。
【図5】本発明の実施の形態1に係る発光装置の対向電極などを形成する方法を示す工程断面図である。
【図6】本発明の実施の形態2に係る発光装置の1画素分の断面図である。
【図7】本発明の実施の形態2に係る発光装置の有機機能層を形成した以降の工程を示す工程断面図である。
【図8】有機機能層の上層に蒸着により成膜したアルミニウム膜に発生したピンホールの説明図である。
【符号の説明】
【0065】
100・・発光装置、110・・有機エレクトロルミネッセンス素子、111・・画素電極(第1電極層)、112・・対向電極(第2電極層)、112a・・第1導電層、112b・・第2導電層、112c・・第3導電層、112x・・化合物層、113・・有機機能層、113a・・正孔輸送層、113b・・発光層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1電極層、有機機能層および第2電極層が順に積層された有機エレクトロルミネッセンス素子を備えた発光装置において、
前記第2電極層は、金属材料から構成され、
前記第2電極層の上層には、当該第2電極層を構成する金属材料の化合物層が積層されていることを特徴とする発光装置。
【請求項2】
前記第2電極層は、アルミニウム膜からなることを特徴とする請求項1に記載の発光装置。
【請求項3】
前記化合物層は、アルミニウム酸化膜あるいはアルミニウム窒化膜からなることを特徴とする請求項1または2に記載の発光装置。
【請求項4】
第1電極層、有機機能層および第2電極層が順に積層された有機エレクトロルミネッセンス素子を備えた発光装置の製造方法において、
前記有機機能層を形成した後、当該有機機能層の上層に前記第2電極層を構成する金属膜を蒸着法により成膜する成膜工程と、
前記第2電極層の表面を反応させて当該第2電極層の上層に該第2電極層を構成する金属材料の化合物層を形成する化合層形成工程と、
を有することを特徴とする発光装置の製造方法。
【請求項5】
第1の電極層、有機機能層および第2電極層が順に積層された有機エレクトロルミネッセンス素子を備えた発光装置において、
前記第2電極層は、金属材料からなる第1導電層と、該第1導電層の上層に積層され、導電性有機膜、有機金属錯体膜、あるいは前記第1導電層を構成する金属材料より融点が高い高融点金属膜からなる第2導電層とを含んでいることを特徴とする発光装置。
【請求項6】
前記第2電極層は、さらに、前記第2導電層の上層に、前記第1導電層と同一の金属材料からなる第3導電層を含んでいることを特徴とする請求項4または5に記載の発光装置。
【請求項7】
前記第1導電層は、アルミニウム膜からなることを特徴とする請求項5または6に記載の発光装置。
【請求項8】
第1電極層、有機機能層および第2電極層が順に積層された有機エレクトロルミネッセンス素子を備えた発光装置の製造方法において、
前記有機機能層を形成した後、当該有機機能層の上層に前記第1導電層を構成する金属膜を蒸着法により成膜する成膜工程と、
前記第1導電層の上層に、導電性有機膜、有機金属錯体膜、あるいは前記第1導電層を構成する金属材料より融点が高い高融点金属膜からなる第2導電層を形成する第2導電層形成工程と、
を有することを特徴とする発光装置の製造方法。
【請求項9】
前記第2導電層形成工程の後、前記第2導電層の上層に、前記第1導電層と同一の金属材料からなる第3導電層を蒸着法により形成する第3導電層形成工程を有することを特徴とする請求項8に記載の発光装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2007−220513(P2007−220513A)
【公開日】平成19年8月30日(2007.8.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−40480(P2006−40480)
【出願日】平成18年2月17日(2006.2.17)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】